バグにまみれて呪泉郷!!
「あぁどうか、もう一度あの湯に浸からせてほしい……」
かつてはココに、ゲーム内でも有名な温泉街があった。
MODやレア装備で着飾った『けしからん水着』プレイヤー達の憩いの場だったのである。
それが今では見る影もない。
温泉は汚染され、バグにまみれた『呪泉郷』となっていたのだ。
ひとたび湯に浸かれば身体にバグが生じ、何が起きるか分かったものではない。
当然、そんな危険なエリアに近寄る者はなく、この温泉街は廃れ寂れていったのだ。
「うぅ、堂々と水着を着られるエリアは貴重だったのに
……!!」
ことの発端はバグプロトコル達の出現。
温泉街の華と謳われた女NPC達が暴走したのだ。
彼女達は『悦楽の淑女・サーペントレディ』、面倒みが良いけど妖艶でドSというユニークな性格で、男女問わずからかわれたいというものが続出するほど人気だったNPCだ。
ところが、その『ドS』という部分がバグプロトコル化にともない悪化。
性格の悪さが黒く滲み出し、温泉までもを汚染したというわけである。
●
「と、言うわけみたいですね……」
奉養・抱久(ハックバグに侵されたNPC・f41773)が困ったように眉をひそめる。
手には温泉街のパンフレットが握られていた。実は彼女も行きたかったのだろうか。
「まずはあのNPCさんを倒さないと温泉の水質も直りそうにないですね……心苦しいですが、みなさん思いっきりやっちゃってください! あ、でも……温泉が近く湯煙で視界も悪いですし、滑ったり濡れたりすると危ないですから注意してくださいね?」
ペプシ派
●第一章は集団戦の『悦楽の淑女・サーペントレディ』と戦闘になります。
湯煙で視界が遮られてくれるので、個別撃破でも大丈夫です。
元が非戦闘用NPCなのでそこまで強くもないでしょう。皆さんなら楽勝ですよね?油断しちゃダメですよ?
●第二章は冒険シナリオです。
敵を倒したことで、めでたくアイテムがドロップしました。
ところがそれは呪泉郷の湯に当たって変異した『怪しい装備』だったようです。
明らかに危ない気配がするので拾うのはお勧めしません。けしからんバグやデメリットを受ける勇気があるなら別ですが。
どちらにせよ時間経過でアイテムが消滅すれば、バグが消えて温泉街も元通りでしょうしね。
●第三章は日常シナリオです。
待ちに待ってた温泉パートです。一番風呂をいただきましょう。
バグの直ったNPCもいるので楽しめるでしょうし、プライベートスパでのんびりするもよしです。
ただし、もしかしたらまだバグが残っているかもしれません。
知らずに入れば、呪泉郷としてあなたの身体に異変が起きてしまうかも。
第1章 集団戦
『悦楽の淑女・サーペントレディ』
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POW : うふふ…この痛みすら悦楽に変わるわよ?
【武器として一時的に伸ばした爪や放つ魔力】に【悦楽と情欲と堕落】のルーンを宿して攻撃する。対象が何らかの強化を得ていた場合、それも解除する。
SPD : この子達は私の可愛い蛇達…可愛がってほしいわね
レベル×1個の脆い【金色の蛇】を召喚し、攻撃や偵察を行わせる。
WIZ : ねぇ…私を守ってくれない??ふふっありがとう〜♪
【自分が抱きついた人や物等】に密着した「己が武器とみなしたもの」全てを【魔力】で操作し、同時一斉攻撃及び防御に利用できる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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クライド・エント
空斗(f28864)に同行
おいおいここが天国か?
こんな美人なお姉さんたちと遊べるなんてな……まあ依頼だから倒さなきゃいけないんだろうけどよ
けど、ある程度の役得があっても……悩むぜ!
取りあえず湯煙で辺りは見えづらいし、接近して仕掛けてくぜ
やっぱもともとはただのNPCだし大したこと無いな…って近い近い!胸が当たってるって!
守ってって何言ってんだ、って体が勝手に…
とかでUCの力で味方の攻撃の盾にされたり同士討ちをするように、抵抗しようとしてもその度に抱きつかれて…
ちょっと楽しみすぎちまったか、まあ最後は相方と連携して周りを一掃するぜ
篠之井・空斗
クライド(f02121)と
【POW】
こんな美人でドS、確かに人気がでるのも分かるぜ…
どうせなら俺たちとも遊んで欲しいなーなんて
まあ仕事だししゃーないか、始めるぜ!
相方と一緒に戦闘に移るぜ!
同じく近距離でタイミングを合わせて攻撃してく
って湯煙で全然見えなくなったぞ、クライドはどこいった?
くそっ、しょうがねえか…
(まあ俺一人でも何とかなるだろ)
とか思ってると油断したところを爪で攻撃されてしまう
痛っ?いや、気持ちいい?くそっ力が抜ける…
そのまま抵抗できずに攻撃を食らうと、お姉さんたちの下僕になりたくなる…
そのまま味方と争うように命令されるとその通りに行動しちまう
最後は何とか正気に戻って相方と決めるぜ
カポン──
閑古鳥ではなくシシオドシの鳴り響く温泉街。
まったくの無人という訳ではない。賑わいを彩るべき客人がいないのだ。
だからだろうか、湯煙の合間からは暇を持て余したような温泉美人のNPCが何人もたたずんでいる。
今ならば彼女達を独占して両手に華も叶うだろう。もっとも、相手は美人だろうとバグっているのだが。
そんな飛んで火にいる夏の虫のように、二人の青年が足を踏み入れた。
肩を並べるのはクライド・エント(だらしない海賊・f02121)と篠之井・空斗(人間の探索者・f28864)である。
「おいおいここが天国か? こんな美人なお姉さんたちと遊べるなんてな!」
「だよな! こんな美人でドS、確かに人気がでるのも分かるぜ
……!!」
湯煙に浮ぶ美人の顔触れをざっと値踏みし、男二人がガシリと肩を組んでガッツポーズ。
アタリを引いたという幸福感を分かち合い噛みしめていたのだ。
そんな空気をブチ壊すように、クライドがポツリと呟く。
「……まあ、依頼だから倒さなきゃいけないんだけどよ」
「おい、いきなり興を削ぐこと言うなよな……はぁ、どうせなら倒す前に俺たちとも遊んで欲しいなーなんて」
「そうだよなぁ、どうせ戦うならある程度の役得があってもさぁ……くっそぉ悩むぜ!」
「悩んだって始まらないだろ? それに油断してると痛い目見るぞ。 こいつは仕事だし、しゃーないんだ……やろうぜ!」
「そうだな! おっしゃぁ!!」
空斗の鼓舞で奮起するクライドは、気合一発の大声を残し突っ走る。
湯煙で視界が悪いのであれば接近戦しかないとの独断だ。
「──っておい!? タイミング合わせろよな!? あぁ~すっかり見えなくなったよ、もう……」
足音を頼りにしようかとも思ったが、コチラの侵入に気が付いたのか周囲が騒がしい。
ざわざわと雑踏が混じり、相方の気配はさっぱりだ。
「くそっ、しょうがねえか……まあ、俺一人でも何とかなるだろ」
どうせ考えることは同じ、空斗も格闘戦に持ち込もうという算段である。
そんな矢先、早速白いカーテンを裂いて腕が伸びて来た。
「チッ、ダガーを抜く暇がない! こうなったら……ッ!!」
幸いにも敵はステゴロ、女の細腕である。
両腕に力を込めてブロックの体勢で待ち構えた。
「痛っ!? ぐ、爪か……けど浅いな! 反撃は覚悟しと、け……あ、れ……?」
「うふふ……どうかしたのかしら? まさか女だと思って、甘くみていたんじゃないわよねぇ?」
「そんな、ことは……おかしいぞ、熱い、いやこれは気持ちいい? くそっ、どんどん力が抜けていく──」
くたりと力無く膝をつく空斗。その様子を満足そうに見下ろしたサーペントレディがそっと寄り添う。
柔らかな唇を彼の耳元に触れるほど近付け、灼けるような吐息とともに囁きかけてきた。
「いいのよ、気持ちよくなって……もっと私の声に耳を傾けなさい……よくって?」
「え、ぁ、はい……」
ぐわんと揺れる視界、高まる心拍、ぼんやりと思考に湯煙が満ち、彼女の意のままに立ち上がる。
そのまま、まるで操り人形のように空斗はダガーを握りしめるのであった。
●
「見つけたっ! まずは一人目、いくぜ空斗──くうと?」
意気揚々と前線に飛び出したクライドが振り向く。
息を合わせた相棒の返事が返ってこないのだ。
「なんだよあいつ……迷子になったのか、まったく俺よりだらしないやつだなぁ」
「あら、女性を前に余所見なんて失礼じゃないかしら?」
「おっと、悪かったな。 こっちはこっちで楽しもうか!」
「うふふ、活きの良いのが来てくれたわね」
獲物を前にサーペントレディはぺろりとピンク色の舌で口元を潤す。
青年はなまめかしく動くそれに目を奪われるが、ぶんぶんと頭を振って正気を保った。
悩まないと先ほど心に決めたはずなのだ。
先手必勝、迷いごと敵を断つつもりで斬りかかる。
「きゃぁ、危ない危ない……せっかくの服が台無しね」
相手は武器も持たない元NPC。避けるのが精一杯らしく、それすらもギリギリであった。
おかげで服がだいたんに破け、もう少しではだけるだろう。
「おぉ……いやいや、そうじゃなくって! やっぱ、所詮はただのNPCだし大したこと無いな! この分だと一瞬でかたがつきそうだぜ」
「あら、そうかしら?」
クライドの下心を完全に見破ったレディは、ニヤリと口角を上げて手を離す。
おのずと、裂けた布切れがハラリと捲れ、彼女のたわわな胸元が露わとなった。
「────ッ!!(ゴクリ)」
「男って単純ね……それっ」
「んムぐ!?……って近い近い! 当たってるっていうか、埋まってるって!」
「当ててんのよ、おバカさん」
男のサガを利用され、一瞬の隙をついたレディはクライドの頭を掴んで引き寄せたのだ。
むんにゅりと包み込む乳白色の桃が二房。甘い桃のような谷間に充満する香りを鼻腔へ吸い込み、彼の頭の中には桃源郷が描かれていく。
雲のように柔らかく、陽光のように暖かな人肌、これに抵抗する方が『男が廃る』というもの。
「ふふ、嫌じゃないのね」
「お、おう、役得……これだよこれ!」
「ねぇ、踊りましょう?」
「こ、このまま!?」
「あら、いけない?」
返事も聞く前にレディは動き出す。
社交ダンスのようにピタリと身体をくっつけながら、クルリクルリと回り出す。
主導権は完全に彼女が握ってしまった。そう、彼女の思うがまま、彼女のモノ、手駒となったのである。
「あ、あれ!? 動けねぇ!?」
「今更気が付いたのね、くふふ、本当におバカで可愛い……でも楽しいのはこれからよ?」
「な、なにする気だよ!?」
「もぉっと、スゴイこと」
「もっと!?」
突然の爆弾発言にドキリと胸打つクライド。
いったいこれ以上とは、いったいナニが起きてしまうのか。興奮していると、急に背中へ激痛が奔る。
「ぐぁッ────!?」
「あぁ、可哀想……あなたのお友達、あんなに両手を真っ赤に染めて。 うふふふ……」
「そ、そんな……くう、と……?」
●
カラン、空斗が手にしていたダガーを落とす。
そうして血に濡れた指を凝視した。
「ち、ちがッ、俺、そんなつもりじゃ
……!!」
「なにが、違うのかしらねぇ? あなたも分かっているのでしょう? 自分が大切なお友達を刺したって」
「俺だけど、やったのは俺じゃなくて──」
「誤魔化してもダメ。 その証拠にほら、こんなに手を冷たくして、認めるのが怖いのよね、可愛い子──」
震える彼を後ろから抱きしめるようにレディが重なる。
そのまま慰めるように、そっと両手を包み込んで熱を分けた。
ジンと身体の芯まで人肌が伝わってくる。このまま熔けて彼女に身を捧げた方が楽になれるだろう。
いや、いっそ楽になってしまいたい。
茫然自失とした青年の心は今にも消え入ろうとしていた。
「くう、と────」
「……クライド!! そうだ、何やってんだよ俺は!!」
微かに残った意識の中に、友の声が鳴り響く。
何度も背を預けた腐れ縁の仲。そこにいていいのは、ぽっと出のレディなどではない。
「どけ、よくも操ってくれたなッ! クライド、今度こそタイミングを合わせろよ!!」
正気に戻った空斗がレディを振り払うと、ダンスを踊っている方のレディも突き飛ばす。
ようやく解放されたクラウドの方は、背中の傷を庇ってか本調子の動きが出来ていない様であった。
「うるせぇ、そっちが合わせろっての」
「まったく、しゃーないな……今日だけ特別だぜ?」
男二人は無言で頷き合うと、最初と同じようにガシリと肩を組む。
「いっくぜぇ、フレイム・ダンス!!」
「俺達の情熱を感じな!!」
燃える友情の炎が蒸気を産みだし、冷たく凍るようなサーペントレディ達の心を解きほぐしていく。
やがて炎の渦が収まると、二人に抱えられた元のNPCの姿が現れた。
彼女達は意識を失っているようだ。しかし、バグプロトコルの気配は去った。
この温泉街に、一時の平和が訪れたのである。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルナ・キャロット
温泉で放置してるだけでイイネがもらえたりちやほやされたりして楽しかったのに……!(むっつり兎)バグ許せません!
サクッと倒して温泉を元通りにします
色仕掛けは私にはききませんよ!ケモ度をもっと上げてきてください!
ドSも良さがよくわかってません。怖いこと言われるだけじゃ……?
私のプレイスキルがあれば非戦闘NPCなんかに絶対に負けませんよ。
この双剣で一撃で……ひいい!ヘビっっ!?(苦手なヘビの大群をみて思わず大ジャンプ)
絶対に負けないけど着地を滑って大変なことになるかもしれません
(なんでも大歓迎な潜在的M兎)
●
「ルナちゃん! そのレア装備、すっごいね~!! いや、もう、ほんとに色々とスゴイよ~!!」
「うんうん、流石ルナちゃんだよね! こう、レア装備が似合うウサギちゃんっていうかさ! ふひひ」
温泉街のエントランス、足湯エリアでちゃぷりと水面を撫でるルナ・キャロット(†ムーンライトソードマン†・f41791)がそこにいた。
周囲の眼差しを独占する彼女は、得意げにふわもこのロングヘアをかきあげる。
「ふふぅん。 まぁ、それほどでも……ありますけど?」
そう言いながらも、際どく脚を組み替えては自分のボディラインを強調していく。
周りでチヤホヤする男どもがレア装備目当てに褒めているわけではないことは百も承知。
あくまで建前であり、本音はトランジスタグラマーな魅力を隠しもしないルナをマジマジと見るためだ。
しかし、それを理解し黙っていてあげるのが『できた姫』というもの。
性欲でIQが下がりまくった男たちは、脳死で『いいね』を連打してくれるのだ。バカとハサミはつかいようである。
「はい、ここでお終いです! レア装備が掘れたらまた今度来てあげますから、それまでおあずけですよ!」
「そ、そんな~ルナちゃ~ん!!」
「うぅ、待ち遠しいよ……うっ!」
●
ホワンホワンと、湯煙に混じってルナの回想が消えていく。
ここは在りし日に彼女も訪れていた『いいね』稼ぎのホットスポットだったでのある。
「結局、『また今度』は来ないままになっちゃいましたね。 むぅ~ちやほやされたりして楽しかったのに……! ウサギは寂しいと死んじゃうんですよ! 陰キャの憩いの場を奪うなんてどうしてくれるんですか……あのバグ許せません!」
承認欲求に飢えた乙女の恨みは恐ろしい。怒りのあまり素が垣間見え、姫騎士のメッキが剥がれかかっているほどだ。
稀に見るやる気と闘志をメラメラ燃やし、小さな兎獣人が湯煙の中へと駆けこんでいく。
●
「見つけましたよ! ここであったが以下略、サクっと倒してあげます!」
「うふふ、まぁ可愛らしいウサギちゃんだこと。 私と遊びたいのかしら?」
姫騎士らしい名乗りも省略し、颯爽と双剣を引き抜く。
狙うは元凶のバグプロトコル、サーペントレディだ。単独で会敵した彼女はどこまでも妖艶で、大人の色気を振り撒く素振りがやたらと目立つ。
まるでルナを誘っているかのようだ。
「……もしかして色仕掛けですか? 残念、私にはききませんよ! ケモ度をもっと上げてきてください!」
「あら、そう。 ソッチの人なのね、あなた──」
「それと、ドSの方ってお聞きしました! 怖いこと言ったって平気ですよ! 悪口陰口をいちいち気にしてたら『姫』はできないですからね!」
「ふふ、そう……怖いものはないのね?」
レディは俯いて乾いた笑いをこぼす。万策尽きて、もはや諦めたのだろう。
プレイスキルの差で圧倒すれば決着は一瞬だ、双剣を構えて両脚に力を込める。
しかし、彼女は忘れていた。レディは元々このエリアのNPCなのである。
このエリアで大きく注目されるようなゲームプレイヤーの噂ならば誰もが口にするのだ。
当然、NPCもそれを耳にしているはず。
「さぁ、この双剣の一撃で楽に……あれ?」
掲げた刀身に反射し、足元が映り込む。
そこには──うじゃうじゃとのたくりまう蛇の群れ。
ルナの苦手なものとされる爬虫類たちだった。
「ひいい!ヘビっっ!?」
目にした瞬間、サッと顔の血の気が引いて青大幹ざめていく。
飛び掛かるための脚力は方向を変え、ぴょんと大きく上昇。
あるべき足場を失ったルナの大きく体幹は崩れ、湿った地面を捉えられなかった。
「きゃぁっ!?」
「あらあら……そんな『はしたない恰好』、今度はあなたが誘っているのかしら。 うふふ」
レディの見下すような視線の先には、大股開きで恥ずかしいところを開帳するルナの姿。
彼女の脚にはヘビが巻き付き、まるで拘束具のようにギチリと締め上げていた。
それは後ろ手に回した腕も同様のようであり、いくら足掻こうとも足を閉じることを許されなかった。
「いやぁ! ヘビ、ヘビがっ!!」
「怖くないんじゃなかったのかしらぁ?」
「こんなの聞いてないです!!」
爬虫類の独特なゾワリとする肌触りを受け続け、恐怖心が絶頂に達したルナの身体が小刻みに震える。
同時に、ぷしっという小さな水音が浴場に響いていく。
「うぅぅ、視ないで……恥ずかしいですぅ……」
「うふ、うふふふ……可愛いわぁ、あなた。 気にいちゃった、とっておきのサービスもしてあげる」
「な、なにを──」
レディは長い爪を伸ばすと、ルナのとても布地の小さい黄色ビキニを裂く。
下半身が完全に露わとなり、先程の水音がさらに大きくなってしまった。
「いやぁぁぁ──!!」
「本番はここから。 この子達はね、温かくて湿ったところが大好きなの。 あとは、分かるわよね?」
「う、うそです、もしかして
……!!」
蛇たちは一斉に舌をチロチロと出し入れしだし、首をもたげる。
いましがた解放された心地良い穴倉を探しているのだ。
いくばくもなく目星をつけたのか、周囲の何十と集まった彼らが移動を始める。
もしもこれが全て入るとしたら、考えただけでも恐怖で気を失いそうになってしまう。
ドSというものを侮っていた、それをこれほど後悔する日はないだろう。
「い、いやですぅ!! 許してください!! 謝りますからぁ!!」
「うふふ、いいわぁ……本当に良い声で鳴くのねぇ」
だが、手足を縛るヘビ達も反応したことは幸いだった。締め上げるような拘束が僅かに緩む。
これが最後のチャンスだと涙を零しながらを振り払い、落ちていた双剣を突き上げる。
飛ぶ斬撃がレディの背を貫いて、眩い輝きが湯煙を払っていった。
「や、った……? やだ、こんな姿見せられないです!! んも~!!」
眩しさを嫌ったのか、ヘビ達はいつの間にか霧散しており、残されたのはバグを取り除かれたNPCとルナの二人。
なんとか目的は達せたが、自身の能力により目立ちすぎてしまい他の猟兵まで集めかねない。
千切れたビキニを拾い上げると、そそくさとその場を立ち去るのであった。
大成功
🔵🔵🔵
サマエル・マーシャー
※アドリブ歓迎
湯煙で視界が悪く、足元が濡れていて滑って転ぶ可能性があるから注意した方がいい…なるほど。ならばこの場から動かずに纏めて制圧しましょうか。
武器である大剣を地面に突き刺しUCを発動。大剣から狂愛の洗脳毒電波による範囲攻撃を放ち、敵が召喚した蛇を洗脳して行動不能にさせます。
敵集団自体にも私の毒電波で行動不能になってもらいましょう。【精神汚染・精神攻撃】
見た目は地獄絵図ですが問題ありませんよね。私の渾身の愛を感じ取ってくださればNPCさんたちも目を覚ましてくださるはずです。
真実の愛によって正気に戻りハッピーエンド…という流れは世界の御約束ですから。(自分の精神がほぼ常に【精神汚染】状態)
ちゃぴ、ちゃぴ、湿った地面が水の音を鳴らしている。
サマエル・マーシャー(
電脳異端天使・f40407)の歩みと同じリズムを刻むそれは、まるでここに獲物がいますと歌っているようなものだ。
「もうそろそろ、姿をみせてくれてもいいのではないでしょうか。 私はこんなにも、あなたたちを愛しているというのに──どうして伝わらないのですか」
ゲームの世界のデータとも違うが似ている異質な存在、データのようでいてそうとも言い切れない、存在自体がバグのような彼女。
だからだろうか、侵入にはとっくに気が付いているだろうに、バグプロトコル達は警戒して近寄っては来ない。
痺れを切らしたサマエルは、変わらぬ無表情のまま苛立たしげに周囲を見渡した。
「なるほど、この湯煙が私達を阻む障害というわけですか。 愛に障害はつきもの、それはいいでしょう。 ですが────」
狂気を孕んだ真っ赤に染まる視線が下がっていく。
白く透けるカーテンのを潜るように這い出して来たのは金色のヘビ。それも彼女をゆうに包囲するほどの大群である。
たった一人に対しは過剰すぎるほどの戦力。レディサーペントがそれほどに畏れている相手ということなのだろう。
「これは、いただけませんね、えぇ」
シャーと威嚇し牙を剥く敵を前にしても、サマエルの顔に恐怖の色は見当たらない。
むしろその逆、静かな怒りさえも感じられた。
相手が本気で勝ちに来ていることに対してではない。一向に『会いに来てくれる意思を見せようとしない』ことに対しの怒りだ。
この尖兵たちは『拒絶』の証ともいえる忌むべき対象なのである。
「そうですか、もういいです。 こちらが歩み寄ってもダメなら──そちらから来てもらいましょう」
ムっと口元をきつく結んだサマエル。手には細腕に似付かわしくない大剣が握られている。
だがよく見れば握りは逆手。刃を地に向け振り下ろす。
まだ蛇の一匹すら足元には辿り着いていないというのに。
「この大地ぜんぶすべてが
花嫁たちのヴァージンロード。 さぁそのヴェールを脱いで、曝け出してください────」
途端、バヂリと爆ぜた静電気を皮切りに、電波のドームが広がっていく。
蒸気の壁に差し掛かると、激しい干渉音を上げながら、狂ったように点滅を繰り返す。どう考えても危険な電波だ。
だが、いまさら異変に気が付いてももう遅い。
湯煙を盾にしていたことが仇となり、隠れていたレディたちは為す術もなく頭の中を侵食されていった。
「いやぁぁぁぁ!!!」
「いぎぃぃぃぃ!!!」
晴れた浴場に散開するレディたちは、誰もが皆一様に頭を抱え泡を噴いている。
無理矢理、強制的に、力づくで頭の中を弄られ、常識を書き換えられているのだ。
そのせいか身体にこそ異常は見られないが、その目はギラギラと異様な雰囲気を光らせていた。
「やっと、逢えましたね」
花嫁の狂った姿を眼にして、元凶ともいえる女がぽつりと呟く。
毒電波の中心にいながらも、当のサマエルはケロっとした様子で目元を緩める。
否、彼女はとうに狂っていたのだ。重すぎるほどの愛に。
「う、うふふ……私の、私のモノよ!!」
「違う!! 私のモノよ!!」
正気を失ったレディたちは、金切り声で所有権を口にし、我先にとサマエルのもとへ走り出す。
狂気に感化された瞳はサマエルの身体へ注がれ、誰もが手に入れようともみくちゃに握り締める。
「邪魔しないで!!」
「うるさい!!」
「キズものにすれば……私だけのモノにしちゃえば
……!!」
愛おし過ぎてもはやまともな思考が出来ていないらしい。
先を越されるくらいならと、レディの爪がサマエルの衣服をズタズタに引き裂いていく。
すると、自分達のものよりもさらに大きな胸がまろび出てしまった。
「いいですよ、何をしても。 私の献身なんかで満足してくれるのでしたら」
嫌がるどころか、本人の許可が降りる。
これには周囲の色めきも増長し、さらに歯止めが無くなっていく。
サマエルの色白の肌は全てを晒し、余すところなく触れられ、揉まれ、穢れていった。
柔肌へ沈み込む指先はさらに深く奥へ。同性だからこそ知っている秘密へ潜り込んでいく。
吸われ過ぎて赤くなった唇型の痣、弄られてピンと立つ突起、混ざり合う汗の臭い。
まるで壊れた玩具のように全身を玩ばれ、それを愛おしそうに眺めるサマエル。
ハッキリ言って全てが異常だ。修羅場、はたまた地獄絵図とも呼べる最悪のありさま。
そんな一人の女を奪い合う醜い争いのさなか、狂っていたのは女たちだけではなかった。
「ぐぅ、あぁぁぁ!!」
「ひぃぃぃ!!」
突如としてレディが次々と断末魔を上げる。その首筋には金色のヘビ。
自ら放った下僕の餌食となっていたのだ。
だというのに、女たちはサマエルの女体を貪ることをやめない。いや、止められない。狂った愛は盲目的に劣情を捧げるのみ。
とうとう最後の一人が倒れると、周囲からバグプロトコルの気配が消え去った。
やがて元のNPCの姿を取り戻した女性がうぅんと呻くのが聞こえだす。
「よかったです。 真実の愛でハッピーエンド……御約束ですから」
愛欲にまみれてとんでもない恰好のサマエルは、満足そうにそう呟くのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ダーティ・ゲイズコレクター
私はダーティ!ダーティ・ゲイズコレクター!
凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです!
ドSってことは他人に意地悪するのが大好きな方ってことですよね!
つまりこの世で一番のワルを目指す私にとって非常に邪魔な存在です!
私のワルさをゴッド・ゲーム・オンラインの歴史に刻み付けると共に
ドSなNPCの皆さんを一人残らず駆逐してみせます!
しかし湯煙!これじゃ私が隠れちゃう!
なのでUC【悖悪!誘睡堕纏囁穢風】で湯煙を吹き飛ばし
ついでにドSなNPCさんたちを眠らせちゃいます!
眠らせた後は簀巻きにして{立て看板}でフルスイングして空の彼方へホームランです!
廃れたとはいえ、かつての栄華を忘れられない者もいる。
プレイヤーキャラがいなくとも、お目当てのNPCキャラであれば少なくとも拝めるのだ。
そういったワンチャンスに命をかけるスケベも世の中にはいるのである。
「あ、あれはサーペントレディさん! 良かった、まだいたんだ! あぁ、改めて見ても美しい~!!」
「そう、ならもっと近くで見せてあげようかしら」
「はぇ!? そ、そそっそんあ畏れ多いですよ!! あ、でもぉ、そこまでおっしゃるのでしたら、えへへ……」
ろくに鍛えてもいない初期スキンの青年は、びろんと鼻の下を伸ばしながらもレディの魔の手に堕ちようとしていた。
その時である。
どこからともなく振って来た『看板』が二人の間にズドンと突き刺さり、絶対に遮断してやるとばかりに隔てた。
「その人の視線を独り占めするのは、そこまでです!」
「んもぅ、どこのドラ猫かしら? 私の邪魔なんてする無粋な子は──」
「私はダーティ! ダーティ・ゲイズコレクター!!」
湯煙を貫く大声の影。やがて薄れゆくヴェールが降りると、そこには気合いの入ったビキニに身を包むダーティ・ゲイズコレクター(Look at me・f31927)が仁王立ちしていた。
組んだ両腕にグッと力を入れると、とても豊満な胸がたゆんと揺れ、素人プレイヤーも思わず生唾をのむ。
「凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです!」
「おぉ……大きい」
「ふぅん、まぁいい勝負ってところかしら。 でもちょっと姦しいわねぇ、ボク君はもっと大人の魅力を楽しみにしてるんでしょう? ねぇ?」
「ふぇぁ!? そ、その、そうですね、ハイ!!」
看板をどけたレディが素人君のアゴをくすぐって誘惑する。
女性に免疫の無さ過ぎる彼にとっては刺激があまりにも強く、しどろもどろに空返事。
いいように掌の上で踊らされていた。視線は再び彼女に独占されてしまう。
「むっ! そうやって人を下げる言い方、感じ悪いですよ! そんな意地悪なこと言うなんて本当にドSなんですね! つまりこの世で一番のワルを目指す私にとって非常に邪魔な存在、超えるべきライバルってことです!」
「ふふ、なぁにそれ? こっちとしてはどうでもいいのだけど────邪魔、よねぇ。 ボク君、あっちでもっとイイコトしましょう、二人だけで」
「は、はひぃ!!」
負けず劣らずのボディラインをビキニでさらに主張しているというのに、素人君は完全にレディの虜となっていた。
言われるがままに奥へと連れ去られ、湯煙の中へと消えていく。
「むむ~!? なにかオカシイですね!? さては卑怯な手を使って心を奪ったのでは!? くぅ、流石はライバルです!!」
ダーティの推測は当たっていた。敵の能力により、触れた素人君の意識は既に雌雄を奪われている。
これではいくら努力したところでダーティに注がれる視線は無いのだ。
「こうなれば卑怯には無法です! デビルキング流の正攻法でいかせてもらいますよ! まずは私を隠す湯煙ごと────」
立て看板を回収し、団扇のように大きく扇ぐ。
「煌く瞳を覆う昏き風よ! 明晰なる心を穢し堕としめる甘き囁きを以て静寂を齎せ!!」
つむじ風が形を造ると、周囲の湯煙を取り込んで色付いていった。
薄っすらと赤紫色に染まるソレは、ダーティに瓜二つの虚像を成す。
それらがすぅっと奥へ流れ込むと、隠れていた二人組を包み込んでしまった。
「なによ、これ……はぅ……」
「れ、レディさん!? あれ、ほわぁ……」
毒ガスかと思いギョッとしたようだが、すぐに欠伸をしながら男女が倒れ伏す。
毒ではなく、無害な睡眠ガスだったのだ。
人質として連れ去ったはずのサーペントレディだったが、不殺の攻撃で来るとは予想もしていなかったらしい。
デビルキングワールドのいまいちズレた感性を知らないのだから仕方もないというもの。
「ふっふっふ、見てもらえなくなるのは残念ですが、ライバルは超えねばならぬもの、です! 覚悟はいいですね? 返事は聞きませんけど、ワルですから!」
身動きも取れず意識も失った二人のもとへ、悠々とした足取りのダーティが追い付く。
手にした『立て看板』でスコップのようにレディをすくいあげると、投石器のようにブンッと振るって放り投げてしまった。
フルスイングされた彼女は空の彼方へと消えていく。その遥か遠くでバグプロトコルの気配が消えるのを感じ取った。
これで、無事に平和を取り戻すことが出来たというわけである。
しかし、彼女も予期せぬ誤算があった。
大きなフルスイングの動作にビキニが耐え切れなかったのである。
ハラリと落ちる布切れが、素人君の顔に舞い落ち鼻をくすぐった。
「もが……なんだこれ、おぱぁぉぃ!?」
鼻血を流しながら見上げる空。そこには生涯忘れることはないであろう絶景があったという。
大成功
🔵🔵🔵
天羽々斬・布都乃
「せっかくの温泉を台無しにするなんて……」
『布都乃、元凶はあのバグプロトコルじゃ。
成敗してしまうがよい』
「はいっ!」
式神いなりの言葉に頷き、天羽々斬剣と布都御魂剣を構えます。
『布都乃よ、蛇たちが襲ってくるぞ!』
「大丈夫です。――視えています」
右目の金色の瞳で未来を見通し、敵の攻撃を回避しましょう。
どれだけ蛇の数が多くても、未来を見通す瞳の前では無意味です。
すべてを紙一重で見切って回避し――
「これは温泉の恨みです!」
刀で一閃。敵を斬り裂きましょう。
「これでゆっくり湯治ができますね」
『布都乃よ、実はお主、温泉に入るのが楽しみだっただけなのでは……?』
「だって、普段は温泉いく余裕ないじゃないですか」
「いなり、早く早く! 温泉が冷めちゃいますよ!」
『世間知らずにもほどがあるじゃろう。 風呂とは違うのだ、冷めはせん』
湯煙の暖簾をくぐって現れたのは黒髪の少女。それと、その後ろをちょこちょこと小さな四つ脚で追従する一匹の狐であった。
先を急ぐ少女、天羽々斬・布都乃(未来視の力を持つ陰陽師・f40613)は突然ぱたと足を止める。
そんな主の脚にこつんと頭をぶつけた『いなり』は、不思議そうに彼女を見上げた。
あれほど浮足立っていたのに、その肩はふるふると小刻みに揺れている。どうにも様子がおかしい。
「そ、そんな……これが有名な温泉なの……?」
絞り出すような布都乃の悲し気な声。
いなりもひょこりと脚の間から覗き込むと、眼前にはバグにまみれた異質な水溜りが広がっていた。
禍々しく、不可思議で、形容しがたい、変わり果てた温泉の姿。夢を壊すのには十分すぎるほど酷い状態である。
『布都乃、すぐには入れないと説明を受けたであろう。 これも敵の仕業じゃ』
「せっかくの温泉を台無しにするなんて……」
『気持ちは分からんでもないが、しっかりいたせ』
「だって、修行では凍えるような冷たい滝行ばかりで……」
『えぇい女々しいぞ、神社にも風呂くらいあるではないか』
「あれとは全然ちがうんです! あ、でも
視えますよ、いなり!」
そう言うと、布都乃の右眼がぽうっと光る。
未来視の力、その一部が彼女の脳裏に遠くない先の景色を映し出す。
そこにはかつての栄華を取り戻し賑わう温泉街の姿。布都乃がこの地へ訪れたことで、未来が大きく動いたのである。
「わぁ、みんな気持ち良さそうで羨ましいですね~」
「これ──そういった私欲に力を使うでない。 バチが当たっても知らんぞ」
「こ、これは仕事の内です!」
二人(一人と一匹)が楽しそうに談話していると、妖艶な女の声が響き渡る。
「あら、お客様なんて珍しいこと。 うふふ、どう? 楽しんでいるかしら?」
この廃墟と化した温泉街を牛耳る元NPC、レディサーパントその人だ。
距離を取ってはいるものの、武器もなしの現れるには不用心すぎる。
何か隠した策があるのか、余裕ぶった嘲笑の顔で少女を見つめ返していた。
「むぅ……こんな状態で、楽しいわけないじゃないですか」
『この気配────気を付けい布都乃、あのバグプロトコルこそ元凶じゃ。 成敗してしまうがよい』
「はいっ!」
鋭い返事一声、その場の空気が一気に張り詰める。
先ほどまでの年頃らしい女の子とは打って変わり、布都乃の纏う雰囲気は完全に巫女としての使命に生きる者となっていた。
「ふぅん、お堅い感じが嫌ぁねぇ。 からかっても面白くなさそう」
「当然です! こちらは本気ですから!」
『布都乃よ、敵の戯言に耳を貸す必要はないぞ。 心が揺れれば刃も揺れるのじゃからな』
「そうでしたね、もう大丈夫です────いざ、参ります!」
覚悟を決めた少女が二振りの神剣を抜く。
天羽々斬剣と布都御魂剣、対の切先は真っ直ぐに構えられており迷いの一切も見られない。
その若くして熟練された剣筋には、さしもの『いなり』も無言の頷きで合格を与えていた。
先手を取って、阿吽の呼吸の布都乃といなりが飛び出していく。
濡れた足場もなんのその、修行の成果をめざましく見せつけた。
「はぁぁぁ────!!」
『布都乃よ、下じゃ! 蛇たちが襲ってくるぞ!』
「大丈夫です────全部視えていましたから」
水切りの溝に隠れ潜んでいた金色のヘビ。
レディがあえて湯煙の境界に陣取っていたのも、彼らの存在を気取らせないためだったのだ。
しかし、未来を知ることの出来る布都乃に伏兵など何の役にもたちはしない。
薄暗く影になっているはずの足場をスイスイと跳び、水切りを完全に回避したルートを選んでいた。
「嘘──なんなのよあんたっ!? 在り得ないッ!! く、生意気よ! あとで覚えてなさい!!」
罠が無駄と察するや、レディは踵を返して霧の向こうへ逃げる姿勢。
単独では及ばないのであれば、避けられないほどの数を集めようというのだろう。
だが、それすらも布都乃には既知の未来。どこへ向かうかなど初めから分かっているのである。
「逃げても無駄ですよ────これは温泉の恨みです!!」
「キヤアァァァァ!!!」
少女の刀が一閃交差する。
斬ったのはレディの背に浮び出るバグの証、それだけを正確に討つ。
するとNPCの顔から毒気抜けたように晴れやかとなり、ふっと意識を失って倒れ伏した。
『ぐむっ────!?』
「いなり、大丈夫ですか!?」
『し、心配するでない。 ご婦人の顔に傷を付けるわけにもいかんじゃろう』
自らの身体をクッションとして受け止めた狐が、レディの下から這い出して来る。
まだまだ修行が足りないなどと口煩く文句を言っているが、優しいその一面を垣間見て布都乃は微笑んだ。
「よかったです。 それに……これでやっと、ゆっくり湯治ができますね」
『布都乃よ、いやに張り切っていると思ったが──実はお主、温泉に入るのが楽しみだっただけなのでは……?』
「だって、普段は温泉いく余裕ないじゃないですか」
『むぅ……』
どうしたものかと難しい顔を浮かべる『いなり』を抱き上げ、布都乃はルンルンと弾んだ歩調で目的地へ急ぐのであった。
大成功
🔵🔵🔵
四王天・燦
Sな歓待も楽しいかもね
装備なんて野暮なものはいらないや
そして小細工する蛇に気付かず石鹸で足を滑らせるのでした
何匹もの蛇が衣服の中に入ってくる悍ましい快楽に悶絶だよ
着衣を責められ脱がされ、助けを呼びたくても恥ずかしくて呼べやしない
蛇好きのドMと罵られながら人の来ない区画に拉致され(単独描写希望です)、黄金の蛇だらけの温泉に沈められるぜ
ひいっ、そんなとこ…っ!?
全身蛇で蹂躙されて錯乱
失神…前に気合と根性でレディに倒れ掛かって八重歯を突き立て、魂喰らいの接吻(吸血版)で倒すとするよ
ぅぅ、蛇はやだ…
…あぅ、蛇が…欲しい
二律背反の呻きを、まさかの二体目のレディに聞かれ新たなる蛇責めが行われるのでしたとさ
「へぇ、ここがドSな歓待してくれるって噂の温泉ねぇ」
湯煙を払って水面を覗き込む銀髪の少女。湯気たつその水鏡に写るのは好奇心に満ちた顔と狐の耳。
小さな波が揺れると、四王天・燦(
月夜の翼・f04448)の口元がにやにやと歪んだように見えた。
いや、実際彼女は笑っていたのだ。
生粋の快楽主義者である燦にとって、戦いも快楽も等しく娯楽なのだから。
「ん、おっと汚れが────」
覗き込んでいた自分の首筋に、どこで付けて来たのか白い水滴が伝っていることに気が付く。
丁度いいとばかりに短剣を置くと、温泉を掬って洗い流そうと手を伸ばした。
その時である。
チャリ……と金属の擦れる音。それは今しがた地面に置いた短剣のものに違いない。
「なんだ……? あ、おいお前ッ!?」
何事かと振り向くと、世にも奇妙な、金色のヘビが剣を咥えているではないか。
カラスが光物を収集するとは聞いたことがあるが、爬虫類にもその気があるとは聞いたことが無い。
ともかく、自分の大事な得物を盗まれてはかなわない。
急いでその場を立ち上がり、噛まれないようにと頭の方を押さえにかかる。
「こいつ、盗賊のアタシから盗もうなんて生意気だぜ! このぉ────!!」
とはいえ、既に二手三手遅れた状態。先を往くヘビの頭となると捕まえるのも一苦労。
ここは一気に飛び掛かるのが吉と、踏ん張るための一歩を差し出した。
だが、湯煙の満ちるこの場で不注意をするべきではなかった。
既に他のヘビが策を講じて石鹸を配置していたのである。
ものの見事にそれを踏み、漫画のようにすってんころりんと引っ繰り返ってしまう。
「なん、だぁッ!? 痛たた……踏んだり蹴ったりだぜ、くそぉ」
「うふふ、とんだお間抜けさんが掛かったわねぇ」
「ハッ──!? 誰だお前!!」
尻もちをついた姿勢では格好がつかないが、それでも語気が強く正体を尋ねる。
声の主はあえて答えはしなかったが、湯気のカーテンを捲って現れた姿が全てを物語っていた。
燦にも見覚えのある姿、依頼のバグプロトコル、サーペントレディだ。
「現れたな! 待ってろ、いま退治してやるぜ────」
「クスクス……武器も持て無いのに?」
「そんなの関係……なんだって?」
レディに言われてようやく気が付く。自分の四肢がまったく動かないということに。
いつの間に這い寄っていたのか、金色のヘビ達が無数に絡みつき、強固な拘束具としてギチリと締め付けていたのだ。
「アタシを嵌めやがったなッ!!」
「あら心外、
ハメるのはこれからよ?」
「うわっ!? こ、コイツ等に内を指示しやがった!?」
「
生意気なのはどっちか、ちゃんと教育してあげなさいってだけよ。 うちの子達に酷いこと言ったでしょう? うふふふ、私ねぇ、あなたみたいな勝気な子の鼻っ柱が折れるところを見るのが大好きなの」
「ひぃ、くそ、やめろぉッ────!!」
もぞもぞと服の中が蠢き出す。おぞましい嫌悪感でもがこうが、四肢を固定されてはかなわず。
鱗状のヘビの冷たい質感がひやりと擦れ、火照った身体を刺激する。
「ひゃぁ、そんな、とこ
……!?」
「くす、もう可愛らしい声を出しちゃって。 さっきの威勢はどこへ行ったのかしらねぇ?」
「うる、さいぃ……んんッ!!」
気丈に振舞うフリをしても、身体がいうことを効かない。
ざわりざわりと胸の上を這い、堅いものが擦れて刺激する度に、燦の腰は浮き、背は反り返る。
大きく開かれ脚と腕でそんな動きをするものだから、さぞカエルのように惨めで情けない姿に映ることだろう。
燦の尊厳は大きく崩れ去り、その目には涙が伝いポロリと零れる。
「ぐす、うっく、うぅ……」
「いいわねぇ──すっごく気に入られたみたいよ、あなた。 特別にいいところへ連れて行ってあげちゃおうかしら」
「い、嫌ァ!!」
「だぁめ、文句を言う子にはこんな布切れもいらないわね?」
「きゃぁっ!!」
レディの長い爪が燦の衣服を真っ二つに裂いて捨てる。
中から現れたのは、貧相な身体を亀甲縛りのように巻き付く蛇たち。
レディはあえて苦しませるように燦の尻尾を掴むと、恥ずかしい部分が天に仰ぐように持ち上げた。
「ぐ、いぃぃ!!」
「あら痛かった? それとも気持ち良かったかしら? んふふ、もうどっちか分からないかしらねぇ」
●
ほどなくして連れてこられたのは暗い暗室のような蔵の中。
ひんやりと冷気が肌を撫で、燦の感度をさらに引き上げる。
「ここはねぇ、うちの子たちの繁殖所なの。 あなたはそのお嫁さんになるの。 ねぇ、嬉しいでしょう?」
答えは無い。恐怖に溺れた燦は既に気を失っており、逆さまになった彼女の顔は黄色い水で濡れていた。
その様子すらもレディには面白いのか、ニヤリと笑みを浮かべて少女を放り込もうと構えた。
その一瞬の隙、燦はカッと白目のまま目を見開き、レディの白い太ももへとかぶりつく。
身体で唯一動くのは口、その牙をもって最後の力を振り絞ったのだ。
「きゃぁぁ!! なにするのよ、この小娘……やだ、力が吸われ────!?」
「んっぐ、ぷふ……っはぁ、はぁ!!」
どさりと燦が落ちる。その音を聞きつけてか、蔵のヘビ達がぞろぞろと迫って来た。
「ぅぅ、蛇はもうやだ………あぅ、蛇が……欲しい────なんだこの気持ち、もしかしてバグまで吸ったんじゃ?」
既に足元まで辿り着く蛇を見下ろしながら、彼女は茫然と立ちすくむのであった。
大成功
🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
ここが、あの、なんとか言うぴこぴこ?の中の世界ですか……
けしからん、というのはよく分かりませんが……
人々の憩いの場は取り戻さねばなりませんね
水辺での戦闘ということで水着を着用
今年作った一番新しい物を
手には聖槍を携えて、いざ出陣
足場の悪いところでの戦闘も慣れたもの(地形耐性・環境耐性・足場習熟・悪路走破)
魔力でコーティングした眼鏡で視界も確保(視力)
【怪力】を以って聖槍を振るう
爪よりも遥かに長いリーチを活かした【聖槍繚乱】で先制攻撃
これは強化ではなく私の戦闘技能の賜物、解除されることはない
純粋な戦闘能力において、非戦闘用に劣る道理もなし
鎧袖一触にまとめて【薙ぎ払う】
柔肌を締め付けるような際どい白ビキニの女が、不審な動きで温泉街を彷徨う。
あちこちを触れ周り、首を傾げては眼鏡を光らせていた。まるでタイムスリップしてきた人のよう。
「ここが、あの、なんとか言うぴこぴこ?の中の世界ですか……特段いつもの感覚と変わりないといいますか、本当に現実と同じなのですね」
オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は『ゲーム』というものに馴染みがないようで、現実と瓜二つの世界の相違に疑問符を浮かべる。
しかし、いくつかのオブジェクトには当たり判定がなかったり、ただのハリボテで機能しないものに直面すると興味深そうに眺めまわしていた。
「なるほど、よくは分かりませんが、なんとなくつかめたような気がします。 少なくとも、敵の隠れていそうな場所はないってことだけは、ですが──」
施設側には異常は見られない。やはりあの汚染された温泉にこそ元凶が潜んでいるのだろうと鋭くアタリをつけていた。
ならばと聖槍を携え、もうもうと上がる湯煙の方へと睨みを利かせる。
油断大敵。まずは白いスクリーンを見つめ、本作戦における注意事項を脳裏に浮かべて再確認をすることに。
「そういえば、『けしからん』というのはなんだったのでしょうか。 よく分かりませんが……まぁ私には関係ない事でしょう」
うんうん、と頷くたびに揺れるパツパツな白い布地。窮屈そうに悲鳴をあげるそれこそまさに『けしからん水着』なわけであるが、オリヴィア本人は知る由もない。
ここが栄えていた頃ならば、男たちが殺到していることは間違いないだろう。
「ともかく、人々の憩いの場は取り戻さねばなりませんね」
湯煙へ入る前に、魔法で眼鏡に曇り止めのコーティングを施し突入する。
●
温泉の水面と足場の境界、その間際に立ってようやくオリヴィアが気配を感じ取る。
眼前の奥に揺れる影、オブリビオンに間違いない。つまり目的のバグプロトコルだ。
鋭く目を尖らせるた彼女は、迷うことなく矛先を向けて跳びかかっていった。
「ッ────!!」
声も無く突く一閃。滑る足場を苦も無く渡り継ぎ、湯船を一つ越えた先にいる影を貫いた。
だが、手ごたえが薄い。拭えぬ不安を口にすると、妖艶な返事が返って来た。
「……やりましたか?」
「残念、惜しかったわねぇ。 ちょっと痛かったけど」
影が揺れ動き、ボワっと掻き消える。
白いヴェールを脱いで現れたのは、脇腹を負傷したサーペントレディの姿であった。
紅いドレスと血でさらに赤く彩っているが、当たり所が悪かったのか大きな胸がはだけてしまっている。
「陽炎で少しズレましたか、でも次は外しません」
「はぁ、お気に入りのドレスだったのに酷いことするわねぇ。 その水着は私への当てつけのつもり?」
「なにを言っているのか分かりかねますね」
「あらそう。 なら同じ気持ちを味わえば分かってくれるかしらぁ?」
そう言うと、レディの爪が長く伸びる。およそ短剣ほどはあるだろう。
それでもオリヴィアの聖槍に比べればリーチ差を考えるまでもない。
敵と距離を取りつつ、圧倒的な優位を維持し続けていた。
「無駄ですよ。 純粋な戦闘能力ではあなたに勝ち目はありません。 先程のようなまぐれも期待しないことですね──やぁッ!!」
容赦の無い槍の攻撃、それを爪で弾いた瞬間、手元に伝わる破邪の気配が薄まるのを感じ取る。
「これは────!?」
「んふふ、綺麗な物って汚したくなっちゃうのよねぇ」
「だからといって、切れ味が無くなったわけではありません! あなた一人くらいなら私自身の力でどうとでもなります!」
「いやぁん、怖い怖い」
人気NPCとして、伊達に言い寄って来る男どもを受け流して来ただけはあり、レディがのらりくらりとヘビのように動くので胴を貫けない。
これでは埒が明かないと、大薙ぎで払う構えを取る。
「ふふふ、あなたの眼鏡──綺麗ぇ。 汚したくなっちゃうわよねぇ?」
「しまっ────!?」
敵の攻撃は爪だけではなかった。大技を見越して素早く魔力の礫をオリヴィアの顔目掛けて放つ。
魔力コーティングは上書きされ、曇らずの眼鏡を白い靄が覆っていく。
「やられました、どこにッ────」
「こ、こ、よ」
蛇のように強かなレディは、いつの間にか背後へと移っていた。
そうしてオリヴィアのはち切れそうな水着を乱暴に鷲掴む。
「ひやぁんっ!?」
「つぅかまえた。 それじゃ、さっきのお返しね、それっ」
「いやぁぁッ────!!」
ブチリと避ける布の音。
もとから限界ギリギリの張力だったのだ、いとも簡単に脱げ落ちてしまう。
そうして穢れなき純白の肌がまろび出てしまった。
「あら、全然遊んでないのね。 こんなに良いモノを持ってるのに」
「よ、余計なお世話です! 離れなさい!!」
槍の柄を持ち変えレディの腹を押しのける。
突き飛ばされた勢いが強かったのか、敵は浴場へと転げ伏していた。
「こちらも、辱しめられたお返しです! 我が聖槍の閃きを見るがいい! たぁぁ────!!」
横一線の大薙ぎが決まると、レディの身体からバグが抜けてく。
ついでに周囲の湯煙までもを一掃してしまい、オリヴィアを隠すものが無くなってしまった。
「や、やり過ぎました……水着、どうしましょう!!」
必死に腕で隠すも、大きすぎるのが仇となり苦戦する。
そうやって騒ぐものだから、余計に周囲の猟兵の視線を集めてしまうのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ミノア・ラビリンスドラゴン
バグプロトコルの存在こそがけしからんのですわー!!
それはそれとして温泉……
プレイヤーの方々を迷宮に誘致する参考になりそうですわね!
【プログラミング】で地形データに補正をかけて……バグそのものは排除できませんが、これで多少は滑りにくくなった筈!
【拠点構築】の【応用】ですわ!
爪で襲い掛かってきたら……【ドラゴニック・パニッシャー
】!!!!!!!
バグで強化されていようと非戦闘用NPC、ドラゴンプロトコルを相手に出来よう筈もありませんわ!!
数に恃んで来るならばトラップカード発動! スネアトラップで足を取って動きを止めますわ!(罠使い・侵入阻止)
ドラゴン偃月刀で片っ端からズバズバ【蹂躙】ですわよー!!
熱く煮える源泉の注ぎ口、ドラゴンマーライオンという謎のオブジェの上に立って眼下を睨む謎の少女が一人。
彼女は湯水の温度にも負けない程に腹の底を煮えたぎらせていた。
「なぁにが、『けしからん水着』ですのよ! それくらいでプレイヤーが釣れるなら、いくらでも着てやりますわよ!! むしろバグプロトコルの存在こそが『けしからん』のですわー!!!」
ゴウゴウと燃ゆるバックエフェクトを使いこなし、ミノア・ラビリンスドラゴン(ポンコツ素寒貧ドラゴン令嬢・f41838)が魂の叫びを反響させる。
それもそのはず、少女の正体はドラゴンプロトコル、つまるところ管理する側なのである。
今回こともあろうか、その彼女の前で元NPCの暴走、はてや観光地の廃墟化などもってのほか。
普段どれだけ自分がイベント運営に苦労しているのかと、もはや八つ当たり気味にブチ切れているというわけである。
ひとところ気持ちを吐き出してスッキリしたのか、ミノアは急にケロっとした様子を見せる。
わざわざ高いところに登ったのは、お子様特有の衝動ではない。広く見渡せるポジションをしっかしろ見極めていたからだ。
「それはそれとして元は有名な温泉……プレイヤーの方々を迷宮に誘致する参考になりそうですわね!」
目を細め、在りし日の姿を想像する。確かに導線が整っており、道行く人の視線誘導も理にかなった配置。
製作者目線だからこそ分かる裏事情に深く頷いた。
「ですが、今はバグに都合の良い棲み処……癪なので少し手を加えさせてもらいますわ」
管理者データツールを開くと周辺の解析情報がバッと羅列される。
慣れた様にその文字列から地形データを引き出し、バグに汚染された水回り以外を閲覧することに。
「水はけのよいタイルは吸水率をガッツリ上げて乾燥、滑る大理石にはグリップを付与して……ちょちょいのちょいですわー!!」
『ッターン』とエンターキーを弾く動作を空に描き、データ改変を完了する。
わずか数秒足らずの職人芸。若年ながらも堂に入った仕事ぶりには、余程の苦労を積んだ形跡が感じられた。
そのはずだったのだが────
「っとと、アー手ガ滑ッテシマイマシタワー……ふむふむ、あっ、このアセット良いの使ってますわねー保存っと、あらぁこっちも欲しかったやつですわ~!」
ちゃっかりと火事場泥棒に興じていた。
もっとも、データ上のやりとりであるので、本当に盗んでいるわけではない。
ちょっと瓜二つのMODを造らせてもらうだけ。自作が苦手なのだから、模倣する方が手っ取り早いのだ。
「これはバグプロトコルを退治するための必要処置ですわよー! 仕方のないことなのでしてよー!!」
別に誰に聞かれているわけでもないが、若干の良心の呵責からか、一人言い訳を口ずさむ。
そんな彼女の声を聴きつけたのか、怪しい影が背後へと忍び寄る────
「甘いですわね! このフロアのことなら全てお見通しですわよ、ドラゴン・パニッシャー
!!!!!!!」
「きゃぁぁぁ!!」
瞬時に召喚されたドラゴン偃月刀がサーペントレディを切り裂いた。
バッサリと割れるその中で、バグが消滅していくのが目視できる。
しかし、まだ湯水の汚染は消えていない。変異したNPCは一体ではないのだ。
「お~っほっほっほ! ダテに普段からボス役を兼任してませんわ! 自分を囮にするのは得意でしてよー!!」
「あら、『私』を一人くらいやったくらいで調子に乗らないでほしいわね。 それに、言ってて恥ずかしくなにのかしら、それ──」
「よ、余計なお世話ですわよ!!」
痛い所をつつかれて慌てふためくも、ミノアはすぐに戦闘態勢を構える。
なにせ彼女の眼前には、幾人ものレディ達が鋭い爪を光らせているのだから。
偃月刀のリーチで勝っているとはいえ多勢に無勢。
いかんせん手数が足りない。もっとも、それはいつものことなのだが。
「うふふ、小さい子を痛めつけるのも楽しそう。 大丈夫、おねぇさんに任せれば怖くないから──」
じりじりと距離を詰め、レディ達が一斉に駆け出す。流石、同じモデルなだけはあり息がピッタリと合っている。
ところが、突然その過半数が足を止めた。
「待ってましたわ、トラップカード発動! 『スネアトラップ』!!」
「な、なによこれッ!?」
彼女達の足元のタイルが割れ、小さなアーチを描いて足首に食らいついている。
先程の地形データ改ざん、その時点で仕込みは既に終わっていたのである。
先頭のレディが振り返れば、斜め一直線に並ぶ自分達。その異様な並びに悪寒が奔る。
「ま、まさか────」
「その『まさか』でしてよ! みんなまとめてズバーッっとお逝きあそばせですわー
!!!!!!!」
ドラゴン偃月刀の意匠が咆哮する。
龍の宿るようなバフが浮き上がり、長く伸びる胴が彼女達の横を通り抜ける。
その爪が切り裂いた軌跡をなぞってレディの半身が崩れ落ちると、大量のバグが空中へ溶けていくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
試作機・庚
ほう…ここがMMO世界ことGGOデスか…
っていきなりバグまみれじゃねえデスか
元が善良なNPCとはいえここまで進行してたら切り捨てるしかないデスね…
ってドロップ品があるエネミー扱いデス?
しかもレアドロ有り?そうなると話は別デスね
狩って狩って狩りまくってレアドロ手に入れるデスよー!
使用UCは【我が先を阻む者無し】
レアドロ堀りの時間デスよ!
エレクトリカルなコミュニケーション発揮させて誰にも邪魔させないデス
…ところでこのドロップ装備もバグってないデス?
まぁ私自身バグみたいな物デスから長い付き合いなので気にしないデスけど…
まぁいっか!
あらかたの敵が散った温泉街。方々に戦闘の形跡がみられる場所が散見された。
幸いなことにゲームの世界、施設や土地が破壊されるようなことはなく、破壊不能判定に守られているため少々歪な光景となっていた。
「ほう……ここがMMO世界ことGGOデスか……とはいえやっぱり、どれだけ現実に寄せてもゲームっぽいところはあるみたいデスね」
試作機・庚(
裏切者・f30104)は曇り出したゴーグルを外して、蒸れた首元を広げる。
レプリカントとはいえ、これだけ湿度が高ければ視界不良にもなるのだろう。
裸眼になった緑色の眼を光らせ、改めて現場を確認していく。
まずは謎の黒ずみや謎の液体が視界に映り、やがて湯煙の奥の湯舟に留まる。
今まで眼にしたものはそれほど違和感を感じなかったが、そこだけは違った。
モザイクのようなものがスイと流れていたり、水柱のように波間が暴れていたり、あるいは虹色に変色する液だまりがあったりするのだ。
ただのバグではない。それはもうド級にバグっている、ドバグである。
「……っていきなりバグまみれじゃねえデスか。 これなら廃れても仕方ないデスよ」
唖然としていた庚がようやく口を開いた。
しかも、その間にもバグ同士が干渉しあってさらに被害を広げているではないか。
「たしかバグプロトコルの影響デスよねこれ──元が善良なNPCとはいえこれほど被害を出しているなら切り捨てるしかないようデスね……」
データと物理で相違はあるとはいえ、『造られたモノ』という共通点に思う所があったのか、庚は憂いのあるトーンで呟く。
そんなブルーな空気もすぐに一変する。
ふと目の端に、テカテカと外枠が点滅する自己主張の激しい物が落ちていたのだ。
いわゆる『ドロップアイテム』である。
「コレって他の猟兵が倒したやつデスよね、もしかしてバグプロトコルってドロップ品があるエネミー扱いデス?」
チキチキと脳内の電卓が弾かれ、庚の
目の色が変わる。
(ここでいう目の色が変わるとは、物理的に変わることを意味する。ちなみに金色に光っていた。レプリカントアイは不思議に満ちている。)
「しかも敵は元NPC……つまり普通のドロップテーブルとは異なるはずデス、まだ見ぬレアドロが掘れるチャンスデスよね? そうなると話は別デスね」
ジャキリと不吉な音を鳴らし、慣れた得物を握り締める。
敵が引き裂かれてるイマジネーションを想起し、湯煙に浮ぶ影をロックオン。
「エレクトリカルなコミュニケーション発揮させて、誰にも邪魔はさせないデス。 楽しいレアドロ堀りの時間デスよ!」
「きゃぁぁぁ!!」
ドロップ品を確認するため、近接攻撃で確実に切り伏せる。
サーペントレディのデータが散っていくと、ポトンとお目当てのモノだけがその場に残された。
ところが外枠は白く、自己主張も控えめ。あまりレアそうではない。
「これはコモンくらいデスかね。 さすがに一発ツモとはいかないようデス。 ならアタリを引くまで無限ガチャデスよ」
「いやぁぁぁぁ!!!」
その後もバッサバッサと切り伏せる。
だんだんと痺れを切らし、苛立ちが得物を握る力をさらに強めていった。
斬る度に効率化し、最短行動でドロップの確認と敵の索敵を同時にこなし、鬼のようなスピードで屑アイテムの山を築いていく。
●
残る最後の一人を斬った時、ようやく虹色に輝くアイテムが出現した。
言葉に表せない達成感と幸福感が庚の心に溢れていく。
これは性交にも勝る快感だ。脳を焼かれる瞬間とも言われるほどである。
「ふぅ、この瞬間があるからドロ堀は止められないデスね」
ようやく遭えたレアアイテムを前に、わずかに呼吸を荒げた彼女が顔を近づける。
どんな装備なのかとアイテム詳細を見るためだ。
しかし、途中でその動きが止まる。
アイテムがどうにも変なのだ。眼の異常かと思い擦ってみるが変わらない。
目の前で、あの温泉のように変色するなんて信じたくはないのだ。
だが現実は非情である。
「……このドロップ装備もバグってないデス? まぁ、私自身バグみたいな物デスから長い付き合いなので気にしないデスけど……まぁいっか!」
せっかくの苦労を水の泡にしたくはない。
正常性バイアスとでもいうべきか、バグに慣れている彼女はなんの疑問もなく喜ぶのであった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『呪いの装備、使うかはあなた次第!』
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POW : デメリットなんて怖くない!見つけ次第装備してみる。
SPD : 呪いの力には頼らない!無視する。
WIZ : 使わないけど一応回収はしておこう。
|
お疲れ様です。猟兵の皆様の活躍により、この温泉街からバグプロトコルの気配が見事消え去りました。
そのはずだったのですが、どうにも残滓の気配が────
訝しんでいると、サーペントレディの落としたドロップアイテムが眼に留まります。
おや、敵になっていたことで思わぬ副産物があったようですね。
しかも、幸運なことにあなたの見つけたそれは中々お目に掛かれない『レア装備』!
持ち帰らない手はないでしょう。
特に着ていた衣服が破れてしまった方には好都合でしょうね。
でも待ってください、先程の怪しい気配かココから放たれているようです。
つまり、『バグっている』可能性があるのです。
下手に触れば、手痛いバグに感染し、『けしからん』ことになるやもしれません。
それは例えば身体の一部が肥大化するだとか、あるいは感性の変化、もしくは思っていることとは違う行動をとってしまうだとか。
バグは何が起きるか決まっていません。なにせ予期せぬ不具合といものがバグですから。
もしかしたらこれ以外の症状もあるでしょう。それは皆様の方が詳しいのでは?
ともかく、警戒するなら無視して去ってしまってもいいでしょう。
アイテム判定のそれは、皆さまが触れなければ時間経過で消失るすのですから。
ルナ・キャロット
なんでも大歓迎
ひどい目にあいました…。当分お姉様NPCには会いたくないです。
装備も壊されてケモセーフ…アウトですね恥ずかし…
こ、これは激レアなけしからんビキニ!噂には聞いてたけどすごいデザインですね…!
だ、大丈夫ですよね?際どすぎてBANされませんよね?(心配しつつもレアドロの喜びで無警戒いそいそ)
(なんとなくお尻がむちむちしたりなんとなく発情期の兎の様になってむっつり姫度があがるけど違和感を覚えない
鏡を出して自分のアバターを見ます!んへへ私可愛い…スクショ撮ったり堪能しちゃいます
なんだか裸より恥ずかしい気もしてきましたが…。
こんなの着て温泉行ったらおじさんたちが喜んじゃいますね……ふへへ…。
千切れたビキニを握り締め、兎獣人の少女が物陰に潜む。
お尻隠して耳隠さず。バレバレの隠れ方なのだが、肝心の部分が隠れていれば問題ない。
ルナ・キャロット(†ムーンライトソードマン†・f41791)は今にも消え入りそうな小声で一人愚痴る。
「はぅ……ひどい目にあいました……当分お姉様NPCには会いたくないです」
バッサリといかれた布切れをなんとか結び直そうと苦戦するも、そもそも際どいデザインなのだ、結び目を造れるほどの余裕はない。
あれこれと悪足掻きをするも無駄としり、尻をどうやって隠そうかとため息をつく。
「壊された装備も拠点に戻れば直せますけど、この場はどうしようも……うぅん、獣人だし生えてるしケモセーフ────なわけないっていうかアウトオブアウトですよね、あぅぅ恥ずかしぃ……」
自分の魅力を最大限に魅せることに慣れているルナだが、最後の一線までは超えまいと心に誓っている。
だからこそ、今その一線をゆうに超えている非常事態に頭を抱えているのだ。
人がいないからいいものの、誰かの目があったらと考えるだけで顔を真っ赤にして湯気を上げてしまう。
所詮、素はインキャの初心なのである。
「ん? あれって────激レアなドロップ!!」
物陰から顔を出したルナの顔色が一変する。
さっき倒したサーペントレディの側に、外枠がビカビカと虹色に輝くアイテムボックス。それを眼にしたのだ。
恥を棄てて跳び付くと、さっそく中身を物色する。
ポンとルナの手の上に出現したのは『とてもけしからん水着』というものであった。
「こ、これはマニア垂涎の超激レア装備! 『けしからん水着』をさらに上回る『とてもけしからん水着
』……!! 噂には聞いてたけど本当にすごいデザインですね
……!?」
それは布というよりほぼ紐。水着という概念を考えさせられる哲学的な逸品。
もはや常識では推し量れないものとなっているが、扱いとしてはちゃんと『装備』になっている。
運営は何を考えてこんなものを実装したのか。
「(ごくり)レア装備とはいえ、これは……で、でも何も着ないよりは────」
マシかもしれない。
そう考えた瞬間、自分の中のセーフティラインが大きくズレる。
すると仕方がない、緊急時だからと、どんどん言い訳が浮かび上がり、自己肯定感が増していく。
「だ、大丈夫ですよね? 際どすぎてBANされませんよね? 運営さんが実装したんだしセーフですよね?」
いそいそと細い糸をつまんで、晒された股の縦スジに食い込ませる。
これは裸よりも恥ずかしい恰好なのでは、という疑問が頭をよぎるが、やってしまったものはしょうがない。
勢いに任せて上のビキニも取り替える。
「ふ、ふふ、もう後戻りはできないですね」
恥ずかしさで震える声。どうみても強がりなのだが、一応確認してみようかと姿鏡を取り出す。
ヤケクソで全身をくまなく眺めていく。
すると、思っていたよりも悪くない気がしてきた。
いやむしろ似合っている。今までで一番自分の魅力を引き立てている気さえしてくるではないか。
「あれ、結構イイカンジじゃないですかこれ? ふふぅん、なんだかプロポーションも良くなって見えますねぇ。 シェイプアップ?ってやつですよねきっと」
先ほどまでの恥じらいはどこへやら。すっかり大人びたルナの身体に見惚れだす。
特に顕著なのはヒップライン。
以前は若々しい張りがあったが、今ではぷるんとした弾力で成熟した果実を思わせる。
気取ってモデル歩きをしようものなら、プリンのようにたゆたゆと揺れ動く。
この新しい魅力の発見はルナに大きな自信と、承認欲求を助長させてしまうことになる。
「んへへ、私可愛い……(パシャリ)あ~でも流石にコレはSNSに上げられないですよね……」
ゲームとしてはOKでも他の媒体ではセンシティブ判定を受けかねない。
しかし、どうしても今すぐこの姿を見て欲しい。
疼いて興奮して抑えられないのだ。
「あっ、でも『裏アカ』なら──死蔵しているアカをちょっと弄って、顔を隠せばバレないですよね?」
思いつくや、すぐにパパっと操作して写真を撮る。
もちろん際どく狙ったショット。捨てアカなのだからハメを外してしまえと強気になっていた。
「わ! もう反応ついてます! ふぇ、こ、こんなに『いいね』がいっぱい
……!!」
エロのパワーは偉大だ。凄まじい速度で拡散されてルナの承認欲求を満たしていく。
おまけに、もっと見せてとおねだりの要求まで山ほど届いていた。
「し、しょうがないですねぇ。 もう少しだけ、サービスしちゃいます!」
一線を越えない誓いとは何だったのか。
完全にラインを超えたポーズや接写、雰囲気の飲まれたルナは止まらない。
「いいですよぉ、もっと褒めてください! あぁでも、こんな文字だけじゃなくて実際に褒めてほしいです。 もしもコレを着たままお客さんが帰ってきちゃったら……ふへへ」
けしからん自撮りに夢中で気が付いていないようだったが、既にかなりの時間が経過していた。
それは温泉が直った報を受けたプレイヤーたちが戻ってくるのに充分すぎるほどに。
気が付けば、彼女の背後の湯煙からガヤガヤと賑わいの声が漏れて来るのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ダーティ・ゲイズコレクター
鼻から出血していた方を介抱するのに時間がかかってしまいましたね!
負担がかからないようにお姫様抱っこして安全な場所に搬送しましたが
まったく血が止まらなくて大変でした!
そのあとビキニパンツの屈強なおじさんに引継ぎをお願いしたら
すぐに治ったようでよかったです!
それはそうとこのドロップアイテム…
「けしからん」ことになる…つまり怒られるような状態ってことは
ワルになれるレア装備ってことですね!
早速装着しましょう!
(意気揚々と装着すると急に自分の露出の多さと他人の視線が気になって恥ずかしさで身を悶え始める)
は、はわわ~!なんですか!この気持ちは!
い、いやぁ~!み、見ないでくださいぃぃ!
恥ずかしいですぅぅぅ!
「おっと失礼しました。 ちょっと派手に動き過ぎたみたいです」
ダーティ・ゲイズコレクター(Look at me・f31927)は、ひらひらと落ちたビキニのトップスを拾い上げる。
その所作に一切の恥じらいはなく、むしろ堂々としていた。
というよりも、裸体を見られて恥ずかしいという概念が無いのかもしれない。
「ふぁ、ふぁひ……ふぉかまいなく……(ふがふが)」
小さな布切れを取り上げると、その下からは鼻血を吹き出す素人プレイヤーの姿。
青年は目をカッと見開いており、驚いたように一点に視線を固めて硬直している。
おまけに鼻声なうえに、口に血が入るせいか呂律もおかしい。どうみても異常事態だ。
「えぇ、どうしたんですか!? もしやライバルの攻撃でしょうか? 大変です、すぐに安静なところへ連れて行きまよ!! よいしょっと!!」
「ふぁぶッ!? おふぉ~!!」
仰向けの負傷者を運ぶなら、当然お日様抱っこのかたちになる。
素人君のヘッドポジションはダーティの豊満な胸の横位置、二の腕とサンドイッチ状態でガッチリとホールドされていた。
むにゅりと埋まる彼がもごもごと息苦しそうに藻掻くせいか、ダーティもくすぐったがって嬌声を漏らす。
「ひゃんっ、もうジッとしていてください! 鼻を押さえてないと血が出ちゃうでしょうが!!」
止血のためにわざと押し付けていたらしい。
ぎゅむ、とさらに力を込めて『極上クッション』の中に沈めると、ダーティは急いで浴場を離れていった。
●
施設の中を通り抜ける途中、見慣れぬ集団とバッタリ出くわす。
皆、屈強なムキムキのダンディズムに満ちた紳士達。なぜか上裸の海パン一丁だが、温泉なのだから不思議はない。
「あっ、ちょうどいいところに!」
「む、どうしたのですかな? 私どもは、ようやくココが安全になったと聞きつけたのですが、まだナニか……?」
「それがですね、ライバルは私がやっつけたんですけど、この人が
……!!」
「ほぉ、血が……いえ、これは鼻血……なるほど。 だいたい分かりましたぞ。 こちらで引き受けましょうマドモアゼル」
「いいんですか!? なら遠慮なく────」
「もが、もが~!!?」
「ふっふっふ、往生際が悪いぞボーイ。 おおかた、こっそり忍び込んだ『けしからん』ヤツだろう。 こってり『絞り』あげてやるから覚悟するのですぞ」
「もんげ~
!!!!?」
紳士らしくマナーにうるさいらしい。
マナー違反の素人君をひょいと抱えると、グフフと怪しい笑みを浮かべながら個室へ消えて行った。
「これで解決ですね! そういえば、ライバルが落としていった『コレ』について聞くのを忘れてました」
ダーティの手には激レア相当のドロップアイテムが握られていた。
開いてみると、中からは『超!けしからん水着』なる名称のアイテムが姿を現す。
「けしからん……? そういえば、さっきの彼も『けしからん』って怒られてましたね────つまり、ワルの証ってことじゃないですか!! まさに凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王な私にうってつけ、早速着てみましょう!!」
血で汚れたビキニをバッと豪快に脱ぎ捨てると、迷うことなくそれを身に纏う。
デザイン的にはもとから着ていたものとそう変わり映えはしないが、心なしか生地が薄い。
というよりも透けている。薄っすらとピンク色が浮かび、日の丸ビキニになってしまっていた。
「うぅん……あまりワルって感じはしませんねぇ? しっくりこないっていうか、なんか……ちょっと……落ち着かないです」
普段の彼女からは想像もできないほど、もじもじと身を縮こませる。
だんだんと顔もカーっと熱くなっていく。
自分の感情を理解できず、混乱した彼女は勢いに任せて外へ駆けだした。
ともかく涼しい空気に当たらなければと、火照った身体を疼かせているのだろう。
そんな彼女の脚がピタリと止まる。
今度は他の一般客も来場してきたのだ。先ほどの紳士達と同様に、安全を聞きつけたのだろう。
「わ、多くの人がこっちを見てる────う、嬉しいはずなのに、は、はわわ~! なんですか! この気持ちは!?」
彼女に無かったはずの『羞恥心』という感情。
怪しいビキニを着てから急に芽生えたソレに振り回され、思わず反射的に胸を隠してしまう。
それが悪手であった。
人は隠されると余計に見たくなってしまうモノ。
なんだなんだと、男性陣が興味津々で囲み出す。温泉再開のデモンストレーションとでも思っているのだろう。
「へぇ、なんだろう。 新アイテムのお披露目イベ?」
「ねぇ、お姉さ~ん! なんで隠してるの~? いいじゃん見せてよ~!」
『見・せ・ろ! 見・せ・ろ! 見・せ・ろ!』
いつしかコールが始まり、中にはダーティの腕を剥がそうと引っ張るものまで現れるしまつ。
「い、いやぁ~! み、見ないでくださいぃぃ! 恥ずかしいですぅぅぅ!」
その叫びも虚しく、御開帳された彼女の胸は、集まった多くのギャラリーの見世物になってしまうのであった。
大成功
🔵🔵🔵
サマエル・マーシャー
私の服はホロドレスですから直そうと思えば一瞬で直せますが…折角のレア装備。性能を試すのもいいでしょう。課金アイテムのデビルアクセサリーのようにも見えますが―――
(装備すると南瓜行列SDイラスト2023を等身大にしたような姿に)
(口調と仕草が
小悪魔化。欲望のリミッターが少し抑えられなくなる状態異常。)
※後はおまかせでお願いします。アドリブ歓迎。
乱れた姿でくたりと力尽きる女たちの散らばる浴場。
その端でサマエル・マーシャー(
電脳異端天使・f40407)が身体の汚れを洗い落としていく。
温泉こと汚染されてはいるが、シャワーだけなら問題はないようだ。
キュっと栓を閉める音が鳴る。
彼女の裸体をいくつもの雫が流れていき、水をしっかりと弾く瑞々しい白肌が湯気をのぼらせていた。
「さて、と────あとは服ですが、ホロドレスなのでタオルさえあれば直ぐに着替えられるんですよね……」
サーペントレディたちに破かれたというのも、その場を盛り上げるための演出に過ぎない。
『破けた』というデータをホロドレスに反映させていたのだ。
愛のためならば、彼女はそれくらいの手間も惜しまない。
むしろそれで喜んでくれるのであればやすいものだ。
「そういえば、彼女たち、ナニか落としていましたね。 身体を拭けるものだとありがたいのですが────」
レディたちとサマエルの愛の結晶とでもいいたげに残された置き土産。
そのひとつをおもむろに開けてみると、中には堅く反り立つ太い棒。
禍々しく尖った先端は女を泣かせるのに十分な長さを誇っている。
「あぁ、なにかと思えば角ですねこれ。 ゲームの課金アイテムというやつでしょうか……タオルではないのが残念ですが、せっかくですし────」
彼女たちが残したとなれば、その愛を無償で受け入れるべきである。
気持ちを無下にしたくはないと、サマエルは警戒もせずに頭へ載せた。
すると、彼女のホロドレスが急に反応し始める。
こんなことは初めてだと驚いていると、全身をサキュバスコーデに染められていった。
「こ、これは────!?」
気が付けば、サマエルの角は癒着したように外せなくなっている。まるで生前から生えていた身体の一部のように触感や振動まで感じ取れるのだ。
それだけではない、衣装は尻肉を持ち上げるようなホットパンツに、寄せ上げるようなチューブトップ、さらに自前の羽根さえ悪魔のそれに似た造詣へ変えられている。
「あーし、どしたん、これ……? え、ってか、喋り方まで変くね?」
今度は自分の口から出る言葉に驚愕する。
まるでらしくない、ギャル語になっているのだ。
これでは完全に別人、他人の身体に入り込んでしまったような錯覚に陥る。
「ヘ~イ、彼女! なに辛気臭い顔してんのさ! せっかくのハロウィンなんだし、もっとハメ外しちゃおうよ~!」
「ハロウィン~? もう遅いっしょ。 つぅか、なに言ってっか意味不すぎんだけど」
「いやいや、そんだけ気合入ったコスしてそりゃないじゃん? あれ、もしかして俺、フラれてる? ハァ……しゃぁねぇ、次探すか」
突然話かけてきた男の背を眺めてようやく気が付く。
周囲の様子までもがオカシイことに。
そこは元居た浴場ではあるのだが、ネオンやミラーボールで彩られたディスコのように様変わりしており、いつの間に出現したのかコスプレした男女で溢れていた。
だが、よく見ると身体の端々がブレていたり、飾りがチラチラと点滅したりしている。
どうも過去の映像を投影しているようだ。
「あれってホロじゃね? つーことはぁ、バグったの着けてあーしのホロドレスが『激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム』したん?」
要約すると、ゲーム世界の過去のログデータを呼び起こしている。
つまりこのアクセの元々の持ち主、その追体験をさせられているわけである。
「ふ~ん、そういうことね。 おけまる~、ならヤることは決まりっしょ」
だんだんと自分が自分じゃなくなっていくのを感じる。かといえ、抵抗したいとも思わない。
この身体は快楽を求めている。ならばその衝動に突き動かされてしまえばいい。
若い身体を持て余した『誰か』を演じるがままにペロリと唇を舐めて品定め。
やがてその眼差しは、隅の方で孤独に佇む少年に向けられた。いわゆるナード君である。
「トリックオアトリート」
「へ、ぼ、ボクになにか用ですか!?」
「お菓子か、悪戯、お約束っしょ?」
「え、その、突然だから今は────」
「ブブー時間切れ。 なんでー、今から悪戯しちゃいまーす、ぴすぴす」
顔を隠しながら配信用の端末に向けてピースを作ると、指を閉じて目線隠しとして目元に掲げる。
カメラは二人を映し出し、突然の口づけをしっかりと捉えた。
「んっ……ぷふ、ごちそーさま」
「へ、えぇぇぇ!?」
「そんじゃ、次のトリックオアトリート」
「ま、まって────」
「はい時間切れ~。 お菓子のキョーセーチョーシュー?しちゃいまーす」
ナード君はおどおどと事態の把握ができず混乱している。
そんな彼を玩び、クスクスと嘲るようにサマエルが指を這わせていく。
青年の胸元、ベルト、そしてチャック。
「うぇ~い、チェリー味のキャンディ発見伝~」
「ここで!? ちょ、ちょっと困ります!?」
人目があろうと関係ない。
○○喰いの記憶を憑依したサマエルは、くちゃりと唾液で濡れた口を開いて頬張るのであった。
この奇妙なバグが終わるのは、彼女の胃が白く満たされたあとだっといという────
大成功
🔵🔵🔵
試作機・庚
【おまかせ】
…さっきのレアドロ結局拾ったデスけどなんかあまり変わらないデスね
空データバグだったんデスかね…?
頑張って損したデス…
まぁいいやしばらく観光しておくデスかね
(バグ内容おまかせ庚さんはバグがなにか起こっててもいつものことと気にません)
サーペントレディを狩り尽くして得たレアドロップ。
それを満足そうに開けた試作機・庚(
裏切者・f30104)の表情は落胆に変わる。
あれだけビカビカと派手に輝いていたくせに、いざ開けてみれば埃のようなものがポフンと出ただけで空だったのだ。
「『empty』……無を取得ってやつデスか? 期待外れも大概にしてほしいデスね……」
本来、敵になりえないNPCからのドロップ。それは運営も予期していない事態だったのだろう。
形だけはドロップしたところで、中身が設定されていなかったのかもしれない。
「ハァ~(クソデカ溜息)────頑張って損したデス」
急に熱が冷めてしまった庚は、虹色の空き箱をポイと投げ捨てる。
狙いはゴミ箱、彼女は投げた時点で入ると確信しているため既に視線を外していた。
コロン、ガコ────
「空っぽなだけあって良い音デスね。 まぁ、ゴミで遊んでいても虚しいだけデスけど……気分点火でもしたいデス」
それは当然のようにスリーポイントを決めた音。
ところがそれだけでは終わらない。庚の見ていない後方では異常事態が発生していた。
なんとゴミ箱のテクスチャが急に乱れだし、パッと消え去ってしまったのだ。
完全なスケルトン状態、中のゴミがどうなっているかまでクッキリと視認できている。
あの空箱には『バグ』が残っていたのだ。触れた物に異常を与える性質、それは庚も例外ではないだろう。
「……? 今、ナニか変な感じがしたような気がするデスね────けどステータスに異常無し、本当にただの気のせいだったようデス」
この『スケルトンバグ』、当事者には何も異常性は感じられない。
干渉しているのは『他人にどう映るか』である。
彼女は知らないが、現在の庚の姿は『全裸』。装備に無が上書きされているのである。
いつもは肌の露出を極力避けているはずの庚。その鉄壁の牙城はあっけなく崩壊していた。
●
散策をしていると、長い直線に湯を流す妙な施設を発見する。
源泉では火傷する温度を空気に晒すことで調整するもの、と説明書きにある。
見ればあちこちに湯の花が咲き、白い結晶が香りを楽しませてくれた。
「温泉街というだけあり、湯冷まし用の散歩ルートがあるのは嬉しいデスね」
温泉からバグプロトコルが消えたことにより、晴れて再開したこの街。
待ちに待っていた者は多く、既に何人ものプレイヤーが集まっていた。
そんな彼らの視線が温泉にではなく一人の女性に注がれる。
『(ぼそぼそ)おい、あれッ! すげーぞ、痴女だ!』
『(こそこそ)マジかよ、すっげぇ! このゲーム、裸スキンなんてあったか?』
『(ひそひそ)何でもいい、目の保養だ! たっぷり目に焼き付けようぜ!』
普通に考えたら運営に通報モノだろう。
しかし、あわよくば女湯を覗きたいなどと心に秘めていた不埒者達に見つかったのがマズかった。
彼らは謎の団結力を発揮し、のんきに散歩する庚を囲んでいく。
徐々に、それでいて他の客に気が付かれないように素早く。
自分たちの身体をバリケードにして全裸少女の保護に努めていた。
「おや? なんだか混んできたようデスね。 流石は人気観光地デス」
彼女は知らない。
この一帯だけ異常に人口密度がましているだけだということを────
『近くで見るとマジすっげぇ』
『分かる。 どれだけ頑張っても、あんな完璧にはならないよな』
『大きすぎないところが良いっていうか、あの双子山はもはや美を感じる
……!!』
「……? 確かにこの風景は侘び寂びを感じるデスけど、なんでコッチを見ながら言うんデスかね?」
ぷるんと揺れる胸へ集まる視線。
とはいえ、庚なんかよりも大きな者や際どい服装のものはいくらでもいる。
なぜならここは『けしからん水着』が流行る温泉街なのだから。
だからこそ自分がそんな目で見られているとは考えもしなかった。
実際には誰よりも『けしからん』恰好なのだが。
『ダメだ、もう我慢できねぇ』
『やるか』
『おう』
「あの……通れないのデスが」
『いや~すみません、俺達の向こうからもドンドン人来がちゃって』
『おっと、もっと詰めて、ほらほら』
『わっとぉ、押されちゃったな~』
庚の包囲網はほとんど詰められて満員電車状態。
その中の一人が躓いたように彼女へもたれかかる。
わざとらしい彼の顔は少女の胸をクッションにした。
むにゅんと潰れる柔肉、滑るような美しい肌。包み込まれた男は至福の声を漏らす。
『ふわぁ、やわらけぇ~』
『あっ、抜け駆けかコイツ! お、俺も!』
『早い者勝ちだ!』
タガが外れた飢えた男たちの腕が伸びる。
四方八方、女体をしゃぶりつくそうと容赦がない。
「なにするんデスか!? 一般人でも許さな────あれ?」
黙っているわけにもいかず、庚が反撃しようと力を込める。
だが、成人男性一人すらビクともしない。
身体そのものが装備扱いの彼女は、バグによりその力を一時的に失っているのである。
「うそ、そんな────!?」
初めての無力感。初めての異性への恐怖。
庚は泣きそうになるのを堪えながら、男たちの毒牙にヤられるのをただジッと耐えるしかなかったという。
大成功
🔵🔵🔵
天羽々斬・布都乃
アドリブ大歓迎
「この装備は……?」
『ほう、どうやらレアドロップアイテムのようじゃな』
目の前に落ちていたのは、小動物用の装備。
式神のいなりの目が光ります。
『ゲーム内のペットや使い魔用の装備じゃな。
布都乃が持っていても仕方あるまい?
ここは妾が身につけるのが良いと思うのじゃが?』
「はいはい、欲しいなら素直にそう言ってくださいね」
いなりに装備品をつけますが――
『ぬ……?身体が勝手に……!?
こ、これは、呪いか!?
いかん、布都乃、妾から離れるのじゃ!』
「……ふえっ!?」
飛びかかってきたいなりが、私の帯を解いて……
袴を咥えて街の方へ走り去ってしまったのでした。
「ちょ、ちょっとー、返してくださーいっ!?」
『これ、待て待て! 布都乃、戻るのじゃ!』
「え? 温泉行くんですよね、こっちで合ってますよ?」
『そうではない、よく見てみるのじゃ』
抱きかかえた『いなり』の忠告に従い、天羽々斬・布都乃(未来視の力を持つ陰陽師・f40613)は何事かと振り返る。
目をやると、さきほど倒したバグプロトコルの代わりに不思議な箱のようなものが出現していた。
その不思議さと言ったら、やたらとビカビカ輝くものだから、思わず眩しいと怯んでしまうほど。
「ひゃう!? なんですかコレ!?」
『ドロップアイテムじゃな。 ゲームのお約束というものでのう』
「なんか……やけに詳しいですね、いなり────」
『どこかの世間知らずと違っての』
「んも~! それ言うの禁止です!」
『ほほほ、悪かったの。 それより早う開けるのじゃ! 甘露じゃといいのう!』
「もぅ、急かさなくても逃げないですよ。 いなりって、たまに子供っぽくなりますよね……よいしょっと」
鼻を近づけフンスフンスと興味津々のいなりを降ろすと、布都乃は玉手箱のようなそれを開ける。
いなりは待ちきれないようで、ペロリと鼻の頭を舐めては飛び跳ねていた。
「あら? これって装備……でしょうか? 食べ物では無くて残念でしたね」
『ふぅむ、致し方あるまいて。 しかし、どうやら布都乃には着れぬようであるぞ』
涎を引っ込めると、いなりはキリっと身繕いを正して目を光らせる。
すっかりいつもの年長者としての顔付に戻っていた。
「分かるんですか? 私、ゲームのことはさっぱりです」
『うむ、これなるはゲームのペッ──もとい使い魔の専用装備であるぞ』
「いま、ペット言いそうになりませんでした?」
『ええい、や、やかましい! 大事なのは、布都乃には無用の長物ということじゃ!』
「はいはい、欲しいなら素直にそう言ってくださいね」
ペット用ハーネスに似た装備を広げてあげると、履かせろとばかりにいなりが後ろ足で立ち上がる。
小さな四つ脚にそれぞれ袖を通すと、不思議とピッタリ納まる。
まるで初めから寸法を合わせていたようだと驚くが、それがゲームなのだといなりが自慢げに講釈してくれた。
「わぁ、いいですね。 帯で調整できるお着物などもいいですけど、コチラも似合ってますよ」
『うむうむ、そうであろう。 妾も一目見た時よりそう思って────ぬ? か、身体が
……!!』
ルンルンで見せびらかすいなりに和んでいた二人に緊張が奔る。
突如、いなりの身体が小刻みに震え出し、眼に生気が無くなっていく。
「え、えぇ!? いなり、大丈夫ですか!?」
『こ、これは、呪いか!? いかん、布都乃、妾から離れるのじゃ!』
「……ふえっ!?」
一瞬の隙を突かれ、いなりの動きに対応できなかった。
忠告を耳にしたときには既に下半身がスゥと外気にあてられこそばゆさを感じた後。
もしやと思い、わなわなと頭を回すと、背後には袴を咥えたいなりの姿があった。
「そ、それ……私の────!?」
いなりは何も言わない。
ポーンと後ろ脚で帯を蹴り上げ、遠くへやってしまう。
そうして、何処かへと咥えたまま走り去っていった。
「ちょ、ちょっとー、返してくださーいっ!?」
●
必死に裾を下げようと引っ張るも、着物はそう伸びる生地ではない。
乙女の必死の努力は無駄に散り、布都乃の下半身は衆目に晒されていた。
「うぅ、いなり、どうしちゃったんですか……このままじゃ恥ずかしくて死んじゃいますぅ!」
見られているのがただの下着であればまだよかった。いやよくはないが。
それでも布都乃が身に着けているものよりはマシであろう。
「すげぇ……見ろよあの子、お札を貼り付けてるぜ」
「マニアック過ぎる、でもいいな
……!!」
巫女として貞操は守らねばならない。
そのため、彼女の股に封をしてるのは『退魔の護符』であった。
邪なものから身を守り、純潔を維持するための『ありがたくもけしからん』由緒正しい装備なのである。
「はぅぅ、どうしよう……泣きたいのに、なんだか熱くなってきちゃいました……」
活気を取り戻しつつある温泉街、道すがらすれ違う誰もが布都乃をガン見し、不埒な言葉を口にする。
耳に入って来る刺激的な言葉は彼女の良心をチクリと刺し、その背徳感が余計に興奮へと繋がっていた。
「な、なんで……どんどん身体が火照って来ちゃって、私、悪い子になってしまったんでしょうか……」
じんわりと股の奥が熱を帯びる。それにしたがい、お札の文字が滲み出した。
湿らせていくほどに吸着力は弱まり、ぺりりと半分ほど外れてしまう。
「う、うそッ!? だめ~! これ以上は本当に見えちゃうんです! いなり~! どこに行っちゃったんですか~!! あっ────」
情けない叫びがビリビリと響くと、最後の抵抗も虚しくお札が風に飛んでいくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ミノア・ラビリンスドラゴン
これが噂の【けしからん水着】……ふーむ、思ったより大したことないですわね?
わたくしが迷宮の景品として作成した【すごくけしからん下着】の方が、ステータス補正も露出の際どさもずっと上でしてよー!
なのに「下品」「露骨」「限度がある」と大不評……プレイヤーの皆様方の判断基準がよく分かりませんわぁー?(ちょっと人間性を欠くドラゴンプロトコル)(お蔵入りした下着は勿体ないので自分で穿いている)
ですがまぁ、レア装備ならプレイヤーズ・バザーに出せばいい値が付くかもしれませんわね!
回収して【お金稼ぎ】ですわよー!
残っていたバグデータは【カウンターハック】で【侵入阻止】して、【プログラミング】で除染しますわー!!
敵を倒したのならばアイテムドロップ。それはこのGGOにおいて当然の権利である。
いかに効率よく敵を狩り、得られたアイテムで金策できるか、それが豊かなこのゲーム生活における重要なライフハックなのだ。
「大漁ですわー!! 自前で召喚だと利益が薄くてやってられませんけど、人様の土地に湧いたものだと思うと笑いが止まりませんわねー!!!」
ずらりと並ぶアイテムボックスの山を前に、高貴な高笑いをかますミノア・ラビリンスドラゴン(ポンコツ素寒貧ドラゴン令嬢・f41838)。
少女の背丈よりも堆く重なるそれらを一括ソートし、レアリティの低い順から雑にポンポン開けていく。
ほとんどは期待値通りの小銭にしかならないアイテムばかり。
「これとこれとこれは換金、こっちは使えそうですわね────」
とはいえこういった小物だろうと、イベントの外れルートや意味深な死角に配置するとしないとではプレイヤー達の満足度も大違い。
役に立つかどうかではなく、在るかどうかで判断してくるという気難しい彼ら。そのお世話にはいつも苦心させられているようだ。
けれど集客のためならばミノアは涙ぐましい努力も惜しまない。貧しくても心は高貴、気高くしぶとく仕事するのだ。
そうこうして前座を片付けると、いよいよ待ちに待っていたレアボックスを前にする。
「これですわ、これ! やっぱり目玉商品がないと宣伝もできませんもの! 出来るだけレアなものが欲しいですわね~!!」
一つだけドロップした貴重な虹色の箱。
大事そうに摩ってからゆっくりと開くと、パァっと黄色い光が溢れ出す。
「こ、これは────『けしからん水着』ですわね……ありきたり、というかこのエリアに来るプレイヤーは基本的に持ってますし、ちょっと魅力に欠けますわ~……」
せっかくのレア枠を外れに潰されて、がっくりと肩を落とす。
それでもと一応手に広げてみると、流石は公式らしいコンプライアンスに配慮したデザインであった。
「ふーむ、改めて見ると……なんだか思ってたよりも大したことないですわね? これで『けしからん』とはちゃんちゃらオカシイですわー!」
勝ち誇ったように叫ぶと、ミノアはドレスをバッと捲り上げて肌を晒す。
打ち上げられたドレスがひらひらと舞い、カーテンコールの幕が上がるようであった。
「真に『けしからん』とは、これくらい攻めたデザインのことを言いましてよー!!!」
彼女が中に着ていたのは『すごくけしからん下着』。
一見すると水着のただのマイナーチェンジと侮るなかれ。ステータス補正はもちろんのこと、露出さも際どさもパワーアップしているのだ。
「ふっふっふ、男性プレイヤーのアナリティクスを勝手に解析した結果産まれた、わたくしの自信作! 彼らの深層心理は間違いなくコレを求めていたはずなのですわ~!!! なのに、だというのに────」
ミノアはこの『すごくけしからん下着』を自分のクエストの目玉として発表した当時を想起する。
●
「おニューのクエストですわよー! どなたか、わたくしのクエストに参加しませんことー? 今ならなんと、この『すごくけしからん下着』が手に入りましてよー!!!」
ギルドに押しかけ、飛び込み営業のごとく勝手に宣伝を始めるミノア。
その姿は辛うじて一糸纏うかどうかという恥ずかしい恰好。
豪華にあしらわれたレースやガーターもさることながら、シースルー生地でほとんど透けている勝負下着とでもいうデザインである。
「下品」
「露骨すぎ」
「いくらなんでも限界がある」
「な、なんですの~!?」
しかし、返って来た言葉はどれも心無いものだった。
男たちの視線は間違いなく集めている。というよりも釘付けだ。
だが女性陣からのあたりが異常に強かった。
「こ、これはプレイヤーの皆様がたの意思を反映させたものでしてよー!!」
「ふ~ん、そうなんだ……男子?」
「え、あ、いや────ちょ、ちょっとこれはナイよね~アハハハ……」
確かにミノアの情報収取能力は間違っていなかった。
しかし、彼女には人間的思考が欠如していたのである。
例えば、男性とは女性の前で紳士然とする傾向にある、だとか。要するに見栄を張りたがるのである。
その証拠に、男たちは血涙を流して歯を食いしばっていた。死ぬほど跳び付きたかったに違いない。
「そんな~!? こんなの絶対にオカシイですわよー
!!!!」
●
苦い記憶を噛み潰し、ミノアはいそいそとドレスを着直す。
「ハァ、ギルドからは追い出されるし、酷い思い出ですわ……ですがまぁ、この水着もレア装備には違いなしですもの、プレイヤーズ・バザーで売りに出せばいい値が付くかもしれませんわね!」
その時、ミノアのウィルス検知システムがアラートを鳴らす。
プレイヤーの不正チートやバグを知らせるものだが、あろうことか彼女の手元が発信源であった。
「あらまぁ、これで売りに出したら、わたくしがBANされるところでしたわね……危ないところでしたわ」
ちょいちょいっと操作してバグを正常化すると、水着を仕舞い込むのであった。
ちなみに後日売りに出したところ、同時出品した『すごくけしからん下着』の匿名からの購入額が『水着』を遥かに超えたという────
大成功
🔵🔵🔵
四王天・燦
ドSマジ怖い
蛇が足元の水溜まりを舐める様に妙に興奮してしまう
踏み潰すのは可哀想だなぁ
恐る恐る拾い上げて…激レア『金色の蛇×レベル』を手に入れてしまった!?
蔵の外に気配がないことを確認するよ
遊んでも…いいよね
寝そべって体を這わせ、イケナイ遊びに興じちゃう
鱗の刺激が気持ちいい…蛇の舌で腋・臍やお尻を舐められゾクゾクする
サーペントレディの『お嫁さんになる』という言葉が漠然と蘇るぜ
一線越えるのは絶対にダメだ!(恋人いるのでNGです)
式神使いで蛇を律するぜ
律して、悩んで、欲して…
悶々としながら銀雨世界のリリスのように蛇で胸と下腹部を隠すぜ
蠢く感覚に悶え続ける
これ癖になりそう…
※一線越えない・人前に出ない
立ちすくむ四王天・燦(
月夜の翼・f04448)の足元には無数のヘビ。
数えるのも難しいほどに絡み合い、蠢き合い、うぞうぞと集まる。
黄金に輝く鱗が怪しく光り、金貨の山が雪崩をおこしているかに見えた。まるで『欲』というものを体現しているかのよう。
それは盗賊としてのサガなのか、目が眩むような光景に目が離せない。
「綺麗だぜ……いやダメだ、これもきっとバグでおかしくなってるだけだって────」
燦を窮地へ追い込んだサーペントレディ、その太ももを吸ってからというもの、どうにもヘビが愛おしくてたまらない。
おまけに左胸が高鳴って仕方ない。下腹部もキュンと切なくなってしまっているのだ。
それもきっと蛇鱗に変異した部位が共鳴しているのかもしれない。
「やっぱり変だぜ、アタシ……でも、踏み潰すのも可哀想だよなぁ」
飼い主が倒れた後も、このヘビたちは健気に人を求めている。
それは敵意や悪意からではなく、よく躾けされたことによる服従に近いものだろう。
現に、燦を噛み付こうとする様子は無く、人の体温で暖を取ろうと甘く巻き付くに留まっている。
「ふふ、よせって、くすぐったいぜ────そんなに気に入ったんだったら……」
恐る恐ると足元のヘビを拾い上げる。
彼らはなんとも大人しく従い、小さく細い舌でチロリと燦の頬を撫でてくれた。
「来るなら勝手だぜ?」
飼い主の下を離れ、それでもついて来るというのなら。
その気持ちを託して語り掛けると、まるで人語を理解したかのように、いくらかのヘビが燦の後ろを追従する。
蔵の外へと脱出すると、湯気で遮られた薄暗い陽光が差した。
「ふぅ、誰もいないよな……? 叫び声も届かないような場所だし、ちょっとくらい遊んでも……いいよね?」
もとより服を剥かれ裸一貫。どうせこのままでは人前に戻れないのである。
人気が無くなるか、暗くなるまで時間を潰すしかないのだ。
「ほら、ちょっと場所開けて。 お前たちも寒いんだろ、アタシで温まろうぜ?」
ひんやりとした地面に背中をつける。
ゾクリとした感覚が奔るが、不思議と気持ちが良い。身体が燃えるように火照っているからだろう。
仰向けの彼女が『おいで』と手招きすると、ヘビたちが喜んで這っていく。
遠慮することなく肌を伝い、ツルツルした鱗が優しく全身を撫でた。
「く、ひゃぅ────」
酷いことをされた後だからだろうか、ことさらに敏感になっている。
これが『イケナイ遊び』なのは理解しているが、身体が快楽を求めて止められないのだ。
心に誓った相手へ詫びを入れながらも、金色のヘビ達を受け入れてしまっていた。
「そこ、うん、そこが気持ち良い……もっと────」
ヘビ達も燦の受け入れ態勢を察してか、チロチロ舐めては反応を確かめている。
妙に慣れている気がするが、これもレディの仕込みの一つだったのかもしれない。
ともかく、燦が嬌声を一際大きく上げる場所を見極め、彼女の興奮をさらに高めていった。
「あひ、ダメだ、これ以上は────ひぅッ!!」
燦がビクリと腰を反らせて跳ね上がる。水飛沫が盛大に辺りへ散った。
濡らした股座に反応し、ヘビ達が一斉に移動を始める。より湿り気のある、暖かな環境を求めて。
その光景をぼんやりと虚ろに眺めていた彼女の脳裏に、レディの『お嫁さんになる』という言葉が響く。
「う、うそッ!? だめだめだめ! そこだけは絶対にダメなんだって!!」
慌ててヘビ達を律して動きを止める。
彼らは『なぜ止める』とばかりにつぶらな瞳で振り返った。
身体が求めていること、それを察しているからこそ、なぜ自分に嘘をつくのだと。
「ち、違ッ、これは────アタシのせいじゃなくて、蛇鱗の……うぅ、そんな目で見るなよぅ……」
想い人と自分の欲望、板挟みにされてぐちゃぐちゃになった感情が堰を切って、涙が溢れ出してしまう。
そんな彼女を心配してか、ヘビたちもそれ以上の深入りは控えてくれた。
それだけではなく、浮かべた涙を舌でチロリと舐めとり慰めてくれたのである。
「ぐす、いい子だなお前たち……アタシも気に入ったぜ」
礼を告げると、彼らは燦の胸や下腹部に巻き付き、まるで水着のようになっていく。
もしやこれで出歩けとでも言うつもりなのだろうか。
「おいおいおい、嘘だろ……いや、流石にこれはマズイって────」
やはり生き物なだけはあり、燦が動く度にズリ落ちまいと身体をくねらせる。
そのせいでスリットがいくつも生まれ、彼女の秘所が見え隠れしてしまうのだ。
とてもじゃないが隠せているとはいえない。
「でも、ちょっと癖になりそうだぜ────」
それでも、もし出歩けたならと考えると、燦の中で何かが開花するのであった。
大成功
🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
まったく、ひどい目に合いましたね……
ひとまず胸元を腕で隠しながら水着を探し……召喚魔法で手数を増やしてみましょうか
しかし獅子は温泉で匂いを辿れない、竜王は気位が高く物探しなんてしてくれない、獄炎魔神なんて呼んだら温泉がマグマになる、終焉獣は論外
悪魔王女は面白がって手伝ってくれないでしょうし……ここは【天軍戦士の召喚】で
戦士であるあなたにこんなことを頼んで申し訳ありませんが、よろしくお願いしますね
異変が解決すれば人も戻って来る筈、それまでに見つけなければ……
見つかるまで敵の落した水着を着れば……いえ、用心に越したことはありませんね
碌なことにならないと【第六感】が囁くのに従いスルー
人目を憚るオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)が胸元を押さえてしゃがみ込む。
シスターである彼女は、猥褻な姿を安易に見せるわけにはいかないのだ。
少しでも視界から隠そうと身を堅めている最中だった。
「まったく、ひどい目に合いましたね────あんなにも簡単に弾け飛ぶとは、もしかして少し大きくなっているのでしょうか……?」
その腕にズシリと存在感を載せるもの。
ひと夏を終えて間もないということもあり、特に気にもせず着用していたが甘かったようだ。
自分の成長速度に驚愕を禁じ得ない。
「かと言って、いつまでもこうしていたところで事態は変わりませんね……」
ふと下を見ると、サーペントレディのいた場所にアイテムボックスがドロップしていた。
ビカビカと怪しくゲーミングレインボーするそれは開けてくれと言わんばかりに存在を主張してくる。
「これは……なんなんでしょう? ぴこぴこ?の世界は不思議なモノがあるのですね……」
訝しむようにジッと見つめていると、時折その輪郭がブレて滲むことに気が付く。
もとより普通ではない光り方ではあるが、この不吉な予兆は絶対に触ってはならない。そう彼女の第六感が危険信号を発している。
「見なかったことにしましょう、ええ。 とはいえ……代わりの水着を探しませんと」
幸いにもここは温泉街、そして『けしからん水着』であふれるメッカなのだ。
探せば売店にもあるに違いない。
そう目星をつけた彼女は祈りを捧げるポーズで目を瞑る。
「流石に一人では見られずに行動するのも難しいですし……召喚魔法で手数を増やしてみましょうか」
誰の力を借りようかと、その姿を次々と思い浮かべる。
「獅子は温泉で匂いを辿れない、竜王は気位が高く物探しなんてしてくれない、獄炎魔神なんて呼んだら温泉がマグマになる、終焉獣は論外、悪魔王女は面白がって手伝ってくれないでしょうし……」
脳裏に大量に並べた心強い協力者達だが、だんだんと数を減らして消去法が進んでいく。
やがて残ったのは逞しい金属の巨人だった。
「……ここは我が守護天使に頼るしかないでしょうね。 サンダルフォン、戦士であるあなたにこんなことを頼んで申し訳ありませんが、よろしくお願いしますね」
巨大な鎧の戦士はギギギと金属を軋ませ頷くと、大きな盾を下げてオリヴィアを隠すついたてにしてくれた。
彼の巨体を盾をもってすれば、人目につくことなく散策することは容易いだろう。
●
サンダルフォンの助力もあって、すぐに売店へと辿り着く。
外はざわざわと喧騒が増え、人の賑わいが感じられていた。
「異変が解決したので人が戻って来たようですね。 サンダルフォン、このお店には申し訳ないですが出入り口を封鎖しておいてください」
巨人を見上げて頼み込みと、彼はドアの前に盾を置いてオリヴィア以外を通すまいと睨みを利かせてくれる。
あの様子では蟻の子一匹とてこの中へは入れないだろう。
安心して一人だけになった店内を観て周る。
すると女性用水着のコーナーで目当てのモノが見つかった。
「ありましたね。 さて、以前と同じサイズではまた耐えられないでしょうし……」
ひとつ隣に並ぶ、ワンカップ上のサイズを手に取る。
流石に大きすぎるのではないかと不安に駆られるが、ぴたと自分の胸に押し当ててみるとしっかり合っていた。
やはり大きくなってたのは気のせいではないらしい。
「困りましたね、こうも成長するようでは毎シーズン買い替える必要がありそうです……」
大きすぎるゆえの悩みで溜息をつくと、自動精算レジに通してそのまま着用。
サンダルフォンには礼を言って帰ってもらうのであった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『温泉エリアだ!』
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POW : ゆっくりお湯に浸かって心と身体を回復!
SPD : 装備を点検して汚れを洗い流す!
WIZ : 罠やモンスターが潜んでいないか調査!
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皆さま、とんだハプニングに見舞われたようで大変でしたね。
ですがこれで残っていた最後のバグも消えたことでしょう……きっと。
お客さんもようやく帰ってきているみたいですよ。
折角ですので、一緒に楽しんでみるのもいいのではないでしょうか。
NPCのレディさんも正気に戻っているようですし、増々の賑わいを期待できそうですね。
特にここの温泉は様々な『効能』や『バフ』が特徴で人気になっています。
ゆっくり浸かって、穢れた、もとい汚れた身体を洗い流しましょう。
ひとつ小耳に挟んだのですが、不思議な効果のある秘湯があるらしいですよ。
現場にいる皆さんなら優先的には要れるはずです。お得ですね!
ただし、もしかしたらまだバグが残っているかもしれませんけれど────
ミノア・ラビリンスドラゴン
バグの除染完了! 水着の回収も充分!
これだけあれば、一着くらい着ちゃってもいいですわよね!
ちょいちょいっとわたくし用に改造して……「すごくけしからん水着(ビキニ)」!
プレイヤーの皆様方も除染の報を聞いて戻られたようですわね!
水着はバザーに出品予定ですし、安全性のアピールにはちょうどいいですわ!
視線を釘付けでしてよー!(注目を集める・悪目立ち)
ポーズのリクエスト? スクショが撮りたい?
よろしくってよ! スーパースクショタイムですわー!
投げ銭トリリオンがガッポガポ!
笑いが止まりませんわー!(誘惑・欲望開放・お金稼ぎ)
お湯から上がれば「ミノア印の迷宮ミルク」!
試供品として皆様方に振る舞いますわー!
管理者としてバグの除去を完遂したミノア・ラビリンスドラゴン(ポンコツ素寒貧ドラゴン令嬢・f41838)が一息つく。
あれから、他の場所にも残ったバグプロトコルを虱潰しに駆除していたのだ。
それは役目としての責任感もあるが、何よりその副産物が目当てでもあったからだ。
「バグの除染完了! 水着の回収も充分! レア箱もかなり開けられてホクホクでしてよー!!!」
彼女の目の前にズラリと並ぶ戦利品の数々。
もはや自前で店を開けるほどの在庫はあるだろう。
「とはいえ、誤算でしたわ……まさか全部『けしからん水着』でしたとは────これだけあるんですし、もうこの際、一着くらい着ちゃってもいいですわよね!」
どれもほとんど同じであるため、適当に手前のモノを手に取る。
色や柄こそランダムではあるがデザインそのものは共通なのだ。値の付くテクスチャのものでなければ何でもいい。
それをちょいちょいっと解析し、骨組みから全くの別物に改造する。
「これをこうして────こうですわ!! 下着の敗因はきっと『下着』だったからに違いありませんわね! ですので、見られても大丈夫な『水着』なら解決ですわー
!!!!」
ジャジャンと効果音付きで掲げられたのは『すごくけしからん水着』。
ミノアが着用している『すごくけしからん下着』をベースにした新商品である。
当然、装飾こそ豪華なれど布地は極小の際どさしかないデザインとなっていた。
「とはいえ、またギルドで騒ぎを起こせば出禁になりかねませんわね……そうですわ~!! プレイヤーの皆様はここで水着を見せびらかす習慣があったはずですもの、わたくしもソレに倣えばいいんですわよ!!!」
まずは客の喰い付きを試す案を思い付く。実際の目玉商品にするかはそこで判断すればいい。
言うが早いか、善は急げと、自作の水着に着替えて走り出す。
目指すは客の集まる大広場、足湯エリアである。
●
「お~ほっほっほ! プレイヤーの皆様がた~!! 見ていらして、寄っていらして、ご覧あそばせませー!!!」
広場の中心に建つモニュメント。
その真ん前に陣取り、我が物顔で高笑いを上げて注目を集める。
普通ならば悪目立ちしそうなものだが、好都合なことに今は再開記念中。逆に催し物としての華を添える形になっていた。
「なんだなんだ?」
「あんな水着、見たこと無いな」
「新作お披露目かな? それにしてもすごいデザイン
……!!」
誰もが通る広場だからこそ最も効率的に人目を浴びる。
ミノアの狙い通り、たちまち周囲の足湯には人だかりが出来ていた。
「プレイヤーの皆様がたの視線は釘付けですわね! そろそろ頃合い……狙い時ですわー!!」
裏でこっそりと操作すると、彼女の後ろに巨大広告が現れる。
それは自信が出店予定のプレヤーズ・バザーの告知だ。ご丁寧に出店位置と日時が記載されている。
おまけに『すごくけしからん水着』の誘うようなグラビア画像付き。
「さぁ、皆さまがた~? 今ならスクショ取り放題でしてよー!! スーパースクショタイムですわー!!!」
「うぉぉマジかよ! ありがてぇ!!」
「すっげぇ揺れてる……動画保存して永久保存しとこ」
彼女を撮影するということは、必然的に広告も写ることになる。
それは広告ブロッカーすら貫通するアナログながらも強力な宣伝方法であったのだ。
「ひゅぅ、開放的~! ねぇ、もっと大胆なポーズしてよ!」
「こ、こうですの? よろしくってよ! どんどんリクエスト募集してましてよー!!」
ミノアがギュッと胸を寄せ上げて谷間を強調させると、周囲からは大歓声が上がる。
それに気を良くした彼女は、次々と言われるがままに姿勢を変えていく。
もはや自分ではどんな恥ずかしい恰好をさせられているかは気にしておらず、おだてられて有頂天。
「あぁ惜しい! もうちょっとで見えそう!」
「今チラっと見えなかったか!? コマ送りだ! 連写しろ!」
「じれったいけど……だめだ目が離せない
……!!」
周囲の男たちは生殺しの駆け引きにヒートアップしていき、このまま帰ってなるものかと意地になる。
中には、ミノアを引き留めようと『投げ銭』する者まで現れだした。
幸運の泉のごとく足湯にはトリリオンがチャリチャリと投げ込まれていき、欲望の泉と化している。
「お~っほっほっほ! 笑いが止まりませんわー!!」
●
宣伝も軍資金も一挙両得。
男性陣も興奮の汗を出し切り、爽やかな賢者のようにサッパリしていた。
「ふぅ~盛り上がりましたわね~! そうでしたわ! 最後まで残られた皆さまには特別にコチラを────」
トリリオンの山に腰掛けていたミノアが牛乳瓶を1ケース取り出す。
ちゃぷりと揺れるそれには、ドラゴン娘の刻印が大きく描かれていた。
まるでドラゴンのミルクだと言わんばかりのイラストである。
「わたくし特製、『ミノア印の迷宮ミルク』ですのよ! あまり数は用意できませんので、クエストに来ていた方にだけ限定販売しているのですわー!」
「特製
……!!(ごくり)」
「数が用意できない
……!?(ごくり)」
プレイヤーたちは何故か彼女の胸元を見て生唾を飲み込む。
何を想像しているのかは不明だが、試供品のミルクはたちまち消える。
その後、ミルク目当てのリピーターがなぜか急増したという────
大成功
🔵🔵🔵
サマエル・マーシャー
※アドリブ歓迎
…温泉にもバグが残っているかもしれません。
戻られたプレイヤーがバグで危険な目に遭うのは避けたいですし、念のためUCを発動していつでもプレイヤーが自動で救われるようにしておきましょう。
さて、私も温泉に―――ん?(いつの間にか『けしからん水着』姿に)
なるほど、あちらの男性プレイヤーが私にこの格好をして欲しいと望まれたのですね。その望みが私のUCで叶えられたと。
であればどうぞ近くでご覧ください。それがあなたの救いとなるならば。他に見たい格好があるなら望んでいただければその姿に変わりますよ。
(鑑賞会中にプレイヤーが望んだのか温泉に転移)
(温泉のバグについてや後の内容はおまかせします。)
気が付けば浴場にサマエル・マーシャー(
電脳異端天使・f40407)がポツンと立っていた。
白昼夢のような一時を過ごしていた彼女。しかし、つぅと口元に垂れる白濁液も夢の続きなのか。
手の甲でグイと拭うと、特徴的な臭いが鼻についた。
「全ては過去の記憶のはず……オカシイですね、これもバグの影響が残っていたということでしょうか────」
サマエルのホロドレスはすっかり正常に戻ってはいるものの、まだ他にもバグの影響を残す場所があるに違いない。
そう検討をつけた彼女は、愛する人々に危険が及ばないようにと先に手を打つことにする。
「戻られたプレイヤーがバグで危険な目に遭うのは避けたいですし、自動で救われるようにしておきましょう」
言い終わると、彼女の身体がふわりと浮かぶ。
立ち昇る湯気を超え、さらに上へ。背中の翼が羽ばたくたびに抜け落ちていく羽根は溶けるように散っていき、やがて周囲に満遍なく振り撒かれた。
すると、世界を形作るデータベースが一度初期化、その後再起動した温泉街の一部は異様な雰囲気を漂わせ始める。
「これで、すべての者が救われるでしょう────」
飛び立った時と同様にふわりと降り立つと、サマエルの視界に人影が映り込む。
今度は白昼夢ではない、ハッキリと人の気配だと分かる。湯煙に隠れてはいるが、男性の一団だろう。
夢に囚われている間に客が戻って来たらしい。
「こんにちは……あなたたちも温泉を楽しみにしていたんですね」
「え、あれ!? ここ男湯じゃなかったっけ!?」
「やべぇ、間違えたか!?」
「ゴメンなさい! すぐ出ていきますんで!!」
女性の声を聴くとは思ってもいなかったのだろう。
彼らは素っ頓狂な声を上擦らせながら、慌てて踵を返す。
「いえ、きっと混浴のはずですよ。 そう思いますよね?」
サマエルがそう語り掛けると、男性陣は急に足を止め、呆けた様にそうだったと頷き始める。
「あ、あぁ……そういえばそんな気がする……」
「そうだよな。 初めから混浴だから行こうぜって盛り上がってたっけ」
「そうそう。 なぁんだ、俺達の早とちりかよ」
本当は男湯で合っている、いや合っていたというべきだろう。
しかし、今はサマエルによって書き換えられた世界。男たちが少しでもそうだと信じるなら、世界の方がソレに合わせるのだ。
それからは何事もなかったかのように湯へ浸かり始め、まるで不信感を抱いた様子を見せなかった。
「さて、私も温泉に────ん?」
身体を流そうと見下ろした瞬間、ホロドレスが消えていることに気が付く。
代わりに『けしからん水着』が着せられていた。
久々に感じる布の質感、重量、締め付け、実体ならではのリアルな感覚に懐かしさを感じた。
「なるほど、あちらの誰かが私にこの格好を望んだのですね。 であれば断る理由もありません」
男性の見立てが甘かったのか、やたらとギチリと締め付ける水着。
サイズが合っていないせいか激しく動けばこぼれ出てしまうだろう。
そのため、サマエルはゆっくりと、そして焦らすように湯舟へと浸かっていく。
「いやぁ、良い湯ですよね……ハハハ……」
男性達の近くで半身浴をしていると、一人がチラチラと盗み見しながら世間話を振って来た。
実際はサマエルの身体が気になって仕方がないだけだろう。
不自然な前傾姿勢なのもあり、下心が丸見えだった。
「見たいのですよね? であれば、どうぞもっと近くでご覧ください。 それがあなたの救いとなるならば────」
「えぇ!? あ、でもそこまで言っていただけるんでしたら、へへ……」
「あッ、俺も!!」
「自分もいいですか!!」
他のメンバーも聞き耳をしっかりと立てていたらしく、ザバッと波を作りながら湯舟を駆け寄って来る。
腰の周りにタオルを巻くのすら忘れてるほどの慌てぶり。
水着とはいえ、興奮した証が丸見えになってしまっている。
「どうでしょう、これで救われていますか」
半身浴で晒された胸元。かけ流された湯が谷間へ吸い込まれていき、自然と視線もそこへ集まる。
小さな水着で無理やり押さえつけられているせいか、やがて水溜りが出来ていた。女体盛りの湯呑版とでも例えればいいだろうか。
「す、救われて? 何のことかよく分かんないですけど、どちらかと言うと、『掬い』たいっていうか……」
「そうですか、ではお手を拝借────」
「へッ!?」
サマエルはためらいもなく男性の手を取ると、そのまま谷間に突っ込ませる。
水を吸ったスポンジよりもはるかに柔らかく、ゆで卵よりも滑らかな肌触り。
人肌にぬるくなった水はほのかに甘い香りを漂わせていた。
「どうぞ、掬ってください。 お口に合うといいのですけど」
「んぐ……うまい
……!!」
「なんだとズルいぞ、俺も!」
「あぁじれったい、直飲みさせてください!」
他の男達も彼女へ飛び付き、その胸元に吸い付いていく。
もはや水なのか汗なのか、それとも別の何かなのか。無我夢中で吸い付く彼らは我を忘れてサマエルをむしゃぶりつくすのであった────
大成功
🔵🔵🔵
ルナ・キャロット
なんでも大歓迎
レア装備のまま温泉に入って寛ぎます!水着なので混浴でも安心ですね。
寛ぎつつ視線を感じつつ、自慢のケモノスキンで上がった聴力で聞き耳をたてます
レア装備を羨む声とか可愛いって声をきいて承認欲求を満たしてほくほくします!
裏垢見て来たっぽい人の声やレディさんの声が聞こえてビクっとなったりしつつも寛ぎます!温かくて気持ちいいですね。
知ってる人やチヤホヤしてくれる人が来たら装備やお尻を自慢気に見せちゃいたいですね。
さり気なくでも大胆に…視線釘付けで面白いです。
もっと水着が見やすいポーズとかしちゃおうかな…?(調子乗り姫兎)
裏垢で散々拡散された情報、兎獣人らしき女性が例の温泉にいるらしいとのことだった。
正体はルナ・キャロット(†月光の聖剣士†・f41791)であるのだが、誰もがその蠱惑的な身体に眼が行きバレてはいない。
だが、それも時間の問題に見えた。
なぜなら彼女のいる浴場に多くの男性プレイヤーが押しかけて来たからある。
「この背景、間違いない! このエロい子はここにいるはず!」
「俺、昔ここに通ってたから知ってるぜ! この露天風呂は混浴だから出会い厨がよく使ってんだ」
「ってことはさ……この子ともお近づきになれちゃったり……へへ」
「あらら、もう特定されちゃったんですね。 流石に正体バレは姫騎士プレイに影響がありそうなので、ここは────」
血気盛んな男性陣が押し寄せる前に、ルナがぼんやりと光る満月を召喚する。
ウサギが餅つくその蛍光サインを空へ放り投げると、全天が夜空に変わって怪しい光が場を包んでいった。
「あとは、フェイスベールで隠せば……変装は完璧ですね!」
薄暗い視界、それでも満月の明かりは煌々と照っている。
少し隠せば顔には影がついて見えなくなるものの、身体はしっかりとその凹凸を感じさせた。
なによりも、大きな胸の下が陰ることでルナの豊かさがより強調されるのだ。
丁度そのとき、ガラリと脱衣所を開ける音。
続けてべちべちと裸足で駆けて来る集団が現れた。
「い、いた……!」
「おぉ……補正無しだったのか、あの写真!?」
「うっやば、俺ちょっと水で冷やしてくる……」
ぺたと脚を止め、魅入られるような呆けた顔を浮かべる男達。
満月の夜は男が狼になるというが、彼らの一部もすでに血が滾っているらしい。
女に飢えた獣を必死に理性で押さえつけているようだった。
「ふへへ、バッチリ見てますねぇ。 でも、もうちょっと揶揄いたいですし……気が付いてないフリしちゃいましょう」
変装している今、自分はルナであってルナではない。
匿名であることを利用し、普段は味わえない承認欲求をさらに満たそうと画策する。
『とてもけしからん水着』のまま、ゆっくりと洗い場で身体に泡立てる。
コシコシと優しく洗っているように見えて、実際は大きく身体を動かす口実だ。
双子の満月のように丸を描く胸がぷるぷると揺れ、パツパツの紐が少しズレてはまた隠す。
立ち上がってはお尻を突き出し、尻尾まで丁寧に伸ばすことでスジに通した紐が目立っていた。
「ほ、ほぉぉ!! すげぇ、あれ激レアの『とてもけしからん水着』じゃん……!! 持ってる有名なプレイヤー誰かいたっけ!?」
「馬鹿、大きな声出すなって! 気が付かれたら終わりだぞ、コッソリ見ろ! でも気になるよなぁ、誰だろ?」
「なぁ、シャワーの音のせいか気が付いてないみたいだし……もっと近寄ってみようよ」
隠しているようだが、兎耳のルナには無駄。その一挙手一投足の全てが筒抜けである。
当然、彼らの猥談すらも耳に届いていた。
すぐ後ろの湯舟に浸かる彼らの息使い、興奮した汗の臭い、強烈な視線。
どれもがルナを興奮させ、イケナイ気持ちを高めていく。
「や、ヤバ……そろそろ気が付かれちゃうかもしれないです────けど」
キュッとシャワーの栓を閉め、決意したように振り向く。
そのまま堂々とした足取りで湯舟へ浸かった。もちろん男性陣の目の前にである。
「…………(にこり)」
声は出さず、可愛らしい仕草で会釈を一つ。別に見られることくらいなんだという態度を示した。
本当は心臓がバクバクと脈打ち、張り裂けそうなほど恥ずかしい。
正体がバレたら姫騎士としてのメッキも、これまでの地位も危うくなるかもしれない。
けれどそのスリルがたまらなく気持ちが良いのだ。
「うぉぉ……可愛い
……!!」
「えっっっっろ!!!」
「あれ、でもこの子……見覚えが……?」
「…………(ビクッ)」
まさかの事態に、悟られないようにほんの少しだけ肩を震わす。
闇夜と月明りで隠したつもりだったが、足りなかったのか。
彼らの中の一人が、ルナの耳や毛並みを舐めるように見つめて来る。
ベールの奥からチラと見れば、その人物はかつてこの温泉で『またこんど』の約束をした一人であった。
はからずしもレア装備のお披露目が叶ってしまったらしい。
「で、でもルナちゃんはこんな一線を超える子じゃないし……別人だよね、うへへ」
その言葉に静かに安堵する。
ならばと、普段のルナではしないことをもっと率先してやるしかない。
塩対応なあの頃とは違い、積極的に見せつけていくのだ。
ざぷりと立ち上がると、踊るような仕草を交えて、男性の一人を指名するように指を差す。
「お、俺? もしかしてリクエストってやつ? いいんすか!? じゃ、じゃぁ! 今流行ってるお尻振るダンスで!!」
こくりと頷くと、湯船に浸かる彼の目の前に大きな尻を突き出し、ぶるんぶるんとシェイクする。
「うひゃぁぁ!! すげぇ絶景!! もう死んでもいい
……!!」
「次、俺も!! それの胸のやつお願いします!!!」
何をしても喜ぶギャラリーに気を良くしたルナは、増々大胆に、そして淫靡な踊りを踊っていく。
いつしかこの夜の出来事は『伝説』として語り継がれ、彼女の裏垢は記録的な登録者数へと鰻登りしたという────
大成功
🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
色々ありましたが、なんとか一件落着ですね
水着も都合できましたし、私も温泉を楽しみましょうか
えーっと、このお湯の効能は……HP継続回復? う~ん、よく分かりませんね
事前の情報通り、かなり人気だったようですね
異変さえ解決すればたくさんの人々で賑わっています
そういえば、水着はここで調達したものになりますが、これは件の「けしからん水着」なんでしょうか……?
秘湯……気にはなりますが、今までの常識とはだいぶかけ離れた世界、用心し過ぎるということはないでしょう
今回はここで皆さんと普通に温泉を楽しんで、秘湯はまた今度安全が確認できてからにしましょう
封鎖していた売店を抜けたオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)が胸に手を当て、ふぅと息を着く。
「色々ありましたが、なんとか一件落着ですね」
敵を倒したはいいものの、水着を破かれてしまい、なんとか今しがた都合つけてきたところなのだ。
しかし、その商品名が『けしからん水着』と書かれていたことにまだ気が付いていない。
オリヴィアにとって未知の世界であるGGOでは、このデザインが普通なのだと誤解しているのだ。
「さて……水着も都合できましたし、私も温泉を楽しみましょうか。 すっかりお客さんで賑わっているようですし」
辺りを見回せば、老若男女問わず多くのプレイヤーたちがひしめいている。
特に、女性はオリヴィアの着ている『けしからん水着』の着用者が多かった。これも彼女が誤解したまま過ごす一因になっているだろう。
実際のところは『いいね』欲しさに羞恥心を我慢している女性達なのだが。
「ちょうど案内板がありましたね。 えーっと、『HP継続回復の湯』……? 変わった名前ですね」
売店の壁に張られた一枚絵。現在地と近場の温泉へのルートマップである。
一つ一つ読み上げて、気になるものはないかと調べていくと、怪しげな雰囲気で目が留まる。
「あら、こちらは『秘湯』……? 効能すら書いていないですし、なによりも絵が黒塗りされて隠されてますね……気にはないますが、今までの常識とはだいぶかけ離れた世界、知らずにマナーを犯しては迷惑ですし、不慣れなことは遠慮しておきましょう」
未練を感じつつも、初回はオーソドックスにいこうと最初に目に付いた温泉へ向かう。
●
『HP継続回復の湯』に着くやいなや、思わぬ声がオリヴィアを振り向かせる。
「あらぁ、ずいぶんと派手なの選んだわねぇ。 その水着は私への当てつけのつもり?」
「え? あ、あなたは
……!!」
聞き覚えのある台詞。忘れもしないねっとりとした喋り方。
そこにはサーペントレディの姿があった。
「倒したはずでは
……!?」
「そうよぉ、壊れていた『私』の方はね。 NPCだもの、すぐに
復活できるわよ」
「そういうものなのですか……? この世界の人は不死者ということなのでしょうか」
死なずの怪の可能性を感じ取り、オリヴィアの眼が鋭く絞られる。
「ふふ、面白い解釈するのねぇアナタ。 心配しなくても、そういうのじゃないわよ?」
「そうですか……安心しました。 それより、先程の『派手なのを選んだ』とは────?」
「なぁに、くすくす……もしかして天然なのアナタ?」
レディは可笑しそうに肩を震わせると、オリヴィアの耳元で囁き始める。
「その水着はねぇ、男を誘う水着なのよぉ?」
「へ……!? そ、そんなつもりは────!!!」
顔を真っ赤に染めてあたふたと慌てる純情なオリヴィアが可愛くて仕方がないのだろう。
レディは満面の笑みでケタケタとその様子を眺めていた。
「ほんの冗談よ。 本当に揶揄い甲斐がある子ねぇ」
「もう……ひどいです……」
「ふふ、慰めてあげるついでに温泉にエスコートしてあげようかしら。 悪い蟲がつかないとも限らないものねぇ」
「うぅん……もう意地悪しないのでしたら、お願いします」
「うふふ────」
是とも非とも言わない曖昧な笑いで流されてしまったが、そのまま二人で温泉へと入っていく。
絶世の美女のペアということもあり、既に周囲からは羨望の眼差しが注がれていた。
ぞろぞろと後を着いて来る集団を尻目に、レディがいてくれたのは正解だったかもしれないと思い始める。
●
身体をかけ流し、ゆっくりと熱い湯に身を沈めていく。
服を着たままの入浴は不思議な感じだが、存外に悪くは無いという感触。
「ふぅぅ……安らぎますね……身体の奥がポカポカしてきました」
「そう? なら良かったわ。
私達にはよくわからないもの」
ツンとした顔でレディが呟く。
見た目は人と同じように見えるが、この熱さでも汗一つ流さない作り物のような違和感が哀しさを物語っていた。
「……そうですか。 ですが、心はあるのですよね?」
「ふふ、突然ナニ?」
「一度は刃を交えた間柄。 それがこうして肩を並べていられること、それを『嬉しい』と感じています。 あなたもそうですよね?」
「くすくす、さぁどうかしら? でも、悪くはないかもしれないわね────」
口ではとぼけているが、明らかに機嫌を良くしたのが伝わって来る。
オリヴィアは柔和な表情でそんな彼女を見つめ、満足そうにドプリと湯に首まで浸かっていった。
世界は違えど、人の繋がりはそう変わらないものなのだと実感する。
身体も、そして心も暖まった少女は、そうして次の闘いへの英気を養うのであった────
大成功
🔵🔵🔵
天羽々斬・布都乃
アドリブ大歓迎
「はわわっ、とにかく誰にも見られないようにしないと!」
袴は式神のいなりに持っていかれ、乙女の尊厳を守る最後の砦も陥落した今、このような姿を誰かに見られるわけにはいきません――!
未来視をフル活用して、人が通らない道を選んだり、人が来たら物陰に隠れたりして(主に下半身を隠しながら)、温泉へと急ぎます!
未来視によると、呪いのアイテムから解放されたいなりが、私の袴を持ったまま、のんびりと温泉に浸かっているようです。
「えっ、この先でNPCによるイベント発生!?」
未来視で視えたのは、大勢のプレイヤーが集まってくる光景。
「回り道しなくてはっ」
こうして一日中、街を走り回ることになったのでした。
寒空の下に響く少女の悲鳴。
風に乗って空の彼方へ旅する『退魔の護符』を見つめて、天羽々斬・布都乃(未来視の力を持つ陰陽師・f40613)の目に涙が浮かんでいた。
そんな騒ぎを聞きつけてか、帰って来たプレイヤー達の視線が集まり出してしまう。
「なんだ? まだバグが残ってたのか?」
「あれ……目がおかしいのかな? あの子……履いてない?」
気が付かれた────そう思った瞬間、布都乃の全身から血の気が引く。
袴を盗られ、さらには下着代わりのお札まで失った今、尊厳を守るものは何も無いのだ。
隠すべき恥部を衆目に晒したとあれば末代までの恥、そうでなくともお嫁にイケなくなってしまう。
溢れる涙を堪えると、両手で精一杯に股を隠しながら走り出す。
「はわわっ、いけないッ! 大きな声を出したら、余計に目立ってしまいますよね!?」
どうにかこうにか、下半身を丸出しにした少女が脱兎の如く物陰へ隠れることはできた。
幸いなことに大衆は大通りやメインの温泉付近に集中している。
裏道や職員通路には人の気配が無い。
「うぅ……どうしてこんなことに……とにかく誰にも見られないようにしないと────」
この隠れ家は所詮一時しのぎにしかならないことは分かっている。
ぽぅと右眼が輝くと、布都乃の脳裏へ『近い未来の出来事』が映し出されたからだ。
そこにはたまたま出くわした男性プレイヤーの姿。彼らは驚きつつも、心配する素振りで布都乃に近付く怪しい雰囲気。
「そんなぁ、どうしましょう……ここにもすぐ人が来てしまいます!」
しかし、これはまだ不確定の未来。布都乃が動けば変えることは出来る。
ぐずぐずしている暇は無く、股を隠す物を探す時間も作れないまま移動せざるをえなかった。
●
未来視の力で何度も裏通りを行き来する。だがその力を以ってしても、どうしよも無い時はある。
あくまでも先を識れるだけであり、対処は自力なのだから。
「つ、詰みました……前に逃げても人、後ろに逃げても人……うぅ……いなり、助けてください
……!!」
迂回路も無い一本道。逃げ道無し。
未来は何度見ても自分の痴態を見られる世界だけだった。
乙女の尊厳の絶体絶命、そんな時、ふと横目に目立つものがあった。
「これ……記念撮影用の顔だしパネルですよね? 観光地によくあるヤツだったはずです」
子供用なので後ろに隠れるのは小さすぎる。
だが、これを利用しない手は無いだろう。
試しに右眼の力を使うと、そこには予想外の未来が映っていた────
「こ、これをやらなきゃイケないんですかッ!?」
●
「……でさー、ここに来るの楽しみにしてたんだよね」
「あはは、本当に好きだよねキミ……あれ、こんなのあったっけ?」
二人組がパネルの前で立ち止まる。
じっとコチラを視ているのは感じられるが、ここで動じるわけにはいかない。
死にそうなほど恥ずかしい気持ちを必死に抑え、グッと唇を噛み締める。
そうしないと今にも声が出てしまいそうだから。
「ご当地キャラの桃太郎? 顔まで『桃』なんだ」
「あぁ~そういえば売店にあった仙桃にこんなキャラ描いてあったかも。 でもこんな顔だっけ?」
不思議そうな彼らが、なんともなしに近付いて来る。
そうしてすぐに違和感を感じ取った。
「お、この『桃』の部分だけ立体的だ」
「へー、本当だ。 柔らかいね~しっかり熟してるって宣伝かな?」
「なんか喰いたくなってきちゃった。 なぁ、売店行こうぜ」
「おっけー」
パネルから突き出た『桃』をひとしきり撫で終わると、彼らが去っていく。
話し声が遠のくのを確認してから、布都乃は声にならない声を漏らした。
「はぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!! な、な……触られてしまいましたッ
!!!!!」
バクバクと高まる心臓。かぁっと熱くなる身体。沸騰しそうな頭を抱えてしゃがみ込む。
その後ろにはパネルの裏側が見えていた。
表から見えていた『桃』とはつまり、彼女のお尻だったのである。
「もうっ! こうなったのもいなりのせいです! すぐ見つけますから!!」
パネルを担いだ彼女は怖いものなしで進んでいく。なぜかこの変装ならばバレないのだ。
やがて目的のものが目に付いた。
「あれはいなりっ! そこにいたんですね────」
温泉へ踏み入ろうとした時、右眼に新たな反応がある。
確認してみると、ここで『NPCによるイベント発生』の文字。
次いで、それに釣られたプレイヤーの集団である。
「そ、そんなぁ~!!!」
結局、そのイベントが終わるまではパネルにハマるしかないのであった。
ちなみに、何故かその日は『仙桃』の売り上げが歴代一位を記録したという────
大成功
🔵🔵🔵
試作機・庚
【おまかせ】
あー…酷い目にあったデスね…
(ヨゴレを最低限人前に出れる程度に落として体裁を整え)
まさか終わったらゆっくり温泉!と思って造形気合い入れたのが仇になるとは……
とりあえず帰ったらある程度メンテナンス必要そうデスよ…
となるとアレとアレは外して洗浄して…
(とぶつぶつメンテナンス計画を練っていると声をかけられ)
…何デス?え?秘湯がある?しかも複数?けど今限定?
ちょっと都合良すぎて不安デスけど罠はあえて飛び込むのも面白いデスからね!
とりあえず乗ってみるデス!
ところでなんか温泉の数多くないデス?
しかもなんかまだバグが少し見えるんデスけど…
まぁなんか影響あっても少し経てば治ると思うデスし色々入ってみるデスかね!
NG:後に影響出るもの
長い長い、本当に長い時間に感じられた。
無力になった自分を玩具か道具にしか思っていないような男達に襲われ、身体中を余すことなく使われたのだ。
試作機・庚(
神殺し・f30104)は虚ろな瞳で天井を見つめていたが、ようやく自由になったことに気が付く。
「んっ……やっと終わったんデスか。 こぷ、ふぅ……あー、随分と酷い目にあったデスね────」
喉元に込み上げるものを堪え、フラフラと立ち上がる。
その拍子にポタタと雫が床へと零れ落ちていった。
それが自分の股座からのものであると気が付くのに少し間が開く。
自分の感覚を遮断し、無に徹していたことを忘れていたのだ。
本来は痛みを伴う戦闘で活躍する機能だが、思わぬところで出番があった。
「感覚遮断OFF……ひぅッ!? まだ身体の甘いシビレが残っていたんデスね……まぁ、我慢できない程じゃないデスけど」
久々に戻って来た身体の感覚にビクリと肩を震わせる。
全身を快楽漬けにされていたせいか、まだ本調子ではないのだ。
ベタつく不快感だけでも洗い流そうと洗面台に立つと、酷い姿の庚が映る。
「ハァ……これは帰ったらある程度のメンテナンスが必要そうデスよ……」
結っていたはずの髪は乱れ、カピカピと軋む。
身体のいたるところには『正』の字が競うように書きこまれ、ご丁寧に採点までされている。ほとんどが100点満点だがいらんお世話というもの。
「く、ふぅ……とりあえずココは洗い流しますけど────外して洗浄しないと奥まで届かないデスね」
グッと下腹部を手で押し込み、溜まっていたモノを流下させていく。
浴場のシャワーヘッドでは奥まで届かず、彼女の秘所を刺激するだけでたまったものではない。
これでは『一人遊び』と変わらないと結論付けると、仕方なしにその場を切り上げることにした。
「しょうがないデスね……でもこの身体で良かったデス、生身の人はこういう時どうするんデスかね?」
穢れと汚れをある程度落とすと、背後から見知った声が掛かる。
「あらぁ、酷い恰好ね。 あなた、そういう趣味だったのかしら?」
振り向いて確認すると、声の主は倒したはずのサーペントレディであった。
だがよく見ると、あの頃より顔に険が無い気がする。
「どういう趣味デス……それよりバグはもう大丈夫なのデスか」
「おかげさまで、ね。 お礼と言ってはなんだけど、あなたに『秘湯』のことを教えてあげようと思って。 身体の奥の汚れが気になるんでしょう? なら、とっておきがあるのよぉ」
「『秘湯』デスか……ちょっと都合が良すぎて不安デスけど────ここまで酷い目に遭えばもう怖いものは無いデス。 あえて罠に飛び込んでみるのも面白そうデスね」
「うふふ、そんなに警戒しなくても、取って食ったりはしないわよ……私はね」
「……? 今ナニか言った気がするんデスけど」
「気のせいでしょ。 さ、案内してあげるわね」
●
一抹の不安を残したまま、庚は件の『秘湯』へ立ち入る。
入り口で背を押され、一人で湯に浸かることになったが、どうやらプライベートスパだからということらしい。
見渡しても他の客は見当たらない。
「なるほど、これならさっきのようなコトにはならないデスね」
後から男性陣が乱入して来る事故がないと分かると、身体を楽にして肩までザプリと浸かっていく。
入浴剤なのか、そういう源泉の種類なのか、乳白色に染まる湯舟は底が見えない。
しかし思ったほど深くはないので、寝そべるような恰好で休めることができた。
「はぁ~、なんだか身体中の疲れが抜けていくみたいデスね。 まるで羽が生えたみたいに軽いデス」
温かい湯に包まれてウトウトと瞼が重くなる。
良い所を教えて貰ったものだと心の中で感謝している庚だが、この不透明な水の中でナニが起きているかは知らない。
彼女は気が付かなかったが、この湯は『バグ』っていた────『感覚遮断』バグである。
身体が軽く感じたのも、ただ感覚が無くなっているだけ。
実際には快楽に溺れてビクビクと絶え間なく震えていた。
「ん……? なんだかやけに波打つ気がするデス。 ここ
気泡発生器だったんデスかね?」
さらにバグは一つだけではない。
元々はドクターフィッシュが生息していたのだが、バグにより別のモノに置き換わっていた。
その名も『ドクタースライム』である。
彼らは女性の中へと入り込み、内側から直接刺激してくるのだ。
「はッ、ふッ、な、なんだか息がアガッて……熱くなってきたデスね
……!!」
ビク、ビクリ、と腰をヒクつかせて痙攣のように連続的な絶頂を迎えている。
そうとも知らず、庚は何食わぬ顔で温泉を楽しんでいた。
遮断されて脳へは届かない快楽が行き場を失い、身体中をループし続けているのだ。
これは遮断によるバグともいえるだろう。
「私のカラダでもノボせたりするんデスね……ちょっと休憩へ……あへ? 力が、入らな、い……?」
ぽぉっと火照る顔で呆ける庚。
湯船から上がろうとしても立ち上がれないことにようやく気が付いたのだ。
「ンンッ、なんで、変な声まで出ちゃうデス────!?」
いくら遮断したとはいえ身体は正直。
甘い嬌声が漏れ出し、異変に気が付いたレディが来るまで庚の快楽地獄は続くのであった────
大成功
🔵🔵🔵
ダーティ・ゲイズコレクター
せっかく注目を浴びているはずなのに、隠れたくなるようなこの気持ち!
一体何なんでしょうか!?
ひ、ひとまずお湯につかって湯舟で体を隠しつつ気持ちを鎮めることにしましょう!
きっと湯舟から上がったら、いつもの私に戻っているはずです!
このお湯、なんだか砂嵐みたいにバチバチと濁っていますが
濁っているので体を隠せますね!
いつの間にか周りに男性の方が増えてきました…そして悔しそうな、残念そうな表情をされていきますね…
超ワルそうなくせにコソコソしている私を見てがっかりしてるのかも…
む~…恥ずかしいですがビキニをつけている今ならちょっとぐらいなら大丈夫ですかね…よし!
私はダーティ!ダーティ・ゲイズコレクター!
凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです!
(勢いよく立ち上がって名乗りを上げるがバグった秘湯でビキニが消去されてしまっていた)
大観衆からの『見せろ』コールが鳴り響く。
そんな大注目の最中で強制的に胸元を披露することになってしまったダーティ・ゲイズコレクター(Look at me・f31927)の悲鳴が続いた。
デモンストレーションと思っていた男たちは、彼女の拒絶するような反応に驚いたのだろう。
思わず彼女の腕をパッと離してしまう。
「もう視ないでくださいぃぃぃ!!!」
ダーティは男性陣の間を縫うようにすり抜けると、温泉施設の方へと駆けだしていく。
目的地はどことも決まってないが、『秘湯』と掲げる入り口を眼にして一目散に飛び込んだ。
今は隠れられるのであれば何だって良いと反射的に身体が動いたのだろう。
そこにはまだ『バグ』が潜んでいるとも知らずに────
「ふぅ、ふぅ、せっかく注目を浴びているはずなのに、隠れたくなるようなこの気持ち……一体何なんでしょうか!?」
バクバクと心臓が鳴り止まない。
軽く走ったせいと思いたいが、それにしては息が荒すぎる。
やがて、それが『興奮』によるものなのだと気が付いてしまう。
「私……あんなことされて気持ち良かったってことですか……!? そ、そんなはず────!?」
今までどれだけ視られても嬉しいだけでしかなかった、そんなはずはない、と頭を振って自己否定。
もしも認めてしまえば、自分が変わってしまう気がして怖かったのだ。
「ひ、ひとまずお湯につかって、気持ちを鎮めることにしましょう!」
女性更衣室にだれもいないことにホッと一息つくと、ロッカーの使用状況を確認して女性客はほぼいないことが判明。
これならばと安心して『超!けしからん水着』のまま湯舟へと向かう。
たとえ透けている危ないデザインだろうと、見る者がいなければ問題無いのだ。
「わ! すごい湯気です! そういえば、サーペントレディさんとの闘いもこうでしたね」
戸を開けた途端に包まれる白いヴェール。視界はほとんど利かないが、それでも水音のする方向は分かる。
耳を頼りに湯へ浸かると、肩までドプリと沈めて身体を隠す。
幸いなことに乳白色に濁る湯であり、水面下の彼女を視ることは出来ないだろう。
やっと視線から解放されたとダーティが足を伸ばしてくつろぎ始めた。
「ん~~~!! ふぅ……気持ち良いですねぇ。 なんだかバチバチと刺激があるのが特に! 電気風呂ってヤツですかね?」
『バグ』の影響を電気刺激と勘違いしながらも、ダーティはすっかり本調子に戻って鼻歌まじりに上機嫌。
しかし、それを聞きつけたのか周囲からザブザブと水音が立つ。
一人二人ではないらしく、何事かと目を細めて湯気を睨んだ。
「も、もしかして煩かったですか!? ワルだったってことですか!?」
自分の行いが、はからずしも悪いことだったことに期待する。
ところが湯気を割って出て来た顔触れはいずれもニコニコと嬉しそう。
ダーティは自分の期待が外れてしまい、ムっと頬を膨らませて拗ねてしまった。
「あぁ、ごめんごめん。 おねえちゃんの邪魔しちゃったかね?」
「いえ、別に……ところで、お客さんはいないと思ってたんですけど……?」
図々しく隣へ陣取るオッサンの会話に付き合いながら、ふとした疑問を投げかける。
女性更衣室のガラガラな状況から、男性側も同じだと想定していたからだ。
「え? あぁ~まぁ、色々あってな、へへへ……」
「はぁ、そうですか……?」
改めて集まって来た人物を見渡すと、その全てが男性。
異様な偏りから少しオカシイと訝しみつつも、気持ちの良い湯舟でリラックスする誘惑に負けてしまう。
それよりも、むしろ彼らがチラチラと湯舟の下を見ていることが気にくわない。
人と話しているというのに、眼を見て会話も出来ないワルの集団なのだから。
このままでは魔王(自称)の名折れ。誇りのためにも優位に立たなくては。
「そんなに気になるんですか、水着────」
「『水着』? あ、あぁ~水着ね! うん、いやぁ気になるねぇ! こんなに美人さんだもの、顔だけじゃなくてプロポーションもいいだろう? 拝みたいものだねぇ、へへへ……」
「む~、このビキニはちょっと恥ずかしいですけど……今ならちょっとぐらいなら大丈夫ですかね────よし!」
周囲は湯気に覆われており、ここに集った男達以外からは必要以上に視線を集めることもない。
ならばとダーティは決心して頷いた。
だがこの時、オッサンが他の男へ合図を送っていたのを見逃してしまう。
どこかで風の動く音がするが、何も知らない彼女は湯船から勢いよく立ち上がって決め台詞を叫んでいた。
「フフフ、ならばとくと魅せてあげましょう! 私はダーティ!! ダーティ・ゲイズコレクター!!! 凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです
!!!!」
バシャバシャと身体から水が流れ落ち、『何も着ていない』女体が現れる。
「待ってましたぁー!」
「うぉぉぉ!! 生乳!!」
「でっっけぇぇ!!」
「……はい? って、いやぁぁぁぁ!?」
彼らの視線はダーティの胸元の一点に集約していた。
思わず自分もつられて見下ろすと、着ていたはずの水着が『バグ』により消失していることに気が付く。
おまけに、何故かギャラリーも増えていると思ったら、湯気が無くなっていたのだ。
「か、換気扇!? うそッ!? 『また』なんですかぁぁ!!!」
オッサンの策略にまんまと嵌り、彼女の痴態をまたもや多くの男達に視られてしまうのであった────
大成功
🔵🔵🔵