エンドブレイカーの戦い⑯〜君の瞳を潰したい
「黒目……つまり眼球における虹彩部分は、人体の中で最も痛覚が鋭敏な部位だ」
己の氷青色した瞳をペンの先で指し示しながら、白衣の青年――双代・雅一(氷鏡・f19412)は告げる。
この医者、一応外科が専門ではあるが他の診療科目知識が無い訳でも無い。
「白目部分は手足の皮膚と痛覚はさほど変わらないとも言うかな。手術の際も麻酔注射や切開は白目から……」
そこでふと気付く。目の前で聞いてるだけで痛そうな表情の猟兵達に。
「……失礼した。皆に向かって貰うのはエンドブレイカー世界の都市国家の一つ、『燦然楼閣ゼルフォニア』。そこを占領している目の如き姿をした化け物――11の怪物が一体『ウリディムマ』の所になる」
かつて、大魔女とエンドブレイカーの戦いが行われた時代より遙か昔より、それはこの世界に出現していた。
都市国家『永遠の森エルフヘイム』に現れたウリディムマはエルフ達により長い間封印されていた。
悪しき
棘の高まりと共にマスカレイド達が出現、そこから解かれた封印。
エルフヘイムにおけるエンドブレイカー対マスカレイドの戦い終盤、突然現れた封印の異形はこう名乗った。
――『密告者』と。
「その時は復活した直後で無限増殖開始したばかりだった事も幸いし、エンドブレイカーによって即時に滅ぼされたらしい。つまり――ウリディムマは11の怪物にしてオブリビオンと言う事だ」
当時を知るエンドブレイカーからすれば驚きの話であった。マスカレイドとは異なる存在だろうと当時から言われていた話ではあったのだが。まさかあのギルタブリルよりも先にこの世界に知的生命体を餌とする怪物の一体が入り込んでいたとは。そして倒してしまっていたとは。
「
当時の情報屋から伝え聞いた話はここらにして。問題はこれから戦うウリディムマは完全、なんだよ」
雅一は告げる。昔倒された密告者は不完全であったと。今回ウリディムマの真髄である『無限増殖』――己自身の大量複製は既に成されている。
「増殖には人間の隠れた欲望が不可欠らしい。それで都市国家ゼルフォニアに侵攻したみたいだな」
街中には人々の隠れた欲望を糧に増殖成長したウリディムマが群れを成し轟いている。かつてエンドブレイカー達が殲滅させた密告者の群れより強い事は間違い無い。
「あれだよ。一匹でも残したらまた増える。
Gみたいに」
例えがそれか。気が付けば雅一のその手には殺虫剤スプレー。
「怪物とは言え相手は生体。ましてや巨大な眼球に唇」
タブレットの画面をペンでなぞりながら雅一は告げる。
「医者の俺に言わせると粘膜晒して浮いてるに等しい。最初に言っただろう。黒目は痛覚が鋭敏なんだよ」
つまり。ありとあらゆる目潰し攻撃と言われるものが効くんじゃね?と言いたいらしい。
刺突とか。
柑橘類の汁とか。
清涼感溢れまくりの目薬とか。
この医者が持ってる様なスプレーっぽいものとか。
「君達が目医者に駆け込みたくなる様な攻撃を仕掛けて見るのも面白――ごほん、有りなんじゃないかな」
自分自身で目にダメージ受けた時の為に痛くない目薬は用意しておくから。
そんな事を言いながら薄笑い浮かべて雅一は転移の光を描き、猟兵達を送り出した。
●
こんにちは、『ウリディムマ』です。
かつては『密告者』とも名乗っていました。
……御覧ください。無数の『
ウリディムマ』を。
最早私に死角はありません。この世界を無限に増殖した私達で埋め尽くします。
おや、猟兵の皆様。何を持ってらっしゃいますか。
え、それで私を倒そうと言うのですか。
腹の無い身ですが片腹痛いとはこの事です。
そんなもので私を……いや、ちょっと、待って、止めt――!?
天宮朱那
天宮です。目の手術をした経験を語ると大体痛そうな顔される。
みんな、目は大事にしような!と言いながら目玉お化けにご無体をお願いするシナリオをお届け。
プレイングボーナス……ウリディムマの群れと渡り合う為の工夫を行う。
!注意!
このシナリオはトンチキ要素を多分に含む可能性が濃厚です。
ご理解頂いた上でご参加なさる事をお勧め致します。
普通に真面目に戦っても良いけど、敵の眼球に対してこれでもかとご無体な攻撃を頂いた方が採用率高め。
唇も乾燥して切れたら痛いよね、と更にご無体しても構わない。
面白おかしく戦って下さいませ。勿論倒す為の攻撃も忘れずにね!
一応都市の内部なんで街ごと吹き飛ばす系は避けてくれると嬉しいなぁと。
技能の『』【】等カッコ書き不要。技能名大量羅列は描写がシンプル。
上記読んで無さそうな方は、参加人数次第で採用率低めになります。
どう使うか、どう動くか――技能の使用に具体的な記述有る方がプラス評価。
複数合わせは迷子防止に相手の名前(ID)かグループ名記載のご協力を。最高二名組まで。
全員採用は確約出来ません事をご了承下さいませ。
オープニング公開からプレイング受付。
マスターページやタグ、Twitter(@Amamiya_syuna)などでも随時告知。確認頂けますと幸いです。
第1章 ボス戦
『ウリディムマ』
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POW : 抵抗を望む欲望も、私の餌となります。
【小さなウリディムマ】をレベルm半径内の対象1体に飛ばす。ダメージを与え、【言葉で指定】した部位の使用をレベル秒間封じる。
SPD : あなたが隠したい欲望は、何ですか?
対象への質問と共に、【対象の秘めたる欲望】から【新たな無数のウリディムマ】を召喚する。満足な答えを得るまで、新たな無数のウリディムマは対象を【欲望を奪う視線】で攻撃する。
WIZ : これもまた、素晴らしき光景の一端です。
【ウリディムマ】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[ウリディムマ]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
👑11
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ティオレンシア・シーディア
あー…たしかに。言われてみれば弱点むき出しもいいとこよねぇ。
どーせ敵なんだし、盛大にやっちゃいましょ。
…ってことで、●粛殺起動してグレネードぽい。中身?催涙ガスと焼夷手榴弾。ガスは勿論だけど、粘膜は熱にも乾燥にも弱いものねぇ。
あ、当然だけどあたしは風天印と
エオローで風の防壁張って範囲から外れるわよぉ。
射程3倍だし、けっこード派手な範囲攻撃になるわよねぇ?で、効果も3倍だから…だいぶ素敵な阿鼻叫喚が見られるんじゃないかしらぁ?
慈悲?容赦?そんなの敵に対してあるわけないじゃない。まともにやるとだいぶ面倒なんだもの、精々ユカイにやられなさいな。
「あー……たしかに」
ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)はウリディムマの姿を見て納得する様に頷いた。
「言われてみれば弱点むき出しもいいとこよねぇ……」
来る時に医者の男が何かそんな事言っていた。唇の中に眼球が収まっている相手のフォルムは人体で言う粘膜を剥き出しにしているのだと。傷付いたら通常の皮膚よりも痛いのはまぁ想像が付く。
『だからどうと言うのですか。この沢山の私を前に随分と余裕ですね』
「そりゃ強敵だとは思うけど、ねぇ」
周囲に無数の目玉が浮いていてもティオレンシアは動じず。その手に持った手榴弾のピンをまるで缶コーラのタブを起こすかの様に引き抜いた。
「どーせ敵なんだし、盛大にやっちゃいましょ」
ぽい。無造作に投げられた
手榴弾はウリディムマの大群の中に放り込まれると、数秒足らずで爆発起こす。焼夷手榴弾の放つ熱は目玉の表面を高熱で灼き、同時に表面の潤いも剥奪していく。
『う、ぐ……っ!!?』
「あ、これも」
続け様にぽいぽい投げられるのは催涙ガス弾。無論そんなものが炸裂しようものならマトモに目を開けて居られる訳も無く。どこに涙腺があるのかウリディムマ達はその目玉から水の様なものが止め処なく溢れている。
「うっわ、唇の形もしてるからヨダレ垂らしてるみたいねぇ」
『そんなばっちいもの見る目をなさらないでください。貴方も無事では済まないでしょう、こんな至近距離で』
文字通りの涙目がティオレンシアに苦情を申し立てながら告げるも、残念ながら彼女自身は
エオローによる風の防壁を周囲に張り巡らせる事で風向きを調整し、ガスの範囲から自分を意図的に外している様子。
「まぁ多少の熱は感じなくもないけど……許容範囲だと思うわよぉ、そっちに比べたら」
ぽーい。更に容赦無く放り込まれる
催涙ガスと焼夷手榴弾。ド派手なこの爆発は通常の三倍の威力に三倍の範囲を射程に収めていた。そう、これこそ彼女のユーベルコード『
粛殺』。見目は普通の攻撃なだけにタチが悪いとも言えよう。
「だいぶ素敵な阿鼻叫喚が見られるんじゃないかしらぁ?」
『どうやら貴方と言う人は慈悲も容赦もないのですね!?』
「えー、そんなの敵に対してあるわけないじゃない」
灼かれ、泣かされ、でエラい目に遭いつつ地味に大ダメージ数を減らして行く目玉に対し、ティオレンシアはフフッと笑み浮かべ、最初から間延びしっぱなしの緊張感の欠片もない声で告げた。
「まともにやるとだいぶ面倒なんだもの、精々ユカイにやられなさいな」
まだまだ猟兵達のえげつない攻撃は続くのだろうから。ウリディムマが無駄に自己増殖した分だけ。
大成功
🔵🔵🔵
ルシエラ・アクアリンド
…職業柄とはいえ博識だなあ、雅一。
そのうち詳しい話を聴くのも為になりそう癒し手として
ええと、ともあれ元・密告者さんを特殊?な方法で
何とか潰せば良いという事だよね
そういえば…冬場に乾燥しすぎた目に複数切り傷が出来た時
物凄く痛かった事があったなあ……うん(両手をぽむり
では
UCで檻を作って状態異常の嵐の中に閉じ込めまして
小さいのから弓も使い矢弾の雨で潰ししつつ眼球乾かしまして
ついでにデバフを与えまして
此方の回復の準備も整えまして
最後に取り出したるは一晩みかんの皮で漬けましたる無数の矢
職人さんが一晩でやってくれたの。感謝します。
仕上げに眼球部分を狙って打ち尽くします
…何点位かなあ?
せめて及第点は欲しい
「……博識だよね、雅一」
ルシエラ・アクアリンド(蒼穹・f38959)は白衣の青年が告げた知識を頭の中で反復していた。文化レベルが違う故の素直な感想である。
医学一つ取ってもこの世界とは体系が違うのだろう。癒し手を担っている身としては、その内に詳しく話を聞いてみたいと思う。きっと得られる物があるに違いない。
「ええと、ともあれ元・密告者さんを特殊(?)な方法で何とか潰せば良いという事だよね」
『いや、普通に戦いませんか』
ふよふよと人々の欲望を糧に増殖しまくったウリディムマの群れがルシエラに問いかける。無論秘めた欲望を問う訳では無い。多分今回の猟兵達の欲望は隠さずにたった一つ、言わずとも解っている。
「そういえば……冬場に乾燥しすぎた目に複数切り傷が出来た時、物凄く痛かった事があったなあ……うん」
『聞くだけで痛そうですよ? 嫌な予感がします』
両手をぽむりと合わせて思いだした事を口にするルシエラ。対し、ウリディムマはユーベルコードを受ける前にメンタルダメージが刺さっている。
「では」
どうか力を貸して頂戴ね――と願う様にルシエラが言葉紡げば、広い戦場全体を蒼き空間の檻が覆い尽くす。最早、ウリディムマの群れはこの中に閉じ込められた。
敵に向けて吹き荒れるは混乱を齎す凄惨な嵐。小サイズのウリディムマに向けられるは彼女の番えた弓の鏃。
混乱して目玉同士唇同士が空中でフラフラとぶつかり合う中に矢弾を雨霰とぶち込んでしまえば次々と小さい奴から撃ち落とし、まるでマグロの目玉の様に潰れて消えていく。
『うぬぬ、こんな結界などすぐに破って……!」
「さて。ここに最後に取り出したるは、職人さんが一晩でミカンの皮に漬け込んでくれた無数の矢」
文字通りの一夜漬け。ほんのり柑橘の香り。ありがとう職人さん。感謝します。
『え、いや、待って。私の瞳は射的ゲームの的ではありませんよ?』
隠しもしない猟兵達の欲望は解っている。自分自身をヒドい目に遭わせたい――ただ一点だ。
秘めてないから欲望を視線で奪う事だって出来ない。あ、詰んだ。
「えいっ!!」
大きなウリディムマの一体目掛けて複数本の矢を射ち尽くす!
『ひぎゃあああっっ
!!??』
ど真ん中に1本、黒目に4本、白目に3本、唇に1本、当たらなかったのが1本。
「……何点位かなあ?」
涙ボロボロ零しながら墜落して消えて行ったウリディムマ(大)を見つめ、ルシエラは首を傾げたのだった。
後に。帰還したルシエラにはタワシが3個手渡された。車は多分当たらなかった。
大成功
🔵🔵🔵
レティエル・フォルクエイン
連携&アドリブ歓迎
「えっと、密告者さんたちを目潰ししちゃえばいいんだよね?」
だったらこういうのはどうかなとUCで自己強化。
回避率も上がるから密告者さんの攻撃は見切って躱しちゃおうかな。
「レティちゃんはアイドルだから、輝きだってすごいんだよ?」
アイドルのオーラからレーザー光線にまでなった光でLv124500相当の目潰しで範囲攻撃しちゃうよ。
ドローンに援護射撃して貰って
「わぁ、沢山……こういうお客さんは初めてだけど、レティちゃんの歌と踊り見ていってね♪」
しっかり当てる為に歌って踊ってが攻撃のメインと思わせるフェイントも入れちゃうね?
「レティちゃんのライヴどうだった? 素晴らしい光景になったかな?」
「えっと、密告者さんたちを目潰ししちゃえばいいんだよね?」
レティエル・フォルクエイン(オラトリオのサウンドソルジャー・f15293)は首を傾げてそんな事を言いながら『燦然楼閣ゼルフォニア』の地に降り立った。
間違ってはいないと言うか、大体合ってるけど本当はちょっと違う。
『私を倒すのが目的でしょう貴方達。手段と目的が逆転していませんか』
無限増殖を果たした密告者ことウリディムマは、ふよふよと浮かんで周囲を取り囲みながらそんなツッコみ一つ。瞬きする間に目玉唇お化けはじわじわと集まってくると、その邪悪な気配を増していく。
『私達は人の欲望を元に増殖します。私の目を潰される前に貴方のアイドルの芽を潰して差し上げましょう』
人の欲望を糧にするだけあってか心も読んだのか、ウリディムマはその目より光線を放ちながらレティエルに向けて攻撃を開始した。
「えー、ちょっとヒドくない? だったらこういうのはどうかな?」
レティエルの背中の翼が強く輝くと共に、彼女の力が特化的に上がるのを怪物はその瞳力で見抜き、驚愕の声を上げる。
『なんですって……チートにも程がありませんか???』
彼女の使った自己強化――ユーベルコード・有翼飛翔はただ飛ぶ力を増すだけに非ず。
高まるオーラ、アイドルに相応しい歌唱力からダンスパフォーマンス、芸能界を生き抜く為のコミュ力に礼儀作法、そして圧倒的存在感と情熱が彼女を最強のスーパーアイドルへと変貌させていた。
具体的には48の殺人技――ではなく技能の力がレベル分、更に百倍に跳ね上がると言うもの。
『なんてものを
認めたのですか、ここの創世神は
……!!?』
「レティちゃんはアイドルだから、輝きだってすごいんだよ?」
キラキラっと輝きを身に纏い、アイドルオーラが迸る。それは最早レーザー光線。Lv124500相当の出力で発射された光はまるでライブのレーザービームの如く、四方八方の密告者達に突き刺さり、その目を灼き潰していく。
『ぎゃああああああ!!?』
『目が、目がぁぁっっ!!』
のたうち回りながらもウリディムマ達はレティエルに向かって体当たりなどの攻撃を仕掛けるも、回避の力すら爆増した彼女はそれを踊る様なステップで回避していく。
『く、今やられた私は私の中でも最弱の集団……』
『おいでなさい私! 集まって統一パワーであの女を……!』
統一された意思と共に更に現れるウリディムマ。向けられる目玉達はまるでライブ会場の客席から浴びる視線の如く――いや、違わないかと思うが彼女は嬉しそうにはにかみ笑みを見せて手を振った。
「わぁ、沢山……こういうお客さんは初めてだけど、レティちゃんの歌と踊り見ていってね♪」
レティエルは宙を舞う。歌い踊り、彼女に集まって来る目玉達を華麗なダンスで激しく動かす手足の餌食にし、レーザービームを浴びせながら高らかに唄い上げ。
「レティちゃんのライヴどうだった? 素晴らしい光景になったかな?」
数曲唄い上げた彼女の周囲の地面には、すっかり潰れた目玉達がペシャンコに叩き付けられ積み上がるという阿鼻叫喚地獄絵図が描かれていたのであった。
大成功
🔵🔵🔵
流茶野・影郎
死角はなくとも視覚はあるようだな
(右手にワサビのようなもの、左手におろし金を携えて)
これは北海道で山わさびと呼ばれるもの
和名はセイヨウワサビ
むせ返るような辛みと味わいが特徴だ
寿司に合う
これをこうすり下ろすとな……成分が揮発してアリルイソチオシアネートを放出する
もはや天然のマスタードガス
そしてここで運動エネルギーを3倍!
『キャスター・スティンガー・ブレイク』
この辛みを風に乗せお前らに散布だ
ちなみに俺はマスクの上からマスクなので効かない
あとはお前だウリディムマ
このワサビを塗り付けたワビサビ溢れる刀で死んでもらおう!
(魔法陣を通してワサビ忍者刀で刺す)
何故だろう、涙が止まらないぜ……
『ドーモ、密告者ことウリディムマです』
「ドーモ、ウリディムマ=サン。流茶野・影郎(覆面忍者ルチャ影・f35258)です」
こんなアイサツをされてはニンジャの端くれとしてはアイサツを返すのが礼儀であった。合掌して深々とお辞儀し、顔を上げた影郎は四方八方より己に突き刺さる視線の多さに溜息一つ。最初から何せ数が多い。
(「死角はなくとも……視覚はあるようだな」)
ダジャレめいた事を思考しながら、覆面の忍者は懐より何かを取り出し、これ見よがしに両手に掲げる!
『それは……ホースラディッシュ
……!?』
「そう、北海道で山ワサビと呼ばれるもの――和名はセイヨウワサビ。噎せ返る様な辛みと味わいが特徴だ」
『ワサビ……聞いた事があります。アマツカグラ様式の文化にある香辛料だと』
「ああ、これも抜群に寿司と合う」
右手に掲げるそれは白色のワサビの如し。水辺で育つ本ワサビに対しての名称こそが山ワサビ。
「これを、こうして、こうだ!」
左手に携えた下ろし金の上を滑らせ――すり下ろす!
『なんか……しみ、る……?』
壊れる植物組織、溢れる汁と共に空気中に拡散されるは揮発する
アリルイソチオシアネート――放出される成分は最早、天然のマスタードガスと言えよう!
その巨大な唇の中にある眼球がうるうると涙液に覆われていき、ウリディムマは悲鳴の様に抗議の声上げる。
『ちょ、何てものを
……!!』
「そしてここで運動エネルギーを3倍! 『キャスター・スティンガー・ブレイク』!!」
しゃかしゃかしゃか。展開した魔法陣は影郎の周囲半径130mに広がり、同時に彼のワサビをすり下ろす速度が増加する。瞬く間に出来上がる山盛り摺り下ろし山ワサビ。道民ならばそのまま醤油をかけてオン・ザ・ライスで頂きたい香りが周囲に充満していく。
『ひぎいぃぃぃ!!?』
『刺さる様に痛いんですがこれ……! 貴方もタダじゃ済まないでしょうに
……!!?』
文字通り眼球に突き刺さる辛み――即ち痛みは速度三倍増しの風に乗って影郎の周囲に布陣していたウリディムマ達がマトモに目を開けれていられない状況へと貶めていく。
「残念だが、俺には山ワサビは効かん!」
『はぁ!? マスク・オン・マスクですって??』
何と言う事でしょう。気が付いたら影郎は覆面の上にマスクを装着した上にグラサンの如きゴーグルで己の口も目も防御しているではないか。間違い無く現代世界では職務質問される姿だが、今この彼を見ているのは目の前の目玉お化けのみ。しかもその目は充血していてマトモに見えているかも解らない。
「あとはお前だウリディムマ」
この群れの中を統率していると思しき一体に目を向け、影郎は抜いた忍者刀にすり下ろしたばかりのワサビ汁をザバーッとぶっかけた。
「このワビサビ溢れる刀で死んでもらおう!」
『さっきから地味にダジャレ差し込んで来てませんか……?』
密告者がツッコミを入れるも問答無用。魔法陣を通したワサビニンジャブレードの一撃がその紅い虹彩部分に思い切り斬り付けられ、眼球や唇の粘膜に傷を付けると同時に辛み成分が劇薬の様に怪物の身を一気に侵食する!
『いだだだぁぁぁぁーーっ
!!!!』
弾かれる様に後ろに逃れるも地面に落ち、そのまま解ける様に消滅していく巨大な一体。同時に痛みが伝播したのかその周囲の発生したての目玉も空に溶け消えて行く。
「何故だろう……」
影郎はゴーグルを手の甲で押し上げながら目頭をそっと拭った。
「涙が止まらないぜ……」
ついでに鼻水も止まらねぇ。
大成功
🔵🔵🔵
九十三・鈴香
大きい目玉さんなの
しかも放っといたら沢山増えるとか、嫌な感じ
畑に出る虫さんみたい…退治しなきゃなの
一寸離れたところでトラックの荷台にももんがロッドを固定して、そこからハッカ油を撒きながら、近くを爆走しちゃいます!
すーすーでひりひりになっちゃったら、戦ってる場合じゃ無くなるの思うのね
目もそうだけど口も皮膚が薄いから、ハッカが着いたら気持ち悪くなると思うの
もちろんわたしは、外に出たら自分もすーすーになっちゃうのでトラックから降りないです
目薬もらったけど、(大きさ的に)自分じゃさせないし
ハッカ油沢山あるから、どれだけ居ても全部巻き込んじゃうの!
勝ち目は無いですよ、もう観念しなさい!
すぃーっと。小さな白っぽい生き物がゼルフォニアの空を滑空し、ちょこんと建物の端っこに降り立った。
「大きい目玉さんなの」
九十三・鈴香(鉄腕系蝦夷小鼯鼠娘・f39537)は自分より大きな怪物を前にその小さなほっぺをぷぅと膨らませて見つめていた。
「しかも放っといたら沢山増えるとか、嫌な感じ」
あっちにもこっちにもいる。なんかずんどこ小さいのが増えているらしい。あれは人の心の内にある欲望を食い散らかして糧とし、やがては弱らせ死に至らしめる害悪な存在。そう、それはまるで……。
「畑に出る虫さんみたい……」
『失礼なことを仰いますね、この小さなネズミさんは』
「わたしはモモンガなの!!」
がすっ。近くで酷い事を言ってきたミニミニウリディムマはぶん殴って成敗。小さいだけに一撃で倒せたものの、既に大きくなってるあれらも退治しなくては、この都市国家に住む人々の心がキャベツの様に食い荒らされてしまう。
「悪い目玉は退治しなきゃなの」
そんな訳で。
都市の中は市街地だけでなく森林や草原も幾層に重なって存在するのだが。
人口密度の低い場所だけあってウリディムマもそんなに見えない草原に、このエンドブレイカー世界にはまず見ない……と言うか似遣わぬ軽トラが一台駐車されていた。
「これでよし、と」
トラックの荷台にしっかり固定したのは愛用のももんがロッド。これこそ彼女の必殺技の発動の礎となる。
運転席はモモンガでも運転出来る特殊仕様。どんな悪路でも走れる様にと白衣のお兄さん二号がギアから何から
魔改造してくれた。シートベルトもバッチリだしエアバッグもモモンガ仕様に換装済み。
「それじゃ、しゅっぱつー!!」
アクセル全開で軽トラはウリディムマが宙に轟く市街地に向けてゴー。
『あれはなんですか』
ぎゃりぎゃりぎゃり。何やら爆走してくるトラックを認めたウリディムマの群れは怪訝にその目玉を向けた――のも束の間。
「特製ハッカ油でスースーしちゃって下さい!」
先程固定したももんがロッドより大量に噴霧されるは道東・北見名物のハッカ油。即ちミントでメントール。冷感効果抜群でクソ暑い夏には良く売れる。ただし気を付けなければならないのは、肌が弱いとスースーを通り越してヒリヒリと火傷みたいな強烈な痛みになる訳で。
『ひぎぃぃぃぃっっ
!!??』
『浸みる、私の身体に浸みて痛いのですがこれは
……!!??』
目も唇も皮膚が薄い。ハッカが付着しては気持ち悪い通り越してスースーヒリヒリ落ち着かないし戦っている場合じゃなくなる。実際、ウリディムマ達は全身が粘膜みたいな存在。劇薬をぶちまけられたに等しい。
でもってこれも立派なユーベルコード。しっかりダメージソースとして怪物を瀕死に変えていき、目の痛さに鈴香を直視すら出来なくなっている模様。
『小動物の分際でこの私に酷い目合わせるとは良い度胸です。その珍妙な乗り物から出て来なさい』
「いやです! 外に出たら私もすーすーになっちゃうから降りないです!!」
トラックに籠城しながら更にハッカ油を散布して攻撃。まるで畑に農薬を撒くかの様。
ついでに何故か高度なドライビングテクで華麗にドリフト決めながら目玉のお化けをドンドコ撥ね飛ばし轢き飛ばし、この辺りのウリディムマ達を一掃していく。
「どれだけ居ても全部巻き込んじゃうの! 勝ち目は無いですよ、もう観念しなさい!」
爆走ももんがトラックは、密告者如きでは止まらない。
そして。
やっぱり少し自分のお目々も痛かったので帰ったら貰った目薬差して貰おうと心に決めた鈴香なのであった。
大成功
🔵🔵🔵
六道・橘
※アドリブ歓迎
檸檬が好きよ
好きが高じて家の庭で育てたのよいいから喰らいなさい
右腕に持つ愛刀で檸檬串刺しにしてから攻撃開始
飛んでくるミニウリは刻むつもりで武器受け
死ぬ気なんてないわよ
生きて帰って檸檬パイと檸檬パフェと檸檬丸かじりするんだから
つまり攻撃は絶対に止らない
狙うは露わ過ぎる急所の黒目
急所突き急所突き急所突き急所突き
幸せに殺してあげる
死因:酸っぱい
右腕を封じられたらふふってなる
ごめんなさいね
わたし左利きなの
持ち替えて苛烈な急所突き連打
騙し討ちは初めてだけどスカッとするわ
スカッとすると言えばレモンスカッシュよね、喰らいなさい
炭酸水の瓶をあけてぶっかけてから檸檬を搾りついでに急所突き
レモンと瞳。紡錘の様な形がどことなく似ている。
手に掲げた黄色い果実。その向こうには形以外、似ても似つかぬ化け物の姿。
「檸檬が好きよ」
六道・橘(
逸脱の熱情・f22796)はそれを軽く空に放る。好きが高じて己の家の庭に木を植え育てた。
『成る程、それが貴方の欲b――』
「いいから喰らいなさい」
『っぶ!?』
落ちてきたレモンの実を
右腕に携えた愛刀で串刺しにしながら、橘は近くで喧しい目玉お化けをも突き通した。まるで団子の様に刺さった小さなウリディムマも、血振りの要領で刀を振ったらレモン残してすっ飛んで行き、違う個体にクリティカルヒット。
「さて、わたしは易々死ぬ気なんてないわよ」
刀に刺さったレモンを握りしめれば爽やかに甘酸っぱい香りがたちまち立ちこめ、零れた果汁が刃紋を濡らす。彼女の背に浮かび上がるは白き一対の翼。
「生きて帰って檸檬パイと檸檬パフェと檸檬丸かじりするんだから」
『隠さぬ欲望はそれだけですか』
巨大なウリディムマがミニサイズの己を空より喚び出し、橘に向かってけしかける。しかし彼女は意にも介さずずんばらりんと空中で三枚下ろしに切り刻みながら、強き意思を身に纏い空高く舞い上がる。狙うはこの場を統率する巨大な一体。ただ真っ直ぐに急降下し吶喊する!
(「露わすぎる」)
来る前に白衣の男が言っていた。敵の身体全てが唇で眼球。冬場に乾燥したらとっても痛い部位そのもの。
故に、狙いは黒目――紅い虹彩に紅い瞳孔の同心円――目掛け、橘は容赦無く連続で刃の切っ先を突き立てた。
「急所突き急所突き急所突き急所突きぃっっ
!!!!」
ぐさぐさざくざく。
『ひぎゃあぉぉぉ!? そ、その手を止めてくださいませんか!!』
流石の密告者さんも悲鳴上げ涙目。割と物理的に。血だか汗だか涙だか解らない液体を溢れさせながら、その攻撃を封じるべくミニウリディムマを橘の刀持つ腕目掛けて叩き付けてきた。
「――っ!!」
使用を封じられた右腕より力が抜ける。握った柄も取り落とし――て、代わりガシッと左手で刀受け止める。
「ふふっ、ごめんなさいね。わたし左利きなの」
「……………………。え゛?」
即ち、もっと激しい突きが来るって事ですよね???
「幸せに殺してあげる」
さっきより遙かに鋭い殺気と共に。数倍増しに苛烈な急所突きのオカワリ開始。
「騙し討ちは初めてだけどスカッとするわ」
最早丸い形も残らなくズタズタになった目玉お化けを前に、橘は楽しそうに笑みを浮かべながら落下していくそれをしつこく追って飛び。
「スカッとすると言えばレモンスカッシュよね。喰らいなさい」
ブシャーッ!! ずっと持ってたせいで散々瓶の中で振られて圧の掛かった炭酸水は、蓋を開ければシャンパンよろしく泡と共に目玉の中心を撃ち抜いた。そこにレモンをぎゅうっと絞りながら汁をぶっかけ、トドメとばかりに瞳孔の奥に刀を突き立て。
『~~~~~~~~っっ!!!』
声にならぬ声を上げながら、橘にご無体攻撃されたウリディムマは地面に叩き付けられたのであった。
死因:酸っぱい。
「死亡確認!ね――」
いや、まだ全部は死んでない。多分。
大成功
🔵🔵🔵
アカシャ・ライヒハート
久しくその存在を感知した時「目玉を洗って待っていろ」が脳裏に浮かんだのですが
どうせこの後袋叩きにされるのですし手ずから洗って差し上げたい(曇りなき殺意)という欲求を全開にします
と言う訳で本日使用する掃除道具一式が此方
見えない?アイテム欄に無い?
有ると言ったら有りますので心の目で御覧下さい
まずは創世神の棘(ソーン)で視界内の密告者を石化、もとい固定
よく乾いた布で乾拭きし埃を拭い去りしっかり湿り気を取り除き
続いてソーダ灰で下が見えないくらい満遍なくパック
一定時間経過後レモン汁をふりかけまして
洗い流した後研磨剤でくまなく磨きます
晴れ姿が整いましたよ良かったですね
さあ、引き続き増えた分を洗いましょうね
かつてエルフヘイムの戦いで出でし異形の存在。この度、久しくその存在を感知した彼女――アカシャ・ライヒハート(暁倖・f39256)はこう思ったのだ。
――目玉を洗って待っていろ、と。
『普通は首を洗って、ではないのでしょうか』
「でも首無いですよね」
言葉のアヤだと女は口元に笑みを作るも、その目はさっぱり笑っていない。曇りなき殺意がそこには存在し、正直その欲求は隠せてはいない。
「どうせこの後袋叩きにされるのでしょう、あなたは」
『無限増殖したこちらこそ、数の上では利があると言うのに。面白いことを言いますね』
アカシャの周囲に漂う数多の目玉が唇の瞼を細めて笑う。正直気味が悪いったら無いが。初遭遇の若き日と比べれば、あの後多くの戦いを経て来た事を思えば、この程度の化け物などどうってことはない。
「手ずから洗って差し上げますよ。どうせ一度もその身を洗った事すらないでしょう?」
そう告げたアカシャの手にはバケツと雑巾とデッキブラシ、そして各種洗剤の瓶。
紛う事無く、掃除道具一式。洗顔とか洗面とかそんなちゃちな道具じゃあこの怪物は洗えない。
『嫌な予感しかしませんのでお断りします。丁重に』
「遠慮はいりませんよ?」
そう言いながらアカシャが放つは創世神の
棘。視界に止まる全ての密告者達に紅い荊が一気に伸びて捉えると、その粘膜に覆われた眼球から唇からが徐々に石化を開始する。
「動かないでください。手元が狂いますから」
手には乾いた麻布。この場の統率と思しき巨大な一体に狙いを定め近付くと、アカシャはその固まった結膜の表面をゴシゴシとしっかり念入りにか乾拭き開始。
『ひいぃぃぃ!?』
「まずは埃を拭い去りませんと」
同時にしっかり湿り気を取れば即ちドライアイ。既に痛い。
「続いてソーダ灰でパックしましょうね」
『ギャアアァァ!!』
下が見えない程に満遍なく黒目白目を覆い尽くす。炭酸ナトリウムは粉末であれば乾燥剤にも使われるシロモノ。乾燥して弱った所に強い薬剤は浸みる。実にアルカリが浸みる。
「じゃあ次はレモン汁をふりかけまして……」
ざばぁっ!! 振りかけるなんてレベルじゃ無い量がぶちまけられる。アルカリに酸で中和されるかと思ったらそうでもなく。今度は無茶苦茶刺す様な痛みが密告者を襲う。
『いだだだだだっっっ
!!??』
「最後に研磨剤でくまなく磨きますよ」
『待って、本当にそれで終わるんですか???』
ごりごりごり。多分金属の表面を磨く用じゃないかって言う研磨クリームで半分石と化したウリディムマの眼球がゴリゴリ削れていく……!
『ダ目ぇぇぇぇぇ
!!??』
「晴れ姿が整いましたよ良かったですね」
白目も黒目も解らないくらい目の表面が削れてそのまま再起不能になったウリディムマはその場に落下し、ピクピクいったまま動けない。
「さあ――」
一体目の初回お試しセットを終えたアカシャはゆらりと振り返り、残る石化しかけの目玉達に笑みを見せた。
「引き続き増えた分を洗いましょうね」
『や、やめてくださいおねがいします』
しばしして。そこには眼球部分の面影が消えて大きな口だけの石像となった密告者がオブジェの様に幾多も転がり。後にゼルフォニア珍千景の一つとして登録される事となったとか、ならないとか。
大成功
🔵🔵🔵
クロービス・ノイシュタット
クヤク(f38921)と同道
あぁ、あったねぇ
懐かしいねぇ
『木彫りの密告者さんは、常にみなさんの傍らに在ります。』
あの売り文句は今でも憶えているとも
在庫残り大量なんだ…納得しかないけど
正直、悪趣味だと思ってたし
悪趣味 だと 思ってたし!
欲望、駄々洩れだね
全っ然隠せて無いね?
斯く言う俺も…もう秘めておける自信が無いよ
この、ツッコミ
魂――!
名前が覚え難いんじゃー!!
もういいじゃん『密告者』で
ぶっちゃけ自分でもそう思ってた節あるでしょ
「名乗ってた」とか態々付け足してたし
ほら、自分の欲望に素直におなりよ…
ウ何とか(おぼえにくい)じゃない
名乗って良い…
密告者だと…!
(つんつん)(武器で)(UC
クヤク・サンガ
ビスさん(f39096)と
初めてコレを見たとき、すごい造形だと思ったんだ
気づいたらそこら辺にあった木でコレを模したものを作ってた
四捨五入すると二十年前
君もその場にいただろう
懐かしい思い出だと思わないかビスさん
商品名は「木彫りの密告者さん」
大量に残ってた在庫持ってきたんだけど、並べたら味方だと思って近寄ってこないかな
近寄ってきたところに木彫りの密告者さんの唇の端っこをぐさーってやればいいと思うんだけど
どうかなビスさん
…あ、やっぱり無理かな?
じゃあ古典的だけど目つぶし(物理)で
俺の秘めたる欲望は、密告者さん(頑なにウリ略とは呼ばない)が木彫りのこれと戯れてくれることですよろしくお願いします!(UC
「初めてコレを見たとき、すごい造形だと思ったんだ」
クヤク・サンガ(徒人・f38921)は懐かしむ様にぽつりと呟いた。
四捨五入すると二十年も前の話だ。
エルフヘイムに現れた古代の災禍。人の心を読み、欲望を暴く外道。
その姿は巨大なタラコ唇の中に眼球が見つめてくると言う生理的嫌悪感すら齎す異形……!
余りに強いインパクトはクヤクの記憶に、心に、魂に刻まれ――。
「気づいたらそこら辺にあった木でコレを模したものを作ってた」
クヤクはしみじみと思い出を語る。作り上げたそれを販売なんかもしていた。商品名は『木彫りの密告者さん』。
「君もその場にいただろう――懐かしい思い出だと思わないかビスさん」
「ああ、あったねぇ。懐かしいねぇ……」
クロービス・ノイシュタット(魔法剣士・f39096)もまたしみじみと頷いた。あの売り文句は今でも鮮明に覚えている。
『木彫りの密告者さんは、常にみなさんの傍らに在ります』
そしてそれは今でも大量に不良在庫としてクヤクの傍らに残っている。
気が付いたら今ここに、そのクヤクの作品が周囲にスタンバイ。どうやって持ってきたかは横に置いておくとして――
本物と
模倣品がどちらも沢山周囲にあるの図。
「正直、悪趣味だと思ってたし」
クロービスとしては売れてない事については納得しかない。
「悪趣味! だと! 思ってたし!」
大事な事なので二度(略)
『………これは。私の似姿、なのですか」
その間、ウリディムマ達はそこに並ぶクヤクの作った作品をガン見。同じ姿の怪物の見つめ合いがあちらこちらで発生。まるでお見合いの如く。
「なにこの異様な空間」
クロービスは明らかに引いてる。一方作者であるクヤクはドキドキその様子見つめる。味方だと思って近寄ってこないかな、なんて思うが。残念ながらウリディムマにも人並みの知能はあり、明らかに警戒している模様。
「近寄ってきた所でさ。木彫りの密告者さんの唇の端っこをぐさーってやればいいと思うんだけど……どうかなビスさん」
「俺 に 聞 く な」
密告者さんの気持ちは密告者さんにしか解らない。で、再びお見合いに視線向けると。
『私を愚弄してます?』
がすっ。容赦なく体当たりされて吹っ飛ばされている木彫り密告者。
「…あ、やっぱり無理かな?」
クヤクは「だよねー」と苦笑いしながら、これ以上自分の力作壊される前にと回収に駆けつつ、目潰し(物理)の蹴りを目玉に食らわせ。
『がふっ!? 理不尽ですこれは。しかし感じますよ、貴方がその胸に欲望を秘めている事に……!』
顔のパーツが二つしかないクセにウリディムマがドヤ顔で問う。このままでは二人の欲望を糧にキモ目玉が増えてしまう。
「俺の秘めたる欲望は……」
クヤクは思わせ振りに溜め――そしてぶっちゃける!
「密告者さんが木彫りのこれと戯れてくれる事ですよろしくお願いします!!」
クソデカボイスで叫びながらクヤクは木彫り密告者を小脇に抱えつつ守刀に霊気篭めて横薙ぎに振るう。剣閃は確実にウリディムマの核を捉え、斬られた個体群があっと言う間に宙に霧散する。
「欲望、駄々洩れだね? 全っ然隠せて無いね?」
その攻撃を眺めていたクロービスは肩を竦めて呆れ顔。
『戯れるだなんてお断りです。ってか仲良くする気も無いくせに――あと私の名はウリディ――』
「あー、ちょっといい?」
ウリディムマの言葉遮るようにとうとうクロービスがアイスレイピアを抜きながら進み出た。
「斯く言う俺も…もう秘めておける自信が無いよ。この、荒ぶるツッコミ
魂――!」
そして彼は叫ぶ。渾身のツッコミを。
「名 前 が 覚 え 難 い ん じ ゃ ー !!」
それはほぼ魂の雄叫び。そう、二人とも――ここまで頑ななまでにこの怪物の事を本名で呼んで差し上げてないのである!
「もういいじゃん『密告者』で。ぶっちゃけ自分でもそう思ってた節あるでしょ『名乗ってた』とか態々付け足してたしほら自分の欲望に素直におなりよ、ウ何とかおぼえにk――じゃない」
ここまでノンブレスで言い切り軽く咳き込んだ後、彼はダンと地を蹴って、更に叫ぶのだ。要望と言う名の欲望を!
「お前は名乗って良い……密告者だと
……!!!」
目の前にある巨大なウリディムマの虹彩に思い切り連続突きを見舞えば、吹き出る赤き血が薔薇の花弁となって舞い、溶けるように怪物は霧散していったのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
コプリ・メユティーク
密告者様の噂は予々伺っておりましたが、お目にかかれる日が来ようとは。
私以前はラッドシティで菓子売りをしていたのですが、本業は錬金術士、メイクアップも嗜んでおります
輝く瞳にふっくらした唇。これは腕がなりますね!
私にお任せ下さいませ、もっと魅力的にして差し上げます。
貴方様は普通のアイテムでは上手く映えないでしょうからコプリ特性をご用意致しますね
まずはリップ。立派な唇💋をもっと紅く紅く魅惑的にしましょう!
熱々でとろとろのグロスと呼ばれるものです!熱々でとろとろですよ!
世界を渡り、沢山の知識も得ることができました。
そして中のキラキラしたものはラメというものなんです、鋭いトゲ状になっているので、痛いかもしれませんが我慢してくださいませ。お洒落は我慢、ですよ。
瞳も更にうるうるキラキラにしちゃいましょう!
塩化水素酸とかを色々混ぜて作った目薬をまず刺し…差して
キラキラ発光してるカラコン💖眩しくて何も見えなくなってしまうかもしれませんが、えいっ!
仕上げは私特性クリームでデコレーションです!召し上がれ✨
「密告者様の噂は予々伺っておりましたが――」
まさか、こうしてお目にかかれる日が来ようとは。コプリ・メユティーク(虹雫の飾人・f27770)は恭しく一礼しながら周囲を取り囲む目玉の怪物達に視線を向けた。お目にかかるとは言うが目玉がいっぱい。
「私、以前はラッドシティで菓子売りをしていたのですが」
『ほぅ、私の存在はエルフヘイムのみならず伝わっていたと言うことですね』
かつてこのウリディムマはエルフヘイムの戦いにて封印が解け、このインパクトの強い見た目を衆目に晒し……無限増殖に至る前にエンドブレイカー達の手によって駆逐された経緯を持つ。登場は一瞬だったが大勢の記憶に恐ろしい程に刻まれたその存在は、最早伝説級。
「この私、本業は錬金術師――そしてメイクアップも嗜んでおります」
しゃきん、とコプリが手にしたのは幾多ものメイク道具!
「輝く瞳にふっくらした唇。これは腕がなりますね!」
『え、え
……??』
「私にお任せ下さいませ、もっと魅力的にして差し上げます」
『いや、魅力などこれ以上不要です。というか結構です』
「いえいえ、遠慮なんて必要ありませんから、ええ!!」
引き気味に言ったウリディムマの目には明らかに困惑の色。ふるふると無い首を横に振った気もするが、そんな事はお構いなし。そもそも怪物に人権も拒否権なぞも存在しなかった。
「貴方様は普通のアイテムでは上手く映えないでしょうからコプリ特製をご用意致しますね」
とデカいリップブラシをまず構えて彼はもう片方の手に持つは――
「立派な唇をもっと紅く紅く魅惑的にしましょう! これは熱々でとろとろの……グロスと呼ばれるものです!!」
『熱々って……鍋の中で煮だっているように見受けられますが
……???』
「熱々でとろとろですよ!!」
世界を渡り、沢山の知識も得ることが出来た――とか言いながら。物理的に熱々のグロスがリップブラシ(ウリディムマ専用サイズ)にたっぷり染み込んだ所で目玉の周りの唇部分にペイントするかの如く塗りたくられた。
『あづいぃぃぃっっ!!?』
唇の中の目玉がスポーンと飛び出そうな勢いで叫ぶウリディムマ。塗られた先から唇が真っ赤なのはグロスの色だけじゃない気がする。
「そして中のキラキラしたものはラメというものなんです」
良く見たらキラキラと金平糖みたいな粒が沢山グロスの中に浮いている。ただし、トゲトゲは恐ろしく鋭利で刺さりそうなレベルである。
『成る程、この刺さる感じはそのせい……いや、浸みるんですけど』
「痛いかもしれませんが我慢してくださいませ」
『無理です勘弁してください』
「お洒落は我慢、ですよ」
『ぎゃあああああああ』
※ウリディムマ達の絶叫が響いています。しばらくお待ち下さい※
数多くの目玉お化け達が火傷なのか化粧なのか良く解らない感じに、その唇を艶々真っ赤に腫れさせて地面に死屍累々としている中。一人だけ立っているコプリは更に元気良く両手をぽむりと合わせて一言告げた。
「瞳も更にうるうるキラキラにしちゃいましょう!」
『え゛』
コプリの手には目薬と言うよりは2リットルのペットボトルに匹敵するデカい瓶が構えられていた。
「
塩化水素酸とかを色々混ぜて作った特製目薬をまずさし――」
ぐさ。薬液が差される前に瓶の口が目玉の真ん中に刺さった。声にならぬ絶叫は刺突の痛みか強酸の痛みか。
『目が、目がぁぁぁ』
「浸みるのは効いてる証拠ですよ♪ あとほら……キラキラ発光してるカラコンなんてのも如何です?」
ざく。レーザーディスクみたいにデカい円盤状のキラキラをえいやっと投げつければまともに虹彩の上に収まる筈も無く、散々痛めつけた角膜にグサリと刺さる。オマケに反射が激しくてチカチカが凄くて他の小型ウリディムマ達も近寄れないし。
「仕上げは――」
『まだあるんですか!?』
辛うじて動ける状態にあった一体が悲痛な声を上げた。
「私特性クリームでデコレーションです! 召し上がれ!!」
ぼふっ。どう考えてもシェービングクリームじゃね?と言う物凄い量の泡がその場にいたウリディムマ達を呑み込んでいった。傷付いた目玉や唇に強アルカリ性の泡は恐ろしく浸みて痛い事だろう。
そしてご無体を受け続けた怪物は増殖どころでは無く。その場にいた全てのウリディムマ達は泡の中に萎んで消えて行ったのであった……。
大成功
🔵🔵🔵
ユヴェン・ポシェット
今まで出会った事のある奴の中で、トップクラスのインパクトだな。
奴には…口から目玉飛び出るような驚きを贈らないといけないな…なんて妙な使命感が湧き上がってくるのは何故だろうか。きっと奴のインパクトの所為で頭おかしくなってんだよな、そういう事にしておく。
こいつは「avain」と名付けた果実なんだが、立派に育って美味そうだろう?少し改良を重ねてだな…あ、デカい口あるし食ってみるか?まぁ、嫌と言っても聞く気は無いが。
avainは俺の手から離れて最初に触れた瞬間激しく散るから気をつけろよ。
改良したと言ったが破裂の際に、触れると肌が爛れる果汁飛ばしたり、水分を異常に吸収する粉を飛散させたり、やたらパチパチ弾ける種とばしてきたり…何が出てくるかわからない付属効果があるんだ。どれが当たるか弾けてからのお楽しみって奴だな。それじゃ、YO☆RO☆SHI☆KU!
勿論 仕上げはお前とだな、ミヌレ。
熱く鋭い槍で貫く。ウリディムマ…だったか、少し痛いかもしれないが、一瞬だ。
だから…逃げるなよ?
猟兵達によって数を大きく減らしたとは言え。僅かに残るこの気色の悪い目玉の怪物達は、人々の秘めた欲望を糧に再び増殖しようとこのゼルフォニアの空をふわふわと漂い続けていた。
「――――――」
たっぷり長い沈黙の後、
「今まで出会った事のある奴の中で、トップクラスのインパクトだな」
ユヴェン・ポシェット( ・f01669)は漸くそんな一言を口にした。猟兵達は様々な怪物を今まで相手に戦って来た訳だが、こうもシンプルかつ気持ち悪い造形と言うのもなかなか無い。
(「奴には……口から目玉飛び出るような驚きを贈らないといけないな……」)
すっぽーん、と。やだ、唇だけになっちゃう。目玉転がっちゃう。
――なんて妙な使命感が湧き上がってくるのは何故だろう、と。ユヴェンはそんな己のトンチキな思考に内心どこか冷静にそう思う。
「奴のインパクトの所為で頭おかしくなってんだよな」
きっとそう。多分そう。そういう事にしておこう。
『私の目玉を飛び出させるのが貴方の欲望、と……?』
「勝手に人の頭の中を暴くのはどうかと思うが」
『それが私の力ですから。貴方も貴方で勝手に私のせいにしないで頂きたいものです』
いつの間にかユヴェンの周囲を取り囲んでいたウリディムマの言葉。それもそうかと肩竦めつつも彼は一つの瓶をその手に持ち、透けて見える中のものが相手に見える様に掲げた。
「さて。こいつは『avain』と名付けた果実なんだが……立派に育って美味しそうだろう?」
中から取りだした光を発する果実はまるで宝石の様に美しい。
「少し改良を重ねてだな……あ、デカい口あるし食ってみるか?」
『わざわざこの場で果実なんかの説明をする時点で怪しさしかないのでお断りさせて下さい』
「遠慮は要らない。まぁ嫌と言っても聞く気は無いが。そもそもアンタに断る権利は無い」
そう告げてユヴェンは無造作に果実をウリディムマ達目掛けて放る。彼の手から離れたそれは巨大な眼球に命中すると同時に――激しく爆ぜた。
『ひぎゃああっっ!!? な、なんなんですかこれは!?』
破裂した果実をモロに受けて刺さる痛みに悲鳴を上げるウリディムマ達。各々微妙にリアクションが違うものの、痛いという一点のみは共通しているらしい。
「改良したと言ったが――」
更に果実を掌に載せながらユヴェンは怪しい程の笑みを浮かべて告げる。
「触れると肌が爛れる果汁飛ばしたり、水分を異常に吸収する粉を飛散させたり、やたらパチパチ弾ける種とばしてきたり……俺ですら何が出てくるかわからないと言う付属効果があるんだ」
ただし確実なのは。そのどれもが割と攻撃力のある中身だと言う事か。
「どれが当たるか弾けてからのお楽しみって奴だな。それじゃ、YO☆RO☆SHI☆KU!」
再び無造作に、しかししっかり命中する様に。ユヴェンは視界に入る目玉達に向けて劇物同然の果実を投げつけながら駆けていく。
『いたたたっっ
!!??』
『ひぃぃぃ、目が乾く、開けていられない……!?
『パチパチして止まらないんですけどっ!?』
多種多様な眼球への御無体に悶絶し、小さなウリディムマを放った所でユヴェンの姿を捉える事すら出来ずにいる怪物の様子。割と阿鼻叫喚の図。
その様子を満足げに見つめた後、宝石の青年は己の肩にちょこんとしがみつく小竜に視線を向けた。
「勿論、仕上げはお前とだな――ミヌレ」
「キュッ」
小さく鳴いて頷いた
鉱石竜はユヴェンの伸ばした手の先に駆けるとその姿を槍へと変じた。その柄をしかと握り、軽く振るいながら、青年は其処ら中に悶える怪物達を一瞥し、向かうべき軌道を一瞬の内に定めた。
「ウリディムマ……だったか、少し痛いかもしれないが、一瞬だ」
kuilu――黒槍がその穂先に熱を帯びる。これはユヴェンの、そしてミヌレの熱く燃える闘志そのもの。
ユヴェンは床を蹴ると一気に目玉の群れに身を躍らせる。熱く鋭い槍がウリディムマを貫き、同時に流し込まれる極熱が、熱い思いが炸裂し、眼球部分を中から大きく爆発させた。
唇部分だけを残して四散した一体を尻目にユヴェンは次の獲物に向けて槍を突き出す。槍を刺した相手は熱で膨張するが如く爆ぜ、微塵となって消えて行く。
『先程のは戯れに……前座に過ぎない、と?』
爆ぜた果実のそれよりも熱く焼ける激痛が襲いかかる様子に、最後に残るウリディムマが冷静にもそう呟いた。
元より青年は果実の破裂と副次効果だけでどうこうしようとは思っていなかったのだろう。刺す痛みに悶えている所を本気で刺し殺すのが目的だったのだろうと。
「さぁ、な? だが、この一瞬に賭ける俺達の燃える想いは本物だ」
黒槍を手に、ユヴェンは最後の一体に向けて大きく跳躍した。
「だから……逃げるなよ?」
都市国家を覆い尽くす最後の怪物が、その槍に貫かれ。
『この、私が
……!!』
彼らの、全ての猟兵達の熱い想いに屈するかの様に爆発四散し、塵となって消滅していったのだった。
大成功
🔵🔵🔵