海よ、あなたが紅いのは
●初夏の赤い海
裸足の人々は虚ろな目で波打ち際を行進する。手に手に捧げ持つのは巨大な――鉄の処女をもっと醜悪にしたような――祭具。
天高く掲げられた祭具に拘束されている生贄たちは、全身をゆっくり擦りつぶされていった。祭具に穿たれた無数の穴から血が溢れる。悲鳴が零れてやがて途切れた。骨と肉の屑を吐き出し、代わりに新しい生贄を咥え込んだ祭具を掲げ、終わらない行進を人々は続ける。
ざん、ざん。
さざめくのは波の打つ音だけではない。
それは雨音。紅の雫が水面を打つ音。
細い雨が霧となって海を覆う頃、冷たいはずの海は生暖かい紅に蠢いていた。
●グリモアベースにて
「スプラッタ映画、一人で観れる方ー」
「どちらかといえば監督より役者になって血みどろになりたい方ー」
「ざっくり言って痛いのだいじょーぶな方ー」
ぜんぶOKな猟兵の方だけ残ってください、と或鴉・意味停止音(欠陥品・f13972)は言う。要するにグロテスクな予知を見たので、話す相手を選ぶくらいの配慮はする、ということらしい。
或鴉のかいつまんだ説明によれば、今回の事象は「UDCによる怪異に人間が巻き込まれているようだ」「地域は特定済み」「当該地域での日常を満喫している人間が、神隠しにあったかのように消息を絶っている」というもので、事件としては特段珍しいケースではないだろう。猟奇のりょの字も無い。そこまで話すと或鴉は陰鬱に唇を歪めた。
「当該地域にはその地方で有名な観光ビーチが含まれます。でも、海って普通は青っぽい色のはずですよね? ぼくが視たものは“真っ赤な海”なんです」
血で真っ赤に染まった海。拷問器具を掲げる人々。紅の行軍。
怪談でも語るように、ぽつりぽつりと予知の詳細を詳らかにしていく。
「まだ初夏なので肌寒いでしょうが、海辺で遊んでいればUDCが目をつける可能性は高いですね。おそらくですが、紅い海自体はまだ“怪異”の内側にあるのでしょう。これが外側に溢れてくる前に“怪異”に潜り込んで叩いていただく、というのが今回のプランです」
色々な意味で血を見ることは避けられないでしょうけれど、と申し訳なさそうに付け足して、或鴉は海辺へと猟兵たちを送り出した。
墓異鈍
お久しぶりです、墓異鈍(はかい・にぶる)と申します。少しブランクが空いてしまいましたが、まったり進行で進めてまいりたいと思います。お付き合いくだされば幸いです。
当シナリオですが、【与ダメージ/被ダメージとも】に年齢制限入らない範囲内で【暴力・流血描写】をやるつもりです。ご参加くださった方はそうした描写がお好きな方だと思っておもてなしさせていただく所存ですので、その旨ご承知おきください。
1章は日常パート、2章から怪異内での探索・戦闘になります。
※シナリオ中で他PCさんと連携希望の方は冒頭に「★」、アドリブ盛っても大丈夫という方は「◎」を付けてくだされば書ける範囲で対応いたします(必ずしもご希望に添えないかもしれません、すみません)。特定の方とチームを組まれる場合は、「チーム名」もしくはチーム相手のf+数字5桁の「id」を記載してください。以上、よろしくお願い致します。
第1章 日常
『海を楽しもう』
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POW : 海に入って泳いだり遊んだりする
SPD : 海には入らず他の遊びをする
WIZ : 食事をしたりしてゆったり過ごす
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デナイル・ヒステリカル
★
断片的な情報では事件の全容を掴むことは難しいですね。
しかしこれは放置してよい事態ではない。
まずは上手く懐に入り込まなければ……。
猟兵が居ることを気取られて逃げられては敵いません。
全力で海を満喫しましょう。
ええ、最近暑いなー。とか、そういう事は全く関係ありませんとも!
夏で海!とくれば焼そばです。誰がなんと言おうと焼そばです。
僕の体が炭水化物を求めています!
買い込んだ焼そばとクーラーボックスに入れて冷やしておいたジュースをビーチマットの上に用意し、日差しと海の風を堪能することにしましょう!
デナイル・ヒステリカル(架空存在の電脳魔術士・f03357)の皮膚をじりじりと焼く初夏の日差し。肌を撫でる海風の涼しさが心地よい。エアコンの涼風も快適だが、自然が齎す涼しさには独特の質感がある。
そう、訪れた動機の純度に対する問いなど、 海を満喫するには不要な荷物なのだ。……最近暑いなー。とか、そういう事は全く関係ありませんとも! などと独り言ちつつ、持ち込んだアイテムをお店広げする。
浜に敷くはゴキゲンな柄のビーチマット! そして海にもっとも相応しい炭水化物――即ち焼きそばを2時の方角へ展開! さらにキンキンに冷やしたジュースを10時の方角に展開! これ以上に美しい布陣はあるだろうか? いや、ない。海を満喫する=敵の懐に潜り込めるはず、ということなのだから、合理的に考えても最適な作戦行動であることに違いはない。
ビーチマットの上で早くも結露の滴を垂らしているジュースに口をつけ、体の内側を冷やす感覚にぷはーと息をついた。傍から見れば完全にやや気の早い浜エンジョイ勢である。ある意味では熟練の猟兵らしいムーヴではあるのだが、それを感じさせない全力のノリノリさがいわゆる凄みというもの……なのかもしれない。
成功
🔵🔵🔴
千栄院・奏
血みどろも痛いのもできれば勘弁して欲しいんだけど……必要なら仕方ない、やろうか。
【WIZ】
水着になればともかく私服じゃそれなりに暑いし、海沿いのカフェの日陰席でゆっくり過ごそうかな。
コーヒーとケーキを頼んで持ち込んだ携帯端末で予習? も兼ねてちょっとスプラッターな映画でも見ていよう。
うーん、やっぱり『痛そう』という気持ちが一番最初に来るね。今回のオブリビオンはこういうのを楽しんでるのかな? それともあるいは、必要だから敢えてそうしているだけなのか……。
もし後者なら、私と似たもの同士といえるかもしれないね、ふふ。
日差しはじわりと炙るように暑かったが、日陰に入ればそれなりに涼しい。小さいなりに洒落たカフェのクーラーも冷たすぎない程度に効いていて、これから仕事でなければ観光気分に浸れそうな塩梅だった。千栄院・奏(『スプラッター』・f16527)はカウンターでコーヒーとケーキ(“夏季限定! ラズベリーとクリームチーズのお手製ケーキ”、と札がついていた)を注文する。
直射日光の入らない席に陣取り、大学の講義前よろしく、携帯端末で予習と時間潰しを兼ねてスプラッター映画を流す。
画面の中で人が次々切り分けられていく。ケーキにナイフを入れる。切り落とされた首から血飛沫が勢いよく迸った。切り分けた断面からラズベリーソースがとろりと垂れた。
苦悶の表情と共に死んでいく役者を見つつ、作品の完成度云々以前に、一番最初に来るのはやっぱり痛そうだなという気持ちだ。スプラッター映画はそういうものが楽しい人向けのエンターテイメントだが、さて今度のオブリビオンはそういう手合いなのか、はたまたサスペンスやアクション映画のように作劇の必然性から血を求めるのか。
後者なら似たもの同士といえるかもしれないね、と微笑した唇にケーキの切れ端を運ぶ。甘酸っぱい香りが、潮の匂いとともに鼻腔を擽った。
成功
🔵🔵🔴
ヴィリヤ・カヤラ
★◎
【WIZ】
海が血で赤く染まるって凄いけど、
それだけの血を流すって勿体なさ過ぎるよね。
海と混ざってなくて鮮度も保ってくれるなら、
しばらく吸血に困らないと思うし。
って、思うのはダンピールだからだと思うけど、
やっぱり勿体ないよね。
っと、とりあえずは待たないとだから、
ビーチでも浮かない服の方が良いのかな?
動きやすい私服とパーカーかな。
砂浜にビーチチェアがあったら、
のんびりしながら折角だから赤いもの食べよう、
カキ氷があればイチゴシロップで頼もうかな。
無かったらベリー系のドリンクでも良いかも。
三寸釘・スズロク
★◎
WIZ
いや痛いのダイジョーブかっつーと全然大丈夫じゃねーし寧ろ嫌だケド…
嫌いなんだよな生贄とかそういうやつが。
キレイな青い海が汚されるのもな、ほっとけないっつーか
とりあえずビーチで、潮風を浴びつつ散歩でも
今の所特に変わった様子はなさそーか?
一応電脳ゴーグルに地形情報なんかを入れときつつ
…水着のおねーさん達はこの時期じゃまだそんなに居ねーかなあ。
まあこれからやべーコトが起こるってんなら居ない方がイイか。
海の家的なトコがあれば入って冷えたジンジャーエールでも飲んでたい。
海ってビールとか飲みたくなるけど流石に
赤い海ねえ…サメ映画とかじゃよく見る光景だケドな
今の内に静かな海を楽しんでおくとしますか
勿体無い、とヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)は長い溜め息をつく。眼前に広がる波打ち際のカーブは遠くまで続いており、この領域が紅く染まるほど血が流れるのなら、それは貴い食物の損失に他ならないからだ。紅い色を鮮明にイメージしたからか、どうにも食欲を覚えるのも困りものだった。周囲を見回すと、観光客向けなのだろう、浜辺までテラス席を展開しているカフェが一軒。普段と比べ軽い装いにパーカーという出で立ちでいると、沈んだ気持ちも多少は浮き上がるようだ。折角だから海って感じの甘いものでも食べて、怪異に備えよう――カフェに入り、ふわふわのかき氷に苺&ベリーの果肉入りソースがどっさりかけられた『くれなゐスペシャル』なるメニューを注文する。
同じ頃、ヴィリヤと同様に浜辺を見渡している男がいた。三寸釘・スズロク(ギミック・f03285)は歩きながら、目に入る地形情報を電脳グラスへと記録していく。潮風にも海原にも未だ異変なし、全ての値が通常域だ。できれば痛い思いはできるだけしたくないし、ついでに言えば暑い日差しも避けていたい――あらかた記録を取り終えた後、足は自然と近くにあるカフェへと向かった。カウンターの上方、メニューが掲示してある看板をざっと眺める。ビールが飲みたい……! という気持ちをぐっとこらえ、ソフトドリンク欄を確認する。せめて炭酸を、とジンジャーエールを注文したところで、隣のカウンターにいる人物に見覚えがあることに気づいた。青い髪の女性は、看板に大きく載っている『くれなゐスペシャル』を注文している。
「おねーさん、あの予知聞いてよくそんな真っ赤いの食べれるな……」
と、スズロクは思わず口に出してしまった。
突然声をかけられたヴィリヤは一瞬きょとんとした顔をしたものの、声の主が転送前に顔を合わせた猟兵であることを認めて、やや気まずそうに微笑する。甘党なんだ、という響きに濁した何かが、詮索されるようなことはなかった。スズロクは海に目線を向けて話題を変える。
「静かでキレイな海だよな。ずっとこうだったら観光だけして帰りたいくらいだぜ」
「そうだね。あんなに青いのに……」
一瞬途切れた会話の隙間に、お待たせしました、と店員の事務的な声が挟まる。甘味を手に手に、浜辺のビーチチェアに腰かけて再び海を眺める。
「……痛いのは大丈夫じゃねーんだケドさ、生贄とかそういうやつ、俺は嫌いなんだよ。それで海が汚れちまうのも、ほっとけないっつーか」
スズロクが静かに呟いてジンジャーエールを呷ったまさにその時、真昼の海原が夕闇より昏い紅へと色を変えた。
成功
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シオドリック・ディー
◎お任せ!
このきれいな青い海が、血のように赤く…ですか。ホラーですねえ
まずは、怪異をおびき寄せるためにがんばらねば!
ということで、オレは砂浜で砂遊びしますね!
バケツと、くまでと、スコップとー…
バケツに砂をつめて逆さにドーン、水をかけて固めながら砂山をいくつか重ねてお城をつくります
ふふふーん
UCでガジェットを呼び出して、城の飾りにつかうきれいな貝殻を見つけてきてもらいます
オレが通れるトンネルをあけたり、城壁にヒトデをつけたり
完成してつくりおわったら次は壊す楽しみ!
カイジュウみたいにおもいっきりバーンといきましょう!
陰白・幽
★◎
うーみにやられてのんびりとーおやすみをすごすよー……あれ、何しに来たんだっけ?
とりあえずは浜辺で水遊びー、魚とかもあるかな?色々と探してみよーっと……あ、なんかきらきらするものはっけーん、とりあえず拾ってみよっと。
そのあとはー、海面をバシャバシャーっと蹴ったりして水遊びー。こう、バシャーンって感じで水を飛ばしたいね。
その後もせっかく海に来たから思いっきり遊んでいくよー……
いっぱい遊んで疲れたらニャンマクラー型の大きな浮き輪でプカプカ浮いてゆっくりねむろーっと、おやすみー…………
観光ビーチとは言うものの若干交通の便が悪いそこは、好奇心旺盛な少年たちが遊ぶには十二分のスペースがあった。
胴長猫を模した白い浮輪をお供に海へ向かったのは陰白・幽(無限の可能性を持つ永眠龍・f00662)、波にまだ濡れていない砂浜に飛び出したのはシオドリック・ディー(チョコミルクミント・f03565)。
シオドリックはバケツに熊手にスコップに、道具を総動員して砂いじりにとりかかる。ふふふーん、即興のメロディを口ずさみつつ、城を形作る。城壁の周りにお濠を掘ってから、全体をざっと見たシオドリックは唇を尖らせた。もうすこし派手さが欲しい。飾りを探すため、アームの付いた空飛ぶ目玉型ガジェットを召喚。波打ち際で膝小僧を濡らしている幽にも声をかけ、飾りになるものを探してもらうよう頼む。
浮輪に加えてガジェットをお供に加えた幽は、浜辺の水を蹴り上げながら砂粒の奥に目を凝らす。水滴の乱反射越しに時折見える色に手を伸ばせば、研磨されてすっかり丸くなったガラス片がいくつも見つかった。他にも住人のいなくなった貝殻、誰かの落とし物と思しきイヤリング、留め具の壊れた時計などなど。拾ったお宝はガジェットに渡して、幽は幽で全身で海を満喫する。だぼついた袖で叩くと面白いように水が跳ね回った。水と同じくらい飛んで跳ねると、さすがの幽でも疲れてくる。波音を子守唄に、幽は大きな浮輪へ体をすっぽり嵌めた。呑気な顔の浮輪と同じくらい呑気な寝顔を浮かべつつ、波に揺られながら穏やかな眠りに落ちていく。
シオドリックの方はというと、ガジェットから預かったお宝を使って城の仕上げに入っていた。装飾を施すと、まるで本物のお城のようだ。額にかかった波飛沫をぬぐい、シオドリックは満足げに頷く。
潮位が上がってきたのか、いつのまにか城のお濠まで波が打ち付けてきていた。まさに潮時、これからがお楽しみタイム。
映画さながらのカイジュウらしい雄叫びを上げながら、鉤爪(ショベル)で城を切り崩していく。どーん、ばーんと効果音を入れつつ、千切っては投げの勢いで砂塊を浜へ放る。支柱代わりに立てておいた長い棒切れがぱたりと倒れ、ついに砂のお城は完全敗北を喫した。
破壊の終わった真昼の眩しい砂浜には、貝殻やらガラスやらが少し寂し気に散らばっている。その中に、一つだけ見慣れない形のものがあった。
――桜色をしたやわらかい曲線。それは、人間の耳殻。
いつの間にか足元を濡らす波は、透き通る青から濁った紅に変貌していた。
成功
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第2章 冒険
『邪神祭具発掘調査』
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POW : 肉体労働で貢献、力で全て解決
SPD : 細やかな作業で的確に、罠や妨害を先回り
WIZ : 神秘なら共鳴するかもダウンジングで探す、邪魔者に説得してみる
👑11
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ざん。
刺し貫く音。
ざん、ざん。
打ち付ける雨音。
ざん、ざん 、ざん。
規則的な無数の足音。
ざん。
大きな波が砂を打つ。
飛沫は紅。
猟兵たちの瞬きの間に、海は紅色へ変貌していた。
既に怪異に取り込まれた人間たちは、猟兵に目もくれず生贄――それもまた同じ人間だ――を破壊する儀式を続けている。
血の行列に加わっていない者は、皮膚の破れた手で砂浜を掘り返していた。砂浜から祭具を掘り当てたものは狂喜し、未だ砂掘る者を祭具に食わせて行列に並ぶ。
彼らが砂浜を一度往きて帰るたび、海の紅はその深さを増していた。
その色はあってはならない色。見てはいけない、深淵の紅に染まりつつある色だった。
デナイル・ヒステリカル
◎【WIZ】
僕は初夏の陽気を楽しみにして来たと言うのに、まったく酷い光景じゃありませんか。
潮風を浴びたかったのであって、こんなに血腥い空気は後免被ります。
まずは後遺症が残らない程度に調節した雷の【属性攻撃】を広範囲に放ち、彼らの一見無意味とも思える自傷行為を止めましょう。
僕たち猟兵には効果が無く、彼らの一般市民には覿面に利く。
いったいどんなカラクリかは分かりませんが、少なくとも祭具側から何らかの干渉があることは確かです。
発信しているのならば探知も可能。
少々時間はかかるかもしれませんが、センサーをフル活用して解析と捜索に努めましょう。
デナイル・ヒステリカル(架空存在の電脳魔術士・f03357)の肌を撫でていた風が、遠く輝いていた海が、紅く澱む。折角の食べ物も飲み物も、これでは味気なくなってしまうというものだ。予知で聞いてはいたが、まったく酷い光景である。
電光の速度で威力計算された雷が、血で濡れた砂浜の表面を蒼く光らせながら奔る。猟兵ならば無効化でき、一般人――怪異に取り込まれつつあるとはいえ――には十分に通用する牽制だ。砂を掘り返していた者たち、祭具を掲げ歩く者たちが、それぞれ電気刺激により硬直する。死なない程度に黙っていてくれればそれでいい。
砂浜を掘り起こしていた人間が、手がかりも無く闇雲に事に当たっていたとは考え難い。おそらく祭具の側から何かしら干渉があるのだろう……そう推定したデナイルは、センサーから取得したあらゆる観測データの値を材料に、解析プログラムを走らせる。はたして、砂浜のあちらこちらで海の環境モデルデータからは明らかに逸脱する異音が検知された。人間の可聴域を下回る音の波形は、海から響く遠鳴りのそれに近似している。当たりだ――だがそれは同時に、深淵を覗き込む行為に他ならなかった。正体不明のジャミング。プログラムが大量のエラーを吐き出して落ちる、よりもわずかに早く、デナイルの放った電撃が周囲に埋もれていた祭具を破壊した。
成功
🔵🔵🔴
ヴィリヤ・カヤラ
★◎
【WIZ】
あの掘り出してるのを探せば良いのかな。
まずは周辺の地形を『情報収集』をしつつ
祭具が出て来ている場所に法則性がないか見てみて、
法則性がありそうなら狙って。
特に無さそうなら『第六感』で掘る所を決めてみるね。
もし聞けそうなら祭具を掘ってる人に
何で掘ってるのか聞いてみようかな。
教えてくれるかは分からないけど、ダメで元々だしね。
あと、掘り出した人がいたら犠牲者が増える前に、
【瞬刻】で高速移動して犠牲者になりそうな人を
助けるのは大丈夫かな?
目の前で誰かが死ぬのも、
死なせちゃう人を出すのも嫌だしね。
もし祭具に巻き込まれそうになったら【氷晶】で
壊せるか分からないけど試して全力で脱出をはかるよ。
ヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)が目を走らせた砂浜を電撃が奔り、続いて硬い何かの割れるような音が響く。恐らくは他の猟兵が何かを仕掛けたのだろう。物の割れる音は、祭具の壊れた音か。想起する限り、その音の発された位置に法則性は無く。仕方なくヴィリヤは直感に――ダンピールの直感は、血に関して信頼のおけるものと言っていいだろう――従って、砂浜を慎重に探索する。
澱んだ海水と交じったからだろうか、ひどく腥い臭いのする穴を必死に掘っている一人の女がいた。駄目元で声をかけてはみるものの、返ってきた言葉は凡そ人の言葉ではない。
がり、と硬い音がした。たった今胡乱な音を発した女が絶叫する。その手には、飢えた顎を開いた祭具。
「――――!」
言葉は通じずとも、女がどんな衝動に突き動かされているかは判る。咄嗟に耳飾りを指先で弾き、戦闘時の速度を自身の肉体から無理矢理引き出す。女の細腕にどれだけの力があるのか、内側の棘を剥き出しにした祭具が、大上段から勢いよく振り下ろされた。氷晶――ユーベルコードで造り出した氷を、盾の形に収束させ弾く。一瞬遅れていれば、今頃は顔面から腹部まで切り裂かれ、ずたずたの眼球とはらわたを砂浜に曝すことになっていただろう。怯んだ女の隙を逃さず、重ねて造った氷の刃を盾ごと祭具に撃ち込む。粉々になった残骸を前に、女は虚ろな目でヴィリヤを見上げるばかりだった。
成功
🔵🔵🔴
三寸釘・スズロク
★◎
いきなり来やがった…!何なんだよコレ!?
地獄の何層目かにでも落ちたのか、俺ら
とりあえず怪異に囚われちまってる連中を抑えて
一人でも被害者減らすのが先だよな
【エレクトロレギオン】、俺の可愛いネコ型兵士ちゃん達
一般人に片っ端から纏わりついて取り押さえてくれ
暴れられたら銃床で[気絶攻撃]も
悪趣味な祭具も取り上げて破壊、中にヒトが居たらこじ開けて引っ張り出す
ギリ生きてるかもだし
人形遣いの手は大事なんで痛めたくはねーけど多少のケガは…しゃーない
UDC組織のヒトら近くに待機してんのかな?
救急と保護任せられるといいけど
ああ…ひでー臭いと赤色、目の前がチカチカする…
気を張ってなきゃ「主導権」を奪られそうだ
地獄に色があるならば、こんな色だろうか。昏く燃える炎を思わせる赤黒い海が、ここは既に怪異の内側であることを三寸釘・スズロク(ギミック・f03285)に教える。既にUDCのエージェントが救援に入っていないだろうか――ざっと見渡すが、どうやら猟兵以外に怪異と戦うことのできる人間はいないようだった。
とにかくここは一人でも被害者を減らすべきだ、と考えたスズロクはユーベルコードでネコ型の機械兵士を呼び出す。ネコ達は素早く散開し、乱闘をしている人々に割って入った。押さえつけられてなお暴れる一般人は、通りざまに銃床で殴って気絶させる。手が届く範囲の人間を無力化した後、対処を要するのは既に人を飲み込んだと思しき祭具だ。浜辺に転がっているものの中から、どす黒い液体が漏れている一つを選ぶ。
「多少のケガは……しゃーない、か」
開口部に指をかけると、新たな贄を喰おうとでもいうのか、祭具がひとりでに大きく口を開けた。幸か不幸か、中に囚われた人間にはまだ息がある。背に腹は代えられない。棘の中に手を突っ込み、無理やり祭具から人間を引きはがした。細い糸を引いたような傷が幾条も皮膚に刻まれる。燃えるような痛みが五感を紅く塗りつぶした。視界が揺らぐ、けれど。
「生贄にも操り人形にもまだなりたくねえんだ、俺はなッ!」
自分を、そして傀儡のような人々を叱咤するように、スズロクは吼えた。
成功
🔵🔵🔴
シオドリック・ディー
★◎
うわわ、これがうわさの怪異ですか…
みなさんあんなに……大変です!儀式なんて止めなくちゃ!
掘り出された祭具に向かって、必要以上に傷つけないよう威力を抑えた風属性の【属性魔法】を撃ち【なぎ払い】ひとを捧げようと群がってる人たちを散らします
だめだめ!ストップ!祭具に近づいちゃだめです、手も掴んで引き離します
傷ついてる人にUCをかけて治療できそうなら、やります
動けない方がいれば、持ってきたガジェットに命令して介助させつつ被害者さんたちを浜から離れたとこに避難させます
そんなに血が出て!痛いでしょう、なんでこんなふざけたことを…
しっかりきっちりと、こんなふざけた行為なんてブッ壊してさしあげますから!
血腥い潮風を吹き飛ばすように、ふわりと花のように薫る疾風が吹く。風を踏んで駆けるはシオドリック・ディー(チョコミルクミント・f03565)、祭具を巡って喰らわせあおうと乱闘する人々へ向けて放った一陣の風は、祭具の周囲から人を薙ぎ払った。
「だめだめ! ストップ! 祭具に近づいちゃだめです!」
制止の声を小さな体から張り上げながら、未だ虚ろな目で祭具に這い寄る人間の手を取って押し留める。どうすればこんな負傷ができるのか、骨が見えるほど深く抉られた傷にシオドリックは手当を施す。癒しの力により溢れる血は止まったものの、周囲を見回せば夥しい出血にも関わらず、祭具を手にしようともがいている人間が何人もいた。こうなっては少し手荒になるが、強硬手段を取らざるをえまい。癒しの風をさらに強い勢いで吹かせながら、シオドリックはガジェットに命じて傷ついた人々をできるだけ浜辺から引き離させた。高負荷の処理を走らせたことで機械仕掛けの体が軋るが、構ってはいられない。
――しっかりきっちりと、こんなふざけた行為なんてブッ壊してさしあげますから!――風に乗った呟きは、虚ろな眼差しの人々の耳まで届いた。少年の決意に応じるように、悪意すら嗅ぎ取れそうな風が薫風を喰らい、大気を震わせた。
成功
🔵🔵🔴
千栄院・奏
★◎
行動指針は【POW】
やれやれ、ぞっとしない。ヒーローを名乗る者としては捨て置けないね。
なんの儀式かは知らないけど、放っておいていいことはないだろうし、とりあえず行動あるのみかな。
波打ち際で祭具を掲げ行列に並ぶ人たちのところに乱入、【指揮者たる『スプラッター』】で操る複製型丸鋸飛刃で祭具を破壊しよう。
手加減するとか無傷で制圧するとかは苦手だから、できる人に任せたいとこだね。
行列を複製型丸鋸飛刃に襲わせている間私は砂浜を掘り返す人たちのところにいよう。誰かが祭具を掘り当てたらその人に接近、祭具に他の人を食わせる前に両手の鎖鋸剣で祭具を切り刻むよ。
やれやれ、と千栄院・奏(『スプラッター』・f16527)は肩をすくめた。ヒーローを名乗る者として捨て置ける状況ではない。
波打ち際を紅く染める行列へ、真正面から割って入る。立ち塞がる奏に、祭具を掲げる人々は僅かにたじろぐも、足を止めることはない。
「生憎だが私は手加減が苦手でね」
複製された丸鋸飛刃は、指揮者たる『スプラッター』の一振りで、意思を与えられたかのように踊りだす。これまで幾度も滑る血肉を裂いてきた刃に、錆びた祭具を斬れぬ道理がない。有象無象の掲げる祭具は瞬く間に破壊された。壊れた祭具から半壊した人体が吐き出される。全身にねじくれた穴を穿たれ原型を失っているそれを踏みつけ、行列はなおも途切れない。新たに列に並ぶものがいる限りは――これでは埒が明かないと判断した奏は、たった今砂浜から祭具を掘り当てた人影へ、チェーンソー剣の回転数を上げながら歩み寄った。奏を認識した人影は落ちくぼんだ目に敵意を漲らせ、祭具を振り上げる――奏は二振りの鎖鋸剣を向ける。
「スプラッターというのは、“こう”やるのだよ」
鋸刃が祭具を捉えて唸る。桜花と梅花を振り抜けば祭具は粉々に砕け。
くすんだ血色の花弁が咲いて、散った。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 集団戦
『パープルテンタクルズ』
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POW : 押し寄せる狂気の触手
【触手群】が命中した対象に対し、高威力高命中の【太い触手による刺突】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 束縛する恍惚の触手
【身体部位に絡みつく触手】【脱力をもたらす触手】【恍惚を与える触手】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : 増殖する触手の嬰児
レベル×5体の、小型の戦闘用【触手塊】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
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ざん、ざん、という響きが刹那途切れ。
水塊の砕ける重低音とともに、“海が動き出す”。
砂浜を舐めていた赤い波が蛇の舌めいて捲れ上がり、昏い水底から幾本もの触手が涌き出る。
海の此方が紅いのは。
海の彼方が紅いのは。
底知れぬ悪意の化身、人の血を貪るものが大きく口を開けて其処に在ったからだ。
空までをも赤く染めて、触手の巨塊は身を起こす。
無言の重圧に、空間の方が潰れてしまいそうだった。間違いなくそれは怪異の元凶。
触手は猟兵に向けて鎌首をもたげる。先端は既に無数の棘によって、赤黒く飾り立てられていた。
デナイル・ヒステリカル
まったく……!これからが最盛期だと言うのに、これ以上海へのマイナスイメージを植え付けないでいただけませんか!
海よ、あなたが紅いのは
それは悪意の化身とも思える彼の存在のせいです。
ならば本格的に人々で賑わうシーズンの前に、この不気味なオブジェは撤去しなければなりません!
UC:ノイジーレイニーを展開
戦場に居るのが僕たち猟兵と敵であるオブリビオンだけではないのなら、数を展開する攻撃は打ち落とさなければなりません。
大勢を攻めるは易く、守るは難しい。
小型の触手が生まれる度、槍の雨で串刺しにして本体ごと雷で焼き焦がしましょう。
被害は最小限に留める、敵は必ず倒す。
両方を恙無く遂行してこその猟兵です。
海よ、あなたが紅いのは――
無数の触手からなる赤黒い渦。異界のノイズで悪意をがなりたてる大波。
――その存在のせいだ。
海に触れる娯楽を人々から奪う不気味なオブジェは、撤去しなければならない。これ以上人を傷つけさせることも許さない。
大勢を攻めるは易く、守るは難しい。守るべきものを守った上で、敵は必ず倒す。両方を遂行することが困難であったとしても、それを為すからこそ猟兵なのだ。
自らを引き裂き新たな触手塊を産み出していく醜怪なオブジェを見据え、デナイル・ヒステリカル(架空存在の電脳魔術士・f03357)は“騒がしい雷雨システム(ノイジーレイニー)”を展開する。
槍に化身した電子精霊は嚆矢。ほつほつと降る赤い雨を縫って、無数の触手塊を槍が貫いていく。
マークアップされた座標に、光一筋。赤い空をも白く割り開き。
「対象を、穿て……!」
雷鎚、神の裁きの如し。
空気をも黒く焼き焦がしながら、血の雨に稲妻が閃く。炭化した触手が自壊して増殖するたび、雷はさらに苛烈に降り注いだ。再生が続く限り、焼いて焼いて焼き殺す。
人の鮮血を貪れぬ怒りに、触手はのたうち、異界の波形で絶叫する。高らかな雷鳴は、降り注ぐ轟音をも掻き消した。
成功
🔵🔵🔴
千栄院・奏
★◎
『スプラッター』参上、ばらばらになりたい者から……なんて、言っても言葉は通じそうにないか。
加減が必要な相手でもなければ妙な魔術を使う相手でもない、シンプルにいこう。
【血濡れの『スプラッター』】を発動、押し寄せる触手群を両手の鎖鋸剣による『2回攻撃』で片端から切り裂いていくよ。
触手群の数を減らしていけばこっちが攻撃をもらう危険はその分減るだろうしね。
もし触手群に捕まってもその後にあの太い触手での刺突が来るのは分かってるんだ、体捌きで致命傷は避け、操る丸鋸飛刃で反撃しよう。
砂浜にいた人たちが正気を失っているのは幸か不幸か……こんな光景、見せたくもないし見たくもないだろうからね。
『スプラッター』参上、ばらばらになりたい者から……なんて、言っても言葉は通じそうにないか。
千栄院・奏(『スプラッター』・f16527)は悪役相手の前口上を途中で止めてぼやく。だが、まともなギャラリーがいないなら、それはそれで好都合。なぜならこれより奏でるは血飛沫と鎖鋸の狂騒曲、紅一色のドリッピングによるアートなのだから。
「鎖鋸剣、桜花、梅花……リミッター解除!」
二振りのチェーンソー剣を構えた奏へ、茨のように棘を生い茂らせた触手が殺到する。奏は致命傷を避けながら的確に触手を射程距離に誘い込んだ。脇腹を掠めた棘を切り落とし、上腕に絡みつこうとした棘を踏み込みざまに粉砕する。
いくつもの触手を束ねた刺突すら、紙一重で避けた――奏の銀髪が幾筋か千切れ飛ぶも、触手とて無事ではない。奏の操る丸鋸飛刃によって複数個所に切り込まれ、動きを抑え込まれていたからだ。赤黒い肉塊に、桜梅の一閃が徹る。先端から根本まで裂かれた触手は血反吐を噴いて戦慄いた。
圧倒的な殺傷力に物を言わせた破壊。もはや誰のものかもわからない血液に塗れたその剣舞の主は、“血塗れの『スプラッター』(ブラッディ・スプラッター)”と呼ぶに相応しいだろう。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィリヤ・カヤラ
★◎
アレが今回の怪異の元なんだね。
これ以上被害が増えると困るし全力で潰しにいくよ!
それにこの血の量はやっぱり勿体ないし。
敵の攻撃が厄介そうだから、
動きに注意して『見切り』と『第六感』で
出来るだけ避けるか武器で防いでいくね。
ちょっと燃やすから血の匂いがキツいかもしれないけどゴメンね!
【四精儀】の炎の竜巻を『属性攻撃』も使って
制御しつつ敵にぶつけるね。
複数体を巻き込めたら良いけど確実に倒す方が優先かな。
触手に束縛された人がいたら出来るだけ速く助けに行くね。
黒剣の宵闇を蛇腹剣にして切るか、
届かなそうなら【氷晶】で
触手が切れるか試してみるね。
自分が捕まったら怪我は気にせず
全力で脱出を試みるよ。
産み出した触手塊を束ねた、物量に任せた一撃。下手に絡まれれば厄介だろうが、ヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)にとってはあまりに単純な動きだ。刀身の撓りを活かして弾き、あらぬ方向へ逸れる塊を炎で包んで焼き落とした。浅く吸った空気に混じった血の焦げる異臭が、粘膜を刺激する。これだけの血液を味わうでもなく浪費するように取り込んだそれに対して、形容しがたい感情が、脳裏をちりちりと焼く。この異形を放置すれば、再び無為な血の犠牲を強いることは火を見るよりも明らかだ。半端に切れば傷口から新しい触手が沸いて出る――ならば、徹底的に焼き落とす他にない。四精儀の制御は決して容易ではないが、剣技とのコンビネーションで確実に一塊ずつ始末する。
とはいえ四方八方から間断なく襲いかかる全ては捌き切れず。触手の一本がついにヴィリヤを捉えた。抜け出そうと振りかざした腕が剣ごと、自壊した触手の傷口に飲み込まれる。動きを封じられれば 致命の一撃を受けることは免れない。殆ど脊髄反射でヴィリヤは宵闇――蛇腹剣の顎を開き、研ぎ澄まされた太刀筋で振り抜く。肉の裡に生えた棘が、腕へと突き立てられる激痛。そして、痛みと引き換えに、密度のある塊を切り裂いた確かな手応え。
ぶつり、と。引き裂かれたそれぞれの血肉が混じりあい、赤黒い糸を引く。
「――この地を構成するモノよ、その力の一端を示せ」
蒼く眩く白熱する火焔の渦が、紅の糸を断った。
成功
🔵🔵🔴
シオドリック・ディー
★◎
でたな怪異の親玉め!これ以上犠牲をださないためにも、ここでおまえをギタギタにのしてさしあげます!
UC展開、ガジェット召喚…いっけー!
襲ってくる触手は槍の【なぎ払い】で散らし、敵の急所がありそうっぽい触手塊の中心を目標に攻撃を
ぐるぐるーっと槍を回して触手を巻きとって、体勢を崩してやっちゃいます!
オレに触手が向いたら炎風の【属性魔法】【高速詠唱】で牽制
ダメージは【激痛耐性】でへっちゃらです!男の子は痛くても泣かないのです!
槍の刺突でざくーっとして、炎で炙って…ええい、タコヤキになっちゃえ!
「でたな怪異の親玉め! これ以上犠牲をださないためにも、ここでおまえをギタギタにのしてさしあげます!」
シオドリック・ディー(チョコミルクミント・f03565)は堂々と宣言し、紅の怪異へ武器を向ける。主の戦意に雷鳴で応えながら、“黒き槍騎士(ガジェット)”が傍らに姿を現した。
一人と一騎は襲い来る触手の只中へ駆ける。無数に蠢く触手に槍を回転させながら突き入れ、炎の息吹を吹き込んでやれば、触手塊は内側から膨張して破裂していく。肉風船の残骸に塗れてもなお、シオドリックは攻撃の手を緩めない。否、緩められない。中心目掛けて踏み込んでいくほど、敵の手数も増していくからだ。
繰り出した槍はついに、幾重にも巡る棘の垣根に阻まれた。隙の出来たシオドリックの脇腹を、触手の刺突が貫通する。人間ならば臓腑を溢して死に瀕したであろう傷だが、無機物と魔法科学の子にはただ痛みに相当する信号だけを伝えてくる。激痛に耐えられるよう施された術をもってなお無視できない強度の信号に、シオドリックは奥歯を噛み締めた。
「男の子は、痛くても、泣かないのです……!」
自らを鼓舞して再度槍を構える。止めを刺さんと襲い来る触手をミリ単位の精密さで躱し、逆に触手塊の奥深くまで穂先で貫いた。
「ええい、タコヤキになっちゃえ!」
槍の柄を風が滑り、貫通した孔の断面を焼きながら吹き抜ける。紡がれた炎風は触手を融かしながら、波間に赫を刻み付けた。
成功
🔵🔵🔴
陰白・幽
…………はっ!……寝過ごしてしまったよ〜もう全部終わって……ないみたいだね〜。
うげー、変なのいるけど、あれを倒せばいーんだよね……あいつなら、加減とか考えなくても……もんだいないよね〜
今回は徹底的に敵を倒せば良さそうだし、この棘付き鉄球でボッコボコだよ。
咎龍皇顕現を発動して高速移動で敵の触手をかわしながら鉄球を敵の頭上から叩きつけるように攻撃するよ、一回で足りないなら何回でも鉄球を叩きつけていくよ〜、ボクの怪力があればぶんぶん振り回すのも簡単だよね。
……他者の命を奪うのは生き物の罪かもしれないけど……お前のは気に喰わない……さよなら。
…………はぁーあ、疲れた、後はみんなに任せて寝よーっと。
陰白・幽(無限の可能性を持つ永眠龍・f00662)は空の昏さに目を覚ます。寝ぼけまなこにおぞましい紅い災厄を捉え、ほんの少しの思案ののち、あれを徹底的に叩きのめせばよいのだ、と状況を飲み込んだ。敵は救いようのない明確な悪意だ。徹底的に叩きのめす以外に選択肢は無い。
可愛らしい浮輪の代わりに、棘付きの鉄球を手にする。触手の棘より鈍く光るそれは、内なる龍皇の力を引き出した幽の怪力にも耐える業物だ。
一撫でで肉を擦り潰す鉄球、その軌道を追撃する触手があった。他より素早いそれを巧みに避け、あるいは真空の刃で触れぬままに切り落として幽は舞う。噴出する赤黒い汁すら、はためいた白い衣の裾を濡らすことは叶わなかった。
追い縋る触手をよそに、幽は問答無用で鋼鉄の破壊力を叩きこむ。一回で足りないならば、何度でも。棘に喰い込んだ肉が怪力によって引き剥がされ、まだらな残骸を鉄球にへばりつかせてもなお、事も無げに幽は鉄球を回転させる。
「……他者の命を奪うのは生き物の罪かもしれないけど……お前のは気に喰わない……さよなら」
醜悪そのものである触手塊には、きっと罪の意識すら無かっただろう。ゆえに幽は、ただ別れを告げる。
剛拳の如き鉄球の一撃が触手の懐深く入り、追撃者を根こそぎにした。
大成功
🔵🔵🔵
三寸釘・スズロク
原因はコイツらか…!
刺胞動物的なアレのくせに、一丁前に祭具なんか使うんだな。
曲り形にも邪神の眷属ってか
急いで片付けて救急呼ばねーと…
ここはトランク開けて、『人形』使わせて貰うぜ。
汚れ仕事で悪いケド後は頼んだ。…既に散々血塗れなんで今更か。
『エレクトロワイヤー』スイッチオン、『バーゲスト』起動…
……
起動後即、射程距離まで接近して【首なし人形の戯れ】
敵の触手はできる限り人形に庇わせる
気色悪ィ触手共、大人しく海水だけ吸ってりゃ良かったのに…
そんなに赤が欲しいのか?
望み通りブチ撒けてやるよ、テメェらが鱈腹吸って溜め込んだ血で良ければな。
ついでにフルスピードで一本残らず、ミンチにしてやるよ!!
紅く蠢く触手を睨み、三寸釘・スズロク(ギミック・f03285)はトランクの蓋を開ける。バーゲストと名付けられた機械人形の両腕の鉤爪は、拭い落とせない過去によって紅く穢れている。汚れ仕事で悪いケド後は頼んだ……呟いた独り言は人形に向けてか、あるいは己の内なる別人格に向けてか。
十指のエレクトロワイヤーのスイッチを入れる。バーゲストへのリンクが確立すれば、其処からは機械人形と虚ろなる人格の戦場。“首なし人形の戯れ(バーゲスト・ギャンブル)”、戯曲の幕が開く。
スズロクに突き出される触手を、バーゲストの鉤爪が捉える。踊るようにひらりと人形が回転するまま、触手は斬られて咲く。
「望み通りブチ撒けてやるよ、テメェらが鱈腹吸って溜め込んだ血で良ければな」
回転するたびに刻まれていく傷口へ、スズロクの顔をした誰かが虚ろな声音で囁きかける。
血飛沫は華のようだ。紅い渦のさなかで、絡繰り舞うバーゲスト。人形使いは締めとばかりに、両手を握って空を引き絞った。
「暴れていいぜ……全部、ズタズタに刻んじまえ!!」
まだ海辺でのたうっていた触手が、高速の回転斬撃を受けて挽肉に、それすら許されず血煙に変えられていく。
舞台には、血の雨が水面を打つ、喝采の音だけが残された。
成功
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