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【旅団】煌燃の継緋

#シルバーレイン #宿縁邂逅


【これは旅団シナリオです。旅団「(旅団名)」の団員だけが採用されます】


 燃えている。
 世界が煌々と燃えている。

「(あぁ)」

 燃えている。
 世界が炎々と燃えている。

「(私は、)」

 陸遜の過る思考に応えるものはなく、心の憂いを知る者は無く身を焼く焔だけが友となる。
 聞こえる勝鬨は今や遠く、寧ろ興味さえ湧かない自身にどこか笑ってしまう。

「……平らなる世の礎となるならば、しかし」

 憂うのは家族は勿論一族のこと、そして“子孫のこと”。
「(先を見ていたつもりではあったのですが……)」
 見すぎていたのだろうか?それとも“誰か”の逆燐に触れたのか……と思うには、少々遅すぎた。引き返すのにも遅すぎた。

 後悔とは後から来るものなどと幾度も体験してきたというのに、何を今更。
 そうして、その時“陸遜”という男は焔海にて灰になった――はず、であった。



 ふと目が醒めた時、陸遜は己が人成らざる者なのだとすぐに自覚した。
 そして未練がましいと自身を笑ったのち、過るのは死の直前思った子孫のことであると同時に、何故自身が地獄にて罰されることも無く此処にいるのか――……。
「……なるほど。嫌疑は多少晴れた、といったところでしょうか」
 おそらく子孫が自身にかけられた嫌疑を晴らしたのだろうと推察に足る材料は、己の胸の内に溜まっていたはずの蟠りが柔らかに薄らいでいるように感じられたから……に他ならない。
 ならばこの場にいる理由は何か。
 懐かしき四千年の歴史続く故郷の空気では無き、海向こうの隣国の気配があるこの地に居る、理由。
「(私は何か探さなければならない……?)」
 どくどくと胸で息衝く焔の衝動。
 けれどそれは“燃やしたい”という破壊的な衝動ではない。
 残り少なき薪が炭となる前に、埋め火のように奥底に残る火を継ぎたい衝動に突き動かされるように陸遜の爪先は前を向く。
「さて、ならば私にはまだお役目がある……そして継がねばならぬものがある、ということか」
 諦めきれなかったわけではない。
 ただ忘れられない心配と後悔からの、無念。
 伝え損ねた緋焔の燈し方を。
 示し損ねた緋焔の扱い方を。

 “伝えねばならない”――ただ、それだけ。

 人成らざる者だからこそ、現代の地理に詳しくなくとも“探し求めた者”へと行き当たる。
 日が傾き、世界が燃えるような朱の光に包まれる――その時に、君と邂逅す。


「ごきげんよう、陸様」
「壽春様?」
 日傘を差し微笑む壽春・杜環子(懷廻万華鏡・f33637)に声を掛けられた陸・慧(今はまだ燃え上がらぬ陸家の炎・f37779)がきょとんとすれば、手紙を取り出した杜環子が瞳を細め何かを含んだような微笑で告げる。
 ジィジィと鳴く蝉の声騒々しく。
「陸様、火急のお報せで御座います」
 ほたりと伝い落ちた汗はきっと夏のせいだ。

 かろん、とグラスの氷が麦茶に躍る。
「わたくし達はある意味ご同業。陸様も幾度かお顔をご覧になった経験もありましょう」
 白く細い指が机上に写真を滑らせようとも、慧自身あまり覚えはなかった。
 自身にも、弟にもよくにた男であるということだけは分かっているものの、名を言えと言われればつっかえたように口が動かない。
「……いや、」
「よろしい、では……最初に思い浮かぶのは誰ですの?」
「弟……でしょうか」
 青より青い瞳で弧を描いた杜環子がじぃっと慧を見つめると、ふっと微笑み向けたのは新たな問い。
 思いつく範囲は自身か弟なのだがわざわざ慧に聞いてくるのだから慧、という答えは自然と消える。つまりは消去法で答えは一つになって。
「なるほど、貴方の弟様。ならば難しい話しでは無いことでしょう」
「え……?」
 よく似ていらっしゃるのねぇ、と人好きする微笑みを浮かべた杜環子が“良かったわ”と口にしてグラスを傾けほほほと笑う。
 一方の慧はと言えば、てんで答えが得られず首を傾げるばかり。
「そうね、貴方の先達として助言をするのなら……――どうか、黄昏時にはお気をつけて。きっと“あのお方”は貴方様を待っておいでなのだわ、わたくしには分かります。ふふ、親心というのは尊いものですのね」
「待つ?待ってください、誰が――」
 目の前の彼女は人ではない実は器物。
 ヤドリガミ、という存在は人というか物に寄るのだろうがどこか人を可愛がる揶揄う性質がちらりと覗く時がある。
 杜環子は自己申告だが一世紀など軽く超える程度には生きていると聞いた。だからなのか、まるで幼子に教えるようにヒントだけを散りばめた言葉を陸へ向け、柔らかく答えをはぐらかしたまま帰ろうというではないか。
 慌てて引き留めようとした慧へ振り返り様に懐の扇子を抜き胸を突くと、待っていたのは厳しい顔。
 戸惑い見れば、視線がぶつかって。
「だめ。どうぞお考えくださいませ、きっと“今すぐ”には浮かばずとも自ずと胸の内にの陸様が答えを教えてくれることでしょう。そして貴方方“人”の紡ぐ血脈の意味を知ることなりましょうや」
「血の、意味……ですか?」
 にこりと微笑んだのち、“あらやだわたくしったらお話しすぎちゃいました!”などと少女ぶり、茫然とする慧を置いて草履の踵を鳴らすと日傘を差して微笑んだ。
「ごきげんよう。どうかお気をつけて」


皆川皐月
 お世話になっております、皆川皐月(みながわ・さつき)です。
 こちらは“宿縁邂逅シナリオ”となっているため、『明かし屋敷』の団員だけが採用されます。
 リクエストありがとうございます、精一杯務めさせていただきます。どうぞよろしくお願い致します。

🔥ギミック
 ・黄昏時の緋戦場
  それは伝えるべき焔の一片。
  血より濃く鮮やかな熱の輝き凝縮したそれは“夷陵再燃”を以って陸遜が陸慧へ示す焔の一つの紡ぎ方。
  なぜ地が焔で満たされるのか。
  記憶だろうか。
  その疑問を解き告げよ、出来ぬのならば灰となれ。

 ☆陸慧が戦場へ立つ限り紡がれ続ける陸遜のUCです。
  見つけた答えを伝えれば展開が抑えられるかもしれません。

🔥時間:誰彼時、妙に人気ひとけの薄い公園にて

🔥きみよ、どうか知れ
 人生の使い方を、在り方を

 それではどうぞ宜しくお願い致します。
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第1章 ボス戦 『陸遜』

POW   :    夷陵再燃
レベルm半径内を【夷陵の戦場を覆った炎の再現】で覆い、範囲内のあらゆる物質を【熱風】で加速、もしくは【炎の壁】で減速できる。
SPD   :    紅蓮秘纏
自身と武装を【不可視の炎】で覆い、視聴嗅覚での感知を不可能にする。また、[不可視の炎]を飛ばして遠距離攻撃も可能。
WIZ   :    流星火刃
【意志の強さに比例して燃え上がる炎の神気】を込めた武器で対象を貫く。対象が何らかの強化を得ていた場合、追加で【燃焼】の状態異常を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

 
 ――答えが、見えなかった。
 恐らく今日態々自身の下を訪れて来た彼女は“知っていた見えていた”のだろう。同業だからこそ分かる、あれは一種の忠告だ。
 自身よりも彼女を良く知る後輩に聞けば、“なら聞いておけばいいんじゃないのか”という酷くあっさりとした回答が返って来た。冷たいとは思わないが、確認を促さず“聞け”という。

 徐々に日が傾いてゆく。

「……そろそろ私も帰らないと」
 どうして今日この場に来たのか、少し思い出せなかった。
 彼女と会って、ふと時間が空いてしまったと気が付いて、それで……それで?

 特段、理由が思い出せない。
 明確に予定があったわけではなくて、目的も……ただ惹かれるように此処へ来て。

『―――、――』

 パチ、何か爆ぜるような音に咄嗟に振り返る。
 けれどあるのはただ鮮やかに眩く目を晦ますほどの夕日だけ。

「(まるで、)」

 そう、まるで“世界が燃えているような”夕日だけ。
 
 
 



 そうして過ぎ去ったものは、所謂走馬灯だったのだろう。

「(燃える)」

 目覚めた青年は世界を再認識する。
 燃えている――夕日が?違う、自身が。熱い。熱い。熱い!!!
「(燃えるッ――!!)」
 悲鳴を上げようものなら喉が焼けるだろう。
 藻掻けど苦しめど先の見えぬ焔の向こうに立つ人が、言った。
『……ここで、灰となりなさい』
 分からないと藻掻く子孫が“生物”が古来より恐れる焔という存在に屈するというのならば、それまでと。


 すぐそこにある全ては眼を開かなければ見えるまい。聞くだけが全てにあらず。見るだけが全てにあらず。
 思い出せ、“全て”を――!
 
 
 
南天庵・琥珀
亨次(f37635)と

慧、大丈夫か
助けに来たぞ
……しかし、炎……か

すぐにでも火を消してやりたいが
普通に水をかけても無理そうだな
公園全体にも広がってるみたいだし
ユーベルコードの力……なのだとしたら
……倒す……しかないのか?

正直俺は相性が悪そうだ
待雪草は諦めない指定UCで支援を
亨次は寒冷地での動き方は心得ている筈
消すことは出来なくても……少しでも熱が和らげば

相手の攻撃は雪兎幻想決勝輪で受け流しか弾き返すか
難しそうなら出来るだけ衝撃を殺せればいいが

……
…………
………………

……きょうじ

………………あつ、い

……ごめん、
………………ごめん

(ふらり、汗と熱で激しく疲弊消耗し
そのまま倒れて意識を失う)


山立・亨次
南天庵(f36445)と

中華鍋で炒められる食材の気持ちが解るな
……解ったところで、だが

そう簡単に解決するなら火達磨になってねえだろうよ
だが……そうだな
術者を倒して解除すんなら速攻を狙うべきだな
陸もあんな状況だしよ

これでも一応人肉食い・料理は好き好んでやらねえんだが
緊急事態だ、行儀の悪さは目ぇ瞑れ
こちとら仲間殺されかけてんだ

狩猟神饌・生饌指定UC
森人の叡智猟理道具で剥ぎ取りに行く
皮膚だけでも食らえれば上等
寒冷地? 慣れたモンだな
寧ろ火の勢いが強すぎて環境適応も何もあったモンじゃねえよ

変身後は攻撃方法を爪に切り替える
少しでも多く奴の体力を削らねえことには

……どうした南天庵

……!
そうか、お前
(珍しく、解りやすく目を見開く
そうだこいつは――雪女だった)

……チ、
(倒れる身体を受け止め、以降防戦一方に)

……早く来い、早く来い……!
俺もこいつも、陸も……長くは持たねえぞ!



●赫き昔日せきじつ
「――慧!」
 叫ぶ南天庵・琥珀(ナイトタイムドリーマー・f36445)の声が聞こえないのか、炎の向こうの陸・慧は悲鳴を上げ悶えるばかり。
「助けに……っ、!」
 迸る炎が琥珀の言葉を遮った。
 弾かれたように琥珀がそちらを見れば、焔の主ゆえかオブリビオンゆえか、汗一つかかぬ涼しい顔の陸遜が興味深げに瞳を細めて問う。
『おや、君達は“これ”を知っているのですか』
「まぁ、ある意味友達だね!」
 強がった琥珀が咄嗟に迫る焔へ雪兎幻想を放つも、雪兎達は琥珀の周囲の炎を瞬き程度に弱めるだけで、どれもが弱り溶けてしまう。
 あつい。
 あつい。
 ただ息をするだけで全身が摩耗する。
『――ほう。君は、』
「ったく、こんなところで中華鍋で炒められる経験をするとは思わねぇだろ……!」
 じっと琥珀を見つめながら興味深げな視線と焔を差し向けた陸遜の焔を切った山立・亨次(人間の猟理師・f37635)が大きく息を吐こうとして止める。
 呼吸さえ、熱い。
 火の前に立つ経験はあれど、焔はそう多くない。まして殺意に満ちた焔の前など少なくて当たり前だ。たしかに“気を付けて”と微笑んだ先輩の姿を見た。
「(けど、こんなならもっと言ってくれ!)」
 “本当に大切なことは自分自身で見つけなきゃ”なんて。お茶目なんて規模ではない。
「……解ったところで、だが――そう簡単にゃ解決しねえってか。あいつだって火達磨になる必要なんざねえしな」
 ならば、亨次自身は何をするべきなのか。
 琥珀が声を掛けた時点で分かったことだが、今の慧に言葉は届かない。そして陸遜はとてもよくこちらを“見て”いる。
「(隙がねぇ……)」
「ほんと、厄介な炎だ。すぐにでも消してやりたいが普通の水をかけても無理そうだ」
『“私の焔”はその程度では消えませんよ』
 にこりと笑う陸遜は亨次の警戒通り隙が無い。
 ほた、と琥珀の白い頬を汗が滑る。いくつも、いくつも、滑る。
「――亨次、恐らくこの炎は公園全体に広がってる。俺達にきっと逃げ場はない」
「なら術者を斃すしかねえ。速攻かけるぞ」
 “陸の状況もあんなだしよ”――そう冷静に、焦りなくした亨次が静かに口にすると深く息を吐き、呼び起こすのは故郷カムイの神霊。
 猛き冬と戦い続ける強き国の祖を火焔のせいで赤々と染まった森人の叡智へ降ろし、猛然と焔の中を跳ぶように駆け揮う。
「逃がさねえ」
『その刃は人斬りには向いていませんね』
「んなこと当たり前だ。俺は料理人、人食いも人肉料理も好みゃしねえ。だが――緊急事態だ、歯食い縛れ俎板に乗れ
 UC―狩猟神饌・生饌―!
 踏み込み振るう全力籠めた包丁の切っ先が躱される。舌打ちする間さえ惜しく、振り返り様に揮う切っ先が陸遜の服を削ぎ肌に赤い一閃を走らせた。
 だが、足りない。
「(もう少し)」
 あと一歩の踏み込み。あと一歩の――……。
「亨次!!伏せろ!」
「っ、ぐ!」
 ゴウっと熱風纏い射出された石が亨次の死角から襲い来る。
 琥珀の機微で間一髪を逃れるも、削がれた米神から流れる血が汗に交じり地に落ち焼けた。
『――おや、惜しい』
 唯一涼し気な陸遜のみが、赤々とした焔の中、悠然と立っている。

「(亨次が足りないんじゃない、きっと――相手の、陸遜の踏んできた場数が違う……!)」
 確かに、オブリビオンとはある種の過去だ。だが、陸遜という男は過去“在った”のだ。人として、武人として。
 襲い来る焔をなんとか雪兎を跳ねさせ紙一重で逃れていた琥珀は、思う。
 武人としていくつもの難所も戦場も越えて来た陸遜から見れば自身達など雛どころか赤子に等しい。
 生まれ持った体躯を活かし包丁揮う亨次の狙いは、恐らく疾うに陸遜にバレている。そうしてあえて紙一重で躱されている。
「(煽ってるみたいにも見える……けど、亨次も冷静さはまだ失ってない)」
 陸遜は亨次に対しても自身に対しても決して侮ってなどいない。
 ただ冷静な目で見れば、まるで“伸ばす学ばせる”ように振る舞っているように見える。
 亨次に足りない一歩を教えるように。
 それこそ言葉にするより実践でこそ学べる一歩を叩き込むように。
 ならば琥珀自身も猟兵の先達として今の亨次に、慧に、何をしてやれるのか――……落ち着いて考えようとする傍からほたほた、琥珀の額から滑る汗の量が増えている。
 尋常ではない熱さは雪女である琥珀の軸さえ溶かさんとしていた。今この場で全力を揮える時間はそう長くはないだろうと……雪女としての勘が、告げているから。
「ま、正直相性は悪いんだよな……元々。けど、俺は戦う。俺は諦めないよ。一人の仲間として助けになることを。だからこの花を贈ろう」
 UC―待雪草は諦めない―!
 爆ぜ燃え空気さえ焼いた炎を、白く塗り替える凍風が嘗め世界を変える。
 吹き荒ぶ白は等しく息を殺させただ一時、躍動する赫を殺した。
『……なるほど。貴殿はそうあるのですね』
「そうだな、きっと俺はこの場貴方と相性が悪いんだろうけど」

 息白むほんの一瞬の間を駆ける、足音。

「ちと行儀が悪いが、急いでるんでね!」
『ほう。貴殿は雪に慣れている』
 たった一回。今この場で突如降り積もった雪に陸遜が足取られたこの瞬間。
 この一回の今を逃せばきっと捕まらない――!
 踏み込んだ亨次は常よりさらに一歩大きく踏み出し包丁を揮えば、再び断ったのは陸遜の衣と薄皮のみ。
 しかし、料理人とは味見で食材を知る学ぶ者であり、まして亨次は“猟”理人。
「……御馳走様でした」
『おや』
 UCのために握ったそれ薄皮呑んでしまえば喰らってしまえば起因を生むには十分過ぎた。
 身に隠した左腕を羆へ変化させ、叩き下ろした包丁振るった勢い殺さず、真っ直ぐに突く!
『っ、……!』
鋭利な爪携えた剛腕で爪傷刻みながら殴り飛ばしたその身が、真白い雪へ投げ飛ばされる!
 しかし。陸遜が地へ手を着いた場所から雪が融けた。
「(――!思ったより早い!)」
『ふむ。貴殿は“総て”を料理するのですか。ならばいつかは炎さえ飲むか……』
 ジュウ、と雪が融ける。
 ――炎が。
 ほのおが、全てを喰らい尽くす――……名を、―夷陵再燃―!
『そして、驚いてはならない。貴殿らは若い……もう少々、経験があった方が良いようですね』
「っ、砂!?」
 突如舞い上がり熱風と共に吹き荒んだ砂は嵐の如く。
 咄嗟に亨次が上げていたゴーグルを下げ視界を守った瞬間僅かばかりの意識の逸れを陸遜は逃さない。
 研ぎ澄まされた刃が待とうは神々しささえ孕む域に研ぎ澄まされた焔の名は、―流星炎刃―!
「っ、……あ゛っ!ぐっ……!ごめん……きょう、じ」
 もえる。
 焼ける。
「南天庵!」
 もえる。
 吹き上げる焔と熱風で加速させた砂で視界を奪った隙に琥珀の脇腹貫いたのは、炎の神気込められた陸遜の刃。
 深々突き立ったそれで焼くように斬った琥珀を鋭く蹴り飛ばせば、焼けつくような地面へ叩き付けられる直前、亨次が受け止める。
「…………あ゛、づい。……ごめん、…………ご、めん」
「チッ!」
『おや行儀の悪い。しかし貴殿の機転は中々ですが惜しいものだ』
 叩き込まれた刃受け止めた亨次の包丁が火花を溢す。
 びりびりと痺れるような重い一撃を幾度も退けるも、徐々に細かな傷が増えてゆく。
「(はやく)」
アレに期待しても無駄ですよ』
「(はやく……!)」
アレは弱い。戦わねば生き残れないのは世の常ですが、許すことができるのも強者のみ』
「――早く来い!俺もこいつも、陸も……長くは持たねえぞ!」





 もえている。
 せかいが、自身がもえている。
「(あつい)」
 叫ぶ声が聞こえる。
「(たすけなければ)」
 ごうごうと身を焼くほのおが。
 あぁ、これは幻想追体験なのか慟哭聞くべき声なのか。
 ふと、慧は思い出す。
「(そういえば、)」
 今この場に居ない、日傘を差した長命の慧へ言葉を向けた人。
「(“貴方の先達として助言をするのなら……――“あのお方”は貴方を待っておいでです”、“親心というのは尊いものですのね”)」
 親心。
「(だれが、だれに……?)」
 焼けつくような痛みに籠められた焔の慟哭は何と言っているのか。
 浮かばぬ答えを聞こうとして扇子で一突きされたこの胸に、彼女はあると言っていた。

 もえる。
 もえてしまう。
 
 
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

虹目・カイ
吉川様(f37193)と

ウワァ大惨事!
しかしこれはまたとんでもない大物のお出ましですねェ……
ええ、存じ上げておりますとも
学園在学中にフェ……いえ
陸様から聞き及んでおりましたのでね

って吉川様、いつもの威勢はどうしたのです……ああ
そう言えばあなた刀剣でございましたね

仕方ない……やるかっ
房金合歓の華演舞指定UCにて、接近戦でお相手いたします!
吉川様は援護を!

……しかしこの炎は何だ?
常時発動、消せない炎――なんて
そんな規格外の能力が、無条件で使えてたまるか
消し止める方法は必ずある筈

……時間、或いは場所?
だとすればこっちに勝機なんてない
日が沈むまで、なんて誰も保つわけがないし
戦場を変えている余裕なんてない

しかし陸遜ヤツは慧さんが己を超えることを望んでいる節さえある
で、あれば無茶な解決法を提示しているわけではない筈だ

水などの特定のユーベルコード?
尚更無理だ
事実、雪の操り手である『あの子』はもう……

……そもそも
これは陸様以外に解ける・・・・・・・・ものなのか?

(思考の沼に嵌る――)


吉川・清志郎
カイさん(f36455)と

間に合っ……てないねコレ!
えっカイさんあの人知ってるの?
……ふーん
慧さんの知り合いかあ
確かに見た目は似てる
雰囲気は……似てないけど

……炎……炎ね
や、あんまり近づきたくないな、って
焼き入れならまだしもさ

へへー、ありがとねカイさん
隠密力も増したところで隠れるねー
遊具とかの影をこっそり移動して
仕掛ける機を窺うよ

不安なのはちょっとカイさんが考え込んでること
いや、考えることは大事だよ?
僕も敵の動きとか弱点とか戦況とか、考える考える
めっちゃ考えてる

でも、考え過ぎもよくないと思うんだよな
沼りすぎると隙が生まれ――って
カイさん危ない!!

クッソ今仕掛けるしかないっ!
天術剣舞・翠閃指定UCっ、ぶった斬る――ッ!!


駄目
嘘でしょ
殺し切れな――



●刮目せよ
 燃えている。
 世界が、燃えている。
「ウワァ大惨事!」
「間に合……ってないよね、コレ!」
 轟々と燃える火に顔を引き攣らせた虹目・カイ(未来は虹色・f36455)と眼前の異様にも目を細め普段と変わらぬ吉川・清志郎(星巡りの旅人・f37193)が小さく口笛を吹く。
 ふと視線を感じた方を見れば、揺らぐ炎の向こうから赤い髪の男が静かに二人を見るも興味なさげに視線を陸・慧へ向け直す。
「あれは――……なるほど。これはまたとんでもない大物のお出ましですねェ……」
 瞠目したカイはこの異様な炎の理由だけは察しをけるもすぐに顔を引き攣らせ、内心背を伝う冷や汗の方を強く感じ顔を引き攣らせていた。
「(……これ、私に解けるか?)」
 猛る焔の謎が、当事者ではない陸慧ではない自分に?
 しかし逡巡の時間は無く、先んじて慧を助けようとしたらしい後輩達は火に巻かれており猶予など有りはしない。
「えっカイさんあの人知ってるの?」
「ええ、存じ上げておりますとも。学園在学中にフェ……いえ、陸様から聞き及んでおりましたのでね」
 清志郎の声にハッとし、すぐに答えるも以前の慧
「……ふーん。慧さんの知り合い――っていうにはまぁ乱暴だけど、それはそれで見た目が似てる。雰囲気は全然似てないけどっ」
 一切見覚えのない炎の向こうの男に瞳を細めた清志郎が刃を抜きうち、ふと自身の炎の記憶と言えば自身が鍛造された火焔のみだと気付き苦笑い。
「……炎って、やっぱりあんまり近付きたくないよね」
「え?!吉川様にも怖いものが……?」
「や、怖いっていうか――……ほら、俺刀でしょ?」
 きょとんと首を傾げたカイも清志郎の言葉にすぐ意を察し、“そうでした”と苦笑い。
「仕方がない……やるかっ!吉川様、援護をお願い致します!」
「へへー、ありがとねカイさん。やっぱ焼き入れ以外の炎ってちょっとね……!」
 そう言い逃げ場のない中ながら再び陸遜の視線向く前に公園遊具の陰に転がり込み、様子を窺っていた。
「……カイさん、集中できるかな。あっつ……はぁ、ほんとこの炎熱すぎ。ちょっと術にしちゃ強烈すぎだよ……!」
 はぁ、と詰めた襟のチャックを多少下ろしたとて熱が逃げるはずも無く寧ろ入って来ることに清志郎が顔を顰める一方、カイは炎斬り払い接近した陸遜が炎から精製した剣と鍔ぜり合っていた。
 UC―房金合歓の華演舞―で流星火刃の鋭い突きとギリギリ往なしせば金色の毛先が焦げる。
「っ、……!(重い!)」
『ほう。何の御用ですか、お嬢さん。此処は貴女が来るところではないはずだ』
「ええっ、そうかも……しれませんっ、けどっ!」
 打ち込まれる突きを薙刀 房金合歓の刃で逸らし、いくら踏み込み斬り込もうとも陸遜は涼しい顔のまま。
「っ、あっつ……!」
『あまりお転婆が過ぎると火傷では済まなくなりますよ』
 丁寧だが、明らかに馬鹿にされている。オブリビオンとして最盛期の姿の陸遜は今、猟兵と互角に渡り合える存在であり、更に剣技は武将であった陸遜の方が上であるなどカイとて承知の上。
 だが。
「(何かっ……!何か、ヒントを……!)」
 考えなければ。考えなければ!あぁでも熱い。燃える。焼けてしまう――!
 思考さえ焼ききるような炎に、吞まれそうになる。打ち込まれれば、腕が覚えるのは痺れるような痛み。
「(しかし本当にこの炎は何だ?常時発動、消せない炎!?そんな規格外が無条件で使えて堪るか!)」
 いくらカイが陸遜を見ようと恐ろしいほど何も窺えない。
 逆に不自然なほどに凪いでいる。オブリビオンだから?だから、慧を燃やして尚平然としていられる?
「(時間?それとも場所?だとすればこっちに勝機なんて――)」
 まず、戦場を変える余裕などあるはずも無い。おそらく理性ある陸遜は全てを解し逃げるのならばきっと慧だけを追うだろう。
 だが同時にカイは思う。きっと陸遜は慧に無茶無謀を求めているのではない。求めているのは“己を越えさせる”ただ、それだけ。
「(水の……特定のユーベルコード?いや、でもあの“雪”さえ解けた痕跡がある。そも、これは陸様以外に解ける・・・・・・・・ものなのか?)」
 ――ただ一瞬、カイは思考の海に落ちた。
 今の自身に打つ手がないではないかそう至った瞬間茫然としてしまった。
『手許がお留守ですよ』
「カイさん!!!!」
「え、」
 息を吸っても吐いても苦しい炎。荒唐無稽のこの炎の根源があまりに凪いでいてを如何にして消火すべきかに意識を向け過ぎたのだ。
 慧も、そして炎の中苦しむ後輩二人も救わねばならない。更に気を伺う清志郎とて守らねばならない。最善の一手を求めすぎた結果は、眼前へ迫る赤々とした炎の刃!

 カイは清志郎の声を聞いた。
 眼球ぎりぎりに迫った炎の刃が、鋭い一線に防がれカイの身は後方へ投げられた。
「あっ!」
「フー……フー……引け!!!」
 絶叫染みた清志郎の声にカイは瞠目し、咄嗟に清志郎へ向け駆け出そうとするも、突如吹きあがった炎壁に阻まれる。
「だめ……だめですっ、吉川様!!」
「カイさん、考えすぎって良くないからね!悪いけどぶった斬らせせてもらう――ッ!!」
『なるほど、そういうものもあるのですね』
 全力の剣技は揮う者が剣本人清志郎だから為せる一太刀、UC―天術剣舞・翠閃―!
 迸る一条の閃光は陸遜の焔と対極の翠。だが、清志郎の内心は酷く冷静であった。
「(一か八かだとは分かってたけど、ほんっと隙なさいよね……!)」
 相手がまず、武将と言えど奇妙なほど冷静過ぎる。
 いくらオブリビオンとて相手が猟兵だからこそ、軽快してしかるべきだというのに悠然とカイの刃を往なし、まるで赤子の手を捻るかのようであった。
 カイ自身、もっと早くそこに気付くかと清志郎も思ったのだが想定よりも早くカイが炎への思考に呑まれ過ぎたのだ。
 ――後のことを、考えてやれれば良かったのだが……。
「(無理だよ。今全力でだって――)」
『美しい。が、まだ足りません』
「――は? あっ、駄目、嘘でしょ殺し切れな……」
 翠の一閃と炎壁ぶつかり合い爆ぜた爆風にカイは吹き飛ばされ、起き上がった時に見た。
「……ぁ、」
 カラン、と落ちる本当の姿無銘・清心に戻った清志郎の姿。
 未だ燃え続ける焔の姿を。

 くべられる。
 いのちが次々くべられる。

 人を解する、とは何たるか。
 人を越える、導くとは何とすべきか。

 探さねばならない。見つけねばならない。
 ――ほんとうはもう、持っているのに。
 
 
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

陸・慧
――燃える
焼け落ちていく

私が、
後輩が、
世界が、

『貴方は本来、知勇共に優れた子でしょうに』
その言葉を今、思い出した
それでも、

小難しいこと考えるのは、やっぱり性に合ってない
解るのはただ、何だかんだ人の好い後輩達が
この腑抜けをそれでも助けるのだと
その為に、命を燃やしている――

なら、
陸慧おれ』が、
眠りこけてる場合じゃねえだろう!!

悪いがご先祖様よ
あんたの期待にゃ応えられねえ
俺はこういう性質なんだ

ただな
この身体には、あんたの血が、流れていることも確かだ
俺の炎の根源は、確かにあんただ
それを忘れたままの俺じゃあ
あんたはどうあったって超えられねえ
そういうことだよな

だがよ、安心しろ
俺は思い出したぜ!
この身に流れる血潮が、その熱さが、
その源流が何処なのかってのをよ!!

あんたの炎は確かに
現代に、俺に受け継がれている
後は正しく扱えているか、それだけだ
さあその目で確かめろよ!

――陸家の炎で燃え尽きろ!!

生意気な口利いて済みませんでしたね
けど、俺は見ての通りです
この炎、絶やすつもりはありません
どうか安らかに



●焔の継承
 燃える。
 燃えている。
 世界が、燃えている。陸・慧(再燃せし陸家の炎・f37779)自身が、後輩が、世界が焼け落ちてゆく。

 “『貴方は本来、知友共に優れた子でしょうに』”
 そう憂いを見せた陸遜の顔を慧は走馬灯のように思い出していた。

 ひどく純粋に哀し気に、それでいて記憶を失った慧自体をどこか忌々しそうに見ていた――あの、目。
「(燃えるような……いや、燃えていたんだ。あの人の目は、ほのおだった)」
 今思い出しても頭が痛む。
 憐れむ瞳なのに、陸遜の纏う炎が強くなったあの瞬間。
 あれこそが焔の起点。あれこそあの男陸遜に火が点いた瞬間!

「俺は、」
 小難しいことを考えるのは性に合わない。
「小難しいことはやっぱり性に合ってない!解るのは――」
 なんだかんだと人の良い後輩達が、炎に焼かれた腑抜け慧自身を助けんと静まらぬ炎に抗い続けている。
 酷い光景だと思う。
 何をしているのかと己に問うて、一歩踏み出す。
 ゆっくりと目を開ければ、良く見えている。
 しっかりと息をすれば、苦しくない。だからこそ今、声を上げる――!
おれ陸慧が、眠りこけている場合じゃねえだろう!!」
『ほう?』
 身を焼く炎を振り払い陸遜と向き合えば、飄々と瞳を細めた陸遜が炎を向け乍ら口角を上げ問いかけた。
『――で、お前如きに何ができるのですか?物の分からぬお前は一生眠っていて結構。ついでに諸共私が焼き払います』
「悪いがご先祖様よ、あんたの期待にゃ応えられねえ」
 地を蹴り突貫した慧の刃を易々受けとめた陸遜の片眉が跳ね上がる。
『……愚鈍だと?』
「俺はこういう性質なんだ!」
 陸遜の刃を跳ね上げ叫んだ瞬間、鋭い一蹴に跳ね飛ばされ地を擦った慧が勢いよく噎せ腹を押さえて咳き込んだ。
『甘い』
 地に膝をついた慧を更に蹴り上げ、鋭い視線の陸遜が吼える。
『分らぬのならば考えよ!陸家の男であるのならば道を見よ!』
「っ、ぐう゛っ!」
 蹴り一つ、振るわれる一太刀一太刀も変わらず重い。当然――かは分からないが、相手は元々武人であり現行オブリビオン。
 最盛期の姿のまま知識は老成した陸遜を正面から相手にするなど、控えめに言ってもバケモノと呼べるだろう。
 慧自身、自信を取り戻したとはいえ自身で認めた通り未だ若輩。正面切ってぶつかるにしても、猟兵として策を弄そうにも洗練された陸遜の刃が考えようとする慧も武力で抗おうとする慧をも阻む!
『遅い!夷陵と共にお前の配下諸共燃えよ!』
「ぐ、あっ、つら、はっ……!あい、つらは――配下じゃ、ねえ!!」
 配下などとという二文字で繋がっている人間ではなく、友だ。
 燃え盛る火中に自身を助けに来るものが、配下?まさか!と現代に生きるゆえ、慧は強く思いながら震える足を叱責する。
「(炎はもう、怖くねえ。だが……!)」
 だが、燃え盛るこの火を治めるには……?
 思いつかない。決して慧は考えなかったわけではない……はずなのだが、この窮地においてすぐに浮かばなかったのが現実だ。
「(どうしたらいい……?俺はっ)」
『……まだ思い出せませんか。相当な木偶と見ました』
 炎の壁で見えなかったはずの陸遜が、吐息の聞こえそうな距離から瞠目した眸でジロリ睨み上げてくる。
「なっ、」
『お前が幾ら焼いても分からぬ木偶で炭となったのならば、私はただ壊すのみ』
 冷たい声が丁寧な言葉の仮面を捨て去った。
 恐らく炎壁の吹き上げる風を利用した縮地歩方。戸惑う慧を咄嗟に構えた刃ごと跳ね飛ばし、陸遜は叫ぶ。
「未熟者よ聞け!――我らは陸家、決して違えてはならぬ道歩むべき者!異論は聞かぬ!』
「たしかにそれは忘れたままの俺じゃあ、無理だろうな……!だが安心しろ、俺は思い出したぜ!」
 脳裏を過る幾つもの記憶。幾つもの戦い。何故忘れていたのかと思うほど鮮明に、武者震いのような緊張感が慧の肌を泡立たせる!
 斬り上げるような刃をギリギリ紅炎小賞覇王の切っ先で往なし、引き絞られた突きを躱さんと後方へ地を蹴り受け身取る。
『――敵の予測の範疇を越えろ!踏み込ませるな!』
「(早ええ……経験は相手が上、なら!)」
 突きの踏み込みの勢い殺さず叩き下ろす陸遜の刃が慧の槍に地を示されれば慧は息を呑む。だがそんな暇は無いとばかりに凪ぐように揮われた陸遜の刃を柄で受け、それ越しに掌底で弾けば、バランスを崩した一瞬こそ隙!
「分かってる!っ、おぉぉおお!」
 跳ね上がる石突で剣身を打ち逸らせば飛んでくるのは陸遜の拳だ。首逸らし躱せば揺れた慧の毛先を炎が焼いた。
『甘い!!予測範疇を越えろ!』
「ぐ、っづぅ」
 慧が陸遜を見据えて叫び返せども、剣を捨て捻り上げるように打ち返される掌底を咄嗟に上向き躱せば擦ったのは慧の顎。
「っっ、はっ、は、っ、くそっまだ……!」
 ――この時、慧は気付いていなかった。
 何故この炎の中で常の鍛錬等しく呼吸が出来ているのか。燃やされ奪われ吸うことさえ困難だったはずの空気を胸いっぱいに吸うことができるのか。
「(段々反応できてきてる。ならもう少し。もう少し踏み込めれば……!)」
 集中し増す鋭さに比例し慧は陸遜を追うことで頭をいっぱいにしていたが、全てを冷静に見ていた陸遜の瞳が緩やかに細められた。
『……もう終いですか?』
「いいや。あんたの炎は確と現代に――……俺に受け継がれている。後は正しく扱えているか、それだけだろう?」
 問うような瞳の陸遜へ刃を打ち込めば、“はは”と笑う声。
『……何を理由にお前に受け継がれている?奢るな!』
「もうその剣は受けねえ!」
 弾き飛ばされるのではなく丹田に意識を置き軸をブラさない。
 肩幅に開いた足。軽く落とした腰。受け耐える姿勢で真っ直ぐに陸遜の刃と向かい合う慧の槍が激しい火花散らしぶつかり合う。それはまるで互いに譲れぬ心情のように。
 そこで初めて、慧は陸遜の手中の刃が焔ではなく鍛え上げられ使い込まれた鋼であることに気が付くと同時、呼吸のしやすさを炎が収まっていることにも気が付いた。
「――何と言ってくれても構わねえ、さあその目で確かめろよ!」
『威勢がいいですね。なら超えて見せなさい、この夷陵の火焔を!』

 炎が爆ぜる。
 空気を焼く。
「我が名は陸慧!ゆえ、あんたにこの炎を捧ぐ!」
 慧の拳で燃える炎が空気を焼く。
 迫る陸遜の炎を喰らい、爆ぜ、呑んで更なる加速力にして!

「――陸家の炎で燃え尽きろ!!」
 UC―焦熱する紅き相伝の炎―!

 深々心臓に突き立った拳に陸遜は苦笑い。
『なるほど。お前はそう扱いますか』
「……生意気な口利いて済みませんでしたね」
 陸遜の姿が徐々に解けてゆく最中、悪態をついた慧に陸遜は微笑みその頭を握る。
『ええ、本当に』
「っつ、い、いだだだだっ!」
 夕日が沈んでゆく。
 数多の一瞬が行き交った僅かな一時が終わってしまう。消えてしまう。
「……けど、俺は見ての通りです」
『そうでしょう。お前が突然賢くなるとは思えません。ですがならば数多の経験をしなさい。まだ、足りません』
 呻いた慧の頭から手を放した陸遜は微笑みながらも視線ずらさず慧を射抜いて凛と言い放ち、そして笑った。
『お前が腑抜けでは陸家の焔が消えてしまいますから』
「この炎、絶やすつもりはありません」
 視線落とした陸遜の言葉にバッと顔を上げた慧が、初めて真っ直ぐに陸遜と視線を交わし思いを口にした、瞬間。
 目晦ますほどの朱金の光が慧の目を焼いた。
「っ、……あれ?あ……どうか、安らかに」

 焔が解け、とぶりと水平を手巾に染めた夕日が沈み切る。
 明日を待つ夜が来た。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年08月22日
宿敵 『陸遜』 を撃破!


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#シルバーレイン
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#宿縁邂逅


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠陸・慧です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト