エンドブレイカーの戦い⑭〜玻璃のトリニティ
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嘗てキマイラフューチャーの市街地で、私達は私達のブランドを残す街を見た。
そして其々の瞳で、与えられた平和に満足する次世代の種族達を見た。
『でもさ、それって違くね?
欲望マックスでガチるのが、ヒトのあるべき姿じゃん!』
『欲望を失った生物に進化は無いウッキー!
愚かな生命体は淘汰されるべきウッキー!』
大切な友らは、一様に欲望を肯定していた。
デザイア、リビドー、エモーション。その全てがチカラになると。
そして我らが大首領も、『我慢しなくていい』『欲望は止めなくていい』と仰った。
――だから、私は自らのエゴで動く。
私の友、マニアック怪人『エイプモンキー』とカワイイ怪人『ラビットバニー』を蘇らせる為に戦う。
誰にも、邪魔は、させないッ!
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「嘗て『バトルオブフラワーズ』で完全に滅ぼされた筈のウインドゼファーが、ウシュムガルの力で蘇生したの」
名を、ウシュムガル・ザ・ウインドゼファー。
彼女の叫びを予兆として見た猟兵も多かろうと一同を見渡したニコリネ・ユーリカ(花屋・f02123)は、彼女の蘇生に関して幾つかの不明点があると前置きした上で、それでも「止めるべき」と口を開いた。
「大切な友達を蘇らせたい――。ウシュムガル・ザ・ウインドゼファーはその想いを幻影に結び、幻影モンキーと幻影バニーと共に、私達猟兵の前に立ちはだかるわ」
彼女のリビドーから幻影を生み出したのは、その手に握られた『嗤う剣ダイアモード』。
過去にも両者は組み合った因縁があるらしいが、より気懸りなのは、生み出された幻影達――。彼等はオリジナルに較べれば戦力が劣るとはいえ、三位一体となれば凄まじい脅威を齎す。
「前の戦争では一体一体と戦ったけれど、今度は一度に三体を相手しなきゃならないから、きっと激闘になるわ」
想像した全てを創造する能力を有するエイプモンキー。その幻影。
絶対無敵バリアで一切の攻撃を封じるラビットバニー。その幻影。
そして、嗤う剣ダイアモードを手に戦うウシュムガル・ザ・ウインドゼファー。
幻影は彼女の望みに従って、其々が持つ能力で戦闘を援護する為、ウインドゼファーに迫るにも負傷や損耗は避けられまいが、攻略の筋は「ある」とは、ニコリネの希望に満ちた表情が示そう。
「幸いにして、私達にはバトルオブフラワーズで得た知識と経験を持ってる。そこから其々の幻影に対する対抗策を編み出し、敵の連携を崩しましょう」
幻影達のユーベルコードは、オリジナルのものと同じ「弱点」を持つ。
そして幻影達は、オリジナルに較べて戦闘力や思考力が劣る。
そこに勝機があると凛然を萌したニコリネは、ぱちんとウインクするやグリモアを召喚し、
「天翔回廊ヘイズワースに転送します。――お願い、彼女を止めてあげて」
これ以上の悲劇は要らない、と。
花屋は希望の光を見るように、己が信じる精鋭らを送り出すのだった。
夕狩こあら
オープニングをご覧下さりありがとうございます。
はじめまして、または、こんにちは。
夕狩(ゆうかり)こあらと申します。
こちらは『エンドブレイカーの戦い』第十四の戦場、11の怪物『ウシュムガル・ザ・ウインドゼファー』と戦う、一章で完結する戦争シナリオ(難易度:やや難)です。
●戦場の情報
復興した都市国家「天翔回廊ヘイズワース」。
嘗て瓦礫しか無かった滅びの大地は復興し、見事な街になりました。
建物が複雑に並び立つ街での戦いとなり、地形を生かした戦法も可能です。
●敵の情報:『ウシュムガル・ザ・ウインドゼファー』(ボス戦)
11の怪物「ウシュムガル」と、オブリビオン「スピード怪人『ウインドゼファー』」が何やら複雑な経緯を経て合体した姿です。複雑な都市国家内でも一切落ちない「超スピード」により、望みを阻む者を粉砕します。
●プレイングボーナス:『バトルオブフラワーズの記録から、幻影モンキー&バニーへの対抗策を編み出す/敵の連携を崩す工夫を行う』
このシナリオフレームには、特別な「プレイングボーナス」があります。
これに基づく行動をすると、戦闘が有利になります。
●リプレイ描写について
フレンドと一緒に行動する場合、お相手のお名前(ID)や呼び方をお書き下さい。
二名様以上は【グループ名】を冒頭に記載願います。この場合も呼称があると大変助かります。
また、このシナリオに導入の文章はありません。
成功度の高い方から数名程度の採用とし、サポートも採用しつつ早期の完結に努めます。
以上が猟兵が任務を遂行する為に提供できる情報です。
皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
第1章 ボス戦
『ウシュムガル・ザ・ウインドゼファー』
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POW : アクセラレイト・デザイア
全身を【エリクシルの輝き】で覆い、自身の【誰に邪魔はさせないという意志の強さ】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : ゼファー・タイフーン
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【嗤う剣ダイアモード】から【勢いを増し続ける竜巻】を放つ。
WIZ : 嘲笑せし斬風
【嗤う剣ダイアモードから放たれる衝撃波】を【スピード怪人の加速能力】で加速し攻撃する。装甲で防がれた場合、装甲を破壊し本体に命中するまで攻撃を継続する。
👑11
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マシュマローネ・アラモード
◎
【対抗する力】
UC、十二皇の擬権能!
六皇招聘!
創造の阻止は、寅(白燐奏甲相当)と巳(賭け狂い相当)で、創造物に欠陥を不運で不完全化。
無敵化は、午(白馬の王子様相当)と戌の(空より至る百億の星相当)で危機に駆けつけるエモい展開を。
【加速する力】
残り二皇、それは卯、三人の私による斥力の
権能(吹き飛ばし)で加速を止めて、強化破壊(退魔呪言突き相当)で動きをギリギリまで止めて、ウィンドゼファー本体に届く、戦鎚の斥力(吹き飛ばし)の一撃を見舞いましょう!
友情の為、魂を燃やすのなら、私も相応に燃やしましょう。
これは魂を剣として、鎬を削る戦いですわ!
この業を使う時は酷く気が滅入る。
行使する権能が“本家の劣化”と自認しているからだ。
「――唯だ、友の幻影を連れて戰う者には、大きな示唆となるでしょう」
三怪人が勢揃いした街に、瀲灔と舞う光の花葩を纏った佳人が降り立つ。
ヘイズワース最大の危機に駆け付けたマシュマローネ・アラモード(第十二皇女『兎の皇女』・f38748)は、咄嗟にバリアを張り巡らす幻影バニーに纎指を結ぶと、その兎頭めがけて七彩の流星を注いだ。
「午よ、戌よ、その権能を
光花と
空花に變えて――」
『うわエッモ。まじ綺麗じゃん』
バニーが食い入るように見た瞬間、橫溢れる光が一気に懷へ飛び込む。
『SNSにアゲたら絶対バズ――えっぐ!』
『! バニー!!』
建物の壁に叩きつけられる友をゼファーが目に追う中、幻影モンキーがザッと踏み出る。
皇女の冠に輝く兎耳を認めた猿邪は、想像力を創造力へ――自動追尾機能付き箱罠を生成するが、既に戦場一帯から運気を取り込んでいた彼女を鹵獲する事は出來ない。
『ウッキッキ、罠猟だッキ!』
「――寅よ、巳よ。かの者に不運を」
『無駄だッキ! この罠は獲物を捕まえるまで追い掛……あっコレ標的がミーになってる?』
残念、ガシャンと閉じ込められたのは幻影モンキーの方。
不慮の事故に見舞われた猿邪が檻内で肩を落とす中、ゼファーは頗る熱って飛び立った。
『よくも二人を……!』
「――友情の爲に魂を燃やすと」
『然うだ、私は彼等を蘇らせたい!』
「ならば私も燃やしましょう。貴女と相應に、魂の全てを」
狂笑する劍を携え疾風となるゼファー、スピード怪人の名に違わぬ超速が戰場を行き交う中、必ず彼女は己に座標を結ぶと凛然を萌した皇女は、杵槌キネティック・リパルサーを構えて刹那の邂逅に備える。
「
十二皇の擬権能、招聘せし六皇の最後は『卯』、残り二皇と私の三人の斥力をぶつけます――!」
其は三怪人の三位一体に対抗する、卯の三位一体。
我が権能を全開に、都市空間ごと吹き飛ばす程の斥力で「斬風」を叩き落した佳人は、地面に叩きつけられたゼファーが転がりざま己に突貫するのを視る。
「これは魂を劍として、鎬を削る戰いですわ!」
劍と杵、魂と魂の角逐――!
兩者は繁吹く鮮血を間に斬撃と斥力をぶつけ合い、弩ッと突き上がる衝撃で街を搖らした。
大成功
🔵🔵🔵
白斑・物九郎
バトル・オブ・フラワーズでも前線張ってましたからな?
おたくらの手際は先刻承知っスよ
――オラッ【創世濁流】発動!
(周囲を夜のキマイラフューチャーの光景に改竄する)
●対モンキー
・マニアックな理論やアイデアで対抗
おたくがどんだけ『今この瞬間』に対抗したトコで、コンコンコンに限らず、次から次へと新しいモンが生えたり飛び出したりする――
この眠らねえ星の営みの更新速度に追い付けますかよ!?
●対バニー
・エモい物を目撃させる
(郷里を見せ付けることそれ自体で封殺を計る)
●対ゼファー
・建物やビルを複数棟生やした影に回り、衝撃波に対する盾として使う
・衝撃波が遮蔽を掘削する間に回り込み、ゼファーを魔鍵でブン殴りに行く
『邪魔するな! 私はエリクシルを手に入れ、大切な友達を――!』
劍戟が波動と突き抜ける中、ゼファーが巨劍を振り被る。
怪光一閃して放たれた斬風が彫像を切り刻めば、其処からドブリと溢れたモザイクが忽ち“世界”を塗り替えた。
『ッッ、この囂しいネオンの光は
……!!』
三怪人の瞳に広がるは、絢爛なる近未來都市キマイラフューチャー。
其々がブランドとして残る郷里の夜景を一望すれば、万彩を踊らせる巨大液晶広告の前、ピンと猫耳を立てた黑影がシルエットを際立たせていた。
「オラッ喜べ怪人共。懷しいでしょうわ」
嘗てこの夜景を前に語ろうたろうとは、四年前にも前線を張った白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)の科白。
三怪人の手際を知る彼は【
創世濁流】で街を滿たすと、早速バイブスをブチ上げるバニーに一瞥を呉れた。
『やっば、この三人で見るとか超エモ~!』
『バニー、バリア解けてるッキ!! こうなったらミーがイオンビーム照射と化学エッチングで円錐構造を形成した、全ての光を吸収するシリコーンゴムの……』
而してモンキーが、想像を創造せんとした時である。
マニアックな解説がされる間に液晶画面をコンコンコン、轉び出たバナナを擲げて渡した物九郎は、思わずキャッチしてしまう猿邪へ、すれ違いざま訣別を置いた。
「おたくがどんだけ『今この瞬間』に対抗したトコで、次から次へと新しい
潮流が生まれる――この眠らねえ星の営みの更新速度に追い付けますかよ」
狩猟の王は、嘗て仕留めた獲物に手間取るまい。
無論ゼファーも同樣と、ビル風に搖れる前髪の奧、金彩の瞳を禽獸の如く光らせた物九郎は、「斬風」が連れる劍光や狂笑に位置を探りつつ、眠らぬ街に影を滑らせた。
『ギャハハ、お前だってこの環境にゃ慣れてんだろ!? 殺せ、俺がぶったぎってやる!!』
『無論』
叢林の如き摩天楼を足場に、或いは薙き倒して翔けるゼファー。
昔から變わらぬ街だと、極彩色の看板を蹴って建物に回り込んだ斬風は、時に一際高いビルの頂に座る招き猫の上、黑い輪郭を暴く物九郎に気付くのが、ほんの僅かに遅れた。
「變わった処もありましょうさ。俺めの狩猟場は現役稼働中ですでよ」
『――ッ!!』
仕舞った、と思う間も無い。
新たなモニュメント『茶斑の三毛』から墜下した“次世代”が、ゼファーの頭上に魔鍵を振り落とす――!
『ゲァアッ!? ハァーッ!?』
咄嗟の防禦も間に合わず――狂笑の劍は激痛を叫んで刃を零した。
大成功
🔵🔵🔵
御形・菘
はっはっは、お主ら久しいのう!
信念は素晴らしいと思うし、再びキマフュを狙うとしたら妾はウェルカムだ
…だが、結果はともかく過程が決して見過ごせん! 残念だが、ここで潰す!
右手で、眼前の空間をコンコンコンッと
はーっはっはっは! ようこそ妾の統べる世界、いやキマフュの深奥へ!
刈ろうが燃やそうが枯らそうが問題ない!
此処に至ったのはあの戦争後だからな、
お主らへとコレを使い、見せることができたという事実だけで、妾は感動MAX、準備は完璧だ!
その強い覚悟、キマフュの守護者たる邪神の左腕が叩き潰す!
衝突事故はな、ぶつかった方だってダメージを受けるのだぞ?
臆さず突撃に全力のカウンターをブチ込んでくれよう!
『ッッ、これが“次世代”の力……!』
ゼファーが手に痺れを受け取って須臾。
今やネオン煌くキマイラフューチャーの夜景に環境を變えた戰場は、街のあちこちにある巨大液晶モニターに星を、御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)なる綺羅星を映して本人の登場を知らしめた。
『はーっはっはっは! お主ら久しいのう!』
三怪人を前に高笑いした佳人は、特に幻影を兩隣にしたゼファーを睼うと、友を想う信念や殊勝と頷きつつ、
猟兵として告げた。
「お主らが完全復活して再びキマフュを狙うならば、妾はウェルカムだ」
一度滅ぼした相手だと尖る花唇では無い。
アツくエモいバトルが出來るなら何度でも、と口角を持ち上げた菘は、然し残念そうに右手をヒラリ。
『惜しむらくは一つ。結果は兎も角、その過程が見過ごせん!』
故にキマフュに至るより前、ここで潰す。
然う決意した右手はコンコンコンッと【
落花狼藉・散華世界】を広げると、近未來都市から一転、千花万彩の空間に招き入れた。
「ようこそ妾の統べる世界、いやキマフュの深奥へ!」
かの惑星の心臓たるシステム・フラワーズは、ドン・フリーダムが生み出したもの。
最終決戰らしい華やかさは勿論、大首領の気配に觸れたバニーは秒で食いつこう。バリアがフッと消える。
『えっぐ!! 超エモいじゃん!!』
『慥かに胸が震えるッキ。でもコレはミーの反撃マシンで刈り取るッキー!!』
感動しつつも危殆を感じたのはモンキー。
猿邪は「最後には炎上する除草剤散布機能付き
巨大草刈機」を想像から創造するが、菘は呵々一笑、それら全てが動画高評価の糧となると雄渾を増していく。
「妾はお主らにコレを用い、披露出來たという事実だけで感動MAX! 今や全てが整った!」
仁者無敵、挙世無双!
目下、エリクシルの耀きを帯と引いて翔ける風を捉えた菘は、竜鱗に覆われた左腕をメキリと握って一發――ッ!
四年前に味わった神速を思い出しながら、カウンターを叩き込んだ!!
「のう、お主。衝突事故はぶつかった方もダメージを受けるのだぞ?」
『構うものか。この痛みを友に捧げる!』
「良い覺悟だ。その意志ごとキマフュの守護者たる邪神の左腕が叩き潰す!」
『っぉぉおおお――!!』
ミシミシと躯が悲鳴を上げる儘、互いに劍閃毆打を繰り出す。
疾ッと繁吹く赫い雨を浴びて兩雄が角逐する中、最初に絶叫したのは劍か、
『ちょ痛ぇ、痛でぇええ!!!』
衝き合う度に零れる刃が、バトルの壮絶を物語った。
大成功
🔵🔵🔵
日輪・黒玉
友のために戦う、ですか
……ならば、黒玉も全力でぶつかりましょう
誇り高き人狼の狩りを見せて差し上げます
建物を足場として利用した立体的な機動で駆け回り、アクロバティックな動きも織り交ぜ、エモさをアピール
エイプモンキーの創造にはこう告げます
黒玉の速さに対抗するならばそれはウィンドゼファーにも有効なのでは?
本来より思考力が劣るならば僅かな迷いで隙くらいできる筈
その隙を突き、動く前に破壊
……これでようやく真っ向勝負
ですが、速さは彼女の方が上
それでも……狩りは速さだけで決まるものではありません……!
自身を上回る速さに対する反骨心から残像を召喚、一斉に蹴りを打ち込みます
速さだけでダメならば数も使うまで……!
『くっ、ぉぉおおお――!!』
猟兵との角逐や負傷でゼファーが足を止めれば、忽ち嚙みつく牙がある。
柱を蹴って方向転換、更に宙空で体勢を転じて閃く――日輪・黒玉(日輪の子・f03556)の蹴撃だ。
「その覺悟に相應しい全力を。誇り高き人狼の狩りを見せて差し上げます」
『ずあッッ!!』
速すぎる故に直進しがちなゼファーに対し、建物を足場に立体的な機動で駆け回った佳人は、側面から強襲!
地面を轉がりざま放たれる斬風も宙返りで躱せば、衝撃を代わった彫像が音を立てて崩れる――木葉の如く輕やかな黒玉には、バニーがバリアを張るのも忘れて魅入ろう。
『機動力エッグ!! 性質の異なるスピードバトルってエモくね!?』
『バリアを張るッキ!! ミーが今から攻略マシンを、高性能AIカメラで速く動くものを自動追尾するネットランチャードローンを……』
モンキーがマニアック知識を並べ立てようとした時間にも黒玉は侵襲する。
バリアが構築されるまでの須臾、想像が創造されるまでの刹那に踏み込んだ少女は、涼しげな佳聲で楔した。
「速さに対抗すると。成程それはウィンドゼファーにも有効なのでは?」
『!! 至言ッキ!!』
目から鱗、いやサングラスを落として驚愕するモンキー。敗北感。
次なる猿知恵が働くにはもう少し時間が掛かろうか、「それまでが勝負」と研ぎ澄ました黒玉は、対面、「それまでは守り切る」と加速する風を見失わぬよう追い縋った。
(「スピードは彼女の方が上……ですが、
狩獵は速さだけで決まるものではありません
……!」)
呼吸が上がり、脚が縺れそうになる中、それでも彼女を捉えたいと反骨心が熾える。
速さで克てぬなら「数」だと、瑠璃色の玉瞳に
赫光を灯した黒玉は、その光を帯と引いて、搖らして――総勢124灯の残像を連れて駆け回った!
『本体は何処だッ!! 命中するまで薙ぎ払い続ける!』
「その前に畢らせます」
幻影と残像、その戰いを制したのは【
黒玉狼の舞踏】。
よりアクロバティックに、より複雑に機動した黒玉が一斉に座標を結び、喉笛を斬り裂くような足蹴閃々!
『ッッ、ッ――!!』
「黒玉にも友が居ます。エゴで戰うのは、貴女だけではありません」
全方向から衝撃に貫かれたゼファーが床に叩きつけられるのを見た黒玉は、硝子のように零れるエリクシルの耀きに睫を落とすのだった。
大成功
🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
それが貴様にとってのトリニティ……至聖三者というわけか
代え難い友情があったのだろう
だが、そのエゴで世界が滅ぶのを座して待つつもりはない
私のそれもまたエゴであると言うなら好きにすればいい
交わらぬエゴが出会えば、激突し、どちらかが打ち砕かれるだけだ
身に纏うは白き中華服
漲る【覇気】を【電撃】と成し、吶喊!
稲妻の蹴撃を放っても、エイプモンキーの創造による絶縁体のゴムで稲妻を、ラビットバニーのバリアで蹴りの衝撃を、それぞれ防がれるのは予想済み
諦めずに絶え間なく蹴って蹴って蹴って――蹴りまくる
その連撃もオリジナルになら防がれたかもしれないが、所詮は幻影
電熱による劣化でゴムの壁を焼き切り、絶対無敵バリアは……その、中華服での蹴りは「突然のパンチラ」が頻発するので、過去の予兆(ガバエモ)に則れば割れるでしょう
二重の防御を抜けば本命のウインドゼファー
放たれる衝撃波に向かって飛び込み、全霊(全力魔法)の【天霆雷砕蹴】
衝撃波を防御ではなく、攻撃することで相殺して防ぎ、【功夫】の身のこなしで追撃の蹴撃を放つ!
猿の怪人は、大鎧ごと打ち貫いた。
兎の怪人は、血塗れでも立ち上がる勇気で倒した。
そして
疾風の怪人は、金属の装甲ごと焼き斬った。
散華万彩の中枢部で戰った彼等の事は鮮明に憶えていると、再び相見えた三怪人に嘗ての血景を重ねたオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は、赫縁の眼鏡越しに烱瞳を絞った。
「それが貴樣にとってのトリニティ……至聖三者と」
『ヒャヒャヒャ、痛快だろう!? こいつらを蘇らせたいって言うんだぜえ!?』
目下に嗤った劍が、彼女のリビドーに輪郭を與えたとは知っている。
代え難い友情があったのだろうと花唇を結んだオリヴィアは、兩脚を広く開いて腰を落とすと、右手は開掌して胸より前へ。固めた左拳は腰に構えて勁力奮發! 漲る覇気を昇竜の如く、震脚するや稲妻と疾った!
「その
結構、崩してみせる――!」
『ここはミーに任せろッキ!! 雷はゴムで防げば良いんだッキー』
時に、含笑して踏み出たのは幻影モンキー。
電気の絶縁体のうち、ゴムは特に抵抗が大きい不導体だと、マニアック知識を披露しながら「ゴム戰車」を創造した猿邪は、ハッチから幻影バニーに手招きする。
『で、あーしがバリアを張れば勝ちっしょ!!』
したらば赤べこキャノンは打ち放題。
やっぱ
三怪人は最強だと兎邪が聲を彈ませる中、オリヴィアは吶喊して【
天霆雷砕蹴】――!
走る戰車の砲塔に着地するや閃々たる稲妻キックを炸裂し、可ッと戰場を白黑の世界に切り出した!!
「ゼファー、貴樣のエゴは聢と見た!」
『ウッキッキ、蹴っても無駄だッキー』
モンキーが肩を竦める中、雄々しき天の雷霆を轟かせる
武鬪僧オリヴィア。
防がれるとは覺悟の上、蹴る、蹴る、蹴る!
「だが其のエゴで世界が滅ぶのを座して待つ
心意は無い!」
『つか無理っしょ! 脚こわれるって!』
バニーが頬杖を付いて諫める中、諦めずに絶え間なく、蹴って蹴って蹴りまくる!
淸廉なる中華服を纏わずしては閃かぬ天雷の蹴撃は、ゴムの装甲と無敵のバリアに何度も膝を撃ち、脛を叩きつけ、踵を突き落とし! ドスドスドスと破壞の振動で波打たせていく。
閃雷に白む麗人は、佳聲もまた雷轟めこう。
「私のそれもまたエゴであると言うなら結構! 交わらぬエゴが邂逅えば、激突し、何方かが打ち砕かれるだけだ!」
『えっなんゴム臭……臭ッ、焼けてるッキー!?』
「オリジナルになら防がれたか知れぬ連撃が、今こそ幻影を灼き貫く――!」
所詮は幻影。
本物と矛を交えたからこそ、幻影となって際立つ弱点に踏み込んだオリヴィアは、山・溜・穿・石!
幾撃と積み重ねた蹴撃で遂にゴムを灼斷ッ、忽ち戰車を大炎上させた!!
『ウキョーッ!!』
『ちょヤバ……ッ!! ゾーン入ってるから、どちゃくそパンチラしてるしー!!』
大きくスリットの入った中華服で脚をブン回す、而して頻発するチラリズムに驚愕するバニー。
ぱんつみえちゃうかも、なんて戸惑いは皆無。敵の殲滅に全集中する
武闘僧に
感動を覺えた彼女はパリンとバリアを破り、最後にチラどころでないパンモロを見た瞬間、爆風に吹っ飛んでいった。
『全てお見通しと云う訳か
……!!』
『ギャハハッ、幻影とはいえ大事な友達が負けるのは
クるよなあ!!』
モンキーとバニーが鉄壁を成す間に仕掛ける筈だったゼファーが、超スピードの中で齒噛みする。
邪劔の狂笑を耳に加速した彼女は、宙空を駆け巡りながら巨刃一閃ッ、オリヴィアめがけて衝撃波を放つが、麗人は退避も回避もせず。逆に弧型の鎌鼬に向かって射線を結び合うよう飛び込んだ――!
『な、に
……!!』
「守りに入らず、攻めて相殺し――霧散した処へ天雷を喚ぶ!」
『ッッ、ァァアアア嗚呼ァ!!』
右脚の振り下ろしで衝撃波を蹴散らし(パンチラ)、更に本体へ左脚の稲妻回旋脚(パンチラ)!!
戰友を破った赫光のパンチラ、いや蹴撃を喰らったゼファーは、身に纏うエリクシルを硝子のように砕いて倒れるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
黒城・魅夜
友情、美しいものですね
及ばずなら再会のお手伝いをいたしましょう
あなた自身を友の待つ悪夢の底へ叩き込むことでね
こちらも幻影を使いましょう
呪詛をオーラに反映させ幻像を構築
その光景は……かつてあなたたち三人が共に過ごした懐かしい時間
バニーがエモさに見惚れている隙に攻撃
卑怯だというのならそもそも戦場になど出てこないことです
何度も戦いましたがあなたは知らないでしょう、サル
あのときにはなかった猟兵の力
「二重詠唱が可能なUC」の存在をね
UCにカウンターを合わせようとしたモンキーの回避意志を
「無力を悔やめ刻の神」で撃ち砕きます
友の二度目の死に一瞬微かに動きが鈍りましたね
その一瞬で私があなたを『見る』には十分
ゼファーの高速移動を第六感と心眼で見切りUCでとどめです
虚無の底へと消えなさい
同情などしませんよ
あなたのやろうとしていたことは
まさにあなたと同じような悲しみを
より多くの人に味わわせることだったのですから…
『クッ……やって呉れる!!』
猿の怪人と
兎の怪人が爆炎に吹き飛ぶ中、雷に打たれた
疾風の怪人が膝をつく。
然し斃れる訳には往かぬと誰より早く顏を上げたゼファーは、刹那、眼路に広がる「夜景」に暫し時を忘れた。
“変わりませんね、この街は。見てください。私達のブランドも未だ残っています”
“なんかちょっとエモいね! でもさ、それって違くね? 欲望MAXでガチるのが、ヒトのあるべき姿じゃん!”
“欲望を失った生物に進化は無いウッキー! 愚かな生命体は淘汰されるべきウッキー!”
『これは、私達がキマイラフューチャーで一同に会した時の……』
「友情とは美しいものですね」
どことなく甘美な鈴音にハッとして、聲の方向を辿る。
警戒を籠めて見れば、其處には夜帷の如き麗姿から闇黑を紡いで「幻像」を構築する――黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)なる呪詛の塊が、燦然たるネオン光に輪郭を暴いていた。
「これは嘗てあなたたち三人が共に過ごした街の景色……懷しいでしょう」
『ガチでエモじゃん!! まじテンアゲなんすけど!!』
三怪人の中でも特に感動に震えたのは、幻影バニー。
バリアを張るのも忘れて魅入る彼女に流眄を注いだ魅夜は、万の光彩に浮かび上がる縛鎖『呪いと絆』を這わせるや赤べこキャノンごと拘束し、【
闇に溺れよ影へと沈め、せめて末期は舞う如く】――無の暗晦に引きずり込んだ。
『ッ、バニー!! 貴樣、幻影と雖も友達をよくも!!』
「
豈夫、卑怯と仰いますか。友を失うのが怖いなら、戰場になど出てこないことです」
バニーの感情が
ガバであるとは、三年前の交戰で経験済み。
本物に較べれば猶の事、と――全てを無に帰す黑影を涼しげに瞥た魅夜は、その眼路の脇、幻影モンキーが想像力を創造力へと變えんとする挙動を捉えた。
『ユーは影を操るッキー!! ならばミーは巨大投光器で一切の影を搔き消してやるウッキー!!』
而して猿邪がマニアック知識を活かしたマシン装置で反撃する事も既知。
間もなく組み上がる巨大投光器が、這い寄る影に赫灼電光を射れば、魅夜は纎指をスッと差し出して【
無力を悔やめ刻の神、漆黒の裁き我が手にあり】――此度は白銀に煌く鎖を延伸し、反撃マシンを破壞した!
『ウキーッ!? 先刻と違う鎖だッキ!?』
「あなたは知らないでしょう、サル。あれから猟兵が新たな力を得た事を」
『――ッッ!?』
其は何だと問うより先、魅夜が答えを突き付ける。
幻影ながら鼓動する心臓に。大鎧ごと貫いて。
「これは
終焉を終焉させる者達、即ち私達がこの世界と出会った事で得たユーベルコード」
同時に併用できるユーベルコードは、バトルオブフラワーズが勃発した時分は持たなかった。
これはゼファーのリビドーで輪郭を得た幻影も知らぬ事――死を繰り返すでなく、生を繋いできたからこその能力で上回った魅夜は、その橡色の玉瞳にモンキーの死を映して須臾、交睫ひとつして残る一体を捉えた。
「友の二度目の死に、一瞬、動きが鈍りましたね」
『ッッ私は、貴樣を、許さない!!』
蘇生を望む大切な友。幻影とはいえ、その死は疾風の怪人のスピードを僅かにも削ごう。
而して魅夜は刹那の好機を見逃さず、烱瞳をゼファーに結ぶや二条の鎖を同時に放った――!
「さぁ、堕ちて沈みなさい。奈落の底より深き場所、虚無の底へ」
『ぜ……ぁ……ッッ!!』
「及ばずなら、お手伝いを。大切な友の待つ悪夢の底へ案内致しましょう」
二重の螺旋を描いた鎖が竜巻を裂いて伸び、ゼファーと、彼女が握る狂笑の劍をぐるり巻いて拘束する。
次いで魅夜の足元に搖れる暗澹より這い出た鎖が、兩者を抱くようにして――底へ、底へ。
『ギャギャッ!? 引きずり込まれていくぜえ!!』
『ッ……くッッお
……!!』
劍が焦燥し、ゼファーも全力で抗うが、魅夜は手を緩めまい。同情も爲まい。
「あなたのやろうとしていた事は、まさにあなたと同じような悲しみを、より多くの人に味わわせる事……」
そんな
悲劇の未來があってなるものか、と。
花唇は冷嚴と告げ、今際の悲鳴を呑み込んでいくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
浅間・墨
ロベルタさん(f22361)
相手が護りを捨てるのなら…私も同じように捨てましょうか。
同じくらいの速度ならば先制攻撃にも対処できるはずです。
リミッター解除の上で限界突破後に多重詠唱しつつ剣技発動です。
そうそう。剣技の速度と威力の維持に継戦能力を使用しますよ。
そして刀に鎧砕きと鎧防御無視と属性攻撃と破魔を宿します。
『兼元』の一振りで【地擦り一閃『伏雷』】を使用しますね。
私もこの技の速度には少し自信があります。…いざ。勝負です!
かなり身体に負担がかかりますが最初から全力の速度でいきますね。
真正面からしかけてくるようなので私も真正面から攻めます。
剣技の速度が速度なので当然視界は狭まり視力には頼れません。
なので回避も索敵も接敵も第六感と野生の勘と見切りで対応しますね。
軽くフェイントで剣筋に変化を加えたり2回攻撃で手数を増やしますよ。
もし戦場の足場が悪かった場合には悪路走破を利用します。
友と再会したい気持ちは理解できます。同じ立場ならもしかすると…。
でもこの方法しかなかった…んですよね。だから…。
ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)
ウシュムガルの方は墨ねーが相手するから僕は幻影を。
まずは準備をしないと墨ねーのサポートはできないじぇ♪
パフォーマンスで身体機能強化後に封印を解いて限界突破だよ。
それから多重詠唱しながら脚に重量攻撃と鎧砕きを乗せるじぇ。
今回僕がこの依頼で使用する脚技は【雷神の大槌】だじょ!
「行くぴょん♪ バニーねーとモンキーにーは覚悟…ぴょん♪」
バニーねーちゃんへの対策として兎耳と兎の尻尾を付けるじぇ。
【雷神】の脚技と兎ってなんだか相性いい気がするからねぃ!
ついでに『ぴょん』を語尾につけるよ。気に入ってくれるかな♪
モンキーにーはなんでも創造できる力って凄く厄介だねぃ。
あの時は僕は戦ってなかったからよくわかってなかったりする!
僕の蹴り技に対応したモノを創造して対抗してくるみたいだねぃ。
フェイントや2回攻撃や零距離射撃やクイックドローを駆使するよ。
あと創ったモノは速度と技能をのせた脚に切断を加えて斬るじぇ。
「光並みの速度の脚蹴りで、斬られたことはあるぴょん?」
墨ねーとは連携と協力必須。
キマイラフューチャーを訪れれば、街の所々で三怪人のブランドを見る事が出來る。
唯だ、彼等がドン・フリーダム麾下の大幹部だったとは、ロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)も浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)も、界隈で耳にした程度だった。
「バトルオブフラワーズ……僕は戰ってなかったから、よく分かってなかったりする!」
「……惑星の中枢部……にて……決戰が……ったと……聽……てます……」
もう随分と前の話になる。なにせロベルタに至っては、年端も行かぬ時分に起きた出來事だ。
交戰経験は無いものの、三怪人について事前に調べてきた二人は、其々の「攻略」も用意してきた訳だが、唯一つ、彼等が固い友情に結ばれていた事だけは、自身に降りた予兆で、リアルな
叫喚として聽いていた。
「仲良し三人のトリニティかぁ……手強そうだけど、僕と墨ねーも仲良しだじょ♪」
「はい……っ……負けられ……せんね……っ!」
絆の強さには自信があると頬笑むロベルタに、墨も力強く頷く。いっとう気合が入る。
彼等の三位一体を崩すに、此方は比翼連理で挑もうと瞳を合せた二人は、示し合わせたように「兎耳カチューシャ」と「兎の尻尾コサージュ」を取り出すと、手早く“身繕い”を始めるのだった。
『幻影なら幾らでも作ってやらあ……っ、お前は俺を握って這い上がって來い!!』
『……くっ……私は、諦めない
……!!』
暗澹の淵に突き立てた劍が叫ぶ中、ゼファーが
死者狂いで脱出する。
猟兵の連撃に深手を負いつつも、彼女の『
無限大の欲望』は尽きず――狂笑の劍は其を源に再び幻影を紡ぐと、ゼファーの望む「怪人三位一体」を叶えてやった。
『そーそー、あーしらが揃えば無敵っしょ』
而して
顕現れたるは、カワイイ怪人のラビットバニー。
絶対無敵バリアを展開した後、赤べこキャノンで制圧する――兎邪の無双コンボを學んできた墨は、かの怪人に唯一存在するという弱点を攻めるべく、召喚直後の好機にロベルタを送り出した。
「……お願……ます!」
「まかせてぴょん♪ バニーねーにご挨拶だぴょん♪」
輕やかに飛び跳ねながら敵懷を目指すは、ラビットロベルタ!
バニーとお揃いの兎耳、兎の尻尾をつけた少女は、ぴょんぴょんぴょん♪ 兎らしい敏捷性と跳躍力で駆ける傍ら、祕呪を紡ぎ、詠唱を重ね、練り上げた魔力を雷光と疾風に變えて纏う。
「脚技遣いの僕と兎って、なんだか相性いい気がするぴょん♪ バニーねーも気に入ってくれるかな♪」
無邪気い笑顏で建物を跳び渡る樣は、まるで白銀の仔兎。
野兎の庭遊びのような天衣無縫には、案の定、バニーが直ぐさま食いついた。
『えっキャワワ!! 激カワ!!』
「バニーねーとお揃いぴょん♪」
『マジか!! つかアンタもウサギ好きな訳? 推しコーデとかガチでエモいっしょ!!』
予想通り……と墨が烱瞳を鋭くしたか判らないが、バニーは
情動が搖れ易く、幻影ともなれば
ガバ。
墨が呼吸を深く細く、極限の集中を以て能力の限界を引き上げる中、すっかりロベルタバニーに魅了された兎邪は、バリアを解除した瞬間、雷光に滿たされた。
「Uccidi i nemici in orbita con l'aiuto del ruggito! わーい、軌道上に捉えたぴょんっ♪」
『えっうそマジ……ハアァ~ッ!?』
兎邪の眼路が白黑の世界に切り出されると同時、一際陰影を鮮やかにした長耳の少女が躍り出る。
エモ味溢れるラビットロベルタを懷に許した瞬間、閃々たる灼光一条が胴に沈み――兎の幻影が霞と散った。
『バニーッ!! ユーの仇はミーが取るッキー!!』
ファッと消滅するバニーを追うように進み出たのは、マニアック怪人エイプモンキー。
猿邪は稲妻の如く迸った雷光を封じるに、想像力を創造力に変換し、忽ち『高圧絶縁リボン』を創り上げた。
『ウッキッキ。絶縁体としてポリエチレンフィルムを基材に、粘着剤にブチルゴムを使用したこのリボンが雷撃を塞ぐと同時、ユーの脚に巻き付かせてキックそのものを封……』
「ねぇ、モンキーにー。光並みの速度の脚蹴りで、斬られたことはあるぴょん?」
『――ッ!?』
猿邪が蘊蓄を垂れる間にぴょーんっ♪ と大ジャンプ。一瞬で眼前に現れるラビットロベルタ。
サングラスの奧で瞠目したか知らぬが、兎の少女はニコニコと笑顏を咲かせて回旋脚撃ッ! 絶縁粘着リボンが延伸するより迅く【
雷神の大槌】を閃かせ、はらはらと生地を散らせた!!
『ウキーッ!! 雷で灼くでなく、速さで斬るなんて……想定外だッキー!!』
本物に較べて想像力が甘かったか、創造物が弱かったか。
否、それ以上にロベルタの絶影の脚技が優れていた。
「ふふふ。お覺悟……ぴょん♪」
『ウキョーッ!! さらばだッキー!!』
驚愕するモンキーに不敵な咲みを見せた後は、彼にも一閃――!
バトルオブフラワーズで時を止めた彼等に對し、それ以降も世界を巡って腕を……いや脚を磨いてきたロベルタが、
現世に在る者として強さを見せれば、その華麗なる切斷撃に雄渾を得た墨が、時を継ぐように動いた。
「……いざ。勝負です!」
『よくも友を……!! 貴樣らも地獄へ突き落としてやる!!』
幻影とはいえ、三怪人の再集結はゼファーの本懷。大切な友を消されて
嚇怒は頂点に達する。
然し、彼女の強味は冷靜や沈毅であったに違いなく、バニーやモンキーらが彼女を沈着たらしめていたのだと気付きを得た墨は、幻影とはいえ彼等が消滅した「今」が好機と――五感を研ぎ澄ませた。
(「……友と再会したい気持ちは理解できます。私が同じ立場なら……もしかしたら」)
若しか大切な人を喪失ったら――。
若しか独り蘇生した時、傍に友を求めたか――。
「……っ……この方法しかなかった……んですよね」
繊細な
佳聲が悴むように震えるので、きつく花唇を結ぶ。今は心を凪とせねばならぬ。
(「……私とて、この方法しか……」)
信を置く愛刀を以て。
速さに自信のある劔技を以て。
暴走する疾風を、止める。
「八雷の名の元に……」
祝詞を唱えて励起させるは、巫力か靈力か魔力か。とまれ全ての力を注ごうと気を高めた墨は、大刀『真柄斬兼元』へ白手を寄せるや、月光の如く冱ゆる互ノ目乱の刀文を暴いた。
「……“疾風”を斷つ」
囁くは
訣別。
疾るは地擦り一閃『
伏雷』。
超スピードで飛翔するゼファーを超感覺で捉えた墨は、先ずは居合いで刀光閃々! 抜刀時の踏み込みで過剰に掛かる負担に耐えつつ、稲妻を帯びる斬撃波を空中へ放ち、狂笑の劍から繰り出る「斬風」を相殺する――!
『ギャハハ、こいつぁ手練だ!! 肉の欠片になるまで斬ってやるぜえッ!!』
「……二ノ太刀」
嗤う剣ダイアモードが嗤ったのはこの
瞬間まで。
抜刀時に受け取った衝撃を地に押し込むようにして踏鳴した墨は、地割れを走らせながら空に向かって疾駆すると、劍圧が交わった衝撃を突き破って突貫――! 超高速で駆け抜けざま、構えた劍ごとゼファーを斬り捨てたッ!!
『ッ、ッッ……ラビットバニー!! エイプモンキー!! ……弱い私しか蘇生できなかったばかりに
……!!』
緋兜に覆われた彼女は、その下で号哭したろうか。
狂笑を斷った劍を手放し、身に纏うエリクシルを硝子の如く砕いて散らした彼女は、「友よ、友よ」と叫びながら、自らのエゴと共に果てるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵