【南瓜祭】 おかしをつくってみよう
●注意
当依頼は、PBWアライアンス『コイネガウ』からのシナリオです。
PBWアライアンス『コイネガウ』の詳細を以下でご確認お願いします。
公式サイト:(https://koinegau.net)
公式総合旅団:(https://tw6.jp/club?club_id=4737)
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「おかし……おかしかぁ」
今回頼まれた案件をあらためて思い返してみて、錫華は、うーん、と首を捻った。
「おかしといえばあれだよね『お菓子も好き』」
どこかで聞いた標語だったと、錫華は思い出す。
お:押さない/か:駆けない/し:しゃべらない/も:戻らない/す:素早く動く/き:よく聞く。
たしか潜入作戦の時の心得だったっけ。そんな風に呟いた錫華に、
『まったく違います。災害時の行動の心得です』
そばで聞いていたアミシアから、的確なツッコミが入った。
あれ? と錫華が首をかしげる。
『といいますか、普通にハロウィンでお菓子を作ってほしいということなんじゃないですか?』
え? とびっくりした顔をして、錫華がアミシアをみつめた。
「わたしに料理を?」
『希島のみなさんは、錫華の料理の腕を知らないですから』
そう。錫華は戦士としては一流だし、美味しいものも大好きだが、料理の腕はからっきしどころかマイナス評価なのだ。
いわゆる『食べ専』というやつである。
いよいよ悩んだ錫華を見て、
『案件、受けてしまったんですよね。わたしがやりますよ』
優しく笑いながら、アミシアは言うのだった。
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『そんなわけで、今回、講師を担当させていただきます、アミシア・プロフェットです』
みなさん、よろしくおねがいします。とアミシアが頭を下げる。エプロンメイドの衣装で実体化したその姿は、プログラムと思えないくらいに自然体だ。
『今回はハロウィンに向けてスイーツを作ってもらいます』
クッキーでもチョコでもケーキでも、種類はなんでもいい。既存のレシピでもいいし、オリジナルで考えるのもたのしそうだ。
材料も食べられるものなら何を使っても構わない。
条件はたったひとつ。
お化けになってやってくる子供たちに向けて、渡せるものであること。
そして、子供たちに渡すときは、自分も何かコスプレをしていること。
「そういうことなんで、みんな、今回はアミシアの指示に従ってね」
そのまま逃げだそうとする錫華の襟首をアミシアはがしっと捕まえた。
『錫華も作るんですよ。この機会に料理を覚えてください』
アミシアに宣言されて、がっくりうなだれる錫華だった。
すい
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ここまで来てくださりありがとうございます。MSのすいと申します。
今回のシナリオは、【ハロウィン】の共通題名で括られるシナリオソースのシリーズで、コイネガウ暦20X3年10月における合宿の物語となります。
なお、各MSによるシナリオはどれも内容が独立している為、重複参加に制限はありません。
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今回は、ハロウィンに向けてお菓子を作って子供たちに渡す、という依頼になります。
描写としましては、お菓子を作る場面と、コスプレで子供たちに渡す場面ということになると思います。
どんなお菓子を作るか、どんなコスプレをして、どんな感じで子供たちに渡すか、などがプレにありますと、嬉しいかなって思います。
もし指定がない場合は、こちらでランダムに決めてしまいますので、なんとなく、な感じでプレしていただきましても構いません。
錫華を巻き込むこともできますが、料理はアミシアに頼りっきりだったので、ど素人レベルです。子供たちへの対応は、無愛想系ですがそれなりにツンデレです。
巻き込まれない場合は、アミシアに叱られながらお菓子を作ったり、配ったりしています。
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アミシア・プロフェット
錫華のサポートAI。特殊プログラムで実体化することができる。
戦闘時以外では錫華の姉的存在で、身の回りの世話など全般を受け持っています。
第1章 日常
『プレイング』
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POW : 肉体や気合で挑戦できる行動
SPD : 速さや技量で挑戦できる行動
WIZ : 魔力や賢さで挑戦できる行動
👑11
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イリスフィーナ・シェフィールド
フレーシェル様と(f27201)
POW判定。
今日は自宅(マンション)にフレーシェル様を招いてハロウィンのお菓子作りですわ。
フレーシェル様はお料理初めてですしシンプルなクッキーを作ろうと思いますの。
1から10まで懇切丁寧にお教え致しますわ。
ふふっ愛しの女神様と料理をご一緒に作れるなんて幸せですわ。
子供用とは別にフレーシェル様用のクッキーも分けて作っておきます。
コスプレは白い着物の雪女な格好で。
トリック・オア・トリートって言われたら素直に渡します。
わたくしへのイタズラなら笑って見逃しますがフレーシェル様へのイタズラはメっですわ。
終わったらフレーシェル様に日頃の感謝を込めてクッキーをお渡しします。
フレーシェル・ウィシェヌ
イリスフィーナ(愛称イリス f39772)と。
WIZ判定。
彼女の自宅に招いてもらい、お菓子作りに挑戦!
ふふっ、初めてのお菓子作りが大事な巫女と一緒だなんて、幸せね♪
医者としての知識と経験がある私だから、お料理はダメダメでも、栄養素の知識は披露して、神様らしいところはちゃっかり見せないとね♪
コスプレは妖艶な魔女風。
無事作り終え、子供用のものがラップングされた後、魔法の合言葉
「トリックオアトリート」を言うの。
素直にお菓子を渡してくれても、頬へのプニプニイタズラはしちゃうわ。
いつもご苦労様、そして本当にありがとうね♪
当日、子供達が喜んでくれことを願って。
あら、私?それはもう、ばっちり喜びよ♪
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「こんな感じで大丈夫ですわね」
イリスフィーナ・シェフィールド(女神様の巫女兼
スーパーヒロイン・f39772)は、綺麗に片付いた部屋の中を一通り見渡し、そして同じく綺麗に整えられたキッチンに準備した道具と素材を確認すると、そう呟き、小さく頷いた。
ハロウィンまであと少し。今日はフレーシェル様を招いてのお菓子作りの日だ。
愛しの女神様といっしょに料理できるなど、幸せ度爆上がりするというもの。気合いが入らないわけがない。
『初めてのお菓子作りが、自分といっしょで幸せ』
そう言って笑った女神様の表情がフラッシュバックする。
(初めてならば、1から10まで手取り足取り懇切丁寧に教えて差し上げなければいけないですわ)
イリスの幸せオーラが天井を貫かんばかりに膨れ上がった。
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初めての料理、初めてのお菓子作り、そしてそれが大事な巫女と一緒にできる。フレーシェル・ウィシェヌ(お医者な(邪)神様?・f27201)は少し、いやかなりテンションが高めだった。こちらも幸せオーラがあふれ出ている。
足取りも軽くイリスフィーナのマンションの入り口に辿り着いたフレーシェルが、弾むようにドアチャイムを押す。
しばしの間。その扉が開くまでの時間も楽しさに笑みがこぼれてしまう。
「フレーシェル様、いらっしゃいませ」
開かれた扉の先にはイリスフィーナの満面の笑顔。フレーシェルは、その笑顔に負けない輝くような笑顔を返して部屋に入ると。2人はさっそくキッチンへと向かうのだった。
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「フレーシェル様、今日はクッキーを作りたいと思いますわ」
イリスフィーナが材料を並べながら、そう言うと、フレーシェルは思っていたよりも種類の多い材料に感心しながら、頷いた。
シンプルと言っていたクッキーにすらこれだけの材料が使われている。料理というのはかなり奥が深そうだ。
しかし……。
「イリス、これは子供たちが食べるのよね?」
それなら、
「普通の小麦粉でなく全粒粉を使ってみたり、甘さや香り付けに果物を使ったりするのはどうかな?」
甘いだけではなく、健康にも良いものを。医者としてはやはり、子供たちの健康のことも考えてしまう。
フレーシェルの提案に、イリスフィーナは、
「フレーシェル様さすがです。やはりフレーシェル様はお優しいですわ」
そう言って、ぱあっと、これまで以上に明るい笑顔を見せると、キッチンの奥からさらなる材料を取り出した。
フレーシェルが小麦粉をふるい、イリスフィーナがバターと砂糖、卵を混ぜる。そして、その2つを混ぜ合わせるのは2人の共同作業。イリスフィーナがフレーシェルの手を取り、さっくりゆっくりヘラで混ぜ合わせていく。
そうしてできあがった生地を寝かせている間は、ひとときのトークタイムだ。この時間だってクッキーには幸せが充填されているのだろう。
生地が熟成したら、あとは型を抜いて焼き上がりを待つ。
幾度かの試作の末。
シンプルな丸形に、カボチャ、星、ハート、さまざまな形のクッキーが綺麗なきつね色に焼き上ががった。2人は甘く香ばしい香りを立ち上らせるクッキーをひとつづつ摘まむと、ゆっくりと口へ運ぶ。そしてイリスフィーナとフレーシェルは微笑み合って頷くのだった。
●
ハロウィン当日。
イリスフィーナは真っ白な着物に素足の出で立ち、青い髪と白く抜けるような肌、そしてメイクで際立たせた美しさと相まって、完璧な『雪女』だ。
かたやフレーシェルは、大きな三角帽子にセクシーな黒いボディスーツ。そして同じく黒いマント。裏地の鮮やかなオレンジがハロウィンの雰囲気にぴったりで、こちらも完璧な『魔女』スタイルだ。
2人は側らに綺麗にラッピングしたクッキーを並べて子供たちを待ち構える。
『『『トリック・オア・トリート
!!!』』』
見ればそこには、鮮やかなオレンジと黒の衣装に身を包んだカボチャ三兄弟。ほっぺに塗られたオレンジのチークが可愛さを増している。
子供たちの元気な声に答えて、イリスフィーナがクッキーの包みを渡すと、子供たちは
『『『おねーちゃん、ありがとう!』』』
と、 感謝の三重奏とともに、2人に抱きついてくる。
イリスフィーナはそれを受け止めて優しく抱き返すと、フレーシェルは、
「トリック・オア・トリート」
と、子供たちに返し、
「お菓子をくれないなら、いたずらしていいのよね?」
そんなことを言いながら、クッキーを抱えながらちょっとびっくりしている子供たちの頬を、ぷにぷに、とつついた。
フレーシェルが3人の頬をしっかりつつき終え、子供たちもくすぐったそうな笑顔でもういちど抱きついて、ハロウィン最初の『トリック・オア・トリート』が終わった。
「フレーシェル様、お疲れ様ですわ。……それとこれを」
手を振る子供たちを見送って一段落したところで、イリスフィーナが小さな箱をフレーシェルに渡した。
「トリック・オア・トリート、ですわ」
子供たちに向ける笑顔とは少し違う、けれどとても素敵で魅力的な笑顔。そんなイリスフィーナを見てフレーシェルは箱を開け、中に入っていたクッキーをひとつ摘まむと、口へと運んだ。
そしてそれを咥えたまま、イリスフィーナに口づける。
2人でひとつのクッキーを囓ると、フレーシェルは小さく、
「トリック♪」
と呟いて、
「いつもご苦労様、そして本当にありがとうね♪」
今日一番の笑顔でイリスフィーナに笑いかけたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
コニー・バクスター
●お菓子を作る
「祝・南瓜祭だよ☆
今回はコニーが希島ロールを作るよ!」
料理ならコニーにお任せだよ。
下町出身のコニーはよく料理を作っていたからね。
お祭りとあれば、希島産フルーツのロールケーキだね。
「錫華、味見してくれる?」
希島ロールが出来たら、錫華にも味見して貰うよ。
錫華は食専らしいが、味はどうかな?
コニーも試食。うむ、子供に出せるかな。
●子供達に渡す
「希島ロールは、いかが? 黒兎ロボが作ったのだ☆」
コニーはBRRにコスプレするよ。
黒兎の着ぐるみ的な物を着衣で子供達に希島ロールを配る。
錫華も一緒にやってくれるかな?
コニー&錫華のBRRコスプレだと面白いが。
アドリブ・連携歓迎
●
「祝・南瓜祭だよ☆ 今回はコニーが希島ロールを作るよ!」
コニー・バクスター(ガンスリンガー・ラビット・ガール・f36434)がカメラに向かってポーズを決める。
カメラ?
そんな疑問はさらりと流して、コニーはさっそく準備を始めた。
『希島ロール』とは、希島の特産物であるフルーツをメインに使ったロールケーキだ。希島の下町出身であり、料理も嗜むコニーには慣れ親しんだデザートであり、そして作り慣れたデザートでもある。
コニーはささっとコックコートに着替えると、見事な手際でスポンジを焼き上げると、生クリームを泡立て、フルーツをカットしていく。
素材の準備を整えると、いよいよコニーは巻きの準備に入った。
大きく四角に整えられたスポンジに生クリームをたっぷり敷くと、
「これがこうきて……こう巻くから……」
頭の中でできあがりを思い浮かべながら、カットしたフルーツとジャムをそこに並べていく。
そして、並べ終えたフルーツの位置を崩さないように、ゆっくりしっかり巻いていくと、最後にしっかり締めて形を整えた。
そこからしばしの冷却タイムを経て、コニーは、
「ここからがロールケーキの見せ場だよね☆」
再びカメラに向かってポーズを決めると、取り出したロールケーキを映すよう指示してから、カットに入った。
ゆっくりと引くように切られていくロールケーキ。すとん、と刃が落ち、現れた断面は……。
『黒兎のロールケーキ、大成功~♪』
見事に
ブラック・ラピッド・ラビットが描かれていた。
「錫華、錫華。ちょっと味見してくれないかな?」
コニーは切り分けた希島ロールを。奥でアミシアの特訓を受けている錫華に持っていくと、自信作なんだ、と差し出した。
錫華はアミシアをチラリと見ると、ため息交じりに頷いたのを見て希島ロールを手に取ると、手づかみで口に頬張った。
『お行儀!』
アミシアにすかさず叱られるが、そこはさらりとスルーして、錫華はその味にちょっと驚いたような表情を浮かべた。
「わ、すごく美味しい。これからコニーさんに作って……」
アミシアの冷ややかな視線に、錫華がコニーの後ろに隠れる。そんな様子を見ながら、アミシアにも味見をしてもらうと、
『たしかにこれはすごく美味しいですね。わたしもレシピを教えてほしいです』
そんな風に言われたコニーは、自分も味見をしながら小さくガッツポーズをしたのだった。
●
「希島ロールは、いかが? 黒兎ロボが作ったのだ☆」
ハロウィン当日、
ブラック・ラピッド・ラビットのコスプレに身を包んだコニーは子供たちに希島ロールを配っていた。
「トリック・オア・トリート!」
と、子供たちが言う前にロールケーキを差し出すテンションである。
そしてその隣には、希島ロールで買収された錫華も。
どうやらコニーのケーキが相当美味しかったらしい。しかし……。
「ね、ねぇ、コニー。これって
ブラック・ラピッド・ラビットなの?」
その身に纏うコスプレは、
ブラック・ラピッド・ラビットといえばそうなのだが、
控えめに言っても黒バニーだった。
集まる人も、可愛いコニーの黒兎には子供たちが多いのに比べ、錫華のほうは大きなお友だちが圧倒的に多い。
「錫華、大人気だね♪」
子供たちにロールケーキを渡しながら、そんな風に言うコニーに、
「わたしのぶん、1本じゃ足りないからね?」
拗ねたように言いながらも、錫華は笑いながら『トリック・オア・トリート』と書かれたプラカードを掲げるのだった。
大成功
🔵🔵🔵

彩波・いちご
錫華さんを誘い一緒にお菓子作り
お菓子作りは得意なのでアミシアさんに教わる必要もないですし
顔見知りですし錫華さんの指導役しましょうか
ひとまず錫華さんの技量を確認…難しそうなのはダメですね、ええ
ではクッキーを作りましょうか
中学校の家庭科実習みたいなノリで、錫華さんに教えつつ、自分の分は手際よく
錫華さんが難儀しているときには手取り足取り教えながら…
手を握ったり身体密着したりはするでしょうけど、変なとらぶるはありませんよ?(ないですよね?
というわけでチョコチップクッキー無事完成
…錫華さんは…大丈夫かしら?
お揃いの魔女衣装で子供たちに配りに行きましょう
トリック・オア・トリート!
笑顔で配っていきますよー♪
●
「錫華さん、いっしょにお菓子を作りませんか?」
彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)は、アミシアに捕まり、とほーっ、という顔をしていた錫華を見つけると、そう声をかけた。
「え? あ、いちごさん?」
いきなり声をかけられ、ちょっと驚きながら錫華がこちらを振り向く。
『いちごさん、この姿では初めまして。お料理の腕は存じていますけど、錫華に教えるのはたいへんですよ?』
アミシアが錫華の襟首を掴んだまま、錫華ごとこちらへ振り向く。
「これでも寮の食事を任されていますし、教えるのもそれなりにできますから」
アミシアに笑顔で答えて、いちごは錫華に手を差し伸べる。錫華が、ちょっと困ったような、うかがうような表情でアミシアを見ると……。
『わかりました。それではお願いします』
アミシアはそう言って、錫華をいちごに引き渡すのだが、
『甘やかしはなしお願いしますね』
いちごに、そう釘を刺すことも忘れなかった。
●
まずは錫華の料理の腕を確かめないと、どう教えていいかもわからない。
そう思ったいちごは、まずは錫華にどんな料理を作ったことがあるか聞いてみたのだが、
「切って、焼く?」
なんともシンプル、しかも疑問形な答えにレベルを察すると、基本に忠実にいくことを決意し、
「わかりました。では今回はクッキーを作りましょうか」
そう提案した。
小麦粉とバターに砂糖、卵。あとは香りづけのバニラエッセンス。
ここまで材料を並べて、いちごはふと考えた。さすがにただのクッキーではシンプルすぎないだろうか。チョコチップくらいのアレンジはしてもだいじょうぶだろう。
「では、まずは下ごしらえをしましょうか」
室温で戻したバターをクリーム状になるまで混ぜたら、そこに砂糖を混ぜあわせる。
(ここまでは問題ないですね。むしろ錫華さんのパワーでかなりしっかり混ざってます)
「そうしたら次は、チョコを細かく刻みましょう」
いちごが大きなブロックチョコを取り出して……。
「錫華さん、すとーっぷ!?」
同じテンションで小太刀を取り出した錫華をすかさず止めた。
「あれ? 刻むんじゃないの?」
こてん、と首を傾げて聞く錫華に、
「包丁を使いましょう」
と、至極真面目な顔でいちごが窘める。
「ん、わかった。けど、いちごさん慌てすぎ」
右手で錫華の手を押さえ、左手はしっかりと胸を掴んでいるいちごであった。
クリーム状にしたバターに、卵黄を混ぜ、さらに小麦粉とバニラエッセンス、チョコチップを加えて混ぜる。
「ああ、錫華さん、今回はゆっくりさっくりと混ぜてくださいね。こんな感じです」
バターの時のような力任せでは生地がうまくまとまらない。いちごが後ろから錫華の手を取り、力加減を教えるようにしながら混ぜていき、ボウルの中でもったりと混ざった生地を、オーブンで焼いていく。
『甘やかすな』
と言われてはいたが、さすがに焼きの失敗は取り返しがつかない。ここは錫華は見学である。
――待つこと10分――
天板の上でこんがりと焼き上がったクッキーの香りが鼻孔をくすぐり、錫華は思わずつまみ食い。
いちごはそれを見て見ぬ振りで、やっぱり甘やかしてしまったのだった。
●
そしてハロウィン当日。
アイドル風魔女っ子いちごと、セクシー系魔法使い錫華が、お揃いの籠を提げて子供たちに囲まれていた。
「「「トリック・オア・トリート!」」」
元気に挨拶してくる子供たちに、2人も、
「「トリック・オア・トリート」」
と、かたや明るく可愛く、かたやクールにかっこよく答ると、オレンジ色にラッピングされたクッキーを渡していく。
渡された袋をさっそくあけてクッキーを頬張る子供たちの笑顔に、いちごと錫華はハイタッチで笑い合った。
大成功
🔵🔵🔵

ベルカ・スノードロップ
狼の耳と尻尾をつけて、狼男に仮装
「がおー」って感じで
はい。そこ、可愛いって言わない
子供たちに作るのは、かぼちゃの米粉クッキー
最近、小麦のアレルギーとかあるのでグルテンフリーで作ります
愛情を込めて作ります
形も、カボチャの形を象ったりして焼き上げます
上手に焼けたので、錫華さんには、味見をお願いしたりしましょう。
「一人で暮らすなら、料理は出来た方がいいですね。経済的にも栄養的にも」
そんな雑談も交えつつ、子供たちに配る分は、ラッピングもして完成です☆
「年下に好かれる」特徴持ち、の影響なのか、子供には、よく好かれます
「女性に好かれる」特徴持ちでもあるので、女の子には特に、群がられたりします。
イタズラ好きの子もいそうではありますが、クッキーは沢山作ったので足りなくなることはありませんよ?
一人一人、目線を合わせて手渡ししていきます。
●
ハロウィン。昔は宗教的にしっかりした祭事だったが、今では……いやここでは、コスプレとお菓子のパーティーという意味合いが強い。
特に子供たちの仮装と『トリック・オア・トリート』の声は、それだけで頬が緩んでしまう可愛さだ。
そんな素敵なお祭りに、子供もお菓子も大好きなベルカ・スノードロップ(少女へ愛を注ぎ快楽による幸福で染め救済せし夜の王・f10622)が参加しないはずはなかった。
「子供たちの笑顔のために、がんばりましょう」
ぐっと気合いを入れて、作るお菓子はカボチャの米粉クッキー。
ポイントは米粉。最近は小麦アレルギーなども問題になっているので、今年はグルテンフリーにしてみんなが安心して食べられるお菓子を作ってみようと思っていたのだ。
チンしたカボチャの皮を剥いたら、ペースト状にしてバター・砂糖・米粉と合わせてしっかり混ぜたら、冷蔵庫でしばし寝かせる。
ここで大事なのが、寝かせている間の隠し味。おいしくなーれ、笑顔になーれ、としっかり愛情満載で、生地を見守ることだ。
生地を十分に休ませたら薄くのばして、次は型抜き。カボチャにお化け、魔女にコウモリと、可愛い形に仕上げたら、オーブンで一気に焼き上げていく。
170℃で約20分。
オーブンの天板には鮮やかな黄色のクッキーが、ふんわりと甘い香りを漂わせて焼き上がっていた。
「錫華さん、味見、してもらえますか?」
隣でアミシアに叱られつつ、ぎくしゃくとクッキーを作っていた錫華たちに、ベルカがクッキーを差し出すと、
「わ、ありがと。いただくね!」
錫華は、アミシアのスパルタから逃げるチャンス、と思ったのか、オーバーアクションでベルカにお礼を言うと、それを口に運ぶ。
さくりとした食感とカボチャの自然な甘み。それが口の中で溶けて消え、後味はとても軽い。
「おいしい……!」
想像以上の味に錫華がびっくりしながら呟くと、同じく味見をしていたアミシアも、大きく頷いて同意しつつ、
「ここまでの味は求めませんが、錫華も普通のクッキーが焼けるくらいにはなってほしいですね」
言われた錫華がそっと目を逸らす。それを見たベルカは、
「一人で暮らすなら、料理は出来た方がいいですね。経済的にも栄養的にも」
そう言いながら、
「あ、でも、錫華さんにはアミシアさんがいるからいいのでしょうか?」
アミシアに笑顔を向けると、少し照れたようにアミシアも目を逸らす。
(これは甘やかしてますね)
アミシアの反応を見たベルカは、それを微笑ましく思いつつ、子供たちのためにクッキーのラッピングに取りかかった。
●
ハロウィン当日、夜。
狼の耳と尻尾をつけて、狼男に仮装したベルカは鏡の前でくるりと一回転すると、両手を前に出してポーズをとってみた。仮装の出来は完璧、そして大きな袋の中にはラッピングされた大量のクッキー袋。準備は万端だ。
コンコン。
ドアが叩かれる音に、ベルカは、すっ、と身構えた。
『『『トリック・オア・トリート
!!!』』』
ドアが元気に開かれると同時に子供たちの声が弾ける。その声を受けてベルカが、
「がおー」
と、両手を顔の横で構えて威嚇のポーズを取る。子供たちはベルカのポーズに一瞬驚いた様子を見せたが、ベルカの衣装とポーズをしっかり見つめると、
『『『可愛いー
!!!』』』
と、はしゃぎながら、我先にとベルカに抱きついていく。
「可愛いって言わない。怖いでしょう?」
ベルカがそう言って、もういちど『がおー』と構えを取ってみても、子供たちは、
「可愛い!」
「可愛いよね!」
「きれかわー!」
口々に言いながら、ベルカに抱きついたままほっぺを押し当てたり、腕を組んだりしている。
ベルカはそんな様子を見ながら、あーもう、と諦めたように呟きながら、でも表情はめいっぱいの笑顔でしゃがんで子供たちの瞳をしっかりと覗いてから、めいっぱい抱き返してから、ひとりひとりの目をしっかり見つめてラッピングしたクッキーを手渡そうとする。
そんなベルカの様子に、子供たちの中の一人が、まだいっしょにいるー、とばかりに背中に負ぶさると、ベルカの狼耳を両手で掴んだ。
ベルカは、目の前にいた子にちょっとだけ離れてもらうと、背中の子を背負ったまま立ち上がり、
「えいっ」
とポーズをとりながら、くるくるとターンを決めて背中の子が目を回したところを受け止めるように抱えて、背中から降ろした。そして、子供たちの頭を撫でながら改めてクッキーを渡していく。
子供たちはベルカからクッキーを受け取ると、ちょっと名残惜しそうにもう一度抱きついてから、次の家へと向かっていったのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ミスランディア・ガルヴォルン
「ほほう、錫華殿のお菓子教室と聞いたから、どのようなものかと思えば――
アミシア殿が教えるのであれば安心じゃな」
それにしても、実体化しているアミシア殿と直接顔を合わせるのは初めてかも知れぬのう。
「改めて自己紹介じゃ。わしが私設軍事組織ガルヴォルン旗艦ストライダーの制御AIミスランディア――そのレプリカントボディじゃ」
それでは早速、お菓子作りといこうかの。
お菓子作り程度お手の物じゃ。
そうじゃのう、子どもたちが喜びそうなクッキーを作るとするかの。
「ちなみに、色々な魚の形をしたクッキーじゃ」
え、なんで魚の形か、じゃと?
もちろん、わしの好物が魚だからに決まっておろう。
子どもたちにお菓子を渡すときには、魚繋がりで釣り竿を持った浦島太郎の仮装でもしようかの。
「さて、あとは――今日ここに来た目的である、我らが乙姫様へのクッキーを作るかの」
うちのイタズラっ子や、ストライダーのクルーたちにクッキーを作ってやろう。
わしから見れば、あやつらなど、まだまだ子供よ。
「錫華殿もアミシア殿も、このクッキーいかがかな?」
●
「ほほう、錫華殿のお菓子教室と聞いたから、どのようなものかと思えば――」
錫華の首根っこを捕まえて引きずっていくアミシアを見ながら、ミスランディア・ガルヴォルン(ガルヴォルンのメインサーバー・f33722)は納得したように頷いて、
「アミシア殿が教えるのであれば安心じゃな」
笑顔でそう呟くと、その後を追っていった。
錫華がお菓子教室の先生をすると聞いて、興味7、実用3でのぞきに来てみたら、先生をするのはアミシアだった。
それはいい、いやむしろ正しい判断だろう。
それよりも、ぐったりしている錫華に余裕がなく気づかないのは仕方ないとしても、アミシアにはすぐバレると思っていたのだが、反応がまるで初対面のようだ。確かにこっそり潜り込んだつもりではあるが……。
「ふむ」
ミスランディアはちょっと首を傾げると、そういえば実体化してアミシアと会うのは初めてだったかもしれない、と、いまさらながらそれに気づいた。
そういうことならまずは挨拶からじゃな。ミスランディアは、アミシアが錫華の準備を終わらせたところで声をかける。
「改めて自己紹介じゃ。わしが私設軍事組織ガルヴォルン旗艦ストライダーの制御AIミスランディア――そのレプリカントボディじゃ」
丁寧に挨拶をされたアミシアがちょっと驚いたように首を傾げた。あのミスランディアのボディが猫耳美少女とはさすがに想定外だったようである。
しかしそこは有能AI、そんな様子はほんの一瞬だけで、
「わたしもこの姿では初めましてですね。錫華のサポートAI兼『姉』の、アミシア・プロフェットです」
そう挨拶を返すと、優雅に頭を下げたのだった。
●
ちょっと不思議な初対面の挨拶を終えると、2人はさっそくお菓子作りを始めることにした。
「ミスランディアさんは、なにを作られますか?」
小麦粉やボウルなどを手際よく並べながらアミシアが聞くと、
「そうじゃのう、子どもたちが喜びそうなクッキーを作るとするかの」
シンプルだし、形に工夫できて楽しいからのぅ、とミスランディアはこともなげに言うと、アミシアと笑顔を交わした。
どうやらミスランディアも戦闘だけでなく、その他サポートにも優れているようだ。生活力のない主をもってしまったサポートAI同士、なにか通じるものもあるのかもしれない。
「ちなみに、色々な魚の形をしたクッキーじゃ」
ミスランディアが器用に型抜きしたクッキー生地を並べている。
「魚ですか」
アミシアの頭に一瞬クッキーではなく、某有名スナック菓子が浮かんだがそこはぐっと飲み込んで、
「その心は?」
アミシアが問うと、
「もちろん、わしの好物が魚だからに決まっておろう」
そう言ってドヤ的笑顔を見せたミスランディアだった。
魚型と言ってはいたが、マグロやイワシなど普通の魚型だけでなく、イカやタコ、エビ、カニなどその種類も豊富だった。
そしてオーブンで焼き上がったクッキーは形だけでなく、模様もしっかり海の生物っぽく施されていて見ているだけでも楽しく、それでいて味はしっかり甘め。子供たちに喜んでもらえそうな一品に仕上がってた。
「さて、あとは――今日ここに来た目的である、我らが乙姫様へのクッキーを作るかの」
あとはうちのイタズラっ子や、ストライダーのクルーたちにもクッキーを作ってやろう。子供たちへのクッキー作りが一段落すると、ミスランディアはクッキー作り第二弾に取りかかった。
「わしから見れば、あやつらなど、まだまだ子供よ」
そんな風に言いながら、今度はイヌやネコ、クマなど動物の形にクッキーを抜いていく。そしてそれが終わると今度は、ネジやボルト、スパナ、そして何故かカメラなどの機械型。どうやら乙姫様とクルーとでもクッキーの形を変えていくようだ。芸が細かい。
「作ってやらんと拗ねるかもしれんからな」
「仕方ないからのぅ」
などと、作っている間の言葉はぼやいているように聞こえるが、聞こえてくる声音はどこか嬉しそうで、生粋の世話焼きな感じが窺える。
きっとミスランディアの中では、乙姫様やクルーたちの笑顔が再生されているんだろう。笑顔を浮かべながら新たにクッキー生地をこねるミスランディアを見て、アミシアも笑顔を浮かべながら、魂が抜けかけている錫華に向き直るのだった。
●
ハロウィン当日。
ミスランディアは厚手の着物に蓑スカートを履き、片手に釣り竿を持って、腰には魚籠を結びつけた、浦島太郎スタイルで子供たちを出迎えて、
『トリック・オア・トリート!』
と可愛く挨拶をしてくる子供たちに、プロアングラーばりのライン捌きで魚籠から取り出したクッキーを届けていた。
その見事なパフォーマンスに、子供たちは歓声をあげながらクッキーを受け取る。
「みんなで仲良く食べるんじゃぞ」
ミスランディアがクッキーを受け取った子供たちに手を振って見送りの言葉をかける。その口調と浦島太郎の衣装が似合いすぎている。ただ……。
「ありがと、おじちゃん!」
と言われてしまうことに、ちょっと複雑そうな表情を見せていた。
「浦島さま、最後まで笑顔でいてくださいね」
隣で乙姫の衣装を着たアミシアが、ミスランディアに笑いかける。
「そうそう。浦島さんのほうがいいじゃない。わたしなんてこれだよ?」
アミシアの隣でカメの着ぐるみから顔を出している錫華が、疲れた表情でクッキーを取り出していた。
アミシアの乙姫はもちろん、錫華のカメの着ぐるみも、けっこう似合っていて子供には一番人気だ。ただし浦島や乙姫と違って、子供たちからのスキンシップがかなり激しい。さっきも男の子にタックルをされていたところだ。
そんな状況をみていたミスランディアは、
「錫華殿もアミシア殿も、一段落したらこのクッキーでお茶などいかがかな?」
しっかりわしらの分はとってあるからの。ミスランディアは笑いながらそう言うと、また釣り竿を振るのだった。
大成功
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セナ・レッドスピア
こどもたちに、ハロウィンのお菓子を作ってあげるのですねっ!
ここは錫華さんやアミシアさんと一緒に作っていきましょうっ
作っていくお菓子は…
ちっちゃいボール型のドーナツをいっぱい!
それをいろんな色のチョコでコーティングして、トッピングやデコレーションと合わせて
ジャック・オ・ランタンやおばけとかハロウィンらいし見た目にしていきたいな
ピックもそんな雰囲気に似合ったチョイスをしていきます
その分作るのは大変になっちゃうけど、そこは3人で力を合わせて!
それができたら錫華さんやアミシアさんと一緒に配っていきましょうっ
仮装はドラキュラっぽい感じ(にしつつスカート履き)で、おふたりの仮装はお任せ
配るときはいつもの感じだけど、
こどもたちのたくさんさと勢いに押されてわたわたはわはわしちゃう事に!?
そんな中でも、折角だから作ったドーナツを、みんなで一緒にいただいたりもしていきたい所ですっ
あ、あと、だいじょぶでしたらちょこっとお持ち帰りもしていいでしょうか?
…いただいてもらいたい人に、いずれ渡したいですのでっ…!
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「こどもたちに、ハロウィンのお菓子を作ってあげるのですねっ!」
アミシアの説明を聞いたセナ・レッドスピア(blood to blood・f03195)が、ぐっ、と拳を握りしめて気合いを入れていた。
ハロウィン。
最近になって大きく取り上げられるようになってきたこのお祭りは、本来『収穫と死者の魂を祀る』儀式で、たくさんの魂が復活するとされている日の前夜祭だ。
たくさんの、ということは良い魂だけでなく悪霊も復活するということであり、お化けの扮装とお菓子を差し出す、というのは、その悪霊に害を及ぼされないためのものだと言われている。
いまではその扮装――コスプレ――が大きく取り上げられ、可愛いコスプレ姿を愛でつつ、お菓子でパーティーをすることがメインのお祭りになっていた。
つまりは『堂々とコスプレをしつつ、美味しいお菓子を楽しめる日』ということである。これでテンションが上がらない理由がない。
もちろんセナもその波に乗る気満々である。普段は少し控えめな印象のセナだったが、
「錫華さん、アミシアさん、いっしょにお菓子をつくりましょう!」
早くもハロウィンのテンションに気分を上げて、笑顔で錫華とアミシアを誘ったのだった。
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セナ、アミシア、錫華の3人がキッチンに入ると、アミシアが冷蔵庫を開けつつ、
「セナさん、なにを作りますか?」
と、問いかけると、セナはレシピ本をめくりながら、うーん、と考える。ハロウィンのお菓子と言えば、クッキーやチョコ、キャンディなどが一般的だが、それだと他の人とかぶってしまうかもしれない。
そう思いケーキやタルトなどのページも見てみるのだが、その作り方をのぞき見た錫華の顔に『無理無理無理』と縦線が入ってしまっている。
キャバリアに乗っているときの飄々とした自信はどこにも見えず、ただただ不安でいっぱいな感じだ。
そんな錫華を見て、なるべくシンプルなものをと考え、そうなるとやっぱりクッキーかな……と思いながらページをめくっていたセナの手がふと止まる。
ボールドーナツ。
これなら形も丸く可愛く、表面にいろいろなトッピングを施すこともできてバリエーションも豊富。それになんといっても作り方がシンプルだ。セナは横から覗いていた錫華に、
「これならどうかな?」
と微笑むと、錫華は真剣に作り方を読み込んでから、少し自信なげではあったけれど、セナをしっかり見て頷いた。
「それでは、ちっちゃいボール型のドーナツをいっぱい作っていきましょうっ!」
セナは錫華とアミシアに笑顔で頷くと、さっそく、といった感じで材料やボウルを取り出し始めた。
薄力粉、ベーキングパウダー、砂糖をボウルにふるい入れ、そこに溶かしバターに牛乳と卵を加えたものを注ぎ入れたら、よく混ぜてからしっかり捏ねていく。
アミシアは手際よく、セナは楽しそうに、そして2人とも目の端ではしっかり錫華の様子を気にしながら、
「錫華、材料は目分量で入れてはダメですよ」
「す、錫華さん、生地はもうちょっと優しく扱ってあげてくださいっ!?」
など、要所要所でアドバイスしつつ、なんとか3人とも生地を作り終える。
生地ができあがれば、ここからがドーナツの本番、揚げの行程だ。
菜箸の先からしゅわしゅわと泡が出てくれば適温。油の温度が下がりすぎないように気をつけながら一口大に丸めた生地を投入していく。
あとはきつね色に揚がるのを待つのだが……。
「錫華さん、そんなにずっと見つめていなくても、大丈夫ですから」
5~6分はかかりますよ、と、鍋を凝視していた錫華にセナが声をかけるのだが、それでもなにかが気になるのか、
「うん、わかった。ありがと」
と言いつつ、錫華は鍋から離れない。これが経験の差というものなのだろう。
「セナさん、アミシア、色着いてきた!」
鍋に張り付いていた錫華から、セナとアミシアの元に嬉しそうな声での報告が届くと、それを聞いた2人も鍋の元へ。
3人で色づいたドーナツを網ですくい上げると、すばやく準備していたバットの中に入れていく。
何種類かのバットの中にはそれぞれ、パウダーシュガー、ココナッツパウダー、ミックスチョコスプレー、キャラメルドーナツが入っていて、暖かいうちに転がすと、ドーナツにきれいなトッピングが施されていく。
そこにさらに、チョコチップの目や口、ライスペーパーの傘などをつければ、ジャック・オ・ランタンやおばけのドーナツが生みだされる。
最後にカップに綺麗に並べたら、カボチャモチーフのピックを刺してオレンジの袋にラッピング。これで子供たちを迎える準備は万端だ。
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『トリック・オア・トリート!』
元気に駆け寄ってくる子供たちを、三人三様の衣装で出迎えるのだが……。
セナが、黒を基調に赤のラインでアクセントを入れたドラキュラ風で、背中の小さなコウモリの翼が可愛らしいのに反して、アミシアは包帯とボディペイントでフランケン……のつもりらしいが、どう見てもリアルゾンビ風。錫華はケモミミを着けて狼娘なのだが、毛の感じがリアルすぎて、どちらも子供たちが若干怯えている。
そうなると子供たちは自然とセナの元に集まってくることになる。そして子供たちが集まれば、とうぜん……。
「翼はあるけど飛べないですから!」
「ス、スカート捲ったらダメですっ!?」
と、勢いのままに周りを囲まれ、いたずらされて、わたわたはわはわ。
お菓子を渡すサポートに回ったアミシアと錫華も、そんなセナにほんわか癒やされて助けるのがちょっと遅れ気味になっている。
そんな時間のしばし後。
子供たちの途切れたタイミングで、休憩にした3人が自分たちで作ったドーナツを頬張っていた。みんなで作ったドーナツは思いのほか美味しくて……。
「これ、ちょこっとお持ち帰りもしていいでしょうか?」
……いただいてもらいたい人に、いずれ渡したいですのでっ……! と、セナがちょっと上目遣いに2人に聞いた。
アミシアと錫華は、
「「もちろん」」
と快くおっけーの意を示すと、セナはお礼を言いながら、残っていたドーナツのうち数個を摘まむと、大切そうにラッピングし直した。
ドーナツを幸せそうに手のひらに包み込みながら、セナの頬がほんのり赤く染まっているのは、『いただいてもらいたい人』に思いを馳せているのだろうか――。
大成功
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