多くのモノを賜った。羽衣、笛、簪、それから権能。
だからきっとこれだって、乞えば
神様は快く応えて下さるだろう。
でも今日は神様に頼るのではなく、自らの手で選びたいと思い。
「……紐?」
自らの手で掴み取った物を見つめ、カツミ・イセは首を傾げた。
七月、シルバーレインは夏真っ盛り。
正確には南半球では違うのだが、猟兵にとってこの世界と言えば即ち銀誓館学園だから、鎌倉の地を基準に考える事とする。ともあれ夏である。
七夕、お盆、海開き、夏休みに夏祭り。人々が活動的になる夏は様々なイベントが目白押しだ。
学園で開催された水着コンテストもその中の一つ。千名以上の参加者が集まった会場は大賑わい。猛暑にも負けない彼らの熱気は観客をも呑み込む程の勢いで、実際カツミはそれに呑まれた。
――良いなぁ。
見物中に抱いたその感情はいつしか「欲しいな」に変わり、故に彼女はやって来た。
此処、人気アパレルショップの水着売り場へ、である。
そう、水着売り場である。つまりそこにある物は当然水着である。
改めて手の中の紐を眺めれば確かにそのようにも見えた。そう言えばコンテスト会場で見たような気もする。こういう種類もあるのか。感心しつつカツミはそれをそっと元の場所に戻した。流石に着る度胸はない。
もっと無難な物を。そう思い店内を見渡せば、シックなビキニを着たマネキンが目を惹いた。黒地に白のライン。落ち着いた配色は好みに近い。「人気商品!」と主張するPOP広告を信じるならば世間的な評価も悪くなさそうか。
早速同じ物を手に取って試着室へ向かい――着てみるとまた印象が違う事に気付いた。
肌色の割合が存外多い。お腹周りを指で撫でる。だらしない身体はしていないつもりではあるが、それはそれ。肌を露出しない姿に慣れているカツミには、これでもまだ過激に過ぎる。
さて、どうしようか。暫し考え、そして。
結局選んだのは、似たデザインのワンピースタイプ。お臍を晒す勇気はついぞ持てなかった。
でもまあ、これはこれで良い。ワンピースがビキニに劣るという訳ではないし、何より自分で選んだからこれが良い。
さて、買ったからには着なきゃ損。カツミは近場のプールを検索する。
――泳ぎに行こう。
そう思った。
夏を楽しむ事が夏休みの宿題なのだと神様は言っていたし。誰かに言われたからではなく、そうしたいと自分の心が欲していたから。
成功
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