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パンと崖下とバラバラの英雄たち

#アックス&ウィザーズ #群竜大陸 #勇者 #勇者の伝説探索


「何だよこのパン。防具を模ってるっぽいけど、形がバラバラじゃねぇか」
 とあるパン屋の軒先、カゴに盛られた左右非対称な手甲型のパンを見つけて客の男が指摘すれば、店主は笑う。それはこの辺りに伝わる言い伝えを元にしたモノだからですよと。
「へぇ、三人の英雄がそんな化け物をねぇ」
「ええ。後に勇者と呼ばれた方々は――」
 我がことの様に得意げな店主の語りはパンを焦がして妻にどやしつけられるまで続いたのだった。

「みなさん、聞いて貰えますか?」
 グリモアベースの一角、周囲に居た猟兵たちにフェリクス・フォルクエイン(人間のパラディン・f00171)は声をかけた。
「アックス&ウィザーズの世界には、かつて群竜大陸に渡ったという勇者たちの伝説が残っているそうなんですが」
 その一つを見つけ調べてきてほしいんですとグリモア猟兵の男の娘もとい少年は言う。
「この群竜大陸ですが、帝竜ヴァルギリオスと共に蘇ったと噂されているものの、所在が明らかではありません。もし帝竜ヴァルギリオスがこの世界のオブリビオン・フォーミュラであったとするなら――」
 大陸の発見は必須と言うことだ。
「勇者の数は数千人を超えていると言われますし、あちこちに伝説も残っている様なんですけど、みなさんに見つけて調べてきてもらうのもそう言った伝説の一つとなります」
 パンで有名な街の近くにある深い崖。その下に一つの伝説があるという。
「とは言っても僕が皆さんに伝えられるのは大まかにその崖下にあるんじゃないか程度の情報ですので」
 猟兵たちはまずそのパンで有名な街とやらに赴き、情報を集める必要がある訳だ。その後は得た情報を頼りに崖下に降り、伝説を確認することとなるだろう。
「こうして伝説の一つ一つを解き明かしてゆけば、それがやがて群竜大陸に関する有力な予知につながるかもしれません。ですから」
 ご協力をよろしくお願いしますねとフェリクスは猟兵たちに頭を下げた。


聖山 葵
 勇者の伝説ってロマンですよね?

 と言う訳で、今回はそんな伝説の一つを調べてみようというお話となります。

 伝説の調査となると危険はつきもの。ひょっとしたら問題の場所には何かが潜んでいるかもしれませんので、お気をつけて。

 では、ご参加お待ちしておりますね。
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第1章 日常 『噂のパン屋通り』

POW   :    色んなパンを沢山買い込んで家で楽しむ

SPD   :    ゆっくりパン屋通りを楽しみながら食べ歩き

WIZ   :    パンモチーフの雑貨やキッチン道具のお買い物

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ハルツ・ノウゼン
【SPD】
ぼくの故郷がある(あった)世界だけど、猟兵になるまで村から出たことなかったんだ。だからこんな町があるなんて初めて知ったよ!えへへっ何か楽しいね!
せっかくだから色んなパン買って、故郷の仲間たちにも食べさせてあげたいなー……おっちゃんおっちゃん!ここのパン、一個ずつぜーんぶちょうだい!あぁ、ぼくなら大丈夫!なんなら、おっちゃんよりも力持ちだと思うよ?なんたってぼくはドワーフだからね!(ドヤ顔)
それに、持ちきれなくなったら【箱】(UC)に入れておくから平気さ!

……あっ、そうだ!ねえねえ、おっちゃん!ここら辺に勇者の伝説が残ってるって聞いたんだけど、ほんと?教えて教えて!


ガドゥッフ・ルゲイエ
【心情】
 こういうときだからこそ、のんびりと行きたいものだな。
(他PCとの絡みはOKです)
【行動】
「ゆっくりパン屋通りを楽しみながら食べ歩き」に参加します。
 何もかもが珍しい風景なのであちこちふらふらして、眺めては店主の話をいます。
 珍しがられたら、子供たちとかとも遊ぼうと思います。
 手のひらからちょっと水をちょっと出したりしてみようと思います。
 あとは買ったパンをのんびり食べながら行こうと思います。



「こんな街があるなんて初めて知ったよ! あ、あそこは何のお店かな?」
 物珍し気にキョロキョロしつつはしゃぐハルツ・ノウゼン(ぅゎ、ドワーフっょぃ・f13678)を眺め、ガドゥッフ・ルゲイエ(キマイラのスクラップビルダー・f01628)は口元を綻ばせる。ハルツからすれば同じ世界の出身でも猟兵になるまで村から出たことが無かったが故に街の景色が目新しく映るようだったが、ガドゥッフからすればそこは自らの居た世界とは全くの別世界なのだ。倍以上の身長差があるとは言え、珍しさからくる好奇心が手招きされているという点においては、どちらも同じだった。
「えへへっ何か楽しいね!」
「そうだな……ん?」
 ただ歩くだけでも発見があり、嬉しそうなハルツに同意をしたガドゥッフが不意に足を止める。
「どうかした?」
「いや、匂いがな」
 振り返るハルツに答えてガドゥッフが視線を向けた先には、木でできた巨大なパンを軒先にぶら下げた建物が香ばしい匂いを垂れ流していた。
「わぁ、パン屋だ。せっかくだから色んなパン買って、故郷の仲間たちにも食べさせてあげたいなー……」
 看板なのであろうソレを見上げたハルツはそのまま店の戸口をくぐり抜け。
「おっちゃんおっちゃん!」
「おう、いらっしゃ――」
「ここのパン、一個ずつぜーんぶちょうだい!」
 ハルツの姿を認めた店主らしき男性の言葉が終わるよりも早く、棚を指さして告げた言葉にえっと声を漏らした男性は目を白黒させ。
「あぁ、ぼくなら大丈夫! なんなら、おっちゃんよりも力持ちだと思うよ? なんたってぼくはドワーフだからね!」
 更に何か言われるよりも早く得意げに言ってのけたハルツが、無事パンを購入できたのは、店主が我に返った後のこと。持ちきれなくなったら箱に入れておくから平気と言う言もあったからか、大丈夫かいと一応問いはしながらであったもののハルツの欲したパンを全て渡し。
「……あっ、そうだ! ねえねえ、おっちゃん! ここら辺に勇者の伝説が残ってるって聞いたんだけど、ほんと? 教えて教えて!」
「勇者の伝説? あぁ、それなら――」
 パンに気をとられていたハルツが顔を上げまくしたてるように聞くと、パンを買って貰って口の軽くなった店主は話し始めた。勇者となった三人の英雄の物語を。要約するなら近くの谷底に潜んで人々を困らせていた魔物を三人の若者が苦戦の末やっつけたという話であり。
「伝説にちなんだパンを売ってるジョーンズの方が詳しいだろうからな。もっと知りたきゃそっちを当たってみると良い」
「そうなんだ! ありがとうおっちゃん!」
 助言まで付け加えた店主に礼を言うとハルツは礼を言って店を後にし。
「ありがとうございましたー」
「ジョーンズ、か」
 店主の声に送りハルツが送り出されるところまでを目撃していたガドゥッフは店主が口にした名を反芻しつつ歩き出す。
(「こういうときだからこそ、のんびりと行きたいものだな」)
 手がかりらしきものは手に入ったが、視界の中は珍しいものにあふれている。
「ジョーンズと言う名のパン屋を知らないか?」
 ふらふらとあちこちを歩きながら、たまたま見かけた街の人に尋ね。
「あー、そりゃもっと奥の店だよ。けど、パンだったらうちにもあるし、買ってゆくかい?」
 立ち寄ったパン屋では人違いと言われつつもパンを勧められ。
「わぁ、おっきー」
「変わった格好だね。おにーさん、他所の人?」
「ああ。だから……こういうこともできる」
 好奇心いっぱいに声をかけて来た子供に頷くと、ガドゥッフはパンを持たない方の手で手のひらから水を出して見せた。
「うわっ」
「すごーい」
 おそらくは手品か何かと思ったのであろう。子供たちは顔を輝かせて拍手し。
「そうか、この先か」
「そう。鎧のパンを売ってるからお店に入ればすぐわかるよ」
 些細なふれあいの後、店の場所を教えられて軽く礼を言い、再び歩き出す。
「……良い街だな」
 この分なら必要な情報が集まるのも時間の問題であろう。だが、まだこの時間を楽しみたくてガドゥッフは持っていたパンを口元に運ぶのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

霧城・ちさ
伝説になるくらいであればお土産とか商品になっている可能性はありますわね。パンに関連したものを色々見て楽しみながら買い集めてみますわね
買い物をしながらこの街に伝わるお話を聞いてみたり調べられる場所であれば見に行って確認しますの
よく話題になる場所や物があれば地図にまとめて確認しやすくしますの
他の猟兵の方々とも情報を共有したり手分けできるものがあれば協力しますわね


シュデラ・テノーフォン
魔竜も勇者も好きな響きだけど
先ずはパン屋を冒険なんだ
まァいいさ、美味しいモン食べるの好きだから

じゃ色々聞いてこうか
基本は街のパンを食べに来た程で
何店か回りその店の味も褒めつつ
街で一番古いパン屋は何処かなと尋ねる
辿り着いたら今度はその店で年配の常連達に接触しようか
この条件なら伝説に詳しい人居そうだと思ってね

今日はと笑顔で近寄り
俺この店初めてで、常連さん目線でお勧めって何ですかとか
最初は当たり障り無いとこから
徐々に街の事聞いて、そう言えば伝説もあるとかで本題に
何人かに聞いた後は店の人へ
何れも美味しそうで、常連さんに沢山慕われていて
素敵な店ですねなんて入り口から本題へ

情報と美味しいパン、集まったかな


フォーネリアス・スカーレット
(鎧の下部を外してパンを食べながら歩いている……)
 パンはいい。歩きながら食べられる。効率的だ。
(一つ食べ終わると、新たなパンを購入し、やはり歩きながら食べる)
 ……殺す。オブリビオンを殺す。
(勇者の伝説、その背後にオブリビオンの気配を感じた殺戮者は射貫くような鋭い目線でパン屋を睨む)
 スイマセン。それを、一つ……ドーモ。
(次々とパンを平らげていく殺戮者。まるで、一つ食べる度にオブリビオンへ一歩近づいているかのような……単に、おなかが減っているだけなのかもしれないが、それにしても食べ過ぎでは?)
 問題ない。オブリビオンを殺す時には程よい頃合になっている。いいな。
(アッハイ)


秋津洲・瑞穂
SPD

建物や服装が違っても、やってるコトはどこも変わらないなぁ。
パンをいくつか買って、広場ででも食べよう。

小鳥たちにパンくずを撒いて……。
待ちなさいネコ。あなたにはこっちあげるから、邪魔しないの。

食べ終わったら調査ね。お年寄りの話し相手とも言う。
誘惑技能も使い方次第ってことで、人あたり良くこんにちはー。

伝説そのものについては他の人も訊くだろうから、
街についての話とか、崖のある辺りで働く人たちの話とか、
大雑把に網をかぶせて行こう。

ピンポイントで質問すると出て来ない周辺情報が見つかる、
なんて上手い話はあんまりないけどねー。
保険は掛けておいた方がいいもの。
なにより、街の雰囲気を知っておきたいのよ。



「伝説になるくらいであれば、お土産とか商品になっている可能性はありますわね。他の猟兵の方々がそれらしいお話を聞かれたようですし――」
 メンポ、もとい兜のマスク部分を外しフォーネリアス・スカーレット(復讐の殺戮者・f03411)はパンを食べながら歩いていた。確か此方の方と歩く霧城・ちさ(夢見るお嬢様・f05540)の姿が視界の端を横切っていったが、気に留める事もない。
「パンはいい」
 歩きながらでも食べることが出来て効率的だと思いながら口元に運び、咀嚼して呑み込み。手が空になれば、目に付いたパン屋のドアに手をかけた。
「いらっ、ひぃぃ」
 アイサツも途中ながら殺傷力さえありそうなフォーネリアスの視線が突き刺さった不幸なパン屋の店主は悲鳴をあげる。
「……殺す。オブリビオンを殺す」
 とか物騒な独り言を漏らすサツバツとしたお客様には流石に慣れていないのだろう。だが、フォーネリアスも抑えきれなかったのだ。勇者の伝説、その背後にこの殺戮者はオブリビオンの気配を感じていたのである。
「スイマセン。それを、一つ」
「え? あ、は、はい、ただちにっ!」
「……ドーモ」
 店内のパンの一つを示され、一瞬呆けつつも割と本気で怯えた店主は慌ててソレを引っ掴み差し出せば、フォーネリアスは礼を言って受け取ったパンを口に運ぶ。なくなれば再び注文して食べる。カゴに山盛りだったパンはみるみる減って行った。フォーネリアスにとってパンを一つ食すごとにオブビリオンへ一歩近づいたという認識なのか、単にお腹が減っていただけなのか。
「それにしても食べ過ぎでは?」
 恐る恐る様子を伺う店主の視線に、そんな意味でも感じたのか。
「問題ない。オブリビオンを殺す時には程よい頃合になっている。いいな」
「アッハイ」
 オブビリオンとは何かとか殺すとは物騒なという言葉が出てくる前に店主は思わず頷いており。

「建物や服装が違っても、やってるコトはどこも変わらないなぁ」
 壁を一枚挟んだパン屋の店内がそんなことになってるとは露知らず、秋津洲・瑞穂(狐の巫女・f06230)は左右に並ぶ建物を見上げ、道行く人を見回しながら通りを歩いていた。
「魔竜も勇者も好きな響きだけど――」
 先ずはパン屋を冒険なんだとサツバツしてない一軒のパン屋に足を踏み入れるシュデラ・テノーフォン(天狼パラフォニア・f13408)が視界の端に入り。
「さぁさぁ、焼き立てのパンは要らないかね? 美味しいよ」
 少し歩けば声と匂いで通行人を誘うパン屋の軒先に出くわした。
「でしたら、そちらのパンをいただきたいですわ」
「おう、コイツか。いやぁ、お目が高い。コイツはうちの人気商品でね」
 火傷には気をつけてくれよと言いつつ店主の差し出した丸いパンをちさは受け取ると、礼を言って荷物にしまい込み。
「あら?」
 ちさが瑞穂に気づいたのはその直後。
「調べついでに買い物してる人が多ければ、まぁ、こういうこともあるか。こんにちはー」
 ちさに挨拶した瑞穂はそのまま軽く情報交換してから、ちさが先ほどパンを買った店で店主おススメの丸パンを購入することとなる。
「やっぱり伝説そのものについては他の人も訊いてたかー」
 もたらされた情報の方向性は、予想していた通りであり。
「ふぅ」
 街の広場まで歩いた瑞穂はベンチに腰を下ろすなり先ほど買ったパンを一口食べ。
「チチチ……」
 袋の底から取り出したパンくずをまけば近くに生えた木の梢から降りて来た小鳥たちがそれをついばむ。平和な光景だった。
「待ちなさいネコ。あなたにはこっちあげるから、邪魔しないの」
「にゃ」
 そんな小鳥につられてか姿を現した白い猫を瑞穂は手で制すと袋から取り出したものを与え。
「『崖側に面した通りに三人の英雄の像が立てられているそうですわ』だったかしら……」
 ちさから貰った情報を反芻するとパンの最後の欠片を口に押し込み、立ち上がる。
「そろそろ調査開始ね」
 広場と言うだけあってまだ明るいこの時間帯には街の人々が時々訪れた。
「こんにちはー」
「おぉ、こんにちは。初めて見るお嬢さんじゃが、観光かね?」
 人当たりよく挨拶すれば、自然と相手も友好的になる。
「そんなところ……かな?」
「じゃったら、お気をつけなされ。勇者様方が化け物を倒したといわれる谷底じゃが、柄の悪そうな連中がうろついていたという話があっての。お嬢さんの様な旅人を狙った盗賊か山賊の類かもしれん」
 だからだろうか、尋ねて来た一人の老人が声を潜めてそんなことを伝えて来たのだ。
「地元の悪い話など、他所の者にはしとうないんじゃがの」
 不本意そうではあったが、被害が出るよりはと思ったのか。
「ピンポイントで質問すると出て来ない周辺情報が見つかる、なんて上手い話はあんまりないけどねー」
 そのあんまりない一例だったのかもと思いつつ瑞穂は礼を言って老人と別れた。

「このドライフルーツの甘みと酸味が良いね」
 そうして瑞穂が伝説とは直接関係ない情報を手に入れていた頃、シュデラは四軒目のパン屋で舌鼓をうっていた。
「おう、わかるかいお客さん。その味を出すのにどのフルーツをどれだけ使うか。かなりの試行錯誤があってねぇ」
「ああ、確かにその手の調整は大変そうだ。だからこその味でもあるんだね。ところで、街で一番古いパン屋は何処かな」
「うん? それならジョーンズのとこだろうなぁ」
 どことなく誇らしげな店主に応じつつ訊ねれば、店主が上げたのは、一人の男の名。
「ありがとう」
 店主に感謝し、追加でいくつかのパンを購入したシュデラはその足で教えられた男の店に向かい。
「いらっしゃい。いやぁ、今日はお客さんが多い日ですねぇ」
 ありがたいことですと笑顔で迎え入れた店主の方をちらりと見てから、シュデラは周囲を見回した。旗から見れば店に並ぶパンを物色しているように見えてその実探したのは、情報を得るための常連客である。
「今日は。俺この店初めてで、常連さん目線でお勧めって何ですか?」
 一人の初老の男性に目を止め、シュデラが話しかけ。
「おお、今日は。そうだなぁ、ワシに聞くよりジョーンズに直接聞いた方が早いと思うが……成程」
 振り返った男性は店主の前に他の客――ちさが居るのを見て得心が言ったようにシュデラに向き直る。
「この店でお勧めとなると、あそこにある『英雄たちの鎧』か。この街の近くに深い谷があるんだが――」
 最初は当たり障りない世間話から本題に入るつもりだったシュデラだったが、どうやらこの店の名物は直接勇者の伝説と繋がっていたらしい。
「『化け物を退治した時に壊れた英雄たちの防具』ですか」
「ああ。一人は右の小手を一人は左の肩当てを含む腕防具を一人は鎧を砕かれて、その残骸がまだ戦場だった谷底に残ってるって話だ。パンはその残された防具をモチーフにしたものなんだよ。もちろん、ただ防具の形をしてるってだけじゃなくて、味も良い」
 だから偽物が出ても長続きはしないそうで。
「形だけなら他の店でも真似はできるかもしれませんけどね。その味がうちの名物を守ってくれてるんですよ。考案した二代目には未だに頭が上がりませんよ」
「ふふ、その味を守り続けている店主様も素晴らしいと思いますわ」
 同じ話題で笑顔を浮かべる店主にちさが微笑みを返す。
「何れも美味しそうで、常連さんに沢山慕われていて素敵な店ですね」
 もしここで店主の妻らしき女性にシュデラが話しかけて居なかったら、猟兵やお客さんたちの前にも関わらず店主は妻にどやしつけられていたかもしれない。
「えっ、あ、そうですか。ありがとうございます」
 だが店主にとっての災難はシュデラの機転で防がれ。
「「ありがとうございましたー」」
 パンを抱えた二人の猟兵が店主たちの声に送られ店を後にしたのは、少し後のこと。
「情報もパンも集まったね」
「そうですわね。後は――」
 崖を降り伝説を確認するだけだ。若干不穏な話を聞いた猟兵も居たが、むしろ事前に備えられるというなら、有力な情報だろう。香ばしい小麦由来の香りに包まれながら、猟兵たちは向かう。谷へ最寄りの街の入り口へと。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 冒険 『下へ下へ駆け降りろ!』

POW   :    体力に任せて豪快に駈け降りる

SPD   :    器用さを駆使して美しく駈け降りる

WIZ   :    不思議な力で楽チンに駈け降りる

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ハルツ・ノウゼン
【POW】
これまで戦ってきた敵のことを考えたら今さら盗賊なんてぼくは怖くもなんともないけど……街の人たちが不安がってるなら放っておけないよね!
怪しい人がいたら話を聞いてみよう!もし誤解ならちゃんと街の人にも教えてあげないと。もし本当に悪いやつだったら?モチロン、バラして……じゃなくって、動けないようにふん縛って連れてくよ!

(崖を見下ろす)
……うん、これくらいなら走って降りられそう!
よぉーしっ!見ててっ!ぼくの毎日の鍛練の成果を見せてあげるー!
(身軽な動きで一気に谷底まで駆け降りる)


フォーネリアス・スカーレット
 成程、ここを下れば良いのか。竜の跳躍を使えば下に降りるのは簡単だ。空中で飛べるという事は、飛び降りても空中で勢いを殺せるという事だ。足を痛めない高度を見極め、落ちながら空中を蹴り勢いを殺す。それに、フックロープもある。厳しい高さなら懸垂下降で降りればよい。
 むしろ面倒なのは水平移動か。フックロープを掛ける場所には困るまい。ロープワークで一気に進む。
 ……そう言えば、谷底としか聞いてないな。だが……何故、谷底にある事を知っている? ましてや……形状を知っているとしたら、妙だ。
 ……殺すべきオブリビオンが上に居た、などという事にならなければ良いが。どの道殺すが面倒だ。


ガドゥッフ・ルゲイエ
【心情】
 どうやって、駆け下りるかと言うよりも、その伝説について聞いてみたいな。相手が話を聞ける相手であればけれど……。
【行動】
(他PLとの絡みもOKです)
【SPD】で参加するけど、高所恐怖症の人が居ればサポートしていきます。
念のため、水中形態から空中形態に変身。
「ちょっと、空を舞ってみるか」
危ない箇所があれば、味方に注意を促し、ホバリングしながら仲間たちの動きを見て、ゆっくりと降りていきます。
「美しいって言うわけでもないんだよな」とひとり呟きつつ、降下して地下に着いて一言。
「3人の英雄なぁ……。どうして、飛龍大陸へ行けるのかが気になるな」


シュデラ・テノーフォン
美味しいパンで腹ごしらえ済んだら
さて始めようか崖下り

とりあえず降ろうと思ったけど、谷底に何か居るんだっけ
ならこうしようか
まずそれなりに大きな石を谷底に転がす
同時にハーキマーを呼び石を追跡させる
盗賊だか知らないけど、恐らく降りてきたのを襲うんだろうから
何かが上から落ちてくるなら確認すると思うんだ
それを狼越しに見てから、奴らが見てない所を仲間と降りようか

と言っても、俺は翼があるから
仲間のフォローしながら飛んで降りるよ
後はガラの悪い連中…オブリビオンでなければ捕縛かなァ
死角から相手の武器を狙撃、攻撃手段を壊してから銃を突きつけ降伏を促す
後でこいつらは街に突き出すとして、英雄の防具の残骸とやら探そうか


秋津洲・瑞穂
WIZ

いえいえいえいえ『後は崖を降りるだけ』じゃないでしょう。
英雄像を見て行かなきゃ。

大雑把な石像でも形は判るはず。見るところは、失われた防具に
希少アイテムなり高額素材なり、何かがあったかどうか。
私たちに限らず、邪教団だの盗賊団だのの類が探す可能性は?

あとまぁ、崖降りの道具を買うとか。わたしは要らないけど。
さ、降りよっと。誰もが忘れていそうな「狐変身」で。
妖狐が狐になれるの、覚えてる人いるかなー(ぽん)

(そして、稲穂色のちっちゃな仔ぎつね降臨)(とことこ)
(狐なら崖くらい普通に降りられるし)(とことこ)
(仮に転げ落ちても、どうというコトはなく)(とことこ)

(あ)

(きゃーーーー)(ころころころ)


霧城・ちさ
英雄の像のあたりから降りながら調査しますわね。鎧というのも探せると良さそうですの。
悪いことをしている方々も噂になっていますし悪いことをしていたらお仕置きですの。危ない場所かもしれませんし反省してお帰り頂いたほうが調査しやすそうですわね
私が調べられない場所をうさぎさんに確認してもらったり移動にもうまく動かしていきますわっ
他の猟兵さんのお手伝いも可能ならしていきますわっ



「いえいえいえいえ『後は崖を降りるだけ』じゃないでしょう」
 街の入り口で瑞穂は誰に向けてかツッコんだ。
「英雄像を見て行かなきゃ」
 どうやら街の英雄像をまだ確認して居なかったらしい。
「でしたら、像の裏手あたりから降りながら調査すると良いと思いますわ」
 そう提案したのは、ちさ。街と崖との間には外敵の侵入や転落を防ぐ為の塀があるそうだが、そう高いモノではないのだとか。
「へー、これが英雄像ね」
 塀をよじ登るだけですぐ見ることのできた立像は英雄と思しき三名が横たわった鷲の頭を持つ獅子に武器を突きさし足をかけているもので、成程ここまでで集めた情報のとおり防具がどこか壊れ着衣まで破れてその肌をさらしていた。
「見たところ宝石がついてるとか邪教団だの盗賊団だのの類が探す可能性は無さそうね」
 強いて欲す人物が居るとすれば、伝説由来の品と言う付加価値部分であろう。
「成程、ここを下れば良いのか」
「……うん」
 瑞穂が像を観察する間にも他の猟兵たちは何人かが崖の下を覗き込んでおり。フォーネリアスがフック付きのロープを取り出す。
「これくらいなら走って降りられそう!」
 そう判断したのは、ハルツ。他に問題があるとしたら、仲間が仕入れてきた情報にある盗賊だか山賊だかの存在だろう。
(「これまで戦ってきた敵のことを考えたら今さら盗賊なんてぼくは怖くもなんともないけど……街の人たちが不安がってるなら放っておけないよね!」)
 放置は出来ない。もっとも、ハルツが構わなくてもその谷底にいると聞く何者かが降りてくる猟兵たちを放っておかない可能性もある訳だが。
「ふぅ……とりあえず降ろうと思ったけど、谷底に何か居るんだっけ」
 まだ持っていたパンを食べ終え、腹ごしらえを済ませたシュデラも視線を下にやるフォーネリアスたちに倣って崖下へと視線を投げ込み、それから視線を戻すと周囲を見回してそれなりに大きな石を拾い上げた。
「ならこうしようか。おいで、ハーキマー」
 石は手の中に、喚び出したのは、透明な有翼の狼。
「盗賊だか知らないけど、恐らく降りてきたのを襲うんだろうから、何かが上から落ちてくるなら確認すると思うんだ」
「確かにそう言う者が居るとしても、出てくるなり見つけないとどうしようもないな」
 シュデラがやろうとしていることを察して頷いたガドゥッフはシュデラの手にある石を見つめる。
(「もし何か居るなら、その伝説について聞いてみたいな。相手が話を聞ける相手であればだけれど……」)
 視線が石に留まったままなのは、石を落とされたあと崖下の反応に期待しているからだろう。
「何らかの反応があると良いんだけどね。それじゃ――」
 幾人かの視線が投げられた石を追い、反対側が透けて見える有翼の狼ことハーキマーは翼を広げ石を直接追う。
「え」
「この翼は飾りのつもりはない、殺すための物だ」
 フォーネリアスもこの時崖に身を投じていたが、すぐさま空中を蹴って勢いを殺し少し降りた所にあった人一人が立てるくらいの足場に着地する。用意していたフック付きのロープと相まって降りること自体に危なげはなく。
(「……そう言えば、谷底としか聞いてないな。だが……何故、谷底にある事を知っている?」)
 だが更に降りるでもなくその動きが止まった。
(「ましてや……形状を知っているとしたら、妙だ」)
 訝しみ崖の上を見上げたのは、一つの危惧から。
(「……殺すべきオブリビオンが上に居た、などという事にならなければ良いが」)
 ただ、その危惧は杞憂に終わりそうでもあった。
「あ、あれは」
 ハーキマーと五感を共有したシュデラが声を上げたのだ。
「何か見つけた?」
「ああ、人影らしきものがね。あっちの方だったから降りるならそちら側が良いだろう」
「やっぱり居るんだね! もし誤解ならちゃんと街の人にも教えてあげないといけないし、話を聞いてみよう!」
 自身の問いへ崖下の一方を示し返ってきた答えにハルツはそう主張し。
「そうですわね。いずれにしても噂の通りの悪いことをしている方々かは確認する必要がありますわ」
 もし悪いことをしているならお仕置きですのとちさは言う。
「だね。もし本当に悪いやつだったらモチロン、バラして……じゃなくって、動けないようにふん縛って連れてくよ! それじゃ――」
 同意したハルツは物騒な発言を訂正すると誤魔化すように崖の縁に寄る。
「よぉーしっ! 見ててっ! ぼくの毎日の鍛練の成果を見せてあげるー!」
「まぁ、確認するにも降りないと始まらないよな。ちょっと、空を舞ってみるか」
 そのまま一気に崖を駆け下り始めたハルツを見て空中形態に変じたガドゥッフが空に身を躍らせる。
「何かあってからでは遅いですものね。私のうさぎさん、一緒に戦ってほしいですの。みなさまをお守りしますわっ」
 ちさも白と黒のうさぎさんを喚び出してから崖を降り始め。
「さ、降りよっと。妖狐が狐になれるの、覚えてる人いるかなー」
 ぽんっと音を立て生じた煙に瑞穂の姿が隠れれば、晴れた煙の中から現れた稲穂色のちっちゃな仔ぎつねも他の猟兵たちに倣うように崖の縁に向かい歩き出す。
(「狐なら崖くらい普通に降りられるし」)
 傾斜を滑り降りると仔ぎつねは小さな足場に着地し。
「しかし、ガラの悪い連中ね。……オブリビオンでなければ捕縛かなァと思っていたけど」
 翼で滑空しつつ眼下を見やりシュデラは呟く。視界の中で一番谷底に近い場所にいるのは、谷底に人影発見の報を聞いて再び動き出したフォーネリアスだが、真っ先に降り始めたのは、そこにオブビリオンが居ると判断したからであろう。
「美しいって言うわけでもないんだよな」
 もう一人、谷の間をボバリングするガドゥッフはゆっくりと近づいてくる谷底とそれを挟み込む左右の崖を眺めつつポツリと漏らし。
(「仮に転げ落ちても、どうというコトはなく……あ」)
「っ」
 崖を降りる仔ぎつねが前足を乗せた出っ張りが崩れるのを目撃したのは、そうして景色を眺めていたからだろう。
(「きゃーーーー」)
 ころころと斜面を転げ始めた仔ぎつねの元に急行したガドゥッフがその前足を掴み。
「間一髪だぜ」
「やはり、危険なところもありますのね。ですけれど、良かったですわ」
 うさぎさんを伴っていたちさはガドゥッフに抱えられてゆっくりと降りて行く仔ぎつねの姿に安堵の息をつく。
「ただ、これだけ危険な場所となりますと――下の方々が悪いことをされていらしたなら、反省してお帰り頂いたほうが調査しやすそうですわね」
 頭上からの落石とどこにいるかもわからない推定悪人の両方に注意を割きつつでは調査をするにしても効率が悪くなるのは言うまでもない。
「3人の英雄なぁ……。どうして、飛龍大陸へ行けるのかが気になるな」
 仲間達とそれ以外の視線に晒されつつ崖下に降り立ったガドゥッフは呟きつつ抱えていた仔ぎつねを降ろし。
「その辺りを推測するにしても、英雄の防具の残骸とやら探すとしても……その前にやることがありそうだな」
 言うが早いか、シュデラは白い大型拳銃を発砲する。
「ぐあっ」
 悲鳴をあげたのは、ガドゥッフに向けられた猟兵以外の視線の持ち主、その一人だ。
「街に突き出す訳にもいかないな、これは」
 崖の下で猟兵達を待ち受けていたのは、オブビリオンだったのだから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 集団戦 『山賊』

POW   :    山賊斬り
【装備している刃物】が命中した対象を切断する。
SPD   :    つぶて投げ
レベル分の1秒で【石つぶて】を発射できる。
WIZ   :    下賤の雄叫び
【下卑た叫び】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​
ハルツ・ノウゼン
共闘、アドリブ歓迎
【POW】
……あれっ、オブリビオンだ!もしかして、街の人が言ってた賊ってキミたちのことかな?あははっ!なーんだ、じゃあ手加減しなくて良いんだね!
武器?えーと(山賊の顔を見て)……うん、要らなそう!ハルツなら平気だよ、だって鍛えてるからね!(力こぶ)

(【下卑た叫び声】を掻き消すような大きく力強い声で大地を踏み鳴らしながら皆のやる気を引き出すように歌ってUCを発動。UCと『力溜め』で自身の戦闘力を増強し『殺気』を乗せた拳で『怪力、鎧砕き、吹き飛ばし、二回攻撃』を試みます)

……あっ、そうだ!聞くの忘れてたー!ねえねえ、キミたちここで何してたの?英雄って知ってる?(殴りかかりながら)


霧城・ちさ
今まで調べていた勇者についても気になりますがまずはここで見つけた山賊たちを倒さなければいけませんわねっ
街にも後で被害が出るかもしれませんし逃すわけにはいきませんわっ
私は倒せそうな敵から攻撃していきますわね。猟兵の皆様がトドメをさしやすいように手堅く攻撃していきますわね
敵を一体ずつ倒して数で有利になりはじめたら逃がさないように戦う事も考えて取り囲めるような位置へ動きますわっ


フォーネリアス・スカーレット
 そうか、良かった。ここまで来て谷底にオブリビオンが居なかったらどうしようかと思っていた所だ。さあ、殺そう。
 手に炎剣を持ち丸盾を正面に構え、礫の直撃を防ぐ。射出速度は大した物だが、直撃でなければ金属鎧を抜ける程ではない。第一、簡単に当たってやる必要もない。ジグザクに動いて狙いを逸らす。
 距離を詰めたら跳躍から炎剣を振り上げて近接戦に持ち込む、と見せかけて炎剣と丸盾を投擲。竜の跳躍で下方向に蹴りタイミングを逸らす。懐に入り電磁居合斬り。刀は振り抜く勢いで投擲、これを二刀。最後にチェーンブレードを抜きばらばらにする。逃げる奴には千撃ちで追撃。
 殺す。全員殺す。ただの一人も逃がしはしない。


シュデラ・テノーフォン
彼らオブリビオンなんだ
何でその姿で…君達も防具探し?
まァ何にせよ、手加減は要らないな

基本敵の攻撃は指輪の盾で弾く
石つぶてはクイックドロウからの狙撃で投げる手ごと撃っても良いかな
アレ、雄叫び上げちゃう?
俺もテンション上がるけど良いかな獲物共
複製したAschenputtelのGlasregenに撃たれて骸の海に還りな!

片付けた後は調子を戻して谷底調査
防具自体は勿論、残骸周辺の状態等も調べようか
例えば壊され方から戦った化け物の予測
防具以外に気になるモノの発見
それと魔力的痕跡はどうだろう
群竜大陸ではない此処での戦闘が気になってね
化け物が竜なら飛んで来たか…或は、
此処に群竜大陸への道があったりしないかな


ガドゥッフ・ルゲイエ
【心情】
 勇者について聞きたいところはあったけど、オブビリオンとなると、大変だな……。
 説得して、聞きたいけど、さて、どうするか……。
(他の仲間との連携、アドリブもOKです)

【行動】
 空中形態のままで、「つぶて投げ」の攻撃対策をしつつ、フェザーダーツで攻撃で、相手を攪乱していきます。
 攪乱したあの地は他の仲間と連携して一体一体を倒していきます。
 遺跡を守る為にユーベルコードは使いたいけど、敢えて使わない方向で行きます。
 戦闘終了後、遺跡と思しき箇所を調査し、飛龍大陸への手がかりを探していきます。


秋津洲・瑞穂
うーん。なんだろう、このお呼びじゃない感。

散歩中のお年寄りが知っているほど噂になっているのに、
被害が出たようでもなく。
といって、他に目的があるようでもない……。
逃げも隠れもする気配もない。
本当に単なる盗賊で、引っ越して来たばかりで下見中とか?

ま、山賊というなら容赦も要らないわね。炎の城で粉砕しよう。

自分を取り囲むように『フォックスファイア』を召喚し、動く盾に。
至近に敵が来れば格闘代わりに激突するように制御しつつ、
手近な相手を狙って【ダッシュ12】で強襲を掛ける。

【なぎ払い15・鎧無視攻撃15・2回攻撃15】の『剣刃一閃』で
ばっさり行くよ。
狐火とわたし、両方同時に止めなければ防げない。頑張って?



「……あれっ、オブリビオンだ! もしかして、街の人が言ってた賊ってキミたちのことかな?」
 キョトンとしつつ山刀を手にした山賊たち、すなわちオブビリオンを見るハルツだったが、見られた側はそれどころではなかった。
「くそっ、どうやってここを嗅ぎつけやがった」
 オブビリオンには相手が天敵である猟兵ならばわかる。わかってしまう。やって来たのがガドゥッフと降ろされた瑞穂だけならたまたま仲間が崖から落ちたところを助けるために崖下に降りたでも通ったかもしれないが、もっと大勢で降りてきている上に全身でオブビリオンを殺しに来ましたと語る猟兵が約一名。
「あははっ! なーんだ、じゃあ手加減しなくて良いんだね!」
「っ、無視してん、があっ?!」
 全力ですれ違う会話は最後まで続かず、途切れた。
「良かった。ここまで来て谷底にオブリビオンが居なかったらどうしようかと思っていた所だ」
 さあ殺そうと続けたフォーネリアスの足元には事切れた山賊が一人。
「うーん。なんだろう、この残念感」
 嗅ぎつけやがったと喚いていたということは、散歩中のお年寄りが知っているほど噂になっているにも拘わらずこの山賊たちは自分たちの存在を街の人間には気取られていないと思っていたのだろう。
「ちっ、あの時逃がした奴が街の奴に話しやがったのか?!」
「ちょっと待て、何だそりゃ、聞いてねぇぞ?!」
「あ」
 瑞穂が微妙そうな表情で見つめる中、苛立たし気に漏らした山賊が仲間に指摘され、慌てて口元を押さえる。
「成程、それで逃がしたって人がこの山賊の存在を広めた、と」
 一方でドジを踏んだ山賊は自分の失敗を仲間たちに知られたくなくて黙っていたという訳だ。
「今まで調べていた勇者についても気になりますが、まずはここで見つけた山賊たちを倒さなければいけませんわねっ」
「……君達も防具探し? なんて聞く必要もなくなったと言うか。まァ何にせよ、手加減は要らないな」
「うぐっ、言わせておけば。てめぇら、やっちまえ!」
 ちさとシュデラの言に顔を歪めた山賊が怒声と共に仲間たちをけしかけ、戦いは始まった。
「武器? えーと……うん、要らなそう! ハルツなら平気だよ、だって鍛えてるからね!」
 山賊の顔を見るだけで判断を下したハルツは腕を曲げて力こぶを作ると大きく息を吸い込む。
「なん」
「いやぁ、テンション上がるな。覚悟は良いかな獲物共」
 大地を踏み鳴らしながら歌い始め、力強い歌声が異種族の言葉的な意味で歌詞を理解できなかった山賊の当惑の声をかき消し、シュデラたち味方には力を与える。
「ま、山賊というなら容赦も要らないわね」
「へ?」
 そして山賊からすると、歌声に気をとられていたこと自体が大きな失敗だった。声に振り返れば、喚び出した狐火が盾にできるよう自身を囲ませ肉薄してくる瑞穂の姿があったのだから。
「ばっさり行くよ」
「ちぃっ」
 予期せぬ強襲に舌打ちし、石の礫を放つも礫は狐火の一つを爆ぜさせた代わりに砕け散り。
「しま」
 礫を投げた姿勢からでは防御も間に合わなかったのだろう。小太刀が二度閃めいて、瑞穂とすれ違った山賊は血を吐き崩れ落ちる。
「っ、この――」
「狐火とわたし、両方同時に止めなければ防げない。頑張って?」
 仲間を屠られた山賊が睨みつけるも瑞穂はただそう言い残して地を蹴っており。
「綺麗な雨を、観せようか。骸の海に還りな!」
 シュデラが二十を超える複製したAschenputtelの銃口をすべて山賊たちに向けると放たれた透き通る銃弾はまさに雨となる。
「がっ」
「ぎゃあっ」
「ぐおっ」
 山賊たちからすれば地獄絵図であろう。あちこちに山賊が討たれる光景は広がっていた。
「街にも後で被害が出るかもしれませんし逃すわけにはいきませんわっ」
「たす、ぎゃああっ」
 雨の如きシュデラの銃撃に巻き込まれ手傷を負っただけで済んだ山賊は、ちさが指さしたことで崖の上に広がる青空から差してきた強い光に焼かれ。
「何だ、コイ、来るなっ、来るなぁ!」
 怯えながら別の山賊が投げた石はフォーネリアスが正面で構えた丸盾に跳ねてどこかへ消える。ジグザグに法則性のない動きで距離を詰めて来た相手に初めて命中した石礫であるが、当たったのが盾では喜べるはずもなく、またフォーネリアスが石に当たってしまったのは、避けることができないほどに両者の距離が縮まっていたからでもあり。
「ひっ」
 視界いっぱいに広がる炎剣を振り上げたフォーネリアスを見て山賊は悲鳴を上げた。
「え」
 斬られると強張らせた体に斬撃が降ってくると思ったのだろう。だが、訪れない一撃に疑問を抱き見上げれば、フォーネリアスの両手に炎剣と丸盾はなく。
「ばっ」
「げっ」
 かわりに後ろから二つ悲鳴が上がった。この山賊の後ろ頭にも目があれば、顔面にそれぞれ剣と盾を生やして倒れこむ仲間の姿が見えたことであろう。もっともそれも一瞬のことだっただろうが。
「なっ、は」
 空中を蹴って礫に劣らぬ速さで飛んできた凶風がフォーネリアスと言う人の姿をとり息すら届きそうな距離にあった。その手は新たな刀にもう伸ばされており。抜刀が驚く山賊の身体を横に断ち切る。勢いそのままに手から離れた刃は新たな犠牲者を求めて飛び。そこからさらにもう一刀。
(「勇者について聞きたいところはあったけど……」)
 相手がオブビリオンとなると聞き出すのは大変だなと思っていたガドゥッフは、空を飛びつつ唸る。
「説得して、話を聞きたいけど……下手すると説得が成功するまで生き残っている山賊、居ないよな。この調子だと」
 オブビリオンではあるものの強者ではなく、数を頼みとするような輩なのだ。
「ぎゃあっ、痛ぇ」
 そんな山賊の一人がダーツの矢の様にガドゥッフが投じた鳥の羽から頭を抱えて逃げ惑う、フォーネリアスから離れるように。そう、攻撃で攪乱しつつ確実に殺されそうな場所から追い立てているのだ。
「くそっ、なんてや、ぶべっ?! がっ」
 顔を引きつらせ後ずさりしようとしたある山賊はハルツの拳を顔面と腹に受け皮鎧の残骸をばら撒きながら倒れこむ。
「ふぅ……あっ、そうだ! 聞くの忘れてたー! ねえねえ、キミたちここで何してたの? 英雄って知ってる?」
「答える義理なんぼっ」
 仲間たちを倒され激昂した山賊は最後まで言い終える前に叩き伏せられ。
(「そろそろ逃がさないようにすることも考え始めないといけませんわね」)
 敵の数が減ってきたことと戦意を喪失する山賊がちらほら見かけられ出したことを鑑みてちさは山賊たちの退路を絶つべく駆けだす。
「殺す。全員殺す。ただの一人も逃がしはしない」
 こう、退路関係なく地獄の果てまで追いかけて殲滅しそうな猟兵が仲間に一人混じってるが、それはそれである。
「くそっ、ついてねぇ……街も襲えず、古い鉄くずしかねぇこんなところで……」
 自分の血だまりにへたり込み最後の山賊が倒れ伏したのは、それから暫し後のこと。
「最終的に街を襲うつもりではあったみたいね」
「そのようだな……戦っている合間に漏らしていた内容を整理すると最初はそうではなかったようだが」
 息絶えた山賊に視線をやる瑞穂の言葉にガドゥッフは頷く。山賊たちは最初崖下の防具の残骸とこれを見に来たり手に入れようと訪れる者を襲う目的でここに陣取っていたらしい。
「こんな場所では訪れる方も殆ど居られませんわね」
 ちさは周囲を見回してから上方を仰いだ。猟兵たちが駆け下りて来た崖が青空を挟む。猟兵たちだからどうにかなったが、ただの旅人が降りるなら瑞穂が気にしていたように崖を降る為の道具は必須だったと思われる。
「自分たちの目論見が甘かったことに気付いて街を襲う方にシフトしようとしたところで、俺たちが降りてきたわけだな」
「結果として街が救われたということだね、ただ――」
 山賊が鉄くずと漏らしていたことを考えると、防具の残骸に価値を期待するのは酷か。
「さて、谷底調査を始めよう」
 シュデラに促され、猟兵たちは周囲の探索を始め。
「これは……」
 山賊たちと戦った場所から更に進んだ場所で、ガドゥッフが見つけたのは錆びた鎧の残骸であった。
「爪に切り裂かれた結果、こうなったようだね。上にあった彫像のとおりならこの傷をつけたのはグリフォンの前足かな」
 錆を防止する処置が表面になされていたようだが、切り裂かれた場所から発生した錆びが全体に回ってしまったらしい。少し離れた場所に転がる手甲の残骸らしきモノからはホンの微かに魔力が残っていたが、防具自体に付与されていた防具を強化する類の魔法の残滓のようであり、物品としての価値はなさそうである。
「こちらの肩当てらしきモノは崖面に叩きつけられて砕けたようですわね」
 散らばった元金属片の中、比較的大きなモノを拾いあげてちさは言い。
「化け物は竜でないようだし、流石に此処には群竜大陸への道があったりはしないか」
 それでも、名物になっていたパンの形状からすると残されていたのは、勇者たちの身に着けていた防具の残骸であり。それらを回収した猟兵たちは帰路につく。持ち帰るそれらが群竜大陸に関する有力な予知に繋がることを願いながら。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年03月10日


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30




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