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理不尽なクソクエストが初心者を襲う!!

#ゴッドゲームオンライン


●GAME START
 剣と魔法のファンタジー世界を模したRPG『ゴッドゲーム・オンライン』は、人類史上究極のゲームと呼ばれている。そこでは、誰もがなりたい自分に変身できて、やりたいことをやれる。超管理社会『統制機構コントロール』に決められた最悪の人生から逃れるために人々に残された、最後の楽園といっていい。
 そして今日も、生まれたばかりの新たな冒険者が初めてのクエストに挑もうとしていた――。
「どうよ俺のグラファイト・ブレイドは。カッコイイだろう?」
「んん? 大層な見た目の割には攻撃力低くね? ナマクラだな」
「ハ、ハラヘッタ」
 蔦に覆われた遺跡のようなダンジョンの入り口で、男性キャラクター3人がわちゃわちゃと何事か話している。チームを組んだばかりなのに軽口を叩き合っている彼らは、リアルでの知り合い同士なのかもしれない。
 ジョブ構成は聖剣士×1、重戦士×1、魔喰者×1。前のめりなチームである。後衛役として、黒聖者か月穹士の加入が待たれる……といったところだ。ハイレベル冒険者への長い道のりが、今ここから始まるのだ。
「よーし。ヒャッハー! 殺しまくってやるぜぇー!」
「アホ! 勝手に行くな」
 武器を自慢していた聖剣士『ゼフィロス』が、喜び勇んでダンジョンの中へと走っていった。残された仲間、重戦士『レオ』と魔喰者『タゴサク』が慌ててゼフィロスの後に続く。

 それからおよそ一分後、三人は棍棒のような剣を持った敵に追い回されながらダンジョンから飛び出てきた。
「あーーーー!!死ぬ死ぬ死ぬもう無理!!!!」
「おい、こいつ強くねえか!?」
「ニ、ニゲル」
 なんとか街に戻って体勢を立て直そうとした3人だったが、敵に回り込まれてしまった。そしてステータスが異様に上昇した雑魚敵によってタコ殴りにされ、荒野に無様な姿を晒すこととなったのだ――。

「やあ。突然だけど、皆はオンラインゲームで遊んだりすることはあるのかな。私はそういうゲームをやったことがないから、詳しくないんだけど」
 ある日のグリモアベース。任務の説明を受けに集まってきた猟兵に向かって、ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)がそう切り出した。
「いや、新しく見つかった世界の話さ。ゴッドゲーム・オンライン……そのゲームの中の世界こそが、今回君たちに向かってもらう場所なんだ」
 開発者不明ながら、この『GGO』は人々に絶大な人気を博している。剣と魔法の世界をベースとしながらも、プレイヤーの創意工夫によってSFやオカルト要素が日々無秩序に追加されていくのだ。
 そして、圧倒的な自由度の高さも大きな魅力だ。倒したモンスターの肉を調理して仲間に食事を振舞ったり、必要な素材を集めて家を建てて、そこに住むこともできる。そのうえ、稼いだゲーム内通貨『トリリオン(T)』は、現実世界でも使用できるのだ。
「皆がゲームをプレイするんじゃなくて、実際にゲームの中に入ってもらうということだね。そのゲームの中で、初心者プレイヤーがオブリビオン化したモンスター、バグプロトコルに襲われてしまう。それを阻止してほしいんだ」
 バグプロトコルとは、GGOの世界に紛れ込んだ未知の怪物だ。通常の敵キャラを装ってプレイヤーを襲い、データ改竄された圧倒的な戦闘力で叩きのめす。バグプロトコルに倒されたプレイヤーは、ネットワーク上の『遺伝子番号ジーンアカウント』を焼却され、ディストピア的現実世界『統制機構コントロール』での一切の人権を喪失するのだ。
「要するに君たちには、ゲームの中でデバッグをすればいいのさ。標的にされるプレイヤーは、『古代遺跡シャンバラ探索』という初心者クエストに参加しているところを、バグプロトコルに襲われる。彼らのピンチを救って、クエストを最後まで安全に終えられるように補助してあげるのが、今回の君たちの任務だよ」
 始めたばかりで右も左もわからない初心者を襲撃する、卑劣なオブリビオンを見過ごすわけにはいかない。幸い猟兵は、一目でバグプロトコルを見抜く力を持っている。一流冒険者になるための第一歩を手伝ってあげるのも、猟兵の役目だ。
「それでは、準備ができた人から『GGO』へと転送しよう……装備は準備万端かい?」
 ガーネットのグリモアの力が増幅され、猟兵たちはゲーム内世界へと旅立っていく。いよいよ、ゲームスタートだ。


弥句
 究極のゲーム、ゴッドゲーム・オンラインへようこそ。弥句です。
 今回は、所謂『ゲーム開始時点のチュートリアルダンジョン』に出現したバグプロトコル(オブリビオン)を駆除するシナリオです。そのついでに、初心者プレイヤーの初クエストを成功させてあげましょう。
 第1章は集団戦。ゲーム内に転移後、まもなくバグプロトコルに襲われている初心者パーティ(三人編成)を発見できます。彼らに助太刀し、まずは安全を確保してください。
 うまく敵を掃討できたら、続く第2章(冒険)で彼らと一緒にダンジョンを探索する流れになります。ダンジョン内部もバグプロトコルの影響を受け、とても初心者向けとは思えない程の超高難度となっております。猟兵の出番です!
 第3章は再び集団戦で、ダンジョン最深部で待ち構えるボス敵との決戦になります。実はこのボスの取り巻きであるザコが、バグプロトコルに変異しています。猟兵の皆さんはこちらの雑魚集団を引き受け、ボスモンスターは初心者たちの成長の糧にさせましょう。ボスモンスターを倒し、クエスト達成すれば、今回のシナリオは成功です!
 ちなみに、三人の新米冒険者は以下の通り。1.金髪ロン毛、薄手のジャケットを身に着けた優男の聖剣士『ゼフィロス』。ハイテンションで猪突猛進主義。2.眼光鋭い黒髪のマッチョマンの重戦士『レオ』。シニカルな物言い。3.白髪に褐色肌の野生児風少年、魔喰者の『タゴサク』。常にカタカナで喋る。
 ここまで説明を読んでいただき、ありがとうございました。それでは、GGOの世界でお会いしましょう!
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第1章 集団戦 『ジェットソード』

POW   :    ソードアンドビーム
【原始的な形状の剣】が命中した敵を【宝石からの魔力光線】で追撃する。また、敵のあらゆる攻撃を[宝石からの魔力光線]で受け止め[原始的な形状の剣]で反撃する。
SPD   :    バグプロテクター
【弱点の宝石を覆うバグの塊】を召喚装着し、無敵になる。ただし視覚外からの攻撃は回避不能となり、防御力も適用されない。
WIZ   :    超高速斬り
速度マッハ5.0以上の【斬撃】で攻撃する。軌跡にはしばらく【宝石色の輝き】が残り、追撃や足場代わりに利用できる。
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 クエスト名:古代遺跡『シャンバラ』探索
 カテゴリー:初心者クエスト
 難易度:EASY
 参加人数:無制限
 参加レベル:上限なし
 クラン報酬:あり
 成功条件:ボスモンスター「ドラゴンゾンビ」の撃破

➤【クエストに参加する】【キャンセル】

 眩い光のトンネルを抜け、猟兵たちは遂に『ゴッドゲーム・オンライン』の世界にログインを果たした。猟兵達の身体能力、生命力が、ゲーム内のステータスに反映され数値化されていく。鬱蒼としたジャングルの中を道なりに進んでいくと、程なくして入り口を蔦で覆われたダンジョンが出現した。そして、
「誰か助けてーーーーっ!?」
 情けない叫び声と共に、三人の新米冒険者が猛スピードでこちらへ駆けてきた。彼らを追いかけてきたのは、『ジェットソード』と呼ばれるザコモンスターの集団。だが連中の正体は何者かが送り込んだオブリビオン『バグプロトコル』で、本来のステータスから大きく逸脱した戦闘力を与えられている。まずはこの戦いに介入して、冒険者たちを窮地から救い出さなければ。
チル・スケイル
(…オンラインゲーム?アカウント?ちょっとよくわからない言葉がたくさんで、私には難しいです)

(トリリオンがコントロールでプロトコルがデバッグ。全然わかりません)

む、気づけばジャングル。そして逃げる人と、追うモンスター
ようやく意味がわかるものが登場しましたね。
…ホッとしてる場合ではありません!討伐します!

数が多いので私もモンスターの軍勢を召喚。一か八か、疲れて動けなくなるくらいの筋力・体力を捧げます
氷モンスターで足止めしつつ、本命の氷トラップで攻撃。地面から生える氷の杭で、弱点の胸を貫きます

この世界を知るためにも、さっきの人をなんとしても助けなければなりません。


ジニー・ナーレ
アドリブ連携歓迎
SPD
(ジニーは幾つかのクエストで現れるNPCでした)
(冒険者さんたちから少し戦い方をお勉強しています)
「大変大変!冒険者さんがピンチなの!」
冒険者さんを助けるためにジニーは頑張るわ。
まずはちょっと離れたところから確認。
ええと、あのモンスターは宝石が弱点だったはず……あらあら?なんだかすごそうな鎧をつけちゃってる!
うーんと、でも見えないところからの攻撃は通るみたい。
よーし、ここはスペシャルな魔法で!(ステッキを一振り)
「ミラクルミラ、プリンセスミスト(こっそり)」
水と風の魔法で姿を隠して後ろとか上とか見えないところにこっそり近付いて、
「えいっ!」
ステッキから水と風の魔法を発射!


アルデバラン・タウルス
彼らを見ると己が初心者だった頃を思い出す
我も駆け出しの時は右も左も解らずキャラも全く固まって無かっt(ゲフンゴフン)

ジェットソードの分際にしては随分と強くなったものよ
貴殿達災難だったな…無事か?
不具合でクエストレベル不相応の敵が現れてる…と簡潔に説明

己の鎧と大剣の力をUCにて強化し、新米達と敵の間に割って入り
この身を以て弱者を守る事こそ騎士の役割である
近頃は重武器攻撃に偏った重戦士も多いが、我の様な壁役も捨てたモノでは無い事見せてくれよう
大剣を軽々振り回し、奴らの剣ごとその身をへし折ってくれる!

誰しも最初は初心者
先達の戦いを見る事も経験だ
我らは貴殿達を歓迎し応援しよう
ようこそ、GGOの世界へ!




「(…オンラインゲーム?アカウント?ちょっとよくわからない言葉がたくさんで、私には難しいです)」
 純ファンタジー世界であるアックス&ウィザーズの住人であるチル・スケイル(氷鱗・f27327)にとって、『ゲームの中の世界』という概念を理解するのはなかなか難しいことかもしれない。グリモア猟兵から受けた説明も、チルの聞きなれない単語だらけだ。
「(トリリオンがコントロールでプロトコルがデバッグ。全然わかりません)」
 初めての世界に戸惑いながらそろそろと森を進んでいると、草を掻き分けて向かってくるピンク色の物体が見えた。チルが目を凝らしてよく見てみると、それは小柄な人の頭だと分かった。
「大変大変! 冒険者さんがピンチなの!」
「あら、かわいいお嬢さん。どなた?」
 切迫した様子でチルに話しかけてきたのは、ノンプレイヤーキャラクター(NPC)の少女だった。ジャングルに不似合いな可憐なドレスを纏った少女は、ジニー・ナーレ(魔法の国のおてんばプリンセス・f41817)。由緒正しき魔法の王国『ミラクルミラ』からやって来た、プリンセスである。
「わたしはジニーと申します。バグプロトコルに襲われている人を助けるために、力を貸してくださいませ!」
「私は猟兵のチル・スケイル。……わかりました、どうやら面倒ごとのようですね」
 バグプロトコルがこの世界におけるオブリビオンのことを指すというのは、チルにも分かった。挨拶もそこそこに、チルとジニーは冒険者たちが襲われている現場へと急いだ。

「クッソ、回り込まれた!」
「アーッ!殺られるー!!」
 いよいよジェットソードに追い詰められ、絶体絶命となった三人の新米冒険者。ゼフィロスのグラファイト・ブレイドは弾き飛ばされ、無防備な彼の頭部に目掛けて棍棒の如き長剣が叩きつけられる――。
「ムンッ!!」
 哀れなゼフィロスが縦に両断される直前、横合いから飛び出た黒影が斬撃を弾き、ジェットソードに体当たりをかました。現れたのは、漆黒の騎士鎧を纏い、エンジン機構を備えた大剣を持つ巨漢の戦士。
「ジェットソードの分際にしては随分と強くなったものよ」
「え……あ……?」
「貴殿達災難だったな……無事か?」
 呆けた顔の三人に向き直ったアルデバラン・タウルス(断罪の黒曜・f41856)は、簡潔に現在の状況を伝える。ゲームに不具合が発生し、本来のクエストレベルに見合わない強さの敵が出現していると。
「ここは我に任せておけ!」
 アルデバランは壁役タンクとして三人をきっちりとガードしつつ、『オブシディアンクレイモア』を振るって強力な一撃をジェットソードに叩き込んだ。戦いながら、アルデバランはふと自分が初心者だった頃を思い出す。
「あれは何年前だったか、我も駆け出しの時は右も左も解らずキャラも全く固まって無かっt……」
 当時の事を思い返すと、どうにも気恥ずかしくなる。最初にクランの仲間に挨拶したときの口調はどうだったか。やたらカッコつけてみたり、一人称も二人称もブレまくっていたような気がする。
「ゴフン、ゴフン! ……失敬」
 照れ隠しに咳払いすると、アルデバランは再び剣を構えて敵の猛攻に備えた。
「成る程、逃げている人に、追うモンスター。ようやく意味がわかるものが登場しましたね」
「そこの重戦士さん、加勢します!」
「増援か! かたじけない」
 やがてチルとジニーも戦場に合流し、遠距離攻撃の使い手が揃った。このように、その場に居合わせたメンバーで敵に立ち向かうのもGGOの醍醐味だ。
「氷魔よ、我が生命を預けよう。令を果たし、我に氷血を捧げよ!」
 チルが狙撃杖『カシュパフィロ』をかざしながら呪文を紡ぎ、【氷術・育アイスグロウ】を発動させる。すると霧氷の中から冷気を放つモンスターの群れが現れ、ジェットソードへと一斉に襲いかかった!
「召喚魔法か!」
 強力な助太刀を得て、アルデバランの士気も俄然上がる。【タンク・オブ・スティール】で武装を強化したアルデバランは、宝石から放たれる光線を大剣で防ぎ、次いでエンジンを噴かせた豪快な兜割りでジェットソードを剣ごと叩き斬ってみせた。
「あれがハイレベル重戦士か……」
 そんなアルデバランの奮戦を、同じ重戦士のレオがじっと見ていた。

「ええと、ジェットソード。あのモンスターは宝石が弱点だったはず……」
 ジニーは、どうやって戦うか遠くから敵を見定めていた。冒険者たちから教わった戦闘知識を活かすときが、遂にやってきたのだ。だが一つ、想定外のことにジニーは気がついた。
「あらあら? なんだかすごそうな鎧をつけちゃってる!」
 ジェットソードの胸の宝石を保護するように、その部分だけが謎のバグに覆われている。本来なら有り得ない現象。だがこれこそ、奴らがバグプロトコルである何よりの証だ。
「ミラクルミラ、プリンセスミスト」
 魔法のステッキを取り出し、やや声を抑えて呪文を唱える。すると、ジニーの身体はたちまち渦巻く風と水飛沫によって見えなくなった。敵に感知されることなく、ジニーは敵の死角からそっと回り込む。
「えいっ!」
 ステッキの先端から放たれたのは、水と風の魔力を組み合わせて作られたシャボン玉状の魔法弾。それらはふわふわと空中を漂って、音も無くジェットソードの背後から着弾する。
「!?」
 パン、パンという軽快な炸裂音と裏腹に、ダメージはなかなかのようだ。死角からの攻撃に対処できず、ジェットソードは次々にダウンしていく。
「……っ!」
 一方チルは、魔術の代償に筋力と体力を消耗し、魔杖を持つこともままならくなっていた。遂には握力が失われ、杖がゴトリと地面に落ちる。マッハ5.0を超えるジェットソードの斬撃がチルのモンスターを両断し、氷塊へと変えた。
「あっ、チルさん大丈夫ですか……?」
「私は平気。本命はここからです!」
 次の瞬間、巨大な氷のスパイクが地面から出現すると、突出していたジェットソードを無慈悲に貫いていった。胸部の宝石を破壊され、ジェットソードが力なく崩れ落ちていく。
「成る程、囮を利用した二段構えの戦法ですね」
「敵を倒せば、私の体力は戻ります。この調子でどんどん討伐しましょう」
 アルデバランが敵を引きつけ、チルとジニーが魔法で後ろから敵を狙う。猟兵たちの連携は、新米冒険者にとってまさに実践的なチュートリアルであった。
「ア、アイツラクウ」
「いやどう見てもあの人の魔法だろ。自重しろ」
 タゴサクはチルの召喚したモンスターを捕食しようと思ったようだが、ゼフィロスにピシャリと静止されてしまった。
「怪我はないか? 誰しも最初は初心者、先達の戦いを見る事も経験だ」
 窮地を救われ、観戦モードに入っていた新米たちにアルデバランが話しかけた。三人の方へと向き直り、ザン! と大剣を地面に突き立てる。
「う、うっす」
「スイマセン、助けてもらって」
「我らは貴殿達を歓迎し応援しよう。ようこそ、GGOの世界へ!」
 次々と敵を蹴散らしていく猟兵達の姿は、きっと初心者プレイヤーたちには頼もしく映ったことだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キキョウ・ハットリ
右も左もわからぬ初心者を襲う。なるほど理に適っていると言える。
だが私の目の黒いうちはそのような真似は絶対に許さん。助太刀するとしよう。

まずは敵の前に立ちふさがりプレイヤーを守りつつ、敵視ヘイトをこちらに向けさせる。
ジェットソード……低級の魔物であり弱点は胸部の宝石。本来ならば手こずるような相手ではない。
しかしその弱点はバグで無効化されているようだな。全く厄介な事だ。

ならばそこ以外を狙うまで。【忍法・空蝉之術】で攻撃を躱して視界外に回り込んだ後、くないにて不意打ちを仕掛ける。
何も弱点でなければダメージが通らぬ訳ではないだろう。何事にも抜け道という物があるものだ。




「むう。初心者を狩るとは、卑怯な……」
 草むらから戦場の様子を窺っているのは、忍び装束の美女。NPCノンプレイヤーキャラクターキキョウ・ハットリ(血花繚乱・f41852)は、バグプロトコルの所業に強く憤っていた。
 右も左もわからぬ初心者を襲うという敵の作戦は、理に適っているといえる。だが、襲撃者の裏に潜む者の底知れぬ悪意を、キキョウはひしひしと感じていた。
「だが私の目の黒いうちはそのような真似は絶対に許さん。助太刀するとしよう」
 キキョウの目が研ぎ澄まされた刃のような鋭さを帯びると、その姿は既に草むらから勢いよく飛び出していた。矢の如きスピードで駆け、瞬く間に戦いの真っただ中に降り立つ。
「うお、ビックリしたぁ!」
「ニ、ニンジャ」
 新米冒険者たちが驚くのも無理もない。キキョウは、ゲーム未実装の地域「東方」出身のNPCだ。その性能はまさに攻撃特化。しかも高い回避力を誇り、だまし討ちや毒武器を駆使してやりたい放題できる優れたアタッカージョブなのである。
「我が主の命を受け、そなた達の助太刀に参った。バグは悉く斬り捨てる!」
 覆面で口元を覆い隠し、敵群の前に躍り出るキキョウ。ジェットソードは、ゲーム序盤に頻出する雑魚モンスターだ。胸部の宝石を弱点としており、プレイヤーはまずこいつを相手に攻撃を的確に当てる練習を行う。
「ふむ……胸部をバグで無効化しているのか。全く厄介な事だ」
 ジェットソードの胸の宝石を隠すように、モザイクじみた黒いバグがちらついていた。確かに厄介だが、
「何事にも抜け道という物があるものだ」
 それだけで忍者シノビを破れると思ったら大間違いだ。
「……!」
 左右から棍棒のような形状の剣を振りかざし、ジェットソードが一斉に斬りかかってくる。五月雨のごとき斬撃がキキョウに打ち付けられる――刹那、彼女の姿はその場から霞の如く掻き消えた。
「残念だったな」
 地面に転がった残骸は、キキョウが隠していた木偶だ。キキョウは投げ出した木偶と瞬時に立ち位置を入れ替え、攻撃を躱すと同時に敵の死角に回り込むという離れ業をやってみせたのだ。これが忍法・空蝉之術。そして、手の内に忍ばせていたくないを、背後から投擲する。
「は、早い……」
 聖剣士のゼフィロスが視認する暇もなく、くないをうなじに撃ち込まれたジェットソードが一体、また一体と倒れていく。回避不可能の暗殺術が、バグプロトコルを的確に葬っていく。
「雑魚を装って近づく貴様らと、この世界ゲームを護るために手段を択ばぬ拙者。本当に汚いのはどっちだろうな?」
 バグを誅殺する非情の刃が、再びジェットソード目掛けて鞘走った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

澄清・あくあ
(アドリブ連携歓迎)(POW)

初めて見る者がたくさんな世界だけど…
あまり時間はなさそうで。

「あれ…!」
『話す前に、飛ばさないと。飛ぶよ!!』

二人一緒に出力全開の【滑り舞う蒼空奔走】で飛び出し、
滑空中に両足を逆関節へ変形、脚先端を凍結させ
特に危ない個体へドロップキックして弾きます

「死んじゃうのは、終わりなのは、だめだからね。」
『弱い自分を恥じないで。誰も最初はそうだから』

相手の攻撃、動きを見極めて、【麗識・臨界激発】で
体幹を崩し【選択UC】で弱点部位を突き刺すのです

「焦って呼吸を乱しちゃダメ。なの」
『落ち着いて、「観る」事が大事だよ』

大事なことは、教わらないと
知らないで終わる事が多いからね。




 鬱蒼とした深緑の密林を往くのは、二人のスライム娘。それぞれの体色は煌めく藤色と、澄んだ蒼色。呼吸法がもたらす特殊なエネルギー「波紋」の使い手、澄清・あくあ(ふたりぼっちの【原初の一】・f40747)と相方のあるまは、予知された場所へと急いでいた。
「あれ……!」
 見れば、件の新米冒険者たちは遺跡の入り口で敵と交戦している最中だった。交戦というよりは、一方的に攻められ逃げ続けているだけなのだが。
『話す前に、飛ばさないと。飛ぶよ!!』
 ふたりが初めて見る世界は、刺激に満ちていた。だが、今回はあまり時間がなさそうだ。不思議な水で構成される体内を駆け巡る波紋をフル稼働させ、二人は足並みを揃えて跳躍した。そして空中で脚を逆関節に変形させ、瞬時に凍らせた状態で飛び蹴りを放つ。
「!?」
 衝突音が鳴り響く。ジェットソードを蹴飛ばした反発を利用して、再び跳躍して地面に着地。突如乱入したあくあとあるまに、ジェットソード達が警戒を強めた。
「死んじゃうのは、終わりなのは、だめだからね」
『弱い自分を恥じないで。誰も最初はそうだから』
 困惑する新米冒険者を尻目に、あくあとあるまは体を柔軟に変化させて戦闘の予備動作に入る。鉱石を削りだしたような無骨な剣を構えたジェットソードが、二人に一斉に斬りかかった。
「危ない!」
 切っ先が届く刹那、聖剣士のゼフィロスが叫んだ。だが次の瞬間、二人の足元はするりと液状化。摺り足の要領で最小限の動きで斬撃を躱し、二人で挟み込むようにジェットソードの側面に回り込む。そして、弱点である胸の宝石を狙って、それぞれの腕から高周波波紋刃を叩き込んだ。
「……!」
 両サイドから【蒼碧色の界世破断スプリンググリーン・オーバードライブ】を叩き込まれたジェットソードの上半身が、滑らかにスライドしながら落下する。その鮮やかな手並みに、冒険者たちは言葉も出ない。
「焦って呼吸を乱しちゃダメ。なの」
『落ち着いて、「観る」事が大事だよ』
 宝石から放たれる魔力光線も難なく見切り、あくあとあるまはカウンターの連撃を矢継ぎ早に打ち込んでいく。柔よく剛を制すと云うが、彼女らの戦闘がまさにそれだ。
「大事なことは、教わらないと知らないで終わる事が多いからね」
 熟達した武術を操るあくあとあるまによって、ジェットソードの群れは次々と撃破されていく。そして最後の一体が崩れ落ちた時、どこからか戦闘終了のファンファーレが高らかに鳴り響いたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『操作不能なんて、大キライだ』

POW   :    耐性や気合でゴリ押し突破

SPD   :    対策とテクニックで華麗に突破

WIZ   :    いっそ拘束されたまま突破

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 猟兵たちはバグプロトコルの群れを迅速に撃退し、3人の初心者プレイヤーを危機から救い出すことができた。
「危うくロストするところだったぜ……」
「助けてもらって感謝する」
「ア、アリガトウ」
 三人がそれぞれの感謝の言葉を述べて、いよいよ初心者クエストの始まりだ。古代遺跡シャンバラに足を踏み入れると、そこは寒々とした石造りの廊下が続く薄暗いダンジョン。
 本来シャンバラは初心者が基本操作や戦闘法を身に着けるための低難易度のダンジョンなのだが、謎の仕様変更によって拡張され、トラップやモンスターも激増している。
 例を挙げれば『床も壁も天井も電気ビリビリ洞窟』、『入口からボス部屋まで極寒のダンジョン』、『激狭通気口迷宮』等々。初心者だけでは攻略は至難の業だ。
 ゼフィロスは無策で突っ込んでいくし、レオはまだ操作が覚束ないところがある。それにタゴサクは取り敢えず目についたものを口に入れようとする。彼らがクエストを達成するためには、猟兵達が手助けをしてあげる必要があるだろう。
 初心者クエストなので、主に彼らが成長できるように花を持たせたり、基本操作に慣れるように経験を積ませてあげるとよいだろう。
 ※2章は、猟兵が初心者達に同行する冒険シナリオとなっております。ダンジョン内の仕掛けは、上記のもの以外にもプレイングに書いていただくと大体登場させます。
チル・スケイル
色々な部屋や迷宮があるようですが、私は極寒ダンジョンの護衛を担当します

私が通るだけならば問題ないですが、初心者の皆さんにとっては過酷な環境ですね…

満ちた冷気そのものを魅了することで、冷気を緩和して、初心者達の負担を減らします
それにしてもモンスターの数が多いので、私も後方から氷弾丸で支援。モンスターの足を凍らせて止めます

アドバイスもしないと。皆さん、焦らないでください
焦ると死にます。死にます(2回言った)
それから、そうですね…死にそうなら逃げましょう。そして隠れましょう。それから回復しましょう

端的に、わかりやすい言葉選びを心がけ、冒険と戦闘の心得を説きます




 その区画に足を踏み入れた瞬間、肺の中まで凍りそうな冷気が冒険者を襲った。床、壁、天井の隅々まで、ビッシリと霜と氷柱で覆われている。
「サ、サムイ……」
「寒すぎなんだけど、マジで!」
「今度は氷のトラップかぁ? 勘弁してくれ」
 ろくに防寒装備を揃えていない冒険者たちは、早くもガタガタと体を震わせている。チル・スケイル(氷鱗・f27327)はその様子を見て、どうしたものかと腕を組み、目を細めた。
「私が通るだけならば問題ないですが、初心者の皆さんにとっては過酷な環境ですね……」
 やがてひとつの結論に辿り着く。特に寒さに適応する装備や術がないのなら、この環境に変化を与えるしかない。
『心なく、しかし愛を知る雪華よ。一時、私と共に歩みましょう』
 チルのサファイアブルーの瞳が輝きを放ち、【氷術・魅アイスチャーム】の魔力が空間全体に作用した。氷雪に纏わる生物、無機物、現象すべてを魅了し、支配しうるチルのユーベルコードを以てすれば、この極寒のダンジョンに満ちた冷気を緩和することも可能だ。
「お、少し吹雪が収まってきたぜ?」
「制限時間は145秒。その間に、少しでもこの領域を踏破しましょう」
 猛烈な吹雪が弱まったのを契機に、一行はすぐに進軍を開始する。石造りの狭い通路には、すぐに大量のモンスターが現れた。
「ヨッシャ、蹴散らすぜ! 俺のアクセルコンボを喰らえっ――」
 グラファイト・ブレイドを抜き放ち、ゼフィロスが意気揚々とモンスターに襲い掛かる。相変わらずの猪武者っぷりである。だが、今の彼は哀しき低レベル聖剣士。氷の床に足を滑らせ、あえなく転倒してしまう。
「グヘッ……」
「うわ、ダッサ」
「皆さん、焦らないでください」
 チルは落ち着き払った調子で突撃杖『ストゥーマ・フシロ』を構え、モンスターに狙いを定めて冷魔法弾を連射する。今まさにゼフィロスの頭をカチ割ろうとしていたザコモンスターが、氷の弾丸に貫かれて動きを止めた。
「焦ると死にます。死にます」
 淡々と、しかし残酷なまでにシビアな事実を突きつけるチル。大事なことなので、2回言う。とにかく低レベルの初心者プレイヤーは死にやすい。バグプロトコルが相手ともなれば、猶更だ。
「うう……ちくしょおおお」
 鼻血を垂らし、情けない顔を上げるゼフィロス。せっかくのイケメンが台無しである。彼の場合そもそも紙装甲の聖剣士なのだから、1発喰らえば即終了である。
「……だからまずは、盾役の俺に先行させろつってんだろが!」
「アムアムアムアムアム……」
 エンジンブレイドをぶん回し、氷像となった敵を解体していくレオ。タゴサクは先程から敵を捕食しようと、凍った敵の頭に齧りついている。
「それから、そうですね……死にそうなら逃げましょう。そして隠れましょう。それから回復しましょう」
 狩るべき敵と、逃げるべき敵の見極め。そして回復のタイミング。これも長丁場のダンジョン探索においては重要だ。めんどくさい敵と戦うのは、効率が悪い。なので大抵は、特定の敵にターゲットを絞って狩る。
「今回の場合は、フロアの通過が最優先です。敵を倒したい気持ちもわかりますが、戦闘は極力避けましょう」
 GGOの住人ではないが、歴戦の猟兵であるチルの言葉には確かな説得力があった。
「仕方ねえ、ここは速攻で切り抜けるぜ」
 ジャケットに付着した霜を払い落とし、気合を入れ直すように頬を叩くゼフィロス。
「だな、吹雪が収まってる間に次へいくか。おい、立てタゴサク」
 ゼフィロスとレオはまだ肉にかぶりついていたタゴサクを両脇から抱え、歩調を合わせて一緒に走り出した。何だかんだ言って、彼らも少しずつ協調し始めたようである。

成功 🔵​🔵​🔴​

キキョウ・ハットリ
NPCお前たちプレイヤーをサポートするのが役目だ。
お前たちがクエストを諦めずクリアを目指すと言うならば、喜んで力を貸そう。

落とし穴、吊り天井に振り子刃。どれも巧妙に隠されてはいるが私の目は欺けん。
罠の解除あるいは回避方法を彼らにみっちりと仕込むとしよう。
ゼフィロス、先走るのはやめろ。タゴサク、見るからに怪しいキノコを食そうとするな。

二人の先行は【手裏剣投げ】の影縫いで止めるとして、レオは操作に不慣れという事だったな。
いいか、罠の攻略に最も肝心なのは慎重さだ。その点で言えば今のお前は操作慣れによる慢心はない。
ゆっくりでもいい。罠を見極め、落ち着いて行動すれば必ず攻略できる。




 いよいよ、GGOビギナープレイヤーを対象としたクエスト『古代遺跡シャンバラ探索』が始まった。精悍な忍装束に身を包んだキキョウ・ハットリ(血花繚乱・f41852)が、琥珀色の瞳で初心者たちを見ながら語りかける。
NPCお前たちプレイヤーをサポートするのが役目だ。お前たちがクエストを諦めずクリアを目指すと言うならば、喜んで力を貸そう」
「上級者のサポートがあれば、心強いぜ。なあ?」
 三人の初心者は、勿論やる気満々だ。そのやる気が暴走すれば時に惨事を招くのだが、その辺りの手綱を執るのもキキョウの役目だ。
「ああ、色々と教えてもらおうぜ。初心者だからな」
「ヨ、ヨロシク」
 キキョウはそんな三人組を連れて、ダンジョンを下層に向かって進んでいく。道中ザコモンスターを撃破しながら進んでいくと、キキョウはすぐにトラップを発見することができた。
「(微妙に色の違う床は落とし穴か。吊り天井に振り子刃。どれも巧妙に隠されてはいるが私の目は欺けん)」
「ヒャッハーー!!」
 見ればゼフィロスは奇声を上げながら敵に向かっていくところで、タゴサクは床の隙間から生えているキノコを拾い食いしようとしていた。
「あいつら……俺を置いていきやがって」
 レオはまだ操作が身に付いていないところがあり、やや遅れて後ろをついてくる。軽くため息をつきながら、キキョウは素早く手裏剣を投擲した。
「おおっ!?」
「ウ、ウゴケナイ」
 影縫いによって動きを止めたゼフィロスのすぐ目の前を、ギロチンの刃が猛スピードで通過していった。タイミングが合っていれば、今頃頭と胴が泣き別れだ。 
「ゼフィロス、先走るのはやめろ。それからタゴサク、そんな見るからに怪しいキノコを食そうとするな」
 キキョウがそのキノコを調べてみたところ、食べるともれなく毒の状態異常をもらう罠であった。ヒーラーもいない現状、回復はアイテム頼みなので体力を浪費するわけにもいかない。
「いいか、トラップの基本は『錯覚』と『目先の利益』だ」
 トラップというものは、自分に都合のいい思い込みや、下心に釣られてつい取ってしまいがちな行動を逆手にとって発動するように仕掛けられている。キキョウは特に危なっかしい二人に、罠を見抜くコツと回避方法をみっちり教えることにした。
「ところでレオ、動き方にはもう慣れたか」
「いや……まだうろ覚えのところがあるが」
 この重戦士は操作に不慣れなぶん、他の二人のように不用意にあちこち調べ回って罠に引っかかるという心配は少ないだろう。
「いいか、罠の攻略に最も肝心なのは慎重さだ。ゆっくりでもいい。罠を見極め、落ち着いて行動すれば必ず攻略できる」
 キキョウの言葉に自信を得たか、レオは満足げに頷いた。
「そうだな。まずは全員無事にボスまで辿り着くことだよな」
 レオが床に小石を投げると、それに反応して床から鋭利なスパイクが飛び出した。そのスパイクを、エンジンブレイドで豪快に叩き斬る。
「そう、その調子だ」
「まったく、トラップだらけだな。おら、いくぞヌケサク」
「タゴサク!!」
 名前を間違えられた(おそらくわざとだろう)ことに怒ったタゴサクが、ぴょんぴょん飛び跳ねて不満を示した。
 冷静な者が一人でもいれば、パーティーの生存率は高くなる。道中でキキョウはいち早く罠を見抜いたうえで、彼らにどこが怪しいかを当てさせるテストを続けた。これで、罠に関して幾らかの対処法が身についた筈だ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジニー・ナーレ
アドリブ連携歓迎

「まぁ、ダンジョンがめちゃくちゃだわ!」
こういう時は魔法のステッキで罠をお片付けしちゃったらいいのかしら?
……う〜ん、でも全部お手伝いしたら
冒険者さんの修行にならないわよね。
「大変だけど、一緒に冒険のお勉強がんばりましょ!」
冒険者さんにプリンセス力満載の笑顔を込めて応援。
入った部屋(or通路)に白と黒が市松模様に並んでるわ。
看板には白い所だけを踏んで歩くこと、って書いてあるのよ。
ダンジョンの歩き方の練習かしら?
黒い床を踏んだら罠が発動しそうだから、美味しそうなお肉やキラキラした宝石が落ちてても拾いにいかない方がいいかも。
「きゃあ!」
もし冒険者さんが罠にかかったら指定UCで回復




「それでは、ここからはわたしが皆さんを案内しますわね!」
 魔法の国『ミラクルミラ』のプリンセス、ジニー・ナーレ(魔法の国のおてんばプリンセス・f41817)が、優雅な仕草で三人の新米冒険者をエスコートする。
 ジニーのママ上、ミラクルミラ女王はある日彼女にこう言った……『おてんば盛りのジニー、外の世界でたくさんいいことをするまで、お城に戻ってはなりません』と。
 こういった初心者に向けたチュートリアルは、NPCの代表的な仕事のひとつだ。
「お姫様とご一緒できるとは、俺達も運がいいねぇ」
 ジニーがまだ子供とはいえ、女性の前ではカッコをつけたがるのがゼフィロスらしい。
「うふふ、わたしにお任せくださいまし」
 にこやかに微笑みながら、次の区画に続くドアを開けるジニー。そしてドアを開けた瞬間、彼女は笑顔のままその場で固まった。
「どうした? 姫さんよ」
 重戦士のレオが、怪訝そうに話しかける。そのフロアーは、チェス盤でおなじみの白黒市松模様の床で構成されていた。その上を無数のモンスターが徘徊しているのだが、黒い床を踏んだ瞬間、次々とトラップに掛かって絶命していくではないか。
「まぁ、ダンジョンがめちゃくちゃだわ!」
「グ、グロイ……!」
 火柱が噴き上がってモンスターを黒焦げにしたり、落とし穴で奈落の底へと落としたり。容赦ない罠の数々に一行も引き気味だ。だが、このフロアーを通過しなければ先に進むことはできない。
「あら? あそこの看板に何か書いてあるわ。『白い所だけを踏んで歩くこと』……歩き方の練習かしら?」
「白い床だけを踏んでいけばいいのか? なら簡単だな……ってお前!?」
「ニ、ニク! ニククウ」
 美味しそうなマンガ肉に気を取られ、魔喰者のタゴサクがホイホイと黒い床のほうへと近づいていく。そして彼が黒い床を踏んだ瞬間、恐ろしいトラップが発動した!
「アババババババッ」
「きゃあ!」
 その床に仕掛けられていたのは、ダメージと感電効果を受ける高圧電流トラップだった。哀れなタゴサクはその場に倒れ込み、白目を剥いて動けずにいる。
「だーから目先の利益に釣られるなって教わっただろーが……姫さん、回復できるか?」
「わたしに任せて!元気になぁれ!ミラミラクル!プリンセスヒール!」
 ジニーが魔法のステッキに祈りを込めると、【みんなを元気にするスペシャルな魔法プリンセスヒール】で造られたカラフルなキャンディが出現した。そのキャンディは自動的にタゴサクの元へピョンと飛んでいき、彼に回復の効果をもたらした。
「大丈夫か、タゴサク? ったく、プリンセスに迷惑かけんじゃねーよ」
「ダ、ダイジョウブ」
「よかった、ちゃんと元気になったみたいね」
 癒しの魔法がうまくいったことに、胸をなでおろすジニー。ちなみにそのマンガ肉は回復アイテムの一種だったらしく、お礼とお詫びの品として三人からジニーへと献上されたのである。

成功 🔵​🔵​🔴​

澄清・あくあ
(アドリブ歓迎)

「ひとのこころがないです。ここ」
ご主人様ますたーよりちょっと厳しいです』

殺意にあふれた仕掛け満載の場所に出たら
慌てず騒がず行動の前に必ず周りを見ることです

「相手の考えの予測、作った後外に出る為の何かが絶対あるのです」
『仕掛けは作る何かがいるからあるのです。帰り道も一緒に』

常時動く仕掛けも、通りたきゃ止めるし
センサーがあるなら、反応しない場所を作る
外に出れないのはつらいから必ずある
何も無さそうな所に隠れてるとか

と突っ込む前に「観る聞く嗅ぐから始まる安全確認」を話します

仕掛け探しの補助と…難しそうだったら波紋を周囲へこっそり発振
跳ね返ってきた波紋から怪しい場所を突くです




 猟兵たちと三人の新米冒険者は、無数に罠がひしめくダンジョンの中を慎重に探索している。猟兵のアドバイスが活きてきたか、冒険者たちも少しずつ迷宮探索の基礎テクニックを掴みつつあるようだ。
 このエリアの同行を担当するのは、澄清・あくあ(ふたりぼっちの【原初の一】・f40747)とあるま。ダンジョン最深部に続く区画だけあって、罠の数も悪質さもこれまで以上だ。
「ひとのこころがないです。ここ」
ご主人様ますたーよりちょっと厳しいです』
 彼らの行く先には、壁や穴で分断された通路が続いている。パッと見ただけでも、床は意味ありげに色分けされ、壁には無数のスイッチやレバー。そして、これ見よがしに置かれた宝箱がそこかしこに見受けられる。
 あくあとあるまは、フロアー全体に満ちた底知れない悪意を敏感に感じ取っていた。冒険者たちにも、漠然とした嫌な予感は伝わったようだ。
「さーて、どうするかねえ……」
 腕組みをして、このフロアをどう切り抜けるか頭を悩ませるのは重戦士のレオ。そんな彼に、二人は助言を投げかけた。
「相手の考えの予測、作った後外に出る為の何かが絶対あるのです」
『仕掛けは作る何かがいるからあるのです。帰り道も一緒に』
 怪しいと感じたところには、必ず何かがある。そう言ったあくあとあるまは、人体ノ神秘【麗識 呼吸法】を用いて体内に流れる波紋のエネルギーを周囲に発散させていく。
「……何をしてるんだ?」
『しっ。今反響してくる波紋から怪しい場所を探っています』
 見えない場所に凶器が埋め込まれているのなら、そこから反響する波紋は強く、逆に空洞があるのなら反響は弱くなる筈である。そういった不自然さを感じ取りながら、あくあとあるまは一つずつ罠を探していく。
「慌てず騒がず行動の前に必ず周りを見ることです」
 ただ、自分たちが見つけるのでは意味がない。彼らが違和感を感じるか否か。感じたうえで、どう対処するか。最終的な判断は冒険者たちに委ねることにした。
「クンクン……ココ、モンスターノニオイスル」
「いいぜ、ボタンを押してくれ」
 魔喰者のタゴサクが、魔物の匂いを感じ取ったようだ。レオに促され、あくあが壁のボタンを押した瞬間、壁の裏の隠し部屋に潜んでいた魔獣が爪牙を閃かせて襲い掛かって来た。
「こういうことかっ!」
 あくあが喉を裂かれる前に、ゼフィロスがアクセルコンボを叩き込んで魔獣を肉塊へと変える。どうやら敵の奇襲は失敗に終わったようだ。
「自分がダンジョンの主ならどう罠を置くか……ちょっとわかった気がしてきたぜ」
「木登りは、木から降りる時のほうが危ないといいます。油断せずにいきましょう」
 猟兵と冒険者はひとつひとつ慎重に障害を乗り越え、無事にフロアーの出口に辿り着いた。重々しい木の門扉を開けると、その先にはダンジョンのボスが待つ領域への道が続いていることだろう。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 集団戦 『アマルガムビースト』

POW   :    バグプロトコル・クロー
自身の【爪】が触れた対象に【バグ】を注ぎ込み、身体部位をねじ切り爆破する。敵との距離が近い程威力増大。
SPD   :    アマルガム・ゲイル
【魔獣のオーラ】を纏いレベル×100km/hで疾走する。疾走中は攻撃力・回避力・受けるダメージが4倍になる。
WIZ   :    ミューテーション・プロトコル
【体表面に出現する「魔獣の顎」】で敵の肉片を捕食する。自身の身体部位ひとつが変異し、敵のユーベルコードひとつを使用可能になる。
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 古代遺跡シャンバラの最深部は、広大な祭壇の間になっていた。その祭壇の上に横たわっていたのは、腐臭を放つ巨大なドラゴンの骸。冒険者と猟兵が足を踏み入れた瞬間、封印の魔法が解かれる演出が始まった。鎖と杭で拘束されていたドラゴンゾンビが、悍ましい咆哮を上げて覚醒する!
『ゴオオオォォォォォッ!!!!』
 そしてダンジョンを揺るがす大音声に呼応して、魔方陣から大量の魔獣――アマルガムビーストが出現する。
「いよいよボスのお出ましかっ!」
「おう、コイツを倒せばクエスト攻略だぜ!」
「ハラヘッタ!!」
 初めてのボス敵を前に、冒険者たちのテンションも否応なしに高まる。だが、猟兵達は僅かな違和感を敏感に感じ取っていた。取り巻きのアマルガムビーストこそが、本当に倒すべき敵――バグプロトコルであると。
 ここまでの冒険で、初心者プレイヤーも少しは経験を積み、成長を実感している筈だ。彼らがドラゴンゾンビとの戦闘に専念できるよう、バグプロトコルを殲滅しよう。
キキョウ・ハットリ
ふっ、威勢がいいな。敵は強いが油断しなければお前たちだけでも倒せる相手だ。
お前たちが存分に力を発揮できるよう、私は雑魚の相手をするとしよう。

くないで牽制しつつ接近してきた個体を忍刀で斬り伏せる。
爪での攻撃には気を付けねばならんが、危なくなれば【霧変化之術】で霧へと変異する事で回避する。
そのまま敵を霧で包み込み、前後不覚に陥れたのち背後から強襲するとしよう。
お前たちバグの出る幕ではない。雑魚は雑魚らしく早々に散るがいい。

余裕があればボス戦のアドバイスをするのもいいだろう。
ボス戦こそパーティプレイの醍醐味。彼らには今日の経験を活かし、よき冒険者となってもらいたいものだ。




「ここまでくれば、あとはボス敵を倒すだけだな。うまくやれよ」
 危なっかしい初心者プレイヤーにゲームの基礎知識やテクニックを教えながら、キキョウ・ハットリ(血花繚乱・f41852)はダンジョンの最深部まで到達した。スタート当初はまるで纏まりのなかった三人組も、自分に合ったプレイスタイルを理解しつつあるようだ。
「おうよ、ここまで来れたのも姐さんのアドバイスのおかげだぜ」
「ふっ、威勢がいいな。敵は強いが油断しなければお前たちだけでも倒せる相手だ。お前たちが存分に力を発揮できるよう、私は雑魚の相手をするとしよう」
 相手は毒ガスを吐き散らすボスモンスター・ドラゴンゾンビと、それを取り巻くバグプロトコルと化した合体魔獣・アマルガムビースト。いよいよこれまでの戦闘の成果を試す時だ。魔物の軍団が牙を剥き、キキョウの忍刀が鞘走った。
「化け物共。お前達の相手は私だ」
 投擲されたくないが魔獣の顔に突き刺さると、名状し難く悍ましい咆哮が響き渡る。怒りに身を任せ飛びかかってきたところを、キキョウは切れ味鋭い忍刀で喉を突き刺し、胸を掻っ捌いて止めを刺した。
「よし、俺たちもいくぞ!!」
 三人組はレオを先頭に据え、ドラゴンゾンビへと向かっていく。腐敗臭を放つドラゴンゾンビは毒を帯びた尾を振り回し、それをレオがエンジンブレイドでガード。その隙にゼフィロスとタゴサクがサイドから攻撃を仕掛けるという具合だ。
「ボス戦こそパーティプレイの醍醐味。彼らには今日の経験を活かし、よき冒険者となってもらいたいものだ」
 キキョウが忍術の印を結ぶと、たちまち一帯が濃い霧に覆われた。これぞキキョウの忍法・霧変化之術の真髄。
「お前たちバグの出る幕ではない。霧中を惑うがいい」
 目標を見失い、霧の中を右往左往するアマルガムビーストに、無数のくないが五月雨の如く降り注ぐ。
「タゴサク、今だ。その肉を食え!」
 ゼフィロスの連続斬りが命中した際、ドラゴンゾンビの肉が床に散らばったのをキキョウは見逃さなかった。魔喰者タゴサクがパワーアップする絶好のチャンスだ。
「アムアムアムアムアムアム……」
「おげげ、お前腐った肉ソレ食うのかよ!」
 タゴサクが、削ぎ落されたドラゴンゾンビの肉を口に詰め込んだ。そしてそれを飲み込んだ瞬間、これまで貧弱だったタゴサクのステータスが大幅に向上したのだ。腐っても鯛ならぬ、腐ってもドラゴンということだろうか。
「ガルルルル!!」
 瞳を爬虫類のそれに変異させ、凶悪な爪牙を得たタゴサクが力任せに竜の脇腹を殴りつける。痛烈な一撃がヒットすると、これまでに見たことのないダメージが叩き出された。
「お、お前ソレ強くねえか!?」
 それまで貧弱だったタゴサクの急成長に、ゼフィロスが思わず声を上ずらせて叫ぶ。
「ふっ。それにしても……成長著しいな。いいことだ」
 忍刀の血を払いながら、キキョウは三人組の成長した姿に目を細めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

チル・スケイル
大型モンスターで目を引き、軍勢が仕留める…小癪な手を。
いえ何でもありません。皆さん、どうか冷静に。

ふむ…色々と話を総合すると、この世界での冒険は概ね娯楽のようですね
我々が…サポート役が派手すぎるとよくないのかもしれません

氷術・変アイストランスを使い、被弾の寸前に水に変化、爪を回避
直後に元に戻り、拳杖によるゼロ距離射撃で、眼球など弱点をついていく

このパターンで、淡々と始末します
すぐおしまいにして、帰りましょうか




 光の射さない、遺跡ダンジョンの深淵にて。祭壇が設置された広大な地下空間に、激しい剣戟とモンスターの咆哮が谺する。初心者クエスト『古代遺跡シャンバラ探索』も、いよいよ大詰めだ。
「大型モンスターで目を引き、軍勢が仕留める……小癪な手を」
 戦場に到着したチル・スケイル(氷鱗・f27327)は、すぐにバグプロトコルの正体を見抜いていた。名状しがたい奇怪な鳴き声を上げながら、祭壇に描かれた魔方陣の中からアマルガム・ビーストが次々と出現してくる。この敵集団こそが、プレイヤーの抹殺を企むバグプロトコルだ。
「え、何か言った!?」
「いえ何でもありません。皆さん、どうか冷静に」
 アクセルコンボを繰り出しながら、聖剣士ゼフィロスがチルに話しかけた。チルはいつもの平静な調子で、新米冒険者が戦闘に集中できるように努める。
「ふむ……色々と話を総合すると、この世界での冒険は概ね娯楽のようですね」
 これまでの作戦の中で、チルはこの世界ゴッドゲーム・オンラインが『アックス&ウィザーズのようなファンタジー世界を体感する遊び』であるということを理解できた。だが、その中にオブリビオンが紛れ込んでいるとなれば、猟兵としては看過できない。
「ぐしゅるるるるるる」
 アマルガム・ビーストの集団がチルを無機質に見つめ、禍々しい魔獣のオーラを放ち始める。どうやら彼女を、最大の脅威と認識したらしい。強烈な殺気と共に、獣のガッシリした巨体が跳ねた。4倍に増強された速度で、魔獣の爪牙がチルを狙う。横殴りの一撃がチルの頭部を呆気なく破砕する――
「そう、こちらを狙ってくれるのなら好都合です」
 スピード、攻撃力だけならば敵のほうが数段上手だろう。だが、身体能力に頼り切った攻撃には何の工夫も見られない。
「甘いですよ」
「!?」
 攻撃が命中する寸前、チルはユーベルコードを発動させていた。氷術・変アイストランスによって、彼女の体は瞬時に水へと変じる。如何に鋭い爪牙も、水を切り裂くことはできない。
「彼等の邪魔はさせませんよ」
 飛び散った水飛沫が再び形を為し、元のチルの姿へと戻っていく。そして腰から拳杖『パフィロ』を素早く抜き、無防備な顔面に狙いをつけて引き金を引く。冷気を帯びたゼロ距離射撃の弾丸が炸裂すると、硝子が割れるような快音と共に魔獣の頭部が爆ぜた。スピードが向上したぶん、被ダメージも跳ね上がる。屈強な魔獣の姿は、もはや下半身を残すのみとなっていた。
「ス、スゲエ……」
「すぐおしまいにして、帰りましょうか」
 チルのスタイリッシュな戦いぶりに、ボスと交戦する冒険者たちも大いに奮い立つ。チルがアマルガム・ビーストを引きつけることにより、三人組はドラゴンゾンビとの戦いに集中することができた。勢いづいた冒険者たちは、しっかりと連携して攻勢を強めていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

札神・遊狐(サポート)
妖狐のカードデュエリスト×パーラーメイド、23歳の女じゃ。
普段の口調は「老齢の妖狐っぽい口調(わらわ、お前さん、じゃ、のう、じゃろう、じゃろうか?)」、
演技時は「カワイコぶる(わたしぃ、~様、ですぅ、ますぅ、でしょ~、でしょお?)」じゃ。

ユーベルコードは指定した物をどれでも使用する。
多少の怪我は厭わず積極的に行動するぞ。
他の猟兵に迷惑をかける行為はせんな。
また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はせん。
後はMS様におまかせするわ。
よろしくおねがいするのう!




「呼ばれて来たぞ。こやつらがわらわの相手か? なんと面妖な」
 遺跡の祭壇に描かれた魔方陣から次々に湧いてくるバグプロトコル・アマルガムビーストと、猟兵の戦いは続く。続いてやってきたのは、和風メイド服姿の妖狐、札神・遊狐(妖狐のカードデュエリスト・f41463)。
「ふしゅるるるる……」
 幾つものモンスターが融合した奇怪な魔獣が、禍々しい魔獣のオーラを放ちながら遊狐を見ている。そして一瞬の隙を突き、そのうちの一体が勢いよく遊狐に跳びかかった。
「ぬっ! こやつ意外に速いのう。素早い相手には、あれを出すかのぅ」
 手練れのカードデュエリストである遊狐が、ガントレットにセットされたカードデッキから一枚の手札を引き抜いた。
「お前さんは頼りになるからのぅ。今回も頼むぞ?……召喚、『大天狗オオテング』!」
 すると遊狐の召喚に応じて、刀を携えた大天狗が烈風を伴って舞い降りた。神にも匹敵する力を持つという、大妖怪だ。
「頼んだぞ!」
 トップスピードでは敵にやや劣るものの、大天狗には剣や体術、妖術といった豊富な攻撃手段がある。
「――!」
 そしてなにより、大天狗には自由に空を駆ける翼がある。のらりくらりと低空を飛び回って攻撃を誘い、直線的な獣の体当たりを難なく躱す。そして隙が生まれたところに、急加速して反撃をたたき込む一撃離脱戦法だ。音速に達したアマルガムビーストは当然急停止もできず、遺跡の壁にぶち当たる者もいた。そして、受けるダメージは通常の4倍。
「ほっほっほ。薙ぎ払ってくれるわ!」
 大天狗の太刀が閃くたび、アマルガムビーストは物言わぬ哀れな骸へと変わっていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アルデバラン・タウルス
此度のクエストは貴殿達が主役
ならば我は露払いに徹するのみよ!
彼等がボスに挑むのを背に仁王立ち
獣達の前にて壁となろう

まさか雑魚のが高レベルなんて誰も思わんしな…
此方は此方で経験値頂くとするか

この場において最も邪悪なものなぞ決まっていよう!
攻撃受けぬよう距離を取りながらUC発動
我が裁きの剣が向かうはただ一つ
悪たるバグ、即ちオブリビオンどもよ!
冒険者達に剣が向かう間違いは起きぬと信じ
思考無き屍竜にも飛ばぬよう祈りつつ
うっかり誤爆しそうになったら身を以て止める覚悟はある

戦いながらも三人組の様子は気にかけ
屍竜の動きを伝える程度の手助けはしよう
経験値を得、我らの助けも不要になるくらい強くなる事を祈る所だ




 松明のぼんやりした灯りが、激しい戦いの模様を影絵のように壁に映し出す。初心者クエストもいよいよクライマックス、ドラゴンゾンビと冒険者たちの激闘は続いている。
「待たせたな……!」
 遅ればせながら、遂にアルデバラン・タウルス(断罪の黒曜・f41856)が加勢に駆け付けた。威圧感を醸し出す巨躯を魔物の群れに曝け出し、自ら壁となって立ちはだかる。
「バランの兄貴! 来てくれたんすか!?」
「ゼフィロス、レオ、タゴサク。此度のクエストは貴殿達が主役。ならば我は露払いに徹するのみよ!(まさか雑魚のが高レベルなんて誰も思わんしな……)」
 せっかくのボス戦の最中なので、バグプロトコルの詳しい説明は省略する。大事なのは、三人が力を合わせてドラゴンゾンビを討伐することなのだから。
「この場において最も邪悪なものなぞ決まっていよう!」
 籠手に仕込んだ紫煙銃『アメジストブラスト』の魔法弾を連射し、アマルガム・ビーストを牽制する。そして両手を天に掲げると、アルデバランは天より降り注ぐ『裁きの剣』を呼び出した。
「悪たるバグ、即ちオブリビオンどもよ!」
 虚空から現れたのは、540にも及ぶ断罪の刃。その総てが、本来GGOに在るべきでないバグプロトコルに向けて放たれる。プレイヤーたちはもちろんの事、ドラゴンゾンビもゲーム内の正式なキャラクターであるため、攻撃対象にはならない。
「ファッ!?」
 あまりのダメージ量に、ゼフィロスが目を見開いて叫んだ。アルデバランが放った広範囲攻撃は、GGOの一般的なPCが繰り出す攻撃を凌駕するダメージを叩き出したのだ。インチキレベルにまでHPを改竄されていたアマルガム・ビーストたちが、全身を光剣に貫かれて消滅していく。
「あ、兄貴! 今の技は!?」
「うむ……たゆまぬ研鑽の果てに身に着けた我の奥義だ。それより、お前たちは早くドラゴンゾンビを仕留めるがいい。毒撃に注意するのだぞ!」
 アルデバランは、バグプロトコルが三人のほうへ行かないように引きつけ、時に効果的な動き方を助言してサポートに務めた。いつか彼らが上級クラスになるまで成長し、アルデバランの助けが不要になるくらいに強くなることを、彼は心の中でひっそりと願った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジニー・ナーレ
アドリブ連携歓迎

ものすごく足が速いモンスターだわ!
体当たりされたらとっても痛そうね。
ええっと、こういう敵は冒険者さんたちによると
走りにくく進路妨害したら戦いやすい、だったかしら。
だったらこの魔法ね!
「飛んでけプリンセスハート!ミラミラクル、プリンセスシュート!」
ぼぽんと現れたプリンセスハートをモンスターに向かって飛ばすわ。
飛んだ跡に残るハート型の魔力で囲むように自由に動ける場所を減らせば
回避もできにくいはず!
ドラゴンゾンビと戦ってる冒険者たちの方に行かないようにもできるかしら。
……あらあら?何だか前よりハートがバビューンと飛んでるわ?
(UC化で速度と攻撃力が上がりびっくり)




「まあ、色んなモンスターの体が繋がってるわ!」
 ボス戦の緊迫した空気を破る、可憐な少女の声が祭壇の間にこだました。複数のバグプロトコルが組み合わさった合体魔獣・アマルガムビーストの奇怪な姿に、ジニー・ナーレ(魔法の国のおてんばプリンセス・f41817)は驚きを隠せない様子だ。
「ぐしゅるるるるる」
 そんなジニーを攻撃対象と定めたか、アマルガムビーストは禍々しい魔獣のオーラを纏って跳びかかってきた。そのスピードは、本来設定されている速度の4倍にも相当する。
「キャッ! ものすごく足が速いモンスターだわ! 体当たりされたらとっても痛そうね」
 咄嗟に身を屈め、寸でのところで爪の一撃を躱す。現在のジニーの耐久力ライフを鑑みれば、一撃当たっただけでも致命傷だろう。ではどうするか? ジニーは思案する。
「ええっと、こういう敵は冒険者さんたちによると走りにくく進路妨害したら戦いやすい、だったかしら」
 かつて話したことのある冒険者の言葉を思い出し、ジニーは杖を握った。そして、可愛らしい演出とともにプリンセス魔法を詠唱する。
「飛んでけプリンセスハート! ミラミラクル、プリンセスシュート!」
 ジニーの杖の先端から発生したハート型の魔法が、マッハ5.0を上回る猛スピードで戦場全体に吹き荒れる。プリンセスの気高く、キュートなオーラにやられた魔獣たちは、次々と目を回しながら失神していく。
「姫さん、ナイッス!」
 三人組はというと、毒に侵されながらもドラゴンゾンビと熾烈な攻防を繰り広げていた。グラファイトブレイドで連続攻撃を繰り出すゼフィロスが、快哉の声を上げる。
「……あらあら?何だか前よりハートがバビューンと飛んでるわ?」
 この戦いで、ジニーも幾らかのレベルアップを果たしていたのだろう。放たれたハートの魔法は魔力の残滓を描き、攻撃判定を残したまま戦場に留まっていた。
 猛スピードで動き回るアマルガムビーストは、当然すぐには止まれない。プリンセスハートの残滓に当たり、自滅していく個体もいる。
「……こほん。敵の連携が乱れていますわ! 今のうちに攻撃を!」
 まるで最初からこれが狙いだったかのように、ジニーは三人に攻撃を促した。
「助かるぜ。喰らえ! 俺の必殺技、V8斬り!!」
「おめーら、目に焼き付けな! 俺の華麗なるアクセルコンボ!」
「コ、コイツノニク、クウ」
 レオの豪快なエンジンブレイドの重撃が、ゼフィロスの鮮やかなアクセルコンボが、そして魔喰者タゴサクの鋭い爪が、一斉にたたき込まれた。
≪カッ!! ゴゴゴゴゴゴゴ……≫
 そして遂にドラゴンゾンビの体が閃光を瞬かせ、轟音と共に光の粒となって崩れ落ちていく。ボス敵撃破の特殊な演出だ。3人の初心者プレーヤーは、見事ドラゴンゾンビを撃破したのである。勇壮なファンファーレが鳴り響く。そして、大量の経験値とトリリオン、ドロップアイテムが3人に与えられた。

 別れ際、遺跡の出口で三人組はジニーに感謝を伝えると、毒に侵されたままヨタヨタと街へ戻っていった。出来ることなら彼らを無事に送り届けたかったが、ジニーもそろそろ帰らねばならない。ジニーと冒険者は、別々の道を歩いて遺跡を去って行く。
「さぁ、次はどんないいことをしようかしら?」
 いつかどこかで、成長した彼等と再会する日が来るかもしれない。去りゆくジニーの表情は晴れ晴れとして、足取りは軽やかなものだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年11月24日


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#ゴッドゲームオンライン


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト