紅の炎燈る黒夜に電の様なイルミネーションの下であなたと
ほうっと真白い息を立ち昇らせる今日に降るのは、真白い六花。
今宵クリスマスのアスリートアースは、雪降るホワイトクリスマスであった。
エミリヤはそっとティーリスの手を取り温めるように包み込めば、ティーリスがすぐさま微笑み“あのね!”と探ったのはコートのポケット。
「ティーリス、今日はどこに行くんですか?」
「ふふふ、今日はここ! 飛び入りの猟兵を募集するって評判のヒーローショー!」
元々つい猟兵の仕事に追われがちなエミリヤに“クリスマスには
お出かけだよ! 約束!”と強請っていたティーリスと約束した
大切なこの日は、ティーリスの行きたいところへという約束でもあったのだ。
「(ティーリスもヒーローに憧れるのですね)」
「でね、ここにわたしとお母さんでかっこよーく飛び入りしたいの!」
ぴょんぴょんと跳ねながらぎゅっとエミリヤの手を握り返したティーリスの子供らしい微笑みに、いつもは表情が目に見えて変化しないエミリヤの口角が淡く上がる。
――娘のうちの一人でありながら、妻となった少女は未だ6歳。愛娘であり大切な妻となった人が喜んでいれば、当然エミリヤだって嬉しくなってしまう。
『やめろ、ダークリーガー! 彼らのスポーツを愛する精神を弄ぶな!』
『ハハハ。勝てるようにしてやったのだ、喜ぶがいい!』
「ううう~……! ダークリーガーはだめなのにっ」
ぎゅっと拳を握りショーの世界に没入するティーリスと、ショーよりも愛らしいその姿をつい見つめてしまうエミリヤは雪景色の中“スポーツ雪合戦”のアスリートを洗脳しようとするダークリーガー
『ううっ……勝ちたいっ! でも、ぼくは勝負がしたいのにっ……!』
『くくく諦めろ! その欲望に身を委ね、我らがアイスボンバーズのメンバーとなるがいい!』
舞台で抗う主人公と同じく苦悶の表情で“がんばれー!”と応援する周囲の子供達と同様にティーリスも声援を送った時、司会役の女性が叫ぶ。
『お願い、ショウくんを助けて! みんな、猟兵さんを呼んじゃうよ! せーのっ』
『『『『『『『『『『 ショウくんをたすけて、りょうへいさーん!!
』』』』』』』』』』
折り重なる子供たちのコールにハッとしたティーリスがエミリヤの手を取る。
「いこう、お母さん!」
「ええ、ティーリス」
そうして飛び入り参戦した二人が、ダークリーガー役の猟兵を肉薄する!
「わたしとお母さんがさせないのよ!」
「――では、参ります」
『なんだと!?』
氷柱で選手と襲い雪玉の代わりに投げつけろと主人公を唆していた敵役の振るう氷柱をティーリスの真紅の雷神剣が最小の威力と派手なエフェクトで溶かす!
『かっこいいー!』
『やっちゃえー!』
上がる歓声に忌々し気に舌打ちの演出をした敵役が飛び出し、エミリヤを襲う!
『おのれ吹き飛ぶがいい猟兵!』
「おっと」
『がんばれー!』
『まけないでー!』
拳を握り一生懸命に応援する幼い子供たちを、悲しませるわけにはいかない。
わざとやられたフリをして跳ね飛ばされたエミリヤが壁面へ軽やかに着地するや、即座に飛び出す!
「貴方にわたしは倒せません」
『なんだと!?』
エフェクト代わりに冥魁終焉を纏わせた神裁黒刀のみねで“切ったフリ”!
『ぐあああー! おのれ、つぎ……こそっ』
ガクッと倒れた敵役が転がるように舞台袖へと撤退すれば、飛び入り猟兵のエミリヤとティーリスの大勝利!
『ありがとう、猟兵さん!』
『『『『『『『『『『 猟兵さん、ありがとー!
』』』』』』』』』』
・
・
・
無事に閉幕したショーは最後まで大盛況で終わり、出演のお礼に観覧者限定配布の“NO! ダークリーガー!”キャンペーンのステッカーを貰ったティーリスは大喜び。両手を上げて喜ぶ年相応な姿を穏やかな気持ちで見守ったエミリヤとともににこやかにスタッフと別れ、クリスマスに賑わう街中で限定のクリスマススイーツ 雪だるまクレープや有名チームのクリスマスエキシビジョンを街の大型ビジョンで鑑賞、ウィンドウショッピングを終える頃にはイルミネーション映える黄昏時になっていた。
「そういえばティーリス、ショーの一太刀は中々良い太刀筋でしたね」
「えへへ、だってわたしはお母さんの娘よ?」
褒められ微笑むご機嫌なティーリスが、ふと綺麗にイルミネーションで輝く観覧車を指さし“あっちに行ってみよう、お母さん!”とエミリヤの手を引いた。
元よりエミリヤと血ではなく遺伝子を分け生まれた子 ティーリス。我が子と知りながら子へとはまた違う愛情を向けるようになったエミリヤと、母として想いながら夫としてもエミリヤを想うティーリスはたた手を取り合い、離さぬように繋ぎ視線を交わす。
「メリークリスマス、ティーリス」
「メリークリスマス――エミリヤ」
今宵の貴女はわたしだけのもの――そう目配せした二人の指先に落ちた六花は、絡まる指先の熱に溶けてゆく。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴