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荒野の果てから夏の煌めきを、遠夜の果てには人々の笑顔を

#アポカリプスヘル #ノベル #猟兵達の夏休み2023 #叛逆の狼煙

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ラブリー・ラビットクロー
ionさま
いつも本当にお世話になっております
御多忙中とは存じますがお目通し頂けたら幸いです
何卒ご検討の程よろしくお願いします

❖概要
グリードオーシャンの島で海のステキを沢山仕入れて来たラブリーは、故郷であるアポカリプスヘルに戻ります。
そこには未だ明日を見通せぬ生活を続ける人々が大勢暮らしていました。
大人はもちろんのこと、子供達も大人と一緒になって働かないと生きてはいけないのです。
そんな子供たちは海を知りません。娯楽を知りません。人生が楽しく、輝いている事を知りません。自分たちにも未来があることを知りません。笑うことを知りません。
なのでみんなに笑顔はなく、黙々と今日を生きるため働いているのです。
ラブリーが向かったのはそんなどこにでもありふれたような普通の拠点。
そこで夏の煌めきがたくさんに詰まった鞄を広げて商売をするラブリーの姿をお願いします。

❖ラブリーについて
‣フラスコチャイルドのストームブレイド×冒険商人
・清浄な空気では生命維持装置(ラブリーの場合は特殊なガスマスク)がないと生きられないフラスコチャイルドです。
今回はガスマスクを外していますが、時折マスクを口元につけて呼吸を整えています。
・アポカリプスヘルで行商人をしています。扱う商品は食料等の生活必需品の他、生きる上では必須ではないような、人生に目標を与える物(スポーツ用品や本、天体望遠鏡、絵具等)がメインで武装の取り扱いは必要最低限です。ですが今回は海からの贈り物がメイン商品になります。ヒトのユメを叶える大商人になる事を目指しています。
・戦闘能力は他の猟兵に比べたら劣りますが、オブリオン・ストームに対してだけは特効能力を持ちます。


‣表情
・無人の都市で目覚めた為、孤独な時間を長く過ごした影響からか感情表現が表情に出にくいです。
口調は陽気でも顔は無表情でいることが多いですが、最近はたくさんの人に触れてほほ笑む等の表情の起伏ができつつあります。


‣口調
・語尾に「~なんな」「~のん」と跳ねるような口調をつける事も多いですが、上記同様に交流が増えて普通の口調に矯正されつつあります。ですが、敬語は使いません。
「人」「夢」「希望」「世界」「未来」という単語はできるだけカタカナで表記していただけると幸いです。


‣性格
・明るく人懐っこい性格です。好奇心旺盛で行動力に溢れます。どんな困難にも決してくじけない負けん気を熱血を内包しています。欠点は迂闊でケアレスミスしがち。そしてあまり知恵が回らないことです。
・ヒトのユメを聞くのが大好きで、ゆめかわいい物を愛しています。子供たちが大好きです。
・未だ世間知らずです。死ぬほど努力すれば、必ず遍く全ての人を救えると信じています。それに至らないのは自分の努力不足だと考えています。

❖プレイング
らぶが拠点に入るとヒトが集まってくるのん。だって奪還者は拠点にとって貴重な存在。みんな仕事の手を休めて大人も子供もらぶの所に来てくれたぞ。
それなららぶも商売開始!
海から仕入れてきたタカラモノを披露しちゃえ。
みんな!らぶはセカイを渡る大商人!今日は海のセカイからとってもステキなモノを仕入れて来たから見てってほしーなん!
ふわふわサンゴに海の一番星のヒトデさん。貝にパールにシーグラス!海のステキを集めてきたんだ。お腹が空いたヒトにはお魚もあるよ。海色のラムネもね!
お代?戦車?鉄砲の玉?ううんそんなんじゃねーのん。
らぶのお店のお代はみんなのユメ。思い出してみて。毎日忙しいかもしれないけど、いつか夜明けが来た時に叶えたいユメがある筈でしょ。
それを教えてくれたらここの商品ひとつ、持ってってもいーのんな。
みんな興味津々で見てくれてる。子供たちはらぶの身に着けた髪飾りが気になるみたい。
キレイ?かわいー?いーでしょ!らぶのとっておきのタカラモノ!
だからね
みんなにらぶのつけたキラキラ全部分けてあげる!
いーい?とっておきなんだよ?だから大切に使ってね!
自然と子供たちがみんな笑顔になっていく
らぶとあそぼーって言ってくれてる
その幸せな空気が大人たちにも広がっていっていつの間にか笑顔でいっぱいになっちゃった!

もーこの拠点は大丈夫
ちゃんと歩いて行ける
だってヒトはとっても強いんだもん
それなららぶは次の拠点を目指すんだ
いつかこのセカイがヒトのユメに包まれるよーに

❖その他
・アドリブ大歓迎です。厳密に口調は設定に沿う必要はありません。敬語を使わないという事だけ抑えてくれれば大丈夫です。
・ラブリーには家族であり、相棒のAI【ビッグマザー】を所持しています。
マザーのセリフは【】で囲って丁寧語を話します。本当は感情が芽生えていますが秘匿されています。ラブリーの掛け声に応じてマザーは喋りますが、マザーのセリフが無くても構いません。
・もしも可能であれば、ノベルタグに #叛逆の狼煙 を入れてくれると嬉しいです。可能ならで結構です。

以上になります。最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。




 その拠点は、生きていくだけでも大変でした。
 大人も子どもも、日が昇っているうちは一生懸命働いています。日が昇っているうちだけというのは、それだけ働けば暮らせるというわけではなく、燃料や電気の供給が極めて不安定だからです。大切な資源はオブリビオン達に立ち向かう為の武器に優先して回されているのです。
 子ども達は主に農作物を育てたり、大人の仕事を手伝っています。土地は痩せていて、おなかいっぱい食べられる日は殆どありません。村で一番博学な大人が子どもたちに読み書きを教えていますが、参加する子はあまり多くありません。一日一日を生きるのに精いっぱいな状況で、役に立つかもわからない勉強をしている時間はないといいます。

 大変な状況ですが、ここが特別に悲惨というわけではありません。オブリビオン・ストームに破壊されたこの世界では、こんな拠点があちこちにあるのです。だから子ども達も、力仕事で疲れたとか腕が痛いとか日々の小さな不満を漏らす事はあっても、今の状況そのものを嘆くことはありませんでした。これが当たり前だったからです。でも同時に、笑顔もありませんでした。明日を見通せぬ生活では、未来への希望なんて生まれるわけがないからです。
 そんな名もなき拠点に、ある日、一人のフラスコチャイルドがやってきました。

「みんな! らぶはセカイを渡る大商人! 今日は海のセカイからとってもステキなモノを仕入れて来たから見てってほしーなん!」
 ラブリー・ラビットクローのよく通る声に、大人も子どもも、仕事の手を止めて集まってきました。
「大商人?」
「外部の奪還者か?」
 危険を厭わず拠点の外を渡り歩き、食料や資材を持ち帰る奪還者は、どこの拠点でも歓迎されます。みんなの目がきらきらと輝いているのを見て、ラブリーもどこか嬉しそうです。
 大きな声を出してたくさん息を吐いたので、一度マスクを手に取って吸い、呼吸を整えます。本当はラブリーの体の事を思えばずっとマスクをつけている方がいいのですが、その事について『マザー』が口を挟んでくることはありませんでした。
「うみ? うみってなあに?」
 ひときわ小さくて痩せている子がラブリーに訊きました。
「海は、うーん……でっかい水たまりみたいなのん!」
「でっかい? ここの拠点なんこぶん?」
「もっと、うーんと、ここからちへーせんの向こうよりも、もっとでっかい!」
 ラブリーが大きく両腕を広げて、子どもが目をまんまるくしました。
【この惑星も、およそ70パーセントは海で構成されています。尤もこれは古いデータなので、現在もそうであるとは限りませんが】
 ラブリーの懐から機械音声がしました。小さい子どもも、他の子どももびっくり仰天。拠点の外の荒野では水はとっても貴重なのに、遠い所にはそんなに大きな水たまりがあるなんて!
 みんな困惑した様子で顔を見合わせています。終わりが見えないくらい巨大な水たまりを想像しようとしているものの、うまくいかないようです。
「じゃあ、海から仕入れてきたタカラモノを披露しちゃうなん」
 よいしょっと、ラブリーが大きな荷物を降ろして中のものを並べ始めます。それを見た途端、子ども達が眩しそうに眼を細めました。陽の光を浴びて、鞄の中から夏の煌めきが零れ落ちてきたかのようでした。
 ふわふわサンゴに海の一番星のヒトデさん。貝にパールにシーグラス。どれもこれも、拠点では見た事もないくらいきれいなものでした。
「すごぉい……!」
「これ、何? お空からお星さまが落ちてきたの?」
「お姫様の首飾りみたい!」
 後ろでは大人たちも息を呑んでいます。知識としては知っていたとしても、見る事なんて一生無かったであろう品物ばかりでしたから。
「お腹が空いたヒトにはお魚もあるよ。海色のラムネもね!」
 日持ちするように干物にしたお魚もありましたが、密閉容器に入った生きたお魚に子どもたちは特に興味を引かれたようです。
「ヘンな生き物!」
「ずっと泳いでるよ。水の中で息ができるの?」
「でも綺麗だねえ」
「こっちはお菓子なの? 食べてもいい?」
 ラムネに手を伸ばす子どもを、母親らしき大人が慌てて制止しました。
「こら、まだお代を払っていないでしょう!」
 それから、おずおずとラブリーへ云います。
「あの、ありがとうございます。こんなに子ども達が喜んでいるの、久しぶりに見ました。素敵な品物でとっても嬉しいです。でも……」
 気付けば周りの大人たちも、皆少し困ったような顔をしていました。最初に品物を見た時は子ども達と同じように喜んでくれていたのに、どうしたのでしょうか。
「うちの拠点には、こんな素晴らしいものと引き換えにできるものがないんです」
「食べ物も皆が食べていくだけの分しかありませんし、物資も……」
「それなら鉄砲の弾はどうだろう、危険な場所を旅する奪還者さんなら役に立つんじゃないか?」
 屈強そうな男性が提案しますが、皆はますます困惑するだけでした。
「ここがレイダーに襲われたらどうするつもりですか?」
「それならそれで、槍や弓矢でも作って立ち向かえばいいだろう。子どもたちが折角こんなに喜んでくれてるんだ」
「それはそうですが、皆の安全と引き換えにするというのは……」
 大人たちが議論を始めだしたので、子ども達は不安そうな顔になりました。こんなにきらきらした綺麗なものがすぐ目の前にあるのに、やっぱり自分たちには手の届かない存在なのでしょうか。
「ううん、らぶのお店のお代はそんなんじゃねーのん」
 ラブリーは云って、子ども達ひとりひとりと目線を合わせます。
「お代はね、みんなのユメ。思い出してみて。毎日忙しいかもしれないけど、いつか夜明けが来た時に叶えたいユメがある筈でしょ」
「……ユメ?」
 子どもがたどたどしくつぶやきます。まるで、随分久々にその言葉を口にするようでした。
「うん。それを教えてくれたらここの商品ひとつ、持ってってもいーのんな」
 子ども達は、最初はしばらく黙りこくっていました。でも、やがて一人が恥ずかしそうにもじもじしながらも手を上げます。
「あのね、……何いっても笑わない?」
「もちろん!」
「じゃあね、絵本を描きたい。奪還者の父ちゃんがね、絵本を持って来てくれたの。でも途中から絵本が破けてて話がわからないから、おれと妹とで話を考えたんだ。それをね、本にしたい」
「ステキなユメなのん!」
 ラブリーが声を弾ませます。そうかなあ、と頭を搔く子どもを、同年代の子ども達が突っつきます。
「お前、そんな事考えてたんだ?」
「絵を描くのが好きなの?」
「地面に木の棒で描くぐらいだよ。道具なんて持ってないし。それに絵本じゃ腹は膨れないって笑われると思ってたから、内緒にしてたの」
 恥ずかしそうに子どもは云います。へえ、と友達たちが相槌を打ちました。
「そっか、ユウにもそういうのあるんだね」
「皆もあんの?」
「私ね、お医者さんになりたい。お母さんの病気を治してあげるんだ」
「ぼくは世界一の戦士になる!」
「戦士? 奪還者じゃなくて?」
「戦士だよ。怪物もヘンな竜巻も全滅させて世界を平和にすんの。カッコいいだろ?」
「だからお前、たまに鍬ブン回してチャンバラごっこしてたのか……」
 一人が話したのがきっかけになったのか、皆次々にユメを語り始めました。
 そのひとつひとつを、ラブリーは真摯にじっと耳を澄ませて聞いています。そしてそれは大人たちもでした。こんな状況でも、子ども達の中にはユメの卵がある。孵化するきっかけを待っている。それを思い出したようでした。
「いつか海をこの目で見たい」と、魚を観察していた子が云いました。
「おかしやさんになる」と、海色ラムネに手を伸ばした子。さっそく小瓶の蓋を開けて、ひと口ぱくり。「あまーい!」
 そしてユメを話した子ども達の中には、お店の商品ではないものが気になる子もいるようです。特に女の子なんかは、ラブリーの髪についた貝やヒトデの髪飾りをじいっと見つめていました。
「お姉ちゃんのそれ、キレイだね!」
「かわいい!」
「いーでしょ! らぶのとっておきのタカラモノ! だからね……」
 ラブリーは髪飾りを外して、少女たちの掌にひとつひとつ乗せました。
「みんなにらぶのつけたキラキラ全部分けてあげる!」
「え、でも……」
「いーい? とっておきなんだよ? だから大切に使ってね!」
 約束ね、と囁くと、少女がみるみる笑顔になりました。
「うん! ありがとう!」
 それから皆、思い思いの品を手にして。
 ひとりの男の子が、大人に何かを耳打ちしました。
「あのね、パパ……」
「ああ。行っておいで」
 それから笑顔で、ラブリーの元に戻ってきます。
「ん? どーしたのん?」
 子どもはしばらく恥ずかしそうにしていましたが、勇気を出して云いました。
「あのね、みんなで一緒にあそぼ!」
「うん、いっぱいあそぼ!」
 子どもがぱあっと目を輝かせます。
「ほんと!? 海のお話もっと聞かせて!」
「その次はねえ、鬼ごっこ!」
「おままごと!」
「ラムネ、一緒に食べよ!」
 次々に遊びの予定が生まれていって、今日はずっと仕事どころではなさそうです。でも、大人たちは誰一人として嫌な顔はしませんでした。
 皆、子ども達がこんなに笑顔になっているのを久々に見たのです。それがどんな食糧よりも、財産よりも、大人たちを幸せにしてくれるのでした。

 その夜は久々に拠点に灯りがともり、子ども達が疲れて眠りに落ちるまで楽しい時間が続きました。
 そして荒野の端に朝日が白い筋を浮かべる頃、ラブリーは拠点を後にします。
「もーこの拠点は大丈夫。ちゃんと歩いて行ける。だってヒトはとっても強いんだもん」
 だからラブリーはまたステキなタカラモノを手に、次の拠点を目指します。立ち止まっている暇はありません。
 ――いつかこのセカイがヒトのユメに包まれるよーに。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年08月10日


挿絵イラスト