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エンドブレイカーの戦い⑭〜祈り、願い、そしてはじまる

#エンドブレイカー! #エンドブレイカーの戦い #ウシュムガル・ザ・ウインドゼファー #天翔回廊ヘイズワース #ウインドゼファー

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 戦場に立つ彼女は、巨大な剣に巨大な戦籠手。
 金の髪をなびかせて、かつてのように立っていた。
「謝りは、しない。……私はこの世界より、大切なものができてしまった」
 詰ってもいい。罵ってもいい。
「それでも……私は、私のために走り続ける」
 今や『ウシュムガル・ザ・ウインドゼファー』と化した彼女は。
 そう言って嘗ての故郷を見て、僅かに微笑んだという。

「革命聖女ゼファー……。かつて本人と対話した人もいるかもしれないし、キマイラフューチャーの戦いで対峙した人もいるかもしれないね」
 リュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)はそう言って、強敵だよ。と小さな声で付け足した。
「まず、エンドブレイカーの世界の大地母神を抹殺しようとしている「11の怪物」。その中の一柱が彼女であることが分かった。彼女は都市国家「天翔回廊ヘイズワース」を占領しているから、これを排除して欲しい」
 リュカの言葉に、誰かが首を傾げる。かつての戦い、「バトルオブフラワーズ」で彼女は完全に滅ぼされたはずだと。リュカも頷く。
「ちょっと俺にも、具体的にどうやったかはわからないけれども、どうやら蘇生したみたい。以前と違って「11の怪物」に列されていることも考えて、ウシュムガルと「ドン・フリーダムのCG」が彼女を蘇生させたと思うんだけど……」
 まあ、細かな蘇生法はさほど今は重要でないだろう。とリュカはそれ以上の考えを打ち切る。大事なことは目の前の敵に、どう対処するかだと。
「彼女は「喋る剣ダイアモード」を持って戦場にいる。……ええと」
 そこでリュカは、なんとも言えない。理解できないものを騙るような口調で話をつづけた。
「友であるエイプモンキーとラビットバニーを蘇生する為のエネルギーを探している……んだって。ごめんちょっと俺には理解できない」
 友達のために命をとして戦うとかちょっと訳が分からない。リュカは真顔でそんなことを言う。まあ、理由は兎も角。と、そう言いながら、
「とにかく彼女は、こっちを倒すために襲い掛かってくるよ。守りは捨てて、速度で戦う方針みたい。……この辺は、なんだか以前の戦いを彷彿とさせるね」
 なお、あらゆる攻撃が致命傷になり、その攻撃を引っ提げて超高速で殴りに来るので、
「そうだね、何か考えた方がいいと思う。なかなか簡単には行かないだろう」
 無策で挑むのは危険だと、リュカはそう言った。対策が完全でない場合、手痛いことになるかもしれない、とも。
「俺たちまでその命をとしての戦いに付き合う必要はない……って言いたいところだけれども、ある程度は腹を据えて臨まなきゃいけないとは思う。だから」
 気を付けていってきてね。と、リュカはそう言って話を締めくくった。


ふじもりみきや
いつもお世話になり、ありがとうございます。
ふじもりみきやです。
状況は大体リュカが言った通り。
POWなどは飾りです。割と好き勝手しますので、皆さんも好き勝手してください。

=============================
プレイングボーナス……敵の「超スピード」と先制攻撃に対処する。
=============================

以上になります。
それでは皆様、良い一日ヲ。
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第1章 ボス戦 『ウシュムガル・ザ・ウインドゼファー』

POW   :    アクセラレイト・デザイア
全身を【エリクシルの輝き】で覆い、自身の【誰に邪魔はさせないという意志の強さ】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    ゼファー・タイフーン
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【嗤う剣ダイアモード】から【勢いを増し続ける竜巻】を放つ。
WIZ   :    嘲笑せし斬風
【嗤う剣ダイアモードから放たれる衝撃波】を【スピード怪人の加速能力】で加速し攻撃する。装甲で防がれた場合、装甲を破壊し本体に命中するまで攻撃を継続する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ……思えば。
 決して一人では、なかったのだろう。
 助けてくれる人がいた。うまくは行かなかったけれども、志を共にしてくれる人もいた。
 間違っていると言った人がいた。戦いたくないと泣いてくれた人がいた。
 それをすべて振り切って、私は戦った。
 そうするべきだと、思ったからだ。
『例え誰になんと言われようとも、例え誰が苦しもうとも。私の願いで誰かが犠牲になるならば、その屍に剣を突き立ててでも私は前に進んでいく! この街に真の……人々の幸せな日常が返ってくるまで!』
 そうだ。確かに戦ったのはこの街の為だった。それでいいと思っていた。最後の最後の瞬間まで走り続けた。……後悔はしていなかった。

 私とはやり方の違うものが私を倒した。それもまた正しいと思っていた。
 倒されたことはそれは残念だったけれども、倒されたのだから仕方がない。勝った方が正義なのだと、それくらいはわかっていた。
 それは、「この前」と同じだった。同じように私は私の正しいと思うことのために色んなものを犠牲にして戦った。
 私はたくさんいて、この結末に満足した私もいたけれども、満足しなかった私もいたのだろう。そのこと自体もまた、仕方がないと受け入れた。倒されたのだから仕方がない。世界はいつだって、勝った方が正義だ。そういう風に回っているし、そうでないと負けた人の声を聞いていたらいちいち世界が成り立たない。

 なのに。何の因果か。
 私はまた、ここにいる。
「ヒャヒャヒャ、まさかお前が再び、この俺『嗤う剣ダイアモード』を手に取るとはなあ!」
 そしてこれも。……私は手にした剣を見つめる。『嗤う剣ダイアモード』。喋る武器と呼ばれていた。
「私としても、不本意な話。どうして私とあなたはいつもいつも一緒なのか」
「そりゃあれさ。ゼファーちゃんとは心と心で繋がって」
「黙れ」
「はい」
 こんなやり取りも、もう何度目だろう。私を唆した剣とは、結局長い付き合いになってしまった。……不本意だ。とても。
「ここに至るまで、私は幾度もの生と死を経験してきました。システム・フラワーズにて転生し、怪人化した人類と滅亡を共にし、オブリビオンとして蘇生し、猟兵達に倒された後、ドン・フリーダムのCGにウシュムガルを移植された事で、絶対の筈の『オブリビオンの死』を克服し、ここに立っています」
「ヒャヒャヒャ、昔より躊躇が感じられねぇのは、長い人生を経たせいか!?」
「違う」
 しょうがないので、丁寧に私は一からダイアモードに言い聞かせる。長い付き合いだが、私のことをちっとも理解しようとしないこの剣にも、私のことをちゃんと伝えておかないと。
「私には、蘇らせたい人達がいるんだ。長い人生を共に歩んだ私の大切な友達……ラビットバニーとエイプモンキー。彼らは強大すぎて、ウシュムガルの力では弱い私しか蘇生できなかった。でも、他の『11の怪物』と沢山のエリクシルを手に入れれば、あるいは……!」
「ヒャヒャヒャ、友達ねぇ。お前に、友達ねえ……!」
「なんとでも言えばいい。誰になんと言われようとも、私は私のやり方で、私のしたいことをする。協力してもらう、ダイアモード」
 しないなら今ここで折る。生かしておいても碌なことにならない。その気迫を感じたのか、剣からすさまじい嗤い声が響いた。
「ギャハハハ! お前正直、今、イイ目をしてるぜえ!!! 心配するなよ、ゼファーちゃん! 俺たちはもう一心同体、一蓮托生だ!」
 声を聞きながら、私は小さく頷く。エリクシルを掌握するには時間が必要だ。だから今は、猟兵を撃退して時間を稼がなくては。
「……かつてこの世界の平和を願った私が、今は自らのエゴで、彼らをこの世界から放逐しようとしている……」
 胸に手を宛てる。どういうわけかわからないけれども、私は新たな機会を得た。ならば今度も、最後まで……最後まで、走り続けたい。
「だけど、それで構わない。誰にも、邪魔は、させないッ!」
「いいじゃねぇかいいじゃねぇか!! ……楽しくいこうぜ」
 私は剣を握りしめる。
 今度は、仕方がないと諦めたくないと思いながら。
セリカ・ハーミッシュ
アドリブ、連携歓迎

またゼファーと戦う事になるなんてね
相変わらずスピードは侮れないし気の抜けない相手だね
まともにスピード勝負をしても不利だろうし
どうにか動きを封じるようにしたいかな
それでも思考の速さで負けられないよ
氷刃乱舞を展開して戦場を凍り付かせて
ゼファーの足を凍らせるようにかな
ただ闇雲に放っても避けらるだろうし
ゼファーが走る方角を予想して展開するよ
基本的には走る時は一直線だろうから
進む先は予測しやすいかな
嗤う剣ダイアモードとかからも気配を察知しやすそうだね
少しでも動きを封じて捕まえられそうなら
二刀の魔剣で斬りかかるよ

「まさか彼女まで復活させるなんてね。でも躊躇ったりなんかしないよ!」


ルシエラ・アクアリンド
大切な物を見つけられるのは喜ばしい事だと思うから
謝らなくても良いと思う
何時も他人の為にと戦ってきた彼女だから
色々思うことはあるけれどそれは終わってからにしよう

絶対先制攻撃に対して
魔力貯めした結界術で風の結界を張り自身にオーラ防御施し護りに徹する
魔力を纏わせた魔導書の風で軌道反らし致命傷を凌ぐ

負傷してもその侭でUCを展開。羽根増やし更に護り強化と共に行動阻害と攻撃に転じる
心情的にも早めに剣を手放せたいので第六感、軽業、空中機動を駆使し避けつつも
頭上からも一回目を囮とした2回攻撃を行ないダメージを蓄積させつつ隙を作り
心持剣を持つ腕を優先的に狙うが状況次第で有効そうな箇所を狙う
周りの様子も把握する事


ヒース・サーレクラウ
友のため、か
おれもきっと同じ立場なら
両親や姉、妹のためと剣を取るのだろうか

――いや、考えたところで変わらないな
相手は敵で、父や母がかつて対峙した強大な相手
余計なことは考えず、戦いに集中すべきだ

目で捉えるのすらままならない速度だ
でも――風を放つその一瞬
竜巻の始点に必ずお前がいる
おれはそれに追いつけなくても――相棒はきっと追いつける

迫りくる竜巻、確定した先制の一打を
フェニックスと共有する炎の力で無理矢理に切り抜ける
纏った炎で空気を焼き、風を灼き、少しでも前へ
相手の注意を、視線を、自分だけに引き付けるように

その隙を――突いてくれるって信じてる、フェニックス
お前の炎で、全部焼き尽くしてやれ


アンゼリカ・レンブラント
先制攻撃には第六感と勝負勘を生かして見切り避ける
避けきれずとも、被ダメージの際
覇気を噴出し勢いを減衰させれば致命の一撃を避けられるかな!

再び超スピードで動かれる前にワッパー”黄金旋風”を
足に絡みつかせ動きを抑えよう
一度捕まえたならお姉さんは怪力さ、そうそう離さないぞ?
接近戦を挑み、飛翔させないうちに功夫を生かした打撃で
叩き込んでいくさ
共に戦う仲間と連携を意識し隙を作り出すよう攻めていこう

私はお前さんの決めたことにどうこう言うつもりはない
そして覚悟を決めた者に同情や憐憫は失礼だろう
ただ積み上げてきた「これまで」で打ち勝つさ!

相手の必殺の攻撃を《クラッシュ成功!》で凌ぎ
カウンターの一撃で仕留めるよ



 熱が、頬を撫でる。
 ヒース・サーレクラウ(凍てる月焔・f39546)はそれでも構わず、暁炎纏う刃を持つ剣を押し込んだ。
「……っ!」
 来るべき衝撃に備える。刀身より前進へ纏った炎で空気を焼き、風を灼き、少しでも前へ向かおうとしている。本来ならば相棒のフェニックスと一体化しているが……今はその姿を隠していた。相手の注意を、視線を、自分だけに引き付けるように前へ。ただ無策に進もうとしているかのように装って……、
「ああ……」
 風が吹いた。その一瞬後、彼女はそこにいた。炎ではなくエリクシルの赤い輝きに身を包み、ヒースの炎の風を逆に彼へと吹き返し……、
「そうか。時が、過ぎたのだな」
「ヒャッヒャッヒャ! そんなちっちゃな得物で、俺を止めるつもりなんてなあ!」
 ため息のようなささやかな声とともに、その刃が振り下ろされた。
 両親を知っているのか。覚えているのか。その疑問をヒースが抱く前に、己の剣を押し上げてその剣受け止め……、
「だったら私の筋肉で、受け止めてやろうじゃないか!!」
 目の前に鮮やかな金髪が翻った。同時に聖なる斧剣をひらめかして、アンゼリカ・レンブラント(黄金戦姫・f38980)が突進する。重戦車のごとき一撃に、即座にゼファーも反応した。
「……っ」
「そう、私が来たぞ!」
 ゼファーの戦籠手が翻る。即座にその腕がアンゼリカの頭を握り潰そうとした。それをアンゼリカは紙一重で避ける。……右の肩のあたりが代わりに握り潰されて砕けたが、かまわずアンゼリカは斧剣でその籠手を逸らしながら黄金で補強されたワッパーを投げつけた。
「その足……止めさせてもらうぞ!」
「私の動きは、誰にも、邪魔できない!」
 剣がヒースから離れる。ゼファーは足に絡まろうとしたワイヤーを剣で阻んだ。ワイヤーの方もまた、切れることなく剣に絡みつく。
「おいおいおいおいおいねーちゃん! この俺と! 心と体で繋がりたいってわけ」
「ええい黙れ……っ」
「……相変わらずお喋りだね」
 ダイアモードの章もない台詞に思わず反応するアンゼリカ。その様子に、ルシエラ・アクアリンド(蒼穹・f38959)が懐かしむような、呆れたような声とともにヒースの肩に少し触れる。
「大丈夫かな? 腕が」
「あ。はい、ええと……」
 ルシエラに問われて、ヒースは改めて剣を握りしめる己の手に目を落とした。……必死で、気付かなかった。炎で守っていたにもかかわらず、その手はダイアモードの剣圧でボロボロに裂けていたのだ。
「けれども……」
「うん、大丈夫。わかってるよ」
 まだ戦えると主張するヒースに、ルシエラはやさしく微笑む。
「……どうか力を貸して頂戴ね」
 ルシエラは魔導書を手繰る。魔力を伴ったそれを手繰った瞬間、涼やかな癒しの風と全身の衝撃を和らげる壁が展開された。同時に青い空間の檻が出現する。敵の動きを阻害するものである。ゼファーもまた、それに気づく。
「この風……新手か」
「うん、久しぶり、っていったところかな?」
 彼女の言葉に、ルシエラは柔らかく笑った。
「おいおい同窓会かよドーソーカイ! まとめて俺様が卒業させてやんよ!!」
「また、意味の分からないことを……!」
「同窓会はよくわからないけど……またゼファーと戦う事になるなんてね」
 アンゼリカが呆れたような声を発したその時、明るい女性の声がした。セリカ・ハーミッシュ(氷月の双舞・f38988)はふわりと、微笑む。アイスレイピアを天に掲げて、軽く振り下ろすと氷の刃が現れた。
「相変わらずスピードは侮れないし気の抜けない相手だね。……でもよかった。今なら」
 ダメージと同時に凍結の足止めを行う刃がゼファーの足に向く。ダイアモードが軽く唸って、絡みついていた黄金のワイヤーを噛み砕いた。
「おっとそろそろまずいぜぇ! ここは後退して立て直しだ!」
「……っ! させるわけが、ないでしょう……!」
 即座にゼファーも反応する。囲まれたこの状態では早さを生かせない。迷わず飛びのこうとしたところを、ヒースが回り込む。
「どけ! 私はここで、倒れてはいられないんだ!」
「どかない……!」
 ためらいなく剣が走る。張り合うようにヒースは声をあげた。ダイアモードがヒースの右肩から脇腹にかけて。躊躇うことなく斬り下ろそうとする直前、即座にルシエラが護りを増やす。
 それでも。目の前が痛みで赤く染まる。致命傷ではないが強く斬られた。ルシエラの援護とフェニックスの炎で勢いを減じても、まっすぐ切り込まれた刃は驚くほどに熱かった。
「(……友のため、か)」
 痛みに、意識が消えそうになりながらも、ヒースは前を向く。剣を振るい、少しでも動きを止めようとゼファーの体に刃を落とす。彼女もまた、そんなことは構っていられないとでもいうように押し返そうとする。
「(おれもきっと同じ立場なら、両親や姉、妹のためと剣を取るのだろうか……)」
 敵の顔が、見えない。仮面に阻まれているからだ。考えたことで変わらないこと、意味もないことを思わずヒースが考えてしまったのは、きっとその仮面の下の表情を想像してしまったからだろう。
「(……余計なことは考えちゃいけない……!)」
「待たせてごめんね!」
 ヒースが阻害する、その隙をついて、セリカの無数の氷の刃が戦場に、そしてゼファーに降り注いだ。
 セリカは氷の雨を降らせながら、まっすぐにゼファーを見やる。足に刺さった刃はゼファーの動きを鈍らせるものだ。
「ひゃひゃっひゃ! 俺様だけならすり抜けられたのに!! やっぱり人間の体ってのは不便だなぁ……!」
「そうかな! あなた一人の方が、よっぽど捕まえやすかったと思うけど!」
「えー。なんでさなんでさ」
「うるさいからかな!」
 言いながらも、セリカもまたゼファーに肉薄する。考える隙を与えずに、アンゼリカとヒースとともに囲むようにしてアイスレイピアと共に青白い刀身のナイフを振りぬいていく。
 一撃で倒すようなパワーはない。でも、負けない戦いはできる。セリカの狙いはなるべく腕や足狙って牽制していくことだ。少しずつ、傷をつけながらセリカは前を見据える。
「まさかあなたまで復活させるなんてね。でも躊躇ったりなんかしないよ!」
 負けない。そこには相変わらず強い意志が宿っていた。
「……そこは、昔の誼で手加減して欲しかったな!」
 嘯くゼファーに、結界の調整をしながらルシエラは目を細める。
「あなたが、そんなことを言うなんてね」
 ゼファーが腕を振るわれるたびに砕かれる味方への防御も張りなおしながら、周囲に気を配りながらルシエルは弓を番える。
「だよなダヨナァ!! 随分なまっちろくなっちまってよう!」
「勝つためなら、何でもするって、そういうことだよ。……大切な物を見つけられるのは喜ばしい事だと思うから、謝らなくても良いと思う。ただ……」
 ただ。
 羽根を模した、持ち手に蒼水晶が使用されている弓を引きながらルシエラは言いかけて、やめる。
 「あなたは何時も他人の為に戦ってばかりだね」……なんて。
 そんな感傷は、終わってからで充分で。
「ただ……あなたの望みが何であれ、私は、あなたと戦う道を選ぶよ」
 弓はしきりにダイアモードを持つ剣を狙っている。彼女もまた、ゼファーの行動を阻害するために……そして、ついでにダイアモードに当てていく。
「イタイイタイ。声は優しいのにそれ痛い」
「あなたに優しくする気はないから」
「ひどい!」
「貰った!」
 ダイアモードの視線が逸れた。その隙を見てアンゼリカは再びワッパー”黄金旋風”でゼファーの足と己の手を繋ぐ。
「一度捕まえたならお姉さんは怪力さ、そうそう離さないぞ?」
 そのまま斧剣の代わりにアンゼリカはトンファーを構えた。ついでにギュッと拳を握りしめる。
「私はお前さんの決めたことにどうこう言うつもりはない!」
 黄金で彩られたトンファーを握りしめ、堂々とアンゼリカは宣言し、
「だがな、いや、だからこそ! 私は私が積み上げてきた、「これまで」の思いや力で打ち破るのみ!」
 同情も、憐憫もない。
 ただ全力で、アンゼリカはゼファーをぶん殴った。
「……っ、ならば!」
 さすがにこのままではいけない。ゼファーはダイアモードを構えなおす。来るか。アンゼリカは力を込める。何であろうとこの筋力で打ちのめすまで! ともう一度トンファーを構えた、その瞬間、
「私は、諦めない!! 誰にも、邪魔は、させないッ! それが……私自身であっても!!」
「よっしゃよく言ったゼファーちゃん!」
 ダイアモードの剣がゼファーの凍結し、拘束された片足をとらえた。そのまままっすぐ切り落とす。血の代わりに黒い塵のようなものが飛び散る。
「お前、なんてことを……!」
「私は、まだ戦える!!」
 思わずアンゼリカが声をあげる。自分も血まみれの腕をしているくせに、傷口をくるもうと己のマントに手にかけたところで彼女が敵だと思いいたった。同時に返す刃でダイアモードが翻る。とっさにアンゼリカは強化した腕を前に出す。
「それは……、砕く!」
 掴んだ。ダイアモードを素手でとらえる。刃を握りこんで血が流れる。そのままゼファーの腹に拳を叩き込む。離さない。
「……っ」
「させない、よ……!」
 振り切られる。ルシエラが魔導書を手繰り風を吹かせる。癒しと混乱を与える風と共に、セリカの氷の雨が再び降り注ぐ。
「……」
 しかしゼファーは再び距離を取ろうとしている。何なら、ダイアモードを手放して。……あんな傷では、そう長くは戦えないだろう。それでも、再び彼女に速度が戻れば勝敗はわからなくなる。……と、
 ヒースは、そう思った。
 ずっと、その隙を探していた。
「おれはそれに追いつけなくても――相棒はきっと追いつける」
 交代と同時に攻撃が来る。その瞬間、
「その隙を――突いてくれるって信じてる、フェニックス。お前の炎で、全部焼き尽くしてやれ」
 ずっと窺っていた。炎を纏うだけにとどめ、自分一人であるかのように振舞い、相棒に託していたのだ。
 ヒースの影から星霊フェニックスが飛び出した。炎を纏った翼は、今は炎を持たないゼファーへとただ単純に、愚直に、ただ……風より早く突撃したのだ。
 火の手が上がる。強い風が吹いて、凄まじい勢いで火の粉を舞いあげた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルッツ・ハーミット
今のゼファーを僕は良く知らないけれど
その友達はとても、大切な存在だったんだね

そっか
…そっかぁ

それしか言えなくて
ただ、どうにもならない今が悲しくて

…それなら、戦おう
この世界は僕の大切な友達がいる、大切な場所だから
――昔の君も、大切にしていた場所だから
僕のために、君を止める
絶対に

戦闘
背後を取られないよう意識して立ち回り
敵を視界に捉え続け動きを読み
来る、と思ったタイミングで敵正面に炎を振るう
目眩まし程度にしかならないとしても速さが弛めば御の字
防御から受け流し
凌いだら引かずに即反撃
一度で捉えられなくても
何度も、何度でも
諦めない

君も諦めなくていいよ、ゼファー
いつか君が本当に幸せになれる日を、願っている


クロービス・ノイシュタット
戦いは、往々にして|独善《エゴ》のぶつかり合い
双方とも譲れないのなら
…そも、謝られる謂われは無いよ

移動の為の挙動…顔の向き、重心移動、踏み込み等々
見切り、軌道を読み、初動の時点で立ち位置を移す等、
せめて直撃や急所からは幾分か外したく
踏み止まり、抗えば
受け止めた力の分だけ衝撃は増す
…なら
喰らう勢いに乗って、その力を利用し、受け流して往なし
跳ね飛ばされるとみせて、軽業も活かして着地
彼女の軌跡上、或いは反転したなら其処を狙い、UC
狙うは…煩いあの剣
本体、又はそれを持つゼファーの腕へホーミング
確実に当て、あわよくば衝撃波も止められたらと

利他的なのは美徳なのかもしれない
けど
俺は、今の君の方が良いと思うな



「そっか」
 ルッツ・ハーミット(朱燈・f40630)の口をついてでたのは、そんな言葉だった。
「……そっかぁ」
 思わず、その場に座り込んでしまいそうに見えた。クロービス・ノイシュタット(魔法剣士・f39096)はルッツに目をやると、ルッツは何とも言えない笑みを浮かべた。
「今のゼファーを僕は良く知らないけれど……その友達はとても、大切な存在だったんだね」
「……」
 誰に向けてでもない。ルッツの呟きに、クロービスは考える。
 きっと、ルッツにも明確に言葉にできなかったんだろう。
 それだけは、なんとなくわかった。そしてその気持ちを、クロービスも言葉にできないことだけはなんとなくわかっていた。
「悲しめばいいのか、喜べばいいのか……」
 ずっと独りだった彼女に、大切に思える人がいた。そのことはきっと、善いことなのだろう。けど、
「できれば、僕たちも、そんな風に彼女と友達になりたかったよね」
 クロービスの考えに応えるように、ルッツはそう言って。……そうして少し、表情を引き締めた。
……そして、
「私の、話?」
 顔を上げた瞬間、目の前に長い金髪が翻っていた。
「……っ!」
 仮面をかぶった彼女は、顔こそ見えないけれども声はいつものままだった。既に戦いは始まっている。気づけばその片足が……無かった。片足を切り落としたのに、動いている。傷口からはざらざらと黒い塵のようなものが零れ落ちている。……ああ、違うものなのだと。そう思うと同時に、金の柄に細身の刀身のフレイムソードをルッツは掲げていた。
「ヒャッヒャッヒャ!! そりゃお前、俺様の噂をしていたんだよなあ!! 最高にイカスカッコイイ剣だってよ!」
「いや、全然っ!」
 剣が嗤う。金切り声のような笑い声を立てる剣をルッツはフレイムソードで受ける。
「利他的なのは美徳なのかもしれない。けど……、俺は、今の君の方が良いと思うな」
 ルッツがダイアモードを抑えている隙に、クロービスが動いた。アイスレイピアをひらめかせる。勿論本気で狙いに行っているのもあるが……、
「させない!」
 もう片方の手、戦籠手でゼファーはクロービスのレイピアをつかむ。そのまま握って、振り回しそうな勢いに即座にクロービスはレイピアを引いた。……想定より少し反応が遅いのは片足のせいだろうか。それでも、十分な力を感じるけれども。
「私は、こんなところで倒れていられない! もし私のことを思ってくれるなら引いて」
 それも、以前なら絶対言わなかったこと。勿論、彼女も自分たちが引くとは思っていないだろう。けど言う。それだけでなりふりは構っていられないのだとクロービスは察する。
「戦いは、往々にしてエゴのぶつかり合い。双方とも譲れないのなら……戦うしかないな」
 けれども、クロービスだって譲るつもりは毛頭ない。ダイアモードが追いすがる。その速度についていけないことは最初から想定済みだ。けたたましい笑い声をあげながら迫る剣を、クロービスはアイスレイピアで受けて勢いを殺す。殺しきれずにぶれたダイアモードがクロービスの指を傷つける。落とされなければ。それでいいとクロービスは割り切った。
「そも、謝られる謂われは無いよ。そして、俺たちだって謝らないよ。君の道を阻むことを」
「……っ、それは……嫌だ!!」
「隙、あり!」
 一瞬、ゼファーはクロービスに対応を切り替えた。その瞬間を狙って、ルッツの炎の剣が動く。反射的にゼファーはダイアモードの切っ先を向ける。
「……それなら、戦おう、ゼファー。この世界は僕の大切な友達がいる、大切な場所だから」
 それが動く前に、ルッツの剣から炎が立ち上がった。
「――昔の君も、大切にしていた場所だから」
「……っ」
 切っ先がぶれる。その隙を見逃さずルッツはゼファーの剣を弾き飛ばす。そのまま弾きはしない。返す刃でその首を狙った。
「僕のために、君を止める。……絶対に」
「私も最後まで諦めない。……絶対に!」
 紙一重で避けて、後退しようとする。絶対と絶対はほんの少しゼファーの方が勝っているように、見えた。
「そんなの僕だって諦めないよ、ゼファー。知ってるよね? 僕たちのしぶとさは」
 けれどもルッツは諦めない。逃げようとするゼファーに追いすがる。フレイムソードから放つ炎が、続けて横凪にされる。避けられても、避けられても。何度だって、ルッツは剣を振るう。鮮やかな赤い炎がまるで生き物のように踊る。そして、
「――Gehen wir」
 一緒に戦っているクロービスが、その隙を見逃さないこともルッツは理解していた。クロービスは自動戦闘光輪を出現させる。
「おいおいおい! ゼファーちゃん、ヤバいんじゃねぇの!」
「黙れ。っていうんだったかな、こういう時は。……やばいのは君だよ、ダイアモード」
「ウッヒャー! ……んなのでこの俺様がやられっかよォォォォォォォォ!」
 光輪がクロービスの声に応えて自動で走る。それはまっすぐにダイアモードに向かった。ダイアモードが吠える。一瞬で振るわれた県は正確にクロービスの頭上を狙っていた。
「……煩いその剣、封じさせてもらうよ!」
 光輪はクロービスの頭上で弾ける。一撃、凄まじい勢いでぶつかりその剣を弾き、
「曲がれ!」
 そのまま反転してゼファーの腕を捉えた。
「ゲェェェェェェ!?」
「っ、なら……!」
「やめなさい、腕落とすのはやめなさい!!」
 即座にゼファーは己の腕を切り落とそうとして、ダイアモードを持つ腕で同じダイアモードを持つ腕は斬り落とせないとすぐに気づく。……混乱している。ルッツは炎の剣を握りしめる。
「君も諦めなくていいよ、ゼファー。……いつか君が本当に幸せになれる日を、願っている」
 同じことをするのなら、何度だって。
 僕も同じように止めるけれど。
 けれども……だからと言って、彼女を諦めさせることは、その風を止めることは、きっと誰にもできないだろう。
 そこまでは口にせず、ルッツは炎を纏う剣を一閃させた。
 狙うは、彼女の首元に。
「ぐ……っ!」
 その一撃に、ぱっと黒い塵が飛び散った。
 血のようなものだろうけれども、それは血ではなかった。
 それが……やっぱり少し、ルッツには悲しかった。のだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ソフィア・アンバーロン
●WIZ/アドリブお任せ

☆先制攻撃
(常に幸運を利用)
霊的防護で防御も忘れず、ゼファーへ影縛りして行動を阻害をするよ!
装甲があると斬撃継続するらしいから、壁に隠れて位置固定して影縛りしてみようかな

貴方はだれ?
ラッドシティのゼファーちゃん?
友達思いの怪人さん?

ユーベルコードで大鎌さんを呼び出して、代償に血を吸わせて高速移動をしつつ呪殺弾を撃ったり、接近してきたダイアモードともども大鎌さんで斬撃

ゼファーにスピードが届くと思ってないので、影縛りをかけるもの忘れずに

どっちにしろ…ダイアモードに頼り続けるなら潰すまでだよ

代償が足りないなら更に血を吸わせて、高速移動と肉体強化で攻撃を続けるよ!


マウザー・ハイネン
…同志は友にはなり得なかった。
友という存在の価値を知っていたなら…よしましょうか。
その友情は素敵なものなのでしょうが、私達にはこの世界が素敵で大切。
幾度でも倒して差し上げます。
…ところで相変わらず生ジャガイモ好きなのでしょうか?

速度で勝ち目はないでしょう。
心眼と第六感で攻撃を先読み、氷のオーラを纏い防御しながら衝撃波の直撃を避けつつ受け流します。
可能なら突っ込んでくる経路の地面を氷細剣でスケートリンクのように凍らせ速度を少しでも出し切り難いようにし加速を妨害。
初撃を凌いだら魔法で氷壁を創造、次に仕掛けてくるタイミングでUC起動し相殺。
生じた隙を氷槍で一気に貫きましょう。

※アドリブ絡み等お任せ



「貴方はだれ? ラッドシティのゼファーちゃん? 友達思いの怪人さん?」
 ソフィア・アンバーロン(虚ろな入れ物・f38968)は戦場に立った時、そんなことを考えた。
「どちらも、私。私が歩いてきた、大事な私だよ」
 呟きのつもりだった。けれども答えがあった。ソフィアはぱちりと瞬きをする。
「そっか」
「そうだよ。……オブビリオンになってしまってからは、残念ながらたくさんの私が増えて一つ一つが違うものになったけれど」
 だから、いま私が死んでも、他の私が目的を達成してくれるなら構わない。
 言外に彼女はそう言って……戦籠手に包まれた手を伸ばした。
「っ!」
 壁に隠れて……なんて思っていた次の瞬間には、ゼファーはソフィアの目の前にいた。あちゃあ、私の幸運もここまでかな。なんてあっさりソフィアが心の中でそう肩を竦めた時、
「……同志は友にはなり得なかった。友という存在の価値を知っていたなら……よしましょうか」
 アイスレイピアが躍った。ソフィアの頭をジャガイモみたいに握り潰そうとしていた戦籠手を、マウザー・ハイネン(霧氷荊の冠・f38913)が弾いて阻んだのだ。籠手が逸れる。それと同時に笑い声のような唸り声のような音を立てて、ダイアモードが反撃のように走った。
「その友情は素敵なものなのでしょうが、私達にはこの世界が素敵で大切。……幾度でも倒して差し上げます!」
 剣が目元を掠り、ぱっと血が出る。構わずマウザーは己の体をオーラで覆って防御した。「相変わらず生ジャガイモ好きなのでしょうか」とは心のうちに。別に好きじゃないとか言われたら、ちょっとショックを受けてしまいそうだったから。
「……速度で勝ち目はないでしょう」
「同感。ゼファーちゃんにスピードで届くとは思えないなあ」
 レイピアで剣を弾く。マウザーが後退している間に、ソフィアの方はすでにもう少し距離を取っていた。さすが私の幸運、なんて言いながらも、攻め手は緩めることなく影縛りを行い、着実に自我を持つ大鎌で己の手を傷つけ、血を吸わせたりしていた。
「あんなになってまで早いんだもの、ヤになっちゃう」
「ええ……彼女らしいと言いますか」
 ソフィアの言葉に、マウザーは苦笑した。きっと戦闘中に切り落とすか切り落とされるかしたのだろう。ゼファーの片足は斬り落とされていた。血の代わりに今もなお黒い塵が傷口から零れ続けている。機動力は落ちているはずだ。それでも早いとソフィアはぼやいたのだ。
「どっちにしろ……ダイアモードに頼り続けるなら潰すまでだよ」
 だがしかし。彼女は大鎌をぴたりとダイアモードに定めた。
「……それも、同感です」
「私は窺うほうだから」
「ええ。では私は前に」
 作戦は一瞬で決まった。氷のオーラで己を守りながら、マウザーが前進する。ゼファーも再び走り出す。
「ヒャッヒャッヒャ! くるぜくるぜ、正面から!」
「わかってる……!」
 ゼファーも剣を翻す。その直前、マウザーはアイスレイピアで地を叩いた。一瞬で地面を凍結させる。
「片足では……バランスを取るのも難しいでしょう!」
 足が滑る。踏ん張りを聞かせるのは難しい。無論一瞬で立て直すだろうけれども、マウザーから見たらその一瞬は永遠ほどに価値がある。
「私の氷で……打ち消します!」
 氷の壁を一面に作り出す。ダイアモードが壁に向かってた体つけられた。壁に罅は入るけれども、その攻撃を完全にマウザーは受け止める。
「せい!」
 同時に槍を突きつける。今度は回避しようとしたゼファーであったが、
「ふふーん。今更ながらに、遅いんだよ!」
 ソフィアが影を縫い留めるようにして動きを封じていた。明るい言葉とは裏腹に、ソフィアの表情が真剣な色を帯びる。
「大鎌さん! 獲物はアレ! 行くよ!」
 ソフィアは己の大鎌に血を吸わせる。もっと。もっと。……もっと早く。もっと強く。
「は……。あんたさんも、たいがいだな!」
 ゲラゲラと楽しそうに笑う声はダイアモードから、それをあえて聞かずに、自身の限界まで強化した大鎌を、ソフィアは振るった。
「……頑張らなきゃ、頑張れないからね」
 言葉にならないような言葉だった。けれどもゼファーにはなんとなく言いたいことが通じたような気がした。顔が見えないから、よくわからないけれどそう思う。ソフィアは大鎌を振りぬいた。
「ほんっと、趣味の悪い剣だよね!」
 狙いは、ダイアモードに。剣に鎌が直撃する。罅の入る音は、どちらのものか。……あるいは、両方のものだったか。
「ぎゃああああ! 俺様の、俺様の体が!!」
「黙っちゃいなよ!」
 叫ぶダイアモード。そのけたたましい声とともに、剣の刀身が、欠けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クーナ・セラフィン
革命…か。顛末は聞いたけどなんだかなあ。
同等以上にできる人を見つけてようやく友を知って、だからこその執着なんだろうなぁ。
こういう人、絶対他人の言う事聞かないし遠慮なくやるしかないよね。

速度は私でも追いつけないだろうから動き回らず対応。
突っ込んでくる相手が切り込んできた所にジャンプ、懐に飛び込み銅にしがみつきつつ背中を取る。
この速度出してる状態じゃ大きな剣では私みたいな小さいの、切り難いだろうし。
可能ならそのまま、振りほどかれたら着地してからカウンター合わせる形でUC起動。
交錯の瞬間に騎士槍で輝くエリクシルや顔の仮面に一撃叩き込むよ。
…革命は碌な事にならないんだよ、本当に。

※アドリブ絡み等お任せ


イウェイン・マクリエンス
<アドリブ/連携OK>

聖女ゼファー……いや今はウィンドゼファー、か。
あの時は直接対峙する機会はなかったが、今ならこの腕は届くだろうか。

超スピードと先制攻撃には、第六感で感知して軽業で避けつつ、
どうしても当たる部分については剣や篭手での「受け」「受け流し」を
駆使してチャンスを待つ。

一瞬の隙を捉えてダッシュで距離を詰め、|組み付き《グラップル》で腕を掴み、
移動を封じつつ怪力で体勢を崩して、[獅閃連牙]を発動。

「かつてお前“を”助けたいと思った者たちの想いと、かつてお前“が”人々を救いたいと思ったその願いにかけて、この刃は今の残骸たるお前を断つ」

かつての、素顔の彼女を思い出しながら。



「聖女ゼファー……いや今はウィンドゼファー、か」
 けたたましい悲鳴が上がる。嗤う剣、ダイアモードの声だと知った時、自然とイウェイン・マクリエンス(騎獅哮牙・f39049)の体は動いていた。
「(あの時は直接対峙する機会はなかったが、今ならこの腕は届くだろうか……)」
 自然と足が速まる。そのすぐ近くで、少し暗い顔をしているのはクーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)であった。
「(革命……か。顛末は聞いたけどなんだかなあ)」
 であったことはないけれど、話には聞いている。クーナはその話を思い出しながらも、なんとも言えない表情を浮かべるのであった。
「(同等以上にできる人を見つけてようやく友を知って、だからこその執着なんだろうなぁ……)」
 革命なんて碌なことにならない。クーナはそう思っている。けれども残念ながら、行う側から見ればそれはとても魅力的に映ることも知っているのだ。クーナは小さな肩を竦めると、
「こういう人、絶対他人の言う事聞かないし遠慮なくやるしかないよね」
 そんな、小さな小さな呟きに、
「なるほど、確かにな。昔から己の意志を曲げぬ人だと聞いていた」
 イウェインもまた、静かにそう答えるのであった。
「柔軟な思考こそが真の誇りを輝かせる。俺はそう思うが……」
 押し付けるつもりはない。それこそたくさんの価値観を認める柔軟な思考だ……なんて思っていたところで、
 けたたましい声と長い金髪に追いついた。……ゼファーだ。二人がそう認識した瞬間、向こうもそれを認識していた。
「いた」
「っ。まだだ……!」
 既にゼファーは片足をなくしていた。ダイアモードにも刃こぼれが見える。それでもゼファーはまだあきらめてはいなかった。金髪を翻し、イウェインを認める。認めた瞬間、
「……むんっ!」
 ゼファーの戦ごてが走った。まっすぐにクーナをつかもうとするのを、イウェインがその手を伸ばして庇った。ゼファーがイウェインの左手を掴む。
「そちらから来てくれるのであれば……僥倖だ」
 最初からよけきれまいとは思っていた。イウェインもまた、ゼファーの手を掴む。ゼファーがぎりぎりと掴む手に力を込める。鎧ごと腕を砕かれそうだと、イウェインは察した。
「その程度なのか? ……この騎獅の爪牙、悲しみを引き裂こう」
「待って待って、危ない……!」
 腕を砕かれている間に、倒す。決意は一瞬で固まった。イウェインは目を眇める。……とその瞬間、クーナがゼファーの背中に回り込んだ。クーナは小さなケットシーだ。ゼファーのような大きな剣や籠手を持っていては、逆にクーナを落とせまい。
「ちょぉぉぉぉぉ! ゼファーちゃん虫が、虫が背中に!」
「虫だって!? 失礼な!」
 ダイアモードがけたたましい声をあげる。ぶん、とゼファーはイウェインを掴む手を離して体を振った。
「させない! 離れてやるものか!」
 クーナは必至で食らいつく。そうして白百合のオーラを纏わせた銀槍を握りこんだ。
「苦しませるのも心苦しいんだよ――動かないでね!」
 至近距離からゼファーが纏う赤い宝石に一撃を叩き込む。
「……革命は碌な事にならないんだよ、本当に」
「……っ」
 渾身の一撃であった。ゼファーの纏う宝石にも、ダイアモードにも罅が入っている。
 イウェインはそれを冷静に見つめていた。
 クーナは即座に次の攻撃に移っている。
 出鱈目に剣が振られる。スピードはあるが狙いが定まらないそれを、イウェインは紙一重で避ける。
 ゼファーの手は離れた。
 イウェインの手はまだ、掴んだまま。
 捕まれていた腕の感覚がない。恐らく鎧の下で無事ではないのがわかる。けれども構わない。今がチャンスだと、イウェインはしっかりと前を見据えた。
「かつてお前“を”助けたいと思った者たちの想いと、かつてお前“が”人々を救いたいと思ったその願いにかけて、この刃は今の残骸たるお前を断つ」
 騎獅剣“断蛇”。そう呼ばれている剣を振りかぶる。獅子の牙、縦横自在に閃くが如く。イウェインは一つ、呼吸をする。
「……」
 ここに至れば、もうこれ以上語る言葉はない。剣はゼファーを斬り裂く。斬り裂いたところからさながら獅子の爪のように傷口を引き裂いていく。
「……っ!!」
 ゼファーは声をあげない。ただ無言で耐えている。それだけでイウェインは彼女がまだあきらめていないことを知る。そうして思い出す。……彼女の、かつて見た素顔を。
「その仮面は」
 取らないのかと、イウェインは聞いた。
「今は、私の誇りだから」
 それに、これがないと友達が気づいてくれない。なんてゼファーは軽く返した。
 そんなことはないだろう、友達なら。イウェインは言おうと思ったけれども、やめた。
 ゼファーの敗北は、近い。きっとこの彼女は友達には会えないだろう。
 けれども、ためらいはない。クーナの銀槍とともに、イウェインもためらいなく獅子の爪のごとき剣を振り下ろした……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クロウ・デイクロス
●アドリブ連携歓迎
正直な所を言っちまえば、また顔を会わせたくは無かったってのが本音だ。こんな有り様なら余計に、な。
だが、俺たちのやるべき事は変わらねぇ。
…止めるぜ、今度も。

正直、俺にゼファーを上回る速度は出せねぇ。となれば、真正面から受け止めるしかねぇよなぁ!
|意思《ガッツ》で耐えるのには慣れてるさ。と言っても無為無策はアレなんで、せめてもの抵抗として外套を纏いつつ、銃撃と魔力弾による牽制で勢いを削ごうと試みる。
後はもう気力の問題だ。ここでおねんねは出来ねぇもんな男の子!

で、もし何とか耐え切れたら取り敢えず立つ。伊達でも見栄でも、腑抜けた姿は見せられねぇ。腰の魔導書に手を添えて攻撃を誘う。
…俺は昔のお前しか知らない。異世界で何があったのかは分からないし、理解出来るだなんて口が裂けても言えねぇ。
ただ、何であれ…俺は悲劇を許せない。
だから、もっぺん止めてやらぁッ!(UC起動)

防御も回避もナシ、ゼファーの再突撃に合わせで【D】を召喚。真正面から鉄拳を叩き込む。
謝りはしねぇよ。これが俺のエゴだ。


ユーフィ・バウム
かつての戦いの折、確かに私は思いました
「貴女を元に戻す力が私にもしあったなら」と
それは失礼だったかもしれません

貴女の覚悟、想い
相容れないとはいえ、確かに強い
戦士たる私が出来ることは、真向から相対するのみ
いざ、勝負ですっ!

超スピードで迫るゼファーさんの先制攻撃には、
全開の【オーラ防御】で耐え凌ぐっ
衝撃波を放ち勢いを減衰させ致命を避けますとも!

そして私のすべてを―《四霊門・開門》!
あなたの意志、私の闘志で乗り越えるッ

飛翔能力を得たダッシュで食らいつき、
接近戦を挑んでは鎧砕きの攻撃を叩きつけます!
貴方の心には常に喪った友がいますね、それは私と同じ!

でも私には、さらに
生きている私の友がたくさんいます!
その心強さは、実力差を超え貴女に勝つ!

ダメージは覚悟の上で取り付いたらけして離れません
此方に注意を集め、友の攻撃の呼び水となり

私自身は怪力で抑え功夫を生かした打撃で押す!
培った全てで押し込み
最後は全身全霊の鎧砕きの一撃で仕留めますッ

けして相いれない、けれどけして忘れはしません
貴女のこと、貴女の戦いを


虻須・志郎
よう、また邪魔しに来たぜ
……ま、覚えちゃないだろうが

アンタのスピードがヤバい事はよく知ってる
喰らうしかねえだろうよ……覚悟は出来てるぜ
激痛耐性で意識が飛んでもバックアップのインセインで無理矢理動く
咄嗟に捨て身の暴力で反撃開始だ――神性解放ッ!

後は内蔵無限紡績兵装のロープワーク
本能で捕縛用の罠を張り巡らせながら
考えず速い奴を徹底的にブチのめす

新しい願いを見つけたのか
それにケチつける様な野暮はしねえよ
だけど……正しいとか正しくないとか思うんだったら
全部まとめて叶えちまえばいいじゃねえか。何故それが出来ない?
アンタ、歪められた奇跡の代償を知ってるからだろッ!!
蜘蛛糸で絡め捕り引き寄せたゼファーを挑発
機を見て騙し討ち――怪力で装甲をブチ破りマヒ毒を流し込む
あれからオレも鍛えたんだ、捕まえたぞウインドゼファー!

そのまま|五月蠅い剣《ダイアモード》を部位破壊
エリクシルの輝きをハッキングして無力化
テメェの話は聞いちゃいねえ
悩んだ時点でもう諦めてんだ
いや……それが本当の願いかもな
思い切り仮面をブン殴る!


ティオレンシア・シーディア
まあ、お互いに譲れない事情も退けない|理由《ワケ》も個々人ごとに山とあるわけで。
話し合いの段階はとうの昔にブッちぎってる以上、やり合うしかないのよねぇ。

防御を完全に捨てた速度威力極振りな特攻スタイルかぁ…悠長に魔術文字とか描いてたらその前に吹っ飛ばされるわねぇ。
転送された瞬間○瞬間思考力でゴールドシーンに「お願い」して防壁を展開。ゴールドシーンの本質は「願いを叶える」ことで、あたしが普段魔術文字を描く理由は「有する意味で祈りを具象化して効果を底上げする」ため。実は別に特別な事とかしなくても「お願い」すれば聞いてくれるのよねぇ。
「お願い」したのは停止と阻害、そして防壁に当たったということは「そこに居る」ということ。あたしに当たる前に○クイックドロウからの●封殺で最速の○カウンター叩き込むわぁ。
「前回」は身一つで相対したけれど…今回は、あたしにも頼れる協力者がいるのよぉ?

…一通りの歴史は軽く調べたけれど。きっと真面目すぎたのねぇ、貴女。だからそう成り果てて、こう成って果てるんでしょうけれど。



 目の前で金の髪が翻って、ユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)はとっさに己の巨大な得物、ディアボロスを頭上に掲げた。部族に伝わる創世の大剣を叩き直し作り上げた大型武器の、その刃がすさまじい、派手に軋むような音を立てる。
「こっ、のぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャ!! おらおらどーした。軋んでるぞ!!」
 重い。即座に武器に守りのオーラを流し込む。それでもディアボロスは軋んだ音を立てて、じりじりと押し込まれていく。ゼファー。彼女は既に刃毀れを始めているダイアモードを斬るよりも潰すという戦法で、ユーフィに叩きつけたのだ。
「その挑戦……受けて差し上げますわ!」
 それは奇しくもユーフィのディアボロスの使い方とよく似ていた。
「かつての戦いの折、確かに私は思いました。『貴女を元に戻す力が私にもしあったなら』と……。しかしそれは失礼だったかもしれません」
 ユーフィは微笑む。どれはどこか楽しんでいるような表情でもあり、そしてどこか強い思いを宿した微笑みでもあった。あくまで穏やかに、優雅に。しかし決してひかぬという気持ちを持って、ユーフィはディアボロスを押し返す。
「貴女の覚悟、想い、相容れないとはいえ、確かに強い……。戦士たる私が出来ることは、真向から相対するのみ。私が、蛮人がお相手しましょう」
 ディアボロスが悲鳴を上げている。しかしユーフィは構わなかった。このまま己が押し返すか、この武器が折れるか叩き斬られるかどちらかだと挑戦するような目でゼファーを見た。引くつもりはなかった。
「いざ、勝負ですっ!」
「私は」
 逆に冷静な目で、ゼファーは彼女を見ていた。既に彼女の片足は失せていた。海神の力でかろうじて速度は維持しているが、積み重なる損傷も著しく、ダイアモードも無事ではない。……けれども、
「負けないッ! 勝負も、矜持も、どうでもいい! 私は、ただ……!」
 ただ、ただ。
 友の為だけにと。言う代わりにゼファーは戦籠手に包まれた開いた手を伸ばした。卑怯だと言われても構わない。このままこの手で相手の腹を粉砕する……!
「よう、また邪魔しに来たぜ。……ま、覚えちゃないだろうが」
 伸ばした手は確かに何かを貫通した。
 虻須・志郎(第四の蜘蛛・f00103)が、ユーフィとゼファーの間に割って入ったのだ。
「……っ!」
「大丈夫だ。アイツのスピードがヤバい事はよく知ってる。だから喰らうしかねえってさ……覚悟は出来てるぜ!」
 思わず何か言おうとしたユーフィを志郎が制する。その隙にゼファーは志郎の腹の肉をその装甲ごと毟り取った。
「邪魔を、するな……!」
「はっ。相変わらず無茶苦茶するな……!」
 さすがに意識が飛びそうになるのを超電子演算AI接続端末で無理矢理繋ぎとめて、志郎は万能紡績兵装を起動する。蜘蛛の糸のようなものを一斉に射出した。
 狙いは、ゼファーの足を止めることだ。兵装は意識がなくとも働き続ける。即座に作り出された意図が拘束しようと動く。
「つかまるわけには……いかない!」
「そういうわけにも。行かないでしょう!」
 それはゼファーも避けたかったのだろう。二人を振り切って後退しようとする。この速度で離脱して、再び突撃されるわけにはいかない。ユーフィが己の武器を振りぬこうとして、
「ヒャッヒャッヒャ!! お先にしつれーい!」
 ダイアモードがユーフィのディアボロスに噛みついた。勿論砕けはしないが、その不意な衝撃で剣が揺らぐ。志郎の罠が完成する前に、速やかにゼファーは後退しようとして、
「残念だな」
 その、退避しようとした先に。クロウ・デイクロス(悲劇を許せぬデモニスタ・f38933)が回り込んでいることに気が付いた。
「退け!!」
「どかねぇよ!」
 一呼吸だった。一呼吸で、ゼファーはクロウとの距離を詰めた。クロウは外套を翻す。避けるのははなから諦めていた。だから、
「真正面から受け止めるしかねぇよなぁ!」
 戦籠手がうなった。凄まじく重い一撃が速度を付けてクロウの腹に埋まる。
「くっそ……、ここでおねんねは出来ねぇもんな男の子!」
 骨が軋む。ちょっと、骨が。それもヤバい類の骨が何本か逝った。それは感じていた。でも堪えた。踏ん張って、前を向く。
「正直な所を言っちまえば、また顔を会わせたくは無かったってのが本音だ。こんな有り様なら余計に、な」
 自分の腹に重々しいガントレットが埋まっているのを見て、クロウはその腕をつかむ。
「だが、俺たちのやるべき事は変わらねぇ。……止めるぜ、今度も」
 だから、これくらいの攻撃気合で耐えられるんだよなぁ! ……そんな、力強くも踏ん張るクロウ。即座にユーフィが取って返すのがゼファーの視界の端に移る。 
「首だ! そのまま首を刎ねちまえ!」
「……言われなくとも!」
 このままつかまるわけにはいかない。ゼファーがダイアモドを翻し、クロウの首にその刃を落とそうとした、瞬間、
「まあ、お互いに譲れない事情も退けない理由ワケも個々人ごとに山とあるわけで。話し合いの段階はとうの昔にブッちぎってる以上、やり合うしかないのよねぇ」
 ふわりとどこかのんびりとした声がした。そしてのんびりとした言葉とは裏腹に鋭い銃声が響いた。
 ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)が撃ちこんだ銃弾が、ゼファーのダイアモードを握る手を弾く。その攻撃に、刃が逸れた。クロウが自分の腹に埋まったゼファーの腕をつかんで引き倒す。
「――神性解放ッ! コイツが終焉だぜ――さあ『……終いにしてくれる』」
 その一瞬の隙に、志郎が追い付いた。邪神『第四の蜘蛛』の真の姿に変身する。
「新しい願いを見つけたのか。それにケチつける様な野暮はしねえよ。だけど……正しいとか正しくないとか思うんだったら、全部まとめて叶えちまえばいいじゃねえか。何故それが出来ない?」
 これからの志郎はただ、理性が消え、速いものから順に無差別に攻撃するだけのものになり果てる。だからその前に、志郎は己の意識を失う前に声をあげた。
「アンタ、歪められた奇跡の代償を知ってるからだろッ!!」
 放出した蜘蛛の糸をゼファーの絡みつけ、引き寄せる。捉えた。その傷……銃弾で穴が開いたゼファーの、ダイアモードを握るその手だ。
「あれからオレも鍛えたんだ、捕まえたぞウインドゼファー!」
「……っ!」
 麻痺毒を流し込む。そのまま延長してダイアモードを縛り上げる。その間に即座にクロウもまた数歩引き距離をとった。骨が軋むように痛む……どころの騒ぎではないが、体は即座に動いた。
「(伊達でも見栄でも、腑抜けた姿は見せられねぇ……!)」
 負けない。最後に勝つのはいつだって強い気持ちを持った方だ。そう自分を叱咤してクロウは古ぼけた魔導書を紐解いた。
「こんなところで、倒れてはいられない……!」
 しかしそれはまたゼファーも同じであった。心を強く。彼女は顔を上げる。負けない。絶対。そこに響くのは、
「ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャ! 良い心意気だゼファーちゃん! そんじゃ……最後の最後まで付き合ってやんよ!!」
 はやり、この剣の声だった。剣が変形する。一瞬、ゼファーの体が炎に包まれる。その炎の香りを、クロウは嗅ぐ。
「……俺は昔のお前しか知らない。異世界で何があったのかは分からないし、理解出来るだなんて口が裂けても言えねぇ」
 そういえば、昔の彼女は炎を纏っていた。クロウはそう思った。ダイアモードの言葉に導かれ、炎を纏ってマスカレイドと化した。そう聞いている。……だから、
「ただ、何であれ……俺は悲劇を許せない」
 炎が消えた時、ゼファーの切り落としたはずの足の代わりをダイアモードが務めていることにも、驚きはしなかった。
「……まだ、私は走れる! まだ、私は戦える。……諦めない!」
「だから、もっぺん止めてやらぁッ! いいや……何度だって止めてやらぁ!!」
 ゼファーがその姿を変えるのと同じように、機械仕掛けの神を冠する機体、【D】を魔導書よりクロウは召喚する。
「これぞまさしく一心同体!」
「テメェの話は聞いちゃいねえ!」
 剣の足となり、その足で周囲を蹴り飛ばそうとするダイアモードを捕縛の罠を使い、勢いを殺して志郎が前に進む。スピードは落ちてもその刃が足に触れる。傷つく己を気にせずに志郎はゼファーの仮面をぶん殴る。
「四霊門……「麒麟」・開門……「霊亀」・開門……「鳳凰」・開門……「応龍」・開門……四霊門開門! わたしの全てを今ここで引き出しますっ!」
 そこにユーフィもまた踏み込んだ。
「あなたの意志、私の闘志で乗り越えるッ」
 黄金の覇気を全身に纏い、その闘志を強さに変えてユーフィはディアボロスを翻す。刃をゼファーの腹に叩きつけようとする。
「……っさせ、ない……!」
 それを、戦籠手でおおわれた手でゼファーは受ける。
「むしろ、好都合です!」
 だったらそのまま、破壊する! ユーフィは構わずディアボロスを押し込んだ。
「貴方の心には常に喪った友がいますね、それは私と同じ! でも私には、さらに生きている私の友がたくさんいます! その心強さは、実力差を超え貴女に勝つ!」

「うーん。元気っていいわねぇ……。でも」
 そんな、飛翔の勢いも込めて突っ込むユーフィからも離れたところでティオレンシアは静かに狙いを定めていた。
「そう言われちゃ、応えなきゃ嘘よねぇ」
 彼女は肩を竦めて、冗談めかしてそんなことを言いながら銃を構える。
「悠長に魔術文字とか描いてたらその前に吹っ飛ばされると思ってたけど……いけるわねぇ」
 彼女は基本前に出て殴り合うタイプではない。ユーフィ、クロウ、志郎がゼファーに肉薄した時点で、彼女は自分の作戦を少し変更していた。……どちらかというとなるべく安全で、確実な方向で。
 愛用のシングルアクション式6連装リボルバーを握りこむ。勿論、ユーフィ達も泊まって戦っているわけではない。目まぐるしく右へ、左へ。動きを立ちまわり、時に入れ替わりながら攻防を繰り返している。
 ゼファーがユーフィに競り負けてディアボロスの軌道を逸らそうとする。その隙にクロウは呼び出していた【D】を纏い、肉薄する。
「一撃必滅、とまではいかねぇが……こいつの鉄拳はかなり効くぜ?」
 機械の体はゼファーの移動の起点を的確にとらえ、その体を打とうとする。志郎の援護もあって、ゼファーは退くことができない。ならばなんとかして、その攻撃を逸らそうとして、
「(お願い)」
 一瞬の思考。シトリンの付いたペンの形をした鉱物生命体は、ティオレンシアの思考を的確に読み取りその願いを聞いた。一瞬で防壁が作り出される。ティオレンシアは鉱物生命体の動きを把握していた。複雑な動きをする戦場で、防壁となったそれにゼファーが触れ、動きを阻まれた瞬間を狙ってティオレンシアは銃弾を叩き込む。
「「前回」は身一つで相対したけれど……今回は、あたしにも頼れる協力者がいるのよぉ?」
 にっこりと笑顔で。けれども戦場から目を離さない。ティオレンシアの意識はすでに戦場に向かっている。即座に次のお願いを発動し、動きを封じ、的確に攻撃を叩き込むために。
「……一通りの歴史は軽く調べたけれど。きっと真面目すぎたのねぇ、貴女。だからそう成り果てて、こう成って果てるんでしょうけれど」
 愛銃を握りしめながら。ティオレンシアはそんなことを呟いた。……彼女の声を聞く人は、きっといない。だからこそかもしれない。
 先ほどまでのふんわりとした口調とは違い、その声はどこか、悲しそうであった。

「行かせるか……。ここで、終わりだ!」
 志郎もまた、己の走行が砕けながらも拳を叩きつける。
「く……っ」
 ゼファーが剣の足を出し、それで受け止める。ぎりぎりと金属がはじける音がする。志郎も肉体にもその剣が届く。腕が切れるのも構わず、クロウはゼファーを殴りぬいた。
「こ、の……!」
 それでも、負けていないと。ゼファーは戦籠手を構える。しかしその瞬間、
「攻撃に移る瞬間ってね、一番隙ができるのよぉ?」
 そんな、声が遠くから聞こえたかどうかはわからない。
 弾丸の雨が、ゼファーの傷ついた体に、罅の入った装甲に、降り注いだ。
 彼女はもう、傷だらけだった。それでも、まだ戦えると手を伸ばした。それがクロウの胸をつく。
「俺は、さ……。謝りはしねぇよ」
 けれども。Deus Māchinā【D】を纏ったクロウが拳を固めてゼファーに殴りかかる。どんなに苦しくても、ボロボロになっても。相手がボロボロでも。最後まで。……最後まで、殺さないと、終わらない。そう、クロウは思ったのだ。
 「誰かが泣いちまうお話なんざ、見過ごせるかよ!」それが、クロウの思いだ。そのために戦っている。……そのために、今、彼女の涙を超えていこうとしている。
「……これが俺のエゴだ!!」
 そこに、言い訳はしない。彼女の涙は、背負っていく。クロウの拳が、ゼファーの芯を捉えた。……そう思った瞬間、
「ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャ!!」
 足とかしたダイアモードがひとりでに動いた……ようにクロウには見えた。クロウの拳がダイアモードに叩きつけられる。
「は……っ」
 なんでかふと、クロウから呆れたような、そんな声が漏れた。ゼファーを庇ったように、見えたから。ダイアモードはけたたましい笑い声をあげ、
「ほんと……ゼファーちゃんといると退屈しないなぁ!」
 憎まれ口とともに罅が入り……粉々に砕ける。足をなくし、ゼファーがバランスを崩す。
……その瞬間、
「仕留めますッ」
 ユーフィが一瞬、手を合わせるような仕草をした。
 それは、祈りの形をしていた。
 次の瞬間、ユーフィはディアボロスを握りこむ。そうして、
「ここまでです……ゼファーさん」
 ディアボロスを叩き込んだ。それはまっすぐにゼファーの仮面を捉え、そして……、
「私、私……負けられなかった。絶対に」
 少女の。
 泣くような声とともに、仮面が砕けた。
 絶対と、絶対がぶつかって。
 結局、やっぱり彼女の絶対は届かなかったのだ。
 ちぎれた体が黒く塵になっていく。ゼファーは手を伸ばす。ごめん。ごめんなさい。そんな小さな呟きに。
「けして相いれない、けれどけして忘れはしません。……貴女のこと、貴女の戦いを」
 ユーフィが優しく、その手を握りしめた。それしか、言えなかった。……それでも、寄り添いたかった。
「あ……」
 最早ゼファーに意識があったのかもわからない。
 ただ確かに、握り返された手の感触だけをユーフィに残して。
 彼女の姿は、静かに消えていったのだった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年09月19日


挿絵イラスト