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悪意を売る者

#UDCアース

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#UDCアース


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 とある昼下がり。閑静な住宅街の一角にある家の前に一人の男が立つ。
 その男は清潔感のあるスーツを着用しており、黒いビジネスバッグを携えていた。
「今日のターゲットはここか」
 男はそう呟くとインターホンを押し、家人の応対を待つ。
 ピンポーン。
 よくある電子音による呼び出しが行われ……しばらくの間が開いた後、玄関の戸が開き、一人の女性が顔を出す。
「どちら様でしょうか?」
 途端に男は表情を笑顔へと変え、滑らかな口調で喋り始めた。
「あっ、こんにちはー。わたくし、この辺りのお宅を回らせてもらって、ある商品の販売をしているんですけどね。知りません?『付けていると心が穏やかになるブレスレット』って」
 言うが早いか、男は女性の返答も待たずに手にした鞄から金属の様な材質に見える白いブレスレットを取り出し、女性へと見せる。
「ほーら、綺麗でしょう?どうです、ここでは何ですし、お家でお話させて頂いても?」
 ニヤリと笑う男。その手元にあるブレスレットが妖しい輝きを放つ。その輝きを目にした女性は一瞬目を見開き……暫くの沈黙。そして。
「……ええ、どうぞ」
 女性は心ここに在らず、といった風に答える。その虚ろな瞳は不気味なまでに白いブレスレットへと注がれていた。


「すみません……すみませんッ!誰か、手の空いてる方はいないでしょうか?」
 最初は消え入りそうな声で。二度目は何とか聞き取れなくも無い声で呼び掛けたのは、グリモア猟兵の1人であるリムレア・トルテ(出来損ない・f05757)だ。
 そのか細い声を聞き取った何人かの猟兵がリムレアへと視線を向けた事を確認し、彼女は再び口を開く。
「UDCアースに危険が迫っています。何か得体の知れない事件が起こっているみたいで……」
 リムレアは所々で言葉を詰まらせ、数秒の思考を挟みながらも必死に説明を続ける。
 その説明を要約するとこうだ。
 最近、UDCアースではある事件が話題になっている。
 その事件とは、失踪事件。それまで普通に生活していた人が、ある日を境に忽然と姿を消してしまうのだ。
 いや、普通というには少し語弊があるだろう。話によると失踪した人は皆、失踪直前はまるで人が変わったかのように無感情な人間になってしまっていたという。
「殴られても、お金を取られても、何をされても怒らない。家族やペットが死んでしまっても悲しまない。笑っている所も全く見なくなってしまった。そう聞いています……おかしいですよね」
 そして、失踪者にはもう一つの共通点がある。それは、失踪の少し前から同じデザインのブレスレットを肌身離さず身に着けていたという事だ。
「失踪した人達は皆、そのブレスレットを入浴時でも就寝時でもずっと付けたままだったみたいです。そのブレスレットが失踪の原因……あるいは、失踪に深く関わっている事は間違いありません」
 話している内に緊張も薄れたのか、最初よりも大きな声量で滑らかに話すリムレア。
「ブレスレットの主な流通方法は訪問セールス……家に直接訪れ、商品を販売する手法ですね。そこで、皆さんにはこのブレスレットを販売しているセールスマンを追って欲しいんです」
 そこまで説明を終えたリムレアはおもむろに一枚の紙を取り出し、猟兵達へと示す。
 紙に描かれていたのは、スーツを着用してビジネスバッグを持った男性らしき人間。人相はそこまで細かく分からないが、どうやら糸のように細い目をしている人物であるようだ。
「この男性がブレスレットを販売していたセールスマンです。次に現れる場所も分かっていますので、この人物を見つけ出してください」
 リムレアが男性の描かれた紙を裏返すと、そこにはある住宅街の地図が描かれていた。どうやら、そこがセールスマンの次のターゲットらしい。
「そして、ブレスレットの流通を止めさせて下さい。……それが、失踪事件の解決にも繋がるはずです」
 ブレスレットを販売しているセールスマンを見つけ、何らかの手段でブレスレットの流通を止める。これが今回の事件における最終目標となる。

「私には皆さんの移動をお手伝いする事くらいしか出来ませんが……よろしくお願いします」
 そう言うと、リムレアは丁寧に頭を下げた。


なごみ
 こんにちは、MSのなごみと申します。

 今回はUDCアースを舞台にしたシナリオとなります。
 OPだけだと調査寄りの依頼に見えますが、ガッツリ戦闘もありますのでそちらもご期待下さい。
 また、第1章では基本的に住宅街でのシーンとなります。

 猟兵達は世界に迫る危機を退ける事が出来るのか?
 皆様のプレイングを楽しみにお待ちしております!
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第1章 冒険 『怪しいセールスマンに御用心』

POW   :    街中を隈なく移動して取引現場を捜索する

SPD   :    怪しい人物を尾行して取引現場を嗅ぎ付ける

WIZ   :    囮捜査を敢行し、セールスマンと接触を図る

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

デナイル・ヒステリカル
往々にして人間がそういった精神状態に陥る場合があるのはデータとして記録している。
しかしそれを強制する道具を押し付けている存在が居るのなら、僕はそれを止めなければならない。
「辛い目に会う人がいるのなら、僕は僕に出来ることをする」

電脳ゴーグルを使用して電脳空間を展開。
【ハッキング】【情報収集】を使用して街全体の監視装置に相乗りさせてもらうよ。
情報を集積してセールスマンを追い、リアルタイムの位置を仲間の猟兵に伝達しよう。

セールスマンの取引相手を割り出せたなら、その家へセールスマンよりも先に連絡して警告してもいいかな。
【世界知識】【コミュ力】を用いて警官などの信頼を得やすい立場と偽るよ


ナノ・クロムウェル
ふむ…では住宅街で張り込みをして…怪しい人物を見つけたら尾行という形を取りましょう。
昼間の閑静な場所でスーツを着用してビジネスバッグを持った男性らしき人間なら…十分怪しいと考えます。そして糸のように細い目をしている人物ですか…顔を可能なら確認して人相を覚えたい所です。
私の「サイバーアイ」なら普通の人よりも優れた視覚情報の分析が可能です。
調査というものは足から行うと聞きました。

私が今回の件を追う理由ですか?
…無感情になってしまうと言うのは悲しいものです…。
……ナノはそういうの許せないんだもん
っと少々感情的になりすぎて本音が…さっきの口調は忘れてください。
…調査開始です。


ベリア・ストライク
出現地点の住宅街に訪れ張り込むとする
怪しい男を尾行するとしようか
住宅街を見渡しやすく隠れるのに適した位置で待機し
件の人物が訪れるのを静かに待つ

【SPD】
ターゲットが現れたら一定の距離を保ちつつ尾行するぜ
【追跡】【目立たない】の技能を使って慎重に道中を進む
特に距離が離れすぎて見失わないように注意だな

「追跡は得意だぜ。人狼の鼻を舐めんなよ。必ず正体を突き止めてやる」

万が一、見つかってしまい戦闘になるようなら
プログラムド・ジェノサイドで攻撃を仕掛ける
攻撃を仕掛けてくるってことはオブリビアンだろうが
一般人のようなら手を抜いて戦う
逃げるようなら後を追う




 とある昼下がりの閑静な住宅街の一角。やや小高くなっている、見晴らしの良い場所に三人の猟兵が集まっていた。
「無感情になってしまうというのは悲しいものです……」
 そう語るのはナノ・クロムウェル(翠炎のメタルサバイバー・f02631)だ。
 彼女は生まれつき身体が弱く、生きるために体を機械化したサイボーグ。しかし、その代償は重く、生来持っていた豊かな感情を失ってしまっている。
「……ナノはそういうの許せないんだもん」
 そんな彼女が、今回の事件を許すことが出来ないのは道理であろう。
 自分が呟きを漏らした事に驚き、さっきの口調は忘れて下さいと言うナノに対し。
「いいじゃないか。僕も同じだよ」
 電脳空間で調査を続けつつ同意したのはデナイル・ヒステリカル(架空存在の電脳魔術士・f03357)である。
 様々な人間を相手にしてきた彼は、往々にして人間がそういった精神状態に陥るというデータを持っている。
 だが。
「そういう事を強制する道具を押し付けている存在が居るのなら、僕はそれを止めなければならない」
 デナイルはそう言うと、再び電脳空間に意識を戻す。
 電脳ゴーグルを使用して電脳空間を展開している彼は、自らの得意とするハッキングや情報収集の技術を使い、街全体の監視装置を利用していた。
「安心しろよ。追跡は得意なんだ、必ず正体を突き止めてやるぜ」
 事件についての意気込みを語る二人にそう嘯いてみせたのはベリア・ストライク(人狼の人形遣い・f00858)、女性と見紛う容姿を持つ人狼の少年だ。
 尾行の腕に自信を持ち、戦闘の用意も抜かりなく行ってきた彼は正に準備万端といった様子。
「早いとこ見つけ出して、尾行を始めたいんだがな」
 そう言って住宅街を見回すも、セールスマンらしき人影は無い。
「チッ……もどかしいな」
「まぁ、そう簡単には見つからな……ん?」
 デナイルの展開した電脳空間に映る一つの映像。コンビニの駐車場に設置された監視カメラと思しきその映像の端に、スーツを着た男がいる。
「何か見つかりました?」
 ベリアと同じく住宅街を見張っていたナノが横からひょこりと頭を出し、映像を確認した後、同じく映像を確認したベリアと顔を見合わせる。
「スーツ姿に……ビジネスバッグも持っていますね」
「ようやくお出ましか。俺達の出番だな、行くぜ」
 デナイルに映像の場所を聞き、ようやく退屈な張り込みから解放された二人は疾風の如く現地へと走りだしていく。
「僕は他の猟兵さんにも場所を連絡してから向かうよ。二人共、頑張ってね」
 デナイルは二人に声を掛けつつ見送り、他の猟兵にもセールスマンの位置を伝達すべく電脳空間の操作を始めた。


 先程のやり取りから5分程経過した頃。現場に到着したナノとベリアは無事に男を発見、遅れて合流したデナイルも含めて尾行を開始していた。
(距離を離されすぎねぇように気を付けないとな。また見つける所から始めるのは面倒だ)
 男を先頭に、少し後ろの位置で尾行をするのはベリア。目立たない事を得意とする彼は比較的近い距離での尾行を可能としていた。
「人狼の鼻を舐めんなよ。必ず正体を突き止めてやる」

 そこから更に後ろの位置にいるのはナノとデナイル。
 ナノと尾行に関する技術こそ無いものの、彼女が眼球に装着している『サイバーアイ』が遠距離からの尾行、情報分析を可能としていた。
「先程確認した彼の顔は糸のように細い目をしていました。やはり、彼が目標で間違いなさそうですね」
「ナノさんは目がいいんだね。すごいなぁ」
 一方、デナイルは監視装置を利用し、相手の行動ルートを予測する事で尾行の補助を行っている。他の猟兵たちへの情報伝達も抜かりない。
 各々が得意とする技術を活かした三人の尾行や調査は着実に成果を残し、セールスマンの取引現場と思しき家をほぼ絞り込むに事に成功したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

火奈本・火花
「不可解な物品の販売ですか……単純なセールストークや強引な悪徳商法であれば良いのですが」

■調査
私は囮捜査での接触を図りましょう(WIZ)
とは言え住宅街の訪問セールスとなると、容易に潜入は出来ませんね

まずは住宅街にいる主婦を装って「変装」しましょう
それに訪問される家が無くてはいけませんし、なるべく新築の家を探して「催眠術」で家主の方に出掛けて貰います
狙われる家が決まっていればそのまま待機ですが……その後は多めの買い物袋を持って、疲れた様子で住宅街を一定時間歩くつもりです
どこかのタイミングでセールスマンが声をかけてきて、ブレスレットの話題を出したら「クイックドロウ」で拳銃を突きつけ、拘束に移ります


東郷・悠理
失踪事件……放っておいたらいけないね。絶対捕まえないと

けど先ずは見つけないとだね。次に現れる場所がわかってるならいっそお客として接触してみようかな?
部屋のインターホンを押そうとした所で帰ってきた人の様に装って接触、もし件のブレスレットが出てきたら捕まえられないか挑戦してみよう。


ティティモルモ・モルル
無感情になるブレスレットでごぜーますか……。
ぬくぬく眠る喜び、安眠妨害される怒り、むりやり起こされる哀しみ、もう一度眠る楽しみ。
すべてなくなるなんて、ぞっとする話でごぜーますね……。
無事に解決できるよう、がんばりましょー。

それじゃーモルは囮役でいってみるですよ。
(件の住宅街付近で、その辺の家の子供っぽく出歩く)

うー……暇すぎてイライラするやら悲しいやらでごぜーます……。
なにか気持ちが落ち着くような、見てなごむような、そんなものどっかにねーでしょーか……。
(うろうろしつつ、怪しい人が近くにいたらそれとなく誘うように呟いてみる。技能:誘惑)




 所変わって別の一角。そちらでは客を装い、セールスマンと接触を図ろうとする者達がいた。
 一人は、眠そうに辺りを歩き回るブラックタールの少女。
「無感情になるブレスレットでごぜーますか……」
 睡眠に関わる様々な感情。その全てが無くなってしまう……それはなんて恐ろしい事なのだろうと、ティティモルモ・モルル(フトゥンフワット・f03305)は眠い目を擦りながらも思考する。
 そして、少し離れた石垣の影に隠れるように二人。
「放っておいたらいけないね。絶対捕まえないと」
「ええ。単純なセールストークや強引な悪徳商法であれば良いのですが」
もふもふした耳と尻尾を生やした妖狐、東郷・悠理(籠の外の妖狐・f02258)と、主婦に変装中の人間、火奈本・火花(エージェント・f00795)も各々の考えを口にしながら、その時を待っていた。

 状況を説明しよう。
 猟兵達が尾行や調査によって得た情報から、セールスマンの取引場所はこの近辺にある三軒の家のどれか、という所まで絞りこめている。
 そこで、悠理たち三人の取った作戦はこうだ。
 まず、一軒の家を接触場所と決め、その近くで火花と悠理が待機する。
 接触場所に決めた家は現在留守中。先程火花が家人と接触し、軽い催眠術を掛ける事でしばらくの間外出してもらったのだ。
 一方ティティモルモは、その辺りの家に住む子供の様を装い、周辺を歩き回る事でセールスマンの注意を惹きつけ、接触場所と決めた家へと誘導する役割を担っている。他者を誘惑する術にも長けている彼女にとって、この役割は適任と言えよう。
 首尾よくセールスマンの誘導に成功した所で、いよいよ三人で目標との接触が行われる。
 セールスマンが玄関先に着いた時、さも今帰ってきましたという風に火花と悠理が登場。そこからは話術の見せ所、という訳だ。
「んー……こう暇だとほんとに寝ちまいますよ……」
 中々現れないセールスマンを待ち続け、ティティモルモが睡魔との戦いに負けようとしていたその時、彼女の瞳がこちらに向かってくる人影を捉えた。
 黒いスーツ姿のビジネスバッグを持った男。件のセールスマンがようやく姿を現したのだ。


「うー……暇すぎてイライラするやら悲しいやらでごぜーます……」
 セールスマンに聞こえるか聞こえないかくらいの声量でそんな事を呟きつつ、ふらりふらりと歩くティティモルモ。
 流石にそんな状態の子供を放っておくことは出来なかったのか、あるいは何らかの商売の為だったのか。男はティティモルモに声を掛けてしまった。
「お嬢ちゃん、大丈夫かい?」
「大丈夫じゃねーです……何か気持ちが落ち着くようなものはどっかにねーでしょうかね……」
 かかった。ティティモルモは内心ほくそ笑みつつも演技を続行し、巧みにセールスマンを誘惑していく。
「ああ、それならいい物があるよ。そうだね……お嬢ちゃん、この辺の家の子かい?」
「その通りでごぜーます」
 少女は男の問いに頷きを返し、家主が留守にしている家を示す。
「それじゃあ、お嬢ちゃんの家にお邪魔させてもらおうかな。お父さんやお母さんとも話してみたいしね」
 セールスマンは笑顔で罠に踏み込んでいく。その先に待つのが己の破滅だとも知らずに。
 自分の役割をしっかりとこなしたティティモルモは、石垣の影に隠れている二人に目配せを送る。
 二人……火花と悠理はそれぞれ頷きやサムズアップを返すのだった。


 時は少し進み、セールスマンとティティモルモが接触場所と決めた家の玄関へと到着する頃、火花と悠理も行動を開始していた。
「そろそろかな?私たちも行こうか」
「ええ、油断しないように気を付けて臨みましょう」
 石垣の影から出て、たった今家に帰ってきた風を装いつつ、自然にセールスマンへと声を掛ける。先陣を切ったのは火花だ。
「あの……すみません。家に何か御用でしょうか?」
「あっ、こちらの家の方ですか?いやーお宅のお子さんがその辺りをふらふらとしていたものでつい心配になってですね……」
 少女と男。場合によっては通報されかねない状況だからか、男は饒舌に語りだす。
「ふーん……そうなんだ」
 いかにも信用していませんという雰囲気を出した悠理が男をじろじろと観察するそぶりを見せると、男は更に言葉を重ねていく。
「えっとですね!わたくし、この辺りのお宅を回らせてもらって、ある商品の販売をしているんですけどね。『付けていると心が穏やかになるブレスレット』っていうんですけど」
 ブレスレット。その単語に三人の猟兵は緊張感を強め、その視線はビジネスバックを開き、何かを取り出そうとする男の手元へと集中する。
「ほーら、こちらです。どうです、綺麗でしょう」
 その言葉と共に男の手元にあるブレスレットが妖しい輝きを放つ……その一瞬前。
 こつん、と。男の額に拳銃が突き付けられていた。
「なるほど。やはりあなたが今回の事件を起こしているセールスマンで間違いないようですね」
 引き金に指を掛けつつ語るのは火花。
 『クイックドロウ』。目にも止まらぬ速さで銃を抜き撃つ技術の応用で、瞬時に男の額へと銃口を押し付けたのだ。
「へ……?」
「はーい、大人しく捕まってねー」
 突然の事態に今だ思考がフリーズしたままのセールスマンを悠理が手際よく拘束していく。
「さて、全てを話して頂きましょうか」
「もう逃げられないからね」
「……ねむてーです……」
 セールスマンがようやく事態を把握する頃には全てが終わり、拘束された状態で三人の猟兵に囲まれるという、彼にとっては最悪の事態となっていたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『泥人』

POW   :    痛いのはやめてくださいぃ…………
見えない【透明な体組織 】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    悪いことはダメです!!
【空回る正義感 】【空回る責任感】【悪人の嘘を真に受けた純粋さ】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    誰か助けて!!
戦闘用の、自身と同じ強さの【お友達 】と【ご近所さん】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 それぞれの活躍により、見事セールスマンを捕らえ、情報を引き出す事に成功した猟兵たち。
 彼から引き出した情報は以下のものとなる。

・セールスマンはとある邪神を崇める教団の一員だった。
・ブレスレットは人間の感情を失わせ、操り人形のようにしてしまう道具。彼らはこれを使って邪神を喚ぶための生贄を集めていた。
・このブレスレットを生産する場所として、彼らは住宅街から程近い廃工場を根城にしているようだ。
・セールスマンの上司となる者もそこにおり、そいつを倒せば今回の失踪事件も終息するであろうという事。

 聴取の終わったセールスマンをUDC組織へと身柄を引き渡した後、猟兵たちは早速行動を開始。廃工場へと歩を進める。
 そこで待ち受けていたのは『泥人』と呼ばれるオブリビオン。恐らくは教団の配下だろう。
 一体一体の戦闘力はそれ程でもなさそうだが、数はそれなりにいるようだ。
 更に、戦闘場所である廃工場は用途の分からない機械類や鉄柱など、様々な物品がそこかしこに散らばっており、足場が悪く障害物も多い。
 しかし、この程度の敵で立ち止まってはいられない。悪事の元凶を断つため、猟兵たちの戦いが始まろうとしていた。
火奈本・火花
「失踪者を無事に保護する事が出来れば最良でしたが……そう、上手くはいかないものですね」

■戦闘
純粋な性格を残しているように見えます。敵を油断させる為の手段かも知れませんが

「貴方達を酷い目に合わせた男は捕まえました。大人しく投降してくれれば、元に戻すことが出来ないか組織で対応します」
「時間稼ぎ」にしかならなくとも、「コミュ力」を持って友好的に訴えはするつもりです
近づく事が最優先ですが、投降してくれるなら幸いです

奇襲も想定しつつ、敵意を持って攻撃してくるなら強引にでも接近します
鋼糸を飛ばして引き寄せ、「敵を盾にする」事も厭いません

接近したらヤドリギの一撃で、なるべく苦しまずに終了してあげましょう


デナイル・ヒステリカル
調査は首尾良く進みました。 次は戦闘ですね。

電脳ゴーグルを使用して電脳空間を展開。
工場の構造、地形情報、敵味方の動きを【情報収集】して解析し、味方を援護します。

ですが、僕は助けてと叫ぶ声に非常に弱いです。 なるべく相手を打倒ではなく拘束する方針で戦います。

ユーベルコードを使用。
機械兵器を召喚して味方のピンチを【援護射撃】で手助けする事と、敵からの攻撃に対して盾になるように命じます。

……出来ることなら【コミュ力】を用いた説得で、この場を収めて貰えるように努力したいですけど……。


弦月・宵
ここで生産してるものは、証拠品とかいってごっそり没収されるのかな。
残念。効果にも品物的にもちょっと興味あったのに。ま、いいや。
どうせそんな上物なわけないし。

ここには生け贄のヒト達はいない?
だったら別に拠点とかありそう。散らかってるし、住みにくそう。
足場には注意して【ゆるゆら】で応戦。
水につけると爆発する鉱物、セシウム(Cs)を召喚。

数が多いなら背後や頭上にも注意だね。
周囲の猟兵さん達と積極的に協力して、弱ってるやつを教えるとか、とどめを刺して回ったりとかするかな。
上司の事を知ってるヤツは残しておいた方がいい?
ここで待ってたら偵察に来そうではある。
なるべく苦しくないように送ってあげたいんだけど。




 一見すると人気のないただの廃工場。繁栄を通り過ぎ、既に"過去"の存在となりつつあるその場所に集まるのは"今"を守る者たち。
 彼らは猟兵。世界に選ばれ戦う者たち。
 対するは不定の身体を持つオブリビオン『泥人』。世界から斬り捨てられ戦う者達。
 どこか弱弱しい雰囲気を持つ彼女たちは現れた猟兵たちに驚き、怯えと敵意が入り混じった視線を向けている。
「なるほど。この歓迎を見るに、やはりここが話に聞いた廃工場で間違いないようですね」
 伊達メガネに手をやりつつ辺りを見回し、確認するように言ったのはUDCエージェント、火花。
「確かにこれは大歓迎ですね。人気者の猟兵は辛いなあ」
「これくらい楽勝だよ。オレもいるしね」
 軽口を言うデナイルに強がりで返すのは弦月・宵(マヨイゴ・f05409)だ。
「しかしどうにも……純粋な性格を残しているように見えます」
 泥人たちの様子を観察した火花は、こちらを油断させる罠という可能性を考慮しつつも、そう思ってしまった。
「そう……ですね。出来る事なら話し合いでこの場を収められればいいんですが……」
 それはデナイルも同意見だったらしい。コミュ力に優れた二人だからこそ、そう思ってしまったのかもしれない。
「まぁ、オレはどっちでも構わないよ」
 二人の様子を見ていた宵も敵に対する哀れみが無い訳ではない。積極的に説得はせずとも、それを見守る事は構わないといったスタンスだ。
「では……友好的に話しかけながら距離を詰めましょう。相手が投降してくれるなら御の字。決裂するのであればそのまま攻撃に移る形で」
「分かったよ。戦う事になったとしてもなるべく苦しまずに送ってあげよう」
「僕は援護に回ろうかな。交渉、よろしくお願いします」
 火花の提案に頷く宵。一方デナイルは彼女たちが説得を行っている間、電脳空間を利用して工場の構造や地形などの情報を収集する算段。
 三人は顔を見合わせ、一つ頷くとそれぞれ行動を開始した。


 まず動いたのは火花。
「貴方達を酷い目に合わせた男は捕まえました。大人しく投降してくれれば、元に戻すことが出来ないか組織で対応します」
 泥人たちへとゆっくりと歩み寄りながら語りかける。
 火花の一歩後ろを歩く宵は周囲に視線を巡らせ、今回の事件で犠牲となった人々の行方について思案していた。
 ここに生贄の人達は居ない様に見える。更にかなり散らかっていることもあり、ここの居住性は最悪だろう。
(だったら、別に拠点とかありそうだね)
 しかし、今は目の前の相手に集中しなくては。宵は思考を一時中断し、警戒を強める。
 一見すると無防備にも見える二人だが、両者とも周囲への警戒は万全。宵は頭上や背後からの攻撃にも対応できるように気を配り。火花は奇襲を想定し、攻撃を受けたとしても距離を詰めることのできる動きをシミュレートしていた。

 さて肝心の泥人たちであるが。
 彼女たちは火花の言葉を聞くと困惑したように互いの視線を交わし、何事か小声で相談を始める。
 ひそひそ。ちらちら。
 時折火花と宵に視線を向けつつ話し合っていた泥人たち。敵と思っていた相手に話しかけられるという事態に動揺した彼女たちは一人の猟兵を意識から外してしまっていた。

「……今しかないかな」
 突出した火花と宵の後方、隙を伺っていたデナイルが行動を開始する。
 まずは愛用の電脳ゴーグルを使い、電脳空間を展開。様々な方面から戦場の情報を調査していく。死角となる場所、遠距離攻撃に適した高所の位置、敵群の侵攻ルート予測。
「なるほどね。この情報から僕が次に取るべき行動は……」
 持ち前の情報収集能力をフル活用し、それらの情報を得た彼は即座に次の行動へと移る。
 デナイルが発動したのはユーべルコード『エレクトロレギオン』。小型の戦闘用機械兵器を召喚し、戦わせる技だ。
「それじゃ、頼んだよ」
 ぴょんぴょんしたりぐるぐる回ったりして戦意を示す機械兵器たちに、デナイルは電脳空間を通して指示を飛ばす。彼の役割はいわば小隊の指揮官。そして今回、彼が自分の部隊に与えた指令は『仲間の支援』だ。
 指示を受けた機械兵器たちは敬礼の真似事のような動作をした後、デナイルの調べた工場内の情報を参考にそれぞれの配置へと移動を開始する。
「……交渉、上手くいくかな」
 機械兵器たちを見送りつつ、呟いた。


 機械兵器が移動を開始した頃、ようやく泥人たちの中で結論が出たようだ。
「……あなた方の話には乗る事が出来ません。ごめんなさい」
 弱弱しくもハッキリとした拒絶。
「……そうですか。残念です」
 予想していた答えではあったが、やはり実際に聞くと少しは堪えるものだ。しかし、立ち止まってはいられない。かぶりを振る事で僅かに残った未練を払い、敵を見据える火花。
「しょうがないね。後はオレたちの仕事だ」
 宵はふぅ、と一息ついた後に戦闘体勢へと入り、その華奢な両腕に朱墨が這ったような紋が浮かばせる。
「オレが援護するよ。火花は好きに暴れてきていいよ」
「分かりました、私が前に出ましょう。……行くぞ」
 スイッチが切り替わるように後半の語気を強める火花。目の前の相手は敵なのだ、最早抑える必要は無い。
 一瞬の溜めの後、弾丸のように泥人へと肉薄する火花。彼女の『ヤドリギの一撃』は射程距離に難があるものの、今回はあらかじめ距離を詰めている。
「ッ……!」
「なるべく使いたくない技だが仕方ない。苦しまずに終了させてやる」
 息を飲む泥人の鳩尾へと活性化させたヤドリギの根で覆われた拳がめり込む。元より不定形の体。その衝撃に耐えられる訳もなく、腹へ大穴を開けた泥人はそのまま形を崩していき、地面へと広がった。
 その圧倒的威力を見た泥人たちは火花を第一目標に設定したのか、彼女へ向けて一斉に"何か"を投げる仕草をする。
 その様子を見た火花は何らかの攻撃だろうと警戒し、咄嗟に横に飛んで回避を試みようとする……が、一瞬間に合わない。
(一撃は必要経費か……!?)
 衝撃を覚悟し、痛みに備える火花だったが、待てども待てども衝撃がやってくる事はない。
 何故なら、彼女の前に数個の機械兵器が踊りだし、泥人たちの体組織による攻撃を代わりに受けていたからだ。
「大丈夫ですか?間に合って良かった」
 そう言って火花に駆け寄ったのは後方から合流してきたデナイル。護衛の機械兵器数個も伴っている。
「済まない、助かった」
 火花はデナイルに差し出された手を取って立ち上がる。その目は既に次なる標的を見定め、接近に最適なルートを探し始めていた。
 一方で、自分たちの攻撃が失敗に終わったのを見た泥人たちは相手の戦力が強大だと判断したのか、彼女たちはどこかの誰かへと呼びかける。
「……誰か、助けてッ……!」
 響く悲痛な声を聞きつけ、戦場に現れる影が複数。泥人と似た姿をしたそれらは泥人たちの『ご近所さん』や『お友達』だろうか。それらは自分達を呼び出した泥人を守るように立ち、猟兵たちと睨み合う。
「仲間を呼んだんだね。それならオレも同じ事をしようかな」
 一歩前に出たのは宵。彼女もまた召喚に類する能力の持ち主なのだ。
「大地の結晶よ……来いッ!」
 呼びかける声に呼応するように地面を割り、現れたのは数十個もある鉱石の結晶。水に反応して爆発するという危険な性質を持つそれらは一斉に泥人たちに襲い掛かっていく。
 泥人のご近所さんやお友達も飛来する結晶を叩き落とし、回避し、泥人へと向かうものは庇い、とよく応戦したものの流石に手数が多すぎた。庇い切れなかった結晶が泥人に命中すると同時。
「残念。これでお終いだ」
 結晶は小規模ながらも爆発を起こし、泥人の体組織を辺りへまき散らした。その泥人に召喚されていた者達もその姿がかき消えていく。
「……僕は助けを求める声には弱いんだ。どうしても、戦いを止める事は出来ないんですか?」
 ばらばらになった泥人に視線を向けたデナイルが問う。
「駄目ですぅ……。私たちが変な事をしたら私たちの仲間も危ないかもしれないですし……」
 泥人の一人がそう答え、先の泥人と同じ様にお友達やご近所さんを喚び出す。他の泥人もそれぞれの技を準備し、戦闘を続行する構えだ。
「仕方ないですね……」
 デナイルも再び機械兵器に指示を与える。可能な限り、敵の打倒ではなく拘束を狙って戦うように。
「なるべく苦しみを与えないよう、終了させよう」
「きついとこはオレ達に任せてよ」
 そんなデナイルを見て声を掛ける火花と宵。敵に対する情けや哀れみの感情、それがこの猟兵たちの共通点だった。
「……恩に着るよ」
 言葉は短くも二人の気遣いに心の中で深く感謝し、デナイルは敵と相対する。
 泥人と猟兵。タイミングを計る両者で最初に動いたのは火花。見定めた道筋を辿り、もっとも距離の近い相手に必殺の一撃を叩き込むべく走る彼女をデナイル率いる機械兵器、宵の操る鉱石の結晶が援護する。
 息の合った連携で次々と敵を撃破する三人の活躍により、戦況は猟兵たちへと傾きつつあった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ティティモルモ・モルル
んー……色は違うですが、どこか同種族っぽいのがいるでごぜーますね。
まーでも情け容赦とかそういうのはねーので、さくさく倒して進んで終わらせて寝ましょー……。

障害多くてやっかいそうな場所でごぜーますが、たぶんモルには好都合でごぜーますねー。
(液体化した体を障害物の陰に潜めつつ、ずるずると移動)

やっちまえーでごぜーます。ふぁいとー。ふぁいとー。
(攻撃範囲内に敵を捉えたら、即座に【サモニング・ガイスト】。特に仲間を召喚している個体へと、古代の戦士から攻撃。技の解除を狙う。技能:高速詠唱)

あ、こっち来られるのは嫌なんで離れてくだせ―。
(近付いてきた個体はオフトゥンでひっぱたいて吹き飛ばす。技能:衝撃波)


東郷・悠理
邪神を喚ばせないようにしないと……早速行動開始
配下のオブリビオンはなるべく早めに倒して先に進まないとね。
というわけで数には数で勝負!ユーベルコード「フォックスファイア」と技能なぎ払いで遠くから攻撃。
一気に数を減らしていこう。




「フォックスファイア、いっけぇー!」
 泥人と猟兵がぶつかりあう戦場に一際元気な声が響き渡り、その声に従うように狐火が乱舞する。
 ある狐火は敵へ直接ぶつかり、またある狐火は敵の逃げ場を塞ぐように動き、複数の狐火を自在に操り戦っているのは黒い和装に身を包んだ妖狐━━悠理だ。
「数には数で勝負!纏めて薙ぎ払っちゃうよ!」
 遠距離からの戦いを徹底して敵を寄せ付けない戦い方をする悠理に対し、泥人たちは大きなダメージを受けていた。
「なら、こっちも数で勝負ですぅ!誰か助けてー!」
 しかし、それならばと言わんばかりに泥人たちも『ご近所さん』と『お友達』を召喚。召喚者が戦えないとしても敵の数が単純に二倍。数という面において優位に立った泥人たちに対し、悠理は徐々に追い詰められつつあった。
「ちょーっとまずいかも……?」
 狐火を操り、全方位から召喚者の泥人を狙うもお友達やご近所さん、あるいは別の泥人に阻まれる。
 一手が足りない。狐火により傷つきながらも遂に悠理の元へとたどり着いたお友達の一撃を光の剣で受け止めつつ、悠理は次の手に考えを巡らせた。



 一方その頃、戦場の片隅で動く黒い液体があった。
 ずるずる……ずるずる……
「なーんか派手にドンパチしてますねー。ま、モルにはあんま関係ねーですが」
 ずるずる……と、良く分からない巨大な機械の影に身を潜めながらこっそりと進んでいるのはブラックタールのティティモルモ。自分の体を最大限に活かした潜入工作だ。
「んー……?なんかこの先で戦ってるっぽいでごぜーますね」
 前方から聞こえる爆発音に気付き、物陰からこそーりと様子を窺う黒液少女。その視線の先では狐火が飛び回り、泥人やその仲間らしい者たちがそれに対応しようとしているようだった。
「んー……色は違うですが、やっぱ同種族っぽいでごぜーますね。まーでも情け容赦とかそういうのはねーのであしからず」
 いくら姿形が似ているとは、泥人たちはオブリビオン。倒す事に躊躇いは無い。そんな事よりさっさと帰って寝る事の方がよほど重要だ。
「はー、行きますか……」
 睡眠時間の迅速な確保のため、ティティモルモは再びずるずる……と移動を開始した。


「もーっ、しつっこい!」
 悠理と泥人たちの戦いは続いていた。近づいてきた泥人のお友達とご近所さんをフォースセイバーでなぎ払い、体勢を崩したところへフォックスファイアによる狐火を叩き込む。
 これで何体目の敵だったろうか?……数えるのをやめて暫く経つ。
「流石にきっついなぁ……一回下がろうかな」
 連戦の疲れからか思わず弱音を零すも、それを許してくれる相手ではない。
 やや距離の離れた位置に泥人がご近所さんとお友達を召喚、悠理へと差し向けているのが見える。
「休憩時間くらい欲しかったんだけどな」
 ぼやきつつも狐火を展開し、敵を迎撃する体制をとった悠理。そこへご近所さんとお友達が突撃していく━━かに思われたが。
「……ッ!」
 ビクリ、と。突如として動きを止めた泥人の仲間たちはそのまま消しゴムで絵を消すかの様に消えていく。突然の事に一瞬の膠着を見せる場に響くのは独特の口調で呼び掛ける声。
「大変そうでごぜーますね。猫の手は入り用で?」
 悠理が声のした方へと視線を向けるとそこには液体の体を持つ猟兵、ティティモルモが鉄柱の影から覗いている。ご丁寧に体の一部を猫の手へと変化させ、ひょいひょいと振っているようだ。
「ありがとう、助かったよ。今は猫の手でも何でも貸してほしいって感じ。お願いできる?」
「合点承知、でごぜーます」
 ティティモルモはそう言うと、彼女の仲間へと声を掛ける。
「そういう感じみてーなんで、残ってる敵もやっちまえーでごぜーます。ふぁいとー、ふぁいとー」
 呼びかけに応え、動き出したのはティティモルモの呼び出していた古代の戦士。『サモニングガイスト』で召還された心強い仲間だ。
 先程、お友達とご近所さんが消えたのもかの戦士が泥人へと不意打ちを喰らわせ、撃破していたからだったらしい。
「それじゃ、反撃開始と行きますか!」
「おー」

 そこからは一方的な展開だった。
 前衛を務めるのは古代の戦士。手にした槍と炎による攻撃で敵の攻撃を受け止め、注意を引き、他の仲間が攻撃する隙を作りだす。
「たたけー。がんばれー」
 ティティモルモも古代の戦士の後ろに隠れて応援しつつ、時折接近してくる敵をオフトゥンでべしべしとひっぱたいていた。
 オフトゥンながらもその威力は侮れない。その一撃は気の抜けるようなボフッという音を響かせながらも辺りに衝撃波を発生させ、敵を寄せ付けない戦いを可能にしていた。
 ただ一つ欠点を挙げるとすれば、ティティモルモがオフトゥンを見ていると眠くなってくるという事だろう。
 廃工場でボフボフと暴れまわり、土埃を立てまくっているのにあまり汚れていないのはオフトゥンに秘められたUDCの力だとか何とか。
 一方、後衛に陣取るのはフォックスファイアを操る悠理。前衛がわちゃわちゃとしている間に後方から狐火を飛ばし、傷ついた敵を的確に攻撃していく。
 その上で、古代の戦士が捌ききれない分の敵を狐火で牽制して押し留めるなど、防御面でも抜かりがない。
 前衛が敵を止め、後衛が遠距離から強力な攻撃を仕掛ける。役割分担の出来た動きは即席チームながらも上々と言えよう。
「よーし、もうちょいでここの敵は全員倒せそう……一気に仕掛けよう!」
 敵の数は減り、残す敵も満身創痍。一気に勝負を決めに行くべく、悠理は自信の操れる狐火全てを合体させ、敵陣の中心へと撃ち出す!
「おー、面白そうでごぜーますね。合わせるでごぜーます」
 それを見たティティモルモは古代の戦士へ指示を飛ばす。残る力を尽くした、炎による全力攻撃だ。
「いっけええええ!!」
 悠理の一声と共に、巨大な狐火と古代の炎が同時に泥人たちの中心へと着弾。まるで特撮のようなド派手な大爆発を起こし、この一帯での戦いに幕を引いたのだった。

 残る敵戦力は僅か。猟兵たちの戦いも佳境へと突入しようとしていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ナノ・クロムウェル
私の邪魔をするなら容赦はしません。
「翠炎剣」を使って強行突破です。
数が多くても「なぎ払い1」でばったばったと倒して見せます。
とはいえ足場が悪くて障害物も多い場所です…。
背中に背負った「ガジェット」から「属性攻撃2」を用いて電撃攻撃も出来るようにしておきます。「マヒ攻撃2」もありますので痺れさせたところを剣で叩き潰しましょう。

劣勢になったらユーベルコード「翠炎悪魔」を使用しましょう。
これで一気に殲滅し、戦況を持ち直します。




 未だ戦闘の続く廃工場。その一角、多くの鉄骨が放置された資材置き場らしきエリアにおいても戦う猟兵がいた。
「私の邪魔をするなら、容赦はしません」
 その言葉と共に猟兵━━ナノ・クロムウェルは手にした大剣で一体の泥人を叩き潰す。
 彼女が振るうは鮮やかな翠に輝く炎を纏いし巨大な剣。翠炎剣と呼ばれるその大剣は地獄の炎でも溶けることのない耐久性、翠炎の力による破壊力を併せ持つ名品であった。
 一振り、二振り、三振り。翠炎剣が閃く度、翠に輝く火の粉と共に敵の生命をも散らせていく。
 戦闘で傷を負った泥人はたまらず積まれていた鉄柱の影へ隠れようとするも。
「みすみす逃がすとお思いですか?」
 ナノはその行動を見逃さない。背負っていたガジェットを瞬時に引き抜き、電撃機構を起動。麻痺効果を持った電撃を放ち、動きを封じてから翠炎剣で叩き潰す。
 相手が動かなければ足場の悪さも障害物の多さも関係ない。二種の武器を効果的に使い分ける事で被害を最小に抑え、かつ効率的に敵数を減らす戦法だ。
「ふぅ……これでまた一体」
 自分と近い位置の敵を全て倒した事で一瞬緊張の糸が途切れる。軽く息を吐き、体に溜まった熱を外へ出した所でもう一度気合を入れ直し、再び戦闘へと集中する。
 さて、残る敵は何体だっただろうか?状況認識の更新をすべく辺りを見回した所で気付く。
 残る敵は三体。そのいずれもがまるで野球の投球フォームのような姿勢を取り、何か攻撃を仕掛けてこようとしているようだ。三方向からの同時攻撃への対処は現状だと少し難しいと判断したナノは奥の手を切る。
「……ここからは手加減できませんから」
 ぼそり、と。ナノがそう呟くと同時、残る泥人たちは同時に透明な体組織をナノへと飛ばす。複数方向からの不可視攻撃。通常手段であれば回避困難な状況に、泥人たちの攻撃がナノへ届くかと思われたその時。
 ぼう、と。ナノの体が翠の炎に包まれる。鮮やかに燃え上がるその炎により泥人たちの放った体組織はあっさりと蒸発し、ナノ自身も焼き尽くされていくかに見えた。
 ……しかし、すぐにそうではない事が分かる。彼女が燃えているのではなく、彼女が燃やしているのだ。燃えたように見えた体は機械と化し、その各所から翠炎を噴き出している。
 これこそが彼女の切り札。ユーベルコード『翠炎悪魔』。
 その姿の恐ろしさ、悍ましさたるや。まさに悪魔の名を冠するに相応しいだろう。
「………」
 数瞬の沈黙の後。ナノの変貌に驚き、動きを止めていた泥人の1人が我に返ったように体を震わせ、再度攻撃を行うべく動きだす。━━それが、致命的な行動とも知らずに。
 翠炎を揺らめかせたナノの瞳が"動いたもの"を捉える。
 ……打撃音が三度響く。そして、戦場は静寂に包まれたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ベリア・ストライク
(SPD判定)

廃工場ってことは入り組んだ場所になるのかね
地形を活かした戦い方をするか

【目立たない】、【フェイント】、【早業】で
敵の死角から素早く攻撃対象に接近する
廃材や機械を登り、人形を使って壁を伝い狙い撃つぜ

「ぞろぞろとおいでなすったな」
人形のカローレを駆使してプログラムド・ジェノサイドから確実に一人ずつ始末する

一箇所に固まっていたらどうしようもないが
そうでないなら孤立している敵から一体ずつ確実に仕留めよう
他の奴と協力して集中撃破も悪くねぇ


それにしても……こいつら、元々は人間だったのか?
だとしたら哀れだぜ
俺たちの手で楽にしてやる!




 それぞれの戦場でそれぞれの決着がついていく。猟兵とオブリビオンの戦いは終息へと向かいつつあり、残る泥人も僅か。
 高さ3m、横幅と奥行き2mはあろうかという大きな機械が整然と並ぶ区画。機械の上に陣取り、獲物を探す二つの影があった。
 一人は猟兵、ベリア・ストライク。赤い目を細め、鋭い眼光で索敵を行っている。
 もう一つの影は彼の相棒たる人形『カローレ』だ。コウモリをモチーフにした戦闘用の人形であり、ベリアの身長をも超える大きさを持っている。
(最初はぞろぞろと数えるのも面倒になるくらいいたもんだが、もう残ってるのは数体が集まってる集団が少しってトコか)
 ある時は孤立していた敵を奇襲し、ある時は別の猟兵と共闘し、既に幾らかの敵を始末してきたベリア達は、開戦当初と比べて明らかに接敵頻度が減っている事を感じていた。
(っと、ようやくお出ましか)
 そんな思考を遮るかのように、泥人たちの集団がベリアのテリトリーへと現れる。
 数は4体。別の戦場から撤退でもしてきたのか、傷ついている個体もいる。きょろきょろと辺りを見回し、おっかなびっくりといった感でこちらへと向かってくるようだ。
「どっかでボコられて軽い恐慌状態にでもなってるのか。まァ、好都合だ。今楽にしてやるよ」
 そんな呟きと共に、二つの影は別々の方向へと跳んだ。

「さて、まずは軽く一体いっとくか」
 周囲の地形を利用し、目立たないよう敵集団の後ろに回り込んだベリア。
 怯えた状態の敵だからこそ、周囲への警戒は過剰とも言える程に行っている。故に、フェイントを用いてまずは其処を突く。
 その辺りに散乱していた小さめの鉄塊から手頃なものを手に取ったベリアは、それを敵の後方へと無造作に投げ込む。
 ごつん。地面に落ちた鉄塊が鈍い音を響かせる。驚いた泥人たちが一斉に振り向き、過剰ともいえる警戒の全てを鉄塊へと向けた、その瞬間。
 物陰から突如として飛び出した黒い影が、集団の先頭に居た泥人の首を腕から出した暗器━━隠し刃でスパリ、と落とし、そのまま別の物影へと潜む。
 ばちゃり。首を落とされた泥人は液状へと戻り、地面に広がっていく。後方の鉄塊に気を取られていた者達が、今度は前方へと視線を戻す。そこで広がる惨状を目にした彼女たちが、悲鳴を上げかけたその時。
 ばしゃん。今度は後方から音が響く。前方に注意が移った隙に、再び物陰から奇襲を仕掛けたカローレが最後方に位置していた泥人の首を落としたのだ。正に一瞬の早業と言えよう。
 詳細は分からないが、自分達が何者かの攻撃を受けている。残る二人の泥人たちはようやく事態を理解したが、時既に遅し。
「サヨナラだぜ」
 最早隠れる必要も無し。泥人の前に姿を現したベリアはカローレを繰り、最後の攻撃を仕掛ける。
 かつて行った修練。その中で何千、何万と繰り返し、脳に刻み付けた一連の流れ。
 突進からの肘打ち、頭部を狙って打ち上げる掌打、浮いた所へ追撃の浴びせ蹴り。全ての打撃に隠し刃のおまけ付きだ。
 寸分の狂いも無く正確に行われる超高速連続攻撃。これが彼の切り札。『プログラムド・ジェノサイド』。
 あっけなく散った三人目の泥人を見た最後の一人は動かなかった。目の前にある絶望を前に、動けなかったのだろう。
「……せめて楽に殺してやるよ」
 ベリアの言葉と共にカローレが動き、マントを閃かせると共に最後の泥人も崩れ落ちる。
 残るは静寂。どうやら、この個体が最後だったらしい。
「終わったか。まァ、まだ敵の親玉が残ってるだろうし、一回他のヤツとも合流するか」
 そう言うと、惨劇を作りだした二つの影はその場を後にするのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『膨らむ頭の人間』

POW   :    異形なる影の降臨
自身が戦闘で瀕死になると【おぞましい輪郭の影】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    慈悲深き邪神の御使い
いま戦っている対象に有効な【邪神の落とし子】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    侵食する狂気の炎
対象の攻撃を軽減する【邪なる炎をまとった異形】に変身しつつ、【教典から放つ炎】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 泥人たちとの戦闘は終結した。しかし、猟兵たちの戦いが終わった訳ではない。
 各々の状況確認の為、或いは傷の治療の為。廃工場内でも比較的広く、障害物も少ない開けた空間に集まった猟兵達。今後の方針や、敵首魁の行方などについて話し合っている所へ。
「やれやれ。私の留守中にこうも派手にやられているとはね」
 声が、響く。まるで地獄の底から聞こえてくるかのようなその声は、音源がどこかをまるで特定できず、空間全体に話しかけているかのよう。
「手駒を消され、ブレスレットの生産にも大幅な影響が出る。販売員も捕らえられた。……どこの組織の手回しか知りませんが、我々に刃向かった罪は重い。全員、ここで死んで頂きましょう」
 そこで猟兵たちは唐突に気付く。
 目の前に、"ナニカ"が立っている。
 まるで最初からそこに居たかのように。そう在る事が当然であるように。
 ソレは其処に居た。
 人の形を取ってはいるものの、奇妙に膨らんだ頭を持つソレは手にした書物を開きながら猟兵に告げる。
「では処刑を始めましょう。本当の恐怖というものを教えてあげますよ」
 行方不明に端を発する一連の事件。その最後となる戦いが始まろうとしていた。
デナイル・ヒステリカル
貴方には貴方の動機があるのかもしれませんが……。
貴方の行動で苦しむ方がいました。
貴方を見過ごすことで苦しむ方もいるでしょう。
だから、
「僕は僕の動機(プログラム)に則り、貴方を排除します」
「くたばれ、ヘンテコ頭」

いち速く行動します。
ユーベルコードを使用して機械兵器を召喚、【先制攻撃】【範囲攻撃】【一斉発射】
もちろん打倒を目的としますが、敵の実力が未知数なので結果がどうなるかは分かりません。
最悪、牽制として機能すれば良いと考えます。

電脳ゴーグルを使用して敵の攻撃の予兆を【情報収集】し、仲間の猟兵の攻撃の終わりに【援護射撃】を差し込みます。
「思い通りには、させませんよ…!」
※他の猟兵の方と協力します


火奈本・火花
「本当の恐怖だと? 笑わせるな。実働を手下に任せ、手勢を整えて……お前は旅行にでも出ていたのか。そんなお前が、恐怖を知っているとは思えんな」

■戦闘
言葉を喋る程度の知性はあるようだし、情報を聞き出せるかも知れないな
まずは「先制攻撃」と「クイックドロウ」によって機先を制したい
奴の意識を私に向けたら、なるべく引き付けて尋問術の鋼糸を確実に当てられるように「誘き寄せ」たいな。拳銃での損傷が軽微なら、それに愕然とする様子を見せる事で誘えないだろうか

捕まえた後は強気にいって構わない
「さて、聞きたい事は多いが、重要な事を聞こう。失踪した人々は無事か? そしてあのブレスレット、どうやって作成方法を知った?」




 挑発的な言葉を猟兵たちに投げかけた異形の者は悠然と書物に目を落とす。その所作には絶対的な自信があり、自身が負けるハズが無いという確信を感じさせるもの。一対多という状況下においてもこれ程の余裕。そしてその身に纏う不気味な雰囲気が対峙する者に耐え難いプレッシャーを与えてくる……!
 しかし、ここまで戦い抜いてきた猟兵たちがその程度の圧力で屈するはずもない。目の前に立つ不遜な侵略者へと鉄槌を下すべく、真っ先に動いたのは二人。
 一人は電脳空間を自在に操る猟兵、デナイル。
 娯楽施設の案内役サンプルとして創られた彼は人に対して友好的だ。目の前の敵を生かしておく事で苦しむ者達が出る。それは許容できない。
「貴方の思い通りにはさせませんよ……!」
 眼鏡の奥から決然とした瞳を覗かせ、彼は自身が持つ力を解放。100体もの数に及ぶ機械兵器を召喚し、その暴威をいち早く人類の敵へとぶつけるべく指示を飛ばす。
 もう一人、ほぼ同時に動いたのはエージェント・火奈本。日々UDCアースで起こる無数の事件を解決に導いてきた彼女にとって今回の相手も明確な敵だ。我が物顔で目の前に居座る過去の遺物に対し、侮蔑とも怒りともとれる視線を投げかけた火花は。
「本当の恐怖だと?笑わせるな」
 そう吐き捨てた直後。彼女は愛用の自動式9mm拳銃を抜き放ち、即座に射撃を開始する。一切の淀み無く、流れるように行われる攻撃。並の者であれば自身が攻撃を受けたと理解する間も無く地面へと沈む事になるだろう。
 この戦場で最初に動いた両者は共に相手の先を行く事を得意とする者達。先手必勝、それは相手が強大な力を持つオブリビオンであろうと代わりは無く、この戦術は正しく効果を発揮する。
 火花の放った数発の弾丸が膨らんだ頭へと吸い込まれるように命中したと同時。デナイル率いる機械兵器団が放ったミサイルが頭上から降り注ぐ。閃光、爆炎。朦々と砂煙が舞い上がり、辺りを覆い隠す。
 正確に急所を狙った攻撃と広範囲にわたる回避を許さない攻撃という二段構え。これがただの攻撃であったならば、この敵は恐らく何らかの対応を行っただろう。しかし、これはただの攻撃ではなく、先制攻撃による不意打ち。油断していた膨らむ頭の人間は性質の異なる二種の攻撃に対し全く何の反応も出来ぬまま直撃を受けてしまったのだ。
「くたばれ、ヘンテコ頭」
「……この程度か。実働を手下に任せ、自分は現場を留守にする。そんなお前が本当の恐怖など知っている訳が無かったな」
 各々の攻撃の効果を確信した二人はそれぞれに言葉を漏らす。
 そして、勝利を確信しているといった風に前へと歩み出す火花。そんな彼女の耳にあの地獄から響くような声が届く。
「……どうやら、あなた方を少し甘く見ていたようですね。認めましょう。これは"処刑"ではない。対等な敵と行う"戦い"だ」
 砂煙が晴れた時、そこに居たのは異形であった。身体のあちらこちらから邪なる炎を噴き出し、その炎を身に纏い。右手は千切れ飛んでいたが、左手は依然として彼の教典である書物を手にしていた。
「やはり一筋縄ではいきませんか……」
「馬鹿な、あれだけの攻撃が直撃したというのに……!」
 デナイルはやや表情を硬くし、呟く。これも想定通りではあるが、ここで終わってくれていれば良かったのにと思ってしまう。
 一方、驚愕といった表情を浮かべ、一歩後ずさる火花。
 そんな二人を一瞥した異形はぶつぶつと何かを呟くと、その声に呼応するかの様に異形の傍らの空間に歪みが発生。そこから邪神の落とし子たる無数の触手が顔を覗かせる。
「では……始めましょう」
 異形が楽し気に言葉を紡ぐと、触手たちが彼の右肩へと殺到。まるで彼の右腕の代わりとなるように"接続"され、ぐねぐねと蠢く。
「さぁ、まずはあなたからですよ」
 敵の変貌を目の当たりにし、俯いたまま動けないでいる火花へと駆けだした異形は右手の代わりとなる邪神の落とし子たる触手を操り、彼女の体を拘束すべく触手を伸ばす。
 その魔手が火花に届かんとした正にその時。
「1番目に欲しいのは真実。2番目に欲しいのは嘘吐きが苦しむ顔。お前はどちらを選ぶかな?」
 呟き、顔を上げる火花。その顔から驚愕の表情は消え、代わりに浮かべるのは冷徹な戦闘者としての表情。そう、彼女の行動は計算ずくだった。全ては敵の油断を引き出し、自身の間合いへと敵を誘き寄せるため。
 今度は異形が驚愕の表情を浮かべる番だった。火花の指が軽く蠢いたと同時、触手が彼女の体を拘束するよりも先に異形の体が拘束されていたのだ。
「何……!?」
 彼を拘束しているモノの正体は特殊な自白剤を塗布した鋼糸。火花のユーベルコード、『拘束式尋問術』だ。
「さて、聞きたい事は多いが、重要な事を聞こう。失踪した人々は無事か? そしてあのブレスレット、どうやって作成方法を知った?」
「ふん、そんな事はあなたの知るべき事では無い……ぐっ!?」
 当然といった風に答えた異形の体に鋼糸が食い込み、鮮血を迸らせる。質問が二つという事もあり、必殺の威力とは行かなかったものの、その攻撃は確かなダメージを与えていた。
「いい顔だな。侮っていた相手に拘束される気分はどうだ?」
「いい気分ではない、な!」
 煽り文句に答えた言葉は真実だったか。今度はダメージを受けることなく言い切った異形は自身に纏った邪なる炎を燃え上がらせ、鋼糸を焼き切る。
「この屈辱、返させてもらうぞ」
「おっと、それは返品お断りですよ。代わりに僕からも贈り物を差し上げましょう」
 怒りに任せて邪神の落とし子を振るおうとした異形の前から火花が飛び退くと同時、再びミサイルの雨が降り注ぐ。火花の攻撃終わりのタイミングに合わせたデナイルの援護射撃だ。
「どこまでも愚弄してくれるッ……!」
 爆炎の中、怒りを露わにした異形が全身に纏った炎を燃え上がらせながら、自身から最も近い距離に居た火花へと突進する。その勢いのまま右手の触手を振りかぶろうとする異形だったが。
「その攻撃は右に避けて下さい!」
 デナイルの声が飛ぶ。彼はここまでに行われた敵の攻撃の予兆の情報を収集し、解析している。一度見た攻撃であればその発動前に察知し、仲間へと警告する事も容易い。
「了解した!」
 デナイルの指示に従い、火花は右へと飛んで触手の攻撃を回避。激昂した異形は二度、三度……幾度も触手での攻撃を試みるも、その全てが躱されていく。
 的確な指示とそれを実行するだけの身体能力。二人の長所を活かした回避方法の前に、怒りに囚われた異形の単調な攻撃では届かない。
 異形による怒涛の攻撃が終わった時、そこに立っていたのは息を切らせた異形と、全く無傷の猟兵二人であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ナノ・クロムウェル
私は真の姿となって対峙しましょう。
私の真の姿はサイボーグであることが強調された力の証…。
そしてユーベルコード、「先導者たる翠の歯車」を発動します。
さあ、私の生み出した炎と武器を喰らい…その力を見せ付けてください。
…これは巨大な剣ですね
振り回すのも一苦労ですが…私の身を守る盾にもなります
そして翠炎が剣戟と共に噴出するこのガジェットで…邪神の落とし子共々薙ぎ払いましょう
貴方がばら撒いたブレスレットを作った罪がこれに宿っていると思いなさい


ティティモルモ・モルル
はー……やっと親玉が出てきたですか。
これを倒せばお仕事終わりのひと眠りでごぜーます、がんばりましょー。

うー、でもさっき少し運動したんで疲労感が心地良い睡眠に誘ってくるでごぜーますよ……。
うー、うー……他の猟兵さんもいるんで戦力も十分……。
ちょっとだけ……一瞬休めるためにちょっとだけ目を閉じ……ZZZ。
(オフトゥンにくるまりマクラァンを抱きしめ快眠)

(歌うような寝言が次第に漏れ出せば、呪いとして敵へ飛ばす)
「Vulgtm vulgtm cgotha fhtagn」
(己が意識の深層にて、夢に潜むUDCと共鳴して発動する、【祈れ、祈れ、我等が夢で】。技能:封印を解く・歌唱・高速詠唱・全力魔法)




 猟兵たちに有利な状況で切って落とされた開戦の火蓋。単独で、あるいはコンビネーションを組んで戦う彼らは邪なる炎を纏う異形へと着実にダメージを与えていく。
 しかし敵もさるもの。ただで倒れてくれるハズもなく、その猛攻によって戦況を五分へと引き戻さんとしていた。
「はー……やっと親玉が出てきて、これを倒せば眠れると思ったんですがねー……」
 時折飛んでくる邪なる炎をオフトゥンで撃ち返しつつ、ぼやくティティモルモ。
「うー……さっき運動した分の眠気がぐっとくる……夢の世界に誘ってくるでごぜーます……」
 内なる衝動との戦い。人間の三大欲求にも数えられるものの誘惑は耐え難く、いかな強者であっても抗い難いものだ。ティティモルモも無論例外ではなく、睡魔という最強の敵を前に、彼女の瞼は確実に耐久力を削られていた。
 ティティモルモが己自身との激戦を繰り広げている一方、最前線で異形との死闘を繰り広げている猟兵が居た。
 体の大部分を機械化させ、右目からは翠の炎を揺らめかせたサイボーグ━━ナノ・クロムウェルだ。
 真の姿を解放した彼女はサイボーグとしての力の象徴でもあるその機械の体を巧みに制御し、異形の猛攻を凌ぎながら互角の戦いを行っていた。
 翠炎剣を振り回す事で異形の触手を斬り捌き、あるいはサイバーアイを駆使して敵の攻撃動作を分析して回避し、その間の僅かな隙を見つけては着実に攻撃を重ねていく。
「貴方が作りだしたブレスレット。そして貴方自身も許す訳にはいきません。ここで止めます、必ず」
 確かな殺意を持って敵の頭部へと剣を振り下ろすナノ。対する異形はその一撃を"噛んで"受け止めた。
「……ッ!」
予想だにしない防御方法に驚き、生じる一瞬の隙。そこへ邪神の落とし子による攻撃を
差し込む異形。腹部に走る痛みに怯まず、一度飛び退いて距離を取ったナノは。
「今のままでは威力が足りない……それなら」
 精神を集中し、ここではないどこか別の空間にアクセスする。異空より"翠炎と自身の武器を喰らう巨大ガジェット"を召喚するという『先導者たる翠の歯車』。出し惜しみは不要、この技で喚び出した魔導蒸気機械を以て、全力で叩き潰すのみ。
「集いし歯車よ…我が武と炎を喰らい翠に輝くその姿…現出し先導せよ!」
 瞬間、彼女の持つ翠炎剣が激しく燃え上がる。その翠炎はまるで天まで焦さんという勢いを持ってごうごうと燃え上がり……そして、その内に吸い込まれるように消失する。
 後に残ったのは巨大な剣。使い手たるナノの身の丈を超える大きさを持ったその剣は各所に歯車による謎の機構が施されている。
 ガチリガチリ。歯車がゆっくりと回転する音が辺りに響く。
「ほう……まだ力を隠していたとは」
 さも感心したといった風に言う異形を一瞥すると、彼女は告げる。
「ここからが本番です。行きますよ」

 ……ナノと異形の死闘が続く傍ら、もう一つの戦いにも決着が着こうとしていた。
「はー……ねむてーです……」
 今や異形の注意はナノへと向いており、戦場の隅でオフトゥンとマクラァンを抱えるティティモルモへのマークは完全に外れていた。
「ちょっとだけ……一瞬休めるためにちょっとだけ……」
 今ならば。今でこそ。
 仲間の作ってくれたこの瞬間、この好機を無駄にするわけにはいくまい。であれば、やるべき事は一つ。
「おやすみ……でごぜーます……」
 マクラァンを抱えた彼女は神速でオフトゥンへと包まり、即座に安らかな寝息を立て始めた。その行為が己が内に眠る何かの封印を解き、同調する行為であるとは……知っているのかいないのか。

 一方でナノ対異形の戦闘。
 喚び出した身の丈を超える程の剣状ガジェットを自在に操り、膨らむ頭の人間の繰り出す邪神の落とし子を薙ぎ払っていくナノ。ガジェットの性質的に守りは万全。しかし、武器の巨大さ故に攻撃が大振りとなり、直撃を狙う事は以前よりも難しくなっていた。
「一撃でも当てられれば……」
 異形の放つ邪なる炎をガジェットを盾にする事で受け止めつつ、この状況の打開策を模索する。一瞬でも敵の動きを止める事が出来れば……
「Daals gllgj……」
 唐突に声が響く。まるで歌うようでありながら、正確で素早い発音。その声に込められているのは呪詛。自身に害なす存在を夢の世界へと送る呪い。全くもって悍ましい、冒涜的な呪言。
「……!何だ、これは……」
 異形の攻勢が緩む。その膨らんだ頭を左右に振り、声の主を探す。やがて、気付く。その声はオフトゥンに包まった黒い液体……ティティモルモから漏れ出す寝言である事に。
「そこかッ……!」
 教典から邪なる炎を迸らせ、異形が叫ぶ。
「Puglw gajpa yfofa woclam」
 だがもう遅い。放たれた呪いは精神を蝕み、対象に絶え間ない眠気と悍ましき悪夢を与える。今さら攻撃を放ったところでそれを止めることは出来ない。
「Vulgtm vulgtm cgotha fhtagn」
 ぐらり、と異形の体勢が崩れる。一瞬。ほんの一瞬ではあったが、彼は確かに眠りに落ちてしまったのだ。━━悍ましき悪夢へと。
 その瞬間を見逃す訳が無かった。虎視眈々と攻撃の機会を窺っていたナノは自身の全力を大剣型ガジェットへと集中する。
 がちがちがちがち。歯車が回転速度を上げる。
「……貴方がばら撒いたブレスレットを作った罪がこれに宿っていると思いなさい」
 言葉と共に振るわれる暴力的な一撃。極大の翠炎を噴き出しながら振るわれた全力の一撃は異形の体を確実に捕らえ、その胴に大きな傷を刻む。
「ぐっ、おおおおおおおおおお!?」
 壮絶な痛みに我を取り戻し、飛び退く異形。しかし、その体にはもはや軽視できない程の損害が与えられていた。

 敵が一旦下がった事により生まれた時間。その間に援護への礼を伝えるべく、ナノはティティモルモへと視線を向ける。
 ……彼女はオフトゥンごと燃えながら転げまわっていた。そう、異形が苦し紛れに放った一撃はしっかり命中していたのだ。
 慌てたナノが鎮火作業に参加したおかげもあり、炎は程なくして鎮火した。オフトゥンはどういう訳か無事だったらしい。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ベリア・ストライク
やっと真打ちのお出ましかい
ふざけた頭だが油断ならねェな
気を引き締めてかかろう

<SPD判定>
落とし子だぁ?チッ、面倒くせェな
こっちの攻撃に合わせて戦うタイプみたいだなぁ
まずは様子を見て【フェイント】を駆使して緩急をつけながら攻防する

戦闘をしながら分析し
【メカニック】、【武器改造】で相手に適した人形の装備を選び作る(カローレに仕込まれた暗器だ)

「相手に合わせた戦いをするのはお前だけじゃないんだぜ」

こちらが敢えて隙を作り、
【カウンター】【2回攻撃】【早業】【見切り】
を使用して一気に押し切る

可能であれば他の猟兵と時間差で多重攻撃を仕掛けよう

「そのフザけた頭、俺とカローレが砕いてやる」


火奈本・火花
「理性と知性は人類の武器だが、それを揺さ振られては元も子もないな。――あぁ、既にお前は人類ではないか」

■戦闘
機先は制したな。後は勢いを保ったままで押し切れるよう、蹴撃乱舞で攻撃を仕掛けよう
重視するのは攻撃力だ
攻撃をしていく中に私自身の「怪力」を織り交ぜて、蹴りで壁に叩き付けたり、或いは柔道のように投げて地面に倒す事が出来ないか試す
UDCとは言え、体勢を崩すことが出来れば攻撃もスムーズには出来ないだろうからな

「人類ではない、この体たらくでは神でもあるまい。……お前は一体、何に成っているつもりだ? クリーチャー」
……優勢とは言えUDCだ、冷静になられてはならない。挑発で少しでも、行動を単調にしたい




 飛び交う攻撃。ぶつかり合う技と技。互いの死力を尽くした両者の戦いは終盤戦へと差し掛かろうとしていた。
 猟兵たちの攻撃により深手を負った膨らむ頭の人間だったが、その攻撃はより激しさを増し、負傷を感じさせない動きで猟兵たちと渡り合う。その烈火の如き攻勢を前に一歩も引かずに立ち向かう者達。
 黒衣を纏った人形を繰って戦うベリアもその一人。彼の巧みな技術により上手く攻撃を回避するカローレに業を煮やしたのか、異形は人形の主であるベリア本人を狙って触手型の落とし子を伸ばす。
 しかし、その攻撃がベリアを捉える事はない。カローレの手首部分に仕込まれた隠し刃により触手を切断されたのだ。
(やっぱりな。触手型の落とし子を使った攻撃にゃ、刃物による触手の切断が有効か)
 彼は戦闘をこなしつつも相手の情報を分析、相手次第で対処を変える変幻自在の戦法を取る人形遣い。必要とあらば武装の改良すらその場でやってのける技術者だ。先に使用した隠し刃も戦闘中に対膨らむ頭の人間用の調整を施してある。
「理性と知性は人類の武器だが、それを揺さ振られては元も子もないな。――あぁ、既にお前は人類ではないか」
 横合いから煽りとも取れる言葉を投げかける火花。先の戦闘で怒りに任せた行動を見せた異形。怒りに囚われた状態での攻撃威力は恐ろしいが、動きは単調かつ読みやすくなる。それを狙っての行動だ。
 その言葉に反応したのか、敵は視線を火花へと向ける。その反応を確認した火花は。
「人類ではない、この体たらくでは神でもあるまい。……お前は一体、何に成っているつもりだ? クリーチャー」
 更なる煽り文句を重ねていく。異形の膨らんでいる頭に怒りの表情が浮かぶ。
「確かに私は人ではない。まして神であろうはずもない。私は代行者。我が神の威光を世に知らしめ、御身を現世に招く者。仇為す者を排し、その屍を以て神座へ届く道を開く者!」
 自身の在り方についてクリーチャーと形容されたことが余程カンに障ったのだろうか。彼は叫び、最後の札を切る。
 異形が手に持つ教典に目を落とし、何事かを呟く。すると、その言葉に応じるように彼の"影"が蠢く。影は不規則に蠢きながらも次第にその体積を増やし、やがて地面から染み出すように現実へと浸食する。
「なるほど、コイツが隠し玉って訳か」
「そのようだ。だが、ここが攻め時だろう。行けるか?」
「もちろん。アンタに合わせる、好きにやりな」
 現れたおぞましい輪郭の影を警戒しつつ行われる短い掛け合い。だが、互いに連携を取るにはそれで充分だった。

「……行くぞ」
 まず動いたのは火花。短針型記憶消去銃と自動式拳銃による射撃を仕掛けながら、一直線に異形へと走る。
 その行動に対応するのは悍ましい影。自身の内から黒い液体状の落とし子を滲ませ、膨らむ頭の人間を守る盾の様な形状に展開。一体どういう事なのか、放たれた銃弾や針は液状である筈の落とし子に阻まれ、地面に転がっていく。
「衝撃には強いみてぇだな。だが、こっちはどうだ?」
 ベリアの言葉と共に火花の後ろから黒マントを纏った人形が飛び出す。火花の真後ろに追従するように動かす事で敵の視界から完全に外し、警戒されることなく接近させていたのだ。
「何……!」
 カローレの手首には隠し刃。衝撃に強いものが斬撃にも強いとは限らない。戦闘人形の放った斬撃が落とし子の盾を斬り裂く。
「道は開いたぜ」
 異形が火花の射程圏内に入る。狙うは大威力の一撃。二挺拳銃を構えた火花が今正に攻撃へと入ろうとした瞬間、二人の間に影が割り入る。
「主を守るため犠牲になるか。見上げた根性だが、勇気を無謀は違う事を教えてやる」
 UDC相手に遠慮も容赦も必要ない。影に何発もの銃弾を叩きこみ、膝蹴りを打ち込む。これが人間であれば悲鳴の一つもあげたのだろうが、相手は物言わぬ影。体勢が崩れた所に追撃の銃弾、続いて足部分を蹴り払い、その勢いのまま回し蹴りを叩き込む。最早影に抵抗の手段は無い。衝撃で吹き飛び、壁に叩きつけられた影に向かい、二挺拳銃の残り全弾をぶち込んでいく。
「お前はこれで終わりだな」
 その言葉が終わるか終わらないかという位に悍ましい影は空気に溶けるように消えていった。
「油断しましたね……!」
 一方で火花の連続攻撃が終わるタイミングを見計らっていたのか、異形が動く。高威力の連続攻撃後故の隙。拳銃の弾丸も撃ち尽くしている。回避は間に合わない。
「あなただけでも葬り去ってあげましょう」
 勝利を確信した風に口元を歪め、火花に飛びかかる異形。しかし、その動きは空中で静止する。彼の表情が今度は苦痛に歪む。
「どうやらその頭はただデカいだけらしいな」
 異形の腹部は貫かれていた。ベリア操る黒衣の人形、カローレの手によって。
「油断だと?警戒する必要が無かっただけだ」
「ぐ、おおおおおおッ!!!」
 嘲笑する火花に届かぬ己を呪ったか。異形は雄叫びをあげ、落とし子を操ろうとする。
「喚くなよ」
 ベリアの指が動き、カローレが応える。突き刺していた腕を引き抜き、落下してきた所へ暗器の針を出した膝による蹴りでもう一度空中へと打ち上げ、狙うはその無駄に大きな頭部。
「そのフザけた頭、俺とカローレが砕いてやる!」
 カローレの上半身が回転する。たっぷりと遠心力を乗せた裏拳が異形の頭部へと打ち込まれ、鈍い音を響かせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティティモルモ・モルル
ひでー目にあったでごぜーます……モルが何をしたと言うですか……。
(床にぺたーっと広がって体を冷ましつつ)

ちょっと怒ったですよ……。
あんたさん、安眠妨害はすごい罪だと教わらなかったんですか。
まぁモルも教わってはねーですが、絶対常識でごぜーますよ。
眠りを笑うもんは眠りに泣くんでごぜーます。
(【バウンドボディ】発動。ぼよんぼよん跳ね回りつつ敵へと迫る)

モルの怒りを思い知れー、です。
覚悟―。
(上手く近付けたなら、まずは前哨戦と同様オフトゥンで引っぱたいて吹き飛ばす。技能:衝撃波)

覚悟―覚悟―。
(吹き飛んだ先へマクラァンを魔力込みでぶん投げて追加ダメージ狙い。技能:2回攻撃・全力魔法)


アレクシア・アークライト
 火奈元さんも来てるのね。ちょっとこれは頑張らなきゃ。(UDC組織的)

 さっき出てきた異形の影。あれは確か、瀕死のときに現れるヤツ。
 ってことは、そろそろ限界の筈ね。一気に畳みかけてやりましょ。

 あいつの注意を分散させるために……うん、わたしはあの鉄柱の上から攻撃しようかしら。(念動力)
 いくら頭が大きくたって目は2つ。前も横も上も同時に見ることはできないでしょ?
 味方への攻撃を邪魔しつつ、隙をあったら念動を叩き込んであげる。(念動力、サイコキネシス)
 あいつからの攻撃は……あれだけ弱ってれば、私の三重フィールドで防げるかな?

 負けを認めるなら教えなさい。
 さらった人達は何処にやったの?




 多数の猟兵を相手に戦い抜いてきた膨らむ頭の人間の体力も限界に差し掛かろうとしていた。今の彼を支えているのは気力、信念、あるいは自尊心と言った精神面に依るものが大きい。
 自分はかの偉大なる神に選ばれし者なのだ。このような所で敗れる事は許されない。
 身体に纏った邪なる炎を猛らせ、異形が吠える。その声に呼応するかのように彼の傍らに再び現れるおぞましい輪郭の影。
 ━━━猟兵対オブリビオン。最後の激突が始まろうとしていた。


 最後の力を振り絞り、おぞましい輪郭の影を再召喚した異形と対峙する猟兵たち。その中にアレクシア・アークライト(UDCエージェント・f11308)の姿もあった。
 彼女は一見普通の少女のように見えるが、実は身体能力や超能力の強化を施されたサイボーグだ。外見のみを見て侮ってはいけない。
「さっき、そしてたった今も出てきた異形の影。あれは確か、瀕死のときに現れるヤツ……」
 アレクシアは冷静に敵情を観察しつつ、異形の傍らに現れた影にも視線を巡らせ、思考する。
「ってことは、そろそろ限界の筈ね。一気に畳みかけてやりましょ」
 ここまで追い込んだのであれば、あとはもう押して押して押しまくるのみ。攻撃は最大の防御とも言う、ここは攻勢を持続するのが有効。
 しかし、眼前の敵からは一切の慢心や油断を感じない。追い詰められた者ほど危険な存在は無いのだ。正面から戦いを挑めばこちらも大きな損害を被る事は必至……
「……隙が無いなら作ればいいのよ。どうにかしてあいつの注意を分散できれば……」
 そう呟いたアレクシアは視線をある方向へと向ける。そこには、やや傾いてはいるもののそれなりの高さに届く鉄柱があった。

 一方その頃。
 最前線から少し離れた位置で床にぺったりと広がって水溜りの様になっているブラックタールが居た。
 そう、少し前の戦闘で燃やされたティティモルモだ。
「ひでー目にあったでごぜーます……モルが何をしたと言うですか……」
 オフトゥンこそ無事であったものの、彼女は安眠を妨害されてしまったのだ。しかもちょっと身体が焦げた。かような大罪が許されるのだろうか。
━━━否、断じて否。地獄の悪鬼に勝るとも劣らぬその所業、誰が許してもこのティティモルモが許さない。
 眠りを笑う者は眠りに泣く。安眠妨害すごい罪。世の常識(ティティモルモ基準)をかの傍若無人たる異形に講釈せねばなるまい。
「常識知らずにはおしおきが必要なのでごぜーます……」
 体は冷えた。されど心は燃えた。
 怒りと眠気を胸に秘め、飛んで跳ねるは黒液少女。目指すは一点、異形の元へ。不逞野郎をぶっ飛ばし、世界に平和(と安眠)を取り戻せ!


 異形と猟兵が睨みあい、どちらも動かないという状況。異常なまでの緊迫感を持つ場の静寂を破ったのは気の抜けたような、しかしその中に若干の怒りを滲ませた声。
「うおーモルの怒りを思い知れー」
 異形がその大きな頭を声の主へと向ける。彼が見たものは、バウンドボディによってびよんびよん伸びたり縮んだりしながら猛スピードでこちらに向かってくるティティモルモの姿。
 一見すると無謀な突撃。しかし、その姿には妙な迫力と凄みがある……!
 なんだか分からんがやばい。異形の本能がそう告げる。
 彼が傍らの影に指示を飛ばすと、影は何処からか槌状になった落とし子を呼び出し、構える。ティティモルモの到着に合わせ、かの落とし子を叩きつける算段だろう。
 しかし、その様子を見てもティティモルモは止まらない。己の信ずる正義の為、止まる事は許されないのだ。
 飛ぶ黒液。待つ影。両者の距離が縮まり、いま正に接触せんとした時━━━唐突に影の姿が消えた。
 いや、消えたのではない。まるで上から巨大なハンマーで叩き潰されたかのように地面へと押し付けられ、その体を圧縮されていた。
「上から来るぞ、ってね」
 その怪現象の原因は、仲間を援護するために異形からやや離れた位置にある鉄柱へと登っていたアレクシアだった。彼女の放ったサイコキネシスが影を上から押さえつけたのだ。
「私がこいつを抑えてる内に決めちゃって!」
「合点」
 最早ティティモルモを止めるものは無い。彼女は近づいた勢いのままにオフトゥンで異形をぶっ叩く!
「いざ尋常にー覚悟ー」
 邪な炎もなんのその。UDCの謎パワーを宿したオフトゥンで叩かれた異形はあえなく吹き飛んでいく……その先に居るのはアレクシア。
「いいパスね。でも、こんなの要らないから返すわよ」
 精神を集中し、力場を纏う。この状態であれば格闘戦もお手の物だ。彼女は強化された身体能力を存分に活かし、異形の大きな頭を思いっきり蹴り飛ばす。
「これで最後。過去に送り返してあげる」
 再びティティモルモの方へと飛んでいく異形に対し、アレクシアはダメ押しとばかりにサイコキネシスによう攻撃を放つ。
「覚悟ー覚悟ー」
 一方のティティモルモもオフトゥンでぶっ叩いただけで終わるつもりは全く無かった。全力の魔力を込めたマクラァンを構え、異形へ向かいぶん投げる!
 二人の猟兵による全力攻撃。それらは空中に居た異形へと同時に直撃し━━━ド派手なな大爆発を起こしたのだった。


 勝負は決した。虫の息で倒れ伏す異形に対し、アレクシアは問う。
「負けを認めるなら教えなさい。さらった人達は何処にやったの?」
「さぁ……それこそ"神のみぞ知る"と言った所ですね……くくく……」
 異形はそう告げるとやがて動かなくなった。その膨らんでいた頭は徐々に萎んでいき、やがて人間の頭へと戻っていく。
「…………」
 彼の言う神とは即ち邪神。それのみが知っているという事は、つまりさらわれた人たちは既に生贄に捧げられてしまったのだろう。
 とはいえ、事件の元凶は消えた。これ以上の生贄は出ることがなく、それによる邪神の召喚も未然に防げたと言っていいだろう。
「……まー、難しい事はとりあえず寝てから考えるでごぜーますよ」
 少し熱くなった体を冷たい地面に広がって冷やしつつ、ティティモルモはそう呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月05日


挿絵イラスト