砕魂王国~秋の豊作祭は『陛下野菜ジュース克服記念日』?
各所から魔笛と太鼓の祭囃子が砕魂王国城下町に渡っている。
石畳が反響するは民衆の足音だけでなく賑やかな声もあって。
「うむ。今年も皆、祭りを楽しんでおるな」
結構、結構。と鐘射寺・大殺は浴衣やコスプレ姿の悪魔、露店の賑わいを眺めながら満足そうに頷いた。
砕魂王国の各地で祝われる豊作の秋祭り。
野菜や果物の品評会、ゲーム大会やバザーなどイベントは目白押し。
「陛下、この後はしばし自由時間にございますが――」
お供の一人が大殺へと声掛ければ、「分かっておるであろう?」とニッと笑む大殺。
本日は既に『料理コンテスト』の『審査員長』という大役を果たしたばかり。
単純に料理を審査しただけではない。
家庭料理には主婦(夫)の褒め称え、創作料理を作った悪魔にはレストラン出店を勧めたり。国民を鼓舞するのも国王の仕事だ。
「我輩も秋祭りを楽しむ所存! お前達も楽しめ!」
「やった」
「大殺様やさし!」
「うむ、うむ。豊作は皆で祝わねばな」
大殺も早速香ばしいイカ焼きや焼きそばと屋台で買い上げては食す。
搾りたて林檎ジュースは最早一級品レベルだ。
スパイシータコスやロシアンたこ焼き、洋梨とクランベリーのタルトの甘味。
聴こえてくる野外ライブにはギター嗜む指を疼かせて。
「あっ陛下!」
「こんにちは陛下!」
と、民達も気さくに声掛けてくる。
「大殺様! 今季もうちの農園野菜は豊作でした!」
「そうか! それは良かった」
(「……やさい……」)
どこか大仰に笑顔を返す大殺。
野菜ソムリエも担う大農園が出店しているブースは採れたて新鮮野菜が売られている。
彼は優れた料理人でもある有名玉葱悪魔。
「私の身体も秋の豊穣に満ちました。良い栄養となりますよ!」
玉葱悪魔は自身の皮をぺりりと剥がして、齧ってみますか? なんて言う。
「其方は身を大事にせよ……」
「あっでは新鮮野菜ジュースは如何です?」
陛下に召し上がって頂きたいという純粋な民草の願いを断ることが出来ようか。否。
「……いッ、いただこうか」
給食の野菜ジュースも躊躇うのに『搾りたて』。
フレッシュな野菜の香味豊かなジュースを、目端に涙滲ませて、存分に味わう大殺であった。
「う゛ッ、う゛ま゛、い゛……!」
そして祭りの最後を締めくくるのは。
「皆の者、最後の仕上げだ! 大芋煮会を始めるぞ!!」
大殺の声に返されるは喝采!
大鍋で作る芋煮は美味しい美味しい、秋の味がした。
成功
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