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蒼翠のエルオンタリエ

#アックス&ウィザーズ #戦後


●めざめ
 空に火が灯るようだった。
 辺りは少しずつ明るくなって、薄青く染まった空が次第に東雲に色付いていく。宵の内に大地からいっぱいに水を吸い上げた草花が風に揺らぐと、ぱた、ぱた、と朝露の雫が散った。
 青々と葉を茂らせる枝に身を寄せていた鳥達が口々に歓喜の歌を紡ぎ出す。
 小鳥達に紛れて、ひとりの妖精がううんと大きく伸びをした。

 やがて朝が来る。
 透明な空気も、若い青葉の匂いも。何もかもが澄み渡る、命に満ち満ちた朝が来る。

 ここは、あたしのひみつきち。
 ニンゲンはいつだって窮屈そうだから――ねえね、たまには羽を伸ばしてご覧なさいな!

●しるべ
「みなさん、フェアリーランドというものはご存知ですか?」
 人前で喋ることにあまり慣れていないのだろうか。ヴァルダ・イシルドゥア(燈花・f00048)は俯きがちに口を開き――不意に、肩で寛いでいた青白いちいさなヒトガタに頬をつつかれて、慌ててしゃんと姿勢を正した。
「わたしのようなエルフではなく……旅の導き手と呼ばれる、フェアリーの皆さんが持つちからのひとつなんです。皆さんの中には、実際に目にしたことがある方もいらっしゃるかもしれませんね」
 一なる世界を生み出す力、そこはひとつの理想郷。ユーベルコードとして昇華されたその力は抵抗しないものを自由に招くことが出来る。猟兵たちの中でも見て、触れた経験がある者も少なくはないかもしれない。
 しかし、それがどうしたと言うのだろうか。続きを促すような問いたげな視線を向けられたなら、緊張に目尻を薄く染めたヴァルダはそっと、長く豊かな髪を蓄えた妖精の少女をてのひらに導いた。
 もじもじと縮こまる娘とは対照的に、人見知りをしないらしい少女は胸に手を当てて仰々しくお辞儀をして見せる。『ニンゲンはそうするんでしょ?』と屈託なく笑うその姿に幾分緊張が解れたのか、ヴァルダも今一度猟兵たちにきちんと向き合い、顔を上げてはにかんだ笑みを浮かべた。
「彼女はシエル。わたしの古い友人で……今日は、その……彼女からの招待状を、みなさんにお届けしようと思って」
 曰く。シエルと呼ばれたフェアリーは、猟兵と云う沢山の仲間たちに妹分が世話になっているのだからと、彼らに贈り物をしたいのだとヴァルダに常々せがんでいたのだと言う。『とっておきのひみつきち』が花の盛りを迎えたから、皆にもお裾分けをしたくなったのだと。気恥ずかしげにことのはじまりを紡ぐヴァルダは、もう猟兵たちから視線を逸らしはしなかった。
「シエルのひみつきちでは、みな一様にシエルと同じ目線で世界を見ることが出来ます。背丈の大きな皆さんも、みんな等しくフェアリーの方と同じように過ごすことが出来るんですよ」
 地に咲く花を踏み締め傷付けることもなく、外敵に脅かされることもなく。望めば背には翼を授かり、風のように気まぐれに、自由にそらを泳ぐことさえも叶えることが出来る。花影に隠れ、小鳥と肩を並べて歌うことも。梢の先に身を預け、赤く色付いた草苺を口いっぱいに頬張っても、そこではだあれも咎めやしない。
「生い茂る花の迷路を抜けた先には、睡蓮の湖があるんです」
 底が見えるほどに澄んだ水は火照った身体を冷ましてくれる。浮かぶ花や大きな葉を船代わりにして揺蕩えば、泳ぎが不得手でも水面に揺られることが叶う。それでも不安であれば水嵩の浅い岸近くで足を浸すだけでも、焼け付くような外界の暑さを暫し忘れることが出来る筈。
 遊び疲れてからからに喉が渇いたら、どうぞ岸辺の花に葉の盃を掲げてご覧になって。ぽたり、ぽたりと止め処なく落ちる花蜜が、あなたの喉を潤してくれるから。
「ね、よろしければ。……普段とは違った景色を、見てみませんか?」
 月花のグリモアが淡く咲く。
 転送陣を開くヴァルダの傍で、妖精族の少女がきゃらきゃらと燥いだ声を上げながら猟兵たちを手招いた。


なかの
 こんにちは、なかのと申します。
 冒険の地は『アックス&ウィザーズ』へご案内。
 戦闘はなし、全編たのしく遊んでお過ごしください。

●進行順序
 【第一章】⛺『薄明の森』(断章追加なし)
 シエルのひみつきち、壺の中に広がるフェアリーランドです。
 盛りを迎えた夏花の迷路が一面に広がっています。
 どんな種族の方もこの中では『フェアリーと同じくらいの体躯』に縮んでしまいます。元々ちいさな種族の方はそのまま、普段目線を合わせられないお友達と肩を並べてみてください。えいやと念じれば任意の翼(蝶や蜻蛉、天使、悪魔、竜。お気に召すまま!)を授かり空を飛ぶことも叶います。
 ちいさな妖精族の目線で世界を歩いて、時には飛び回って。人懐こい小鳥たちのふかふかな羽毛に身を預けるも良し、草苺や山桃に齧り付いても良し。普段とは違った景色が見えることでしょう!

 【第二章】🏠『花鏡』(断章追加あり)
 朝靄の晴れた先に広がる大きな湖畔にて、暫し外界から離れて水遊びを楽しみましょう。
 底が見えるほどに透明度の高い美しい睡蓮の湖です。
 大きな葉っぱや花をお船の代わりにしてもいいですし、水嵩の浅いところを歩むのも良いでしょう。
 遊び疲れたときはどうぞ、岸に生い茂る花々のそばへ。
 草葉を巻いた簡易の盃を掲げれば、望むままに花蜜の雫で満たしてくれるはず。
 水着のご指定がある場合はプレイングに添えて頂けましたら幸いです。

●おまけ
 当方のグリモア猟兵達は誰でも、お誘いがあった場合二章のみご一緒いたします。
 はじめましての方でもおはなし相手がほしい方はお気軽にどうぞ。

 皆様のご参加を心よりお待ちしております。
 よろしくお願いいたします!
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第1章 冒険 『薄明の森』

POW   :    真っ直ぐ前に進む

SPD   :    獣道を辿りながら進む

WIZ   :    周囲を見て慎重に進む

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
西條・東
【仮友達】
『だなっ、本当に小さくなっちゃった!まるで巨人の国に迷い混んだみて~!』
中学生になったから少し大人しくしてるけど…これは止められないな!
辺りのものを触ったりするぜ

自分の背中に渡り鳥の翼がいつの間にか生えてたからオスカーのとこにダッシュ
『見て!オスカーとお揃い!』
一瞬悲しげな表情を見てハッとするけど翼が治ったオスカーを見てニコっとする

『うん、行く!ずっと飛んでみたかったんだ!』
一緒に飛んだり小鳥と会話してるのを観察してるぜ
そんで触れたらさわりたい!

はしゃいだら眠くなってきた…俺も休む…
『えと…俺な、ちょっと違くても…オスカーとお揃いに見えるだけで、嬉しい…』(うとうとすやっ)


オスカー・ローレスト
【仮友達】

わぁ、ほ、本当に、世界が大きく見える、ね……凄い……

東……どうし、たの?
翼……良かったね。でも、俺の翼は、お揃いとは……(悲しい顔になりかける
……あれ? か、欠けて、ない?(その背中には欠けてない雀の翼が!)
ほ、本当に、お揃いになれた、ね……飛べる、みたいだし……うん、嬉しい、よ。

そ、そしたら、せっかくだから……小鳥達の所に行って、みよう。【動物と話せ】るから、一緒に飛んだり、その、触ったりしていいか、俺が聞いてみよう、か……

つ、疲れちゃったら、木の影、木漏れ日の下で、休もっ、か……
……東……ありがとう。俺にそう言ってくれるの、嬉しい、よ。



●夏告げの駒鳥
「わぁ、ほ、本当に、世界が大きく見える、ね……凄い……」
 常ならば見下ろすばかりの草花が今は見上げるほどに大きい。花弁の隙間から零れ落ちる朝焼けの光を受けて、オスカー・ローレスト(小さくとも奮う者・f19434)は薄布越しのかんばせを淡く綻ばせた。
「だなっ、本当に小さくなっちゃった!まるで巨人の国に迷い混んだみて~!」
 控えめなオスカーとは対照的に、歓喜に弾む声を上げる西條・東(生まれながらの災厄・f25402)は高鳴る胸の鼓動そのままに笑みを咲かせた。
 (もう、中学生になったから。少しは大人しくしなきゃって思うけど……)
 傍を往くオスカーに、お兄さんらしいところを見せたいと思うのだけれど。
「これは止められないな!」
 オスカーはそんな東を咎めない。その笑みを壊さない。元より東を揶揄うつもりなんて、彼には欠片もありはしないのだから。 

 葉の先で寛ぐてんとう虫の大きさに飛び上がって、慌てて花影に隠れたり。何もかもが大きな世界を歩む中、東は不意に背に違和感を覚えて降り仰ぐ。その正体に気付いた東は見る間に頬を喜色に染めて、少し離れた所で自分を見守ってくれていたオスカーの元へと一目散に駆けつけた。
「東……どうし、たの?」
「見て!オスカーとお揃い!」
 その背に授かった翼に、心からの喜びの声に、オスカーは息を詰まらせる。胸の中に鉛の球のような冷たく重いものが沈み込むようだった。澱み、抑えつけられたような心地に思わず視線を逸らしてしまう。
「翼……良かったね。でも、俺の翼は、お揃いとは……」
 ああ、違うんだ。
 彼に悪意がないことも、本気で喜んでくれていることも分かっている。だのに、この。羽抜けの翼と揃いだなんて。そんなこと。そんなこと、どうか喜ばないでおくれよ。
 オスカーの逸れた視線に、翳りを帯びかけた表情に、自らの失言を察した東が謝罪の言葉を上らせようとするけれど。
 不意に、気付く。
「……オスカー、それ、」
「え?……あれ? か、欠けて、ない?」
 東が指し示したその先にあったのは一対の雀の翼。毟り取られたような痕跡は無く、少し力を込めれば風を抱くように広がって、まやかしの類で無いことが直ぐに分かった。
 ここではひととき、誰もが望むままの翼を得る。嘗て、失ったものでさえも。
「ほ、本当に、お揃いになれた、ね……」
 戸惑いながら、照れを滲ませながらも声を震わせるオスカーに、東は今度こそ諸手を挙げて欣喜した。
「嬉しい!俺、すっごく嬉しい!」
「……うん、俺も。嬉しい、よ」
 重く伸し掛かっていた靄を吹き飛ばすような東の笑顔に、オスカーも今度は頷くことが出来た。
「飛べる、みたいだし……。そ、そしたら、せっかくだから……小鳥たちの所に行って、みよう」
 おずおずと遠慮がちに。それでも君のためにと提案してくれた言葉に、東はくしゃりと笑みを深めて頷く。何時も悲しげに顔を俯かせているオスカーが今は少し楽しそうに見える。それが、ただただ嬉しかった。
 
 東はすこし不慣れな様子ではあったけれど、翼を広げて羽ばたけばふたりの身体は地を離れ、歌う小鳥たちが身を寄せ合う梢の枝先まであっという間に辿り着く。
「俺。動物と話せる、から。一緒に飛んだり……その、触ったりしていいか、聞いてみよう、か……」
 すごい、すごいと燥ぐ東に気恥ずかしげにはにかみながら、オスカーが小鳥たちへ問い掛けたなら。ピィルリとうつくしい声で囀る小鳥たちが口々に是を告げてくる。野鳥の類は何れも警戒心が強いものだけれど、外敵のいないこの世界では他者を恐れる必要が無いのだろう。
 他者へ触れることへの恐れから生まれた躊躇いも、望むままに自由を与えられるこの場所でならと、東はそっと青い小鳥に手を伸ばす。真っ青な羽毛は空気を含んでふくふくとまるく膨らんで、沈むゆびさきに雲に触れているような柔さを伝えてくる。擦り寄せられる頭が頬に触れて擽ったさを覚えて笑えば、その様子を見ていたオスカーも穏やかに微笑んでくれていて。嬉しくなって、東はますますに笑みを深めた。
「……あのさ!」
「うん……?」
 小鳥の頭を抱いたまま、不意に東が振り返る。その姿を穏やかに見守っていたオスカーが首を傾げば、沢山燥いで疲れたのだろうか、東は温もりに半ば意識を蕩かせながら緩やかに口を開いた。
「えと……俺な、ちょっと違くても。……オスカーとお揃いに見えるだけで、うれし……、」
 うとうとと夢心地で紡がれたその言葉に目を瞠ったのも束の間。微かな寝息を立て始めた東の姿に、オスカーは柔く目を細めた。
「……東……ありがとう。俺にそんな風に言ってくれるの、嬉しい、よ」
 この手は今だけは、弦を引き絞るだけの血塗れの朱には染まらない。
 今はまだ彼を友と呼ぶ勇気は無くとも――その眠りを守ること位は、自分にも叶えられるから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神野・志乃
妖精の国……だなんて、あまりに柄じゃなさ過ぎて、少し悩んだけれど
でも、そんなにもしあわせに満ち溢れた世界があるのなら、覗き見てみたい気持ちもあって
こっそり‪‪──‬誰から隠れているという訳でもないけれど‪──‬お邪魔、してもいいかしら

「…………素敵」

色彩のすべてを散りばめたような花畑が、
それらから溢れる咆哮のような芳香に充ち満ちた空気が、
生命の喜びを感じずにはいられない温かな陽の光が、
目に、鼻に、肌に、幸福感を与えていくようで
私なんて場違いかしらね、なんて思っていた気持ちはとっくに何処かへ行ってしまったわ

真っ白な鳥の翼を生やすのは、流石に一寸だけ気恥ずかしさもあったけれど
でも、空を飛ぶのって……気持ちいいのね
太陽が近くて、近くに感じられて、……なんだか、うれしい

燦々と降り注ぐ花色の陽光を浴びながらの空中散歩に時を忘れて興じれば
次第に、きらきらと目を誘う湖が見えてきたから
次はあそこねと、柄にもなく素直に微笑んで降り立っていくわ



●暁の憧憬
 妖精の国。それは魔女としての彼女に近しいものであったとしても、平々凡々な街に生まれた神野・志乃(落陽に泥む・f40390)にとっては夢物語の続きを見ているかのような響きを伝えていた。
 誘いを受けた時、反射的に『柄では無い』と首を横に振りそうになって押し止まり、不自然な間を開けてしまったかもしれない。彼女を招いた妖精族の娘たちはそんな志乃の様子に気を悪くした風もなく、ただただ『すてきなもの』のお裾分けをしたいのだと。方やはにかみ混じりに、方や前のめりになりながら熱心に語っていた姿を思い出す。
(……そんなにも、しあわせに満ち溢れた世界があるのなら)
 一寸、覗き見てみたい気持ちもあった。
「こっそり――誰から隠れているという訳でもないけれど――お邪魔、してもいいかしら」
 躊躇いがちに。それでも、娘らしい好奇心を滲ませた志乃がそう告げたなら。見る間にそれぞれの喜色を咲かせた妖精族の娘たちは諸手を挙げて是を唱えたのだった。

 槿に秋桜、千日紅。名も無き徒花。
 戯れて噛み合うように咲き敷いた花々が微風を受けて身を揺らしていた。
 やがて太陽が目覚めの気配を連れてくる。
 青白い空気の層が、光と溶けあって輝いていた。朝露を滲ませた草葉の姿が、薄霧を綻ばせて鮮やかに浮き出て来る。静かな、遥かな。手を伸ばせば届きそうなほどに近付いた、澄んだ夏の空が直ぐそこにあった。
「…………素敵」
 あらゆる色彩を散りばめたような花々。匂い立ついのちの青い香りに満ち満ちた空気に、あたたかな陽の光が降り注ぐ。生の喜びを感じずには居れぬほど、眼前に広がる世界には沢山の芽吹きと息吹が満ちていた。
 目に、鼻に、肌に。五感全てに幸福を与えられているようで。臓腑いっぱいに澄んだ空気を満たせば、『私なんて場違いかしらね』なんて思っていた先ほどまでの萎んだ気持ちはあっという間に何処かに飛んで行ってしまった。

 夜。月。雨。陰の気に係る術式を基盤とした魔術を幼い頃から叩き込まれて来た。
 宵闇に紛れ、廻り往く太陽に焦がれ、陽の光の下を歩くことを夢見て来た。
 今、志乃を縛り止める鎖は何もない。誰の許しも必要とせず、望むまま、焦がれるままに手を伸ばすことが叶う。真白の翼を生やすのは、一寸だけ気恥ずかしさもあったけれど。
 全身で伸びをするように念じれば、応じるように大きく広がった翼が宙を打つ。ぐん、と一瞬身体が揺れたかと思えば、次の瞬間には志乃は皎天へと身を踊らせることが叶った。
 目覚め行く空は光を浴びて燦々と煌めいて、陽光を受けた木々が、草花がその色味を増していく。風は柔く頬を、髪を撫で、湿り気を帯びた涼やかな空気の心地良さに志乃は暫し時を忘れた。
 太陽がこんなにも近くて。焦がれてやまぬその存在を、全身で感じることが出来て。
「……なんだか、うれしい」
 思わず口をついて出た言葉に驚いて、自分の口元に触れた。
 私はわらっているのだろうか。わからない。けれど、この胸を満たす歓喜に偽りはない。
 視界の端に一層輝く水面のひかりを見とめて、志乃は心のままに翼を広げ大空を泳ぎ行く。
「次はあそこね」
 期待に胸を膨らませるなんて柄にもない。
 そんな風に思わなくもなかったけれど――朝日に照らされた志乃の横顔は、微かな笑みに彩られていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ディフ・クライン
目を開けば何もかもが大きく見えた
妖精には、世界はこんなにも大きく見えるのか
見上げても尚遠い背丈の夏花や木々に
少しだけ心細いような気持ちになった

けれどもとん、と背中を押す感触
見れば相棒の雪精で

ああ、ネージュはそのままの大きさなのか
ネージュを見上げるなんて新鮮だな

そうでしょうと胸を張る雪精の顔を撫ぜた
常から姉ぶる相棒が屈んで背へと誘うから
いつもと逆だねと笑って飛び乗った

行きたいまま走ってよ、ネージュ
君の見ている世界をオレに見せて

彼女が往きたいがままに花畑を往き
大きな花に驚き
草苺を共に食み
薄明の空に目を細める

ところでネージュ、迷ったでしょ

なんにも言い返せない相棒にしょうがないなと笑って
助言をしようか



●姫のまにまに
 月花の光に導かれ、鱗粉の青白い輝きに包まれたその先で。
 ディフ・クライン(雪月夜・f05200)が瞼を開けば、輝石の双眸に世界の何もかもが大きく映っていた。
「妖精には、世界はこんなにも大きく見えるのか」
 見上げても尚遠い夏花から落ちる影、ぽたりと落ちる朝露の雫が大きく肩を濡らして目を瞠る。木々に至っては梢の先を望む事さえ困難で、少しだけ心細さを覚えて一寸だけディフは後退ったけれど。
 とん、と背を押す柔く冷たい感触。振り返れば、雪精のネージュがふすふすと興奮気味に鼻を鳴らして惑うディフを覗き込んでいた。
「ああ、ネージュはそのままの大きさなのか。……ネージュを見上げるなんて新鮮だな」
 どうやら相棒はありのままをこの世界に受け入れられたらしく、小さくなったディフを見下ろすことが出来てたいそう満足げな様子であった。すごいでしょう、そうでしょうと言わんばかりに胸を張るその姿に銀の毛並みを撫でてやれば、言葉に出来ない心細さは次第に薄らいでいった。
「いつもと逆だね」
 常から姉ぶるネージュが仰々しく屈む。背に誘われて飛び乗れば、『私のほうが大きいから、やっぱり私がお姉さんだわ!』なんて声がパスを通じて返って来る。
「……じゃあ、何時もはオレが兄でいいってこと?」
 戯れ混じりに問い掛けたなら、猛烈な抗議の声と共に雪精がびょんびょんと飛び跳ねる。大きく身体が揺れて、慌てて首元の飾りを掴んで振り落とされないように縋った。ごめんごめんと慌てて添えれば、わかればいいのよといらえが返ってくるものだから、見えないのを良いことにディフは相棒の分かりやすさに微かにちいさく吹き出した。
「行きたいままに走ってよ、ネージュ。君の見ている世界をオレに見せて」

 常は自分の肩に収まっている雪精と同じ視線で見るその景色は驚きに満ちていて、跳ねる飛蝗が大地を蹴る軽やかさも、身の丈よりも大きく開いた連なる花々も、何もかもが生命の躍動に溢れていた。
 真っ赤に熟した草苺の群れを見れば、吸い寄せられるように雪精がふらふらと進路を変えていく。『とって! とって!』と強請る声に腕を伸ばして、顔ほどの大きさにもなる草苺を摘み取ったなら。花影の下で薄明を仰ぎ、巡り来る太陽が連れる朝を見詰めながら甘酸っぱい果実を共に食む。ばくんと大きな口で半分以上を持って行ったネージュの果汁に染まった口元を当たり前のようにハンカチで拭った。『もっと姫らしく』なんてお小言も今は遠い。遠い、けれど。
「……ところでネージュ、迷ったでしょ」
 草苺に夢中になっている雪精に問うたなら、まんまるの耳と長い尻尾が驚きに跳ねて、見る間にしおしおと丸まり縮こまっていく。なんにも言い返せないその姿、姉の威厳も姫の威厳も何処へやら。妖精族の娘たちの名を呼びながらわあわあ泣き出す雪精の鼻頭を撫でて、しょうがないなとディフは笑った。
「大丈夫。ネージュ、耳を澄ませてご覧。……ほら、水乙女たちの気配を辿るんだ」
 他の精霊たちと触れ合う機会も格段に増えた。この地はネージュにとっても友人である彼女の世界だ。意地悪な事なんてなにもない。
 言われるままに首を擡げたネージュが水の気配を感じ取ったのか再び駆け出す。
 踊るような足取りに揺られながら、冬しか知らぬ筈だった相棒の成長を垣間見たディフは益々に笑みを深めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

杜鬼・クロウ
【金蓮火】アドリブ◎
翼は黒竜
2020水着着用

小っちゃい言うな
ま、澪と視線一緒とか凄ェ新鮮だよな(笑って手ひらり
同じ身長だと撫でづらいンだけどよ
何時もは閃墨の背に乗って飛ぶから、自前の翼でってのは変な感じがするぜ
お前が先導してくれンのか?
なら、お願いしようかねェ(にやにや

普段見てる景色と全然違く見えるなァ
俺は頬張って食ってる澪が見れたら満足だったケド
折角だ
山桃食おうかねェ(枝に座り食す

鳥?お、触っとけ触っとけ
って俺も?(一緒にもふる
ハ、これぐらいではしゃぎ疲れちまうたァ…まだまだ子供だな、澪は(額の前髪払いつつ暫く静かに寝かす
ちぃっとだけ、寝かしてヤってくれな(囀る小鳥には自分の唇に人差し指あて


栗花落・澪
【金蓮火】
2023水着着用

クロウさんが…小さい…!!

いつも見上げてた彼の目線が近くて嬉しそうに

えへへ、ごめんごめん
自力で飛べそう?
難しかったら慣れるまで支えてあげる!行こ!
と手を引き宙へ

花も木の実も全部おっきいや
僕一度こういう経験してみたかったんだよね
草苺美味しそう!
クロウさんは山桃なら食べれる?
あそこの枝、二人で座るのにちょうど良さそうだよ

やっぱり鳥さんには触りたい…!

クロウさんも巻き込んでもふもふダイブ
全身で感じるふわふわが気持ちよくて
隣に大好きなお兄ちゃん(本人には言わない)がいるのが嬉しくて
鳥さんの羽に埋もれつつ体の向きだけクロウさんの方に向けてぽすりと寄りかかり

……寝そう、どうしよう



●玉響の夢
「クロウさんが……小さい……!!」
 重なる目線、いつも見上げていた彩を違えた瞳が間近にあることに栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が歓喜に声を震わせれば、杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)は「小っちゃい言うな」と柳眉を顰めて嘆息した。
「えへへ、ごめんごめん。……あいたっ!」
 悪戯に目を細める澪の額をつんと指先で軽く小突く。気分を害した訳ではない。燥ぐ弟分の喜ぶ姿はクロウにとって可愛らしいものではあるのだが。
「同じ身長だと撫でづらいンだけどよ」
 頭一つぶん。常は下にある澪の頭は手を置くのにとても丁度いい――口にしたなら澪はその柔らかな頬を膨らませてそっぽを向いてしまいそうだったから、口にはせぬのが花と言うものだ。
「……ま、澪と視線一緒とか凄ェ新鮮だよな」
「でしょー?」
 後ろ手を組んで微笑む弟分に、降参とばかりに手を振りからからと笑うクロウの背には常ならば存在し得ぬ筈の翼があった。
「何時もは閃墨の背に乗って飛ぶから、自前の翼でってのは変な感じがするぜ」
「自力で飛べそう?」
「さァ、どうだろうな」
 黒き宵闇は竜を思わせ、厳しささえ備えた佇まいは場所が場所であれば見る者を圧倒しただろう。少し力を込めれば意識と連動して動かすことの出来るそれを物珍しげに仰ぐクロウの姿に、そわそわと浮き立つ鼓動を抑えることが出来ぬまま、澪は急かすように慕う兄の手を取り声を弾ませた。
「ねっ、大丈夫だよ。難しかったら慣れるまで支えてあげる!行こ!」
「お前が先導してくれンのか?」
「うん!」
 ましろの翼が大きく咲けば、そうあることが当たり前であるかのように澪の身体が宙に踊る。
「なら、お願いしようかねェ」
 見様見真似で羽ばたけば、黒竜の翼が宙を打つ。
 いける、と直感が告げたなら。唇の端を釣り上げ、澪を追い越すようにクロウの身体も空へと舞い上がっていった。

「花も木の実も全部おっきいや」
「普段見てる景色と全然違く見えるなァ」
 秋桜の群生が、擦過する草葉がざわざわと鳴いた。伸びゆく青が撓ないで踊る姿は、涼風に揺すられて自分たちを招いているようにも見えた。
「……あ、草苺!」
 草花の合間に赤く実った果実を見付けた澪の歓声に、思わずクロウの唇から息が漏れた。楽しみにしていたのであろうその声に、「食いたかったンだろ」と目を細めて問えば照れ混じりの笑みが返ってくる。
「クロウさんは山桃なら食べられる?」
 澪の指し示す先に見えたのは、鈴生りに実った山桃の枝だった。
 口いっぱいに草苺を頬張って、可愛く笑う弟分の姿を見ることが出来れば満足だったのだけれど。
「そうだなァ。……折角だ、食ってくかねェ」
 甘いものがそこまで得意ではない自分を案じる言葉が嬉しかったから――口にするのは性に合わないから、こうして捻くれた同意を返すだけだけれど。
 是が返ってきたことが嬉しくて、ますます笑みを深めた澪は真っ赤に熟した草苺を手に小鳥たちが羽を休めている枝を指し示した。
「あそこの枝、二人で座るのにちょうど良さそうだよ」
 枝の根本に身を寄せ合う小鳥たちは突然の来訪者に驚く様子もない。
 お腹いっぱいに頬張った後にお裾分けをしてやれば、つぶらな瞳を輝かせて甘い果実を啄む小鳥の姿に、澪はうずうずと落ち着かない様子。それでも暫くは堪えていたのだけれど。
「やっぱり鳥さんには触りたい……!」
「鳥?お、触っとけ触っとけ……って、うォっ」
 外界では臆病な筈の小鳥たちがひとの気配に怯えずに寄り添ってくれるものだから。とうとう我慢できなくなったのか、手の中の草苺が無くなるとほぼ同時に澪は傍のクロウごと巻き込んで綿雲のような小鳥たちに思い切り飛び込んだ。
「俺も?」
「ふふー、クロウさんも!」
 全身に感じる柔らかな羽毛が肌を擽る感触も、口にこそしないけれど、大好きな兄が隣に居てくれることも嬉しくて。少しだけ体の向きを変えると、澪はクロウの肩にそっと凭れ掛かり甘く目を細めた。
 楽しくて。離れ難くて。未だ微睡のような空の光があたたかくて。細まる視界がそのまま眠りを呼んでくるようで。緩慢に瞬く澪の姿に、くっとクロウが微かに喉を鳴らして笑う。
「ハ、これぐらいではしゃぎ疲れちまうたァ……まだまだ子供だな、澪は」
 子供じゃないもん、なんて普段なら直ぐに返すのだけれど。今この瞬間が壊れてしまうような気がして、ああ、それなら子供だっていいか、なんて。額に掛かる亜麻色の髪を除ける指先が、言葉とは裏腹にあんまりにも優しいものだから――何時しか澪はうとうとと夢へと意識を溶かしていった。
「ちぃっとだけ、寝かしてヤってくれな」
 穏やかなクロウの声に、チュピ、と小鳥たちのいらえがあった。

 目覚めのうたには、未だ少し早い。
 泡沫の如き夢に浸るのも、そう悪いものではないだろうから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アオイ・フジミヤ
りっちゃん(f01013)と

いつもよりも小さい背丈で眺める壺の中の世界は広くて
いつもよりも遥かに遠い空には届かないけれど
隣の友達の明るくて優しい光に励まされる

この世界は人と花が対等で
だからこそ花の強さに圧倒される
クチナシの香を纏い
ひまわりの高さに圧倒されて
ブーゲンビリアのアーチを潜って花を泳ごう

そろそろ本命を探しに行こうか
青い蝶の羽で浮かべばふわふわとした感覚が覚束なくて楽しい
荘厳な羽根の友達を見て天使がいる…と零してしまう

ノウゼンカズラの花弁を花籠にして
天使が大好きな真っ赤な苺をたくさん詰めよう

摘まんだ苺が酸っぱくて目を瞬かせる
ねえ、甘い苺の選び方を教えて?
お土産を選ぶ横顔が幸せそうで嬉しい


硲・葎
あーちゃん(f04633)と。
これがフェアリーちゃんたちの視点か……
すっごい不思議。天使の羽って飛ぶの難しいな。
あーちゃんをお手本に頑張って羽ばたこう。
とってもお花の香りが近いな。
向日葵が普段視線のそばにあるのに、太陽みたいに
遠いや。
羽を褒められたら
「普段はあーちゃんが天使だよ!?私なんかそんな……!で、でもありがと♪今日のあーちゃんは本当に妖精さんみたいだよ」
苺をいっぱい花籠に入れてる妖精さんに
「真っ赤な果実を選んでみよ♪はい、どうぞ♪」
たくさんの赤い草苺を手に。
お土産にお友達にあげたいなあ。今度また適度に取りにきたいな……♪



●咲染めのキャンディ・レイン
 若い葉と花の甘酸っぱい香りが、大地と澄んだ水に触れて広がっていく。
 仄かな冷たさを含んだ風が、色濃い水のにおいを連れてくる。
 爽やかな朝。それでいて圧倒される、いのちに満ちた光景だった。
「これがフェアリーちゃんたちの視点か……」
 惚けたように呟く硲・葎(流星の旋律・f01013)の傍で。常とは違う――何もかもが大きく映る、遥か遠い空に圧倒されていたアオイ・フジミヤ(青碧海の欠片・f04633)が、はっとした様子で振り返る。
「すごい、ね」
 いつもより小さい背丈で仰ぎ見る壺の中の世界はあまりにも広くて、なんだか自分がとてもちっぽけなもののように感じてしまって、ほんの少しの心細さを連れてくるけれど。
「あーちゃん、見て♪ とってもお花の香りが近いよ。向日葵が普段なら視線のそばにあるのに、太陽みたいに遠いんだ。不思議。すっごく不思議!」
 真っ白な翼をいっぱいに広げて、すこし危うげな様子で。それでも満面の笑顔を咲かせながら全身で喜びを伝えてくれる葎の姿に、胸にあたたかな火が灯るような心地がして。アオイはそれまでの心細さが和らいでいることに気付いて、薄らと頬にはないろを乗せてはにかんだ。
「そうだね、りっちゃん。この世界では、ひとと花が対等なんだよ」
 不安げな様子だったアオイのかんばせから憂いが薄れていくことに気付けば、葎もますます笑みを浮かべて声を弾ませた。
「翼って飛ぶの難しいな……、わっ、よっ……と!」
 ふらふらと揺れる葎の姿に慌てて手を差し伸べながら、「こうするんだよ」と常の翼とは違えた透き通る青い蝶の羽を揺らしたアオイはくすくすと堪えきれない笑みを溢した。
「ふふ。私もね、何時もよりふわふわした感じなの。ねえ、りっちゃん。同じだね」
 怖いことなんて何もない。
 そろいの梔子の香りを纏って。向日葵の高さに息を呑んで。あかく、あかく色付いた筏葛のアーチを潜って。
 あなたとふたり、花を泳ごう。

「天使がいる……」
 降り注ぐ朝の光が葎のしろい翼を照らして、きらきらと泡が弾けるように煌めいて。その眩さに、思わずアオイの口から、ほうと感嘆の息と共に言葉までもが零れ落ちていた。
「えっ!?」
 唐突なその言葉に、葎が慌ててふるふるとかぶりを振った。
「ふ、普段はあーちゃんが天使だよ!? 私なんかそんな……!」
 手放しで齎される賛辞に偽りはない。わかっている。わかっているからこそ気恥ずかしくて、思わず跳ねつけてしまいそうになるけれど。うんと、えっと、と。言葉を、視線を泳がせるたっぷりの間を置いて。
「……で、でもありがと♪ 今日のあーちゃんは本当に妖精さんみたいだよ」
「ほんとう? ふふ! じゃあ、私たち……普段ときっと逆さまなんだね」
 はにかみ混じりの『ありがとう』が嬉しくて。つい、もうひとつ言葉を添えたなら。いよいよ熟した苺のように耳まで真っ赤に染めてしまった葎の姿に、アオイはころころと楽しげに声を上げて笑った。

 凌霄花のくるりと巻いた花弁を花籠代わりに。アオイと葎は草むらに舞い降り、友人たちへのお土産にと赤々と茂って実る草苺と向き合っていた。
「……ん!」
 摘んだばかりの赤い実の瑞々しさ。その誘惑に抗えぬまま一口食んだ果実の酸味に目を瞬かせたなら、傍で笑う気配がして。もう、と目元に朱をのぼらせたアオイが葎をちらりと覗き込んだ。
「ねえ、甘い苺の選び方を教えて?」
 飾らない友の可愛らしいおねだりに、ぱちりと目を瞬かせたのも束の間。見る間に笑みを深めて、葎は花籠いっぱいに詰まった草苺を掲げて見せた。
「うんと真っ赤に染まった子を選んでみよ♪ はい、どうぞ♪」
 今にもぷつんと零れ落ちそうな果実を摘んで見せたなら。恐る恐るに食んだアオイの頬が次にはぱっと喜色に染まって綻んだ。
「美味しい!」
 まるで自分を褒められたような心地がして、葎の笑顔も淡く染まる。
 そのままでもこんなに甘くて美味しいのだから、ジャムやお菓子にしてみたらどんなに素敵なものになるだろう。まだまだ暑い日が続くのだから、凍らせて飲み物に浮かべてもきっと涼やかで目にも心地いい。
 ああでもない、こうでもないと。友人たちへのお裾分けを一生懸命考える葎の幸せそうな姿に、アオイは胸の奥底から溢れる喜びを隠さぬまま、いっぱいになった花籠を揺らしていた。
「ねえ、あーちゃん。また一緒に来ようね♪」
「ふふ。もちろん!」

 ひとの姿のままでは見えない景色がある。
 その喜びを愛すべき友と分かち合うことだって、この世界の楽しみ方のひとつに違いない。
 花影の隙間から覗いたその先に。光を湛えた水の気配が、確かに広がっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『花鏡』

POW   :    ボートを漕ぐ。

SPD   :    水面を歩いて遊ぶ。

WIZ   :    水や風の魔法を使って楽しむ。

👑5
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●蒼翠のエルオンタリエ
 木々に囲まれた水鏡に昇りきった朝の陽射しが降り注ぐ。
 湖畔の至る所に折り重なるように咲いた睡蓮が微風に揺れる。淡く光を抱いた白磁の花の中心で綻ぶ、陽光を蕩かしたようなこがねいろの蕊から漂う甘やかな香りが水辺いっぱいに広がっていた。
 目覚めの時を迎えた睡蓮の湖は仄かに夜の涼やかさを残しており、透き通る水面にひたりと身を浸せば噎せ返るような真夏の熱を暫し忘れることが出来る。
 大きな睡蓮の葉は存外に丈夫で、ひとりふたりが乗ったとしても沈みはしない。小枝をオール代わりに、小舟として湖に漕ぎ出すのも悪くない。
 水嵩の浅い所は膝までが浸る程度。よほどの無茶をしなければ溺れることもない。
 湖畔を回遊する鴨たちと触れ合ってもいい。彼らも小鳥たちと同様に人見知りをしないから、頼めばその背に乗せてくれるかもしれない。
 遊び疲れて喉が乾いたら、岸部に咲く花々に葉の盃を掲げて御覧なさい。絶え間なく零れ落ちる花の蜜が、あなたを潤してくれるから。

「ニンゲンの遊び場みたいにとくべつなものはないけれど。でも、だからあたしはみんなを連れてきたかったの!」

 ここはシエルと呼ばれた妖精のいちばんのお気に入り。
 母なる森の祝福をいっぱいに詰め込んだ、真夏の憧憬がそこにあった。
マシュマローネ・アラモード


とっても不思議な世界ですわね!
妖精さんのように小さくなるなんて、なかなか体験できる事ではありません!

【かも🦆さん】
大きなかもさん!いえ、私小さいのですわね?
乗せてくださるのですか?
モワ!不思議な気持ち!童話のお姫様になったよう!

かもさんの背に乗り、朝焼けの湖を観光すると、朝日を待ち侘びるように咲く睡蓮が一面に広がる、水面の花模様。

モワ、かもさん、とってもお優しいのですね、こうして美しい景色を見せにいらしたのですか?
(思わず、すべやかな羽毛を撫でて、感謝と親愛の念を込めて)

幻想的な風景に惹かれて、思い出の一枚として、この風景を残して……旅の思い出として親しい人たちへの記憶の一枚絵を。



●鏡の湖畔
「とっても不思議な世界ですわね! 妖精さんのように小さくなるなんて、なかなか体験できることではありません!」
 風に遊ぶ蝶も、朝告げの歌を囀る小鳥も。揺れる草花も、目に映る何もかもが壮大で。常は見下ろすばかりだった生命に満ち満ちた世界の中心で、マシュマローネ・アラモード(第十二皇女『兎の皇女』・f38748)は心のままに溢れる詠嘆の声を上げながらぐるりと周囲を見渡す。明けきった空から零れ落ちる太陽の光が降り注ぎ、零れ落ちる木漏れ日が水面を照らして、瞬きのような銀箔を散らしてきらきらと輝いていた。
 ふと、湖岸でそわそわとしていたマシュマローネの直ぐ傍に動く気配があった。驚いて振り向いたその先に居たのは、馬と見まごうほどに大きな――一羽の鴨であった。
「大きなかもさん! ……いえ、いいえ! 私今、小さいのですわね?」
 マシュマローネの声に応えるように、グワ、と返事が返ってくる。こちらの言葉を理解しているやらいないやら、尾羽を振りながら歩み寄ってきた大きな鴨はマシュマローネの眼前まで辿り着いたなら、あおい頭をぐいんと向けてもう一度鳴いた。
「乗せてくださるのですか?」
 グワ、とまた返事が返ってくる。
 どうぞと言わんばかりに足を畳んで身を低くするその姿に、恐る恐る覗き込めば。つぶらな瞳は真っ直ぐにこちらを見詰めて来るものだから、マシュマローネは今度こそわあと感嘆を上げて「失礼致しますわね」と一声添えて羽毛に包まれたその背に乗り上げた。

「モワ! 不思議な気持ち! 童話のお姫様になったよう!」
 マシュマローネを背に乗せた鴨は程なくして湖の上に身を浸して水面を滑り始めた。
 教養に礼儀作法、学ぶことも努力も現実の皇女には大切で――今だって修行の真っ只中。遠く離れたラモード星では皇女たる彼女も、絵物語の姫君に憧れる幼き日々が無かったわけではない。
「モワ、かもさん、とってもお優しいですのね」
 だからこそ、今この瞬間の非日常が愛おしい。
 導いてくれた水鳥の紳士に謝辞を告げれば、これまた短くいらえる声が上がる。
 しろく咲くもの。紅を敷いて綻ぶもの。待ち侘びた朝の日差しを受けて綻ぶ睡蓮が広がる水面を泳ぐ鴨は時折喉を震わせて、まるで歌っているかのようにご機嫌な鳴き声を上げていた。
「もしかして……こうして美しい景色を見せにいらしたのですか?」
 労るように。親愛を込めて滑やかな羽毛を撫でればつるりとした表面の下にやわらかな感触を覚えて、その心地よさに微笑んだのも束の間、齎された問いに応えるように鴨がばさりと一度大きく羽を広げたものだから。上がる飛沫の冷たさに、マシュマローネはちいさな喫驚の声を溢したけれど。かもさんも楽しんでくれているのかしらなんて思えば嬉しくなって、少女らしい華やぐ燥いだ声を上げて笑った。

 今日という日の思い出を持ち帰ったなら、愛すべき友人たちはきっと楽しいばかりのお土産話を喜んでくれる。
 きょとんと首を傾いだ鴨の頭はご愛嬌。
 マシュマローネの手にした端末が切り抜いた風景は、どこまでも澄み渡り煌めいていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

西條・東
【仮友達】
『うっかり寝ちゃった…ごめんな!
気を取り直して冒険だ!』
辺りを見渡して何か変わってないか確認

『…あの蓮でかいな!オスカー行ってみたいんだけど、どうかな?』
頷いてくれたらパァと笑顔を浮かべて『レッツゴー!』と手を繋いでパタパタ飛ぶぜ!

蓮に乗れば辺りをペタペタと触って頑丈だと確認
『凄いな…次はファンタジーのお話書こうかな?…あっ、オスカー乗り物酔いしてない?』
『そか、よかった…うん、酔うのがもったいないくらい綺麗だ!』

『ふんわりだけど…妖精が戦いながら旅をするお話かなぁ?』
出来たらオスカーに持ってくるぜ!


オスカー・ローレスト
【仮友達】
う、ううん、気にしないでおくれ……
ちょっとくらい寝ちゃっても、景色は逃げない、から……たくさん遊んで疲れたら休んでも、いいんだよ。

あ、あの蓮……うん、いいよ、一緒に、乗ろう、か。
蓮の葉に乗る時はおっかなびっくり……というか、そうっと乗る、ね。

あ、東、確認してくれてありがとう。
大丈夫そうで、良かった……
ううん、酔ってないよ、大丈夫。
花も水も、きれいだね……

何か、思いついたのかい?
えっと、どんなお話にするのか、聞いても、いい……?

それは、素敵なお話になりそう、だね。
うん、楽しみにしてる、よ……



●いつかきみとなる
「うっかり寝ちゃった……ごめんな!」
 夢の淵から目覚めた西條・東(生まれながらの災厄・f25402)は、傍らでずっと眠りの番をしてくれていたオスカー・ローレスト(小さくとも奮う者・f19434)へばつが悪そうに謝罪を添えたけれど。次にはくしゃりと相好を崩して「なんかすっごく安心しちゃってさ!」なんて真っ直ぐに告げてくるものだから、オスカーの方が狼狽えて視線を泳がせてしまうことに東は不思議そうに小首を傾げた。
「オスカー?」
「う、ううん、気にしないでおくれ……」
 『俺なんかと一緒で安心してしまうの』。思わず喉から出掛かった言葉を飲み込んで、赤く染まりそうな頬を、どうかこの薄布が隠してくれますようにと臆病に願いながら。緩々とかぶりを振れば、次には年長者らしい落ち着きを取り繕ってオスカーは微笑んだ。
「ちょっとくらい寝ちゃっても、景色は逃げない、から……遊んで疲れたら休んでも、いいんだよ」
「へへ。ありがと! よーし、気を取り直して冒険だ!」
 先程までの迷いはない。東は当たり前のように手を差し伸べる。
 呪いではなく、癒す力を籠めれば彼に触れることが叶う。決して言葉にはしないまま。願わくばこのちからが、外の世界での彼の翼にも届いたなら――夢を見すぎだろうか?いや、今くらいこっそりと夢を見たっていいだろう。
「……あの蓮でかいな! オスカー、行ってみたいんだけどどうかな?」
 遠慮がちに伸ばしてくれた手をぎゅっと握りながら、東は水鏡に浮かぶ蓮の群れを指し示す。
「あ、あの蓮……うん、いいよ。一緒に、乗ろう、か」
 躊躇いのない触れ合いにびくりと肩を跳ねさせるも、屈託のない東の顔があんまり嬉しそうに綻んでいるものだから。次第にオスカーの体を支配していた強張りも抜けて、翼を広げるお手本を見せるように先んじて飛び立って見せた。
 おもしろいもの。めずらしいもの。ふしぎなもの。
 向かう先に待っている景色に、ふたり。かたちは違えど、胸を躍らせながら。

 とうちゃーく!と飛び乗る東とは対照的に、オスカーはおっかなびっくりな様子でそろそろと蓮の葉に足を乗せ、沈まないことを恐々と確認しながら、そうっと。間違っても東が自分が乗ったことで水の中に滑り落ちてしまわないように慎重に腰を下ろした。
「あはは! オスカー、大丈夫だよ。ほら、触っても殆ど揺れないし!」
 ぺたぺたと触れる蓮の葉は瑞々しく肉厚で、ちいさな妖精と同じ体躯になったふたりが乗り掛かってもびくともしない。流石に上で暴れたりしたら足を滑らせるかもしれないけれど、大丈夫と言葉を重ねればオスカーも気恥ずかしげに目を細めて「ほ、本当、だね」と微かにはにかんだ。
「あ、東、確認してくれてありがとう。大丈夫そうで、よかった……」
 どういたしましてと胸を張る年の離れた隣人の仕草がなんだか可愛らしく見えてしまって。ふ、と小さく吹き出すオスカーの姿に目を瞬かせるも、直ぐに期待と好奇に胸躍らせながら東はぐるりと視線を巡らせる。
「凄いな……次はファンタジーのお話書こうかな? あっ、オスカー乗り物酔いしてない?」
「ううん、ほとんど揺れない、し。酔ってないよ、大丈夫。それより……何か、思いついたのかい?」
 気遣わしげに顔を覗き込む東に否を唱えれば、よかったと笑顔が返ってくる。たったそれだけのやり取りが嬉しくて、オスカーも先程から落ち着かない胸を押さえながら語り部たる少年の言葉の続きを穏やかに促した。
「えっと、どんなお話にするのか、聞いても、いい……?」
 祝福あれと、さいわいあれと。五感の全てに訴えかけてくる大自然の息吹、異世界の非日常に東の創作意欲は湧き上がるばかり。少しだけ照れくさそうに頬を掻き、東はむずむずと口を緩ませながら言の葉を紡ぎ始めた。
「うん。まだふんわりだけど……妖精が戦いながら旅をするお話かなぁ?」
 強くて、格好良くて、それでいてうつくしく凛々しい妖精の物語。
 ちいさくとも奮い立つもの。ほんのちょっぴり怖がりだけれど、いざと云う時は勇敢な。そんな、ひとりの妖精の物語。
「それは、素敵なお話になりそう、だね」
 その背に咲く翼は。蝶や蜻蛉のものではなくて――、
「――出来たらオスカーにいちばんに持ってくるぜ!」
 あぶないあぶない。
 ネタばらしを最初からしてしまっては、読者の楽しみも半減してしまうと云うもの。意味深に言葉を区切った東に、面食らったように布越しの宵の瞳が丸く見開かれたけれど。
「うん、楽しみにしてる、よ……」
 君が紡ぐ物語なら、きっとやさしいものである筈だから。
 微風に揺れる蓮の葉の揺蕩うままに。何方からともなく顔を見合わせたふたりは、くすくすと内緒話をするかのように笑い合った。

 なあ、どうか驚いて。赤は怖い顔もあるけど綺麗なんだってこと。寒さに頬を染めた葉の鮮やかさも、子どもでも食べられる甘い煙草もどきの味も。俺は全部、全部覚えてるから。
 細い細いえにしを紡いで。結ばれた絆はまだ頼りないかもしれないけれど。
 ほら、またひとつ紙縒りのように重なって――いつかはその糸に、名前を付けることが叶うから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

杜鬼・クロウ
【金蓮火】
アドリブ◎
水着着用

まァ、そういじけるなって
イイじゃねェかすっきりしたなら
お前の寝顔、可愛かったぜ?
写メれたし(嘘が下手なのですぐバレる
冗談って分かってンだろー

鴨と戯れて水遊びするも楽しいかもな
少し浸かってみようや
ン、学んでて偉いぞ(少し真面目な空気壊す。指で水鉄砲を作り、水飛ばす
ハハ、鴨も澪のコト見てるぜ
わ、俺の髪濡らすのは止めろッ
髪のセット崩れる!

童話好きなのは悪いコトじゃねェだろ
俺もお伽噺は好きだし
…王子に?
お前はどっちかというと姫だ、残念だったな(即答
此処ら辺、甘ったるい香りして酔い回るの早そうだから、澪だけでも飲んでこい
悔い残して欲しくねェからよ(頭ぽん
自撮りして見せてくれや


栗花落・澪
【金蓮火】◎
水着着用

うっかり寝ちゃった…頭はすっきりしたけど
鳥さんとクロウさんがあったかいのが悪いんだもん
僕が子供なわけじゃないもん
可愛っ…もー、からかわないでよー!(体ポカポカ

このサイズで見る湖って海みたいだよね
うん、歩こ!
深いところも僕なら溺れないと思うけど
心配かけたくないから無茶はしないよ
ひゃっ…やったなー!(両手で水飛ばし
先に仕掛けたのはそっちだもん

花の蜜は飲みたいな
親指姫みたいで…あ、ち、違うからね!
童話が好きなだけで憧れてるのは王子様で…
あ、いや、童話好きも子供っぽい?
ぶー、かっこよくなるもん
…でも甘いもの苦手だよね?
どうしよう……
自撮り?
うん、わかった!バッチリ撮ってきてあげる!



●緋衣草とハニードロップ
「うっかり寝ちゃった……頭はすっきりしたけど」
「まァ、そういじけるなって。イイじゃねェかすっきりしたなら」
 杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)の揶揄う声に、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が少し拗ねたように唇を尖らせた。
 高く結った髪は崩れてないだろうか。そわそわと胸を騒がせながら、新調したばかりのセーラー襟が折れてやいないかと気にする澪の心を知ってか知らずか、クロウは意地悪く目を眇めて笑うばかり。うう、と小さく唸り声を上げたなら、少しは意趣返しになるだろうか。
「鳥さんとクロウさんがあったかいのが悪いんだもん。僕が子どもなわけじゃないもん」
 ぷくりと柔らかな頬を膨らませながらそっぽを向く澪に、今度こそクロウは声を上げて笑った。
「お前の寝顔、可愛かったぜ? 後で送ってやろうか」
「可愛っ……」
 手の中の端末をちらつかせて見せたなら、かっと澪の頬に熱が昇る。慌てて身を乗り出して「やだ、返して!」と体を叩いてくる力なんて可愛いもので、ちっとも痛くない。
「冗談って分かってンだろ」
「もー、からかわないでよー!」
 クロウは静かに澪の眠りを守っていただけだ。素直にそう告げる気性ではないだけで。
 降参降参と、形ばかりの許しを請うクロウの背中を一頻りぽこぽこと叩いた澪は、もう、と次に咎める声を上げた頃には気恥ずかしげな笑みを浮かべていた。
「ほら、歩こ!」
 目前に広がる湖畔に向けて、急かすようにクロウの手を取って歩み出す。
 澪の腰元を飾るリボンと、海神を模したようなクロウの尾鰭が踊るように遊んで揺れた。

 ひとたび妖精たちと肩を並べたなら、葉擦れや風の音ひとつさえ身体を震わせるような心地だった。ちいさな身の丈で仰ぐ湖は海の如く広がっていて、果てがないのかと錯覚するほど。
 宵の空気を含んでひやりと冷たい水の温度にわあと歓声を上げながら。溺れることはない、もう少し深い所までと足を伸ばしかけた所で、ふと傍のクロウを仰いだ。
「ふふ。心配かけたくないから無茶はしないよ」
 悪戯好きで、意地悪で。それでも面倒見が良くて、何だかんだ優しくて――ほら、今だって。澪が足を滑らせないように、深みへ落ちてしまわないように自分の体でそれとなく守ってくれている。口にしたらそれが無くなってしまうような気がして、惜しくて。背伸びはしないよと笑って見せれば、クロウは片眉を上げて笑みを返した。
「ちゃんと学んでンな。偉いぞ――っと!」
「ひゃっ」
 真面目な兄の顔を見せたのも束の間、身を屈めたクロウが水を掬い上げたかと思えば受け皿にした手を思い切り閉じた。勢いよく押し出された水がびしゃりと澪の顔を打ち、何が起こったのかわからないとばかりにぱちぱちと目を瞬かせる澪の姿に、悪戯が成功したとばかりにクロウは可笑げに唇の端を釣り上げる。
「やったなー!」
「わ、俺の髪濡らすのは止めろッ、髪のセット崩れる!」
 髪を、頬を伝う水の冷たさに漸く我に返ったなら、負けじと両の手で水を打ち上げ応戦を始める澪に今度はクロウが身を仰け反らせる羽目になった。
 跳ねる飛沫はふたつ分。歓声を上げるふたりの姿を、回遊していた鴨が不思議そうに見つめていた。

 一頻り燥いだその後に。岸辺で身を休ませていた澪が、そういえば、と口を開いた。
「花の蜜、飲んでみたいな。葉っぱで雫を受けて飲むなんてさ、親指姫みたいで……あ、ち、違うからね!」
 兄が言葉を返す前にと、慌てて捲し立てる澪の様子に、ふは、とクロウは唇から息を溢す。
「童話好きなのは悪いコトじゃねェだろ。俺もお伽話は好きだし」
 寝物語に幼い日を想起しない訳ではない。成長につれて憧れが薄らぐ者も居るだろう。それでもそれ自体を厭うことはない。
 あれこれ言い訳を重ねる澪が可愛らしかったので、クロウはわざわざそれを口にはしないけれど。
「童話が好きなだけで憧れてるのは王子様で……あ、いや、童話好きも子供っぽい?」
「……王子に? いや、お前はどっちかというと姫だ。残念だったな」
 紛う事なき即答であった。
 あまりにも早く断じられてしまったものだから、頬を真っ赤に染めた澪は今日何度目になったろうか、ぽかりとクロウの肩を叩いた。
「ぶー。僕だってかっこよくなるもん」
 痛ェ痛ェ、と笑いながら。それでも全く堪えた様子のないクロウの姿につんと顔を背けたけれど。「澪だけでも飲んでこいよ」と軽く肩を小突かれたなら、慌てて兄を振り返った。
「……でも、クロウさん甘いもの苦手だよね? 僕だけなんて……」
 どうしよう。遠慮がちに視線を彷徨わせる澪の姿に喉を鳴らして、ぽん、とその頭にクロウの大きな掌が乗った。
「悔い残して欲しくねェからよ。折角だから自撮りして見せてくれや」
「自撮り?」
 おずおずと不安げに揺れる飴色の瞳がクロウを映す。
 その顔は存外に優しくて。ああ、かなわないな、なんて頭の片隅で考える自分がいて。
「――うん、わかった! バッチリ撮ってきてあげる!」

 朝日に照らされた湖岸に咲く花はふたつ。
 夏もそこまで悪いもんじゃねェな、と。口にすればまた、弟分は頬を赤く染めて可愛く怒ってくれるのかもしれない。
 クロウの悪戯心にほんの少しの火が付いたことを、葉の盃を掲げて燥ぐ澪が知るのはもう少し先の話。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ディフ・クライン
ヴァルダとシエルに声をかけるよ

やっと会えたと二人に飛びつくネージュに笑いながら
改めて招待ありがとう、シエル
綺麗な秘密基地だね
ネージュの目線で探検する森は楽しかったよ

ヴァルダも、はじめての案内お疲れ様
頑張ったねと微笑んで
良かったら睡蓮の葉の舟遊びに付き合って?

葉の杯二つに花蜜を満たしたなら
貴女を誘い葉舟を漕ぎ出す

朝陽に照らされた睡蓮に寄せ
ふふ、今なら睡蓮の上にすら乗れそう
ヴァルダがこの上に居たら、それこそ睡蓮の妖精のようだろうねえ

花蜜を差し出しながら笑った
冗談でもないんだけど、なんて言ったら貴女は唇を尖らすのかな

涼やかな風に吹かれながら、睡蓮の湖を揺蕩う
他愛ない会話も楽しくて笑って、花蜜の杯で喉を潤し

あのさ、ヴァルダ
今度一緒に行ってほしいところがあるんだ
……あれから、そろそろ一年経つからさ

左腕のブレスレットに触れながら口を開く
冬の森の奥にクラインが眠る地がある
今まではオレ一人で行っていたけど
ヴァルダのことを紹介もしたいし、報告したいこともあるからさ
……良かったら、二人で行きたい
いい、かな



●夢寐にも忘れぬ
 ディフ・クライン(雪月夜・f05200)を背に乗せたまま、雪精のネージュが全力で草葉を掻き分け一直線にヴァルダ・イシルドゥア(燈花・f00048)の元へと駆けていく。上に乗ったディフががくんと揺れることもお構いなしに急停止したのち、ほんの少し勢いを緩めると改めてヴァルダに飛びついた。
「まあ。まあ。ネージュさんったら、うふふ! ……ディフさん、大丈夫ですか?」
「……何とか」
 ヴァルダの頬にぐりぐりと頭を押し付ける相棒を尻目に、揺れる視界を払うように緩くかぶりを振って。漸く人心地ついたとばかりにその背から降りたディフが、この世界へと招いてくれた妖精族の娘たちへと向き直る。
「改めて招待ありがとう、シエル。綺麗な秘密基地だね」
「でしょう? あたしの好きなものだけを詰め込んだのよ」
 常は自分よりもずっと大きな青年と娘の姿を見て満足げに目を細め、世界の主たる妖精の少女は得意げに胸を張ると青白く光る薄羽を震わせた。
「ネージュや貴女の目線で探検する花の迷路は楽しかったよ」
 自由奔放に走り回って迷子になってしまった相棒のやんちゃは、彼女の名誉の為に黙っていてあげることにして――いや、多分ディフが言わなくても彼女らは分かってしまっているのだろうけれど。
「うふふ。たくさん遊んでいってね。……ねえ、ネージュ! こっちへいらっしゃいよ、いっとう甘い蜜を零す花を教えてあげる!」
 べそをかいていた姿は何処へやら、ぱっと喜びを咲かせた雪精が妖精の少女に導かれるまま再び走り出す。幼子のようにころころと心のいろを変えるその姿に、ディフは勿論のこと、思わずヴァルダも小さく吹き出した。
「ヴァルダもはじめての案内お疲れ様。グリモア、上手に使えたね」
「は、はい! 緊張しました、すごく……、……でも、みなさんをきちんと導くことが出来てよかったです」
 淡くはにかむヴァルダの瞳が柔く綻ぶ瞬間が好きだ。
 頑張ったねと微笑んだなら。貴女はもう、その言葉を素直に受け止めてくれることを知っている。
「オレ達も行こうか。良かったら、船遊びに付き合って?」
 そっと差し伸べた手は当たり前のように取られた。

 朝陽に照らされた睡蓮にふたりで身を寄せる。
 葉の小舟は思いの外しっかりとしていて、これなら大丈夫かとディフは安堵に目を細めた。
「ふふ。今なら花の上にすら乗れそうだね」
「シエルのひみつきちにお呼ばれしたのは、わたしも久し振りで……うふふ! お花の上に乗っても大丈夫ですよ」
「本当? ヴァルダがこの上に居たなら、それこそ睡蓮の妖精のようだろうねえ」
 蜜で満たされた葉の杯を差し出しながらディフが笑えば、ヴァルダの頬がじわりと赤らむ。からかわないでください、なんて唇を尖らせて睨まれたってちっとも怖くない。冗談でもなく本心なのだけれど――あんまり言えば貴女が拗ねてしまうかも。勿論拗ねてしまったって可愛いだけなのだけれど、と。思うだけなら貴女は許してくれるだろうか。
 肌を撫でる風が、ひんやりと湿った空気が心地良い。
 花蜜の杯で喉を潤せば自然と会話も弾んだ。他愛もない遣り取りさえも楽しくて、ただ穏やかな時間が愛おしかった。
「……あのさ、ヴァルダ」
 左腕に添う緋の石。兄の忘れ形見をあしらったブレスレットに触れながら、不意にディフが口を開く。
 どうしましたと首を傾けたヴァルダを見つめるディフの表情は、痛みも寂しさも愛情も、全てを綯い交ぜにしたような淡い笑みを敷いていた。
「今度一緒に行ってほしいところがあるんだ。……あれから、そろそろ一年が経つからさ」
 それは送り火。想いを焚べた火。
 亡き兄達を、母を、在るべき筈だった自分ディフを見送る為の。
 今までは自分一人で行っていた。
 その行為に意味があるかさえも分からないまま、そこに意味があると信じたくて。
 冬の森の奥深く。獣達さえ足を踏み入れぬその場所に、クラインが眠る地があるのだと。告げる言葉をヴァルダは静かに聞いていた。驚くでもなく、厭うでもなく。ただ在るが儘を受け入れて、続きを促すように穏やかに目を細めていた。
「ヴァルダのことを紹介もしたいし、報告したいこともあるからさ。……良かったら、一緒に行きたい」
 貴女が否を唱えない事を分かっている。
 それでも言葉を望んでしまう欲深さを、どうか許してくれないだろうか。
「いい、かな」
「……もちろんです。ディフさんのお母さまにお会いするのは、はじめてですね」
 縋るように見詰める蒼の双眸を見詰め返す陽色が甘やかに細まる。蕩けるように柔らかな声が耳殻を擽って、無いはずの鼓動がマナの奔流となって全身を駆け巡るようだった。兄が分け与えてくれた熱が、こんな時ばかりは少し気恥ずかしい。
 それでも貴女が笑ってくれるなら、こんな自分でも良いかと思う。思えた。

 交わした約束がまたひとつ。
 重ねる度に。叶える度に――きっと何度でも、貴女に恋をする。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リィン・メリア
「寂しい」
……なんて久しぶりの感情かしら
文通を終えた後にぽっかりと胸に穴が開いた気分だった
だから涼むのも兼ねて、気分転換に遊びに来たの

……駄目ね
ヴァルダさんの事を考えていたら、彼女の幻覚が見えて――
って、本物なの?

濡れることもお構いなしに湖の中を進む
水着なんて大層なものは持ってきていないけれど、貴女に会えた嬉しみに勝るものはないのだから
逢いたいと願っていた効果なの?凄く嬉しいわ
絶えずに何度も笑みが零れる

ああ、あの時みたいに手を繋ぎたい
貴女という存在をちゃんと認識したくて
駄目で元々、手を伸ばした

貴女の微笑む姿はまるで太陽ね
全てを包み込んでくれる暖かな陽だまり
あの寂しさはどこか遠くに消え去ったわ



●玉梓の花
 届いた手紙に胸が弾んだ。
 はやく、はやくと読みたい衝動を抑え込みながら、ゆっくりと開く。
 壊れてしまわないように。破けてしまわないように。
 宝物を手にした子どものような気持ちだった。
 言葉を受け取って、心を紡いで。筆を置いたその後のこと。
 胸にぽっかりと穴が空いてしまったようだった。
 焦燥がひたりと押し寄せたかと思えば次には虚しさを連れてくる。
 気が遠くなるような孤独を感じた。
 ひとりきりでいることには慣れていた筈なのに。
 こんな感情は随分と久し振りな気がした。

 勇気を出して一歩外に踏み出せば、この遣る瀬ない寂しさも紛らわせるような気がして。水辺に訪れたなら、気怠い熱も忘れられるような気がして。リィン・メリア(唯にして、・f28265)はふう、とちいさく息を吐きながら広がる水鏡を仰ぐ。
「……駄目ね」
 離れた友の事を思えば、余計に胸に空いた穴が広がってしまう気がした。
 今だってそう。恋しくて、恋しくて。想うあまりにほら、彼女の幻覚さえ見えてしまって、
「…………え?」
 疑問に思うよりも早く、弾かれたように駆け出していた。
 水着なんて大層なものは持っていない。濡れることもお構いなしに湖の中へ歩を進めた。水の抵抗が身を重くして、急く気持ちばかりを後押しするようだった。
 はやく。はやく。声を上げなければ。
 貴女が消えてしまうんじゃないかしら。ねえ、どうか、夢まぼろしではないのだと信じさせて。だから。だから。
「――ヴァルダさん!」
 慣れない声をいっぱいに張った。細く頼りない、上擦った声だった。それでも。
「リィンさま?」
 視線の先に佇むきんいろが微かに揺れて、振り返る。
 ヴァルダ・イシルドゥア(燈花・f00048)は尖った耳の先を跳ねさせて、リィンの姿をみとめれば見る間に頬を喜色に染めて――友が普段着のままに駆けてくるものだから。驚いたように目を丸くして、ヴァルダもまた慌てて水面を蹴った。
「リィンさま、お洋服が……!」
 辿り着く。声も、姿も変わらない。
 貴女と云う存在をちゃんと認識したくて。はじめての海を分かち合ったあの時のように、手を繋ぎたくて。涙が出そうなほどの幸福を、ああ、貴女も感じてくれたなら。
 縺れた足に躓いて、伸ばした手をそのままに。
 転んでしまうと思った先に、身を滑らせたヴァルダがリィンの身体を受け止めて――ばしゃんと一際大きな水柱が立って、後には濡れ鼠のふたりが残されていた。
「ヴァルダさん。ああ、本物なの? 逢いたいと願っていた効果なの? 嬉しい。すごく嬉しいわ」
 貴女に会えた嬉しみに勝るものなんてない。
 服が台無しになってしまうなんて気にすることさえ忘れてしまった。
 嬉しくて。とても嬉しくて。少しだけ怖かった陽の光も、ああ、貴女が忘れさせてくれたの。
「びっくり、しました。でも……、……ふふ! わたしも。わたしも、うれしいです。とっても。とっても、です」
 抱き止めたリィンが怪我をしていないか少しだけ伺うような視線を向けて。その手を引いてそっと立ち上がれば、ヴァルダは陽色の双眸を柔らかく細めた。日向にいるかのようなあたたかい笑みを太陽みたいだと溢すリィンのかんばせも甘く綻んで。微かに周りの空気が膨らむような、まろみを帯びた一瞬の静寂があった。視線が重なって、ふたりは何方からともなく笑い合った。

 全てを包み込むようなあたたかな陽だまり。
 何から話そうかしら。何を、話そうかしら――ううん。きっと、何だっていいの。
 ああ。あの寂しさはもうすっかり、どこか遠くへ消え去ったわ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神野・志乃
水面煌く湖の畔に降り立って、深呼吸

夜に生きた幼少期、一日の始まりは落陽からだった
朝日を浴びて活力を得るなんて、あの頃は考えられなかったけれど
こうして水辺で暁光を受けると、なんだか……

「健康的だわ……」

情緒の欠片もない感想ね、と独りごちながら
何だか恥ずかしくなって周囲を見回すと
グリモア猟兵の……ヴァルダさん?

「おはよう。……って言うのも変かしら」
依頼を受けるときに会ったばかりなのに、今日初めて会うみたいな挨拶するのがおかしくて
妙な声掛けをしてしまいながら、隣良いかしら、と

ヴァルダさんの朝日を見つめる姿が、まるで陽光を受けて輝く月のように見えて
そして、そんな情景に何か、シンパシーのようなものを感じたから
湖面に足をつけながら、少しお喋りをさせて貰おうかしら

……


お喋りの最後には、心からの感謝を
「ありがとう、この世界に誘ってくれて」
最初は少し……気恥ずかしかったけれど
とても素敵な朝日を見ることができたから
「またお話しましょう。今度もまた、良き光の中で」
別れ際に、この御縁が続くようにと祈りを込めて



●遥けき空へ
 翼を折り畳み湖の畔に降り立てば、風を受けて広がる水面が漣のように立ち、白い網のように陽と戯れて揺らいだ。
 神野・志乃(落陽に泥む・f40390)にとって夜に生きた幼少期の一日の始まりは落陽からだった。暮れ行く陽に憧憬を抱きながら迎える夜の帷は暗く重く、朝日を浴びて体が目覚める感覚を、活力を得るなんて。幼き日々の志乃は考える事さえ出来無かった。
 鳥たちの歓喜の歌を聞きながら、湧き出づる水の恵みを受けて。朝露に濡れる草花の青さを含んだ甘酸っぱい空気を臓腑いっぱいに吸い込んで。こうして水辺で暁の光を浴びて。
 ああ、なんだか、凄く――、
「健康的だわ……」
 情緒のかけらもない感想ね、なんて独りごちたけれど。当たり前に受けられる筈の生命の恩恵を得られることが無かった志乃にとって、それは特別な響きを持っていた。
 心からの言葉だった。それでも改めて口にすると少しの気恥ずかしさがあって、思わず誰にも聞かれていやしないかと確認してしまう。
「あれは……、」
 巡らせた視線のその先にきらりと陽光を反射するきんいろがあった。
 (グリモア猟兵の……ヴァルダさん?)
 それは志乃をこの世界へ導いた妖精族の片割れ。
 気配を感じたのであろうヴァルダ・イシルドゥア(燈花・f00048)が振り返る。重なる視線に、「あ」と声を上げたのはほぼ同時のことだった。

「おはよう。……って言うのも変かしら」
「おはようございます。うふふ、おかしなことなど何一つ」
 この依頼を受ける時に会ったばかりなのに、今日初めて会うような挨拶をするのがなんだかおかしくて。困ったように眉を下げて微笑む志乃の姿に、緩やかにかぶりを振ったヴァルダも同じように目覚めの挨拶を口にした。
 陽光を受けて輝く白んだ月のようだと思った。
 その情景に何処か共感を抱く自分がいて、ただ挨拶を交わすだけでは惜しく感じて。「隣、良いかしら」と口にすれば、柔く目を細めたヴァルダは二つ返事で是を唱えた。
 湖面にふたり足を浸して、水の冷たさに驚いて。「つめたい」と声を上げたのは何方が先だったか。誰かと朝を共有することさえ新鮮で、さざめき立つ胸の鼓動を抑えながら。それをそのまま口にしたなら、ヴァルダは陽色の瞳を数度瞬かせた後に柔らかく微笑んだ。
「眠りを抱いた夜の帷。しじまのほとりで星を数え、宵の天蓋をひとりじめすることも特別な時間ですが……。……ふふ! ヴァルダはたくさんのいのちが芽吹いて息づく朝もすきです」
「そう、……そうね。そうなの。そう、なのよ」
 幾度星を数えただろう。
 幾度月を見送っただろう。
 陽に焦がれ、閉ざされた夜の檻に閉じ込められていた志乃にとって、太陽は特別なものだった。真昼の眩さも、人々の息吹も、何もかも。巡り来る朝を迎えられなければ得られぬものに、幾度手を伸ばそうとしても許されることは無かった。
「くろく霞むくらいなら、……しろく暈むほうがよかったの」
 大いなる魔女とは、星に在りて星を摘む。
 私は月でも一番星でもなく。ただ、天つ日に恋をしたの。
 独白のような呟きを遮るでもなく、跳ね付けるでもなく。ヴァルダは志乃の仰ぐ視線の先にある太陽を共に見上げて。やがて、宵の戒めにとらわれたままでいる少女へとそっと体ごと向き直った。
「それでも。……それでも、陽はまた昇ります。今日だけではなく、何度でも、です」
 嘗て自由を許されずとも。
 いま、あなたはここにいる。
 いま、あなたは朝を迎えることが出来た。
「それを……わたしも、嬉しく思います」
 それが傲慢でないのなら。どうか。
 この喜びを共に抱かせてと。告げればあなたは、頷いてくださるかしら。

「ありがとう、この世界に誘ってくれて」
「いいえ。……いいえ! わたしも、志乃さまによろこんで頂けてよかったです」
 感謝を口にすれば、大いに照れを滲ませながら慌てるヴァルダの人馴れない様子を見て。もしかして、似ているのかしら。彼女も同じ気持ちでいるのかしら――なんて思えば、志乃の心にもあたたかな灯が宿るようだった。
 胸の内を誰かに溢すことも、草木や小鳥たちが目覚める時間を共有出来たことも。最初は少しだけ面映い気持ちだったけれど、とても素敵な朝日を見ることが出来たから。
「またお話ししましょう。今度もまた、良き光の中で」
 願わくば、このえにしが続きますようにと。
 祈りを込めて呟く志乃の言葉に、ヴァルダはそのかんばせに笑みを咲かせて頷いた。

 陽は高く昇り、普くものを照らし出す。
 その先にあたたかないのちの廻りを感じて、わたしたちは今日も生きていく。
 ――今日はとても、良い天気だから。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年08月16日


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#戦後


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「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

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 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


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