●青年は神に縋り
母はおかしな人でした。
機嫌を損ねたら最後、幼い僕を怒鳴りつけ、殴って蹴ってきたものです。
母と僕の体格が逆転する頃には、暴力は飛んでこなくなりました。
でも、僕を言葉で傷めつけての憂さ晴らしはやめてくれませんでした。
一度、かっとなって母を殴ろうとしてしまったことがあります。
結論を言うと、未遂に終わりました。
僕が振り上げた拳を止めたのは、他ならぬ母の言葉でした。
「暴力反対! 人に手を上げるだなんて、あんたは最低! 人間のクズだ!」
「私はあんたの為を思って、何度もこの手を痛めて躾けてきたってのに……!」
何も言えませんでした。
何も考えられませんでした。
僕の振るう暴力は悪で、母のそれは正義。
母の中にだけある絶対的真理は、揺らぐことなどありえなかったのです。
わかり合うことのできない相手というものは存在します。
僕にとって、それは母です。
母が生きている限り、僕という人間の身は、心は、削られて続けてゆくのです。
――だから、僕が擦り切れて、消えてなくなってしまう前に。
「神様、どうか。どうか僕の母に、苦しみを伴う凄惨な死を」
●
神の如き者は其に応える
「おい、
猟兵。事件発生だ。放置すれば確実に一人は死んで、デウスエクスの喉を潤す糧になる。……詳細、聴くか?」
猟兵達に報せを齎したのは、カメレオンを思わせる顔立ちの竜派ドラゴニアン――アルクス・ストレンジ(f40862)であった。
予知が示したデウスエクスは「人に言えない暗い欲望」を抱えた、一人の青年をターゲットにしているという。
彼の願いは、憎悪する実母の凄惨な死。
欲望に突き動かされた青年は、デウスエクスの支配する「負のパワースポット」たる寂れた神社に引き寄せられ、呪術行為を行なおうとし――。
「その場にまさかのデウスエクス様がご登場。哀れ、青年の願いは叶わず。グラビティ・チェインと高まったドリームエナジーを喰らわれて、人生終了、ご馳走様……そういう筋書きってわけだ。ドリームエナジーも狙いのうちってとこからするに、事件の背後にいるのは十二剣神『原罪蛇メデューサ』だな」
デウスエクスの中には、人類の「強い願い」や「こうだったらいいのになという欲望」から発生する「ドリームエナジー」を糧とする種が存在する。
ゆえに此度の事件はメデューサのしもべたるデウスエクスが、ドリームエナジーをメデューサに捧げるべく引き起こすものと推察できるのだ。
「だが、まだ間に合う。デウスエクスの筋書きを書き換えちまうことができる」
道中に蔓延る下級敵を蹴散らして現場に向かい。
まさに食われんとする青年を守りながら、司令塔たる敵を撃ち。
青年を連れ、安全な場所まで離脱することができさえすれば。
「言葉にすればやることは単純そうだが、上手くいくかは……猟兵次第だな。幸い、現場は町からそう離れてない。
決戦配備の要請も可能だ。適切に使えば、事を有利に運べるだろうよ。じゃ、転送準備、始めるぞ」
猟兵達に背を向けたアルクスは、もう一言付け加えた。
「ターゲットにされたヤツについてだが……そいつの行為や感情は、まあ褒められたもんじゃないんだろうさ。だが、デウスエクスに殺させてやるいわれも無い。そうだろ?」
藤影有
お世話になっております。藤影有です。
第一章は【集団戦】、第二章は【ボス戦】、第三章は【冒険パート】です。
敵殲滅→青年を連れて安全な場所まで脱出、の流れとなります。
●補足
第一章、第二章ともに戦場は屋外となります。
決戦配備を使用できますので、必要に応じてプレイングに記載してください。
(決戦配備の詳細についてはケルベロスディバイド世界の紹介ページをご覧ください)
第二章は青年を守りながらの戦いとなります。
青年は一般人の為、デウスエクスの攻撃を受ければ容易く死亡します。
猟兵の指示に従う程度の理性は残っています。
●青年について
二十歳前後の細身の青年。
顔に生気がなく、精神的にかなり追い詰められている印象を受けます。
OPに記載された以上の生い立ち・環境等は不明です。
●プレイングについて
各章、断章を挟んでから受付の予定です。
〆切予定等はMSページやタグをご確認いただけますと幸いです。
それでは、どうぞよろしくお願い致します。
第1章 集団戦
『ツギハギタキシム・アルファ』
|
POW : siネ
【幾度も振り下ろされる流体金属のハンマー 】の【衝撃波】で、レベルmの直線上に「通常の3倍÷攻撃対象数」ダメージを与える。
SPD : つbuス
【腹部にある巨大な口 】で装甲を破り、【鉤爪】でダウンさせ、【流体金属のハンマー】でとどめを刺す連続攻撃を行う。
WIZ : 逃ルna
【自身の腐敗した身体 】から【吸い続けると意識を失う、耐え難き悪臭】を放ち、近接範囲内の全てを攻撃する。[吸い続けると意識を失う、耐え難き悪臭]は発動後もレベル分間残り、広がり続ける。
イラスト:猫背
👑11
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●
町外れにある山の奥に建っているという、寂れた神社。
そこが、此度の戦場。
デウスエクスの支配する「負のパワースポット」と化した場所だ。
夏の鮮やかな日差しが降り注いでいるのに。
木々はすくすくと生い茂っているのに。
戦場に繋がる石段の下まで、確かな死の気配がする。
一歩ずつ昇っていくしかない。
呪を、終わりの運命を断ち切るならば。
――siネ!
――つbuス!!
――逃ルna!!!
ツギハギの屍の如き何かが、猟兵の行く手を阻もうとも。
御園・桜花
「半数以上の県に、無料低額宿泊所があった筈ですから。多分此方の世界にも、きっと」
「デウスエクス、と仰るようですね。死なずに蘇るなら、其れは骸の海から来るオブリビオンと何が違うのでしょう。本質は変わらない、と思うのです」
「骸の海に還れぬ飢えを、此の世界の中で満たそうとする餓鬼魂。私は貴方達を、其のようなものだと考えます…ですので、此の世界が骸の海に繋がる迄、何度でも貴方達を滅ぼしましょう」
UC「侵食・花霞」
吹き荒れる桜吹雪に変じ敵の口や目や耳から体内に入り込み肉体に重なり体内外から電撃で敵を焼き尽くす
物理攻撃無効且つ通電物質内移動可能の為敵の攻撃は全てすり抜け
全敵を倒したら鎮魂歌歌い石段を上がる
●
奇怪なツギハギの群れが来る。
されど、御園・桜花(f23155)は目を逸らさない。
(「確か、半数以上の県に――多分此方の世界の地球にも、きっと」)
桜花の迷いなき瞳は敵のみならず、神に縋りし青年の未来をも見据えていた。
社会福祉、受け入れ先。
生きてさえいれば、呪から逃れる術はあるはずだ。
「……デウスエクス、と仰るようですね」
女の静かな問いに、ツギハギはキィキィと耳障りな声で答える。
「つbuス! つbuス!! つbuス!!!」
機械的に、同じ言葉を。
ありったけの殺意を込めて、くわっと腹部にある巨大な口を開いて。
「貴方達も死なずに蘇るのでしたか」
がぶり、とツギハギが顎を閉じた。
牙は桜花をすり抜けた――否、牙の先に人の姿はなかった。
「骸の海に還れぬ飢えを、此の世界の中で満たそうとする餓鬼魂。私は貴方達を、其のようなものだと考えます」
女の淡々とした声だけが残り、戦場に花霞が広がってゆく。
デウスエクスを取り巻く花霞こそ、ユーベルコードの力で姿を変えた桜花であった。
侵食・花霞。
命を廻らせる桜の精が、花吹雪と成って吹き荒れる。
ツギハギの爪も、牙も、武器も。
縦横無尽に舞う桜の花びらを捕えることは叶わない。
ギィ、と悔し気に鳴くデウスエクスを、桜吹雪が呑み込んで。
其の口から、目から、耳から入り込み。
「此の世界が骸の海に繋がる迄、何度でも貴方達を滅ぼしましょう」
身体の外から、中から。
侵し尽くして、焼き尽くして。
現れた敵群を一匹残らず駆逐して、ようやく花吹雪は収まった。
「死なずに蘇る。其れは骸の海から来るオブリビオンと何が違うのでしょう。……本質は変わらない、と思うのです」
常の姿に戻った桜花が、こつりこつりと石段を上る。
歩みと共に捧ぐ鎮魂歌は、遍く世の転生を願うゆえ。
大成功
🔵🔵🔵
太目・乃子
【POW】で勝負。
心情
彼に必要なのは神様じゃなく専門家の診察とカウンセリング。
神様モドキを殴り倒して、病院に連れて行く。
最近読んだ医療漫画に影響されて、\ギュッ/という擬音と共に決意します。
戦闘
UC【復讐の刃】を使用して
悪魔の如き復讐者形態に変身し、遠距離攻撃に対する耐性を獲得します。
また、ポジション:クラッシャーの砲撃支援を要請します。
敵の遠距離攻撃・味方の砲撃支援からのダメージを無視しながら、コンバットナイフによる一撃離脱戦法で敵を「切断」していきます。
「
決戦配備の発動を要請する」
「邪魔」
アレンジ・連携などお任せします。
●
石段を上る最中、太目・乃子(f40815)は神に縋った青年を思う。
身も心も追い詰められた彼に必要なものは。
(「神様なんかじゃない。必要なのは……専門家の診察とカウンセリング」)
歳に見合わぬ小難しい結論は、医療漫画の受け売りだけれど。
彼女の決意は、紛れなく本物。
ギュッと音がしそうなくらい、強く握った拳が其の現れ。
必ず青年を救出し、病院まで連れていく。
目的を果たす為ならば。
「――悪魔にだってなってやる!」
前方に蔓延る敵群へ、乃子は真っすぐに突っ込んでゆく。
小さな身体から、ユーベルコードの眩い輝きを放って。
「グググ……siネ!」
迎え撃つツギハギは、乃子を嘲笑ってハンマーを振るう。
振り下ろされた直線上に、ごうっと巻き起こる衝撃波。
けれども、乃子は止まらない。
己が身を護る素振りすら見せない。
悪魔の如き復讐者形態に変じた今の彼女に、遠距離からの攻撃は脅威ではないゆえだ。
コンバットナイフ一つを手に、地を蹴って、衝撃波の軌道から外れ、さらに瞬時に敵との距離を詰め。
「邪魔」
ツギハギの翼を切り落とす。
一体、また一体と化け物どもを地に墜としつつ。
振り返ることなく駆け続け、敵群の中心から離脱して。
さあ、準備は整った。
「
決戦配備・クラッシャーの発動を要請する」
――Roger,fire!
要請に従って、町より放たれるは砲撃支援。
其の火力で墜としたツギハギへトドメを刺し、乃子自身はより先を目指して走る。
砲撃支援の余波たる風圧も、遠距離攻撃耐性を得ている乃子へのダメージにはならない。
……むしろ、乃子にとっては追い風であったかもしれない。
風が届けたツギハギの断末魔に、少女はナイフの柄を強く握り直す。
そうだ。決意は、覚悟は、ずっと前からできていた。
己の此の手で、
神の如き者に復讐を。
(「……待っていろ、神様モドキ」)
表情は淡々と、しかし瞳はぎらぎらと。
小さな復讐者は、刃を手に進み続ける。
大成功
🔵🔵🔵
神野・志乃
生まれ落ちてから今に至るまで、生母に呪いを掛け続けられてきたのね
倫理観も価値観も、何もかもがまともではいられなかったでしょう
私も家出中の身ではあるけれど……
流石に、“気持ちは分かる”なんてとても言ってあげられそうにないわ
いずれにしても、彼が命を奪われる謂れは無いのだから
敵は排除するのみよ
「さっさと終わらせましょう」
に、しても、随分と殺意に満ちた敵ね……誘い込むのは容易そう
酷い悪臭、これ自体が毒じみた攻撃ということなのかしら
だとしたら身を守るのが最優先
「出番よ。おいで、“くきつ”」
ユーベルコード《くきつ》を【オーラ防御】Lv100として召喚
光り輝いて目立つ“くきつ”で私の身を毒から守りながら
敵の近接範囲内に入らないよう逃げる振りをして、敵の群れを誘き寄せる
群れをひと塊に集められたら
「援護射撃、お願い」
Lv10の私自身は残念ながら、大した攻撃力を持っていないから
今回、私のポジションは『スナイパー』
雨霰と降り注ぐミサイルの援護を受けながら、私も出来る限り【武器から光線】を放って仕留めましょう
●
現場までの道のりは、残り半分程度といったところか。
未だ姿見えぬ青年の境遇に、神野・志乃(f40390)は想いを馳せる。
(「私も家出中の身ではあるけれど……」)
もしも彼と言葉を交わせたとて、流石に“気持ちは分かる”などと言ってやれそうにはない。
生まれ落ちてから今に至るまで、生母に呪いを掛け続けられてきた青年。
倫理観も価値観も、何もかもがまともではいられなかっただろう。
神の如き者の支配下たる、負のパワースポットに引き寄せられてしまったのも、それゆえだろうか。
(「いずれにしても、彼が命を奪われる謂れは無いわ」)
無彩の瞳で少女が見据えるは、ツギハギの異形の群れ。
「さっさと終わらせましょう」
まずはこいつらを蹴散らさねば、青年には声も手も届かないのだから。
迫り来る敵の身体は腐敗しており、酷い悪臭を漂わせている。
僅かに届いた臭いで、くらりと眩暈がする程だ。
思考を鈍らせられてはたまらない。
加えて、敵の出方もまだ読めない。
志乃がまず優先したのは、己が身を護ることだった。
「出番よ。おいで、“くきつ”」
名を呼べば、志乃が携えし魔鏡から、九羽の陽光を纏う小鳥が出づる。
眩い光は守護のオーラと成って、少女の身を敵から護り、隠してくれる。
「グゥゥ、逃ルna! 小娘がァ!!」
ツギハギどもが吼える。
くきつの輝きに目を眩まされ、志乃を見失ったらしい。
(「距離を取れば、あの悪臭は届かない。ハンマーを振り回す様子はない。臭いそのものが攻撃……毒?」)
反撃は間合いを保った上で行うのが得策だろうと少女は判断する。
だが、一つ懸念もある。
(「一体ならまだしも、敵は複数。……おそらく、倒しきるには私はまだ力不足ね」)
猟兵であり、魔術の心得がある志乃だが、攻撃に転じたとてツギハギどもを殲滅できるかどうか。
打つ手無しか――否。
(「まずは、敵を一か所に……」)
数手先をイメージして、たっ、と志乃は駆け出した。
陽光の庇護を抜け、それでいて敵群から離れるように。
「私は此処よ。さあ、おいで」
「!! ガ、アァ、逃ルna逃ルna逃ルnaaaaa!!!」
ツギハギが一斉に、少女を目掛けて飛びかかる。
連携も何もない。
押し合い圧し合い、我先に。
誰が一番に獲物を殺せるかを競うように。
(「殺意しか頭にないのかしら。単純な相手だったのは幸いね」)
くきつの光で敵の視界を遮っては、己が姿を晒す行動を幾度か繰り返し。
ツギハギの群れをひと塊に集め――いざ、反撃の時。
「準備完了。援護射撃、お願い」
――OK,Good luck,Kerberos!
決戦配備・スナイパー。
単独での戦いが厳しくとも、戦況を変えられる可能性を秘めているのが決戦配備だ。
此の世界特有の戦法を、志乃は上手く使いこなしてみせた。
その結果がこれだ。
「逃、ル、n――」
町から放たれしミサイルによる遠距離支援攻撃にて、一掃されるツギハギども。
群れを纏めておいたことで攻撃を一点に集中でき、支援効果はより有効に働いたのだ。
「待t、小、娘……」
「お生憎様」
魔鏡が映したツギハギの手が、光に浄化され消えてゆく。
鏡を構える志乃の胸の位置。セーラー服の赤いリボンが爆風を受けて揺れていた。
大成功
🔵🔵🔵
川崎・五十鈴
アドリブ・連携歓迎
決戦配備:メディック
ケルベロス心得第3条、町が近い時は必要なさそうでもメディックだけは決戦配備して住民を避難させておくこと。
今思いついた心得だけど。
そんなどうでもいい独り言でリラックスしてから意識を切り替えて精神集中。
そしてユーベルコード使用。今回の死ノ段は三ノ段と『影妖精の帳』のコンボ。
シャドウエルフ以外の知覚を殺す影の森。その中でも私は殺界形成の効果で敵の位置を把握できる。そして知覚と思考を加速させて、黒影弾を連射。迷宮を跳弾させていって敵それぞれの場所まで。
何一つ理解できないまま木偶のように死んでいけ。これが私の最凶殺界。
人に死ねって言っちゃいけないって習わなかった?
●
ケルベロス心得第3条。
町が近い時は必要なさそうでも、メディックだけは決戦配備して住民を避難させておくこと。
「なんて。今思い付いた心得だけど」
飄々と呟いて、川崎・五十鈴(f41042)は両の手に携えた銃をくるりと一回転。
多勢に無勢の状況であれ、少女が臆した様子はない。
それは持ち前の度胸に加え、決戦配備・メディック申請済みゆえの心の余裕も関係していたかもしれない。
民間人の避難や救護は、専門の部隊に一任できる。
ゆえに、自分は戦いに専念できる――存分に暴れられる。
「ギギギ……死ネ、死ネェ! 擦リつbuス!」
この悪意と殺意をツギハギした化け物どもを、思い切り蹴散らせる。
「……人に死ねって言っちゃいけないって習わなかった?」
息を深く吸って、吐いて。
敵が大きく開いた顎の奥を見据えて。
「死ね」
殺界形成・死ノ段、発動――戦場が、塗り替わる。
ぴたりとツギハギどもが動きを止めた。
きょろきょろと辺りを見回す者、自らの身体をがりがりと引っ搔き始める者、奇怪な声で遠吠えをする者。
揃って異様な行動を取り始める敵群。
奴らは一匹として、五十鈴を見てはいなかった。
(「ここで自由に動けるのは私だけ」)
塗り替えられた戦場は今、シャドウエルフ以外の知覚を殺す影の森と化している。
さらに此処は、術者の知覚と思考をも加速させる。
即ち、五十鈴の独壇場なのだ。
「何一つ理解できないまま、木偶のように死んでいけ」
ツギハギどもは認識しない。
少女が履き捨てた言葉も、銃声も。
弾が肉を貫く感覚も、跳弾が迫り来る気配も。
何も、何も、何もわからないまま――地に転がって、やがてぴくりとも動かなくなった。
「これが私の最凶殺界。理解できた? できるわけないか」
敵の残骸を一瞥し、五十鈴は進んでいく。
まだ、降りかかる火の粉を払ったに過ぎない。
殺すべき
神の如き者は、この先にいる。
大成功
🔵🔵🔵
榊・霊爾
もういい年だ、デカい子供の様な親の言いなりになる権利はない
...ところで何故「実母」なんだ?些細な事だが引っかかる
もう既に家族としての縁は切れている可能性もありそうだが...
それでもなお接してしまう遺恨、それとも共依存なのか?
【見切り】【ダッシュ】で回避し、鴉羽笠で【存在感】を消し、【気配探知】が出来なくなった隙に割り込み『韋駄天』の【抜刀】で切り伏せる
不滅だろうがお前らは故郷が滅びれば運命共同体
タイムリミットか、不死性を奪われるその日まで何度も殺してやるよ
何の成果も得られず雇い主の元に還るがいいさ
●
話を聴くに件の青年は、社会的に自立可能な年齢であるはずだ。
親から見ればいつまでも子とはいえ、成長すればあくまで一人の人間。
いつまでも言いなりになる理由などないのだと、榊・霊爾(f31608)は考える。
(「しかし“実母”か。些細なことではあるが……」)
家族の縁は切れているのか、それとも青年は未だ家庭という名の檻の中か。
遺恨? 期待? 共依存?
わからないことは多い。そして、詳細を確かめる余裕もきっとない。
――
神の如き者は、そんな猶予など与えてはくれない。
「つbuスつbuスつbuスつbuスつbuスつbuスつbuスつbuス!!!」
ハンマーを携えたツギハギどもが、霊爾を喰らわんと牙を剥く。
霊爾の眉間に、僅かながら皺が寄った。
(「……五月蠅い」)
す、と霊爾が歩き出す。
散歩でもしているかのように、それはごく自然な動き。
敵群の突っ込んでくる軌道の隙間を見切り、するりと入って攻撃を躱し。
そして敵とすれ違いざま、霊爾の姿は忽然と消えた。
ツギハギどもの目の前で、ふ、と幽霊のように。
何処だ、何処だ、何処だ。
獲物を見失った群れが一斉に喚きだすが。
「失せろ」
男の声だけが現れて、続けて敵の首が次々刎ねられてゆく。
実は霊爾は、逃げも隠れもしていなかった。
彼のしたことといえば、纏う鴉羽笠の力で己の存在感を極限まで抑えたのみ。
つまりは、ツギハギが霊爾の存在を認識できなくなっていただけだったのだ。
感知不可能な死角から放つ居合切りにて、斬り捨て御免。
抜刀『韋駄天』。
そのユーベルコードはまさに、達人技と呼ぶに相応しい。
「不滅だろうが、お前らは故郷が滅びれば運命共同体。タイムリミットか、不死性を奪われるその日まで何度も殺してやるよ」
音もなく納刀し、霊爾は進む。
「……何の成果も得られず、雇い主の元に還るがいいさ」
神の如き者にくれてやるものなど、何もない。
大成功
🔵🔵🔵
鬼頭・燎
※連携、アドリブ歓迎!
【キトチト隊】
現場到着直前にチト君(千歳)という歴戦感ある友ができたよー
ナンパじゃなかったんはちょい無念けど切り替えていくべ!
「遅くなってすまない(キリッ)ポジションはく…え、ディフェンダー?へーい」
決戦配備:ディフェンダー
ウチ平々凡々平凡々な家庭だけど毒親ってヤツはいちおー知ってんだよね
んでも、死ぬのは…つか、このまんまだと死んじゃうの本人だし
ってことで止めに行こ!
「ついてきなチト君ボクドラ君!キトーカガリ、推して参るぜ!」
とりま近いトコにいるヤツからぶっ飛ばせばいいっしょ!
ぶちかませ【勇者の連撃】!
見た目フツーのJKだと思うじゃん?
残念!ドラゴニアンの鱗は硬いんだな!
鉄・千歳
※連携、アドリブ歓迎
【キトチト隊】
一般人ならば保護をと思ったけれど、まさか目覚めたばかりの同胞とは
初陣ならば不安もあるだろう
僕が出来る限りサポート…
「ちょっと待って下さいキトさん。そこはディフェンダーの方が」
元気はいいけれど大丈夫だろうか…
決戦配備:クラッシャー
「僕は千歳ですし、那由多は槍で…って待ってください!」
何故いきなり突っ込んでいくんだこの人は!?
槍に姿を変えた那由多を手に[ダッシュ]、彼女を[かばう]
[集団戦術][範囲攻撃]で囲まれないよう牽制
【降魔化身法】でキトさんと協力して攻撃
絶望の淵に佇む青年を止める為にも、この場を切り抜けなければ
それにしてもキトさん…勇敢というか無謀というか
●
遠目にようやく、石造りの鳥居が見えた。
あと一団、ツギハギどもを蹴散らせさえすれば――。
「おっしゃあ、ついてきなチト君ボクドラ君! キトーカガリ、推して参るぜ!」
「僕は千歳ですし、那由多は槍で……って待ってください!」
勢いのまま敵に突っ込まんとしていた鬼頭・燎(f41054)を、鉄・千歳(f32543)が制止する。
転移直後に偶然出会った二人は、そのまま此処まで共に駆けてきたわけだが。
(「話を聴くに、彼女は初陣。戦闘能力も一般人とそう変わらないように見える。僕が出来る限りサポートを……」)
「とか何とか考えてるー? ひゅー、チト君イケメーン! 歴戦感ましましー!」
「だから、僕は千歳です。……不安の欠片も無さそうなのは良いですが」
陽キャそのものの燎の振る舞いに、思わず溜息を漏らす千歳。
むしろ不安を覚えているのは千歳である。別の意味で。
「siネsiネsiネsiネsiネsiネsiネsiネsiネsiネ!」
「お? デウスエクスお出ましじゃね?」
「っ! キトさん、少しは僕の話を――」
千歳の言葉をみなまで聴かず、敵に全力疾走していく燎。
「遅くなってすまない、ポジションはく……」
キリッと格好よく決める、はずだった。
「siネェ!」
ツギハギが振り下ろしたハンマーから衝撃波が発生し、燎を呑み込まんと迫り――。
風圧が地を一直線に抉った跡、其処に燎はいなかった。
「勇敢というか無謀というか……。せめて、決戦配備を要請するなら、貴女はディフェンダーにしてください」
「……へーい」
間一髪、千歳が燎を抱えて敵の射程範囲から離脱したゆえだ。
「あんがと、チト君。んじゃ、とりま近いトコにいるヤツぶっ飛ばすわ!」
礼もそこそこに、再びツギハギに挑む燎。
猪突猛進さはそのままだが、同じ轍は踏まない。
「ギギ……次コソ、逃ガサン! siネェ!!」
敵がハンマーを振り上げた、その瞬間に。
「おしっ! ぶちかませー!」
がら空きにになった敵の胴に、硬化した竜爪を叩き込み。
「勇者のっ!」
太い竜の尻尾で薙ぎ払い、敵の体勢を崩し。
「連撃っ!!」
炎の息で焼き尽くして、トドメ。
「へへへ、フツーのJK甘く見んなよー? っと!?」
初撃破、のち初連戦。
新手が燎に牙を剥く。
されど、少女に油断は無い。
「決戦配備・ディフェンダーを要請! ……こんなんでおけまる水産?」
にかっと笑った燎の身体を、魔術的な結界が包んで護る。
結界を一撃で嚙み砕けず、ツギハギの顎は開いたまま。
そこに、降魔化身法を発動した千歳が追撃を加える。
竜槍・那由多を携え、強化した力のままに敵の喉を貫いて。
貫通した勢いで外に出たかと思うと、即、別の一体との距離を詰める。
「はえー、マジ歴戦じゃん。……ん?」
燎の瞳が映す千歳の顔色が先程よりも悪い、ような。
(「長期戦はできない。一気に決着を」)
降魔化身法は、術者が相応の代償を払わねばならないユーベルコードだ。
道中で力を使い果たすわけにはいかない。
ゆえに。
「決戦配備・クラッシャー、お願いします」
千歳は火力支援を要請する。
即時、空を横切るは、キャバリアよりやや小型の人型兵器。
デウスエクスに向けてビーム砲撃を浴びせ、猟兵達に敬礼して去っていく。
既にかなりのダメージを与えていたこともあり、支援攻撃を浴びたツギハギどもはぴくりとも動かなくなった。
(「攻撃力支援、防御力支援、他は……求める支援内容をより明確にすれば、さらに高い効果を得られるでしょうか」)
呼吸を整えつつ思考を巡らせる千歳に。
「チト君すげー! いやー、ウチからナンパすりゃよかったなー」
「何を言っているんですか貴女は……まだ終わりではないですよ」
「わかってまーす。ささっ、止めに行こ!」
「ただし、自身の命を第一に」
「へいへーい。カーチャンかよ」
言い捨てて駆け出す燎。ふと、自身の母親の顔が浮かぶ。
(「カーチャンってこんなんだよねー。ウチも平々凡々平凡々、まんまなそんな感じの家庭だけどさ」)
この先にいる青年はそうではなく、母は俗に言う毒親であったという。
愛を与えられることなく、心身を蝕まれ続けて。
結果、命を落とす瀬戸際にある。
「助けましょう。絶望の淵に佇む青年を」
「……うん」
背後より掛けられた千歳の言葉を、今度こそ最後まで聴いて。
燎は小さく頷いて応えたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『死定神『免れ得ぬ運命の蛇』』
|
POW : 瞳に映る死
【自分の瞳】に映し出された【対象の死に様】を見た対象全てに【絶望】を与え、行動を阻害する。
SPD : 理解され得ぬもの
自身が対象にとって未知の存在である限り、通常の行動に追加して「【生命力流出】」「【急速老化】」の心霊現象を与える。
WIZ : 拡散する静寂
【全身】から【死の瘴気】を放ち、近接範囲内の全てを攻撃する。[死の瘴気]は発動後もレベル分間残り、広がり続ける。
イラスト:塚原脱兎
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●
「その願い、叶えてあげましょう。ただし、対価が必要です」
神様はそう言いました。
ええ、わかっています。覚悟はできています。
人を呪わば穴二つ、と言いますから。
「人の子よ、貴方の命を頂戴します」
ああ、やっぱりそうなのですね。それでも僕は構いません。
僕が自由になれるなら。
母が報いを受けるのなら――。
* * *
苔むした石の鳥居を抜けた奥、広い境内に彼らはいた。
立ち尽くす痩躯の青年。
彼の向こう側に、書物めいた物体に巻き付いた巨大な蛇が浮いている。
人の倍以上ありそうな蛇は、神社本殿を突き破って出て来たらしい。
朽ちた木片が、辺りに点々と散らばっている。
「……貴様らは」
蛇の視線を追って、青年もこちらを振り返る。
「邪魔をしようというのですか、
猟兵」
蛇の言葉に、青年の表情が僅かに動いた。
浮かぶは、困惑。
猟兵が此処に来た。
猟兵はデウスエクスを討つ存在。
即ち、神様は本物の其れでなく――。
「彼をいただいて、早々に退散しましょうか。……ああ、願いは叶えてあげますからご心配なく」
ちろちろと舌を出し、蛇は嗤う。
「彼の母親を殺せば、グラビティ・チェインの収穫量が増えますからね」
神の如き者は青年を喰らい、逃げ出す腹積もりのようだ。
目的を猟兵の殲滅に切り替えることはないだろう。
青年を守り続けなければならない。
神殺しを為し遂げる、その時まで。
太目・乃子
【POW】で勝負。
対青年
青年に「ケルベロスカード」を渡し、病院で受診するよう説得します
「ん。これを提示すると、当座の生活費や医療費が無料になる」
「命を投げ捨てるのも、奪うのも、一旦落ち着いてからもう一度よく考えて」
「まあ今は、生き延びることだけ考えた方がいいかも」
対敵
ポジション:キャスターの支援と共にUC【簡易黒瞳覚醒】を使用し状態異常力を強化、莫大なグラビティ・チェインと相手の好みに調整したドリームエナジーで「誘惑」し、飢餓・執着などの状態異常を与えて自分を囮にします
絶望は使命感で踏み越えます
「仄暗い願いに、わずかな罪悪感をトッピング」
「ケルベロスをやっていれば、死なんて身近なもの」
後お任せ
●
青年の傍を駆け抜け、乃子は蛇へと一直線。
すれ違いざま、少女は青年に一枚のカードを投げ渡す。
ケルベロスカード。
乃子の姿が描かれた其れは、ケルベロスであることの証。
「ん。これを提示すると、当座の生活費や医療費が無料になる。DIVIDEには、私から話を通しておくから」
病院へ行き、専門家の診察とカウンセリングを受けるようにと。
乃子は敵を見据えたまま、青年に手短に伝えて。
「命を投げ捨てるのも、奪うのも、一旦落ち着いてからもう一度よく考えて。……まあ今は」
ユーベルコード、発動。
「生き延びることだけ考えた方がいいかも」
伝えるべきことを伝えた乃子は、莫大かつ万色のオーラを解き放つ。
乃子の小さな身体から、サキュバスの種族特徴が消えた。
地球人の姿に変異したのだ。
纏うオーラは、グラビティ・チェインとドリームエナジーで構成されたもの。
すなわち今の乃子は、相対する
神の如き者が求める存在そのものと化していた。
ぽたり、と蛇の口から涎が垂れる。
「仄暗い願いに、わずかな罪悪感をトッピング――来なさい」
決戦配備・キャスターの支援効果も借り、乃子が発動するは状態異常の力。
飢餓、執着――誘惑。
蛇は少女から目を逸らせない。
自信を囮にする乃子の策は功を奏した。
ゆえに、蛇と目と目を合わせた少女は“死”を見ることとなる。
(「っ! これ、は?」)
急速に、身体の芯から冷えてゆく。
それでいて、喉だけは燃えるように熱い。
呼吸は意味を成さず、深い水底に引きずり込まれていくように。
暗く、暗く、暗く――。
(「そう、死ぬってこんな感じなのね。……でも」)
がちりと固い物が噛み合う音で、乃子は幻覚を、絶望を振り払う。
自身の喉元にまで迫った蛇の牙を、無意識に掲げたコンバットナイフが止めていた。
幼い身体に染み付いた戦闘経験が、乃子をすぐ傍まで迫った“死”から遠ざけた。
「ケルベロスをやっていれば、死なんて身近なもの。だけど」
蛇を強く蹴り飛ばして、乃子はナイフを構え直す。
「私はまだ、死ねない」
亡き両親の愛の結晶を、無かったことにはしたくない。
大成功
🔵🔵🔵
川崎・五十鈴
アドリブ・連携歓迎
決戦配備:メディック
青年に)
目を瞑って私の後ろに。
いざとなったら下にいる救急部隊に助けを求めて。そうはならないと思うけど。あいつはもうあなたに近づくことはできないから。
敵に)
食べさせはしないし、逃がしもしない。
ここに来る前に食べたものが、あなたの最後の晩餐。今のうちによく思い返しておくといい。穴あきチーズになる前に。
2分以上跳弾し続ける黒影弾を矢弾の雨の如く連射連射連射。
境内中を縦横無尽に高速で跳弾させ続ける。敵だけは貫かせながら。散々に撃ちまくっていれば蛇の瞳も扉の瞳も早いうちに潰せるかも。いっそ私も目を瞑った方が安全だと判断したら目を瞑る。視覚以外の意識は研ぎ澄ますけど。
御園・桜花
決戦配備
メディック
「永遠不滅なのに生存エネルギーが不足して、人の願いを食い散らかして生き続けようだなんて。此の世界の神を自称する方々は、随分無様ですこと」
「貴方達のような餓鬼魂は、世界が骸の海と繋がってきちんと死ねる方が幸せでしょう。そうなる迄、何度でも滅して差し上げます」
青年向き優しく
「此の餓鬼魂とのお話合いが終わったら。相談させて下さいな。優しい貴方が、貴方の好きな事をもっと考えられるように」
「貴方の瘴気は私が全て吸い上げましょう。他の方は傷付けさせません」
UC「幻朧の仇花」
死の瘴気で傷付けられる事で戦闘力増強と生命力吸収能力発揮
敵に吶喊
桜鋼扇使い最前線で殴り合い
敵の攻撃にはカウンター
●
「
猟兵、あくまで邪魔をするつもりですか」
「当然でしょ」
敵を睨め付けて進み出ながら、五十鈴はこそりと青年の耳元で呟いた。
「目を瞑って、私の後ろに。いざとなったら下にいる救急部隊に助けを求めて」
決戦配備・メディックの要請に応え、山の入り口付近には部隊が待機している。
青年を保護する準備は万全だ――彼が蛇の毒牙に掛かりさえしなければ、だが。
「大丈夫。あいつはもう、あなたに近づくことはできないから」
僅かに瞳を和らげて、蒼白な顔の青年に声掛ける五十鈴。
此度は囁きなどでなく、あえて蛇にも聴こえるボリュームで。
「舐められたものですね。……そこの青年を大人しく渡せば、あなた方は見逃してあげても構いませんが?」
「舐めてる? どっちが。彼を食べさせはしないし、あなたを逃がしもしない」
青年の命を救い、デウスエクスは殺す。けして覆してはならぬ大前提だ。
「ここに来る前に食べたものが、あなたの最後の晩餐」
二丁拳銃の銃口が、デウスエクスに狙いを付ける。
「今のうちによく思い返しておくといい。穴あきチーズになる前に」
引き金を引かんとした刹那、蛇の瞳がぎらりと光った。
(「今のは? いったい、何が」)
何が起きたのか。五十鈴が知覚する前に、周りの景色が消え去った。
辺りに漂うは、一面の瘴気。
(「これ……嫌、これだけは嫌!!」)
油と煙の入り混じった、コンクリートジャングルの臭いがする。
少女を取り巻くは、あまりにも濃厚な廃棄ガスであった。
喉から肺へ、気道を黒に染め上げて。
もう、息をすることさえも――五十鈴の意識が攫われる直前、大人の女の声がした。
「瘴気は私が全て吸い上げましょう。誰一人傷付けさせません」
――周りの景色が戻ってくる。
夏の木々の匂い、消えゆく瘴気。
凛と立つ、桜吹雪を纏いし女性。
合流した桜花が、蛇が紡ぐ死の運命に抗っていた。
くわっと蛇が牙を剥く。紛れなく怒りの形相だ。
「貴様、私の瘴気を糧にするなど……!」
「あらあら。此の世界の神を自称する割に、随分無様ですこと」
一方で、桜花は笑顔を崩さない。
されど、笑顔の下には激情が渦巻いていた。
「永遠不滅の存在なのに。生存エネルギーが不足して、人の願いを食い散らかして生き続けようだなんて」
「餌は大人しく食われていれば良い!」
対話は不可能だ。もとよりするつもりもないが。
「……貴方達のような餓鬼魂は、世界が骸の海と繋がってきちんと死ねる方が幸せでしょう。ですから」
そうなる迄、何度でも滅してやる。
殲滅の意志は、五十鈴も同じ。
「なるほどね、さっきのガスは幻影か。……瘴気への対応、任せていい?」
「承りました。どうぞ、存分に」
少女と女、二人の口角が不敵に釣りあがった。
「じゃあ遠慮なく。デウスエクス、無様に死ね」
今度こそ、二丁拳銃が吼えた。
黒い影の弾丸を連射、連射、連射、連射。
するりと交わさんとする蛇だが、跳弾がしぶとく付け狙う。
誤射など、五十鈴は気にしない。
「神殺しの為だけの弾だから」
「では私も少しだけ、お転婆を」
鉄扇を構えた桜花は、敵へと踏み出す前に束の間、青年へ視線を送る。
「
此の餓鬼魂とのお話合いが終わったら。相談させて下さいな。優しい貴方が、貴方の好きな事をもっと考えられるように」
ふわりと浮かべた笑顔は、生きとし生ける者に対する慈愛に満ちたものだった。
其の想いにしたがって、桜花は黒影の雨を抜け。
身体に幾らかの風穴が空いたデウスエクスに、反逆の鉄槌を叩き込んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
榊・霊爾
DIVIDEに通達しておく
母親との関係が未だ有効ならば、家族としての縁を解消させる、二度と接触出来ない様にな
君は父方か遠縁の親族の所に行った方がいいだろう
これは私の邪推だが、母親は母親になりたくなかったか、現実が理想とかけ離れていたか――やめておこう、こんな話は
鴉羽笠の【存在感】を反転させ、【気配探知】をさせる事で青年から気を逸らせる
君が欲しいのは私だろう?
『啓示』の【不意打ち】【居合】
無の境地となり未知は意味を成さなくなる
未知だと思う事すらない、ただの棒立ちの障害物
君を斬り捨てるは小夜啼鳥
残念だよ、死ねない君をこの刃の一員に出来ないのが
●
仲間の交戦中。指示通りに後ろに下がってきた青年を保護がてら、霊爾は救援部隊への連絡を担っていた
「現場に到着。状況は――以上。では、救出対象については、そのように」
くいと三度笠の位置を正した男は、連絡の最中に一つの通達も交えていた。
青年と母親との関係が未だ有効ならば、二度と接触できぬように家族としての縁の解消を、と。
「君は父方か遠縁の親族か。可能な限り遠い所に行った方がいいだろう。これは私の……いや、今はいいか。とにかく、戦場に近づくな」
敵を倒さねばならぬからと、霊爾は青年に背を向けた。
はぐらかしたことなど、噯にも出さず。
(「やめておこう、こんな話は。……そう、私の邪推に過ぎないのだから」)
青年の母親は、母親になりたくなかったのではないか。
或いは、現実が理想とかけ離れていたのではないか。
面と向かって青年に告げるのは、きっと酷だ。
ゆえに言葉を紡ぐでなく、刃を以て成すべきことを。
男はとんっ、と指先で三度笠の端に触れる。
派手な意匠の笠。其の存在感がぐっと高まって――。
蛇がぎょっと目を見開いた。
「なっ、新手か!? 貴様、何処から……」
デウスエクスの視点では、霊爾が戦場に召喚でもされたかのように見えたのだ。
「君が欲しいのは私だろう?」
敵を挑発するような仕草で、男が再び三度笠に触れると。
くるりと何かが反転したかのように、再び霊爾の気配が消失する。
実際は何処にも動いておらず、敵の目と鼻の先にいるのだが――。
「おのれ、
猟兵。私を欺こうとでも?」
蛇はちろちろと舌を出し、霊爾を探し出そうとするばかり。
こうなれば
神の如き者とて、男にとってはただの棒立ちの的。
未知は、“斬るべき対象”へと変わる。
(「さあ、鳴け。小夜啼鳥」)
一閃。
蛇を斬り捨てし大太刀は、美しき声で知られる鳥を銘に持つ。
されど響き渡るは、可憐な鳥の囀りとはかけ離れた慟哭。
悍ましき叫び声には、今まで大太刀が仕留めた連中の魂も憑依していたやもしれない。
「残念だよ、死ねない君をこの刃の一員に出来ないのが」
大成功
🔵🔵🔵
神野・志乃
倫理観も価値観もきっと違うのだろうとは思っていたわよ。けれど、だけど
「ねえ、自分の幸せくらい願ったって良いじゃない、貴方」
静かに、はっきりと、青年に伝える
敵の攻撃方法(WIZ)はさっきのツギハギと同じ?
いえ、これは……明らかに質が違う、色濃い死の気配
一般人なら近寄っただけで命を落とす程の……
だからと言って、私にやれることは、ひとつだけ
「“をのか”、出ておいで。こいつを倒すわよ」
UC《をのか》を発動
青年を【かばう】ように近接範囲に割り込み、手にした剣からの発光で敵を【目潰し】
「貴方は走って、こいつに追いつかれない位置まで!」
兎に角、この敵を青年に近寄らせないことだけを第一に考える
私は……体を張ってこいつを止めるしかないわね
あんまりね、器用なことは出来ないのよ、私
【オーラ防御】で身を守りつつ、青年が十分に距離を取れたら
「ポジション:キャスター、起動して」
【浄化】の術式を増幅する魔法陣を発動要請
死の瘴気が相手なら、“をのか”を通して生命育む陽光の【浄化】の力を展開して対抗
後は……叩き斬る!
●
此処に来た皆が、青年を助けようとしている。
手を差し伸べてくれている。
もしかしたら彼にとって、そんなことは生まれて初めてだったのかもしれない。
「僕、は……僕は、生きていいの……?」
青年が零したか細い声は、志乃にとって大きな衝撃であった。
倫理観も価値観も、きっと違うのだろうとは思っていた。
けれど、だけど。まさか己の生すら認めきれていなかったとは――。
「ねえ、自分の幸せくらい願ったって良いじゃない、貴方」
静かに、それでいてはっきりと。
伝えた少女の声には、一片の曇りもなかった。
「貴方は生きて。振り返らずに走って。こいつに追いつかれない位置まで!」
駆け出す足音。それ以上を見届ける必要などない。
青年は“生への道”を選んだ。その事実のみで充分だ。
後は、自身ができる限りのことを。
「“をのか”、出ておいで。こいつを倒すわよ」
具現化した陽光の剣を構え、志乃は蛇に立ちむかわんとするが。
敵は少女に目もくれない。
所々に深い傷を負いながらも、青年に狙いを定め、追い駆けようとしている。
けして、通してはならない。己が身を盾にしようとも。
「ポジション:キャスター、起動して」
要請に応じ、展開せしは術式支援。
志乃の纏いし陽光のオーラが、其の輝きを強めていく。
「人の子が……贄が、神に、歯向かうかァ!!」
行く手を阻む志乃の行動が、相当に癇に障ったらしい。
ごうっと蛇を中心に、闇色の渦が展開する――死の瘴気だ。
(「さっきのツギハギとは明らかに質が違う。色濃い死の気配……此処を動いては、彼が」)
一般人が瘴気に取り巻かれたら最期、確実に命を落としてしまう。
かといって、このまま守りに徹していては、自身が削られてゆくのみだ。
握りしめた光を頼りに、攻勢に転ずる機会はきっと一度だけ。
(「“をのか”、私の剣。どうか、どうか、私を守って!」)
陽光はいつも、少女と共に。
願いを、想いを託された剣が、光の力をいっそう強く解き放つ。
「ギャア!」と鋭い悲鳴を上げたのは、蛇。
見れば、志乃から――青年のいる方からも、顔を背けているではないか。
そう、光に目を潰されたのだ。
今なら、いける。
(「叩き斬る!」)
踏み込みは強く、深く、一歩。
敵との距離を詰めるたび、死の瘴気は生命育む陽光の力に浄化され、霧散してゆく。
刃を阻むものはない。気合とともに、斬りかかる。
「はぁっ!」
不思議な感覚が、剣を伝って志乃の手まで届いた。
神の如き者と呼ばれる存在にも、どうやら斬れる肉体はあるらしい。
(「我ながら、あんまり器用なことは出来ないわね、私」)
己が身を盾として、剣を振るった。それだけだ。
だが其を成す意志を持つゆえに、一人の青年が死す運命は覆ったのだ。
大成功
🔵🔵🔵
鬼頭・燎
※連携、アドリブ歓迎
【キトチト隊】
[手をつなぐ]でお兄さんゲット
お兄さん、アイツ私神私神詐欺!って語呂悪っ
ウチは猟兵のキト
あっちがチト君となゆちゃん
デウスエクスから守りにきたぜ!
からのー、お兄さんに決戦配備要請!
こっち(鍵のキーホルダー取出し)避難して全力応援よろたん!
そそ、ユベコで保護的なヤツ
チト君わかってるー
お兄さんが最強おこたルームに避難したら
落とさんようショーパンのポッケに
どーよ?これなら敵もウチらを無視できないっしょ?
チト君に邪魔にならなそーなタイミングで敵に苦無[乱れ打ち]
にんにん!
攻撃がきたら決戦配備・ディフェンダー要請!結界おかわりー!
お兄さんはウチが守る!って今の猟兵ぽくね?
鉄・千歳
※連携、アドリブ歓迎
【キトチト隊】
[ダッシュ]で青年と敵の間に割り込み、敵を[吹き飛ばし]
キトさんの言葉は独特だけれど、この世界の人間になら伝わ…る以前の問題だった
言葉が足りない…
ええと…彼女は貴方をユーベルコォドで保護すると言っています
今は混乱していらっしゃると思いますが、僕らは貴方の命をこのような卑劣な相手に渡したくはない
どうか守らせて頂けませんか?
鍵の中であれば少しは安心できるが…
彼がどちらを選ぼうとも、彼とキトさんを[かばう]ことに変わりはない
決戦配備・ジャマー
敵による青年への接近妨害をお願いします
…接近の隙は与えないつもりではいますが
【灯喰】発動
偽りの神にはここで終わって貰いましょう
●
仲間が身を挺して逃がした青年を、敵にはけして渡さない。
「お兄さーん! こっちこっち!」
息を切らして駆けてきた青年の手を取って、燎は何処かへと誘うようにぐいと引いた。
「はぁ、はぁ……君、も、
猟兵?」
「いえすいずあぺん! ウチはキト。で、あっちがチト君と、ボクドラのなゆちゃん。守りにきたぜ!」
「僕は千歳で、こちらは那由多です。……キトさん。那由多はボクスドラゴンではないと何度」
「ってことでー、お兄さんにウチからの
決戦配備要請! こっちに避難して全力応援よろたん!」
「ええと、キトさん、チト君に……?」
燎の勢いと行動の早さ、そして此の世界においても独特な部類の言葉遣い。
青年も理解が追い付かぬ様子だ。命を狙われている現状から、気を逸らせているのは幸いともいえるが。
溜息を漏らしながらも、千歳は橋渡しに回ることにした。
「彼女は貴方をユーベルコォドで保護すると言っています。僕らは貴方の命を、あのような卑劣な相手に渡したくはない」
神を騙り、命を啜る。
青年の願いがどのようなものであれ、デウスエクスの所業を許していい道理などない。
「どうか守らせて頂けませんか?」
真摯な言葉。
千歳の顔をじっと見て、青年は再び燎を見る。
ピンク髪のツインテールが、頷く動作に合わせてぶんぶん上下に揺れていた。
「……助けて、ください。僕は、まだ、生きていたい」
答えは得た。
「おけまる! そんじゃー、中でまったり応援しててー。終わったら呼ぶから!」
燎が取り出した鍵のキーホルダーを青年に触れさせれば――最強おこたルーム、展開。一名様ご案内。
鍵は少女のショートパンツのポケットの中へ。
これでデウスエクスの牙が、青年に届くことはない。
「鍵を、贄を、渡せェ!!」
猟兵達が勝利を収めさえすれば。
「渡すものか」
音もなく、燎と蛇との間に割って入る千歳。
地を蹴って距離を詰めた勢いを乗せ、敵を吹き飛ばす。
仲間も、青年も、渡しはしない。
固き意志を込めた一撃で。
「決戦配備・ジャマー、接近妨害をお願いします」
構えを正す最中、千歳は決戦配備を要請する。
程なくして、空中から散布されるは敵の視界のみ奪うバイオガス。
道中でも来てくれた、人型兵器による支援であった。
「やっぱチト君、歴戦でイケメンな? おっしゃ、ウチも負けねー!」
決戦配備・ディフェンダー要請。結界おかわり!
「お兄さんは……ウチが守る! って今のめっちゃ
猟兵っぽくね? 映えじゃね?」
防護の魔術結界を再び纏い、燎は苦無を取り出した。
「
猟兵……許さぬ。貴様らは、神に――」
「神、神、うっせーっての。私神私神詐欺かよ! つーか語呂悪っ!」
敵が放つは死へ誘う呪。
その中を、一人の少女が結界頼みで駆け抜ける。
至近距離から一撃加えると見せかけ、跳躍。
「にんにん! 一般JK舐めんなー!」
敵の頭部を目掛け、苦無を乱れ撃つ。
視界を遮られ、手負いの蛇は警戒を強めていたのだろう。
動きを止め、ちろちろと舌を出し。燎の投げた苦無に集中して、一つ残らず叩き落とす。
――その選択が、自らを死へ誘うとは夢にも思わず。
「喰い千切れ、鋼渦」
ぐしゃりと奇妙な音がして、バイオガスが晴れてゆく。
今、相手にせねばならなかった
猟兵は二人いたのに。
蛇は束の間、一人を見落とした。その末路がこれだ。
敵の胴に触れた、千歳の掌。
触れた位置から渦巻く力が、蛇の肉体の内へ内へと伝わって。
ごうっとくぐもった音が続く――胴の内部で、力の爆発が起きたのだ。
びしゃりと大地が赤で濡れた。
蛇の口から溢れた血だ。
神を騙る存在の血は、奴らが糧とする人と同じ色をしていた。
* * *
赤い水たまりの中へ、巨大な蛇は力なく墜ちた。
偽りの神の生は、此処で終わりだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 冒険
『防御魔術を破れ』
|
POW : 魔術を維持する魔法陣や魔導設備を破壊する
SPD : 僅かな隙を見つけ出し、突破口を作る
WIZ : 敵の魔術に魔力で干渉を仕掛ける
イラスト:純志
|
●
墜ちた蛇は最期の力で、するりするりと地面を這って。
胴で8の形を造り、自分の尾をぱくりと咥えた。
――運命からは免れ得ぬ。
――歩め歩めや、生の道。
――行き着く先は、必ず『死』
――運命の輪からは、抜け出せぬ。
それが、
神の如き者の遺言であった。
音もなく、書物めいた
物体のみが消滅し、地には蛇の亡骸が残された。
もう、青年が襲われる心配は無いが。
直後、
猟兵達は異変に気付く。
例えるならば、しゃぼん玉のような薄い膜が空を覆っていることに。
魔力に敏感な者であれば、膜は山全体を覆っているとわかるだろう。
さらに此処まで来る道中にまで、魔力が何重も、何重も――結界の一種で間違いない。
蛇は置き土産を残して死んだ。
此処にいた者達みんなを、息絶えるまで閉じ込める算段だ。
神の如き者が勝手に定めた死の運命を変える方法は一つ。
あらゆる手段を講じて結界を破り、脱出するしかない。
……青年は、少しばかり落ち着いたようであった。
心の整理はまだまだつかぬだろう。
だが、今の状況は把握できている様子だ。
「虫のいいお願いだとは、わかっています。でも……僕は、ここで終わりたくない、です」
青い顔のまま、震えが止まらぬまま。
それでも青年は、
猟兵達に頭を下げた。
「どうか、助けてください」
川崎・五十鈴
分かった。行こう。生きてればどうにでもなる。
ごめん。分かったようなこと言った。
実際、小さい頃にお父さんもお母さんもデウスエクスに殺された私にはあなたの気持ちは分からない。
ただ、この世の理不尽については知ってる。
だからこそ言うけど、自分の身に降りかかる理不尽は自分の手で壊した方が気分爽快。マジで。
…まあ、相手するだけ無駄な相手な気もするけど。壊し方は自分で考えて。生きてればその時間もある。
本当にピンチっぽい。でも、だからこそいい。
このピンチが、お父さんから受け継いだグラビティ・チェインを最大限まで活性化させてくれる…!
限界突破した重力を母の形見の靴に籠めて結界を空間ごと蹴り砕く。
次はあなたの番。
●
「分かった。行こう。生きてればどうにでもなる」
青年が顔を上げた先には、五十鈴の真っ直ぐな瞳があった。
「あと、さっきはごめん。分かったようなこと言った」
「……え?」
「私にはあなたの気持ちは分からない。……否定も肯定もできない。分からないから」
五十鈴は幼少期に両親をデウスエクスに殺されている。
親がいない状態が、彼女にとっての日常だ。
機能不全状態とはいえ、親が健在の青年とはそもそも違う前提で生きている。
「ただ、この世の理不尽については知ってる」
だからこそ、己が思う一つの選択肢を、彼に。
「自分の身に降りかかる理不尽は自分の手で壊した方が気分爽快。マジで」
「……自分の、手で」
「まあ、壊し方は自分で考えて。生きてればその時間もある」
言いたいことははっきりと。それが五十鈴の在り方だ。
全てを伝え終えたなら、さあ、今立ち向かうべき“壁”へ。
くるりと青年に背を向けた先、其は物言わず立ち塞がっている。
(「本当にピンチっぽい。でも、だからこそいい」)
もしも壁を――結界を破れなかったら、ここで終わり。
川崎・五十鈴という存在は、死を迎えることとなる。
緊張感、高揚感。
昂る、昂る、昂る。
(「――お父さん」)
少女の魂が躍動する。父から受け継いだグラビティ・チェインと共に。
(「――お母さん」)
少女は靴の踵を鳴らす。母から受け継いだ形見の靴だ。
超重力、限界突破。
ケルベロスとして戦い抜いた、両親のように!
「死の運命なんて、ぶっ壊す!!」
裂帛の叫びと共に、目の前の壁を蹴り砕く。
そして、道は開かれた。
「次は、あなたの番」
僅かに瞳を和らげて振り返った、無愛想なエルフの少女によって。
大成功
🔵🔵🔵
榊・霊爾
ちゃんと言えたじゃないか「助けて」って
それなら大丈夫だ、君の認知は完全に狂っていない、まだ間に合う
もう母親の事は忘れ...るのはそう簡単じゃないだろうけど...
何れ彼女と君は他人同士になる、見かけても声をかけられても助けを乞われても相手にするな、背を向け続けろ
それが最大の復讐となる
人は無視されるのが一番堪えるのさ
かく言う私も実の両親とは悪い意味で絶縁していてね
生まれて直ぐ消されそうになったよ、今となっては笑い話だけどね
そう思える日が来るまで、君は遠くへ行くといい
生みの親より育ての親とも言うしね
『窮極』で結界を切り裂き、結界の内と外を繋ぐ亀裂を生成する
この亀裂は長くは持たない、ここから早く出ろ
●
「ちゃんと言えたじゃないか「助けて」って」
共に山を下りる最中、霊爾は青年の肩をぽんと叩いた。
そう言えるなら大丈夫だと、君の認知は完全に狂っていないと、まだ間に合うのだと。
励ましながらも、男はより深く踏み込むことにした。
常ならば少ないはずの言葉を紡ぎ出してでも。
それで青年が傷付くことになろうとも。
未来の為に必要なことと思うから。
「今から私は、君にとっては苦しいであろうことを言う」
「……」
返答こそできぬ青年であったが、視線はしっかりと霊爾を捉えていた。
「もしも「母親の事は忘れろ」と言われたとしてだ。他人にそう言われて、簡単に忘れられるか?」
「……いいえ」
「だろうな。……何れ彼女と君は他人同士になる。見かけても、声をかけられても、助けを乞われても相手にするな。背を向け続けろ。彼女を殺そうとするのでも、変えようとするのでもなくな」
それこそが、最大の復讐となるのだと。
人は無視されるのが一番堪えるというのが、霊爾の持論だ。
事実、青年の母親に対しては有効な手段やもしれない。
息子を感情の捌け口のように扱ってきた女なのだから。
「かく言う私も、実の両親とは絶縁していてね。悪い意味で」
「……え?」
「生まれて直ぐ消されそうになったよ、今となっては笑い話だけどね」
飄々とした様子で己の過去の一端を語る霊爾。
あまりにも重く苦しいことのはずなのに、ほんとうに何でもないことのように。
話せるようになるまで、榊・霊爾は生きて来たのだ。
「実際、笑い話として語れるかはともかくとしてね。そんな風に思える日が来るまで、君は遠くへ行くといい。生みの親より育ての親とも言うしね」
青年の知る世界は、きっとあまりにも狭すぎる。
彼の心を育む物、事、人は、これから生きていく時間に在るのだろう。
それらに出会う為には、青年は生き続けねばならない。
死の運命など、斬り開いて。
すらりと抜刀のち、一閃。
息を吸って吐くような。あまりにも自然な、流れるような一太刀で、霊爾は道を阻む結界を斬った。
空間を裂く斬撃、されど生み出した亀裂は長くは持たない。
「先に行け」
とんと青年の背を押す霊爾。
たったそれだけのやりとりが、言葉とはまた別種の雄弁さで物語る。
「生きろ」と。
大成功
🔵🔵🔵
太目・乃子
【POW】で力ずくでの解決を図ります。
心情
青年が見せた生きようとする意思に感じ入り、必ず生還させようと気合いを入れます。
「私達がいつか死ぬことなんて、言われなくても分かってる」
「でもそれは今じゃない」
行動
神が如き者 だろうと、グラビティ・チェインの枯渇を理由に侵略を開始しているからにはその能力に無限も無窮もあり得まい、とUC【ストライク・イェーガー】を使用して結界自体や結界を維持している物などを手当たり次第に射撃していきます。
「繊細な魔術には、意外と脳筋アタックが効く」
「一発で駄目なら、百発でも、千発でも」
アレンジ・連携などお任せします。
●
一度は閉ざされた道を蹴り砕き、斬り開き、
猟兵達は進んでいく。
されど、青年は何処か落ち着かない様子だ。
猟兵への信頼は揺らがずとも、やはり不安は拭えぬのだろう。
破滅以外の選択肢もあるのだと認識してしまったからこそ、尚更。
「怖い?」
「死ぬのが」とは、乃子は言わなかった。
しかし、青年の返答は明確だった。
「……はい。今は、すごく」
自らの命を投げ出そうとしていた彼が、今は寄り添う“死”に怯えている。
生きる望みを取り戻したゆえの変化だ。
だからこそ、少女は心打たれる。
「大丈夫」
ごく短い言葉には、気合と誓いが滲み出ていた。
必ず生還するのだ。
彼も、自分達も。
神の如き者は言っていた。
「運命の輪からは、抜け出せぬ」と。
(「私達がいつか死ぬことなんて、言われなくても分かってる」)
十に満たない歳ながら、乃子は身に染みて理解していた。
父が死んだ。母が死んだ。デウスエクスに殺された。
侵略による死ばかりではない。
ニュースに付き物の訃報の要因は、事故に疫病、その他諸々数多。
時には、自ら命を絶ってしまう者だっている。
いつか必ず死は訪れる――あの蛇が言っていた通りに。
(「でもそれは今じゃない」)
小さな身体で無骨なライフルを構える。
じっと見据えるは、結界の層。
ただ目視しただけでは、綻びがあるかすらわからない。
しかし、此の結界が無限の存在ではありえないと乃子は確信していた。
何しろ敵は、生存に必要なグラビティ・チェインの枯渇を理由に侵略行為を働いているのだ。
本当に無限無窮の力を持つ存在ならば、そも収奪に来る理由も必要性もないはずだから。
(「繊細な魔術には、意外と脳筋アタックが効く。なら、手当たり次第――もし一発で駄目なら、百発でも、千発でも!」)
肚を決めて引き金を引けば、物言わぬ銃は其に応える。
吐き出したはずの弾が消え、また撃っては消えを、幾度も幾度も繰り返して。
ついに。
(「……分かった、そこだ」)
僅かに生まれた綻びへ、雨霰と弾を集中させれば。
ぱりんと軽い音を立て、結界が割れた。
乃子が確信していた通りであった。
永遠などありえない。
ゆえに、己が力で望む方へと行けるのだ。
大成功
🔵🔵🔵
御園・桜花
脱出後の決戦配備
メディック
青年に
「それで。貴方が此処で終わりたくない理由を、今一度お伺いしても?」
微笑
「生き残りたい理由が母を殺せていないからだけなら。また他の餓鬼魂が貴方を狙うだけです。貴方が此処で終わりたくない御理由とは?」
「残念ながら、人は人の意見では変わりません。貴方のお母様が、いつも自分が1番の被害者だと思い自分自身だけを可愛がる言動は、死んでも変わらない事でしょう。ただ其れに、貴方が付き合う必要はもうありませんけれど」
「他人の意見が人を変える事はないけれど。他人の意見に耳を傾けられる方なら、他人の意見を参考に自分の道を選ぶ事は出来ます。貴方はもう、自分の足で一歩踏み出しました。貴方は自ら変われる方だと、私は信じます」
UC使用の儘青年の肩を軽くトントンと叩く
「貴方自身の幸せは、確かにお母様と離れた所にあるでしょう。戻る必要も二度と顔を合わせる必要もありません。貴方が貴方自身を幸せにする為の相談を、外で一緒に致しましょう」
UCで壁壊れるまで殴打後更生施設と就職方法の話を一緒に聞く
●
だいぶ山を下ってきた。事件発生の一報を受けた
猟兵達が転移してきた位置も、そろそろ近いはず。
戻ることができれば、そこには
救援部隊が待機している。青年を託し、適切なケアを行うことも叶うだろう。
だが、その前に。
「一つ、お聞きしてもよろしいでしょうか」
「……? はい。僕に答えられることなら」
「貴方が此処で終わりたくない理由を、今一度お伺いしても?」
桜花はふわりと微笑み、青年に問うた。
一歩踏み込んだ問い。されど、必要なことだと桜の精は認識している。
生きたい。
青年が願った理由が、もしも『母を殺せていないから』だけだとしたら。
(「きっとまた、他の
餓鬼魂が彼を狙うでしょう。だから」)
確かめておかねばならない。
返答によっては、危機は本当に去ったとは言えないから。
笑みの裏に密かな憂いを隠し、桜花は青年の返答を待つ。
やがて、たどたどしくではあるが、彼は言葉を紡ぎ始めた。
「僕は、何と言うか……今まで、自分の人生を生きていなかった。そう、思うんです」
青年はゆっくりとでも、自分の“理由”を言葉に現さんとする。
「母が……あの人が存在してる限り、苦しいままなんだって。ずっとそう思っていました。それ以外、考えられなかった。でも」
猟兵達が別の可能性を示してくれた。
希望は消えていないのだと教えてくれた。
「貴女も、そう。僕の好きなことを考えられるようにって……嬉しかった、です。好きなこととか、まだわからないけど」
戦場で桜花が掛けた言葉は、青年に確かに届いていた。
「だから、その……ここで終わるなんて、諦めるなんて、できません。母が死ぬんじゃなくて、僕が生きる未来を。選んで、みたいんです」
桜の精は心から笑んだ。
この青年が過ちを繰り返すことはないだろう。
「答えてくださってありがとうございます――貴方はもう、自分の足で一歩を踏み出したのですね。ええ、貴方は自ら変われる方。そう私は信じます」
信ずる者へ、未来を。
桜の精は扇を構え、其に光と闇の精霊を呼び寄せる。
沈静化と浄化の権能を以て、生への道を絶たんとする蛇の呪いを解除せんと。
(「残念ながら、人は人の意見では変わりません。彼は他人の意見に耳を傾けられる方でしたが、彼の母親は――」)
いつも自分が一番の被害者だと思い、自分自身だけを可愛がる言動を取る青年の母。
もしかすると死してなお、その性は変わらぬやもしれない。
だが、青年は違う。
今までを振り返り、たとえ覚束ない足取りであろうと自分の道を選ぼうとしている。
(「ゆえに、砕きましょう。此処に命の流れを留めんとする呪を!」)
扇より放たれた力が、想いが、呪が具現した結界を薙ぐ。
――行き着く先は、必ず『死』
――いいえ。歩みを止めるには、まだ早過ぎると私は思うのです。
ゆるり舞うように結界を破る最中、桜花は青年の肩をとんと叩いて優しく笑んだ。
「貴方が貴方自身を幸せにする為の相談を、外で一緒に致しましょう」
彼の幸せは、母親と離れた所にあるだろう。
戻る必要も、二度と顔を合わせる必要もない。
更生施設、就職方法――実現の為の手段は存在する。
青年がDIVIDEのサポートを受ける際には、自分も付き合おうと。
目的意識を新たにし、桜の精はしぶとく根を張る呪を破り続ける。
大成功
🔵🔵🔵
鬼頭・燎
※連携、アドリブ歓迎
【キトチト隊】
お兄さん水くせーぞ!
ウチら一緒に戦った仲じゃん?
一緒に生きて帰ろーぜ
家に帰るまでが猟活(猟兵活動)ってな!
んじゃまー、チト君なゆ君お兄さん!
キトちゃんちょっくら神るわ!
決戦配備:キャスター
結界の弱点探すんでサポートか運搬よろ!
ある意味マイホーム?な段ボールに入って【絶対に出ない!】
一番突破しやすいトコ探してチト君に破ってもらお
お兄さん、突然ですが段ボール神キトちゃんからお告げでーす
ウチと連絡先交換しようぜ!
ウチ、アホだから難しいことあんま分らんけど、周りの大人にはけっこー恵まれてんのよ
だから話聞いて大人に助けて貰ったりできるぜ?
お悩み相談はまかしょ!(任せろ)
鉄・千歳
※連携、アドリブ歓迎
【キトチト隊】
そうですね…キトさんの言う通り、貴方は僕等の仲間も同然
さあ、共に帰りましょう
え、キトさん?カミる?
えっと…これもユーベルコォド?
決戦配備の要請で運ぶのが難しければ僕が[怪力]で運びましょう…
キトさん、それはお告げというか提案では
ですが、この世界に生きる彼女ならば確実に彼の助けになるでしょう
僕も貴方の力になりたいと思います
貴方が笑って生きられるように
まずは、ここから抜け出す為に力を尽くしましょう
キトさんの指示に従い結界の破りやすい場所へ
決戦配備:クラッシャー
結界破壊に協力願います
せめて、この先の青年の未来が少しでも明るいものになりますよう
貫き霧を晴らせ、【霧晴】
●
遠目に幾多の人影が見えた。
救援部隊だ。ようやく戻って来れたのだ。
部隊と自分達とを隔てる結界、これさえ破れれば――。
「家に帰って
猟活終了的な?」
「キトさん、遠足じゃないんですから。言いたいことはわかりますが」
相も変わらずマイペースな燎に、淡々とツッコむ千歳。
危険の只中に在ることを忘れさせる不思議な和やかさに、青年も少し肩の力を抜くことができたのか。
「あの、その……本当に、ありがとうございます」
立ち止まったかと思うと、再びぺこりと
猟兵達に頭を下げた。
すると。
「もー! お兄さん水くせーぞ! ウチら一緒に戦った仲じゃん!? つまりオカマの飯食った仲じゃん!?」
「わ、わっ!?」
「はい、その辺で手を止めてあげてください。あと、同じ釜の飯ですよ。キトさん」
わしわしと青年の頭を撫でまわす燎、少し眉間に皺が寄って来た千歳。
繰り返すが、未だ危険の只中である。
もっともあと一つ結界を破れれば、燎の言葉通り活動は終了。作戦成功だ。
その"あと一つ"が厄介そうなのだが。
「那由多、結界は……やはり、一筋縄ではいかなそうですね」
結界の具合を探りに行かせていた小竜形態の那由多を迎え、千歳は思案する。
最後の結界は、山全体を覆うものだ。
広範囲に張り巡らされた範囲の綻びを見つけ出すのに、どれだけ時間が掛かるだろう。
(「或いは力ずくで……いや、消耗が激しくなるのも」)
「チト君さー、もしかして結界の弱点探してる?」
青年をいじり倒して満足したのか、燎が千歳に問うた。
何かを探すかのように、辺りをきょろきょろと見回しながら。
「その通りです。しかし、探知には時間が」
「お、あったー! マジ卍! んじゃまー、タンチ? それ、ウチにまかしょ!」
「……は?」
「キトちゃん、ちょっくら神るわ!」
たたっと燎が駆けていった先、木陰に汚れてしなっとなったダンボールが放置されていた。
ダンボールを拾って、迷いなくすっぽり被って。
少女はひと時、
全知全能の神の如き者となる。
「あ、チト君。弱点あったわ。すぐそこ」
なお、神憑りは秒で終わった。
燎が指差した先は、石段の登り口ど真ん中であった。
千歳は身振り手振りも交え、結界向こうの救援部隊に下がっているように伝える。
そんな中でも、少女はマイペースを貫いていた。
「ピンポンパンポーン。お兄さん、突然ですが段ボール神キトちゃんからお告げでーす」
「キトさん。ちょっと手伝」
「ウチと連絡先交換しようぜ!」
「え……僕と、ですか?」
ダンボールの中からひょっこりと顔だけ出して、燎はにかっと青年に笑顔を向ける。
「ウチ、アホだから難しいことあんまわからんけど、周りの大人にはけっこー恵まれてんのよ。だから、話聞いて大人に助けて貰ったりできるぜ?」
緊張感など欠片もなく、するりと届ける想いは純粋そのものだ。
「お悩み相談はまかしょ!」
「それはお告げというか提案では。ですが」
ツッコむ千歳の眉間から、皺はすっかり消えていて。僅かながら微笑みを浮かべてすらいた。
「この世界に生きる彼女ならば、確実に貴方の助けになるでしょう」
自分も青年の力になりたいと続け、千歳は那由多を呼び寄せる。
「皆で帰って、これからも笑って生きていけるように。……那由多」
「ギュイ!」
――
決戦配備・クラッシャー、要請。
結界の向こう側、人型兵器の構える砲塔に光が収束していくのが見えた。
「今だ、貫け!」
小竜から一直線上に、ごうっと霊力が迸る。
結界の内と外から一点に、光と光がぶつかって。
「いっけええええええええええ!!」
少女の叫びが木霊する中、硝子の割れるような音とともに結界が割れ――山を覆っていた全てをもひび割れて、そのまま霧散していった。
「いよっしゃあああ! お兄さん! いろいろ終わったし連絡先交換しよ? あとこの後さ、打ち上げに飯とカラオケ行かね?」
「え、ええ!?」
「キトさん……打ち上げはせめて、DIVIDEへの報告の後にしましょう?」
困惑する青年にぐいぐい迫る燎。
片手で顔を覆う千歳、主の顔を覗き込む那由多。
みんな、みんな、生きている。
隔てるものの無くなった場所へ、救援部隊がやってくる――。
* * *
デウスエクス殲滅確認。
死亡者無し。
被害者は要ケア及び要経過観察。
自立の意志強くあり。精神状態を鑑みながら、生活相談・支援へ繋げる用意を。
その日、DIVIDEが発行した戦果報告書は、予知が示した内容とまるで異なるものであった。
未来は変わった。
死の運命は覆された。
心に従い、戦場へ集った
猟兵達の尽力によって。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵