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霧烟る狂気の戦艦

#獣人戦線 #UDCアース #クロックワーク・ヴィクトリア #イングランド戦線 #狂気艦隊


「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「獣人戦線のレジスタンスから、ブリテン島上陸計画の支援要請を受けました」
 ブリテン島を本国とし、蒸気魔法文明とUDCの力で多数の植民地を支配する超大国『クロックワーク・ヴィクトリア』。ヨーロッパで活動する獣人レジスタンス達は、これまでにも幾度かブリテン島への上陸を計画していたが、ドーバー海峡に代表される周辺海域はクロックワーク・ヴィクトリアの「狂気艦隊」とゾルダートグラードの「鋼鉄艦隊」がひしめく激戦区であり、安易に踏み込む事はできなかった。

「ですが最近になって、ゾルダートグラード側の艦船数がなんらかの理由で減少しました。数ヶ月前から機械兵士ゾルダートらしきオブリビオンが他世界で確認される事件が起きており、何か関係があるのかもしれません」
 ともあれ、これはチャンスだ。洋上の戦力が手薄になった今なら、あとはクロックワーク・ヴィクトリア側の「狂気艦隊」さえ何とかできれば、ブリテン島に上陸できるかもしれない。レジスタンス達は直ちに計画を実行に移したものの――彼らの力では、島を守護する「狂気戦艦」を攻略することはできなかった。
「敵艦隊を構成する『狂気戦艦』は、蒸気仕掛けの洋館がそのまま海上を進んでいるような、不気味な容貌をしています。これを撃破し、ブリテン島への上陸を可能にするのが今回の皆様への依頼です」
 この依頼を含めた敵艦の撃破数が目標数に到達すれば、以降グリモア猟兵はブリテン島に猟兵を転移できるようになる。これまで未知であった新たな超大国との戦線が開かれるということだ。現地の獣人レジスタンスを助ける意味でも、この依頼は重要な意味を持つ。

「まずは狂気戦艦を護衛する、クロックワーク・ヴィクトリアのオブリビオン部隊を撃破してください」
 ドーバー海峡はブリテン島までの距離が最も近く、ゆえに相手の得意な海戦であっても、そこまで多くの兵を展開する事はできない。本来対峙するゾルダートグラードの艦隊が減少したことでこちらの警戒も緩くなっており、猟兵であれば突破はそう難しくないだろう。
「敵は『キマイラの双刀妖剣士』。超大国の改造によって生まれたオブリビオンで、キマイラとはいってもキマイラフューチャーの種族とは別物です」
 一見すると階梯5の獣人だが、様々な獣のパーツがあべこべになった容姿はまさに合成獣キマイラ。その名の通り剣技を得意とするオブリビオンで、練度は高いが数はそれほど多くない。あくまで戦艦を護衛する最小限の兵力といった様相だ。

「問題は、戦艦に突入した後です」
 狂気戦艦の内部は外観の通り、蒸気機械の入り組んだヴィクトリア調の豪奢な洋館になっており、ビスクドールのような「蒸気人形」達がひしめいている。蒸気人形はこの屋敷のメイドや使用人のように振る舞い、イギリス式のお茶会の支度を整えているようだ。
「さらに戦艦内部には強烈なUDCの反応があり、独自の法則に支配されています。この『紳士淑女の作法ヴィクトリアン・ルール』をクリアしなければ、先に進むことはできません」
 ここで求められるルールは「紳士淑女としての完璧な所作」。イギリス式の茶会のマナーに則って、完璧な振る舞いをして蒸気人形達に認められることが、クリアの条件である。UDC怪物の狂気に統べられたこの戦艦では、他に先に進む方法はない。

「戦艦の最深部は機関部となっていて、そこには『霧と踊る少女』と呼ばれる強力なUDC邪神がいます」
 この邪神は蒸気機械を通して戦艦に動力を提供しており、撃破すれば戦艦を破壊することができる。しかしそれは容易なことではないと、UDCアースで邪神と戦ってきた猟兵なら分かるだろう。加えて彼女は自らを「紳士淑女の作法ヴィクトリアン・ルール」で強化しており、通常の邪神よりも戦闘力が高い。
「霧と踊る少女は『常に紳士淑女らしく優雅に戦う』という決まり事を全ての者に課し、これを満たさない対象は大幅に弱体化します。ですので皆様も、彼女と戦う時は優雅な振る舞いを心掛けてください」
 もちろん、このルールは霧と踊る少女本人にも適用されるため、何らかの手段で彼女の「淑女の作法」を崩すことができれば一気に有利になるだろう。ルールを理解し、利用し、時には逆手に取るのが、この戦いに勝利するコツだ。

「ブリテン島上陸を成功させるための目標撃破数は『5隻』。そのうちの1隻を、皆様にお任せします」
 説明を終えたリミティアは手のひらの上にグリモアを浮かべ、獣人戦線のドーバー海峡上へ猟兵達を送り出す。
 蒸気文明とUDCが支配する異国、クロックワーク・ヴィクトリア。その本国攻略の足がかりとなる重要な作戦が幕を開ける。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回のシナリオは獣人戦線にて、クロックワーク・ヴィクトリアの「狂気戦艦」を撃破し、ブリテン島上陸までの道を切り開く依頼です。

 1章は狂気戦艦を護衛する『キマイラの双刀妖剣士』との集団戦です。
 1体1体の練度はやや高いですが数はそれほど多くないので、早急に蹴散らして戦艦に突入してください。

 2章は狂気戦艦内部を支配する『紳士淑女の作法ヴィクトリアン・ルール』を攻略します。
 ここでは蒸気人形達が開催するお茶会に参加し、完璧な紳士淑女であることを示さない限り先には進めません。マナーはイギリス式のものが適用されるので、優雅な振る舞いを見せて人形達を認めさせてください。

 3章はUDC邪神『霧と踊る少女』とのボス戦です。
 この邪神は「常に優雅に戦う」という『紳士淑女の作法ヴィクトリアン・ルール』を自分含めた全ての者に課しており、満たさない者は大幅に弱体化します。そのため、きちんとルールを守りながら戦う猟兵にはプレイングボーナスが入ります。
 霧と踊る少女を撃破すれば機関部への動力供給が止まり、狂気戦艦は破壊されます。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『キマイラの双刀妖剣士』

POW   :    妖剣双撃
【敵の脆い部分を突き刺す突き 】が命中した敵を【弱体化の呪詛を籠めた斬撃】で追撃する。また、敵のあらゆる攻撃を[弱体化の呪詛を籠めた斬撃]で受け止め[敵の脆い部分を突き刺す突き ]で反撃する。
SPD   :    戦場疾走
【いつでも斬撃を繰り出せる 】姿勢のまま、レベルkm/hで移動できる。移動中は、攻擊が命中した敵に【転倒】の状態異常を与える。
WIZ   :    飛翔連斬
【敵の体勢を崩し、僅かに浮かせる斬り上げ 】で近接攻撃する。低威力だが、対象が近接範囲から離脱するまで何度でも連続攻撃できる。
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フレデリック・モナハン
彼の島への道を拓く好機か。
大陸生まれの私には、老人達の語る悲願は正直ピンとこないものだ。
ともあれ、狂気戦艦とやらには大変興味がある。奥の奥まで探ってやろうじゃないか。

パンツァーキャバリアロックフォールに搭乗、飛行用スラスターを展開し、空から敵艦に接近。
甲板には降りず、海上でホバリング。手の届かない海上から一方的に攻撃させてもらう。
ガトリングガンエメンタールMk-Ⅱを起動、粒子ビームの雨で【制圧射撃】を試みる。

当然、敵もUC使いである以上、何らかの反撃は想定する。
動力炉に【エネルギー充填】、緊急回避用のエネルギーを確保しておく。
玄関先で躓く訳にはいかんのでな。油断なく征くとしよう。



「彼の島への道を拓く好機か。大陸生まれの私には、老人達の語る悲願は正直ピンとこないものだ」
 ドーバー海峡の向こう側に微かに見える島影を眺め、フレデリック・モナハン(ネズミのUDCメカニック・f40592)はポツリと呟く。英国系の軍人一族に生まれ、イングランド奪還を目指す抵抗軍の技術部に所属しているものの、彼が生まれた頃にはもうブリテン島は超大国の支配下にあり、父祖の故郷を目にしたことはなかった。
「ともあれ、狂気戦艦とやらには大変興味がある。奥の奥まで探ってやろうじゃないか」
 そんな彼が本作戦に参加したモチベーションには、技術者としての研究意欲も大いに関わっていた。これまで未知の部分が多いクロックワーク・ヴィクトリアの蒸気魔法テクノロジーに触れるまたとないチャンスだ。これだけでも危険を冒す価値は十分にある。

「『ロックフォール』のとっておき、御覧に入れよう!」
 四脚式パンツァーキャバリア『ロックフォールMk-Ⅳ/Ⅱ』の飛行用スラスターを展開し、フレデリックは空から敵艦に接近する。それは蒸気の霧に包まれた、機械仕掛けの洋館としか呼べぬ奇怪な艦船。クロックワーク・ヴィクトリアの本国を守護する『狂気戦艦』の一艦である。
「敵影確認!」「鋼鉄艦隊からの偵察機か……いや、違う!」
 艦の屋根や庭には護衛を担当する『キマイラの双刀妖剣士』が待機しており、敵の襲来に目を光らせている。主に警戒するのは制海権を争うゾルダートグラードの艦隊だが――最近は活発な動きがなかったところに、猟兵のレジスタンスから攻撃を受けるのは驚きだったようだ。

「手の届かない海上から一方的に攻撃させてもらう」
 フレデリックは甲板には降りず、【空飛ぶ足長おじさん】により形態変化したキャバリアを海上でホバリングさせ、ガトリングガン「エメンタールMk-Ⅱ」を起動する。UDCの粒子加速器官を内蔵しており、実弾ではなくビームを発射する試作兵器だ。
「くっ?!」「このキャバリア……ただの量産機じゃないぞ!」
 上空から粒子ビームの雨を浴びせられたキマイラ部隊は、慌てて回避や艦の防衛を行う。しかし彼女達の武器は刀剣であり、反撃しようにもリーチの差では明らかに不利。フレデリックもそれが分かっているからこそ、海上に留まって高度を下げようとはしなかった。

「舐めるなよッ!」
 しかし「キマイラ」の名の通り、様々な獣人の要素を継ぎ接ぎされた兵士達の中には、鳥類の飛行能力を与えられた個体もいた。彼女らはビームガトリングの制圧射撃を掻い潜りながら肉迫すると、【飛翔連斬】の構えでキャバリアに斬り掛かる――。
「当然、敵もユーベルコード使いである以上、何らかの反撃は想定するとも」
「なにッ?!」「は、疾いっ……ぐわぁっ!」
 だが、フレデリックはこういうケースにも備えて動力炉にエネルギーを充填し、緊急回避用の出力を確保していた。
 戦闘ヘリの如き縦横無尽の機動性を見せる『ロックフォール』に、キマイラ達の双刀は掠りもしない。逆にお返しの粒子ビームを浴びて、あえなく撃墜される羽目となった。

「玄関先で躓く訳にはいかんのでな。油断なく征くとしよう」
 ここでいたずらに戦力を消耗しているようでは、狂気戦艦の攻略など夢物語でしかない。慎重に、最も安全に勝てる戦法をとったフレデリックの作戦は正しかった。彼の愛機の火力とスピードに敵部隊は手も足も出ないまま、少しずつ数を減らされていく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エメラ・アーヴェスピア
私にとって見慣れた物がある、という事で見に来たわ
とはいえ仕事はきっちり済ますわよ?
この先にある国の方も気になる事だし、ね

まぁ、潜入というのならあまり派手にならない方が良いわよね
相手が剣士なら距離を取り続ければ一方的に攻撃できるかしら?
『蒼穹翔るは我が箒』を起動、あとは高機動を生かしてガトリングを撃ち込むだけよ
トドメには箒自体で【砲撃】してもいいわね
あまり時間はかけたくないわ、手早く行くわよ

※アドリブ・絡み歓迎



「私にとって見慣れた物がある、という事で見に来たわ」
 クロックワーク・ヴィクトリアが擁する、海上防衛の要たる『狂気戦艦』。それがUDCの力と組み合わせた蒸気魔法技術の産物と聞いて、エメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫ガジェットアーモリー・f03904)は興味を持った。立場は違えども魔導蒸気機械を扱う技術者として、そのテクノロジーは一度確認しておきたい。
「とはいえ仕事はきっちり済ますわよ? この先にある国の方も気になる事だし、ね」
 ブリテン島を本土とするかの超大国は、伝聞の範疇でもアルダワやUDCアースとの関連性が疑われる。果たしてこの海の向こうにある地では、どのようなオブリビオンによる支配体制が築かれているのか――元UDC職員としても魔導蒸気技士としても、放ってはおけない話だ。

「まぁ、潜入というのならあまり派手にならない方が良いわよね」
 今回の作戦は超大国の海上封鎖に穴を開け、ブリテン島に上陸するチャンスを作ることだ。撃破目標以外からの注目を集めても良いことはないと、エメラは慎重な行動を心がけることにする。ただでさえ、今回の敵国はデータの少ない相手なのだから。
「各部状態良し……発進準備完了、行くわよ!」
 彼女は【蒼穹翔るは我が箒】により召喚した浮遊型魔導蒸気砲を変形させ、騎乗することでドーバー海峡を翔ける。
 そのシルエットは機械仕掛けの箒に乗った魔女のよう。蒸気の尾をたなびかせながら『狂気戦艦』まで接近すると、随伴する「浮遊型魔導蒸気ガトリングガン」が発砲体制に入った。

「あれは、本国の?」「いや、似ているが別物だ!」
 狂気戦艦を護衛する『キマイラの双刀妖剣士』達は、同じ蒸気魔法技術の産物とはいえ、それが味方ではないことを即座に察した。艦には近づけさせまいと、いつでも斬撃を繰り出せる姿勢を取るが――彼女らの刀とエメラの装備では射程に大きな開きがあった。
(相手が剣士なら距離を取り続ければ一方的に攻撃できるかしら?)
 せっかく召喚した箒の高機動を活かさない理由はない。戦闘機さながらの機動性で洋上を飛び回りながら、エメラはガトリングを撃ち込んでいく。金色に輝く砲身より浴びせられる弾丸のシャワーは、いかに剣の達人であっても切り払うには限界があった。

「あまり時間はかけたくないわ、手早く行くわよ」
「ぐぅッ……私たちを甘く見るな……!」
 キマイラ達は【戦場疾走】によってなんとか距離を詰めようとするが、わざわざ刀の間合いに身を晒すほどエメラは迂闊ではない。逆に機銃掃射によって敵の移動先をコントロールし、一箇所に密集させたところで、腰掛けている砲の先端を向ける。
「これでトドメよ」
「不味いッ、回避……」「うわぁぁぁッ!!!?」
 それが単なる乗り物ではないことと示す強烈な砲撃が、キマイラ部隊のど真ん中に着弾し、炸裂する。もともと多くはなかった護衛部隊の戦力は、これにより大きく削られ――敵艦突入前の前哨戦は、早くも猟兵有利に大きく傾いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

暗都・魎夜
【心情】
獣人戦線に来るのは初めてだな
もっと落ち着いた場所に来られれば良かったけど仕方がねえ
こっちの船も沈めさせてもらうぜ

【戦闘】
機動力が高い剣の達人が多数ね
この質と数で全部潰す気で行くと、そりゃ最下層まで体がもたねえか

「天候操作」「高速詠唱」でUCの霧を展開
これなら「地形の利用」で「闇に紛れる」のも簡単だしな

しかしまあ、なんとも不気味な船だぜ

「索敵」しつつ、遭遇しないように最奥部を目指す
会敵したら「グラップル」「気絶攻撃」で速やかに無力化を目指す

この霧の中で低威力の攻撃なんざ怖くねえ
「悪いな、こっちはあんましかまってやれねえんだ」

捕まった捕虜がいたりしないかも「偵察」しておくか



「獣人戦線に来るのは初めてだな」
 ブリテン島上陸作戦のために暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)が転送されたのは、二つの超大国が睨みあう激戦区。片やゾルダートグラードの「鋼鉄艦隊」は最近になって規模を縮小しているが、もう一方のクロックワーク・ヴィクトリアの「狂気艦隊」は健在。この世界でも屈指の危険な海域と言って間違いないだろう。
「もっと落ち着いた場所に来られれば良かったけど仕方がねえ。こっちの船も沈めさせてもらうぜ」
「やらせるものか!」「この艦は我らが守る!」
 戦艦への突入と撃沈を目論む猟兵達を阻むのは『キマイラの双刀妖剣士』による護衛部隊。学生時代から数々の強敵と戦ってきた魎夜が見ても、なかなかの腕前だと分かる。寄らば斬るとばかりに全身に殺気を漲らせ、隙のない二刀の構えを取っている。

「機動力が高い剣の達人が多数ね。この質と数で全部潰す気で行くと、そりゃ最下層まで体がもたねえか」
 まともに立ち会うには負担が大きすぎると判断した魎夜は、天候操作の術を用いた【魔蝕の霧】を展開する。機関が生み出す蒸気と排煙の霧とは異なる、世界を拒絶し歪める「原初の霧」だ。この霧の前でまともに戦うことが出来る者など滅多にいない。
「なんだ、この霧は」「奴はどこに行った?」「ッ、刀が錆びて……!?」
 原初の霧に包まれたキマイラ達は視界を塞がれると同時に、超武器封じのバッドステータスを受ける。これは武器の攻撃力を一時的にゼロにする効果で、回復の難易度が非常に高い。突然の二重苦により敵部隊は混乱に陥り、この隙に魎夜は行方をくらませた。

「しかしまあ、なんとも不気味な船だぜ」
 霧と闇に紛れながら、蒸気仕掛けの洋館の最奥部を目指す魎夜。どうやってこんなモノが船として動いているのか、さっぱり理解できない未知のテクノロジーだ。クロックワーク・ヴィクトリアが誇る蒸気魔法文明とは、なかなか厄介な代物らしい。
「おっと、敵だな」
 移動中も彼は索敵を怠っておらず、なるべく戦闘を避けるようにするが、霧の中とはいえ全ての敵と遭遇せずにすむ訳ではない。迂回するよりも倒したほうが速いと判断した場合は即座に攻撃を仕掛ける。このケースでも霧中の優位性は大いに働いた。

「悪いな、こっちはあんましかまってやれねえんだ」
「きッ、貴様は……ぐぇッ?!」
 奇襲を受けたキマイラは咄嗟に【飛翔連斬】の構えを取ったが、この霧の中で低威力の攻撃など怖くも何ともない。
 なまくらと化した二刀の連撃を余裕で捌ききって、魎夜はグラップルの構えから敵の気道を締め上げ、気絶させる。この一連の流れを終えるまでに、十秒とかかっていない。
「捕まった捕虜はいないみたいだな。先を急ぐか」
 ここまで索敵のついでに館内を偵察してきたが、オブリビオン以外に生き物の姿は見られない。以前ブリテン島上陸計画を実行した獣人レジスタンス達は、無事に脱出できたのか、それとも別の戦艦に囚われているのか――何にせよ、今ここで自分にできることは一つだと、魎夜は足早に移動を再開するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リンカ・ディアベルスター
ブリテン島か…昔は簡単に行けたのに超大国め…
死宝の邪神に取り憑かれる前の事を思い出しながら戦闘体勢に入る

まずは撃ち落とそう
心眼で敵の動きを見ながらクイックドロウの要領で衝撃波を放ち敵を攻撃

狩猟の星神よ、私に力を貸しておくれ!そ〜れ!
UCを発動して超越神速の速さで敵のUCを回避して衝撃波を放ち反撃する

早く狂気戦艦に乗り込まなきゃいけないからね…退いて貰おうか!
概念無限消滅撃の矢弾の雨を放ちを放ち周りの敵を消滅させる

壊滅の星神よ!全てを崩壊させろ!
『壊滅』の星神 ナヌー・ザークを発動して壊滅の力を持つエネルギー弾を放ち敵を連続で攻撃した

紳士淑女の作法か…久しぶりだけど出来るかな?はあ…不安だな…



「ブリテン島か……昔は簡単に行けたのに超大国め……」
 まだ自分が死宝の邪神に取り憑かれておらず、この世界もオブリビオンに侵略されていなかった、遠い昔のことを思い出すリンカ・ディアベルスター(星神伝説を知る開拓者・f41254)。彼女の記憶に残るブリテンは豊かな自然の残る良い所だった。現在クロックワーク・ヴィクトリアの支配下に堕ちたかの地が、どうなっているか知る術はない。
「絶対に許さない」
 静かな怒りを瞳にたたえて、彼女は戦闘態勢に入る。まず攻略すべきはドーバー海峡に展開されたクロックワークの「狂気戦艦」。その護衛部隊である『キマイラの双刀妖剣士』はすでに猟兵の襲来に気付き、敵意を向けてきている。

「まずは撃ち落とそう」
 いつでも斬撃を繰り出せる姿勢のまま、高速で【戦場疾走】するキマイラ達。その動きをリンカは心眼で読み解いて攻撃する。クイックドロウの要領で放たれた衝撃波は、標的の未来位置を正確に捉えており、どんなに速くても避けるのは困難だった。
「クッ、やってくれたな!」
 その攻撃で相手を油断ならない脅威と判断したキマイラ達は、速度を緩めず一斉に斬り掛かる。人数はそれほど多くはないが、よく連携の取れた兵士だ。様々な生物を組み合わせた改造の成果か、身体能力も並の獣人を上回る。だが、それでもリンカの表情に焦りはなかった。

「狩猟の星神よ、私に力を貸しておくれ! そ~れ!」
 陽気な掛け声と共に【『狩猟』の星神 翠嵐】の権能を降ろし、リンカは全てを超越する神速を得る。キマイラ達の【戦場疾走】を凌駕するそのスピードは、もはや肉眼で視認することさえ難しく、敵の双刀はことごとく空を切った。
「早く狂気戦艦に乗り込まなきゃいけないからね……退いて貰おうか!」
「なッ――……!!!」
 直後に彼女は神の力を矢弾の雨に変えて放つ。ひとたび敵に回せば容赦のない狩猟神の性質を反映した矢弾は、命中した標的を概念レベルから消滅させる。何をされたのかも理解できないまま、不幸な敵は「最初から存在しなかった」ように跡形もなく消え去った。

「壊滅の星神よ! 全てを崩壊させろ!」
 さらにリンカはもう一柱、【『壊滅』の星神 ナヌー・ザーク】の権能を発動して畳み掛ける。万物の壊滅を司り、概念や次元さえも滅ぼすとされる純然たる破壊神の力は、漆黒のエネルギー弾となって解き放たれ――射線上にいた敵をことごとく滅殺する。
「「ひっ、うわぁぁぁぁーーーっ!?!!」」
 まだ超大国がこの世界に現れる前に崇拝されていた、古き神々の力。それは現代のオブリビオンには未知の脅威だ。
 定命の者の理解を超えた力の暴威に晒されたキマイラは、恐怖と驚愕の断末魔を叫び、一人残らず死に絶えていく。

「紳士淑女の作法か……久しぶりだけど出来るかな? はあ……不安だな……」
 かくして付近の敵部隊を一掃したリンカは、この先の「狂気戦艦」突入のことを考えて溜息を吐く。一応はマナーの知識も学んだ経験はあるようだが、きちんと実践できるかは別の話。彼女にとってはオブリビオンの兵士より、そちらの方が難敵なのかもしれない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
洋上を征く洋館……なんたる威容、いや、異様か
ともあれここままだルールの適用外、早急に護衛を排除して乗り込む!

【転身・死葬冥妃】で二挺拳銃を携えた黒き軍服の姿に変身
船は使わず、【目立たない】ように【水上歩行】で近付く
防御も反撃も、まずはこちらの攻撃に気付かねば成立しない
上昇した隠密力で必殺の距離まで忍び寄り、魔銃ストラーフを【クイックドロウ】、【呪殺弾】を叩き込む!
何体かはそれで始末できても、他の敵に気付かれる
しかしこの姿は死葬冥妃ペルセポネの加護ぞ在り
こちらの姿を目にした敵に【恐怖を与え】、その刹那に満たぬ隙に死の弾丸を見舞って【蹂躙】する



「洋上を征く洋館……なんたる威容、いや、異様か」
 本来なら航海どころか海に浮かぶはずもないものが、蒸気船の如く悠々と航行している不気味さを、オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は肌で感じ取っていた。外観からして奇怪だが、あの「狂気戦艦」の内部はさらに不可思議な法則に支配されており、常人には正気を保つことさえ難しいという。
「ともあれここままだルールの適用外、早急に護衛を排除して乗り込む!」
 そう言って彼女は【転身・死葬冥妃】を発動し、シスター服から黒き軍服を纏う姿に変身する。その手に携えるのは破邪の聖槍ではなく二挺拳銃「ストラーフ」。持ち主の魔力を喰らい弾丸とする、恐怖を意味する名を冠した魔銃だ。

(防御も反撃も、まずはこちらの攻撃に気付かねば成立しない)
 護衛部隊の機先を制するために、オリヴィアは船を使わずに水上歩行で敵艦に近付く。隠密力を高める冥府の女王の加護のお陰で、遮蔽物のない海上にいてもまるで目立たない。彼女が必殺の距離まで忍び寄るまで、それを察知することのできた者は皆無だった。
「呼応せよ、冥府の女王。死を齎す者よ。御身に宿りし万死の呪詛を、我が双銃に貸し与え賜え――!」
「がッ?!」「ぎゃぁっ!」
 目にも止まらぬクイックドロウから、二挺の魔銃が咆哮する。放たれた弾丸は冥府の力を帯びた呪殺弾と化し、標的に速やかな死をもたらす。着弾の痛みを感じ取った次の瞬間には、『キマイラの双刀妖剣士』達はみな息絶えていた。

「敵襲だ!」「おのれ、よくも……ッ?!」
 初手の連射で数体を仕留めることはできたが、流石に銃声が響けば他の敵に気付かれる。戦友を射殺されたキマイラ達は怒りに燃える目で海上にいる女を睨みつけ――直後、ゾッとした様子で顔色が青ざめる。本人達にも理解できない悪寒が、ふいに背筋を襲ったのだ。
「この姿は死葬冥妃ペルセポネの加護ぞ在り」
 隠密力や速度の強化、魔銃の攻撃力の上昇に加えて、【転身・死葬冥妃】には自身を目撃した敵に恐怖を与える効果があった。冥府に座する女王の霊威が、生命あるものを本能的に恐れさせるのだ。たとえオブリビオンであろうとも、例外は存在しない。

「恐れた時点で、貴様達の負けだ」
「ひッ……――!!!」
 訓練された兵士達が、死の恐怖から立ち直るまでの一瞬の間。刹那に満たぬ隙にオリヴィアは死の弾丸を見舞った。
 せっかくの剣技もユーベルコードも、一度も披露するチャンスを与えられずに、キマイラ部隊は恐怖に凍りついた表情のまま蹂躙されていく。
「冥府で沙汰を待つがいい」
 その死に顔には一瞥もくれぬまま、オリヴィアは眼の前にそびえ立つ蒸気仕掛けの洋館へと向かう。こんな玄関口で足を止めている暇はないのだと、銃把を固く握りしめたまま。『紳士淑女の作法ヴィクトリアン・ルール』が支配する、クロックワーク・ヴィクトリアの真の狂気はこれからだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・フォーサイス
数は少ないけど、少数精鋭。油断しないよ。

残念。それは残像だよ。
相手の攻撃を見切り、自身を量子化してよけるよ。

そして背後から火属性魔法だ。
あせる必要はない。確実に一人ずつしとめさせてもらうよ。

自身の量子化で相手を翻弄しつつ、集中的に一人を狙っていく。

まず、一人目。よし、この調子でいくよ。



「数は少ないけど、少数精鋭。油断しないよ」
 狂気戦艦を護衛する『キマイラの双刀妖剣士』の部隊を見やり、気を引き締めるのはアリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)この艦がブリテン島のクロックワーク・ヴィクトリアにとって重要ならば、その護衛に半端な兵士は配属させないだろう。
「猟兵め。大陸で大人しくしていればいいものを」「斬り捨てる!」
 事実、敵はアリスの到来に気付くと即座に攻撃を仕掛けてきた。いつでも斬撃を繰り出せる姿勢のまま【戦場疾走】で一気に間合いを詰め、二本の妖刀を振るうさまは達人の動きだ。対峙する相手が他の超大国であれ、獣人のレジスタンスや猟兵であれ、彼女らはただ抹殺するのみ。

「残念。それは残像だよ」
「なにッ?!」
 だが、キマイラ達の振り下ろした刀に手応えはなかった。アリスは得意の情報分析によって敵の攻撃を予測し、自分の身体を量子化して回避したのだ。【スピン-統計性の関係の破れファデエフ・ポポフゴースト】と呼ばれるこのユーベルコードは、情報妖精である彼女の得意技のひとつである。
「お返しだよ」
「ぐあッ?!」
 量子の残像が消え去った時、本物のアリスは背後にいる。手のひらから放たれた火の魔法が、無防備な敵を襲った。
 見た目は少女でも、身に宿す魔力は尋常ではない。海上に燃え盛る紅蓮は、たちまち一体のキマイラを包み込んだ。

「あ、熱い、熱いぃぃっ?!」「おのれぇッ!」
 炎を受けたキマイラは悲鳴を上げて悶え、それを見た仲間は再びアリスに斬り掛かる。だがその結果は先ほどとまったく同じものだった。タネが分かっていても量子化による瞬間移動は簡単に対応できるものではなく、闇雲に接近しても背後に回られるだけだ。
「あせる必要はない。確実に一人ずつしとめさせてもらうよ」
 アリスはこのユーベルコードで相手を翻弄しつつ、一人に狙いを絞って攻撃を集中させる。獣人は総じてタフな傾向にあるが、それでも彼女の火力にいつまでも耐えるのは無理だ。限界に達したキマイラ兵の体は、炭になってボロボロと崩れ去った。

「まず、一人目。よし、この調子でいくよ」
「ッ、バカな」「我々がこんな子供に手玉に取られるなど……!」
 戦法がうまくいってもアリスは気を抜かず、最後の敵を倒すまで油断しない。彼女の頭脳はキマイラ達の動きを全て分析し、何通りもの回避と反撃のパターンを導きだしていた。その予測の範疇から出ない限り、どれだけ優れた兵士も手のひらの上で踊る人形に過ぎない――一人、また一人と、狂気戦艦の護衛は数を減らしていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エドワルダ・ウッドストック
【炎心】SPD
アドリブ歓迎

レヴィアの戦艦『サートゥルヌス』に同乗させてもらって参りますわ。
珍妙な形であれ、油断できない相手ですわ。
清導、レヴィア。イングランド解放の第一歩、刻みつけるといたしましょう。
ええ、出撃ですわ!

戦場疾走するキマイラの双刀妖剣士たち。
数が多くないのであれば、弾幕を張れば応戦可能ですわね。
近づかれる前にレヴィアと清導のUCと連携して攻勢に加わります。
聖なる魔弾をお見せいたしますわ!

甲板の上で足を止めて、制圧射撃を叩き込みますのよ!
集まっているところには乱れ撃ち、指揮をとろうとする個体を見つければ狙撃しますわ。
単騎で部隊を相手取れる、猟兵三人がかりの一斉攻撃で突破しましょう!


空桐・清導
【炎心】SPD
アドリブ大歓迎

レヴィアの戦艦の船首に仁王立ち
「アレが狂気艦隊。ホントに館が建ってやがる。
何考えてんだ奴らは?」
一人ぼやくも、エドとレヴィアの様子を見て[気合い]を入れる
「ああ!一隻残らず沈めてやるさ!
いくぜ!二人とも!集団戦だ!」
サンライザー、ツヴァイを構えてUC発動
海域をすっ飛ばしてブリテン島すら眩く照らすほどの光輝を放つ
エドとレヴィアに影響はないが、敵は攻撃すらままならない
すかさず光と[誘導弾]の[一斉発射]、[斬撃波]の雨あられ
一人残らずぶっ倒すぜ!

「支援サンキュー、レヴィア!エドも流石の弾幕だ!
今回は二人の正念場だ。オレも全力で援護するぜ!」
燃え上がる[勇気]で道を開く!


レヴィア・イエローローズ
【炎心】SPD
アドリブ歓迎
「いよいよこの時が来たわね……エド、清導……共に狂気艦隊を撃滅するわよ!」

イエローローズ王国海軍首席艦隊旗艦である磁界戦艦『サートゥルヌス』に二人と乗り込み、艦首にて狂気艦隊を見据えながらUCを起動
「壊してやるわよ……クロックワーク・ヴィクトリア!」
クロックワーク・ヴィクトリアへの敵愾心を感じ、攻撃力を強化
磁界戦艦の砲撃と磁界操作による攻撃の威力を増強させ、オブリビオン兵が肉薄する余地もない制圧攻撃を
斥力エンチャント! エドと清導の攻撃に磁力の斥力を付与し、攻撃力をバフするわ

「あの日、イエローローズ王国が陥落してから……遂に、ここまで来たのね」



「いよいよこの時が来たわね……エド、清導……共に狂気艦隊を撃滅するわよ!」
 かつてクロックワーク・ヴィクトリアに滅ぼされたイエローローズ王国の元王女、レヴィア・イエローローズ(亡国の黄薔薇姫・f39891)。各地に散った生存者達をまとめ上げて臨時政府を築き、祖国奪還のために戦い続けてきた彼女にとって、今回のブリテン島上陸計画は待ちに待った逆襲の機会であった。

「アレが狂気艦隊。ホントに館が建ってやがる。何考えてんだ奴らは?」
 いざ会敵に向けてドーバー海峡を北上する、イエローローズ王国海軍首席艦隊旗艦、磁界戦艦『サートゥルヌス』に同乗するのは二人の猟兵。その一人である空桐・清導(ブレイザイン・f28542)は、船首に仁王立ちしながらぼやく。海上に浮かぶ敵の戦艦は、およそ軍艦どころか船にすら見えず、彼が困惑するのも無理はなかった。
「珍妙な形であれ、油断できない相手ですわ」
 サートゥルヌスに同乗するもう一人の猟兵、エドワルダ・ウッドストック(金雀枝の黒太子・f39970)はイングランド出身の獣人だ。生まれ落ちてよりオブリビオンとの戦いを続けてきた彼女は、クロックワーク・ヴィクトリアの脅威も聞き及んでいる。常人の理解を超えた狂気と蒸気魔法文明の力が、奴らの武器なのだ。

「清導、レヴィア。イングランド解放の第一歩、刻みつけるといたしましょう」
「当然よ。わたくし達はそのために来たのですから」
「ああ! 一隻残らず沈めてやるさ!」
 だが、父祖の地をオブリビオンの手から取り戻さんとする、エドワルダの決意もまた強固なもの。彼女の呼びかけにレヴィアも真剣な眼差しで応え、二人の覚悟を見てとった清導も気合いを入れる。ブリテン島上陸を成功させるため、絶対に「狂気戦艦」を撃沈するのだ。
「壊してやるわよ……クロックワーク・ヴィクトリア!」
 艦上より最初の号砲を放つのはレヴィア。クロックワーク・ヴィクトリアへの敵愾心が【黄薔薇開花・歯車仕掛けへの聖憎】を発動させ、サートゥルヌスに配備された武装の攻撃力を上昇させる。亡国の威信をかけた大鑑巨砲が、憎き宿敵の艦に向けて火を噴いた。

「うわぁッ!?」「あ、あの戦艦はなんだ!」「ゾルダートグラードのものでは無いぞ!」
 砲弾の直撃を受けて大きく揺れる狂気戦艦。それでも轟沈はおろか転覆すらしないのはいかなる技術の為せる事か。
 だが、艦の護衛として乗船する『キマイラの双刀妖剣士』達は平静ではいられなかった。この海域は他の超大国との争いが絶えない激戦区であり、ここまで大規模な割り込みをかけてくる第三勢力など、今までは存在しなかったのだ。
「いくぜ! 二人とも! 集団戦だ!」
「ええ、出撃ですわ!」
「覚悟しなさい!」
 艦と艦の距離が本格的な交戦射程まで狭まると、猟兵達はそれぞれの武器を構える。清導は真紅の機械鎧に搭載された超兵器「サンライザー」と長剣「ヴァイスリッター・ツヴァイ」を。エドワルダは銀の弾丸を装填した軍用ライフルを。そしてレヴィアは乗艦たるサートゥルヌスそのものが武器だ。

「煌めく光輝を身に纏い、ブレイザインは進化する!! コイツがブレイザイン・ブリリアントシャインモードだ!!!」
 敵からもっとも目立つ船首に立ったまま、清導は雄叫びを上げて【赫灼たる超発光纏】を発動。燃え盛る正義の心が光となって、機械鎧「ブレイザイン」から放たれる。その輝きは海域をすっ飛ばしてドーバー海峡の全て――果ては、その彼方にあるブリテン島すら眩く照らすほどであった。
「ッ、なんだ、この光は……!?」「めっ、目が……!!」
 正義の光は悪しき者のみの五感を灼く。味方のエドワルダやレヴィアに影響はないが、敵は目を開けていられない。
 それでも斬撃を繰り出せる姿勢を崩さないのは見事だが、これでは攻撃すらままならないだろう。ヘタに動き回れば自分から足を踏み外すことになる。

「数が多くないのであれば、弾幕を張れば応戦可能ですわね」
 続いてエドワルダが【聖銀弾雨】を発動。甲板の上で足を止めて、安定した姿勢から制圧射撃を叩き込む。その連射速度は機関砲に迫るほどで、ユーベルコードの効果中は弾数も無限。途切れることのない銀の雨が、キマイラの剣士達に降り注ぐ。
「聖なる魔弾をお見せいたしますわ!」
「ぎゃっ?!」「くそっ、どこから……!」
 【戦場疾走】による高速移動を得意とするキマイラも、これだけ強烈な弾幕を張られては近付くことさえできない。
 歴戦の戦闘猟兵は冷静に目標の動きを見極め、集まっているところを乱れ撃つ。『悪意を抱く者に災いあれ』というガーター騎士団の標語通り、彼女の弾丸はオブリビオンに一切の容赦をしない。

「砲撃を緩めるな!」
 そしてレヴィアもサートゥルヌスから砲撃を続行し、敵部隊が肉迫する余地を与えない。「磁界戦艦」の名の通り、彼女の艦は大規模な磁界操作機構を搭載しており、その機能を応用することで攻撃の威力を増強させることもできた。
「斥力エンチャント!」
 彼女はその機構をエドワルダと清導の装備にも付与し、攻撃力にバフをかける。クロックワーク・ヴィクトリアが誇る狂気戦艦を侮るつもりはないが、こちらにも最高の装備と頼れる仲間が揃っている。その力をひとつに結集すれば、敗北のイメージなどまるで浮かばなかった。

「支援サンキュー、レヴィア! エドも流石の弾幕だ!」
 斥力の付与を受けた清導は感謝を伝えつつ、仲間に負けじと「サンライザー」から誘導弾を一斉発射。同時に「ヴァイスリッター・ツヴァイ」から光の斬撃波を放ち、キマイラ部隊に猛攻をかける。雨あられと降り注ぐ真紅の光から、逃げられる者は誰もいない。
「ぐわぁっ!」「だ、ダメだ、敵わない……!」
「落ち着け! 敵は少数だ、冷静に対処すれば……がはッ?!」
 もはや体勢を立て直す暇もなく右往左往するキマイラ達。そんな中でも比較的落ち着いているのはここの部隊長か。
 味方を鼓舞すべく張り上げていた声が、ふいに断末魔に変わる。指揮を取る者を見咎めたシカの狙撃が、彼女の心臓を撃ち抜いたのだ。

「単騎で部隊を相手取れる、猟兵三人がかりの一斉攻撃で突破しましょう!」
 指揮官を潰したエドワルダは高らかにそう言って、【聖銀弾雨】の効果時間が残る限り弾幕を張り続ける。数の不利くらい覆してこそ猟兵、少なくとも彼女は自らの戦場でそれを体現してきた。ここではそんな猟兵が三人も連携を取っているのだ。
「今回は二人の正念場だ。オレも全力で援護するぜ!」
 邪魔をする奴らは一人残らずぶっ倒してやろうと、清導も赫灼たる光で戦場を照らす。燃え上がる勇気で道を開く、いつだって彼はそうしてきた。巨悪に立ち向かう友を助けるのに理由はいらない――それがヒーローの矜持だからだ。

「あの日、イエローローズ王国が陥落してから……遂に、ここまで来たのね」
 志を共にする仲間達の活躍によって護衛部隊は迅速に駆逐され、敵艦内への突入が可能になるのも間もなくだろう。
 屈辱の敗北から雌伏の時を経て、ようやく訪れた反撃の時。今度こそ負けはしないと、眼前にそびえ立つ奇怪な洋館を睨みつけ、レヴィアは拳を握りしめるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

四王天・燦
狂気さえ祓えば豪華客船だな
さーて上手く奪えるかな

可愛い護衛ですこと
剣を向けられては優雅なお茶会とはいかんがね
作法に則り手袋を投げ、神鳴とアークウィンドを抜く
四王天・燦、推して参る

戦場疾走による無駄のない動きは賞賛する
動きが見切れるまでは受け流しに徹するし、斬られて転倒したら素早く軽業でジャンプして立ち上がる
淑女らしからぬ慌ただしい剣って点は苦言を呈しよう

相手が動ならアタシは静
殺気を感じ取り、アークウィンドの投擲で機先を制しましょ
ただ一度だけ踏み込んで怒涛の殺戮剣舞を浴びせるぜ
殺気のお手本とばかりに大声上げて威圧し、怪力で妖刀ごと叩き斬ってやる
チェスト!ってな

礼して手厚く弔うぜ
良い死合だった



「狂気さえ祓えば豪華客船だな」
 洋上を航行する不気味な蒸気仕掛けの洋館――『狂気戦艦』をその目に捉えても、四王天・燦(月夜の翼ルナ・ウォーカー・f04448)は平然としていた。かなり突飛な外観ではあるが、言われてみるとそう見えなくもない。果たしてあの船にはどんな「客」が乗り込んでいるのか。
「さーて上手く奪えるかな」
「させるか!」
 潜入の算段を立てる彼女の前に立ちはだかったのは『キマイラの双刀妖剣士』。様々な動物の特徴を継ぎ接ぎされ、合成獣のようになったオブリビオンだ。彼女らのクロックワーク・ヴィクトリアに対する忠誠心は強いらしく、護衛の任を果たさんと刀を突きつけてくる。

「可愛い護衛ですこと。剣を向けられては優雅なお茶会とはいかんがね」
 勇敢な少女兵士に口元を緩ませつつ、燦は作法に則り手袋を投げ、神刀「神鳴」と短剣「アークウィンド」を抜く。
 仮にも紳士淑女の国のオブリビオンなら、それが決闘の申し込みだと分かるだろう。キマイラの剣士は一瞬驚いたものの、すぐに落ちた手袋を拾い上げて受諾の意思を示した。
「四王天・燦、推して参る」
「名乗る名はない。私はクロックワークの歯車ゆえに」
 ここに決闘の立会人はいない。ゆえに二人の剣士は最小限の言葉のみを交わすと、どちらかともなく斬り掛かった。
 両者ともに二刀流であるがスタイルは大きく違う。燦が大小二刀を使い分けるのに対して、キマイラは同じ刃渡りの刀を両手に持ち、より攻撃的な立ち回りを取る。

「いい腕だ」
 常に斬撃を繰り出せる姿勢を保ちつつ高速で移動する【戦場疾走】による無駄のない動きを、燦は素直に賞賛する。
 この動きを見切れるまではヘタに攻めるのは下策だろう。彼女はしばらくの間は受け流しに徹し、相手の太刀筋を見ることに専念する。
「淑女らしからぬ慌ただしい剣って点はどうかと思うけどな」
「うるさいっ!」
 苦言を呈されたキマイラはカッとなりつつも、剣技の冴えはそのままに攻めを強めてくる。流しきれなかった斬撃が燦のバランスを崩し、転倒に追い込む――しかし彼女は猫のような身の軽さでジャンプし、瞬時に体勢を立て直した。この決闘、そう簡単には決着が付きそうもない。

(相手が動ならアタシは静)
 荒々しい二刀の乱舞を受けきりながら、燦は敵の分析を進めていた。これだけ数を重ねれば、冷静そうな表情の裏に押し隠された、相手の殺気をはっきりと感じ取れるようになる。素肌に突き刺さるような気迫が最高潮に達する瞬間、彼女は左手に持っていた短剣を手放した。
「なッ?!」
 ここにきて初披露となる投擲という技が、相手の虚を突いて機先を制する。その直後、燦はただ一度だけ踏み込んで【四王殺人剣『殺戮剣舞』】を放った。肉体にかかる負荷を無視した動作より繰り出される、怒涛の剣舞がキマイラに浴びせられる。

「チェスト!」
「――……ッ!!」
 殺気のお手本とばかりに大声上げて威圧し、渾身の膂力で神刀を振り下ろす。キマイラも咄嗟に受けの構えを取ったものの――その斬撃は妖刀ごと彼女を叩き切るのに十分な威力を有していた。頭頂よりばっさりと斬り伏せられた少女の体から、真っ赤な鮮血が噴き上がる。
「良い死合だった」
「み……ごと……」
 決闘の作法にならい、勝者への賛辞を口にしたのち、キマイラの剣士は息絶える。燦は彼女を礼して手厚く弔うと、いざ敵の本丸たる「狂気戦艦」に足を踏み入れる。ここから先が本作戦の本番、狂気に満ちた紳士淑女の領域だ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
【旅神】
うーん、英国式の礼儀作法と来たかぁ。堅苦しいのはあんま性に合わねえんだよな。
とは言え、まずは前哨戦を突破しねえとな。いつもの如く怖いけど負けるわけにはいかねえ。

《笛吹き男の凱歌》起動。詩乃と自分の能力を強化。
接近戦に持ち込まれると危ねえな。なんとか〈逃げ足〉を活かして間合いを保つ。
〈目潰し〉〈マヒ攻撃〉も使って、接近をとにかく妨害。
間合いの内側に入られたら、〈第六感〉を活かして〈見切り〉〈オーラ防御〉で凌ぐ。

前線の詩乃には〈援護射撃〉を撃って連携しながら、数を減らすのを優先で。
体勢が崩れたり、ダメージが蓄積した敵に、隙を見て〈スナイパー〉ばりの狙撃でダメ押しを狙う。


大町・詩乃
【旅神】

「紳士淑女の作法」って、どのようなものでしょう?
興味が有りますし、やってみても面白いかも。

でも、まずは目の前の剣士さん達を倒さないと。

《神威発出》発動。
前衛に出て、嵐さんをかばえるようにします。

相手の攻撃は第六感・心眼で予測して、UC効果&見切りで躱しましょう。
相手の数が多いなら天耀鏡の盾受けも使って対応します。
オーラ防御も纏いますよ。

相手のUCに嵌りそうな場合には、空中浮遊・自身への念動力・空中戦で自在に空を翔けて近接範囲から離脱します。

風の属性攻撃・浄化を煌月に宿してなぎ払います!
UC効果&衝撃波・範囲攻撃・鎧無視攻撃を上乗せして、妖刀の力を弱めつつ、まとめて倒していきますよ~。



「『紳士淑女の作法』って、どのようなものでしょう? 興味が有りますし、やってみても面白いかも」
 海上に浮かぶ蒸気仕掛けの洋館を眺めながら、そう呟いたのは大町・詩乃(阿斯訶備媛アシカビヒメ・f17458)。あの「狂気戦艦」の内部ではUDCによる独自のルールが強制されるというが、それ自体は「優雅なお茶会」という穏当なもの。普段は巫女として活動している彼女には、あまり馴染みのない作法だからこそ気になるようだ。
「うーん、英国式の礼儀作法と来たかぁ。堅苦しいのはあんま性に合わねえんだよな」
 一方、世界各地を旅する渡り鳥である鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)からすれば、上流階級の作法なんて使う機会は滅多になく、若干の苦手意識があるようだ。敵艦攻略のためには避けて通れない道である以上、ボロを出さないように気をつけるしかないが。

「とは言え、まずは前哨戦を突破しねえとな。いつもの如く怖いけど負けるわけにはいかねえ」
「はい、まずは目の前の剣士さん達を倒さないと」
 二人の猟兵は気持ちを切り替えて、戦艦を護衛する部隊に視線を向ける。クロックワーク・ヴィクトリアに従属する『キマイラの双刀妖剣士』は、少数ながらも隙のない構えで襲撃者に睨みをきかせている。命に変えても母艦を守る、そんな気迫が伝わってくるようだ。
「クロックワーク・ヴィクトリアに栄光あれ!」「愚かなる敵に死を!」
 彼女達は飛ぶような歩法で距離を詰めると【飛翔連斬】を発動。威力よりも手数を重視した連撃で体勢を崩す気だ。
 これに反応して前衛に出たのは詩乃だ。【神威発出】により自らの神威を誇示しながら、薙刀で敵の刀を迎え撃つ。

「神の威を此処に知らしめましょう」
 クロックワークに蔓延る邪神どもとは異なる、女神アシカビヒメの清浄なる神気。それは神性で劣る者を畏怖させ、攻撃や回避を有利にする。キマイラ達の動きが微かに鈍るのを、第六感と心眼により予測した彼女は、舞を踊るような流麗さで攻撃を躱しきった。
「ありがとな詩乃。接近戦に持ち込まれると危ねえな」
 彼女にかばわれる形となった嵐は、この間に持ち前の逃げ足を活かして間合いを取る。正面きっての殴り合いは苦手だが、遠距離からの妨害や援護は彼の得意分野だ。お手製のスリングショットを構え、相方の後ろから弾丸を飛ばす。

「こいつでどうだ」
「うっ……!」
 狙いすまして放たれた弾丸はキマイラの顔や手足にヒットし、目潰しとマヒを引き起こす。威力は小さくても斬撃の精度を落とせば、せっかくの連撃もただの風車と化すだろう。嵐はすぐさま次の弾をセットしてスリングを引き絞り、その傍らでは道化師が笛を吹き鳴らす。
「魔笛の導き、鼠の行軍、それは常闇への巡礼なり。……耳を塞ぐなよ?」
「ええい、うるさいッ」
 海戦にふさわしい勇壮な旋律に乗せた【笛吹き男の凱歌】が、自分と仲間の能力を強化している。劣勢に立たされた敵側からすれば、煩わしいノイズとしか聞こえないだろう。苛立ちを拭い去るように妖刀を振るうが、その様では嵐を間合いに捉えるどころか詩乃を突破することもできない。

「くそっ! 死ねぇッ!」
「その言葉遣いは紳士淑女らしくないですね?」
 キマイラが繰り出す猛烈な連続攻撃を、時には宙に浮かぶ「天耀鏡」を盾に、時には身に纏ったオーラで防ぐ詩乃。
 多勢を相手取りながらまるで焦った様子はなく、潮風と念動力に乗って自在に空を翔け、斬撃の範囲から離脱する。
「では、まとめて倒していきますよ~」
「なっ……?!」「うわぁっ!!」
 薙刀「煌月」に風の霊力を宿して一閃すれば、浄化の旋風が敵部隊をなぎ払う。【神威発出】の効果も上乗せされたそれは言葉通りの「神風」であり、妖剣士が持つ妖刀の力を弱めつつダメージを与える。この一撃に多くのキマイラは立っていられず、刀を取り落として地に膝をついた。

「ま、まだ……ぐぁッ!?」
「いいや、終わりだよ」
 それでも刀を拾い上げようとするキマイラに、スリングショットの弾丸がとどめを刺す。詩乃の攻撃によって体勢が崩れ、ダメージが蓄積した敵を嵐は見逃さなかった。彼のスナイパーばりの狙撃技術は、ダメ押しの一撃として非常に有効だ。
(ここは数を減らすのを優先でいくか)
 嵐は続けさまに数発の弾丸を放って、ダメージの大きい敵を次々に仕留めた。警戒心の強い彼はこの状況でも反撃に注意し、オーラで身を守っている。怖がりだからこそ研ぎ澄まされた第六感は、奇襲や攻撃の気配を敏感に捉え、決して隙を作らない。

「その調子で頼んだ、詩乃!」
「はい! 嵐さんも援護ありがとうございます!」
 何度も依頼をこなすことで磨かれてきた二人の連携技術は、訓練されたオブリビオンの部隊にも劣らない。その勇姿を讃えるように【笛吹き男の凱歌】が鳴り響き、攻守の間隙を縫うように放たれる射撃が、敵から行動の自由を奪う。そして神風纏いし刃が戦場に吹き抜ければ、血飛沫と悲鳴が波間を揺らした。
「っ……任務、失敗……」「おのれ……!」
 屈辱と無念を表情に浮かべながら、1人また1人と海に落ちていくキマイラの剣士達。その戦力は残り僅かであり、組織的な抵抗力は限界に達しつつある。この前哨戦も終わりが近い気配を感じながら、二人の猟兵は油断せずに攻撃を続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
洋上に浮かぶ洋館とは
なんとも異様な光景だね
この世界でもUDCが悪さしているなら
何とかしないとね

狂気戦艦へは鉑帝竜で移動するよ
自分で空を飛べないわけじゃないけど
突入に備えて外での戦闘は
使い魔に手伝って貰おう

まかせるのですよー

戦闘を開始したらUCを使用
海上を飛びながら金属粒子のブレスを放ち
敵を白金の彫像に変えてしまおう

とても比重の重い金属だから
すぐに空を飛ぶのが難しくなるよ

うみにしずみたくないなら
おとなしくちょうぞうになるのです

数が少ないのが災いしたね
引き撃ち気味に立ち回って
相手が近接攻撃が届かないように攻撃

当たったところで低威力で抜けるほど
柔な装甲では無いんだけど
油断しないに越した事はないからね



「洋上に浮かぶ洋館とは、なんとも異様な光景だね」
 推進機関すら定かでないまま航行する「狂気戦艦」を、静かに眺めるのは佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)。彼女の目から見てもそれは奇妙としか言いようがなかったが、アレを動かす力にはUDCが関与しているという。UDCアース出身であり、事故により邪神との融合体となった彼女は、その危険性をよく知っている。
「この世界でもUDCが悪さしているなら、何とかしないとね」
 蒸気魔法文明とUDCを擁する超大国、クロックワーク・ヴィクトリアの侵略を阻むため、彼女は狂気戦艦に向かう。
 乗騎とするのは試製竜騎「鉑帝竜」。召喚した使い魔の飛竜型装甲にコックピットと兵装を搭載し、飛行機のように仕立てた式神である。

「自分で空を飛べないわけじゃないけど、突入に備えて外での戦闘は使い魔に手伝って貰おう」
『まかせるのですよー』
 とある帝竜をモデルにした式神は、陽気な少女の声音で晶に応える。常識外の飛行速度であっという間に敵艦を射程に捉えた彼女は、口から金属粒子のブレスを放つ。傍目には美しい白金の奔流は、その実恐ろしい性質を秘めていた。
『これより全てを覆い尽くすのです』
「なッ……回避ー!!」
 これを見た『キマイラの双刀妖剣士』達は即座に回避行動を取ったが、逃げ遅れた何名かがブレスに巻き込まれる。
 金属粒子を浴びた彼女達の肉体は組成を改竄され、白金の彫像に変わる。視界に映る全ての存在を【帝竜の領地】とする、それが鉑帝竜のユーベルコードだ。

「とても比重の重い金属だから、すぐに空を飛ぶのが難しくなるよ」
 ブレスの直撃を受けなかったキマイラにも、ユーベルコードの影響は出始めていた。即座に全身金属化するほどではないが、四肢や翼が固まれば動きは鈍くなる。特に海上という足場の少ない戦場で移動ができなくなるのは致命的だ。
『うみにしずみたくないなら、おとなしくちょうぞうになるのです』
「くっ……冗談じゃない!」「その前に、貴様を仕留めれば……!」
 脅迫めいた警告を受けても、戦意を失わなかったのは流石と言うべきか。敵は自分達が動けなくなる前に元凶である鉑帝竜と晶を倒すつもりだ。ひとたび白兵距離に接近さえできれば、彼女らの妖刀は今だに十分な脅威になるだろう。

「数が少ないのが災いしたね」
 しかし晶もそれは見越している様子で、引き撃ち気味にブレスを放ちながら、相手の近接攻撃が届かないように立ち回っている。ただでさえ向こうの速度は金属化の影響で鈍っているのだ。包囲でもされなければ鉑帝竜が追いつかれる道理はない。
(当たったところで低威力で抜けるほど柔な装甲では無いんだけど、油断しないに越した事はないからね)
 こんな所で手傷を負ってはいられないからこそ、リスクは最小限にした戦法を取る。ここまで対策を徹底されてしまうと、もはや敵には一切のチャンスがない。【飛翔連斬】の間合いまで必死に迫ろうとするキマイラを迎撃するのは、無慈悲な白金のブレスであった。

「そんな……」「い、嫌……助け……」
 かくして晶達の前に立ちはだかったキマイラ部隊は、一人残らず海中に没するか、無念の表情のまま彫像と化した。
 もはや護衛する戦力はいない。伏兵が残っていないことを確認すると、晶は鉑帝竜の高度を下げ、敵艦への着陸体勢に入った――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『紳士淑女の作法』

POW   :    気合と根性の一夜漬けで何とか作法を覚えて来る。

SPD   :    細かいミスをさりげなくごまかす。

WIZ   :    一分の隙もなく完璧なマナーと所作を披露する。

👑7
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 護衛部隊のオブリビオンを撃破し、「狂気戦艦」内部に突入した猟兵達。
 外観の通り、そこは産業革命期のヴィクトリア朝を思わせる洋館となっており、豪奢な建物の各所には蒸気を巡らすパイプや見たこともない機械が設置されている。

『……ヨウコソ イラッシャイマシタ』
『オ茶会ノ 時間デス』

 そして、この洋館の中で働く使用人たちは全て、ビスクドールのような蒸気仕掛けの人形だった。
 彼らは寸分の乱れもない美しい所作で、館内の一室に茶器や茶菓子を運んでいる。
 湯気とともに香るほのかな甘さは、まさしく英国式のお茶会をイメージさせるものだ。

『ドウゾ ゴユルリト オクツロギクダサイ』

 蒸気人形達はそう言って猟兵をお茶会のフロアへと誘う――歓迎されているようだが、同時に監視されている。
 狂気戦艦を支配する『紳士淑女の作法ヴィクトリアン・ルール』はもう始まっているのだ。このお茶会は先に行くためのテストという事だろう。

 英国式茶会のマナーに則って、紳士淑女としての完璧な所作を実践しなければ、ここから先には進めない。
 蒸気人形を倒して強行突破しようとしても、おそらくは無駄だ。この空間を支配するのは物理法則ではなく、狂気に満ちた邪神と蒸気魔法の力である。

 果たして猟兵は人形達に認められる『紳士淑女の作法』を披露できれるのか。
 優雅なお茶会に見せかけた、狂気のステージの幕が開く。
エメラ・アーヴェスピア
あら?思ったよりは自由にできそうね
まぁやる事は変わらないわ
ちゃんと突破出来れば良いのだけれど

服装も加点対象なのかしら?私の場合は気にしなくていいとは思うけれど
とはいえ中身はただの一般人、社会人としては兎も角、しっかりとしたお茶会のルールはさすがにわからないわね
と言う訳で、私はズルをさせてもらうわ
『CODE:Observer』で【情報検索】【情報収集】、結果をバレない様に「サイバーコンタクト」に映し出す、と
英国式というのならUDCの情報を検索すれば普通に手に入るでしょう
後は飲み食いする物に何か仕込まれていないかだけは気を付ける、と
まぁゆっくり…はできないのよね、残念だわ

※アドリブ・絡み歓迎



「あら? 思ったよりは自由にできそうね」
 狂気戦艦の内部に入っても、エメラの心身に体感できるほどの異常はなかった。行動や発言が制限されるような感覚もなく、艦内にいる蒸気人形もこちらを案内するだけで危害を加えてはこない。逆に、自由を与えられた上で一挙一動を監視されていると考えるべきだろうか。
「まぁやる事は変わらないわ。ちゃんと突破出来れば良いのだけれど」
 彼女は呼吸を整えて、用意されたお茶会のフロアに進み出る。ここから先は『紳士淑女の作法ヴィクトリアン・ルール』に従わなければ何が起こるか分からない。武力では解決できない緊張感と、優雅な光景とは裏腹の不気味な雰囲気が、この場を満たしていた。

「服装も加点対象なのかしら? 私の場合は気にしなくていいとは思うけれど」
『トテモ 素晴ラシイ オ召シ物デス』
 時計の装飾をあしらったドレスに身を包むエメラの装いは、アンティーク人形のように可憐かつ、クロックワーク・ヴィクトリアの様式にもよく似合っており、蒸気人形からも賞賛の言葉が出る。服装ひとつで即アウトになるほど厳しいドレスコードは無いようだが、やはり相応の格好はしたほうが評価は高いようだ。
(とはいえ中身はただの一般人、社会人としては兎も角、しっかりとしたお茶会のルールはさすがにわからないわね)
 ボロが出ないようゆっくりとした足取りで、ひとまず椅子に座るが、ここから先はなにが正解なのかよく知らない。
 かと言って、紅茶に手もつけないままじっとし続けていれば人形も不審に思うだろう。露骨に見られてはいないが、注目が集まっているのを感じる。

(と言う訳で、私はズルをさせてもらうわ)
 エメラは密かに【CODE:Observer】を起動し、英国式茶会のマナーに関する情報を検索。彼女が開発した情報収集用プログラムは、膨大なデータの海から適切な情報を迅速にかき集め、結果を「サイバーコンタクト」のレンズに映し出した。
(英国式というのならUDCの情報を検索すれば普通に手に入るでしょう)
 これなら周囲にバレることなく、堂々とカンニングができる。まずは検索結果の通りにティーカップを持ち、音を立てないように紅茶を一口。人形達の反応はないが――気配が幾分か和らいたように感じるので、この作法で正しかったようだ。

(後は飲み食いする物に何か仕込まれていないかだけは気を付ける、と)
 検索に使ったプログラムを周辺情報の解析に回しても、紅茶や茶菓子から毒物の反応は検出されなかった。フロアにある調度品や茶器はどれも立派で、使っている茶葉も淹れ方も一流のものだと一口で分かる。こんな場所でなければ、非の打ち所のないお茶会だ。
「まぁゆっくり……はできないのよね、残念だわ」
 用意された茶と菓子をほどほどに味わったのち、エメラは席を立つ。すると入ってきたのとは逆側の扉がひとりでに開いた。どうやら『紳士淑女の作法』に認められたと思って良いだろう――より強まる狂気の気配を感じつつ、彼女は狂気戦艦のさらに奥へと向かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リンカ・ディアベルスター
久しぶりにやるか…苦手何だよな英国式茶会ってさ
優雅にゆっくりと席に付く前に指定UCを発動した(失敗した時に回避する為である)

まずは利き手でティーカップを持つ
(この時、持ち手に指を通さず摘むようにして持つ。親指と人差し指でハンドル部分をはさみ、中指を添えてホールドする)


そして音を立てずに紅茶を飲む
(うぐっ…この作法は気を使うから嫌いだよ…)

い…いただきます
次はスコーンを食べる
一度自分のお皿に取り分けてから、手で食べやすい大きさに割って食べる
ナイフはクリームとジャムを塗ってから食べます。

作法が合っていた場合
何とか出来たか…面倒くさい

作法を間違えた場合
だから嫌だったのに…
敵の攻撃を心眼で見ながら回避



「久しぶりにやるか……苦手何だよな英国式茶会ってさ」
 目の前に用意された立派なお茶会のテーブルを見て、リンカはやるしかないと覚悟を決めた。もし失敗した時に何かあっても回避できるよう、人形の目を盗んで【『狩猟』の星神 翠嵐】を発動しておき、優雅にゆっくりと席に付く。
『ドウゾ ゴ堪能クダサイ』
 使用人の格好をしたビスクドール風の蒸気人形は、滑らかな所作でティーポットからカップに紅茶を注ぐ。歓迎してくれているように見えるが、もし客人が『紳士淑女の作法ヴィクトリアン・ルール』に反する行いをすれば、彼らがどうするかは想像に難くない。椅子のクッションは柔らかいのに、まるで針のむしろに座っているような緊張感だ。

(まずは利き手でティーカップを持って……)
 この時、持ち手に指を通さず摘むようにして持つのが、昔ながらの茶会マナーでは上品とされている。親指と人差し指でハンドル部分をはさみ、中指を添えてホールドすると、リンカは音を立てないよう気をつけて紅茶を口に運んだ。
(うぐっ……この作法は気を使うから嫌いだよ……)
 どんなに高級な茶でも、この緊張感ではまともに味わう余裕などないだろう。彼女の作法を見た人形達は何も言わなかったが、襲ってもこないのでひとまずはセーフと解釈する。ほっと安堵の息でも吐きたいところだが、まだお茶会は終わっていない。

「い……いただきます」
 次にリンカはお茶請けに用意されたスコーンをいただく。まずは一度スタンドから自分の皿に取り分けてから、手で食べやすい大きさに割って、ナイフでクリームとジャムを塗ってから食べる。内心は苦手意識でいっぱいにも関わらず、傍目から見たその所作は非の打ち所なく優雅だった。
(……これでいいかな?)
 十分に紅茶と茶菓子を味わうところを周囲に見せてから、失礼にならないようゆっくりと立ち上がってみる。ここで最悪の場合、蒸気人形が一斉に襲いかかってくるケースまで彼女は想定していたのだが――人形は静かに佇んだまま、館の奥に通じる扉が音もなく開いた。

「何とか出来たか……面倒くさい」
 万が一に備えた『狩猟』の星神の心眼も、幸いにして活かす機会もなく、リンカは胸をなで下ろしながら先に進む。
 お茶会のフロアを抜けた先はより深い狂気に包まれており、禍々しい「何か」の気配をずっと奥のほうから感じる。
「まだ気は抜けない……か」
 もう懲り懲りだと言いたいところだが、残念ながら『紳士淑女の作法』はこれで終わった訳ではない。この戦艦を撃沈するまでに、もう一度試練が立ちはだかるだろう――脳内でマナーの記憶を掘り起こす、彼女の足取りは重かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

暗都・魎夜
【心情】
『紳士淑女の作法』、普通に考えりゃとんでもないトラップだな
普通、攻め落としに来る殺気立った兵士がこんなものに対応できるはずはねえ
だけど、こういうものに対応するのは、むしろ得意分野なんだよ

【行動】
イグニッションカードから取り出したタキシードに「変装」

くつろぎながらも姿勢は崩さずに「礼儀作法」を見せる

お茶や茶菓子に対しては、自分からがっつかずに、勧められてからいただく

その際も、皿やカップの持ち方はマナーに沿ったやり方で

うちの世界じゃ、ゴーストの特殊空間で妙なルールを強いられることなんて珍しくねえ
こういう状況にすぐに対応できてこそ、一人前の能力者ってことさ



「『紳士淑女の作法』、普通に考えりゃとんでもないトラップだな。普通、攻め落としに来る殺気立った兵士がこんなものに対応できるはずはねえ」
 傍目にはおかしな光景に見えるかもしれないが、だからこそこの現象は罠たりうるのだと、魎夜は冷静に敵の狙いを評価していた。おそらくは獣人レジスタンス達も、この突然の『紳士淑女の作法ヴィクトリアン・ルール』に対応できず、撤退を余儀なくされたのだろう。
「だけど、こういうものに対応するのは、むしろ得意分野なんだよ」
 彼はイグニッションカードからタキシードを取り出し、この場にふさわしい格好へと瞬時に変装する。銀誓館学園に在学中の頃、銀の雨が降る時代シルバーレインからの経験の賜物だろうか。いきなりお茶会のフロアに通されても、動じる様子はまるでなかった。

『コチラノ席ニ ドウゾ』
「ありがとう」
 ビスクドールめいた蒸気人形の使用人に案内され、お茶会の席につく魎夜。くつろぎながらも姿勢は崩さず、きちんとした礼儀作法を見せている。目の前にはティーカップと茶菓子の皿が用意されているが、すぐには手を伸ばさない。
『ドウゾ オ召シ上ガリ クダサイ』
「では、いただこう」
 自分からがっつかずに、人形に勧められてからいただく。その際も皿やカップの持ち方はマナーに沿ったやり方で。
 控えめな態度を見せつつ、作法も完璧。普段はワイルドな印象のある魎夜だが、今の振る舞いはまさに紳士そのものであった。

(うちの世界じゃ、ゴーストの特殊空間で妙なルールを強いられることなんて珍しくねえ)
 地縛霊と呼ばれるゴーストの一種は、自分のテリトリーをある種の異空間に変化させ、侵入者への罠として利用することがある。他にも様々な特殊能力を持つゴーストとの戦闘経験は、奇怪な状況に対する魎夜の対応力を高めていた。「英国式の優雅な茶会マナー」くらい、直接的な危険がないぶん楽な部類だ。
『…………』
 蒸気人形達は魎夜の所作のひとつひとつを無言で見ていたが、彼はカップの紅茶を飲み干すまで、一切ボロを出さずに完璧な紳士を演じきった。戦艦の奥へと続く扉が、ゆっくりと音を立てずに開く。どうやら、この場は認められたということだろう。

「こういう状況にすぐに対応できてこそ、一人前の能力者ってことさ」
 関門をクリアした魎夜は得意げな笑みを浮かべて席を立つ。まだタキシードは脱がぬまま、目指すは戦艦の最奥だ。
 この艦を『紳士淑女の作法』の狂気で満たした元凶を倒さねば、狂気戦艦は沈まない。漂ってくる不気味な気配が、彼の闘志を奮い立たせるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四王天・燦
先ずは作法に則った服に着替えさせて欲しいと申し出る
更衣室で妖狐夢色変化でお貴族さまノーブル・燦になぁーれ

基本はお貴族様に扮して振舞うとするぜ

ドールを呼び止め手土産として和菓子の詰め合わせでも渡しておこう
名乗って、ご主人様によろしく伝えておいてくれってな
挨拶は作法の基礎ってのは万国共通っしょ
武器携帯が拙ければ預けるよ

毒などの無作法の類は疑わない
お上品にケーキと紅茶を戴いて…
何だか退屈を感じちゃうね

ドールに主人のことを聞いたり、逆にアタシの身の上を話してもいい
談笑のないお茶会なんて楽しくないや
何ならドールを通して船の主とチェスでも打ってみたいね

お茶会が終われば礼を言って楽しかった旨を伝えるぜ



「先ずは作法に則った服に着替えさせて欲しい」
『……デハ 此方ニ』
 お茶会に参加する前にそんな申し出を行って、蒸気人形達から更衣室へと案内された燦。彼女はそこで【妖狐夢色変化】を発動し、望みの職業・年齢へと自分自身を変異させる。妖狐と言えば「化ける」ものだが、まさにその風評を象徴するようなユーベルコードである。
「アキラキラキラ・マジカルピュア――お貴族さまノーブル・燦になぁーれ」
 魔女っ子めいた呪文と共に、服装も変身に合わせて変化し。いかにも社交界にいそうな貴族の装いとなった彼女は、微笑みを浮かべて更衣室から出てくる。格好のほうはこれで完璧だが、『紳士淑女の作法ヴィクトリアン・ルール』を正しく攻略できるかは、本人の中身にかかっている。

「本日はお招きいただきありがとう。ささやかだけど、これは手土産に」
 席につく前に、燦は近くにいる蒸気人形を呼び止め、持参した和菓子の詰め合わせを渡しておく。いくら国によってルールやマナーが違っても、挨拶が作法の基本になるのは万国共通だろう。招待の礼として土産を持ってくるのもまた同様である。
「アタシの名前は四王天・燦。ご主人様によろしく伝えておいてくれ」
『承リマシタ』
 人形は和菓子の包みを受け取り、恭しく一礼しながら下がる。それを待ってからようやく燦はお茶会の席に座った。
 目の前にあるのは高級感ただようティーセットに、紅茶と茶菓子の数々。毒などの無作法の類は疑わない。ここが客人のマナーを試す場であるのなら、そんな仕込みに意味はないからだ。

(何だか退屈を感じちゃうね)
 お貴族様らしく、お上品にケーキと紅茶を戴く燦であったが、黙って飲み食いするだけの時間にすぐ飽きてしまう。
 別にお茶会の最中は無言でいなければならない、というルールはなかったはずだ。談笑のないお茶会なんて楽しくないやと、彼女は人形達に話しかける。
「ねえ、あなた達の主人のことを聞かせてよ」
『申シ訳アリマセン 主人ノ個人的ナ内容ニツイテハ オ話デキマセン』
「じゃあ、アタシの身の上を聞いてくれるかな」
 あくまで機械的に応対する人形達に、燦は朗らかに、それでいて下品にはならないよう話題を広げる。会話自体を拒否するつもりは向こうにも無いようで、少しぎこちなくはあっても、ここが敵艦の中だとは思えないほど穏やかな空気が流れる。

(何ならドールを通して船の主とチェスでも打ってみたいね)
 燦はそんなことも考えていたが、この戦艦を支配するUDCの邪神はいまだ姿を見せず、一切の反応をこちらに示してこない。人形達も『紳士淑女の作法』に則って自動的に稼働するのみで、主人から直接介入を受けた様子はなかった。
「ありがとう、楽しかったよ」
 彼女はほどほどの所で会話とお茶会を切り上げ、人形達に礼を言って席を立つ。先に進む扉はすでに開かれていた。
 船の主が出てこないのなら、こちらから出向くまで。あるいはチェスよりも刺激的な勝負になることを期待してか、その足取りは軽やかであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
紳士淑女の作法ヴィクトリアン・ルール……
単なる作法が、空間を支配する法則に昇華されている……なるほど、邪神が強制してくる異界法則のようなものですか
銃弾を叩き込めばどうなるか……試してみるにはリスクが大き過ぎる

ひとまず人形たちに倣って(見切り・学習力)上品……そうな動きを心掛ける
表面上は取り繕っているが、この身の本質は親も教育もない野蛮人
【集中】して【落ち着いて】、お茶を飲み菓子をつまむ
せめてもの補助として、【薔薇の妖婦】で好印象を与えることで無意識に採点を甘くしてもらえないでしょうか



紳士淑女の作法ヴィクトリアン・ルール……単なる作法が、空間を支配する法則に昇華されている……なるほど、邪神が強制してくる異界法則のようなものですか」
 敵艦内部に適用された未知の法則について、オリヴィアはそのように理解した。この手のタイプの敵と戦ったことは始めてではなく、無難な対処法も経験上分かっている。ルールに違反し強硬な手段に訴えれば、大概の場合は手ひどい処罰を食らうということも。
「銃弾を叩き込めばどうなるか……試してみるにはリスクが大き過ぎる」
 ここは極力ルールに逆らわないまま、敵を刺激せずに艦の最奥部を目指すのが良いだろう。そう判断した彼女は呼吸を整え、お茶会のフロアに慎重に足を踏み入れる。淹れたての紅茶と菓子、そして使用人に扮した蒸気人形達が室内で彼女を待っていた。

(ひとまず人形たちに倣って上品……そうな動きを心掛けましょう)
 上流階級にふさわしい礼儀作法など学ぶ機会のなかったオリヴィアだが、持ち前の学習力の高さから、少なくともこの場で浮かない振る舞いを見切ることはできた。蒸気人形に不審に思われぬよう、焦らず落ち着いた所作で席につく。
(表面上は取り繕っているが、この身の本質は親も教育もない野蛮人)
 集中を切らせばどこでボロが出るか分かったものではないと、自分を戒めながらお茶を飲み、菓子をつまむ。先行して茶会に参加した猟兵達の所作も、彼女にとっては良い手本になってくれた。周囲からは蒸気人形達の無機質な視線を感じるが、今のところは何も指摘してこない。

(せめてもの補助として、これを……)
 戦場とはまた違った緊張感を味わいながら、オリヴィアは【薔薇の妖婦】を発動。甘やかな薔薇の香りを体内から放出して室内を包み込む。この香りには本人の体調に応じて周囲の者の感情を刺激し、興奮または好印象を与える作用があった。
(これで無意識に採点を甘くしてもらえないでしょうか)
 蒸気仕掛けの人形にどこまで香りの効果があるかは分からないし、効いたとしても『紳士淑女の作法』の適用に影響がある保証はなかったが、これなら仮にユーベルコードの使用がバレたとしても、香水の匂いなどと言って誤魔化せるだろう。試してみて損はない選択だった。

『……オ味ハ イカガデスカ』
「ええ、とても美味しいです。ありがとう」
 人形達の振る舞いは表面上何も変わらなかったが、向けられる視線が幾分か和らいだ気がした。彼らの給仕を受けながら、オリヴィアは細心の注意でお茶会を続け――やがて扉がゆっくりと開くと、ほっと溜息が出かけるのを堪えた。
「ご馳走になりました。それでは、先に進ませて貰います」
 世話になった人形達に挨拶をして、最後まで上品な態度で部屋の外へ。そのまま戦艦の機関部に繋がる通路を進む。
 慣れない難所をどうにか切り抜けたが、まだ気を抜くには早い。『紳士淑女の作法』の元凶たるUDCの邪神は、この先で来客の到着を待ち構えている――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
紳士淑女の作法、かぁ
邪神が無茶苦茶である事を嘆いても
事態が好転するでなし
癪だけど淑女になるとしようか

事前に英国式茶会のマナーを情報収集しておくよ
UDC組織にはそういう場に紛れ込む為の知識も豊富だし

まあ、実際にやってみたのを
邪神の分霊に散々揶揄われたけどね…。

結論、付け焼刃でやるならこれが一番確実だ
邪神の繰り糸で自分を人形に変えるよ

鉑帝竜の鏡面部で
ドレス姿を映して身だしなみを確認
陶器の体だから身に着けた物がずれたりしてないか念の為

後は人形繰りの魔法で淑女の行動をプログラムして対応

たぶん、作法通りの所作をしてるかどうかであって
真に淑女か否かは別だろうし
人形でも飲食したものを貯めるだけならできるしね



「紳士淑女の作法、かぁ」
 まったく変なルールを押し付けてくるものだと思うが、邪神が無茶苦茶である事を嘆いても事態が好転するでなし、ということを晶は体験上痛いほど思い知っていた。奴らが"なぜ"そんなことをするのか考えても答えは出ない。邪神の理不尽さは人智を超えるものだ。
「癪だけど淑女になるとしようか」
 今回は『紳士淑女の作法ヴィクトリアン・ルール』の詳細が予知されていたため、晶は事前に英国式茶会のマナーについて情報収集することができた。UDC組織にはそういう場に紛れ込む為の知識も豊富で、学びの場に困ることはない。こういう時は組織の保護下にいて良かったと思う。

(まあ、実際にやってみたのを、邪神の分霊に散々揶揄われたけどね……)
 苦い記憶を頭の中で噛み締めつつ、茶会の部屋の前まで来る。支度はすでに整っており、使用人の服を着た蒸気人形の集団が、無機質な表情でこちらを見ている。勉強してきたとはいえ短時間で詰め込んだマナーを、果たして滞りなく実践できるだろうか。
(結論、付け焼刃でやるならこれが一番確実だ)
 晶が講じた策は【邪神の繰り糸】によって、自分の体を人形に変えるというものだった。見た目は生身とほぼ同じまま、肌は滑らかな陶器に、関節は球体に、瞳はガラス玉に変わる。この状態でも人形操りの魔法を使えば、体を動かすことは可能だ。

(身だしなみは……よし)
 部屋に入る前に鉑帝竜の鏡面部で人形となった自分を映し、身に着けた物がずれたりしてないか念のため確認する。
 漆黒のドレスを纏ったその姿は「人形のような」という表現が比喩にならない可憐さ。邪神と融合した結果得た体なので素直には喜べないが、どこのお茶会に出席しても恥ずかしくない装いである。
(それじゃあ、始めよう)
 チェックが済んだところで晶は人形操りの魔法をかけて、自分の体を操作する。この魔法は先行入力型で後から行動の変更はできないが、代わりに生身ではできない複雑で精密な動作も実現できる。これで「淑女の行動」をプログラムすれば、寸分の狂いなく完璧な対応ができるという訳だ。

(たぶん、作法通りの所作をしてるかどうかであって、真に淑女か否かは別だろうし)
 マナー本に載っているような型通りの動きで、椅子に座り、カップを持ち、紅茶を飲む晶。そこに内面が伴っていなくても『紳士淑女の作法』として正しければルール上問題はない。事実、蒸気人形達はなにも言ってこないし、室内に異変が起こるような兆候もない。
(人形でも飲食したものを貯めるだけならできるしね)
 不審にならない程度に紅茶とお菓子を体内に流し込んで、プログラミングされた優雅な微笑を浮かべる。非の打ち所のない淑女の嗜みに、邪神も文句の付けようがなかったようで――やがて満足したように部屋の扉がひとりでに開く。

「お眼鏡にかなったみたいだね」
 退室までの足取りもプログラム通りに、最後まで淑女を演じきったところで魔法の効果が切れる。そこで晶は人形化を解除すると、この先からひしひしと感じる邪神の気配をたどるように、戦艦の機関部目指して歩き始めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
【旅神】
さーて、ここからが本番だな。怖い思いするよりはマシだけど、面倒な試練もあったもんだ。

まずは詩乃と一緒にその英国作法ってやつを勉強する。付け焼き刃でも、必要な知識は付けねえとな。
ああ、別に莫迦にするつもりは無えよ。文化ってのはそれぞれの場所で異なるモンだけど、無意味なモンじゃないからな。
……まあ、邪神に悪用されてるってのは正直気に入らねーけどさ。
覚えにくいコトとかもあるだろうけど、そこらへんは《残されし十二番目の贈り物》で引き上げた〈情報収集〉力で穴を埋める。

一通りの予習が終わったら、実践だな。
多少は奔放かもしれねえけど、押さえるべき要点だけは外さねえ。基本に忠実、応用は自在ってヤツだ。


大町・詩乃
【旅神】

部屋に入る前にスマホで英国式アフタヌーンティーのマナーをチェック(世界知識)。

レディファーストの徹底だったり、「3段スタンドはサンドイッチなどの
塩味のsavouryからスタートし、scone、甘味のペイストリーへと
食べ進める」とか、「ティーカップは右手で取っ手をつまむようにして持つ」等々、色々あるのですね~。
と感心します。

嵐さんと知識を共有した上で入室しますよ。

英国式マナーの原則は押さえるとしても、マナーは相手を思いやる気持ちから生まれるもの。

《天賦の才》を使用した上で、嵐さんや奉仕してくれる蒸気人形さん達への思いやりを抱き、礼儀正しく優しく接して英国式茶会を楽しんでみますよ~。



「さーて、ここからが本番だな。怖い思いするよりはマシだけど、面倒な試練もあったもんだ」
 狂気戦艦を支配する『紳士淑女の作法ヴィクトリアン・ルール』、それは武力ではなく知識や立ち振舞が試される舞台。命のやり取りでなくても気を抜くことはできないと、嵐は表情を引き締めつつ、相方の詩乃と共に英国式アフタヌーンティーのマナーをチェックしていた。
「レディファーストの徹底だったり、『3段スタンドはサンドイッチなどの塩味のsavouryからスタートし、scone、甘味のペイストリーへと食べ進める』とか、『ティーカップは右手で取っ手をつまむようにして持つ』等々、色々あるのですね~」
 調べれば調べるほど出てくる細かな手順やルールに、詩乃は感心している。正直、これら全てをこの短時間で完璧に覚えられるかと言えば難しいが、それでも重要なポイントは抑えないと、マナー違反で先に進めなくなる恐れもある。

「付け焼き刃でも、必要な知識は付けねえとな……ああ、別に莫迦にするつもりは無えよ。文化ってのはそれぞれの場所で異なるモンだけど、無意味なモンじゃないからな」
 二人で集めた情報を共有し、せっせと勉強に励みながら、嵐はそんなことを語る。理由もなしに生まれる文化など存在せず、地方や国によって異なる礼儀作法もそれぞれに深い訳があることを、彼は旅人だからこそ良く理解していた。
「……まあ、邪神に悪用されてるってのは正直気に入らねーけどさ」
「マナーは相手を思いやる気持ちから生まれるものなのに、良くありませんよね」
 作法とは本来押し付けるものではないが、ここではそれが強制的な法則と化している。この点には嵐も詩乃も不快感なり異論なりあるようだが、まずお茶会をクリアしなければ文句を言うこともできない。この戦艦を支配する邪神は、今頃ほくそ笑んでいるのだろうか。

「……よし、大体は覚えられたと思う」
 叩き込んだ知識を脳内でリピートしつつ、嵐はスマホの画面から顔を上げる。覚えにくいマナーも幾つかあったが、そこは【残されし十二番目の贈り物】で強化した情報収集力により穴埋めできたはずだ。占い師の祖母から学んだ知恵や技術も、色んな所で役に立つものだ。
「詩乃はどうだ?」
「原則は押さえられたと思います。あとは気持ち次第ですね~」
 詩乃のほうも自信ありげな様子で、スマホを巫女服の袖口にしまう。全てを完璧にと言うつもりはないが、マナーの本質的な部分はきちんと分かっている。あとは忘れる前に実践あるのみだと、二人はいざお茶会のフロアに入室する。

『ヨウコソ イラッシャイマシタ』
 室内にいた蒸気仕掛けの人形達が、恭しい態度で新たな来客を迎え入れる。彼らはここの使用人であり審査員、迂闊な姿を見せれば何をされるか分からない。緊張を切らさないようにしつつ、嵐と詩乃はそれぞれ椅子に腰を下ろした。
『オ茶ヲ ドウゾ』
 高級そうなティーポットから、カップに注がれる琥珀色の液体。スタンドには美味しそうなスイーツと軽食もある。
 二人は予習した通りに右手で取っ手をつまむようにカップを持ち、音を立てないよう紅茶を飲む。良い茶葉を使っているのだろう、上品な甘さと香りがふわっと口に広がった。

「とても美味しいです。ありがとうございます♪」
 詩乃は【天賦の才】を駆使して学んだ通りの作法を実践しつつ、同席する嵐や奉仕してくれる人形達への思いやりを常に忘れず、礼儀正しく優しい態度で接する。この心掛けが何より大切だと想う彼女の振る舞いからは、形式的なものではない内面からの気品が滲み出ていた。
「こちらのスコーンもいただきますね~」
 続けるうちにだんだん気持ちもほぐれてきたのか、彼女にはこの英国式茶会を心から楽しむ余裕もあった。場所の異常さに目を瞑れば、文句の付けようもないほど格式高い一流の茶会である。紅茶も茶菓子も本当に美味しく、本心からの笑みがこぼれる。

「こんなに歓迎されるとはな。感謝するよ」
 一方の嵐も、片肘張らずに自然な振る舞いで茶会のマナーを実践している。多少奔放なところはあるものの、押さえるべき要点だけは外さない。型を忠実に守るよりも、その場その場で適切な所作を考え、行動に移しているかたちだ。
(基本に忠実、応用は自在ってヤツだ)
 短時間の予習でここまで作法を自分のものにできるのは、もともとの思考の柔軟さを感じさせる。人形達もこれにはケチを付けられないようで、注目はされるが咎められることはない。紳士らしく堂々とした振る舞いを意識しながら、彼は紅茶を味わう。

「……上手くいったか?」
「そのようですね」
 やがて、二人がカップの中身を飲み干した頃、ここに入った時とは逆側の扉がひとりでに開く。『紳士淑女の作法』は、彼らを相応しい者として認めたようだ。蒸気人形達の見送りを受けながら、嵐と詩乃は戦艦のさらに奥へ向かう。
「次はいよいよ親玉か」
「気をつけて行きましょう」
 お茶会を無事クリアすれば、元凶たる邪神との会敵はもう間もなくである。不条理なルールを他者に強制するほどの力を持ったオブリビオンとなれば、断じて油断はできない――学んだ作法を忘れないようにしながら、二人は慎重に歩を進めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フレデリック・モナハン
格式ばった茶会は正直苦手だし、淹れてもらうより自分で淹れる方が好き。
独りで静かに、自由に楽しみたい。

と、そんな本音は腹の底にしまって笑顔で席に着こう。当然レディーファーストで。
主催ホストが口をつけるのを待って、飲み始める。
ソーサーは置いたまま、カップの持ち手は摘まむように。
食事はスタンドの下段から順に。

茶会のマナーは身につけているつもりだが、念には念を。
給仕に装備を預ける際、特殊音響装置スティルトンMk-Ⅱをこっそり起動しておく。
可聴域外のサブリミナル音波で、少しだけ私に優しくなってもらう。
なに、無作法があったとて、決して本音が態度に出たわけではない。どうか大目に見ていただきたい!



(格式ばった茶会は正直苦手だし、淹れてもらうより自分で淹れる方が好き)
 それを定期的に摂取できているかでパフォーマンスに露骨な差が出るほどの、筋金入りの紅茶党であるフレデリックには、茶の楽しみ方にも相応の拘りというものがあった。好きに茶を味わえない、『紳士淑女の作法ヴィクトリアン・ルール』に縛られながらの茶会は、あまり良くは感じないようだ。
(独りで静かに、自由に楽しみたい)
 という本音は腹の底にしまって、彼は笑顔で席に着く。当然、着席の順番はレディファースト。苦手だからといって礼儀知らずではなく、この男にも英国紳士の血は流れている。やろうと思えばやれる所を、ひとつ披露するとしよう。

『ゴユックリ オ寛ギクダサイ』
 使用人に扮した蒸気仕掛けの人形が、ティーポットからカップに紅茶を注ぐ。それを見てもフレデリックはすぐには手を付けず、同じテーブルを囲んでいる別の蒸気人形の動向をそれとなく窺う。こういった場で最初に口をつけるのは主催ホストであり、ゲストが飲み始めるのはその後だ。
『ドウゾ』
「では、いただこう」
 相手に勧められるのを待ってから、ソーサーは置いたまま、カップの持ち手を摘まむようにして持つ。音を立てぬように紅茶を飲めば、芳しい香りと甘みが口の中に広がった。紅茶党である彼の舌で吟味しても、茶葉も淹れ方も一流のそれと分かる。

(こんな場所でもなければ、素直に味わえたのだが)
 残念な気持ちはおくびにも出さず、フレデリックはスタンドに用意された食事を下段から順に味わっていく。人形達はそれを黙って眺めているだけで、特になにも言ってこない。注意されないということは問題ないのだろうが、やはり緊張感を感じる。
(茶会のマナーは身につけているつもりだが、念には念を)
 給仕に装備を預ける際、彼は特殊音響装置「スティルトンMk-Ⅱ」をこっそり起動させていた。UDCの発声器官を加工したこの装置からは、可聴域外のサブリミナル音波【即興曲√-1番】が流れる。そろそろ蒸気人形にも効果が出てくる頃合いだ。

(少しだけ私に優しくなってもらおう)
 表面的に目立った変化はないが、人形達のフレデリックに対する態度や視線が、少し優しくなったような気がする。
 このユーベルコードの対象になった者は、本人の自覚あるなしに関わらず、彼に有利な行動を取るようになるのだ。それも劇的な作用ではないが、多少のマナーのミスを見逃させるくらいはできる。
(なに、無作法があったとて、決して本音が態度に出たわけではない。どうか大目に見ていただきたい!)
 というフレデリックの期待は果たして通ったようで、紅茶を飲み終えるまで蒸気人形はなにも指摘してこなかった。
 部屋に入った時とは逆の扉が、ゆっくりと音を立てずに開く。狂気戦艦は彼の『紳士淑女の作法』を認めたようだ。

「よい茶会だった。それでは失礼する」
 最後まで紳士の礼節を忘れないよう気をつけて、人形とのお茶会を後にするフレデリック。職業柄UDCの性質に詳しい彼は、艦の奥からあふれ出すただならぬオーラも検知していた。この狂気戦艦を支配する邪神との戦いは、お茶会と同様一筋縄ではいかなそうだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レヴィア・イエローローズ
【炎心】
アドリブ大歓迎

さて、お茶会を始めましょうか……
つまりこういう事でしょう――一杯飲み干した後、狂気艦隊は確実に沈む……と
さぁ……清導、エド、お茶会を始めましょうか

UCにより内心でクロックワーク・ヴィクトリアへの敵愾心を贄滾らせながら、対外的には典雅な姫君としてお茶を飲んでいく
アフタヌーンティーならば、スコーンやケーキ等のお茶菓子も用意されてあるか用意するも醍醐味よね
わたくしは紅茶の茶葉の薫り、お茶菓子の甘味の上品さについて的確な評価を下して和やかなお茶会を演出
エドは兎も角、清導は慣れていない様だからわたくしがリードしないとね

この後は『邪神』との戦いがあるのだもの
ゆっくり楽しみましょう


エドワルダ・ウッドストック
【炎心】SPD
アドリブ大歓迎

戦場生まれであっても、シカの貴種であるわたくし(たち?)にとってお茶会は基本的マナー。
ごく普通の英国式茶会であるならば問題はないはずですわ。
堂々たる自信を見せる清導にエスコートされて参りましょう。

完璧な所作というからには、社交の場としてのアフタヌーン・ティーなのでしょう。
茶器の持ち方、菓子を取る順番、話題を上げるタイミング、いずれも礼儀作法としては知識にありますの。
優雅に振舞って見せましょう。
もしミスや手抜かりが生じても、わたくしたちは一人ではありません。
互いに支え合えば必ずフォローできますわ。

クロックワーク・ヴィクトリアへの殺意は胸の内に秘め、上品に過ごしますわ。


空桐・清導
【炎心】POW
アドリブ大歓迎

建物に侵入する前に懐からユニヴァース・メモリを取り出す
「二人は慣れているだろうけど、俺はお茶会のマナーなんて
ほとんど知らないからな…。頼むぜ、ユニヴァース・メモリ!」
≪ユニヴァース!≫
メモリから流れ込んでくるあらゆる[世界の知識]
その中から紳士淑女の作法を検索して頭に叩き込む
後は[気合い]と[根性]で覚え、
[勇気]と自信で堂々とするだけだ!
「待たせた。さ、行こうか二人とも。
エスコートするよ。」
いつもの清導を知る者なら猛烈な違和感を感じる様子だった
会場に入っても堂に入った様子でつつがなくマナーをこなす
それでも発生するミスは二人にありがたくフォローして貰おう
これで突破だ



「さて、お茶会を始めましょうか……」
 護衛のオブリビオンを撃破して「狂気戦艦」内部への突入を果たした【炎心】一行。邪神の狂気渦巻く領域の中で、レヴィアは静かにそう宣言した。ここからは武力ではなく『紳士淑女の作法ヴィクトリアン・ルール』に基づいた作法が求められる領域。だが高貴な生まれである彼女に気後れはない。
「つまりこういう事でしょう――一杯飲み干した後、狂気艦隊は確実に沈む……と」
「戦場生まれであっても、シカの貴種であるわたくしたちにとってお茶会は基本的マナー。ごく普通の英国式茶会であるならば問題はないはずですわ」
 同様に、由緒正しいイングランド貴族の血を引くエドワルダにとっても、淑女の作法とは今更問われるまでもない。
 幼い頃から学んだマナーは身体に染み付いているもの。いくらここが敵艦の中だとはいえ、変にプレシャーを感じる様子はまったく無かった。

「二人は慣れているだろうけど、俺はお茶会のマナーなんてほとんど知らないからな……。頼むぜ、ユニヴァース・メモリ!」
≪ユニヴァース!≫
 一方、このメンバー内では唯一の一般家庭出身となる清導は、お茶会の部屋に侵入する前に懐から「ユニヴァース・メモリ」を取り出す。宇宙と万物の記憶を宿すという、この謎めいた結晶体は様々な世界の知識を所有者に与えてくれる。その中には紳士淑女の作法に関する情報も含まれているわけだ。
「よし、覚えたぞ!」
 彼は検索に引っかかった情報を頭に叩き込み、気合いと根性で記憶する。付け焼き刃と言われれば否定しづらいが、あとは勇気と自信をもって堂々としていれば様になるものだ。作法とは単に型をなぞるのではなく、それを行う人間の心の振る舞いも大事なのだから。

「さぁ……清導、エド、お茶会を始めましょうか」
 清導の学習が終わる頃合いを待って、レヴィアが二人に号令をかける。【黄薔薇開花・歯車仕掛けへの聖憎】により内心では依然としてクロックワーク・ヴィクトリアへの敵愾心を煮え滾らせているが、対外的には典雅な姫君の佇まいを崩さない。
「待たせた。さ、行こうか二人とも。エスコートするよ」
「ええ、よろしくお願いしますわ」
 清導も紳士らしい堂々たる自信をもって手を差し伸べ、エドワルダも淑女としてエスコートを受ける。いざお茶会と言う名の戦場に足を踏み入れた三人を待っていたのは、ビスクドールのような蒸気仕掛けの人形達。この洋館めいた艦の使用人にして『紳士淑女の作法』の審判だ。

『ヨウコソ イラッシャイマシタ』『オ茶会ノ 時間デス』
 蒸気人形は淀みない動作でお茶会の用意を整え、三人をテーブルまで案内する。紳士淑女の作法では、こういった場ではレディファーストが基本。まずはレヴィアとエドワルダが先に席につき、エスコートしていた清導が最後に座る。
(完璧な所作というからには、社交の場としてのアフタヌーン・ティーなのでしょう)
 エドワルダが見たところ、この茶会は茶器や調度品から何までかなり格式高く設えられている。周囲にいる人形達は給仕の務めを果たしながら客人の動きに目を光らせており、迂闊なことをすれば何が起きるか分かったものではない。こちらも相応の気持ちで挑む必要がありそうだ。

(茶器の持ち方、菓子を取る順番、話題を上げるタイミング、いずれも礼儀作法としては知識にありますの)
 用意されたティーカップを手に取って、音を立てずに一口。頭からつま先、指の先に至るまで丁寧な、優雅な振る舞いを見せるエドワルダ。クロックワーク・ヴィクトリアへの殺意は胸の内に秘め、あくまで自然に上品に過ごす姿は、流石の英国淑女であった。
「いい香りね。それに、こちらのケーキも素晴らしいわ。ほどよい甘さとフルーツの瑞々しさが……」
 一方のレヴィアは紅茶の茶葉の薫りや茶菓子の甘味の上品さについて的確な評価を下し、和やかな茶会を演出する。
 アフタヌーンティーならば、スコーンやケーキ等の菓子も用意されてあるか用意するのも醍醐味だ。怨敵が用意したものとはいえ、その質の良さは彼女も認めざるを得ないもので、素直に楽しませてもらうことにする。

「本当だ。とても美味しいな」
 そして、二人に比べて経験に乏しい清導は――驚くことに、お茶会が始まっても堂に入った様子でつつがなくマナーをこなしていた。いつもの彼を知る者ならば逆に猛烈な違和感を抱くかもしれない。ユニヴァース・メモリによる学習の成果はバッチリだったようだ。
「清導、こちらのスコーンもいかが?」
「ありがとう、いただくよ」
 そんな彼の前で、レヴィアは談笑の合間にティースタンドからスコーンを取り、正しい作法での食べ方を実演する。
 人間ならどれだけ完璧にこなそうとしてもミスは発生するもの。そして、それをフォローできるのが三人の強みだ。こうして不慣れなマナーを教えあえるのも、そのひとつ。

「レヴィア、ジャムをわたくしにもくださる?」
「あら……ええ、どうぞ」
 清導に限らず、マナーに慣れ親しんだ者でも気の緩みからの失敗は起こりうる。それを理解しているエドワルダは、相席する仲間の所作を把握しあい、粗相をしそうな時はそれとなく伝える。そうした時も慌てたり騒いだりせず、自然な振る舞いを保つことが大事だ。
(もしミスや手抜かりが生じても、わたくしたちは一人ではありません。互いに支え合えば必ずフォローできますわ)
 蒸気人形達は黙々と給仕を続けるだけでなにも言ってこないが、それこそが彼女達のマナーに問題のない証だろう。
 優雅な『紳士淑女の作法』に基づいて、お茶会は平穏無事に進む。ここだけを見れば、場所が戦艦の内部だとはとても思えないだろう。

(この後は『邪神』との戦いがあるのだもの。ゆっくり楽しみましょう)
 闘志は秘めたまま、お茶会を通じて英気を養う。こう考えているのはレヴィアだけでなく、他の三人も共通だろう。
 美味しいお茶と菓子、それと少々のお喋りを楽しんで――やがてティーカップもティースタンドも空になる頃、艦の奥に通じる扉がひとりでに開く。
「ご馳走になりました」
「では、失礼いたします」
「素敵な時間をありがとう」
 レヴィア、エドワルダ、清導は三者三様に人形達への別れの挨拶を告げ、席を立つ。最後まで『紳士淑女の作法』は保ったまま部屋の外に出ると、あとは最深部に向かって早足に一直線。ここを突破すればボスとの対峙を阻むものは何もなく、決戦の時は間近に迫っていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『霧と踊る少女』

POW   :    死を刈る一撃
【強力な一撃】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    覆うもの
自身に【霧のようなもの】をまとい、高速移動と【視認し辛い、或いは不可視の攻撃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    人は、見たいと思うものを見るもの
【見たものが見たいと思うものの幻影】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
👑11
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「あら……わたくしの元にまでお客様が来てくださるなんて、久しぶりだわ」

 『紳士淑女の作法ヴィクトリアン・ルール』に則ってお茶会をクリアし、狂気戦艦の最深部まで辿り着いた猟兵達。
 そこは機関室となっており、クロックワーク・ヴィクトリアの象徴とも言える巨大な蒸気機関の前に、ひとりの少女が立っている。

「ようこそ。わたくしがこの館の主……十分なおもてなしの用意もできていなくて恥ずかしいけれど。歓迎しますわ」

 その"存在"にヒトとしての名はなく、ただ『霧と踊る少女』とのみ呼称される。
 外見上はほとんど人間との区別はつかないが、対峙した猟兵は彼女の異質な気配――霧を纏いて佇む優雅な姿から、名状しがたい狂気を感じ取ることができるだろう。

 彼女こそが狂気戦艦の主であり、蒸気機関を通じて艦内の全エネルギーを供給する、強大なUDCの邪神である。
 他者に『紳士淑女の作法』を強制する法則も彼女の力によるもの。常に霧とともに現れ、霧とともに踊るというが、彼女が現れるから霧が出るのか、霧が出るから彼女が現れるのか、彼女自身が霧なのか、正体は誰にもわからない。

「皆様は、ダンスはお好きかしら? 良ければともに踊りましょう。苦手でしたらそこで見ていらして。素敵な幻の世界へとご案内しますわ」

 霧と踊る少女を打倒するためには、お茶会の時と同じように『紳士淑女の作法』を守らなくてはならない。
 常に紳士淑女らしく優雅に戦う。それがこの戦場における決まり事。違反して野蛮な戦法を取ろうものなら、大幅な弱体化は覚悟せねばなるまい。もちろん、それは霧と踊る少女自身も同じである。

 狂気戦艦の中枢である彼女を倒せば、本艦は沈む。ブリテン島上陸計画の成否は、まさしくこの一戦に左右される。
 霧烟る館の最奥にて、猟兵達はいざ決戦の構えを取った。
エメラ・アーヴェスピア
ゆ、優雅に?また随分と抽象的ね…?
まぁ誘われているのだし、踊らせて頂こうかしら
それで条件が達成できるのなら、ね

優雅に戦闘、というのがいまいちよくわからないけれど
踊りながら戦えば大丈夫かしら?あまり得意ではないのだけれど…
ああ、攻撃手段に関しては問題ないわよ?なにせ私のUCの大半は私に関係なく攻撃するもの
とはいえ今回の状況に合いそうなものは…『刹那唱うは我が銃声クイックトリガー』かしら
動きに合わせて空中に召喚、発射、送還をすればそれなりに形になるでしょう
複数召喚すれば範囲攻撃にもなるし攻撃力もちょうどいい
まぁ、やってみましょうか…ここで止まっている訳にもいかないし、ね

※アドリブ・絡み歓迎



「ゆ、優雅に? また随分と抽象的ね……?」
 何をもって「優雅」とするのか、人によって解釈が分かれそうなルールを突きつけられ、困惑を示すのはエメラだ。
 この『紳士淑女の作法ヴィクトリアン・ルール』を定めた邪神「霧と踊る少女」は、答えを明示せずに微笑みかけるのみ。傍目には可憐な娘だが、かえってそれが不気味にも感じる。
「まぁ誘われているのだし、踊らせて頂こうかしら。それで条件が達成できるのなら、ね」
 ここでまごついたところで仕事は達成できない。靴音をかつんと鳴らして、魔導蒸気の技術士は決戦場に躍り出る。
 相手を視界に収めたまま、小気味よいステップで間合いを測り、体を揺らしてリズムを取る。さながら、この機関室がダンスホールであるかのように

「優雅に戦闘、というのがいまいちよくわからないけれど、踊りながら戦えば大丈夫かしら? あまり得意ではないのだけれど……」
「ふふ、とてもお上手ですわよ?」
 自信なさげなエメラだったが、その踊りを見て「霧と踊る少女」は笑った。力が抜けたり動きが鈍ったりする感覚もないので、『紳士淑女の作法』的にはこれで正解だったらしい。なお「踊りながら戦う」ことについての戦闘への影響は問題ない。兵器の制作・召喚・操作に長けた彼女のユーベルコードは、大半が使用者に関係なく攻撃を実行する。
(とはいえ今回の状況に合いそうなものは……『刹那唱うは我が銃声クイックトリガー』かしら)
 踊りながらパチンと指を鳴らすと、瞬時に浮遊型魔導蒸気銃が召喚される。それはエメラに付き従うように空中に浮かびつつ、ターゲットに照準を合わせて即座に発砲。音速の弾丸が「霧と踊る少女」のドレスに小さな風穴を開けた。

「まぁ、やってみましょうか……ここで止まっている訳にもいかないし、ね」
 そのままエメラは踊り続けながら、自身の動きに合わせて魔導蒸気銃の召喚、発射、そして送還を行う。数多の銃を従えながらくるりと舞う姿は、ある種の余裕さえ錯覚させる。これを「優雅」と呼ばない者は滅多にいまい――それは「霧と踊る少女」さえ異論はなかったようだ。
「まあ、まあ。素敵だわ。わたくしも応えないと」
 邪神は霧のようなものを自身の身にまとい、視認性を下げたうえで移動速度を向上させる。この【覆うもの】を発動中の彼女の攻撃は、極めて回避が難しい。「霧と踊る少女」の異名通り、優雅にして残酷な死の舞踏がエメラを狙う。

「浮かせられるのは銃だけじゃないのよ」
 しかしエメラは敵の攻撃を予測して、銃同様に「浮遊型魔導蒸気盾」を展開する。本人の防御力を補うためのこの装備は、外部からの危険に反応して自動的に防御を行ってくれる。霧をまとった不可視の攻撃は、辛くも彼女の身には届かなかった。
「お返しよ」
「あら……失敗したわ」
 離脱する隙を与えずに、即時召喚された蒸気魔導銃が火を吹く。一丁一丁では性能不足でも、複数召喚すれば範囲・攻撃力ともに邪神に通用するレベルになる。猛烈な銃撃を浴びた「霧と踊る少女」は、穏やかな表情こそ崩さなかったものの――弾丸を受けた体からは、つうと赤い血が流れていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リンカ・ディアベルスター
ここでも作法か…面倒くさい面倒くさい…はあ…今日はため息ばかりだなぁ…
憂鬱になるが敵との戦闘を開始する

悪いけどダンスは苦手なんだよね
敵がUCを発動して高速移動を始めたのでこちらも指定UCを発動して超越神速で移動出来るようになり対抗する

見えないだけなら何とかなるかな?…よっと!
不可視の攻撃に対しては周りにエコーの様に衝撃波を放ち衝撃波がぶれた場所を心眼で見て華麗に回避

痺れろ!…って何で戦闘中に気を使わなきゃいけないの?
優雅に魔導書を取り出してから高速詠唱で電撃の魔法を発動して敵を痺れさせる

狩猟の力よ…私を勝利に導いてくれ!そしてこの狂気の舞踏会を終わらせてくれ!
概念無限消滅撃の矢弾の雨を放ち攻撃



「ここでも作法か……面倒くさい面倒くさい……はあ……今日はため息ばかりだなぁ……」
 お茶会からずっと慣れない『紳士淑女の作法ヴィクトリアン・ルール』を要求されて、いい加減リンカは憂鬱な気分だった。かと言ってルール無用で暴れたところで勝ち目があると思い上がってはいない。あんな普通の少女に見えても、邪神の力は本物だ。
「さあ、踊りましょう?」
 まさに「優雅」を体現した微笑と身振りで、「霧と踊る少女」は【覆うもの】を発動。霧のようなものを身にまとうことで、そのステップは常識の脚力を超える。さらに蒸気烟るこの場所では彼女の正確な位置を把握するのも難しく、攻撃を受ければ回避は困難だろう。

「悪いけどダンスは苦手なんだよね」
 敵がユーベルコードを発動するのに合わせてリンカも【『狩猟』の星神 翠嵐】を発動。狩猟神の持つ超越神速の力によって「霧と踊る少女」の高速移動に対抗する。少なくともスピードだけで言えば、これで互角以上になるはずだ。
「見えないだけなら何とかなるかな? ……よっと!」
 さらに彼女はエコーのように衝撃波を周囲に放つことで、肉眼ではなく心眼で索敵を行う。衝撃の波形がぶれれば、そこに相手はいるということ。ダンスの動きに合わせて放たれる猛スピードの蹴りを、華麗な身のこなしで回避する。

「あら。謙遜なさって」
 発言に反して優雅なリンカの回避動作を、「霧と踊る少女」は賞賛しつつ追撃にかかる。真っ白な霧に包まれた戦場にて、不意に襲い掛かる不可視の攻撃。只の人ならば恐怖の中で息絶えるだろうが、対処法を確立してしまえば問題はない。
「痺れろ!」
 初撃と同様に衝撃波のエコーで攻撃を察知・回避しつつ、リンカは一冊の魔導書を優雅に取り出す。その「白銀の魔導書」は過去に戦った敵達から奪った魔術知識を記したもので、言うなれば魔術士としての彼女の叡智の結晶。そこに書かれた呪文のひとつを唱えると、激しい電流がページの中から飛び出した。

「……って何で戦闘中に気を使わなきゃいけないの?」
 いちいち動作に「優雅さ」を要求される戦いに不満を漏らしつつも、それがリンカの魔術が弱まることはなかった。
 電撃は白霧に紛れた「霧と踊る少女」を捉え、一時的なマヒ状態にする。痺れた体ではステップも踏めないだろう。
「きゃっ……」
 小さな悲鳴とともに邪神の足が止まった、この好機をリンカは逃さない。敵対するものには容赦のない、『狩猟』の星神の力を最大まで引き出して、一対の弓矢を顕現させる。神の写し身に等しくなった彼女の左眼は、鮮やかな藍色に染まっていた。

「狩猟の力よ……私を勝利に導いてくれ! そしてこの狂気の舞踏会を終わらせてくれ!」
 祈りの言葉とともに放たれた星神の矢は、分裂して無数の雨となる。この矢が貫くものは物質的なものに留まらず、概念すらも消滅させる無限の神撃だ。いかに相手が物理を超越した邪神であろうとも、この攻撃は致命傷となりうる。
「あら、あら……そんな隠し玉を持っていただなんて。思ってもみませんでしたわ」
 痺れた足でもつれたステップを踏む「霧と踊る少女」。そんなざまで『狩猟』の攻撃を避けきることはできず、矢が体に次々と突き刺さる。それでも優雅な態度を崩さないのは流石『紳士淑女の作法』の制定者と言うべきか――だが、ダメージ自体は間違いなく入っていると、リンカの心眼は見破っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
いいだろう、貴様らの作法とやらに乗ってやる
この装いの我が舞とは即ち、銃弾を叩き込む死の舞踏トーテンタンツに他ならない!

黒き外套をはためかせ、機関室へ躍り込む
熱い蒸気の中でも冷静な【集中力】を失わず、機関に繋がる配管だらけでも足運びは軽快に(悪路走破)
敵の攻撃は強力だが単発ずつ、踊る(ダンス)ような体捌きで躱しながら距離を詰める
両の手に握るは魔銃ストラーフ、引き金を引いて死の呪力を帯びた弾丸を発射(クイックドロウ・呪殺弾・属性攻撃)
反撃の猶予は与えない、蹴撃、肘打ち、さらに銃撃
止め処なき流れるような連続攻撃、これが貴様に死を賜る【極葬舞闘】
望み通り優雅に――茶飲みの片手間に片付けてくれる



「いいだろう、貴様らの作法とやらに乗ってやる」
 『紳士淑女の作法ヴィクトリアン・ルール』に則って、優雅な戦いを求める「霧と踊る少女」の待つ機関室へと、オリヴィアは黒き外套をはためかせて乗り込む。死葬冥妃の加護を受けた凛々しき軍服姿は、この戦場のドレスコードとしても相応しかろう。
「この装いの我が舞とは即ち、銃弾を叩き込む死の舞踏トーテンタンツに他ならない!」
「まあ、素敵。ではわたくしも【死を刈る一撃】をもってお相手いたしますわ」
 剣呑な宣告とともに二丁拳銃を突きつけられても、「霧と踊る少女」の微笑は崩れない。自らが定めたルール通り、優雅な身のこなしでステップを踏む。容姿と振る舞いだけを見れば貴族令嬢の如しだが、その一挙一動にはヒトを容易に死に至らしめる力が宿っている。

(敵の攻撃は強力だが単発ずつ、必要以上に恐れることはない)
 オリヴィアもまた、熱い蒸気の中でも冷静な集中力を失わず、機関の配管だらけの戦場でも軽快な足運びを見せる。
 この程度の地形不利では、彼女の動きを制限することはできない。邪神の放つ【死を刈る一撃】を踊るような体捌きで躱し、さらに至近まで距離を詰める。
「望み通り優雅に――茶飲みの片手間に片付けてくれる」
 両の手に握るは魔銃ストラーフ。トリガーを引き絞れば死の呪力を帯びた弾丸が発射され「霧と踊る少女」を貫く。
 艦の外にいたキマイラ兵はこれ一発で致命傷になったものだが、相手は流石に高位邪神である。よろめきこそしたものの、わずかに血が流れただけで傷は浅い。

「やりますね。ではわたくしも……」
「いいや、まだだ」
 反撃の猶予を与えず、オリヴィアは銃撃から即座に蹴撃へと技を切り替える。黒の軍服から伸びたしなやかな脚が、「霧と踊る少女」の腰を打ち据えて怯ませ。さらに間合いを詰めて肘打ちを顎に食らわすと、その体勢から再び銃撃を叩き込む。リズミカルな発砲音が機関室に反響し、白霧の中に鮮血が散った。
「撃って撃って撃ちのめす――!」
 銃と体術を組み合わせた、止め処なき流れるような連続攻撃。ひとつダメージが入ればまた次の攻撃に繋がるよう、完璧に計算された美しいモーション。無慈悲に、そして優雅に、『紳士淑女の作法』を満たした死の舞踏が、霧の邪神に一切の抵抗を許さない。

「これが貴様に死を賜る【極葬舞闘】だ」
「まぁ……! なん、て……こと、でしょう……!」
 まるでオリヴィアの舞踏に見惚れるかのように、「霧と踊る少女」は彼女の連撃を一方的に受け続けていた。攻撃が効いている限り、このユーベルコードに限界はない。悪運が味方するか、あるいは完全なる滅びを迎えるその時まで、死の踊り手は魔銃と共に、優雅に舞い続けるだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四王天・燦
手土産(他意なし)はお気に召して戴けたかな?
ここまでの戦闘による汚れを拭くようハンカチを貸してから恭しく一礼するぜ

ダンスなら喜んでお相手する
時にリードし、より少女を美しく見せられるようステップを合わせ、ターンを決めるよ

護衛の武士もののふにも言ったが、淑女らしからぬ慌ただしい動きには苦言だ
霧に隠れた殺気を第六感で読み取りふわりと上体を反らして避けるようにする
ダンス中に攻撃なんて無粋はしない

踊りきったら膝をつき、その手をとって甲に口づけ
一点集中の魂喰らいの接吻で精気をいただくよ
非礼は詫びるぜ

さて船は無理でもドール達だけでも回収して良いか交渉します
式神使いには自信あるんで活かしてあげたいってな



「手土産はお気に召して戴けたかな?」
「ええ、ご丁寧にありがとうございますわ」
 ここまでの戦闘による汚れを拭くようにハンカチを貸してから、恭しく一礼し。特に他意はなく、蒸気人形を通じて渡した菓子折りについて尋ねる燦。「霧と踊る少女」はそれを受け取り、優雅な所作で血と汗を拭う。その微笑みから真意は読めないが、喜んでいるように見える。
「ダンスなら喜んでお相手するよ」
 これにも含む所はなく、社交ダンスのパートナーのように手を差し伸べる。本来戦闘中にすることではないが、ここで断るのは相手にとっても『紳士淑女の作法ヴィクトリアン・ルール』ではない。動揺も逡巡も見せずに、邪神の少女はその誘いに乗った。

「ふふ、嬉しいわ。ちゃんと付いてきていらして?」
 とん、とステップを踏む「霧と踊る少女」の姿が、霧のようなものに包まれて消えていく。【覆うもの】を発動した彼女はあくまでダンスの体裁を取ったまま、侵入者パートナーを抹殺するつもりだ。このユーベルコードによって得られるスピードと不可視の攻撃は、暗殺にはもってこいである。
「これでもダンスには自信があってね」
 しかし燦も慌てることなく、時にリードし、より少女を美しく見せられるようステップを合わせ、ターンを決める。並外れた俊敏さと第六感の鋭さがなければ、こうも上手く邪神のダンスに合わせられまい。彼女はパートナーの動きを目ではなく、直感で追っている。

「護衛の武士もののふにも言ったが、淑女らしからぬ慌ただしい動きはよくないな」
 霧に隠れた殺気を読み取り、ふわりと上体を反らして避けながらパートナーに苦言を呈する。もちろん燦はダンス中に攻撃なんて無粋はしない。それだけでは倒せぬと分かっていながら、自分の踊りと攻撃の回避だけに専念している。
「あら……失礼したわ」
 無作法を他人から指摘されたことで、「霧と踊る少女」は自らが定めた『紳士淑女の作法』によって弱体化する。
 彼女は表情こそ崩さなかったが、それ以降迂闊な攻撃は慎むようになった。緊張感をはらみながら、どちらも相手を傷つけることなくダンスは続き――そして、閉幕を迎える。

「楽しかったよ」
「わたくしもですわ」
 踊りきったら燦は膝をつき、パートナーの手をとって甲に口づけしようとする。「霧と踊る少女」もこれを拒むことはなく、対峙してからのこれまでで二人の距離はもっとも近くなる。この瞬間が、燦にとっては『紳士淑女の作法』を遵守しつつ攻撃する唯一のチャンスだった。
「あら……? なんだ、か、力が、抜けて……」
 彼女が仕掛けたのは【魂喰らいの接吻】。唇で触れたところから一点集中で「霧と踊る少女」の精気をいただく。
 人智を超越した邪神の精気の味は、えも言われぬものであり。一瞬にしてその多くを吸い取られた少女は、かくんとその場で膝を折った。

「非礼は詫びるぜ」
 挨拶とみせかけての攻撃には謝罪しつつ、燦は食事を終えた獣のように口元をぬぐう。吸精の時間はそれほど長くはなかったが、「霧と踊る少女」が負った痛手は小さくない。肉体的に新しい傷は増えていなくても、内面的なダメージがあったはずだ。
「さて船は無理でもドール達だけでも回収して良いか? 式神使いには自信あるんで活かしてあげたくてな」
「わたくしが斃れた後でなら、ご自由に……もっとも、また動かせるかどうかは分かりませんけど」
 もののついでに交渉してみると、「霧と踊る少女」は苦笑混じりに答えながら立ち上がる。この戦艦の全てに邪神が動力を供給しているのなら、あの蒸気人形達も艦と同じ末路を辿るのかもしれない。いずれにせよ、戦いはまだ終わってはおらず――かの超大国の技術の産物を持ち帰れるかどうかは、この後の結末にかかっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレデリック・モナハン
優雅に戦え、か。
およそ対極にあるモノを要求してくれるじゃないか。
だがルールの無視は無謀。私なりの解釈になるが、リクエストに応えてみせよう。

ドローンミモレットを展開し、不可視の攻撃をドローンを盾にして防御。
破壊された機体の位置から射線を割り出し、敵を補足。
全機に情報伝達して追跡し、全周囲からレーザー射撃を仕掛ける。

同時に、メカニックの知識から機関室の構造を解析。
高圧配管や可燃物を探し出し、その位置まで弾幕で追い込み、射撃で誘爆させて巻き込みを狙う。

優雅に踊るにはリード役が必要だろう。
僭越ながら、この曲の間は私がリードさせていただこう。
少々テンポが速くなるが、転ばないでくれたまえ!



「優雅に戦え、か。およそ対極にあるモノを要求してくれるじゃないか」
 メカニックとして日々無骨な兵器やら奇怪な研究対象やらを相手にしているフレデリックにすれば、優雅な振る舞いとは日頃の自分と縁遠いものであった。お茶会の時はそつなくこなしたものの、『紳士淑女の作法ヴィクトリアン・ルール』もこれからが本番ということか。
「だがルールの無視は無謀。私なりの解釈になるが、リクエストに応えてみせよう」
 そう言って彼は【普見者の夜回り】を発動し、召喚した「ミモレットMk-Ⅴ」を自分の周囲に展開する。眼球のような球体型ドローンがふわふわと浮遊するさまは、彼を守っているようにも敵を監視しているようにも見える。あるいはその両方か――何にせよそれがただのドローンであるはずがない。

「貴方はそれで、なにを披露してくださるのかしら?」
 自分の元までやってきた小ネズミの備えに興味を持った様子で、「霧と踊る少女」は【覆うもの】を発動。霧のようなものを身にまとい、蒸気烟る戦場に紛れて視認を困難とする。さらに、そのステップは物理法則を逸脱して加速し、ダンスの挙動に合わせた不可避の攻撃を放つ。
「なに、すぐに分かるとも」
 これに対応したのが、フレデリックの配した「ミモレット」であった。ドローンは自らを盾にして主人を守り、破壊と引き換えに貴重な情報をもたらす。どの機体が、どの方角から攻撃を受けたかを計測できれば、そこから敵の射線を割り出して位置を捕捉できる。この手の分析はメカニックならお手の物だ。

「優雅に踊るにはリード役が必要だろう。僭越ながら、この曲の間は私がリードさせていただこう」
 フレデリックは得られた情報を残された全機に伝達し、敵の追跡にかかる。解き放たれた猟犬の如く、ドローン達は霧に紛れた「少女」をあっという間に取り囲みレーザー射撃を仕掛ける。百機を超える数による全周囲からの攻撃だ、いくら邪神でも躱しきることはできまい。
「まあ、まあ! でしたら、上手に踊らせてくださいませ?」
 優雅なステップと理外の速度で、攻撃を避ける「霧と踊る少女」。だが、やはり完全に回避することはできなかったようで、ドレスと肌にレーザーの火傷が刻まれる。さらなる追撃にかかるドローンと、対応する少女の動きは、確かにダンスパートナーのように見えた。

「少々テンポが速くなるが、転ばないでくれたまえ!」
「あら、もっと速くしていただいても結構よ?」
 幾多のドローンと「霧と踊る少女」が、戯れるように戦場を舞う。その動きが激しさを増す一方で、フレデリックは並行して機関室の構造解析に取り掛かっていた。独自の蒸気魔法文明によって成り立つクロックワーク・ヴィクトリアの技術も、メカニックの知識に照らし合わせばある程度の段階まで推察は可能だ。
(あの配管には特に高圧の蒸気が流れている。その近くのタンクは、おそらくボイラーを稼働させるための燃料庫だ)
 この室内で迂闊に触れれば危険な――それゆえに武器になりうるものを探し出すと、彼はその位置まで敵を追い込むようにドローンを操作する。強引に追いやるのではなく、それこそリードするように、レーザーの射線で相手のダンスをこちらの意に沿わせて。

「なかなか楽しめたが、そろそろ時間のようだ」
 目的のポイントまで「霧と踊る少女」が移動すると、フレデリックは仕上げのレーザーを放った。風穴を開けられた配管から高圧蒸気が勢いよく吹き出し、タンクに満載されていた燃料が誘爆を起こす。それによる衝撃と熱の全ては、ドローンもろとも邪神を巻き込んだ。
「きゃっ………!!!!」
 強度の脆いドローンはこの爆発で跡形もなく吹き飛ぶが、同時に「霧と踊る少女」が受けたダメージも相当だった。
 折角の洋服はボロボロとなり、陶器のような白い肌に痛々しい火傷が刻まれる。爆風で壁まで叩きつけられた彼女の表情に、始めてかすかな苦痛が浮かんだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
【旅神】
やれやれ、ここまで来てまだ礼儀作法に縛られるとは面倒だなぁ。こっちは怖いのを堪えるだけで精一杯だってのに。
まあ、〈ダンス〉の経験はあるからおれなりに踊ってやるさ。死の舞踏なんて正直おっかねえけど。

向こうの一撃は詩乃からもらった加護と〈オーラ防御〉、あとは持ち前の〈第六感〉を活かした〈見切り〉で防ぐ。

要は相手の余裕を崩せばいいってことだろ。
舞踏の合間に〈目潰し〉〈マヒ攻撃〉を〈スナイパー〉ばりの精度で撃ちこみ、決定的なチャンスを与えねえようにする。
隙を見せたら、エレガントさを保ちながら間合いを詰めて、UCで動きを止めにかかる。
相手がオブリビオンなら、神サマだって動きを止めてみせる。


大町・詩乃
【旅神】

神楽舞や日本舞踊は慣れたものですし、ダンスも経験ありますから大丈夫ですよ~♪

《神事起工》で攻撃力強化

嵐さんと息を合わせてダンスしながら戦いましょう。
(手を差し出して)嵐さん、よろしくお願いしますね♪

【死を刈る一撃】等の相手の攻撃は、結界術・高速詠唱で構築した防御結界と、オーラ防御を纏って武器巨大化した天耀鏡による盾受けで、詩乃も嵐さんも一緒にガードします。

防御が突破されたら嵐さんと息を合わせて、見切り・ダンスで舞うように回避しますよ。

お返しにUC効果&神罰・雷の属性攻撃・高速詠唱・全力魔法・破魔・浄化による極大の雷撃を放って貫通攻撃。

嵐さんと私の絆で貴女のルールを乗り越えて見せます!



「やれやれ、ここまで来てまだ礼儀作法に縛られるとは面倒だなぁ。こっちは怖いのを堪えるだけで精一杯だってのに」
 お茶会を終えても続く『紳士淑女の作法ヴィクトリアン・ルール』に、流石に厭気がさしてきた様子の嵐。機関室からこちらをダンスに誘う「霧と踊る少女」は、見た目は人間でも明らかに異質な存在感を放っており、彼の第六感をしきりに刺激している。そんな状況で優雅に振る舞えというのもなかなかに酷だ。
「神楽舞や日本舞踊は慣れたものですし、ダンスも経験ありますから大丈夫ですよ~♪」
 一方、流石にこちらは神と言うべきか、邪神の圧や理不尽な法則にも詩乃は気を乱されることなく平然としている。
 自身の神力、天地に宿りし力、人々の願いと想いによって自らを強化する【神事起工】も発動して、準備は万端。敵の神威にも劣らない、静かな気迫を放っている。

「まあ、ダンスの経験はあるからおれなりに踊ってやるさ。死の舞踏なんて正直おっかねえけど」
 相方がこれだけやる気なのに、まさかここに来て尻尾を巻く訳にもいくまい。嵐はぐっと息を呑み込んで気持ちを落ち着けると、真剣な表情で隣を見る。詩乃のほうは社交界の淑女のように穏やかな微笑みを浮かべて、彼に手を差し出していた。
「嵐さん、よろしくお願いしますね♪」
「こっちの方こそ、よろしくな詩乃」
 ふたりで手を繋ぎ、息を合わせてダンスを始める。『紳士淑女の作法』に則りながら戦うために、彼らが編み出した作戦がこれだ。普通ならお互いの動きが邪魔になってしまうだろうが、本当に心が通じ合っているのであれば、問題はないはずだ。

「まあ、仲睦まじいことですね」
 ダンスを踊るふたりの猟兵を見て「霧と踊る少女」は微笑ましそうに目を細め。しかし忌まわしき邪神が定命の者に情けをかけるはずもなく、彼女もまたダンスを踊りながら攻撃を仕掛けてくる。その身より放たれる【死を刈る一撃】は、外にいたキマイラ部隊とは比較にならない威力だ。
「嵐さん!」
「おう!」
 対するふたりは女神の加護とそれぞれのオーラの力を合わせた結界、そして巨大化した神器「天耀鏡」の盾で防御を固める。蒸気をまとった邪神の魔力が、清浄なるオーラとぶつかり合って飛散する。その間も彼らはダンスのステップを止めることはない。

「お見事ですわ。では、すこしテンポを上げますわよ」
 邪神はなおも攻撃を繰り返し、優雅かつ苛烈に猟兵の守りを打ち破ろうとする。結界や盾の耐久力も無限ではなく、何度もダメージを受けるうちに少しずつヒビが入っていく。このままでは保たないと読んだ詩乃と嵐は、アイコンタクトを交わしながら互いの手をぎゅっと握り。
「……詩乃!」
「はい!」
 防御が突破される瞬間、息を合わせてステップ&ターン。華麗かつ優雅な舞踏の動きで、死を刈る一撃を回避する。
 こうも完璧に見切られるとは、これには邪神も「まあ!」と感服するほど。もう一度、今度は外すまいと追撃の体勢を取るが――ここからは猟兵の反撃のターンだ。

「要は相手の余裕を崩せばいいってことだろ」
 嵐は舞踏の合間にスリングショットを構えると、スナイパーばりの精度で弾丸を撃ち込む。仮にもヒトの姿をしているのなら、弱点もおおむねヒトと同じ部位だろう。目などを狙って攻撃が飛んでくると、「霧と踊る少女」は反射的に身を躱し、決定的なチャンスを逃す。
「まあっ……その動きから、反撃まで?」
「甘く見ないでください!」
 驚く邪神に詩乃が追撃の稲妻を放つ。これも躱されはしたものの、隙を見せればふたりのターンはまだ終わらない。
 息ぴったりのステップで、エレガントさを保ちながら間合いを詰め。白兵戦の距離まで迫れば、嵐が懐から一本の針を取り出す。

「相手がオブリビオンなら、神サマだって動きを止めてみせる」
 【針の一刺、鬼をも泣かす】。長年使い込まれて持ち主の思いが籠った縫い針には、特別な浄化の力が宿る。それはあらゆる心身の異常を癒やすが、存在自体が"異常そのもの"であるオブリビオンに刺した場合、耐え難いほどの苦痛をもたらす。
「う……ッ、あ、痛いッ!?」
 たまらず悲鳴を上げる「霧と踊る少女」。たかが針一本とは思えない激痛によって、優雅な所作が覚束なくなれば、彼女自身が定めた『紳士淑女の作法』への違反となる。ルールは全ての者に平等であればこそ大きな力を発揮する――この瞬間、邪神の力は大幅な弱体化を遂げた。

「嵐さんと私の絆で貴女のルールを乗り越えて見せます!」
 この時を待っていたとばかりに、詩乃は高らかに呪文を唱え、【神事起工】により強化された極大の雷撃を放った。
 其は、あまねく魔を祓い、邪なるものを浄化する神罰の稲妻。自分自身の力だけでなく大切な仲間との絆も含めた、正真正銘の"全力"が、霧の邪神を貫く。
「あ、あぁぁぁぁーーーッ!!!!?」
 雷撃に打たれた「霧と踊る少女」の口から、優雅さとはほど遠い悲鳴が上がる。いよいよ余裕を取り繕えなくなってきたということは、それだけ彼女が追い詰められている証。それに呼応するかのように、外では「狂気戦艦」の船足が少しずつ落ち始めていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

暗都・魎夜
【心情】
へぇ、こいつが神様ってことか
こんだけの船を動かしてるんだから、只者でないのは間違いねえな

【行動】
「いえ、素晴らしいおもてなしをいただき、大変光栄です」
「それでは、ダンスにお付き合いいただいけないでしょう、お嬢様?」

「ダンス」の心得なら、多少はあるんでね
「礼儀作法」にのっとって、ダンスに付き合う

その中で「天候操作」によって、霧を召喚し、「闇に紛れる」
相手の気配は「心眼」で探り、攻撃を「見切り」で回避
「カウンター」でUCの「切断」「カウンター」

見えないほどの刹那の一撃なら、霧もあるし、周りからは踊ってるように見えるはずさ

それじゃあ、お嬢様
船が沈むまで霧の中の舞踏会と行こうぜ



(へぇ、こいつが神様ってことか。こんだけの船を動かしてるんだから、只者でないのは間違いねえな)
 機関室で相対した邪神「霧と踊る少女」は、その名のとおり人間の少女によく似た姿をしている。だが、それで魎夜が相手を侮るようなことは決してない。どんなに可憐でも、あれが「狂気戦艦」の主であり、『紳士淑女の作法ヴィクトリアン・ルール』を定めた者に違いないのだから。
「いえ、素晴らしいおもてなしをいただき、大変光栄です」
 下手に無作法なことは言えないと判断した魎夜は、向こうの呼びかけに紳士的な言葉遣いで応じた。やろうと思えばこの程度の演技、造作もないのは先程のお茶会で示した通り。ここがまだ特殊空間の中だというなら、ルールに則ったうえで勝つまでだ。

「それでは、ダンスにお付き合いいただいけないでしょうか、お嬢様?」
「ええ、喜んで」
 紳士の礼儀作法に則って、魎夜は「霧と踊る少女」のダンスに付き合う。踊りの心得なら多少あるようで、身振りもステップも付け焼き刃のそれではない。相手の動きとリズムに合わせて、機関室がダンスホールであるかのように優雅に舞う。
「ふふ、楽しいわ……あら、霧が濃くなってきたわね……」
 少女は心から楽しそうに踊りながら【覆うもの】を発動し、霧のようなものを身に纏う。しかし同時に魎夜も、天候操作の術を使って艦内に霧を召喚していた。機関室に立ち込める蒸気と合わさって、戦場は真っ白に包まれ、ほとんど視界が効かなくなる。

「それじゃあ、お嬢様。船が沈むまで霧の中の舞踏会と行こうぜ」
 霧という名の闇に紛れた魎夜は、魔剣「滅びの業火」を片手ににやりと笑う。お互いに姿を目視できない状況でも、彼には鍛錬で鍛えられた心眼がある。高位の邪神のように強大な存在の気配であれば、間違いなく探り当てられる自信があった。
「そういう趣向ですのね。いいですわ」
 対する「霧と踊る少女」も何らかの方法でこちらの気配を察知しているようで、通り名のとおり霧の中でステップを踏みながら近付いてくる。それは異常なまでのスピードで、霧に覆い隠された不可視の一撃はたやすくヒトの命を奪う――されど、これを迎え撃つ魎夜にも策はあった。

(見えないほどの刹那の一撃なら、霧もあるし、周りからは踊ってるように見えるはずさ)
 全感覚を研ぎ澄ませ、敵の気配を読み、攻撃のタイミングを見切る。不可視の一撃が迫る瞬間も、決して慌てず優雅な振る舞いを心掛け、まるで剣舞を踊るように躱す――さっと一閃された赤い七支刀の刃が、戦場の霧をなぎ払った。
「惜しかったですわね。ではもう一度……あら?」
 その交錯は、お互いに攻撃を避けられたように見えた。しかし、一拍遅れて「霧と踊る少女」の身体に痛みが走る。
 魎夜の放ったカウンターは、しかと邪神を捉えていた。その斬撃があまりにも速すぎたがために、斬られた者ですら気付くのに遅れたのだ。

「……瞬断撃」
 技の名を静かに告げて、魎夜はピタリと踊りを止める。もしここに観客がいれば、拍手喝采は間違いなしの所作だ。
 完璧に『紳士淑女の作法』というルールに適応した、能力者の戦いに見惚れるのは「霧と踊る少女」。「なんて、素晴らしい……」と呟く彼女の片腕は魔剣によって切り落とされ、床に真っ赤な血の絨毯を作っていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
邪神が見た目で判断できないのは
身に染みてわかっているからね
慎重に対応するよ

折角だから一曲お相手願おうか
まさか踊ろうって相手を攻撃するような
無作法な事はしないよね

もちろん多少は練習してきているよ
…邪神の分霊が面白がって
練習につき合ってくれたしね

狙いはダンスの中で手を取る事
自分の手に巻いておいた
ワイヤーを通じUCを使用
しばらく人形になって貰おう

そのまま相手を操って転ばせるよ
貴族っぽくはあるかもね
悪役って言葉が前につきそうだけど

その後は蒸気機関に服を引っ掛けるように踊らせたり
破れた衣服で肌を晒したまま踊らせたり
優雅じゃない行動を取って貰うよ

一曲踊る間に淑女から離れた行動を繰り返して
弱体化して貰おうか



「邪神が見た目で判断できないのは、身に染みてわかっているからね」
 その言葉は比喩ではなく、ひょんな事故から邪神と融合した結果、現在の姿になってしまった晶は、あれらの外見と本性の違いを体感していた。どんなに淑女然とした振る舞いをする「霧と踊る少女」も、本質的に人知の及ばぬ存在。慎重に対応しなければ死か、それ以上に恐ろしい結末が待っている。
「折角だから一曲お相手願おうか」
 さりとて恐怖を表に出すのもここでは得策ではない。『紳士淑女の作法ヴィクトリアン・ルール』から外れぬように、彼女は落ち着いた所作で邪神をダンスに誘う。夜闇で染めたような漆黒のドレスを纏って、優雅に手を差し出すさまは、上流階級の淑女にも劣らぬ気品を感じさせた。

「まさか踊ろうって相手を攻撃するような、無作法な事はしないよね」
「ええ、もちろんですわ。こちらこそ喜んで」
 ここで誘いに断ることも礼を失すると、「霧と踊る少女」は微笑と共に晶の手を取る。どこからともなく音楽が流れだし、機関室をステージとしたダンスが始まった。邪神の少女は言わずもがなだが、晶のほうも相手の動きに合わせてよく踊れている。
(もちろん多少は練習してきているよ……邪神の分霊が面白がって、練習につき合ってくれたしね)
 練習中は散々からかわれたものだが、そのお陰でこうして様になった姿を見せられている。ステップの途中で相手の足を踏むような、初歩的なミスももうしない。ここが海の上の戦場であることを忘れれば、二人のダンスは見惚れるほどに優雅であった。

(こっちの狙いはもう達成できた)
 晶が「霧と踊る少女」をダンスに誘った目的は【邪神の遊戯】を発動させるためだった。彼女の手には神気を籠めたワイヤーが巻かれており、踊る時に手を取り合った際にユーベルコードが発動する。静謐なる邪神がもたらす呪いは、同じ邪神でさえ操り人形に変えるのだ。
「ふふ、とてもお上手ですわ……あら? 足がもつれて……」
 肉体的には一切ダメージを与えない呪いであるため、かかった本人も何をされたか気付くのは難しい。人形化が進行するのを待ってから、そっと相手の身体を操作する。これまで一拍の狂いなくステップを踏んでいた足がもつれ、晶にもたれかかるように転倒させる。

「ごめんなさい。わたくしとしたことが……」
「気にしてないよ。さあ、続けようか」
 謝罪する「霧と踊る少女」を支えて、ダンスを再開する晶。淑女らしい寛容な振る舞いだが、内面の心理は異なる。
 自分は優雅な振る舞いを保ちながら、相手は無様な失敗を繰り返すように操る。そうして『紳士淑女の作法』を違反させるのが彼女の狙いだった。
「きゃっ……ふ、服が……」
 蒸気機関から突き出した機械に「霧と踊る少女」の衣服が引っかかり、ビリッと音を立てて背中側の布地が破れる。
 これには少女も思わず顔を赤らめたが、邪神の遊戯は彼女にダンスを止めることを許さない。肌を晒したまま踊らされるのは淑女にとって恥ずかしく、また優雅な行動でないことは明らかだろう。

「っ……まさか、あなたが何かを……?」
「さて、どうだろうね」
 目前の少女から睨まれても、晶は素知らぬ顔でダンスを続ける。もしユーベルコードを仕掛けたのがバレて反撃されたとしても、今ならもう怖くない。自らの意思ではないとしても『紳士淑女の作法』を破ってしまったペナルティは、容赦なく課されるからだ。
(淑女から離れた行動を繰り返して、弱体化して貰おうか)
 晶と一曲踊る間に「霧と踊る少女」が取らされたルール違反は片手の指に余る。その回数分だけ弱体化した彼女に、もはや本調子の力は出せないはずだ。直接的なダメージはなくても十分に仕事は果たしただろうと、もう一人の"邪神"は満足げにステージを降りていった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レヴィア・イエローローズ
【炎心】POW
お初にお目にかかります
わたくしはイエローローズ王国が王女、レヴィア・イエローローズ
此度はあるがままのわたくしでおもてなしして差し上げましょう

UC発動
光り輝く自然階梯の姿となり、周囲の物質…エドと清導の装備を優雅に再構築していく
これなら、優雅に戦う事が出来るわね
主に支援アタッカーとして二人をサポート
物質の再構築でわたくしも優雅に相手を攻撃しながら、舞うように立ち回っていく

このまま、トドメといきましょう…
二人共、合わせて頂戴
そう言って最後の物質再構築を開始
絢爛に舞うように連携していく


空桐・清導
【炎心】POW
アドリブ大歓迎

「これはこれは初めましてお嬢さん。
私は空桐清導。二つ名をブレイザインと申します。
踊りはあまり得意ではございませんが、よろしければ一曲。」
そう言って傍らからレヴィアのUCで
優雅な装飾となったアインを抜く
[封印を解き]、アインを通して未来を見る
これで死を刈る一撃を回避出来るようにする
更に[オーラ防御]を展開して万が一に備える

UCを発動して攻撃力を上げて
踊るような足さばきで少女に接近して優雅に斬り伏せる

「ああ。テンポを合わせようエド、レヴィア。
ミストレディ。これをもってフィナーレといたしましょう。」
最後の物質再構築によって[限界突破]した刃を
二人の攻撃に合わせて振るうぞ


エドワルダ・ウッドストック
【炎心】アドリブ歓迎

失礼しますわ、お嬢様。
わたくしはエドワルダ・ウッドストック。ガーター騎士団副団長です。
おもてなしに感謝を。それでは踊りましょう、エスコートはお任せくださいませ。

レヴィアのUCの効果で優雅に再構築した武装を纏いますわ。
無骨なナイフも何の変哲もない拳銃も、紳士淑女の作法に相応しい華麗なものへと早変わりですの。
清導、レヴィアと攻撃を合わせますわ。

ナイフを手に死を刈る一撃を受け止め、華麗なステップを踏みながら拳銃を素早く抜いて反撃の銃弾を撃ち込みますわ。
そしてナイフで斬りかかりつつ拳銃をホルスターへ収納して、再びナイフで受けの姿勢へと切り替わる。
これがわたくしたちのダンスですのよ。



「失礼しますわ、お嬢様。わたくしはエドワルダ・ウッドストック。ガーター騎士団副団長です。おもてなしに感謝を」
 機関室にて待っていた「狂気戦艦」の主人「霧と踊る少女」に、エドワルダは騎士として礼節に則った挨拶を行う。
 艦内を支配する『紳士淑女の作法ヴィクトリアン・ルール』にも、文句を付けられない振る舞いを。その身に流れる高貴なる血筋の誇りが、一挙一動に気品を持たせる。
「これはこれは初めましてお嬢さん。私は空桐清導。二つ名をブレイザインと申します」
 続いて名乗りを上げたのは清導。事前の学習の成果がここでも活かされているのか、言葉遣いだけでなく立ち居振る舞いも紳士的だ。あのお茶会を乗り越えたことがさらなる自信にも繋がったのか、精悍な笑顔に気合いが満ちている。

「お初にお目にかかります。わたくしはイエローローズ王国が王女、レヴィア・イエローローズ」
 そして三人目に挨拶をするのはレヴィア。王族としての威厳を表情にたたえながら、しとやかな所作で一礼する。
 その身体は黄色い光に包まれ、挨拶の最中も徐々に変化が――角の生えたヒトから、完全な鹿の姿に変わっていく。
「此度はあるがままのわたくしでおもてなしして差し上げましょう」
 自然階梯とも呼ばれる動物のままの姿となった彼女は【黄薔薇開花・形あるもの全て掌握する鹿神】の権能を発動。
 全ての法則を無視して行われる物質再構築術式をもって、仲間たちの持つ装備をより優雅な形状に再構築していく。

「それでは踊りましょう、エスコートはお任せくださいませ」
 鹿神レヴィアの加護を受けて、エドワルダがコンバットナイフを構える。戦闘の実用性を意識した無骨なナイフも、『紳士淑女の作法』に相応しい華麗なものへと早変わりだ。性能の向上はさほどでもないが、そこは使い手の技量次第である。
「踊りはあまり得意ではございませんが、よろしければ一曲」
 そして清導も傍らから、優雅な装飾となった「ヴァイスリッター・アイン」を抜く。本人の振る舞いもあいまって、騎士道物語に登場する騎士のような佇まいだ。これほど立派な紳士淑女たちから誘われて、断るのは非礼にあたろう。

「まあ、素敵な方々。喜んでお相手いたしますわ」
 猟兵達の準備が完全に整うのを待ってから、「霧と踊る少女」はステップを踏む。激戦の中で片腕を切り落とされ、負傷と弱体化を重ねても、その所作はまだ優雅さを保っていた。蟲も殺せぬような可憐な仕草から、繰り出されるのは【死を刈る一撃】だ。
「まずは貴方。わたくしのステップに付いてこれまして?」
「もちろんですとも」
 最初の標的となった清導は、アインの機能を通じて未来を読む。この剣の能力は暴走しないように普段は封じられているのだが、今はその封印を解くべき時だと判断したようだ。揺蕩う時の流れから邪神の攻撃が放たれるタイミングを察知した彼は、紳士的余裕をもって【死を刈る一撃】を回避する。万が一に備えてオーラの守りも固める万全ぶりだ。

「素敵。じゃあ貴女は?」
「勿論、お目汚しは致しませんわ」
 すぐさま「霧と踊る少女」は次の標的を選び、踊るような攻撃を繰り返す。これに対してエドワルダはナイフを手に【死を刈る一撃】を受け止め、華麗なステップを踏みながら素早く銃を抜く。元は何の変哲もなかったその拳銃にも、レヴィアの術式によって芸術品めいた装飾が施されていた。
「次は貴女が魅せてくださいな」
 パンッ、とリズムを刻むように銃声が鳴り響き、反撃の銃弾が撃ち込まれる。並の兵士では避けようのない至近距離からの射撃――しかし、今回の相手は並ではないことは周知の事実。「霧と踊る少女」は「ふふっ」と微笑みながら、軽やかな身のこなしで弾を躱した。

「やはり、一対一では不利ですわね」
「だからこそ、協力するのよ」
 エドワルダがナイフと拳銃を構え直す間に、追撃をかけるはレヴィア。自然階梯の姿では普段の武器は使えないが、鹿神の能力はそれ自体が強大な武器だ。周囲の物質を組み換えて優美な刀剣や銃器などに再構築し、「霧と踊る少女」に一斉掃射する。
「レヴィアの言う通りだ」
 その直後、踊るような足さばきで清導が踏み込む。携えし愛剣は、封印の解放によってさらなる変化を遂げている。
 【機能解放:操刻する無双の黄金剣】。戦いの中で最適化を果たした勇者の剣が、優雅な動きで邪神を斬り伏せた。

「このまま、トドメといきましょう……二人共、合わせて頂戴」
「ああ。テンポを合わせようエド、レヴィア」
「いつでも準備はできておりますわ」
 再構築能力を駆使し、舞うように戦場を跳ねながら猛攻を畳み掛けるレヴィア。「霧と踊る少女」がそれを躱した先には、エドワルダの銃撃が待っている。ヒットを確認すれば彼女は即座に距離を詰め、ナイフによる追撃を仕掛けた。
「っ、もう終わりだなんて……わたくしはまだ満足していませんのよ?」
 息つく間もない連撃を食らった「霧と踊る少女」は、微かに眉をひそめつつ反撃のユーベルコードを繰り出すが――エドワルダはすでに拳銃をホルスターへ収納して、ナイフ受けの姿勢へと切り替わっている。戦場暮らしで染み付いた【我流・二刀剣銃術】は攻防一体。臨機応変に型を変え、戦況に素早く対応するのだ。

「これがわたくしたちのダンスですのよ」
「最後まで付き合ってもらいましょう」
 絢爛に舞うように連携する猟兵たちを相手に、「霧と踊る少女」は反撃の糸口を掴めずに追い詰められていく。蓄積されたダメージが彼女の身のこなしから精細を欠き――そこに『紳士淑女の作法』にふさわしき決着をもたらすべく、清導が切り込んでいった。
「ミストレディ。これをもってフィナーレといたしましょう」
 レヴィアの最後の物質再構築によって、黄金剣は限界を突破した進化を遂げる。エドワルダのナイフと銃撃が邪神のステップを封じ、全ての好機が整った刹那に、振り下ろされる渾身の一撃。それは戦場に立ち込める霧と蒸気を払い、邪神の心臓を過たずに捉えた――。

「……ああ。素晴らしい、ひと時でした……」

 力尽きた「霧と踊る少女」は満足げにそう呟いて、霧と共に溶けるように消滅する。
 同時に、この戦艦の動力源であった蒸気機関が停止する。連動して艦のあちこちから崩れるような音が響きだした。

 勝利を確認した猟兵たちは、すぐさま艦内より脱出。
 ドーバー海峡にて異様を誇った「狂気戦艦」は、動力源となる邪神を失い、ゆっくりと海の底に沈んでいった――。



 かくして猟兵たちはドーバー海峡の「狂気戦艦」撃沈作戦を成功させ、ブリテン島上陸への活路を拓いた。
 ここからは新たな超大国の支配領域。悍ましきUDCと蒸気魔法文明の王国、クロックワーク・ヴィクトリアとの戦いが始まるのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年12月22日


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🔒
#獣人戦線
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#UDCアース
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#クロックワーク・ヴィクトリア
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#イングランド戦線
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#狂気艦隊


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠リュカ・エンキアンサスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト