「ごきげんよう❤️」
「あら」
グリモア猟兵、ロスタ・ジーリードは面食らった。
時刻は真夜中。病室の窓をすり抜けるように、アリス・セカンドカラーが部屋を訪れたのだ。
「ロスタちゃん、今から星空でも見に行かない?」
ナンパ!現れたアリスは開口一番にロスタを口説いた!
「ごめんね、おでかけは職員さんの許可がいるの」
だが塩対応!ロスタはぴこぴこ首を振ってアリスを袖にした。
「じゃあ、ここでお話でも構わないわ❤️」
アリスは食い下がる。
アリスにはロスタを口説きたい理由があった。
彼女の目を通して視たロスタはビジュアル的にも好みだったし、エナジーを吸収して生きるアリスからして見れば普通の人間より純粋かつ多量の生体活力を内包するロスタはアリスにとって『ごちそう』だったのだ。
ただ、アリスもそうした欲求や下心だけで来たわけではない。アリスは自分に近い雰囲気をもつロスタに親近感を感じていたし、純粋に仲良くしたいという思いもちゃんともっている。いかがわしいことをしたい気持ちも少ししかなかった。
「すてきなお話だけど今日はだめ。明日早くから
定期検診なのよ」
だがまたも塩対応!ロスタは緩々首を振る。
「ご病気のこと?」
アリスは再び首を傾ぐ。
「それなら私がなんとかしてみましょうか」
アリスはユーベルコードの力を励起した。病魔召喚――ケルベロスディバイド世界の医術の力だ。
病気が治ればおでかけもしやすいでしょとアリスは提案する。
「あたし、病気じゃないのよ」
だがロスタはまたしても首を振った。
「道具にはお手入れがいるでしょ」
曰く。
特殊な用途のために調整されて作られた人造生命であるが故に定期的な血液交換などの処置が生体活動の維持に必要なのだという。それは仕様通りの挙動のため、あくまでもロスタは『健康体』なのだ。
「でも心配してくれてありがと。あたし嬉しかったわ」
ひとしきり説明するとロスタは微笑んで頷いた。
「なるほど……今日のところは私の負けみたいね」
今の手札ではロスタのガードを崩すには至らない。今回のお誘いは失敗したようだ。アリスは苦笑いする。
「また日を改めてくるわ❤️」
ならば、しつこく言い寄るのも流儀ではない。アリスはクールに踵を返すと、来た窓から夜の街へと飛び込んでいった。
「ええ、待ってるわね」
その背中を見送ってロスタは微笑む。
またきてねと呟く声が静かな夜へと溶けていった。
成功
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