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夏には夏の装いを

#シルバーレイン #ノベル #猟兵達の夏休み2023

カツミ・イセ




 多くのモノを賜った。羽衣、笛、簪、それから権能。
 だからきっとこれだって、乞えば神様・・は快く応えて下さるだろう。
 でも今日は神様に頼るのではなく、自らの手で選びたいと思い。
「……紐?」
 自らの手で掴み取った物を見つめ、カツミ・イセは首を傾げた。

 七月、シルバーレインは夏真っ盛り。
 正確には南半球では違うのだが、猟兵にとってこの世界と言えば即ち銀誓館学園だから、鎌倉の地を基準に考える事とする。ともあれ夏である。
 七夕、お盆、海開き、夏休みに夏祭り。人々が活動的になる夏は様々なイベントが目白押しだ。
 学園で開催された水着コンテストもその中の一つ。千名以上の参加者が集まった会場は大賑わい。猛暑にも負けない彼らの熱気は観客をも呑み込む程の勢いで、実際カツミはそれに呑まれた。
 ――良いなぁ。
 見物中に抱いたその感情はいつしか「欲しいな」に変わり、故に彼女はやって来た。
 此処、人気アパレルショップの水着売り場へ、である。

 そう、水着売り場である。つまりそこにある物は当然水着である。
 改めて手の中の紐を眺めれば確かにそのようにも見えた。そう言えばコンテスト会場で見たような気もする。こういう種類もあるのか。感心しつつカツミはそれをそっと元の場所に戻した。流石に着る度胸はない。
 もっと無難な物を。そう思い店内を見渡せば、シックなビキニを着たマネキンが目を惹いた。黒地に白のライン。落ち着いた配色は好みに近い。「人気商品!」と主張するPOP広告を信じるならば世間的な評価も悪くなさそうか。
 早速同じ物を手に取って試着室へ向かい――着てみるとまた印象が違う事に気付いた。
 肌色の割合が存外多い。お腹周りを指で撫でる。だらしない身体はしていないつもりではあるが、それはそれ。肌を露出しない姿に慣れているカツミには、これでもまだ過激に過ぎる。
 さて、どうしようか。暫し考え、そして。

 結局選んだのは、似たデザインのワンピースタイプ。お臍を晒す勇気はついぞ持てなかった。
 でもまあ、これはこれで良い。ワンピースがビキニに劣るという訳ではないし、何より自分で選んだからこれが良い。
 さて、買ったからには着なきゃ損。カツミは近場のプールを検索する。
 ――泳ぎに行こう。
 そう思った。
 夏を楽しむ事が夏休みの宿題なのだと神様は言っていたし。誰かに言われたからではなく、そうしたいと自分の心が欲していたから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年07月30日


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