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獣人世界大戦⑤〜救難信号発信中!

#獣人戦線 #獣人世界大戦 #第一戦線 #ゾルダートグラード


●m'aider
 イタリア半島、アドリア海沿岸のとある街。
 ゾルダートグラードの占領下にありながらも活気づいていたはずの都市に、刺客が迫る。

 早朝。静まり返った道路を、黒い軍用車両が走り抜けていく。乗車している軍人たちは建物を睨み、忙しなく何かを探していた。
「……秘密警察だ!」
 声を上げたのは、覗き窓から外の様子を眺めていたブタの獣人。
 この街には抵抗勢力となるレジスタンスたちが潜伏している。飛行機乗りはゾルダートグラード空軍に徹底抗戦し、そうでない者は物資供給などで反逆の希望を繋いできた。
 風の噂によると、イタリア中の飛行機乗りたちが一挙に集合し、空軍への反攻作戦を決行しようとしているのだとか。真偽を確かめてから仲間とともに向かおうと考えていたが、後手に回ったらしい。ゾルダートグラードもその情報を嗅ぎつけ、この街に秘密警察を派遣したのだろう。
 このままではレジスタンスは秘密警察に検挙されてしまう。戦場に辿り着く前に捕縛されては、戦っている同志に合わせる顔がない。
 踵を返し、彼は無線通信機の前に座った。素早く打鍵し、信号を発信する。
m'aiderメーデー……!」
 指を離す。救難信号が猟兵たちに届くことを願って。

●グリモアベース
「始まったね」
 集合した猟兵たちを前に、ヴァンダ・エイプリル(世界を化かす仕掛人・f39908)は小さく呟いた。
 獣人世界大戦の勃発。ユーラシア大陸全土を巻き込む戦いへと発展した現状、この戦争は簡単には鎮圧できなくなった。
 俯きがちな目を猟兵たちにまっすぐ向けると、ヴァンダはにっこり笑みを浮かべる。不安に蓋をするような、翳りのある笑顔だ。パンッと手を打ち鳴らして、ヴァンダは「早速だけど」と話し始めた。
「みんなに向かってほしい場所があってね。イタリアにある海沿いの街なんだけど……」
 指を鳴らして地図を出現させ、それを広げながら彼女は説明する。
 レジスタンスたちが隠れ住む街にゾルダートグラードの秘密警察が派遣された。アドリア海上空で激戦を繰り広げるレジスタンス空軍に追加戦力が投入されないよう、根っこから刈り取ろうとしているのだという。
「実際、ここでレジスタンスが捕まると戦力としても痛手らしくて……だから、秘密警察に見つからないように逃げるのを手伝ってあげてほしいんだ」
 街中には大量の秘密警察がうろついている。監視の目をかいくぐり、アジトから街の外への逃走を支援するのが今回の任務だ。
 しかし、レジスタンスたちがどこをアジトにしているかはこちらも知らない。知られないように作られているのがアジトだから仕方ないのだが、監視されている状態でアジトを探すのも難しいはず。
 その問いに対し、ヴァンダは「いい質問だね」と機嫌良く答えた。
「実は、街には暗号が隠されててね。例えばお店の看板やポスター、店員さんの話し言葉もアジトを示すメッセージになってるんだって。それに非常時だから、秘密警察の到着に気付いた兵士さんは無線通信やライトの点滅でこっちに居場所を知らせてるみたい」
 街に隠された暗号を解読すれば、それぞれのアジトに辿り着けるだろう。自ら信号を発信している者もいるようなので、知識や技術があればその捜索を試みてもいいかもしれない。
 ただし、注意事項が一つ。
「あ、もちろんヴァンちゃんたちもバレちゃダメですよ。秘密警察は猟兵も検挙しようとしてるみたいなんで。倒すのは余裕かもしれないけど……そのあと街にどんな影響が出るかわかんないし」
 つまり、敵の知らぬ間にすべてを終わらせる必要がある。
 気が引き締まったところで、ヴァンダは普段の緩い表情を覗かせた。
「ま、いつも通りちゃちゃっとやってきてよ! この戦争も、まだまだ始まったばっかりなんだから!」
 ケタケタ笑い、グリモアを上へ放り投げる。
「頼んだよ」
 彼女の声が届くと同時に、転移は始まるのだった。


堀戸珈琲
 どうも、堀戸珈琲です。
 暗号系の謎解きゲームは苦手です。

●シナリオフレームについて
 このシナリオは戦争シナリオであり、1フラグメントで完結します。

●最終目的・プレイングボーナス
 レジスタンスに危機を知らせ、逃走を支援する。
 また、このシナリオフレームには、下記の特別な「プレイングボーナス」があります。

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 プレイングボーナス……秘密警察に気付かれないようレジスタンスを助ける。
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●プレイング受付について
 オープニング公開後から受け付けます。
 完結優先となるため、内容に問題がないプレイングも却下される可能性があります。

 それでは、みなさまのプレイングをお待ちしています。
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第1章 冒険 『暗号を解読せよ』

POW   :    身体を張って解読

SPD   :    テクノロジーを駆使して解読

WIZ   :    魔法を駆使して解読

👑7
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天羽々斬・布都乃
「暗号ですか。それならば未来視ですぐに解決ですね」
『待つのじゃ布都乃。いくら未来視でも「布都乃が暗号を解読した未来」が存在せねば視ることはできぬぞ』

式神のいなりの言葉に慌てて未来視を発動しますが――
私がアジトにたどり着く未来が視えません!?

「ど、どうしましょう、いなり!?」
『いつも未来視に頼っておるからこうなるのじゃ。
――先日の特急の事件でも言うたじゃろう?』

し、仕方ありません。
未来視で秘密警察の監視をかいくぐり、地道に暗号解読を試みます。

「いなりー、私、暗号とかさっぱりなんですよーっ」
『やれやれ、仕方ないのう。知恵を貸してやるかの。
帰ったら修行に加えて勉強も増やさねばならんな』
「そんなぁ」




 黒い軍服を着た獣人の集団が目の前を歩いていく。
 狭い路地で彼らをやり過ごしてから、天羽々斬・布都乃(未来視の力を持つ陰陽師・f40613)は右目に手を添えた。
「本当に秘密警察が街中に……アジトも隠されているときましたか。でも暗号があるなら、未来視ですぐに解決——」
『待つのじゃ布都乃』
 右目に力を籠めようとした瞬間、足元に座る子狐・いなりに引き留められた。
『いくら未来視でも「布都乃が暗号を解読した未来」が存在せねば視ることはできぬぞ』
「まさかそんな……何にしても辿り着ければいいんですよ! 見ててください!」
 瞳が金色に輝き、布都乃の頭に未来が流れ込む。自分が暗号を解けるかと聞かれると、正直不安ではある。だからこそ未来の自分が何とかしてくれるはず!
 希望を託し、未来の映像を眺め続ける。秘密警察を巧みにかいくぐり、街をうろうろ彷徨って、同じ場所をぐるぐるぐるぐる……。
「アジトに全然辿り着かない!?」
 やがて「うわーっ」と頭を抱え、当てずっぽうに走り始めた。そこで未来の映像が途切れる。失敗を直視させられて、未来の自分がしたように布都乃も頭を抱えた。
「ど、どうしましょう、いなり!?」
『ほれみたことか。いつも未来視に頼っておるからこうなるのじゃ。——先日の特急の事件でも言うたじゃろう?』
「ぐ……!」
 耳の痛い指摘だ。あの寝台特急での苦い記憶が脳裏にちらつく。あのときは未来視そのものを封じられて窮地に陥ったが、今回は本来の自分では超えられない壁にぶつかっている。
「こうなったら……地道に暗号を解くしかないですね」
『うむ、その意気じゃ』
 路地を出て大通りへ。向かってくる秘密警察を未来視で察知しては隠れ、順調に通りを進む。看板やポスターを確認して回るが……。
「何もわからない……! いなりー、私、暗号とかさっぱりなんですよーっ!」
『やれやれ、仕方ないのう。知恵を貸してやるかの』
 根を上げて助けを求める布都乃にため息をつきながら、ある店の看板をいなりは前足で示した。
『あの店の看板、端に線が入っとるじゃろ。この通りの他の看板やポスターの中にも、同じ線が描かれとるものがある。その頭文字を並び変えれば——』
 前足を、今度は別の店へ向ける。
『あの店の名前になるのじゃ』
「すごい……! でも、どうやって?」
『注意力の問題じゃな。これでも伊達に生きておらんからのう。ほれ、ゆくぞ』
 ふん、と得意気ないなりを追いかけ、布都乃は店に入る。猟兵と伝えると店員は奥の扉へと布都乃たちを通し、無事アジトに辿り着くことができた。
 レジスタンスに秘密警察の存在を知らせ、ひと段落。逃走についても未来視で経路を割り出せばいい。
「ひとまず、どうにかなりましたね……」
『じゃが、この程度は自力でどうにかしてほしいのう。帰ったら、修行に加えて勉強も増やさねばならんな』
「……そんなぁ」
 笑ういなりの傍ら、布都乃は肩を落とすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

家綿・衣更着
アドリブ歓迎◎

獣人の皆さんをお助けっす!

秘密警察に捕捉されないよう【化術】で街の住民に【変装】【演技】
危ない時は敵を化術で関係ない所に【おびき寄せ】て進む

要は町中の違和感を辿ればいいっすね?

看板やポスターの矢印や数字で距離や方角を、店の客引き発言中の単語からどんな建物かを示してると推測し、スマホに保存した地図と照合
アジトに使えそうな大型の建物を探し、忍者ゴーグルで光を探す

「どーも、衣更着と申しまっす。助けに来ましたっす(小声)」

レジスタンス達は可能ならUC『収納鏡』で、無理なら朧車“家伊賀”を化術で配送トラックに偽装して【運搬】
道中はUC『あやかしメダル「打綿狸の衣更着」』の【結界術】で護衛




 会話を交わしながら、黒い服を着た警官たちが通りを抜けていった。
 店頭に置かれた棚から目を離し、一人の獣人がその後ろ姿を眺める。
「……うん。上手く化けれてるみたいっすね」
 ストールに顔を埋め、家綿・衣更着(綿狸忍者・f28451)は呟く。
 普段の忍び装束から洋服に、化術で衣装を変化。狸の耳と尻尾はそのままだが、この世界ではさして違和感もない。結果として、街の住人の中に自然と溶け込めていた。
「獣人の皆さんをお助けっす! できるだけ早く、アジトを見つけてあげないとっすね」
 去っていった秘密警察を追うように歩き出し、途中で角を曲がる。これであの一団は撒けたはず。
 あとはどうすればアジトを見つけられるかが問題だ。
「ようは、街中の違和感を辿ればいいっすね? ……こういう謎解きは、ゲームでもやったことあるんすよね」
 目を輝かせ、衣更着はあちこちに視線を飛ばす。
 まず目についたのが看板。このエリアに入った途端、店の場所を示す矢印がやたらと目に入るようになった。それだけでは何ともいえなかったが、ふと矢印の近くに数字の描かれたポスターを見つけ、衣更着は立ち止まった。
「これ……方向と距離っすね。このまま追いかければ……!」
 矢印が示した通りに歩いていくが、途中で看板は途切れてしまった。店が取り囲む商店通りの一角で、衣更着は悩む。
「うーん、この辺りだと思うんすけど……」
「兄ちゃん、何か探し物かい?」
 考え込んでいると、八百屋の店員から声をかけられた。買い物客だと思われたのだろう。
「うちには何でもあるよ! 近くの貿易商社から直卸だからね! これで病気にも打ち勝つってね!」
「あはは……それはすごいっすけど——」
 苦笑いをしていた衣更着がふと気付く。客引きの言葉にしては少しおかしい。
 その瞬間、店員の視線が動いた。通りに立つ秘密警察を確認する仕草だと、衣更着にも伝わった。協力者だ。
「……ありがとうございますっす!」
 彼に礼をして、衣更着は再び歩き出す。スマホを起動し、保存した地図で大型の建物を照合。そこに貿易商社の情報を重ねる。貿易関係の倉庫がいくつかあった。
 倉庫の近くまで移動し、忍者ゴーグルを手に手がかりを探す。
 一つの倉庫の窓で、昼なのにライトがチカチカ点滅している。
 見つけた。不自然にならぬよう駆け寄り、倉庫のドアを小さくノック。
「どーも、衣更着と申しまっす。助けに来ましたっす」
 小声で呼びかけ、ドアが開く。
 中に控えていた何十人かの兵士が、一斉に衣更着を見た。
「猟兵か、助かった……それで、逃走手段は?」
「用意してるっすよ。その前に、これを付けてほしいっす」
 そう言って衣更着はメダルを取り出す。メダルにはまるっとした狸が描かれていた。
「……なんだこりゃ?」
「トモダチを守る魔除けみたいなものっす。ほらほら、ペタリペタリっす!」
 怪訝そうにするレジスタンスへ順番に、衣更着はメダルを貼っていく。実際、効果は絶大。悪意を持つ者から身を守る結界が展開されるのだ。

「準備はいいっすね、家伊賀!」
 衣更着の声で配送トラックが揺れる。衣更着とともに乗り込んだ獣人らは内部の快適さに困惑しながらも、ほっと安堵していた。トラックに化けた家伊賀なら、メダルの効果もあって検問も楽に突破できるだろう。
「それじゃ、出発っす!」
 トラックが動き出し、目的地に向かって衣更着たちは旅立つのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エドゥアルト・ルーデル
かくれんぼの時間だオラァ!

連絡する役拙者じゃなくてもよくね?って事で現地協力者を見つけました、知らない人でござる…誰こいつ?誰!?ねぇ…誰なの?怖いよぉ!
とにかくこの極めて発見され難い知らない人なら秘密警察にバレず大胆に街を歩きながらアジトに潜入できる訳だ!なんなんだよこいつ!

後はアジトがどこかでござるがまあ拙者が探せば良かろう
こういうのは濃い場所にあるんでござるよ、人の動きやら目印やらが多い場所でござる
秘密警察の集まりもいいね、目星付けて探してる訳でござるからね
こういう事象の濃い場所を空からUAVなりで目視、熱探知で探せば一ヵ所に留まりつつ動きの激しい建物が見つかりますぞ
だいたいそこでござる




「かくれんぼの時間だオラァ!」
 見晴らしのいい建物の屋上で、エドゥアルト・ルーデル(黒髭・f10354)が叫ぶ。
 改めて街を一望。それなりに広い街のあちこちに、秘密警察らしき人影が点在している。
「街、デカ過ぎんだろ……歩き回るだけでもリスクでござる。連絡する役拙者じゃなくてもよくね? ってことで現地協力者を見つけました」
 誰に紹介するでもなく、エドゥアルトは振り返った。
「知らない人でござる」
 誰?
「……誰こいつ? 誰!? ねぇ……誰なの? 怖いよぉ!」
 連れてきたはずのエドゥアルトすらビビり散らかしていた。
 まず全体的にぬぼっとしている。獣人なのはわかるのだが、全部の動物の特徴を足して引いて掛けて割ったような風貌なので動物種が全然わからない。それがぬぼっとエドゥアルトの指示を待っている。
 本当に誰? っていうか何?
「名乗ってさえくれないのが普通に怖いんでござるが……ぱっと見の特徴が掴めないから目立ちづらく、それ故に秘密警察にもバレないで大胆に街を歩くことができ、余裕でレジスタンスのアジトに辿り着けるそうでござる。なんなんだよこいつ!」
 思いきりツッコんでも微動だにしない知らない人。
 一旦無視して、エドゥアルトは無人航空機であるUAVを起動。飛び立つ無人機を見送って、付随する端末を覗き込んだ。
「アジトは拙者が探すでござる。こういうのは濃い場所にあるんでござるよ」
 UAVを操縦し、上空からの観察に徹する。
 まず、人の動きが多い場所。木を隠すなら森の中というのなら、人の隠れ家だって流動の激しい場所にあるのが鉄則だ。
 次に目印。仲間だけに所在を知らせる目印が周辺には散りばめられているはず。UAVでしばらく旋回していると、奇妙な記号が特定のエリアに見受けられた。
 同時に目に留まったのが秘密警察たち。
「秘密警察の集まりもいいね、目星付けて探してるわけでござるからね。だが無意味だ」
 直感で嗅ぎつけたらしき秘密警察の真上で、UAVを熱探知モードに切り替える。周辺の建物を順々に巡らせれば——。
「ビンゴ」
 一ヵ所に留まりながらも、人の動きが激しい建物を発見。
「行け! 知らない人!」
 満を持して、エドゥアルトは知らない人に指示を飛ばす。命を受け、知らない人はのそのそ歩いていった。
 大通りに出ると、知らない人はすぐ人混みに溶け込んでしまった。抜けているのかわざわざ秘密警察の目の前を通り、秘密警察も知らない人をスルー。
 邪魔されることなく、知らない人はアジトに辿り着いた。
「なんで?」
 UAVで一部始終を見ていたエドゥアルトが呟く。通達を受けてレジスタンスは逃走の用意を始め、裏に停車していた車両で場を去った。一件落着だが、秘密警察から一切怪しまれない知らない人が別の意味で怖くなってきた。
「まぁいいでござるか……もう会うこともないでござろうし」
 自分も撤収の準備に取りかかろうと振り向く。
 知らない人がもう戻ってきていた。
「早っ!? 何なんだお前!?」
 結局、誰なのかは最後までわからなかったそうです。

大成功 🔵​🔵​🔵​

遠藤・修司
レジスタンスのアジト探しと避難誘導か
僕は戦闘に向いてないから、戦わずに済むならそれが一番だよ

まず他の“僕”に式神を放ってもらって、空と地上から情報を集めようか
式神にスマホをくくりつけて、街の様子をカメラで撮影する
アジトの情報>安全な脱出ルート>秘密警察の動きの順に短時間で効率的に調べるよ

式神と並行して、こちらも動いておく
できればこの街の地図が欲しいね
なければ写真を元に簡単なものを作っておく

【UC使用】して、“僕”達で送られてきた情報を【解読】しよう
レジスタンスのアジトが分かれば、脱出ルートを地図に書き込み、式神を送って渡すよ

後は万が一の時に備えて、彼らを援護できる場所にいるくらいかな




 日差しは眩しく、地中海特有の温暖な気候を肌に感じる。
 活気に満ちた街には秘密警察の姿がちらほら。不穏な気配の迫る都市を建物の屋上から眺め、遠藤・修司(ヒヤデスの窓・f42930)はため息をつく。
「レジスタンスのアジト探しと避難誘導か。無駄な戦闘は回避できるかな。戦わずに済むならそれが一番だ」
 戦闘は得意ではない。元々自分は一般人だ。それでも大義も果たせぬまま反逆の芽が摘まれるのは、修司としても本意ではなかった。
「生憎、そこまで勇猛果敢ではないからね……だから、できることをやらせてもらうよ」
 暗い表情のまま、修司はガラスの破片を手に取った。
 アーティファクト【ヒヤデスの窓】。異世界と接続し複製を映し出す、異界に通じる窓の欠片。
 曇りを拭い、覗き込む。ガラスに修司の姿が反射する。当然瓜二つだが、ガラスの中の自分は微かに微笑んでいた。
「頼んだよ、“僕”」
 窓をくぐり抜けるように風が吹き、烏と猫が喚び出される。猫を撫でる修司の上を飛ぶ烏は異形——八咫烏を模していた。他世界の自分が放つ式神だとわかっていながらも、その姿には若干の畏怖を覚える。
 八咫烏が肩に止まったところで、修司は情報収集の用意を始めた。
「窮屈かもしれないが、あとは任せた」
 猫と八咫烏にそれぞれスマートフォンを括りつけ、解き放つ。猫は建物を飛び移って駆けていき、八咫烏は街の空へと繰り出した。シャッターは連続して切られ、撮影された画像は修司の手元にある端末にも共有される。
「それじゃ、取り掛かろうか。“僕”、用意はいいかい」
 事前に購入しておいた街の地図を広げ、ペンを握る。傍らに置いたスマホには、空と地上の二視点から撮られた写真が飛び込んできた。
 街のあらゆる景色が続々と送られてくる。映り込んだ店や道の角度から地図と写真を照合し、地図だけでは見えてこない情報が集積されていく。
「始めよう。まずはアジトの場所が知りたい。その次に安全な脱出ルート、合わせて秘密警察の動きも把握しておきたいな」
 窓に呼びかけると、複数の像が向こう側で揺らめく。
 この記号は抵抗を意味する。この落書きは特定の施設を暗示する文言だ。立ち位置から察して警官たちはこう動く。逃げおおせるならこの通りは死角だ——。
 複数の自分から発される分析を、修司は漏らさず地図に書き込む。雑多なようで、情報は整合性を獲得していく。アジトの特定は完了し、同時にそこからの脱出経路を示した地図が出来上がった。
「……完成だ」
 式神を呼び戻し、スマホを回収。その代わりに今度は地図を脚に括りつけ、八咫烏をアジトに向けて飛ばす。秘密警察の位置も書かれているから、ひとまずは従ってくれるだろう。
「これで仕事は終わり。万が一に備えて、援護できる場所に立っておこうか」
 ヒヤデスの窓を仕舞い、修司もアジトの方向へ向かう。ポケットに手を突っ込み、片手で頭の後ろを掻いた。
「できれば、何も起きないでほしいな」
 その願い通り、レジスタンスは無事街を抜け出したという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イコル・アダマンティウム
「こそこそ」
……ん、大丈夫
生身で隠れていく、よ

【ステルスパルクール】
秘密警察にばれないように
街並みの屋根の上を道から死角になるように走ってお店を回る、ね
<足場習熟><ダッシュ><ジャンプ><忍び足>

【情報収集:お店】
「ね、パン6つ……欲しい、な」
「次は……アジ、お勧めのお店ある?」
「ん、あっち?」
お店を回りながら情報収集
『場所を教えてほしい』って旨を伝え続けメッセージを探す、ね
ライトの点滅とかを気を付けて走る、よ
<見切り>

【脱出】
「ん、秘密警察が着てる。」
アジトに到着したら脱出支援
「僕が抱える……空から逃げる、よ」
[使用UC:空中戦闘<天路走破>]
多段ジャンプで、街の外とアジトを往復する、ね




 赤い長髪をなびかせ、少女が屋根の上を駆る。
 建物の途切れ目で踏み切り、飛び移った。速度は落とさないまま、一切の音を立てずに走り続ける。
 目的のエリア周辺に到着すると、しなやかに地面へと降り立った。
「……こそこそ」
 秘密警察の動きを観察してから、イコル・アダマンティウム(ノーバレッツ・f30109)は通りへ出る。
 キャバリア乗りの彼女だが、今回の任務は生身での遂行。秘密警察の死角となる屋根をパルクールで移動し、方々で情報を収集する算段だ。
 目星を付けたベーカリーの扉を押し開け、カウンターへ。
「ね、パン6つ……欲しい、な」
「パン6つ! 毎度ォ!」
 オーダー通り、獣人の店員が紙袋にパンを詰めていく。その様子を、イコルが後ろからじーっと眺めていた。
「ねね、お菓子が買えるお店、どこかにある?」
「もちろんあるよ!」
「いいお店の場所、教えてくれない?」
「応よ!」
 場所を教わり、紙袋を受け取ってそのまま静かに店を出た。
「……これはこれで」
 ぱくりとパンを口にくわえる。もぐもぐと食べ進めつつ、壁を蹴って再び屋根へ。
 煙突の穴や凹凸を身軽に飛び越え、道を走るより速いスピードで次の店に到着。
 何件か店を回って買い物を続け、不発に終わってもめげずに「場所を教えてほしい」というメッセージを伝え続ける。

「次は……アジ、お勧めのお店ある?」
「アジかぁ……いろいろ店を探してるのかい?」
 青果店の主人に質問を投げかけると、逆に向こうから尋ね返された。
 少し考えてから、イコルは返答する。
「届け物、したくて」
「プレゼントか。それは感心だね」
「うん、この街で頑張ってる、人たちに向けて」
「……なるほどねぇ」
 踏み込んだという自覚はありながらも、主人の反応を待つ。彼はイコルを一瞥し、視線を外して話し出す。
「アジなんかの海産物だと、港にある市場がいい。灯台の近くにいい店があったかな……」
「ん、あっち?」
「そうそう、その方角だよ」
 イコルの指さした方を見て主人は頷く。示すような仕草に、イコルは頭を下げた。
「ありがと」
 店を出て屋根に上り、灯台を目指して走り出す。アジトを暗示するような情報を掴んだことでより速度を上げ、通りと通りの間も一気に跳んで移動する。
 灯台近くとは言われたが、それでも建物はたくさんある。発される信号を見落とさないように気を張る中、視界の端で何かが光った。
「……ライト?」
 港付近の建物の窓で、光が細かく点滅する。進行方向を変え、確信を持って接近。屋上に飛び乗ってぶら下がり、コンコンと窓を叩く。
「君たち、レジスタンス?」
 中にいる獣人たちは面食らったものの、黙って首肯を返してきた。開けてもらった窓からアジトに入り、イコルは彼らに顔を向けた。
「ん、秘密警察が来てる。知ってる、よね?」
「あぁ、けど脱出方法がなくて……」
「僕が抱える……空から逃げる、よ」
「へっ?」
 部屋にいる人数を数えて頷くと、問答無用で一人をひょいっと抱え上げた。窓の縁に立ち、大きく足を開いて空に繰り出す。
「うわあああっ!?」
「落ちないから、静かに」
 片手の人差し指を口に添え、連続で空を蹴って進んでいく。
 このまま最短経路で街の外まで。それを何往復かすれば全員逃がせるだろう。
「慣れてない? 空、飛ぶの」
「飛んだことはあるけど走るのはあんまり……」
 慌てる獣人と会話しながら、イコルは空を往く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

秋月・信子
●WIZ

街中の至る所に暗号…ですか
(こう言うのって、さりげない日常に溶け込ませたのが多いのよね)

『影の助言者』
私の影がグリモアを宿して意思を形成している存在に語りかけながら捜索をしていきます

…で、姉さんはどう思いますか?
(そうね…仕草かしら?特定の仕草に対して、特定の仕草で返す奴。私が影からあんたの姿を模して顕現あいた時にやってるような感じによ)

それと何やら暗号のような電波もROSEETAで傍受できていますね
(上出来じゃない。時間は掛かるでしょうけど【解読】を試みてみましょ。信子は些細な事でも良いから私に報告しなさい。こっちで情報を纏めて指示を送るわ)

それと拳銃での射撃は…最後の手段としますね




 秘密警察が通りを歩くのを、細い路地に隠れて見送る。
 壁に背を預けていた秋月・信子(魔弾の射手フリーシューター・f00732)は、腰のポーチから手を外した。交戦は避けたいが、気は抜けない。
「配置されてる人数が思ったより多いですね……」
『そりゃそうよ。相手も躍起になってるんだから』
 地面に伸びる影が信子に呼応する。警戒は緩めず、手に握った端末——ROSEETAに目を落とす。
「先ほどからROSEETAで信号を傍受しています。何かの暗号のような電波ですね」
『上出来じゃない。時間はかかるでしょうけど、解析を試みるわ』
「ありがとうございます、姉さん。……しかし、発信源の見当がまったくつかないんですよね。この街なのは間違いないんですが」
『それが街に溶け込ませた暗号っていうのに繋がってくるんじゃないかしら』
 影の返答を聞き、信子は顎に手を添えた。
「暗号っていってもたくさんありますよね。姉さんなら、何を媒体にします?」
『そうね。私が仕掛けるなら、仕草かしら?』
 想像できず首を傾げた信子に、影が「例えば」と説明する。
『特定の仕草に対して、特定の仕草で返す奴。私が影からあんたの姿を模して顕現するときにやってるような感じの。とにかく、信子は些細なことでもいいから私に報告しなさい。こっちで情報を纏めて指示を送るわ』
「わかりました。隠れながら探ってみます」
 路地から表通りへ。両脇に商店が並び、通りは人で賑わっている。怪しまれないように歩きながら、店頭に立つ人物らを観察。
 特に変わったところはないように見えたが……ある店の前にいる獣人を見て、信子は足を止めた。
「姉さん、あの人……」
『あの座っているシカね。どうかした?』
「なんとなくですけど……何かを待っているみたいで」
 信子の興味を引いたのは、店前に置かれた椅子に座る階梯4ほどのクマ獣人。視線が宙を彷徨っている。店番をしているとも取れるが、客引きをするような気配がない。
 そこにシカの獣人が近づいていく。雑談を始め、その中でボディランゲージが混ざり始める。グラスを傾けるようなクマの仕草に対し、グラスを揺らすような仕草をシカは返した。それからシカは店の奥へと通されていった。
「うーん、やっぱりただお酒好きの人たちのやり取りかも……」
『待って信子。信号の解読が終わったわ。内容は——』
 ——酒を酌み交わす者こそ同志哉。
 意味深だが、酒好きの会話にしか聞こえないメッセージでもある。
 苦笑いして、信子は指で頬を掻いた。
「あはは……これだけ聞いたら何のことかわかりませんね」
『だからこそ、符合にする意味があるんじゃない? 行ってみましょ』
 その言葉に頷いて、信子はクマ獣人へと近寄った。
 知らない顔を見て睨みをきかせるクマに向け、グラスを持つように手を掲げる。
「猟兵です。今起きていることについて助けになりたくて……通してもらえませんか?」
 意図を理解して接近した相手だと察したか、クマは信子に道を譲った。
 扉を開け、アジトの内部へ。レジスタンスが視線を返すが、信子は臆せず言葉を発する。
「秘密警察が付近を捜索しています。私が脱出を手引きしますので、続いてください」
『ルートについては分析済み。信子、頼んだわよ』
 影に従い、信子は脱出作戦を成功させるのだった。


 無事、レジスタンスは秘密警察のうろつく街から脱出。
 人員は戦力となって、戦争を獣人たちの優位な状況へと導くだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年05月05日


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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト