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獣人世界大戦⑥〜火の始末は確実に

#獣人戦線 #獣人世界大戦 #第一戦線 #F.O.N #スモーキング・ラビット #オデッサ諜報戦



 ウサギの耳介が大型なのは、「風」と「音」を捉える為と言われている。
 而してユーラシア大陸の「時流」を捉え、「情報」を求めて海を渡ったフィールド・オブ・ナインの『スモーキング・ラビット』は、渡航先のウクライナは最大の港湾都市オデッサにて、街中に手下達を放ち、他の超大国や猟兵にまつわる情報収集にあたらせていた。
『――スーパー戦車からの定期連絡が途絶えて何年になる』
 便りが無い事が便りと云うなら、プレジデント以下、主だったメンバーは殺害されたのだろう。
 より精確で最新の情報を手に入れるなら、己の脚を動かすしかないと積極的な諜報活動に出た秘密結社のカリスマは、今日日、日常を過ごしているフリをしながらプリモールスキー通りの並木道を歩いていた。
『F.O.Nは平和の裏でオブリビオン・アーミーを揃え、そのうえで他勢力よりも『カタストロフ後の戦い』に熟達している。見据えるべきは世界大戦が勃発した後だ』
 独言を煙に溶かしつつ、進路はティオシン橋へ。
 オデッサ湾の美しいパノラマの景色を眺めつつ、大きな耳を風に当てて呟いた。
『常に先んじねば、現在の優位もたやすく覆る可能性がある。果して時間は待って呉れぬものだ』
 然う、時間を繋ぎ止めておく事など出来ない――。
 透き通る靑彩の瞳を手元に、橋の欄干に括り付けられる鍵の数々に一瞥を呉れた男は、また煙をふかして歩き出すのだった。


「ブラウン編集長を覚えているかしら? 彼が訴えていた真実に気付いた私達は、今こそ応えるべきと思うの」
 タブロイド誌「ブラウンタイムス」の編集長は、悪の秘密結社『フィールド・オブ・ナイン』が善良な市民を殺し、不死の兵団を造り上げていると訴えていた。
 彼は仮に『忘れられた軍団オブリビオン・アーミー』と呼んでいたが、秘密結社のカリスマ『スモーキング・ラビット』の口からも同じ語が確認された、と皆々と首肯を揃えたニコリネ・ユーリカ(花屋・f02123)は、この男の潜伏場所が割れた今こそ戦いを挑むべきと呼び掛ける。
「戦後を見据えて諜報活動にあたる彼は、猟兵との戦いより生き延びる事を優先するから、追い詰められた時には逃走する可能性もある……だから今回は、橋の上を通った所で仕掛けるのが良いかなって」
 プリモールスキー通りの西端に架かる「愛の橋」で挟撃する――。
 脱兎の如き逃げ足を少しでも阻もうという作戦だが、彼は元々の戦闘力が高く、艦隊を素手で殲滅できる程度には強い上、必ず先制攻撃を仕掛けてくる難敵だ。
 彼が操るユーベルコードの「煙」をどう対処するかがポイントになるが、既に獣人戦線で存在感を示しつつある猟兵ならば、必ずや攻略できるとニコリネは信じている。
 彼女は「皆なら大丈夫!」と嫣然を置くと、ぱちんとウインクして転送に掛かり、
「ブラウン編集長は、秘密結社の暗躍を止めて欲しいと云っていたわ。海を越えて届けましょう」
 誰も信じぬ真実に気付く者が居たと報せる為に。
 声を上げるより事実を届けようと――グリモアが光った。


夕狩こあら
 オープニングをご覧下さりありがとうございます。
 はじめまして、または、こんにちは。
 夕狩(ゆうかり)こあらと申します。

 こちらは『獣人世界大戦』第六の戦場、秘密結社「F.O.N」の首領「スモーキング・ラビット」と戦う、一章で完結する戦争シナリオ(難易度:普通)です。

●戦場の情報
 獣人戦線、ウクライナ最大の港湾都市オデッサ。
 スモーキング・ラビットが潜伏していると判明した場所で、 標的がプリモールスキー並木通りの西端「Tioschin Bridge」を渡っているところで接触します。

●敵の情報:『スモーキング・ラビット』(ボス戦)
 平和と繁栄を謳歌するアメリカ社会の裏側で全てを支配していた、悪の秘密結社「F.O.N」を率いるカリスマです。ユーベルコードの煙を操り、全てを殲滅します。

●プレイングボーナス:『敵の先制攻撃に対処する/敵を逃がさないよう立ち回る』
 このシナリオフレームには、特別な「プレイングボーナス」があります。
 これに基づく行動をすると、戦闘が有利になります。

●リプレイ描写について
 フレンドと一緒に行動する場合、お相手のお名前(ID)や呼び方をお書き下さい。
 二名様以上は【グループ名】を冒頭に記載願います。この場合も呼称があると大変助かります。
 また、このシナリオに導入の文章はありません。
 状況によりサポート様のプレイングも採用しつつ、早期の完結に努めます。

 以上が猟兵が任務を遂行する為に提供できる情報です。
 皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
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第1章 ボス戦 『スモーキング・ラビット』

POW   :    フェイスレス・ラビット
自身が【葉巻を吸っている】間、他者から認識されない。ただし自身の所在を問われたら大声で返事をしなければならない。
SPD   :    アメリカン・ドリーム
視界内の任意の全対象を完全治療する。ただし対象は【スモーキング・ラビットの紫煙】に汚染され、レベル分間、理性無き【アメリカン・ドリームの信奉者】と化す。
WIZ   :    スモーキング・ダンディ
体内から常に【紫煙】が放出され、自身の体調に応じて、周囲の全員に【混乱】もしくは【無関心】の感情を与える。
👑11
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ルナ・キャロット
悪兎様も可愛いですが…ブラウン様と約束したので倒します!

アメリカンドリーム……?夢を掴む努力をしていいんです?
統制機構と真逆で…狂信しちゃいます!
私の夢は獣人世界でチヤホヤされること!可愛いもふもふ様に褒められて抱きしめられたりブラウン様の胸モフに顔を埋めたりいい
そのためには戦争の功績が必要です!私のアメリカンドリームのために死んでください!
欲望パワーで動いて倒しにかかります
攻撃は全力でパリィ受け流し、最悪武器を犠牲にして耐えます
別の双剣に切り替え…狙うは首狩り一撃です
逃げないでください!ラビット様ぁ!
兎様に好かれたい本能も乗せて、洗脳光で少しでも足止めしてトドメです。
夢のために…ごめんなさい



 兎の視野は360℃。
 故に、背後に立つ敵も直ぐに判然る。
『……猟兵かな』
 多くの敵を作った記憶おぼえはあるが、目下に挑み來る者の所属を割り出すくらいの情報は持っていよう。
 橋の半ばまで歩いた処でピタリと足を留めた『スモーキング・ラビット』は、振り返らずして然う訊ねると、欄干の上に立った猟兵が凛と澄むソプラノを返した。
「もふもふ可愛い悪兎樣。邂逅であって早々の訣別わかれが惜しくありますが、ここで倒します!」
『それは如何云う了見かね』
「同じくもふもふ可愛いブラウン樣と約束しました!」
 告ぐや彈丸の如く駆ける、ルナ・キャロット(†月光の聖剣士†・f41791)。こちらも兎。
 長い垂れ耳ロップイヤーをぎゅんと靡かせ驀進した姫騎士は、宝剱ローゼンハート(SSR)の鋩を向けて突撃! 兎ならではの敏捷性で敵懷に侵襲する――!!
「お覺悟!」
『熱烈な歡迎だな。ならば、俺と共に海を渡ったアメリカン・ドリームを魅せてやろう』
 一瞬で間合いに踏み込むルナを遮るは、一瞬で兩者に隔絶を置く紫煙。
 其は受動者の理性を奪い、幸福を追求させる危うい煙なのだが、信奉者が必ずしも悪しくなるとは限らない。
 スンスンと鼻腔を動かして煙を吸った姫兎は、「ふへへ」と口元を緩める一方、彩を違えた双眸をギンッ!
 靉靆と漾う紫煙を振り払って前のめりに、ぐいぐい悪兎に詰め寄った!
「アメリカン・ドリーム……? 夢を摑む努力をしていいんです?」
『えっ。うん……えっ?』
「それでは此たび戰功を上げる爲に! 私の爲に死んでください!」
『!? !?』
 重度のケモナーな彼女の夢は、獸人世界でチヤホヤされること!
 可愛いもふもふ樣に褒められ! 抱きしめられ!
 戰功を上げた暁には、ブラウン樣の胸モフに……むぎゅっと顏を埋めたいい!!!
 統制機構コントロールとは全き逆に、信奉を過ぎて狂信に至ったルナは慾望全開! 兎樣かれに好かれたい本能の儘に【姫兎の威光ヒメプレイウサギノイコウ】を放ち、猛然と襲い掛かる!!
「首狩られて下さいごめんなさい!!」
『重度に危険だ。逃げよう』
「待って下さい! ラビット樣ぁ!」
 本能で戰うルナの俊敏たるや、紫煙の怪腕を全力で受け流し! 大剱を盾にして耐え!
 刃毀れした宝剱を地面に突き立てた代わり、すらりと双剱を拔いた姫兎は、敵が洗腦の妖光に眩んだ瞬間にX字に二刃を突き入れ、上質なスーツの襟を赫々と染め上げるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エミリィ・ジゼル
先制攻撃ということは最初から相手の姿は見えないのでしょう
であれば、こちらはUCでかじできないさんズを呼び出し、橋にずらっと並んで対抗します

その上で「スモーキング・ラビットちゃーん!」と叫んで相手の位置を特定
位置が判明したら即座にかじできないさんズで取り囲み、【集団戦術】を生かした【暴力】を発揮します

鯨の骨の【一斉発射】で足を止め、
獣人特攻を有した幻想殺しで襲いかかり、
ウサギの足をちらつかせて【恐怖を与える】傍ら、
定期的に名前を呼んで位置を把握する

一人でこれをこなすのは難しいでしょうが、我々はかじできないさんズ。
それぞれが分担して事に当たればいいだけです

絶対に逃がさん。必ずここで打ち倒す。



『ッ、情報が流れたか? 俺の居場所がバレている』
 奇襲を受けたスモーキング・ラビットが逃走を優先するのは、相手猟兵が情報を上回るからだろう。
 刹那、肺腑いっぱい吸い込んだ紫煙を一気に吐いた彼は、煙幕に身を隱してこの場を遣り過ごす心算つもりであったが、美し小鳥の囀聲が彩を重ねて名を呼べば、返事をせずにはいられなかった。
「スモーキング・ラビットちゃーん!」
『誰だ、白晝で名前を呼ぶ奴は!! 諜報時はコードネームを……――ッ!?』
「ここにいたか」
 玲瓏なる四重奏カルテットを響かせたのは、橋の兩側にずらっと並んだ「かじできないさんズ」!!
 靉靆と棚引く煙が吹き払われるや、麗姿を現した彼女らは其々に手にした武器で袋叩フクロに掛かった!!
「おらぁ! 囲繞かこめ!!」
『なっ』
「そこだ! やったれ!」
『!? どわーっ!』
 突如として投擲された鯨の骨が眼眦を掠めて破裂した瞬間、時も彈かれたように加速する。
 寸で穂先を躱した兎には、今度は側面から幻想殺しのフライパンが炸裂! 激痛に抉られるよう橫腹を曲げた矢先、歪める視界に『ウサギの足』がスッ……と過りゆく!
『!! 今のは……!』
「幸運を齎すお守りです。美味しかったです」
『食ッ、ッッ……!!』
 ゾクリと背筋を疾る悪寒が時を止めたのは一瞬。
 雪白の繊手に兎の片足をブラブラと提げ持つメイドの左右には、【増える!囲む!ボコる!DXデラックスかじできないさんズ】が勢揃いしており、故郷の因習に倣って暴力をふるう――!!
「デウスエクス然り、オブリビオン然り。数でボコるのがケルベロスの流儀!」
『其々が間隙を埋めるように攻撃を……ごぶぁ!!』
「これが我等の作法です。スモーキング・ラビット樣」
『畜生ッ、兎の足をチラチラと!!』
 彼が文字通り「煙に巻けば」、佳人は都度に名を呼んで座標を洗い、かじできないさんズが毆り込む。
 呼ぶ、圍む、ボコる――この見事な勝利の方程式を組み上げたメイドは、自身もバットを振りかぶり、敵が纏う紫煙ごと吹き払ってフルスイング!!
「絶対に逃がさん。必ずここで打ち倒す」
 鋭く冷やかに囀るは、おわりを告ぐ墓場鳥ナイチンゲール
 佳聲の主たるエミリィ・ジゼル(かじできないさん・f01678)は、兎の軀をカッ飛ばして欄干に叩きつけ、そこに括られた無数の鍵をガシャンと震わせるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レン・ランフォード
暗殺任務ですね
「兎狩り…でも首を刈られないように注意…」
勿論、可愛い見た目でもFON気を付けませんと

接触する前に装備;実現符で別人格二人を実体化し
れんを橋の反対側、れんを橋の下に配置
それとすごく嫌ですけど全員、装備:秘伝の薬丸を
口に含んでおきます…にがっ
接触と同時に装備:発煙弾を発動し視界を防ぎつつ
敵後方のれんとともにUC;陽炎舞を発動して仕掛けます

視界を防ぎならがあえて真正面から行くというフェイント
その実、薬丸で汚染を防ぎ、本命は後ろのれんなだまし討ちからの暗殺を仕掛けます

煙幕をはった時点で橋から飛び降りるかもしれませんが
下には錬を配置して経路は封鎖済み…落下中で仕留めます

お命頂戴



『ッ、俺は後回しだ! お前達を癒してやる代わり、甘い夢でも見ておけ!』
 脱兎の勢いで橋を駆けるスモーキング・ラビットが、今一度紫煙をふかす。
 刹那、吸引する者の精神を汚染する煙が橋上に立ち込めるが、彼はその排煙量が「多い」と思ったろうか。
 朦然と膨れ上がる煙で隔絶を置いた筈が、猟兵の進撃を間際まで隱す事になったとは、冱刀クレセントムーンより斬撃を受け取った直後に気付かされよう。
「いさ、兎狩り……」
『ぜァッ!』
「でも、首を刈られないように注意……」
 見た目が可愛らしくとも、彼は悪の祕密結社「F.O.N」の首領。
 確実に暗殺してみせると鋭刃を振り拔くは、レン・ランフォード(近接忍術師ニンジャフォーサー・f00762)。
 邪兎が放った紫煙に発煙彈を混ぜて接近した彼女は、我が進撃の勢いに煙を吹き払いつつ、逆方向から攻める「れん」と交点を結ぶように斬撃を疾らせた!
『……前方と後方に二人だと、ッ!!』
「煙の濃度が高い……やはり、藥丸を含んでおいて良かった……にがっ」
 背後から脇腹を駆け抜ける激痛に邪兎が瞠目する中、未だ咥内に残る苦味に柳眉を顰める「蓮」。
 刃撃を揃えた「れん」も同じ想いをしていようか、実現符によって実体化した別人格と瑠璃の烱瞳を結んだ佳人は、【分身殺法・陽炎舞】――無数の残像分身より手裏剱を繰り出し、虚実の入り混じる斬撃の嵐で攻め立てる!!
「藥丸は凄く躊躇いましたが……これで先制は凌げました……」
拙劣マズい、紫煙が搔き消される……!!』
「攻勢を強め、任務を続行……」
 視界を防ぎながら、敢えて眞正面を衝くフェイントは成功。
 理性を手放すことなく挟撃を仕掛けた「二人」は、標的が応戰より逃走を優先する事も読んでおり、邪兎が眞上に跳躍した瞬間に次の展開が見えたろう。
 橋の欄干に飛び乗った彼が目指す先、こちらも実体化した別人格「錬」が、今にも橋下に遁れんとする脱兎を待ち構えていた。
「來いよ。落下する間に仕留めてやる」
『ッ、ッッ……!!』
 北側に湾港を眺むTioschin Bridgeは、下に道路を潜らせる高架橋。
 ここから更に逃走を図るなら橋下かという予測は全き剴切にて、而して退路を封鎖した「三人」は、鋭眼を揃えて王手に掛かる。
「お命頂戴」
 其は果して「誰」の佳聲こえであったか。
 錆付いた欄干が、程なくして血斑に染まった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜都守・寧闇
闇(夜、死、眠りなどを含む)の属性を司る女神様
実年齢不詳(数えれないくらい長く生きている)

性格:鷹揚。人の営みを見守る神としての意識が強く、数歩引いた見方をするためか、大体のことは受け流せる

普段の口調は(私、お前、だ、だな、だろう、なのか?)
神として威圧するときは(我、お主・汝、~である、だ、~であろう、~であるか?)

戦い方:
闇の神であり、闇を操る
武器は常夜見剣

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



 悪の祕密結社「F.O.N」の首領は、この世界大戰で世界が滅びようが構わないと云う。
 慥かに、百年以上も爭い続ける連中にとっては此度の大戰も通過点に過ぎぬか――既にカタストロフ後の戰いを見据える『スモーキング・ラビット』の挙動は、大局的に見れば「正しい」と、同じ觀点を持つ者なら理解できよう。
「……然う、正しくはある」
 櫻色の唇を滑る、いとけない鈴音。
 佳聲の主は夜都守・寧闇(闇の神・f31410)。
 年齡としは優に百を越し、最早数えきれぬほど生きた自覺おぼえのある女神は、逃げの一手に回る脱兎にどこか納得したような表情を浮かべつつ、その一方で隔絶も置いていた。
「唯だ、その滅びゆく世界に己を組み入れていないのが、視野の狭さと云うべきか――」
 人の営みを見守る神さえ、世界に身を置くもの。
 悠久の存在ゆえに数歩引いた見方をするからか、大体の事は受け流せる寧闇であるが、世界が滅びても自身は在ろうとする傲慢こそオブリビオンらしいと吐息した彼女は、神劔『常夜見剣』を提げながら橋の中央に向かった。
「――扨て、何處に隱れたか」
 紫煙を吸って影を隱してしまった脱兎に、夜の帳を下ろすべく前進した寧闇は、呼べば大聲で返事をするという獲物を炙り出すに、闇を操った。
「仕事だ、お前たち。我の代わりに所在を問え」
 告げば、橋の欄干が伸ばす陰影かげが輪郭を變えて立体に――人型を成す。
 其は寧闇に從う【冥界神の眷属】で、総勢96体の冥界の運営スタッフが橋の左右にずらりと並ぶや、口々に獲物の名を呼び立て、返事をさせる事で居場所を明らかにした。
「応答せよ、スモーキング・ラビット!!」
『やめろ、大聲で名前を呼ぶんじゃない!』
「スモーキング・ラビット、何處に居る!」
『答える間は葉巻を吸えないじゃないか!』
 十分な時間があれば城や街を築く優秀な眷属だが、脱兎を相手に許される時間は寡い。
 だが「それで十分」と、大聲が発せられた方向へ瞬時に距離を詰めた寧闇は、漆黑の闇を迸る神劔を身ごと衝き入れるように突貫ッ! 目下に欄干を伝い走る脱兎の太腿に鋭刃を突き立てた――!!
「我の前から逃げられると思ったか」
『ずゥ……ッッ!!』
 寧闇は「闇」を司る神々、その最高位の一柱。
 安らぎとしての闇、即ち「死」より遁れる事は出來ぬ――と、赫々しい返り血が女神の頬を濡らした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニクロム・チタノ
残念だけどお前に戦後なんてないよ、ここで倒させてもらうからね
反抗の加護あり
護りの蒼焔を全身に纏って先制攻撃を防ぐよ、燃え盛る護りの蒼焔相手に素手での攻撃じゃあ火傷じゃすまないよ
姿を隠しているみたいだね、ならこの反抗の火炎放射機で炙り出してあげるよ
流石に広範囲に火炎を撒き散らせば葉巻なんて吸っている余裕はないみたいだね
脱兎って言葉はよく知っているよ、なんせお前はウサギだからね
でもこの辺り一帯はボクの重力領域だよ、いくらウサギでもこの重力の中を動き回ることは不可能さ
反抗の雷装でトドメだよ、焼きウサギになってもらうよ
陰謀の暗黒に反抗の光明を!



『……ッッ、此處でおわる訳には……俺は戰後の盤面を動かす爲に、情報収集を……!』
 鮮血に染まる橋の欄干より滑り落ちたスモーキング・ラビットが、スーツの懷中に手を潜らせる。
 ここで一服すれば文字通り「煙に巻く」事が出來ると葉巻に火を點けた彼は、然し次の瞬間、吐き出す紫煙ごと灼熱の波濤なみに攫われた。
『熱ぁぁ痛づづづっ!!』
「残念だけどお前に戰後なんてないよ。ここで斃されるんだから」
 煙に包まれた兎を炙り出したのは、燃え盛る鬪志を火力に変えた火炎放射器。
 その赫々しい炎に白皙を照り上げたニクロム・チタノ(反抗者・f32208)は、橋上一帯に猛炎を噴いて紫煙を蹴散らすと同時、華奢より凄まじいオーラを迸らせて対峙した。
「艦隊を素手で殲滅できるらしいけど。反抗の加護あるボク相手に、素手じゃあ火傷じゃすまないよ」
『何處でそれを? 潜伏先を割り出した事といい、猟兵は俺より情報が上回っているのか』
「――知っていたら、鼠のように追い詰められてはなかったろうね」
 佳人が守護竜より授かるは、【貴女に反抗の竜チタノの加護をチタノネクサス】。
 セーラー服の下、胸に祕める反抗の印より『護りの蒼焔』を迸らせたニクロムは、烈々と逆巻く熱風に銀髪を梳りながら、熾えるような緋の虹彩に敵の挙動を捉えている。
 彼女は幾許の会話を交わす間にも彼奴の爪先の方向を見ており、
「思った以上に焦っているみたいだね。――逃げようとしている」
『賢明な判斷を怯懦と云うかね』
「別に。唯だ『脱兎』って言葉はよく知っているよ。なんせお前はウサギだからね」
 故に対策も考えてあるとは、口でなく具象で示そう。
 ニクロムは繊腕を胸元から差し伸べるや、重力操作能力を解放! 指先で宙を捺擦なぞって「領域」を指定すると、橋上一帯を支配下に――先ずは超重力の楔を打ち落とし、兎の爪先を縫い留めた。
「いくらウサギでもこの重力の中を動き回ることは不可能さ」
『く、っ!』
「扨て、焼きウサギになってもらうよ」
 ニクロムの佳顏を照り上げる二度目の耀きは、赫灼たる『反抗の雷裝』。
 脱兎の機動力を奪った彼女は、自身は重力の鎖から解き放たれたように迅速を得ると、妖刀の鋩を差し向けながら駆け上がる――!
「陰謀の暗黑に反抗の光明を!」
『ッ……ッッ!!』
 優位は容易く覆ると彼は云ったが、今がその刻。
 雷霆の駆け巡るような激痛を全身に走らせた兎は、悲鳴すら灼かれて反り返った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラブリー・ラビットクロー
ふーん
アメリカンドリームって言うんだ
そーやってユメを掴もうと頑張るヒト達を欺いて裏でセカイを操ってたんだな
死んでいったヒト達の大切なユメを踏み躙った

らぶはラビットクロー商隊の行商人
ヒトのユメを叶える商人なんな
オマエ達の影で涙を流すヒトを沢山見た
だかららぶは絶対にオマエを許さない

誰もが混乱して
他人事みたいに見てるだけ
でも聞いて
このセカイはコイツみたいな悪い奴に侵略されてるんだ
だかららぶ達も一緒に戦うよ
どんなに相手が強くたって諦めない!
だってそーじゃないと
皆のユメは守れないんだ!!

一緒に戦ってくれるの?
ありがとう!それなら!一緒にアイツをぶっ飛ばそう!
これだけの人数だもん
逃げ道なんて作らせないぞ!



 稲妻に打たれたような激痛に仰け反ったおとこは思う。
 潜伏先を割り出したのは誰だ!? 猟兵か!? 他國の諜報員か!? まさかブラウン編集長か!?
『Sit! 愚民と共に荒唐無稽で不遜な夢を見ていれば良いものを……!』
 鮮血に染まった手で葉巻を吸う。
 かなり深刻な状況だが、紳士然と紫煙をふかす。
 でなければ逃げられもしない!
 橋に集まった猟兵、そして周辺に居る一般人すら「混乱」か「無関心」にさせる事で逃走の機を作ろうとしたスモーキング・ラビットは、然し、眞直ぐ此方へ近付く影に間もなく射止められた。
「ふーん。それがアメリカン・ドリームなんな」
『……惑わされんか……!』
「そーやってユメを摑もうと頑張るヒト達を欺いて、裏でセカイを操ってたんだな」
 斯くして死んでいったヒト達の大切なユメを踏み躙ったのだと――ガスマスクにくぐもる金絲雀の囀聲。
 一縷と搖らがぬ音色を紡いだラブリー・ラビットクロー(人々の夢を追う行商人と人工知能【ビッグマザー】・f26591)は、金属バットを高々と掲げながら周囲に呼び掛けた。
「皆、聞いて。このセカイはコイツみたいな悪い奴に侵略されてるんだ」
 或る者は心を亂し、或る者は他人事の樣に見て過ぎ去るが、それでも彼女は諦めない。
 人心を操るに長けた兎すら「無理だ」と嗤笑を噛み殺す中、ラブリーは矮躯いっぱいに想いを滿たしながら聲を張り上げる。
「らぶは向き合うよ。戰うよ。どんなに相手が強くたって諦めない!」
 彼女はラビットクロー商隊の行商人。
 ヒトのユメを叶える商人。
 目下、逃げを打つ男がどんなに悪辣な手に出ようと、人々の夢を叶えたいと願う想いは、【はじまりの歌ドリームズ・エンボディメント】は、紫煙を颯然と吹き払って一人一人の胸に届く!
「だってそーじゃないと、皆のユメは守れないんだ!!」
 佳聲が一際に澄み渡ったのは、皆々が時を止めて注目したから。
 彼女の想いに勇気と希望を兆した獸人達が、橋の兩端に「命のバリケード」を作り出したなら、ラブリーも今度は行動で示さんとバットを握り込める。これだけの人数が道を塞げば、兎の跳躍力を以てしても超えられまい。
「皆も戰ってくれるの? ありがとう! それなら! 一緒にアイツをぶっ飛ばそう!」
『……ッ、やってくれる……!』
 追い詰められた邪兎が齒切りする中、ラブリーは佳聲を鋭くして、
「オマエ達の影で涙を流すヒトを沢山見た。だかららぶは絶対にオマエを許さない」
 明日に向かって、オマエを打ち上げる――!
 次の瞬間、渾身一揮フルスイングのバットが閃いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シビラ・レーヴェンス
露(f19223)
橋の上で煙兎がこちらへやってくる前に準備を。
まずパフォーマンスで身体機能上昇を行う。
次にリミッター解除の上で封印を解き整える。
全力魔法と属性攻撃付与で【氷凍蔦】を行使だ。

煙兎との戦を露だけに任せてしまうのは危険だな。
なら左手に魔力を溜めつつ煙兎へと突っ込んでいこう。
相手も想定外のはずだから少しは動揺してくれる…か?
私は何の武器も所持していないのだから心を揺らすはず。
そして露のことよりも突撃する私を注視するはずだ。
近づいたら高速詠唱と早業で魔術を行使して脚を捉える。
逃げられては厄介なようだからな。行動を封じる。
露との連携や協力で煙兎をこの橋に留め逃走させない。
煙兎の攻撃は見切りと野生の勘と第六感で回避しよう。


神坂・露
レーちゃん(f14377)
タバコの煙が武器って不思議な力持ってる兎さんね。
どんな兎さんなのか楽しみだわ♪可愛いといいけど。
そんな!?兎さんが可愛くないわ。可愛くないわ!
なんだかマフィアのボスって貫禄十分兎さんだわ!
…むぅ…。耳とかスーツ着てるのは可愛いけど…。

煙が武器って言ってたわね。じゃあ素早く斬るわね。
リミッター解除してから限界突破して兎さんへごー♪
あ。何時もみたいに愛刀二本使うわよ。使うわ~。
ちょっと斬るのには気が引けちゃうけど戦うわね。

え?!急にレーちゃんが兎さんへ突っ込んでいくわ。
…危険だけど何か考えがあるんだろーからあたしも!
あたしも向かって行ったら兎さんも迷うはずよね?
そしたらレーちゃんが攻撃目標になり難くなるわ♪
連携と協力で橋から逃がさないよーにするわよ!



『Damn!! What the fuck!!(畜生、なんて日だ!!)』
 カッキーンと打ち上がるなり大きな放物線を描いた「F.O.N」の首魁『スモーキング・ラビット』は、橋の東端に叩きつけられるなり口穢く吐き棄てる。
 而してその紫煙が吹き払われた一瞬に居合わせた神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)は、期待いっぱいに綻んでいた花顏から、サッと喜色えみを引き上げた。
「そんな!? 兎さんが可愛くないわ! 可愛くないわ!」
『……かわいく、ない……!』
「なんだかマフィアのボスって貫禄十分な兎さんだわ!」
 兎の獸人と前情報を得ていた手前、シルくてバニアなメルヘン兎を想像していたのだろう。かわいそうに。
 目下、眼前にまみえるは、いかにも陰謀論を隱れ蓑に住民を虐殺し、いかにも不死の兵団「オブリビオン・アーミー」を編成する祕密結社のカリスマだと驚愕した露は、もう少し可愛げがあっても良いのに……と佳唇を尖らせた。
「……むぅ。耳とかスーツ着てるのは可愛いけど、ワル味が強いというか……スレた眼光めつきの所爲かしら」
『ッ、本人の前だぞ……少しは遠慮しろ……!』
「慥かタバコの煙が武器って言ってたわね。不思議な力だけど、素早く斬れば良いわね」
『……話を聞かんか……!』
 超大國の巨悪と、おっとりのんびり靑の月長石はどうも嚙み合わず。
 情報操作の手練を相手に(成り行きで)会話の主導権を握った露は、手に馴染む愛刀を二本、靑白い片刃『クレスケンスルーナ』と鮮紅の諸刃『グランドリオン』をスラリと拔くや兎狩りへGO♪ 長さも反りも異なる二刃を煌々と輝かせて襲い掛かった!!
「ちょっと気が引けちゃうけど、いつも通り二刀流で行くわ。行くわ~♪」
『逡巡ないな!?』
 斬るのは躊躇われると柳眉が寄せられたのも一瞬。露は全身全霊の全力全開ッ、爆アゲした身体能力から繰り出る神速の刃撃を嵐のように叩きつける!! ――其は目も醒めるような【女皇の剣舞ダンシング・クィーン】!!
「煙そのものは斬れないとしても。剱風で吹き払うことは出來るわ~」
『……拙い……ッ、……紫煙を絶やすな……!!』
 鈍色の疾風を幾条も紡いで紫煙を搔き消す露に対し、兎は毛皮を刈り取られながらも葉巻を吸う。必死に吸う。
 露がアメリカン・ドリームに酔い痴れるよう、或いは混乱か無関心の感情にして逃走の機を狙うが、つと距離を取って橋の欄干に飛び乗ったおとこは、そこで足が貼り付くような――否、何かが絡みついた感触にヒヤリと時を止めた。

『!! ……脚が、離れない……!!』
素敏すばしっこい兎を捕らえるには、罠猟が剴切だろう」

「レーちゃん!」
煙兎こいつを露だけに任せるのは危険と思ったんだ」
 兎にも角にも逃げんとする兎を捕らえるは、一帯に巡らされた【氷凍蔦ルゲオ・グロル】。
 術者たるシビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)は、獲物が橋にやって來る前から「罠」を――地を這い進む「氷の蔦」を巡らせており、755m直線上に延伸した蔓は更に左右に広がって、錆び付いた欄干を凍結させていたのだ。
 氷に觸れた手がくっつくように、金属に着地した兎の脚が水分と共に凝固する――その一瞬に爪先を彈いたシビラは、左手に膨大な魔力を溜めて進撃ッ! 兎の咽喉を縊らんと手を伸ばした!!
「扨て、これも煙に巻けるか」
『OMG!! 最初から二人掛かりだったか!!』
 想定外の事態に、兎は己の情報不足を悔いたろう。
 暗躍するのは己の十八番だが、其を上回る猟兵の動きに齒切りしたかれは、氷の蔦に脚を取られたにも関わらず、上半身を反らして回避! 紫煙で作った巨拳で欄干を拉げさせ、打点をずらして遣り過ごす。
 この間にも兎の軀からは常に紫煙が放出されているが、シビラの感情は搖らがず――華奢より溢れる魔力をオーラと纏った彼女達は、毒煙を吸い込む事なく敵懷へ突っ込み、その勢を以て「圧」を駆けた。
「逃げられては厄介なようだからな。足を止め、反撃を阻み、行動を封じる」
『精神的な攪乱は効かんか……猟兵め、何處まで俺を知っているッ!』
 普段は沈着な兎が動搖しているのは、全きシビラ(と多分に露)の戰術。
 事前に巡らされていた凍結罠、そして何の武器も所持していない者の突撃に頗る警戒した兎は、次の瞬間、別方向から攻め掛かる露に息を呑んだ。
「え?! 急にレーちゃんが助太刀に……きっと何か思惑があるんだろーから、あたしも!」
『拙い、マズい、不好い!!』
「二人で連携して、橋から逃がさないよーにするわよ!」
 先ずはシビラへの攻撃を絞らせぬ爲。そして脱兎の遁走を防ぐ爲。
 打ち合わせていた訳では無いが、徒手近接攻撃を図るシビラに巧く刃撃を噛み合わせた露は、欄干に追い詰めた獲物めがけて剱を閃々! 王手に掛かる――!!
「ブラウン編集長は祕密結社を止めなくてはと云っていた。今がその刻だ」
『畜生、足がやられた!』
「真実に気付きましたって、報告しないとね~」
『ッ、ッッ――!!』
 シビラが魔術で生成した氷の楔を太腿に突き立てる!
 而して疾ッと噴き出す鮮血めがけ、露が二刃を十字に斬り結ぶ!
 間隙なき連携攻撃を受け取ったスモーキング・ラビットは、X字に裂傷を象って仰け反り――橋の下へ落下する間に紫煙と化す。
 斯くして今際を見送った猟兵には、紫煙を斬った手應えと、眞實に辿り着いた実感が生々しく残されるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年05月05日


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト