迫る脅威を討て! ~緑の小鬼と君臨する王~
剣と魔法と竜の世界、猟兵達からは『アックス&ウィザーズ』と呼ばれる世界。
その辺境に、小さな集落が存在する。その地域に存在する国家の方針により、居住地域を広げる為に入植してきた民達が開拓してきた、俗に言う『入植地』だ。
集落が立ち上がってから、まだ日は浅い。衣・住・食の全てにおいて未だ自立はならず、その多くを後方の都市からの支援で賄っている集落ではあるが……その地に移ってきた者達は、いつかはこの地で自立した環境を、支援を受けずとも生活してみせる、いや国にはこの地が不可欠だと言わせてみせると、開拓に向けたその士気は非常に高い。
だが、そんな地に一つの脅威が迫ろうとしていた。
アックス&ウィザーズ世界において、ポピュラーなモンスターの一種である『ゴブリン』の襲撃である。
ゴブリンは群れを成し、度々集落へちょっかいを掛ける素振りを見せている。頻度も増しつつあり、集落は自警団を立ち上げてその脅威に対抗しようと決心した。
元々、引退した軍人、農家の三男坊、定職を求めようとした冒険者や新興の商人……村の男衆の多くは未開の地に身体一つで飛び込もうとしてきた者達らしく、頑健な身体を持つ者が殆どである。戦闘に関して素人であるが、訓練を受けていた者の指導の下で新兵程度には立ち回れる様にはなっていた。
そうしてちょっかいを掛けてきたゴブリン達を数度撃退し、自信を付けた自警団員達はゴブリンの群れを根絶やしにせんと打って出る。目指すはゴブリンが最も目撃されている、近隣の平地。彼らは今回も上手くやれると、その胸に自信を抱き戦場へ赴いたのだったが……
●
「その自信は、簡単に打ち砕かれる事になります。ゴブリンの群れには、『王』が付いていたのです」
集まる猟兵達の前で、銀髪の美女が語りかける。グリモア猟兵、ヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f00408)だ。
「今回皆さんには、アックス&ウィザーズ世界の辺境地域に存在する開拓村、その近くの平野に出向き、開拓村の自警団を救出していただく事になります」
ヴィクトリアの説明によれば、その開拓村には今まで度々ゴブリンの襲撃があったらしい。
その襲撃は開拓村側の自警団が撃退に成功していた。だが、その成功が続いた事で彼らは錯覚してしまう。『ゴブリン程度、恐るるに足らず』、と。
自信を深め、襲撃の根を断つため、打って出る道を選ぶ自警団。だがゴブリン側の策略により引き際を誤り、全滅してしまう事になる……というのが、ヴィクトリアの視た未来の話である。
猟兵達には、その未来を変える為に現地に赴いて貰う事になる。
「皆さんが転移する場所は、戦場の程近く。時間は戦闘開始から暫く経ってからになります」
自警団側とゴブリンの戦いが本格化するタイミングで、猟兵達は現地に転移する事になるのだという。
戦いはまず、自警団側の優勢で始まる。ゴブリンの小集団を発見した自警団が、小集団を簡単に蹴散らす事に成功するのだ。
だが、問題はこれからだ。ゴブリン側は『勢いに押された風を装い』、自警団を自分達の有利な戦場へと……ゴブリン達程の身軽さならば問題ない程度に地がぬかるんだ場所へと、誘導しようとするのだと言う。
誘導された自警団は地に足を取られ機動力を殺され、ゴブリンの集団に袋叩きにされて全滅。結果として防衛力を失った開拓村は、そのままゴブリンの毒牙に掛かる……というのが、本来の未来だ。
猟兵達はその未来を覆す為に、『自警団がちょうどぬかるみに足を踏み入れた瞬間に』現地に到着する事になると、ヴィクトリアは説明する。
「自警団救出のタイミングがシビアになるのは、相手側の指揮官……『ゴブリンキング』に、対抗策を講じさせない為です」
ゴブリンの群れの指揮を執るのは、狡猾で残忍な『ゴブリンキング』だ。策は悪辣で、多くのゴブリンを従えるカリスマ性も持つ存在だ。
そんな存在が猟兵の襲撃を事前に察知してしまえば……逃げの一手を打たれ、撃破は困難となってしまうだろう。
故に、救出のタイミングは厳守して欲しいとヴィクトリアは猟兵達に要請する。ゴブリンキングが勝利を確信した瞬間に戦局を引っくり返し、対応する暇を与えぬ為に。
「タイミングの難しい依頼となります。しかしこの地の開拓が進めば……昨今の新たな動きを見せる情勢に、また新たな発見が続くかもしれません」
皆さんの健闘を、お祈りしています、と。ヴィクトリアは深く頭を下げて、猟兵達を見送るのだった。
月城祐一
銀河帝国攻略戦、お疲れ様でした。月城祐一です。
各世界でも新しい動きが始まっておりますが、あえての従来型の依頼です。
第1章は集団戦。ゴブリンの群れとの戦いとなります。
OPで色々語られていますが、その辺りの補足を。
戦場は平野。ただし地はぬかるみ機動力が下がります。(ゴブリンは平気で動いてきますが)
また戦場には、『開拓村の自警団』が存在します。戦闘力はほぼ無しに等しく、逃げようにもゴブリンの罠に掛かり包囲されている為、放置した場合は文字通り全滅する事になります。(ただし、全滅した場合でも『依頼の成否には関係しません』が、後味の良い勝利を目指す場合はご留意下さい)
この辺りの状況を気に留めつつ、ゴブリンの群れを蹴散らすまでが第1章となります。
第2章はボス戦。狡猾なゴブリン達の王、ゴブリンキング戦です。
ゴブリンキングを討てば村を襲うゴブリンの群れは霧散する事でしょう。逃さず、確実に撃破出来るよう、色々考えてみると良いかも知れません。
勝利を収めた場合の第3章は、戦闘の打ち上げになります。
開拓村での宴会、祝勝会となりますが……自警団の健在具合で、空気が変わるかもしれません。賑やかに過ごしたい場合は、自警団の無事の生還を狙ってみて下さい。
また第3章でお声掛けがある場合、ヴィクトリアがお相手致します。交流してみてもいいかな、とお考えの方は是非お声をお掛け下さい。
それでは、皆様の熱いプレイングを、お待ちしております!
第1章 集団戦
『ゴブリン』
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POW : ゴブリンアタック
【粗雑な武器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 粗雑な武器
【ダッシュ】による素早い一撃を放つ。また、【盾を捨てる】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 足払い
【低い位置】から【不意打ちの蹴り】を放ち、【体勢を崩すこと】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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●絶望を突破せよ
猟兵達が降り立った地では、グリモア猟兵の言葉通りに戦闘が始まっていた。
10人程度の人間達(恐らく、話にあった『自警団』の一団だろう)が円陣を組み、取り囲み迫り来る緑の肌の小鬼、ゴブリン達を迎え撃っている姿が猟兵達の目に映るだろうか?
防戦一方の自警団の者達の表情は、焦りの色が濃い。ぬかるむ足元に踏ん張りは効かず、防御も攻撃も力を込める事が難しい状況だ。幸い、今の所ゴブリンの側に弓や石礫などの飛び道具を使う者は少なく、今はその攻勢を防げているが……このまま時間を掛けて消耗すれば、遠からずに来るだろう破綻と、それに伴う絶望的な結末は避け得ない。
「……諦めるな! まずはゆっくりと、このぬかるみを抜けるんだ!」
そんな未来を幻視し動揺する隊員を、必死に鼓舞する男がいる。開拓村の中で唯一の引退軍人の壮年の男で、この自警団のリーダーだ。彼の鼓舞の声に配下の隊員も答えるように、必死に武器を振るいながら後退しようと藻掻いている。
状況を変えようと必死に打開策を見出そうと足掻くその男を、ゴブリンの陣の奥で見つけた者がいる。
舌舐めずりを一つし、配下のゴブリンに指示を出す一際立派な個体……ゴブリンキング。指示を出し、配下を鼓舞する男を殺すことで勝利を確実にしようと虎の子の弓持ち達の狙いを集中させたのだ。
……奴を殺せば、目の前のニンゲンどもは烏合の衆。蹴散らした後は……奴らの巣を襲い、好きなだけ奪い、犯し、殺すのだ。
ゴブリンキングの頭の中で、そんなバラ色の未来が輝き広がる。このままであれば、きっとそうなった事だろう。
そんな下卑た未来を破壊する者達が。猟兵達が、戦場に乱入するまでは。
アシェラ・ヘリオース
「良く凌いだ。此処から先は我等も加勢しよう」
兵士達の前に【念動力】で浮遊し、【オーラ防御】で長を【かばう】。
まずは兵士達の【救助活動】が優先だ。
「諸君らの指揮官は優秀だ。指示を思い出せ。ゆっくりとでいい、このぬかるみを抜け出すのだ」
冷静で的確な判断力で兵士達に指示を出して【鼓舞】しよう。
「リーチは君達が長い。焦らず、近づけるな。盾を捨てたら突っ込んでくるぞ。低い位置からの蹴りにも注意だ。決して無理はするなよ」
体勢を整えれば【戦闘知識】で戦闘指示を出す。負け癖をつけると今後に響くので、達成感を与えたい。
勿論、戦闘の主軸は猟兵だ。兵士達には無理をさせないよう注意する。
【連携・アドリブ歓迎】
ミフェット・マザーグース
『耳を澄ませろ 助けが来たぞ♪
顔を上げろ 立ち上がれ あきらめるな
声を上げろ この沼をぬけて 家に帰るまで──♪』
助けが来たことを伝えるために、大きな声で歌ってでみんなを励ますよ。
ミフェットは戦うのがヘタだから、怖いゴブリンは戦いの得意なヒトたちにお願いして、みんなの怪我を、治したい・・・です。
【シンフォニック・キュア】
ミフェットの歌声で、もうちょっとだけ頑張ろう思ってくれた人達を、治癒でお手伝いしたい、です。みんなに声が届くように大きな声で歌うね。
【かばう】【歌唱】【祈り】
自警団の人達と一緒に移動しながら歌うよ。
でも、命を落としそうな人がいたら、触手でかばいたい、です。
ティエル・ティエリエル
「ボク達が来たからにはゴブリンなんかの好きにはさせないよ!」
背中の翅で空中を飛び回ることでぬかるみの影響を受けないよ♪
自警団に襲い掛かろうとしているゴブリンを中心に空中から風を纏わせたレイピアによる【属性攻撃】での刺突!
いざって時には【捨て身の一撃】も使って自警団のみんなを守るよ!
怪我をしている人がいれば【小さな妖精の輪舞】を使って回復してあげるね♪
回復が終わったら「ささ、ここはボク達に任せて早く包囲網を突破するんだよ☆」って【鼓舞】してあげるよ!
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です
●自警団、救出
状況は、最悪だった。緒戦の勝利の勢いのまま、相手の誘いに気付かずに不利な地形に誘い込まれてしまった。
抜け出そうにも、ゴブリンは次から次へとやってくる。よく見れば、既に周囲を取り囲まれつつあるようだ。
「……諦めるな! まずはゆっくりと、このぬかるみを抜けるんだ!」
隊長の男が動揺する部下たちを支える様に、必死に指示を出す。だがその内心はこの状況をどう打破するべきかと焦る一方だ。
そして焦りは注意力を散漫にさせる。自身を狙い矢を番える敵を見落としてしまう……結果、隊長はここで命を落とす。
……それは、本来の未来の話だ。
まず響いたのは、幾つかの炸裂音。次いで各所から聞こえる、ゴブリン達の断末魔の声。
そして聞こえてくるのは、少女の歌声。
──耳を澄ませろ 助けが来たぞ♪
──顔を上げろ 立ち上がれ あきらめるな
──声を上げろ この沼をぬけて 家に帰るまで──♪
その歌声は、技術的な観点で言えばお世辞にも上手いと言える物では無かったかも知れない。
だが何故だろうか。拙いその声を聞けば聞くほど、泥に埋もれる足が、武器を振るい続けた腕が、疲労で鉛の様に重い体が……もう少しだけ、動かせる様に思えてくるのは!
しかし、そんな彼らの前に新たなゴブリンの一団が躍り出る。突然の事態に混乱しているのか、ゴブリンの動きは統制が取れていないようにも見えるが……野生、本能に任せた行動の方が厄介となったか。自警団員の一人がその攻撃を受けようとした、その時だった。
「ボク達が来たからには、ゴブリンなんかの好きにはさせないよ!」
歌声の声とはまた違う、頭上から響く甲高い少女の声。小さな妖精姫、ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)の奇襲攻撃だ。
まるで無警戒だった頭上からの一撃を受け、額から地を吹き出してゴブリンの一体が地に崩れる。突然の奇襲に慌てたらしく、ゴブリン達は一旦撤退する。
そんな敵を『ドヤァ』っと音が出そうな表情で見下ろすティエルに、何が起きたか分からんと言った空気の自警団。
「此処から先は我等も加勢しよう」
そんな自警団の者達に、声を掛ける者がいる。念動力を駆使し、ぬかるむ地を滑るように浮遊する女性。アシェラ・ヘリオース(ダークフォースナイト・f13819)だ。
「加勢!? それに、我等とは……!」
「先程からゴブリンの群れを攻撃している者達さ。しかしこの数を相手に、良く凌いだものだ」
諸君らの指揮官は優秀だな、と自警団の隊長と隊員達へ賛辞の言葉を送るアシェラ。現時点で、自警団員は皆大なり小なり何かしらの怪我は負ってはいるものの、死者はゼロ。新兵に毛が生えた程度の実力でしかない者達が、ゴブリンの包囲を受けてこの程度の被害で済む……猟兵の介入のタイミングも良かったとは言え、まさしく偉業と言っていいだろう。
「怪我してる人はいないかなっ? 回復するから、終わったら包囲網を突破するんだよ☆」
「み、ミフェットも……お手伝い、します」
傷を癒やす事に掛けては一家言を持つ、と言わんばかりに自信満々なティエルの横には、少々自信なさげなブラックタールの少女の、ミフェット・マザーグース(沼の歌声・f09867)の姿が。その声を聞けば、先程戦場に響いた歌の歌い手は彼女である事に自警団員達も気付くだろう。
「さっきの歌は、嬢ちゃんの歌かい」「フェアリーの嬢ちゃんも、小さいのに良くやるもんだ」「助かったよ、礼を言わせてくれ」
「ミフェットは、その……戦うのが、ヘタだから……みんなを、励ますくらい、しか……」
「フフーン! っと、それじゃ回復するよー! みんな治っちゃえ♪」
ティエルとミフェットに口々に感謝の言葉を告げる自警団員達。年配の者からすれば、娘……いや、孫娘と言っていい年齢の二人を見る彼らの目は、どこか優しい。
そんな彼らの横では、アシェラが隊長が方針を打ち合わせしつつ、ゴブリン対策をレクチャーしている。
「リーチは君達の方が長い。焦らず、近づけるな。盾を捨てたら奴は突っ込んでくる。低い位置からの蹴りには注意が必要だ」
「なるほど……皆、聞こえていたか! 彼女の言葉通り、焦らずに落ち着いて敵の動きに対処するんだ!」
隊長の激に、応! と答える隊員達。彼らの目先の危機は、まずは救えたと言っていいだろう。
だがゴブリンの群れは、まだ多数が健在。戦いはまだ、これからが本番だった。
成功
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仙城・蒼汰郎
ちっ…平野じゃぁあんまり俺の持ち味はいかせねぇが。
知っちまった以上、見過ごすワケには行かねぇな!
見せてやるぜ…『迅蜘蛛』の仕事って奴をよッ!
【POW】
「させるかってんだよォッ!!」
タイミングがタイミング…多少強引でも迅速な動きが命!
平野じゃ近くに縄を掛ける場所があるとも限らねぇから、
ゴブリンの一匹に縄を巻き付けて振り回し他のゴブリンにぶつける事で、
派手に暴れて割り込む空間を作りつつ気をそらさせるぜ!
自警団とゴブリンの間に来たらUCを使って一気に包囲を押し返す!
戦いながら、自警団には【レール・ネイルガン】で釘を地面に打ち付け
縄を掛けた簡易的な脱出道具で抜け出して守りに徹してもらう作戦で行くぜ!
リリー・ブラウン
困ってる人がいたら助けるのが一流の魔法使いだからな!リリー、義によって助太刀いたすー!(サムライエンパイア風)
弓が放たれる前にゴブリンたちをフロストボルトで攻撃だ!じけいだんを守れー!
「つらぬけ、フロストボルト!」
囲まれててピンチだなー!とにかくゴブリンの数を減らしてかないとな!
魔導書からフロストソードを召喚して、近づいてきた奴から斬って凍らせてやるぞー!
攻撃はフロストウォールで受けて防御な!
あと、リーダーのおじちゃんがとくに狙われてるっぽいから注意しないとなー
「矢に気をつけろよー!自分の身を守ることに集中しろー!」
一箇所にまとまってる奴らはフロストボルトで蹴散らしてこー!全力魔法をくらえー!
テリブル・カトラリー
目標、ゴブリンの撃滅。
…可能ならば、自警団の救出も行う。
【支援狙撃】発動。ダッシュで戦場へ行き、
介入と同時にUCのドローンを怪力で戦場の上空へと投擲。
上空へと投げ飛ばしたドローンを操縦し、
発した超音波で、敵位置情報の収集、
同時にジャンプとブースターで自身を吹き飛ばし飛翔、滞空。
早業、視力を使い、目視による確認で自警団の状況、敵の行動を見切り、
自動拳銃、アームドフォート、軽機関銃による
遠距離狙撃(スナイパー、空中戦)を行う。
危機的状況に陥っている者や、有力敵を優先し広範囲を攻撃。
(範囲攻撃、二回攻撃)余裕があれば逃げる敵も狙う。
ゴブリン…自警団を滅ぼせるだけのそのポテンシャル。殲滅が望ましい。
レナータ・バルダーヌ
足場が悪くて開けた地形でしたら、【空中戦】でお相手しましょう!
自警団の皆さんを空輸するのも考えましたが、わたしではお一人ずつになるので後手に回りそうですし、防衛しつつ敵の殲滅を優先します。
わたしは味方を巻き込まないよう注意しつつ、【ブレイズソニックトレイル】で戦闘機のように高速で低空飛行し、【衝撃波】と体当たりで敵をなぎ倒します。
それと同時に、自警団さんとゴブリンさんの間に、物質化した炎の軌跡で壁を作り、自警団さんを護ります。
急加速・急旋回は体の負担が大きいので、できれば避けたいですが、状況次第でしょうか。
ちなみにゴブリンさんは足癖が悪いようですけど、蹴った足のほうが千切れ飛ぶと思いますよ?
●戦場へ、介入せよ
時は、少し遡る。
グリモア猟兵の導きにより転移してきた猟兵達が降り立ったのは、事前情報通りの場所だった。
多少の草木はあれど高い樹木は少なく、起伏もそれほど目立たない。平地と言われて、即座に脳裏を過るような光景が広がっていた。
「ちっ。平野じゃあ、俺の持ち味はあんまりいかせねぇな……」
そんな環境を前にして、仙城・蒼汰郎(迅蜘蛛・f06062)が小さく愚痴を零す。ロープワークを得意とする元とび職という経歴を持つ彼に取って、最も得意とする環境は高所や入り組んだ地形だ。今回の戦場では、得意とする技能を活かすのは中々骨であると言えるだろう。
だが、自身の得意分野を活かせぬからと、腐るだけが彼ではない。
「知っちまった以上は、見過ごすワケには行かねぇからな……!」
「そうだなー! 困ってる人がいたら助けるのが、一流の魔法使いだからな!」
熱血漢らしい男気を見せる蒼汰郎に同意する、少女の声。リリー・ブラウン(ウィザードの卵・f01170)の声だ。その声に、気負いの色は無い。
困っている人を助け、悪いゴブリンを討ち滅ぼす。まさに御伽噺に語られる英雄譚のよう。リリーにとっての今回の依頼は、師であり、憧れる大魔術師の様な『一流の魔法使い』としての道を往く為の第一歩なのだ。
「ともかく、タイミングがタイミングだ。多少強引でも、迅速な動きが命だな。往くぜ!」
「おー!」
自警団を取り囲む包囲網を作ろうとする緑の子鬼の群れに、突入していく二人。
……同じ様に。その包囲網を食い破ろうと動く猟兵がいた。
「……目標、ゴブリンの撃滅」
淡白な合成音声が響く。テリブル・カトラリー(女人型ウォーマシン・f04808)の呟きだ。
既に彼女が喚び出したステルスドローンは戦場の上空へ展開している。自警団は既に包囲されつつある。救出の為の猶予は、それほど無いだろう事は明白だ。
「……可能ならば、自警団の救出も行う」
ポツリと、溢れるように呟く。現実的に見れば、自警団の救出は厳しい状況かもしれない。だが、それでも、可能ならば、と。
……戦場では冷徹に振る舞うウォーマシンである彼女だが、その内面は争いを好まぬ心優しさを持つのが、テリブルという猟兵である。
情報を収集したテリブルは、身に纏うブースターを展開し、飛翔。ドローンの側までやってくるとその場でベルトの機能を開放し滞空、眼下で蠢く緑色の子鬼の群れを目視で確認する。
自警団や突入を開始した猟兵の位置。攻撃すべき敵の優先順位、自身の持つ兵装の状況。その全てを確認すると……展開されるのは、大型の自動拳銃に軽機関銃、重厚な対物狙撃銃型のアームドフォートと言った、射撃兵装の数々。その全ての銃口を、それぞれに優先する目標へ向けると……
「……」
無言のまま、淡々と。テリブルはその引き金を引く。一発ごとにズドン、と響く重低音。一定のリズムで響く、甲高い金属音。その中間で響く音が、自動拳銃の発砲音だろうか。
撃たれた方のゴブリンの群れとしては、堪らない。眼の前の獲物に今まさに食いつかんと意識を集中し、武器を振り上げていたのだから。備えも何もあった物では無い。
(……自警団を滅ぼせるだけの、そのポテンシャル。殲滅が望ましい)
血の花を咲かせる子鬼の群れを、テリブルは撃ち減らし続ける。眼下のゴブリンの群れの幾つかが、明らかに混乱しているのが手に取るように判る。
だが、上空からの攻撃はまだ終わらない。テリブルの様に、上空からの奇襲を決行した猟兵は、他にもいるのだ!
「足場が悪くて開けた地形でしたら……空中戦で、お相手しましょう!」
『ブレイズキャリバー』である自身の力の本質、地獄の炎によって形成された翼を広げて。急降下していく猟兵。
レナータ・バルダーヌ(復讐の輪廻・f13031)は降下しながら翼の形態を変化。オーラを纏い、超音速飛行を可能とする自身のユーベルコード、ブレイズソニックトレイルを発動する。
当初、レナータは自警団の者達を空から安全圏へ空輸する事を考えていた。だが自分ひとりでは運べる人数は高が知れている。後手に回る事が明白である以上はその案は取れないと、結論づけていた。
ならば、自分はどう動くべきか。その結論が、この行動だ。
地表付近まで降下したレナータは、視界に入った群れへと進路を取り、通過する。すれ違いざまに小鬼達が武器を振り上げ、ある者は体ごと飛び掛かろうとし、不意を打つ様な蹴りを放とうとするが……その尽くを、レナータが身に纏う炎と衝撃波が、小鬼達を灼き斬り、吹き飛ばし、蹂躙する。
……後に残るのは、死屍累々の子鬼達だ。五体満足な者は殆どおらず、四肢が曲がっては行けない方向を向いているか、または吹き飛ばされ失っているか、運の悪い者は一瞬で消し炭と化してしまっているか。何にせよ、レナータの炎の前に立ちはだかろうとした無謀な者達は、その代償を己の命で支払う事となったのだった。
そうして一度は飛び去ったレナータが、再び別の群れへ突入する。
凄まじい速度で突入しては多くの小鬼を蹴散らすその炎の塊。更にまだ空からは銃声を絶やさぬテリブルから供される銃弾の雨。次第にゴブリン達は恐慌状態へ陥っていく。
そんな中でもまだ自警団という獲物に噛み付こうとする集団へ。
「させるかってんだよォッ!!」
「リリー、義によって助太刀いたすー! つらぬけ、フロストボルト!」
蒼汰郎とリリーが、突貫した。
リリーの全身全霊の力を込めた氷の杭が、面を制圧するように降り注ぐ。串刺しにされ、凍りつくゴブリンの群れ。その氷像と化したゴブリンの一体の首に、蒼汰郎のロープが掛かる。瞬く間に強固に巻き付けられたロープを持つ蒼汰郎が、叫ぶ。
「俺から、離れてろよ!」
「お、おー!?」
リリーが安全圏にいるのを確認すると、蒼汰郎は、陸上競技のハンマー投げの様な要領でロープを振り回し始める。当然、先端にはゴブリンを巻き付けたままだ。
ハンマー代わりにされたゴブリンが、次々と凍りついた他のゴブリンにぶつけられる。砕ける氷、次々と斃れるゴブリン達。
……ゴブリン達は、その攻め方を見て何を思っただろうか。仲間を武器にして振り回してくる男に、理不尽さを感じただろうか。まぁそんなゴブリン達の内心など、猟兵が察する必要は全くないのだが。
ともあれ、蒼汰郎の動きは非常に派手だった。それこそ、自警団側に向いていた小鬼達の意識を、自分達に向けさせる程に。
「あとは、とにかくゴブリンの数を減らしていかないとな!」
「そうだな! ……さぁて、見せてやるぜ。『迅蜘蛛』の仕事って奴をよッ!」
自分達を取り囲もうと現れる小鬼達に対して、やる気満々なリリーと不敵な笑みを浮かべる蒼汰郎。空からはテリブルが支援射撃の手を切らさず、レナータもまた目につく敵集団を蹂躙している。
彼らの奮闘があってこそ、自警団の救援を優先した者達は間に合ったのだ。その奮闘は、大きく讃えられて然るべきだろう。
大成功
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メグレス・ラットマリッジ
ぬかるみに足を取られないよう遠距離から虎の子の弓兵隊を狙いたいと思います。
弓の扱いは間違っても自慢できるほどではないですが……
幸いにも相手は目の前に夢中のようで、逃げない避けないならただの的です。当たらなくとも弓兵の動きを止められるならそれでよし。
自警団にとりついているゴブリンは他の方に任せますが、サポートできる機会があれば援護射撃をしたいと思います。
誰一人被害を出さないよう、迅速に排除していきましょう。
秋月・信子
・SPD行動
自警団の救出は他の方達に任せ、私は見通しの良いポイントから【ボルトアクションライフル】で【援護射撃】をして皆さんの支援に徹します
最優先のターゲットは「弓」や「投石器」など飛び道具を装備したゴブリンを見つけ次第【狙撃】しますね
怖いのは私の存在に気づいたゴブリンが静かに忍び寄って背後に回る事ですが…不意打ちを仕掛けられても、ちょっと反動が強くてまだ不慣れな【スイーパー】を抜き撃てるよう、ユーベルコード【早撃ち】を備えておきます
※纏めリプレイ可です
●弓持つ小鬼を排除せよ
猟兵達の奇襲により、ゴブリンの一団に混乱が広がり始めた頃。
ゴブリンキングの命を受けて動いていた、精鋭……王の虎の子である、弓持ち達が静かに配置に付いていた。
彼らの狙いは、包囲する自警団員。その中心で配下を鼓舞する、粘らせている男だ。
……多くの小鬼達は動揺し、混乱している。だがこの精鋭には、動揺は無い。王が戦の趨勢を決める一手として選んだだけあって、その練度の高さが窺い知れようというものである。
10体程の個体が、各々弓に矢を番え、狙いを定める。ここで功を挙げれば、王の側で栄華を極める事も出来るだろう。上手く行けば、新たな群れの王となる未来もあるやも知れぬ。弓兵達の脳裏に、ふとそんな輝かしい未来が過る。
……だが、そんな未来は訪れない。今まさに、弓を放とうとした、その瞬間だった。
ターンッ! と。戦場を切り裂く単発音。直後、頭が爆ぜて倒れ伏す一体の弓兵。
更に弓兵に襲い来るのは、矢の雨だ。数体の弓兵の頭に、胴に。次々と矢が突き立てられる。直後、新たな銃声が響いてまた別の一体が崩れ落ちる。
突然の事態に、一体何が起きているのかと。矢の飛んできた方を見るゴブリンの視線の先にいたのは、弓と筒を構える二人の女の姿だ。
まさか、逆に狙われた!? と、事態を理解した直後。矢がゴブリンの胸を貫き、額を銃弾が貫いたのだった。
「……弓兵、排除出来ました」
「虎の子の弓兵を失って、これでゴブリンキングの狙いもある程度は挫けたでしょうね」
緩やかな起伏の上、戦場を見渡せる地に陣取った秋月・信子(魔弾の射手・f00732)とメグレス・ラットマリッジ(襤褸帽子・f07070)が戦果を確認し合う。
彼女たちは、最初から狙いをゴブリンキングの虎の子である『弓兵隊』に絞って行動していた。
自警団を支える要である隊長を直接狙う動きをしていたのは、弓兵だ。その弓兵を叩けば、自警団はまだ暫く持ちこたえる事が出来るだろうという判断した結果の行動であり、彼女たちは見事その狙いを成功させたのだ。
……もし、二入が乱戦の内側で弓兵隊を狙おうとしていたのなら。ゴブリン達特有の素早い動きに揃って翻弄されていたかもしれない。弓兵を完全に止める事は出来ず、自警団員にも少なからぬ被害が出ていたかもしれない。
ゴブリンの感知の外からの狙撃に徹した事が、彼女たちの行動に100点満点の結果を与えたのだ。
「しかし、信子さんの射撃の腕は素晴らしいですね。私は弓の扱いは自慢できる程ではないので……」
「いえ、そんな! 弓でこの距離から中てられるだけでも凄いのに、しっかり急所を射抜いて……」
最優先するべき目標を排除し、周囲に忍び寄る敵の気配も無し。緊張が解れた所で、雑談の花を咲かせる二人。メグレスの身体から漂う香草の香りが風に乗り、戦場から漂ってくる血生臭さを打ち消した。
派手な戦いぶりとは縁の遠い、狙撃戦。だがその地味な戦いこそが、この任務においては重要な要素である事を否定する者はいないはずだ。
戦場を横目に眺めつつ、緩やかな会話を交わして。二人の女性猟兵は、事態が変化する時を待つのだった。
大成功
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レイチェル・ケイトリン
作用反作用の法則……反動をうけとめる足場のたいせつさをおしえてくれるね。
でも、心の力、念動力には関係ないよ。
その念動力と吹き飛ばしの技能で刹那の想いをつかうね。
「クィックドロウ」と「早業」で発動も加速するよ。
泥をふっとばして「目潰し」、「武器落とし」で粗雑な武器をふっとばし、ゴブリンをふっとばして攻撃してダメージを与えながら「敵を盾にする」で他のゴブリンの攻撃にぶつける、それを「範囲攻撃」で群れをまとめてふっとばすの。
「かばう」技能もつかえるから他の自警団の人たちももちろんまもるよ。
1秒間を27分割した時間でうごくわたしの心。
そのはやさで矢だってぜんぶふっとばしてみんなをまもりぬいてみせるよっ
●加速する時間の中で
猟兵の突入によるゴブリンの群れの混乱。王の虎の子であった弓持ちは逆に狙撃された事で全滅し、自警団は危機を脱することに成功したと言っていいだろう。
だが、まだ油断は出来ない。動揺し、混乱しつつあるとは言えゴブリン達の多くはまだ動けるのだ。ゴブリンキングが群れの混乱を沈め、逆襲に転じる可能性が無いとは、言えないのだ。
だから、猟兵達は戦う。出来る限りのゴブリンを仕留め、今後の憂いを断つために。
「作用反作用の法則……反動を受け止める足場のたいせつさをおしえてくれるね。でも……」
脛の辺りまで沈み込みそうな泥濘に立ち、周囲を取り囲むゴブリンを眺めながら。レイチェル・ケイトリン(心の力・f09500)が呟く。
作用反作用の法則に付いての細かい解説は省くが……レイチェルの言う通り、足から伝わる力、その反動を支える足場が無ければ踏ん張ることは困難。まともに戦闘をする事はおろか、素早く動く事も難しいだろう。
だが、それは全て、物理学に沿っての話。
「心の力、念動力には関係ないよ」
レイチェル・ケイトリンという猟兵の戦闘における強みとは、圧倒的なまでの念動力の強さだ。その念動力さえあれば、物理的な動き難さなど、戦闘の障壁とは成り得ないのだ。
『心のなかで時間よ、とまれ』
口に出さず、そうと念じたその瞬間に。今まさに加速し飛び掛かろうとするゴブリン達の動きが、逆に遅くなっていく。いや、ゴブリン達にとっての体感時間は、変わっていない。
変わったのは、レイチェルの体感時間。1秒間を27分割し、その分割された時間の中で様々な行動を行う自由を得るレイチェルのユーベルコード、『刹那の想い』が発動されたのだ。
分割された時間の中で、レイチェルは動く。強力な念動力で泥を弾き飛ばしてゴブリンの眼を潰し、別のゴブリンの手にある粗雑な武器をふっ飛ばし、有り余る力を以てゴブリン自身を操り他のゴブリンへ衝突させる。
レイチェルの恐ろしい所は、そんな一連の行為を、自身に襲い来る群れ単位の敵に極めて正確に実行できるという所にある。その念動力の才足るや、まさに底無し。驚異的の一言である。
1秒間を27分割した時間、世界の中で。自由に動くレイチェルの身体と心。
加速し続ける世界の中で、レイチェルは自警団も、味方の猟兵も、全てを護るために力を振るい続ける。
……やがて彼女の時間が皆の物と同じ様に戻った時。彼女の周囲に動く小鬼は一匹も居なくなっているはずだ。
成功
🔵🔵🔴
ベアータ・ベルトット
弱きは強きに狩られる…結構なことね
その理に則って、私がアンタ達を喰らってあげるわ。文字通り、ね
ジャンプと機脚のブーストで泥濘への接地を抑えて接近し、機関銃で敵群を銃撃
流れ弾を作らない精密な援護射撃を行うわ
怒った敵が向かってきたら、自警団とは反対の方向へ駆け出す
付かず離れずの距離を保って逃げ回り、敵群の一部を自警団から遠ざける
その間も銃撃を続けて何匹か斃してしまいたいわね
十分に引き離せたら立ち止まり、残った奴らと対峙
…餌の時間よ
手近な敵に接近し、まず武器を持つ腕を獣爪で裂く
2回攻撃を活用した連続速攻で敵を切り刻み、口と機腕とで血肉を喰らい吸収
絶命したらすぐ次の敵へ
次戦に備えて少しでも腹を満たすわ
●飢獣は戦場を駆ける
(弱気は強きに狩られる……結構なことね)
身に纏う……いや、身体そのものとなっている機械の四肢を駆使しながら、少女が泥濘む戦場を駆ける。
(その理に則って、私がアンタたちを喰らってあげるわ)
文字通り、ね。と。少女は知らずに唇を舐めた。
……少女の名は、ベアータ・ベルトット(餓獣機関BB10・f05212)。その身の内に宿る飢餓感、生者の生き血に飢えた喰殺衝動に蝕まれた猟兵だ。
跳躍と機脚のブーストを駆使する事で泥濘への接地を抑える事で、ベアータは素早く戦場を駆ける。その機動はまるで、先の予測できない曲芸のよう。
空を駆ける者達と比べればその機動力は一歩劣るが、小回りはベアータの四肢を活かした不規則な機動の方が一歩勝るのだ。
その曲芸の如き不規則な機動を以て、ベアータはゴブリンの群れを翻弄する。すれ違いざまに機関銃を正確に撃ち放ち数体のゴブリンを沼に沈めるなど、その戦い方はどこか通り魔的だ。 無論、ベアータは狙ってやっている。相手の動きを釣り出し、誘導する為に。
挑発するような機動、執拗な射撃。我慢の限界を迎えた一部のゴブリンが喚き声を上げながら、ベアータを追うように移動を始める。
(……掛かった!)
その動きを見て、ベアータは内心で喝采を上げる。追えば追いつける様な、しかしあと一歩届かぬ様な。付かず、離れずの距離を保って逃げ回る様に、自警団から遠ざかっていく。
……そうして暫く追手を引きずり回すと、ベアータは地に降り立って立ち止まり、背後から迫るゴブリンに向き直る。
今まで逃げ回っていた女の急な行動に、追手のゴブリン達は訝しる様な素振りを見せない。散々引っ掻き回された女を、ようやくこの手で嬲る時が来たと下卑た笑みを浮かべている者が、殆どだ。
……もし、ゴブリンが。もっと野生の勘を働かせていたならば。ほんの僅かだが、生き残る目はあったかも知れない。
だが、現実は非情である。彼らは、目の前に立つ女……ベアータの内から溢れ出ようとする衝動を察知する事は、出来なかった。
「……餌の時間よ!」
ベアータが叫ぶや否や、機脚が駆動する。最も近くにいたゴブリンとの距離を瞬く間に詰めて、武器を構える腕を獣爪が引き裂く。続けざまに爪を振るうと当たるを幸い、爪は手当たり次第の連続攻撃で敵を切り刻み続け……少女の口が、切り刻まれた血肉を喰らい、その身に吸収する。
……僅かな後、切り刻まれたゴブリンがこの世界に存在していた痕跡は、ベアータの体中に残る返り血のみとなっていた。
顔を上げ、取り囲むゴブリンを見るベアータ。
「足リヌ、足リヌゾ、満タサレヌ……!」
その眼は、目の前に餌を放り込まれた飢えた獣のそれ。
やがてくる、本命であるゴブリンキングとの戦い。それに備えて……ベアータはまた、その爪を振り上げるのだった。
成功
🔵🔵🔴
ヴィサラ・ヴァイン
自分が有利な地形へ誘き寄せて一網打尽……戦術としては何も間違って無いです
やられる側になるとエゲツないなってだけで
まあエゲツなさは私も負けて無いですけど。猟兵仲間にも言われましたし
不本意ですけど…ものすっごい不本意ですけど!
…こほん、落ち着け私。とりあえず沼は自分達にとって有利だって認識を恐怖で塗り潰してあげます
【血生まれの群れ】で水棲の毒蛇の群れを生み出し、沼に潜ませゴブリン達の足を噛ませます。猛毒と恐怖でパニックですね(毒使い36恐怖を与える33)
ゴブリンキングには何が起こってるか直ぐには分からないでしょう。愚かな采配をどうぞ(目立たない17)
「……あ、私味方ですよ?怖がらないで下さいね?」
●毒をもって、邪を制す
(自分の有利な地形へ誘き寄せて一網打尽……戦術としては、何も間違って無いです)
戦場の一角、目立たぬ様に身を潜ませながら。ヴィサラ・ヴァイン(大蛇を殺すゴルゴン・f00702)はゴブリン側の戦術を評価する。
戦闘に勝利する。その為に採られる、ありとあらゆる策謀。古今東西様々な計略はあるが、『地の利を得る』事は基本中の基本である。その基本が見事にハマり、自警団は窮地に陥った訳で……ゴブリンキングの採った戦術は正しかった、と言えるだろう。やられる側からすればただひたすらに『エゲツない』としか感想が出ない訳で。
……まぁ、戦術、戦い方の『エゲツなさ』で言えば、ヴィサラも負けてはいないのだが。別の世界の大きな戦いで見せた『肉を切らせて骨を溶かしきる』様な戦い方を筆頭に、猟兵仲間からも色々と言われている程である。
(……不本意ですけど。ものすっっっごい、不本意ですけど!)
そんな評価に内心で抗議の声を上げるヴィサラである。ここが戦場でなく身内だけの和気藹々とした場であるならば、それこそ可愛らしく頬を膨らませ、年頃の少女らしい拗ねっぷりを見ることも出来たかもしれない。
「……こほん。落ち着け、私……」
小さく咳払いを一つ。自身に言い聞かせる様に、落ち着かせる様に呟くヴィサラ。
……ここは戦場だ。猟兵の介入により、蹂躙する側のゴブリン達が逆に蹂躙され、本来起きるはずだった惨劇の未来は消えかけているとは言えど。未だ多くの小鬼が虎視眈々と群れを為し、事を起こす時を狙っている鉄火場だ。
そんな場所で、ヴィサラが狙う戦い方とは……
(とりあえず。この沼地が自分達にとって有利だって認識を、恐怖で塗り潰してあげましょう)
密かに喚び出したる者は、水棲の毒蛇の群れだ。その蛇達が持つ毒は、噛まれても即座に死には至らないが、激しい痛みや麻痺、幻覚を引き起こす様な凶悪な代物。そんな蛇達が、召喚主であるヴィサラの意を受けて沼地へ潜り込み……ゴブリン達の脚へ噛み付けば、どうなるか。
到る所から起きる苦痛の悲鳴、意味不明な喚き声。所々では錯乱した個体が手近な仲間に刃を振り上げ、同士討ちを引き起こしもしている様子。
……一言で言えば、地獄絵図。エゲツなさを極めていくとこうなるのかな? と言う感想しか洩らせない有様であった。
「……さてさて、ゴブリンキングには何が起こってるかはすぐには分からないでしょう」
愚かな采配を、どうぞ? と。ヴィサラはまだ見ぬ小鬼の王へ呟く。
己の持つ特徴を十全に理解し、最大限に活かす立ち回り。この瞬間、ヴィサラは確かにこの戦場を支配したのだった。
大成功
🔵🔵🔵
アルテミス・カリスト
「自警団の皆さんを見殺しにはできませんっ!
ゴブリン程度、この正義の騎士アルテミスが撃退してみせましょう!」
ぬかるみに足を取られて窮地に陥っている自警団を助けるため、
救出タイミングに合わせて大剣を抜いてゴブリンの群れに突進します。
「って、ひゃあっ!」
が、うっかり、ぬかるみに足を取られてしまい思うように動けませんっ!
大剣を振り回すも、突出しすぎたためゴブリンの数の前に為す術なく……
騎士としてのお約束が発動し、ピンチ(女騎士的な意味で)に陥ってしまうのでした。
「きゃ、きゃああっ、だ、だめですーっ!」
鎧や服を破かれながらも、せめて私が身体を張ることで自警団の皆さんが撤退する時間を稼げることを祈ります。
●『正義の騎士』の受難
「自警団の皆さんを見殺しにはできませんっ! ゴブリン程度、この正義の騎士アルテミスが撃退してみせましょう!」
各所で猟兵がゴブリンを駆逐していく中、アルテミス・カリスト(正義の騎士・f02293)が名乗りをあげつつ意気揚々と戦場へ乗り込む。
正義感が強くオブリビオン退治に強い使命感を抱く少女にとって、今回の依頼のシチュエーションはまさに見逃せない物と言った所か。
決意に燃える青い瞳、風に靡く美しい金の髪を輝かせ。華奢な体格に不釣り合いな大剣を振るい、ゴブリンの群れへ突撃していく。
……アルテミスは、現在活動する猟兵達の中でも中々の力量を持つ猟兵だ。油断をしなければ、『ゴブリン程度』というその言葉通りに大活躍を見せていたはずである。
そう、油断をしなければ(いや彼女の性格上、相手を見下していたとかそういう訳では無いのだろうが)……アルテミスは、忘れていたのだ。
「って、ひゃあっ!?」
突撃し、今まさにゴブリンに自慢の大剣を振り下ろそうとしたその時。アルテミスは泥濘に脚を取られてバランスを崩す。立て直そうと蹈鞴を踏むが、踏ん張りの効かない地に悪戦苦闘してしまう。
……繰り返し言うが、アルテミスは忘れていたのだ。自身が、割りと運に恵まれぬ不幸体質である事を。その上、意外とドジを踏むことが多い事を。
そう、ここに来て。アルテミスの不幸体質が、彼女自身に牙を剥いてしまったのだ……!
勇ましく突撃したと思ったら、目の前で突然その動きを崩した少女騎士を前にして。当初はポカンとしていたゴブリン達であったが……状況を理解すると、その顔が厭らしく歪む。
援護する者もなく、突出し過ぎてしまった可憐な女騎士。その容姿も相まってか、ゴブリン達にとってはご馳走の方から自分達の方へやってきてくれた様に思えたかもしれない。
……据え膳食わぬは何とやら。舌舐りをしながら迫るゴブリン達を見て、冷や汗を流すアルテミス。その手の大剣を構え、振り回し必死の抵抗を試みるが……多勢に無勢。
「きゃ、きゃああっ!? だ、だめですーっ!!」
無数のゴブリンに伸し掛かられ、押し倒され。大剣を放り捨てられ、四肢を取り押さえられるアルテミス。鎧を剥がされ、衣服は破かれ、次第次第にあられもない姿をゴブリン達の前に晒していく。
(あぁ……せめて、自警団の皆さんが撤退する時間だけは……!)
小鬼達の獣欲。剥き出しになったその圧を強く感じながら、アルテミスは祈る。
……そうして、アルテミスの姿は悲鳴と共にゴブリンの群れに飲み込まれるのだった。
失敗……? 🔴🔴🔴
その直後。
空から銃弾の雨が降り注ぎ、また炎が、氷が、矢が、少女騎士を穢さんとするゴブリン達を貫いていく。ある個体は何かに弾き飛ばされたように飛び消え、またある者は突然の激痛に気を狂わせた。
……残されたのは、衣服を破かれ肌を晒した一人の少女。パッと見れば無惨な有様ではあるが、よくよく見れば大事な所だけは死守出来ている事は、判るだろう。
そう、アルテミスは奇跡的にその身を護ることが出来たのだ。彼女の案じた自警団員達も、皆無事だ。
……散々な目に遭いはしたが、アルテミスの稼いだ僅かな時間は、戦局に貢献したのだった。
成功
🔵🔵🔴
宇冠・龍
由(f01211)と参加
「ふふっ、ゴブリンですか。なんだか懐かしい気さえしますね」
お守り銅貨を一撫で。猟兵になって初めての仕事もまたゴブリン退治でした
初心に戻って対応しましょう
まずは人助けを最優先
ゴブリン退治は他の方にお任せしましょう
自警団の方々に【竜驤麟振】を使用。私の手元まで次々と瞬時に移動させ、ぬかるみから助けます
助け終わって余裕があるなら、味方へ再度【竜驤麟振】を使用(連携希望される方のみで構いません)
この場は湿地帯。その身体や武器、技に「氷」を属性を付与、足元を凍らせ移動しやすくし、同属性なら効果をより強く
相手は狡猾なゴブリン、別動隊がいるかもしれませんので、最後列から周囲を観察
宇冠・由
お母様(f00173)と参加
相手は複数、かつ囲まれていて立地が最悪
私は空飛ぶヒーローマスク
ぬかるみに移動を阻害されることもなく、ゴブリンたちとは同条件です
全身が炎の私ならさぞ目立つはずでしょう
戦場の上空に陣取り燃え盛ることで、ゴブリンたちの注目を集め、救出や攻撃への時間稼ぎをしますの
相手は粗雑な武器を投げるしか私に攻撃を当てられないでしょう。しかし武器を投げるということは、無防備になると同義
味方のいい的になりましてよ
私は皆さまを守る盾
自警団を優先的に炎のオーラを展開しつつ攻撃をかばい、かつ空からの視点で防御が手薄なところ、奇襲されそうなところを呼びかけます
●時には昔を振り返って
ゴブリンの群れの多くは駆逐されていた。まだ極一部は纏まりを維持しているが、踏み止まっているというよりも対処が追いついていなかったり、あまりの事態に呆けてしまっていたり、与えられた命を愚直に遂行しようと進んでいる連中以外は、潰走したと言っていいだろう。
そんな中。自警団の方では最序盤で救援に向かった者達に加え、新たに合流した者の手により救助作業のペースが一段と向上していた。
「廻れよ廻れよ秒魔の霊、十指宿りて陣を駆け……」
泥濘に嵌まり込んでしまい抜け切れない、小太りの自警団員に糸が繋げられる。呪詛を練り上げられて作られたその糸の先には、一人の妙齢の女性がいる。彼女の力を具現化した糸をグイッと手繰り寄せれば、自警団員もそれに引っ張られる様にして簡単に泥濘を離脱する事に成功する。
「……お母様? なんだか楽しそう……」
「……そう見えるかしら? なんだか懐かしい気がして……」
隣を漂う娘……ヒーローマスクの猟兵である宇冠・由(宙に浮く焔盾・f01211)の言葉に、母である宇冠・龍(過去に生きる未亡人・f00173)が小首を傾げる。
猟兵達が、本格的に世界に蔓延るオブリビオンとの戦いを始めた頃。二人の最初の戦いも、ゴブリンを相手にした戦いだった。
あの時は、村の防衛戦だった。自身の力で哨戒線を作り、迫るゴブリンを家族の力で撃退し、現れたハーピーを討ち倒した、あの戦い。
あれからどれだけの戦いを乗り越えてきただろうか。今では母娘揃って猟兵の中でも押しも押されぬ精鋭となりつつあるが……今回、緑の肌の小鬼を見た事で、懐かしい記憶が蘇ってきたらしい。
……お守りとして肌身離さず持ち歩く銅貨を一撫ですると、龍は口元を引き締める。
「由。初心に戻ったつもりで、対応しましょうね」
「はい、お母様」
ぬかるみを抜けた事で、自警団の防御態勢は完全に整う。猟兵の援護も受けた事で、彼らの安全は完全に保証されたと言っていいだろう。
……そこで油断してしまったら、彼らはきっと無事では済まなかっただろう。
最初に気がついたのは、由だった。
ヒーローマスクとしての特性を活かし、ふよふよと空を漂いながら周囲を警戒していた為に、彼女はゴブリンの一団が迫りつつある事に気がつけたのだ。
眼下の自警団や猟兵達へ敵の接近を告げると、由自身は空中で自身の体を形作る炎を増量。ゴブリン達の注目を引き付ける、囮役を買って出る。
……思えば、最初の依頼の時もそうだった。あの時も、由は迫るゴブリンの群れを前にして、破られそうな村の柵の代わりに自身の炎を壁としたことがあった。
あの時とは立ち回り方は若干変わるが、自己犠牲を厭わぬというその心の有り様は変わらない。その精神は、彼女の体の炎のように熱く輝いて見えた。
母である龍も、負けては居ない。由の炎を前にして、誘蛾灯に引き寄せられる虫のように群がるゴブリン達を横目に、自警団員や仲間達に氷の属性を付与していく。
地を凍らせれば若干だが踏ん張りは付くようになる。自警団員達がただ守られるだけではなく、共に戦える様にと環境を整えたのだ。そうして自分はと言うと……別働隊を警戒し、周囲の警戒を怠らない。
彼女のこの気遣い、優しさ。度々発揮されたその心の美しさに、多くの者達が救われてきた。戦うことでしか救えなかった存在も、きっと救えていたはずだ。
今回も、きっとそう。猟兵達も、自警団員も。彼女のその気遣いに、皆が感謝する事だろう。
……迫りきたゴブリンの一団を、万全な状態で迎え撃つ自警団員と猟兵達。その勝敗は……言葉にせずとも、明らかであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『ゴブリンキング』
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POW : ゴブリン親衛隊の召喚
戦闘用の、自身と同じ強さの【杖を持ち、炎の魔法を放つ、ゴブリンメイジ】と【剣、盾、鎧で武装した、ゴブリンナイト】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
SPD : 王の激励
【王による、配下を鼓舞する言葉】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
WIZ : ゴブリン戦奴の召喚
レベル×5体の、小型の戦闘用【奴隷ゴブリン】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
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●
ゴブリンの群れは、その多くが殲滅された。一部の潰走した者達はいるが、猟兵達の攻撃はその者達の記憶に深く刻まれているはずだ。すぐさま何か悪事を働くという事はないだろう。
そんな中、未だ戦場に留まる集団がいた。その中心にいるのは、他の個体より一回り立派な体躯を持つゴブリン……ゴブリンキングだ。
……もし、彼が。猟兵の襲撃を察知した直後に他の全てを見捨てて逃げ出していれば、生存する事自体は確実だった。戦闘の途中で打開策を打つことが出来れば、五分と言った所だっただろう。
だが、現実は非情である。彼は襲撃を受けて逃げ出す事も出来ず、対抗策も打てず、ただただ無為に時間を潰してしまっただけだ。そうして他の集団が壊滅した今になって、漸く我に返ったかのように喚き立てる。声に従い、撤退を開始しようとする生き残りの群れ……
その判断は、あまりにも機を逸しすぎていた。逃げ出そうとする群れ、その中心で喚く個体。その存在を……猟兵達は、ハッキリと視認していたのだ。
猟兵たちが、それぞれ動き出す。決着の時が、迫っていた。
ティエル・ティエリエル
【太陽の家】
「ゴブリンキング見つけたよ!今更逃げようとしても遅いんだから!」
弓兵がいなくなった後、飛び上がってゴブリンキングの位置を確認だよ♪
【ライオンライド】で子供のライオンくんを呼び出して【騎乗】したら、そのままゴブリンキングにチャージ☆
ゴブリンキングに鼓舞されたゴブリンなんてミフェットのお歌を聴いてぱわーあっぷしたボク達で蹴散らしてやるんだから♪
キングの下までたどり着いたら、レイピアに風を纏わせた【属性攻撃】【捨て身の一撃】でキングの足元を攻撃して逃げられないようにするよ!
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です
ミフェット・マザーグース
『わめき声 怒れる王が吠え立てる 雄叫びあげて
急き立てられ押し寄せる ゴブリンの足音 止めるため
王へとおちる黄金色の流星 それは幼き獅子のいちげき!』
【太陽の家】
友達のティエルがゴブリンキングにチャージしちゃうと決めちゃったので、あわてて歌で応援するよ。
UC【嵐に挑んだ騎士の歌】
ゴブリンキングにまっすぐに向かっていくティエルと、ライオン君を応援するために「祈り」をこめてミフェットの「歌声」で「鼓舞」するよ。
もちろん、歌声は大きく、ティエルだけじゃなくて他の猟兵のみんなにも声が届くように、ずっと続けるよ。
みんなもいっしょに攻撃してくれたら、れんけい?が取れる、はず。
秋月・信子
・SPD行動
先程に続き、ポイントから【ボルトアクションライフル】で【狙撃】を試みてみますが…王を守るように取り囲んでいるゴブリンが邪魔…ですね
…私自身の映し身…あまりやりたくないけど、無意識の中にいる私【Esの影法師】に協力を頼むしかないです…ね
『あら…どうしたの「私」?ついに私の手を借りたくなった?』
『いいわ、協力してあげる。その代り、お人好しの「私」じゃないから貰うものは貰うわよ。』
『私は「私」が抑圧している快楽原則そのものよ、当然じゃない。嫌なら私よりも速く愚鈍な蛮王を【暗殺】することね。じゃ、【援護射撃】よろしくね「私」?』
もう1人の私は【スイーパー】を手に取り不敵に笑うと姿を消した
●幼い獅子は、嵐を超えて
『──ごうごうと風が鳴り 雷がまたたく
──嵐の中 立ち上がる騎士
──その胸には 絶えぬ勇気の炎と 闇を照らす希望の輝き!』
ミフェットの歌声が、再び戦場に響く。嵐という苦難に立ち向かい、挑み続ける騎士。その気高さを称える歌を謳う。
少女の歌声は、まだ拙い。だがその歌を聞いた者達の脳裏には、決して諦めずに立ち上がる騎士の姿が思い浮かぶはずだ。
……そんな場面が大好きな友達が、ミフェットのすぐ隣にいた事。それを忘れてしまっていたのは、ミフェットがまだ人生経験の浅い少女だったからだろうか?
「ゴブリンキング、見つけたよ! 今更逃げようとしても遅いんだからっ!」
ミフェットと共に行動していた友達、小さな妖精姫であるティエルの幼い声が響く。
ティエルは黄金の毛並みを持つ子ライオンを喚び出し、その背に跨ると……
「いくよっ、ライオンくん! ゴブリンキングなんてボク達で蹴散らしてやるんだから♪」
「えっ、あっ! ティエルちゃん、待って……!」
ミフェットの静止の言葉は間に合わず、ティエルとライオンくんが地を駆ける。その進路は、ぎゃあぎゃあと喚くゴブリンキングへ一直線だ。
ティエルもまた、ミフェット同様幼い少女だ。天真爛漫で弱者を放ってはおけない優しい少女である。
そんな性格のティエルだからこそ、ミフェットの歌声を聞いて心を燃やして……膨れ上がった勇気が、半ば暴走の様な状況を産んでしまったのかもしれない。
(どっ、どうしよう!? このままじゃ……!)
慌てたのはミフェットだ。いくらティエルがゴブリン程度なら一蹴できる強さを持つ猟兵だと言っても、突出しては危険である事に疑いは無い。歌を止めれば冷静になれるかもしれないが、ならないかもしれない。
……ここは、一か八か! すぅ、と。お腹の底から空気を吸うように、深い呼吸を一つすると……
『──わめき声 怒れる王が吠え立てる 雄叫びあげて
──急き立てられ押し寄せる ゴブリンの足音 止めるため
──王へとおちる黄金色の流星 それは幼き獅子のいちげき!』
歌い上げるリズムは変わらない。だがその内容は……今まさに、目の前の出来事。
小さな妖精と、友の奮闘。人騎一体と化した大切な友人の勝利と、無事の帰還を願う歌だ。
……背後から響く歌を聞いて、ティエルの戦意は一層膨れ上がる。体格で勝るゴブリン達が作る肉の壁を弾き飛ばしながら、目指すは首魁、ゴブリンキング!
……その光景を。狙撃ポイントから眺めながら、信子は僅かな焦りを感じていた。
王を狙撃するには、取り巻きが邪魔だ。その取り巻きを食い破る様に進むティエルの勇士が見えているが……王に近くなればなるほど、その突進力が弱まるのが信子には理解出来た。王の周辺にいる取り巻きが、王の言葉を受けた事で的確に動いているのかもしれない。
このままでは、ティエルの身が危ない。
(……あまりやりたくないけど……)
……人の心には、自覚・無自覚を問わず、コインの裏表の様な二面性があるという。
信子の心にもまた、二面性があった。表の面は、真面目で清楚な優等生。だが、その裏面の顔は……?
『……遂に、私の手を借りたくなった?』
信子の影が形を変えて、膨れ上がる。膨らむ影はやがて人の体……信子の体と瓜二つに変わっていく。
そうして影が目を、口を開く。その声は、信子のその物……と言うには、やや冷たいか。
……彼女は、信子の中の無意識。真逆の性格を持つ、影を依代に生み出された二重身だ。
「状況は、判っているのでしょう? お願い、力を貸して……!」
『いいわ、協力してあげる。その代わり、貰うものは貰うわよ?』
言いながら、信子の二重身、影法師は銃を手にその場から姿を掻き消す。
僅かな時を置いて、ゴブリンの戦列の中で影が踊り……銃声が響くのだった。
「わっ!? な、何っ!」
その銃声は、ティエルの耳にも届いていた。
既に、ティエルの突進力はほぼ無くなっていた。ゴブリンの波に周囲を取り囲まれつつあったのだ。
……未だ響くミフェットの歌で自身を強化しているとは言え、この十重二十重の壁を抜けてゴブリンキングへ迫る事は、困難だろう。後退する事も、中々難しいかもしれなかった。
そんな中で、戦列の中で銃声が響いたのだ。周囲のゴブリン達に動揺が走り、ティエルを囲む壁にほんの僅かな綻びが生まれる。
「っ! 今だよ、ライオンくんっ!」
子ライオンに指示を出し、綻びへ……退路へ向けて突撃する。がむしゃらに剣を振るい、時に傷を追うティエルの視界の隅に映ったのは、濃紺の学生服を纏った少女の姿。
(信子!? ……ううん、ちょっと違う?)
友人と良く似た服装、良く似た顔付き。だがティエルの友人はあんな加虐的な笑みを浮かべたりしないし、何より瞳の色が違う。
助けに行きたいとは思ったが、下手に踏み込めば自身が後退出来なくなる。後ろ髪を引かれる様な思いをしながら、ティエルは一旦戦線を後退しミフェットと合流。その直後、ひとしきり暴れた信子の影法師もまた溶ける様に消えていくのだった。
……最序盤で、王に刃を届ける事は出来なかった。
だが、取り巻きの壁にいくらかのダメージを与えることは出来たはずだ。3人はある程度の成果を挙げる事には、成功したのだ。
苦戦
🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
アシェラ・ヘリオース
「さて。タイミングが問題だな」
自警団の救援に成功し、最後の詰めの段階だ。
狼狽する王が見えるが、あの手合いは形振りを構わぬ分、驚異的な粘りを見せる。
「機を見て大技を入れる。赤の光に注意してくれ」
事前に【コミュ力】と【礼儀作法】で猟兵達に相談・連絡しておく。
その後は自警団を【鼓舞】しながら、【黒気収束】でフォースを圧縮。
時間をかける程威力は高まるが、避けられ易くもなる。
要はタイミングだ。
猟兵の活躍で親衛隊と王の連携が乱れた一瞬を【戦闘知識】で見極め、【念動力】で浮遊し【黒天破】で王を狙う。
命中しなくても地形破壊で王を守る陣形は乱せるだろう。合図として赤光を目立たせてから放つ。
【アドリブ、連携歓迎】
レイチェル・ケイトリン
自警団さんたちは失敗しちゃった。
敵の作戦にひっかかってとってもあぶなかった。
でも、わたしたちがいつもたすけてあげられるかはわかんないんだよね。
「視力」と「情報収集」で全体を把握して、自警団さんたちを味方としてその攻撃ぜんぶに「自動追撃」を発動し、「吹き飛ばし」と「武器落とし」と「目潰し」の技能をつかったわたしの「念動力」の攻撃をつづけるよ。
反省はあとですればいいよ。
いまはささえなきゃいけないの。
自警団さんたちの「村を、大切なひとたちをじぶんたちがまもる」という闘志、その勇気を。
これからもがんばってほしい。
それがいまのわたしの心。
その心の力でたたかうよ。
自警団さんたちといっしょにね。
●自警団、前へ!
「……さて、タイミングが問題だな」
ゴブリンキング直轄の群れがを眺めながら、アシェラは呟く。
狼狽していた王。あの手合は形振り構わぬ分、粘りは驚異的でもあるはずだ。
「アシェラ殿。我々も、協力しよう」
「自警団の……いや、しかし……」
救援依頼、アシェラのレクチャーを受けていた自警団の団長が申し出る。その背には、自警団員達が並ぶ。
……彼らも、判ってはいる。自分達が参加しても、戦果には大きくは寄与出来ないだろうという事を。猟兵達に任せた方が、安全ではあるという事も。
だが、その目が語っている。このままで、良いはずが無い。このまま全てを任せてしまうというのも、男が廃ると言うものではないか! と。
「……反省は、あとですればいいよ」
柔らかな少女の声にアシェラが振り向く。そこに佇むのは、先程戦場でゴブリンの集団を翻弄し続けていた少女、レイチェルの姿が。
「さっきは、とってもあぶなかった……次も、わたしたちがたすけてあげられるかは、わかんないんだよね」
ポツリ、ポツリと、呟くレイチェル。
レイチェルの言う通り自警団は、つい先程までは危機的状態であった。ゴブリンキングの誘いに気付かず、文字通り全滅する所だったのだ。
その危機を救ったのが猟兵達であるのだが……また次、同じ様な事態に陥ったとして。助けに来れれば良いが、実際の所は救いに来れるかは判らないのだ。
……そしてもし、救いに来れなかった場合。自警団は自らの力で、窮地を乗り越えねばならない。その為に、必要な事は……自分達でもやれるという自信と、やれたという成功の体験だ。
その自信と体験は、今の誰かに救われたという記憶で終わっている現状では、望めない事だ。出来るだけ早く、上書きするべきなのだ。
「これからも、がんばってほしい。だから、わたしがささえる」
そんな思いを込めたレイチェルの言葉に、口元に指を当てて思案を重ねるアシェラ。
……レイチェルの言葉は、理に適っている所が多い。それに、先程戦場で見せたレイチェルの力があれば……自警団員が戦闘に参加しても、大きな危険は無いはずだ。
「……判った。だが、あくまで参加するだけだ。積極的に攻勢には移らない……それで良いか、団長殿?」
「あぁ! ……皆、聞いたな! 俺達もやれる、という事を見せてやるぞ!」
オォ!! と自警団員達の声が響き、進軍を始める。
……先のレイチェルの言葉通り、彼らは一度失敗している。相手の有利な地形に踏み込み、体勢を立て直すことが出来なかったのだ。
だが、今は。その地形の事を彼らは識っている。識っていれば、心構えが出来ていれば。対処自体は、どうとでも出来るのだ。
その上、アシェラという戦術眼に優れた指揮官役と、レイチェルという援護能力に優れたサポート役を得ているのだ。
「黒気収束……加減は無しだ」
アシェラの掌でフォースが練られ、放たれるのは地形を砕くようなフォースの一撃。
その一撃はゴブリンの群れを捉える事は無かったが、その陣形を乱す事には成功する。
そしてその乱れた陣形を確認すると……
「今だ!」
「自警団、前へ!」
オオオオォォォォ!!! と。団長の号令に鬨の声を上げてゴブリンの戦列へ挑みかかる自警団員。バラバラでみすぼらしい装備群が振るわれ、打撃を与えると……武器の見た目に似付かわしくない破壊力が、ゴブリンの体に振るわれる。自警団員の武器に纏われた、不可視の力。レイチェルの強力な念動力が、彼らの攻撃を支え、追撃しているのだ。
(自警団さんたちの、「村を、大切なひとたちをじぶんたちがまもる」という闘志、勇気を、ささえる)
レイチェルの心が、他者を守りたいと願う純真な心が、自警団員の心身を支え……彼らの振るう刃となっているのだ。
レイチェルの加護を受けた自警団員、その圧に押されるゴブリン達。そうして生まれた隙を、アシェラは見逃さない。
「よし、このまま敵を抑える! だが、決して無理はするな。自分達の優位を活かすんだ!」
アシェラの的確な指示を受けて、自警団は戦う。的確な援護を受けた彼らは、ゴブリンキングの直轄兵と対等に渡り合う。
……ゴブリンキングの取り巻き、その一部を抑え込んだ事で、続く猟兵達の刃は王へ届きやすくなる事だろう。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
宇冠・龍
由(f01211)と参加
敵の首領が出てきましたか、油断なく最後まで戦わなくてはいけませんね
【竜逢比干】にて亡き夫の霊を召喚
「ゴブリンキングまでの道を作ります。露払いはお任せください」
味方を巻き込まないように夫の氷属性のブレスで前方、ゴブリンの群れを攻撃
場は未だに湿地帯。敗走を始める相手に追いつくだけの機動力が必要ですし、迎撃されるならなおさら踏ん張る場が必要。味方が移動しやすい足場作成して動きやすくし、かつゴブリンたちの足元を凍らせ足止めをしましょう
余裕があれば、夫の風の槍にて一閃
離れた相手にも届く一撃をお見舞いします
宇冠・由
お母様(f00173)と参加
壁は壁でも、動く壁というものありましてよ
すでに逃げた個体はどうしようもありませんが、これ以上の、特にキングの逃亡だけは阻止します
ゴブリンの群れ上空を飛び越えるように全速力で移動して挟み撃ち
仮面一体がなにできると侮るなかれ
【七草仏ノ座】を使用し、10Mの全身炎の大鬼へと変貌
その巨躯をもって相手の注意を引きつけ、他猟兵の方々の攻撃チャンスを作ります
私は専守防衛の盾。技自体は当て辛くても、妨害には支障はありませんわ。攻撃はせず身をかばうようにしてゴブリンたちの道を塞ぎ、それでも逃げる相手には炎のオーラが追跡し逃走経路を塞ぎます
●今、再び。家族の力を。
「ゴブリンキングへの道を作ります。露払いはお任せください」
多くの猟兵が動き出す中、積極的に支援、援護に動く者がいる。
龍の狙いは、地の不利を多少でも改善する事。先程見せた自警団の援護の再現だ。
「強き猛き尊き者、共に歩みてその威を示せ……!」
龍の声に応えて喚び出されるのは、かつて彼女の隣を歩んでいた夫。龍が愛し、龍を愛した、気高き男。
冒険者としての旅の果て、彼女の目前で殺されたが……死を超えてもなお、二人の繋がりは消えてはいないというように。懐かしき姿を、龍の前に現してくれる。
龍の意思を受けて、夫の霊が吐き出すのは『氷のブレス』。ゴブリンの群れを、泥濘む地を凍らせる様な極寒の息吹が、戦場を覆っていく。
(敗走する相手に追いつく為には、機動力が必要です)
それに戦うのならば、踏ん張る場は必要だ。味方が動きやすい環境を用意しつつ、ゴブリン達を凍らせる事で足止めも狙う。
一挙両得を狙う龍の策。その成果が示されるのは、もう暫く先の事になる。
一方、龍の娘である由もまた、他の猟兵の援護の為に動いていた。
自警団や龍が抑えに入った戦線とは違う方面へ、本体であるマスクを飛ばす由。炎を推進力に変えて飛びゆくマスクの姿に、指を指して見上げるゴブリン達。
(仮面一体になにができる、等と侮っているのでしょうね)
実際、単独で突出してきた者が出来る事などそう多くはない。だがそれは、一人で多くの者を倒そうとしたからだ。
……専守防衛。それに専念するのなら!
「壁は壁でも、動く壁というものもありましてよ!」
言葉とともに、炎を吹き上げるマスク。炎は見る間に巨大な人型……全身を炎で形成された、大鬼の姿へと変貌していく!
由が変じた大鬼は、その大きな姿故に攻撃を見切られやすいという弱点を抱えている。だが、彼女の狙いは攻撃に非ず。その巨体を活かした、敵の退路の遮断にある!
(キングは勿論、これ以上のゴブリンの逃亡は阻止します!)
由の強い決意に呼応するように、炎はまた一段と強く燃え上がる。ゴブリンの攻撃も、逃げ道も、全てを炎が遮っていく。
龍と由、母娘の行動は、直接的な戦果に繋がるとは言えないかもしれない。だが彼女たちの行動は、確かに他の猟兵達の助けに繋がるはずだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ベアータ・ベルトット
お蔭様で小腹が満たせたわ。味についてはノーコメントだけどね
…ふふ。逆に狩られる気分はどう?
親衛隊の騎士を相手に接近戦を
残像を纏い翻弄しつつ、零距離射撃と鉄爪撃で鎧を破壊し身を裂く
魔術師の援護は騎士の体を盾に防御
構わず炎弾とか撃ってきたらシールドで弾いて騎士にぶつけてやる
戦いに集中してる振りして騎士を誘導し、自然な立ち回りで王の近くへじりじり接近
十分に近づけたら…
騎士の剣撃を見切り回避するタイミングで高くジャンプ
さっき喰った小鬼の体組織で作った弾丸を、ありったけ王に浴びせてやるわ
お仲間の躯よ。受け止めてあげなさいな!
騎士が消える前にその体を踏みつけ王の眼前まで跳躍
銃創をえぐるようにBEAを放つわ
●餓獣、迫る
戦線に復帰した自警団、退路を遮断する猟兵達。彼らの活躍で、王直轄の群れに動揺が走る。
そうして生まれた隙を見計らい、突入を開始する猟兵。王を狙う彼らの攻勢が、遂に本格化したのだ。
(狩りに失敗し、逆に狩られる気分はどうかしら?)
動揺しながらも戦列を組み猟兵達を阻もうとするゴブリンの群れ。その頭上を機脚を活かした三次元機動を活かして疾駆するベアータの姿があった。
その口元は紅く、瞳は禍々しい色に染まっている。ベアータの心身を蝕む飢餓衝動はまだ満たされない。あの程度の相手では、精々が小腹を満たす程度だ。
……故に、彼女はより大物を。この群れの頂点に立つ存在である、王を狙うのだ。
「……視えた! ……ッ!?」
そうして視界に王を捉え、その銃口を向けた瞬間に横から襲い掛かる影。接触の瞬間に身を捩った事で取り付かれる事だけは避けたが、ベアータも地に降り立つ事を強いられる。
ベアータの視線の先、ゆっくりと立ち上がる一体のゴブリン。十把一絡げなその他の雑魚とは違う風格をそこそこに立派な装備で包んだ個体。王の親衛隊、ゴブリンナイトだ。
ゴブリンナイトはその手の剣と盾を構え、ベアータが王を狙う射線を封じる様に足を運ぶ。王の元へは行かせない、という強い決意を見せている。主君を護らんとする騎士道の発露であろうが……ベアータの側に、それに付き合う義理は無い!
機脚を活かすトリッキーな機動。その能力を十二分に活かすベアータの姿が、掻き消える。消えては現れ、現れては消え……まるで無数の残像を生み出す様な、俊敏な動きがゴブリンナイトを翻弄する。
困惑するゴブリンナイト。その懐へ一息に踏み込むと……
「邪魔よ!」
ゼロ距離での機銃、そして爪の斬撃がゴブリンナイトの鎧を砕く。悲鳴をあげるゴブリンナイト。
そんな僚友の危機を感じたか。親衛隊の別の個体……ゴブリンメイジから、強烈な火球が放たれる。だが、その援護は軽率だった。
ベアータは火球の熱を感じると、即座に爪でゴブリンナイトを串刺しにし、自身の盾として火球へ叩きつける。広がる爆炎、熱に浮かぶベアータの顔。
斬撃と刺突、火球でその生命力を散らしたゴブリンナイトが消えゆく。その最期の瞬間に頭を踏みつけて、跳ぶベアータ。彼女の視界の下に、こちらを見上げるゴブリン達の姿……その内の、もっとも立派な素体を狙い。
「お仲間の躰よ、受け止めてあげなさいな!」
先の戦いで貪ったゴブリンの肉片。それで形成された弾丸を、ありったけ浴びせかける。
傷つき倒れゆくゴブリンの群れ。王にもまた、数発の弾丸を浴びて負傷する。その瞬間、ほんの僅かな空白が生み出されて……
「餌食と、為れ
……!?」
王の眼前に飛び降りて、右の義眼から伸ばされた舌が王の身を穿たんと伸びた、その瞬間。
王が傷ついたことで消えゆく定めとなったゴブリンメイジが割り込み、王の代わりにその身を穿たれた。
消えゆくゴブリンメイジ、周囲のゴブリンも傷つきながらも混乱を脱し、王を守らんと動き始める。……これ以上の長いは、危険だろう。
戦場を跳ね、飛び去るベアータ。王の身を貪る事は出来なかったが、彼女の爪は確かに王に届いたのだ。
成功
🔵🔵🔴
レナータ・バルダーヌ
王さまの状況、先程の自警団の皆さんと立場が逆転しましたね。
とはいえ、取り巻きのゴブリンさんもまだまだいるようです。
【範囲攻撃】で他の皆さんの道を拓きましょう。
わたしは、敵からの攻撃を【オーラ防御】で軽減しつつ王さまのいる集団の中に歩みを進め、受けるダメージは【激痛耐性】で耐えながら【防衛本能:原点回帰】により攻撃力に転化します。
そして、【ブレイズペタルテンペスト】で炎の翼を無数の花びらに変え、王さまの取り巻き、または召喚された戦奴を一気に焼き払います。
●満身創痍の復讐の天使
空を往き、地を擦れ違い様に多くのゴブリンを焼き払ったレナータ。
彼女は一度高空へと飛び上がると、地の状況を確認する。
「……王様の状況、先程の自警団の皆さんと立場が逆転しましたね」
レナータの言葉通り、王とその取り巻き、直轄の群れの置かれた状態は先程までの自警団のそれだ。
地の不利こそ気にせずとも良いものの、正面を自警団と猟兵により抑え込まれ、側面を氷の息吹で、別の面を炎の壁で遮られた群れは、徐々に逃げ場を失いつつある。
だが、自警団と違いゴブリンの側はまだ数がある。王の取り巻きは最精鋭の親衛隊を含めまだ健在なのだ。
「……では、わたしは皆さんの道を拓きましょう!」
呟き、再び急降下を敢行するレナータ。目指すは群れのど真ん中だ。
石礫は粗雑な武器を投げて対空射撃を行うゴブリン。着地点がズレる事を厭い、回避行動は取らない。身に纏うオーラでダメージだけは軽減しつつ、地に降り立つ。
衝撃波が広がり、炎の熱が周囲を焼く。今まで感じた痛みを攻撃力に転化しながら、彼女の炎の翼が散り……花弁へと変わっていく。
少女の身体から、周囲に広がる花弁。幻想的なその光景であるが、花弁に見とれてはいけない。その花弁は、レナータの体内から噴出する炎とまるで同じ性質を持つ、灼熱の炎だ。その熱を維持したまま広がる花弁が周囲を包み、取り巻きのゴブリンを、喚び出された戦奴を焼き払い、今まさにゴブリンキングにまで迫ろうとするが……
「ぐっ、くぅ……ここまで、ですか!」
突如、蹲るレナータ。その身に纏われた全身の包帯は赤黒く変色している。かなりの量の出血である事が、見て取れた。
……度重なる空中機動。傷を厭わぬ戦い方。その結果、彼女の身体は限界を迎えようとしていたのだ。
被虐と報復の輪廻に思考を囚われつつあるレナータであるが、その身の終わりを迎える場所は此処ではないと理解はしているのか。それ以上の無理はせずに、戦場から一旦の後退を決意すると、炎の翼を再び広げて飛び去っていく。その速度は、ゆったりと……フラフラしたもので、それもまた彼女の身体の限界を知らせているようだった。
……レナータの炎は、あと一歩王の喉元へは届かなかった。だが彼女は王の取り巻きを多く焼き払う事には成功したのだ。後の猟兵の礎として、その戦果は讃えられて然るべきだろう。
苦戦
🔵🔴🔴
テリブル・カトラリー
恨みはないが、危険である以上、容赦はしない。
破壊工作
小型爆弾を密かにキングへ近付けながら、
私は上空から落下
キングの近くにいるであろうゴブリンナイトを、
超重金属の身体と、落下の勢いを利用し踏み潰し着地。
注目を集めると共に周囲の敵へ恐怖を与え、
ナイトの息があれば早業で頭部あたりを怪力で再度踏み潰しながら、
メイジへ銃撃する(スナイパー、二回攻撃)
一拍遅れてキングの背後に集めた小型爆弾を起爆。
キングを此方側へ吹き飛ばし、
私自身もブーストで身体を吹き飛ばしダッシュ。
スクラップフィストでキングを殺すつもりで殴りつけ、
地面にたたきつける。息があれば何度でも殴る
可能ならそのまま周辺の残党ゴブリンの殲滅へ移る。
●戦機械の戦術
上空から戦況を見極めていたのは、もう一人いた。冷徹に、確実に、ゴブリンの群れへ銃撃の雨を降らし続けていたテリブルだ。
既に、戦況は猟兵の側に傾いている。もう一押、二押しがあればあの群れは自壊するだろう。個人的な恨みもないし、これ以上攻撃を続ける意義は薄いようにも思える。
だが、しかし……群れの中心にいる存在。アレだけは、危険だ。
「……危険である以上、容赦はしない」
呟くと、そのまま急降下。機械の身体を持つ彼女は、並の生物とは比較にならない質量を持っている。
そんな大質量の物体が、高空から一気に地に落ちれば、どうなるか? 答えは、簡単だ。
ズドンッ!!! と、砲弾が炸裂したような音が響く。土煙が巻き起こり、晴れると……ゴブリン達が、一斉に恐慌状態に陥る。
彼らの目に映ったのは、王の側にいたゴブリンナイトの轢き潰された姿。僅かに呼吸を繰り返していたその頭部も、次の瞬間には踏み潰され完全にトドメを刺されてしまう。
ナイトを轢き潰した存在、テリブルは今度はゴブリンメイジに向き直ると大型拳銃を素早く指向し、発砲。頭部を的確に撃ち抜き殺害する事で、無力化する。
「……」
無言のまま、ゆっくりと。ゴブリンキングへ向き直るテリブル。その巨体が持つ威圧的な存在感を受け、キングは思わずたじろぐとバランスを崩し、転倒。
……直後、再び響く炸裂音。地が割れる様な爆発が幾つも続く。テリブルが落下中にバラ撒いた小型のロボ爆弾が、起爆したのだ。
テリブルは、まず王の最精鋭の排除を優先した。王を仕留める邪魔を、されたくなかったからだ。その後、王の背後を起爆する事で王の逃げ場を無くしつつ、此方の側に吹き飛ばして無理やり距離を詰めた白兵戦を狙っていたのだ。
……最初の狙いに付いては、上手くいった。強靭な白兵戦能力を持つゴブリンナイトを奇襲する事で速攻で潰し、一瞬の混乱で動きの止まったゴブリンメイジもその隙を狙い撃てたのだ。100点満点と言っていい。
だが、王への攻撃は……王が転倒してしまった事で、地を多少転がった物の狙った程の距離は近づかず。即座に起き上がり、またゴブリンの群れの影に消えてしまう事を許してしまう結果となってしまったのだった。
……彼女の策は、上手くいくはずだった。だが実際に上手くは行かなかった。彼女の策の成否を分けたのは、ほんの僅かな運。神が彼女に微笑まなかった、それだけなのだ。
「……まぁ、良い」
一言呟くと、テリブルは再び火器を展開し残るゴブリン達へ向ける。
厄介な連中は、この場で殲滅すると。テリブルの銃はそれぞれに火を放ち、ゴブリン達を穿つのだった。
大成功
🔵🔵🔵
アルテミス・カリスト
「先ほどは油断しましたが、今度はそうはいきませんっ!
この正義の騎士アルテミスの剣の錆びになってください!」
抜き放った剣に【聖なる大剣】の力を宿します。
「この剣で浄化できないオブリビオンはいませんっ!」(フラグ)
私は大剣を構えて突進すると、ゴブリンキングに斬りかかります。
敗残の将など恐れるにたりません!
が、私は【聖なる大剣】の代償を忘れていたのです。
それは、騎士としての弱点も強化されてしまうこと。
敵は私の天敵のゴブリン……それもキング。
結果は火を見るよりも明らかで……
「きゃっ、きゃああっ!」
キングに召喚されたゴブリンたちに群がられてピンチ(女騎士的な意味で)になってしまうのでした。
アドリブ大歓迎
●『正義の騎士』の受難(2回連続2回目)
「さ、先程は油断しましたが! 今度はそうはいきませんっ!!」
鎧を剥かれ、ズタボロになった衣服のまま。アルテミスが再び立ち上がる。
大事な所だけはなんとか隠しているが、派手に動けばそんな物は誤差の範囲みたいな物だ。普通ならば、羞恥に身を縮ませて動けなくなる状態だ。
だが、アルテミスはオブリビオンを討ち、人々を救うと心に決めた『正義の騎士』だ。この程度の羞恥で戦うことを止める事は、出来ないのだ!
「この『正義の騎士』アルテミスの、剣の錆びになってください!」
自慢の大剣を構え、再びゴブリンの群れへ挑みかかるアルテミス。その剣は冴え、襲い来るゴブリンを次々と斬り捨てていく!
大剣は、淡く光り輝いている。今まさに彼女の剣の封印は解かれて、オブリビオンのみを滅する聖剣と化しているのだ。
「この剣で浄化できないオブリビオンはいませんっ!」
自信満々に言い放つアルテミス。そこを通り掛かったのが、今まさに逃走を始めようとしていたゴブリンキングである。
「見つけました! 貴方が王ですね……敗軍の将など、恐れるに足りません!」
勇躍、挑みかかるアルテミス。敵将を討てばこの戦いも終わる、開拓村にも平和が訪れるはずと、戦意も高々に大剣を振り上げた。
……だが、ここで思い返して頂きたい。先程、彼女がゴブリンを相手に望外の苦戦を強いられた、その要因を。
そう。アルテミスという少女は、割りと運に恵まれない不幸体質な少女である。そしてドジを踏むことの多い……いわゆる『うっかり』癖がある少女だと言うことも。
ここまで言えば、次に彼女の身に何が起きるか。お分かり頂けるだろうか?
「わっ、きゃっ!?」
剣を振り上げ、振り下ろす為に脚を踏み出した瞬間。アルテミスは小石を踏んでしまう。
普通なら、それは何の影響も無い事だ。だが、まだまだ土の泥濘む部分が多い戦場で……それは、大いに悲劇的な結末へと繋がってしまう。
踏み込んだ脚はそのままズルリと滑り込み、バランスを崩したアルテミスは転倒。剣も明後日の方向へ飛んでいってしまう。
それを見て、ゴブリンキングは好機と見て襲い掛かるか……と思いきや。やはり自己保身の方を優先したか、さっさとその場を後にするキング。
代わりにアルテミスの周りを取り囲むのは、多くの雑魚……取り巻き達だ。
「……いやっ、やっ……きゃあああぁぁっ!」
悲鳴が戦場に響き渡っていく。可憐で凛々しい少女騎士を手折る暴力が、その悲鳴を掻き消していく。
それはきっと、戦場ではよく見られる風景だ。生命のやり取りに昂ぶった者が引き起こす、狂気の一幕だ。
その狂気に、アルテミスは飲み込まれ……
彼女を取り囲むゴブリン達が、次々と爆ぜていく。他の猟兵達の援護が、間に合ったのだ。
……アルテミスは今回もまた間一髪、窮地を逃れる事が出来たのだった……
成功
🔵🔵🔴
仙城・蒼汰郎
アレが親玉か…逃がしはしねぇぜ!
キッチリ落とし前はつけさせねぇとな!
【WIZ】※共闘歓迎
まずは下準備として、周囲のゴブリンを【特殊加工マチェット】で相手をし、
【レールネイルガン】で縄を地面に打ち付けながら
王を囲むように移動しつつ【早業】で仕事をこなしていくぜ!
「姑息な奴には…姑息で返すってなァ!!」
囲み終わると、そう言いながら縄を思い切り引き
【ボーラインノット】発動!全身に縄を絡みつかせ、更に打ち付けた部分も
相まってその場に張り付けみたいな状態を狙うぜ!
「今だ、やっちまえ!!」
ここで共闘者が居れば叫んで総攻撃を指示。
居ない場合は【零距離射撃】でネイルガンを全弾打ち込んでやらぁ!
リリー・ブラウン
こーいう悪賢いやつを逃がしちゃうと、また手下を大勢連れてきて人間を襲うからなー!
最後まできっちりやっつけるのが一流の魔法使いだ!
【全力魔法】【属性攻撃】を最大に込めたフロストボルトを頭上から浴びせて、足を縫い付けたり氷の杭を檻型にして閉じ込めちゃうぞー!逃がさないからなー!
「降り注げ、フロストボルト!」
奴隷ゴブリンなんか魔導書から放つ属性魔法とフロストソードでなぎ払って蹴散らしてやるぞー!反撃はフロストシールドで防御だ!
勝てると思って油断したお前らの負けなー!完全に仕留めるまで気を抜いちゃいけないっておししょー様が言ってたぞ!
だから、えーと、敵の増援とかはー…ないよなー?(キョロキョロ見回し)
メグレス・ラットマリッジ
追撃戦ですね!弓を置いてゴブリンキング率いる群れに突撃ー!
ひたすらにUCを乱射、出来るならば初弾は敵集団の逃げ道を塞ぐように落とし、次弾以降は味方の後ろ方向へ落とします。
強烈な閃光と轟音により、ゴブリンの【目潰し】【恐怖を与える】を誘い指揮を滅茶苦茶にするのが狙いです。
猟兵の皆さんにも少々の戦いづらさを与えてしまうかもしれませんが、受ける被害は相手の方が大きいので許してくださいね!アッハッハー!(楽しくなってる)
なおなんやかんやで通じない場合はうるさくするのを止めて、手斧とスタンロッドで大将首を狙います。
スタンロッドでゴブリンを捌きつつ、常に斧を大将に叩き込む機会を探ります。
●逃げる王に手を掛けろ
敗北を悟り、精鋭も雑魚も、全ての配下を見捨てて逃げの一手を取り始めたゴブリンキング。
その王の無様さを知れば、この群れは自壊するだろうが……
「こーいう悪賢いやつを逃しちゃうと、また手下を大勢連れてきて人間を襲うからなー!」
「あぁ、そうだな。逃さず、キッチリ落とし前は付けてやらねぇとな!」
逃げ来る王の進路を塞ぐ、二人の猟兵。蒼汰郎とリリーだ。
既に二人の周囲には数体のゴブリンが転がっている。ある者は蒼汰郎のマチェットで切り裂かれ、またある者はリリーの氷の杭で刺し貫かれている。
邪魔するものは、無し。その上戦場は蒼汰郎の手により、打ち付けられた杭とロープが張り巡らされている。蒼汰郎の能力を最も活かせる環境とは程遠いが……それでも、ただ地を駆けるよりはいくらかマシな状況が整っていた。
その上、そこに駆けつけるまた別の猟兵が。
「追撃戦、ですね! うふふ……アッハハハッハッハー!!」
完全にハイになっているメグレスが、雷鳴と共に現れる。空より落ちた稲妻で、メグレスは既に多くのゴブリンを仕留めていた。それ故に気が昂ぶってしまっているのだろうか。
3対1。戦場も猟兵が戦いやすい様に整えられているという状況に、『卑怯者め!』と罵る様に喚くゴブリンキング。
その喚きの意味など、当然理解出来ようはずが無いのだが……
「勝てると思って油断した、お前らの負けなー!」
「そういうこった。姑息な奴には……姑息で返すっ、てなァ!!」
鼻で笑う様に、言葉を返して。その手に握られた縄を、勢いよく引く。
戦場に張り巡らされたロープが蠢き、四方八方からゴブリンキングの四肢に絡みつき、その動きを拘束する!
「さぁ、今だ! やっちまえ!!」
もがき抵抗する王を捉える縄をコントロールしながら、蒼汰郎が叫ぶ。その声に応えるのは……
「全力で行くぞー! 降り注げ、フロストボルト!!」
「アッハッハッハ!! 打ち砕きなさい、天地滑落!」
やる気満々、と言った顔をしたリリーの氷の杭と、今だハイテンションのメグレスが放つ稲妻だ。
天より降り注ぐ連撃が、ゴブリンキングを捉え、地が砕ける音が響き……また、戦場に土煙が巻き起こる。
「やったかー!?」
「……いや、それにしちゃ手応えが
……!?」
リリーの戦果を確認する声に、蒼汰郎の声が焦りを帯びる。ゴブリンキングに二人の攻撃が直撃する直前まで、蒼汰郎の縄には確かに抵抗があった。なら、今の一撃で倒せていたとしても……それにしても、手応えが無さ過ぎる!
そう感じた直後、土煙を切り裂き走り去る影。その後ろ姿はまさしく、ボロボロになったゴブリンキングが逃走する姿!
……リリーとメグレスの攻撃、まず先に地に落ちたのはメグレスの稲妻だった。だがハイテンションになりすぎたせいか、彼女の攻撃はその精度を若干欠いていた。ゴブリンキングを直撃する事は無く、そのまま地を穿ってしまったのだ。
結果、蒼汰郎の張り巡らせた杭も破損。特殊加工の成された剛性ロープもまた破断し……自由を得たゴブリンキングはリリーの一撃も凌ぎ、九死に一生を得る事となったのだ。
「うあー! すぐ追わないとー!!」
「いや、落ち着け。あっちの方にいるのは……」
慌てて追い掛けようとするリリーを制止する蒼汰郎。そう、この先には、また一人の猟兵が網を張っている。
あそこまで傷ついた相手ならば、どんな戦い方をしても負ける事は無いはずだ。
「すいません、まさか、こんな……」
「気にすんな。狙った訳じゃねぇんだろうしよ」
「そうだぞー、それに……」
先程のハイテンションはどこへやら、しゅんとするメグレスに気にするなと声を掛ける蒼汰郎とリリー。このまま雑談といきたい所だが……
「敵の増援、みたいだしなー!」
リリーの声に、顔を向ければ、三人の視線の内に手負いにゴブリンが次々と現れる。逃げる王を追い、ここまでやってきたのだろうか。
……それぞれに武器を構えて、迎撃の構えを取る。
「……失敗は、ここで挽回します」
「その意気だ! さて……」
「最後まで、キッチリやっつけるのが一流の魔法使い、だぞ!」
迫る手負いの群れ。迎え撃つ3人。
ゴブリンキングを仕留める機会は逸したが、3人はその背を追うゴブリンの残党をここで足止めし……殲滅する事に、成功するのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ヴィサラ・ヴァイン
うーん、愚かな王様。所詮は王様の器では無いって事ですか
これだけの猟兵に狙われて逃げ切れるとは到底思えませんが……念には念を入れましょう
逃走ルートを[第六感]で予測し【霧中の死】で予め霧で満たします
逃げる事だけを考えるなら、霧の中は姿を眩ませやすいですし、渡りに船とか思うんでしょうかね。まあ毒の霧ですけど[毒使い]
私自身は[ヴィサラの心眼]で王達の居場所を感知しつつ、霧で私も姿を眩まし、[目立たない]ように【隠された恐怖】で頭の蛇に咬みつかせて猛毒で[暗殺]します
王様がこっちに来なくても、王様に合流しようとするゴブリンを処理したり、逃げ道を狭めたと思う事にしましょうか
●毒蛇は、静かに見つめる
(まぁ、あれだけの猟兵に狙われて逃げ切れるとは到底思えませんけど……)
霧の中で、ヴィサラがのんびりと待機している。念の為、万が一の事態を考えて、彼女はゴブリンキングの逃げ道を封鎖するように動いていたのだ。
……逃走ルートとなるだろう場所は、第六感が告げていた。そんな場所を霧で満たしてやれば、姿を眩ませやすい場所の出来上がりである。追い詰められた相手なら、渡りに船と飛び込んでくる事だろう。
(まぁ、毒の霧なんですけど)
胸の内で、小さく呟く。
……この霧は、彼女の身体、血液から生成された毒の霧だ。踏み込んだ者を蝕み、その自由を奪う物だ。
もし王がこっちに来なくても、他のゴブリンの逃げ道を狭める程度の役割の役割は出来るはずだと期待しての散布であったのだが……
(……ん、えっ? まさか、本当にこっちに来たんですか!?)
霧に踏み込んできた影を感知すると、思わず声を上げそうになり慌てて両手で口を塞ぐ。
いやいや、まさかそんなと再度の確認してみるが……どう見ても、ゴブリンキング。しかも単独行動中である。
逃走するにしたって、相手は王だ。護衛などは付いて然るべきであるのに、それも無い。
(……うーん。愚かな王様。所詮は王様の器では無かった、って事でしょうか)
小さく嘆息を一つ溢しながら、ヴィサラが動く。ここに来た以上、見逃してやる理由など存在しない。
霧で姿を眩ましながら、相手の認識も誤魔化しながら……物音一つ立てる事無く、王の直ぐ側までよると。
「ようこそ、人生の袋小路へ」
そして、さようなら、と。一言呟く間も無く、彼女の頭の蛇がゴブリンキングの喉を噛み千切る。
回る毒、吹き出す血。戦奴を喚び出す声を上げる間もなく、ゴブリンキングは霧の中に崩れ落ち、斃れた。
「……こんなのだから、エゲツないって言われるんでしょうか」
そんなゴブリンキングにもはや視線をやることも無く、ヴィサラは自身の行いを振り返り額を押さえる。
少女の内心の悩みは尽きないが……ともかく。ゴブリンキングは、猟兵達の手によって討たれたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『荒野の大宴会』
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POW : たらふく喰ってたらふく飲む
SPD : 巧みな芸を披露する
WIZ : 料理を準備する、冒険を歌にする
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●勝利の宴を楽しもう!
開拓村を襲っていたゴブリンの群れ。それを撃滅する為に動いた自警団。
本来壊滅する運命にあったそれらを、猟兵達は見事に救う事に成功した。
「……助かった。本当に、助かった!」
礼を言わせてくれ、と猟兵達の手を取る自警団の団長。
彼はぜひ開拓村へ訪れて欲しい、と猟兵達へ声を掛ける。この戦いの勝利と、加勢を感謝する宴を催したいと言うのだ。
……開拓村は、蓄えはそれほどでは無いだろう。だがそんな中でも、可能な限り持て成したいと言う彼や自警団員達の言葉を無碍にするのも……
猟兵達は、開拓村へ足を運ぶ。
村人達の歓待を素直に受けるもよし、平野で狩りをして宴の食事に彩りを加えても良いだろう。芸事で場を盛り上げるのも、また良しだ。
きっと、宴は素朴であっても明るく華やかな場になるはずだ。その場をどう楽しむかは、猟兵達の自由だ。
レナータ・バルダーヌ
まずは、ゴブリンさん達と王さまの討伐おめでとうございます!
自警団の皆さんが無事でなによりです。
さて、開拓村と聞いていたので、畑のひとつでも耕そうかと思っていたのですけど、この傷ではちょっと無理そうですね…。
しかし諦めませんよ、農園領主の娘として、少しでもこの村の発展に貢献しなければ……!
わたしは懐からゴボウの種が入った紙包を取り出し、村人に渡して布教します。
この地域のゴボウに対する認識がどのようになっているかわかりませんが、きっと村の発展の一助になるはずです。
「この種は我がバルダーヌ家が改良を重ね、連作障害を回避するための輪作年限を従来の半分程度に……(以下略)」
●農園領主の娘のオススメする一品
無事に戻った自警団の面々を見て、湧き立つ村の面々。救世主である猟兵達を迎えた勝利の宴の開催に異議を挟む声は、当然無かった。
そうして始まる宴の準備。僅かな蓄えや嗜好品を遠慮なく放出していく様子に、開拓村の人々の喜び具合が知れようとというものである。
そんな、準備時間の合間。村を見回るように散歩するレナータの姿があった。
農園領主の娘として、開拓村に何か貢献を出来ないかと考えたレナータは、畑の一つでも耕そうかと考えたのだが……
「……この傷では、ちょっと無理そうですね……」
自身の身体を見渡して、無念そうに呟く。
先程までの戦いで多くのゴブリンを駆逐したレナータ。空中を切り裂き、敵を炎で焼き払い続けた彼女の戦果は、非常に大きい。
だがその代償として、無理な機動の連続は彼女の身体に負荷を掛け続け……戦いの最終局面で、大きな傷を負うこととなったのだ。
……今も彼女の傷口は塞ぎ切っていない。包帯も変えてはいるが、まだ血が滲み出ているのだ。この傷で畑を耕す等という肉体労働は、流石に止めた方が良いだろう。
「しかし、これで諦めては農園領主の名折れ! 少しでもこの村の発展に、寄与しなければ……!」
そんな身体の状態が、逆に彼女の心に火を付けた。勢いも良く懐から取り出したのは一つの紙袋。
準備に追われる村人達に声を掛け集めれば、何人かの村人達が集まってレナータの独演会が始まる。
「今回、皆さんにはこのゴボウの種を紹介したいと思います!」
ゴボウ? え、薬草とかの、アレ? 等と、そんな声が漏れ聞こえる。話によれば、この開拓村を領有する国家ではゴボウは薬用ハーブとして用いられているそうな。皮膚疾患などに効力があるとされ、子供向けの薬の材料として珍重されているとかなんとか。
「そうです、そのゴボウをこの村で育てる事が出来れば、きっと村の発展の一助になるはずです。この種は我がバルダーヌ家が改良を重ね、連作障害を回避する為の輪作年限を従来の半分程度に……」
レナータの力説は強い熱を帯び、加速していく。
押しの強さに最初は引き気味であった村人達も、レナータの熱弁と村の発展を真摯に思う気持ち、ゴボウの商品価値もあってか。彼女の熱が乗り移った様に、次第に目が輝き出す。
そうしてレナータと村人達は、宴の開始の時まで熱心に議論を交わしていく。
彼女たちの議論の結果、この地で育てられる事となったゴボウがどうなるのか。その結果は……少し先の未来に、明らかになる事だろう。
大成功
🔵🔵🔵
ベアータ・ベルトット
有難いけど…こんな大所帯じゃ食材が足りないんじゃない?
私、一狩り行ってくるわ
事前に村の周辺にいる獣や、今日の料理で使いたい食材について村人から情報収集
珍しい料理だったら後で作り方教えて欲しいかも
大物獲って来てあげるわ。期待してなさい
…なんて大口叩いた手前頑張んなきゃね
他にも狩りに赴く村人や猟兵がいたら協力
知り得た情報を参考に、足跡等の痕跡を確認したり、野生の勘を駆使したりして獲物を探す
目指すは大物!
発見時には引き続き獣爪と機銃、それと相手の特性によって効果を使い分けたUCで攻撃
可能な限り、急所を狙って一撃で仕留めたい
獲物を味見したくなっても我慢
(みんなで食べる方が美味しいし、ね)
アドリブ歓迎
●ちょっと一狩り、目指すは大物!
「宴は有難いけれど……」
宴の申し出、集まる住人たちを眺めながら、ベアータが呟く。
「こんな大所帯じゃ、食材が足りないんじゃない?」
開拓村の生活基盤は、お世辞にも万全とは言い難い。生活に必要な物資の多くも、まだ後方からの支援に頼っている状況だ。
そんな中で頻発していたゴブリンの襲撃。彼らの蓄えも、きっと盤石では無いだろう事は簡単に推測出来た。
……そんな推測が出来てしまったが故に、ベアータは動く。
「私、一狩り行ってくるわ」
そうして飛び出した開拓村の外。村人達も数人、そんなベアータに同行し狩りに出ている。
(出来れば、大物を獲ってあげたい所だけど……大口を叩いた手前もあるし)
だがそんなベアータの決意とは裏腹に、平野に見える動物の痕跡は少ない。
……よくよく考えてみれば、つい先程までゴブリンの軍勢と血で血を洗う様な激しい戦いを繰り広げていたのだ。野生の勘に優れた動物達が巻き込まれるのを厭い距離をとっていたとしても、おかしくはない。
「ちょっとコレは……今回は、厳しいかもしれんなぁ」
「やっぱりそう思う? でも出来れば……ん?」
彼女の隣で同じ様に周囲の様子を見定めていた村人の目もベアータと同じ様に現状を見たのか。そんな呟きを漏らす彼に、肩を落とすように応えるベアータ。
だがその直後、肩に篭っていた力が抜けたせいか……僅かに変わった視点が、ほんの少しだけの違和感を彼女の目に与えてくれる。
ベアータの視線の先には、先程猟兵が狙撃ポイントとしていた平野の中で僅かな起伏の上。何か動く影が、見えたような……!
「いたわっ! 逃さない!」
瞬間、動き出すベアータ。ゴブリンを振り回し翻弄した機脚が三度機動し、跳躍。高度を取って地を見下ろす。
そこにいたのは、一匹の牡鹿だ。静かになった平野の様子に好奇心を刺激され、様子を見に来てしまったと見える。警戒心の薄さや体躯の大きさから、比較的若い個体だろう。
跳躍する見慣れぬ影を見上げると、牡鹿は踵を返して逃走を始める。だがその判断は明らかに遅い。ベアータは空中で既に銃を構え、牡鹿の逃げる先も見越しつつ……可能な限り急所を狙い、発砲。放たれた弾丸は背を向け逃げる鹿の後頭部を叩き、額を突き抜け貫通。牡鹿はそのまま数歩歩みを進め……どうっ、と横倒しに転倒。四肢をヒクヒクと震わせて、やがてその動きを止めた。
(中々、生きのいい鹿ね……)
倒れた鹿の血抜きをしながら、その肉質を確かめるベアータ。鮮度の高い赤みの肉は良く言われる硬さや匂いのキツさを感じさせず、血抜きさえしっかりすれば持ち帰っても柔らかな肉を皆に供する事が出来るだろう。
……世界や地域によっては、高品質の鹿肉はハレの日に供される『最上』の肉とされる。その味を想像し、思わず自身の内の飢餓衝動が鎌首を擡げようとするが、そこはグッと、我慢。
「みんなで食べる方が美味しいし、ね?」
共に戦った猟兵、自警団員や村の者達。彼らの喜ぶ顔を想像すると、思わず口元が緩むベアータ。
彼女が狩猟で獲たこの成果は、宴をより華やかに彩ってくれる事だろう。
大成功
🔵🔵🔵
秋月・信子
・POW行動
『さて…「私」の仲間を助けてあげた報酬を頂くわよ…って、なに不安げに構えてるのよ「私」?何も意識の支配権を寄越せとか、「私」を虐めるさせろとか言わないわよ…ったく
何が言いたいの?って相変わらず鈍いわね「私」
日頃影をコキ使ってるから、その埋め合わせで私が代表して影にも愉しませろと言ってるのよ
何か聞かれたら、双子の姉妹って事で【言いくるめ】ておきなさい
じゃ、お互い勝利の宴を楽しみましょ…え、お酒は飲むなって?
何言ってるのよ、もちろん飲むわよ?
だって、言葉では未成年で断っていても本当はお酒に興味があるって知ってるもの
私が言うのも何だけど、偶にはハメを外すって事を覚えておきなさい「私」?』
●コインの『表』と『裏』の会話
『さて……約束通り、「私」の仲間を助けてあげた報酬頂くわよ?』
「報酬、って……一体何を……」
宴の準備が進む村。その一角にある共用倉庫の物陰で、二人の少女が顔を突き合わせている。同じ体つき、顔付き、同じ服装……二人の違いは、その瞳の色だけ。
戦場で霞の様に消えた信子の影法師。金の瞳をしたそれが再び形を作り、本体である信子に迫っているのだ。
『影』の物言いに、怯える信子。信子には判っている。『影』は、信子の反転した存在だ。その性格は刹那的で享楽的。優等生である信子とは、まさしく正反対の存在なのだ。
そんな『影』が、求める物なんて……
『……何を不安げに構えてるのよ。何も、意識の支配権を寄越せだとか、「私」を虐めさせろとか言わないわよ……ったく』
「……えっ?」
『影』の物言いに、不意を突かれた様な顔をする信子。『影』の性格なら、きっとそんな事を求めてくるだろうと思っていたのだ。
『ったく、相変わらず鈍いわね、「私」は。日頃から影をコキ使ってるんだから、その埋め合わせで偶には『影』にも愉しませろって言ってんのよ』
『影』の代表は、『私』だけどね? と『影』はニヤリと口を歪める。
……信子の猟兵としての本質は、『射撃』を専門とするアーチャーだ。だが信子が経験を重ねて生み出して来た技術の中には、彼女自身の影を活かして戦う技能も多くある。
『影』はそんな普段使われている者達にも愉しませろと、そう言っているのだ。
「で、でもっ……私達、同じ顔よ?」
『そんな事、「双子の姉妹」だとか何とでも言って言いくるめておきなさいな。それも報酬の内よ?』
じゃ、お互いに勝利の宴を楽しみましょ? と物陰を出ようとする『影』。その手を信子の手が掴み、動きを止める。
『……何よ?』
「その……宴の事は、良いけれど。でも、お酒は飲んじゃ……」
『はぁ? 何言ってるのよ。勿論飲むに決まってるでしょ?』
せめてもの抵抗か、飲酒だけは止めようとする信子だが『影』の方は意にも介さずである。
『いいこと? 言葉では『未成年だから』って断っても、本音では興味津々だなんて。知ってるのよ?』
それどころか、『影』は信子と繋がるからこそ知る彼女の本音をぶち撒けるのだ。
……優等生として、今まで生きてきた信子。だが彼女もまた、17歳の多感な少女だ。色々な事もしてみたいし、ちょっとイケない遊びだってやってみたいと思う事も、あるのだろう。
『……私が言うのも何だけど。偶にはハメを外すって事も覚えておきなさい』
そう言うと、『影』は手を振り払って物陰を抜け出る。
去りゆく『影』の背を見つめながら、信子はどうするべきか……と頭を抱えて悩み込んでしまうのだった。
成功
🔵🔵🔴
アシェラ・ヘリオース
「もてなしか。有り難く受けよう」
身軽なスーツ姿に早着替えし、歓待を受ける。
準備の間、邪魔にならない村の外れで【黒騎招来】。
だらけたAI共を叱咤し、広域に偵察させ撮影させる。
後は羊皮紙とインクで、周辺の地図をアートで仕上げていく。絵画の心得は基礎教養だ。戦闘知識で注釈を加え、30ページ程の簡単な戦術教本を仕上げておく。
「見事な奮闘だったな。貴方達がいればこの先も安心だろう」
宴の中、自警団員達と盛り上がり、共に酒を呑む。
この空気は嫌いではないし好きだ。
乞われれば戦術も語るが、場の雰囲気が最優先だ。
団長には、宴の後に簡易戦術書を渡しておこう。彼なら有意義に活用してくれるだろう。
【アドリブ、連携歓迎】
レイチェル・ケイトリン
芸、になるかわかんないけどおみやげもってくね。
「宇宙バイク」に「騎乗」して村とそのまわりをまわって、「念動力」で「遥かなる想い」を発動して「デジタルカメラ」をたかくもちあげて、「視力」で確認しながら操作して、空から地上を「撮影」するの。
撮ったら歪みやズレを補整しながらつなぎあわせて「情報収集」してフルカラーでおっきくひきのばしてすりだすね。
「お招きありがとうございます。ささやかですがこちらを。空からみてえがきました」
「この『今の姿』にみなさんの『ゆたかな未来』がひろがるとわたしはしんじてます」
地図は警戒にも防衛にも、そして開拓にもやくだつって「コミュ力」でおはなしして十枚くらい渡してあげるね。
●女騎士が描く物
「もてなしか。有り難く受けよう」
団長からの申し出を快諾したのは、この戦いにおいて常に彼の隣で力を振るい続けたアシェラだった。
団長は勿論、団員たちにとっても。戦術的な視点で自警団をサポートし続けたアシェラの尽力は心打たれる物があったはず。
そんな彼女がもてなしを受けると言った事で、受けた恩を少しでも返せると彼らの意気も上がっているようだった。
……そんなこんなで宴の準備が進む間。生じた待ち時間をアシェラは無為に過ごすような事はしなかった。
この地に生きる者達に残せる、有意義な何かを。彼ならきっと活用してくれるであろう物を残すために、村の外れに足を運び……闇鋼製騎士の小型ユニットを喚び出す。その数、実に120体に及ぶちょっとした軍勢である。
「……さあ、仕事だ。だらけていないで、役目を果たせよ?」
頼りになる部下達ではあるが、軽薄さはちと問題だ、などと思いながら。アシェラは配下達を叱咤し、周囲を偵察させる。
そうして周囲の状況を取りまとめ、アシェラが取り出したのは羊皮紙とインクだ。ペンを手に、羊皮紙に何事かを記していくアシェラ。
彼女は一体、何を記そうとしているのか……?
●思いを切り抜いて
(芸、になるかはわかんないけど。おみやげはもっていくね)
宇宙バイクに跨がり、村の周辺を駆けている。彼女の頭上高くには、デジタルカメラが宙を浮いている。レイチェルの念動力で、持ち上げられているのだ。
(地図は警戒にも、防衛にも、もちろん開拓にもやくだつ、よね)
撮影した画像の歪みやズレを調整しながら繋ぎ合わせると、大きく引き伸ばして印刷する。
……レイチェルが『おみやげ』として用意している物は、村の周囲の現在の様子を空から俯瞰した、いわゆる『航空写真』だ。
現在の様子をそのまま切り取った『写真』の齎す情報は、非常に大きい。それこそ、今後の開拓の方向性を左右しかねない程だ。
もし、この写真が戦闘前に自警団の手元にあったのならば。彼らはきっと、むざむざとゴブリンキングの策に乗るような事は無かっただろう。
レイチェルの『おみやげ』は、ある意味では戦略兵器となるような……そんな力を秘めた物になりそうであった。
●
二人が作業を終えて村に戻った頃には、既にあらかたの準備は終えていたらしく。主賓の到着を今か今かと待ち侘びる自警団員や村人達の姿があった。
自警団員達の無事の帰還、挙げた武功、加勢した猟兵達への感謝……村の顔役が一通り述べて乾杯の音頭を取って、賑やかな宴が幕を開けた。
「お招きありがとうございます。ささやかですが、こちらを」
ひとしきりの役目を終えて、自警団員を労おうと足を運ぼうとする初老の顔役を呼び止めたのはレイチェルだった。
今回の宴への招待の礼を行儀よく述べるレイチェル。可憐な少女からの言葉と返礼をにこやかに受け取る顔役であったが……
「空からみて、えがきました」
その返礼の品を見て、レイチェルの言葉を聞き、唖然とした表情となる顔役。
空から地上を見て、その様子を描くなど……聞いたことが無い。だが彼の手にあるその絵は、確かに今の村の姿であるし……近隣の様子も、まさにそうとしか言えない物であった。
「この『今の姿』に、みなさんの『ゆたかな未来』がひろがると、わたしはしんじています」
そう告げるレイチェルの瞳は、開拓村の未来を見つめるように澄んでいた。
彼女が残した、この写真がどう活かされるかは……開拓村の人々の、両手に掛かっているだろう。
●
「見事な奮闘だったな。貴方達がいれば、この先も安心だろう」
一方、同じ様に何かを用意していたアシェラであったが、彼女は宴が始まった直後に自警団員達に取り囲まれていた。
彼女の言葉に、世辞の色は無い。本心から自警団員達の奮闘を讃え、この先もきっと大丈夫だと太鼓判を押しているのだ。素直な称賛の言葉には、自警団員達も皆どこか気恥ずかしげな様子を見せていた。
(……こんな空気は、嫌いではないし、好きだな)
お互いの今日の戦いぶりを振り返り、称え合い、盛り上がる宴の場。共に交わす酒の質はお世辞にも良いとは言えないが、それでも何故か心に染み入るかの様だ。きっと共に死線を乗り越えた戦友と交わす酒だからなのだろうと、アシェラはグラスを傾ける。
「いやぁ、アシェラ殿。今日は本当に助かった!」
そんな彼女の下に来るのは、自警団の団長だ。その表情は死地を超えた事で緊張感から解き放たれ、酒精により朱く染まっている。
改めて礼を言わせてくれ、と差し出された彼の手を取るアシェラ。その表情もまた、共に戦った戦友を称えるように微笑を浮かべている。
……と、ちょうどいいタイミングか、とアシェラは懐から一冊の本を取り出すと団長に差し出す。
「団長、貴方ならばこの教本を有意義に活用してくれるだろう。受け取って欲しい」
「何、良いのか……むっ、これは……」
差し出された本を受け取り、パラパラと捲る団長がすぐさま顔色を変える。
その本は、アシェラ手製の簡単な戦術教本だ。周辺の地理情報や有効な戦術をイラストで纏めた一冊で、絵画の心得を持つアシェラの渾身の一作である。
「なるほど、これは……素晴らしい。これがあれば、もう二度と今日のような目に遭うことは無いだろうな」
「お役に立てたようなら、何よりだ」
団長からの最大級の賛辞に、アシェラが答える。その頬が僅かに染まったのは、酒精のせいか、自作を素直に評価されたが故か。
……本来の未来からは、退場するはずだった者達の宴は続く。新たに開かれた彼らの未来は、きっと明るい道が続いていく事だろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ミフェット・マザーグース
もー、急に飛び出したりしてー、もー・・・!
信子のおかげで助かったけど、ティエルが負けそうになったのすごく心配だったんだから。ぷんぷん怒るよ
でも、宴を楽しんでる村の人たちを見たら、ミフェットでもちゃんと人の役に立てた実感が出てきて、楽しそうにしてるティエルの気持ちもわかったかも?
村の人たちに【シンフォニック・キュア】で癒やしの【歌唱】を披露するね。怪我してる人、まだ、いるかもしれないし
開拓村が平穏がこの先も守られるように【祈り】をこめて歌うね
「さぁ みんな踊ろうよ 昨日の晩とおなじに
もうすぐ春 夏はすぎて 秋もおわって 冬をこえて
さぁさぁ いっしょに踊りましょう 明日の晩もおなじに──♪」
ティエル・ティエリエル
【太陽の家】
「大丈夫だよ♪ボク、ゴブリンなんかに負けないしって、痛い痛い!ミフェット痛いって」
心配をかけたミフェットの触手の先っぽでぺちぺち叩かれて妖精姫も反省……?
開拓村に戻ってきたらもちろん宴に参加だよ♪
怒られてた事なんてすっかり忘れて宴を楽しむよ!!
宴では「風鳴りのレイピア」を振りながら【楽器演奏】で音楽を奏でながら、
【スカイステッパー】を使ったダンスを披露するよ♪
背中の翅からも妖精の粉がきらきらと舞ってすっごく幻想的なんだよ☆
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です
●少女たちは歌い、踊る
「もー、急に飛び出したりして、もー……!」
「大丈夫だよ♪ ボク、ゴブリンなんかに負けないしって痛い、痛いっ!? ミフェット、痛いって!?」
宴が盛り上がる最中、ミフェットのお小言を受けるティエルの姿があった。
王の軍勢に突撃し、あわやという危機に陥ったティエル。その危機はミフェットの歌と信子の援護で救われた訳だが、ティエルはあわやという事態にあったにも関わらずあっけらかんとした表情。
そんなティエルの態度を窘める様に、ミフェットの触手の先がぺちぺちとティエルを叩く。
その折檻も、ミフェットが本気でティエルの身を案じていた故の事。それを理解しているからこそ、ティエルは触手を甘んじて受け入れている。態度は軽いが、実はしっかりと反省しているティエルであった。
「もう、ティエルはもうっ。でも……」
ティエルをぺちぺちとする触手を止めて、ミフェットは視線を周囲に動かす。
宴が始まり暫くして、参加する村人達も、猟兵達も、皆が皆楽しげに食事をし、酒を交わし、今日の奮闘と無事を祝い、明日からの生活に向けた鋭気を養っている。
この光景は、本来ならば見られなかった光景。本来あるはずだった未来では、この村もゴブリンの群れに蹂躙されていたはずなのだ。
そんな悲劇的で絶望的な未来を打破し、この幸せな光景を生み出したのは、この戦いに介入した猟兵達の働きであり……
「……ミフェットでも、ちゃんと人の役に立てたんだ」
ミフェットの歌が齎した結果でもある。
戦いは苦手だ、というミフェット。だが直接的な戦いの場以外で、彼女の歌は輝いた。例えば、負傷した自警団員達を癒やした事。仲間の猟兵の力を底上げしたこと。何より、友達であるティエルの危機を歌で救った事。
切った張ったの戦いをせずとも、彼女は確かに今回の依頼に貢献していたのだ。
その事を、彼女の隣で笑う小さな妖精姫は良く知っている。
「ミフェットは頑張ったよっ♪ さ、歌お、ミフェット!」
「あっ、ま、待ってティエル……!」
ティエルがくるりとミフェットの周りを翔ぶと、小さな身体からは想像も出来ない様な強い力でミフェットの手を引いていく。進む先は篝火が焚かれ、多くの人達が集まる宴の中心だ。
──さぁ みんな踊ろうよ 昨日の晩とおなじに
──もうすぐ春 夏はすぎて 秋もおわって 冬をこえて
──さぁさぁ いっしょに踊りましょう 明日の晩もおなじに──♪
やがて、宴の輪からティエルの奏でる音楽に乗せたミフェットの歌声が村に響く。
癒やしの祈り、これから先の平穏、開拓村の成功。様々な願いの込められた歌は、どこか不思議な魅力に満ち溢れ……聞き入る村人達の心に、染み入っていく。
歌と演奏が止んだ後、きっと彼らは小さな歌い手と演奏者に惜しみのない拍手を送ることだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
宇冠・由
お母様(f00173)と参加 ※別描写でも構いません
お祝いは人が多い方がより楽しいもの
ヴィクトリア・アイニッヒ様も同行希望
一緒に宴を楽しみましょう
(お母様の姿が見えない今なら、これを出してもバレないのでは……?)
マスクを揺らすと、中から非常食(おかし)が沢山。どこにそんな量を隠していたんだというくらい
ポテチにチョコにマシュマロにクッキー
この世界ではどれも馴染みのない食べ物ばかりだと思います
今、私に用意できる食材はこの程度のズルでしかできません。しかし、これでも喜んでくれて、村の皆様のお腹が膨れるのなら、隠し持っていた甲斐があったというものですわ
あ、その果物美味しそうですね。おひとつ頂きます
ヴィサラ・ヴァイン
知らない人が沢山居る…目立たぬようご飯食べよ
どうせだしヴィクトリアさんに…どう声をかけよう
「ちょっと屋上へ出ましょうか」不良か私
「校舎裏でお話があります(もじもじ)」恋する乙女か
…愚王の相手より難易度高くない…?
「手紙出そ、手紙」
村の子供に届けてもらお
『ヴィクトリアさん、いつもグリモア猟兵のお仕事お疲れ様です。宴は楽しんでますか? 美味しい物食べてゆっくりしてください』
裏面
『貴女の予知で救われた人が沢山います。私も、とある予知によって溜飲を下げる事が出来ました。ありがとうございます。
これからも頑張ってください。ではまた、ご縁があれば』
『P.S.私は怖くないです』
「あ、私の名前書くの忘れてた…」
●これから先が、楽しみな味
盛り上がる宴の中心からは、ほんの少しだけ外れた場所。由とヴィクトリアの二人が、横に並んで座っている。
「ヴィクトリア様は、宴を楽しめておりますか?」
「えぇ、とっても。皆さん、いい笑顔をされていて……本当に、良かった」
由の言葉に微笑みながら答えるヴィクトリア。
猟兵達をこの場に送り込んだ案内人であるヴィクトリアとしては、目の前で広がる光景は『彼女自身が視た最悪の未来』が潰えた証明だ。肩の荷が降りた、と言うようにその表情は柔らかい。
「改めて……今回は、お疲れ様でした。由さんを始めとした皆さんの活躍のお蔭で、この村は救われました」
この光景が皆さんの勝ち取った成果ですね、と。ヴィクトリアは由の功績を称える。
自警団の援護、ゴブリンの逃走ルートの遮断、その多くを、由は自らの身体を張って実行し続けた。目立った戦果は少ないかもしれないが、由の行動が無ければ多くのゴブリンを取り逃がしていた可能性は低くは無いのだ。
……そんな功績を正面から讃えられて、気恥ずかしくなったのか。
「……あっ、その果物美味しそうですね。おひとつ頂いても?」
「構いませんよ? はい、どうぞ」
ヴィクトリアの持つ木皿に盛られた、木苺を指差す由。快く差し出されたそれを口に含んで……
「……ちょっと酸っぱいですね」
「野生の物、だそうですからね」
だがそれも、この地の開拓が進み、人の手で栽培化が成され、品種改良を進めていけば……甘く瑞々しい実に変わっていく事になる。
そんな未来の可能性を掴み取る事が出来たのも、猟兵達の戦果の一つであると言えるだろう。
●思いを文に託して
そんな由とヴィクトリアの姿を、ヴィサラがより目立たぬ所で眺めていた。
今回の勲一等と言える功を挙げた猟兵であるにも関わらず、こんな所に一人で宴に供された鹿肉の良い所を食べているのは、彼女が人見知りな性格であるからなのだが……
だが、今回のヴィサラは違う。せっかくの機会だ、と。この場に来ていたヴィクトリアに声を掛けようと一念発起したのだが……
(……どう声を掛ければ……?)
『ちょっと、屋上へ出ましょうか』? ……不良か、私。
『校舎裏でお話があります』? ……恋する乙女かな?
(……あれ? 愚王の相手するより難易度高くない……?)
簡単に踏み出せれば、長年(?)人見知りはやっていない、という物である。自身の中のコミュニケーション用の選択肢の少なさに思わず愕然とするヴィサラであった。
あーでもない、こーでもない……と頭を抱えて考えて、考えて、考え抜いた結果……取り出したのは、紙とペン。
「……手紙出そ、手紙」
文面を認めて、そっと折り畳むと。ヴィサラは近くにいた子供に、その手紙を託すのだった。
●礼には、礼を。甘味には、甘味を。
宴は盛り上がりを増している。だが、開拓村の子供達はどこか上の空であった。
ヴィクトリアとの雑談に花を咲かせていた由が子供達の様子に気付けたのは、偶然だった。だが気付けば、その理由にも察しが付く。
「そう言えばヴィクトリア様。宴に、甘味の類があまり無かったような……?」
「開拓村、ですからね。食糧事情もまだまだ厳しいでしょうし、甘味の類は贅沢品なのでしょう」
この木苺が、日々の精一杯の贅沢なのかもしれませんね? と、この世界出身者らしい視点で語るヴィクトリア。
ヴィクトリアの解説に、あぁ……と納得する由。だが、ならば。なおさら『お返し』をしたいと思ってしまう。
(お母様は、っと……側にいない今なら、これを出してもバレないのでは……?)
ふるふるっ、と。由の本体、マスクが揺れる。すると零れ落ちてくるのは、由の持ち込んだ非常食の数々だ。
ポテトチップス、チョコレート、マシュマロに、クッキー……どうやってそんな量を隠していたのかと、目撃したヴィクトリアも思わず手を口に当てて驚きを隠せない様子。
「さぁ、せっかくの宴ですから。美味しいお菓子を、みんなで食べましょう?」
由が優しく呼び掛ければ、わっと群がる子供達。ヴィクトリアも手伝い手分けをして配り歩けば、久しく食べられなかった塩気や甘さ、口で蕩け、またサクサクと割れる食感にたちまち笑顔の花が咲く。
……そんな輪の中、ヴィクトリアが服の裾を引く手がある事に気付く。振り返って見れば、そこには一人の男の子の姿が。
「……どうされました? あ、お菓子は貰えましたか?」
しゃがみ込み視線を合わせるヴィクトリアに、「お手紙、渡して、って……」と辿々しく告げて、折り畳まれた紙を押し付けて走り去っていく男の子。逃げ去る様な男の子の反応に首を傾げるヴィクトリアである。
「どうかされたのですか?」
「いえ、お手紙? を頂きまして……」
由の疑問の声に答えながら、畳まれた紙を開き文章に目を通すヴィクトリア。差出人不明の手紙に当初は疑問顔であったヴィクトリアのその表情も、読み進めていくにつれ表情は緩み、微笑みに変わる。
……どんな事が書かれていたのか。それをここで語ってしまうのは無粋であるだろう。
「ヴィクトリア様?」
「ふふっ……いえ、とても心の篭ったお手紙でしたので。つい嬉しくなってしまって」
大事に畳み直し、懐へ仕舞うヴィクトリア。そんな彼女の様子に、由は首を傾げてしまう。
……由の目に一瞬だけチラリと見えた文字は、『私は怖くないです』という、手紙の最後に記された一言だけだったからだ。
●思いを文に託して(余談)
「……あ、私の名前書くの忘れてた……!」
その後、宴も終わり帰路へと着いたヴィサラが、自らのうっかりに気付くというハプニングもあったりしたが……
大丈夫だ。きっとヴィクトリアは、差出人については見当は付いているはずなので、安心して欲しい。
大成功
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宇冠・龍
由と(f01211)参加
生活もまだ不安定な中、お祝いをしてくださるのはとても嬉しいことです
流石は士気高い開拓地。遠からず、この地は不可欠な要所となるかもしれませんね
しかし、だからこそ影ながら応援したくなるという老婆心
幾度となくゴブリンと小競り合いが続くという情報が確かなら、周辺に巣がある可能性が高い
逃げたゴブリンも気になります
宴会を楽しむ娘を見ながら、私は気づかれないように周辺を散策調査
【談天雕竜】で呼び出すのは百羽の鳥霊。あの規模から察するに、横穴や洞窟に残党もいるかもしれませんね
しかし今襲いはしません
いるという確かな情報こそがこの村には大切
自警団に後で教えて、練度上昇に役立てて貰いましょう
●未来に向けて、必要なこと。
盛り上がる宴。そんな宴の空気に当てられて上気した頬を覚ますように、龍はこっそりと輪を抜け出して一人になる。
(……生活もまだ不安定な中、こうしてお祝いをしてくださるのはとても嬉しいことですね)
自身達の蓄えを切り崩してまで行われた、今回の宴。狩りに出た猟兵の戦果を加えたとしても、明日からの生活はまた厳しくなる事は想像出来た。
だがそんな状況でも、開拓村の皆は笑って宴を楽しんでいる。その豪快さを産んでいるのはきっと、この村の士気の高さ故なのだろうと、龍は察していた。
「遠からず、この地はこの地域に不可欠な要所へと成長するかもしれませんね」
今は、生活にも事欠く小さな開拓村。だが今抱く初心を忘れずに開拓を進めれば。きっと、この村は大きく変わる事が出来るはず。
だからこそ、この村の未来を見守りたい。成長を、影ながら応援したいと思うのは……龍の持つ老婆心、思いやりの精神の発露だったのだろうか。
自身と同じ様に人の輪から少し離れた所で銀髪の女性と話し込む娘に気付かれぬ様に、龍は密かに村を出ると平野を進む。
歩みを進めながら、喚び出したのは百羽を越える鳥の霊。喚び出された霊達は音も無く羽撃くと、広い平野に散っていく。
(……この村が、幾度となくゴブリンとの小競り合いを繰り広げたという情報が確かなら、周辺に『巣』がある可能性は高いでしょう)
今回の戦いで、ゴブリンの主力は殲滅された。率いていた王もまた、猟兵の前に斃れた。故に、その脅威度は大きく減じたと見て良い。
だが、『全滅』出来た訳ではない。取り逃がした者はいるし、見落とした者もいる。そんな者達が、『巣』に戻り情報を伝えたのなら?
……将来的に、禍根となる恐れは否定できない。
(今この村に必要なのは、脅威の有無の正確な情報でしょう)
もし、龍の危惧が的中した場合。村の者達が、脅威に自力で対処出来るのならば良し。自警団の練度上昇の糧とすれば良い。
自力で対処出来ないとしても、それはそれ。後方に支援を要請する時間の余裕に繋がるはずだ。
そして龍の危惧がハズレだったのならば……その時は、心配のしすぎだったと笑えば済むことなのだ。
西の空に沈んでいく太陽。夜の帳が降りる中を、霊鳥達が翔んでいく。
龍の調査の結果、得られた情報がどう活かされたかについては……違う機会に、記される事となるはずだ。
……こうして、猟兵達は任務を達成した。
彼らの活躍で、喪われる筈だった人々の営みは……明日も、明後日も。ずっと続いて行くことだろう。
大成功
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