ケーキ戦隊フトルンジャー!~虫歯になってもいいじゃない
「誰か、手の空いてるやつはいないか?」
何枚かのチラシを手にしたグリモア猟兵――蓮賀・蓮也(人間のガジェッティア・f01921)は、グリモアベースに集う傭兵達に声をかけていた。
足を止めてくれた者に対して説明していくのは、どうやらUDCアースで起こっている事件についての情報らしい。
「UDCアースで、ケーキが暴れている」
ケーキが暴れている?
いまいち深刻に聞こえない事態なことは言っている本人もわかっているのか、どことなく気まずそうな顔で蓮也は言葉を続けた。
「ケーキといっても、もちろんただのケーキじゃない。どうやらUDCアースに存在する歯医者のひとつを邪神教団がのっとって拠点にしているようだ」
歯医者が邪神教団の拠点。
やはり深刻な事態を想像しにくい。
「どういう邪神なのか、本当にそれで邪神が復活するのかは知らないが、この教団の奴らは本気でそう考えて活動しているみたいでな」
ケーキを広めることで邪神が復活するのか、それともケーキを食べちゃいけないのに食べる背徳的な何かが邪神に必要なのかは不明だが、ともかくも邪神教団は『ケーキを食べちゃいけなさそうな場所でケーキを食べさせる』ことを狙って活動しているらしい。
「そこで目をつけられてしまったのが、この歯医者というわけだ」
桂木(けいき)歯科医院。
恐らくは名前だけで拠点に選ばれてしまったのだろうことは間違いない。
そしてこの教団幹部がかなり残念で単純であることも間違いない。
もう少し捻れなかったのか、と思った猟兵もいることだろう。
「本来の医者やスタッフなどは病院を乗っ取られ無職状態になっているだけで無事だ。だがこの邪神教団がな……虫歯治療に訪れる患者に対して、治療と称してケーキを無理やり食べさせている」
なんというむごいことを!
勇気をもって虫歯治療に来た人間に、甘くて美味しいケーキをひたすら食べさせ、さらに虫歯を悪化させるなどあっていいのだろうか。
「というわけで、悪いがこの歯科医院にいってケーキ型のオブリビオンを倒し、乗っ取っている教団幹部を倒してきてもらいたい」
そういうと、蓮也は近くに居た猟兵達に対して、手にしていたチラシを2枚ずつ配っていく。
一枚は歯科医院の場所が記されたチラシであり、もう一枚は歯科医院近くのカフェで行われているスイーツ・バイキングのチラシであった。
どうやらそのカフェは、果樹園と直接契約を結んで届けてもらっている美味しいフルーツが売りらしく、旬のフルーツをふんだんに使ったスイーツ・バイキングも行われているらしい。
「ケーキ型の敵と戦ったら、ケーキが食べたくなるかもしれないからな。UDCからのお勧めとお膳立てだ。せっかくだし、帰りがけに楽しんでくるといい」
そう勧めて、蓮也は気難しそうな表情をほんの少しだけ緩めた。
江戸川壱号
江戸川壱号です。
このシナリオは小鳥遊ちどりMSと月月月MSとのふんわり連携企画です。内容に関して直接の繋がりはないのでお気軽にどうぞ。
●1章:歯科医院にてケーキ戦隊との集団戦
●2章:歯科医院にて教団幹部との戦闘(ボス)
●3章:近くにあるフルーツが評判のカフェでスイーツ・バイキング
という構成を予定しております。
●歯科医院
個人病院ですが、割と大きめです。
邪魔なものが色々とありますが、猟兵であれば多少の障害物は問題なく避けて戦闘できますので、間取りとか広さとか障害物とかの細かいことはあまり考えずに大丈夫です。
●状況
平日の昼間、開院中です。
ケーキを食べさせられるので、まともな患者は既にほとんど来ていません。
が、逆にケーキを食べられるので、ちょっと悪いお子さんはあえて黙って嬉々として通ってきています。
そういうお子さんが何人かおりますので、対処をしても良いかもしれません。
(しなくても成否に影響はしません)
●スイーツ・バイキング
フルーツが美味しいと評判のカフェです。
今の時期だとイチゴが多いですが、他のフルーツを使ったスイーツもあります。
●共同プレイングについて
お友達と参加される場合、互いのIDを。
3人以上でご参加の場合は、チーム名や合い言葉を【】で囲って。
それぞれプレイング冒頭に記載してください。
また、できるだけプレイングの送信日(失効日)を合わせていただけると助かります。
それでは、ご参加お待ちしております。
第1章 集団戦
『ケーキ戦隊』
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POW : 甘い香りでパワーアップ!
【空腹を誘う甘い香り】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 自慢のケーキをご馳走しよう!
【食欲】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【伸縮自在のフォーク】から、高命中力の【様々なダメージを与えるケーキ】を飛ばす。
WIZ : ほらほら美味しそうだろう?
【心惹かれる美味しそうな香り】【目を奪う美味しそうな見た目】【とろける甘さと美味しさ】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
👑11
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UDCアースのとある市街地のはずれにある、桂木(けいき)歯科医院。
ともすれば美味しそうな名前故に邪神教団に狙われ、乗っ取られてしまった歯科医院では、ケーキ型のオブリビオンたちが思うさまに悪事を働いていた。
「ふはははー! さぁ、虫歯の子供たちよー! 虫歯など気にせずこのケーキを食べるがいい!」
「この時期のイチゴはあまぁいぞ? 北海道産フレッシュ生クリームとの相性も抜群だ。さぁ喰らえ!」
「なんの、やはり冬といえばチョコレートであろう。職人技により完璧にテンパリングされたチョコレートを使ったなめらかな口どけにとろけるがいい!」
数多のケーキ型怪人が、虫歯の治療に来たはずの子供たちにケーキを食べさせているのだ。
歯医者の治療台についているのに、行われるのは治療ではなくケーキ食べ放題である。
かなりよろしくないことではあるが、そこはそれ、虫歯の治療に来ている子供の多くは甘いものが大好き。
そして治療はちょっぴり怖いしできるならしたくない。
つまり――。
「わぁい! ケーキさん大好きー!」
「へへへっ、オレ、この歯医者にしてよかったー!」
「おいしいねぇ」
と。
困ったことに嬉しそうに出されたケーキを食べているのだった。
もちろん、子供たちは虫歯の治療にきているので、美味しくたって歯は痛む。
痛むけれども、目の前の美味しさには勝てないのであった。
「ふっふっふ。順調だな。こうして虫歯の子供たちにケーキを食べさせ、虫歯をもっと酷くしつつも美味しいケーキを広めるのだ」
「そうだ。そうして邪神様に復活していただくのだ」
「くっくっく。我等のボスの計画は完璧だ!」
歯科医院では、そんな恐ろしくも割とゆるい計画が進行しているのであった――!
城田・紗希
ケーキって歩きまわるものだっけ…?
……まぁ、邪神だし、ケーキぐらい歩くよね(諦めた)
攻撃はウィザードミサイルに、範囲攻撃と誘導弾を乗せてみる。
ケーキもいいけど、焼きフルーツも美味しいよね(焦がして見た目をダメにしつつ)
(オブリビオンの消滅と同時にケーキも消えたら)
私の、私のケーキが……。(泣き崩れる)
私のケーキを返せー!(八つ当たりで、誘導弾と全力魔法で少数狙いのオーバーキル)
●
(「ケーキって歩きまわるものだっけ
……?」)
歯科医院に足を踏み入れた城田・紗希(人間の探索者・f01927)は疑問符を頭の周囲に浮かべつつ、まぁUDCアースだし邪神が絡めばそんなこともあるだろうと色々なものに諦めを覚えつつ、ロビーへあがっていく。
受付にいるのも勿論ケーキだが、襲撃を警戒していないのか、こちらに目も向けずに「少々お待ちください」と言うだけである。
ならば慎重に行く必要もない。
紗希はそのまま歩を進めると、院内を忙しくケーキを持って歩き回っているケーキ戦隊たちに向け、おもむろに魔法の矢を放った。
百を超える炎を纏った矢は、誘導弾によりしっかりとケーキたちを狙って飛んでいく。
炎の矢によってケーキが炎に包まれ、結果としてあたりに香ばしい匂いが漂いはじめた。
(「ケーキもいいけど、焼きフルーツも美味しいよね」)
香りに刺激されたのか、紗希の脳裏にもそんな呟きが過ぎる。
目の前にあるのは焼きフルーツならぬ焼きケーキだけれども。
だが、紗希がのんきに焼かれるケーキを見ていられたのも、わずかの間のことであった。
「!?」
紗希の炎の矢を受けたケーキ戦隊の一員たちの一部が、香ばしい匂いを漂わせながらも消えていくではないか!
「あー!?」
何体かを倒せたのは良いが、倒されたケーキは消えてしまうようだ。
本体の部分もクリームの一口さえ残さず消えていくケーキを前にした紗希は、泣き崩れて膝をついた。
「私の……私のケーキが……」
紗希はどうやら、ケーキ戦隊のケーキを食すつもりだったようだ。
なかなかにチャレンジ精神溢れた猟兵である。
そう、紗希は猟兵だ。
例え己の手により食べるつもりだったケーキを失ってしまっても、そこで立ち止まったりはしない。
すっくと立ち上がって再び炎の矢を呼び出すと、異変を察して駆けつけてきたらしい新たなケーキ戦隊の数体に向けて全力でぶちこんでいく。
「私のケーキを返せー!」
いくつものケーキを焼いた無数の矢を、今度は向かってきた数体に一気に全力で叩き付けたのだ。
数本でも焼かれて溶けてしまったヤワなケーキなど、ひとたまりもない。
食べられなかったケーキの八つ当たりを果たした紗希の進撃は、無事に美味しいケーキを食べるその瞬間まで続く――のかもしれなかった。
成功
🔵🔵🔴
セツナ・クラルス
危険がなければ子供たちは治療台で待機
ケーキでも食べて待っていてくれないか
喉が渇いたらこれを飲むといいよ
キンキンに冷えた紅茶を入れた水筒を子供に渡す
…虫歯に冷たいものは染みるだろう
治さない限り痛いままだよ
今は無痛治療というもののあるし
意外とあっさり治療は済むから、頑張ってみないかい?
さて、ここは危ないから
もうお帰り
別人格を呼び出し共に戦おう
おいで、ゼロ
共に食べよ…じゃなく、共に歩もう
別人格はセツナよりもやや目つきや口が悪い
あるかは不明だが
塩の属性を武器に纏わせ交戦
スイーツたちにとって塩は天敵だろう
塩味とか塩スイーツとかじゃなく
塩まみれになるなんてアンデンティティの崩壊じゃないか
ふふ、恐ろしいねえ
●
ロビー周辺でケーキがこんがり焼かれている頃、セツナ・クラルス(つみとるもの・f07060)は治療室でケーキを食べている子供たちのもとへとそっと近づいた。
子供たちは治療台となっている椅子の上で出されたケーキを夢中で食べていて、騒ぎは気になるがケーキを食べるのを優先しているようだった。
無闇に歩き回れば危険だが、治療台から動かずにいるのなら巻き込まずに戦うことも可能だろう。
とはいえ、虫歯の治療に来ていたながらケーキを嬉々として食べる子供たちに、ほんの少し思うところがないわけでもない。
「ああ、そうだ。喉が渇いたらこれを飲むといいよ」
わずかな笑みと共に差し出したのは、キンキンに冷えた紅茶の入った水筒だ。
子供たちはこれまで口をゆすぐ用の水を飲むしかなかったらしく、紅茶は子供たちにとても喜ばれた。
「ありがとう、おにいちゃん!」
けれどもセツナはただ子供を喜ばせるために――子供たちのためではあるのだが――飲み物を振る舞ったわけではない。
「~~~ッ!!」
喜んで紅茶を飲んだ子供たちが、途端に目を見開いて一瞬だけ動きを止める。
かと思えば身震いして頬を押さえ、何かに耐えているようだった。
「……虫歯に冷たいものは染みるだろう?」
くすりと苦笑をこぼしたセツナは、紅茶の入った水筒を揺らしながら頬を押さえて悶えている子供たちへと語りかける。
「治さない限り、歯は痛いままだよ。今は無痛治療というものもあるし、意外とあっさり治療は済むから、頑張ってみないかい?」
元から多少の罪悪感はあったようで、子供たちは互いに顔を見合わせるとこくりと頷いた。
「さて、ここは危ないから、もうお帰り」
セツナもそれがいいと頷き返して、戦いに巻き込まれないよう子供達を歯科医院の外へと誘導する。
虫歯なのにケーキを食べ続けて悪化していたところに冷たい紅茶はよほど効いたらしく、子供たちはおとなしく家へと帰っていった。
子供たちの姿がなくなれば、もう遠慮はいらない。
「おいで、ゼロ。共に食べよ……じゃなく、共に歩もう」
別人格のゼロを呼びだしたセツナは、更に手にした武器に『塩』の属性をまとわせる。
「塩味とか塩スイーツとかじゃなく、ただの塩まみれになるなんてアンデンティティの崩壊じゃないか。ふふ、恐ろしいねえ……」
よく似ていながら少し違う二人はかすかに笑い合うと、想像を実現するためケーキ怪人へと無垢なる刃を振り下ろしていくのだった。
成功
🔵🔵🔴
ビスマス・テルマール
キマイラフューチャーでもないのに何でアースにケーキ怪人が居るのかはさておき
虫歯は色々な害を進行させます、しょうもないやり方で子供の将来と引き換えに邪神復活なんて……通りすがりのなめろう猟兵の名に賭けて断固阻止ですっ!
●POW
仲間と連携し弾に
『誘導弾』『属性攻撃(アボカド)』を込めアボカドホーミング弾の生成
『一斉発射』と『範囲攻撃』の併用で撃ち援護
ケーキ戦隊の甘い香りにはビルド・なめろうビームウェポンで『マグロのバナナなめろうビーム大団扇』を生成し『オーラ防御』と『属性攻撃(風)』でコーティング
『カウンター』『範囲攻撃』で扇ぎ返しネットリした甘いなめろうでお返しです。
※アドリブ絡み掛け合い大歓迎
●
歯科医院の中には、けっこうな数のケーキ型オブリビオンがいた。
ここはキマイラフューチャーか?
と勘違いしそうになるところだが、怪人めいてみえてもきっとUDCなのだろう。
疑問を押し込めたビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)は、ケーキ怪人を次々と撃ち抜いていく炎の矢に合わせてアボカドホーミング弾を発射。
一斉に放たれた誘導弾が持つアボカドの属性は、攻撃範囲にいたケーキたちを不飽和脂肪酸で覆っていった。
虫歯は色々な害を進行させるのだ。治療に来た子供にケーキを食べさせるなどというしょうもないやり方で、子供の将来と引き換えに邪神復活を目論むなど、許せることではない。
「通りすがりのなめろう猟兵の名に賭けて、断固阻止ですっ!」
そう、彼女はなめろう猟兵である。
アボカドは重要ではあっても、ほんの一要素にしかすぎない。
生き残ったり新たに現れたケーキ戦隊たちが、おなかがすきそうな甘い香りを放った時には、既にビスマスは次の攻撃の準備に入っていた。
「生成開始(ビルド・オン)っ! マグロのバナナなめろうビーム大団扇っ!」
ユーベルコードによりなめろうビームウェポンを作り出すビスマスが今回選んだのは、マグロとバナナを合わせたなめろうの気を帯びた大団扇型のビームウェポンである。
マグロのバナナなめろう。
字面だけを見るとちょっと腰がひける気がするが、意外と合うようで華やかでパーティーに合うオシャレなめろうらしい。
ともあれビーム大団扇を手にしたビスマスはなめろうのオーラで甘い香りを防御すると、今度はその香りをビーム大団扇で仰いで、マグロのバナナなめろうの香りをまとった風でお返しする。
ちょっと何を言っているかわからない者もいると思うが、なめろうの気を感じ取れる者にご理解いただけるだろう。多分。
炎の矢によりほんのりと焼けたケーキの香ばしい匂いごときでは、マグロのバナナなめろうのネットリとした甘みに勝てる筈もなく、ケーキたちはたちまち洋菓子ではなくなってしまった。
しかもケーキたちには、先にアボカドが振りまかれている。
アボカドに、マグロのバナナなめろう。
つまり――これこそが、ビスマスの原点たるハワイアンなめろうなのだ。
「焼きケーキのハワイアンなめろう包み――完成です」
なめろう猟兵、ビスマス。
彼女の手にかかれば、なめろうになれないものなどない――のかもしれない。
成功
🔵🔵🔴
テオドア・サリヴァン
「本当だ…ケーキが暴れている…なんだこれは…?」
(暴れているケーキたちを見て絶句する。)
ともかく、ケーキたちを倒すぞ。奴らの攻撃には「見切り」で避ける。ケーキたちは遠慮なく細切れにしてやる。ケーキナイフはもってないが問題はないだろう。「ブラッドガイスト」で殺傷力を上げてやるぞ。
「俺が今見ているのはなんなんだ…?」
●
「本当だ……ケーキが暴れている……」
本来ならば歯科医院の中で数多のケーキ戦隊と猟兵たちが戦っている姿に、テオドア・サリヴァン(ダンピールの妖剣士・f14908)の口からは思わず言葉がこぼれていた。
「なんだこれは……?」
素直な心情のあとは、とても言葉が出てこない。
失ったもののために強くなることを決意しているテオドアは、戦いの場そのものを厭ってはいないけれども、さすがにこの戦場は少々想定外だったようだ。
ケーキが暴れていると聞いた時に引っ掛かりは覚えても、ここまでケーキそのものな形をしていると思わなかったのだろう。
オブリビオンに利用されている幼い子供たちを放ってはおけなかったこともあったのか、それなりの覚悟でもってやってきた現場がこれである。
ケーキ型のオブリビオンはケーキ戦隊と名乗り、甘い香りを漂わせてくるわ、ケーキを食べさせようとしてくるわ、食欲を刺激してくるわ。
とてもオブリビオンとの戦いとは思えない。
猟兵としての戦いに、食欲とケーキとの戦いを最初から想定している者の方が少ないと思われるので(全くいないと言い切れないのが猟兵の恐ろしいところではあるが)、テオドアはとてもまっとうな感性の持ち主と言えよう。
「と、ともかく、ケーキたちを倒すぞ」
ケーキ1つ1つは弱いが、何しろ数が多い。
他の猟兵に遅れまいと、ケーキたちの謎の攻撃をよく見て時に避け、時に受け止めて捌きつつ、その柔らかな体に近づいては手にした刃で切り裂いていった。
テオドアの血を吸った刃は既に封印を解かれ、敵を喰らおうとその威力をあげている。
ケーキナイフよりもキレイに細かく切り刻んでいけば、その端からケーキの欠片はすぅっと消えていった。
「……本当にオブリビオンなんだな……」
どれだけ美味しい匂いがしようとも、やはりこの世のものではなかったようで、少しばかり安心する。
だが、テオドアの安堵を余所に戦場は益々カオスなことになっていた。
炎の矢がケーキを焼いたかと思えば、ケーキを塩とハワイアンなめろうが襲う――もはやケーキが動いて暴れるどころではない、謎空間である。
「俺がいま見ているのはなんなんだ……?」
半ば呆然と呟かれた言葉に答えられる者は、残念ながらいなかった。
成功
🔵🔵🔴
柊・雄鷹
【f00145】
ケーキ食べ放題と聞いて!…間違えた、ケーキ倒しに来たでっ!
それにしてもいっぱい種類がおるなぁ
ハレちゃん、どのケーキにするー?ワイはあのチョコレートや!
ハッ、ナメんなハレちゃん
ワイの胃袋はまだまだ現役やで
ハレちゃんこそ、ビターに当たって顔歪めんなよ
お、子、ちゃ、ま!
ダガーを【投擲】またはUCで攻撃
敵のSPD技がハレちゃんに向かったら【かばう】
ほなって、ダメージになるからって美味しくないとは限らんやろ?
とりあえず食べてみるやろ、男なら!
美味しくなかったらキレる普通にキレる。凍刃の鷹で【属性攻撃】
…それにしてもハレちゃん、美味しくなかった時の殺意ヤバいな
巻き込まれない様に退避一択!!
夏目・晴夜
【f00985】
誕生日でもないのにケーキが沢山だなんて堪りませんね
私は甘けりゃ何のケーキでもいけますが、ユタカさんは無理しないほうがいいのでは?
おっさんの胃にケーキなんて突っ込んだらマッハでショック死しますよ
敵のSPD技は受けたい気持ちですが、
ユタカさん邪魔しないでください
ああ、毒味。ならば私も毒味します
自らの美味しさを強化した敵に対し【死の抱擁】
いくら強化しても動けなければ無意味でしょうし、
本当に美味しそうなので食べてあげますよ
いや、これはケーキではなくオブリビオンでしたっけ
でもまあ、とりあえず齧ってみるでしょう、男なら
不味かったら妖刀で【目潰し】【串刺し】
あと人形で【なぎ払い】【踏みつけ】
●
「ハレちゃん、どのケーキにするー? ワイはあのチョコレートや!」
歯科医院内で暴れているケーキたちを見て、柊・雄鷹(sky jumper・f00985)がわくわくとした気持ちを隠さずに声をあげる。
対して答えるのは、あまり感情を見せない声だ。
「私は甘けりゃ何のケーキでもいけますが、ユタカさんは無理しないほうがいいのでは? おっさんの胃にケーキなんて突っ込んだらマッハでショック死しますよ」
とはいえそれは、あくまでも表面上だけのもの。
平坦な声と動かぬ表情の夏目・晴夜(不夜狼・f00145)の内側が感情豊かだなんてことも、自分相手には遠慮容赦ない態度だけれどそれが親しさ故のことだというのも、雄鷹にとってはあたりまえのこと。
こんなやりとりだって、楽しみのひとつだ。
「ハッ、ナメんなハレちゃん。ワイの胃袋はまだまだ現役やで」
それに、お互い様というものだろう。
自信満々に胸を反らして胃袋のあたりを叩いたあとでほんの10センチほどの差を見せつけるように顔を覗き込み、ニヤリと笑ってみせる雄鷹だとて、遠慮のない物言いなら負けていない。
「ハレちゃんこそ、ビターに当たって顔歪めんなよ? ――お、子、ちゃ、ま!」
晴夜の目が、ほんのわずかに細められた。
「なるほど。ケーキに殺されるより先に、私に殺されたいということですか。それは気が付かなくてすみません」
などとさらりと返されれば、ここはもう話題をさっさと変えるしかない。
「いやいや、その殺意はケーキに向けよ!?」
じゃれあいは程々にしてケーキと戦うことにした二人だが、何しろ数はいても弱いので、サクサク倒せてしまう。
しかもこのケーキ戦隊ときたら、時折フォークに突き刺したケーキを食べさせようとしてくるのだ。
もとより甘い物に目がない晴夜としては、攻撃だとわかっていてもつい食べたくなってしまう。
だが、食べてみようとしたところで――。
「あぶない、ハレちゃん!」
雄鷹が目の前に立ち塞がり、その攻撃を受け止めたではないか。
「ちょっと、ユタカさん邪魔しないでください」
それだけならばまぁ、庇ってくれたわけだし感謝しないこともないのだが。
こんなところで以心伝心してしまったのか、食欲が似ているのか、晴夜を庇ったはずの雄鷹は突き出されたフォークの先にあるケーキに、勢いよくかぶりつくところ。
「ほなって、ダメージになるからって美味しくないとは限らんやろ? とりあえず食べてみるやろ、男なら!」
「ああ、毒味ですか。なら私も毒味します」
好奇心に目を輝かせて言う姿に、邪魔をされたことはともかくとして気持ちはわかると同意した晴夜は、ちらりと別のケーキ戦隊に目を移す。
そちらのケーキはちょうど香りや見た目や美味しさで己の身(ケーキ)を強化しているところ。
晴夜は自ら美味しさをアップしてくれたケーキに対し、粛々とからくり人形を向かわせて捕縛。その動きを封じてみた。
「本当に美味しそうなので食べてあげますよ」
そうして安全を確保してから近づくと、食べてみようと顔を近づける。
これでもオブリビオンだったことを思い出すが、囓ってみるだろう、男なら。雄鷹も嬉々としてかぶりついているのだし。ということでそのまま囓りついた。
「いやぁあああ~!」
ケーキが何故か恥ずかしげな悲鳴をあげるが、構わず囓った部分を味わってごくんと飲み込むと――。
「……」
しばし固まった。
そのすぐ隣で雄鷹はダメージ覚悟でもぐもぐと差し出されたケーキを食べていたのだが(こちらは痛かったが美味しかった)、晴夜の様子に気付いた途端、ゆっくり味わう余裕などしゅんっと消えていく。
「ハレちゃんの殺意がヤバい……。これは退避一択やな!」
相棒の様子から状態を正しく読み取った雄鷹は、そっと距離を置いてケーキの姿を壁に他のケーキを倒しにいくことにした。
そして当の晴夜はというと――。
無言で妖刀をケーキに突き刺し、ついでに目つぶしもして、捕縛していた人形に放り投げたついでに薙ぎ払わせると、さらに地べたに落下したところを踏みつけさせているのであった。
ダン、ダン……ッ!
何度も何度も、完全に倒され姿が消えるまでひたすら人形に踏みつけさせた晴夜の目は冷え冷えとしている。
「甘けりゃなんでもいいと言いましたが、限度があります」
ケーキ戦隊の体を構成するケーキは、決して美味しくないわけではない。
なにしろユーベルコードで美味しさを強化までしたのだし。
だが、このケーキ戦隊たち。
戦闘の中で、塩やアボカド属性をばらまかれていたりしたのだ。
それらの攻撃で倒されるところまでいかなくても、味付けはされてしまっていたのだろう。
晴夜の食べたケーキ戦隊の身体はしょっぱくてアボカドの風味とえぐみとこってりした味がついたショートケーキだったのだ。
「――」
恐ろしい味のケーキ戦隊を消滅せしめた晴夜が、雄鷹の食べたケーキは痛かったけど美味しかったと知った時――果たしてどうなるのであろうか。
ほんの少し先の未来に恐ろしさを残しつつ、ともあれこうしてケーキ戦隊たちは順調に消えていったのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 ボス戦
『悪の女幹部』
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POW : 今週の巨大化獣
【今週の巨大化獣 】の霊を召喚する。これは【パンチ】や【キック】で攻撃する能力を持つ。
SPD : 戦闘員召喚
レベル×5体の、小型の戦闘用【悪の組織員 】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
WIZ : 悪の女幹部のおしおき
【剣 】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
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●
「これは……いったいどういうことだい!?」
ケーキ戦隊たちが倒されきった後、騒ぎに気付いたのかやってきた新たな人物は、歯科医院の惨状に驚愕の声をあげた。
随分と露出度の高い扇情的にして攻撃的な服装。
美人だがキツめの顔立ち。
「私の可愛いケーキたちを倒したのは、お前たちだね!?」
そしてこの台詞。
わかりやすい。
もとい、間違いない。
こいつが邪神教団の幹部だろう。
「チッ、猟兵か。まさかこの計画が気付かれるとはね……。だが、お前たちを倒せば問題ない。この計画に狂いは生じない。――ケーキたちを倒されたのは誤算だが、アタシが自ら葬ってあげようじゃないか」
どこまでもわかりやすい台詞を吐いて、露出度高めの美女――悪の女幹部・オイシネイト・スィーツァは猟兵たちへと襲い掛かる!
城田・紗希
私のケーキを返せー!!(開口一番が食べ物の恨み)
間違えた、ケーキで虫歯は広めさせないよ!
……虫歯が目的だっけ?まぁいいか。どうせオブリビオンだから倒すし。
攻撃はウィザードミサイル、全力魔法と誘導弾を……ちょっと前に使った気がする(首かしげ)
…ウィザードミサイルに鎧破壊って乗るっけ?(感覚的に撃ってるのでよくわかってない)
……うん、とりあえず撃てるだけ撃って、攻撃は第六感と見切りで回避する!(深く考えない)
●
「私のケーキを返せー!!」
悪の女幹部のセリフが終わるか終わらないかのうちに、とりあえず全力でもって無数の炎の矢を一点集中でぶちこんだのは紗希である。
ちょっと前に同じような攻撃をした気がしたが、得意技は手になじむもの。無意識のうちに放てるようになったとしてもおかしくない。
「間違えた。ケーキで虫歯は広めさせないよ! ……でいいんだっけ?」
紗希が混乱するのも無理はない。
この邪神教団、虫歯を増やしたいのか、ケーキを広めたいのかよくわからないところがある。
そもそも虫歯を増やそうがケーキを広めようが、邪神復活に繋がりそうもないので、仕方がないと言えよう。
それだけではなく、悪の女幹部は悪の女幹部というだけあって、悪の女幹部であった。
「ちょっと、アンタ!? こういうのは、口上が終わるまで待つものでしょう!? もうちょっと前起きおいてから攻撃するっていう作法も知らないのかい!?」
炎の矢をぶちこまれ、あちこち焦げて煙りをまといながらの台詞がコレである。
しかし――残念ながらここは日曜の朝から始まるヒーロー番組ではないし、紗希はヒーローではなく猟兵であった。
「?」
女幹部が何を言っているのか、紗希が理解できないのも無理はないというか理解しなくていい内容である。
というか紗希はこの時、ウィザードミサイルで鎧破壊ってできるんだろうか、どうだったっけ? などと考えていたため、女幹部の話は聞いていなかった。
正しい判断を結果的に行っていた紗希は、まぁとりあえずいつも通りに感覚でいこう!
と決めて、女幹部が腹いせに投げてきた剣を勘で避け、こう動こう、と考えるよりも前に自然と動く身体に任せて次の一撃を放った。
「あー! アタシの寿命を削って技を封じるっていうカッコイイ攻撃が台無しじゃないかい! なによけてんのさ!」
そりゃあ避けるし攻撃もする。
猟兵だもの。
「ケーキの恨み、思い知れ! ……あれ? 虫歯だっけ?」
長い髪の毛を焦がしながら喚く女幹部に対し、紗希はどこまでもマイペースであった。
成功
🔵🔵🔴
テオドア・サリヴァン
「アンタ、わかりやすすぎるぞ…」
相手は邪教教団の幹部だ。手練れだろう。心してかかるか。奴には「忍び足」で近づき「吸血」しよう。一応、血が必要だからな。攻撃には「見切り」で避けるぞ。あとは「ブラッド・ガイスト」でスパッと斬ろう。
なんだか、悪役みたいな戦い方だが仕方ないか。
「お前たちには色々とツッコミたいところだが…って聞いちゃいないか…はぁ」
早くこのカオスな戦いを終わらせたい…思わずため息が出てしまったぞ…
ビスマス・テルマール
台詞が如何にもテンプレですけど、貴女がこの絵図を仕組んだ張本人ですね?
貴女は絵図ごと『破壊』させて頂きます、覚悟してくださいっ!
●POW
味方と連携しつつ
弾に誘導弾と属性攻撃(重力)とオーラ防御を込め
重力シールド弾を生成
範囲攻撃と一斉発射を併用で
敵の周囲にばら蒔き味方の援護
ユーベルコードによる『山河焼きバーガー』型の爆弾剣をオーラ防御で覆い、ソレを盾にわたしも突撃し白兵戦
鎧無視攻撃と鎧砕きを込め、ソレをスナイパーで巨大化獣のお口に叩き込みます
早業併用で巨大化獣を足場に
そこから女幹部に属性攻撃(山河焼きバーガー)と鎧無視攻撃と鎧砕きとオーラ防御を込めた踏みつけ(ご当地キックモドキ)をお見舞いです
◎
●
「アンタ、わかりやすすぎるぞ…」
登場時の出で立ちと台詞といい、攻撃を避ける避けることに文句をいう姿といい、ついついツッコミめいた台詞がテオドアの口からこぼれてしまう。
しかしどれだけ残念な気配が漂っていたとしても、相手は邪神教団の幹部なのだ。
この女幹部は大丈夫かとか、こんなのを幹部にしてこの邪神教団は大丈夫か、といった心配じみた疑問はあれども、幹部であるからには手練れに違いない。手練でないと困る。
呆れた目で見据えながらも、テオドアの中に油断はない。
紗希とコントめいたやりとりをしている隙に近づこうと、そっと忍び足で歩を進めることにした。
その動きを察知してか、ビスマスもまた援護すべく動き出す。
何やらわめいている女幹部に対し、その周囲をとりまくようにして一気に重力をまとった弾を発射した。
「なっ、なんだいこれは!?」
敵の動きと攻撃を阻むように放たれたそれに目をむいた女幹部が、思うように身動きできないことを悟って眦をつりあげる。
「フンッ。いくら私の動きを阻もうと、こっちにはとっておきの部下がいるのさ。現れよ、今週のびっくりどっきり巨大化獣!」
女幹部の呼び声に応じて出現したのは、頭部がケーキ型の巨大な怪獣であった。
巨大といっても歯科医院の天井を少し突き破る程度なので3~4メートルといったところだろうか。
『けぇええきいぃいい……!』
わかりやすい鳴き声をあげて、巨大化獣がビスマスに襲い掛かる。
どうやらわかりやすい女幹部が呼びだした巨大化獣は、やはりわかりやすい巨大化獣のようだった。
攻撃は単純なパンチとキックとはいえ巨大ゆえにその攻撃範囲は広い。
ビスマスが注意を引き付けている間に女幹部へと迫りかけていたテオドアも、あやうく蹴られそうになったのをすんでのところで見切って避けるはめになる。
不幸中の幸いは、同じく巨体故に動きが見切りやすいことだろうか。
「ハッ、ざまぁないねぇ、猟兵! 巨大化獣、やっておしまい!」
女幹部の声に従い、またも吠えてイチゴっぽい棘の生えた腕を振り下ろす巨大化獣に対し、ビスマスがとった行動は迎撃だ。
『Namerou Hearts Sangayaki Baga!』
その機械音が響いたのは女幹部の指示が飛んだのとほぼ同時。
『鎧装転送! 山河爆斬!』
続く機械音を合図として鎧装から取り出されたのは、切っ先に山河焼きバーガー型の爆弾がついている、色々な意味でヤバイ剣である。
「この絵図を仕組んだ張本人ですか……。貴女は絵図ごと『破壊』させて頂きます、覚悟してくださいっ!」
爆発から身を守るためかオーラで覆いつつソレを構えたビスマスは、吠える怪獣の口めがけて一直線に放り投げた。
大口をあけていた巨大化獣は山河焼きバーガーを頬張る形となり――自然な流れとして爆発する。
ユーベルコードによって呼び出されただけの巨大化獣は爆発によって頭部を吹き飛ばされ、ゆっくりと崩れ落ちていった。
「え。ちょっとなによそのバーガー爆発するとか反則じゃない!?」
巨大化獣をあっさり倒されるとは思っていなかったらしく、女幹部はかなり動揺している様子。
だがどれだけゆるくとも、ここは戦場。油断大敵なのである。
相手が残念でも気を抜かず油断せず侮りもしなかったテオドアは、巨大化獣の攻撃も潜り抜け、ビスマスにすっかり意識を持って行かれている女幹部の背後へと辿りついていた。
長い黒衣と髪が翻り、ふわりと落ちる。
「……!?」
女幹部がテオドアに気付いた時には既にその片手は頭部を捕らえ、口元は首筋を捉えていた。
逃れようと女幹部がもがこうとも、テオドアとてそう簡単に逃しはしない。すばやく肌に牙をたてて、その血を吸い上げる。
「ええい、お離しったら!」
髪を振り回すようにして暴れて逃れはしたが、テオドアの用が済んだからだろう。
女幹部は噛み付かれた首筋を押さえキッとテオドアを睨み再び巨大化獣を呼びだそうとしたようだが、そこへ消えかかる巨大化獣を足場に高く飛び上がってからのキックを放ったビスマスが落ちてくる。
「ぐぇっ」
結果、女幹部は轢かれたカエルのように地に伏すこととなった。
「……」
手練れだと思ったのだがなぁ……。
と、少しばかり遠い目になってしまいたいテオドアであったが、そこはぬかりなく殺傷力を増した刃でもって、しっかりと地に伏した女幹部に突き刺しておいた。
「た、倒れ伏した敵に攻撃するなんて、ほんとに作法がなってないやつらだよ!」
それでもまだまだ元気にジタバタしているのは、さすがは幹部級ということなのだろうか。
「お前たちには色々とツッコミたいところだが……って、聞いちゃいないか」
テオドアが深々と溜息をつこうとも、女幹部は自分の何がそこまで猟兵に疲れた顔をさせているのかがわかっていないのだろう。
ひたすら作法がなってないと喚いて暴れているところを見るに、人の話は基本的に聞いてないらしい。
だが、この丈夫さは本物である。
このまま追い打ちをかけようとしたところで、女幹部は今度は大量の雑魚……もとい、悪の組織員という名前の一般戦闘員を呼び出して襲わせることで猟兵達の包囲を一端抜けてみせたのだった。
「……もうちょっと早く、そうしておけばよかったんじゃないか……?」
きっと、作法がどうとかいう理由なのだだろうけれども。
戦闘員の波に押されながらも、テオドアはやはり呆れた声をださざるを得ないのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
セツナ・クラルス
誤算とか計画とか…
そもそもあなたは最初から間違っているんだよ
ここは歯医者だ
菓子を配るところではない!
無駄にきりっと言い放つと戦闘開始
なんだか楽しげな敵だが油断はしない方がいいだろうね
ふむ、フェイントにフェイントを重ねたらどこかで隙を作れないだろうか
ケーキにはロウソクを立ててお祝いしないとね
灯りはあるかい
ないなら此方で用意しよう
敵との距離は保ったまま灯火を幾つか放つ
遠距離では灯火、
近距離では鎌を使用し敵を翻弄
囮の炎や鎌に注意を向けさせながら
本命である敵の背後に回した灯火をぶつけよう
ふふふ、火は一気に吹き消さないと
夏目・晴夜
◎【f00985】
あんなにもクソまずいケーキで重要な計画を為そうとしたのですか?
ちょっと頭の中が天晴れすぎやしませんかね
ゴミ捨て場に溜まった雨水よりも不味かったですよ、あなたの可愛いケーキ
なのに『この計画に狂いは生じない』とか、恥ずかしくはないのですか?
顔はかなりの美人なのに勿体無い
召喚された組織員は【謳う静寂】で広く攻撃し、サクッと消滅させます
途中『ワイのは美味しかった』と隣のおっさんから聞こえましたので、
全員殺すくらいの気合いで励みます
ちょっと黙っていて……いや、この命令はやっぱり無しで
美味しい普通のケーキを献上して下さい
この命令は組織員に限らずユタカさんにも言っているので、よろしくどうぞ
柊・雄鷹
【f00145】
ハレちゃんの食い物への恨みが深い、めっちゃ深い…!
…ワイが食べたのは美味しかったってこと、黙っとこ
しっかし、これまた!美人なねーちゃんが出てきたなぁ!
こらハレちゃん、女性に対してそう辛辣なこと言うたらあかんでっ!
あとで黒歴史になるだけなんやから、触れずにソッとしといたり
ハレちゃんのご機嫌を直すために、全面フォローに回るでー
ワイってめっちゃ良いお兄ちゃん!
ハレちゃんのUCに合わせて【泪花】を使用
敵のWIZでUCを封じられた場合は、羽を使うて空へ
そこからダガーを【一斉発射】や!
ほらほら組織員、ハレちゃんの二撃目が来る前に美味しいスイーツ献上頼むでっ!
…ん!? えっ、ワイもなん!!?
●
態勢をなんとか立て直した女幹部は、大量の戦闘員の後ろでぜーはーと肩で息をしつつも偉そうにふんぞり返る。
「フンッ、ちょっとはやるようだけど、残念だったねぇ。アタシはしぶといのさ! さぁ今度こそ計画を確かなものにするため、やっておいしまい、戦闘員共!」
強がってはいても、かなり虫の息といった様子ではあるが……ともあれ女幹部は虚勢のまま高らかに手を掲げて命じ、一斉に戦闘員を猟兵たちへと向かわせた。
迎え撃つセツナは、無駄にキリっとした顔でもっともなことを言い放つ。
「誤算とか計画とか……。そもそもあなたは最初から間違っているんだよ。ここは歯医者だ。――つまり、菓子を配るところではない!」
「た、確かに!」
対する女幹部は、何故だかハッとした顔になっていた。
それでいいのだろうか。
「……いやいや、だからこそアタシらの悪さが際立つんじゃないか! 悪として当然の作法だよ!」
数秒の後、自分たちが何故こんなことを計画したのかを思い出したらしく首を振って訂正するが、やはり色々と残念極まりない。
そんな女幹部の残念さに溜息をつきたい者は他にもいる。
「あんなにもクソまずいケーキで重要な計画を為そうとしたのですか? ちょっと頭の中が天晴れすぎやしませんかね。ゴミ捨て場に溜まった雨水よりも不味かったですよ、あなたの可愛いケーキ。なのに『この計画に狂いは生じない』とか、恥ずかしくはないのですか?」
とはいえ滔々と晴夜の口から流れ出るのは呆れの溜息では済まされない沸々と沸き上がる怒りだったが。
顔はかなり美人なのに勿体無い。
という一言は果たしてフォローだったのだろうか。
「こらハレちゃん、女性に対してそう辛辣なこと言うたらあかんでっ! あとで黒歴史になるだけなんやから、触れずにソッとしといたり」
雄鷹のフォローも微妙にフォローになっていなかったが、幸か不幸か相手は人の話を聞かない悪の女幹部。
「アタシの可愛いケーキが不味いとか、そんなことあるわけないだろ! オイシネイト・スイーツァの名にかけて、不味いケーキなんかだしゃあしないよ!」
引っ掛かったのはそこらしい。
だがこれには、実際に不味いケーキを食べさせられた晴夜のこめかみがピクリと動いた。
「ほぉ……う。それはまた、随分と酷い味覚をお持ちですね」
ぴりぴりと空気が帯電したかのような怒りと緊張感が晴夜を取り巻いていることに気づき、雄鷹はそっと距離を取る。
「やばい……ハレちゃんの食い物への恨みが深い、めっちゃ深い……! これはワイが食べたのは美味しかったってこと、黙っとこ……」
バレたら一体どんな目に合わされるかわかったものではない。
相棒の可愛いワガママを聞く度量はあるつもりだが、怒り心頭の晴夜はとてもとても怖いので、なんとか穏便に済ませたい雄鷹であった。
ここはしっかりと全面的に晴夜のフォローをしてポイントを稼いでおくべきだろう。
そう心に決めた雄鷹であったが、残念ながらその小さな独り言は晴夜の耳まで届いていたらしい。
表情には出ないのに、こめかみあたりに浮かんだ怒りマークがさらにひとつ増えた気がするのは気のせいではないだろう。
「――ちょっと黙っていて……いや、この命令はやっぱり無しで。『美味しい普通のケーキを献上してください』、これでいきましょう」
怒りに満ち満ちた晴夜が口の端をあげて行う命令は、ただの命令ではない。
遂行されない前提の、罠のようなユーベルコード。
命令を無視した者には、容赦のない落雷が降り注ぐのだ。
呼び出されたただの戦闘員が美味しいケーキをすぐさま献上できるわけもなく、晴夜の怒りをそのまま表しているかのような雷によって次々と戦闘員が消えていく。
「ほらほら組織員、ハレちゃんの二撃目が来る前に美味しいスイーツ献上頼むでっ!」
雄鷹もまた愛用のダガーをキンセンカの花びらに変えて晴夜の落雷が撃ち漏らした敵を潰して周り、フォローはバッチリ、ワイってめっちゃ良いお兄ちゃん! と自画自賛していたのだが。
「――この命令は組織員に限らずユタカさんにも言っているので、よろしくどうぞ」
良いお兄ちゃんっぷりへの慢心は、晴夜の一言により砕け散った。
「……ん!? えっ、ワイもなん!?」
「あたりまえです。おっさんが食べたケーキは美味しかったとか許せませんので、罰としてこの晴夜が満足するまでケーキを献上させてあげます」
「ハレちゃんの地獄耳! イケズ!」
「自業自得では? ユタカさんの食べた美味しいケーキの百倍は貢いで貰わないと割りに合いません」
「割合高ッ!?」
雄鷹と晴夜による、気心知れた二人の愉快なやりとりは続いていたが、一応まだ女幹部は生きていた。
巨大化獣は倒され、戦闘員も倒され、身を守るものもなくなった、割とボロボロでな女幹部――。
その間近に迫る者がある。
戦闘員を撃つ晴夜と雄鷹の攻撃を隠れ蓑に、そっと近づいていたのはセツナだ。
かなり愉快な敵だったにも関わらず、油断しなかったセツナは流石といえよう。
二人による賑やかさと戦闘員が倒れていく騒ぎに紛れて女幹部に近づいただけでなく、攻撃への布石も全て済ませていただのだから。
「ケーキにはロウソクを立ててお祝いしないとね。灯りはあるかい? ――ないなら此方で用意しよう」
「!? これは……いつの間に!?」
気が付けば、女幹部は狐火に囲まれていた。
まるで彼女自身をバースデーケーキに見立てたように、取り囲む灯火は円を描いている。
「ええい、邪魔だよ! もう火はたくさんだ!」
最初に思いきり火矢で焦がされたからだろうか。女幹部は忌々しげに灯火を振り払おうとするが、その度に灯火は意志を持つかのようにひょいと動いて避けてしまう。
かといってすぐに燃やそうとするわけでもなく、ならばと攻撃をしかければ避けていく。
そうして女幹部が苛々と灯火と格闘しているところへ近づくと、セツナは手にした鎌でもって斬りかかった。
「ぎゃーっ!! なんなんだい、あんた! うっとうしいやつだね!」
剣を片手に応戦してくる女幹部だが、周囲を灯火に囲まれ、それを避けたり逃れようとすれば鎌に襲われ、なかなか思うように剣が振るえない。
既に灯火で周囲を囲い終わったセツナは、ここまで仕込みが終われば、あとはゆっくりと料理するのみといったところ。
油断はしないながらも、落ち着いて一手一手を詰めていくように鎌を振るい、灯火を操る。
突き出された剣を鎌で受け、弾き。
身じろぎ、後退しようとしたところを灯火で牽制し、動きを狭めて。
決してセツナから目を離せないように翻弄した。
「ええい、まだるっこしい!」
じわじわと消耗させられることに業を煮やしたのか、女幹部はセツナの鎌がわずか下がった瞬間を狙ってやぶれかぶれの一撃を放ってくる。
己の傷も厭わない捨て身のような渾身の一撃――。
「そうくると思いました」
だがそれもまた、セツナの策のうち。
「なに
……!?」
周囲を取り囲んでいた筈の灯火の幾つかはいつの間にか姿を消し――否、全ては背後に漂うそれに集っていた。
前へと剣を突き刺す動きをとっていた無防備な背中に、一塊となり威力を増した灯火が食らいつく。
「ふふふ、火は一気に吹き消さないとねえ……」
口元に笑みさえ浮かべて、セツナは一塊となった灯火ごと、女幹部の命の灯火を吹き消し、狩りとったのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
第3章 日常
『スイーツ・バイキング』
|
POW : とにかく色々たくさん食べる
SPD : スピードを生かして、人気スイーツを素早く奪取
WIZ : 一品一品うんちくを語りながら味わう
|
●
こうして悪は滅び、ケーキバイキングの時は訪れた!
チラシの案内通りに向かった先にあったのは、古風な洋館をイメージして作られた瀟洒なカフェだ。
開かれた門は複雑な形を描く細い鉄柵。壁の一部を蔦が覆い、様々な低木や花が色を添える庭が見える。
オープンカフェスペースも備えているらしく、小さな庭には幾つかの白いテーブルと椅子が並べられていた。
店内にもアンティーク調の木製の椅子とテーブルが並び、お茶がポットで運ばれているのが見てとれる。
店の一部に設けられたバイキングスペースには色とりどりのフルーツとスイーツが並び、訪れた客の目を楽しませていた。
主だったジュースや珈琲はバイキングスペースで自由にとることができ、本格的な紅茶やハーブティーを楽しみたい者は各自注文することでポットによる提供を受けられるらしい。
季節柄かフルーツは苺や柑橘系が多いものの、様々なものが用意されているようだ。
スイーツもフルーツをふんだんに使ったタルトやパイ、ケーキにミニパフェ、焼き菓子が並び、客達はどれを食べようかと幸せな悩みに賑やかな声をあげている。
歯医者でケーキを食べるのはよろしくないが、ここはスイーツ・バイキング。
今だけは虫歯のことも、フトルンジャーとかいう悲しいケーキの名前のことも忘れて、目の前のスイーツを食べまくろうではないか。
城田・紗希
【POW】ケーキが消えた恨みの分も、しっかり食べるよ!
あ、ちょっと遠いけど美味しそうなケーキ発見(範囲攻撃ならぬ範囲探索)
あっちは新作かな?(第六感、残像、逃げ足…を無意識下で使って高速回収)
……ちょっと取りすぎた気もするけど、運動(戦闘とケーキ回収)したから、プラマイゼロだよね!
紅茶は砂糖入れなければカロリーゼロだし!
●
待ちに待ったといえるケーキタイム。
ケーキが消えた恨みの分までしっかり食べようという決意を抱いた紗希は、これまでの人生で培ったあらゆる能力を駆使し、スイーツバイキングへ挑んでいた。
「あ。ちょっと遠いけど美味しそうなケーキを発見!」
身に染みついた、広範囲を攻撃するための視野の広さを有効活用して店内のスイーツをあまさずチェック。
すかさず手元の皿に確保すると、次なる獲物へと目を凝らす。
「あっちは新作かなっ?」
キュピーンと冴え渡る勘と光る眼。ケーキの前に群がる他の客をものともせず、静かに、しかし素早く近づき次々と気になるケーキをしっかり確保して、紗希は意気揚々と席に戻った。
テーブルの上には、こんもりと隙間無く乗せられた皿――が、2つ。
「……ちょっと取り過ぎた気もするけど、運動したから、プラマイゼロだよね! 紅茶は砂糖入れなければカロリーゼロだし!」
運動と書いて、戦闘とケーキ回収と読む。
そう。後の胃袋とか虫歯とかカロリーのことは今は考えない。
足りなければ戦えばいいのだ。
そんな論理で己を納得させると、紗希はさっそくとってきたケーキをひとくち頬張る。
下の生地が見えないほどたっぷりの苺がのったタルトは、震えるほど美味しい。
瑞々しく真っ赤な苺はタルトの底に敷かれたカスタードクリームの甘さにまったく負けないし、それどころか噛むと溢れ出す果汁とクリームの相性は抜群だ。
なるほどフルーツが美味しいと評判なのも頷ける味である。
ひとつめを食べ終わる頃には注文した紅茶も届き、カロリーゼロにするために砂糖を入れずに飲んでみたところ、ケーキにちょうど良い重めの味わいなのに渋みや苦みが気にならない。
気が付けばあれほどあったケーキも見る間に消えて、手元には残り1つ。
更におかわりと取りに行こうか、紗希はかなり長いこと悩むことになるのだった。
成功
🔵🔵🔴
ビスマス・テルマール
●POW
この案件の後にケーキバイキングもアレかも知れませんけど、折角の機会ですし
何種類ケーキがあるか解りませんが、全部制覇しちゃいましょうか。
本格的なハーブティーも頂けると言う事で、それ等も頂きながら。
勿論『大食い』を活用しつつ
あわよくば、制覇するついでに、新しいなめろうのヒントが此処で掴めるなら、幸いですが……スイーツのなめろう……スイーツのなめろう。
バナナを蜂蜜味噌でなめろうにして、ケーキのスポンジにサンドするとか?
或はドーナツ生地に混ぜて揚げドーナツにするとか……味噌を使ったドーナツはありますし
食べてる中で、時々不意にそんな事を考えつつ
※アドリブ、他参加者との絡み掛け合い大歓迎
●
虫歯の子供にケーキを食べさせるのを阻止した後でスイーツバイキング。
少しばかり背徳的な気がしないでもないが、折角の機会なので楽しもうと決めたビスマスが目指すのは全種制覇だ。
「あわよくば、制覇するついでに、新しいなめろうのヒントが此処で掴めるなら、幸いですが……」
スイーツのなめろう――相性の悪そうな組合せに見えるが、バナナとなめろうは意外と悪くないのだから、何かしら道はあるはずだとヒントを探してひとつひとつじっくりとケーキをいただくビスマス。
お供に選んだのはお店お勧めのハーブティーだ。
レモンマートルを中心にしたオリジナルブレンドだというお茶は、爽やかな香りと少しの酸味がケーキの甘さをちょうどリセットしてくれる。
バナナとチョコレートのケーキを食べながら考えるのは、やはりハワイアンなめろうを基礎としてバナナが無難だろうかということ。
オーソドックスな苺のショートケーキを食べては、スポンジでサンドする方法を考え。
梅ジャムのババロアを食べては、和の素材とスイーツの親和性について考え。
「バナナを蜂蜜味噌でなめろうにして、ケーキのスポンジにサンドするとか?」
味わいながらも、あくなきなめろうへの探求を怠らない姿勢はさすがと言わざるを得ない。
「或いはドーナツ生地に混ぜて揚げドーナツにするとか……味噌を使ったドーナツはありますし」
鯵も鯖もフライが美味しいのだ。油で揚げてダメなことはないだろう。
パウンドケーキのような焼き菓子に混ぜ込むという手もある。
ルバーブのタルトや、紅芋のケーキ、菜の花の蒸しパン、杏とナッツのクッキーなど、和を感じさせるスイーツも多く、ビスマスはそれぞれの味や食感をしっかりと記憶していった。
「ごちそうさまでした」
全種を制覇し終えたビスマスは満足そうに両手を合わせたが、果たしてスイーツなめろうの行方はいかに――?
成功
🔵🔵🔴
テオドア・サリヴァン
「美味しそうなケーキがいっぱいだな」
疲れた体に糖分は良いからな。ゆっくりと食べるとするか。
俺は甘いものにはあまり詳しくはないからな…とりあえず人気がありそうなものからいくつか選んで食べるとするか…
「うん、美味しいな。これはとても良い。ちょうど良い甘さだ」
なんか贅沢だな。この店にはまた行ってみたいな。今度は完全にプライベートでな。
●
自由に手にとれるようにテーブルに並べられたスイーツたちは、どれも輝くように美しい。
より美味しそうに見せるためか、スイーツの載せられた皿やトレイの周りのディスプレイも凝っていた。
「美味しそうなケーキがいっぱいだな」
感嘆したように呟いて、テオドアはたくさんのケーキを見て回る。
疲れた体に糖分は良いからと寄ってみたけれど、あまり甘いものに詳しくはない。
どれも美味しそうに見えるだけに、こうもたくさんあると何を選んでいいのかサッパリだ。
一通り見て回った後でこれは選ぶのも大変だと悟ったテオドアは、店員から人気の高いケーキを教えてもらい、その中から気になったいくつかを食べてみることにする。
幸い、スイーツ・バイキングだけあってひとつひとつのサイズが小ぶりなため、それほど苦労せず食べられそうだ。
「うん、美味しいな。これはとても良い。ちょうど良い甘さだ」
ゆっくりと味わうように食べていたテオドアの相好が、こころなしか緩む。
選んだのは、今が旬の柑橘類をいくつか使ったヨーグルト風味のムースケーキ。
甘い物が特別好きでない男性にも食べやすいと評判だと聞いた品だ。
口当たりも軽く、甘さもすっきりとしていてくどくなく、食べた後にはほのかな酸味と柑橘の香りが口に残る。
木々に囲まれた庭の中、屋外で緑や花を眺めながら美味しいケーキをいただく。
「なんか、贅沢だな」
ほうと零れる溜息は、呆れではなく心地良い満足からでたものか。
とてもとても残念すぎる敵と戦った後とは思えない心地である。
賑わっていても騒がしくはない落ち着いた空気が漂う瀟洒な店で、寛ぎながら美味しいものを味わうというのは、なんとも贅沢な心地になるものだ。
「この店にはまた来てみたいな」
今度は完全なプライベートで。
そんな言葉がこぼれでたテオドアの口元には、かすかな笑みの形が広がっていた。
成功
🔵🔵🔴
柊・雄鷹
◎【f00145】
ほらほらハレちゃん、拗ねてる場合じゃないで!
ケーキ食べ放題や!!
ワイと一緒にご飯やなんて、ガチャでSSR級にレアやでー
前世での徳を、ここぞとばかりに使ったな!!
遠慮なく咽び泣いて良ぇんやでっ
しゃーない、ドリンクくらいはワイが淹れてきたろ
えーっと、お子ちゃまには何が良ぇかな…オレンジで良ぇか!ワイ珈琲!
やっぱり王道のショートケーキは外せんな
あとはチョコレートケーキに、ストロベリータルトに…
お?チーズケーキの上にフルーツが乗ってるとか…何それ素晴らしすぎん?
ハレちゃん、食べ方や気にせんと、食べたいもの食べたら良ぇんやで
ってことでミルクレープ、ワイの分も取ってきてなっ!
夏目・晴夜
◎【f00985】
スイーツが食べられるのは万々歳ですが
おっさんとスイーツバイキングとか拷問にも似たものを感じます
いったい前世でどれほどの悪事に手を染めてきたら
おっさんと二人でスイーツバイキングに行くという業を背負う事になるのでしょうね
ドリンクを淹れてきて下さるだなんて、奴隷みたいで立派ですよ
オレンジジュース……いや、まあ、悪くないチョイスです
私もショートケーキと――うわ、ストロベリータルト食べたいです…!
私はしっかり噛めるのが好きなのでパイとかタルトが推しメンです
ミルクレープやミルフィーユも好きですが、あれは食べ方が難しくて
へえ、ユタカさんのくせに良い事を仰いますね
いや取ってきてあげませんけど
●
ケーキの並ぶ大きなテーブルを前に、雄鷹は目を輝かせながら身振りも交えて熱烈にて相棒を呼ぶ。
「ほらほらハレちゃん、拗ねてる場合じゃないで! ケーキ食べ放題や!!」
応える晴夜といえば浮かない顔で、なんともわざとらしく溜息をつくところ。
「スイーツが食べられるのは万々歳ですが、おっさんとスイーツバイキングとか拷問にも似たものを感じます。いったい前世でどれほどの悪事に手を染めてきたら、おっさんと二人でスイーツバイキングに行くという業を背負う事になるのでしょうね……」
頭を左右に振って嘆いてまでみせるのだから流石としか言えない。
「ははは、ワイと一緒にご飯やなんて、ガチャでSSR級にレアやでー! 前世での徳を、ここぞとばかりに使ったな!! 遠慮なく咽び泣いて良ぇんやでっ」
そんな物言いも本気ではあれ本心でないと知っているからなのか慣れているからなのか。雄鷹は大して堪えた様子もなく、ぐいぐいと晴夜を引っ張ってケーキのところへ連れていった。
「やっぱり王道のショートケーキは外せんなっ」
雄鷹が真っ先に選んだのは定番のもの。それからチョコレートケーキやストロベリータルトなどを皿にとっていく。
「お? チーズケーキの上にフルーツが乗ってるとか……何それ素晴らしすぎん?」
神か? と感動しながら手を伸ばしたのは、春の柑橘類に苺を添えた彩り鮮やかなレアチーズケーキ。
「私もショートケーキと――うわ、ストロベリータルト食べたいです……!」
ケーキを選んでいた晴夜の動かない表情の中で、目がパァっと輝いたように見えた。
雄鷹ほどわかりやすくないとしても、中に宿る豊かな感情はこうして目や纏う空気に現れる。
口にした時には、だと思ったと言うように晴夜の皿には雄鷹の手によってストロベリータルトがのっていた。
けれどもそれすら当たり前のものとして晴夜は特に礼を言うことはなく、タルトへの思いを語る。
「私はしっかり噛めるのが好きなので、パイとかタルトが推しメンです。ミルクレープやミルフィーユも好きですが、あれは食べ方が難しくて……」
どちらも綺麗に食べることが難しいケーキの代表格を出して、少し眉を寄せる晴夜。
「ハレちゃん、食べ方や気にせんと、食べたいもの食べたら良ぇんやで!」
そんな心配を吹き飛ばすのはやはり雄鷹だ。
慰めるような言い方でなく、自身の信念を口にするような力強さに晴夜の眉が元に戻る。
「ってことでミルクレープ、ワイの分も取ってきてなっ!」
「……へえ、ユタカさんのくせに良い事を仰いますね。いや取ってきてあげませんけど」
ちょっと良いこと言ったと思えばするこれだ。とでも言うような冷めた目で雄鷹を見て、晴夜はさっさと自分の分のミルクレープを確保して席に戻った。
なにしろスイーツバイキングというものの時間は有限なので。
おっさんの妄言に付き合っている暇はありません。
そう言い残していってしまった晴夜を見送った雄鷹はというと、めげずに自分のミルクレープとついでにミルフィーユを2つばかりとって、ドリンクコーナーへ向かう。
ドリンクくらいはおにーちゃんな自分が淹れてやろうという気遣いだ。
「えーっと、お子ちゃまには何が良ぇかな……オレンジで良ぇか! ワイ珈琲!」
いや、単におにーちゃんぶりたいだけかもしれないが。
二人分のドリンクを持って席へ帰れば、晴夜も珍しく機嫌良さそうに褒めてくれる。
「おや、ユタカさん。ドリンクを淹れてきて下さるだなんて、奴隷みたいで立派ですよ」
きっと褒めてくれたのだろう、たぶん。きっと。
「オレンジジュース……いや、まあ、悪くないチョイスです」
ふっと和む目をみれば、喜んでくれたことは明らかなのだし。
珈琲とオレンジジュースで乾杯をすれば、あとは美味しいケーキと楽しい会話に満ちた幸せタイムの始まりだ。
気兼ねない者同士、多少食べ方が汚くったってご愛敬。
口の端にクリームがついたって、パイの欠片が相手の顔に飛んだって、全ては話の種と思い出のひとつになるのだから。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
宙夢・拓未
POW
スイーツバイキングと聞いて飛んできたぜ!
まず、ミントティーを注文しておこう
口の中をスッキリさせることで、飽きずに甘い物を食べ続けられるって寸法だ
さて、肝心のスイーツは……目移りするな
ストロベリーパイにオレンジタルト、宇治抹茶のシフォンケーキ
少しずつ、色んな種類をたくさん取り分けていこう
あとは……ん? マカロンがあるじゃないか!
俺、好きなんだよな
でも高いから、普段はたくさん食べられないが……
マカロンが食べ放題……? ここは天国か?
取り分けた各種ケーキに、山盛りマカロン
全部綺麗に食べて、「ごちそうさま」と手を合わせる
戦いの日々の合間には、こんな幸せな時があっても、いいよな
●
スイーツ・バイキングときいて飛んできた宙夢・拓未(未知の運び手・f03032)は、先にミントティーを注文してからケーキを選ぶために席を立つ。
口の中をスッキリとさせてくれるミントティーがあれば、きっと飽きずに甘い物を食べ続けられるだろうと思ってのことだ。
「さて、肝心のスイーツは……と。うーん、これは目移りするな」
悩みながらも、たくさんあるケーキの中から幾つかを選んでいく。
「あとは……ん?」
ストロベリーパイにオレンジのタルト、宇治抹茶のシフォンケーキ。
バランスよく少しずつとっていた拓未であったが、とある一角へ顔を向けた途端、その動きが一瞬止まった。
「マカロンがあるじゃないか!」
そう。拓未の視線を引き付けたのは、色とりどりのマカロンである。
様々なマカロンが綺麗にツリー状に積まれているプレートが、しかも複数。
「マカロンが食べ放題……? ここは天国か……?」
マカロンは大好きだが、なにしろ値段が高いため普段はそう幾つも食べられるものでもない。
それがここでは、食べ放題なのだ!
感動に打ち震えながら、拓未は手にした皿に丁寧にマカロンを山と盛り付けていく。
味も多彩だ。
キャラメル、いちご、チョコレートといった定番から、きなこといった変わり種まで。
全種類をひとつずつ。好きな味は2つずつとって席に戻った拓未は、ミントティーと共にゆっくりと味わって食べていく。
マカロンの独特な柔らかな食感を楽しみ、口に広がる風味を楽しむ。
決してガツガツと食べているわけではないのに、たくさんあったケーキも山盛りになっていたマカロンも、綺麗に消えていく。
「ごちそうさま」
完食と共に丁寧に手を合わせてそう口にすれば、腹が満ちる以上の満足感が広がっていった。
「戦いの日々の合間には、こんな幸せな時があっても、いいよな」
大好きなマカロンを思うさま食べまくる日は、次なる戦いへの活力にだってきっと役立つはずだ。
成功
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セツナ・クラルス
ふふ、実はこれが楽しみで依頼に勤しんだといっても言い過ぎではないかもね?
任務も無事に終えたことだし、憂いなく楽しむことにしよう
バイキング形式だからといって
あれもこれも欲張るのはスマートじゃないかな
チョコレートケーキ
フルーツタルト
チーズケーキは必須として
あとは一口サイズの焼き菓子を横に配置させよう
配置するケーキの角度や、
菓子の色合いも調整して
いかにもなケーキプレートを作成
砂糖を入れないミルクティも準備万端
さあ、至福の時間を堪能しよう
ところで焼き菓子等はお土産として購入可能かな
先程歯医者にいた子供達に渡したいのだが
治療を頑張ったご褒美だよ
と押し付けてしまえば
治療をしない訳にはいかないからねぇ
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セツナはケーキの並ぶテーブルをゆっくりじっくりと見てまわり、手にした皿にひとつひとつ丁寧に載せていく。
バイキング形式となれば、つい欲張ってあれもこれもと取りたくなるものではあるけれど。
せっかく雰囲気の良いカフェでのひとときを、美味しいケーキとお茶と共に過ごせるのだ。
見た目にも拘りつつ、スマートにいきたいというのがセツナのスタイル。
食べるケーキは厳選して、皿への載せ方にも気を配っていた。
チョコレートケーキにフルーツタルト、それからチーズケーキは必須だろう。
3つのケーキをメインとして綺麗に盛り付けたら、多めに残しておいたスペースに一口サイズの焼き菓子をバランスよく幾つかのせる。
最後に、用意されていたフルーツソースとチョコソースで皿に彩りを添えれば完成だ。
ケーキの置き方といい、色合いのバランスといい、まるでパティシェが考え抜いて用意したデザートプレートさながらである。
出来に満足したセツナが席へと戻れば、店員がちょうど暖かなミルクティーを持ってくるところ。
砂糖を入れないミルクティーと共に、会心の出来のプレートを眺めれば、完璧なティータイムだ。
(「ふふ、実はこれが楽しみで依頼に勤しんだといっても言い過ぎではないかもね?」)
任務も無事に終えたのだ。なんの憂いも遠慮もなく楽しむことにして、セツナは至福の時間を堪能する。
見目も美しいプレートからいただくケーキはまた格別で、甘さのないミルクティーはケーキの甘さを消しつつもコクのある味わいを与えてくれた。
選び抜いたスイーツによる美味しく贅沢な時間を過ごしたセツナは、最後に焼き菓子をいくつかお土産として購入する。
脳裏に浮かぶのは、歯医者に来ていた子供達だ。
治療を頑張ったご褒美だといって渡してあげたら、あの子たちも治療をしないわけにもいかないだろう。
子供たちはどんな顔をするだろうか。
ふふ、といたずらめいた笑みを浮かべたセツナは、焼き菓子の入った袋を片手に店を出て歩いていくのだった。
成功
🔵🔵🔴