潰してっ、伸ばしてっ、お持ち帰りぃ~。
――走る、走る。
薄暗い一本道が続く迷宮の中を走っている。
どれだけ走り続けていただろう。
それすらも分からなくなる程に必死に走っている。
「はぁ、はぁ……この道、終わりはまだなのっ。」
「も、もう足が限界……っ」
「四の五の言ってる場合じゃないわ……あっ」
共に走っていた三人の女生徒の内、一人が躓いてしまう。
残る二人にとっては、振り返る余裕さえ無い。
走り抜けなければ助かる術が無いと本能的に察しているのだ。
それは、地べたを這いずる女生徒にとっても一緒である。
「あぁ……待って、私はまだ走れ…………んびゅ」
断末魔と言うには、やけに変な声を上げてしまった女生徒の姿が消える。
それと共に柔らかいモノを潰すような、ぐにゅっとした音が聞こえてくる。
「嫌ぁ、もう無理無理……逃げ切れないよぉ」
「そんなこと言わないで。諦めちゃ駄目……っ」
泣きわめく一方を慰める側にとっても、絶望的な状況である事は分かっていた。
元々は十数人で迷宮に入ったのだ、それが今や残るは自分ともう一人だけ。
しかし迷宮の罠が次々と仲間たちを絡め取っていったのだ。
「さっきの訳分からないボールと言い、なんで床がこんな……あぐっ」
「きゃっ」
並走していた足同士が引っかかる形で、同時に転んでしまう二人。
立ち上がろうにも転倒の衝撃とこれまでの疲れで上手くいかずにいる。
「えっ、こんなので終われ…………んぎぅ」
「やだやだ、私は助か…………うべぇ」
走る者が居なくなった道に静寂が訪れる。
いや、耳を澄ませると微かではあるが機械の駆動音が聞こえている様だ。
その音は今しがた女生徒たちが走っていた床から聴こえている。
つまりは床そのものが罠であった証拠に他ならない。
実は床全体が巨大なローラーとなっており、強制的に走らせる単純な仕組みの罠だったのだ。
しかし迷宮においては、いくら単純な罠だろうと脅威となる。
罠にかかった女生徒たちにとっては、道を走り続けなければならなかったという話だった。
失敗してしまった代償として、なんとも情けなく恥ずかしい目に合う事となる。
動く床にはところどころに変な模様みたいな形の箇所がある。
知らない人が見ればトリックアートと言いたくなるそれは、先程姿を消した女生徒たちそのものだ。
見事に伸しイカみたいに皆ぺっちゃんこである、時折ピクピクしているので命には別条は無いみたいである。
そんな床に貼り付いていた女生徒たちを回収すべく、一つの影がゆっくりと奥から近付いてくるのであった……。
「えっと、なんなんですかコレは
…………」
何時になく困惑した表情を浮かべ、頭を抱えている戸辺・鈴海(味覚を求める来訪者・f00008)。
しかし視えてしまった予言を、解決へと導くのがグリモア猟兵であろう。
言葉の整理を終えた鈴海は、冗談を言う感じに笑いながら説明を始めた。
「実はアルダワ魔法学園の迷宮に、生徒をぺっちゃんこにしてお持ち帰りするというオブリビオンが現れましたっ」
話を聞いている猟兵たちの目が点になる、難解な敵が居て悩んでいたのではないのかと視線が訴えている。
「ええ、期待通りのリアクション実に有難う御座いますっ。ですが言葉通りの意味なのです」
赤面しつつも強がる鈴海が説明するには、侵入者を潰して伸ばすのに特化した迷宮に住み着いたオブリビオンが罠に掛かった生徒を連れ去ってしまうというものだ。
その迷宮の中は薄い霧が立ち込めていて視界が良くない、更にサウナに入っているかの様に身体をほぐす効果があるみたいである。
「オブリビオンの住処としている場所までは、二種類の罠を越えていかねばなりません。一つ目はひたすらに球が転がっているだけですが、粘着性の強い球なので触れるだけでアウトです。壁や床が非常にツルツルしているので注意が必要かと。二つ目は床がそのままルームランナーになっている様な道です、かなりの速度で動いているので簡単には抜けられないでしょう。床を移動しないと追加の罠が作動する仕組みの様ですので気を付けてください」
何れの罠も潰す事を重視している為、巻き込まれれば猟兵といえど暫くは復帰は難しいだろう。
「敢えてオブリビオンにお持ち帰りされて連れて行ってもらう事は可能ですけど、自らぺっちゃんこになりたい人はいらっしゃいませんよね。お宝コレクションとされてしまったら、戦うにも不利な状況なのは目に見えておりますし」
やれやれという顔を見せる鈴海は、実に馬鹿げた罠のある迷宮へ猟兵たちを転送するのであった。
銖梨
春を感じ始めたのでギャグ依頼です。
ネタに全力を注いでもらう為に、ヘンテコな迷宮をご用意しました。
オープニングの通り、第1章と第2章で罠を突破してもらいます。
失敗するとぺっちゃんこになります、ギャグなので次の章になれば戻るでしょう。
判定は能力値に沿ってダイス判定をしますが、私のダイス運は良くありません(重要)。
はっちゃけたい人は是非どうぞ、可能な限り対処致します。
第3章はボス戦となりますが、やってくる事は罠と同じノリだとご判断ください。
ギャグ依頼なので相手のネジも100本は飛んでいると思って頂けると幸いです。
一種の春の珍事だと思ってお付き合いください。
第1章 冒険
『ねばねば転がる粘着ボール』
|
POW : 動体視力頼りで回避する
SPD : 素早く動く事で回避する
WIZ : 軌道を計算して回避する
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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フロッシュ・フェローチェス
【SPD】
ナニコレ
恥晒しな格好を作り上げ、その上で持ち帰る?
ムカッ腹が立つね。
壁や床の摩擦は少ない様だし、伸縮する短刀・碧穿炉と、刻天炉の刃物型・裂銃形態二刀流装備。
そして体へ生きた鎖・咆蛟炉を巻き付ける。
ホロデバイスゴーグルで簡易的に情報収集してから、ダッシュスタート。
先ずは床を進む。
滑っても慌てずスケートの如く行こう。地形の利用は基礎だ。
扱けそうなら早業で持ち直し、また二刀を突き刺してバランスを取るよ。
最悪の場合は衝撃波で上へ跳び出し【選択UC】を使って空を行く。
足りない分は、空中戦の妙を持って重心制御し衝撃波でまた飛ぶ。
咆蛟炉を伸ばし喰い付かせ、最後の距離を稼げれば良いけど。
※アドリブ可
月守・咲凛
アドリブ被弾ぺちゃんこ問題ありません。
狭い場所でもいつも飛んでいて、むしろ走るのは苦手だったりします。
「天井があるだけでもけっこう苦手なのですけど……ひっ!?」
周りを見回しながらぽてぽて歩いていたら、後ろから聞こえてきたゴロゴロという嫌な音に、慌てて浮き上がって逃げ出します。
対飛行用のトラップが発動したら、回避のスペースがある物であれば瞬時に見切ってライフルやビーム砲で撃ち抜いたり回避して飛び抜けます。
「むぎゅん!?」
……回避の余地がない物に関してはどうしようもありませんよね。
クロ・ネコノ
(アンジェリカ(f11144)とセットでお願いします)
・・・なんていうか随分とまあ、話だけ聞くとマヌケな話だよね。
【ゴム体質】
自信があるみたいだしアンジェリカの後ろについていこうか、あの玉相手に弓じゃどうにもならないだろうし、粘着性があるらしいから直接触りたくないんだよね。
まあ最悪玉に轢かれても私はゴム体質だからなぁ、余程伸ばされない限りは大丈夫だと思うけどね!
<ギャグ系のノリは大好きです!アドリブ歓迎!>
アンジェリカ・ヘインズビー
お仕事です、頑張りましょう。
(クロ・ネコノさん(f06406)と一緒にして下さい)
回避は苦手です、力技で行きます。
転がってきた玉をウォーハンマーで殴って止めて見せます。
…駄目そうならクロさんに任せます。
【ギャグ歓迎】
栗花落・澪
【龍狼師団】で連携
ほらーもっと頑張って夏輝君(翼飛行)
なにー?
UDCの学校では陸上部とかいう
毎日毎日限界まで走り続けて
足の筋肉を虐めることを喜びとする集団に入ってたんじゃなかったの?
自分でそう説明してくれたんじゃん
うるさい変態
とりあえず、ずっと飛び続けて変な罠作動されても困るので
球の軌道を常に【見切り】
★Staff of Mariaを氷の【全力魔法】でコーティング
進行方向の球を弾き飛ばしたり
杖にくっついたら一旦氷を溶かして球を落としてから
またコーティングを繰り返しながら
定期的に足を付けて移動
あんまりにも夏輝君がポンコツだったら
UCで足場を花畑にする事で滑りやすさを軽減
後で足蹴にした花に謝ってね
小林・夏輝
【龍狼師団】で連携
うぉわっ!?
あっぶねー神回避
危うく滑るとこだったぜ…
足場のボールを必死に避けながら額の汗を拭い
頼む、一言
一言だけ言わして
走 っ て ん の 俺 だ け じ ゃ ん !!
語弊のある言い方やめて!
いや確かにそれ言ったの俺だけど
その言い方じゃただのドM集団なんですけど!
自分で自分を虐める趣味は無いです!
澪君に虐められるならいいけど
とりあえず素早さを活かしたり
UCを発動して自分に当たりそうな球を
ロープレキャラ達に弾いてもらいながら
極力滑らないように…わたたたっ!?
(召喚キャラにしがみつき転倒回避)
澪きゅん辛辣っ!!
なっちゃん泣いちゃうぞ!(嘘だけど)
※夏輝はネタキャラです
水野・花
この迷宮サウナみたいでちょっと気持ちいいですけど、予知の内容からすると比喩じゃなくて本当に体がほぐれちゃってるんですよね。
潰されてぺちゃんこになっちゃったらどんな感覚なんでしょうか、ちょっと気になります……。
最初の罠は粘着性のボールですね。当たったらその時点でアウトらしいので、ここは素早く回避しつつ全速力で駆け抜けましょう。
床が滑りやすいそうなのでちょっと怖いですが、ぺちゃんこにされたって死ぬわけじゃないようですしここは思い切っていきましょう。仮にオブリビオンにお持ち帰りされてしまっても生きている限りは脱出のチャンスはあるでしょう。たぶん。
・アドリブ歓迎です
夜月・クリスタ
なんというか僕ってこういう依頼と縁がある気がするなぁ…。まぁスピード勝負なら怪盗である僕の得意分野だし、がんばろ。
迫ってくる球は【見切り】で軌道を見切って、安全に進めるタイミングと判断したら【ダッシュ】で加速を付けつつ一気に走り抜けよう。
もう少しで抜けれそうな時に球が迫って来たら、【スライディング】で一気に罠地帯を滑り抜けよう。地面がツルツルならスライディングで滑れば速度は出るはず…ってあぁっ!マフラーが引っかかった!早く外さなきゃ…!
(アドリブ歓迎。突破に失敗して潰されたら、お持ち帰りされてしまう…!)
ロータス・プンダリーカ
ボールを見るとウズウズしてしまいますにゃ。
けど、ぺたぺたのぺったんこは勘弁だにゃ。
一応、体毛にぺたぺた付かないように頭からマント羽織りますにゃ。
この小さな身体と素早さを活かし!
ニャン=カタによる幾何学的に計算された動作によって、かわす!
…かわせるといいにゃ(希望)
ねばねば触れたのがマントだけなら素早く脱ぎ捨てて脱出。
2回目上着だけ触れたら脱ぐしかないですかにゃ。
でもパンツ一丁にはならない、絶対にゃ。
ボクの自慢のふわもふ毛皮に触れたら……
に゛ゃーっ!? 抜ける抜ける痛いしフギャアオ!?
尻尾丸めて被害抑える努力はしたいですにゃ。
上手く切り抜けたら全力毛繕い。
完全に脱落したらニャアアン…と残響音。
闇雲・光莉
【心情】
(なんだか場違いなところに来ちゃった気がするんですけど・・・いやでも罠があるだけでオブリビオンとかいう怪物はそんなにいないみたいだし、頑張れわたし!)
【WIZ】
あんな玉に押し潰されたら原型留めないんじゃないの?どうにかして避けないと・・・
傷を治す位しかできない私に、玉の軌道なんて読めるはずがない、でも閃いたわ解決法を!
他の猟兵さんについていけばいいのよ!
「私のUCじゃどうにもならないのでご一緒させてもらえませんか?」って声を掛けて一緒に行ってくれる人を探しましょう!(いない場合はやけくそで突っ込みます)
【ギャグ大歓迎!絡み歓迎!と言いますか、絡めないと伸しイカ待った無し!】
――ごろんごろんごろんごろん
目の前に広がる部屋の中を、縦横無尽にボールが転がっている。
部屋の広さは視界が悪く判断出来ないが、恐らくは大広間の様な場所であろう。
壁にボールが当たる音が聞こえてくる頻度から、複数のボールが転がっているのが判断出来た。
「いや、ナニコレ
…………」
フロッシュ・フェローチェス(疾咬の神速者・f04767)が呆気に取られるのも致し方が無いであろう。
話に聞くのと実際に部屋を見るのでは、伝わってくる情報というのは相当違うのだ。
「この迷宮サウナみたいでちょっと気持ち良いですけど、本当に身体がほぐれちゃってるみたいですよね」
水野・花(妖狐の戦巫女・f08135)が言う通り、部屋の中には霧が充満していて肌にしみ込む様に馴染んでくる。
身体が柔らかくなっているのであれば、潰されれば本当にぺっちゃんこなのだろう。
「こんなんで恥晒しな格好を作り上げて、その上で持ち帰るとか……ムカッ腹が立つね」
「えぇ、潰されたら恥ずかしい格好にされてしまいますよね」
フロッシュの言葉に同意する花だが、内心では気になって仕方が無かった。
もしぺっちゃんこにされたら、どんな感覚が待っているのかを。
この部屋は入口と出口の部分のみ、ボールが通らない様にしてある。
部屋の外までボールが転がってしまっては、トラップが機能しない為だろう。
簡単に言えば出入口の周りが、ボールの横幅を越えない窪みみたいな形という事だ。
入口にボールが入ってくる事は無いが、その狭さから全員一斉に飛び出るのは危ない。
角度的に部屋の中も見え難いので、タイミングを計って数人ずつ順に突入する事とした。
猟兵たちは各々準備を整え、やけに滑りやすくなっている部屋の中へと走っていく。
各々が無事に突破出来るのかは、実力以上に運が試される場となっているだろう。
さぁ見せてもらおう、猟兵たちの回避力に運命力という奴を。
「準備完了。それじゃあ一気に飛ばして行くよ」
「スピード勝負なら怪盗である僕の得意分野だし、がんばろ。」
「この小さな身体と素早さを活かしてみせますにゃ」
先行するのはフロッシュ・フェローチェス、夜月・クリスタ(怪盗・フォックステール・f13971)、ロータス・プンダリーカ(猫の銃形使い・f10883)の三名である。
部屋の中を長く居るのは良くない、つまりはスピード重視でダッシュして切り抜けようという事だ。
更には各々が工夫を凝らして調整をしており、同じ速攻でも個人の性格がよく表れている。
「聞いてたけど、思った以上に滑るね此処」
フロッシュは滑る床を雪面をスケートの様に滑って効率良く加速していた。
彼女の両手には短刀・碧穿炉に刻天炉を刃物型・裂銃形態にして二刀流装備にしている。
この二刀をストックとして扱う事により、原則を最低限にして先を急げるのだ。
「なんというか、僕ってこういう依頼と縁がある気がするなぁ……」
こんな依頼が沢山存在するとは思えないのだが、不思議とクリスタには縁を感じているらしい。
そんなクリスタはスピードにメリハリを付ける事により、ボールを上手く回避している。
不規則にやってくるボールに対しては非常に有効的な判断であろう。
「ぺたぺたのぺったんこになるのは勘弁にゃ。けど、やっぱりウズウズしてしまいますにゃ」
ケットシーとしての性と葛藤するロータス、だがボール遊びをするにも少し大き過ぎるのではないだろうか。
その覚悟の表れではないが、体毛にべたべたが触れない様に頭からマントを羽織ってガードしている。
見た目が僧兵と忍者のどちらっぽくなるのか気になるところだが、兎に角被弾対策はバッチリであろう。
三者三様の工夫の甲斐もあってか、かなり順調に部屋の中を進んできている。
「これぞニャン=カタの極意、最小限の動きでもかわせるのにゃ」
「僕等のスピードのが一枚上手だって事だね」
「いいや、最後まで油断は禁物……っ!?」
別にフラグという訳ではないのだが、いきなりボールが弾幕みたいになって正面方向から多数飛び込んできた。
ボールの隙間からは、うっすらと部屋の出口らしき壁のくぼみが見えてくる。
つまりは進行方向に転がっていたボールが、壁で反射したりしてタイミング悪く集まってしまったのだ。
「もう少しなら一気にスライディングで滑れば掻い潜れる筈っ」
「此処は隙間を縫っていくしかないにゃ!」
クリスタとロータスは身体をほぼ横にして、球の下を滑り込もうとする一方――
「上になら充分な空間がある。飛び越えるしかない」
フロッシュはスカイステッパーにより天井付近まで飛び上がり、重力制御と衝撃派を駆使して前進する事を選択した。
交差するボールと三人の身体、上手く回避したと思われたのも束の間……ロータスのマントとクリスタのマフラーがボールに引っ掛かってしまう。
「まずいですにゃ。マントをパージですにゃ!」
「あぁっ!僕も早くマフラーを外さなきゃ……!」
しかしこの二人の対応に差が出た。脱ぎ捨てる事を想定しているかしていないかでは、反応速度がかなり変わってくるという事となる。
ロータスは無事に出口側まで到達するが、クリスタはマフラーを外す事は出来たものの出口手前でへたり込む形となってしまう。
更にフロッシュの目の前では突如天井が開いて即席の壁が生成される、どうやら飛行防止のトラップが出口前に存在したのだ。
「全く面倒臭いトラップがっ」
空を蹴って斜め下に飛ぶ事によって、なんとか追加トラップを回避するフロッシュだが出口までの距離がやや足りない。
彼女は身体に巻き付けていた生きた鎖である咆蛟炉を、出口の床側へと伸ばしてなんとか距離を稼ごうとする。
「よっと。全く天井が動くだけで止められ…………んぐっ!?」
「マフラーが無いと怪盗として格好がつ…………ぎゅえ!?」
「あわわっ、お二人とも大丈夫ですかにゃ!?」
出口前に居たフロッシュとクリスタが、天井から降ってきたボールに押し潰される。
実はフロッシュが発動させた追加トラップは、天井側に壁を作るのではなくて天井が開いてボールを追加するのが目的だったのだ。
慌てて毛繕いを中断したロータスはの手によって、二人はボールが転がる前に救助された。
身体が板の様に平べったくなって、出口横の壁に立て掛けられた二人。
その姿は一回り表面積が広がっており、かなり滑稽に映ってしまう。
(不覚を取った……次はこうは……いかない……)
(お持ち帰りに……ならずに……済んで……助かった……)
目の前がチカチカする様な不思議な感覚にも困惑しながら、じっくりと毛繕いを続けるロータスと共に回復するまでの時間を耐え忍ばねばならないフロッシュとクリスタだった。
勢い良く飛び出していった他の猟兵たちと異なり、クロ・ネコノ(弓矢が得物のゴム鞠猫・f06406)とアンジェリカ・ヘインズビー(寡黙でサイボーグなバーバリアン少女・f11144)はゆっくりと進んでいた。
アンジェリカが前を進んで露払いをして、クロが後ろをついていくという形である。
「……なんていうか随分とまあ、話だけ聞くとマヌケな話だよね」
「それでもお仕事です、一緒に頑張りましょうクロさん」
「分かったけど、球が相手だと私の弓じゃどうにもならないから頼らせてもらうよ」
「はい……」
頼られる形となったアンジェリカではあるが、彼女も回避は得意ではない。
だから力技に頼る事としたと言わんばかりにウォーハンマーを振り回す。
抜群のハンマー捌きにより、転がってきたボールを弾いてゆく。
本来ならハンマーもろとも巻き込んでもおかしくないのだが、アンジェリカが一枚上手であったようだ。
「いいぞいいぞー、このまま全部吹き飛ばしていこうか」
「…………分かりました。えいっ……やぁっ……」
奮闘するアンジェリカを応援するだけのクロ、自分が力になれない分は盛り上げ役に徹している。
褒められてまんざらでもないアンジェリカ、ハンマーを振るう手にも力が籠っていく。
――しかしそんな順調そうな二人の時間は、突如として終わりを告げる。
「案外避けなくてもなんとかなっちゃ…………ぅううん!?」
「……クロさん、どうかしま…………うぶぅ!?」
二人は真後ろから転がってきたボールに纏めて轢かれてしまったのだ。
クロはアンジェリカに対処を任せっきりで、後方への注意をしていなかった。
アンジェリカにとっては後ろにクロが居るので、自分が処理出来ない分は任せるつもりで気にしていなかったのである。
結果としてクロは真後ろから押されて大の字ポーズでボールに貼り付いてしまい、振り向いたアンジェリカがクロと丁度向い合せに重なる形となってしまった。
重なる直前に互いを認識していた二人にとって、正面から感じる熱を否が応でも意識してしまう。
抱き合う事では感じられぬであろう、全身くまなく密着している感覚が二人を襲いかかる。
そしてボールが1回転する毎に伸ばされていく感触も追加されるのだ、色んな意味でかなりの負担ではないだろうか。
(私は伸びるの……なれてるけど……アンジェリカ……大丈夫……かなぁ)
(熱い……クロさん……近過ぎ……て……もう……)
二人一緒にボールに運ばれてゆく、暫くはこのままの時間を過ごす事になるだろう。
互いの熱でとろけきってしまわないか、それだけが心配である。
「ほらー、もっと頑張って夏輝君。そんなんじゃ最後まで持たないよ」
「分かっ……うぉわっ!?あっぶねー、今のは神回避だったわ」
身を捩ってボールを回避する小林・夏輝(お調子者の珍獣男子・f12219)は、勢い余って滑って転びそうなのを堪える。
容赦なく次々と迫りくるボールを必死に避けながら走る夏輝は、汗にまみれた額を手で拭う。
そして先を行く栗花落・澪(泡沫の花・f03165)に対して主張する。
「頼む。一言、一言だけ言わせて」
「なにー?」
「走ってんの俺だけじゃん!!」
澪はその翼で飛行しながら進んでいる。常時飛ぶと追加の罠が発生するので、滞空時間が長めのジャンプを繰り返している訳だが。
一方の夏輝は滑りやすい床を、ボールを回避しながら走っているので体力の消耗が激しいという事になる。
「えー、だってUDCの学校では陸上部とかいう毎日毎日限界まで走り続けて、足の筋肉を虐める事を喜びとする集団に入ってたんじゃなかったの?」
「語弊のある言い方やめて!いや、確かにそれ言ったの俺だけど……」
「自分でそう説明してくれたんじゃん」
「その言い方じゃ、ただのドM集団なんですけど!流石に 自分で自分を虐める趣味は無いです!」
「ふーん」
夏輝の事を見透かした様な声色で返答する澪は、周囲の球の軌道を見切りながら進む方向を調整している。
澪の進行方向に付いていく事で、夏輝もなんとかボールに当たるのを避けれている効果もある様だ。
「…………澪君に虐められるならいいけど」
「……うるさい変態」
つい本音が出てしまう夏輝のであったが、キッチリと澪に聞き取られてしまう。
澪は正面から転がってくる邪魔となるボールを、氷の層でコーティングさせたStaff of Mariaで弾き飛ばす。
氷だけをボールが貼り付く様にして、杖を持っていかれない工夫もバッチリである。
……心なしか今の会話の性で力が籠っている気がしなくもないが。
「澪きゅん辛辣っ!!なっちゃん泣いちゃうぞ!」
「はいはい、冗談言ってないで早く行くよ」
召喚したキャラ達をデコイやしがみ付き棒にしている夏輝を、誘幻の楽園を使って進行方向の足場を花畑にしてフォローする澪。
なんだかんだで優しくしてくれるからこそ、夏輝は澪に対して気軽に接したくなるのだ。
そんなこんなで二人は無事に部屋の出口まで到着するのだった。
「さぁ、二人とも一気に駆け抜けちゃいましょう。こういうのは思い切りが大事ですよ」
「いつも飛んでいるので、早く走るのは苦手なのですが頑張ってみます」
「本当、ご一緒させてもらって感謝してます……!」
水野・花は月守・咲凛(空戦型カラーひよこ・f06652)と闇雲・光莉(人間の聖者?・f15342)を二人を連れ立って進んでいる。
咲凛と光莉にとっては苦手意識の強い場所であった為、一緒に進んでくれる人がいるというのはなんと安心感のあるものであろうか。
最初の時点では花は先行組で行く気だったのだが、軽く物思いに耽っている間に出発されていたのは秘密である。
だが進むスピードが遅いと、どうしてもボールを回避する機会が増えてしまう。
「傷を治す位しか出来ない私なんかの為に、球の軌道を読んで誘導してもらってすみません」
「いえいえ、助け合ってこその仲間ですから気にしないでください」
平伏するかの勢いの光莉をなだめながら進む花、傍から見れば心温まる瞬間であろう。
「天井があるだけでも、結構苦手なのですけど……ひっ!?」
自分なりに周囲を警戒しながら進んでいた咲凛は、一番聞こえてきてほしくなかった方向からの音に対して敏感に反応する。
地に足をつけた状態では早く走れないのを怖がっていた為に、あちこちから聞こえるボールの転がる音の中から後ろ側からの音を聞き分けられたのだ。
その恐怖のあまり、各部ユニットを急速に稼動させて飛び出してしまう咲凛。
「えっ、走るのをやめたら罠にか…………べぢゅ!?」
「いきなり飛び出して、どうしたんで…………ぜぶぇ!?」
咲凛の突然の行動を目の当たりにした花と光莉は、呆気に取られてしまった所為で後方のボールに気付かれずに巻き込まれてしまう。
一方の咲凛は闇雲に直進飛行するも、前方の天井が開いてボールが降ってくる事により通せんぼされていた。
落ちてくるボールをライフルやビーム砲ではじき出すも、飛んだままなので追加のボールがきて堂々巡りである。
「ああもう、次から次へとどうして道をあ…………むぎゅん!?」
立ち往生している間に後ろから追いついたボールに潰されてしまう咲凛、結果的に左から咲凛・花・光莉が並ぶようにしてボールに貼り付いてしまった。
三人を巻き込んだボールは、咲凛の前に固まっていたボール群を吹き飛ばして尚も突き進む。
「「「むぎゅ……むぎゅ……むぎゅ……むぎゅ
…………」」」
ボールが一回転する度に、三人の口から似た様な声が漏れる。
段々とボールの表面を占める肌色の面積がふえてきて、三人が伸されていっているのが分かる。
横並びであるが故に仕舞いにはボールの表面の取り合いになる様な状態になっていった。
(回避の……余地がないなら……どうしようも……ないです……)
(ああ……こんな感覚……なのです……ね……)
(同行すれば……伸されずに……済むと思った……のに……)
そうやって転がっていった三人も暫くはそのままの様であった。
成功
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第2章 冒険
『狂気のベルトコンベアロード』
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POW : 力付くで走り抜ける
SPD : 速攻勝負で走り抜ける
WIZ : 最短距離を走り抜ける
👑11
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粘ついたボールの群れを中を駆け抜けた猟兵たちは、次のフロアへと向かう。
階段を下りて辿り着いた先は、薄暗くて先が見えない広めの通路の様な場所であった。
大まかにみて通路の幅は、大体2~3m程度といった所であろうか。
事前情報の通り、床部分で見える範囲は全てルームランナーの様に動いている。
しかも徒歩やジョギングとかの速度では、明らかに抗えそうにない速さで回転している様だ。
見通しが立たないからと言って、飛行するのは止めておいた方が良いだろう。
第1層とは違って蒸気を使った機械製のトラップである為に、追加の罠が発動するのもかなりの速さになる筈である。
同様に壁を使おうとしても、同じ理屈で追加の罠が作動する可能性が高いと思われる。
どうやら頭を使う事が不可能ではないらしいのだが
…………。
栗花落・澪
【龍狼師団】
うーん…とりあえず挑戦前に色々試してみたいかな
【全力魔法】で氷を張ったら?
UCで罠に草花を入り込ませたら動き鈍らないか
★Staff of Mariaを動く床に定期的に押し当てながら
一瞬だけ罠範囲内に飛び入ってみて作動するか
最後ので作動しなければ体重、または足場に触れてることが鍵だから
杖で足場小突きまくれば飛んでもいける可能性
無理そうなら潔く諦めます
うん、なるべく最短距離【見切り】つつ走ろう!
人工呼吸→転ばない程度に肘鉄
<抱えられたら>
わぁ!?ちょ、夏輝君!?
無理しなくていいよ…!?
<夏輝君が潰れたら>
もー、僕を置いて脱落するなばかぁー!
(なんだかんだ心配だから回収めっちゃ頑張る)
小林・夏輝
【龍狼師団】で連携
うわぁ…こりゃマジで足鍛えられそうだ
俺はまだ慣れてるからいいとして澪大丈夫かな…
最悪抱えて走るなり庇うなりすりゃいいか
いえーい姫だっこー♪
UCには今回も柱替わりとか踏み台とか?
なってもらうけど勘弁しろよな!
澪の事も守ってやって(ぼそ)
つーわけで、澪に寄り添いつつ全力【ダッシュ】
天井付近に出っ張り等が無いかを確認
あれば片手で澪を抱えて【ロープワーク】
★改造腕時計のワイヤー収縮利用で一気に距離稼ぐ
罠が追いつかないくらい速けりゃいいんだろ!
最悪澪が無事に済むなら投げる
あ、もし俺が潰されたら人工呼吸よろs…冗談っス(痛い)
※会話中澪の呼び方非統一
夏輝はネタがん振りキャラ故扱い自由
薄暗い通路の様な部屋をローラーの駆動音が響き渡っている。
黒い床は先へとは進ませまいと、常に手前側へ流れているのが分かるであろう。
第1層を難無く突破した栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は、目の前の情景を眺めながら突破方法を思案していた。
「うーん……とりあえず挑戦前に色々試してみないと」
先程のフロアよりも狭い場所という事は、回避して進むのは難しいのは当たり前という話かもしれない。
手始めに床目掛けて魔法で氷を張ってみるも、ローラーによって簡単に砕けてしまう。
次に誘幻の楽園により床の一部を花畑としてみたが、簡単にローラーへと巻き込まれて押し花が出来るだけであった。
直接床へ介入する事が難しいと判断した澪は、思い描いた一つの仮説を行動へ移す。
「うん、これなら多分いけそうかな」
大胆にも宙に浮いた状態となった澪は、ローラーの上を少しだけ進んでみる。
それに合わせる形で自らの得物であるStaff of Mariaを、杖で地面を突く様に一定間隔でローラーへと触れながら進んでみるというものだ。
実験の結果は成功であろう、特に他の罠が発動する様子は無い。
恐らくではあるが、体重を掛けている事か足場に触れている事が鍵になるのだろう。
「よし、このまま杖で足場を小突きまくれば飛んでも……ひゃっ!?」
床を突いた杖に身体を持っていかれてしまい、バランスを崩してしまう澪。
着眼点は素晴らしかったが、床の動く速度についていけなかったのだ。
思わず目を閉じてしまう澪だったが、待っていたのはローラーの洗礼でも罠の発動でもなく。
「こういう時は無理せずに俺に任せてくれりゃいいって」
「……わぁ!?ちょ、夏輝君!? 無理しなくていいよ!?」
澪の事を心配していた小林・夏輝(お調子者の珍獣男子・f12219)が、澪の身体を抱えた上で走っていた。
全力で走る事に慣れている夏輝にとっては、自分よりも澪の事が気がかりだったのだ。
心配した矢先に澪がバランスを崩してしまったので、これ見よがしにお姫様抱っこで受け止めたのである。
完全なる役得展開、夏輝のテンションは鰻上りだろう。
「澪きゅんは気にすんなって。いえーい、姫だっこー♪」
「ちょっと!?調子に乗ってないでキチンと走ってよっ」
「ふっふーん、もし俺が潰された時には人工呼吸よろ……ぐぇ、冗談っス」
調子に乗った夏輝の頬へと澪の肘鉄が刺さる。
本気でやっていれば夏輝が転んで大惨事だろうが、その辺は澪も弁えているというより力を籠める必要は感じていなかったのかもしれない。
お互いに相手の事を心配しているという事だけは確かであろう。
その後は走る事を直接妨害する罠も無く、無事に二人は部屋の終わりまで走り抜ける事が出来たのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フロッシュ・フェローチェス
【SPD】
――ホント油断した。奇策潰しは考えてしかるべきだった……!
ただベルトコンベアはアタシのスピードを存分に活かせそう。
列車と並走した経験もある。故に速攻で走り抜けるのみだ。
ホロデバイスゴーグルで罠や大まかな距離など、情報収集はしておきたい。
ダッシュ開始。
正確な速度は分からないし、加速式及び衝角炉も出力高めでいこう。
罠が障害物系なら早業ですり抜けて走れば良いけど……。
最悪の場合は回避に集中しよう。迷宮を、罠を敵と見て戦意を高め、その速さを超えるんだ。
でも何か気になるし【迅速貫槍】を先行させてみるか。飛行に反応するならもしや?
此処まで用意周到にすれば流石に……もう潰されないよ。
※アドリブ歓迎
水野・花
空も壁もダメ(そもそも空は飛べないけど)、でも床を走ったら予言にあった女生徒さんたちみたくなっちゃうかも。
しかし、私達は女生徒さんたちと違って床がローラーになっていること、犠牲者をオブリビオンが回収しに来ることを知っています。
なのでここは「分け身の術」で出した分身ちゃんにローラーで潰されてもらい、オブリビオンに回収しにきてもらいましょう。ローラーが止まっていないと回収できないはずなのでオブリビオンはローラーを止めるはず、その隙に駆け抜けましょう。
まあ、他の猟兵が普通に突破に成功した場合にはこの作戦意味なくなっちゃうんですけどね。その時は私も正々堂々ローラーに挑みましょう。
・アドリブ歓迎です
水野・花(妖狐の戦巫女・f08135)はなし崩し的に先行した二人が、潰れる事無く部屋の奥へ到達したであろうと察する。
現状床に貼り付いているのが押し花のみである事で十分な証拠となっているであろう。
突破が可能であれば自らの分け身を呼び出す必要はないと判断し、自分も後に続こうと意気込む。
「普通に突破成功したみたいですね。私たちも行きましょうか、フロッシュさん……?」
「――ホント油断した。奇策潰しは考えてしかるべきだった……!」
一方のフロッシュ・フェローチェス(疾咬の神速者・f04767)は、赤面しながら己の選択を悔いていた。
正直なところ判断力よりも運要素が強かったのだが、彼女にとっては結果が伴っていなければ意味がないのだ。
恥ずかしい姿を晒したのは勿論だが、それ以上に不覚を取った事が許せないというのである。
「どうしましたかフロッシュさん、潰される感覚がそんなに良かったですか……?」
「そんな事ある訳がない……」
花も先程の時点でがっつりと潰されているのだが、やけに余裕のある表情で問いただしてくる。
余計に拗ねた様な反応をするフロッシュに対し、思わずにこやかな笑みを浮かべる花。
腑に落ちない気分になりつつも、フロッシュは深呼吸をしてからホロデバイスゴーグルによる索敵を試みる。
道の全長までは判断出来なかったが、少なくとも一本道であるのはコンベア部分の動きから確認が出来た。
加えて左右の壁からは特に罠が飛び出してくる様な穴なども見当たらない様だ。
「それじゃあ行こうか。先行するからついてきて」
「ええ、分かりました。お願いしますねフロッシュさん」
姿勢を低くしたフロッシュが一気にダッシュ、スピードの活かし時だと最初から飛ばしていく。
彼女は自らの脚となる衝角炉に加速式を組み合わせる事により、かなりの運動エネルギーを生成する事が可能だ。
一緒に突入した花よりも先行して、道をぐんぐんと駆け抜けていく。
事前の索敵通り走る事自体を阻害する罠は仕掛けられていないらしい。
しかし彼女は気になってしまっていたのだ、追加の罠の存在を。
「だったら迅速貫槍を先行させてみるか。飛行に反応するなら、もしかすると……」
罠を確認する事としたフロッシュは、紅き槍型機械生命体を射出した。
彼女が走るよりも先を、超高速を以って道の上を風を切り裂きながら貫いてゆく槍。
すると何かのロックが外れる様な音がする、目論見通りに追加の罠に反応があったらしい。
「やっぱりね、後は突破するだから――あ……」
ただでさえ視界の悪い道が薄暗くなった事により、フロッシュは周りを見回りて直ぐに察した。
――天井が下りてきている。
先程の部屋での妨害とは違い、進行方向の天井全てが下がっているではないか。
つまりは迅速貫槍による飛行判定で、罠が一気に解除されたという事になる。
フロッシュはスピードに乗っていた事により、天井が落ちてくる範囲にすっぽり収まってしまった。
一本道である為に抜け道は無く八方塞がりというやつである。
走っているだけなら発動しなかった罠を、用意周到のつもりが過剰警戒という裏目を引いて発動させたのだ。
「もう潰されないって、念押ししたの…………にぎぃ!?」
最後まで走り抜ける事を諦めなかったフロッシュだったが、あえなく天井と床の間に挟まってしまった。
止まっている時よりも動いている時が、衝撃が強い事を実感しつつ彼女の意識は混濁していく……
「今の音は……前から流れてくるのって、フロッシュさん
……!?」
フロッシュの後方を走っていた花は、追加の罠が発動する範囲まで到達していなかった。
天井の落下音が響いた事により、嫌な予感はしていたのでコンベアを流れてきたフロッシュを拾い上げる事に成功する。
先のフロアよりも直接的な衝撃が強かったのか、タオルを盛っている時かの様にぺらぺらである。
「大丈夫ですか、フロッシュさん
……!?」
「…………ぼお……あや……」
碌な返答の無いフロッシュが暫くは復帰困難と判断した花は、先を急ぐのを優先する事とした。
フロッシュを落とさない様にポスターみたいに丸め、リレーバトンの様に持ちつつ一気に駆け出すのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
宝海院・棗
(潰される感覚も嫌いじゃないけどどうせならいけるところまで行ってみたいな・・・)
走り幅跳びの要領で、できるだけ低く、遠くへ跳ぶイメージ。着地直前で同じような感じでスカイステッパーを使い、飛距離を稼ぐ
壁にぶつかりそうになった時だけ一時停止
可能ならスライムスリップやスペシャルスピンエボリューション(ラバーボールに変形)も併用し、万一潰されても復帰できる可能性に賭けてみる
やることは突破前提だが、潰されて復帰できなくなったら気持ちよさそうなリアクション希望(楽しんでる)
道中でペラペラの女の子を見つけ、可能なら回収してゴールまで連れて帰り、巻き取って高速回転させながら遊んだり(迷惑でなければ)
クロ・ネコノ
(アンジェリカ(f11144)とセットでお願いします)
いやぁ、さすがに油断しすぎたよ。
次はもっと…アンジェ、大丈夫?(顔を近づける)(普段から敵に巻き付いたりしてるので距離感迷子状態)
ちょ、アンジェ!跳ぶのは不味…行っちゃった、飛んでいくと追加の罠があるって話だったのに。
もしかして自分から罠に…伸ばされるのにハマった?まあ、ぺっちゃんこになる機会なんて普通はないし見守ろうか。(勘違い)
ただ走るんじゃなくて【ゴム体質】を使用、踏み出す際に足を伸ばすことで歩幅を伸ばし移動距離を稼ぐ、これでいけたら楽なんだけどね。
状況次第だけどアンジェは回収していくよ、まあ私が無事ならだけどさ。
<アドリブ歓迎!>
アンジェリカ・ヘインズビー
うぅ・・・あんなの…聞いてません…。(いつも通り無表情だが少し頬が赤い)
(クロ・ネコノさん(f06406)と一緒にして下さい)
ぼーっとしてる所にクロさんの顔が迫ってきたため思わずダッシュ、【スカイステッパー】で飛びます。
空気を蹴って、飛び上がりながら進みます。(無表情の為分かりにくいが、先程の事で頭がいっぱいで追加の罠の件は忘却の彼方)
「…あんなの…聞いてま」(罠に気付き短い悲鳴、のち変な声を上げてぺっちゃんこ)
【追加の罠、気になります。まだまだ伸び代があると思うんです物理的に。目指せ横幅通路幅!】
シエナ・リーレイ
いくよ!とシエナは恐竜さんと共に走り出します
お友達を求め彷徨うシエナは気がついたらこの部屋に迷い込んでいました
どうやらこの部屋は早く走れないと敷物にされてしまう様です
これは堪らないとシエナはスカートの中から呼び出したお友達のティラノサウルス怪人に肩車をして貰い走り始めます
奥の手いくよ!とシエナは恐竜さんに力を注ぎます。
お友達は疲れ知らずですが何らかの要因で潰されかけた場合、シエナは怪人をザウルスモードに変身させて前を走る猟兵目掛け【怪力】で床を壊す勢いで突撃させます
潰された場合、下手すると大惨事な凶行に及んだ罰なのか凄く恥ずかしい敷物になるでしょう
※アドリブ、絡み可
※潰されたらお持ち帰りで
「いやぁ、流石に油断し過ぎちゃったよ」
「うぅ…………あんなの……聞いてません……」
先程のフロアにて仲良く一緒にぺっちゃんこだった、クロ・ネコノ(弓矢が得物のゴム鞠猫・f06406)とアンジェリカ・ヘインズビー(寡黙でサイボーグなバーバリアン少女・f11144)は対極的な反応を見せていた。
潰されたりする事に慣れているクロに対し、アンジェリカは慣れない感触に無表情の顔が赤みを帯びている様に見える。
そんなアンジェリカを心配して近付くクロであったが、如何せん距離感が無かった為に顔を近付け過ぎた。
「次はもっと……アンジェ、大丈夫?」
「ひゃっ
…………!?」
「ちょ、アンジェ!跳ぶのは不味……行っちゃった」
先程までくっ付いていた相手と言えど、気持ちの整理が出来てない時に眼前に来られたら驚きもする。
アンジェリカは思わず逃げ出す様にしてスカイステッパーを使って飛んで行ってしまったのだ。
自分の所為とはつゆ知らず呆気に取られるクロに、別の猟兵が声をかけてくる。
「あっ、クロちゃんだ。やっほー」
「おー、棗さんではないか。こっち来てたんだ」
このフロアからの参戦となる宝海院・棗(クリスタリアンのスカイダンサー・f02014)が嬉しそうな声でやってきたのだ。
実はこの二人には『非常に柔軟性が高い』という共通点がある、言葉通り伸縮自在と言っても過言ではないだろう。
クロは先に行ってしまったアンジェの事も気がかりだったが、飛んで行った事から自分で罠にかかりに行ったと考察してしまう。
潰れ慣れていると感覚も違うのであろう、ぺっちゃんこになる邪魔をしてはいけないの精神である。
「今から進もうと思っていたんだよ、一緒に行くのはどうかな」
「おっけー、じゃあ一緒に行こっか」
そうして同時にスタートしたクロと棗、選択した移動方法は共に同じ原理だった。
自らの脚をゴム体質やスライムスリップで伸ばしやすくして歩幅を稼ぐ。
普通に走っているよりも大幅に長い歩幅で、距離を稼いで進むという自分たちの特徴を最大限生かした進み方である。
やっている事がほぼ一緒なので、脚がビヨヨンとしている以外は仲良く並んで進んでる様に見える。
「そうそう、さっきのフロアではねー」
「あー、実は参加してみたかったんだけどね」
罠の突破中にはあまり思えない朗らかな会話である、それだけ順調だと思っておこう。
そんな棗と同じ様に今回から参戦してきた猟兵がまた一人、コンベア手前で意気込んでいた。
「出てきてー、ティラノサウルス怪人さん!」
シエナ・リーレイ(年代物の呪殺人形・f04107)が呼び出すは、巨大なティラノサウルスの人形さんである。
ティラノサウルス怪人さんに肩車してもらうシエナは、とても楽しそうに指示を出す。
「この道を早く走らないといけません。いくよ!」
そうして駆け出すティラノサウルス怪人だったが、少しスピードが足りない様で全然前に進んでいかない。
スタミナは無尽蔵の様だが、このままでは尻尾がローラーに引っ掛かるのは時間の問題であろう。
「んー、奥の手いくよ!!」
想定より早い切り札だが、シエナはティラノサウルス怪人に力を更に注ぎ込む。
するとより活気付いたティラノサウルス怪人は、本物に負けず劣らずの迫力で目を血走らせた。
言うなれば、暴走機関車の勢いで突進する恐竜人形の誕生である。
シエナはご満悦そうな顔でティラノサウルス怪人と共にばく進するのだった。
文字通り闇雲に飛び出して行ったアンジェリカは、まだ少し頬が熱く感じていた。
通路を半分程進んだ時点で追加の罠が発動する、本人は罠の話があった事すら思い出す余裕が無かった。
そんな事を罠が考慮してくれる事などなく、気付いて上を見上げた時には天井は目の前だったのだ。
「……あんなの……聞いてま…………ひぃぅ!?」
一瞬でベルトコンベアと仲良くなるアンジェリカ、天井が上がる途中で潰れた身体が仰向けに床へ落ちてくる。
無表情には変わりないのだが、更に少し顔が赤い気がするのは気の性だろうか。
そしてアンジェリカは、コンベアによってスタート地点の方向へと流されていった。
「ちょっと、追って来ないでおくれよ」
「そーだそーだ、後ろがつっかえてる訳じゃないよね」
クロと棗は先程までのまったりムードが、ただ一つの人形により大ピンチへと変貌していた。
シエナの前に居た二人は、暴走中のティラノサウルス怪人に追いつかれていたのだ。
容赦無い進みっぷりを見せる人形に、柔らかコンビは徐々に距離を詰められていき……。
「あー、追いつか…………ぶぎゅ!?」
「わぁぁ、やめ…………ぶぢゅ!?」
二人をほぼ同時に踏み潰してしまうティラノサウルス怪人、狭い通路だけに回避する術がほぼ無かったのである。
頭を上にした状態で潰れたクロと棗は円盤状に近い形でぺったんこになってコンベアを流れていった。
柔らかい体をしているので、縦方向に伸されても恐らく大丈夫であろう。
「強い強い、良いよ恐竜……さぁぁ!?」
とても楽しそうな笑顔になっていたシエナだったが、突如ティラノサウルス怪人が転倒して投げ出される。
バナナの皮を踏んで滑ったかのような大転倒、前から流れてきたアンジェリカを踏ん付けて滑ったのだ。
「いたたぁ、恐竜さんだいじょ…………ぅぶう!?」
身体を投げ出した情けない体勢のまま、あえなくローラーに巻き込まれて伸されるシエナ。
「……んぁっ……んぶ……ぼぁ……えぼぉ……」
「……つぶっ……ぎぅ……あぎ……ぐにゃ……」
「……んちゅ……ぢぃ……ぁん……べちょ……」
「……うぶぶ……ばぁ……へぅ……ぶぼぁ……」
こうして一名の自爆と一名の暴走により、四枚の猟兵がコンベアに貼り付いたままとなった。
コンベアが一周する度に、順々にうめき声の様なモノを上げてその面積を広げていく。
暫くすると声は聞こえなくなるも、コンベアは止まらぬ為に伸され続けるのに変わりは無い。
表情も福笑いをしているが如く、強制的に崩れていってしまう。
そうして、全長20mで横幅が通路目一杯の模様みたいな姿となるまで四枚は加工され続けるのだった。
大成功
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月守・咲凛
アドリブぺちゃんこOK
「うう……酷い目に逢いました」
ぺちゃんこ状態からポン、と戻ってフラフラと立ち上がり、目の前のベルトコンベア床の高速っぷりを見て頭にでっかい汗を浮かべます。
チラッと後ろを見て、戻るのも無理そうなので諦めて一歩踏み出した途端に足を取られてグルンと転びそうになって、慌てて戻ります。
しばらく踏み出しては戻り踏み出しては戻りを繰り返しますが、時間切れで押し出されたり足を滑らせて戻れなくなったら「にゃあーー!」と叫びながらガッチョンガッチョン走り始めます。
走るのは苦手です。
普通に転んでしまい、瞬時に反応して飛行して、またトラップとの戦いへと突入します。
「にゅぐん!?」
闇雲・光莉
【心情】
割と平気なのね押し潰されても、ぺっちゃんこになってる状態って怪我あつかい?【生まれながらの光】効くのかしら?
…現実逃避してる場合じゃないわ、走るしかないのよね…運動苦手なんだけど。
とにかく走るしかない…多分潰されるでしょうけど。
でも、きっとボールよりマシよ、何度も潰されたりしないだろうし。
それにできる事はあるわ!【影の追跡者の召喚】でオブリビオンを探るのよ!
私が潰されたって消えないだろうし、この子を通して情報を集めれば役に立ってるってことじゃない?。
回収しに来てたそうだしきっと今回も…ほらあいつよ誰か回収されそう!…あれ、これわたし…情報伝えれない!?誰か助けてー!?
【お持ち帰り歓迎】
ベルトコンベアの一部がカラフルな色調となってしまったのを見て、完全に腰が引けてしまう月守・咲凛(空戦型カラーひよこ・f06652)と闇雲・光莉(人間の聖者?・f15342)の二名。
一部始終を見ていないので分からないが、かなり先の辺りで色々と物音がしていたので罠が発動したのだと思う二人。
「うぅ……さっきは酷い目に逢いました」
「割と平気なのね、押し潰されても……」
先程のフロアで一緒にボールに潰されてぺっちゃんこになっていた二人も、厚さを既に取り戻していた。
しかし容赦無く潰される感覚を思い出してしまい、どうしても恐怖との戦いとなる。
目の前では容赦無く回転するローラー、しかも原型を留めてない柄みたいなモノが貼り付いているのだ。
「現実逃避してる場合じゃないわ。走るしかないのよね……運動苦手なんだけど」
「は、はい……速過ぎですですけど行くしかないです」
諦めて帰りたい気持ちをぐっと堪え、二人で一緒に一歩を踏み出す。怖い事は一人より二人とはよく言ったものだが……
この場合は協力してなんとかなる訳では無く、気持ち以外で変わる部分は全く持って無い。現実は非情なのである。
「にゃあーーーー!!」
「むりむりむりぃー!!」
走るのが苦手な二人にとっては開幕から地獄であった、既に罰ゲーム執行タイムの様な悲鳴を上げてしまっている。
光莉はボールみたいに何度も潰されないと思っていたみたいなのだが、それは全くの間違いである。
ベルトコンベアはベルトが巡回して回転するのであって、一度巻き込まれれば永久機関なのだ。
つまりは反射次第でその内止まるボールよりも容赦がないのである。
そして少ない持久力も直ぐに尽きてしまう二人の待つ結末は勿論
…………。
「全然前に進めませ…………にゅぐん!?」
「せ、せめて影の追跡者の召喚…………びぃみゅ!?」
コンベアを5mも進めずにあっけなくローラーに巻き取られてしまった咲凛と光莉。
光莉のユーベルコードは辛うじて間に合い、監視目的として影の追跡者が召喚されてローラーに巻き込まれない位置で待機する。
オブリビオンの姿を発見したとしても、光莉には伝える術がもう残っていないのだが。
「……にゅぶ……ぃぼ……ぁお……べにゃ……」
「……いびぅ……めぁ……びぇ……ぼびょ……」
先に潰れていた四枚とは別の位置に、二枚の猟兵がコンベアに追加されてしまう。
共に涙目で潰されていたのだが、伸されてしまった顔は泣いていた面影すら消し去ってしまった。
元々身長差のある二人であるものの、全長が大体6mと仲良く同じ位の大きさまで潰れてしまっている。
次々と脱落していく猟兵たちだが、このままでオブリビオンの前での逆転はあるのだろうか……。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
シトー・フニョミョール
【POW/アドリブ歓迎】
何やら面白そうだなと思ったらルームランナーですか。久々の運動にはうってつけですぬ
乗ってみると思った以上に速いですね、矢とか棒とか飛んできて足をひっかけさせないでくだし!
あれれ、急に遅くなりましたね。さすがに燃料切れ――ふぎゃっ!?(急発進してそのまま前方に出てきたローラーに押しつぶされる)
うぅー、これはまいりましたね…あ、次のエリアに連れてってくれるみたいですね、どこの誰だかわかりませんがありがたい。
(そしてお持ち帰り歓迎)
「うーん、何やら面白そうだなと思ったらルームランナーですか。久々の運動にはうってつけですぬ」
眼前に広がる参上を目の前にして、シトー・フニョミョール(不思議でおかしなクリスタリアンの従者・f04664)は身体を捻る様にして準備運動をしている。
元々は真っ黒だった動く床には、色取り取りな模様が描かれている様な状態と化している。
そんな情景を見ても全く動じていないのは、能天気だからというよりはきっと慣れている故の反応なのであろう。
「それではレッツゴー、乗ってみると思った以上に速いですね」
乗る前からかなり高速にローラーが回転しているのは、今ならかなり分かり易くなっている筈だ。
障害物として色んな物が邪魔をしてくると考えていたシトーだが、この道は飛ばない限りは走る邪魔をしてくる事は無い。
しかしそれ以前にシトーのスタミナが早くも切れかけていた、運動不足なのに力勝負とはこれ如何に。
「はぁ、はぁ……急に遅くなってきましたね」
ローラーは一定のスピードで回転しているのだが、疲労してきたシトーは錯覚を覚えてしまい走る速度を緩めてしまう。
ただでさえ早く走っている訳ではないので、そんな事をしてしまえば勿論……。
「燃料切れであれば…………ふぎゃっ!?」
身体にガクンとした衝撃を感じたと思った次の瞬間、シトーの目の前は真っ暗となる。
早く走りぬこうとしていれば何とかなっていた可能性もあるが、残念ながら力付くではどうにもならなかった。
(うぅー、押し潰されてしまいました。これは参りましたね……)
しかし他の面々とは違ってシトーは、コンベアにうつ伏せにめり込んで動けない様な感じになっている。
流石は石のクリスタリアンといったところだが、身動きが取れなければ先に進めないのは一緒だ。
盛大に犠牲を払ったベルトコンベアの出口付近、壁側から直径30cm程のローラーが射出された。
ローラーはベルトの上を流れていき、入り口側のコンベアの切れ目の部分で止まる。
ベルトの清掃目的に使われているローラーであり、通過する者が居なくなった後にのみ発動する仕組みだ。
先程までに潰された者を雑に巻き取ってく、コンベアにとっては異物でしかない為に仕方が無い処置である。
潰れてしまった身体があちこち重なっているのだが、特にリアクションは聞こえてこない。
それもその筈、何度も何度も伸されてしまったが為に弱い刺激には反応がほとんど無くなってしまったのだ。
伸され過ぎていて誰も喋れないのだから、反応を期待するのが無茶振りなのであるが。
例外としてシトーは、ローラーに抱き着かされるように固定された。
コンベアに人型の穴がぽっかりと開いている、これは修復しなければ余計に走り難そうだ。
そうしてローラーは壁側に存在する穴へと落とされた、召喚されていた影はその姿を見届けてから消滅する。
有り体に言えば廃棄である、しかしこの罠を利用している存在がそこに待ち受けているのであった。
苦戦
🔵🔴🔴
第3章 ボス戦
『ミミックロボット』
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POW : トレジャーロボット
無機物と合体し、自身の身長の2倍のロボに変形する。特に【貨幣もしくは宝石】と合体した時に最大の効果を発揮する。
SPD : ゴーレムフォース
レベル×1体の、【額】に1と刻印された戦闘用【小型ゴーレム】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : フルスチームグラップル
【フルパワーでの掴みかかり】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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ベルトコンベアを抜けた先にある階段を下りた先に、その部屋は存在していた。
かなり開けた大部屋の中央付近に宝箱の様な物が見えるが、それ以上に目を引くのは部屋の中ではないだろうか。
壁から床に天井に至るまでを様々な色どりを見せているのは、無残なまでに潰し広げられた学生たちの成れの果てなのである。
いくらなんでもあそこまでぺっちゃんこにされれば、回復手段を講じない限りはどうにもならないであろう。
そして部屋にある宝箱が動いている生命体である事も、直ぐに判断がつくのではないだろうか。
かなりはしゃいでいるみたいな動きで、3m弱の柱の様なモノを弄っている。
それは先のベルトコンベアで回収されてしまった面々であった、オブリビオンは思わぬ収穫が得られた事に対してかなりの上機嫌なのであろう。
楽しそうに一枚ずつ剥がして床に敷いている最中の様子だ、このままでは部屋の中の模様として過ごす運命となってしまうかもしれない。
幸いな事にオブリビオンは猟兵が部屋に到達した事には未だ気付いていない様だ。
色んな意味で故障しているであろうオブリビオンを、蹴散らしてしまわなくてはならない。
無論気を付ける必要はある、こんな迷宮のオブリビオンなのだから攻撃も今までと同様なのだという事を。
※注意※
第2章でお持ち帰りされている猟兵は、オブリビオンの目の前に不利な状況でスタートとなります。
潰された状態から復帰しているか否かは任意となりますので、自由に行動して頂いて構いません。
逆に第2章を突破している場合は有利な判定が可能とご認識頂けると幸いです。
宝海院・棗
「伸されてふやけているのも嫌いじゃないけど、ちょっと壊れてもらうね!」
まず、敵が目を離した隙にスライムスリップで液状化して脱出、基本的に液状を維持(液状になれば潰れてもすぐ戻れるかも?)
スペシャルエボリューションスピン(ラバーボール変身)やスカイステッパー、技能のスライディング、空中戦、残像を駆使し、敵を翻弄
隙を見て超高速回転の勢いと2回攻撃、鎧砕き、傷口をえぐるの技能を生かした連撃を放って弱らせる(近くの女性PCを巻き込んでヨーヨーの如く回転に巻き込んだり?)
小型ゴーレムが出たら範囲攻撃で纏めて攻撃
終わったらその時点で潰れている女性PCを丸めて(筒状、球体は問わず)ぐるぐる回して遊んだり
シトー・フニョミョール
ぬーん、まさかこんな仕打ちを受けるとは(ローラーに埋められたままのシトー)
まずはこのローラーを何とかしないとですね。こんな時こそ真の姿ですよ。
真の姿パート1、とーぅ!(ローラーを石の肌ごと砕き、出てくるのは白い人間体)シトーヒューマンフォームですよ!クリスタリアンだけど。
さてこのままだと捕まってぐしゃっと丸められてしまいます。
クリスタライズで隠れつつこっそり合流しましょう。
あ、ついでに何枚かぺしゃんこになってるのもできたら回収しましょう。
回復は後回しです。救助救助。
・失敗して捕まったら
ぬああああ!やらかしたぬうううう!(フルスチームグラップルで球体状に丸められたのちぺしゃんこにされる。
栗花落・澪
【龍狼師団で参加】
生徒達みっけ
早く助け……待ってなんか仲間いない?
とりあえず夏輝君、作戦通りお願いね!
僕は【共瞑の祈り】で姿を消し
夏輝君が囮特攻してる間に背後に回る
変な罠が無いかを一応警戒し【見切り】つつ水の【全力魔法】
だってなんか水に弱そうだし
ついでに敵がよろけたところを【空中戦】の勢いで飛び蹴りして張っ倒…
あっ、ごめん勢い良すぎた!避けて!
(夏輝君の胸に慌ててダイブ)
僕一人だと組み付きとか弱点過ぎるので
なるべく夏輝君と行動しつつ
追いつかれかけたら飛行+攻撃用の指定UCで追撃
隙を作ってから夏輝君のところに戻るを繰り返す
ちょっと追いつかれるよ!
回避回避ー!
※必要に応じて他の猟兵に回復UC
小林・夏輝
【龍狼師団で参加】
俺は澪が消えたのを見計らい囮として仕掛ける
★バットのグリップを外し
★R-Lを取り付けて
弾補充不要のロケットランチャーに変形
【クイックドロウ、援護射撃】で不意打ちドーン!
ぬぁー潰されてたまるかー!
全力【ダッシュ】で動き回ったり
★腕時計のワイヤーを敵の頭に引っ掛け
収縮で急速接近からの【零距離射撃】+反動で退避
機械は衝撃にも弱い筈ってどわー!?
敵が倒れてきたら慌てて回避しつつ澪も難無く抱え即【逃げ足】
ヤベー死ぬかと思った…
指定UCで足止めしつつ
くっそーしつこいなぁ
いっそ澪きゅんの色仕掛けで…ゴメンナサイ
※澪と共に他の猟兵が攻撃する隙作り前提
※夏輝に関しては他者のネタ巻き込みも大歓迎
クロ・ネコノ
<アンジェリカ(f11144)とセットでお願いします>
(さすがにここまでされるとは思わなかったよ)
真の姿になる事でぺちゃんこから回復しよう。<真の姿は身長3分の1程のSDキャラ>
【マルチキャットハンド】で爆発する矢を複製、直接ぶつける事で起爆するよ。
「腕に自信が無いわけじゃないけどさ、壁も床も学生達が張り付いてる状態で外すと危ないからね」(足元のアンジェを気付かずに踏みながら)
もし倒した後も描写があるならアンジェを探すよ。いや生徒達を回復しないといけないか、見つけたアンジェは一旦畳むか丸めるかして服の中に仕舞おう。さあ生徒達を回収だ。
<アドリブ歓迎!>
アンジェリカ・ヘインズビー
(クロ・ネコノさん(f06406)と一緒にして下さい)
<あの伸び方の描写とこの短期間で復帰出来てる気がしません、言葉を話せる程度には回復してるかもしれませんが。
なので床に敷かれてます、丁度オブリビオンと猟兵達に挟まれる形で!。
当然オブリビオンや猟兵達にも踏まれ、場合によってはUCも喰らい、その都度変な声が漏れます、順調に回復してる証拠ですね!>
【(クロさんによってぺっちゃんこの状態で)お持ち帰り希望】
ロータス・プンダリーカ
援護するにゃ!
と、戦闘が始まって少し経ったあたりで颯爽と柱の陰から小型ゴーレム撃ち落とす形で援護射撃しつつ登場。
足が短すぎてベルトコンベアで僅か3歩で脱落してペシャンコになったにゃんて、そんな事はないですにゃ!――あ(言っちゃった)
宝箱の分際で猟兵を狩ってコレクションするとか、ケシカラン奴だにゃ。
小型ゴーレムは合体阻止しつつ味方の援護に徹して撃ち落としますにゃ。
数が減った瞬間を見て本体にダッシュして接近。
零距離からの一撃を目とおぼしき隙間にお見舞い。
その一瞬、長身の人間の青年の様な姿を見せる。
「この一撃、骸の海まで持って還れ!」
撃ったら跳躍して敵から離れると猫に戻り。真の姿は長く続かにゃい。
闇雲・光莉
【心情】
こ、このまま飾られるなんて嫌よ、なんとかしなくちゃ。
【WIZ】
これしかない、【生まれながらの光】で自分を回復するわ。
潰れたままじゃどうしようもないもの、元に戻ったらすぐ逃げれば…
よし戻れた、これで助か (襲いくる疲労を堪え、振り返ればこちらに腕を伸ばすオブリビオンが!)
【絡み歓迎】
フロッシュ・フェローチェス
アタシがぺっちゃんこ、警戒し過ぎで……アハハ……。
(膝抱えて放心中)
ハッ!?ってこんな事やってる場合じゃない……!
アイツが黒幕。
もう潰されてたまるか。絶対に、二度と潰されないから、ホント。
先制攻撃。ダッシュの勢いのまま刻天炉の射撃を車輪部分へ撃ち込む。
次に連射。敵が一度動く間に二回攻撃可能な早業を見せてやる。
その車輪が怖いんだ。罠とか思い出して……!
だから集中攻撃、これなら大丈夫だ。っていうか模様……ホントに生きてるよね?
一つ仕込みはしとくよ。
【碧血暴速】発動で強制的に復帰して、素手で乱れ殴り、翠雷纏う超速の蹴撃でぶっ壊す為に。
まあ普通にトドメで使う事になるかな。
※アドリブ歓迎・ペチャンコOK
シエナ・リーレイ
※アドリブ、絡み歓迎
はうぅ、癖になりそうだよぉ。
他の猟兵と一緒に治療されたシエナ
そんな彼女の目の前には只管に敷物を作り続けるロボットさんがいました
機械故にお友達になれるかは分からないけれど、シエナは彼と仲良くなる為に結果を予想していながらも彼との対話を試みます
あなたはなんで敷物に拘っているの?
ロボットさんに丹念に潰し伸ばされ絞られて再び立派な敷物にされたシエナ
その時に襲い掛かる快感はシエナにイケナイ性癖を開花させるには十分でしょう
戦闘後が終わり元に戻れても潰される快感に魅入られたシエナはロボットさんの残骸をユーベルでお友達にすると周囲を巻き込む勢いで延長戦を開始します
皆ももっと味わいましょ?
水野・花
うーん、なかなか芸術的な部屋ですね。もし私をコレクションに加える事が出来ていればもっと芸術的になっていたでしょうに残念でしたね!
回収されちゃった人達からオブリビオンの気をそらすためにも「フォックスファイア」で出した狐火を一つまとめてぶつけて不意打ちを食らわせてやります。
掴みかかられたらユーベルコードも封じられてそのままぺちゃんこにされてコレクションの仲間入りしてしまうと思うので狐火をぶつけつつ距離を取って戦いましょう。
できるだけ潰されちゃった人達は踏まない様に気をつけます。もはや感覚も残ってなさそうですけど、一応。
余裕があれば「呪詛吸い」で潰された人達を回復しに行きましょう。
・アドリブ歓迎です
月守・咲凛
ぜったいに!ぜっ!たい!に!ゆるしません!
ペラペラ状態から戻りながら、怒りの表情でオブリビオンを睨みつけます。
身体がちゃんと動くようになるまでは、敵の動きを見切りながらなるべく身体に負担がかからないよう避けていきます
身体が動くようになったら、攻撃してきた所を残像を残して空中に飛び上がりいきなりUCを発動、手以外の武装ユニットからミサイルやキャノンを撃ち込みながら突撃して、二刀流チェーンソーの鎧無視で二回攻撃、斬りつけた所でチェーンソーを放り投げて腕部兵装から零距離射撃でガトリングとキャノン砲を撃ち込んでやります。
倒した後はローラーの所に持っていきます。さて、では今度はあなたがぺちゃんこです。
水瀬・美鳥
「こんな罠...初めてです...」
3章からの参加ですみません。1、2章で通ったトラップで4、5回ぐらい潰されて伸ばされてなおも超えてきたことで
UCの軟体質変化で、回数限りありますが潰されて自力で復活できます。が、何回潰しても大丈夫です!
とりあえず、先にお持ち帰りされた方々を元に戻したいけど、どうしましょう...私は支援魔法とか回復魔法が上手なだけで攻撃魔法は苦手なんです
今生き残ってる味方さんに支援魔法を沢山かけて、自分にもかけて回収して回復もしなきゃです!
(アドリブ連携、アドリブぺちゃんこやお持ち帰り大歓迎)
(本人は既に何回も潰された上で来てるので少し弱体化してます)
ベルトコンベアを抜けてきた面々は、文字通り部屋一面に広がる生徒たちを目の当たりにする。
その見事なまでの潰れっぷりは、人としての尊厳をの一切を根こそぎ摘み取られた姿といって良いだろう。
事情を知らなければ、そもそも壁に貼り付いているモノの正体すら判断出来ないのではないか。
罠にかかった生徒がこの部屋に落ちてくるとはいえ、この量が集まると壮観である。
「うーん、これは中々お目にかかれない芸術的な部屋ですね。もし私をコレクションに加える事が出来ていれば、更に芸術的になっていたでしょうに……残念でしたね!」
水野・花(妖狐の戦巫女・f08135)は自分に正直な感想を述べる、心なしか鼻息が荒い気がするが気の性であろう。
そんな風に意気込む花の手により、ベルトコンベアでお持ち帰りされてきたフロッシュ・フェローチェス(疾咬の神速者・f04767)は部屋の手前で膝を抱えて放心していた。
「アタシがぺっちゃんこ。警戒し過ぎで……アハハ
…………」
巻かれた状態から厚みを取り戻してから、此処に来るまでの間ずっとこの調子である。
よっぽどショックだったのは勿論だが、もしかすると伸された影響で思考能力が低下しているからかもしれない。
「フロッシュさん、落ち着いてください。敵はもう目の前ですよ」
「…………ハッ!?こんな事やってる場合じゃない、アイツが黒幕……!」
花の呼びかけにより何とか正気を取り戻したフロッシュ。
ミミックロボットの姿を視認すると、立ち上がり自らに気合を入れ直す。
「もう潰されてたまるか。絶対に、二度と潰されないから、ホント」
「隣で聞いててもフラグにしか感じないのですけど」
そこまで心配そうには見えない笑顔で、花はフロッシュの誓いに対して疑問を投げかけるのであった。
その横では龍狼師団の二人、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)と小林・夏輝(お調子者の珍獣男子・f12219)が作戦をおさらいしていた。
事前に連携方法は考えていただろうが、相手の特徴や戦う場所についての情報が薄かったのだから仕方ないのだ。
更には合流している仲間が少ない上、オブリビオンにお持ち帰りされている人数の多さが想定外だった事もあるだろう。
本当に何故あんなに脱落しているのか、一部始終を見ていない二人には疑問かもしれない。
「先に進んじゃったから気付かなかったけど、仲間があんなに捕まってるなんて」
「考えても分からないし、とりあえず助けんと駄目だろうな」
「そうだね……とりあえず夏輝君、作戦通りお願いね!」
「おうよ、澪きゅんの為にも良い所みせちゃおーっと」
「うっさい、さっさと走れーっ!」
「ぐえっ、へいへい分かりましたって」
軽くお灸を据えられた夏輝は正面からミミックロボットへ突っ込み、澪は若干頬を赤くしつつも共瞑の祈りにより姿を消し迂回していく。
そう、二人の考えは先鋒として仕掛けるだけではなく、他の面子に対する時間稼ぎを兼ねているのだ。
一方のミミックロボットだが、柱に貼り付いている猟兵たちを1枚ずつ剥がしては床に並べていた。
「――、――、――!」
珍しい見た目の獲物がかかり、上機嫌そうな音をあげている。
既にかなり伸されてしまっている姿を、このオブリビオンはトドメを差すが如く潰してしまおうというのだ。
床に広げられた猟兵たちよりも、壁に貼り付いている生徒たちが更にぺっちゃんこなので嫌でも察するレベルである。
やけに几帳面なオブリビオンの手によって、きっちり等間隔に並べられていっている。
ローラーに何度も巻かれた訳だが、やはり各々によって耐性が違う事もあってか反応も様々の様だ。
(……流石に此処までされるとは思わなかったよ)
(伸されてふやけているのも嫌いじゃないけど……)
クロ・ネコノ(弓矢が得物のゴム鞠猫・f06406)と宝海院・棗(クリスタリアンのスカイダンサー・f02014)には、明らかにまだまだ余裕がありそうな感じが見て取れる。
得手不得手というモノは存在するだろうが、潰される事に対してイニシアチブが取れるというのは流石としか言い様が無い。
残りの四枚が時折ピクピクする程度の反応を見せていないのと比べれば、かなりの違いではなかろうか。
因みに、シトー・フニョミョール(不思議でおかしなクリスタリアンの従者・f04664)は潰れているのとは違うからだろうか柱にめり込んだまま放置されている。
しかしオブリビオンの目の前で復活を試みれば、もぐらたたき宜しく再び床と仲良くなるであろう事は丸分かりだろう。
どのタイミングで復活するかを考える二人だったが、好機は思ったよりも早く訪れる。
「うっしゃあ、気合入れて打ち込んでやるぜ!」
真っ先に突っ込んでいった夏輝が、バットのグリップを取り外して拡張パーツとして機能するR-Lを取り付ける。
この変形機構により、夏輝のバットはロケットランチャーとなるのだ。
敵の接近に勘付いていなかったミミックロボットに弾頭が直撃して爆煙を上げる。
「こっちからも攻めさせてもたうよ!」
夏輝とは反対側まで一気に回り込んだ澪が、渾身の水魔法をぶっかける。
部屋の中に罠が無いか見ていたが、今までのフロアと違い飛んでも問題は無い様だ。
爆発による煙が水により一層広がっていく、室内である為にかなり視界が悪くなるであろう。
「さってと、今の内に真の姿になってぺちゃんこから回復しよう」
「私も今の内にっと、どろどろ~……」
クロは元の身長より縮むというより、頭身そのものがデフォルメキャラの様に変化していく。
棗は潰れたままの身体を液状化した上で、自らコントロールできる形に再形成していった。
形状変化を自在に操っている点で、彼女たちは似た者同士かもしれない。
「ここにこうしてっと、視界が悪い状態で外すと危ないからね」
「私たちを相手するには、ちょっと役不足じゃないかなっ」
突然の襲撃に対応すべく、ミミックロボットはゴーレムフォースを発動させる。
しかし間近に居た二人に勘付かれてしまい、マルチキャットハンドで複製された爆発矢とスペシャルエボリューションスピンを活用した高速回転によって小型ゴーレムたちは吹き飛ばされていく。
「ど、どど、どうしましょう……よく見えないですけど支援しないと」
遅れてフロアに到達した水瀬・美鳥(新米?支援魔法少女・f15711)は、既に火蓋を落とされていた戦闘を見て動揺する。
心なしか顔も赤い彼女が遅れてやってきたのは、それなりの理由がある。
それはこれまでの罠に抵抗しながら進んでいたからではないだろうか。
どういうことか解説していくと、先程のベルトコンベアのローラーに美鳥は巻き込まれてぺっちゃんこにされている。
本来であれば潰され続けてお持ち帰り組に合流するのだが、彼女は持ち前の復活能力で強引に突破してきたという訳だ。
強引に例えるとするのであれば、乗り過ごしたバスを全力で追いかけた後みたいに疲労しているのに近い感じではなかろうか。
(こんな罠……初めてでしたし……あっ)
美鳥はオブリビオンへ突っ込もうとしていたフロッシュと花の姿を見つけて駆け寄る。
「遅れて申し訳ありません、私が支援しますっ」
「ああ、そいつは助かる……」
「では一緒に赴きましょう」
身体に強化魔法をかけてもらったフロッシュが一気にダッシュする。
数度の爆発によりオブリビオンの周りはかなり視界が悪いが、フロッシュにとっては些細な事だ。
加速したスピードの勢いを殺さず、刻天炉による射撃をミミックロボットの車輪部分へと打ち込む。
更に見事な早業により再び車輪への連続攻撃をしかけていく。
「今はその車輪が怖いんだ。罠とか思い出して……!」
確かにベルトコンベアのローラーは車輪が生命線だが、このオブリビオンにそこまでの駆動性はあるだろうか。
思いがけない理由で車輪を連続攻撃され、動きが鈍くならざるを得なくなるミミックロボット。
「さぁ、一気に畳みかけましょう。狐火を纏めてぶつけて差し上げます!」
花のフォックスファイアにより産み出された狐火が、一個の火球の様になって命中する。
攻撃の方向性が見事に合致しており、ミミックロボットは猟兵たちに翻弄されていく。
煙がどんどん充満してきている部屋の中で、かなりの視界不良となっているオブリビオンの足元。
近接攻撃を仕掛ける面子も居る為に、かなりの混沌具合と化していた。
「こ……ぼぶ……はふぁ……ぴゃ」
「ふ……ろふ……あみゃ……はぇ」
「ば……はも……ぅへへ……うひ」
床に並べられていた時と、縦横比が逆転するかの勢いで潰れている三枚から変な声が漏れる。
今現在の並び順で言うならば、闇雲・光莉(人間の聖者?・f15342)、アンジェリカ・ヘインズビー(寡黙でサイボーグなバーバリアン少女・f11144)、シエナ・リーレイ(年代物の呪殺人形・f04107)の三名だ。
かなり伸び広がってしまっており、既に周りに存在する模様みたいな姿の一歩手前ではなかろうか。
何故こうなったかというと、事態は少しだけ前に遡る。
「こ、このまま飾られるなんて嫌よ。ひとまず逃げなくちゃ」
生まれながらの光にて復活した光莉は、その時点で潰れていた他の三名を放っておけずに治療する。
疲労にてふらつく光莉をアンジェリカが支える中、シエナが薄々結果に勘付きながらも対話を心みてしまったのだ。
「あなたはなんで敷物に拘っているの?」
「――――!――――――!!」
目の前の獲物が復活したのなら、再度潰すしかないという考えの元でミミックロボットの大きな腕が伸びる。
フルスチームグラップルによる一撃は、シエナの背後に居た光莉とアンジェリカを巻き込んだのだ。
後は想像の通りの展開である、三枚とも何かを喋っている様にも聞こえるが戦いの音の中では聞き取れないであろう。
伸ばされ過ぎて同じ表情をしている様にしか見えない三枚は、なんとも言えない感覚に支配されてゆく。
そして位置的な問題で、この後も何度も踏まれては情けない声を上げる事しか出来ないのであった。
「ぬーん、まさかこんな仕打ちを受けるとは。ですが今なら抜け出しても大丈夫そうですね、こんな時こそ真の姿ですよ、とーぅ!」
「ふに゛ゃっ、びっくりさせないでくださいにゃ」
「居るなら居るって言ってくれませんとー」
シトーがローラーもろともを砕いて真の姿を見せた為、陰に隠れていたがロータス・プンダリーカ(猫の銃形使い・f10883)驚きの声を上げる。
そもそも、このケットシーはいつからローラーの側に居たのだろうか。
「こっちにいる事は察してほしいにゃ。足が短すぎてベルトコンベアで僅か3歩で脱落してペシャンコになったにゃんて、そんな事はないですにゃ!――あ」
自分で説明してしまうというコテコテを披露するうっかりにゃんこ、通りで毛並みの乱れがあるだろう。
「と、ともかく援護してやりますにゃ」
「そりゃどーも、一度退避させてもらいましょう」
シトーはクリスタライズにより姿を隠しつつも慎重に進み、潰れまくっている三枚の回収に成功して退避する。
ロータスはその間に攻撃の注意を引く様にする事を意識して援護射撃を行っていく。
「もう!もうもう!ぜったいに!ぜっ!たい!に!ゆるしません!!」
怒りの感情をこれでもかと爆発させる月守・咲凛(空戦型カラーひよこ・f06652)、完全にぷんぷん状態である。
光莉による回復により一足先に体勢を整える為に飛んでいた為、残った三枚の様にはなっていなかったのだ。
飛行ユニットの調子が戻った事を確認した咲凛は一度着陸、それはミミックロボットに自らを視認させる為であった。
「――!――――!?」
「へへん、遅すぎですっ。武装ユニットを腕部以外全開放、行きます!」
ゴーレムフォースを展開して仕掛けてきたのを視認した咲凛は、残像を残すレベルのスピードで再度空中へ。
更に宙返りをするかの様に回転してから、内臓のミサイルやキャノンをしこたま打ち込んでいく。
「ざくざくのぼこぼこにしてやります!」
「――――――!!」
呼び出した小型ゴーレムは沈黙した所へ、咲凛は更に距離を詰めて二刀流チェーンソーを叩き込む。
ミミックロボットの外装となる宝箱の表面装甲が大きく抉れ込んでゆく。
そして、装甲が弱まった箇所へと残していた腕部兵装から全距離によるガトリングとキャノン砲を撃ち込んだ。
これには堪らずその大きな手を床に付けて苦しそうにするミミックロボット、かなりの有効打だろう。
「うん、これはチャンスだね。一気に吹っ飛ばしちゃおう!」
よろめきそうになっているミミックロボットを見て、牽制に徹していた澪が側面の空中から飛び蹴りを放つ。
バランスを崩しそうになっていたミミックロボットにとっては、絶妙のタイミングとなって派手に横転してしまう。
しかし攻撃により思ったより突進の勢いが弱まらず、澪は床をダッシュ中の夏輝の元へ突っ込んでいく。
「あっ、ごめん勢い良すぎた!避けて!」
「ちょちょちょ、いきなり過ぎて無理っ」
夏輝は澪を抱きとめるも勢いを止められず、水に濡れた靴が滑ってしまいそのまま二人で吹っ飛ぶ。
そのままの体勢で壁に頭からごっつんこ、そのまま澪が夏輝に折り重なる様な形で共に気絶してしまう。
二人仲良く頭からひよこが出ている様にも見える、でも何故だか少し幸せそうな表情なのであった。
タイミングを同じくしてフロッシュは車輪への集中攻撃を続けていた。
「この損傷なら、そろそろ……えっ」
攻撃を受け続けた車輪は表層が剥がれ落ちて、誰が見てもぼろぼろになりつつあった。
そして車輪の軸が軋み始めた所で先程の澪キックが炸裂、片輪が折れて外れたのだ。
自分が意識していたタイミングより早い、巨体が自分に倒れこんでくるという事は……。
「今回は計算通りだと思っ…………たぎゅ!?」
色んな意味で気合十分であったフロッシュは、ミミックロボットの下敷きになってしまう。
「さて、畳みかけますかにゃ」
ミミックロボットが横転したのを見て、ロータスは好機と見て距離をつめていく。
近付くロータスの目の前で、ミミックロボットの足元で突然緑色の電撃が蠢く様に爆発した。
「いい加減に……してもらおうか!」
フロッシュが碧血暴速『ストロング・バーサーカー』により、潰された身体を強制復帰させたのだ。
先程とは比べ物のならないスピードで素手での打撃を加えていく。
そこに駆け付けたロータスの零距離射撃と、フロッシュの翠雷を纏った超速の蹴撃が重なる。
「この一撃、骸の海まで持って還れ!」
猫口調を置き去りにしたロータスの姿、ほんの一瞬ではあるが長身の人間の青年の様な姿が見える。
隣にいたフロッシュも姿形を認識する前に、跳躍したロータスはいつもの猫であった。
「ふぅ、ざっとこんなものですかにゃ」
「まぁ、そうだね……任務完了」
そうして一件落着した迷宮探索えあったが、その後も少し色々とあったらしい。
アンジェリカは回復される前にクロに回収されて、帰還後もお楽しみタイムとなったり。
棗とシトーが光莉に加えていつの間にか潰されてた美鳥を、クロス回転させて遊んでたり。
倒されたオブリビオンをお友達にしようとするシエナと、徹底的に潰そうとする咲凛が対立したり。
澪が夏輝の事を誰が見ても照れ隠しと分かる勢いでぽこぽこ殴ってたり。
なんだかんだで潰され続けたフロッシュが何かに目覚めないか心配だったり。
実はそんなフロッシュがちょっぴり羨ましく思っている光が居たり。
数えたらキリが無いのだが、仕方が無いのではなかろうか。
だがこの学園には様々な迷宮があるのだ、深淵が見えないからこその迷宮なのだと。
大成功
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