【悪機襲来】キジマ・ディフェンス
●注意
当依頼は、PBWアライアンス『コイネガウ』からのシナリオです。
PBWアライアンス『コイネガウ』の詳細を以下でご確認お願いします。
公式サイト:(https://koinegau.net/)
公式総合旅団:(https://tw6.jp/club?club_id=4737)
●
希島の首都「
希之都」が存在する商業地区。近未来的なビルが建ち並ぶ街並みが、今、炎の海に包まれていた。
突如として希島の自然地区に出現した異界との扉――オブリビオン・ホール。そこから現れた謎のオブリビオンマシン軍団は、瞬く間に自然地区全体を制圧。さらに希島の各地区を同時に攻撃し始めたのだ。
希島の商業地区中心にそびえ立つ司令塔。その最上階に存在するオペレーションルームに、オペレータたちの声が響き渡る。
「オブリビオンマシン軍団、商業地区の隔壁を突破! 防衛軍の量産型キャバリア部隊が対処していますが――食い止めきれません!」
「商業地区の住民、司令塔への収容急げ!」
「ええい、希島未来科学研究所からの増援はまだか!?」
喧騒に包まれるオペレーションルームの中央――台座のような場所で無数のケーブルに接続されて立つキジマ・プロトコル(希島国司令塔の冷徹な統括責任者・f38166)のスピーカーから静かな声が流れる。
『オブリビオンマシンたちは希島を自爆させると脅し、希望峰アース各国家からの干渉を牽制している。――それにより各国家は静観の姿勢だ。援軍要請を送っているが、望みは薄いだろう』
希島の管理をおこなうスーパーコンピューターであるキジマ。その身体に接続されたケーブルが明滅するのは、彼の電脳があらゆる条件を考慮したシミュレーションを実行しているからに他ならない。
『シミュレーション、パターン2068――希島の自爆で終了。パターン2069――司令塔が破壊され、私の破壊で終了。やはり、この状況を覆せるのは、シミュレーションパターン1024――
猟兵によるオブリビオンマシンの撃破しかないようだ』
キジマがそう結論づけると同時に、オペレータが一際大きな声を上げた。
「防衛線中央、突破されました! 強大な力を持つオブリビオンマシンです!」
『――ばかな。私のシミュレーションでは、どのパターンでもあと一日は持ちこたえられるはずだ』
次の瞬間、オペレーションルームのモニタに一機のジャイアントキャバリアの姿が映った。黒と紫の混ざった金属質な装甲に身を包み、その装甲表面には、まるでルーン文字のようなものが刻まれている。――深紅色の瞳が光り、司令塔の方を向いた。
『まさか、アレは――』
「ご存知なのですか、キジマ司令!?」
『かつてデータベースで閲覧したことがある。異界で作られたジャイアントキャバリア、ヴァルガン・ティタン。数多くの世界を征服してきたという、まさに悪機――』
モニタの向こうで、ジャイアントキャバリアの口に当たる部分が狂気をはらんだ笑みを浮かべたように見えた。
高天原御雷
注:このシナリオは、【悪機襲来】の共通題名で括られる戦闘シナリオの連動シリーズです。
希島を舞台にした五箇所の各戦場をクリアすると新しい「種族とジョブ」の報酬が出ます。
なお、各MSによるシナリオはどれも内容が独立している為、重複参加に制限はありません。
注2:戦場と報酬の一覧表は以下です。
黒猫白猫MS「純戦」の工業地区。「パンツァーキャバリア」が報酬。
高天原御雷「守備」の商業地区。「ジャイアントキャバリア」が報酬。
黒代朝希MS「鹵獲」の自然地区。「オブリビオンマシン」が報酬。
にゃんさん。MS「淫闘」の住居地区。「ロボットヘッド」が報酬。
ヤタ・ガラスMS、鳴声海矢MS、黒猫白猫MS「掲示板」の学園地区。詳細は掲示板。
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オープニングをご覧いただきどうもありがとうございます。
本シナリオはPBWアライアンス『コイネガウ』のシナリオになります。ですが、『第六猟兵』の世界のキャラクターも「異界人」として認識されていますので、参加制限などはありません。
突如として侵攻してきた謎のオブリビオンマシンたち。希島各地で防衛戦が行われる中、希島の司令塔の破壊、および司令官キジマ・プロトコルを殺害しようと、悪機たるジャイアントキャバリア――『ヴァルガン・ティタン』が現れました。
これを倒せるのは
猟兵たちしかいません。何としても敵を撃破してください。
●シナリオについて
一章構成(ボス戦)のシナリオです。敵はヴァルガン・ティタンです。
システム上、フラグメントは日常になっていますが、ボス戦とお考えください。
ヴァルガン・ティタンについては断章で説明いたします。
●キャバリアの貸出について
本シナリオでは、希望者は希島未来科学研究所が開発したクロムキャバリア『ヴォルテックス・セイバー』に乗り込み戦うことができます。
ユーベルコードは自身のものを使っても、キャバリアのものを使っても、どちらでも大丈夫です。
ヴォルテックス・セイバーについては断章で説明いたします。
第1章 日常
『プレイング』
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POW : 肉体や気合で挑戦できる行動
SPD : 速さや技量で挑戦できる行動
WIZ : 魔力や賢さで挑戦できる行動
👑11
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●ヴァルガン・ティタン
オブリビオン・ホールを通って異界から侵略してきたオブリビオンマシンです。
黒と紫の混ざった金属質な装甲を纏ったジャイアントキャバリアで、その強大な力はまさに悪機。
右腕に取り付けられた巨大な剣ティタンブレードや、胸部中央に装備されたエネルギー砲ルーンキャノンで攻撃してきます。
使用してくるユーベルコード(ホープコード)は、以下の通り。
POW:ティタン・ブレイクファング
ヴァルガン・ティタンが全エネルギーを右腕に集中させ、一撃のパンチを放つ。この攻撃は、敵の装甲や防御システムを容易に破壊する力を持つ。
SPD:オメガ・スパイラルランス
ヴァルガン・ティタンの背中から、高エネルギーの光の槍が形成される。この槍を掴み、敵に向けて放つ。槍は螺旋状に回転しながら飛び、目標に突き刺さると大爆発を引き起こす。
WIZ:クロノス・ディバイダー
ヴァルガン・ティタンが両手を広げ、時空の裂け目を形成する。この裂け目から放たれるエネルギー波は、接触した敵を分子レベルで分解する。この技は使用すると大きなエネルギーを消費する。
●ヴォルテックス・セイバー
メタリックブルーの装甲を持った近接戦闘型クロムキャバリアです。電撃を発生させる電撃剣エレクトラブレードによる接近戦を得意とします。
使用可能なユーベルコード(ホープコード)は、以下の通り。
POW:
電撃剣
大剣に電撃をまとわせて敵を斬り裂きます。さらに、対象に高圧電流による状態異常も付与します。
SPD:ヴォルテックスブースト
脚部に搭載されたジェットエンジンによって高速移動や飛行をおこないます。素早い機動力を持ち、敵の攻撃をかわすことができます。そこから近接攻撃による反撃で敵にダメージを与えます。
WIZ:ヴォルテックスオーバードライブ
限界までエネルギーを解放し、全身から巨大な電撃を放つ特殊技。周囲の敵を壊滅的なダメージで一掃します。
●援軍到着
ジャイアントキャバリア、ヴァルガン・ティタンの胸のエネルギー砲『ルーンキャノン』に閃光が灯った。次の瞬間、空を切り裂くようにビームが薙ぎ払われる。それは商業地区の高層ビル群を真っ二つにしながら、司令塔の最上階――キジマたちがいるオペレーションルームへと迫り。
――ガァン、という激しい金属音とともにヴァルガン・ティタンが仰け反ったことで、ビームはオペレーションルームを逸れていった。
ヴァルガン・ティタンは、邪魔をした相手を探し周囲へと視線を巡らせ――。ビルの屋上に立つメタリックブルーの装甲をしたキャバリアに目を止めた。
『リュウカ・ヴァレンタイン、ヴォルテックス・セイバー。これ以上の破壊はさせません!』
蒼きクロムキャバリア、ヴォルテックス・セイバーに乗るのは、希島未来科学研究所に所属するパイロット、リュウカ・ヴァレンタインだ。彼女はヴォルテックス・セイバーの脚部ジェットエンジンを全開にし、再度、ヴァルガン・ティタンへと接近すると手にした
電撃剣を振り下ろし――。
『なっ!?』
剣を握ったヴォルテックス・セイバーの右腕が肩から切り落とされ、地面に落ちる。
ヴァルガン・ティタンが振るったティタンブレードによって切断されたのだ。その断面は、まるで空間ごと切り取られたかのように滑らかだった。
『くっ……』
大きく距離を取るヴォルテックス・セイバー。
だが、そこにヴァルガン・ティタンが投げた光の槍オメガ・スパイラルランスが突き刺さり――。
『きゃあああっ!』
激しい爆発とともに、上半身を吹き飛ばされたヴォルテックス・セイバーが地面に倒れ込んだのだった。
『――
猟兵の皆さん、こちら、リュウカ・ヴァレンタイン。敵は強大な力を持っています。気をつけて……』
かろうじて無事だったコックピットの中からリュウカが通信を送り、気を失った。
●キャバリアの貸出について
援軍リュウカの到着とともに、ヴォルテックス・セイバーの同型機が希島司令塔に運び込まれました。
猟兵は、ヴォルテックス・セイバーに乗ることもできます。
もちろん、生身での戦いや、自分のキャバリアの使用でも問題ありません。
イリスフィーナ・シェフィールド
全くもうあっちこっちに現れるから大忙しですわっ(3戦目)
空中で指定コードで【ブレイブフォートレス】と合体してロボット形態へ(真の姿1枚目参照)
遠距離にいると物騒な攻撃が飛んでくるのでそのまま一気に距離を詰めてブレイズ・スラッシャーで斬りかかりますわ。
細身な分パワーでは負けてそうですからテクニックで勝負ですわ。
あえて近接攻撃の間合いでティタンブレードやティタン・ブレイクファングを
ブレイズ・スラッシャーで限界突破、リミッター解除、怪力、オーラ防御を用いて
受け流して切断や貫通攻撃を地道に繰り返します。
じれてルーンキャノンで攻撃してくるなら好機です、飛び越えて隙だらけの背後に全力で斬りかかりましょう。
黒雪騎・実夢
「そこの、巨大キャバリア……止まりなさい!
機動隊長、黒雪騎・実夢が……お相手、致しましょう!」
希島国警察、機動隊として……あたしは、司令塔の守備にあたる。
武装警官仕様、ヴォルテックス・セイバーに、塔乗して……。
機動隊で敵機、囲めば……勝てる、かな?
「強い……でもっ!
司令塔へは、どうしても……行かせません!
希島の皆の……日常を……護る為に!」
POW:電撃剣、上段で振り翳して、探偵騎士の剣術で……戦う。
機動隊の盾も、キャバリア換装版を……装備して防御。
白兵戦に持ち込めば……あたしも、遅れは取らない、はず。
実夢は保安課だが機動隊にも所属。
特殊口調に注意。
アドリブ・連携歓迎。
●
『――
猟兵の皆さん、こちら、リュウカ・ヴァレンタイン。敵は強大な力を持っています。気をつけて……』
悪機ヴァルガン・ティタンに敗れ去ったリュウカからの通信が格納庫に響き渡る。そこは、希島の商業地区中心にそびえ立つ司令塔の地下にあるキャバリア格納庫。希島未来科学研究所からリュウカのヴォルテックス・セイバーと同時に援軍として到着した支援物資――ヴォルテックス・セイバーの同型機がずらりとハンガーにならんでいた。
「これが……エース機――」
「うむ、わしら希島未来科学研究所が総力を上げて開発した機体、ヴォルテックス・セイバーじゃよ」
黒髪をボブカットにし、女性警官の制服に身を包んだ黒雪騎・実夢(希島国警察所属のクーデレ私立探偵・f38169)が、鳶色の瞳で見上げながら呟いた。その理知的な視線の先には一機のキャバリアが出撃準備を終えて待機している。
白衣を着た希島未来科学研究所の老研究員の言葉によると、この機体は
エース機であるヴォルテックス・セイバーというものらしい。
――そして実夢の眼前にある機体が装備する盾には『希島国機動隊』という文字がペイントされていた。
「あの、この文字は……?」
「うむ、よくぞ聞いてくれた。希島国警察機動隊に所属する黒雪騎殿のために、機体を急いで武装警官仕様にチューニングしたのじゃ」
額に浮かぶ汗を白衣の袖で拭う研究者。かなり急いでチューニングしたように見受けられる。
先に出撃したリュウカが時間を稼いでくれている間に施されたチューニング。それはいったいどんなものかという期待が実夢の胸に湧き上がる。もしかしたら、あの化け物を止めるための必殺武器が搭載されたのかもしれない。
「元の機体との違いは……何なのでしょうか?」
「うむ、よくぞ聞いてくれた! まず――機体を白く塗装し直し、装備させた盾に『希島国機動隊』という文字をペイントしたのじゃ! 文字フォントをどうするか悩んだのじゃが、完璧なデザインになったはずじゃ!」
胸を張って答える研究者。
だが、それは実夢が求める答えとは大きく異なっていた。
「あ、いえ……武器などは……変わりないのですか?」
「おお、そうじゃった、そうじゃった」
思い出したかのように研究者がぽん、と手を打って続ける。
「武装警官仕様ということで――この機体の
電撃剣は警棒になっておる」
「――はい?」
思わぬ答えに困惑する美夢。
だが説明の先を促されたと思った研究者は、自信満々に続ける。
「仮にも警察官が乗る機体じゃ。銃刀法違反はまずいじゃろう? そこで盾を装備させるとともに、
電撃剣を
電磁警棒に換装したのじゃよ。こんなこともあろうかと、
電磁警棒を開発していた甲斐があったわい」
研究員の説明に、とても不安になりながらも、実夢は武装警官仕様のヴォルテックス・セイバーのコックピットに乗り込んだのだった。
●
「ヴァルガン・ティタン、ヴォルテックス・セイバーを撃破後、再度、司令塔に向けて攻撃準備を開始しました!」
司令塔のオペレーションルームにオペレータの叫び声が響き渡る。その声音には絶望の色が混じっていた。
――だが、司令官であるキジマ・プロトコルの声は冷静だった。
『どうやら間に合ったようだ』
商業区、司令塔の近辺まで侵入したオブリビオンマシンにしてジャイアントキャバリアである悪機ヴァルガン・ティタン。
邪魔者であるリュウカの乗るヴォルテックス・セイバーを撃破したヴァルガン・ティタンは、その黒と紫の混ざった金属質な装甲の胸部に装備されたエネルギー砲『レールキャノン』の充填を開始していた。破壊のためのエネルギーがヴァルガン・ティタンの胸部に集中していき、司令塔の頂上、キジマがいるオペレーションルームを照準し――。
――その瞬間、鋭い制止の声が響いた。
『そこの、巨大キャバリア……止まりなさい!』
ヴァルガン・ティタンに向けて叫んだのは、白い装甲に巨大な盾を構える武装警官仕様のヴォルテックス・セイバー。そのコックピットに乗る実夢だった。
実夢の乗るヴォルテックス・セイバーの周囲には、同様に機動隊メンバーが乗る白いヴォルテックス・セイバーが数機、盾を構えている。
実夢の言葉を理解したのか、ヴァルガン・ティタンはレールキャノンの発射準備をやめ、新たな獲物――白いヴォルテックス・セイバーたちに視線を向ける。
だが、その視線に怯む実夢ではない。キャバリアの操縦桿を強く握りしめ、外部スピーカーから凛とした声を放つ。
『希島国警察、機動隊として……司令塔は守り抜いてみせます。機動隊長、黒雪騎・実夢が……お相手、致しましょう!』
●
ヴァルガン・ティタンが右腕に装着した剣『ティタンブレード』を振るう。その剣を受けた白いヴォルテックス・セイバーたちが、腕を斬られたり脚を斬られたりして行動不能になっていく。
実夢は、振り下ろされたティタンブレードを盾で受け止めると、その刃を受け流した。――正面から受け止めていたら、盾ごと斬り裂かれていただろう。
『強い……でもっ! 司令塔へは、どうしても……行かせません! 希島の皆の……日常を……護る為に!』
決意のこもった実夢の言葉。
だが、ヴァルガン・ティタンはそれをあざ笑うかのように、右腕にエネルギーを集中させていく。それはヴァルガン・ティタンの必殺の一撃、ティタン・ブレイクファング。盾ごと実夢の機体を破壊する威力を持ったパンチが放たれようとし――。
――上空からイリスフィーナ・シェフィールド(相互扶助のスーパーヒロイン・f39772)の声が響いた。
「
融合合体!」
イリスフィーナの呼び声に応じ、彼方から飛翔してきたのは、合体専用マシンであるブレイブフォートレスだ。
白と蒼色の戦闘用衣装スノーホワイト改を身にまとったイリスフィーナは、ブレイブフォートレスと合体すると、白銀と蒼の装甲をもったどこか女性らしい――スーパーヒーロー時の彼女の姿を思わせるフォルムのロボットへと姿を変えた。そしてヴァルガン・ティタンに向かって、その両手に持った巨大な両手剣ブレイズ・スラッシャーを振り下ろす。
『ガアアアッ!?』
不意を突いた一撃にヴァルガン・ティタンが吹き飛び、瓦礫の山に突っ込んでいく。
『希島各地に一斉に侵攻とは、迎撃するこちらも大忙しですわ――警察も大変そうですわね、実夢様』
『その声は――イリスフィーナさん……ですか? その姿は……一体!?』
『それはまた後でご説明しますわ。今は――あれを倒さなければなりませんわね』
イリスフィーナの視線の先。瓦礫の山を崩しながらヴァルガン・ティタンが姿を現すところだった。
『――力を合わせていきますわよ、実夢様』
『ええ……イリスフィーナさん』
イリスフィーナのロボットと実夢のキャバリアが、ヴァルガン・ティタンへ向けて加速した。
●
美夢のヴォルテックス・セイバーと、ロボットと融合したイリスフィーナが、ヴァルガン・ティタンの元へと迫る。
それを迎撃せんとヴァルガン・ティタンは右腕のティタンブレードを振るうが――。
『任せてくださいませ!』
イリスフィーナの振るうブレイズ・スラッシャーがティタンブレードと打ち合い、その軌道を逸らした。
剣を防がれたヴァルガン・ティタンは右腕にエネルギーを集中させ、必殺のパンチ、ティタン・ブレイクファングを放つ。装甲や防御システムごと敵を粉砕する、まさに必殺の一撃だ。
――だが。
『それは……私が!』
美夢のヴォルテックス・セイバーが盾でティタン・ブレイクファングを受け止める。――そして、盾が破壊された瞬間、それを手放した。
必殺の一撃を受け流された形になったヴァルガン・ティタンに大きな隙ができる。
そこにさらに、美夢の武装警官仕様ヴォルテックス・セイバーが右手を掲げ――右手に持った巨大警察手帳をヴァルガン・ティタンの眼前に突きつけた。
『巨大キャバリア……止まりなさい! 街を破壊した現行犯で……逮捕します!』
動かないように命じられたヴァルガン・ティタンの動きが急激に鈍くなった。
『今ですわ!』
『ええ、白兵戦では……遅れは取りません!』
美夢のヴォルテックス・セイバーが、上段に構えた
電磁警棒をヴァルガン・ティタンに向けて振り下ろす。高圧電流を纏った警棒がヴァルガン・ティタンを強く打ち据え、その身体を痙攣させる。
そこに、背後に回り込んだイリスフィーナの機体が、ブレイズ・スラッシャーを振りかぶり――。
『今こそ、わたくしの全オーラを込めて――』
オーラを吸収することで切れ味が増すブレイズ・スラッシャー。そこに限界を越えてオーラを注ぎ込み、極限まで威力を高める。持ち主のオーラを吸収し、翠の光に包まれたブレイズ・スラッシャーが、ロボと一体化したイリスフィーナの怪力によって振り下ろされ――ヴァルガン・ティタンの背中を深々と斬り裂いた。
『ガ、ガアアアアッ!?』
異界の悪機は激しい悲鳴を上げると、大きく跳躍して戦場から離脱していった。
●
『ヴァルガン・ティタンの反応、ロスト!』
『どうやらいったん引いたようだ。二人とも、助かった』
司令塔のオペレータとキジマからの通信が入る。
それを聞き、ようやく戦闘態勢を解除するイリスフィーナと実夢。
『なんとか――なりましたわね』
『イリスフィーナさん、司令塔の防衛に……ご協力感謝します』
イリスフィーナに向けて、実夢の乗るヴォルテックス・セイバーが敬礼して感謝の意を表すのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シルヴィ・フォーアンサー
頑丈そう、面倒そう……。
《仕事なのだから文句言わない、働かざる者食うべからずだ》
はーい……サポートよろしくね、ヨル。
クリムゾン・ウィンド発動、機体能力を強化して一気に接近する。
光る槍をぶん投げてくるけどモーションでか過ぎ……殺気読まなくても避けられる。
《着弾後の爆発に気をつけろ、シルヴィ》
はーい、わかってる。
回避しながら左足でいっか、ガトリングガンとミサイルを膝の関節部位に集中攻撃。
その図体じゃ全壊させなくてもある程度ダメージ与えれば支えられないでしょ。
動けなくなったら木偶の坊……ハイペリオンランチャーで頭をふっとばしてあげる。
●
「ヴァルガン・ティタン、
猟兵の攻撃により一時撤退した模様です」
『――窮地は脱したようだな』
希島の司令塔、その最上部にあるオペレーションルームで、オペレータの安堵の声に首肯するキジマ・プロトコル。敵――ヴァルガン・ティタンの狙いは、この島そのものと言っても過言ではないキジマを破壊することだった。
「引き続き、
猟兵たちに周辺警備と敵の迎撃を要請します」
オペレータが、広域無線で
猟兵たちへと呼びかけていった。
その通信を、キャバリア『ミドガルズ』のコックピット内で聞いていた金髪の少女、シルヴィ・フォーアンサー(自由を求めた脱走者・f41427)が抑揚の少ない声音で呟いた。
「これと戦うの? 面倒そう……」
司令塔のオペレーションルームから送られてきた戦闘映像を見たシルヴィの第一声。全身をパイロットスーツで包んだ少女はモニタに映し出される映像を切ろうとし――。
『仕事なのだから文句言わない。働かざるもの食うべからずだ』
「はーい」
不意に聞こえてきた男性の人工音声に反射的に答える。それはミドガルズに搭載されたAIユニットのヨルムンガンドの声だ。
シルヴィは神経接続によってミドガルズを操作して立ち上がらせると、小さく微笑みながら告げた。
「……サポートよろしくね、ヨル」
――ミドガルズは、まるでシルヴィの生身の身体であるかのように、滑らかな動作で商業地区へ向かって駆け出した。
●
『ヴァルガン・ティタンの動きはどうだ』
「依然、反応ありませ――いえ、レーダーに反応あり! ヴァルガン・ティタンの反応です!」
司令塔のモニタに映し出される、金属質の装甲を纏ったジャイアントキャバリア――悪機ヴァルガン・ティタン。その姿を見て、オペレーションルームが騒然とする。
『来たか、ヴァルガン・ティタン――』
キジマが静かに呟いた。
商業地区の中央に建つ司令塔に向け、ヴァルガン・ティタンは右腕のティタンブレードを抜き放ち、正面から突撃しようとする。今ならば、司令塔を守る防衛部隊も存在しない。このまま司令塔内部に入り込めば――。
だが、そこにシルヴィの声が響き渡った。
「そこまでだよっ!」
『ガァアアアアッ!?』
激しい衝撃とともに、真紅の疾風によって吹き飛ばされるヴァルガン・ティタン。悪機はそのままビルに突撃し瓦礫の山に埋もれる。
『あ、あの赤い疾風は一体!?』
『いえ、あれは風ではありません! 内部からキャバリアの反応! ――これは味方です!』
通信機からオペレータたちの歓声が聞こえる中、停止した疾風の中からミドガルズが姿を現した。
シルヴィは、自らのキャバリアに真紅の疾風を纏わせることによって、高速機動を可能にし、ヴァルガン・ティタンを轢いたのだ。
「どうかな、今の一撃……」
『この機体での高速突撃だ。通常の数倍の衝撃を与えられたはずだ』
「これで片付いてくれるといいんだけどな――」
瓦礫の山に埋もれたヴァルガン・ティタンを見つめるミドガルズ。そのカメラが捉えた映像は、神経接続されたシルヴィの網膜に直接投影され、小石一つまではっきりとシルヴィに知覚させる。
――瞬間、大気が揺れた。
『グォオオオオオッ!!』
激しい雄叫びとともに、ヴァルガン・ティタンが埋もれていた瓦礫の山が吹き飛んだ。
そこに立っていたのは、突撃のダメージを感じさせない巨軀。
金属質の装甲を光に輝かせ、ヴァルガン・ティタンはティタンブレードを構える。
『ヴァルガン・ティタン、健在です!』
『そんな、あれだけの衝撃でもびくともしないなんて……まさに悪機だ……』
騒然とするオペレータたちの声。
だが、シルヴィはこともなげに言い放つ。
「まあ、あの程度で倒れられたらつまらないよね」
『油断するな、敵はまだ切り札を残しているはずだ』
「はーい、わかってる」
ヨルムンガンドの言葉に頷くシルヴィ。
ヴァルガン・ティタンは背中から高エネルギーの光の槍を生み出すとそれを構えた。そして、まるで槍投げのように大きく振りかぶり、光の槍をミドガルズに向かって投擲する。ジャイアントキャバリアの膂力で放たれた槍は、螺旋状に回転しながら高速で標的に襲いかかる。
『ヴァルガン・ティタンの攻撃、超高速でキャバリアに接近!』
『ダメです、このタイミングでは回避は――え!?』
通信機から聞こえるのは、オペレータの驚愕の声。なぜなら、光の槍が命中する直前、ミドガルズの機体が真紅の風に包まれて姿を消したからだ。
『グォォオ?』
突如、姿を消したミドガルズに、ヴァルガン・ティタンも困惑の声を上げる。
「モーションでかすぎ……そんなの、殺気読まなくても避けられる」
『着弾後の爆発――回避がギリギリだったぞ』
「計算通りだよ、計算通り」
ヨルムンガンドの言葉に軽く返しながら、シルヴィがヴァルガン・ティタンをまっすぐ見つめた。
その視線の先は――ヴァルガン・ティタンの左足だ。
「その足、もらっちゃうよっ!」
ミドガルズは両手に装備した大型ガトリングガンを斉射する。回転する砲身から嵐のように吐き出される弾丸がヴァルガン・ティタンの左足へと集中する。――が、ガトリングガンの弾丸をもってしても悪機の纏う重厚な装甲を貫くことはできない。
甲高い金属音とともに、銃弾は次々と跳弾していく。
『そんな、あの攻撃でも悪機の装甲を貫けないのか!?』
『――いや、待て』
通信機越しに聞こえる、キジマの冷静な声。
『どうやら司令官殿は狙いに気づいたようだが――』
「あの悪機は気づいてないみたいだね」
ガトリングガンの攻撃など効かないとばかりに、ヴァルガン・ティタンが一歩を踏み出し――その膝を地面についた。
『ガァア!?』
自分が地面に膝をついたことが信じられないというかのような、ヴァルガン・ティタンの声。
だが、それこそがシルヴィの狙いだった。
「どんなに頑丈な装甲でも、関節部分は守りきれないでしょ!」
『――さらに、集中攻撃で一時的に脚部装甲は劣化している』
ガチャン、という重厚な音とともに、ミドガルズの両肩に装備された連装型多弾頭ミサイルがヴァルガン・ティタンの左足をロックオンし――。
一斉にミサイルが発射された。
『ガ、ガァアアアアアア!?』
まるで驚愕するかのような悪機の叫びとともに、左足の装甲がミサイルの爆発によって砕け散った。
『まさか、ヴァルガン・ティタンの装甲が!?』
『あれは、ガトリングガンの攻撃による発熱で一時的に装甲を脆くし、そこに爆発の衝撃を集中させたのだ。どんなに硬い装甲であっても、脆くなる一瞬は――ある』
通信越しのキジマの解説に、シルヴィは「そういうこと!」と返し――。
「動けなくなったら木偶の坊だよね、これでとどめだよっ!」
ミドガルズのバックパックに接続された、左右の超巨大荷電粒子砲。その砲口に激しいエネルギーの奔流が集まっていく。
『エネルギーチャージ120%――ハイペリオンランチャー発射準備完了だ』
「ハイペリオンランチャー、発射!」
ミドガルズから放たれた強大なエネルギーはヴァルガン・ティタンを光の奔流に飲み込み、押し流していった。
『ヴァルガン・ティタン、反応ロスト! 耐えきれないと悟り、撤退した模様!』
『――だが、奴も大きなダメージを負ったはずだ。しばらくは動けないだろう。助力、感謝する』
キジマは、シルヴィに感謝の言葉を述べたのだった。
――悪機は、確実に追い詰められつつある。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【ネルトリンゲン】
【ネルトリンゲン】で出撃するね。希島では初参戦かなー?
ヴァルガン・ティタン……聞いたことない機体だね。
見た感じだと、魔導騎士系、かな?
それと面白そうな子がいるね。プロトコルさん、だっけ?
スーパーコンピュータとか、おいしs……アッ、ハイ。
『希』ちゃん、プロトコルさんとデータリンクして、敵機のデータ、提供してもらって。
それとスキャンが効きそうなら、そっちもお願いするね。
錫華さんはアミシアちゃんにデータ送るから、攻撃は確認後でお願い。
その間に、ヴォルテックス・セイバーごとリュウカさんを回収してもらえるかな。
相手のデータをそれなりに把握したら反撃開始だよ!
といいつつー……【白の天蓋】を発動して、
錫華さんを加速、ティタンを減速したら、ハンガーへごー♪
『希』ちゃん、火器管制全部任せるから、【E.C.O.M.S】とかで援護よろしくね。
わたしはリュウカさんとセイバーさん直すので!
『あ、ちょ、おねーちゃん!?どっち目的!?両手に花とか思ってない!?』
『希』ちゃん、素がでてる、よー♪
支倉・錫華
【ネルトリンゲン】
ヴォルテックス・セイバーを借りるね。
この子、この間戦ったときにも思ったけど、いい子だよね。
お前のような量産機が~の類いではあるけど。
よし、それじゃデータが揃うまでにリュウカさんを回収しちゃおう。
機体ごと、だっけ?
なんとなく企んでるっぽいけど、まぁいいか
アミシア、ワイヤーハーケンで固定して引っ張ってこれるかな?
リュウカさん、おつかれ。あとは任せてもらっていいよ。
ここでゆっくり休んでて。
艦長に気をつけておけば、たぶんだいじょぶだから。たぶん。
さ、アミシア、それじゃ反撃と行こうか。
【E.O.Dソード】使うよ。
この子の電撃剣もいいけど、ちょっと威力不足っぽいからね。
『了解。申請許可。シーリング解除します』
武装を整えて再出撃したら、理緒さんと『希』ちゃんの援護に乗って、
一気にヴァルガン・ティタンに突撃するね。
アミシアの予測とこの速度差なら、相手の攻撃はかわせる、はず。
あとはエネルギーが続く限り斬りまくっていこう。
腕くらいはもらって、友達の仇はとらないとね。
●
「司令塔を攻撃目標としていたヴァルガン・ティタン、後退しました」
『――データベースの情報に基づけば、あの悪機がこの程度で諦めるとは思えないな。引き続き、警戒を厳重にするように』
希島の司令塔、そのオペレーションルームでキジマ・プロトコルがオペレータに告げる。
希島未来科学研究所からの増援は来たものの、もしも再度、悪機の襲撃を受けたらそれを凌ぎきれるか。キジマの機械頭脳は、あらゆる状況を想定したシミュレーションを繰り返していく――。
だが、キジマの
思索を遮るように、オペレータの大声が響いた。
「司令、レーダーに巨大飛行物体の反応です! まさか、飛行型オブリビオンマシン!?」
『対象からのオブリビオン反応は検出できない。それにこれは――』
レーダー反応を分析し、キジマは冷静に告げる。少なくとも敵ではない。そして、反応を分析した結果、飛行物体はおそらく――。
そこまで分析したところで、オペレーションルームのモニタに表示される『接続許可申請』の文字。
「司令――」
『繋いでくれ』
キジマの言葉と同時に、巨大飛行物体との通信回線が開かれ、モニタに黒髪で片目を隠した少女の姿が映し出される。少女は琥珀色の瞳を横に向け『ねえ、稀ちゃん、これ繋がってるの?』『繋がっていますから、きちんと通話してください』などというやり取りをしていた。
『えっと、こちら、戦闘空母ネルトリンゲンの菫宮理緒だよ。希島では初参戦だから、はじめましてかなー?』
モニタに映る黒髪の少女、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)が、戦闘中という状況に似つかわしくない、ゆるい挨拶を投げかけてきた。
『私は希島国司令塔統括責任者、キジマ・プロトコルだ。
猟兵と見受けるが――』
『そうだ、よー。戦闘空母ネルトリンゲンの菫宮理緒および支倉錫華、司令塔の防衛に協力する、ねー』
頼もしい援軍到着の報に、司令塔オペレーションルームは歓声に包まれた。
●
戦闘空母ネルトリンゲンのブリッジ。
その艦長席で理緒がタブレット端末を操作しながら、小さく呟いた。
「キジマ・プロトコルさん――この島を統括するスーパーコンピュータかぁ。内部アルゴリズムとか気になるよ、ねー。ちょっと
脳内を覗いて仕組みを――」
『理緒、現在はヴァルガン・ティタンという敵との戦闘中だということをお忘れなく』
「はーい」
理緒にお説教をしているのは、ネルトリンゲンを制御するサポートAIの稀だ。放っておくと暴走しかねない
理緒の軌道修正は彼女の仕事なのである。
「それにしても、ヴァルガン・ティタンかぁ。聞いたこと無い機体だね。錫華さんはどう?」
「わたしも知らない機体。アミシアも知らないって言ってるね」
理緒からの問いに答えるのは、ネルトリンゲンの艦橋の端で壁に背を預けて立つ支倉・錫華(Gambenero・f29951)だ。希島の学園教師である錫華だが、その実、様々な世界を股にかけて任務をこなすフリーのエージェントでもある。理緒たちとも、別世界ではよく行動を共にする間柄だ。
『錫華さんも知らないとなると、異界というのは、わたしたちの知る世界とはまた別の世界なのかもしれませんね――』
稀の言葉を聞き、艦長席の理緒が頷き――。
「とにかく、まずは敵の情報を集めないとだ、ねー。稀ちゃん、プロトコルさんとデータリンクして、敵機のデータを提供してもらって解析して。錫華さんは――」
「わかってる。リュウカさんと機体の回収だったね。任せておいて」
錫華は足音も立てずに艦橋を後にした。
●
司令塔の格納庫。そこでは、希島未来科学研究所から運び込まれたヴォルテックス・セイバーの同型機の発進準備が行われていた。白衣を着た老研究者たちによって機体の最終調整がおこなわれている。
――そこに、突如、天井の窓をぶち抜いて黒い影が降ってきた。
「な、なんじゃ、一体!?」
「敵襲かっ!?」
騒然とする研究者たちを前に、降ってきた黒い影――着地した錫華が口を開いた。
「ヴォルテックス・セイバーを借りに来た……」
『錫華さーんっ、出撃してって言ったけど、ネルトリンゲンの甲板から飛び降りないで、よー!?』
錫華が持つ通信機から、理緒の慌てた声が響く。
「大丈夫。ちゃんとワイヤーハーケンで速度調節して降りたから。まさか紐なしバンジーでもしたと思った?」
『いやいやいや、ちゃんと降下艇用意したんだから、それ使って、よー!?』
「飛び降りた方が速くない?」
手首に繋がったワイヤーを切り離し、上空――割れた窓の先に浮かぶネルトリンゲンを見上げ、錫華は首をかしげた。
●
「ヴォルテックス・セイバー、出撃するよ」
発進準備が整っていたヴォルテックス・セイバーに乗り込んだ錫華が、司令塔の格納庫から発進していく。目的地は、希島未来科学研究所のテストパイロット、リュウカ・ヴァレンタインが悪機ヴァルガン・ティタンと激闘を繰り広げた戦場だ。
「このキャバリア、前に戦ったときにも思ったけど、いい子だよね」
仕事柄、様々なキャバリアに乗ってきた錫華から見ても、ヴォルテックス・セイバーは良くまとまったいい機体だ。
『錫華さん、ちゃんとリュウカさんとその機体を回収してきて、ねー。こっちはその間に敵のデータを解析しておくから』
「了解」
理緒からの通信に、短く応答し、回線をオフにしてから小さく呟く。
「なんとなく、なにか企んでるっぽいけど、まぁいいか」
――錫華が現場に到着して探索することしばし。
リュウカとその機体を発見し、ネルトリンゲンに回収するのだった。
●
猟兵との戦いで思わぬダメージを負った悪機ヴァルガン・ティタン。
念のために一時、司令塔への攻撃を中断していたが、ダメージの大半は自己修復能力で回復した。
悪機は再び、司令塔に向かって進軍を開始する。今度こそ、邪魔が入る前にキジマ・プロトコルがいる司令塔の中枢を破壊するという任務を達成するために。
商業地区に再び現れたヴァルガン・ティタンは、司令塔を破壊するため胸のエネルギー砲『ルーンキャノン』にエネルギーをチャージし始め――。
『残念だった、ねー。その行動はお見通しだ、よー』
「そういう――ことっ!」
高速で接近してきた錫華のヴォルテックス・セイバーが振るう
電撃剣の一撃によって攻撃を阻まれた。ルーンキャノンのエネルギー収束装置となっている胸のクリスタルにひびが入る。
「やっぱり電撃剣だけだと威力が足りないか。――ならば手数でいくっ! アミシア、援護よろしく」
『了解』
ヴォルテックス・セイバーに搭載したサポートユニットのアミシアにヴァルガン・ティタンの攻撃を予測させ、錫華は機体を突撃させる。
『ティタンブレード、来ます』
ヴァルガン・ティタンが振るう右腕の大剣を、ヴォルテックス・セイバーは軽々と跳躍することで回避する。
「この子、近接戦用だけあって、この距離での切り合いなら速度では負けないよ!」
アミシアは、理緒から受け取ったヴァルガン・ティタンの戦闘データを元に、高精度の行動予測をおこなっていく。
攻撃さえ予測できていれば、錫華の操縦テクニックと、それに応えるポテンシャルを持った機体であるヴォルテックス・セイバーであれば、相手の攻撃を回避するのは難しくない。
ティタンブレードを次々と回避し、ヴォルテックス・セイバーは敵の死角に回り込み、確実に電撃剣の攻撃を命中させていく。
『警告! 敵機、エネルギー上昇!』
「了解」
業を煮やしたヴァルガン・ティタンは両手を広げ、時空の裂け目を作り出すと、そこからエネルギー波を放出する。命中すれば敵を分子レベルで分解する技だ。
――だが、そのエネルギー波も、距離をとって警戒していた錫華のヴォルテックス・セイバーの機動力の前に回避され、虚しく空を裂いた。
そこに、理緒からの通信が入る。
『錫華さん、お待たせっ! こっちの準備完了した、よー。一気に片付けちゃって!』
「アミシア、全力で行くよ。エネルギーソード・ユニット、解放」
『了解。申請許可。シーリング解除します』
錫華は機体に装着したエネルギーソード・ユニットを起動する。それは電撃剣に接続されたエネルギー増幅装置だ。供給されたエネルギーによって、電撃剣から激しい稲妻が放出される。
「この子の武器、かなりのポテンシャルだね。エネルギーソード・ユニットから供給されたエネルギーを制御しきれてる。――これなら!」
錫華はヴォルテックス・セイバーに、激しいエネルギーを纏った電撃剣――
EnergyOverDrive電撃剣を構えさせる。
『こちらからも、援護いく、よー』
さらに、ヴォルテックス・セイバーとヴァルガン・ティタンの周囲を純白の壁が覆う。それは理緒が【白の天蓋】で召喚した、時の流れを操る領域だ。ヴァルガン・ティタンの周囲の時間は遅くなり、ヴォルテックス・セイバーの周囲の時間は加速される。結果として、相対的に錫華からはヴァルガン・ティタンが止まっているように見え――。
「これはリュウカさんの分――!」
錫華のヴォルテックス・セイバーが振るう極大の電撃を纏った大剣が、ヴァルガン・ティタンの右腕を斬り落とした。
「そして――とどめは任せたよ」
『いっくよー、リュウカさん』
『ええええっ!?』
錫華の言葉に理緒が答え、そこにリュウカの悲鳴が重なる。
だが、悲鳴なんて聞こえなかったとばかり、理緒は非情な声で告げた。
『リュウカさんアーンド、ヴォルテックス・セイバー改、発射だ、よー!』
『ネルトリンゲン、リニアカタパルト準備完了』
稀のオペレーションにより、ネルトリンゲンのカタパルトデッキが解放され、そこから理緒の手で修理されたヴォルテックス・セイバーが姿を表した。リュウカと共に回収されたヴォルテックス・セイバー。ヴァルガン・ティタンによって半壊した機体を、理緒がこの短時間で修理したものだ。
『さあ、リュウカさん。わたしが愛情込めて直したヴォルテックス・セイバー改、その力、見せてきて、ねー』
理緒が漏らした言葉に、サポートAIである稀が反応する。
『ちょ、おねーちゃん!? 愛情込めただなんて、わたしよりもそのキャバリアとパイロットがいいっていうの!?』
『稀ちゃん、素が出てる、よー?』
思わず素で反応してしまった稀は、理緒からの指摘でなんとか冷静さを取り戻す。
『こ、こほん。ヴォルテックス・セイバー改、本艦より廃棄――もとい、射出します』
『ちょっと、廃棄とか言うのやめてくれません!?』
冷静な声に戻りつつも、不穏な言い間違いをする稀に、リュウカが冷や汗をかき――。
『とにかく、こんな
機体、一刻も早くネルトリンゲンから射出です。リニアカタパルト、発進!』
『ちょっ、まだ心の準備が――きゃああああっ!?』
ネルトリンゲンから高速で射出されたヴォルテックス・セイバー改のコックピットから、リュウカの悲鳴が響き渡った。
●
「くっ、これでも希島未来科学研究所でパイロットの訓練を受けてきているのです。この程度――」
ネルトリンゲンから射出されたヴォルテックス・セイバー改のコックピット内で、強烈な加速度に耐えるリュウカ。ブラックアウトしそうになる意識を意地で繋ぎ止め、憎きヴァルガン・ティタンの姿をモニタに捉える。
「先程は遅れを取りましたが、今回は――負けません!」
ネルトリンゲンから射出された勢いのまま、ヴァルガン・ティタンへと電撃剣を構えて突撃していくヴォルテックス・セイバー改。
「受けてください、必殺の――
電撃剣!」
リュウカの裂帛の気合とともに、ヴォルテックス・セイバー改はヴァルガン・ティタンへと帯電した大剣を振り下ろし――その身体を両断した。
『ガ、ガァアアアアア!!!』
一刀両断にされたヴァルガン・ティタンは、断末魔の悲鳴を上げながら、その身体を崩壊させていく。
多くの世界を侵略してきた悪機の最期の瞬間だった。
こうして、
猟兵たちは、希島商業区の司令塔を襲うオブリビオンマシンの撃退に成功した。
防衛戦は希島側の勝利である。
大成功
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