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Jack-o'-Memoria~燈火ハロウィンナイト

#アルダワ魔法学園 #ノベル #猟兵達のハロウィン2023

ノヴァ・フォルモント



飛砂・煉月



ココ・ロロ



ゲニウス・サガレン



ルテア・ステルンベルギア



カルディア・アミュレット




●ハロウィンの魔法と愉快なパンプキン
 その小さなお店を訪れた時はいつだって、淡く優しい明かりが燈っていて。
 迎えてくれるそんな燈火たちは、彼女が一人で祈りを込めて作っているもの。
 でも、今日の燈屋≪Memoria≫に燈るのは、彼女のものだけじゃなくて――皆が作った、ユニーク全開なジャックたち。
 だって、特別なハロウィンの夜がまたやって来るだから。
 そして集う皆にも特別な夜の魔法がかけられているかのように、各々が纏う装いも、いつもとは違ったお化け仕様。
 さぁ、皆がつくるのは、一体どんなジャック?

 今宵もいつもと同じようにこの場所が、穏やかで心地好いことには変わりはないのだけれど。
 黄昏空に似た朱の彩を柔く細め、蒼い星夜の魔法使いはその声に燈す。
「今年もこの季節がやってきたんだな」
 ……灯りを扱う燈屋の光も、不思議で愉しい色に染められるといいね、って。
 再び巡りきた不思議な夜とこれから燈るたくさんのいろたちに、心躍る彩りを。
 そんな魔法使い、ノヴァ・フォルモント(月蝕・f32296)と並んでわくわくしているのは。
「ジャック・オー・ランタンって不思議な魅力だよねえ」
 飛砂・煉月(渇望 欲しい ・f00719)……いえ、今日の彼は酒吞童子!
 そして尻尾をゆらり、えっへん張り切っている相棒のハクだって、烏天狗に変身済。
 皆を迎え入れたカルディア・アミュレット(命の灯神・f09196)も今日は、いつも一緒にいるアムと同じ、もこもこ羽耳兎さん。
 いつもは一人で明かりを作っている彼女だけれど。
「さ……はりきって、ジャックを作ってゆきましょう」
 これから始めるのは、皆と一緒にジャック・オー・ランタン作り。
「ジャック~ジャック~はじめてジャック~。みんなでランタン作りましょ~」
 仕立て屋さんに選んで貰った格好良い死神さんに変身したココ・ロロ(ひだまり・f40324)も、もふもふ尻尾をゆらゆらそわり。
 だって、ココにとっては、はじめてジャックなのだから。
 ルテア・ステルンベルギア(キバナの騎士・f39055)も、燈屋の穏やかな雰囲気が好きだけれど。
 でも賑やかさも嫌いではないから、長靴を履いたケットシーになった今日は、獣耳と尻尾も気合いで動かせそうな気分で。
「ハロウィン用のジャックランタン……とは言え、此の場所でランタン作りを手伝っていると、私も燈屋の店員になれたような心地がしてくるな」
 ……楽しいひと時を作るためにも、キルシュも共に私なり頑張るとしようか、と。
 わくわく張り切っている様子の妖精キルシュと一緒に、楽しくも彼らしく真面目に取り組むつもり。
 ということで、ノヴァは周囲をくるりと見回して。
「さて、改めてジャック作りか」
 この店でも以前に作ったことがあるけれど、勝手は覚えているかな……なんて思いながらも。
 目を留めるのは、並べられるたくさんの南瓜。
 そんなジャック・オー・ランタンになる南瓜は、カルディアとゲニウス・サガレン(探検家を気取る駆け出し学者・f30902)が準備する手筈になっているけれど。
 今日は倫敦警官に扮する彼へと、カルディアは訊ねてみる。
「ゲニウスはどんな南瓜を……?」
「私は世界中を旅して集めたウリ科の種から育ったいろいろなカボチャを持ってきたよ」
 そう返しながらもゲニウスが並べるのは、好奇心とにぎやかしの炎を宿す博物学者の彼らしいチョイスの南瓜たち。
「ほらほら、黒いのから星型、外は普通だけど中の色が真っ赤なやつ、ちょっと表面がメタリックなやつ、めちゃんこ硬くて重たいやつ、さあさあどれでも使ってくれたまえよ!」
 そんな異色な南瓜に、煉月は瞳をぱちりと瞬かせて。
「……え、なになに、色んな南瓜集めてきたの?」
 ルテアは、ゲニウスの世界中を旅した話を興味深く聞きながらも、彼が調達してきた世界の南瓜を見つめて。
「黒から星型……メタリックな此れも南瓜なのかい?」
「……黒に星型に赤に、きらきら。世界には、いろんな南瓜があるのね」
 初めてみるものも、あるわ……と。
 そう紡ぐカルディアに頷きながらも続ける……そうか、世界は広いな、と。
 確かにルテアの言うように、世界広しとはいうけれど。
 きょとりとしつつも、ココはじいとゲニウスの用意した南瓜を見つめて。
「わわ、ゲニウスさんのはフシギかぼちゃですか? カラフルなのとお星さまー……それにこれはー、……ピカピカしてます?」
「あっは、おもしろー。メタリックもかっけーけど、つーか初めて見たけど!」
「……めたりっく? 初めて見たのですよ」
 首を傾けるココは勿論、煉月だって……こんなんどこにあんの、なんて瞬くくらい変わった南瓜だらけ。
 そんな異色の南瓜を取り出しながらも、ゲニウスはうかがうようにちらり。
「カルディア店長もカボチャを用意してくれたはずだけど……」
「わたしが用意した南瓜は、小さい南瓜から大きく育った南瓜まで大きさ様々な子達」
「おお、大小さまざま、この小さいやつなんて、色が良くてなめらかでかわいらしいカボチャだ」
 ゲニウスがちょっぴり癖強めの異色な南瓜なら、カルディアが用意した南瓜は普通のものだけど色々な大きさが揃っていて。
 ココは再び、家族みたいな大きかったり小さかったりする南瓜たちを眺めて。
「小さいのに大きいの……色んなかぼちゃがありますね」
「カルディアとゲニウスはカボチャを用意してくれてありがとう」
 ノヴァは南瓜を調達してくれたふたりに礼を告げた後、早速その手を伸ばす。
「大きさや色形も様々で……これは皆で色々と個性的なジャックを作れそうだな」
 ……せっかくなので俺は一味違ったものを、と。自然と黒い南瓜に。
 だって、不思議とそれが漆黒に染まる夜の空に視えたから。
 そしてその黒に惹かれたのは、ノヴァだけではなくて。
「レンもこの南瓜が気になった?」
「ふふ、ノヴァも一緒?」
 そうへらり緩む、煉月だって同じで。
 ノヴァも……ふふ、そうだね、と笑み返しながらも紡ぐ。
 ――俺達が惹かれるのはやはりこの色なのかも、って。
 皆も続いて、沢山ある南瓜たちの中から、それぞれ気になった子を選んで手に取れば。
 特別な夜に燈す、自分だけのジャック・オー・ランタン作りのはじまり。

●皆色ジャック百面相
 愉快なジャックたちを作るためにまず取り掛かるのは、意外と力がいる作業。
 ひとりだと、それはとても大変なものだけれど。
「包丁を使う作業はわたしと大人の人でやるから……ココは、くり抜いたりする作業を手伝ってほしいわ」
「ふふー、はい! ココにまかせてください!」
 カルディアから渡された大きなスプーンを、ぐっと気合十分、受け取るココ。
 ルテアはそんなカルディア達を見遣り、南瓜の扱いに慣れた様子、と作業するその様子に思いながら。
 ……であれば、と申し出るのは。
「私はココ殿と一緒に、くり抜き作業を手伝おうか」
「ん、ルテアもくりぬき、お願いするわね」
 ルテアさんとお手伝いがんばります! と尻尾を揺らすココと一緒に、南瓜のくり抜きを手伝うことにして。
「えへへ、いっしょにやればはやいーですね」
 くるくるっと一生懸命中身を取っていけば。
 ゲニウスも、選んだお饅頭みたいにぺったりした形のオレンジ色のカボチャを手にして。
 いざ、スプーンとナイフで中身をくりぬき……しようと思ったのだけれど。
「……ああ、ルテア君ちょっとこれ持っててくれないかな?」
 くり抜き係の彼にヘルプを出して、手伝ってもらうことに。
 ノヴァも、自分のジャックを手掛けつつ、皆の楽しそうな様子を微笑ましく見守りながらも。
「ですが数が多い……ううん」
「ココ、南瓜をくり抜くるの、俺も手伝おうか」
「わ、ノヴァさん、ありがとうございます!」
 そう、沢山並ぶ南瓜をくり抜くココ達のお手伝いを。
 そして皆で協力しあって、一生懸命南瓜をくり抜いていくココだけれど。
 ふいに、お耳をぴこり。
「はっ。森のお友達にも手伝ってもらいましょう。かぼちゃの中のを出してくださいね?」
 鞄の中の森のお友達にそうお願いすれば。
 出てきたネズミとリスも、南瓜の中身をごそごそガリガリとお手伝い。
 そしてルテアは、自分の持っている大きなスプーンに興味深々な様子の妖精キルシュに気付いて。
「妖精キルシュには大き過ぎるだろうし、そこは手伝わなくても大丈夫そうだよ」
 そう告げつつ、針剣もそっとしまっておくことにする……南瓜を壊しそうだから、と。
 そして、何か手伝いたそうにそわそわする行動派な妖精には、こうお願いを。
「……話相手として、皆の伝言役をお願いするよ」
 そんな様子に、カルディアもほっこり。
「……ふふ、あなた達も手伝ってくれて、ありがとう……」
 ルテアの妖精達とココの森の友人達にお礼を告げてから。
 より一層、密かに気合いを入れるカルディア。
 皆が作業しやすいようにと、南瓜の頭を切る作業をせっせとこなすべく。
 そんな南瓜たちは、ずっしりと重たいけれど。
「あ、力仕事ならオレ手伝うよ~」
 力を使う仕事は、煉月にお任せ。
 ハクだって力持ちだから、運搬のお手伝いなどを張り切ってやってくれて。
 カルディアはふと、気付いて視線を向ける。
「……あら? アム……南瓜を運んでくれるの?」
 羽根耳をぱたぱたさせているアムに気付いて。
 そして、トン、と切り終わった南瓜を手渡して。
「ん、くりぬき係にもっていってあげて……」
 そう言づければ……「ぴゅ!」と敬礼!
 耳の羽でふわふわり、ぽわぽわと翔ぶ彼の姿は、南瓜を皆に運んでいく頼もしい兎。
 そんな同じ運搬係のアムと並んで、一緒に南瓜を運ぶハクを見ながらも。
 煉月は、伝言役の妖精キルシュへと声を掛けて。
「アムと協力しつつキルシュも仲良くしてくれる?」
 喜んで早速飛んでいって、アムやハクと一緒に仲良く頑張るキルシュに笑み向けて。
 いつもはそんなキルシュに振り回されたり振り回したりする関係であるルテアも、作業をしながら思う。
(「其々な連れの姿もあってとても賑やかで、小さな森の友たちも中々に頼もしいね」)
 そしてふと、ココの森のお友達へと目を向けるも。
「……あっ、まだ食べちゃダメです!」
 カリカリッと南瓜を食べようとしているお友達に気付いて、ココは慌ててそう声を掛けつつ。
「あとで捨てるとこ、おやつにもらいましょー」
「あ、ココの森のお友達とも協力出来たら嬉しいな~」
「アムさんとキルシュさん、ハクさんとも仲良くーですよ」
 そう言って聞かせれば、南瓜を持ってきてくれたみんなともすぐに打ち解けたみたいだから。
 ココはカルディアの切った南瓜を受け取りつつ、ほわほわ。
「ふふ、小さなお手伝いさんもたくさんでにぎやかですね」
 和みながらも、引き続き頑張って南瓜をくりくりっ。
 そして煉月も、頼まれた力仕事は粗方終わらせたから。
「ルテア、どんな感じ~?」
 折角だし、と邪魔しない範囲でお手伝いしつつ、お喋りも。
「結構力が必要だな、レン殿は黒い南瓜を選んだのかい?」
「ふふ、ノヴァと一緒の黒いのにしたよー。ルテアは?」
「私は、キルシュが気に入った南瓜にしたよ」
「あは、その南瓜もいいね!」
 作業も勿論、真面目に取り組むけれど。
 でもつい、談笑のようなお喋りにも興じてしまうルテア。
 だってやはり折角だし、思うから……レン殿からも色々聞けたら嬉しいな、と。
 そんな、話に花を咲かせながらも。
 煉月は、つい話し込んじゃってごめーん、なんてちょっぴり肩を竦めるけれど。
「でもほら、弾んじゃうのは仕方ないよね?」
 そう続けた彼の言葉に、ルテアも同意するように頷いて返す。
 ……話し込んでしまうのも、また思い出という事に、って。
 そして皆で協力し合って、南瓜を切って、運んで、くり抜き終われば。
「ジャックは……皆の好きな表情で作ってあげて。」
 次は、ジャックのお顔作り!
「ジャックのお顔~。たのしそうなお顔に、にこにこ笑顔~」
 ココのジャックは、今の気持ちそのままに、たのしそうだったりにこにこしている表情。
 それから、他にはどうしようと顔を上げれば。
「わたしも……笑顔やお寝坊な表情……」
 カルディアはそう、にっこり顔やおねむ顔のジャックを作ってみてから。
 さらに付け加えてみるのは、ぴょこり兎耳。
「わわ……、うさぎさんかぼちゃかわいいです! むむむ……動物さんの作ってみたい」
「ココも一緒に動物を作る……?」
「えへへ、ココもいっしょに作ります!」
「ええ、動物の形を一緒に作りましょう」
 ココはそう言ってくれたカルディアに倣って。
「こーしてー……マネしてー、ヒゲとー……お耳を作ってー」
 ちょこんと、作ったお耳やおひげをつければ。
「ふふん、ネコさんジャック完成です!」
「……猫のジャックも可愛らしいわね」
 カルディアの兎耳ジャックと並べれば、さらに可愛らしさ増し増しで。
「おや、ココ君はネコ、カルディア店長はウサギのジャックかな」
 ひょこりとふたりのジャックを覗きこんだゲニウスはこう続ける。
 ……まるで不思議な動物園のよう、と。
 ノヴァも、カルディアとココの兎と猫のジャックを見て、動物型も可愛らしいと思いながら。
「カルとココの動物達もかーわいー」
 煉月は悪戯っぽく笑んで続ける。
「兎と猫に狼も入れてくれる? 食べたりしないからさ」
「ふふ、オオカミさんも並べますか?」
 ということで、狼さんも仲良く仲間入り!
 そんな動物さんジャックに、ココはほわりと尻尾を揺らしながらも。
「みんなのはどんなお顔でしょう?」
 他の皆の作っているジャックも気になって、ふと覗いてみれば。
「この楽しそうなお顔のはー……ルテアさんのでしょうか?」
「楽しそうなのはルテアの?」
「ルテアは……楽しそうなジャック」
 ココだけでなく、煉月とカルディアも、それが彼が作ったジャックだとすぐにわかる。
 だって、ルテアの手元の南瓜の顔は、ルテア自身もちょっと思うくらい、何となく彼自身に似ているし。
「心なしか楽しげな表情になったような?」
 そう首を小さく首を傾けるルテアだけれど、それも納得。
「だってさっき話してた時と顔が似てる」
「ふふ、今日のルテアさんのお顔に似ている気がするのですよ」
 煉月やココの言葉に、ノヴァも同じことを思ったから。
 楽しげに笑うジャックみたいに、心做しか彼自身の表情もいつもより綻んでいるように視えると。
 そして、ゲニウスが何気に気になっているのは。
「レンが作っているランタン、あれは何かな……」
 煉月の黒いジャック。だって彼の選んだ南瓜は。
「おっと、自分の忘れるとこだった。ゴメンね」
 一番大きいのと欲張った夜の南瓜だから。
 それから煉月は、ご機嫌顔に牙ひとつ残して。
(「夜空にはやさしい月だって昇るとオレは知ってるかんね」)
 灯りは金色、さらに……キミに飾ろっか、って。
 自分で出せない狼耳は、もっふもふのを添えてあげれば。
 大きな黒狼――月色灯すジャックはちょー笑顔!
 そんな煉月のご機嫌な狼さんジャックを見れば。
「……いやはや楽しそうだ、負けられないな!」
 ゲニウスも、自分の作業に取り掛かって。
 ノヴァも、煉月と同じく選んだ夜の南瓜を見つめてから、ふたつ。
 ……夜空に浮かべてみたくなるのは耀く星だろうか、と。
 黒い南瓜の表面にくり抜くのは、星型の瞳。
 そして口元はにっこり、弧を描いて笑うジャックにして。
「灯す光は……青い星。青が良いな」
 そんな青き星の如き燈火を見て、煉月は綻ぶ。
 ……夜空にから溢れる蒼星は、ノヴァだなあ、って。
 そして思う――キミの星が届いた、オレの月も届いてたらイイな、と。
 でも、きちんと届いているから。
 レンの黒色に狼耳をつけたジャックを見つめれば、思わずノヴァも自身の頬を緩ませる。
 だって――月色が灯るそれが、夜空に浮かぶ月のようで。
 いや、ふたりだけではなくて。
「ノヴァとレンは夜の風景が輝く素敵なジャック」
「夜みたいなのはノヴァさんとレンさんー……?」
 ……ふたつ並ぶと青と金の灯りがキレイなジャック、と。
 カルディアと一緒に、月と星を燈す夜のジャックたちに、ココも目を奪われたから。
 そんな色々なジャックがひとつ、またひとつと燈っていくのを、煉月も眺める。
 ……各々灯る明かりは様々、けれど皆色、と。
 そして。
「ゲニウスは……あら?」
 カルディアはゲニウスのジャックを見て、瞳をぱちり。
 表情は「ニヤリ……」な、ゲニウスのジャックなのだけれど。
 かぼちゃのヘタをヤシの木みたいに加工し、蝋で表面をコーティングして。
 そして仕上げに、水に浮かべれば、そう!
「「無人島ジャック」の完成だ!」
 そんな見たことないジャックに、お耳をぴこりっ。
「ゲニウスさんのは……島? み、水に浮かんじゃうのですか……!?」
「ゲニウスのジャック浮くって発想はすげーね!」
 そわりとするココと一緒に、煉月もそう声を上げて。
「ゲニウスのはまるで海に浮かぶ島のようなジャック」
 ノヴァは向けた黄昏空の瞳を細める。
 ……奇想天外な発想も何時もながら彼らしいなぁ、と。
 そう思うのは、カルディアも同じで。
「無人島……みんなのハロウィンを添えれば、ハロウィンの豊かな島になりそうね」
 ふふ、と彼らしい愉快なジャックを見つめて。
「いやー、小さなカニとか何か乗せてみたいね」
 さらにそう紡ぎながらも、ふと皆のジャックを目にすれば。
 ゲニウスは瞬間、瞳を大きく見開くのだった。
「あれ!? 私のジャックだけ浮いてる!?」
 自分のジャックだけ浮いていることに気付いて。ええ、二重の意味で……!?

●燈るMemoria
 そんな、わいわい楽しくジャックを作っていけば。
「楽しい作業は時間もあっという間に過ぎて行くね」
 ノヴァの言う通り、楽しい作業はあっという間。
 そして煉月が、くんっと、好く利く鼻で拾ったのは……掘ったのとは違う秋の薫。
「……おや、何やらいい香りが」
 ノヴァもふわりと漂ってくるそれに気付いて。
「みんな……少し休憩をしましょう」
 作業も一区切りの頃合いで、カルディアが運んできたのは。
「パンプキンパイとクッキーはいかがかしら?」
「カルのパンプキンパイとクッキー!」
「わーい、おやつー!」
 煉月とココも大喜びの、カルディア特製の美味しそうなおやつ!
「ふふー、がんばったからお腹空いちゃいました」
 ココは頑張ったお友達にもかぼちゃのカケラをあげて。
「パンプキンパイとクッキーでの休憩も、楽しい時間を彩るようだね」
 ルテアも、有難く頂くとしようか、と紡いでから。
「勿論キルシュの分もあるよ」
 そわりとしている妖精キルシュにも、きちんとそう言ってあげて。
 美味しいパイとクッキーがあるならば、やはりこれも欠かせない。
「そうだね、そろそろ休憩も良いかもしれない。お茶を淹れるの、手伝おうか」
「ええ、そうしたらお茶はノヴァにお願いするわ」
 手伝いを申し出てくれたノヴァに、カルディアは頷いて返す。
 ……おやつに合う紅茶を淹れましょう、と。
「おっと、ノヴァ君お茶ありがとう……ふむ、いい香りだ」
 ゲニウスも、そんな皆とひと休みしつつ、お菓子とお茶をいただきながら、沢山並ぶランタンを眺めていって。
「ノヴァ、紅茶ちょーだい」
 ふーと冷ましながら、煉月もハクと一緒に。
 秋味も紅茶も、いただきます!
 そして改めて、カルディアはふと店内を見渡して。
「沢山のジャックができて……賑やかになったわ」
 色んなジャックが並んでいる景色に、嬉し気に微笑を零せば。
「誰が作ったのか想像するのもまた楽しいね」
 ルテアも、さて……と、完成した南瓜を眺めていって。
 兎耳や猫や狼の動物さんたちのものだったり、奇想天外な無人島ジャックに、黒に灯る青と金は二重星のようでもあって。
 付けている獣耳と尻尾もやはり動かせそうなくらい、楽しみに思う。
 ……皆の好きな表情で形造られるジャック達は、どんな風に並んでゆくのだろうかな、って。
 ココも、お顔もカタチもみんな違う、燈屋さんだけの子達をほわりと見つめて。
「えへへ、見たらきっと街の人たちも笑顔になっちゃうのですよ。だってだって、みんなで作った特別なジャックですから」
「ああ、賑やかで愉しいハロウィンの夜になりそうだね」
 皆に紅茶を配った後、ノヴァも一息つきながら皆の作ったランタンを眺めれば。
「灯りがつく瞬間は、そりゃあ壮観だろう。夜の長いこの季節に、ランタンの……光の祭りだ」
 燈る光たちを見つめ、ゲニウスは感嘆の言の葉を零す――なんでこんなにきれいなんだろう、と。
「思い出は……大豊作のようだね」
 そんなゲニウスに、煉月も大きく頷いて。
「ハロウィンの夜は大豊作! だって、想い出も色彩も沢山だかんね!」
 カルディアは、燈屋≪Memoria≫に満ちる光に照らされた皆の顔を見つめながら。
 大豊作……街の人にもそう思ってもらえたらいいわ、って。
 特別なハロウィンの夜にふわりと、皆と燈す。楽しくて嬉しくて優しい、微笑みの明かりを。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2024年01月04日


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