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にゃんにゃんだらけのお掃除大作戦！

作者：木乃

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●けっこう毛だらけ、猫だらけ
　ダンジョン内の水路は魚が行き交い、要所要所はお茶会場の様相を呈している。
　そんな水路で網をひきながら進む船が一隻。
「にゃぁ～！　お魚いっぱいにゃっ」
　にゃんこ達はおそろいの水兵ルック。
　水揚げした川魚をみてニャンニャンと大合唱……なにこれかわいい。
「おさかにゃパーティーやったー！」
「ボスのところに納品するにゃ～、報酬もたっぷりもらえるかにゃ？」
　どんぶらこっこ～。どんぶらこっこ～。
　セーラーにゃんこは最奥めざして川流れ。
　今日も楽しいお魚パーティー。報酬にニシンを頂こう！
　……ニシンは川にはいないけどね！

●猫の毛だらけでくしゃみが止まらんのですわ
「アルダワ魔法学園から救援要請です。なんでも『ダンジョンから猫の毛が大量に流れ込んできている』そうで……。クシャミが止まらない方も少なからずいるため、学生さんだけで対処出来ていないそうです」
　李・蘭玲（サイボーグのグールドライバー・f07136）は、苦労する学生のことを考えると同情を隠せない様子。
「調査によると、ダンジョン内に『猫型災魔が大量発生しているエリア』がありました。今回は猫型災魔を討伐し、アルダワ魔法学園の清掃活動をお手伝いしてくれる有志を募集しております」
　今回は（色んな意味で）清掃活動をやっていきましょうと状況説明を始めた。

「ダンジョンは森林のように木々が生い茂り、張り巡らされた水路が移動に使われています。その水路に住まう魚たちを狙った災魔が『水兵にゃんこ』です」
　セーラールックのもこもこにゃんこは数隻をまとめたグループで行動しており、収穫した魚はボスへ献上している。
「見た目の愛らしさに気をとられていると、ボートや蒸気銃で攻撃されますからね？　充分注意して当たってください」
　猫の毛に反応するのは学園側だけというが、
「ボスも猫型なのか？」
　猟兵の質問に蘭玲は大きくうなずく。
「ティーパーティーキャットと呼ばれる、パーティ好きな猫型災魔です。どうやら森林内にパーティ会場を点在させ、気分次第で場所を替えているようですね。召喚術や魔術的な攻撃方法が多いので、対処の際はそのあたりを意識すると良いと思います」

　ダンジョン内の整理が終わったら、学園側の清掃活動に。
「いわゆる猫毛を取り除くのが一番です。蒸気機関を搭載した掃除機や普通の掃除機もあるそうですが……そうですね。新作ガジェットや機械を応用する試験を実施するにも良い機会かと」
　学園の校舎を壊さなければ、アルダワ側も容認してくれるだろう。
「花粉でお困りの方ならこの騒動にも理解できてしまうと思います……ダンジョン攻略の増進と思ってキレイにしましょう」
　にゃんにゃんだらけのお掃除部隊――いざ出陣！

第1章 集団戦 『水兵にゃんこ』

POW   :    水兵にゃんこのボクの船～～クラッシュか？ 自身が装備する【七曲りするシップ（船） 】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。 SPD   :    ご主人様からもらった前払いのお魚なのにゃ 戦闘中に食べた【前払いの 魚】の量と質に応じて【魚の漢字に隠された言葉の特性を取り込み】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。 WIZ   :    手旗戦闘指令 【 手旗信号】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【対象の近くにいる仲間が指示通りの方法】で攻撃する。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

「猫ちゃん！　猫ちゃん！」
「モフモフしたいです、モフモフ、モフモフ……！」
　やはりビジュアルだけならトップクラスの危険度か。
　水兵にゃんこは舌を鳴らすダンピール系女子、城島・冬青（六百六十九番目の宿木・f00669）と狼尻尾を揺らす柚々・奈七音（終焉を忌む者・f14778）の二人をいともたやすく魅了してしまった。
　だが『侮られた』と思った誇り高きマリーンズにしてみれば、由々しき事態に他ならぬ。こんなに鋭い爪と大きな瞳、統率のとれた動きに驚きもしないなんて！
「にゃ、にゃめるにゃあ～！　侵入者は爪とぎの刑だにゃっ、ボロボロにして追い返すにゃあ！」
　すこすこぷんぷんと怒る姿も愛らしいが、一斉に蒸気銃を向けられては二人も和んでいる場合ではない。

　「ううっ、災魔である限り、倒さなくてはいけないんですよね……モフモフにゃんこさん、ごめんなさいっ」
　心底、残念がる奈七音。しかしアルダワ魔法学園の一部に甚大な被害を及ぼしていることに違いない。それはそれ、これはこれ！
　奈七音は身の丈3mはあるライオンを呼び出し、ボートに突撃する。
　一隻沈めてはもう一隻。驚いたにゃんこ達は隣のボートへ四散し、隣のボートからは銃撃による援護。
　ライオンと生命力を共有する奈七音を、少しずつ消耗させていく。
　――奈七音が注目を集めたことで、冬青は木々に身を隠すことが容易となった。
「あーあ、無害なら家に連れて帰りたかったんだけどなぁ！」
　どれだけ可愛くともオブリビオン。放置すればアルダワ魔法学園が滅びてしまう。
　心を鬼にして花髑髏の鯉口を切り、冬青は水兵にゃんこの背後に迫る。
「――切り裂け、疾風！！」
　愛刀の先を向けると、放たれた風圧で木の葉が細切れとなる。
　背後からの不意打ちに「みゃぁあ～！？」と困惑の叫びが広がった。
「みゃあ！　あっちにもいるにゃあっ！？」
　手旗信号で『陸地にも警戒せよ』とサインが出されると、冬青にも銃弾の雨あられが見舞われだす。
「あーん！　猫を痛めつけるとか心が痛むよ〜！！」
　木々を遮蔽物にして銃弾から逃れる、冬青の悲痛な叫びがこだますのだった……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

（「ふむ、水路ですか……もしかしたら、一網打尽にできるでしょうか？」）
　両眼を眼帯で隠すニレッド・アロウン（水晶鋏の似非天使・f09465）は翼を揺らし、水兵猫たちに意識を集中させる。
　魔力を増幅させていくニレッドの脇で、琥珀川・れに（男装の麗少女 レニー・f00693）は苦笑交じりの笑みを浮かべる。
「猫は水が苦手というのにがんばるね」
「ただのねこじゃにゃ～い！　ボート部隊、とつげきぃ～っ！！」
　号令をかけた水兵にゃんこがボートを複製すると、れにに向かって総攻撃にむかう。
　川の流れを無視した七曲がりの軌道を目にし、れにもピクリと眉を動かす。
「そっちがそれなら僕にも考えがある――さあ、これでキミとダンスを踊ろう」
　途端、水面がれにを護るように壁を作り、複製されたシップは次々に転覆していく。
　船は水に対して浮力を働かせる。外部の影響を受けながら応戦しようものなら、別の影響を受けてしまう危険性は充分ある――例えば、水の魔力を帯びたれにが操作したように。

「にゃわわっ！　お水がうごいたっ！？」
「これやると翼の色が酷いことになるので嫌なんですが……仕方ないですね」
　動揺が広がったのを好機と見て、ニレッドは魔力を隅々まで行き渡らせた翼を広げる。
　極彩色を放つ羽はひときわ輝いてみせると、れにの頭上を飛び越え、百の羽矢が舞い落ちる。
「――くたばれ」
　ニレッドの辛辣な一言を受けたように、羽は不規則な動きで船に落着する。
　あるところは凍り、あるところは蒸気が湧き、あるところは雷と閃光で視界が奪われる。
「おめめがいたいにゃ～」「ふぇ～ん！　動きにくいにゃああ～！？」
　混乱を極めた猫たちは川に落ち、そのまま溺れる者達も。
　川岸まで逃げ果せようとした水兵にゃんこもチラホラ出るが、そこを逃さぬと。
　的確に撃ち抜く一射で水底に落とされていた。

　――森に身を潜めていたノイシュ・ユコスティア（風の旅人・f12684）は、矢面に視線を注ぎ、ずぶ濡れの災魔に一矢を放つ。
（「服が濡れたおかげで動きづらいようだし、10秒という千里眼撃ちの制約もクリアできる」）
　ロングボウに新たな矢を番え、ノイシュは再び射撃体勢に。
　自慢の毛並みもしょんぼりさんな水兵にゃんこも、混乱した状況で警戒する余裕がないらしい。
　再び胸元めがけて矢を放ち、セーラー服を貫いて川底へ……。
「リスクが高すぎると思って距離をとったはいいけど、触れる機会は来なさそうだね」
　僅かに残念がるノイシュだが、冷静な仕事ぶりで水兵にゃんこを仕留めていく。

「ぼ、ぼすぅ……ぼくたち、ここまでにゃ……にゃぼ、ぼぼぼ………」
　最後の水兵にゃんこが沈んでいく。
　海の藻屑ならぬ川底の苔となるだろう災魔に思うところがない訳ではないが、わりと学園サイドの生徒（一部）には死活問題なのだ。
　猟兵達は残党がいないことを確かめると、点在するパーティー会場めざして再び移動を開始する。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

第2章 ボス戦 『ティーパーティーキャット』

POW   :    ニャんでもニャい日をいわおうじゃニャいか 【宙に浮かぶ瞳から死の視線 】を向けた対象に、【闇の輝き】でダメージを与える。命中率が高い。 SPD   :    赤のクイーンの使い レベル×5体の、小型の戦闘用【 トランプ兵 】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。 WIZ   :    死んでもダンスを踊りましょう 【 お茶会に招待された者達 】の霊を召喚する。これは【魔法】や【剣技】で攻撃する能力を持つ。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

●パーティー大好き親玉にゃんこ
　いくつかのお茶会場を抜けて、最奥までやってきた。
　会場を覗きこむと、大きなティーカップから白い毛並みがひょっこり。
　金と水色のゴージャスなカップは、片手でつまめるサイズではない。
　お茶会好きのボスキャットはここで一服中のようだ。
「……今日の茶会に客を招いした覚えはにゃいのだが」
　ピエロのようなメイクを施すティーパーティーキャットは、突然の訪問者にも優雅に応じる。
　――だが、尻尾を振るたびに抜け落ちる猫毛。
　あれこそアルダワ魔法学園を襲う、あれそれの元凶！！
　この時期くしゃみが止まらない人なら、なんとなく解るだろう。
　余りある猫ちゃんの可愛さで差し引いても、補いきれぬ身の危険を！！
　しかも実体はオブリビオン……危険性は倍率ドンドン、さらにドン。
「ふぅ、やれやれ。招かれざる客人は、どうしても相手して欲しいようだにゃ」
　億劫そうにカップから顔を出すボス猫。
　虚空に黒い眼球を出現させ、鋭い瞳を怪しく光らせた――！






「わぁぁ……こちらのにゃんこさんもモフモフですねっ！」
　長毛種特有のボリューム感と上品な佇まい。うーんナイスもふもふっ！
　しかし、あれこそ問題の『討伐対象』である。
　思い出した奈七音の狼イヤーはしょんぼりさん。
「うーん。牢獄暮らしに比べればマシですが、その埃っぽいのは……もうちょっと抑えてくれないですか？」
　風の魔力で落ちた猫毛を払うニレッドに、猫は興味なさそうに顔を洗う。
「勝手に入りこんで、にゃんだその態度は？　……来客とて弁える分はあるのでは？」
　毛皮にまぎれたノミのように猟兵達を見返すキャット。
　初めから交渉の余地は期待できなかった上に、いつ学園内へ侵攻を始めるか解らない。

　相手はオブリビオンだ、不安の芽は疾く摘むべし――ノイシュが長弓に矢を番える。
「変なモノをもらう前に、さっさと倒そう！」
　ノイシュの言葉に猟兵達は一斉に飛びかかる。
「作法のにゃっとらん連中にゃ、もてにゃしてやれ！」
　パーティーキャットも四種のスートを描いた兵士を呼び出す。
　パーティー会場は一瞬にして戦場に。テーブルクロスやビロード張りの椅子が宙を舞う。
「うぅ……可哀想だけど、ライオンさんっ！」
　奈七音が再びライオンを召喚し、トランプ兵を掃討すべく突撃させる。
　槍や長剣を構える兵士達に、奈七音のライオンが飛びかかった。
　前足で薙ぎ払い、食らいつき一掃しようと奮闘し、倍以上の数でその身に刃を振り下ろした。
「っ、こ、このくらい……負けませんよ！」
「こっちは任せて！」
　前衛に狙いが集中したことで、発動条件をクリアしたノイシュが超長距離射程の矢を放つ。
　降りしきる矢の雨は全てを払えずとも、道を開くには充分な成果をあげた。
　持ち直した奈七音も痛む体を押し、獅子に攻撃続行を指示を送る。

　その隙に、水路の水をヴェールにしたニレッドが総大将へ肉薄する。
（「あの目玉……おそらく魔術の一種でしょうが」）
　なにかしらの攻撃手段だろう、警戒するに越したことはない。
「む？　無礼者とのグリーティングはお断りにゃっ」
　キャットの頭上を冬する目玉は一斉にニレッドを凝視する。
　死を招く視線は闇色の輝きをまとい、それをニレッドは魔術的防御と水晶鋏で最小限の被害に留めた。
　水晶鋏のネジを外し、双剣状にしたニレッドは光をはじきつつ至近距離へ。
「その目玉、斬り捨てましょうか」
　鮮やかな炎の太刀筋で十字を刻み、目玉はどろりと地べたを汚しつつニレッドは本体へ迫る。
　カップごと器用に間合いを空ける猫だが、そうは問屋が卸さぬとノイシュの一矢が飛ぶ。
「みゃっ、みゃっ……みゃあああああああッッ！？」
　陶器の割れる甲高い音が響き、破片の中を猫でじたばたを慌てふためく。
　突き刺さる破片で血がにじみ、白い毛並みに赤いまだら模様が浮かぶ。
「少しは、本気になってくれたかな？」
「土足で踏み入ったと思えば、にゃんて連中だ……！　もう怒ったからにゃっ！！」
　不意の一撃に髭を逆立て、パーティーキャットは膨大な魔力を解放する。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

　トランプ兵を抑える猟兵の存在もあって、本丸への直接攻撃が叶った。
　ふてぶてしいにゃんこも、また趣ありけり。
　しかし、長い毛がハラハラ落ちる様子に冬青も渋い顔になってしまう。
「アルダワの人たちも困ってるんだからね、可愛いけど容赦しないから！」
　視線が放つ輝きを刃で断ち、隙を伺う冬青。
　同じく渋い顔をするれには、水路の水を魔力で引き揚げていた。
「やれやれ。茶会を開くなら、身だしなみくらい気にした方が良いよ」
　長毛なら毛玉もひどいだろうし、入り込む虫だっているのだから。
　れには魔力で水を巨大な球に変え、自らに随伴させて距離を詰める。
「そんにゃ詭弁で動揺するか、アポイントメントをとりつけてから言うんだにゃ！」
　事前の約束もなしに訪ねる輩がいるか！
　――抗議する猫は新たな魔眼球を呼び出し、れにと冬青に狙いを合わせる。
「うー、近づきたいけど、あの抜けた毛を見てると鼻がムズムズするしぃー……！」
「ならば僕が先手を打とう、君も動きやすくなるハズだ」
　水球を引き連れたれには、水の玉を小分けにして視線の光を屈折させる。

　会場飾りが落下する中でれには水の玉を再び集束し、
「身だしなみが整っていないなら手伝ってあげよう。招かれざるとはいえ、客人の前なのだから！」
　キャットの頭上から水玉を落とした。
　しかし、魔力で操作する水ははじけ飛ばず、スライムのようにドーム状の形を保ったまま。
「ゴベボボボボボ……！？」
　息苦しさに水の中でばたつく猫だが、浮き上がろうにも水気を含む毛皮が重しとなっていた。
　強制着衣遊泳を強いる、爽やかな佇まいにしてえげつない状況の完成。
　しかし、身動きがとれないことで無防備には変わらず。
　尖兵を片づけた猟兵も加わり攻撃が集中していく。
「確かにこれならムズムズしないね。……それじゃあ、花髑髏の本当の姿を見せますね」
　冬青は愛刀の峰に指を滑らせる。
「屍山食らいて実を結び、血河飲み干し咲き誇れ――花髑髏！」
　強烈な欠乏感に歯嚙みする冬青の手元に、漆黒の一太刀。
　見舞うはただ一振り――剣圧による一撃は水を裂き、溺れる猫の大動脈を両断。
「ガハ、アァァ…………――」
　無色の水が血で染まる。
　断末魔と呼ぶにはあまりに短い苦悶の叫びを残し、エリアボスは塵となって消失していく。
　こたびの騒動はこれにて……と言いたいところだが、もうちょっとだけ続くのじゃよ。
　

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

第3章 日常 『掃除の時間』

POW   :    力を使って学園を綺麗にする！ SPD   :    技を活かして学園を綺麗にする！ WIZ   :    知恵を働かせて学園を綺麗にする！ 👑5 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●清潔感はたいせつに
「転校生の皆さ～ん、お疲れ様です～。猫ちゃんで困ってた生徒達も、これで授業に専念できるかと～」
　アルダワの女性教諭がぺこぺこ頭を下げていると、掃除用具を手にした生徒達が騒がしく通り過ぎる。
「後は学園側に舞い込んできた猫っ毛を掃除するだけなのですが……ええ、ええ。なにぶん量が多いので～」
　もし時間があるようなら……先生は申し訳なさそうな様子。
　やはりクシャミやらなにやらの影響で人手が足りていないのだろう。
　ガジェットや他世界の機械。魔法など、使いようによっては作業時間を短縮できるはず。
　清潔な学び舎を取り戻すべく最後の一仕事にとりかかろう！




　箒にちりとり、埃落としのはたきと雑巾。
　水拭き用のモップまで、お掃除セットを前にノイシュとメリナ・ローズベル（紅い花・f13268）は品定めしていた。
「僕たちの戦闘でもだいぶ猫毛が飛んでいたからね……手伝ってくれてありがとう、メリナ」
「私もアルダワ魔法学園の一員だもの、ノイシュの力になれると思って。それに色んな意味で掃除には良い季節よね」
　申し訳ないと眉を垂れるノイシュ。
　金の髪に綻ぶ赤薔薇を揺らし、メリナは楚々とした微笑を返す。
　……実は掃除は得意と言えないメリナであるものの、ノイシュはもっと苦手かもしれない。
（「女子として、しっかり所を見せないと！」）
「しかし、どうやってここまで飛んできたんだろう？」
　意気込むメリナに気づかぬノイシュは原因を一考してみるものの、そもそも迷宮内の水や、森林が生成されていること自体が説明できない。
　考えても詮ないと、頭を切り替えたノイシュは掃除用具を手にしてメリナと移動する。

　猫の毛は細い分、どこの隙間にも入り込む。
　迷宮入り口に近い教室を覗くと、やはりチラホラと白い毛が。
「うふふ、さっきレポート提出を条件に蒸気学科から借りたのよね」
　というメリナの手には、蒸気式お掃除ガジェット・ケットシーモデル。
　スチームエンジンを搭載しているものの、低騒音で動力源は外燃機関でケーブル要らず。教室の隅々まで稼働できる優れもの……だそうな。
「よく出来ているなぁ。うっかり壊しそうで怖いし、僕は慣れたほうでやらせてもらうよ」
　こういうときこそ適材適所。
　ノイシュは棚の上や天上に近いところにはたき掛け。ポンポンと巻き上げれば、出るわ出るわ……。
「上からホコリを落とせば、後は箒で集めて終わるからね」
「そういうやり方もあるのね？　確かに床を綺麗にしてからでは二度手間だわ」
　スピーディーにこなすノイシュの近くに落ちるホコリや猫の毛を、メリナはガジェットを操作して吸い上げていき――そこに思わぬ誤算がひとつ。
（「やだ、上から下から猫毛が舞って……っ！」）
「――っくしゅ、くちゅん！　……ふぇくしっ！」
「風邪かい？　ストールなら貸すけど」
「風邪じゃないわ、くしゅっ！　か、花粉症なのっ」
　この時期は猫の毛以上の猛威を奮うのだと、メリナはくしゃみをもうひとつ。
　そんなことはお構いなしとばかりに、お掃除ロボはぐいぐい吸い上げていく。
「あー……それはつらそうだね、こっちは早く終わらせて水拭きしようか」
　そうと決まればサクッと終わらせるべし。
　メリナのくしゃみと駆動音が聞こえる教室は、埃が綺麗さっぱり取り除かれていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　廊下もてんやわんやしつつお掃除が進行する中。
「はぁぁ、面倒ですね……面倒です」
　乗りかかった船ですし、と気まぐれで乗り出してみたニレッドだが……。
　歩きながら風の魔法で猫の毛を集めてチリトリにインする。その簡単なお仕事にも飽きてきた模様。
　三角巾や割烹着、マスク・ゴーグル・ゴム手袋で完全★武装する冬青とは真反対である。
「猫の毛一本逃しません！」
　地道に箒をかけて集めた毛をゴミ袋に入れては、階段などの水拭きも入念に。
「あ、こちらのロッカー裏もお願いします～！」
　奈七音も怪力を発揮し、冬青や他の魔法学園の生徒達と協力して清掃活動に。
　ガジェット頼りの生徒達にしてみれば、書庫など狭いスペースでツールを使えない場面も多く、奈七音の支援は大いに役立っていた。

「……ふぅ、猫の毛って意外と入り込んだり量が多いから、なかなか片付かないね」
　それでもゴミ袋は大分集まっている。
　猟兵の援助に清掃活動へ従事する面々も非常に助かっている模様。
「千里の道も一歩から、コツコツ頑張っていこう！　終わったら学食でご飯もいいよねぇ」
　一仕事終えた後のご飯は格別。ちなみに今日は蒸気仕立てのやわらかビーフシチューとのこと。
　だが――誰もが冬青のように丁寧な掃除を心がけられる訳ではない。
　例えば退屈さが限界に達したニレッドなど、まさにそれで。
（「いちいちこんな細かいことするより、一気に集めて終わらせたい！」）
　とことこ歩いて、毛玉をチリトリに乗せて、さらにゴミ袋に入れる……まさにルーチンワーク！
　こんなの牢獄で雲の流れを観察するのと大差ない。
　周囲を探れば、蒸気学科の生徒がガジェットを前に唸っているではないか。
「うーん、理論上は稼働すると思うんだけど」
「なにをしているのです？」
「実は掃除用のガジェットを試運転しようと思ってさ」
　タルのようなずんぐりむっくりしたフォルムのガジェット。
　二レッドは青年に仔細を聞いてみると、静止物を避けつつゴミを吸い上げる設計なのだとか。
　まさにお手軽お掃除ガジェットツール――これこそ私の求めていたもの！
「ならこれ貸して。悪いようにはしませんから、スイッチはこれですねポチッとな」
「あ、でもちょっと問題があって――！？」
　制止する生徒の言葉を待たず、ガジェットを起動したニレッドはちゃっかりライドオン。
　動き出すお掃除ガジェットはけたたましく廊下を滑走していく。

「どうしたんですか、それ？」
　猫っ毛の詰まった袋をぽふぽふモフモフしていた奈七音に「少し疲れたので」と返しつつ、ニレッドはシュッポシュッポとお掃除再開。
「はぁ、あの大きさは羊さんくらいでしょうか……こっちも中身がないと少し物足りません」
　ぬくぬくあってのモフモフです、と奈七音は改めて動物たちの魅力に気づく。
「よーし。モフモフさん達の元へ早く帰るためにも、頑張って終わらせないとですっ」
　気合いの握りこぶしを作った奈七音はゴミ出しへ向かう途中、頭を抱えた青年を見つける――先ほどニレッドに技術提供（？）した生徒だ。
「どうかしたんですか？」
「さっき試作ガジェットを転校生の一人に持ってかれちゃって……」
　――未完成の試作装置を搭載していると知らず持って行ってしまった、と。
「た、大変です！　どんな方か解りますか！？」
　慌てる奈七音だが、その所在は冬青とニレッドの悲鳴と荒ぶるスチームエンジンが知らせた。
　奈七音が窓から身を乗り出すと、中庭で荒ぶる猛牛のごときガジェットに振り回されるニレッドの姿が！
「ちょ、ちょちょちょ、ちょっとなにこれぇ！　止ま、止まって！？　止まってくださーーーい！！」
「ニレッドさん落ち着いて！　キャッチしますから、そのまま跳んでください！」
「そそそそれどころじゃないですからあああああああああああああああっ！？！？」
　ぎゅるんぎゅるん高速回転するガジェットは黒煙を巻き上げ――熱暴走は臨界点を迎える。
　――――ドゴオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォ…………ッッ！
「「ニレッドさあああああん！？」」
　轟く爆音は魔法学園中に響き、天高く吹き飛ばされたニレッドはとっさに風の魔力で防ぎ難を逃れるのだった。
　本日の教訓は『急いては事をし損じる』
　慌てたり、苛立って行動を起こすと、かえって失敗しやすくなるので気をつけようね！

　大騒動を巻き起こしつつ波乱の猫の毛騒動は幕を下ろす。
　魔法学園もスッキリ綺麗になって、快適な学園生活が戻ってきた。
　春は短し。されど猫ちゃん魅惑の可愛さとモフモフには、ご注意されたし。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年03月14日