冬霧・椿
北海道でのバカンスを
地元しか知らない椿大人バージョンの方を、玲頼君に札幌案内していただく感じでお願い致します
現状再会まだですがその辺は脳内でどうにか補正頂いて
距離感的には何度か顔を合わせた後で少し落ち着いて話せるようになってるくらいかなと
特にコースは考えていないですが観光名所めぐり→ご飯とかそんな感じで
賑やかな場所も平気でそれなりに楽しめるかと思います
大人の方なのでお酒大丈夫です
食:熱いのはちょっと苦手、辛いのはある程度までは大丈夫
動物園、水族館などに行くと動物が寄ってくるかもしれません
動物以外も寄ってくるかもしれません
椿(大人)の服装
寒色系のサマーニット+ロングフレアスカートにつば大きめの帽子+大判ストールで日光避け
★多めに入れてるので余っても大丈夫です
乾いた大きな川――現代の札幌市が置かれる地はかつてそう呼ばれていた。
石狩平野も拓かれる前は多くの森林に覆われた世界。冬となれば広い土地が白く染まった。
「それがすっかり変わってしまったものよ」
背の高いビルに囲まれた札幌市中心部。頭に被った鍔広の帽子を軽く持ち上げ、雪の様に白い髪を揺らしながらその紫色の瞳を空に向け、女はしみじみとそう呟いた。
「姫、そこだと陽に当たる」
そう呼びかけたのは薄いストールを肩に掛けた青年。赤レンガ敷き詰められた並木の下で、両手に今にも溶けそうなソフトクリームを持って心配そうに笑う。
「――風の子」
「今は、オレの事は玲頼って呼んでくれた方がイイかな……?」
照れ臭そうに青年は片方のコーンを渡して木陰のベンチに腰掛け、改めて女を見やる。
冬霧・椿(白姫・f35440)――つい最近出会った筈の、雪女の少女。同郷の縁で親しくなり、面倒見たり一緒に出掛けたりと妹の様に思っていたが。
その実は、遠い昔に眠りに付いた筈の大妖怪である雪の姫。梟別・玲頼(風詠の琥珀・f28577)の先祖にしてその身に宿す
梟神・レラにとっては恩人であり心より慕う母の様な姉の様な存在。
それが今や。力と記憶を抑えて少女に身を変え目覚めた彼女と、やはり力を失い人間と一体化した彼。二人共、あの時とは人格も姿もすっかり違ってしまった。
(「……やっぱ、まだ慣れねぇな」)
事実を知ったのはつい最近。時折、椿はこうして昔の姿に戻る様になったが、その時の記憶を少女は持たぬと言う。
「……そふとくりーむと言いましたね、これ」
「ん、ああ、うん」
「前にも、ぱふぇを貴方と食べた事があったけれど。これもとても美味しい」
椿の時の記憶はあるのかよ、と玲頼は苦笑い浮かべながら自分のソフトに口を付け。
「玲頼、あれは?」
「あれ?」
姫が指差し示したのは旧道庁。赤レンガ造りの建物はこのビル街の建築物とはまた趣が違って見えたので気になったらしい。
「アイヌモシリが北海道の名を与えられた頃の建物だぜ。150年くらい前……だったかな」
「たった150年……人間の進歩の早さには本当に驚かされる」
感心しながら姫は頷いた。木々より尚高い建物を作り上げる技術を得た人間達にはもう自分達の様な精霊や神々の助けはいらぬのだろう、と安堵する様な寂しそうな顔見せて。
「さて、この後は何処に連れてくれますか?」
ならば人間の営みを楽しむのもまた一興だろう。今は人になった風の子に、そう微笑み問いかけた。
向かった先は札幌駅。商業施設の中を抜け、展望台へと向かう長い長いエレベーターに乗って。
地上160mの景色に雪の姫は子供の様に目を輝かせた。
「こんなに高い所に来る事が出来るとは……! 風の子よ、貴方が飛ぶ時に見る景色もこうなのですか」
「そうだな、景色はこれに近い。流石にこの高さは無理だけど――」
彼女に見せたいと思ったのだ。高い空から地上を見下ろすあの光景を。
観光名所と言っても自然溢れる場所は見慣れているだろうから。むしろ文明的な場所の方が彼女には物珍しいのではと玲頼は考えて。この札幌の街を一望出来る展望台へと案内したのだった。
「凄い……遠くの海や山も……あれは豊平川か。玲頼、ここから朱鞠内は見えるのでしょうか」
「いや、流石に無理だろ」
遙か遠くに見える景色。空からの眺めをこうして擬似的にでも見せる事が出来た事にレラも内心満足げ。
段々日が落ちていく――夕焼けに照らされる街並みの色が美しい。そしてポツポツと灯りが点されていけば、整然と碁盤の目に走る道が浮き上がり、まるで幾何学的な模様の様にも見える夜景がそこに現れてきた。
「綺麗……」
テールランプが川の如く流れて行く。オレンジ色の街灯が仄かに闇を照らす。人々の営みが夜の中で息づいている。きっとあれは命の輝きと等しいのだろう。
「雪が降る季節だと、もっと綺麗な筈だぜ」
「ならば、改めて連れてきて貰わねば」
「え……?」
クスッと微笑む姫の表情に、驚く様に目を瞬かせて止まった玲頼。その様子がまた可笑しくて、ふふと小さく微笑みながら空色フレアスカートを揺らし、姫は下りのエレベーターの方に向かうのであった。
そのまま向かったのは道産食材をふんだんに使ったイタリアンのお店。
札幌名物――と名の付く物は大体が火傷しそうな熱さのものばかり。
「かえってこういうのも良いんじゃないかと思って、さ」
「ふむ……」
余市産のナイアガラから作られた、ほんのり黄金色帯びた液体がグラスに注がれるとチリンと合わせる音と共に甘酸っぱい風味が舌先に蕩けた。
北海道産のチーズを使ったシーザーサラダにクワトロフォルマッジ。季節の食材として旬であるウニを用いた冷製パスタ。地産地消のジビエ、エゾシカ肉のハンバーグパスタなんてものも北海道ならではの味覚。
「美味しい」
「だろ?」
大人だからこそ楽しめる味覚の食材もあるだろうから、なんて頬杖つきながら。玲頼は目の前の女性がゆっくり舌鼓を打つのを見つめていた。
「玲頼も食べないのですか?」
「ん、食べてるぜ、それなりに」
それでも相手にもっと食べて貰いたいと願うのは、食べ盛りの年齢にある椿の姿を姫の奥に見ているからか。
「玲頼――いや、レラ」
「……姫、何か……?」
ふと、姫は名を呼んだ。風の子と呼び続けた梟の名を。名を呼ばれ、呼び起こされるかの様に。青年の琥珀の瞳が金色を帯び、
梟として彼は応え。
「再び巡り会い、こうして夕餉を共に出来るとは――あの頃は想像も付かなかった」
「それは……私も同感だ」
言葉に出来ぬ想いにレラは軽く目を伏せる。遠い昔に彼女の前で初めて人の姿を取って見せた時の姿と、今の玲頼の姿はとても良く似ていた。ああ、故に時を飛び越えたかの錯覚を感じるのか。姫は思わずクスリと笑った。
「今日は感謝する、風の子……そしてその遠き子孫よ。また、こうして付き合ってくれると、嬉しい」
「
姫が望むなら。
私は――いくらでも」
新たな約束に笑みを交わす二人。それは残暑残る北の都市の一幕。
成功
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