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輝く湖、二人の甘い時間

#ダークセイヴァー #ノベル #猟兵達の夏休み2023

クリストフ・フロイデンベルク



ユスミ・アルカネン




●夏休みのデート
 ダークセイヴァーの薄暗い世界。広大な大森林の奥深くにある魔王城の近くに小さな湖があった。
 太陽のない湖は本来ならば底なしのような闇が広がっているはずが、まるで星空を閉じ込めたように水底に輝きが灯っている。
 よく見れば湖底の岩盤が微量な光を放っていて、それが幻想的な淡い輝きとなって湖全体を照らしていた。
 そんな美しい湖の傍には天幕が張られ、その中ではユスミ・アルカネン(Trollkvinna av Suomi・f19249)が水着に着替えていた。

「き、着替えるのを覗いたらダメ……」
 頻繁に視線を感じる。……ような気がすると、二人きりで少しばかり神経質になったユスミが天幕の外に声をかける。
「なに、中々姿を見せんので覗きに来るのを待っているのかと考えていたところだ」
 クリストフ・フロイデンベルク(堕ちた聖者・f16927)が揶揄うように軽口を返す。
「ま、待ってないから……覗きにきちゃダメ……」
「くくく、ユスミが魅力的なのだから仕方あるまい?」
 反応を楽しむクリストフの視線は天幕には向けられておらず、口とは正反対に紳士のように背を向けて輝く湖を見ていた。
「も、もう。絶対ダメだから……」
 そんなユスミの慌てる言葉に微笑みながら、クリストフはぼんやりと静寂に包まれる湖を眺め、今こうしてゆったりと過ごしている自らの変化を改めて思う。
(嘗ての私であれば無駄としか思わなかっただろうこうした時間に心躍る、か)
 以前では考えられない変化に僅かに戸惑いながらも、それを受け入れている自分があった。
「人生とは分からんものだ……が、悪い気はしない」
 想像もしていなかった自身の変わりように、面白そうに笑みを浮かべているとユスミの声が近くに聞こえる。

「着替え終わったよ……どう、かな?」
 振り返ればそこには愛らしい水着姿のユスミが居た。
(ちょっと場違い感があるかも……)
 ユスミが自分の恰好を見下ろす。黒をベースにしたタンキニにボトムはフリルのスカートタイプで、以前着た水着と違い子供っぽさのないデザインだった。
 じっと見つめられたユスミは変じゃないだろうかと気にして相手の反応を窺う。
「ほう、想像よりもずっと似合っているな」
「……ありがとう」
 クリストフの真っ直ぐな視線を受けて褒められると、ユスミは顔を赤くして照れを隠すように俯いた。
「クリストフさんは水着を着ないの? ボクだけなんてズルい……」
 少しして落ち着いたユスミが顔を上げ、いつも通りのクリストフの恰好を見てぷくっと頬を膨らせた。
「ふ、そうだな、偶には羽目を外すとしよう」
 クリストフが躊躇いなく外套や上着を脱ぎ棄てると、身軽なYシャツにズボン姿となって湖に飛び込んで輝く水面を揺らした。
「さあ、ユスミも来ると良い」
「うん……」
 ユスミもそっと光の反射で星空のように輝く湖に足を踏み入れ、水の澄んだ冷たさを感じつつクリストフの元に向かった。
「ふ、こっちだ」
「あ、待って……」
 誘うクリストフの手を取ると、引き寄せられたユスミは水の妖精が軽やかに踊るようにその胸に抱かれた。濡れて体に張り付くYシャツが透けて見え、目のやりどころに困っていると体温が伝わり、ユスミは恥ずかしく思いながらも熱い抱擁を受け入れた。
「先程も言ったが実に魅力的だぞ」
 クリストフが優しくユスミの顎に手を添え唇を重ねようと顔を近づけると、ユスミはダメと呟き恥ずかしさに顔を逸らしてしまう。その頬にクリストフは唇を触れた。
「あ……」
 温かな吐息と共に感情が漏れ出す。ユスミは顔を真っ赤にして反対側を向くと、今度は反対の頬にもキスをされた。
「もう……」
 離れようと軽くクリストフの胸を叩くが、そんな甘やかな抵抗を楽しむようにクリストフは微笑んで額にキスを落とした。
「クリストフさん……」
 甘い甘い砂糖のような優しい愛情が伝わり、ユスミはおずおずと顔を上げて目を閉じる。
 ゆっくりと唇が重なり、触れる薄い唇はわずかに冷たいが心に温かなものが広がって溶けていく……。
「ん……!」
 口づけが終わらずに長引くと息を我慢していたユスミが声を漏らして唇を離し、恥ずかしさの余り顔を隠すように湖に潜った。
「ふ、そんなに恥ずかしがることはあるまい?」
 そんな可愛らしい態度を笑っているとクリストフの腕が引っ張られ、共に水の中へと沈み顔を合わせるとユスミが楽しそうに笑っていた。それに釣られるようにクリストフも笑みを零して、水面から顔を出すと水をかけあって楽しそうにじゃれ合う。

「ユスミ……」
 クリストフが悪戯っ子を抱きしめて耳元で囁く。
Mina rakastan sinua...私はお前を愛している
 深く口づけしようとすると、そっとユスミが腕からすり抜ける。
「Olet minulle erittäin tärkeä.」
 そう答えて光の中に溶け込むように輝く湖に潜った。
「ふ、今宵はこのままお前を帰らせたくはないな」
 甘い笑みを浮かべたクリストフがそれを追い駆けて潜る。煌く水中を逃げる愛しい妖精を求め、背中から抱きしめてもう離さないと力を込めた。するとその気持ちに応えるようにユスミも腕をそっと胸に抱く。
(ボクは独りじゃない……)
 そして水中で向かい合うと、二人を祝福するように輝く世界でシルエットを重ね、光に溶けあうように幸せに満たされた……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年08月08日


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