日の出が来る。世界が作り変わる。旧き
一年に別れを、新たな
一年に祝福を。
万物に等しく訪れるそれを、遍く命と共に斬り伏せよう。我こそは闘争の申し子。
戦場にて
強者を待つ刃なり。
●
「一年の節目ってのはどの世界でも重要視されてんのか、どこもかしこも浮足立ってる。そんな中で悪いが、ある小世界に行ってもらえるか?」
クリスマスに引き続き新年を迎える行事を目前にして各世界がめでたい空気に包まれる中、年末のグリモアベースにて杜・泰然(停滞者・f38325)は猟兵達へ向けて早々に仕事の話を始める。エンドブレイカーの世界──そのひとつである、とある小世界でエリクシルの出現が予知された。
「その小世界でも新年を祝う祭りが催されるわけだが、その盛り上がりが最高潮に達する頃にエリクシルが現れる。まったく、凝った演出考える頭はあるみたいだな」
敵の狙い自体は単純だ。祭りで幸せな思いをした人々を無差別に虐殺し、残された者の悲哀を利用する心算なのだという。現場は瞬く間に〝命を落とした大切な人に帰って来てほしい〟という願いで溢れ返る。その大きな願いを得たエリクシルが何を成そうとしているのか……それは言わずとも分かることだろう。
「対処の手順には迷うところだが、祭りの会場にいる一般人には何も報せない方が良い。下手に危機を伝えて、場が混乱しても面倒だ」
幸いなことに敵は一体。猟兵達が複数人で対峙するのなら、倒すことは容易いだろう。エリクシルが祭りの会場へ辿り着くよりも前に倒すことが叶えば、人々は脅威の存在すら知らずに済む。一新された年を迎える場に轟かせるには、エリクシルの名は不粋というものだ。
「エリクシルさえ倒せば後は自由だ。帰還時刻まで勝手にやってくれ。祭りに参加したいやつはそうしたら良い」
戦いの舞台となる小世界はサムライエンパイアやサクラミラージュと文化圏が近いのだという。新年の初詣を済ませたい者はここで祈りを捧げてゆくのも良し。また、神社に酷似した神殿の周囲には縁日のように屋台が並んでいるので、そこで小腹を満たすこともできる。一般人に迷惑を掛ける過ごし方でなければ完全な自由行動だ。
祭りに想いを馳せ、早くも胸を躍らせる猟兵もいる中、説明を終えた泰然は転移の準備へ移行する。周囲の空気が揺らぎ、その一瞬の間に風景が一変した。移ろい続けていた視界が固定される。そこは、長い石段の只中だった。左右両脇には赤い灯篭が並び、中で暖かな火が灯っている。
遙か下方に、青い灯火が揺れた。不穏な揺らぎはこちらへとゆっくりと近づいて来ている。巨大な蝶のようにも見えるそれは腰に佩いた太刀から、誤魔化すことのできない殺気を放っていた。
『いざ、尋常に勝負』
飽くまでも上を目指そうとするエリクシルは、その刃を鞘より解放する。無血で祭りを完遂するには、ここであの鋼を断ち、炎を鎮める。猟兵達は改めて、自身の役目を胸に留め置きエリクシルと対峙した。
マシロウ
閲覧ありがとうございます、マシロウと申します。
今回はエンドブレイカー!での事件をお届けいたします。「新年の祭りで大虐殺を目論むエリクシルを秘密裏に討伐」が目的です。参加をご検討いただく際、MSページもご一読ください。
●第一章
祭り会場へ向かおうとするエリクシルとの戦闘です。舞台は、とても長い神社の石段をご想像いただければ。
●第二章
エリクシルを倒したことで祭りは滞りなく催されます。祭りに参加して、幸せのおこぼれに与りましょう。
POW/SPD/WIZの選択肢はあまり気にされずとも構いません。どうぞご自由に過ごされてください。屋台メニューもご自由に考案されて構いませんし、お任せも可能です。
オープニング公開直後からプレイング受付を開始いたします。プレイング受付の締切日等は、タグやMSページをご確認いただけますと幸いです。皆様のご参加を心よりお待ちしております。
第1章 ボス戦
『『アゲハノタチ』葬送の蒼刃』
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POW : 斬空閃
【太刀】に【無明の霊気】を付与して攻撃し、あらゆる物質を透過して対象の【臓腑】にのみダメージを与える。
SPD : ブレイジングバタフライ
自身の【身体】を【蒼く燃える炎の蝶と】化して攻撃し、ダメージと【業炎】の状態異常を与える。
WIZ : 天賦の才を見続けた蒼刃
行動成功率が0%でなければ、最低成功率が60%になる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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神野・志乃
★
エリクシル……本当に毎回、やり方が癇に障るのよね
人の願いを弄ぶなんて、卑劣極まりないわ
魔鏡から創り出した陽光剣『をのか』を構え、正面から敵を見据えて
「さっさと終わらせましょう」
予知された敵のUCは、確か『天賦の才』と同等の……最低成功率を引き上げる能力
ならば
「行くわよ……“ふしひ”」
UC《ふしひ》を発動
吐き気がする程の唾棄すべき邪悪……人類の敵相手なら、“ふしひ”の力も十分よね
私はあくまで魔術師。剣士では無いから
剣から発する強い陽光で【目潰し】したり、陽光の【オーラ防御】しつつ不意打ち気味に【武器から光線】を放ったり
武士道等とは程遠いけれど、貪欲に意地汚く勝ちに行くわよ
“ふしひ”で戦闘力増強はしているけれど、相手のUCのせいで大半は捌かれてしまうのでしょうね
でもその分、“ふしひ”には生命力吸収の能力もあるわ
つまり、泥仕合
……私ね、こう見えて【負けん気】なら誰にも負けないの。大得意よ、長期戦
敵のUCが最低成功率を引き上げてくるならば、試行回数という暴力で叩き潰すわ
意地でも勝つ。それだけよ
(エリクシル……本当に毎回、やり方が癇に障るのよね)
刃を提げ、ゆらりゆらりと石段を上がってくるエリクシルの姿を見据えながら神野・志乃(落陽に泥む・f40390)は眉根を寄せた。願いとは、或いは人の命運を左右する。人を生かしも殺しもするそれを良い方向へ傾けるのが猟兵なのだとしたら、対峙している存在はその真逆と言えるのだろう。
石段を上がった先で新たなる年を想う人々。そして彼らから神殿へ捧げられる願いを弄ぶエリクシルの行いを、志乃は到底許すことはできなかった。
白い手に包まれていた小さな鏡に力を込める。魔鏡に降り注いだ月光は鏡面の奥で収縮し、弾け、そして小さくも強い光だけを残す。まるで水面から魚が飛び出すように光が躍った。それは志乃が手に取った瞬間、一本の
剣の形を成す。
ここでまた昇ろうとする新たな陽を、愛すべき光を、血で汚すような真似は許さない。志乃は陽光剣『をのか』を構え、今まさにこちらへ飛び掛かろうとするエリクシルへ向けて静かに告げた。
「さっさと終わらせましょう」
エリクシルは背から炎を噴き出し、その勢いに乗るように石段を滑り登る。只人の目であれば捉えられない速度だが、志乃の黒曜の瞳はそれを逃がさなかった。横薙ぎに振り払われた刃を、寸でのところでをのかで防ぐ。エリクシルは剣士としての心得があるのか、それとも刃そのものに意思でもあるのか、その動きには一切の迷いも無駄もない。防いだ矢先から二撃、三撃と繰り出される攻撃に、志乃は防戦を強いられた。頬に、脚に、エリクシルの刃が掠める。細い首を狙った斬撃を回避すると艶のある黒い髪が一房、代わりに地へ落ちたのが横目に見えた。
剣の扱いという意味では相手の方が一枚上手と言える。だが、追い詰められた今の状況こそ志乃が待ちわびていた瞬間だった。
「行くわよ……〝ふしひ〟」
志乃の声は妙に辺りへ響いて聴こえた。だが、その呟きが何であったのか相手が理解するよりも先に強い光で視界が満たされる。陽の光を直接見つめたのと同等の痛みは、如何なエリクシルとて一瞬の隙が生まれるものだ。それを逃がさないとでもいうように、光の中より一閃が走る。
をのかから放たれた光の束がエリクシルの肩口を掠め、その表面を灼いた。強い光が生んだ濃い影に紛れ込み、志乃は迷い無くをのかを振り抜く。エリクシルを斬りつけた傷から噴き出したのは血ではなく、羽と同じく青く燃え盛る炎だった。
一瞬、エリクシルの体が傾ぐ。先程と比べて脚に力が入っていないことにようやく気付いたようだ。目の前の敵を屠ることだけに執着していた目に、初めて驚愕が灯った。
「……私ね、こう見えて負けん気なら誰にも負けないの」
志乃はそう語りながら、己の頬の傷口を拭う。既に血は止まり、拭われた痕には白くきめの細かい肌だけが覗いている。エリクシルを斬ることで得た生命力は確実に、志乃をこの
戦場へ立たせ続ける源となっていた。
「意地でも勝つ。それだけよ」
再びエリクシル目掛けて駆け出し、志乃はをのかの切っ先を煌めかせる。例え技量は相手が上だったとしても、圧倒的な手数でそれを制する。先に膝をついてやるものか。意志とは、願いとは、そういうものなのだ。
大成功
🔵🔵🔵
ルシア・ナドソコル
【心情】
何かの節目になるタイミングでお祭りになる
どこの世界にもあるお話ですね
だからこそ、僕みたいな世の理から外れた者はそれを守らなくてはいけないですね
【戦闘】
「ここのお祭り、体から炎を出している方はお断りみたいで、お帰り願えませんか?」
元より帰ってくれるとは思っていませんでしたが、勝負と言うのなら受けて立ちましょう
炎の蝶と化しての攻撃は「気配察知」「軽業」で回避
多少当たっても「霊的防護」「火炎耐性」があります
首をめがけてUCで「凍結攻撃」での「部位破壊」を
後は「武器に魔法を纏う」で強化した「なぎ払い」でトドメを刺しましょう
あなたが強者なのは分かりましたが、それを押し付けるのはやめていただきたく
名称はそれぞれ異なれど、時の節目を祝う風習は何処も変わらないものだ。広い世界を見て回る中で、ルシア・ナドソコル(自由と冒険を求めて・f39038)が見つけた共通点のひとつはそれだった。その気付きは、例え世界が異なろうと人という生物がどこか根底で繋がっているようにも思えて、少なくともルシアにとっては良いものであるように感じられた。彼らと同じ時間、同じ領域で生きられずとも、それを守るべきであると自然と受け入れられるぐらいに。
「ここのお祭り、体から炎を出している方はお断りみたいで、お帰り願えませんか?」
猟兵によって行く手を阻まれているエリクシルへ向けて、慇懃なほどに丁寧に声を掛ける。無論、その言葉に従う相手だとは思っていない。敵がそんな素直な存在なのであれば、自分達は今頃戦う必要など無くなっているのだから。
エリクシルが刃を鞘へ納めたかと思うと、柄に手を添えて身を低く構える。相手から一切戦意が失せていないことを認めると、ルシアは「やれやれ」といった様子で肩を竦めた。そして自身もまた、短剣を手に戦闘態勢を取る。太刀と比べれば小さなその刃からは、冬の空気よりも冷たい気配が溢れていた。
先に動いたのはエリクシルだった。一定の距離があったにも関わらず一瞬でルシアとの間合いを詰め、鞘から刃を滑らせる。だが、刃が振るわれるよりも先にエリクシルの体が炎に包まれたかと思うと、ルシアの視界は青い蝶の群れで満たされた。蝶は縦横無尽に飛び回り、何匹もルシアの体に纏わりつこうとする。狙いが接触であるとすぐに察したルシアは軽い身のこなしで群れの隙間を縫い、その羽に触れないよう回避に徹する。それでも、数の暴力とも言える羽ばたきを完全に避けるのは難しい。一匹の蝶が肩に留まり、それに二匹三匹と続いた。蝶は触れた先から強く炎を噴き出し、ルシア諸共燃え尽きようとする。
だが、その思惑は通用しなかった。ルシアの体を守る霊的な力はエリクシルの炎を拒む。道連れは叶わず、蝶だけが燃え尽きて灰になり、石段へ落ちる前に朽ちていった。
ルシアは間髪入れずに振り返り、蒼氷刃を振り抜く。既に元の形を取り戻し、背後から斬り掛かろうとしていたエリクシルにその刃が届いた。斬撃はエリクシルの右腕に決して浅くはない傷を残す。血も炎も、そこから飛沫を上げることは無い。ルシアが斬りつけたそこは、凍てつく魔力で氷塊と化していた。
「あなたが強者なのは分かりましたが、それを押し付けるのはやめていただきたく」
眉尻を下げ、表情だけを見れば人の好さそうな笑みを浮かべてルシアは次の攻撃へ移る。蒼氷刃が次に狙うのはエリクシルの首。一時的に腕を封じられたエリクシルは防ぐ手立てを失い、深手を負うその一撃を許してしまうこととなった。
大成功
🔵🔵🔵
上野・修介
★諸々歓迎
人々の平穏と安寧を脅かすモノが現れるらばそれを打ち砕く。
いつだろうと何だろうと関係ない。
それが自身の猟兵としての在り方だ。
調息と脱力、場と氣の流れを観据える。
――為すべきを定め、心を水鏡に
(観るべきは切っ先ではなく、その起点)
視線、殺気、体幹と膝・肘・肩の動きから刃の軌道と間合いを量る。
「推して参る」
真正面から踏み込む、と同時にASペンを目と肩狙いで投擲。
目眩ましにして間合い詰めると同時に反応速度を確認。
立ち回りは至近の間合いを維持し圧を掛けながら確実に削る。
UCの攻防を立ち回りの中で細かく切り替えながら、攻防の合間に僅かな『隙』を敢えて作り、そこに攻撃を誘ってカウンターを叩き込む。
例えば、オブリビオンやエリクシルに人類を脅かすに至る事情があったとして、自分は戦うことをやめるだろうか。否、それだけは無い。自身の拳が何の為に振るわれるものであるのか、上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)は既に己の中で明確に定めていた。
燃え盛るエリクシルの青い炎を見据えながら、一定の間隔で深く呼吸を繰り返す。神聖な場であるせいなのかは分からないが、今日はやけに氣の流れを強く感じられた。だからこそ修介の思考はより澄み渡り、己の為すべきことが鮮明に見えてくる。
(観るべきは切っ先ではなく、その起点)
敵に剣の心得があることは動きを見れば分かる。それが逆に、先の動きを予想するのに役立った。エリクシルがその刃を振るった時、自身が何処に立っているべきか。戦場を満たす氣の流れと、これまでの己の経験が全て教えてくれた。
エリクシルが目にも留まらぬ速度で抜刀し、修介との間合いを詰める。修介は敢えて避けることはせず、それを迎え撃つべく拳を構えた。
「推して参る」
間近に迫ったエリクシルの刃が一閃を斬るが、修介が一歩下がっただけでその間合いから外れる。眼前を横切ってゆく刃から伝わる冷たい霊気は、刃に触れずともこちらに危害を加えられることが窺えた。即ち、触れれば重傷を負う可能性もある。一番良い対処法は〝可能な限り刃を振るわせない〟こととも言えた。
一歩分の距離をすぐに詰め、正面からアサルトペンを投擲する。エリクシルは振り下ろしたばかりの刃でそれらを叩き落とすと、再び修介へ斬り掛かった。
(反応速度は高い。けれど、この間合いならば刀は逆に扱いづらい筈)
修介はエリクシルと距離を取ることはせず、そのまま近接戦へ持ち込んだ。迂闊に刃に触れたのなら体の内側ごと両断されかねないが、拳が届くほどの距離であれば太刀はむやみに振り回せない。小太刀や脇差であれば違っていただろうが、その点では今回は幸運だったと言えるだろう。
迷いの無い太刀筋の合間に氣の流れを拳へ集中させ、刀を操る蒼炎の蝶を殴る。表情こそ大きく変わることは無いが、ふらつく様子から確実にダメージを与えられていることが分かった。間髪入れずに太刀を握る腕を抑え込み、鎖骨の中央めがけて掌底を打ち込めば、ゴキリと何処かの関節が外れるような音が響いた。
無理やりに体勢を立て直したエリクシルが刀を振り上げる。徐々に剣術の体裁を取れなくなってきているそれは、生きようと足掻く人類と同じものであるようにも思えた。修介は氣を拳から全身に行き渡るよう流れを変え、極限まで上昇させた防御力で凶刃を弾く。刃に纏う霊気が修介の皮膚や肉を過ぎて臓腑を斬ろうと蠢いたが、氣の装甲は内側にまで及んだ。
手応えの無さに敵が驚く、ほんの一瞬。修介はその一瞬にして最大の隙を逃さない。刀を定位置へ戻すよりも先。振り上げきった腕の陰に普段は隠されている胴体が、今は無防備に晒されていた。
(狙うは、一点)
体幹の中枢とも言える胴体へ渾身の一撃を叩き込む。エリクシルの脚も羽も、その場に体を留めることは叶わない。氣によって上乗せされた攻撃力は修介の拳に乗り、轟音を上げるほどの力でエリクシルを石段の下方へと吹き飛ばしてしまった。
追うことはしない。己の役目は、この聖域へと至る境目を守ることだ。修介は最優先の目的を胸に、また這い上がってくるであろう敵の姿が土煙の奥から現れるのを待った。
大成功
🔵🔵🔵
ルイナ・ラヴ
★
民草の大切な神事を血で汚すとは、王族として見過ごすわけには参りません!
当代の主にして王ルイナ・ラヴの名の下に
凝血の盾を以て霊気を纏いし太刀を受け止めましょう
ぐうぅぅ、これは透過ですか?盾をすり抜けて・・・
く、身体が斬り裂かれる・・・よろしい、吸血鬼の死合は流血が付き物
しかしこの代償は高いですよ?
盾が機能しないと言うのなら、いっそのこと投げつけてしまえば良い!
かわしても盾ごと斬りつけて来ても構わない、使い魔たるコウモリ達よ、超音波で撹乱しなさい!
動きが止まりましたね、妖刀の魔力を解放します
その体勢からの反撃では私の命には届かない
民を護るは我が務め、力を解放して鋭さを増した妖刀でその命脈を断つ!
いつの世も、人々は神事を拠り所としてきた。時代と共にその意義や形式は変わってこようとも、失われず受け継がれてきた文化のひとつであることに変わりは無い。
「民草の大切な神事を血で汚すとは、王族として見過ごすわけには参りません!」
黒い学生服で身を包んだ年若い少女、ルイナ・ラヴ(戦う魔術研究者・f38750)はそれがどれだけ土地の人々にとって大切なものであるかを知っている。例えそこに生きる者達が自身の臣民ではないのだとしても、ルイナはそれらを守るという選択以外は取らないだろう。
「当代の主にして王ルイナ・ラヴの名の下に」
唱えると共に掌から零れた鮮血が固まり、盾の形を成す。ルイナの影から現れた無数の蝙蝠は、彼女に付き従うように辺りを飛び回った。
ルイナがその手に妖刀を握り込むと同時に、エリクシルもその手に太刀を構える。既に他の猟兵によって大きなダメージを負っているにも関わらず、その戦意は失われていなかった。
先に動き出したのはエリクシルだ。未だ燃え盛る炎に包まれた刃が、一瞬でルイナの眼前へと迫る。凝血の盾でそれを防げば、鋼が弾かれる重い音が石段の延びる静かな空間に響き渡った。斬撃は完全に防いだ……その筈だというのに、ルイナの体に鋭い痛みが走る。
「ぐ、うぅぅ……!」
皮膚や肉、骨といった要素を全てすり抜けて、臓腑だけを直接斬られたような不快な痛み。それが、エリクシルの刀に帯びる霊気による攻撃であるとルイナの目が断じた。
(身体が斬り裂かれる……!)
痛みを受け流そうとする間にもエリクシルの猛攻は止まらない。連続で刃を打ち込まれるが、盾で受けようにも透過による斬撃のことを考えると迂闊に防御することもできない。身体能力のみで回避できる攻撃もあるものの、体内の痛みで集中力が乱され、刃先が頬や腕を何度も掠めていった。
だが、防御という手立てを封じられるという苦境に立たされても、ルイナの瞳に諦念の色は宿らない。
「……よろしい、吸血鬼の死合は流血が付き物。しかしこの代償は高いですよ?」
ルイナはそう静かに呟くと腕を大きく振り抜き、それまで身を守るために使っていた盾をエリクシル目掛けて投げつけた。突然の飛来物にもエリクシルは表情を変えることは無い。何を向けられようと全て斬り捨てる。そんな思想を体現するかのように、エリクシルはその手に握っていた太刀を振り下ろし、人を袈裟斬りにするような要領で盾を両断した。だが、それで良い。刃の切っ先がルイナから外れた。そして、エリクシルの脚が止まった。それさえ叶えば意味のある行いだった。
ふいに、先程まで群れで周囲を旋回していた蝙蝠達が騒ぎだす。いつの間にかエリクシルを取り囲む布陣を作っていた蝙蝠達は、只人の耳では捉えられない声を次々と上げた。蝙蝠の群れが生み出す超音波の輪唱は、その場に確かに立っている筈のエリクシルを前後不覚に陥らせる。
その隙を突いて、ルイナは妖刀の力を解放する。紫檀色に輝く妖刀は、夜を支配する王の力。その象徴とも言えた。
「民を護るは我が務め」
この場で出力できる力の全てを残さず妖刀へ集中させる。火力が最大限まで高められたことを物語るように、妖刀『ルイナ』の切っ先は妖しく煌めいた。
「その命脈を断つ!」
エリクシルがルイナの盾を斬り伏せたのと同様に、今度はルイナが刃を振り下ろす。高められた剣気はそのまま鋼に乗り、エリクシルの刃を退けて肩から胴体にかけてを大きく斬り裂いた。
大成功
🔵🔵🔵
シモーヌ・イルネージュ
★
人が楽しんでいる祭りを襲って、強くなろうとするなんて、全く無粋だね。
祭りは自分だけでなく皆で楽しむもんだよ。
神を自称するならば、それぐらい分かれって話だ。
もっとも神とエリクシルは別物か。
でも、強いっていうのは本物らしいね。
強いやつと戦いたいのはアタシも同じでね。
ちょっと付き合おうよ。
黒槍『新月極光』で戦うよ。
向こうの攻撃は太刀と炎か。
焼かれるのは勘弁なので、それをUC【青炎鏡復】で無効化しよう。
これであとはお互いの力量勝負だ。
太刀をサイバーアイの動体【視力】で避けつつも、
槍を小細工なしで【怪力】で押し込んでいこう。
多少の怪我は【気合】と【激痛耐性】でカバーしよう。
「人が楽しんでいる祭りを襲って強くなろうとするなんて、全く無粋だね」
祭りの邪魔をすること、願いへ対する解釈が自分勝手であること。何処を見ても誉められる要素が無い。強いて挙げるとすれば剣一本で猟兵に抗おうとする点のみ合格点、だろうか。シモーヌ・イルネージュ(月影の戦士・f38176)は黒槍『新月極光』を担ぎ、今や弱々しくなった蒼炎の前に立ち塞がる。
曲がりなりにもこの世界の〝神〟を名乗るならば、神事の邪魔をするような真似をするなと言いたいところだが、やめておいた。エリクシルという存在を、決して神とは認められないのだから。
それはそれとして。シモーヌが気にしているのは、敵の〝強さ〟という点において嘘は無さそうだということだ。
「強いやつと戦いたいのはアタシも同じでね。ちょっと付き合おうよ」
シモーヌが黒槍を構え、挑発的に手招きをすればエリクシルも応じるように刃を構える。それで良い、とシモーヌは口角を上げた。
既に大きなダメージを負っているとは思えない速度でエリクシルが間合いを詰めてくる。恐らく、これが最期にして最大出力だろう。まさしく死力を尽くして向かってくるエリクシルを、シモーヌは手慣れた槍捌きで迎え撃った。
敵の太刀筋は達人のそれだ。猟兵でなければ一瞬で斬り伏せられているであろう斬撃だが、黒槍の間合いにはなかなか入ることができない。黒槍は槍とはいえできることは多い。刺突は勿論、薙刀のように横薙ぎに斬り払うこともできるのだから、得意な間合いに持ち込みやすいのが利点だった。
痺れを切らしたようにエリクシルの体の傷から蒼炎が噴き出す。燃え盛った炎、その切れ端のような火の粉が次々と蝶の姿を取り、シモーヌに纏わりついてきた。その羽が掠めた箇所にまるで灼かれるような痛みを覚える。否、実際に皮膚を炎に灼かれ、軽度とはいえ火傷を負っていた。
(なるほど、灼かれるのは勘弁だな)
シモーヌがそれを認識した瞬間、炎の蝶の体が燃え上がる。蒼い炎は蝶自らのものとは異なり、次々と燃え盛ると蝶の群れを焼き払っていった。
「残念だったな。蒼炎はアンタの専売特許じゃない」
シモーヌのユーベルコードによって反射された炎はエリクシルを襲う。ある程度の耐性はあるのだろうが、力を行使する時とは明らかに炎の揺らめきが異なっていた。どうやら、反射した炎のダメージは上手く入っているらしい。
その幸運を逃すシモーヌではない。エリクシルが炎に灼かれ動きが鈍ったところを狙い、黒槍の切っ先を連続で打ち込む。一撃一撃を重く、けれど速く。エリクシルに回避も防御もさせない刺突は、手足を確実に狙い潰してゆく。
エリクシルとて無抵抗ではない。既に体を正常に動かせる状態ではないが、それでもシモーヌの槍の軌道を読んで反撃を仕掛けてくる。太刀で弾かれ、黒槍の一撃分だけが僅かに逸れる。その隙を狙った斬撃はシモーヌの首を狙っていた。咄嗟に黒槍の柄で防ぎ、鍔迫り合いのような押し合いの末にエリクシルの体ごと弾く。
「こうしてやり合うのも楽しいが、そろそろ終いだ」
間合いを取ったところで、シモーヌは黒槍を構え直す。あまり時間を掛けてもいられない。此処を守り切るということは、対峙する敵を倒すということだ。永遠にここに立っていられては困る。
シモーヌは一呼吸に乗せるようにエリクシルとの間合いを詰める。黒槍を振りかぶり、最後の一突きを放とうとすれば、エリクシルはシモーヌが狙う一点を刃で防ごうと構えた。
重く鈍い、鋼同士がぶつかり合う音。そして、砕ける音が後を追った。エリクシルの刀は、怪力を以て押し込んだ黒槍によって折られてしまっていた。
何が起こっているのか、エリクシル自身がそれを把握するよりも前にその姿が砂のように解けてゆく。既に何も握られていない手へ視線を落としながら、蒼炎の蝶は呆然と立ち尽くしていた。
『ああ、我が主よ……これでは足りない。あなたの願いを叶えるのに、これでは』
戦いの間、一切口を開かなかったエリクシルはそれだけ呟く。シモーヌがその言葉を最後まで聞き届けることはできなかった。全てを言い終えるよりも前に蝶は、その場から完全に消滅してしまっていた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 日常
『お祭りに行こう』
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POW : 物怖じせずに現地の人々と交流する
SPD : 出店や屋台を見て回る
WIZ : 祭りの由来や歴史を教えてもらう
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●
一瞬で石段は静まり返る。蝶も火の粉も此処からは失せ、代わりに灯った光が朝日だということに気付いたのは、そのすぐ後のことだ。石段の先の神殿からは先程よりも賑わっている気配が感じられる。人々が祝い、笑い合う声。神楽の音。この小世界の一年と一年の境目を、猟兵達が守り切ったという何よりの証だった。
帰還前に石段を登って神殿を覗いてみれば、そこは予想通りの賑わいを見せていた。神殿の中で、神官に見守られながら新年の祈りを捧げる人もいれば、敷地内に所狭しと並んだ露店で軽食や温かい飲み物を楽しむ人の姿も見受けられる。この日のために作られた舞台で巫女が舞を披露している様子も見えるだろう。
長居できるわけではないが、少しならば祭りを堪能しても良いだろう。自分達が命を懸けて守った者達が紡ぐ時間や文化を、その肌で実感することを咎める者は此処にはひとりもいないのだから。
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ルイナ・ラヴ
ふう、キズだらけですが皆が無事に神事を楽しめたならばがんばった甲斐もあったというもの
祭りに血は似合わない、流血も戦いも、何も知らぬ間々に人知れず民の笑顔を護るのも我々猟兵の使命だもの
でもせっかくですから、このままもう少しだけ、此処で祭り囃子に耳を傾けるのも良いですね
私達が護ったこの平和の唄を
エリクシルの火が
潰えて、辺りに清浄な空気が戻ったのを肌で感じる。戦いの終わりを確信したルイナ・ラヴ(戦う魔術研究者・f38750)は妖刀を納めると、まずは深く息を吐く。冬の空気に触れた呼気が白く淡く漂い、そしてすぐに消えていった。
残念ながら楽勝とは言い切れない。ルイナが自身の姿を見下ろせば、まだ少女らしい細い体は傷だらけになっていた。深手を負わされなかったのが唯一の救いだろうか。ただ、細かな傷ばかりなので、適切な処置さえ施せばこの後の動きに支障は無いだろう。
(祭りに血は似合わない。流血も戦いも、何も知らぬ間々に人知れず民の笑顔を護るのも我々猟兵の使命だもの)
ルイナが守るのは抗う術を持たない弱者達。そして、王としての矜持である。そのどちらをも守れたのだ。例え誰も知らない戦いだったのだとしても、上々の結果だと胸を張って言えた。
グリモアベースへの帰還までそう長く時間は無い。血で汚れていることも思えば、慌ただしく神殿に足を踏み入れるのは不粋と言えるだろう。他の猟兵からの誘いも辞退したルイナは先程まで騒がしかった石段に腰掛け、休憩を兼ねて待機することにした。
(でもせっかくですから、このままもう少しだけ……)
異国情緒溢れる笛と弦、太鼓が奏でる祭囃子に耳を傾ける。軽快な音と楽しげな声。一音一音に耳を澄ませて瞼を閉じるだけで、祭りの様子を想像することができた。例え直接この目で見なくとも、人々がどれだけ幸福な時間を過ごしているか。ルイナの耳を通して、鮮明に伝わってくる。
自然と笑みが零れた。音色と共に唄われる知らない言葉に合わせて、爪先で拍子を取る。人知れず祭りを守った夜の王は、神域の境にて帰還までの短く穏やかな時間を堪能した。
大成功
🔵🔵🔵
シモーヌ・イルネージュ
エリクシルとはいい戦いができたけど、
相手が完全だったら、こっちがやばかったかも。
日々の鍛錬大事だね。
そして、厳しい鍛錬をするために必要なのはその後のお楽しみ!
細やかな楽しみぐらいないと、やってられないし。
今は祭りの邪魔を片付けて、気分も最高!
守ったお祭りの様子も気になるし。
まだ出店があるうちに参加するよ。
まずは腹ごなしに焼きそば行こう。
その後は水飴かな。
スイーツを攻めていこう。
行き交う人の往来を眺めながら、心密かに襲撃から人々を守れた感慨を噛み締めよう。
黒槍の切っ先を一閃振り下ろし、埃を払って納める。エリクシルの気配が完全に消えた石段でシモーヌ・イルネージュ(月影の戦士・f38176)は一息つき、そこでようやく、いつの間にか雪が降り始めていることに気が付いた。
エリクシルとの戦いに不満は無く、自身の動きも最良のものを選べたと自負している。だが、あのエリクシルが手練れであることは少し刃を交えただけでも理解できた。今回の勝因のひとつは、他の猟兵と共闘していたこともある。それが無ければ、ともすれば死んでいたのは自分だったかもしれない。そんな可能性を拭いきれないのもあって、シモーヌは余計に日頃の鍛錬が如何に大切であるかを思い知った。
だが、勝ちは勝ちだ。それ自体は喜んで良いことであり、その褒美を受け取る資格はこの場の全員にある。シモーヌは気持ちを切り替え、喜び勇んで石段を登った。
「細やかな楽しみぐらいないと、やってられないし。今は祭りの邪魔を片付けて、気分も最高!」
強者と戦うという私欲もありはしたが、結果として善行も積んだのだから気分は良い。自分達が死力を尽くして守った人々が、喜色満面で祭りを堪能している様子を見れば尚更だ。神殿に足を踏み入れ、シモーヌはまず露店が並ぶ区画を流し見る。他の世界でもお馴染みのものから、見たことの無い食べ物まで種類は豊富だ。
「うん、まずは腹ごなしに焼きそば行こう」
シモーヌが足を止めたのは何の変哲も無い焼きそば屋だ。見慣れた焼きそばに新鮮さは無いが、キャベツやもやしが鉄板で焼かれる軽やかな音、そして麺に絡んだソースが仄かに焦げる香りは、生活に馴染んでいるがゆえに食欲を強く誘った。
「おじさん、焼きそばひとつ」
「はいよ!」
シモーヌの注文を受けて店主はつい今しがた仕上がった焼きそばを、使い捨て容器へ手早く盛り付ける。鉄ベラで持ち上げられた焼きそばがふわりと纏った湯気は、ソースの香りを辺りに振り撒いていた。
「ネギと青のり、紅生姜はここにあるから好きに乗せてって良いぜ!」
「お。マジで? サイコーじゃん!」
店主の厚意でトッピングを増やしたのなら割り箸を受け取り、近くの腰掛けられそうな段差で休みつつ焼きそばに舌鼓を打つ。食事というものは出来立てで温かいだけでも充分に美味しく感じるものだが、今日はまた格別だ。濃いソースの味、柔らかすぎない麺の歯応え。仄かに鼻を掠める、青のりが放つ磯の香り。どれを取っても箸を止める理由など見当たらず、あっという間に焼きそばはシモーヌの胃に収まることになった。
「さて、次は水飴かな」
矢継ぎ早に次の露店へ。食事を終えたのなら次はデザートだとばかりに水飴屋を目指す。澄んだ透明の水飴が割り箸の先に固められただけのシンプルなものから、林檎や苺、杏といったフルーツを水飴でコーティングしたものまで、選択肢は多い。
迷った末に杏飴を購入して、それを片手に祭りを練り歩く。祭りの装束に身を包んだ子供達が楽しそうに笑い合いながら、石畳の道を駆けてゆくのが見えた。顔見知りなのであろう大人達は口々に新年の挨拶を交わし、昨年の出来事について話したり子供の成長を報告し合ったりと、何処にでもある光景がそこには在った。
見様によってはつまらないほどの日常を眺めながら、シモーヌは杏を包む飴を齧る。この日常こそ、自分達が守ったものであるという事実を噛み締める。此処には戦場のようなひりつく空気は無い。命のやり取りをする際の血の滾りも無い。けれど、それで良いのだろう。彼らが笑いながら、何か変わったことでも起こらないかしら、と冗談を言い合うぐらいがきっと丁度良いのだから。
薄い飴の膜を歯で齧ると、ぱきっと軽やかな音が真白な獣の耳に届く。なんだか今日は一段と小気味良い音に感じられた。
大成功
🔵🔵🔵
ルシア・ナドソコル
【心情】
無事は確保できましたし、せっかくですし楽しんでいきましょう
この辺りは、アマツカグラに近い雰囲気ですね
この雰囲気はにぎやかだけどどこか厳かな趣があって好きです
お米もおいしいそうですし
【行動】
軽く軽食をいただきながら、祭りを楽しみましょう
その際、UCを使用しておいて何か問題を抱えている人が見つかれば、相談に乗れればと
何事もなければそれはそれでよし
後は終わる時間まで、神楽でも見物しながら過ごします
先の戦いにこの人たち気付かせずに済んで良かった
気付かれていたら、ここまで楽しめてはいないでしょうし
この穏やかな時間が続いてくれるのなら何より
この結末が、僕にとっての一番の報酬です
脅威が去り、先程までの張り詰めた空気が解けてゆくのを感じる。ルシア・ナドソコル(自由と冒険を求めて・f39038)は短剣を鞘へ納めると、石段を登って神殿を目指した。予知されたのは一体のエリクシルの出現のみ。恐らく、これで今回の問題は解決した。これ以上、この地を脅かすものは現れないだろう。だからこれは純粋に、縁あって訪れた土地の祭りにルシアが興味を抱いただけのことだ。
「無事は確保できましたし、せっかくですし楽しんでいきましょう」
この土地はどこかアマツカグラに似ている。無数に存在する小世界の中、馴染みの空気感を持つ世界があっても確かに可笑しくはなかった。かの都市国家ほどの規模は無く、慎ましい田舎暮らしをしている者が殆どのようだが、それでも祭りの雰囲気はどこか厳かなものがある。そんな清浄な空気が、ルシアにとっては好ましく思えた。
露店ではあらゆる軽食が販売されている。その中でもルシアの目を引いたのは焼きおにぎりだった。炊いた米を三角形のおにぎり状に整えて醤油を表面に塗り、炭火でじっくり焼いたものだ。鉄の網の下で燃える炭火がおにぎりの表面をじりじりと焼き、醤油部分を香ばしいかおりを放つ焦げ目へ変えてゆく。それ以外には何も手を加えないシンプルなメニューだが、そこが良いところだ。
「すみません。焼きおにぎり、ひとつお願いします」
「はーい!」
店主に声を掛けて注文すると、手渡されたのは簡易的な包みに収まった焼きおにぎりと、おまけの漬物。沢庵、というものらしい。白米とよく合うのだというそれも受け取り、祭りの邪魔にならないよう道の端で包みを開く。今しがた焼き上がったばかりの焼きおにぎりが、ふわりと湯気を上げて姿を現した。焦げ目の香りをダイレクトに伝えてくるそれに破顔しつつ、火傷をしないようかぶりつけば、薄い煎餅のようにぱりぱりとした表面の食感とほくほくとした内側の米が主張をしてきた。合間に沢庵を齧れば、醤油とは異なる程よい塩味が米の甘みを引き立てた。
焼きおにぎりを堪能しつつ、ルシアは道行く人々を誰ともなく眺め渡す。今のルシアの目には、通常であれば見えざる情報が見えている。その人自身しか知り得ないこと、或いは自覚もしていない全て。終焉に繋がりかねない……マスカレイドやエリクシルに付け入る隙を与えるようなものを抱えていないか、それを見ていた。
だが、どうやら杞憂だったようだ。今ここにいる人々は須らく穏やかなもので、綻びを生むような問題を抱えた人物はひとりも見当たらない。重畳、と一人頷きルシアはユーベルコードを解除した。
ふと、神殿中に響いていた神楽の音色が変わる。どうやら、特別に設けられた舞台で巫女が舞っているらしい。神楽と共に巫女が持つ大きな鈴が鳴れば、不思議と周囲の空気が更に清められたように感じた。
人々は舞台の周囲に集まっては各々の新年への想いを胸に、舞いを見物していた。ルシアは少し離れたところでその様子を眺める。神楽の音色に耳を傾け、独特の拍子で舞う巫女の動きを目で追う。こうして緩やかな時間が流れるのも、彼らが戦いの気配に気付かずにいられたからだ。気付かれたとしても、もしかしたら自分達を信じて見守ってくれたかもしれない。だが、その後も警戒をさせてしまうであろうことを考えれば、やはりこれが一番最良だったと言える。
日常を謳歌しているだけの人々に対して見返りを求めるつもりも毛頭無い。彼らは、在ったかもしれない終焉についてなど何も知らなくて良いのだ。
(この結末が、僕にとっての一番の報酬です)
猟兵とは──エンドブレイカーとはそのために戦っているのだから。
大成功
🔵🔵🔵
上野・修介
※諸々歓迎
祭の邪魔にならないよう静かに素早く移動しつつ聖域周囲を探索。
オブリビオンの残滓やオブリビオン以外で祭の邪魔になるような脅威等が無いか、念のため確認。
(……終わったか)
確認完了したら、最低限周囲への警戒は継続しつつも、戦闘態勢は解除する。
「……さて、後はどうするかな」
折角なので神殿を覗いてみる。
(まあ、庭先を騒がせてしまったし、ここの神様に挨拶しとくのが筋か……)
周りの人達を真似て祈りを捧げる様にして、声に出さずに騒がせたことへの謝罪と無事完了したことを報告しておく。
神様への報告が終わったら速やかに帰還する。
エリクシル討伐後、上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)はすぐに神殿には向かわず、石段からも外れた獣道を音も立てずに駆けていた。予知された脅威がエリクシル一体だったとはいえ、何か罠が残されているとも限らない。人の目が届きづらい場所まで見て回り、危険が一切無いことを確認すると、修介はそこでようやく戦闘態勢を解いた。
(……終わったか)
石段が延びる道へ戻ってくると、薄らと雪が積もってきていた。空から静かに降り注ぐ雪は、灯篭の光を受けて細かくキラキラと輝いているようにも見える。風景が美しいだけではない。修介の肌を掠め、流れてゆく氣そのものが清浄な性質を持っているように感じられた。よほど、昔から人々に大切にされてきた土地なのだろう。
「……さて、後はどうするかな」
他の猟兵は祭り会場でもある神殿へ向かったようだ。彼らがいるのなら特別な警戒は必要無いだろうが、念のために周囲に気を配りながら修介も石段を登ってゆく。全ての音が雪に呑まれていったような静けさの中、時折小さな動物の気配だけが感じられた。
神殿へ足を踏み入れると静けさから一変して、賑やかな空気に迎えられる。細かな装飾や衣装等に違いはあれど、人々が起こす活気は何処の世界でも変わらないものだ。露店で買った甘味を味わいながら笑う子供達や、神輿のようなものを囲んで楽しそうに談笑する大人達。それぞれが、今日という日を幸福に過ごしていることは一目瞭然だった。
修介は特に遊び回るつもりは無い。ただ、帰還までの時間を好きに過ごして良いと言われているので、折角だから……と神殿を訪ねることにした。
賑わっている外と比べると、屋内は厳かな雰囲気に包まれている。木を削って組み上げたのであろう、細工の細かい祭壇へ向かって手を合わせ、熱心に祈る人々の姿がそこには在った。
(まあ、庭先を騒がせてしまったし、ここの神様に挨拶しとくのが筋か……)
ここに祀られている神がどのような存在か、修介は知らない。けれど、少なくともエリクシルのように人々の願いを都合の良い解釈で叶えるものとは異なると、確信にも近い認識を抱いた。この地の氣の流れを見ているだけで、理屈ではなく感覚でそう理解することができる。
祈る人々の所作を真似て、修介も祭壇の前で手を合わせる。瞼を閉じ、名も知らぬ神へ胸中で申し述べる。領域を騒がせたことへの謝罪と、害ある者を退けたことの報告。加護を願うようなことはしなかった。それは、この地に生きる力無き人々へ与えられるべきものなのだから。
瞼を開くと、祭壇の細工に囲まれて神像が飾られているのに気付く。人のようにも獣のようにも見える不思議な姿をしたその像が、修介に向けて微かに微笑んだように見えた。
大成功
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