恋に薔薇を、花泥棒に死を
●命短し恋せよ乙女
貧しい村だった。だがそんなものはこの世界では珍しい事ではない。しかしながら、人は未も生きている。人と人との営みの中、生まれる喜びもある。
セシリアにとって、それは初恋であった。だが愛しい人に贈れる何かを持ち合わせていなかった。
だからこそ、風の噂で聞いたその話は彼女の胸を高鳴らせた。
曰く、「廃城に咲く深紅の薔薇は、それはそれは美しい」と。
セシリアはすぐさまその廃城へ駆けた。愛しいひとに想いを伝えるために―――そう、明日の命さえ定かではない、この世界だからこそ。
だが、彼女は知らなかった。この話には続きがあることを。
曰く―――「廃城の薔薇を摘もうとした者は、誰一人として帰らない」ということを。
●薔薇は誰が為に咲くのか
「長らく潜伏し姿を見せなかったオブリビオンを撃破する機会が巡ってまいりました」
オクタ・ゴート(八本足の黒山羊・f05708)は集まった猟兵達に、次々資料を配布していく。その表紙に印刷されているのは、陰鬱に垂れ込める雲と荒れた大地、ダークセイヴァーである。
予知によれば、ある一人の女性・『セシリア』が、とある花廃城の庭園に薔薇を取りに向かうという。その庭園に咲く薔薇は実に美しいものであるそうだが、同時に向かったものが二度と帰らないという曰くも付いている。
「そして、この廃城に潜むものこそ、オブリビオン『悟道』です」
悪を断つ気高き黒騎士の愛剣。そこに宿った魂は、しかしオブリビオンに堕ちたことで、誇りは捩れ、ただ斬るモノを待つ狂気に塗れている。今なお廃城の何処かに潜み、自らの塒に訪れる者を待っているのだ―――主なき庭園の花を摘む者を盗人に見立てて、己が「正義」の元断罪するために。
「まず皆様には廃城の庭園に向かいセシリア様を保護して頂きます。しかしながら庭園は広大。そして、長らく手入れされていないせいでしょうか、絡む蔦や荒れた庭木によって捜索は一筋縄ではいかぬでしょう。その後、館へと突入し『悟道』を討伐する―――異常が作戦の全容です」
グリモアを繰り、ゲートを開くオクタ。その眼差しはどこか遠くを見ている。
「セシリア様は、どうやら想い人に好意を伝えるべく花を探しているのだそうです。私は恋心というものはよくわかりませんが……しかし、それは尊く、美しいものに違いありません」
だからこそ。猟兵達へと向きなおったオクタは深く頭を下げた。
「皆様、必ずや彼女をお救い下さい。世界に生まれた小さな輝きを救う事こそ、我らが使命に他らなないもののはず、ですゆえ」
佐渡
佐渡と申します、今回の舞台はダークセイヴァー。廃城の庭園に迷い込んだ女性の救出、そしてオブリビオンの討伐です。
ダークな世界観に合うシリアス目な文章を頑張りますので、皆様の格好いいプレイングをお待ちしております!
第1章 冒険
『薔薇の檻』
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POW : 気合とパワーで追跡する
SPD : スピード重視で追跡する
WIZ : 賢く効率的に追跡する
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シーラ・フリュー
恋路に障害は付き物、というのは物語ではよく見ますけれど…オブリビオンの犠牲になってしまうのは、宜しくないですね…。
なんとか犠牲を出さずに解決したいです…。
後、どれだけ美しい薔薇なのかとても気になってます…花を見るのは好きな方ですので、少し楽しみです…。
【POW】判定
…多少荒れててもなんとかなるでしょう、多分…。
進む方向は【第六感】頼り。通れる所は無理やり通ります。退かせそうな蔓等は【怪力】で退かしてしまいましょう…!
あ、ですけれどその場合は、棘などには気を付けます。刺さると痛いですし…。
どうしても通れなさそうでしたら…大人しく他の道を探しますね…。
リリカ・ベルリオーズ
POW重視で、
ルビーの宝石の炎で、蔦や草木を焼き払います。
大丈夫、この炎は「愛の炎」ですから、人や動物には影響は及びません。
それに、炎の光でこちらに気づいてくれるはず…。
それらしい人物がいたら、声をかけてみますね。
もしセシリアさんでしたら、どこか安全なところに連れて行って、彼女のお腹が満たされておられないのであればお食事を。
あと、御守りとして…
「救済」のクリスタルを。
●庭に囚われ惑うのは?
猟兵達の眼前に広がる、薔薇の庭園―――だったらしいもの。成程端々に残る装飾の豪華さは相当なモノだ、相当手塩にかけていたのだろう。しかしそれも随分と古い話の様だ。
今や鉄柵には蔦がうねり、伸び放題の薔薇はあちこちに棘の付いた枝葉を伸ばす。趣向を凝らした迷路仕立ての庭木も、今や侵入者を拒む壁に等しい。
「恋路に障害は付き物、というのは物語ではよく見ますけれど……」
シーラ・フリュー(天然ポーカーフェイス・f00863)は、迷い込んだ少女を憂う。仮に彼女の言った通りだとして、オブリビオンによって犠牲になるようなものは乗り越えられる障害を大きく超えている。
なんとか被害を出さずに解決したい、そう思いながらも、彼女の歩みは第六感によるものだった。棘を躱しながら、時折邪魔な蔦は力に任せてどかしていく。だが、庭園は広い。当てのない捜索は、逆に自分自身の居場所さえわからなくなるという結果を生んだ。
どうしたものか……思案するシーラ。だが、何か答えを導き出す前に彼女ははたと顔を上げた。
「―――この臭い」
シーラが辿り着いた時、そこではやはり想像通りの状況が繰り広げられていた。
リリカ・ベルリオーズ(血に染まる白鳥、宝珠に映ろうは食・f12765)によって、庭の一角はぱちぱちと燃え上がる。もうもうと立ち込める煙は、確かに自身の存在を主張するのにも、道を生み出すのにも最適だ。そして、彼女の付けた火は彼女の能力によるもらしい。事実彼女の意志に反する方向へ無秩序に燃え広がる様子はない。
―――しかしながら、それは愚行に他ならない。これ程派手な事をすればいつ潜伏したオブリビオンによって攻撃を仕掛けられるかわかったものではない。そして、何より。
「……っ、今のは」
リリカは耳にする。それは、人の声だ。「やめて」「消えてよ」その声は彼女が切り開いた道の先から確かに聞こえるもの。
慌てて二人が向かった先にあったのは、蔦に囲まれた一角で咲いていた薔薇が、黒く焼け焦げ無残な姿になっている様。そして、その中心で泣き腫らした目でこちらを睨む人物―――セシリアだ。
声を掛けようとした途端、彼女は庭木を潜り抜け姿を消してしまう。
宛てなく彷徨えば、セシリアと同じく出られなくなる。そして、彼女の探す花を傷付けかねない事をすれば、助けに来たと言っても信頼を得られるはずがない。
それでも立ち止まる事はない。気付きを共有し、再び二人は迷路の如き庭園の中へと分け入っていく―――。
苦戦
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須藤・莉亜
「他人の恋路はお酒のツマミになるんだよねぇ。」
僕には無い熱を助けるために、ちっとは頑張りますか。
眷属の狼くんと蝙蝠たちを召喚。彼らにセシリアさんの捜索を頼もう。
狼くんには匂いを頼りに影伝いに進んでもらいながらの捜索を頼み、蝙蝠たちには上からの捜索をしてもらう。
彼らから情報を【動物と話す】で聞きつつ彼女の保護を目指す。邪魔な障害物は悪魔の見えざる手で退かしながら進んで行こう。
狼くんたちが見つけた時に、セシリアさんが危険な状況だったら彼らにフォローしてもらっておこうかな。
「薔薇ねぇ、何本か持って帰るのも良いかなぁ」
部屋に飾ってみたり。
仁科・恭介
「神の怒りに対抗できるのは乙女の思いというけれど…」
と、苦笑いしながら廃城に向かいます。
荒れ果てた城を見てうんざりしますが一刻を争います。
【失せ物探し】も考えましたが相手が人のため埒があきません。
そのため、自分の血に流れる吸血鬼の本能には嫌気がしますが、【吸血】本能で乙女を探すことを試みます。
(できれば欲求が強くなるため、蔦や草木で怪我をしていて欲しくはないと念じてます)
また、ユーベルコードで影達を放ち本体と影達で捜索範囲を広げます。
「流石に思いを伝えることができなくなるのは切ないからね」
とどこか遠くを見るような感じでつぶやきます。
※絡み、アドリブは歓迎です。
●駆ける乙女と追う獣
「おっ、見つけたね」
「ああこっちもだ」
丁度その頃、庭の入り口近くで動かなかった二人の猟兵は、ほぼ同時に保護する対象を発見した。
須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)と仁科・恭介(明日を届けるフードファイター・f14065)は、共にユーベルコードを用いた捜索を行っていた。
莉亜は、眷属である狼と蝙蝠を召喚し、蝙蝠は上空から、狼は庭にはいっての捜索を行っていた。―――当初はセシリアに動きが見られず、どちらも有効な手掛かりを見つけられずにいた。だがセシリアに動きが見られた事で、急速に居場所の特定につながる手がかりを得た。
恭介もまた、狼に似た分体を召喚してセシリアを追跡していた。だが、彼が頼りにしたのは、自分の中に流れる吸血鬼の力。彼はそれを嫌っているが、人を助ける為と割り切り、その痕跡を辿っていた。流血をトリガーに暴走することを、警戒しながら。
だが共に捜索する莉亜の眷属は共に血を追い血を吸うなんとも凶暴な者達。しかし彼らが大人しいということは、どうやらセシリアに怪我はない事の証左でもある。彼女の無事と、自身の決断が正しかったことにほっと胸を撫でおろす。
―――だが、その眷属たちを直接彼女の保護に向かわせることは余り得策ではない。奇しくもこの世界に根を下ろし人々を食い物にする吸血鬼たちの眷属も、狼と蝙蝠である事が多い。であるならば、無暗にそれらを近付ければ怖がられる可能性がある。粗方の位置を絞り、二人は庭の中へと足を踏み入れた。
「他人の恋路はお酒のツマミになるんだよねぇ」
そんな風な台詞を冗談めかして口にしながら、けれど自身にない熱を持つ人物を、ただ無関心に野垂れ死にさせるつもりはなかった。『悪魔の見えざる手』は、草木を丁寧に退かしながら彼の行く道を作り出す。
少々下世話な言葉に苦笑いをしつつ、ふと眼前の庭園、そして廃城を見上げる恭介。正直な話をすれば、この荒涼とした大地にはうんざりする。人々の苦痛と、悪党の愉悦によって成り立つ、この世界に。
「けど、流石に想いを伝えることができなくなるのは切ないからね」
その時彼が見ていたのは、庭か、城か、それとも。
だがすぐに、先行した莉亜を追う。既に、猟兵は彼女に手が届く寸前にまできていた。
成功
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ナハト・ダァト
かくれんぼハ、得意だヨ。
この叡智ハ、人探しに適しているだろうからネ
六ノ叡智
対象半径内で、摘み取って帰りたいという希望を持つ者を探索
声の強くなる位置と方角を探りつつ、追跡を行う
移動
「溶け込む夜」を使用
伸縮性のある体、場合によっては液体・気体と化せるUCを併用して
ショートカットや現在地の把握、距離の離れている相手のコミュニケーション、人物の特定に使う
使用技能
情報収集、世界知識、地形の利用
複雑で手入れされていない庭モ、把握しながら進むヨ
医術
原動力は恋というのガ、予想外に働きそうだけド。
この世界の一般女性の動ける範囲、体力。体格的ニ通れそうな道を選択すべきだろウ。
事前に彼女の情報が集まれバ、活用するヨ
デナイル・ヒステリカル
恋は盲目と言いますか、なんと言いますか
人生に手痛い失敗は付き物ですが、今回は事情が違うようですね
オブリビオンに関係した事件が起きるというのならば、それを防ぐのは猟兵としての責務だと判断します
まず優先すべきは迷い混んだ女性の身の安全です
オブリビオンが彼女を斬るというならば、先んじて彼女と合流することによって、オブリビオンを迎え撃つ事が可能になるはずだと考えました
UC:スワンプマンを召喚して迅速に女性を追いかけて貰うと共に、僕自身も庭園をスキャンして構造図を作成しながら追従しましょう
……移動中は可能な限り薔薇を傷付けないようします
オブリビオンの凶行と、この館には、今のところ何ら関係はありませんから
リーヴァルディ・カーライル
…ん。想い人に薔薇を…ね。
吸血鬼に支配されたこんな世界だからこそ、
彼女の想いを遂げさせてあげたいと思う。
…尊く美しいもの、か。
ならばそれを護る為に戦うのも、悪くない…。
防具を改造して第六感を強化する呪詛を付与。
精霊の存在感を感知し、少しでも正確な情報を見切れるようにする。
精霊石の宝石飾りに魔力を溜め、
精霊使いの礼儀作法に則り精霊を鼓舞して誘惑、
庭園に入った少女が何処に居るか彼らから情報を収集する。
…土の精霊、木々の精。
私達より先に、この庭園に来た娘の居場所を教えて…?
…後、過去の存在の居場所も…ね。
大凡の方向が判明すれば【吸血鬼伝承】で霧に変化。
植物の隙間を抜けて一直線に少女の元へ向かう。
●恋は少女を乙女にするもの
実際に庭の中へ入り捜索していた猟兵達もまた、セシリアを発見し保護の為に彼女への接触を図る段階にまで来ていた。
ナハト・ダァト(聖泥・f01760)は、多数のユーベルコードを併用する事で彼女を捜索していた。生命体の放つ希望を探査しながら、同時に彼は持ちうる知識を最大限に動員し、保護対象者だけでなく庭に生い茂る草木にも目を向ける。更には、自身の身体を変化させ庭木をすり抜けながら進む事で、入り組んだ迷路さえも彼を阻む事はない。
人探しに有効であるとの自負に誤りはなく、彼の『叡智』は惑う乙女を正確に見つけ出していた。他の猟兵達に情報を伝えると、急ぎ救助へと向かう。
「―――ちょっト、予想外だけどネ」
だが、その足跡と歩調などの医学的見地より導き出されたセシリアの像に、ナハト少しばかり困惑していた。
「恋は盲目と言いますか、なんと言いますか」
感情に任せ無謀を侵したセシリアなる人物に少々の呆れを含んだようなその台詞は、デナイル・ヒステリカル(架空存在の電脳魔術士・f03357)の口から発せられたものだ。
やや棘のある物言いではあったものの、しかしオブリビオンに関係する事件を未然に防ぐのは猟兵の責務と感じているのもまた事実。自身の分身である電子精霊たちからの情報を元に、既にセシリアの居場所を割り出している。
それでもなお何故まだ彼女の保護に至っていないかと言えば、彼が薔薇や蔦といった庭園の植物を傷付けずに進んでいるのが大きい。
今のところ、オブリビオンの凶行とこの館には今のところ何の関係もないから。その理路整然としながら「優しい」と言われる思考も、彼にすれば「プログラム」だと答えるのだろうか。
「……もう大丈夫よ」
数多の猟兵達が己が持つ力を用いてセシリアを救おうとする中、一番最初に彼女を保護したのは、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)であった。
想い人へ薔薇を贈る。平和な世界ならいざ知らず、吸血鬼に支配されたこんな世界だからこそ叶い難いその願いを、できるなら遂げさせたい。彼女の中にあったのは、そんな思いだった。
彼女が手にする宝石飾りによって助力を乞うたのは、この庭園に棲む精霊であった。暗黒の中で生きる彼らの力は非常に弱々しいものでしかなかったが、それでも防具改造に第六感、鼓舞に追跡、感知に誘惑まで含めた様々なアプローチを試みたことで、重要な手掛かりを得るに至ったのである。
尊く美しいモノを守るために戦う。忌まわしき敵を刈り取るだけの戦いとは異なるそれに、彼女は何を思うのだろうか。
そして、次々に彼女の元へと集結する猟兵達。そんな彼らが目撃した「セシリア」というのは―――女性、と言われてはいたものの、その実まだ、七、八歳程の、未だほんの少女と言える人物だった。
彼女は次々に現れる猟兵の姿に最初こそ動揺するが、説得すればすぐに敵でないことは理解してくれる。一度悪印象を与えたものもいなくはなかったが、それも話せば理解してくれる。
だが、猟兵達の任務は彼女を救うだけで終わりではない。オブリビオンは、どこにいるのか?
庭園を擁する廃城から声が響いたのは、その時であった。
成功
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第2章 冒険
『関所破壊』
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POW : 力づくでぶっ壊す
SPD : 技術を駆使して分解する
WIZ : 魔法や頭脳でもって崩壊させる
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●執行者
「罪人を庇うのですか、猟兵」
城の最上階から降り注ぐその声は、酷く冷めており、同時に落胆したような響きを持っていた。
「世界の興亡を担う正義の使者だと思っていましたが、失望させてくれますね。やはり、罪を裁くのは私しかいないようだ―――」
意味深な言葉を並べながら声は次第に遠ざかっていく。
不安がるセシリアに安全な所へ隠れているように伝え、猟兵達は城内へと突入する。そこには朽ちながらなお絢爛な装飾や調度品を乱雑に積み上げる事によってできた、巨大なバリケードがあった。
オブリビオンを撃破するためには、まずこれを突破しなければならないらしい―――。
仁科・恭介
「城に侵入した事を罪とせず、花を摘んだら盗人呼ばわりするか。なら、今からやることは相当な罪だろうね」
と、聞こえてきた声に苦笑いしながら反応します。
【POW】
「すぐに行くからね」と冷たく呟き【携帯食料】を大量摂取して筋力をあげます。
その上で【失せ物探し】でバリケードの突破し易い場所を探し力任せに攻撃します。
ただ、罠を仕掛けら考慮して慎重に。
「この作業も見られてるだろうね」
バリケードの撤去をしながら周囲を見回してバリケードが築かれている意味を考えます。
バリケード付近に死体が転がっているようであれば、声の主から逃げようとして築かれたものと判断し、直接攻撃以外の何かを持っていると警戒をはじめます。
デナイル・ヒステリカル
いいえ。
僕は猟兵ですが、正義の使者ではありません。
そして同様に、罪を裁くのはオブリビオンの貴方ではない。
それら二つは、今この世界に生きる人々が担うべき物であると判断します。
ですからセシリアさん。
貴女も村へ戻ったら、今回の一件を良識ある大人に告白し、正当なお叱りを受けるべきです。
それでこの一件は終わります。
此処から先は、猟兵(僕ら)とオブリビオン(彼ら)の問題だ。
押し通らせて頂きますよ。
UC:レギオンを召喚し、全火力を持って【範囲攻撃】でバリケードを破砕します。
ナハト・ダァト
ははハ。
こんなニ素晴らしい庭園ダ、これは共有すべきでは無いのかナ?
私も花畑を管理しているガ…独り占メ。等という寂しい事ハお薦めしないヨ
最モこの意見で対立する辺リ、相いれないネ。
花ハ、また育てればいいだろウ?
それとモ君ハ、花を愛でていル。自分自身ニ酔っているだけじゃないのかイ?
◆バリケード
武器改造
一ノ叡智、「溶け込む夜」
叡智による基礎攻撃力ノ強化
伸縮性を与エ、限界まで触手を伸ばして勢いをつけるヨ
八ノ叡智、2回攻撃
触手を連続デ召喚シ、一束にまとめよウ
一撃の威力に2回分ノ本数を全て重ねル
世界知識、情報収集、地形の利用
バリケードの材質、弱点、脆くなった箇所を見抜キ
的確ニ、無駄のない一撃を叩きつけよウ
リーヴァルディ・カーライル
…ん。私が敵なら賊を相手に礼儀作法を守ったりしない。
このバリケードに目を向けた隙に襲いかかったり、撤去作業の最中を狙い撃ちする…。
事前に【常夜の鍵】を装備類に付与。
改造した防具の呪詛を維持し第六感を強化し、
両目に魔力を溜め、殺気の存在感を視覚化する。
…警戒だけは怠らないように…。
作業に入る前に周辺の警戒。
危険を感じたら即座に【常夜の鍵】を使い転移する事を心がけ、
調度品に触れて【常夜の鍵】の中に収納していく。
他の猟兵と相談し効率良く撤去できるなら、指示に従おう。
…本当の賊になったようで心苦しいけど。
ここで無駄な消耗をするわけにはいかない…。
…まぁ、単に壊すより持ち帰った方が有効活用出来るし…。
●独善を守る壁
眼前に広がる巨大なバリケードは確かに巨大だ。それにその中には相当な価値のあるような調度品も混ざっている。しかし、猟兵達は荒々しい簒奪者でも、悪戯な破壊者でもない。
ナハト・ダァト(聖泥・f01760)は、ふむふむと頷きながら、積み上がった家具を注視し、観察する。材質、形状、そして積まれた際のバランスと建物の傾斜や段差、それに建物の構造を合わせどの程度の攻撃であるならば倒壊を防ぎつつこの障害を取り除けるのか。彼の中の叡智は、物言わぬ家具の状態でさえもを読み解いていく。
対し仁科・恭介(明日を届けるフードファイター・f14065)は第六感によって、壁の弱点を探していた。時折ぐらつく不安定なそれにひやひやさせられることこそあれ、しかしその感覚は確かに構造の不具合や、年季の入った家具に残る僅かな罅や損傷を気付かせ、同時にこの防壁の弱点を見つけ出した。
「この作業も見られてるだろうね」
実際に敵意や視線を感じるわけではない。しかし何とも言えない不快感を、同時に彼は感じていた。
不気味な声を響かせた敵がすぐそばにいるというのに一向に前進しない猟兵達の様子が不安になったのか、隠れていたはずのセシリアが様子を見に訪れる。やや軽卒に見えるやもしれないが、彼女の傍にはリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)とデナイル・ヒステリカル(架空存在の電脳魔術士・f03357)が立つ。
リーヴァルディは奇襲を疑い、周囲への警戒を怠らない。バリケードに目を向けた隙に襲いかかられはしないか、撤去作業の最中を狙い撃ちするのではないか。その疑念は、「自分ならば賊相手に礼儀を守らない」という考えによるものである。そして、そのような容赦のない相手ならば―――最もか弱いモノを真っ先に手に掛けるに違いないと。
逆にデナイルは、不安げな少女に諭すように言葉を掛ける。
「セシリアさん。村へ戻ったら、今回の一件を良識ある大人に告白し、正当なお叱りを受けるべきです」
彼の真剣な眼差しにこくこくと頷くセシリア。
オブリビオンに投げかけられた言葉を、彼は心中で否定していた。猟兵は正義の使者ではない。そして同様に、罪を裁くのはオブリビオンではない。全てはこの世界で生きる人々が、罪は背負い同時に正当に罰を与えるべきであると。だからこそ、少女に自身の侵した危険を自覚させた。幼い彼女もきっと、彼女もその考えををいずれ理解する事だろう。
「よシ、準備完了だヨ」
ナハトの言葉に頷き、バリケードに近づいていくのはリーヴァルディ・カーライル。まずは周囲に気を配りそして敵の気配がない事を確認して、そっと指先の皮を短剣の先端で破る。痛みに表情を変えることさえなく冷静なまま、手を立ちはだかる壁に翳した。
『……開け、常夜の門』
その唇から紡がれた祝詞と共に、小さな傷より流れた細い赤が蛇の如く指を這い、うねりながら一つの陣へと姿を変える。直後、掌の陣が切り開かれるようにして異界への扉が生まれ、そこへ次々にバリケードを構成する家具たちが引きずり込まれていく。
壁を破壊することは容易い。しかし、後の戦いを見越して消耗は避けるべき。調度品もただ破壊するより再利用の方法がある。そんな彼女の判断の元、まず築かれた防壁を調べあげ、その後彼女のユーベルコードによって家具を全て取り去ってしまおうと考えたのである。何も全てを壊す必要はない、ただ自分たちの進む道さえあればいいのだから。
……だが、それでもなお彼女が用いるのはユーベルコード。継続して使えば疲労は蓄積する。ある程度を吸収した時点で、リーヴァルディを他の猟兵達が止めた。
一人に苛酷な役割を押し付けるつもりは毛頭ない。最初に述べた通り、猟兵達は荒々しい簒奪者でも、悪戯な破壊者でもないのだ。
台詞はなくとも意図は伝わる。「少し休むわ」と言い後ろに下がるリーヴァ。代わりに前に出るのは、三人の猟兵であった。
「―――もうすぐ行くからね」
恭介が携帯食料を齧ると同時に、溢れ出す闘気。どのような場所にも「笑顔を届ける」彼が放ったとは考えられないほどに冷え切った言葉の中にあるのは、怒りか決意か。城までも破壊しないためにも、そして後の戦いの為にも、所持した食料は温存できている。しかし、だからといって彼の攻撃も温存を考えた半端なものでは決してない。大きく息を吐きながら、恭介は鳴らすように腕を回した。
『さぁ、状況開始だ』
眼鏡を押し上げると同時に、背後に現れる電子の精霊。独自の兵器を手に現れると、統率された動きで配置へとつく。狙いは正確、最低限の人数で計算上最大限の効率を齎すそのフォーメーション。少女への沙汰も贖罪も、この世界の人々が与えるだからこそ、ここからは「猟兵(自分達)」と「オブリビオン(彼等)」の問題なのだ。少々荒っぽいが、押し通る。彼の中に迷いはない。
『ALHIM GBVR』
ローブを纏うた黒色の身体から放たれる光。直後に背後に現れたるは異形。二つの触腕が絡まり螺旋を模るその姿は、余りにも禍々しく、余りにも神々しい。
花は手折れども、育てれば何れまた咲き誇る。自身がそうして花を育み愛でるナハトだからこそ、大地と自然の強さを理解していた。これ程美しいものを独占し、手を伸ばす物を刈り取るオブリビオンの行いは理解しがたく、そして彼からすればこの上なく愚かしい。
合図はなかった。だが、行動は一部の狂いもなく同時であった。
巨大な触腕がしなり壁を震わせた。続けざまに放たれる電子精霊の手にした兵器から放たれる鋭い閃光は、崩落する家具を次々と穿ち、破壊する。そして最後に、長い助走と覚醒した肉体が放つ渾身の飛び蹴りによって、壁は完全に崩壊し、長く潜み人々を蹂躙してきた者へ続く道が開かれた。
―――独り隠れる恐怖に耐えられないと言ったセシリアを伴い、道を進む猟兵達の目に、「あるもの」が飛び込んでくる。
咄嗟に少女の目を隠す事ができたのは、幸運だった。
そこにあったのは、一刀の元絶命したらしい人々の亡骸と、その胸に突き刺さる薔薇の花。死した人の血を吸い咲くその花はこの世の物とは思えぬ程に赤く、紅い。……だがそれは決して花を育てるための行いではない事は明瞭だ。横たえられた死体はベッドに寝かされ、目を閉じられ、それはそれは『丁重に』扱われているようにさえ見える。
―――間違いなく、そこは「墓」だった。
大成功
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第3章 ボス戦
『『悟道』』
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POW : 裁きの車輪
【懲罰を執行する絶対車輪】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 月光斬
【『悟道』】が命中した対象を切断する。
WIZ : バーニングハート
【悪を許さぬ情熱の炎】【裁きを下す厳正の炎】【真実を探す求道の炎】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
👑11
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●花泥棒に死を
「お待ちしておりました、猟兵」
最上階で待ち構えていたのは、瀟洒な衣装に身を包みながら慇懃に礼をするオブリビオン。その手にした剣が、彼の真の姿なのだろう。
「ご覧になったでしょう。罪人は断罪され、だが死せば丁重に弔うべき。主は常々言っておりました―――皆様も私の行う執行が決して悪逆ではないことは理解できたはず」
ここに辿り着くまでに見た「あれ」は、自身の良識によるものだと語って憚らない。彼の表情に曇りはない。端正な顔立ちで微笑を浮かべながら、―――その目は濁りきっている。
「では、猟兵の皆様。貴方がたの『主に無断で館に這入した罪』を、この私が裁かせて頂きましょう」
切り裂かれ絶命し、そのまま白骨となった『館の主であったものの』を背に、『悟道』はゆらりと剣を構えた。
「―――汝が逝く道を悟れ」
ナハト・ダァト
◆準備
少女ヨ、隠れていなさイ
ここは安全ダ
良いと言うまデ、出てきてはダメだヨ
七ノ叡智の空間に少女を保護しておく
◆戦闘
一ノ叡智で自身の防御強化
溶け込む夜を使用して敵の攻撃に対しいつでも味方をかばえる状態になっておく(かばう、オーラ防御、激痛耐性使用)
召喚される車輪には、自ら切り離した触手を蔦の様に柔軟に
執拗に絡ませて動きを封じる
斬撃ハ、肉体があル以上視覚ニ頼るはずダ
光を放って目潰しを行い攻撃の軸を逸らす
炎で強化するのかイ?実に分かりやすいネ
ニノ叡智
【寛容な許容の浄水】【救いの機会を与える聖水】【虚構を生み出す夢道の神水】
相反するこれらを用意シ、無効化を試みるヨ
過去ガ、道を決めるんじゃないヨ
図々しイ
仁科・恭介
※アドリブ、共闘歓迎です。ユーベルコードの対象は【悟道】
セシリアに危害が及ばないようにバリケードの外に行くよう促し、バリケードを塞ぎます。
「怖がらせるのは…あいつだけで十分だ」
と、真紅の瞳で睨み付けます。
「吸血鬼以外で本気で(憚られる言葉)」
【大食い】で【携帯食料】を大量摂取しながら様子をみて、【残像】と部屋の家具などを蹴飛ばして隙を作りつつ斬りつけます。
また、他の猟兵が攻撃するときは注意を引きます。
「あんたが悪だと思うなら斬るがいい。私はそれも斬り伏せるだけ。」
「ほんとは強い奴と闘いたいだけだろ、あんた。倒されたいんだろ、あんた。じゃなきゃ、主を斬ったりしないよな」
リーヴァルディ・カーライル
…ん。確かに罪には罰を。悪行には裁きを与えるべき。
だけど、それは生命を軽んじて良い理由にはならないと知れ。
改造した防具の魔力を変え、存在感を強化する誘惑の呪詛を付与。
前に立ち敵の目を引き付ける囮になり、
少女に攻撃が向かわないよう立ち回る。
…セシリア、ここは危険。必ず守るから離れていて。
殺気を読む魔力を溜めた両目の暗視で敵の攻撃を見切り、
怪力任せに大鎌をなぎ払い武器で受ける。
第六感が敵の隙を告げれば【限定解放・血の聖槍】を発動。
掌打と同時に生命力を吸収する血杭を放つ2回攻撃で傷口を抉る。
…全て終われば亡骸を【常夜の鍵】に入れ後程、村に送り届ける。
後はセシリアと一緒に朱い薔薇を探してみよう。
デナイル・ヒステリカル
今回に限った話ではありませんね。
自分が何をしてきたいるのか、僕自身が一番良く理解しています。
しかしそれを―――過古の映し身ごときに、裁かれるつもりは無い!!
先程見た人々の亡骸から、悟道の太刀筋を【情報収集】して逆算。
僕は前線で戦う技能に優れているとは言えませんが、
相手の攻撃パターンを事前に理解していれば、決め打ちすることは可能であると判断しました。
UC:オーバークロックをスタート。
壁や天井を蹴っての目にも留まらぬ高速の立体的三次元起動で味方猟兵の前衛と連携して攻勢を仕掛けます。
相手のUC発動を【見切り】、その刀身を手で挟んで止め、悟道本体へ直接雷【属性攻撃】を放ちましょう。
●凶刃と猟兵
先手を取ったのは『悟道』であった。瞬間移動と言って間違いないその俊足は、一手で距離を詰め、一刀の元に切り伏せんとする。刃を翻し先ず狙うのは……少女を庇う、猟兵。
リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)はその身に宿す防具に特殊な呪詛を込めていた。敵の狙いを無意識に自身に向けさせる、誘惑の呪術。その効力は確かなものだった。抵抗の術なく真っ先に『断罪』できる少女よりもまず、強力な力を持つ猟兵である彼女に刃を向けるのだから。
一つ、たった一つ予想外だったことは……振り払い攻撃を弾こうとしたその大鎌は、狭い室内での取り回しが致命的に悪かった事。
コンマ数秒の遅れ。しかしそれはこの人智を超えた戦いの中では致命的な隙。薄らぐ月光の弱い光を殺意に反射させ、狂える剣は返り血に濡れる―――。
――――ことは、なかった。
「こんなこと、初めてだ」
ぼそり、と。呟く男の声。
「吸血鬼以外で本気で―――」
本気で、【…自主規制音…】したいと、思った。
仁科・恭介(明日を届けるフードファイター・f14065)は、リーヴァルディの胸を貫かんと刺突された切っ先は、彼の持つ日本刀、鞘から僅かに除く刃によって見事受け止められた。その涼しい顔を、真紅の瞳が獣の如く睨み据える。
すでに彼は食料の補給を済ませていた。これが公の場、然るべきステージの上であるならば、正に歴史的快挙である世界最高記録であったろう。しかし、彼がもし再び同じ速度でものを食べる瞬間は訪れる事はないかもしれない。
自分が間違いなく滅ぼすべきものを理解し、そして守るべきものを絶対に守ると決意したその瞬間にこそ、彼の全力を超えたそれは発現したのだから。
直後始まる超接近距離での剣舞。細身の西洋剣を繰る『悟道』は、型のある剣技。自分のペースを貫きながらも間隙を伺う達人の剣士。対し恭介は型破りな刀技。狩りと共にある生き方をする彼の技は力に優れ、技量よりも圧倒的膂力と五感を武器に、あらゆる物を活用して不意を作りそれを突く超人の闘士。属性の異なる二人の戦いは、ほぼ互角であった。
「ここは安全ダ。良いと言うまデ、出てきてはダメだヨ」
味方が肉薄し鎬を削る間に、ナハト・ダァト(聖泥・f01760)は怯え竦む少女を光のゲートの中へと導く。不安げなセシリアにそっと微笑みを浮かべると、その門を閉じた。
……その瞬間に、彼の身に纏う空気は全く別の様相を呈す。心優しき医師から、異形の刻印より出る冒涜を使役し狂気を糧とする、聖泥の隠者へと。
「何故抵抗するのです、我が裁きは正義なのですよ!?」
困惑するように叫びながら、身体が、刀身がチリチリと火の粉を飛ばす。断罪を、絶対にして不足無き正義の断罪を。歪んだ心が求める「正義」の名の元に、彼の心が燃え盛る。
昂りに文字通りに水を差したのは、他でもない、ナハトだ。火には水、能力を封じ抑え込む。悪を許さぬ情熱の炎は、寛容な許容の浄水によって冷える。裁きを下す厳正の炎は、救いの機会を与える聖水によって掻き消える。真実を探す求道の炎は、虚構を生み出す夢道の神水によって湿る。
「過去ガ、道を決めるんじゃないヨ―――図々しイ」
浴びせた水などよりも寒々とした声。『悟道』を見るその瞳の輝きはどこまでも残酷だ。聖者と正義は相容れないと何者かは言った。だが彼の為すのは正義などではなく、自身の過去と妄執に取り付かれた自己満足の私刑。そして、弔いを騙り遺体を傷付け誇りの如くに並べる。
生者を嬲り、死者を涜する。医師であり聖者である彼にとって、それは凡そ最も唾棄すべき「悪」に他ならない事だろう。
『wgah’nagl fhtagn』
かの者は右手を掲げ唱えた。矮小なるモノに神が賜った「まじない」。嗚呼、其れは罪業を貪る裁きの赤光。自身を正義と声高に名乗るものは、身を灼く痛みにもがき苦しむ。それこそが自身の与えた痛みの数だと、己が犯した過ちの償いであるとも理解できぬまま。
「おのれ、おのれ罪人め―――」
恨みがましい呪詛を吐きながら、『悟道』は再び立つ。しかし、次の瞬間彼が見たのは天井。膝をつきながら面を上げたと同時。まだ上げ方が足りないとでもいうのか、顎を思い切り蹴り上げられたのである。
「自分が何をしてきたか、僕自身が一番良く理解しています」
不意打ちというにも生温い奇襲攻撃。卑劣と指さすものいるかもしれないその攻撃の主、デナイル・ヒステリカル(架空存在の電脳魔術士・f03357)は眼鏡を持ち上げながら悪びれる事もなく口にする。同時に雷撃を伴う爪先は再び『悟道』の顔面を抉るように蹴り飛ばす。めし、っという筋肉と共に骨がひずんだ音と共に、幾本かの歯が古い床板の上を転がる。
元こそ人により生成された彼。自身の行動の原理、人が信念や感情と名付けたそれを「プログラム」と称する彼。助力を願えば力になるのはプログラムだから。そんな風に嘯く彼は、しかしこの時腹の奥底に煮え立つような熱を感じていた。きっと、後々振り返ったとしたならば、ユーベルコードによって纏うた稲妻によって、身体に熱が溜まったのだろうとか、そんな風に口にするのだろうか?
「だがそれを―――過古の映し身ごときに、裁かれるつもりは、無い!」
怒り。人はその「プログラム」をそう呼ぶ。だが、もしそう指摘されたとて、彼は認めないのだろう。
「お、ッ、のれぇ、えええぇぇぇぇ!」
慟哭し震える凶刃が彼の身を八つ裂かんと迫り、結果として切断され宙を飛ぶのは『悟道』の腕の方。
猟兵は独りではない。一人に目を奪われれば、それは別の者にとっての多大な隙だ。その隙を見事突いた恭介は、自身が斬ったその腕を掴むと、地面へ叩きつけ踏みつける。命を愚弄しながらなお在り続けたその細腕は、ひしゃげ潰れて無残な赤い溜まりと残骸になり果てる。
最早、矜持も尊厳も剥がれ、一塊の暴威と成り果てた『それ』は、影と血肉より生まれる車輪を放出する。鎖に繋がれ鉄の鋲や針で引き裂く拷問器具もかくやな鉄輪。だが、そんな破れかぶれをただ喰らうような者は、猟兵にはいない。
デナイルは三次元的な駆動によってその無軌道な攻撃を回避する。恭介は部屋に並んでいた家具を蹴り飛ばし車輪を相殺したり、動きを止めたりしてダメージを受けない。最終的には、ナハトの触腕が車輪の幾つもを捕え結ぶことで容易く無効化した。十数秒という余りにもあっけない抵抗の完結に動きの止まる『それ』の背後には、もう既にデナイルが居た。
『優先順位変更。ぶっ飛べ…!』
炸裂する雷光。寿命を削る放電は、水を纏う敵にはより激しい衝撃を与える。だが、彼の繰りだす技の最大の目的は、「援護」。
『これが貴方に証明する私なりの解答』
響き渡る声。この戦いの中で口にした食料は実に多く、そして相手へと抱く感情はかつてない程に重く強く、そして鋭い。
「これが、私の、答えだ―――ッ!」
突進と同義と言っていい程強烈な一撃は、深々と『それ』を切り裂いた。衝撃と共に吹き飛んだ身体は、亡骸を巻き込み窓の外へと投げ出され、落下していく―――。
『それ』が墜ちたのは、庭園の中心だった。伸び放題の蔦や雑草の手から免れ、咲き誇る薔薇が未だ美しく咲き続ける。僅かに残った理性が、それを見た瞬間に急速に思い返される。
主である黒騎士と共に贈られた名声の象徴。悪辣なる者を討ち、正義を為し、人々によって贈られたその花もまた、薔薇であったと。彼にとってそれは、間違いなく輝かしい栄光であり誇るべき過去であった。
「―――私は、この、花を」
悪辣なる盗人の手から守る。そう、『悟道』は思い出した。だが、彼の手の一つは失われ、もう片方の手に残る剣も、最早見る影もない程にくすんでいる。
微かな足音に振り替えれば、庭園の只中に現れたもう一人。黒衣を纏い、大鎌を携えながら花畑で佇む紫髪の乙女。自身も又黒騎士の名を持つ―――リーヴァルディ・カーライル。最早彼女を遮る壁や天井はない。死神のように立つ彼女を前にして、『悟道』は笑った。
「私が逝くべき道を、ようやく悟ったような気がします」
「……そう」
だからこそ、『悟道』は片腕となり、口の中に溜まった血を吐き捨てるのではなく飲み下し、自身の死神へと剣を向けた。如何に今、僅かばかりの栄光を思い返し正気を取り戻したとて、オブリビオンであることに変わりはない。既に、自分は罪を犯し、裁かれるべきものになったのだから。
だからこそ。自分は、ここで、死ぬのだ。新たなる「正義」の手によって。
影より放たれる二つの車輪。鋲と針によって断罪を為したそれを、リーヴァルディの鎌が叩き斬る。両断された輪は呪詛によって塵となり、風に撒かれて欠片も残らない。しかし本命はそれではない。雄叫びを上げることもなく、ただ真っすぐに、車輪の陰から飛び出し切っ先を突き立てんとする『悟道』。愚直なまでの、突撃。
―――が。
「最期まで、自己満足」
吐き捨てるように、大鎌はその刀身を砕き、彼女の掌底は『悟道』の首を正確に打ち抜いた。
セシリアに恐怖を与えた。数多の命を奪った。改心しようが罪は罪。死こそが贖罪だというその独善的な思考こそ愚劣極まる。確かに罪には罰を。悪行には裁きを与えるべきだろう。しかし、それは生命を軽んじて良い理由にはならない。リーヴァルディは、冷たく言い放った。
『……限定解放。…刺し貫け、血の聖槍…!』
そして放たれる高密の魔力の杭。乱れ飛びその体を、半ばで圧し折れた刃と共に塵芥へと変える。
歪んだ正義の残滓は、骸の海へと溶けていった―――。
●恋に薔薇を
猟兵達の活躍によって、少女は救われた。セシリアという彼女は薔薇を摘み、そして猟兵に連れ添われ村へと帰る。助けて貰ったことを感謝し、危険なことをした事を謝罪し、そのうえで彼らを自分のヒーローだと言って笑うセシリア。別れの際には、「また会えるよね」とぐずりながら問う。彼女にとって、猟兵達は忘れられない人物となった事だろう。
城の中で残った遺体は村人と交渉し付近に埋めて、簡易ながら墓を建てる。薔薇の花を突き立てられ、城の中に閉ざされることはもうない。
果たして彼女の淡い想いは届いたのか。両親は彼女を叱るのか、はたまた心配をしたと抱きしめるのか。それは猟兵にも、グリモアにもわからない。
そして、本当にもう誰もいないその廃城では、今日も薔薇が咲いているという。
大成功
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