オハナミ・バーガー・ストリート
●オハナミ・バーガー・ストリート
骸の雨降るこの電子の世界では、若者達も刹那的。明日のことさえわからないから、踊り狂って浮かれて大事なことすら忘れていたりする。
そんな街の大通りに、むやみやたらとネオンが眩しいおおきなキッチンカーが二台到着。早速開店の支度を始めると、腹ぺこな若者達が食べ慣れたジャンクな味を求めて行列をつくりだす。
きらきらと鮮やかすぎるピンク色の花弁のホログラムが舞い散るなか、突然遠くから爆音がした。
「なんだ?」
キッチンカーの担当者がそちらを向けば、恐ろしい速さでこちらへと向かってくる桜並木の群れがあった。
●タートル・ジャム・クラッシャー
「皆さん、お花見に行きましょう。たからがご案内しますよ」
鎹・たから(雪氣硝・f01148)は変わらぬ無表情でそう言った。こういう時の彼女は大体妙な予知をしている。一応話だけ聞こうか、と言った様子の猟兵達に、たからは頷く。
「サイバーザナドゥのとある街に、季節に応じて様々な花の木をホログラムで再現するストリートがあります。そこは音楽を流して踊ったりするナウでヤングな若者達が集う場所で、今は桜並木がとても綺麗なのです。ですが、そこへ本物の暴れ桜並木が現れて」
なんて? 猟兵達が首をかしげたので、羅刹はもう一度パワーワードを告げる。
「暴れ桜並木です。違法研究の末に生まれた凶悪なバイオ桜の群れが大暴れしています。幸いまだ怪我人は出ていませんが、このままでは大変なことになるでしょう」
案の定妙な奴だった。じゃあそれを根絶やしにすればいいんだな、と把握したところで、たからは言葉を続ける。
「さらに偶然にも、骸の海を浴びすぎたことで一斉故障を起こし暴走した輸送用の頭脳戦車の群れがやってきます。迅速ハコベールくんという名前の頭脳戦車ですが、亀の形をしていてとても頑丈です」
桜並木のあとにやってくるAI亀の群れ。ところで亀って意外と足が速いらしい。
「AI自体はあまり賢くはないそうで、裏返しにされると無力のようです。アイデアを思いついたらきっと戦いやすいでしょうね」
「バイオ桜とハコベールくんをほろぼしたあとは、ストリートに大人気のハンバーガーショップの臨時キッチンカーでハンバーガーが食べられますよ。サイバーザナドゥの若者達に大人気のお店だそうで、派手な見た目に正体不明の合成肉がぱんぱんに詰められて、刺激的な味だと有名です。バーチャルな桜の下でお花見が楽しめます」
桜はともかくとしてハンバーガーは本当にご褒美なのだろうか。
内心首をひねり続ける猟兵達。さくさくと転移の支度を始めるたから。誰も突っ込まない。
なんにせよ、一般人が被害を被らないようにするのが猟兵の仕事。
雪の結晶かがやくグリモアの向こうで、サイケデリックなさくらいろが待っている。
遅咲
こんにちは、遅咲です。
オープニングをご覧頂きありがとうございます。
●成功条件
バイオ桜を根絶やしにして暴走頭脳戦車を壊し、ハンバーガーを食べる。
●3章『ディストピアバーガー!』
ホログラムの桜の下、おかしなハンバーガーを食べながらお花見ができます。
食べなくても特に困ることはありません、自由にお過ごしください。
ダイス目でおいしい、まずいなどの味をお任せにすることも可能です(味の指定も歓迎)
この章のみの参加も歓迎です。
以前よりも文字数は控えめです、どの章からのご参加もお気軽にどうぞ。
皆さんのプレイング楽しみにしています、よろしくお願いします。
第1章 冒険
『バイオ桜とお花見バトル!』
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POW : 触手のように蠢き襲いかかる太い枝と根に対抗する
SPD : 絶え間なく降り注ぐサクランボ爆弾に対抗する
WIZ : 麻痺と幻覚を引き起こす毒の桜吹雪に対抗する
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浅間・墨
ロベルタさん(f22361)
桜並木が暴れる…というのはよくわかりませんでした。
えと。私にはばいお桜というのも良く解らないですね。
…ロベルタさんからの説明でも良く解りませんでした…。
とにかく暴走した桜並木を何とかしたいと思います。
『国綱』の一振りを構えて桜並木を待ち構えますね。
待ちつつリミッター解除後に限界突破しておきます。
全力魔法と属性攻撃付与の【蒼閃『御神渡』】を。
まず狙うのは桜の暴走路で立ち止まる人々を救うこと。
次に逃げ惑う人々を襲う桜達を停めること…ですね。
桜はばいお技術という力で進化しても植物のようで。
植物というのならば燃やすか冷気に弱いはずです。
ただ燃やすのは周囲への被害が大きいので冷気で!
幾ら雪深い土地で生息可能でもそれ以上の冷気なら。
私の剣技で生む冷気で止めるのは心許ないのですね。
ロベルタさんにもご協力願いましょう♪
「よろ…くお願い…ます…。ロベ…タさ…!」
ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)
遺伝子操作で作った桜達が暴走したんだみたいだねぃ~。
初めは意義があったのかもだけど…行き過ぎたみたいだ。
それとも元々軍事とか悪用しようとしてたのかもだけど。
墨ねーの疑問を受けて簡単に説明してみるよ♪
「桜の細胞を弄って、こーなっちゃったんだじぇ!」
桜並木を冷気で弱らせて…ってゆーのはいいかもねぃ♪
暴走を止める墨ねーの案にノって墨ねーと連携するじぇ。
限界突破してから属性攻撃付与の【雪の女王】だじょ♪
墨ねーの余波冷気を巻き込んで愛剣で斬っていくよ。
攻撃してきたらもう一つの愛剣で次々に焼き斬るじぇ♪
バイオ技術で再生能力の活性が強力だろーけど問題ない。
墨ねーも居るからねぃ~♪
斬ったり冷気に晒した桜並木は勿体ないねぃ。これ。
!細かいチッブにして燻製用とかに利用できるかもしれない。
冷気の影響で利用できるかわからないけど試す価値はあるじぇ。
桜並木が暴れるとは、一体。しかし実際、目の前で太い枝をしならせて桜は大暴れしている。浅間・墨はグリモア猟兵の説明を思い出しながら、何も嘘は言われていないのに頭にはてなを浮かべていた。
「えと……ばい、お桜……?」
これもいまいちよくわからない。サムライエンパイア出身の彼女には、縁のないカタカナ文字である。
「簡単に言うと、桜の細胞を弄って、あーなっちゃったんだじぇ!」
意外にもこの手の技術に詳しいロベルタ・ヴェルディアナは、だいすきな墨ねーにさっくりと説明する。けれどやっぱりよくわからない、と言った様子の彼女に、細かいことは気にしなくていいじぇ、と笑った。
そう、だって二人は、難しいことは考えずにこの桜を根こそぎ綺麗にしてしまうだけでいいのだから。
わーきゃー言いながら逃げ惑う人々を追って、桜の群れはストリートを縦断していく。それは非常に滑稽で愉快な雰囲気で、巻き込まれていない第三者から見れば撮影かなんか? と思ってしまうレベルだった。
しかし実際のところはそんな状況ではなく、ハンバーガーショップのキッチンカーもわたわたとエンジンを吹かして逃げていく。
そんなキッチンカーとすれ違うように、ふたりの少女達は猟兵として勤めを果たす。
愛刀国綱を構え、戦巫女は静かにこちらへと向かってくる桜の群れを待ち構える。同時に、リミッターを解除し、その力を最大限に引き出した。
超低温の突きがストリートの一帯に冷気を招いて、桜を烈しく凍てつかせる。ばいお技術とやらで進化しようが、所詮植物は植物。燃やすか凍らせるのが一番だと考えて、賢い墨は後者を選ぶ。燃やしたら大変なことになっちゃいますからね。
「よろ……く、お願い……ます。ロベ……タさ……!」
「まっかせろぃ!」
手にした愛剣を構えて、ロベルタは勢いよく地を蹴った。飛ぶように跳ねた彼女は墨の攻撃の余波を巻き込んで、絶対零度の冷気を纏う斬撃を次々に桜の群れに当てていく。裂かれる度に染み渡っていく氷彩が、一気に桜の動きを止める。
暴れ桜がその身を震わせるたびに、実物の桜吹雪とホログラムの花弁がやたらにばっさばっさと舞っている。多すぎるのはちょっと邪魔になるものなんですね、と墨は思った。
はじめは意義があったのかもしれないけれど、この研究は行き過ぎたものだろう。そもそも、元から軍事に悪用しようとしていたのかもしれないし、
「まぁ今となってはどうでもいいんだじぇ♪」
そう、ロベルタちゃんは元気いっぱいな賢い娘。ゆえに今関係ないことは心の底からどうでもいいと判断すれば、すっかり忘れておくのに限る。
斬られたり冷気に晒されたりと、桜並木達はしおしお。元気な個体は着実に数を減らしていく。
「勿体ないねぃ、これ」
「そ……です、か……?」
伐採作業に勤しむロベルタがふいにそうこぼすから、墨は小首をかしげる。危ないものを処理するだけなのだから、そのあとどうしようが勝手ではあるけれど。
「!」
ぴこん。ロベルタちゃんがなにかを閃いたといった表情を見せたから、墨ねーは彼女の言葉を待つ。
「細かいチップにして、燻製用とかに利用できるかもしれない」
「燻……製……」
「試す価値はあるじぇ。墨ねー、燻製料理って作れる?」
ええと、とか細く悩んで、墨は思いつくメニューを頭に浮かべる。卵、サーモン、ベーコン、チーズ。料理技能三十二の彼女なら問題なく作れることだ。
「は、い……多分」
「よし、持ち帰ろう!」
そうと決まれば判断がはやい。全部凍らせ叩き斬ってから、今度こそ明確な伐採作業に動かなくては。
「あ……の、前、に」
そっと墨がロベルタへと呼びかければ、彼女はちいさな呼びかけに振り向いた。
「頭脳……車、も……」
「わかってるじょ♪ ハコベールくんとかいうのもぜーんぶ転がしちゃうじぇ♪」
真面目なお姉ちゃんの言葉に、ロベルタはぐっと親指を立てた。まじで全部転がしそうだなこの子。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アラタマ・ミコト
荒魂鎮神命が命じるのでございます。
神器よ施されし封印を解きその力を示すべし!
荒魂鎮神命の無双をご覧に入れるのでございます。
……あらたまちゃんのらいふを削っているのです!
高れああいてむや素材をどろっぷするのです!!
サイバーテクノロジー溢るるこの街で大暴走するバイオ桜。それはつまり高レアアイテムや素材をドロップするチャンスなのでは?
なんとなくそんな気配を感じたアラタマ・ミコトが舞い降りたなら、そこでは薄紅の花弁がわっさわっさと舞っている。
「おやおや……これは実にいべんとっぽい雰囲気ではありませぬか」
そうそうネトゲの季節ものイベントって大体こんなトンチキだよね。なんでだろうね。などと感想を述べている間にも、甘酸っぱい香りを漂わせたさくらんぼの爆弾がアラタマめがけて降り注いでくる。
これも拾えれば何かしらの素材になるのでしょうか、と一瞬考えるも、まずは桜を鎮めることが最善策。
「ではこれより、あらたまちゃんの封印されし神器を開放するとき!」
極楽浄土の後光を従えた少女の手にする神剣が、ふわりと宙に浮く。途端、無数にわかたれた神器が一斉にさくらんぼ爆弾を穿っていった。
そうして空中で爆発するさくらんぼ達、広がるフルーティーな香り。乙女ちっくな空気が漂った。
すべての爆弾を凌ぎきった神器が、桜並木の太い枝や幹を次々に切り裂いていく。
「あらたまちゃんのらいふを削っているのです! しっかりどろっぷするのですよ!!」
そう、こんなゆるゆるなレイドイベントでも、アラタマの寿命は徐々に削れている。
まぁ即身仏なので関係ないんですけど、それを指摘する者はこの場には居ないのだった。
成功
🔵🔵🔴
ファルコ・アロー
お花見かぁ……故郷ではできなかったですし、一つ見に行ってやりましょう!
バイオ桜とか言うのが暴れているようですが、所詮は植物。
科学技術の結晶たるボクの相手じゃねーです!
束になってかかって来やが……ピィィッ!?ふつーに殴りかかって来たですよこの植物!?
いくら何でも自由気ままに育ち過ぎなんですよこのやろー!
もはや地面は奴らのフィールド、このままじゃやられちまうです!
こう言う時はこっちの有利な場所に戦場を移せって隊長が言ってたですね……よし!
ファルコンにチェンジして空に逃れて、上からビームで焼き払ってやるですよ!
この世界から絶滅させてやピェッ!?
こんちくしょー!太い幹は体当たりじゃ無理っぽい……!
「お花見かぁ……故郷ではできなかったですし、ひとつ見に行ってやりましょう!」
グリモア猟兵の提案にノリノリでやってきたファルコ・アローは、ちいさな背丈でずばーんと到着。
バイオ桜とかいうのが暴れているらしいが、所詮は植物。科学技術の結晶たる自分の相手などではない。
「さぁ束になってかかって来やが」
どどどどどど。すごい勢いで桜並木の群れが普通に腕めいた太い枝を降りあげて殴りかかってきた。
「ピィイイッ!?」
涙目で甲高い悲鳴をあげて、すんでのぴょんと飛び跳ね避ける。危なかった。
「いくらなんでも自由気ままに育ちすぎなんですよこのやろー!」
文句を言ってみても相手は所詮植物。こっちの言うことなど聞きゃあしない。もはや地面は奴らのフィールド、このままではなすすべもなくぼっこぼこにされて終わってしまう。
「落ち着くのですボク、こういう時はこっちの有利な場所に戦場を移せって隊長が言ってたですよ!」
いち、に、さん。よし、と閃いた彼女は大きく叫ぶ。
「ウィングアップ! チェェェェンジ! ファルコン!!」
幼いレプリカントは十メートルの戦闘機へと変形し、遥か上空からビームを発射。焼き払われていく桜並木はごうごうと真っ赤に染まっていく。
「このままこの世界から絶滅させてやピェッ!?」
調子に乗って体当たりを敢行したかわいい戦闘機ちゃんは、あっという間にごっつい幹によってばいんと跳ね飛ばされた。
「こんちくしょー!」
とはいえ火には弱い桜並木も、徐々に数を減らしていった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『迅速ハコベールくん』
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POW : 強制お荷物お預かり機能
【モノアイから放つトラクタービーム】が命中した物品ひとつを、自身の装備する【装甲内部の格納スペース】の中に転移させる(入らないものは転移できない)。
SPD : 超スーパーお急ぎ便機能
【最適な脚部に換装し、衝突上等走行ルーチン】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : 安心安全お届け機能
全身を【脚部を引っ込めた対衝撃防御形態】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
👑11
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バイオ桜並木が一掃されたストリートを、えっちらおっちら歩いてくる群れがある。
それはサイバーザナドゥで暮らす人々にはすっかり見慣れた宅配頭脳戦車だけれど、残念なことに彼らのAIはみんな壊れてしまったのだった。
えっちらおっちら、とことことこ。
突然放たれるトラクタービーム、突如高速で走り出す躯体。
しかし猟兵達はグリモア猟兵の言葉を思い出すだろう。
――ひっくりかえせば、無力なのだと。
ファルコ・アロー
ふー、あのクソ生意気な植物共は何とか絶滅させてやりましたね。
ちょっと頭は痛いですけど、まだまだやってやるですよ!
次の相手は頭脳戦車……こっちはこっちで戦い辛いんですけど!
アイツらも機械です。
プラントから生まれたか人の手によって生み出されたかの違いだけで、ボクとは親戚みたいなものだから……でも、だからこそ、人に迷惑かけない内に止めるのが筋ってもんかも知れねーですね!
あのビームは目から撃つみたいだから、側面から推力移動で急接近してフルパワーでひっくり返してやるですよ!
ぶっ壊すまではしねーですよ、直してくれる奴がいるかもですしね。
でももしボクを閉じ込めるなら……その時は悪いけど壊してでも脱出します!
「ふー、あのクソ生意気な植物共はなんとか絶滅させてやりましたね」
なんとか一仕事終えたファルコ・アローは額の汗っぽいなにかをぬぐう。ちょっと頭は痛いけど、レプリカントはまだまだふんばれる。
「さぁどんどんかかってきやがれです!」
その言葉に、えっちらおっちらやってきたのは亀の形をした頭脳戦車、ハコベールくん。一瞬訪れる沈黙。
「こっちはこっちで戦い辛いんですけど!」
だってファルコはレプリカント。クロムキャバリアでプラントから生まれたか、人の手によって生み出されたかの違いしかないのだ。まだ幼い少女にとって、それは親戚みたいなもので。
――でも、だからこそ。
「人に迷惑かけないうちに止めるのが、筋ってもんかもしれねーですね!」
その言葉に反応するように、ハコベールくんは青いモノアイから光を放とうとする。ならば、と少女は推進力を上昇させて急接近。ちいさな腕が甲羅のふちに手をかける。
「ふ・る・ぱ・わぁぁぁあ!」
相当ある重量も、彼女の手にかかれば一気にひっくり返される。次々にファルコを標的にしようとする頭脳戦車めがけて、少女は再び移動を繰り返す。
「ぶっ壊すまではしねーですよ、直してくれる奴がいるかもですしね!」
えいや、とひっくり返されていくハコベールくんは、ころころうごうご、やがて自動的にスリープモードに入って動きを止める。
閉じ込められそうになったなら、その時は壊してでも脱出してみせる。そんな気概で挑んだ少女は、もうすこしばかり働くことになる。
大成功
🔵🔵🔵
アラタマ・ミコト
牛車ならず亀車といったものでございましょうか?
彼の世界は面妖でございます。
暴走しているとのことでございますので、まずは止めてしまいましょう。
殲剣陣羽織にて受け止めてしまいましょう。
……ちょっと待つのです!
あらたまちゃんの武具を勝手に持ち帰るななのです!
こうなったら、収納された武具を念動力で浮かばせひっくり返すのです。
死んでもないのに「ですぺなるてぃ」は禁止なのです!
えっちらおっちら、とっとこのこのこ。こちらへと向かってくる亀型頭脳戦車を、アラタマ・ミコトはしげしげと見つめる。
「牛車ならず、亀車といったものでございましょうか?」
はてさて、彼の世界はなんとも面妖なものが散らばっているもの。これらはすべて暴走しているらしい、まずは動きを止めてしまうのがいいだろう。
「それでは、」
纏った法衣は、将軍の鎧と変わらぬ強度。少女が武器とみなしたものすべて、本当の武器となる。しゃらん、と鳴った飾りすべてが宙を動いて、亀めがけて――その途端。
シュオオオ、と謎の音と共に、ぴかっとハコベールくんのモノアイがひかりかがやく。放たれたビームをまともに喰らった装飾品が、あっという間に甲羅のなかに吸い込まれていった。
「ちょっと待つのです! あらたまちゃんの武具を勝手に持ち帰るななのです!」
あわあわ驚くアラタマを尻目に、件のハコベールくんは何処かへと去っていく。と、それをきっかけにしたように、他の仲間もモノアイをぴかっと発光。収納されていく武具達。
「ああ~!」
まずい、このままでは追い剥ぎNPCに遭った初心者プレイヤーと同じ。
「こうなったら!」
ぐっと思念を集中させれば、収納されてしまった飾りがふわりと甲羅のなかで浮きあがる。えい、と勢いよく一定方向へ動かせば、ハコベールくんはころんとひっくり返った。
「死んでもないのに“ですぺなるてぃ”は禁止なのです!」
うごうごしている頭脳戦車の甲羅から、少女は慌てて自分の装備を取り返すのだった。
大成功
🔵🔵🔵
飯綱・杏子(サポート)
ジビエ
食材がヒト型でなければ料理して喰らうっす
ヒト型の
食材を料理するときはこちらがヒト型を辞めるのが
マナーっす
リビングアーマーや宇宙船の類だってきっと貝類みたいに美味しい可食部があるし、食器としても活用するっす
どんなに癖のある
肉でも濃い味付けにすれば食えない肉はないっす
悪魔だから
毒は利かないっす。酔うけど。腐敗も発酵もわたしには一緒っす
あと
八つ裂きにされても死なないっす
シナリオの傾向によっては、ヒト型を性的な意味で食い散らかしてもいいっすよ
白子もミルクも大好きっす
「頭脳戦車っすか、なるほど……」
うん、飯綱・杏子は頷いて言葉を続ける。
「一度喰らってみたかったんすよね」
彼女の言葉を耳にすれば、今なんて言った? というつっこみを投げかける者も居ただろう。しかし彼女は食道楽の悪魔。なんだっておいしく頂ける。
「リビングアーマーや宇宙船の類いだって、きっと貝類みたいに美味しい可食部があるし、食器として活用するっす」
確かにハコベールくんは亀の形をしている。甲羅とかどんぶりにぴったりかもしれない。まじ?
彼女の言動に反応したのかそうでないのか、頭脳戦車は素早く脚部を換装、衝突上等の走行ルーチンへと変貌する。その素早い動きへと対応すべく、杏子がゆるやかに召喚したのは大型のフライ返し。
ぐん、と加速した戦車をフライ返しで押し留めると、のんびりとした掛け声をひとつ。
「いくっすよー」
よいしょっと。あっという間にひっくり返されたハコベールくんはうごうごと、その場で身動き取れずに手足を動かしている。
「そんじゃ、どこから味見していくっすかね」
どんなに癖のある
肉でも、食べ方さえ工夫すればなんだって美味しくいただける。
まずは脚部を斬っておくか、甲羅を剥いで鍋で煮込むか。すっぽん鍋の要領でいける、そう確信した彼女は、ある意味でまさに悪魔の飯テロリストである。
成功
🔵🔵🔴
浅間・墨
ロベルタさん(f22361)
やってきた戦車さんはと…とても可愛いですね。
一部でも壊すのは気が引けますが…仕方ないです。
ロベルタさんと連携し一体ずつ転がしましょうか♪
…。
暫く戦車さんと目を合わせながら刀の鯉口を切りますね。
んー。直刀が丁度良さそうなので『真改』にしましょう。
私を敵と認識したようで高速で行動を…っ。少し速い。
リミッター解除後に限界突破し平突きの構えで集中を。
戦車さんの車輪の片方部分に【石穿】を突き込みます。
そして直刀の峰部分に片輪を乗せて上へ弾きますね。
弾きは早業の2回攻撃と見切りに野生の勘で対応します。
戦車さんを宙に浮かせることができれば私の勝ですよ♪
あとはロベルタさんにお任せしますね。
あ。見切りと野生の勘と第六感は攻撃の回避にも利用を。
転がした機体を抱きかかえ…ると攻撃されてしまいますかね?
可愛い外見なのでついつい抱きかかえたくなります♪
ん。流石に今は厳しいでしょうから正常に戻ったら…で。
ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)
おー。芋虫みたいにうにうに動いて可愛いじぇ♪
墨ねーも言ってたけど壊すのが勿体ないね…。
準備体操しながらパフォーマンスと限界突破する。
一寸の間見合って動くときは凄い速いじぇ~。
墨ねーから聞いた作戦通りに僕は動くだけだじょ♪
やっぱり墨ねーの剣技は凄いねぇ~。そして綺麗だ。
戦車さん達を次々に浮かせていくのは流石だねぃ♪
…っと。僕もお仕事しなくちゃ。
まず浮いてる戦車さん達を一体一体抱き上げるよ。
次に戦車さんをひっくり返して地面に置くねぃ。
置くときは優しくおこうと思っているよ。
僕も戦車さん達の攻撃受けるかもしれないねぃ~。
見切りと野生の勘と第六感で避けてみようかな。
墨ねーが抱きかかえたくなるのは解る気がするじぇ。
僕も抱きかかえてみたいからねぃ~。
つんつんしたいけどやめておいた方が良いかな?
何かの拍子に戻るかもしれないし…♪
とことことこ。なんとも気の抜ける雰囲気で歩いてくる戦車の群れに、浅間・墨は思わずちいさくほほえんでしまう。だってこれは、とてもかわいい。
同じくそれを眺めるロベルタ・ベルディアナも、ハコベールくんをしげしげと見た感想を口にする。
「おー、芋虫みたいにうにうに動いてかわいいじぇ♪」
表現としてどうなのかは置いといて、かわいいと思っていることに変わりはない。
「こわ……の、気が……引……」
「確かに、壊すのがもったいないね。でもま、オブリビオンだし」
軽く準備運動をしながら応じるロベルタに頷いて、どう対処すべきかじっと見つめる墨。やがて刀の鯉口を切れば、ん、とちいさく呟く。
直刀がちょうどよさそうだから、これは“真改”がいいだろう。祖父から譲り受けた太刀を抜けば、ハコベールくんも墨を敵を認識したらしい。
「……っ」
素早く行動に踏み切る墨より、頭脳戦車はすこし速い。一気に動くその速度に、ロベルタもおよ、と軽く瞬きをする。それでも、少女がたじろいだり悩んでしまうことはなく。
「僕は墨ねーから聞いた作戦通りに動くだけだじょ♪」
自身のリミッターを解除し、限界を超える。す、と戦巫女が平突きの構えで集中したと同時、突撃してくるハコベールくん。
タイミングを合わせた瞬間に、えいや、と車輪の片方に石すら穿つ一撃を突き込んだ。途端、直刀の峰部分に片輪を乗せて、上へとぽーんと弾く。一度、宙に浮かせてしまば、それからのやり方はすべて同じ。次々と頭脳戦車の群れに突きを放っていく。
ぴょーんと宙を浮くハコベールくん。桜吹雪のなかで華々しく宙を舞うそれを見上げるロベルタ。お花見ならぬお亀見である。
「やっぱり墨ねーの剣技は凄いねぇ~」
そんでもってなにより、彼女の動作はとても綺麗で。ついつい見惚れてしまいそうになるけれど、はっと自分の役目を思い出す。
「……っと、僕もお仕事しなくちゃ」
とん。軽い足取りで地を蹴って、少女はハコベールくん達をまずは一体がっしり抱きあげる。うごうごと身動きの取れない亀をころんとひっくり返して地面へセット。
なるべくやさしく置いてやると、それまで勢いよく地面を走破していた脚は困ったように天を向いた。こうなってしまえば、いくらどんな環境でも動ける頭脳戦車とて無力。
少女ふたりの抜群の相性によって、辺り一帯には困ったようにあんよをじたばたさせるハコベールくんが設置されていった。ロベルタが絶妙な距離を保って配置していくものだから、空中から見ればなにかしらの地上絵ができている可能性がある。
さて、転がした個体を見つめた墨は、ふとその動きを止める。無口なお姉ちゃんがじっと考えていることについて、ロベルタもうんうんと頷き肯定する。
「墨ねーが抱きかかえたくなるのは解る気がするじぇ、僕も抱きかかえたいからねぃ~」
「は、い……♪」
これはあくまで戦うおしごと。いくらかわいい外見と言えども、攻撃されてしまうかもしれない危険がある以上、そんなことはできない。
できない――が、かわいいものはかわいい!
「つっつくくらいはしてもいいかもしれないじぇ?」
ロベルタが人差し指でちょいちょいとつつくと、無力化された亀はちょっとじたばた。しかしそれ以上の攻撃はできないようで、よちよちうごうごする以外の行動はしてこない。
「かわ……で……♪」
うれしそうにちいさく感想をもらす墨ねーを手招きして、ロベルタがじっと観察。観察日記とかつけるのかな。
「やっぱり抱っこするのはやめといた方がいいかな? なにかの拍子に戻るかもしれないし……♪」
冷静な判断のできる賢い少女に、墨も大人として、ん、と頷く。今は厳しいだろうから、正常に戻った時には思う存分抱っこしたい。
さて、そろそろ第二陣のハコベールくんが近づいてくる。ふたりは再び仲良し共同作業に励むのだった。これが終われば、おいしいかもしれないハンバーガーが待っていることだし。
大成功
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第3章 日常
『ディストピアバーガー!』
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POW : もりもり食べる!
SPD : がつがつ食べる!
WIZ : むしゃむしゃ食べる!
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デンジャラスなバイオ桜を根絶やしにして、暴走頭脳戦車をひっくりかえし、ストリートには元通りの賑やかさが戻ってきた。
ホログラムの桜の花弁が舞い散るなか、ハンバーガーショップの臨時キッチンカーも張り切っている。
ずいぶんとがんばったし、がんばらずともここらで花見を楽しむのも悪くないだろう。
サイケデリックな予感のするハンバーガーの味がおいしいどうかは、また別の話。
アラタマ・ミコト
これが『はんばーがー』というものでございますか。
極楽浄土でもあったという話は伺ったことがありましたが、味わうことなく現世に戻りましたので楽しみでございます。
見た目も『からふる』で食欲を唆るというものでございます。
……おかしいのです。
皆の手が全然進んでいないのです。
もしかして、あらたまちゃんの『りあくしょん』が間違っていたのではないですか?
即神仏になってあらたまちゃんの味覚もおかしくなっていたからよく分からないのですが、実は変な味だったのではないですか?
今から『りあくしょん』を変えるのも変なのです。
この『はんばーがー』は美味なのです!!
電子のピンクがひらひらと舞うなか、アラタマ・ミコトはキッチンカーの前に用意されたテーブル席に座って、噂の食べ物を手にしていた。
「これが“はんばーがー”というものでございますか」
極楽浄土にも存在したという話は聞いたことがあるが、なにぶんアラタマちゃんは実際にその食べ物を味わうことなく現世にかむばっくした即身仏。さぞやおいしいのではないかと楽しみにしていた。
「見た目も“からふる”で、食欲を唆るというものでございます」
少女は知らない、普通ハンバーガーのバンズはこんなに鮮やかなピンク色ではないことを。合成肉も照りと表現するにはツヤがありすぎるし、ソースもサイケデリックなマーブル色をしているのはほとんどないことを。
さて、それではいざ実食。ちいさな口を一生懸命開けてかぶりつく。
「ん……」
目を丸くして、しばらく停止。数秒後、
「美味なのです! なんとも刺激的な味がいたしますねぇ!」
はぐはぐとおいしそうに頂くアラタマちゃん。しかし、ふと周囲の客の様子を見てみれば、疑問符が浮かぶ。
そう、他の客の手が全然進んでいないのである。
「……もしかして、あらたまちゃんの“りあくしょん”が間違って……?」
即身仏となった己の味覚が、だいぶおかしくなっている可能性がワンチャンネコチャン。もしかしてこれって、いわゆる変な味の食べ物?
しかし、今から急に周囲に合わせてりあくしょんを変えてしまうのもおかしい感じ。おいしいと思ったのなら、きっとおいしいに違いない! だって自分はそう思ったんだもの!
「このはんばーがーは美味なのです!!」
そう大声で宣言してハンバーガーを完食するアラタマちゃんを、キッチンカーから店主がうれしそうに見守っている。はっぴーえんどだ。
大成功
🔵🔵🔵
ファルコ・アロー
ふー、何とかなったですね!
あのバイオ桜どもはともかく、頭脳戦車の方は気の毒でしたけど。
あいつらちゃんと直してもらえてると良いんですけどねぇ……ボクはボクでかなりエネルギーを使ったですし、ここで補給しておくです!
うーん、襲ってこない桜って良いものですね。
何となく電脳がわくわくしてくるです!
このハンバーガーってのも中々イケるですね。
初めて食べたですけど、甘いんだか辛いんだかよく分かんねー味だったんですねぇ。
この紫や緑の毒々しい色からは想像付かなかったですよ。
後はこれがバイオハンバーガーになって襲ってこなけりゃ良いんですけど……おい、暴れ出したら残りを一口で食っちまうですからね?
大人しくしとけです!
「ふー、なんとかなったですね!」
特に汗を流してはいないが、がんばった雰囲気的に額を拭う仕草をするファルコ・アロー。あのバイオ桜の群れはともかくとして、バグってしまった頭脳戦車達は気の毒に思える。
「あいつらちゃんと直してもらえてると良いんですけどねぇ……」
よく似たとおい親戚のような存在を心配するファルコちゃんの優しさが通じたのか、現在ハコベールくん達はプロのエンジニア達によって復旧作業中。無事に修理が完了すれば、また一生懸命荷物を運んでくれることだろう。
「ボクはボクでかなりエネルギーを使ったですし、ここで補給しておくです!」
キッチンカーからハンバーガーを受け取って、少女はホログラムの花びらを見上げる。
「うーん、襲ってこない桜って良いものですね」
実はここだけの話、一般的な桜は襲ってこないのが当たり前なんですよね。それはそれとして、なんとなく電脳がわくわくしてくる!
そうしてかぶりついたハンバーガーもなかなかイケるもので、ちっちゃくとも賢い電脳がキマってくる。
初めて食べた感想としては、甘いんだか辛いんだかよくわかんない代物だったのだなぁという体験談。
「この紫や緑の毒々しい色からは想像つかなかったですよ」
驚くかもしれないんですけど、なんと一般的なハンバーガーってこういう彩はしてないんですよね。とはいえ、おいしいことにかわりはない。なんとなく気に入ったファルコは、しゅわしゅわ炭酸ジュースと一緒に味わっていく。
あとは、これがバイオハンバーガーになって襲ってきたりしなければ……と、一瞬B級パニックムービーの続編のオチめいたことを考える。
「おい、暴れ出したら残りを一口で食っちまうですからね?」
大人しくしとけです! ハンバーガーを睨みつけてそう言い聞かせると、食べかけのそれはちょっぴりちいさく縮こまったように見えた。
大成功
🔵🔵🔵
浅間・墨
ロベルタさん(f22361)
空腹ではないので花見をしながらのんびりしましょうか。
座ってもいい場所を探してから桜観賞をしますね。
「…♪」
心地が良く暖かな風が桜の花びらを纏って落ち着きます。
周囲が淡い彩色の影響かゆっくり時間が進んでいるような。
…。
桜のチップは燻製で使用してもまだ大量に余る気がしますね。
丁度いいのでばーがーしょっぷに差し上げてもいいかもです。
お肉?…の一味違った味付けにいいかもしれませんから。
そんな取り留めないことを考えていると目の前をハコさんが。
どうやら元に戻ったようで一安心ですね♪そして可愛らしい。
今ハコさんを抱きしめても問題ないでしょうか?
それともハコさんは現在仕事中でしょうか?
私には判断がつかないのでそのまま見守るようにしましょう♪
改めて動き方が可愛いですね。見ていて飽きません。
『小墨』達を上に乗せたら更に可愛らしいかもしれませんね。
思いついて【式『小墨』】を私の周囲に召喚します。
『小墨』は思い思いに肩や頭や膝に乗ると遊び始めました。
ふふ…♪そういえば初使用ですね。
ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)
「おー♪ 綺麗な桜の道だじぇ~❤」
さっきまで墨ねーと一緒にのんびりしてたけど飽きたじぇ。
だから周囲を散歩してみることにしたんだじぇ♪うぇー♪
道に敷き詰められた桜の花びらと宙を舞う花びらが綺麗じぇ。
ホログラムでも本物でも桜や花びらはそんなに遜色ないねぃ。
時々キッチンカーのおっちゃん達に呼び止められるけど…。
…バーガーはあんまりお腹が減ってないからいいかなぁ~…。
お?キッチンカー以外で人混みが?しかも桜の樹…?
気になって行ってみたら…墨ねーが注目されてただけだった。
術で作った小さい墨ねーを何かの芸だと思ったみたいだねぃ?
困ってる墨ねーをよそに集まった人達は喝采してて面白い♪
「残念だけど、もうお開きだじぇ♪ ありがとーねぃ」
暫く見守ってたけど流石に助け舟に入ろーと思うじぇ。
お詫びも兼ねて抱きかかえてたハコベールくんを墨ねーに。
「へぇ~。こすずってゆーんだ? この小さい墨ねー」
始めてみる墨ねーの術の説明とか聞きながら桜の観賞だじぇ。
「おー♪ 綺麗な桜の道だじぇ~♡」
一仕事終えて、だいすきなお姉ちゃんと持ち込んでいたドリンクをのんびり飲んでいたけれど、それも飽きたロベルタ・ヴェルディアナ。
ちょっと周囲を散歩してくる、と浅間・墨に告げて、ホログラムの桜並木を歩いていく。
さきほどの暴れ桜による本物の薄紅と、宙を舞う電子の薄紅は微妙に色が違っていて、そのグラデーションが綺麗だった。
「ホログラムでも本物でも、桜や花びらはそんなに遜色ないねぃ」
てくてくゆっくりお散歩中の少女の姿を見たキッチンカーのオーナーがひとつどうだい、と声をかけてくる。
「……あんまりお腹が減ってないからいいかなぁ~」
というか、あのサイケデリックな雰囲気のヤバそうなハンバーガーに対する食欲はそんなにわかなかった。今はとにかくお散歩が楽しく、ぶらぶらとその辺を歩いてみる。
ふと、キッチンカーが駐車していない場所にひとだかりがあるのを見て、首をかしげる。
「桜の樹……?」
ホログラム製の樹の傍に何があるのか、気になって近づいてみれば、
「あれ、墨ねーだ」
――なぜだか、仲良しが注目されている。
散歩してくる、と宣言したロベルタを見送って、墨はちょうどいいベンチを見つけて桜を鑑賞する。メカニカルでけばけばしい電彩の世界にしては、このスポットは桜のおかげで比較的やさしい色彩をしている気がした。
「……♪」
心地よくあたたかな風。骸の雨が降っていようと、電子の花弁を纏っているせいか、なんだか今日は良いお天気。ゆっくりとした時間の進み方に、ほう、と安心のため息ひとつ。
ちなみに暴れ桜のチップは、燻製として使用してもまだ大量に余りそうだった。バーガーショップのオーナーに渡してみると、暴走を止めてくれただけでなく材料まで! と目を輝かせて喜んでくれた。
お肉? ……の、ひと味違った味付けにもいいかもしれないし。
とはいえ常人の味覚を持っている墨としては、味見する予定はないけれど。役に立ったのならそれで十分。
とりとめないことをぼんやり考えていれば、とことこと先ほど見たちいさな運搬ロボットの姿が在る。
「あ……ハコ、さ……♪」
修理を無事に終えたハコベールくんが、一生懸命歩いている。元に戻った姿に安心したのと同時に、そのかわいらしさを十分を堪能する。
抱きしめたい気持ちは山々だけれど、仕事中に触れてはいけないだろうし、素人にその判別はつかない。
墨はそのまま見守って、改めてその動きのかわいさに心を和ませる。見ていて飽きない光景だけど、もっとかわいくなるのでは? ととあることを閃く。
「お……いで、小墨……♪」
着物に袴姿の掌サイズの少女達は、墨にそっくりの式神。もちもちとした小墨達は、召喚された途端に思い思いの動きを始める。
ハコベールくんの上にちょこんと乗りだし、はたまた墨の肩や頭、膝へと乗って遊びだす。刀を持った巫女さんと、そのちいさなそっくりさん達に興味を惹かれた人々は拍手喝采。
「え、と……?」
「残念だけど、もうお開きだじぇ♪ ありがとーねぃ」
困った様子の彼女を見て、ロベルタが間に割って入って助け舟。また見せてよとか、今度は鎧武者がいいだとか、様々な言葉をかけて去っていく通行人に墨はよくわからないままちいさく頭を下げる。
「へぇ、こすずってゆーんだ? このちいさい墨ねー」
抱きかかえたハコベールくんを墨に手渡して、ロベルタはちょいちょい、と小墨をつっついてみる。くすぐったそうにした式神は、ぎゅっとロベルタの指にしがみつく。
そういえば、これが初めてのお披露目だったことに気づいた墨は、ささやかな声でロベルタに術の説明をする。大人しく抱きかかえられたハコベールくんと小墨の群れは、異文化交流を楽しんでいる様子。
「……♪」
「なるほどなるほど、そういう仕組みかぁ」
ふんふんと興味深そうに術の説明を話して聞いて、ふたりのお花見はしばらく続く。
スパイシーでデンジャラスな味覚を味わいながら、猟兵達は電子の薄紅を楽しむ。
夏になったら電子サーフィンができるんだぜ、などと若者に言われて、誰もが首をかしげつつ。
大成功
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