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エンドブレイカーの戦い⑮〜ピラータ・ディ・アクエリオ!

#エンドブレイカー! #エンドブレイカーの戦い #クルール・ザ・ウォータ #伝説のゴンドラ海賊ウォータ


 滅びの大地、最果ての荒野。
 しかしその地を荒野と呼ぶことは、最早適切ではないだろう。何故なら赤茶けた大地は今、広大な海原へと変じ、まるで元からそうであったとでも言うように蒼い水面を波立たせているのだから。
 そんな中に響き渡る、妙に間延びした声があった。
「我こそは、大海賊ウォータであ~る!」
 海賊船、否、海賊ゴンドラを模した帽子に、ずんぐりむっくりとした体型。やたらと円らな瞳に、一見邪気とは程遠い笑顔の口許。豊かな髭を顎の下で一つに結んだ、丸鼻の大海賊――『ウォータ』は朗々と配下達へ呼び掛ける。
「エリクシルの野郎ども、ワガハイの願いをバンバン叶えるのであ~る! ワガハイの願いは単純明快、曲解の余地も無いのであ~る!」

 殺して、バラして、死体を晒せ!

 張り付いたような笑顔のまま、大海賊は高らかに声を上げ、配下達が呼応する。捨て置けばその願いの赴くまま、彼らはこの地に生きるすべての命を絶やすまで、嬲り、殺し、踏み躙っていくのだろう。

●クルール・ザ・ウォータ
「お疲れ様。みんなの頑張りのお蔭で、滅びの大地の最果てに続く道が開けたわ」
 ところ変わって、水神祭都アクエリオのとある酒場。集まったエンドブレイカー、そして猟兵達を前にして、クリスティナ・ミルフィオッリ(千紫万紅・f39073)は口を開いた。
「最果ての荒野では、『11の怪物』の一柱『クルール』がエリクシルの軍勢を編成しているみたい。みたい……なのだけど」
 そこまで言って、クリスティナは口ごもる。どうしたと先を促されると、うーん、と珍しく眉間に皺を寄せて女優は言った。
「そのクルールという怪物は、ある伝説上の人物と融合しているそうなの。それが、ゴンドラ海賊『ウォータ』……遥か昔にこのアクエリオを荒らし回ったと言われてる、残虐非道の海賊よ」
「伝説の海賊……」
 一体どんな奴なんだと、猟兵達が息を呑む。するとクリスティナは手持ちの鞄の底を浚って、小さなメダルを一枚取り出した。
「これよ」
 ぺかー、と光り輝く赤いメダルには、ゴンドラを模した海賊帽を被ったゆるキャラが描かれている。彼女の意図を量り兼ねて、猟兵達は首を傾げた。
「これよ……と言われても」
「これは?」
「だから、ウォータくんよ」
「ウォータ『くん』!?」
 どういうことなんだってばよ、とその場の誰もが戦慄する。けれどそう言われても答えに窮するのはクリスティナとて同じようで、娘は困ったように眉を下げ、続けた。
「これは、八月のアクエリオ水神祭で使われるメダルでね。ウォータくんは、水神祭のマスコットなの。伝説のゴンドラ海賊をモチーフにしてる、とは知ってたんだけど……」
 大海賊ウォータの配下であるエリクシル達は、身体の一部が結晶化した海賊のような姿を取り、魔改造した高速ゴンドラを用いて襲い掛かってくるだろう。これに対抗するにはこちらも水上戦、あるいは水中戦で彼らに対抗するための備えが必要となる。エリクシルの軍勢が準備を整え仕掛けてくる前に、こちらから攻め入って着実に殲滅してしまいたいところだ。
 でも、と続けて、クリスティナは言った。
「どうしてそんな悪逆非道の海賊を、マスコットなんかにしちゃったのかしらね……?」
「…………さあ」
 アクエリオ人の彼女に分からないことが、外から来た猟兵達に分かるわけもない。
 気をつけてねと送り出す娘を背に、猟兵達は微妙に納得のいかない気持ちを抱えたまま、滅びの大地へと旅立った。


月夜野サクラ
 お世話になります月夜野です。
 以下、シナリオの補足となります。

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●概要
・戦争シナリオにつき、1章で完結となります。
・ボス戦扱いですが、実際に相手にするのはエリクシルの軍勢です。
・個別リプレイを想定しておりますが、組み合わせた方が面白くなりそうだな、という場合はまとめてリプレイにする可能性があります。指定の同行者の方以外との連携がNGの場合は、その旨をプレイング内でお知らせください(ソロ描写希望、など)。
・受付状況等をお知らせする場合がございますので、マスターページとシナリオ上部のタグも合わせて御確認を頂けますと幸いです。

●プレイングボーナス
 凶悪進化エリクシルの群れに対処する/水上戦または水中戦に適応する。

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 敵は魔改造ゴンドラで襲ってきますので、水上移動の手段が必要となります。
 自前のゴンドラを持って行ってゴンドラ同士で水上戦をしていただいても構いませんし、飛翔などの手段を用いて戦っても構いません。
 魔改造ゴンドラには普通の超高速ゴンドラのほか、さまざまな武器で武装したもの、水圧砲で攻撃してくるものなど色々。演出はご随意にどうぞ。

※ご注意※
 完結することを優先して進めるため、書ける範囲での採用・執筆となります。
 全採用は難しい場合がございますので、予めご了承いただけますと幸いです。

 それでは、ご参加を心よりお待ちしております!
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第1章 ボス戦 『クルール・ザ・ウォータ』

POW   :    海賊殺法
【剛腕】で装甲を破り、【ローキック】でダウンさせ、【馬乗りパンチ】でとどめを刺す連続攻撃を行う。
SPD   :    海賊乱舞
【海賊パンチ】【海賊キック】【海賊頭突き】で攻撃し、ひとつでもダメージを与えれば再攻撃できる(何度でも可/対象変更も可)。
WIZ   :    ウォータ・パワーボム
掴んだ対象を【水】属性の【パワーボム】で投げ飛ばす。敵の攻撃時等、いかなる状態でも掴めば発動可能。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
ルシエラ・アクアリンド
まあ…戸惑うよねぇ
見た目はああだけど昔から割と物騒な事は
言っていた気がする様な気がしないでも…ない?

エリクシルが群れだというなら纏めて効率よく対処を
結界術、精神攻撃含めたUC蒼の天蓋を展開
続け防御強化の意味含めオーラ防御とUC『elementum』展開
状況に合わせ空中機動、水中機動と息止め、軽業、気配察知用い
光の弾と弓で不意打ちや矢弾の雨、範囲攻撃使用し死角と隙を作り
水中に居る場合は影からの攻撃も試みる
全方位からの攻撃を行なうつもりで纏め上げて一気に撃破

近接攻撃が避けきれない場合は魔力纏わせた弓で
ゼロ射撃と同時に影縛りと光弾で再攻撃を止める

アクエリオ様が居る地で好き勝手させる訳には行かないから


マウザー・ハイネン
なんですかこれ、バルバより酷い蛮族じゃないですか。
やはり人間は邪悪…と冗談はさておいて伝説の真実がここまでとは…気圧されないようしませんと。

自前ゴンドラで挑みます。
優雅な歌で操縦しつつ星霊クリンを召喚、氷塊で敵を迎撃して貰います。
衝突狙いを警戒してひらりと操縦、無理そうなら向こうに飛び移り操縦者を氷細剣で仕留めましょう。
…奪って特攻させるのは無理そうですね。
敵の密度が高い所にはUC起動、氷塊代償に氷獣のゴーレム達を召喚、操縦してる敵の排除を命令。
身軽な獣…鱗もいますが、ゴンドラ戦では中々厄介でしょう。
クルールにも数で襲い掛からせ私自身は距離取りつつ敵を撃破して参ります。

※アドリブ絡み等お任せ


キトリ・フローエ
ウォータくん…
あんなにかわいい?のに中身はとっても凶悪なのね!
見た目に惑わされずに戦えそうなのは幸いかしら?
でもあのメダルはちょっと欲し…いえ
空中機動で海の上を飛んで戦いましょう
濡れてもいいように水着を着ていくわね

皆が攻撃する隙を作るために
とにかく全速力で飛び回ってエリクシルの群れを引き付けるわ
あたしみたいな虫一匹捕まえられないなんて
ご自慢のゴンドラもたかが知れてるわね!
なんて挑発しつつ
ウォータくんに掴まれないようにだけは気をつけて
勿論あたしもただ逃げるだけじゃなくて
飛んでいる間に魔力を溜めつつ多重詠唱で全力魔法!
破魔の雷を纏わせた空色の花嵐で
エリクシルの群れごとウォータくんをまとめて攻撃よ!


リィンティア・アシャンティ
ぺかーっと、ゆるゆるなゆるキャラの姿
まさか水神祭のマスコット姿そのままだとは思いませんでした

ウォータくんがあんなに残酷な事をいうはずはないですもの
あちらはウォータくんの偽物……
伝説のゴンドラ海賊が本物? 違いますもの
楽しい水神祭の事も思い出してしまって、心が!
倒します!!

この前、持ち運び可能になった私のゴンドラ
お花の名前を付けたら、花と同じ色に塗装して下さいました
こちらを使って挑みましょう

超高速ゴンドラに水圧砲
もしもの時は盾受けなども使い反撃も考えますが
操船に集中します
攻撃は栗鼠さんに任せましょう
これは大変ぷんすかな事です
海賊さん達に怒りのどんぐりをお願いします

この終焉も終焉させるのです


ヴァニス・メアツ
手元のウォータくんメダルを見る
ウォータ本人を見る
交互に三度見

嗚呼…今後水神祭で使うに使えないでしょうね、あのマスコット
本物にも頭のゴンドラ帽子に目が付いてるの気になる…

ツッコミが無限に沸きそうなんで行きますか
スカイランナーの脚力の見せ所
ゴンドラからゴンドラへ僅かな足場の上を八艘飛びの如く
敵船の端っこに思い切り飛び乗って梃子の原理で転覆させ
空中も海上もさほど変わりはありませんね?
敵蹴り飛ばし銃乱れ撃ち、沈めつつ前へ

さて行きますよ面白海賊さん
牽制にメダル投擲
どうです、似てますかご自身から見て
乱舞を誘い此方も吶喊…に見せかけUC使用
次元扉抜け奴の背後へすり抜ける様に転移、至近距離にて全力銃撃放ちます



 終焉に抗う勇士達をその背に乗せて、数隻のゴンドラが水を征く。
「今年も、水神祭は盛況だったんでしょうかね」
 青い海原へと変じた荒野を見渡して、ヴァニス・メアツはぽつりと言った。指先に摘まんだ小さな赤いメダルは、十五年前のアクエリオ水神祭で集めたものの残りだ。当時はこのなんとも言えないデザインのマスコットキャラクターに生温い視線を送りつつも、仲間のエンドブレイカー達と祭を楽しんだものである。
「まさかあの『ウォータくん』が実在の人物で、しかも悪辣な海賊だったとは思いませんでしたが――」
 言いかけて、ヴァニスははっと口を噤んだ。行く手にはエリクシルの海賊達が駆る改造ゴンドラが行き交い、さらにその奥には、一際大きなゴンドラの上に堂々と立つ――ウォータくんの姿があった。
「……え? あれ、ウォ……え?」
 掌の上のウォータくんメダルと、水上に立ちはだかる巨体の主を交互に見やること三回は繰り返し、青年は兎のような紅い瞳を点にする。そう、目の前に存在する怪物『クルール』、即ち『ウォータ』は。メダルの表面に描かれたゆるんゆるんのゆるキャラと、寸分違わぬ造形をしているのである。
「野郎ども、準備はいいか! じゃんじゃん殺して、バラすであ~る!」
 張り付いたような笑顔を浮かべたまま、大海賊『ウォータ』は配下のエリクシル達に呼び掛ける。顔と言動がまったく一致していないため、目と耳が同時に混乱する――いや、『正確な似顔絵だったんですね』どころの話じゃねえんだわ。
 うわあ、と引き気味の声を洩らして、マウザー・ハイネンは言った。
「なんですか、あれ……バルバより酷い蛮族じゃないですか。……やはり人間は邪悪ですね」
 冗談ですけど、とぼそり付け加えた言葉はまったく冗談に聞こえないのだが、それは一旦脇に置いておくことにする。というよりも、他に突っ込むところが多過ぎて、突っ込んでいる余裕がないというのが実際のところである。
 ひらりと仲間達の駆るゴンドラの舳先へ舞い下りて、小さなフェアリー――キトリ・フローエは率直な感嘆の声を上げた。
「ウォータくん……あんなにかわいい? のに、中身はとっても凶悪なのね!」
「いえ……そんなことありません。そんなこと、な、」
 やっとのことで絞り出したリィンティア・アシャンティの声には、大いなる苦悶が滲んでいた。それを体現するかのように、娘の細い肩、小さな拳は、わなわなと震えている。
「ウォータくんがあんなに残酷なことをいうはずはないですもの。あちらはウォータくんの偽物……いえ、あちらが本物? 違いますもの!!」
 ワッと顔を両手で覆って、リィンティアはさめざめと嗚咽する。

 楽しかった――ディオスボール!
 ドキドキ★ 胸が弾んだ――ラヴァーズ・クライマックス!
 手に汗握った――ゴンドラレース!
 『ごはんとか食べてください』とか雑なこと書かれてた――お昼休み!

 目の前の現実を受け止めるには、あの日の水神祭の記憶が眩し過ぎて、リィンティアは声を詰まらせる。
「水神祭のことを思い出してしまって、心が……心が……!」
「まあ、戸惑うよねぇ……」
 致し方なしと苦笑して、ルシエラ・アクアリンドは言った。無理矢理にでも仕切り直さなければ心がついていかない気がして、敵の外見については棚上げしようとしているのだが、どうしても動揺が言葉に出てしまう。
「まあ、見た目はああだけど、昔から割と物騒なことは言われていた気がするような……気がしないでも……ない?」
「なんにしても、来年の水神祭では使うに使えないでしょうね、あのマスコット」
 げんなりと肩を落としてヴァニスが応じる。まさか水神祭のマスコットと思われていた『ウォータくん』がそのものズバリな姿で現れるなどとは、あの時水神祭を駆け抜けた仲間達の誰一人とて予想すまい。なんだあの帽子。なんで船首に目がついてるんだ。アヒルなのか?
 頭痛がしてきました、とこめかみを揉むヴァニスを一瞥して、キトリはきょとんと瞳を瞬かせた。
「エンドブレイカーのみんなには、なんだか色々あるのね」
 この世界の外から来たキトリには、正直なところ彼らの葛藤はよく分からない。が、仲間達に掛かっているなんだかよく分からないデバフが彼女に通用しないのは幸いだ。
「見た目に惑わされちゃいけないってことは分かったわ。あのメダルはちょっと欲しいけど……」
 ……えっ欲しい? 本当に? 多分アクエリオに帰ればめっちゃあるよ。頼んだらくれるよ。多分来年から使えなくなるし!
 肩に羽織った薄手の上着を脱ぎ捨て、白いフリルの可愛らしい水着姿に早変わりすると、妖精は星降る夜のような紫紺の翅をはためかせた。
「それじゃお先に、行ってくるわね」
「え?」
 異界の友人の言葉にエンドブレイカー達が顔を上げたその時には、キトリは既に翔んでいた。水面に漣を立てながら臆することなく海上を翔け抜け、妖精は海賊たちのゴンドラの間を飛び回る。そして鈴の声色で、からかうように言った。
「あたしみたいな虫一匹捕まえられないなんて、ご自慢のゴンドラもたかが知れてるわね!」
 エリクシルの海賊達が紅い両手を伸ばしても、キトリはすいと高度を下げてその手の下を潜り抜ける。大海賊の手にだけは掴まれないよう注意を払いつつ、娘は空中で反転すると、その手にぱちりと破魔の電撃をまとわせた。
「あたしがただただ逃げてるだけと思った?」
 とにかく全速力で飛び回って、敵を引き付け、味方の攻撃につなげる――勿論それも、一つの目的ではあった。だが本当に必要だったのは、時間だ。
「ベル、あなたの花を見せてあげて!」
 自信に満ちた表情で、キトリは口角を上げた。小さな身体から放出される溢れんばかりの魔力は青と白の花弁に変わり、空色の嵐となってエリクシルの群れに吹きつける。
 俄かに動き出した戦場にはっと我に返って、ヴァニスが言った。
「これ以上見つめてるとツッコミが無限に沸きそうですね。行きましょうか」
「そうですね!! 倒します!!」
 仲間が作ってくれた好機を逃がさぬためにも、ここは速攻即決が肝要だ。殺意高めに応じて、リィンティアは広がる水面の先をキッと睨み、淡い花色のゴンドラを加速する。そして一瞬にして猟兵達のゴンドラ艦隊の先頭に躍り出ると、白い肩口にドングリを抱えた栗鼠を一匹呼び寄せた。
「栗鼠さん、よろしくお願いします! 海賊さん達に怒りのどんぐりを――」
 ドン、と腹の底から震えるような音がして、船体に衝撃が走る。バランスを崩しそうになってアワアワと両手をばたつかせ、リィンティアはゴンドラの舳先にしがみついた。幸い船体に損傷はないようだが、船の横腹に敵の水圧砲を喰らったようだ。
「これは大変ぷんすかなことです……!」
 栗鼠さん、と呼び掛ければ、白い栗鼠は娘の肩から腕を伝い、足元へ降りて走り出す。そして船首の上によじ登ると、ふわふわの毛の中からドングリを取り出した。
「この終焉も、きっと終焉させるのです!」
 ゴー、と一振りした腕の示す方へ、栗鼠はドングリを投げつける。途切れることなく、また結構な勢いで投げつけられるドングリは、敵の改造ゴンドラに点々と小さな穴を穿っていく。
「伝説の真実がここまでとは思いませんでしたが……気圧されずに参りましょう」
 いざと喉を開いて、マウザーは優美なゴンドラの歌を紡ぎ出す。敢えてぶつかってこようとする敵船はするりとかわし、すれ違いざまにエリクシルの海賊達を海へと叩き落として女は言った。
「さあ、出番ですよ――クリン」
 呼ぶ声に応じてその肩へよじ登ったのは、白銀の毛並みが美しい氷の小熊、星霊『クリン』。白い小熊が生み出し放つ氷塊は敵のゴンドラを目がけて次々に宙を裂き、その足元に突き刺さっては盛大な水柱を上げる。しかしてそれは、狙いを違えたわけではなく。
「さあ、踊りましょうか」
 氷塊の沈んだまさにその位置から、獣の姿をした氷のゴーレムが飛び出した。それらは軽々と敵の船上に降り立つと、赤い宝石の船員達に襲い掛かっていく。
「奪って特攻させる……のは、さすがに無理そうですね」
「ええ、ですが役には立ちますよ」
 お借りしますと微笑んで、ヴァニスは船の縁を蹴り跳躍した。スカイランナー――あらゆるものを足場にして、入り組んだ都市国家の街並を飛んで跳ねて駆け抜ける彼らにとっては、空中も海上も大差はない。無人となったゴンドラもまた、ヴァニスにとってはうってつけの足場だ。
 八艘飛びの要領で船から船へと飛び移り、一際高くジャンプして、男は落下のスピードに任せるまま敵船の船尾に落ちる・・・。力いっぱい踏み込むように体重を掛けて着地すれば、船体は大きく傾き、そして弾けるように転覆した。
 巻き込まれぬよう手近な船の上に咄嗟に飛び退って、ふうとヴァニスは息を吐く。
「さて行きますよ、面白海賊さん」
 投げつける赤いメダルを、大海賊の主線の太い手が反射的にはっしと掴む。それを見て、男は挑むような笑みを浮かべた。
「どうです? 似てますか――ご自身から見て」
 答えを待つ必要は、ない。差し出した手の先に続く三枚の扉は、静止した時の世界を辿り、術者を離れた場所へと導く。すり抜けるように海賊達の背後に転移して、ヴァニスは紫煙銃の引き金を引いた。パンと乾いた音と共に、胸を撃ち抜かれたエリクシルは前のめりに海に落ち、青い水底へ沈んでいく。
 海賊達はなおも数多く、改造ゴンドラの数はなかなか減る気配がない。目につく限りの敵船を数えて、ルシエラは言った。
「あちらが群れだというなら、こちらはまとめて効率よく対処しないとね」
 風の魔力で編み上げる蒼い天蓋は、ならず者たちの船を海上の狭い領域に閉じ込める。こういうのを、『袋の鼠』と云うのだろうか――広げる防御結界で守りを固めつつ、ルシエラは弓に矢を番えた。
「アクエリオ様の名に懸けて、あなた達に好き勝手はさせないわ」
 限界まで引き絞って放つ矢は、光の礫に変わって敵の頭上に降り注ぐ。倒れゆくエリクシルが波間に沈み、主を失ったゴンドラがゆらり漂う海上を見渡して、ルシエラは微笑した。
 この戦いを制するのは、彼女達――歴戦のエンドブレイカー達と、世界の危機に駆けつけた新たな猟兵とも達だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふええ、水上戦なら任せろって、アヒルさん何か秘策でもあるんですか?
ふえ?秘策も何も水上はアヒルさんのホームグランドって、えっとこれで大丈夫なのでしょうか?
ふええ、早く乗れって、ふええ劇場ですね。
それで、アヒルさんどうするんですか?
ふえ?魔改造ゴンドラを突いて沈めるんですか?
この世に沈まない船はないって、名言ぽいこと言ってますけどウォータさんのパワーボムはどうするんですか?
この大きさなら物理的にパワーボムは無理って、確かにそうですけど、……それに水面に投げられてもアヒルさんは沈まないって、アヒルさんに乗ってる私は沈むじゃないですか!!



「グワグワ、グワ」
「ふえ? 水上戦なら任せろって……アヒルさん、何か秘策でもあるんですか?」
 腕の中で相変わらず、何やらぐわぐわ喚いているアヒルのガジェットを覗き込んで、フリル・インレアンは言った。目の前には見渡す限りの青――怪物との融合を果たした大海賊『ウォータ』とその配下のエリクシル達によってもたらされた、偽りの海原が広がっている。
「グワッ。グワワ、グワッグワーッ」
「ふええ……? 秘策も何も水上はアヒルさんのホームグランド? えっ、早く乗れって? ええと……これで本当に大丈夫なのでしょうか……?」
 やたらと自信に満ちたアヒルに言われるがまま、フリルは人形ほどに小さな姿に変身するとアヒルの背中によじ登る。小さな主を背に載せて、機械仕掛けのアヒルは両の翼を広げると一際けたたましく鳴いた――そしてそのまま大きく羽ばたいて、目につく敵のゴンドラに向かい飛翔する。
「あの、それで、どうするんですかアヒルさん? ……ええ? 魔改造ゴンドラを突いて沈める?」
「グワワワ、グワワ、グワッグワッ」
「この世に沈まない船はないって……なんだか名言ぽいこと言ってますけど……ウォータさんのパワーボムがきたら――ひゃあ!?」
 風を切って進むにつれ、エリクシルの海賊達が乗り組むゴンドラがぐんぐんと近付いてくる。ぶつかる、とフリルが目を瞑るのもお構いなく、アヒルは真っ直ぐに突進を続け、そしてその嘴でゴンドラの腹に穴を開けた。
 衝撃で振り落とされないようしっかりとアヒルの首にしがみつき、おお、とフリルは声を上げる。
「や、やりました……? アヒルさん、凄いです――えっ」
 ゴンドラから伸びてくる海賊エリクシルの紅い腕が、一人と一羽をひょいと摘まみ上げる。そして次の瞬間、水が弾けた――瞬時に世界は反転し、フリルはしがみついたアヒルごと軽やかに宙を舞う。
「グワグワ、グワッ」
「……え? 水面に投げつけられても、アヒルさんは沈まないって? でも――それじゃあ」
 青い水面が迫ってくる。ユーベルコードは音もなく解けて、少女の身体が元の大きさへと戻る。そして、ドボン! と大きな水柱が上がった。
「アヒルさんに乗ってる私は沈むじゃないですか!!」
「グワ?」
 水面に顔を出し、咎めるように叫ぶ少女を悠然と眺めて、機械のアヒルは首を傾げた。そんなことをしている間にも、戦いはなお続いている。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラヴィ・ルージュブランシュ
ペペル(f26758)と
幽霊船に乗せて貰ってどんぶらこよ
うん、船旅は初めてよ
あんまりに楽しみだったからお菓子持ってきちゃった
ほら、チョコレート!一緒に食べましょ
干し肉やお酒よりやっぱり甘い物なのだわ

ふふ、こう見えて遊んでるだけじゃないのよ
誰かがいいものを持ってたら奪いたくなるのが海賊でしょう?
そうしてこっちに近づいてきた子はペペルのお友達が作った霧に呑まれちゃうし
一生懸命近づいて来ても、チョコを食べてなければ早くは動けない
それにね、もしチョコが奪われちゃっても
その時にはもう、これは猛毒に変わっているのよ
ざ~んねん!
しぶとく残った子はラヴィの剣で薙ぎ払っちゃう
楽しいお茶会は、まだまだこれからよ!


ペペル・トーン
ラヴィちゃん(f35723)と
フラスコから幽霊船を取り出して
波に揺られて2人で海へ

船は初めてかしら?
ふふ、私達も海賊のようだけれど
向こうよりずっと楽しい旅ができそうよ
なんて冗談めかして
彼女の素敵なお菓子を一口食めば
甘さに弾む波音も 心ばかりに軽やかで

海賊さん達も欲しいのなら
霧の中から見つけてちょうだい
おいでと甘く囁けば、真白な霧を広げ
随分と小さいけれど、この子達もゴーストなのよ
欲しがりな子達だから、貴方達の意思そのものが欲しいみたい
奪いたいものは奪うのが海賊でしょう?

削がれて呆けた海賊達は鎖で海へと落としていって
ごめんなさいね
今日のお茶会には、貴方達は呼んでいないの
だって2人だけのお茶会だもの



 一方、その頃――。
「わあ……本当に海になっているのだわ……!」
 波に揺られてゆらゆらと、荒野の海を行く魚のかたちの幽霊船。白い甲板から身を乗り出して、ラヴィ・ルージュブランシュは声を上げる。見渡す世界は一面の蒼に染まって、そこがほんの数日前まで赤茶けた土と岩の大地であったとは凡そ信じられないくらいだ。
 心なしかそわそわと浮き立つような友の背にくすりと口角を上げて、ペペル・トーンは言った。
「船は初めてかしら?」
「うん、船旅は初めてよ! あんまりに楽しみだったから、お菓子持ってきちゃった」
 ほら、と大粒のルビーのような瞳を耀かせて、ラヴィは籐編みのバスケットを胸の前に抱えて見せた。蓋を開ければそこには、たくさんのチョコレートが詰まっている。
 一緒に食べましょと笑い掛けて、ラヴィはキャンディのようなチョコレートの包み紙を開き、艶々とした一粒を唇にそっと押し込んだ。
「干し肉やお酒より、やっぱり甘い物なのだわ!」
「ふふ、なんだか私達も海賊のようだけれど――」
 彼女に倣って一粒摘まんだチョコレートは、口の中で甘くほろ苦くほどけていく。鼻へ抜けていく甘い香りと打ち寄せる波音をゆっくりと楽しんでから、ペペルは続けた。
「――向こう・・・より、ずっと楽しい旅ができそうよ」
 冗談めかした口ぶりの一方で、赤と緑、二色の双眸は忍び寄る敵の影を捉えている。ぷかぷかと蒼に揺蕩う幽霊船に、近付くゴンドラの数は一艘、二艘――たくさん。その船上でいきり立つエリクシルの海賊達に目を向けて、ラヴィは軽やかに笑み零した。
「誰かがいいものを持ってたら、奪いたくなるのが海賊よね。でも、こう見えて遊んでるだけじゃないのよ?」
 幽霊船を取り巻いて、海面に生じた白がふわりと昇る。たちまち戦場を満たした霧の正体は、ペペルが呼び寄せた無数のゴースト達の集合体だ。
「海賊さん達もチョコこれが欲しいのなら、霧の中から見つけてちょうだい」
 さあおいで――甘く囁く声に応えて、霧が一段と濃度を増した。慈しむようにその真白を掬い、ペペルはうっそりと微笑って告げる。
「随分と小さいけれど、この子達もゴーストなのよ。欲しがりな子達だから、貴方達の意思そのものが欲しいみたい……」
 こう見えても、ゴースト『キャプテン』。奪いたいものは奪うのが、海賊という生き物だ。
 猛然と武器を掲げて迫り来るエリクシルの海賊達は、白い霧に巻かれるや途端に戦意を喪失し、虚ろな瞳で動きを止める。陰気の鎖でその身体を海へと引きずり落として、セイレーンの娘は言った。
「ごめんなさいね。今日のお茶会には、貴方達は呼んでいないの」
 これは、二人だけの秘密のお茶会。招待状を持たない者が、立ち入れないのは当然の道理。
 一人の海賊がやっとのことで白い霧を抜け、幽霊船の縁に取りついた――しかしそれを甲板の上から見下ろしながら、ラヴィはあーあと口にして、赤く長い髪を傾ける。
「ざ~んねん! チョコレートはあげられないわ」
 もっとも彼らにとってこの甘味は、猛毒にしか過ぎないのだけれど。
 海賊達が一人、二人、白い魚の腹を登ってくる。淡い薔薇色に輝く宝剣を両手に構え、ラヴィは朗々と言い放った。
「楽しいお茶会は、まだまだこれからよ!」
 だから誰にも、邪魔はさせない。
 軽やかに薙ぎ払った刃は花色に輝く剣閃を残し、海賊達を斬り払った。そして霧に包まれた幽霊船は、まるで何事もなかったかのように最果ての海を泳いでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年09月15日


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#エンドブレイカー!
🔒
#エンドブレイカーの戦い
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#クルール・ザ・ウォータ
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#伝説のゴンドラ海賊ウォータ


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト