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男二人の北旅行~全力無茶振り体験コース

#シルバーレイン #ノベル #猟兵達の夏休み2023

ディル・ウェッジウイッター



山立・亨次
ディル君(f37834)と合同ノベルを
※以降敬称略

★全てはここから始まった
意気揚々と北海道旅行のプランを語るディル。
北海道初心者が立てかねない計画を一度は最後まで聞きつつも。
「無理だろ」
一蹴(無表情)。
しかし上手いことやれば何とか行けるのでは、と言う彼に少し考えて。
「……そこまで言うならやってみるか」
折れた――のではない。
ならば何故GOサインを出したのか。それは後程判明することとなる。

なお前提として公共交通機関での移動となる。
必要であれば乗り継ぎも(※余り詳細な描写でなくて大丈夫です)
免許持ってないのでネ!

★いざ現地へ(一日目)
取り敢えず1時間強ほどかけて新千歳空港から小樽まで移動。
運河を見てル○オのチーズケーキを堪能するプランである。
但し強行軍になることを理解している亨次。
楽しんでいるディルをよそに運河は10分も経たず移動を促し、スイーツは食べ終わった瞬間移動開始。
「次行くぞ」
(※一日目は終始こんな感じ。殆ど喋らない)

続いて一時間弱ほどかけて小樽から札幌へ。
時計塔は初見では思ったより小さく感じるだろうが写真を撮れたディルは満足そうだ。
スープカレーも美味しい。王道のチキンと野菜のカレーをいただく。
但しここでもやはり強行軍である。

更に一時間半ほどかけて旭川へ。
某有名動物園を堪能するが、30分程度で楽しみきれるわけがないのでいられるだけ滞在。
なおそれでもちょっと駆け足気味である。
そして亨次は無の境地であった。

ここで一日目タイムアップ。
どう考えても観光地堪能しきれていないし何より移動が苦痛である。
ディルの問いには
「実体験した方が伝わると思って」
無表情で悪魔みてえなことを言いやがった。
(※解りにくいがこいつもちゃんと疲れてる)

ここで急遽予定を変更。
亨次お勧めの一箇所だけ向かうことに。

★選ばれたのは、釧路でした(二日目)
魚市場(※和○市場)で勝手丼を堪能し、市内を観光。
(時間的には釧路市立美術館辺りだと余裕があるかと思いますが、MSの裁量やおすすめで別の場所でも可です)
最後は幣舞橋で夕日を眺め、今回の旅行は終幕。
「ネタによっちゃ値は張るが、好きなネタを選べるし味も鮮度も抜群だ。高いだけの価値はあるぜ」
「……だな。三泊四日くらい取ってまた来よう」
※勝手丼の内容はサーモンをメインにお任せ。基本好き嫌いないです。ライスは大。

★キャラ
基本基本無表情で寡黙。
そして実際感情の起伏は薄いが、ちゃんと色々考えたり感じたりはしている。
最後はそれと解らぬほど微かに微笑む(ディルには伝わる)
なおディルは名前呼び捨てorお前呼び(名+姓の相手は基本名前呼び捨て)

★その他
提示した☆(文字数)よりも短く収まっても大丈夫です。



「今、北海道旅行の計画を建てているんです」
 そろそろ世間は夏休みに入るという頃。会話の最中に友人から飛び出した言葉、全てはそこから始まった。
「北海道旅行?」
「はい、色々観光地を巡ってみたくて。案内が居ればなーと思ってるんですけど」
 にこやかに話すディル・ウェッジウイッター(人間のティーソムリエ・f37834)に対し、渋い顔を隠さないのは山立・亨次(人間の猟理師・f37635)。
 亨次の方はこの時点で嫌な予感はしていたのだ。
「……どこに行きたい?」
「新千歳空港からスタートで小樽、札幌、旭川、知床、帯広、最後に函館の夜景を見て終わる。折角行くなら全土を一周したいじゃないですか。この旅程なら一泊二日でいけますよね?」
「無理だろ。お前は東京新潟金沢名古屋を一泊で回れると思っているのか?」
 予想通りの答えが返ってきた。道外に住んでいる道民がよく言われるあれだ。何を言っているんだろうと呆れた態度をそのままに出してみたが、向こうも諦めない。
「多少スケジュールを詰めたら、何とかなるんじゃないですか?旅費は私が持ちますし」
「……ほう……そこまで言うならやってみるか」
 少し考えた後に了承すると、楽し気に行きたい場所を語るディルをじっと眺める亨次。何を考えていたのかは一日目の夜に判明する事となる。
 
 当日。朝一の飛行機で千歳入り。一応、と北海道を本州に重ねた大きさ比較のパネルがあるのでディルにも見せてみたが、あまり伝わっていない様子に亨次は覚悟を決める。
 そのまま快速列車にて小樽へ。時間が早かったためか二人とも心地よい揺れにしっかり寝てしまい、折り返す予定の列車から慌てて降りる事となった。駅からは真っ直ぐ坂道を下ってまず運河へ。
「石と煉瓦、倉庫群の古めかしい外観……素晴らしい」
 写真を撮りまくるディルとは違い、亨次は時計を見ながら様子を窺う。
「次行くぞ」
 写真を撮り終えたと見るやさっさと移動を始め運河から一本駅側の通りへ入り、ショーウィンドウに並ぶ沢山のガラス細工を見ながら奥へと進んで行く。
「綺麗ですねえ」
「ああ」
 カラフルなガラス細工を横目に、目当てはこの地で生まれたチーズケーキ。お土産屋で売っているのとは違い、此処のカフェコーナーへでは出来立てを味わえるのだそうで。
「ノーマルとショコラがあるのか」
「両方頼んでシェアしましょうよ」
 2種とこれも店舗限定だというベリー系のブレンドティーを頂く事にする。すぐに届けられはケーキはふるふると揺れ、いかにも出来立てという感じがした。ナイフで切り分け、半分ずつ分けてから口に運ぶ。なめらかな食感と濃厚なチーズ、ショコラの方あ更にほろ苦さも加わって目を瞠るほどに美味しい。酸味のあるブレンドティーともよく合って、急いだつもりもないのにすぐに食べ終え一息ついたかと思ったら。
「行くぞ」
「え、もうですか?」
 店を出てすぐ横の坂道を上がっていく。途中のお菓子屋さんで名物だというかりんとう饅頭とフルーツ羊羹がかけられたバウムクーヘンを購入して横にそれると南小樽駅。すぐに札幌行の快速に乗り込み来た方へと逆に戻っていく。

 札幌に戻りまずは観光を、と向かったのは時計塔。
「時計塔、意外と小さいですね?あと周りが近代的……ですが素敵な場所ですね、記念に写真を撮りましょう。ほら、亨次も一緒に!」」
 フォトスポット的なところで並んで写真を撮り、すぐ近くのスープカレー屋へ。
「札幌のスープカレー、食べたかったんですよ。北海道の夏野菜がいっぱい入ったのは有りますかね」
 特選夏野菜カレーと、王道チキンと野菜のカレー。届いた瞬間からスパイスの香りが広がり、軽く素揚げされた野菜との計算されたバランスにため息が出てしまう。具材の新鮮さは言うまでもないが、生のヤングコーン等は割と珍しいように思った。
「美味しいですねえ……しかしここまで来るのに結構時間かかりましたね……あれ、次間に合います?」
「駅へ戻るぞ」
 駅で多少の買い物をして向かう先は旭川。バスに乗り換え一寸走って、どうにか入場時間最終ぎりぎりで滑り込んだのは某有名な動物園。
「狸可愛いですね。丸いイメージがありましたが意外とスマート」
 見たものにはしゃぐディルとは対照的に、亨次は無言のまま動物の檻を眺め――その視線はどこか虚ろな気配を漂わせている。此処までの行程で色々な物が擦り減った結果だろう。
「……おかしい、可愛い生き物が好きなはずの亨次の反応が薄い……って、急いで他も回らなければ!」
 残り時間に気付くと小走りに慌しく園内を一周、シマフクロウやエゾヒグマ、タンチョウ、モモンガ、エゾリス、オオワシ等北海道ならではの生き物をざっと見て最後に訪れたのはペンギンエリア。
「……和む」
 じいっとこちらを見上げて来るペンギンと視線を合わせたまま、柵に持たれ力尽きかけているディルの口に飴玉が放り込まれる。
「! 美味しい、これは?」
「小樽で買った」
 身体を起こし、移動しようとしている亨次の手元で光る透き通った金色。創業明治と袋に書かれたその飴玉はシンプルな作りだが、砂糖のみで水飴を使わないからかすっきりとした甘さが体全体に染み渡るようで。
「ちょっと回復したような気がしますよ……って待ってください!」

「わかっててやってますよね?これ二日で周るの無理です……どうして止めてくれなかったんですか……」
 じとり、とした視線を感じる。ホテルに着いて一休みした後の夕食のビュッフェ会場、周囲のにぎやかさとは対照的に二人のテーブルの空気は澱んでいる。亨次が今回は無理かと思っていたジンギスカンがメニューにあったので美味しく頂いていると、向かい側から大きなため息が聞こえた。
「その方がわかるかと思った」
「「くっ……」
 実体験した方が伝わると思った、と肩を竦めつつ告げられた相棒は悔し気な声を上げつつ、気力だけで食べ物を詰め込んでいるようにも見える。食べられているうちはまだ大丈夫かと視線をそらし、皿の肉を箸で拾い上げた。顔には出さないが勿論亨次も疲れていないわけでは無い、行程を理解していた分だけ多少耐えられているだけなのだ。
「街中で温泉があるんですねえ」
 ホテルの大浴場は天然温泉。広い浴槽の湯の中で大きく手足を伸ばせば、少しは疲れもましになったような。
「明日も早いからすぐ寝るぞ」
「ええ……せめてお茶を一杯飲んでからでもいいですか?」
「寝れなくなるから却下」
「そういえば明日はどこに行くんですか」
「そうだな、明日は――」

 翌朝、まだホテルの中が動き出すよりもはるかに前にチェックアウト。駅へ向かい、朝一の特急に乗り込む。
「何故札幌に戻るんでしょうか」
「札幌経由の方が本数があるからな」
 人が少ないので、ゆったり席を使い向かい合わせに座ると、亨次は手に下げた紙袋から何かを取り出した。
「朝飯、予約しておいた」
「おお!」
 テイクアウト用の容器に入っていたのはビュッフェの一部だろうと思われるサラダと肉類メインのおかず、焼き立てのパンに耐熱カップのコーヒー、デザートのカットフルーツまで。
 思いのほか豪華な朝ご飯を楽しんでいる間に札幌へ、ゴミを捨ててすぐに乗り換えたのは釧路行き。
「釧路」
「ああ、のんびりするなら良いだろう」
 時折野生動物が過ぎっていく車窓を眺めているうちに駅に着き、さてどうするかと考えて。レンタサイクルを使いまず向かったのは、北海道三大市場の一つと言われる市場。
「鮮魚市場。なるほど、ここは漁港の街なのですね。活きがいい魚介類が揃っています。これを海鮮丼として食べられる場所がある?」
「ネタによっちゃ値は張るが、好きなネタを選べるし味も鮮度も抜群だ。高いだけの価値はあるぜ」
「食べます」
 という事で、大サイズの丼飯を購入してそれぞれに好き具材を買って乗せるという名物丼に挑戦。二人とも今が旬、かつこの地が名産的なものをと選んだ結果ディルは酢飯に白身魚、亨次は普通のご飯にサーモンとメインは違うものの、似た様な感じになってしまったのは仕方ないだろう。八角や北寄貝、油鰈に大きな頭付きの牡丹海老。蟹や雲丹も、と目につくままに乗せていくと結構なボリュームとなってしまった。厚切りの刺身はどれもピンと角が立って艶も良い。ついでに店の人お勧めの鉄砲汁も購入し、イートインの席に着いて。
「一口食べただけでも鮮度の良さが分かりますね」
「珍しい魚もあるし面白い」
 食感の違いや獲れたてならではの甘味を堪能し食べ終えた後は、腹ごなしもかねてのサイクリング。海側にあるショッピングモールを軽く冷やかし、市立の博物館へ。中心の入り口から大きく横に広がった独特の形をしている建物を見上げる。
「ここの建物は丹頂鶴の姿を模しているそうだ」
「確かに、翼みたいです」
 あまり時間が取れそうにもないので、中には入らずにそのまま通り越して春採湖畔へ。近くのコーヒーショップでそれぞれ飲みものを購入し、暫くのんびりと湖を眺め寛ぐ。天然の緋鮒が居るとの事で遊歩道から湖を覗いてみたが、見つける事は出来なかった。
 日が暮れ始めた頃に街側へと戻り、向かったのは幣舞橋。道東四季の像が欄干に飾られたこの橋は日没に合わせて美しくライトアップされ、何処か幻想的な雰囲気を醸し出している。自転車を降りのんびりと橋に向かって歩いていけば、夕陽がちょうど橋にかかって絵画のような眺めとなった。
「……亨次」
「何だ」
「今度は、ちゃんと時間を取って北海道周りたいです」
「……だな。三泊四日くらい取ってまた来よう」
「でも、来て良かったですよ」
 大変でしたが、と笑うディルをこの日の終わりを告げるオレンジ色が照らす。横に並んで変わりゆく空の色を眺めながら、亨次はディルの言葉にかこの旅をやり遂げた満足感にか、微かに口元に笑みを浮かべていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年08月12日


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