エンドブレイカーの戦い⑯〜胸の裡に隠すもの
●密告者
こんにちは、『ウリディムマ』です。
かつては『密告者』とも名乗っていました。
私がマスカレイドだと思っていた方も多いことでしょう。
でも、よく考えてください。私のようなマスカレイドは、他にいましたか?
みなさんの傍らをご覧ください。私に似た、小さな存在が浮かんでいますよね。
それもまた、『ウリディムマ』です。
みなさんが「他人から隠している欲望」を元に、私が今作り出しました。
そう、私は『知的生命体の欲望から、無限に増殖できる』のです。
隣に『ウリディムマ』のいない人はいませんよね?
つまり人の心とは、そういうものです。
●
終焉を終焉させる者
「欲を見せぬ者はあろうが、欲を持たぬ者はおらぬ。まあ間違ってはいなかろうが、だとしてそれを完璧な弱点とすることができると、俺は思わんなあ」
得物に手を添えて、伊吹・儚眞(翠澪の武官・f39937)は、かすかに首を傾げる素振りで猟兵たちを見やった。
「さて、『密告者』だ。「11の怪物」の1柱で、復興した都市国家「燦然楼閣ゼルフォニア」を占領している。……ああ、今は『ウリディムマ』だったか? 強風が吹いただけでのたうち回りそうなやつだよな」
「ああ……柑橘系とかにも弱そう」
「ラーメンにコショウとかやったら絶対ヤバい」
弱くないしヤバくないです。ほんとだよ。
霊峰天舞アマツカグラのエンドブレイカーでもある儚眞は、腰に備えたポーチから詳細を記した紙束を取り出して、猟兵たちへと差し出す。
「かつて封印から蘇った後、唯一の弱点である「無限増殖の開始直後を攻撃」という方法で倒されたが、これが復活したわけだ。明確な復讐心からオブリビオン化したウリディムマは、これの無限増殖によって自らを大量に複製した上で侵略を開始している」
増殖には「人間の隠れた欲望」が必要であるため、人類の居住区……すなわち都市国家を、侵略対象として狙っている。
そしてウリディムマは、戦場に現れた猟兵全員の「隠れた欲望」を糧とし、それぞれの傍に無数の「小さなウリディムマ」を出現させるのだ。
「面倒なことに、この小さいやつを即座に叩き潰さない限り、これらは完全なウリディムマの複製体に成長してしまうわけだ。そのうえ本体を倒すまで小さなウリディムマは無限に出現し続ける」
「無限湧きめんどくさいね」
「面倒に輪をかけて面倒なやつだ」
説明を聞いて心底面倒くさそうな顔になった猟兵に、同じかそれ以上にうんざりとした表情で返すグリモア猟兵。
「とはいえ対処法はあるがね。小さなウリディムマを減らしつつ本体を叩くか、あるいはもういっそ、自分の「隠れた欲望」を何らかの手段で「隠れた欲望」でなくしてしまうとかな」
聞いた猟兵たちは、顔から表情を消した。
「それはつまり……己をさらけ出せと?」
「ことによってはそうなるなあ」
「ほほぉん……恥を捨てろと……」
「己の隠れた欲望が恥かどうかは分からんなあ」
まあ隠すようなものであるからなあ? と薄い笑みを浮かべる男は、心の奥底から楽しげに見えた。
対照的に、絶望に打ちひしがれた猟兵たちの悲鳴が上がる。
「おのれウリディムマ、その目に刺激物をぶち込んでやるー!!」
「おお、ひどいひどい」
効果はないと思います。
「まあそれはさておき、相手は強敵だ。油断することのないように頼むな」
軽薄ではない笑みで猟兵たちに告げると、グリモア猟兵はひらと手を振って送り出した。
鈴木リョウジ
こんにちは、鈴木です。
今回お届けするのは、
隠れた欲望。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●ウリディムマ、あるいは密告者
かつてエンドブレイカー世界において、都市国家「永遠の森エルフヘイム」に封じられていた、11の怪物の1体です。
知的生命体の心に秘めた欲望を糧に、無限に増殖していきます。
ウリディムマは戦場に現れた猟兵全員の「隠れた欲望」を糧とし、それぞれの傍に無数の「小さなウリディムマ」を出現させます。
即座に叩き潰さない限り彼らは完全なウリディムマの複製体に成長しますが、本体を倒すまで小さなウリディムマは無限に出現し続けます。
小さなウリディムマを減らしつつ本体を叩くか、あるいは自分の「隠れた欲望」を何らかの手段で「隠れた欲望」でなくしてしまうことが対処法となります。
眼球部分に刺激物などを与えても、ユーベルコードでない限り有効的な手段にはなりません。
●プレイングボーナス
このシナリオには、以下のプレイングボーナスがあります。
=============================
プレイングボーナス:小さなウリディムマを即座に倒しつつ、本体に対処する/自身の欲望を隠すのをやめる。
=============================
なお、🔵が成功数に達すると判断して以降のプレイングの採用を見送らせていただく場合があります。
それではよろしくお願いいたします。
第1章 ボス戦
『ウリディムマ』
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POW : 抵抗を望む欲望も、私の餌となります。
【小さなウリディムマ】をレベルm半径内の対象1体に飛ばす。ダメージを与え、【言葉で指定】した部位の使用をレベル秒間封じる。
SPD : あなたが隠したい欲望は、何ですか?
対象への質問と共に、【対象の秘めたる欲望】から【新たな無数のウリディムマ】を召喚する。満足な答えを得るまで、新たな無数のウリディムマは対象を【欲望を奪う視線】で攻撃する。
WIZ : これもまた、素晴らしき光景の一端です。
【ウリディムマ】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[ウリディムマ]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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夜鳥・藍
欲望……。
困りました。思い当たる物がありません。
猟兵になった頃は(今思うと不思議ですが)恋人が欲しいと切実に思ってましたが、それ自体が過去世によるものとわかってからは鳴りを潜めてますし。
……。
過去のものでよければ。隠れた、と言うよりはかつての、忘れていたとも言えるものですが。
過去世の私はよすがを求めていました。どんなかたちだって良い、生きる糧になる物ならなんだって。
でもその想いをひたすら隠して潰してそして死んだ。死のその時、その想いからも解放されることに安堵するぐらい。
でも死を迎えても、私が感じる程にその想いは強かったのです。
現れた複製体は即座に青月で斬り、届かないなら鳴神を投擲して潰します。
空に浮かぶ巨大な唇、あるいは巨大な瞳、そのどちらでもあるそれ……『ウリディムマ』を前にして、夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は恐怖でも戦意でもなく、表情を浮かべた。
あの敵は、「他人から隠している欲望」を糧に成長し増殖するという。
欲望……。
「困りました。思い当たる物がありません」
そう口にする彼女の視界に、小さなウリディムマが現れた。彼女自身に思い当たらずとも、秘めた欲望を察知したのだろうか。
数える間もなく増えていくそれらを一瞥し、携えた武器をいくつにも複製すると即座に斬り捨てながら、今思うと不思議ですが、と前置きしてから、
「猟兵になった頃は恋人が欲しいと切実に思ってましたが、それ自体が過去世によるものとわかってからは鳴りを潜めてますし」
愛したい、愛されたい。多くの人が望むこと。それを望む彼女は、欲深だろうか。
いいや、だとしても今はそれが本質的な望みではないと理解していた。
「あなたが隠したい欲望は、何ですか?」
その
問いかけに、藍は逡巡する。
…………。
「過去のものでよければ。隠れた、と言うよりはかつての、忘れていたとも言えるものですが」
静かな告白を受け、その言葉のなお奥にある昏い欲望を見透かすかのように、小さいウリディムマらが藍を包囲していく。
そんなに凝視しなくても、隠すことなどしないのだから。
「過去世の私はよすがを求めていました。どんなかたちだって良い、生きる糧になる物ならなんだって」
青白い軌跡を描いて閃く刃が小さな複製体を討ち落とし、数を減らしたとてなお増殖していくウリディムマへ三鈷剣を振るう。
切っ先を避けて接近する複製体の、そのぎろりとむいた巨大な目玉へ、複製ではない打刀を突き立てる。低い位置から攻撃を仕掛けようとしていたものを踏みつけ、それを足場としてウリディムマ本体へと跳躍した。
求める気持ちは、求めれば求めるほど強くなる。これで満たされると思っても、満たされることはない。
でもその想いをひたすら隠して潰してそして死んだ。死のその時、その想いからも解放されることに安堵するぐらい。
「でも死を迎えても、私が感じる程にその想いは強かったのです」
本体への接近を阻もうと盾にした複製体ごと、藍の操る刃が貫いた。
大成功
🔵🔵🔵
クローネ・マックローネ
絡みOK、アドリブ歓迎だよ。
【POW判定】
ワタシの欲望をさらけ出すよ。
…ワタシね、固め性癖持ちなの。
カワイイ女の子を石像にしたり、自分が黄金像になったり、まあそういうシチュエーションが大好きなの。
でもこれって一般的な性癖じゃあないから理解者少なくて…!
それにセルフで固める事はできるけどやっぱり誰かに固めてほしくって!
正直そういう能力持ちの敵がいないか毎日探してるワタシがいるんだよ!
UCは「クローネちゃんの選り取りみどり体験弾★」を使用。
固めるならカワイイ子を固めたいし、カワイイ子に固められたいのに!
何が悲しくて目玉と口だけの怪物を固めなきゃいけないんだよ!
…とキレ散らかしながら攻撃するね。
「……ワタシね、固め性癖持ちなの」
クローネ・マックローネ(快楽至上主義な死霊術士・f05148)の告白に、手傷を負ったウリディムマと、彼女の周囲に現れた小さなウリディムマの反応は少々の間があった。
「……固め性癖、ですか」
「カワイイ女の子を石像にしたり、自分が黄金像になったり、まあそういうシチュエーションが大好きなの」
それはあるいは、徐々に変化していく恐怖に顔を歪めたままであったり、あるいは突然の出来事に理解も認識もできないままであったり、またあるいは嬌悦に噎び泣きながらであったり。
固めるにしても、像以外にもいろいろなものがある。またその材質も、一般的なものから人目をはばかるものまで多種多様。
「すみませんが、私の理解を越えてしまうので……」
糧とするには何やら重すぎる欲望に、ウリディムマが怯む。
というかこれ、隠れているというか隠しているの間違いでは?
「でもこれって一般的な性癖じゃあないから理解者少なくて……! それにセルフで固める事はできるけどやっぱり誰かに固めてほしくって! 正直そういう能力持ちの敵がいないか毎日探してるワタシがいるんだよ!」
確かに固め性癖は、特殊な性癖と言えるだろう。しかし状態変化系のなかでは比較的一般的なほうである。そういった能力の敵もまったくいなくはないだろうが、とはいえオブリビオン以外も含めた全体数から考えれば、ごくごく少ない修羅の道に違いない。
その欲望はちょっと私にはどうにもできないですねと言いながら、ウリディムマは警戒を強め複製体を猟兵へとけしかける。
襲いかかる無数のウリディムマを睨みつけるクローネの周囲に光が集まり、光弾を作り上げた。
「固めるならカワイイ子を固めたいし、カワイイ子に固められたいのに!」
心からの悲嘆を吼え、光弾を投げつける。増殖し密集しているウリディムマ複製体は、狙わずとも格好の餌食となる。
おぞましく浮遊し我先にと攻撃を放とうとしていた複製体は、一転して攻撃を避けようとするが、遅い。
「何が悲しくて目玉と口だけの怪物を固めなきゃいけないんだよ!」
あたった端から固まり気味の悪い像となって地面に転がる複製体が、山のように積み重なっていく。
ウリディムマ本体は自身を守るために複製体を寄せ集めるが、キレ散らかしながらの攻撃の前では、ただただ像を増やしていくだけにすぎない。
「八つ当たりはやめなさい!」
悲鳴じみた抗議を叫ぶウリディムマに、ひときわ大きな光弾がぶち当たった。
大成功
🔵🔵🔵
禍神塚・鏡吾
ウリディムマの前で仮面を外して宣言します
「『笑いたい』というのが私の欲望です」
満足させるためには、説明が必要ですね?
「昔オブリビオンに敗北して捕らわれの身になってから、私は笑顔を崩すことができなくなりました
そのオブリビオンを倒しても、それは変わらなかった
私は今笑っているのか泣いているのか? 鏡を見てもわからない
だから、心から笑っていると確信が欲しい、それが私の欲望です」
ではこちらの番です
鏡からの眩い光で小ウリディムマ達の視線を一時的に封じつつ、質問します
「あなたは敗北を知るゆえに周到な方だ
大地母神暗殺が失敗した後のことも当然考えていることでしょう
その時自分が生きていたら、どこへ撤退しますか?」
ぱらぱらと像の欠片を落としながら、ウリディムマが問いかける。
あなたが隠したい欲望は、何ですか?
「『笑いたい』というのが私の欲望です」
ウリディムマの前で仮面を外して宣言する禍神塚・鏡吾(魔法の鏡・f04789)のその顔は、笑みを浮かべていた。
一見矛盾している告白を、しかし密告者は興味深げに転がす。
「表情を浮かべるということは、数多の意味を持ちます。己の心を偽るため、相手に阿るため……相手を支配するということもあるでしょう」
凝視してくる無数の眼に怯むことなく、仮面の表に指を這わせ、猟兵は巨大な本体と対峙する。
満足させるためには、説明が必要ですね?
「昔オブリビオンに敗北して捕らわれの身になってから、私は笑顔を崩すことができなくなりました。そのオブリビオンを倒しても、それは変わらなかった。私は今笑っているのか泣いているのか? 鏡を見てもわからない。だから、心から笑っていると確信が欲しい、それが私の欲望です」
それは切望であった。
どれほど望んでも得られる確証のないものを、彼は求め続けている。そのきっかけも手段も分からず。
しかし数多の欲望を食らってきたウリディムマにとって、そんなことは重要ではない。ひとりの人間が抱える欲望が際限のないものでも、何人もの人間が抱える欲望がささやかなものでも。
巨大な目玉を包む唇を嘲笑じみて歪めるウリディムマを見据え、鏡吾はふいと息を吐く。
ではこちらの番です。
鏡が照らし出すは真実のみ。手元に携えた鏡からの眩い光で、ウリディムマ複製体の視線を一時的に封じつつ、質問を投げかけた。
「あなたは敗北を知るゆえに周到な方だ。大地母神暗殺が失敗した後のことも当然考えていることでしょう。その時自分が生きていたら、どこへ撤退しますか?」
「答える必要はありませんね」
光に照らされながらの回答は当然であった。
敵対する相手に手の内を教える必要はなく、偽る必要もない。真偽を問う以前のことである。
鏡吾が用いたのは「質問と共に鏡から目映い光を放ち、命中した対象が真実を言えば解除、それ以外はダメージを与える」というユーベルコードであるが、ウリディムマにとって、「ダメージを負う」程度のことで己の立場を危うくする振る舞いをする理由はない。
この場でせいぜい生き延びたとしても追撃は必至。情報を吐いたところで見逃してもらえるはずもない。撤退するならば、可能な限り傷が少なくあるべきだ。
そして、それ以上の真実はない。
その身を光に灼かれながら、ウリディムマは猟兵を睥睨した。
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
こいつがこれまで何をやってきたのか、この先何をしようとするのかも知らない
そして、こいつマスカレイドでもオブリビオンでも。他の何かでも関係ない
世界に害を及ぼすならば倒すのみだ
欲望は――戦って、超えたい相手がいるんだ。ただ、一人の剣士として
あの人の元で修行していた頃は一度も勝てず……というか、届く未来も見えなかったあの人
多くの戦いを乗り越えてきた今の俺であれば――少しは届くのだろうか
それを確かめる為にも。お前なんかに足止めされている場合じゃないんだ
利剣を抜いて、近くの小さいウリディムマを叩き切り。本体へとダッシュで接近
追加で湧いてくるならそれも斬り。澪式・奥義【無念】の連続攻撃で叩き斬る
灼かれた箇所からボロボロと欠片をこぼしながら、ウリディムマがギチギチと猟兵へ眼をそばだてている。
その視線を真正面から受け止め、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は呼吸を整える。
こいつがこれまで何をやってきたのか、この先何をしようとするのかも知らない。
そして、こいつがマスカレイドでもオブリビオンでも。他の何かでも関係ない。
「世界に害を及ぼすならば倒すのみだ」
揺らがない意志に、ウリディムマは唇を歪める。それと同時に、小さなウリディムマの複製体がふつふつと現れ、嘲弄するかに鏡介を取り囲んだ。
「私が世界に害を及ぼすというのなら、それは人々の心がそうしているということでしょう。隣に『ウリディムマ』のいない人はいませんよね? つまり人の心とは、そういうものです」
欲望。それは、叶え果たしたい願いに限らない。
あいつより上でありたい。こいつは自分より劣っているはずだ。あるいは、もしかしてあいつは自分を疑っているのではないか。こいつは自分を出し抜こうとしているのではないか。
この「誰の心にも欲望があり、それを糧とする」怪物を指して「害を及ぼす」というのなら、すべての人々がそうだと言えるだろう。
だが、かつて『密告者』と名乗っていた時に対峙したエンドブレイカーも、そして『ウリディムマ』と名乗る今対峙する猟兵も、決してそのような『欲望』に屈することはない。
「欲望は――戦って、超えたい相手がいるんだ。ただ、一人の剣士として」
あの人の元で修行していた頃は一度も勝てず……というか、届く未来も見えなかったあの人。
いつか届きたいと願い、届かないのではと迷い、それでも立ち止まることなく進み続けてきた。
多くの戦いを乗り越えてきた今の俺であれば――少しは届くのだろうか。
「それを確かめる為にも。お前なんかに足止めされている場合じゃないんだ」
あるいは、何物にも遮られることのないように。
鏡介の澄んだ願いさえも、ただの『欲望』と見なし餌として食らおうと複製体が飛びかかる。
すかさず利剣を抜いて叩き斬れば本体へとダッシュで接近し、数を恃みと群れ為し壁となって殺到する小さなウリディムマを、斬りながら足場として距離を詰める。
唆す言葉を聞くよりも早く複製体を斬り払い、淡紅色をまとった刃が巨大なウリディムマへと迫った。
一閃とも見紛う速さで放たれる連続攻撃を、密告者はかわすことができず、複製体を盾としてもそれごと断ち斬られる。
「忌々しい……!」
憤怒を吐く間に、終いの一撃が攻め掛けた。
「この剣で紕いを断つ。即ち――澪式・奥義【無念】」
仄輝を軌跡として繰り出された一撃を受け、巨大な唇から、あるいは眼球から血を溢れさせながら、ウリディムマがぶるりと身を戦慄かせる。
「何故! 何故またも邪魔をするのです! 何故
ウリディムマが不利になるのか!」
かつて侮った「人の強さ」に再び打ちのめされる怒叫を、猟兵は顧みない。
彼らによって倒されるべき敵でしかないのだから。
大成功
🔵🔵🔵
ベゼリアイト・スナティ
・心情
あら、あら、欲望…それって子どもたちがわたくしに良く願う事ね!
わたくしの欲望…それってなにかしら?
・行動
欲望なのか、分からないけれど、わたくし、mon reveを探しているの
ここにいるかしら、居ないかしら
わたくしの半身、わたくしの願い、わたくしの……
ふふ、アラクネと共に歌って直ぐに攻撃して貰うわ
ねぇ、可愛い子どもたち、貴方自身の欲望はないのかしら、あるのかしら、わたくし、貴方達の願いを叶えてあげることは出来ないけれど、きっと次こそは別のなにかに生まれ変わってという希望をあげることはできるのよ!
ウリディムマに深く刻まれた傷から溢れる血が、地面に落ちてボタボタと音を立てる。
唇と眼球からなる異様な外見を前にして、ベゼリアイト・スナティ(ラ カージュ・f41218)は、はしはしとまばたきをした。
「あら、あら、欲望……それって子どもたちがわたくしに良く願う事ね!」
微笑みを浮かべたままぱちりと手を叩き、それからこくり首を傾げる。
「わたくしの欲望……それってなにかしら?」
神以外の存在を「子どもたち」として認識する彼女にとって、彼女に請い願う者たちもまた「子どもたち」。
だからベゼリアイトは、『欲望』を「子どもたち」の願いと同じだと理解した。
であるなら、彼女自身の欲望とは何だろうか。胸元に手を当てて考える。
「欲望なのか、分からないけれど、わたくし、mon reveを探しているの」
mon reve。
ここにいるかしら、居ないかしら。
わたくしの半身、わたくしの願い、わたくしの……。
そこまで思いを巡らせてから、夢見るような瞳が、血に濡れた瞳を見つめる。
ぎぢりと眼球を軋ませて、ウリディムマは嘲弄を浮かべ、小さな複製体がその周囲に集まってくる。
「どれほど求めても、得られるかどうかすら分からない、なんとも果てることのない欲望ですね」
その言葉に、ベゼリアイトは目を矯め、すと息を吸った。
人の想いなどどうでもいい密告者にとって、言葉とはただ浅ましく食らうためだけに煽り立てる道具。
だが、彼女の言葉は愛し慈しむ力を持つもの。
綿菓子の吐息に願いをこめて歌うの!
妖精アラクネと共に歌い紡ぐは
soupir d'ange。
甘く柔らかな旋律をまとって、ウリディムマへと攻撃を仕掛ける。
雲霞の如く群れる複製体はそれを防ぎ、反撃しようと襲いかかるが、消耗し力が衰えつつあるウリディムマの統率は、集中を欠いているように思えた。
集まるほどに強化され、それらを統制すればなお強化されるはずなのに、それは粗く纏まらず、ウリディムマ本体の防御すらおろそかになっている。
人の欲望を食らい増殖し成長する性質の、ウリディムマの複製体が明らかに数を減らしていくさまに、ベゼリアイトは微笑み、優しく告げた。
「ねぇ、可愛い子どもたち、貴方自身の欲望はないのかしら、あるのかしら、わたくし、貴方達の願いを叶えてあげることは出来ないけれど、きっと次こそは別のなにかに生まれ変わってという希望をあげることはできるのよ!」
語りかける声にかすかに応えたのは、何だったのか。
大成功
🔵🔵🔵

マウザー・ハイネン
懐かしき密告者…単なる使い魔ではなくそんな大層な存在だったとは。
こんな存在に世界を満たされない為、徹底的に滅ぼしましょう?
戦場を駆けて本体捜索。
小さなウリディムマが出現したり集団で集まっている場を発見したらUC起動、戦場全体への吹雪で纏めて凍らせ落としてしまいましょう。
冷気は唇や瞳を乾燥させて中々苦しいのでは?
さらに秘匿したい欲望を…そうですね。堂々と言いましょうか。
私は仕えたいのです。素晴らしき理想に邁進する王に、その理想が叶えられるよう、私のあらゆる性能を使い潰す程に活用して欲しいのです。
出来れば人間以外で。人間以外で。
数が減ったら本体へ切り込み破魔の氷槍で貫きます。
※アドリブ絡み等お任せ
今なお数を増やし本体を隠すウリディムマに、マウザー・ハイネン(霧氷荊の冠・f38913)はかつての
戦いを思い出す。
「懐かしき密告者……単なる使い魔ではなくそんな大層な存在だったとは」
あのエルフのレジスタンスの言葉からも、あの戦いのなかでも、並ならぬ存在であると示唆されていた。しかし、一度倒した敵に、そのような情報があろうとは。
とはいえ、刻一刻と増殖し成長していく『密告者』は倒すべき相手に変わりなく、今この時はかつてよりも力を得ている。
一度倒した敵なれど、再び姿を現したならば。
こんな存在に世界を満たされない為、徹底的に滅ぼしましょう?
「ああ、「ここにも「いましたか「
猟兵!」!」!」!」
小さなウリディムマの複製体が、マウザーへと口々に怨嗟を吐く。それに溜息ひとつでも応えず、得物のひと薙ぎで斬り捨てると、本体を捜索するために戦場を駆ける。
彼女の行動を妨害する複製体の数は、さほど多くない。だが、戦場を注意深く見て、その密度にむらがあることに気づく。
不自然に小さなウリディムマが出現したり集団で集まっている場を確かめて、
「どきなさい、私の邪魔をするなら排除します」
氷細剣を躍らせると、不意に戦場を冷気が奔り、吹雪が吹き荒れた。
風雪はただならぬ勢いで小さなウリディムマを搦め取り、あるいは雪とともに飛来する聖剣の群れにより、仲間たちを力付ける。
「冷気は唇や瞳を乾燥させて中々苦しいのでは?」
予想したとおり、大小様々な複製体は氷雪に封じられ、喘鳴も吐けず身動ぎひとつできずに地面に転がる。
しかし、氷塊が転がったその場で、新たなウリディムマが再び現れては群れをなしていった。
「小細工をしたとて、
密告者が増えるのを止めることはできませんよ」
声がひび割れ気に障る調子の哄笑を、マウザーは歯牙にも掛けず、ふいと思案する。
さらに秘匿したい欲望を……そうですね。堂々と言いましょうか。
「私は仕えたいのです。素晴らしき理想に邁進する王に、その理想が叶えられるよう、私のあらゆる性能を使い潰す程に活用して欲しいのです」
出来れば人間以外で。人間以外で。
とても重要なことなので、2度言って念を押した。
それは例えば諸々割愛するが、決してこの密告者ではない。
最終地獄の名を冠したアイスレイピアを揮い、凍りつき落ちかけた複製体を足場にウリディムマの本体へと切り込む。
正面切って攻撃を仕掛けるマウザーの姿に、傷ついた巨大な眼球を見開き、密告者は声高に嘲笑う。
「
密告者にすべてを委ねれば、それは容易に叶うでしょう!」
「問題外です」
構えた氷槍よりもなお冷たい拒絶とともに、一撃で貫いた。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊で、生前は戦友だが…
第二『静かなる者』こと『梓奥武・孝透』霊力使いの武士
一人称:私 冷静沈着…?
武器:白雪林
享年:42歳
今回の真の姿は、生前の姿
https://tw6.jp/gallery/?id=162964
『隠された欲望』ですか。簡単ですよ
『この身にいる『侵す者』と『不動なる者』を追い出して、ただ『疾き者』だけを囲いたい(独占欲爆発)』です
普段の姿を形作ったのは私ですし…この今の姿でさえ、皆は『馬県義透』と認識してくれますからね?
(戦争時、何度かこの姿でトップ立ってたことを利用する案)
四人で戦うのも楽しいのでしませんし、明確に陰海月や霹靂、『疾き者』から嫌われるので
孫的存在の二匹や、恋い慕う相手に嫌われたくないのは当然でしょう
というわけで。UCによるこの矢の餌食となりなさい
氷雪属性もつけてますし…私の視界内にいる限り、逃げられませんよ。二回攻撃もします
※
ちなみに、一時期付き合ってた二人
年の差8歳。『疾き者(独身)』が年上
孝透の父が決めた婚姻が原因で分かれた
ぐじゅぶじゅと眼球から血を溢れさせ、ウリディムマは戦慄き身を震わせる。
「何故だ! これほどの欲望を抱えていながら、何故溺れようとしないのか! 己の欲望に、ただ身を委ねるだけだろうに!」
かつての戦いでは、心の強さを主張され撃破された。またなのか。そんな無意味なもので、この
ウリディムマが再び殪されるのか。
どれほど心が強かろうとも、己の欲望には負けるのだ。そうしてその身を破滅させる。人間とはそういうものなのだ!
だが、ウリディムマはその『欲望』こそが強さになると理解しない。際限なく膨らみ食らう餌としか認識していない。
その『欲望』が純粋な想いであろうと、歪んだ願いであろうと、それは間違いなく力となるのだ。
「『隠された欲望』ですか。簡単ですよ」
雪を思わせる白い長弓を手に、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)が咲う。
多重人格を装っているが、『彼ら』は四人で一人の複合型悪霊であり、生前は戦友だが……想い隠すことは、ある。
今ウリディムマの前に立つのは、普段人々に見せる壮年の姿には背丈と一房の
白髪に形を残す、『梓奥武・孝透』の名を持つ者。
敵を残らず視界に収め、白髪の下の翠眼を細める彼の『欲望』とは。
「『この身にいる『侵す者』と『不動なる者』を追い出して、ただ『疾き者』だけを囲いたい』です」
遠い頃に刻んだ想いは、独占欲となって滾る。
離れたとても、命果てようとも、欠き消えるものか。
「普段の姿を形作ったのは私ですし……この今の姿でさえ、皆は『馬県義透』と認識してくれますからね?」
彼らの存在はときに揺らいでいたが、幾多の戦場を重ね多くの人々に認識されたことで、その存在を確立している。この戦争でも、彼はやはり認識されているから、彼らのうちの誰であろうと『彼』は『馬県義透』なのだ。
「ならばこそ、その欲望を果たすべきでしょう。抑え込む必要がどこに?」
裂き切れた唇で濁った声を吐くウリディムマの挑発は、何の意味も果たさない。
雪のように静謐な、それでいて懋戀と呼ぶにはあまりにも荒ぶる情動を、彼は苛烈な意志で抑え込んでいるのだから。
「四人で戦うのも楽しいのでしませんし、明確に陰海月や霹靂、『疾き者』から嫌われるので」
孫的存在の二匹や、恋い慕う相手に嫌われたくないのは当然でしょう。
後に彼の身の上ゆえに別れた仲なれど、ひとときは想いを重ねたのだ。わざわざ自ら不興を買いに行く理由もない。
かすかに気色ばんだ色を言葉に含む彼の影のなかで、大きなミズクラゲがぷきゅとなき、金色の混じった焦げ茶の翼持つヒポグリフも小さくはばたく。
『侵す者』と『不動なる者』に対しての諸々は……まあ、今はいいだろう。
「というわけで。この矢の餌食となりなさい」
本体である巨大なウリディムマへ向けて弓に矢をつがえた。
明確な害意を遮るように、密告者はウリディムマの複製体を自身の周囲に集め盾となすが、それすらも彼の攻撃の対象となる。
「我が梓奥武の力よ、ここに」
詠唱とともに弓引くと、矢は破魔の力持つ霊力矢となり、数多に分裂して複製体へと向かっていく。複製体は逃げかわそうと飛び回るが、射手が視認したすべてを矢は追撃し、確実に射抜いていった。
直撃を免れたとしても、その矢に付された属性により凍てつき、動きを鈍らせ墜とされる。なかにはいくつかまとまり塊となって落ちていくものまでも。
かろうじて対象から外れ攻撃を仕掛けようとしても、視認された時点で標的となった。
「氷雪属性もつけてますし……私の視界内にいる限り、逃げられませんよ」
何しろ、その最大対象数は実に、二万以上に至る。いくらウリディムマが複製を増殖させても、それを上回る数と速さで攻撃が飛んでいくのだ。
そして、反撃を食らわすよりも早く放たれるもう一手が確実に仕留める。
自身を守る複製体をほとんど失い、ウリディムマはぶるりと身を震わせた。何か吼えようとしたが、ごぶごぶと泡立つような音にしかならない。
残った複製体もろとも、猟兵へ向かって捨て身の突撃を放つが、遅い。
「これで終わりにしましょう」
言葉だけは穏やかに。
手向けられた一矢が、ウリディムマを穿ち貫く。
もはや欲望を唆すことも呪詛を吐くこともなく、ぶよぶよとした奇怪な肉塊のごとくとなった密告者は、地面に落ちると同時に霧散する。
何もかもが消え去りようやく静かになった戦場で、男はそっと溜息をついた。
大成功
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