探し求めるは勇者の伝説、沈んでしまった願い事
●あるギルドでの会話
「なぁ知ってるか?湖に隠された秘密の話」
「またその話?君も物好きだねぇ。そう語られてはいる、でも今は水の底さ。確かめる術なんてないんだよ」
「でも……」
「そうとわかったら仕事仕事、溜まってるんだからな?」
「わかったよ」
さっさとギルドを出て仕事へ向かう二人組。二人のいたテーブルに残されたのは湖の絵とそこに記された『石碑』の記述のみ──。
●伝説を探し求めて
「皆さん集まっていただき感謝なのですよ!」
ぺこり、フルール・トゥインクル(導きの翠・f06876)は集まった猟兵達に向けて頭を下げる。
「今回皆さんをお集めした理由……なのですけど、その前に皆さんは群竜大陸ってご存知ですか?」
その言葉にアックス&ウィザーズ以外の出身やそこまで別世界の知識を持たない猟兵達が首を横に振る。それを確認するとフルールは丁寧に説明を始めた。
群竜大陸、それはかつて勇者たちに滅ぼされた帝竜ヴァルギリオスが住まう土地と言われている。帝竜ヴァルギリオスと共に蘇ったと言われているがその所在は定かではない。
もし蘇ったと言われる帝竜ヴァルギリオスが先の戦争で打ち倒した銀河皇帝と同じオブリビオン・フォーミュラであるならば、住処である群竜大陸の発見は必須である。だが、今のままでは手がかりが一切ない。
「そこで、皆さんには勇者の伝説を追っていただきたいのです!」
伝説?と猟兵達が首をかしげる。
「はい、伝説なのです。実は各地にはいろんな勇者の伝説が残されているのですよ。それを皆さんに追っていただいて、伝説が本当であればそこに残されたものを集めていただきたいのです」
なんでまた、と言いたげな猟兵達にフルールは続ける。
このような伝説には勇者の意思が残されている可能性が高く、集めていけばいずれ群竜大陸に続く可能性のある予知が得られるかもしれないのだ、と。
ただ問題もある。かつて群竜大陸には数千人の冒険者が向かったと言われている。多くの冒険者は沈みゆく群竜大陸と命運を共にしたとも伝えられており、戦いで命を落とした冒険者全員が勇者として称えられているのだ。
つまり……。
「勇者の伝説、といってもそれこそ真偽を抜きにしてもたーっくさん残されているのですよ」
たーっくさんなのです!とぐるんぐるん円を描くフルール。
とはいえ途方もない話だ。だからそれだけに集中することもない、と彼女は言う。
「今回は湖の綺麗な街にお送りしますのです。そこでギルド体験などしていただいて、アックス&ウィザーズの日常を知っていただけたらと思うのですよ。そのついでに伝説について聞いてみたらいいと思うのです」
例えば依頼人やギルドの面々、通りすがる街の人に聞いてみるのもいい。何か手掛かりがあればそれを追えばよいのだから。
アックス&ウィザーズの世界を楽しんでいただけたら私も嬉しいのです、とグリモアを用意しながらフルールは猟兵達に微笑むのだった。
心音マリ
心音マリでございます。またアックス&ウィザーズです。好きなんですこの世界。
今回のシナリオでは日常パートでアックス&ウィザーズの世界(ギルドのお仕事)を体験していただきながら勇者の伝説の噂を探していただきます。
見事、勇者の伝説を見つけることができましたら、その真偽を追って冒険していただきます。仔細は勇者の伝説の話が聞けたとき(2章の頭)でできることでしょう。
それまではアックス&ウィザーズのほんのりした日常をお楽しみください。でも、伝説探しはお忘れなきよう。
それでは皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
第1章 日常
『ギルド体験記』
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POW : ゴブリンからドラゴンまでどんとこい、討伐クエスト
SPD : 珍しい薬草や鉱石を素早くお届け、採取クエスト
WIZ : その他魔術についてお困りの方はこちら
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オウカ・キサラギ
SPD
ギルドに所属したことはないけど、ソロで何度か酒場の依頼をやったことあるからお仕事自体は慣れたものだね!
とは言っても猟兵になってからこういう依頼は受けてなかったから、油断しないようにやらなくちゃ!そして伝説の噂も確かめるぞ!
【毒使い】【マヒ攻撃】【医術】で薬草に関しては結構詳しいよ!
【情報収集】でこの辺の気候について調べて群生してそうな場所を割り出すぞ!あとは【第六感】を頼りに探し出す!
鉱石はあまり詳しくないから壁を叩いた音を【聞き耳】で聞き分けてそれっぽい場所を【早業】でガンガン掘っちゃう!
仕事が終われば【コミュ力】でギルドの職員や他の冒険者とお話して伝説の噂も確認しちゃうぞ!
●ギルドの仕事
「うーん、と……」
手慣れた様子で依頼を選んでいる少女が一人。彼女はオウカ・キサラギ(お日様大好き腹ペコガール・f04702)今は自身にこなせそうな依頼を探している最中。
オウカはギルドに所属した経験はない。しかし一人で酒場の依頼をこなしていた経験がある。猟兵となってからは久しぶりの依頼となるが、過去の経験は確かな力だ。
「うん、これならできそう」
選んだのは質のいい薬草を集めてくる依頼。普通の薬草ならいざ知らず、質の良さを求められた場合その難易度は上がる。薬草の適した生育環境、気候などを知っている必要があるためだ。だが、オウカには薬草に関する知識があり、さらに事前にこの地域の気候などの下調べをしておいたため、生えていそうな場所はある程度見当がつく。この依頼を選んだのは適切と言えよう。
「じゃ、いってきまーす!」
「お、気を付けてなー……ってあの子体験で来てる子だよな。手慣れてて全然気づかなかったや。声かけてやればよかった」
元気に飛び出していくオウカを見送って、受付のギルド員は一人呟いた。
街の外へ出たオウカの目に飛び込むのは大きな湖。この街の観光名所でありシンボルともいえる。だが彼女の目的地はそこではない。街道を進み、近くの森へ。そこから街道を逸れて奥へと進む。少しうっそうとしている森の中を周囲を警戒しつつも、上を見ながら日当たりの良い場所をいくつか探せば──。
「たぶんこの辺りにありそうな……うんうん、内容に見合う薬草みっけ。後はこれを持ち帰って……少し残しておこうかな」
葉の色つやに問題ないと一人頷く。無くなってしまわないように多くはとらず必要な分だけ採取をし、依頼は達成。後は帰るだけだ。
「よう、嬢ちゃん。体験にしてはなかなか手際がよかったじゃねーか」
「まぁね、ソロで何度か酒場でこなした経験があるんだよ」
「なるほどなぁ、どおりで」
仕事を終え、帰ってきたオウカはギルドの受付に声をかけられていた。何気ない世間話が続くが、忘れてはいけないと勇者の伝説の話を口に出す。
「そういえばこの街に勇者の伝説の話ってないのかな?」
「勇者の伝説?なんでそりゃまた……って冒険者なら憧れるもんだし気持ちはわからないでもないなぁ」
はっはっはと笑う受付の男。
「と、肝心の疑問に答えてないな。まぁ俺はこの街の出身じゃないから詳しくは知らないが、勇者って呼ばれる人の中にこの街の出身のやつがいたって言われてるのは知ってるぞ。幼馴染の集まりなのか何人かでチームを組んでたって……ん?」
「どうしたの?」
「いや、そういえばそういう話を聞くわりに、この街には証拠や称えるみたいな像や石碑とか見たことないなぁって思ってな」
「ふむ……」
聞いた話をメモし、オウカは考える。どうやら勇者として称えられた冒険者がいるという話はあるがふんわりしていてまだまだ掴めそうにない。それこそ数千人が向かったのだからどの街に一人以上いてもおかしくはないのだから。ただ──。
「像や石碑も、存在を示すものは何もない、かぁ」
それは何もないと同じであるようなはずなのに何かの手掛かりにも思えるのだった。
成功
🔵🔵🔴
四季乃・瑠璃
緋瑪「ギルドかぁ…ねぇねぇ、賞金首の討伐とか暗殺依頼とか無いの?え、無い?そっかー」
瑠璃「まぁ、そんなの『表』の依頼には無いよね」(ボソリと)
緋瑪「なら、討伐クエストかな!大物狩りして成果を示せば情報とか話してくれると思うんだ!」
瑠璃「そうだね。こういうワイルドな世界だし一目見て凄い!って示せれば情報は得やすいかも…」
【ダブル】で常に分身
高難度の大物討伐に出発。得意の【範囲攻撃】を活かしたジェノサイドボムを駆使し、二人の連携でドラゴン等仕留める。
討伐の証の爪や牙、角等を持ち帰り、ギルド近くの大きな酒場等で二人で証を出しながら(ジュースで)乾杯。
冒険者の人達に一目置かれながら【情報収集】するよ
●平原の片隅で
「そっちにいったよ!」
「わかった、仕留めるよ」
街から街道を通り森を抜けた先の平原、そこで人の倍ほどもある熊に似たモンスターを狩る二つの影があった。吠え、威嚇し、邪魔するのならば吹き飛ばすと駆ける熊の前に片方の影から何かが投擲される。
ボンッ!!!
それはクマに触れた瞬間に爆発するとその巨体を吹き飛ばし大地へ叩きつけた。
「ふう、無事に終わったね」
汗をぬぐうのは熊を仕留めた方。彼女は四季乃・瑠璃("2人で1人"の殺人姫・f09675)といい、忘れぬうちにと討伐の証となる牙を採りにかかる。
「いやー、これも大きいね!さすが大物討伐!」
そんな瑠璃の様子をどこか楽しそうに眺めている瑠璃そっくりな少女、彼女は緋瑪という。多重人格者であり主人格である瑠璃の別人格である。
”これも”という言葉の通り、彼女達はギルドの依頼にある難易度の高い討伐依頼を(ギルドの受付に止められるのも構わす)片っ端から受け、こなしていたのだ。ちなみにこれで5件目となる。
「これで受けてた依頼は全部だよ、帰ろう」
「え、もう終わり?やっぱり賞金首の討伐とかの方が楽しかったんだろうなー」
「だから、あくまで体験なんだからそういうのはあってもくれないよ」
ちぇっ、と他愛もない(しかし内容は物騒な)話をしながら二人は街へ戻っていく。その荷物にはこれまでに倒したモンスターの証をしまって。
ところ変わってここは酒場。一仕事終えた冒険者たちが集い、情報を交換し、苦労を労い、疲れを癒し、飲み時に暴れる騒がしい場所だ。本来なら。
ところが今はどうだ。しん、と静まり返り、その目はとあるテーブルの上に注がれている。もちろんそのテーブルを使っているのは依頼帰りの瑠璃と緋瑪だ。
「な、なぁ、嬢ちゃんたち?それ、嬢ちゃんたちが倒したのか?」
ガタイのいい冒険者の一人が話しかける。彼が示すのはテーブルの上に置かれた彼女達の戦利品だ。
「もちろん!私と瑠璃の連携でちょいちょいっとね!すごいでしょ?」
緋瑪の言葉に静まり返った酒場がざわつく。しかし、冒険者というのは見かけによらないもの。その実力は成果によって判断されるのだ。そして現に成果は目の前にある。徐々にであるが冒険者たちの目つきが変わり始め、ついには──。
「こいつ倒した時の話聞かせてくれよ!」「ずるい俺も聞きたい!」「待て待て戦い方が聞きたい、参考程度でいいから!」
二人に話を聞こうと立ち上がり動き始めた。テーブルには冒険者が押しかけ、差し入れだと料理とジュースが追加で置かれ、それはまぁ喧々囂々の大騒ぎ。
「ええと、話してもいいけど、その前に聞きたいことあるんだけどいいかな?この街の勇者の伝説の話を知りたくて……」
瑠璃の言葉に冒険者たちは顔を見合わせる。そして、次から次へと知っている勇者の伝説の話が飛び出した。
曰く、この街の勇者と呼ばれた冒険者はみな幼馴染だった。
曰く、勇者たちはみなで帰る約束をしていた。
曰く、その願いをどこかへと刻んだ。
得られた情報を纏めるとこれだけの成果が手に入った。情報としてはかなりのものだ。だがしかし、冒険者に捕まった彼女たちが解放されるまで、この後ゆうに数時間かかったことは伝えておくべきだろう。
大成功
🔵🔵🔵
甲斐・ツカサ
【SPD】で判定
モンスター退治だけじゃない、色んなものを探すのも冒険だよね!
特に薬草はケガした時にも疲れた時にもお世話になるし、鉱石は武器や防具に必要だし、冒険とは切っても切れない物
たくさん集めてみんなにももっと冒険を楽しんでもらおう!
この世界を含めて色んな世界で手に入れた知識を元に採取場所を予測、そこまでRay-GuSTARでひとっ走り!
近い場所なら冒険者のみんなも行けるだろうし、行き辛い遠くや危ない場所を目指そう!
勿論、そこに行くまでだって一つの冒険だしね!
冒険がこの世界の日常だし、オレの日常
楽しい世界だよね、ここ!
目指せ、勇者と並ぶ冒険家!
……って事で、何か勇者の伝説とか知らない?
●流れゆく景色、世界の彩り
「モンスター退治だけじゃない、色んなものを探すのも冒険だよね!」
愛用のバイクRay-GuSTARに乗り、甲斐・ツカサ(宵空翔ける冒険家・f04788)は大地を駆けていた。片手には一本の木の枝。しかしただの枝ではない、その枝先には膨らんだつぼみがいくつもついている。
『森の奥に生えている薬の元になる木の枝を採取してきてほしい。目印はこの時期に咲く桃色の花』そんな依頼の依頼品だ。これだけのために軽い山登りを強いられることになったが、元気いっぱいのツカサにとっては何のその。
バイクに乗せられた荷物袋には他にもたくさんの素材が入っていた。例えば切り傷によく効く薬草、例えば流行り病の特効薬にもなる珍しい花の花びら、例えば武器の素材となる鉱石、例えば魔力を含んだ魔法石。これら全てツカサの知識による推測と、冒険のたまものである。
一つ一つ詳しく伝えられないのが残念であるが、他の一般的な冒険者が行きにくい場所の素材を集めようと彼はバイクを走らせていた。
先に他の冒険者(おそらく話に聞くと猟兵であろうと思われる)が多数の大型モンスターを討伐してくれていたおかげで彼の旅路は順調そのものだ。
「わぁ!!!」
街への帰り道、ふと丘の上でツカサはバイクを止めた。そこから見えるのはギルドのある街との近くの大きな湖、周辺は草原となっており、馬車の通り道だけが街道となって土を覗かせている。風が吹けば草がなびき、遠くの森の木々が揺れる、あの森は手に持つ枝を採取した森のはずだ。視線を少し上に向ければ輝く太陽と青い空に鳥たちの姿。
美しい景色、それもまた、冒険の一つ。
「……あれ?」
そうやって景色を楽しんでいたツカサはあることに気が付いた。
「丸い……こんなに丸いものなのかな?」
くるり、指がなぞるように空中に円を描く。彼がなぞっているのは街の隣、湖の縁だ。自然にできたにしては不自然に思えるほど、湖は綺麗な円を描いている。
しかし疑問は考えても答えが出るものではなく、長い間ここにいるわけにもいかない。バイクいっぱいの冒険の産物を待ち望んでいる人たちがいるのだから!
「ただいま!持ってきたよ!」
「助かったよ、ありがとね」
街へ戻り依頼の品を渡しながらツカサは交流を深めていく。大抵はまだ若い子供に見えるツカサに驚くが、もたらされる望みの素材にすごいと感嘆の声を漏らし感謝の言葉をかける。
「小さいと思っていたけどもう立派な冒険者ね」
「へへへ、目指せ、勇者と並ぶ冒険家!ってね」
ブイサインをしてみせるとそのまま勇者の伝説について尋ねて回る。
手がかりを得たのはある老婆からだ。
「伝説、ねぇ。勇者たちが願いを込めた石碑がある、というのは聞いたことがあるよ」
「願い?」
「そう、願い。でも、どんな願いか知られたくなかったのか勇者たちはその石碑を隠してしまったそうだよ。ウソかホントかはわからないけど、ホントならどんな願い事をしたのかねぇ……」
「勇者の願い事が込められた石碑、かぁ。それを見つけに行こうとしたらそれもまた冒険、かな?」
「ほっほっほ、ボクは本当に冒険が好きなんだねぇ」
キラリ、人々と話すツカサの後ろで湖が日の光を浴びて輝いた。
成功
🔵🔵🔴
月宮・ユイ
SPD
世界を旅する旅好きの冒険者として街を訪れます
口下手な私は話をするのは苦手ですが、お話を聞くのは好きです
なので訪れた地の話を聞く今回の任務、とても楽しみです
まずは、解け込む為にもお仕事ですね
依頼人ともお話できるかもしれませんし、採取・日常系のクエストを選びましょうか
”トンネル堀り、失せ物探し、掃除、目立たない、追跡、暗殺、世界・戦闘知識、礼儀作法”
【幻影兵団】も使えば、日常系から難しい採取まで色々お任せ下さい。
”聞き耳、情報収集、誘惑”
仕事終りにはお食事処で話を集めるのも良いですね。お酒が入ってると饒舌になってくれますし。あら、こうした手段は結構得意なのですよ、私
アレンジ・アドリブ絡み歓迎
●猫と街とお話と
「ペット探し、ですか」
月宮・ユイ(死ヲ喰ラウ連星・f02933)は依頼主から話を聞いていた。なんでもペットの猫たちが逃げ出してしまったのだとか。彼らを捕まえるのがユイの仕事だ。
「私の猫たちは可愛くてね、例えば──」
「は、はぁ……」
いや、仕事だった。というのも依頼主はそれはそれは楽しそうに猫たちのことを語り始めたからだ。ユイとしては話を聞くのは好きであったがこのまま捕まっていては仕事ができないので困ったものだ。仕方がない、と彼女は自身の扱うユーベルコードを起動。無言で現れたいくつもの幻影体が動けないユイに代わり猫を探して街へと散った。
元より探しモノや追跡能力に優れているユイだ。その彼女が扱う幻影体もまた発見されにくいという特性を生かし(依頼人がとてもよく語ってくれたというのもあって)探していた猫を捕まえてはユイの元へと運んでくる。1匹、2匹、3匹……11匹目が届けられ無事に逃げ出したという猫探しは完了。まだ語り足りなそうな依頼人から報酬と話を聞いてくれたお礼にとお菓子を受け取るとユイはその場を後にした。
その足で彼女が訪れたのは近くの食事処。酒場とはまた違う雰囲気であるがここにも住人や冒険者は訪れるものだ。
「おや、君はさっき猫好きの彼女に捕まっていた子じゃあないかい」
「あ、はい。依頼で猫探しのお手伝いをしていました」
「あっはっはっは、その様子だと何とかなったようだが話を遮る技量も必要かもしれんなぁ」
ユイに話しかけたのは声の大きい初老の男性だった。お酒が入っているらしくいくらかお酒の匂いが鼻を掠める。
なんだか今日は話したがりの人によく絡まれる気がする。そんなことを考えながらもいくらか話をすればこの街の出身だというその男性は面白い話をしてくれた。
「そうか、君は旅をしているのか。なら外の湖はもう見ただろう?あそこにはな、街が沈んでいるんだ」
「街が、ですか?」
「そうとも。昔、この街はいまの湖がある場所にあったんだ。しかしながら窪地でね、よく水害に悩まされていたのさ。だというもんで、何代か前にここに街を移したんだ。んで、残しておいて盗賊でも住み着いたら困るってんで昔の街は沈めてしまったのさ」
「かなり大きいですけど、どうやって沈めたんでしょう?」
「さぁなぁ。大方エルフやフェアリーの力でも借りたんじゃないかね。しかし……」
「しかし?」
「いくら帰ってこなかったとはいえ勇者たちの故郷を沈めたというのは彼らにとってどうなんだろうなぁと思うことはあるよ」
ユイは眼を見開いた。口にしていない勇者の話題が出るとはあまり思っていなかったのだ。
「勇者が、いたのですか?」
「そういわれてるなぁ。といっても街が湖の場所にあった時代の話だ。証拠なんぞ探そうにも水の中さ」
どこか遠くを見るような瞳にユイは彼が決して酔いで妄想などを言っているのではないと確信していた。勇者の伝説、それを追うのならば行くべき先はきっと……。
成功
🔵🔵🔴
セシリア・サヴェージ
なるほどギルド体験ですか。この世界について理解する良い機会ですね。
どのような仕事でもお任せください。騎士はそれが正しい行いならば内容を選り好みしないものです。
やはりモンスターの退治が主なものなのでしょうか?
ギルドの方が同行するなら道すがら勇者の伝説の詳細や手がかりを聞いてみましょう。
もちろん仕事も引き受けたからには手を抜きません。しっかりとこなしてギルドに貢献しましょう。
アーチス・カーライル
アドリブ・絡みOK
湖に隠された秘密、勇者の伝説!
わくわくするわ!あたしの探求心がくすぐられる~っ!
勇者の伝説を探ればいいのね。
あたしはじゃあ採取クエストでも挑戦してみようかしら…
薬草とか、一応それなりの知識はあるし、色々と小回りがきくから何か探すのは得意なの。一応探索者の端くれでもあるし!
装備はフック付きワイヤーもあるし、結構どこでも行けるかも…?
ギルドのお仕事を通して噂をいっぱい集めて…とにかく数を集めるわ!
真偽はあとから、とにかく噂をいっぱい!
●守るべき日常
「湖に隠された秘密、勇者の伝説!」
わくわくする~!とアーチス・カーライル(真理の探究者・f14237)はそのオレンジの髪を躍らせながら跳ねまわる。
「はっはっは、元気なことだ」
「そうですね。見ているこちらも元気になります」
アーチスの少し後ろから後を追うようにセシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)は歩きながら隣で楽しそうに笑うギルド所属の男性冒険者に同意を示す。
元々アーチスとセシリアは別の依頼を体験として受けたのだが、その内容が『近くにモンスターが住み着いて採りに行けなくなった薬草を採ってきてほしい』というものと『薬草の採取場の近くに住み着いたモンスターを退治して欲しい』というもので、目的地が一緒だったのだ。
それならば一緒に行った方が早く、退治も楽だろうということで二人は合流。道案内を名乗り出た手伝いのギルドの冒険者を加えた三人で街道を歩くことになっていた。
「それにしても、ギルドの仕事というのは身近なものが多いのですね」
ふと、ギルドで見た依頼の内容を思い出したセシリアが呟く。
「失くしたものを探したりー、届け物してほしいっていうのもあったよね!」
「まぁギルドって言っても大抵何でも屋みたいなものだからなぁ。ただ最近はギルドの優秀な働き手がちょーっとな」
「なにかあったの?」
こてりと帽子を押さえながらアーチスが首をかしげる。が、その時、狼のような遠吠えが響いた。続いてがさがさと駆けるような音も耳に入る。
「……お話の続きはこのモンスターを退治してからでよろしいでしょうか」
剣を振りぬきセリシアは構え、ギルドの男性も獲物であろう短剣をもって臨戦態勢だ。慌ててアーチスも可愛らしい杖を構える。
「いきます」
足音と共に現れたのは狼が変質したのであろうモンスターの群れ、セシリアの言葉と共に戦闘が始まり。大した時間もかかることなく終わった。数々のオブリビオンと戦ってきた二人だ、これぐらいの敵ならばたいしたことはない。
どちらかといえば杖で狼を殴っていたアーチスをギルドの男性がすごい顔で見ていたぐらいか。魔法ではなく打撃武器だったんだなぁ……。
「おしまーい!」
一仕事終えてアーチスは伸びを一つ。くるりと視線を動かせば目的の薬草はそこいらにある。集めるのは簡単そうだ。
「それで、さっきのお話の続きだけど、ギルドの人に何かあったの?」
ぷちぷち、ここまで来たのだからと三者三様に薬草を集めながら疑問が再び投げかけられる。
「ああ、その話か。いや何、優秀なギルドメンバーがいるんだけどそいつが今、勇者の伝説を追うんだ!とかで全然仕事しなくてさぁ」
「勇者の伝説ですか?」
探していた単語に二人は顔を見合わせる。まさか猟兵以外に追っている人がいたとは。
「そう。聞いたことぐらいあるだろ?どっかの冒険の時にこの街の勇者にまつわる文献を見つけたらしくてな。確かめるんだーってもうそればっかりなんだ」
おかげで仕事が溜まって溜まって……いや、君たちみたいに体験したいって人のおかげでだいぶ助かってるけどな。と拝むような動作をする男性。
「お兄さんはその話詳しく知ってるの?」
「ん、ああ。なんでも湖の底に勇者の残した何かがあるんだって言ってたな。勇者達の暮らしていた街は今は湖の中だが俺は残したそれが何か知りたいんだと」
「湖……」
薬草を採る手を止め、顔を上げれば大きく丸い湖は嫌でも目に入る。
「なんだ?そう詳しく聞きたがるってことは興味があるのか?」
「うん!探求心がくすぐられるの!」
「はい、ちょうどその手をお話を追っているのです」
「なるほどなぁ……」
少し考える様子を見せると男はわかったと頷いた。
「それならそいつが仕事から戻ってきたら声かけておいてやるよ。追い求めたい気持ちもわかるしな」
願ってもない言葉にセシリアは頭を下げ、アーチスは跳び上がって感謝を示す。仕事から戻ってきてから、という少し時間がかかりそうなものであったがそれでも詳しく知っていそうな人を紹介してもらえるのはありがたい。
「まぁそれに、あいつ一人じゃいつまでたっても進展ないもんな……」
たくさんの薬草を抱えた帰り道、相変わらず先頭で楽しげに歩くアーチス。そんな彼女を見ながら男が呟いた言葉を耳にしたのは隣にいたセシリアだけだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
フィオリナ・ソルレスティア
【ペア/f05803】【WIZ】(連携・アドリブ可)
「群竜大陸と勇者の伝説。確かに面白そうね」
弟のフォルセティの説得を受けて一緒に調査開始ね
■作戦
弟とギルドに登録して魔術関連の仕事受けながら
勇者の伝説について噂を集める
■行動
街道の障害物を【エレクトロレギオン】や【バベルの光】で破壊したり
畑を荒らすモンスターを【ウィザード・ミサイル】で追い散らしたり
ギルドに持ち込まれる雑多な依頼をこなしながら情報収集
ターゲットは以下の通り
依頼主:問題解決後にそれとなく聞いてみる[誘惑]
ギルドマスター:仕事をやり遂げ信頼を得てから噂について尋ねる[コミュ力]
立ち寄った村の長:冒険者と明かして尋ねる[礼儀作法]
フォルセティ・ソルレスティア
【ペア/f00964】【WIZ】(共闘/アドリブ可)
「ねー、勇者の伝説ってすごくない。ボク調査してみたいよ」
フィオ姉ちゃんを説得してギルドでお仕事するよ
【行動】()内は技能
さっそく二人でギルドに登録。
ボクはシンフォニック・キュアで治療したり、
イスベル・ウラーノで岩を砕いたりできるよ!
(ギルドの集まった依頼のリストを眺めながら)
意外と生活に密着したお仕事が多いんだね。
兎に角フィオ姉ちゃんと出来そうな依頼を見つけて頑張るよ!
ギルドの仕事を通じて関わった人から『勇者の伝説』について
いろいろ聞いてみるよ。(情報収集)とか(コミュ力)を使うんだ。
良く考えたらウィザード2人ってバランス悪い気がする。
●願いの大岩
「勇者の魔力が込められた岩?」
──ドゴォン!
いくつ目かの依頼か、召喚した氷塊を大きな岩にぶつけながらフォルセティ・ソルレスティア(星海の王子様・f05803)は首をかしげる。その隣では彼の姉であるフィオリナ・ソルレスティア(サイバープリンセス・f00964)も同じように召喚した小型兵器たちに岩を破壊させている。
「おお、みるみる壊れる壊れる。ありがたいのぅ」
二人のそばには岩の破壊を見守る人たちの姿。
ここは街から少し離れた小さな村。鉱石を掘り出すことで生計を立てている村であったが、落石が洞窟をふさいでしまって困っている。可能ならば魔法使い希望!とのことでウィザードである二人が受けたのだ。
「これぐらいならば私たちでもたやすいですが……その伝説の岩、というのは?」
「ああ、そうじゃったそうじゃった」
感謝する村の長にフィオリナがさらに問う。一つ頷いた彼は面白い話を聞かせてくれた。
「ワシらは願いの大岩、と呼んでいるのじゃがな。この村で見つかった大きな魔法石に勇者たちが願いを刻んだって話が残っているのじゃよ」
魔法石っていうのはあれじゃ、と長が示すのは先ほど二人が破壊した岩。今は粉々になり何の変哲もない石ころの山に見える。
「んー?確かに魔力あるなぁって思ったけど……」
「……待って、もしかして」
大した魔力じゃないよねと首を反対に傾げたフォルセティを押しのけ、フィオリナは手に持つ杖で壊した岩の欠片をつつく。
コツコツコツ。
手ごたえはある、が、それだけだ。とてもとても硬い。
「なるほど、この魔力で通常の数倍の強度を持っている、といったところでしょうか」
「その通りじゃ。さすがじゃのぅ。魔力や強い力でもないとなかなか壊れなくてワシらじゃ苦戦しておったのじゃ」
「そっか、それで魔法使い希望だったんだね。よかった、ウィザード二人でバランス悪いかもって思ってたんだよ」
「そこまで考えて依頼を選んだんじゃないの?」
この依頼を選んだのはフォルセティだ。なんだか結果オーライな言い方にフィオリナからはため息。
では、ここにその大岩はあるのか、と続いた質問には長は首を横に振る。
「探しておるんだったらそれは難しいかもしれんのぅ。なにせ勇者たちは硬い岩に魔力で願いを刻むとどこかへ隠したと言われているからのぅ。この丈夫さから存在するならば故意に壊されでもしない限り残り続けているはずじゃが」
「そっかー」
これ以上は情報は出てこなさそうだ。二人は依頼の報酬とお礼もそこそこに街へと戻る帰路につく。
「勇者の伝説、すごいなって思ってたけど現実っぽくなってきたよね、ね」
「確かにね。得た噂をつなぎ合わせると大体の見当はつくもの」
聞いたばかりのころは手がかりも何もないように思えたが、いざ集めてみると意外と集まってくるものである。もちろん他の猟兵が集めたものもあるが、それでも一つにまとまりそうに思えるから面白い。
そしてこれまでの依頼なので得た噂からもし、その大岩があるとするならば湖の中であろうとは見当がついた。しかし──。
「広いよね。ねぇフィオ姉ちゃん、カラミダド・メテオーロとか……」
「駄目よ、湖蒸発させるつもり?巻き込んだら壊すかもしれないのよ?」
「やっぱり駄目かー」
ぺろっと舌を出して湖を見やる。街を一つ沈めた深く大きな湖、何かしらの場所の検討が必要かもしれなかった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 冒険
『湖の底へ』
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POW : とにかく気合、可能な限り全力で息を吸って潜る
SPD : 素早く泳ぐことで深くまで潜って確認する
WIZ : 怪しそうな場所に検討をつけてから潜る
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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●勇者の伝説
「なぁ、お前らか?勇者の秘密を追っている冒険者っていうのは」
その日、勇者の伝説を追っているというギルドの冒険者が猟兵達の前に息を切らして駆けつけた。
猟兵達が同意を示せば彼は目を輝かせ、古びた手帳と地図を取り出した。
「お前たちがどこまで調べたかは……ある程度知ってる。これは俺が最初に見つけたある言い伝えの話だ」
手帳を片手に男は語る。この街に残された勇者の伝説を。
昔々、そのまた昔。勇者が群竜大陸へ出かける前のこと。
故郷を旅立つ勇者たちはある村から掘り出された大きな魔法石にそれぞれの魔力で願いを刻みました。
大切な願い事を刻んだ勇者たちは再び帰ってくるお守りだとして、それを街の中に隠しました。
願い事を勇者たちは街の人々に明かしませんでしたが、いつか帰って来た時に魔法石の魔力と一緒に願いを解き放とう、と言いました。
しかし、勇者は誰一人帰ってきませんでした。
だから勇者たちの願い事は誰にも明かされず、刻まれたまま残り続けているのです。
「もちろんわかってるだろう?この『街』っていうのはここじゃない。湖に沈められた古い方の街さ」
そうして彼は地図を広げた。そこに描かれているのは猟兵達がいる街と似ているようでどこか異なっていた。
「これは俺が街の図書館を必死に漁って見つけた古い方の街の地図」
そのまま彼は指を地図の北側へ動かす。そこには『坑道』の文字。
「俺は思うんだ。何かを隠すとするなら入りくんでいるだろうしこういう場所が一番だろ?だから、きっとこの坑道の中にあると思うんだ!勇者の残した岩、石碑が!」
熱く熱く語る男性。しかしながら猟兵達は思う、それなら自分で調査したらいいのでは?と。
「なんで俺が行かないのかって?……俺、泳げないんだよ」
うなだれる男性。なんとも衝撃的な事実だった。それ故に調査をしてくれる人を探していたらしいが忙しいギルドの面々は相手にしてくれず、こんなことになっていたらしい。
「君たちになら頼める!勇者の願い事が何だったのか、調べて教えてくれ!」
彼の願いも受け、猟兵達は湖へと向かっていった。散々調べた男性が言うのだ、湖の北側から潜り坑道の入り口を探すのが良いだろうか。
四季乃・瑠璃
WIZ
【ダブル】で分身中
古い方の街の地図を写し、街が沈んでいる湖の全体図と照らし合わせて確認。
地形の変化と沈没の影響で入り口がどうなっているか【情報収集】。
それ等の情報から入り口の場所を測定して、大体の場所を把握した後、緋瑪と二人で着込んで来た水着姿になって(無駄に男性陣等を無意識に魅了したりしつつ)潜って探すよ。
後は二人がかりで地形状態を【見切り】ながら探すしかないかな。
緋瑪「湖に沈んだ街かぁ…勇者が隠した石碑があるなら、沈めなきゃ良いのにねぇ」
瑠璃「隠したって話だし、街中に隠してあるとは誰も思わなかったんじゃないかな」
緋瑪「とりあえず、実際に潜ってみるしかないねー」
※アドリブ歓迎
月宮・ユイ
次は湖に沈む街の探索ですか…
[デバイス、道具袋]に色々詰め込んでいるので潜水道具もあったはず
数もあったと思うのでゴーグルやらボンベ等必要なら貸し出しましょう
冒険者の方、とても熱心に調べられていた様ですし、助言に従い坑道から調べてみます
流石に坑道の地図はないですか?
水没している入り組んだ場所に直接入り込むのはちょっと怖いですね
”暗視、視力、情報収集、追跡”【幻影兵団】:魚型の水中仕様で召喚
引き続きUCを活用。魔力で刻み、石自体も魔力を持つようですので、共有した五感でその辺りの気配や影響、痕跡がないか調べてみます
”物を隠す、地形の利用”
さて、私が隠すならどうするでしょうか
アドリブ改変・絡み協力歓迎
●湖の中へ
「湖に沈んだ街かぁ……勇者が隠した石碑があるなら、沈めなきゃ良いのにねぇ」
「隠したって話だし、街中に隠してあるとは誰も思わなかったんじゃないかな」
湖の岸で四季乃・瑠璃("2人で1人"の殺人姫・f09675)とその別人格、緋瑪が話しながら地図を広げている。この地図はギルドの冒険者が見つけた古い方の街の地図を写したものだ。ひょいと湖の中を覗き込むようにすると澄んだ水と差し込む日の光のおかげで沈んだ街がよく見える。
「見せていただいた地図の中に坑道の地図はないですか?」
ぽいぽいと自前の道具袋の中からゴーグルなど潜るのに必要な道具を次から次へと出しながら首をかしげたのは月宮・ユイ(死ヲ喰ラウ連星・f02933)だ。必要な猟兵がいるなら貸し出すつもりらしく、取り出された道具は丁寧に並べて置かれている。
「ないねー。地図には坑道のある場所しか書かれてないよ」
「あ、でも見て、あそこ」
瑠璃が指をさしたのは湖の中。沈んだ街ではなく少し上の側面部分だ。綺麗な断層を見せているそれをよくよく見れば何ヵ所か丸い穴が開いており、ランプやレールと思わしき人工物のようなものも見える。その位置は地図にある坑道の位置と一致しているようだ。
「もしかして、ですけど。街を囲うように丸い形に切り取って沈めたのではないでしょうか。しかしその際にどこまで伸びているかもわからない坑道は無視された可能性があります。なのであれは露出した坑道の一部では?」
ユイの指摘になるほどと頷く二人。街だけを沈めようとした結果、綺麗な円の湖が出来上がり、街が沈んだ(もしくは周辺が隆起した可能性もあるが)際に遠くまで伸びていた坑道がそのまま残り、横穴となったのだろう。
しかし何ヵ所がある上に穴の中までは光が届かずよく見えない。
「場所の検討はついたし、これ以上は実際に潜ってみるしかないねー」
「そうですね。あ、ゴーグル使いますか?」
「ありがとう。じゃあせっかくだし借りるね」
瑠璃と緋瑪が服を脱いで準備する横でユイはゴーグルを差し出す。服を脱ぐといっても二人は中に水着を着込んできているので問題はない。少し遠くの方で見惚れた冒険者と思わしき男性がゴチンと顔面を木にぶつけるような音がした気がするがきっと気のせいだ。
一方のユイは自身が潜るのではなく、別の方法をとった。
──共鳴接続機能正常稼働。感覚意識同調共有準備完了。
「来たれ」
すいっと手を湖へ向けるといつの間にやら魚の姿をした幻影が一体現れる。感覚を共有する幻影体に代わりに潜ってもらい探すつもりのようだ。
そしてそれぞれの準備ができると互いに合図をして別々の横穴を目指して潜っていく。
(やっぱり、坑道なんだなぁ……)
まず瑠璃が見た穴の中はレールとランプの残骸の転がる少し大きめな穴だった。穴の中はまっすぐ奥まで続いており、途中に横穴などはなさそうに見える。また、当たり前だが水で満たされており奥まで進むには息が少しばかり厳しい。
しかしながら人工物と大きな穴ということはそれなりに人が通っていたとも推測できる。このような場所に隠すだろうか?そう考えた瑠璃はこの穴は違うと見切りをつけ、浮上していく。
同じ頃、緋瑪も横穴を調べていたが瑠璃と同じく、真っ先に目に入るはランプの残骸や錆び切ったツルハシ。奥まで潜り切れてはいないが、隠し場所として適しているとは思えない。
調べた場所は隠されている穴ではない、という成果を持ち岸へと戻ってきた瑠璃と緋瑪。岸には幻影体に潜水を任せたユイがいる。
見ればユイは集中しているのかその瞳を閉じている。傍から見たら眠っているようにも見えた。
「私たちで調べたところは違ったみたいだよ。ユイさんは?」
「……寝てるんじゃないよね?」
おーい、と緋瑪が手を振る。気づいたかのようにユイの瞳がぱちりと開いた。
「怪しい痕跡を見つけたので少し集中していました」
ユイは軽く苦笑する。
幻影体による調査で彼女は『自分が隠すならどうするか』を考えていた。それは魔力を持ち、魔力によって刻まれている。何事もなければ、魔法を扱うものならば近くを通れば感知されあっさりと見つかる可能性もあるだろう。だがそれが見つかっていない、ということは魔力をごまかせる場所に隠した、と考えることもできる。
すなわち……。
「何ヵ所かあった穴のうち、魔力の反応がある場所をいくつか見つけました。どれか、までは断定できませんが木を隠すなら森の中、魔力を隠すなら同じく魔力を帯びた坑道の中、だと思うのです」
候補の穴を示しながらユイは説明する。
こうして調査箇所を絞り込むことに成功した三人は情報を他の猟兵達共有しながらも更なる調査を続けていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フィオリナ・ソルレスティア
【ペア/f05803】【WIZ】(他猟兵と連携可)
「フォルセティ、男の子だから平気よね」
■作戦
ボードで湖の北側へ出て影の追跡者を使い水没した街の概要を把握し
アタリをつけたらフォルセティが潜水して探索
■行動
街の人にボートを借りて湖上へ。
湖北エリアの適当な場所でおもりを付けた釣り糸を垂らし、
影の追跡者の召喚でおもりを追跡させる。
湖底までたどり着いたら視覚を共有し
①何か目立つ建造物がないか確認
②男性にもらった地図と照合(建造物や通り、地形)
③坑道入り口場所にアタリをつけたら潜水調査
「このあたりで間違いなさそうね」
フォルセティが潜水中は命綱をしっかり握ってコントロール
この間も影の追跡者で視覚共有
フォルセティ・ソルレスティア
【ペア/f00964】【SPD】(共闘/アドリブ可)
「うわー、やっぱりボクが潜るの?」
姉の作戦に呆れながらボートと釣り具の手配をする。
【行動】()内は技能
ボート漕ぐのはボクだよね。やっぱり。
適当な場所で、おもりをつけた釣り糸を垂らすよ。
明かりが不十分だったらウィザードミサイルを使うけど
多分大丈夫だよね。
フィオ姉ちゃんが坑道があると思しきエリアを特定したら
ダイブの時間だ…
「命綱ちゃんと持っていてよ」
しぶしぶウェットスーツを着用して湖の中へ
(視力)や(暗視)を使って湖底を探索するよ
坑道が泥や障害物で塞がっていないか注意だね
困ったらクラロ・デ・ルーナで破壊かな
危険を感じたら合図して引き上げてもらう
●湖の底に残されたもの
岸から潜る猟兵達がいる一方で、湖面にボートを浮かべるものもいた。
ボートの上には影が二つ。フィオリナ・ソルレスティア(サイバープリンセス・f00964)とフォルセティ・ソルレスティア(星海の王子様・f05803)のソルレスティア姉弟である。
フィオリナは湖に向かって釣り糸を垂らしている。釣りでもしているのかと思う状況であるが、これも立派な調査。
今、湖底には釣り糸の先に付けられた重りとそれを追った影の追跡者がいる。湖底の状況などを確認してから潜水をしようというわけだ。
「フィオ姉ちゃん、どう?」
影の追跡者と視界を共有し、状況を確認している姉に対してフォルセティが問いかける。そんな彼の姿は今はウィザードには見えないウェットスーツ姿。フィオリナが普段着のままであることからも潜水役は彼なのだろう。
「うん、地図の内容と一致するわね。それどころか……藻なんかはついているけどほぼそのままよ、これ」
影の追跡者と共有したフィオリナの瞳には沈んだ街の姿があった。足元は石畳であり、砂こそ積もっているが重りが落ちた衝撃でその姿を露わにする程度にしか積もっていない。建物は見た目をそのままに、崩れているものは見当たらない。そして視界を少し上に動かせば少し盛り上がった地点が。よく見れば中腹辺りに入口のような穴と、穴をふさぐかのように木の板が打ち付けられている。
「……見つけた。このあたりで間違いなさそうね」
アタリをつけたフィオリナは視界を戻すとその赤い瞳を弟へ向ける。ここからはフォルセティの出番だ。
「フォルセティ、男の子だから平気よね」
「うわー、やっぱりボクが潜るの?」
ウェットスーツが一人分の上に自分に着せられた時点で察してはいたものの、実際言われるとがっくり来てしまう。それでも『命綱を持つ人が必要でしょう?』と言われたら返す言葉がないのが難しいところだ。
「命綱ちゃんと持っていてよ」
膨れながらもフォルセティは湖の底目指してその身を沈めた。
すいっとフォルセティは湖底へと降り立つ。目の前にはフィオリナが見つけた坑道の入り口と思わしき木の板でふさがれた入口。木は腐っていたらしく軽く彼が力を加えるだけであっさり外れた。
そのまま中に入ったフォルセティは見た。
(無数に分かれてる……)
入ってすぐに3本の道に分かれ、そのうちから魔力を感じる右へ進むとまたすぐに分かれている。幸いにして崩れているところはないが、しばらく進むとすっぱりと切り取られたかのように道が終わっている。
その理由は薄々と予想がついた。ここが底の終わりなのだ。フォルセティは潜る際に側面にある横穴を見ている。測ってはいないので正確なことは言えないが、今いる坑道の続きがあの横穴のどれかなのだろう。
(調べた感じこの残された坑道の中にはなさそうだね)
ここまで調査すれば十分だろうと命綱を引き、戻る合図をする。
引いた合図と影の追跡者で見ていたであろうフィオリナが引き上げる準備をしているのを感じながら来た道を戻る途中で彼はそれを見つけた。
「おかえり、無事みたいね。それで上がってくる前に何を拾っていたの?」
「フィオ姉ちゃん、これ」
ボートに戻った彼が見せたのは小さな石のひとかけら。普通の人が見れば何のことはないただの石。しかし二人にとっては違う。
「これ……依頼で行った村の魔法石と同じ……?」
「そう。村で見つかった大きな魔法石にって話、嘘や作り話ではなさそうだよ」
ころり、手の中に転がった石を見て二人は考える。もし、隠すために持ち込んだ途中で多少欠け、その欠片が残っているとするならば。その痕跡を辿ることができれば、探している伝説に語られる石碑があるのではないか、と。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アーチス・カーライル
アドリブ・絡みOK
きたきた!勇者の伝説!
…って、湖の中なの……?ってことは、泳がなきゃいけないのね…まぁ、なんとかなる、かな…?
魔法で湖ごと吹っ飛ばすのが楽な気がするけど、貴重な遺物まで壊しちゃったら駄目だよねぇ。
ここはひとつ、おじさんの調査を信用してみるよっ。
北側から坑道を目指してダイブ!
残念ながら特に対処できるものも持ってないから気合いで潜る。
取りあえず、溺れないようにだけ注意したら、あとは気合いで何とかする…!
●石碑への手掛かり
「きたきた!勇者の伝説!」
湖の岸で歓喜に声を上げているのはアーチス・カーライル(真理の探究者・f14237)だ。その探求心の赴くまま、いざ行かん!としていたが、その足が途中で止まった。
「…って、湖の中なの……?」
目の前に広がる水。そうですね、湖の中です。つまりは泳ぐ必要があるのだ。
残念ながら彼女には泳ぎに適した技能といったものは何もない。他の猟兵が使うならと貸し出し用においてくれたゴーグルが彼女の唯一の潜水装備だ。
「まぁ、なんとかなる、かな……?」
ゴーグルもあるし、とアーチスは前向きに湖へと潜っていく。
潜るのに選んだ場所はギルドの冒険者が力説していた北側。おじさんと彼のことを形容していたが、本人が聞いたら涙を流しそうな気がしないでもない。まぁ本人はいないので気にすることはないだろう、とにかく後は気合と自分の泳ぎを信じて進むだけだ。
「ぷっはー!溺れるかと思ったぁ!」
湖の側面部分。先に猟兵達がいくつか調べ、絞り込んだ横穴の1つでアーチスは大きく空気を吸った。
気合でどうにかしようとした彼女は見つけた穴の中を進み、息がきつくなったころに偶然、高低差の関係で空気が残っている個所を見つけたのだ。
「こんなところにあればいいのになぁ……」
くるりと周囲を見渡すが、周囲はただの岩の壁。強いて言うなら岩がほのかな魔力を持っているがそれぐらいだ。そう簡単に見つかるものではない。
「もういっそのこと魔法で湖ごと吹っ飛ばすのが楽な気がするけど、貴重な遺物まで壊しちゃったら駄目だよねぇ……ん?」
はぁと溜息をついて、下がった視界に石ころが一つ目についた。それは周辺の石と何も変わらないように思えた。しかし彼女の探索者としての勘だろうか、それがどうにも気になって仕方がない。
石を拾い上げたアーチスはそれを持って湖面へと戻ることにした。
戻った彼女はすぐに知ることになる。その石はわずかながらも周囲の岩と異なる魔力を有していることに。別の猟兵が聞いて見た、少し離れた村の魔法石と同じ魔力を持っていることに。
成功
🔵🔵🔴
甲斐・ツカサ
【WIZ】で判定
場所が絞り込んで来られたなら、後はどれだけ奥まで調べれるか、だよね
他のみんなが持ち帰ってくれた情報を電脳ゴーグル内に落とし込んだ地図に追記しながら、候補を絞り込んでいこう
電脳ゴーグルで視覚を補助しつつ、籠手の力でフックを飛ばして引っ掛けて、ワイヤーを巻き上げる事で極力体力を使わずに進もう
最初に絞り込んだエリアまで行けば、後は培ってきた冒険家としての直感に頼る!
隠したのなら、何処かしら不自然な痕跡があるもんだろうしね
それこそ、この世界なら魔法で封印、なんていうのも出来るだろうし
星の海の技術を活かして魔法の世界の湖を調べるなんて、これぞ世界を股にかける冒険だね!
●隠された横穴
「えぇと……あの穴かな?」
湖面に顔をつけ、猟兵達が今まで集めた情報を電脳ゴーグルAby-STerra越しに眺めながら甲斐・ツカサ(宵空翔ける冒険家・f04788)は潜るべき場所を見定めていた。
先で得られた手がかりから痕跡の見つかった穴へと狙いを定め、籠手からフックを飛ばす。狙い通りフックは穴の入り口付近へと刺さるとツカサとの間にワイヤーの道を作る。後はワイヤーを巻き上げればさほど体力と息を使うことなく潜れる、というわけだ。
痕跡の見つかった横穴の途中には空気があるというのも聞いている。ひとまずはそこまで潜ると、息をつける環境でぐるりと周囲を見渡した。
明かりのない環境ではあるがゴーグル越しの視界はしっかりとしている。
「痕跡があったってことはこの辺りに……?」
ツカサは首をかしげながら岩壁に触れるが、感触は冷たい岩肌そのものだ。先への道はまた水に沈んでいる。そしてその先も潜ったところですぐに行き止まりとなっていた。
痕跡はあったがここは外れなのか?そう考えながらふと視線を上げたツカサはあるものに気づいた。
「あれ、高低差が……そういえば"大きな魔法石"だっけ」
彼が気付いたのは天井の高さだ。今、ツカサがいる空気のある個所は大人が一人立てる程度の高さしかない。行き止まりまでの水に沈んだ箇所も同じぐらいの高さだ。しかし、この場所に来る手前、つまり空気のある個所と穴の入り口までの道は途中まで天井は大人がニ、三人程度の高さがあった。
行き止まりに向かって徐々に低くなったとも取れるが、ツカサの冒険者としての勘が囁いた。探すべきは手前の道なのでは?と。
「うわぁっ!?」
勘に従い、戻りながら壁を調べることしばらく。魔法で封印されてるかも、などと考えながらも岩壁を押すように調べていたツカサは突然地面へと転がった。
「えっ、何?これ……魔法?」
振り返ったツカサの目に映るのは先ほどまで自分のいた水の壁。手を差し出せば再び水に濡れる感触がある。しかし水は今いるところまで流れてくる気配が一切ない。
今度は空洞の先へと視界を動かせば、何かを引きずったような跡と先に岸で見せられたのと同じような石の欠片がちらほらと。この先に目的の大きな魔法石があるのは間違いないようにも思える。
目的のものがあるとして、この先に何もないとは限らない。ならばやることはこの場所の共有だ。
ツカサはもう一度水へと身体を移し、先ほどまでいた空洞へと振り返る。しかし見えるのは岩壁だけ。おそらくは岩壁に偽装された魔法の壁なのだろう。
目印に短剣で付近の岩に傷をつけると、彼は岸へと急いだ。
成功
🔵🔵🔴
第3章 集団戦
『エレメンタル・バット』
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POW : 魔力食い
戦闘中に食べた【仲間のコアや魔法石、魔力】の量と質に応じて【中心のコアが活性化し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : 魔力幻影
【コアを持たないが自身とそっくりな蝙蝠】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : 魔力音波
【コアにため込んだ魔力を使って両翼】から【強い魔力】を放ち、【魔力酔い】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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●願いの石碑と思わぬ守護者
怪しい空洞を見つけ、猟兵達は目印を頼りに次々と潜って集まってくる。
不思議なことに空気のあるその空洞を進んでいった先、その行き止まりと思わしき場所にそれはあった。
祀られるように置かれた大きな大きな岩。しかも何かが刻まれているようで、猟兵達が近づくにつれてほのかに発光している。
これが目的の石碑なのだろうか?そう確認しようとした猟兵達へ色とりどりの大群が割って入る。
キィキィキィ!
けたたましい鳴き声を上げるのは魔力を帯びた蝙蝠の群れだ。石碑の周りを巣にしているのか、はたまた石碑の魔力を食料としているのか。ともあれ猟兵達を近づけさせまいと立ち塞がる。
この蝙蝠たちを追い払わねば石碑の真偽は確かめられなさそうだ。
甲斐・ツカサ
魔法石の石碑の近くに、魔力を帯びたコウモリ、かあ。
これは興味深いね!
コアになっている魔法石ごとにコウモリの動きが違ったりするのか、違う色のコアと同じ色のコアで食べた場合の活性度合いが違うのか
そういったデータを取るために、暫くは防戦に徹しつつ観察
猟兵じゃない冒険者がこれから先少しでも楽に戦えるように、魔物の情報はたくさん調べておかないとね!
幻影を出して来たら、コアの有無を確認して本体狙い!
なるべくコアを傷付けないように、翼を斬り裂いて倒そう
コアや切り取った翼が残っていれば、魔力のある素材として役立つかもしれないし、採取クエの一環として持って帰ろう
石碑は難しい言葉があると分かんないから、任せた!
アーチス・カーライル
アドリブ・絡みOK
ほうほうほうほう、こんなところに空洞があるのね!
ここだけ空気があるのも、不思議だわ。
この空洞ごと吹っ飛ばしたらどうなるのかしら!いや、やらないけど…やらないけど?
取りあえず石碑を調べる為にも、蝙蝠が邪魔ね。
ここはひとつ、あたしの実験台になってもらおうかしら!
【マスカレード・エクスペリメント】で一掃してあげる。
あ、何が起きるか分からないからみんなからは少し離れて、と。
さぁ――ショーの開幕だよっ!
●開戦!冒険者と魅惑のショータイム?
「ほうほうほうほう、こんなところに空洞があるのね!」
前方でキィキィ騒ぐ蝙蝠の群れを総スルーして目の前の不思議に目を輝かせているのはオレンジの長い髪に大きな帽子、アーチス・カーライル(真理の探究者・f14237)その人だ。
「ここだけ空気があるのも、不思議だわ」
そう、この空洞は水の中に沈み、外とつながっている場所がなさそうに見えるにも関わらず空気があり呼吸に何ら支障がない。ついでに言えば石碑が発光しているおかげもあり視界も悪くない。
「魔法石の石碑の近くに、魔力を帯びたコウモリ、かあ。これは興味深いね!」
一方、目の前の蝙蝠達──エレメンタル・バットに興味を示すのは黒い髪に赤いマフラー、冒険に憧れ冒険の世界へと飛び出した甲斐・ツカサ(宵空翔ける冒険家・f04788)である。
まず目につくのは個体ごとに異なるコアの色だ。色ごとに性質が違う可能性を考え、彼は先にデータの収集を選択した。
「オレが先に動きを見てくるね。退治はその後で!」
「お任せあれ!石碑調査にお邪魔な蝙蝠にはあたしの実験台になってもらうわね」
どこからともなく試験管を取り出し笑うアーチスを残し、ツカサは先んじて蝙蝠の群れへと飛び込む。
反応し、襲い掛かってくるエレメンタル・バット。それらの攻撃を避け、時には片手に持つ黒い短剣でいなし、防ぎ続けながら観察をする。多くの群れの中でミスなくそれができるのは彼の持つ技術とユーベルコードの恩恵に他ならない。
「あまり色が違うからって大差はないのかな?」
攻撃を防ぎながらツカサはそう結論付けた。少なくとも目立って異なる行動をしている個体や色の蝙蝠はいない。そうなると次はなぜ色が異なるのか、興味は尽きないがそれは後だ。
ツカサへダメージを与えられないことを理解してか、エレメンタル・バット達は次々に自身のコアに働きかけ己の分身を生み出し始める。数を増やせば、と言ったところだろうか。
「アーチスさん!」
「おっけー!あたしの出番ね!さぁ――ショーの開幕だよっ!」
頃合いだと、蝙蝠の群れから離脱しながら後方にいるアーチスへと声をかける。呼ばれたアーチスは元気いっぱい、両手にたくさんの試験管を持ち、それら全てを放り投げた!
「何が起きるかはあたしにも解らない――さぁ、皆まとめて実験台になってね!」
ポポポポポンッ!!!
空中へと投げ出された試験管はエレメンタル・バットの群れの中で爆発し、次々と煙を発生させる。煙は意志を持つように動くとコアを持つエレメンタル・バットを包み込み、締め上げては霧散する。
そして霧散すると同時にぽてりと締め上げられたエレメンタル・バットが落ちた。その身体で輝いていたコアは曇り、見る影もない。
「えーと、何が起きたんだろうね!」
てへ、と自分でもよくわかってないアーチスが笑う。その前で煙に包まれた蝙蝠達が次々に命を奪われ落ちていく。連動するように生み出された幻影もその姿を消していく。
「わからないの?!」
煙から逃げるように飛んでくる蝙蝠の翼を切り裂きながら突っ込むツカサ。蝙蝠といっても幻影か否かを的確に見分け、コアを持つ本体のみを狙っている。その証拠に彼の手の中にはすでに色とりどりのコアが握られていた。
「何が起こるか私にもわからないもの!」
えっへん。元気にアーチスは胸を張る。
「えぇぇ……たぶんだけど、あの煙がコウモリの魔力を奪ったのかな?」
落下し、動かなくなった蝙蝠を蹴飛ばしながら手元の綺麗なコアと比較してツカサはそう推測した。落ちた蝙蝠のコアには輝きがなく、手元のそれと比べても魔力を感じない。これなら放置しても生きているエレメンタル・バット達はこのコアを食料とはみなさないだろう。
「わぁお、すごいことが起こったのね!空洞吹っ飛ばさなくてよかった」
「吹っ飛ばしたら駄目だよ!?」
「大丈夫、どうなるかな?って気になってないし、やらないし?……やらないけど?」
アーチスの探求心は尽きないようで。空洞を爆破される前に蝙蝠を一掃した方がよさそうにも思えるのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
月宮・ユイ
このような空間を作り出すなんて凄いですね
本当に勇者だったかはまだわかりませんが込めた思いの強さを感じます
無断で暴くのは悪い気もします。魔力ある物が糧でここを荒らしかねない魔物の排除で見学料として下さい
[星剣]+[ケイオス]黒い槍剣:剣にも使える程の刃持つ槍に
”視力、暗視、聞き耳、第六感”
感覚強化、UCの力も併せ周囲情報や敵の動きを”見切り、情報収集”戦闘中も”学習力を基に戦闘・世界知識”を蓄積更新、”カウンター”も
時に槍剣複製、変則型二刀流で”2回攻撃や投擲”
”生命力吸収、吸血、破魔”敵を討ち魔力散し、吸収回復
【記録再現】集めた情報を基に対抗存在を具現:敵の再現等
絡み連携歓迎アレンジアドリブ可
●感じる想い
「このような空間を作り出すなんて凄いですね」
月宮・ユイ(死ヲ喰ラウ連星・f02933)は改めて空洞とその奥に鎮座する石碑を見る。
「本当に勇者だったかはまだわかりませんが込めた思いの強さを感じます」
少なくとも街が沈む前から隠され用意されていたこの場所。さらに水の底へと沈められても魔法のなせる業か、水を通すことなくこの空間を維持し続けている。強い想いが込められていることは間違いないだろう。
ユイはそれを感じたゆえに、無断で石碑の謎を明かすのは悪い気もしてしまう。
「だからこそ……」
ユイはその手に武器を形作る。生まれるは黒い槍、その刃は通常のものより長く突くだけではなく斬ることも可能なほど。
見据えるは今だ多く舞うエレメンタル・バットの群れ。色とりどりのコアを輝かせ魔力を食料とする存在。
「魔力ある物が糧でここを荒らしかねない魔物の排除で見学料として下さい」
紡がれる言葉は石碑を、この空間を作った誰かに向けて。
そしてユイは駆けた。
手に持つ武器を振るい、翼を切り裂くと、動きが緩んだ瞬間を見逃さず穂先で突く。パキリと音がしてコアが砕け、ため込まれた魔力が霧散する。
「──ロード……演算開始……」
蝙蝠を打ち倒しながらもその目は次の標的を見据え、その情報を読み取り戦闘データを更新していく。
動き、その能力、反応速度、数は多ければ多いほどより正確なデータとなる。対抗するようにエレメンタル・バットは幻影を生み出すが、それすらもユイにとってはデータの正確性を高める行動でしかない。
──共鳴接続機能正常稼働。感覚意識同調共有可能。
そして正確なデータが集まれば、データを基に作った対抗可能な存在を生み出すことも、彼女にはたやすい。
──保管庫へ接続、具現・投影開始。
「……現れよ」
ユイの命によって現れたのは対峙しているエレメンタル・バットそっくりな蝙蝠。ただし大きさは一回りほど大きく、中央のコアはユイの持つ星型の核と似たデザインをしている。
呼び出された蝙蝠は空洞内を自由に飛び、エレメンタル・バットの作り出した幻影にタックルをすると次々と消していく。おかげでユイは本体の討伐に専念することができた。
手早く複製された武器で二体のコアを貫くと、ユイは小さく息を吐く。これで彼女が相対していた蝙蝠達は一応の落ち着きを見せたようだ。
ユイの周りには砕けたコアの細かい欠片がキラキラと積もっていた。
成功
🔵🔵🔴
フォルセティ・ソルレスティア
【ペア/f00964】【SPD】(共闘可)
「石碑の魔力を餌にしていたのかな?」
下手に魔法の力(UC)を乱発すると良くないかもね
【行動】()内は技能
「それじゃあ一撃で仕留めるよ!」
(先制攻撃)でクラロ・デ・ルーナを放つよ
エレメンタル・バットの顔にあたるコアを(スナイパー)で狙い撃ちだね
動く相手だから(戦闘知識)もフル活用
撃ち漏らした蝙蝠がいれば次々にクラロ・デ・ルーナで仕留めるよ
エレメンタル・バットの攻撃は(見切り)や(オーラ防御)で防ぐよ
「願いの石碑に何が刻んであるんだろう」
そもそも魔力で願いを刻んだってことは、勇者の何人かは力があるウィザードだったんだよね!
どんな人か気になるかも
フィオリナ・ソルレスティア
【ペア/f05803】【POW】(他猟兵と連携可)
「勇者たちが設置した守護者って訳ではなさそうね」
とにかく蝙蝠の群れをどうにかしないと
■作戦
弟のフォルセティと連携しながら
蝙蝠のコアと翼をそれぞれのUCで狙って殲滅する
■行動
エレメンタル・バッドをオートフォーカスでロックオン
蝙蝠の翼を狙って【アイオロスの刃】で切り刻む
[全力魔法×2回攻撃]
[スナイパー]の技能を使って確実に一体ずつ翼を切り落としていく
魔力幻影や魔力音波の攻撃は【アイギスの盾】で相殺を狙う
エレメンタル・バッドを追い払ったら、石碑に刻まれた願いを確認する
四季乃・瑠璃
緋瑪「数が多いし、空を飛んでるのが厄介だね、瑠璃」
瑠璃「ボムだと…この空洞がもつかな?」
緋瑪「なら、折角だし魔力を思いっきり御馳走してあげたらどうかな♪」
瑠璃「そうだね…それで行こうか」
シスターズを起動し、緋瑪がそちらに意識を移して使用。
敵の攻撃は【見切り、残像、ダッシュ】で回避しつつ、緋瑪が自身と瑠璃のK100の2丁拳銃で【クイックドロウ、2回攻撃、早業】牽制・迎撃。
瑠璃が後方で【高速詠唱、全力魔法】で【エレメンタルファンタジア】を発動。空中の敵を「氷雪」の「竜巻」に閉じ込め、本体も分身も関係無く広範囲攻撃で凍結・粉砕するよ。
瑠璃「全力の魔力」
緋瑪「たっぷり味わってね♪」
※アドリブ歓迎
●二つの戦い方
猟兵達の奮戦により最初よりその数を半分ほどにまで減らしたエレメンタル・バットの群れは空洞の奥へと後退していた。
石碑にたどり着くため、残る蝙蝠達を倒さんと4つの影が通路をふさぐように並ぶ。
「勇者たちが設置した守護者って訳ではなさそうね」
「石碑の魔力を餌にしていたのかな?」
右手側には赤の髪と緑の髪の姉弟。フィオリナ・ソルレスティア(サイバープリンセス・f00964)とフォルセティ・ソルレスティア(星海の王子様・f05803)がそれぞれの杖を持ち、蝙蝠の群れを見やる。
「数が多いし、空を飛んでるのが厄介だね、瑠璃」
「ボムだと…この空洞がもつかな?」
左手側には藍色髪のそっくりな姿が二人。四季乃・瑠璃("2人で1人"の殺人姫・f09675)とその別人格である緋瑪が倒す相談をしていた。
普段はオルタナティブ・ダブルで姿を現している緋瑪は今は戦闘モードとして戦闘力の上がるチェイン・シスターズへと切り替えている。
やがて準備を終えた四人は二手に分かれ、エレメンタル・バットの殲滅を開始する!
こちらは空洞の右手側、ソルレスティア姉弟。魔力を餌にしていた可能性からあまり魔法を使わぬよう一撃で落とす方針での戦闘だ。
「バラバラにしてあげるわ。切り裂け、風神の刃よ!」
フィオリナの高らかな声が響き、生み出された真空の刃がエレメンタル・バッドの両翼を切り裂いて地に落とす。──否。
「それじゃあ一撃で仕留めるよ!──放て」
地に落ちる前にコア目掛けて閃光が飛んだ。ガラスの割れるような音が響き、地に落ちるはバラバラになった翼のみ。詠唱の主は弟のフォルセティだ。
行動を起こされる前に次から次へと姉のフィオリナが翼を傷つけた蝙蝠に狙いをつけ確実に止めを刺していく。
次々減らされていく仲間に生存本能が刺激されたのだろう、突如一匹のエレメンタル・バットが近くの仲間のコアを喰らうと自身のコアをひときわ強く輝かせフィオリナへの突進を試みる。だが、鍛えられた狙撃手の目はその狙いを外さない。
「遅いわね。切り裂け、風神の刃よ!」
再びの詠唱に風は喜んで応えた。両翼がすっぱりと切断され、輝くコアだけが残される。そしてそれも他に漏れず、落ちる前に閃光が貫いた。
「一撃で仕留めても共食いするなんてね」
「でもこれぐらいならいけるでしょ?数も減るわけだものね」
彼女の言うことは間違ってはいない。強化されたエレメンタル・バットを倒せるならば仲間のコアを食べて強化している以上、1回で複数体倒していることに他ならないからだ。しかしながら強化に強化を重ねられる可能性もある。なるべく危険の無いように二人は息を合わせて戦闘を続けていく。
一方の左手側。こちらでは緋瑪が瑠璃から借り受けた銃と自身の銃を用いて蝙蝠の群れへと向かっていた。
襲い掛かってくる蝙蝠を避け、翼を向けてくるものがいればその翼を撃ち抜いて迎撃し、自分より後ろへ行かないように立ち回る。
緋瑪が守る後方では瑠璃が精神を集中させ大量の魔力を集めていた。魔力が高まるにつれ周囲の気温が下がっていき、瑠璃の近くがほのかに凍る。
「緋瑪、いくよ。下がって!」
「了解っ!」
瑠璃の声にダッシュで安全圏まで下がる。それを確認してから瑠璃はため込んでいた魔力を解き放った。
「全力の魔力」
「たっぷり味わってね♪」
次の瞬間、蝙蝠の群れを氷雪が襲った。悲鳴を上げる間もなく氷雪の竜巻の中に閉じ込められ、次々凍っては落下の衝撃で砕けていく。
そう、二人は魔力を食べられることを警戒するのではなく、逆に大量の魔力を食べさせてしまえという方針を選んだのだ。
凍り付く前の反撃として翼から魔力が解き放たれるも、竜巻に閉じ込められ距離がある上に見切られてしまい意味をなさず、この蝙蝠も他の仲間を同じ道を辿ることとなった。
●刻まれた願い
ほどなくしてエレメンタル・バットの群れは一掃され、辺りにコアの欠片や翼の残骸、氷などが散乱するも猟兵達はついに石碑の前にたどり着いた。
石碑はやはりエレメンタル・バットが食料としていたらしくあちこちが削れ欠けている。それでもそこに刻まれている文字は読み解くことができた。
まず真っ先に目についたでかでかと雑な字で刻まれてたのは『帰る!』の文字。名前も一緒に刻まれていたのであろうが、破損していて読めない。
他にも『あのバカを連れて帰る』(バカってなんだバカって!と落書きのような文句もついていた)だの『またみんなに会いたい』やら『誰一人死なないように』など、見まわして読み解ける文字は全て帰ってくることばかり書かれている。
願い事って、もしかして……猟兵の一人が呟くと答える声があった。
『そうだよ。ここに、大切な故郷に帰ることだ』
振り返ればそこにはいつのまにか6体の人型の光が立っている。
『結局帰れなかったけどな』
『でもすごい、恥ずかしくって隠したのに見つける人がいるなんて』
『だからって僕たち帰ってきてもこれ公開処刑だったじゃん?』
『その時は笑い話だっただろうさ、勇敢なことしてきても人だってさ』
『……この岩を食べちゃう蝙蝠を追い払ってくれてありがとう』
『俺たちは駄目だったけどここを見つけた君たちなら……大切な場所へ帰りつく導となりますように』
めいめいに光は語るとすうっとその姿を消した。後に残されたのはやはり発光する石碑だけ。
だが、猟兵達にはわかった。今目の前に現れた存在こそがかつての冒険者であり勇者と呼ばれる人たちなのだと。
「願いの内容どうする?話した方がいいのかな?」
ギルドの冒険者を思い出して瑠璃がそう口にした。
「石碑はあったけど読めなかった、とかどうでしょう?」
フィオリナが答える。その理由を続けるようにフォルセティが言った。
「だって、今更公開されても恥ずかしいって言ってたからね。それに導だとも」
だからこのまま、そのままに、眠らせておこう。
もう石碑を荒らすものもいない。
導はここに光を保って。
今度はここを見つけた猟兵達のために、帰る道を照らそう。
成功
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