バトル・オブ・オリンピア⑥〜魔境の超HRダービー
「耐って、私の身体……はあああっ!」
水揚げされたばかりのマグロか何かの様だった。びったんびったんと全身を使って跳ねながらそのダークリーガーはボールを放り込む。声も表情も真剣そのもの、だがもうなんというか投球フォーム、と言っていいのかそれは完全に遊んでいた。
「うわぁ」
とか声が漏れても仕方ない。
「次よ!」
ガニ股でカクカク動きながら股の間からボールを投げたり、土下座を繰り返しながらボールを投げるなどやりたい放題である。ただし、その魔球の威力は本物だった。
「アスリートVSダークリーガーのこれまでの野球対決を締めくくる、数年に一度のスーパー野球大会って言うのがアスリートアースの世界にはあるみたいなんだけど」
説明を始めたルカ・トラモント(スーパーよいこの猟理師・f38575)によると、草野球からプロ野球まであらゆる「アスリートVSダークリーガー」の野球対決の結果を元にした「得点差」が付いた状態でこのファイナルリーグは始まるのだそう。
「決着がつけば全ての得点差を精算して恨みっこなしの状態に戻り、再びペナントレースが開始されるのが通例なんだって」
そしてこの余興としてあるダークリーガーが「超ホームランダービー」を挑んできたのだとか。
「ルールは簡単だよ。相手の投げてくるボールを9割ホームランできればみんなの勝利なんだって」
ただし、件のダークリーガーは摩訶不思議な「魔球」を何種類も投げ分ける幻惑ピッチャー。
「野球を得意とするダークリーガーで、ひとたびマウンドに上がればその魔球によって相手選手はおろか、球場すらも破壊するって話だけど……」
余興と言うコトでもあるからか、こちらを幻惑させる為なのか、奇抜な投球フォームでボールを投げ込んで来るらしい。
「投げる格好はともかく、投手としての腕とかは本物だから」
気を付けてとルカは君たちに釘を刺すのだった。
聖山 葵
余興、ならこういうのもありかもしれない。
という訳で、今回はダークリーガーの投げる魔球をホームランしていただくお話の模様です。
尚、このシナリオフレームには下記の特別な「プレイングボーナス」があり、これにのっとった行動をすることで、戦いに有利になるようです。
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プレイングボーナス:敵の魔球をホームランする。
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ではご参加お待ちしておりますね。
第1章 ボス戦
『ジェノサイドピッチャー』
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POW : 魔球『ジェノサイドアルゴル』
【敵を引き寄せ粉砕する変動超重力】を宿した【魔球】を射出する。[魔球]は合計レベル回まで、加速・減速・軌道変更する。
SPD : 魔球『ギガントダークネス』
【自身が投擲した球状の物体】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ : 魔球『眠りの森』
【催眠軌道を描く超スローボール】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
👑11
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夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
いえあの、これはボークでは?
ま、まあ、やってみましょう。
バットを『〈虚音〉』と融合させ『祭器』化、コースの見易いオープンスタンスに構え『FPS』を展開し投球のコースと時機をはかりますねぇ。
そして【仰域】を発動、『乳白色の波動』を纏いアッパースイング気味に打ちましょう。
【ジェノサイドアルゴル】で扱うのは『重力』、『非実体&攻撃手段のUC』と言う、吸収に適した全条件を満たしておりますので、バットに当たる前、『波動』に触れた時点で吸収可能ですぅ。
吸収した力は私の強化に変換されますから、それをバットに乗せれば相当な飛距離が狙えますので、[怪力]も合わせ、確実に振り抜きますねぇ。
「いえあの、これはボークで」
そう夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)が言いかけた時だった。
「来たわね、勝負よ!」
被せ気味に叫ぶと問答無用とばかりにダークリーガー、ジェノサイドピッチャーは大きく振りかぶる。余程ツッコんで欲しくなかったのか、余興なので細かいことは言いっこなしよと言うことなのか。
「ま、まあ、やってみましょう」
既に先方が投げる気になっていることでるこるもバッターボックスに立ち。
漆黒の刀身の脇差と融合させたバットを握るとオープンスタンスに構え
浮遊する涙滴型の水晶を展開する。
「私の魔球、打てるものなら――」
投球のコースと球を投げ込んで来るタイミングを探るるこるの視線を浴びながらダークリーガーは伸身のまま横回転を始め。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その衣を纏いて供物を捧げましょう」
珍妙と言うかどういう原理で横回転しているのかわからない謎投球フォームに一切惑わされることなく乳白色の波動を纏ったるこるは一歩足を前に踏み出し。
「それっ」
「な」
敵を引き寄せ粉砕する変動超重力を宿した魔球はアッパースイング気味に振られたるこるのバットの表面で跳ね返るようにして打ち出される。
「そんな……私の魔球が」
「宿っていた重力は吸収に適した全条件を満たしておりましたので、バットに当たる前に吸収して私の強化に変換させていただきましたぁ」
その結果が今も飛距離を伸ばしている打球なのであろう。怪力も合わせて振りぬいたバットが飛ばした球は一向に地面に落ちてくる様子はなくフェンスの上を超えてホームランが確定。
「こっ、こんなまぐれよ!」
投球フォームを変えてダークリーガーは再び魔球を投じるも。
「あ」
乾いた音を立ててライトスタンド方向に飛んだ打球はまたもフェンスを越え。ホームランを見送ったダークリーガーはその後何球も投げるが尽くホームランを打たれ。
「そんな……私の魔球が通じない、なんて……」
マウンドに膝をつくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
火土金水・明
聖山 葵マスターにおまかせします。かっこいい火土金水・明をお願いします!
人間のウィザード×マジックナイト、17歳の女姓です。
普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、機嫌が悪いと「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。特に、R18に抵触する行動等は、絶対にしません。
使い魔の黒猫「クロ」も依頼では一緒に行動していますが、戦闘でダメージを受けそうな依頼の時はお留守番をしています。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
「さ、さっきのは何かの間違いに違いないわ!」
流石にへこんで戦意喪失のままともいかなかったのだろう。ダークリーガーは滑り止めの粉末を布に詰めたロージンバッグを握りながら頭を振って。
「間違いかどうかはこの先の勝負で証明されてはいかがですか?」
とはバッターボックスに入った火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)の言。そんな主人の様子を
使い魔の黒猫が幾らか離れた場所で見守っているのは、戦闘ではないと言えど相手の投じる魔球に殺傷力を有すものがあることを鑑みた結果であるのか。
「さて、勝負と行きましょうか。そこで見ていてくださいね」
「そうするにゃ」
振り返った明が声をかければクロはちょこんと座ったまま即座に返し。
「そうね。挑んだのはこちらだものね」
この「超ホームランダービー」を挑んできた立場であることを思い出したのだろう。頷いてダークリーガーが投球フォームに入る。
「はぁぁぁぁっ!」
シャドーボクシングのような奇抜なモーションから投じられたボールは宿る変動超重力で周辺の景色を歪ませながらも明を引き寄せようとしながら突き進み。
「来ましたね。なら私は……ただ、得物の能力を信じるだけです」
銀の剣持ち替えたバットを明は振り切る。ジャストミートの瞬間にボールの一部と宿る変動超重力が破壊された魔球は空高く打ち上げられ。
「まだよ、まだいけるわ!」
またも頭を振ったダークリーガーはマウンドに頭をつけると倒立してブレイクダンスの様に頭を下にして回転し始め。
「はやさを、もっと、はやく――」
「あれ、意味あるんでしょうか?」
「知らないにゃ」
明とクロがお互いを見合って言葉を交わす間もダークリーガーは回り続ける。
「そんなあの技を」
だとか。
「無茶だ」
とかダークリーガー側の見物席から声が上がっているような気もしたがあちら側がいかに盛り上がろうが明からすると関係はなく。
「この投法を会得するまでに……かかった、時間はっ……無駄じゃ、ないっ!」
かっと目を見開き、ダークリーガーの指がボールから離れた。魔球に宿る変動超重力がボール近くの景色を歪ませ、明の身体もバッターボックスの中を引き寄せられ勝手に前へ進む、だが。
「投法がいくら変わろうとも魔球の種類が同じなら」
明はバットを振る。
「あっ」
バットが打球を討つ乾いた音にダークリーガーが声を漏らし。
「私はその球を打つだけです。そして次の猟兵の方に繋げる事」
バットを振り向いた姿勢のままで明は続ける。空に向けた視線で飛距離を伸ばす打球がホームランになるのを見届けながら。
大成功
🔵🔵🔵
フェトナ・ミルドアレア
魔球で幻惑してくるピッチャーさんですか~?じゃあこちらは魔眼という名の幻術で対抗しちゃいますよ~!
【しなやか幻術】の魅了でピッチャーさんの感覚を狂わせて幻惑し返しちゃいますっ
いくら魔球が凄くてもコースとタイミングが分かっていればケルベロスで猟兵の僕なら快音を響かせることは簡単ですっ
ピッチャーさんは厳しいコースを攻めて投げたつもりでいるかもしれませんが感覚が狂っていますよ~?
実際にはど真ん中の絶好球ですっ
感覚が狂わされて投球フォームも乱れて・・・というのはある意味元からでしたね~!
ともあれ体術が得意な僕の重心移動と振りかぶりにかかれば、この後もホームラン連発間違いなしですっ
共闘アドリブOKですっ
「魔球で幻惑してくるピッチャーさんですか~?」
そんな相手を前にしてもフェトナ・ミルドアレア(しなやか忍者・f40966)に動揺が一切見られないのは、対処手段を既に用意していたからだろう。
「今度こそ、私の魔球で討ち取って見せる!」
腰を低く落とし跳ねるようにダークリーガーが見せるのはコサックダンスのような動き。投球フォームを変えてきたのは、これまでの投球フォームでホームランを打たれてきていることもあったからか、だが。
「じゃあこちらは魔眼という名の幻術で対抗しちゃいますよ~!」
「な」
「現よりも生々しい幻を感じてみますか~?」
ボールが投手の手を離れる前の段階でフェトナは仕掛けた。
「うっ」
フェトナの金の瞳を見てしまったジェノサイドピッチャーは感覚を狂わされたようでふらついて尻もちをつき。
「あ」
フォームの崩れた状態で投げられた球が十全に威力を発揮できるはずもない。
「いただきましたよ~!」
にっこり笑って振ったバットは快音を響かせ。
「ああっ」
ホームランを打たれたダークリーガーの顔は歪むも、フェトナの幻術に狂わされた感覚はまだ戻らない。立ち上がろうとしてもよろけ。
「っ、う……このぐらいのことで、私は――」
何とか立ちあがって投じた次球を前にしてもフェトナの笑みは崩れない。
「ピッチャーさんは厳しいコースを攻めて投げたつもりでいるかもしれませんが感覚が狂っていますよ~?」
スウィングの音に続き再び快音が響き渡った。
「感覚が狂わされて投球フォームも乱れて……というのはある意味元からでしたね~!」
「うぐ」
煽って言ったのか素なのか立て続けにホームランを打たれたダークリーガーは苦い顔をするも、立て直すことはできずこの後も被ホームラン数を増やしていったのだった。
大成功
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夜刀神・鏡介
初めて見た筈なのに、頭のどこかに引っかかるこの投球フォームは……
いや、落ち着け。相手の投球フォームがどうであってもやるべき事に変わりはない。集中していこう
相手の魔球は幾つか種類があるようだが、その中でも厄介なのは催眠効果のあるものだな。眠ってしまえば野球どころじゃない
だが、アレはボールの軌道によって眠らせるものらしい。ならば対策は単純で、投げられたボールを見なければいい
流石に全く見ない訳にはいかないので、ボールが投げられる瞬間までは相手の様子をよく観察して
投げられた刹那に球速と大まかなコースを把握して目を瞑り、心眼と感覚でタイミングを見計らってバットを振るい、思い切り打ち返そう
「初めて見た筈なのに、頭のどこかに引っかかるあの投球フォームは……」
自身の番を待つ間に先の猟兵へダークリーガーがボールを投げる様を見ていたのか、零す夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は困惑と二人連れだった。
(いや、落ち着け。相手の投球フォームがどうであってもやるべき事に変わりはない。集中していこう)
もちろん、ただ困惑している場合ではないと気づいて頭を振って声には出さず自分に言い聞かせると、バットを一本引き抜いてバッターボックスへと向かう。
「これ以上は打たせない!」
一方でダークリーガーの方も狂わされていた感覚がようやく戻ったのか、しっかりと二本の足でマウンドに立つと、ボールを握り身体全体で卍の文字を表現しながら横回転を始め。
「っ」
その投球フォームにも思うところあったのか鏡介の肩が僅かに動くも、それ以上の反応は見せず回転するダークリーガーを注視する。
(魔球を投げてくるのは間違いないだろうが、中でも厄介なのは催眠効果のあるものだ。眠ってしまえば野球どころじゃない)
そして催眠効果の由来がボールの軌道によるものだと聞いていた鏡介がとった対処法は投げられたボールを見ないというもの。流石に全く見ない訳にはゆかず、ボールが投げられる瞬間までは相手の様子をよく観察し投げられた刹那に球速と大まかなコースを把握するという形であったが。
「はあっ!」
「……ここだ!」
目を瞑りながらも己の感覚と心の目を頼りにバットを振れば、乾いた音と共に鏡介の腕に手ごたえは伝わってきて。
「ああっ?!」
「何とかなったか」
目を開けた鏡介が見たのは空に舞う打球。
「そ、それなら――」
「む」
対象を眠らせることに重きを置いた魔球は何らかの方法で対処法を見出してしまえば、攻略も容易で。やたら頭のどこかに引っかかるあの投球フォームでダークリーガーがボールを投じてくることを除けば、何の問題もなく鏡介はホームランを量産してゆく。
大成功
🔵🔵🔵
東・御星
数々の魔球を駆使したダークリーガーの魔球をホームラン…。
うん、ホームラン。
私はどっちかというとテクニカル型だからなあ。
巨大化する魔球ね。ならこっちもそれで!
フォトンエッジを構えて【武器巨大化】【硬化】受けの【結界術】【オーラ防御】【多重詠唱】【破魔】で相手の魔球を受ける態勢を作って。
今回フォトンエッジは武器効果はなし、変則的だけどバットとして使用するわ。
そこに飛んできた巨大魔球に対して【瞬間思考力】【限界突破】【負けん気】【戦闘演算】蓮華の防御の結界で更に強化したバットで【切り込み】【居合】で振り抜いて、一撃必殺HRを決めてやる!
帰ったら瑞穂にいい土産話ができた―、って聞かせてやりましょ。
「数々の魔球を駆使したダークリーガーの魔球をホームラン……」
幾人かの猟兵が為してきたことではあるがそれはそれ。
「うん、ホームラン」
口の中で反芻した東・御星(紅塵の魔女・f41665)はちらりといつの間にかしゃがみこんでしまっていたダークリーガーの方を向く。
(私はどっちかというとテクニカル型だからなあ)
思うところはあるようだったが、そんな御星の存在がまだ打者が居るという認識としてホームランを打たれ続けたダークリーガーの戦意を再び燃え上がらせたようで。
「そうね。私が挑んだのだもの……何球でも投げて見せるわ」
ユニフォームに着いた土を払いながらダークリーガーは立ち上がる。そして立ち上がったかと思えばマウンドにごろ寝し、肘をついた腕で頭を支えるようなポーズでボールを投げてくる。
「巨大化する魔球ね。ならこっちもそれで!」
やる気の対極と取れそうなフォームで投げられた魔球が肥大化してゆけば御星もどのような効果をもたらすかを把握してオーラで身を守りつつ多重詠唱して結界術も用いながら構え。
「蓮華ちゃん、あなたの結界が役に立つ時! 力を貸して!」
片手を離して中空に文字を描きながら呼びかけると。
「氷炎龍伍ノ型・『蓮華』!」
巨大な魔球は声と共に巨大化しつつ振りぬかれたモノへとぶつかった。
「なん」
本来御星をも押しつぶさんとした魔球は結界に阻まれ威力を減じ、減じたところをジャストミートされれば、飛ぶ向きを変えて空を高く、高く。
「一撃必殺HRってところかしら?」
自身の打球を見送って師に対するいい土産話ができたと思う反面で。
「それも帰ったら聞かせてやりましょ、って話だから」
これは超HRダービー。一投されて打って終わりとはならない。御星が結界術をもって結界を張り直そうとすれば、ダークリーガーもまた、起き上がってからマウンドにごろ寝するようなフォームをとる。
「まだ私は投げられる! 今度こそ」
「まぁ、投げて来るなら打つだけだから」
あきらめるつもりはないようだったが、結果は同じだった。そうして、三度、四度。御星もまたホームランを重ねてゆくこととなる。
大成功
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クリスティアーネ・アステローペ
ええと…彼女が投げる球を撃ち返して客席まで飛ばせばいい、のよね?
こうしてみると結構距離もあるけれど…
流石に固定されたボールに当てて飛ばすくらいはできるはずですし、
【咎を穿て、赫き杭】で《串刺し》にして縫い留めたボールを《怪力》を込めて《なぎ払い》、《吹き飛ばし》ましょう
どんなに複雑な軌道を描いても魔球が宿した重力で自分から刺さりに来るでしょうし
ストライクゾーン、でしたっけ?この範囲には最終的に来るのでしょう?
ならええ、逃しはしないわね
ところで、この場合杭を構成する呪詛ってどういうものになるのかしら?
ルール無用されてる球場だとか野球という種目が抱いたもの、とか言うと私も同罪よねぇ…コレ
「ええと……彼女が投げる球を撃ち返して客席まで飛ばせばいい、のよね?」
実際それを重ねて猟兵側はホームラン率九割以上を保ったままここに至っている。クリスティアーネ・アステローペ(朧月の魔・f04288)のそんな声を聞いたならダークリーガーは直ちに頷いていたことだろう。
「出来るものならね」
と。ホームランを打たれ続けている現状では虚勢ととられるかもしれないが自分から挑んできた以上、クリスティアーネという打者が居るのにマウンドを降りる気はないらしい。
(こうしてみると結構距離もあるけれど……)
バッターボックスからフェンスの向こうの客席までをクリスティアーネは視線で何往復かし、声には出さず唸る間にダークリーガーはロージンバッグを拾い上げると二度三度と握ってマウンドに落とす。
「相手がいるなら、私はボールを投げるだけ……」
靴に生えたスパイクがマウンドの表面をかき、クリスティアーネへ背を向けると両腕を広げ空を仰いで。
「あ」
とてもボールを放つようには見えないそのポーズから球は投げられた、ただ。
「生者は止まれ。己が過去を枷として、過去ならば瓦解せよ。骸の海へと立ち返れ。汝を裁くは顕世の法理。贖え、己が血潮と痛苦を以て」
詠唱に続いて地面から放たれる血と呪詛と祈りで作られた無数の杭がダークリーガーの手を離れたボールへと突き刺さり、魔球に宿る変動超重力に砕かれながらその威力を相殺してゆく。
「想定とは違いますが、ストライクゾーン、でしたっけ?」
最終的には来ると思っていた範囲へとやって来たボールを捉え。
「ええ、逃しはしないわ」
クリスティアーネはバットを振りぬいた。
「ところで、この場合杭を構成する呪詛ってどういうものになるのかしら……そうも思ったけど」
ぐんぐん打球が飛距離を伸ばしつつあるからこそ生まれた余裕にクリスティアーネの視線はマウンドと自身の立つ場所の中間へと向く。生憎先ほど放った杭の数々は魔球に宿った力に粉砕されたこともありその場にはもう存在もしていない、していないが。
「ルール無用されてる球場だとか野球という種目が抱いたもの、とか言うと私も同罪よねぇ……コレ」
嘆息しつつバットを構えたのは、一球打って終わりではないからで。
「やあああっ」
「生者は――」
魔球を投げ込んで来ようとするダークリーガーへ対し、クリスティアーネは再び詠唱を開始する。同じ魔球に対し、同じ対処法を取るならば、結果は明らかで。
「何とかなったわね」
幾本ものホームランを打たれ崩れ落ちるダークリーガーを前にバッドを手放したのは、少し後のこと。こうして猟兵たちはダークリーガーへ勝利したのだった。
大成功
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