【ノベル】『私は氷像』2023
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さんさんとした太陽の下、輝くビーチの氷の城。
「うわあ、綺麗!」
色鮮やかな氷で出来た城の中を探索する2人がいた。
蒼い瞳に太ももまでかかる蒼いウェーブヘアを携えた美女。
オリガ・ホーリエル(黒き天使を支える水着メイド(アルバイト中)・f12132)。
緑の目と太ももまでかかる緑の長髪を携えた色白の美女。
アンナ・フランツウェイ(断罪の御手・f03717)。
彼女達はキマイラフューチャーの海辺のビーチで、海の家のバイトをしていたが、合間を縫って遊びたいと、運良く空いたシフトの休日を縫ってレジャー施設に遊びに来ていたのだ。
その名もままな『氷の城』。猛暑でも涼める上、透き通る氷越しに美しいビーチも見える、海レジャーの最近の看板スポットであった。
城内には様々な氷像や氷漬けにされた物が飾られており。
「次はあっち行ってみようオリガ!かき氷も配ってるって」
アンナは結構にはしゃいでいた。
「(ああ、アンナ、水着でこういう姿を見るのも可愛い……)」
オリガは内心を抑えるので精一杯。
「すみません、もしかしてあのアンナ様でしょうか!」
丁度その時である。氷の城の運営スタッフに声をかけられたのは。
「もし大丈夫でしたら、手伝ってほしい事が――」
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「なんで……なんでこんな事になってるのよーっ!」
氷の城の入り口。先程とは一転した態度で激昂するアンナ。
その怒りに任されてネックツイストをぶち込まれるオリガの姿。
「ちょっとととと、ギブギブギブ!いいじゃないアンナ、暑い夏にぴったりの最高のお手伝いじゃない」
「せっかくオリガと遊びに来たのに氷像になって欲しいといわれたら気分は最悪だよ!」
曰く、レジャー施設『氷の城』における彫像タイプの氷像は、全てスタッフキマイラが自ら凍り付いて展示されているものらしい。
しかし入り口付近の氷像担当者は、連日家で凍り付く練習をし過ぎた為に風邪を引いた為本日は出られなくなったそう。
「馬鹿じゃないの!?」
そこでアンナに目が行った。
「アンナさんとオリガさんの活躍は聞いております。なんでも
2019年『メデューサハンターズ』の城では石化被害者の一体となってお客を賑わせ
2021年『石化温泉』ではドロドロのセメント天使噴水像としてお客を賑わせ
2022年『彫像迷宮』ではメイドタール像としてメイド喫茶の看板娘となりお客を賑わせたとか。
あなた様方でしたら、氷の城の氷像モデルも大評判になるかと思いまして!海の家には許可を頂きますので」
「いやいやいや!?…いや…その、そんなにやってたんだ私達」
「あらぁ?大分彫像慣れしてきたわね。何度もただの物として扱われて、癖になっちゃった?」
「調子に乗るなぁ!?」
締め付けがさらに強まる。
「いだただたた!でもでも、あの時もアンナは可愛かったし、あたしも大好きなアンナの涼しい氷像みてみたいし…だ、だめぇ?」
その声は苦しさと催促が混じっていた。
「っ…大好きなってそんな軽々しく言うもんじゃ」
スタッフとオリガのうるうるした目がアンナに迫りくる。
「……このバイトで給料と、それと別で治療費と輸血代がもらえるなら……」
「利益はもっと凄くなりそうですから問題ないです!ありがとうございます!」
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「さ、て、と。あとは凍らせるだけね。」
氷の城裏方、氷像制作室にスタッフ込でやってきた。
「…一応聞くけど凍っても大丈夫なのよね?」
「はい。ちゃんと芯まで瞬間冷凍、万一倒れても表面の氷が砕けるだけ、溶けても解凍蘇生するという安心タイプの冷凍液体窒素でカチンコチンの氷像にしてしまいますので!」
良く分からないが凍っても死ぬことは無いらしい。
恥じらうアンナは翼を広げ、何かをおねだりし媚びているようなポーズをとる。
膝を崩し、うるんだ瞳が虚空を少し見上げ、人差し指を口元に持っていく。
地にへたり込んだひな鳥の天使が、拾いに来た者に対し、愛を求めている様な、蠱惑的な天使のポーズ。
ここから凍てつく事に少し恐れるアンナ。放たれるであろう液体窒素に覚悟を決めようとしている。
……。
どうしてだろう、来ない。
ふと目線をちらり、オリガに向ける。
「!?」
思わず目を見開いた。
オリガの他に、もう一人オリガがいる。
「ああぁぁっ!ちょっと!今はあたしの番なんだからあぁぁぁぁ!!」
オリガの内には魔王がいる。
内なる凄まじい魔力を内包した魔王オリガ、その姿をコピーした力の分身体が、オリガの意志とは別に突如登場した。
「だめよ。人の嫌がる事をしてはいけない」
「そ、そんな。でもあたしもアンナを愛して」
魔王オリガはそっとオリガの顔に手を添える。
「愛しているなら、オリガも氷になれるわよね?……また彫像にしようとした罰として、オリガは椅子になりなさい。」
そう言うと魔王オリガは。
「え、ん、んっ!?」
困惑するスタッフの足元にあった水分補給用ペットボトルをオリガの口にぶち込んだ。
「んくっ、んくっ……」
アンナをよそに突如始まった氷像作成。
オリガはボトル水をお腹がぼてっと膨らむまで飲まされる。
『さぁ私に身も心も委ねなさい。幸せのまま素敵な氷像にしてあげるわ。』
「ぷはっ、ぐ、ぶっ!?うあっ!」
力技で体を倒され、四つん這いの姿にされてしまうオリガ。
そこに魔王オリガの接吻が迫る。
「ぐ、ぶ…!ん、ぉ…!」
口から口へ、体内に移しこまれるかの様に、魔王オリガから絶対零度の吐息がオリガに吹き込まれる。
この凍てつく吐息には魔王の魅了の魔力が籠っており、オリガは内側から凍り付きながら、魔王オリガへの強制的な魅了にかられてしまう。
「……………………」
「ん…ちゅ…。…ふぁ」
粘りつくように熱くも絶対零度の凍てつくキスにより、瞬く間にオリガの全身は物言わぬ氷となってしまった。
その見開いた、うっすらと氷の貼る瞳を魔王オリガはじっと見つめ、魔眼を光らせる。
『くすくす…。さあ、身も心も悪いようにしない為、アナタはただの氷像になって頂きましょう。ね?』
深紅に輝く瞳から、自己認識、思考、人格を植え付ける洗脳催眠光線が、オリガの瞳に直撃し、思考を植え付けられる。
「……………………」
バキ。パキ。と、空気が凍る音だけがしながら、オリガは四つん這いのまま、真っ直ぐに正面を見続ける、完全な氷像となってしまった。
(あたしは氷像ですわ…。あたしは氷像ですわ…。あたしは氷像ですわ…。)
心まで氷と化した暗示により、最早抵抗する事さえ思いつく事は無い。
アンナはその一部始終を見ていた。
「…ぁ…」
オリガへの悲惨で、でも目を離せなかった氷像作成。
魔王オリガはゆっくりとこちらへ向かって来る。
「それじゃあ、アンナも氷像になってくれる、よね?」
「え、あ、」
ボトルを手に、先程のままのポーズのアンナの頬に手が添えられる。
魔王オリガの顔が近い。
「本当は固められ愛でられることが好きな事、オリガの中に居て知ってるからね。2年前にセメント像になって愛でられてからずっと……オリガみたいに無残で無様で美しい氷像になりたいって、思ってたんでしょ?」
「……」
魔王の魅了にかかったのか、本心の内なる部分がそう言わせたのか。
「うん、モノになるの好き…。…氷像にしてください。」
アンナは氷像になる事を受け入れた。
「いくわね」
「んぐっ!…きゅ…こきゅ…ごく…んぶ…」
先程と同様、ボトルの水を次々とアンナに飲ませていく。
「ん、んんん~…!ほ、ご…ぁ…!」
そこに魔王オリガの冷たき接吻が迫る。
「ん、ちゅ…ん…♪」
愛おしきオリガの吐息が、魔王による絶対零度の息吹が、アンナの身体に通っていき、細胞の1つ1つをくすぐらせ、凍らせて、体の中に美しい氷洞を作り出す。
かろうじて動ける体を必死で震わせながら、何とかしてアンナは魔王を見続けた。
「本当、いい子…。」
魔王オリガはアンナの太腿にそっと手を添え、股、お腹、胸、腕、背中。アンナの身体の全てを愛おしそうに愛撫し。
「んぁ…♪」
その喜びが絶頂に達したのを見て、もう一度淑やかなる口づけをアンナと交わし。
「ひ、ぅ…♪
…………」
魔王オリガの瞳が深紅に輝いた。
(…あれ…私……誰……そうだ…私……私は氷像…オリガ様に愛される氷像…♪私は氷像…♪私は氷像…♪)
再び魔王オリガの唇がアンナから離れると、そこには恥辱にまみれたオラトリオのメイド氷像が完成していた。
真っ白に青白く、全身が氷で染まり上がり、照明の光に反射して煌びやかに輝いている。
「ああ、素敵。素敵よ。何て無惨で無様な…」
「す…すごい、凄いです!吸い込まれそうな程美しい…!」
その様子を見ていたスタッフキマイラも歓喜した。
「これで更に…椅子の氷像に美しいお方の氷像が座っていたら、その方がオラトリオの氷像を愛でている所が見れたら…!すみません、少々熱くなってしまって、しかし…」
「……そう。そうね。そこまで熱望されたら…特別サービスを受け入れるのもやぶさかではないわね?」
そのスタッフの提案に、魔王オリガは乗った。
つい今しがた出来上がった無様な四つん這いの氷像に、静かに腰を下ろす。
寄せて上げるように胸を強調しながら、美しく足を組んで、すぐ傍に引き寄せたオラトリオの氷像をこちらに向けるよう、淑やかな指先をオラトリオの顎に添える。
妖艶な表情を浮かべた所で、スタッフから液体窒素をボンベの中身ごとぶちまけられ――。
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キマイラフューチャー、真夏ビーチの氷の城アトラクション。
氷の入り口を迎えたすぐ正面の広間に、新たな展示品が加わった。
「す、すっげぇ…」
「綺麗…まるで氷の女王様みたい…」
展示され、飾られた3体の氷像。
艶めかしき表情とポーズで見る者を誘わせる『魔王の氷像』。
その魔王に四つん這いの椅子となって座られている、ボテ腹の『椅子の氷像』。
同じくボテ腹で、翼を大きく広げ、我先にと魔王に魅了され続けながらへたり込んでいる『オラトリオの恥辱メイド氷像』。
彼女らの腹の中には水が溜まっており、それは中の水分が凍る事で氷点下以下を維持し、体内に吸収される事無く残り続ける、氷像維持用の液体の役割を持っていた。
バイト契約期間の一週間後、スタッフが溶かしにかかるまで、自然に溶ける事は無いだろう。
お客が訪れる度に、『椅子の氷像』の口から、たどたどしい凍った声が漏れる。
「よ…くおこしに、なぁ…たわね……こうさーび、すしてあげれる…かぁら。かんしゃ…しなさい」
「す、すげえ、どうなってるんだろう。」
「こんなに良くできた氷像がしゃべるなんて…うわあ、この足まで綺れ…ひゃっ、震えた!」
どういう訳か五感もはっきりしており、お客のキマイラ達がその氷像に触る度、快感に塗れて僅かに震え、甘い声を漏らす。
特に彼女らのお腹をさすると、敏感なのか、快楽混じりの呻き声が聞こえる。
そのような評判が評判を生んで、氷の城は避暑も兼ねた大繁盛と化した。
こうして彼女らは暑い夏、キマイラがにぎわう中、絶氷の中で、ただただ愛撫と快楽にまみれる、冷たい氷像を受け入れたのだった…。
成功
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