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キング・ブレイン最後の戦い――のクリスマス回

#キマイラフューチャー #戦後 #キング・ブレイン


●多分、第十何回目かの秘密結社ブレイン復活祭と言う名の季節外れのクリスマス(長えよ)
 なんかまた真っ二つに割れてるキマイラフューチャー。
 そして露わになったシステムフラワーズの中空に浮かぶ、何か悪そうなお城。
 秘密結社ブレインが本拠地、『キングブレインキャッスル』である。
「ブーレブレブレブレブレブレブレッ!」
 その中では、猟書家にして大首領、キング・ブレインがブレブレに笑っていた。
「ドン・フリーダムのCGさんのお陰で吾輩、復活! そろそろ十何回目の復活な気もしますが、この通り、ピンピンブレブレしておりますぞ! ブレブレブレッ!」
 何回も吹っ飛んでは再生した自分とお城を誇るように、キング・ブレインがポーズを決めて高笑いを響かせる。
 さらに今回は、そんなキング・ブレインの高笑いに合わせてブレ・・ている者達がいた。
 キング・ブレインと同じように笑っているとかではない。
 動作としてブレ・・ているのだ。
 それはもう、もの凄く勢い良くブレまくっているのだ。

「「「メリークリスマース!!!(意訳:復活おめでとうございます大首領!)」」」

 怪人・モミの木モミ男の群れが。
 クリスマス前後に発生する筈のこいつらが、なんでこんな時期に発生しているかって?
「さあ、出番であるぞスーパーモミの木モミ男君軍団! スーパー怪人化した諸君たちの力で、是非とも他の世界に季節外れのクリスマスをお届けして頂きたい。特に夏休みのある世界に、始まる前に夏休み終了のお知らせをぶちかますのである! おお。我ながら何と恐ろしいスーパー悪い作戦であろうか。ブレブレブレ、吾輩の悪の大首領としての才能が恐ろしい――」
「「「メリークリスマース!!!(意訳:さすがですじゃ!)」」」
 と言う事である。
 スーパー怪人化したから、季節感なぞ無視して発生してるのだ。
 そう言う事なら、仕方ない……か?

「だが諸君。残念ながら、まだキマイラフューチャーはふたつに割れてます。接着剤とかでくっつかないんですかね、これ。兎に角、諸君を送り出す前に猟兵の皆さんがまた来てしまうであろう」
 これだけ何度もやられてればキング・ブレインに予知能力がなくたって、そのくらい覚悟するというもの。
「しかーし! スーパー怪人化した諸君には、新たな力が、【スノー・オブ・ホワイトクリスマス】がある! さすがの猟兵達も、まさかこんな時期にクリスマスに適応できる筈もないであろう。ブレブレブレブレブレッ」
 などとほくそ笑むキング・ブレインの背後に、4つの影が並び立つ。
「安心なさいませ、我らが大首領」
「万が一、スーパーモミの木モミ男たちが敗れる事があっても」
「まだ我らがおります」
「むしろそこからが本番!」
 ひとりひとり声を上げるその姿は、スーパーモミの木モミ男達の輝きが逆光となって見えない。
「おお、今日の日直四天王はお前達であったか!」
 だがその存在に、キング・ブレインは声を弾ませた。
「――ウィンター四天王よ!」

●残機あとちょっとの筈
「とまあ、こんな感じでキング・ブレインまた復活した。放っとくと夏休み終了のお知らせになってしまうみたいだよ」
 ルシル・フューラー(新宿魚苑の鮫魔王・f03676)は、説明の間かぶっていた季節外れのサンタ帽を脇に置いた。
「やる事は、これまでのキング・ブレインとの決戦と同じ」
 まずは周囲の『怪人・モミの木モミ男』を何とかしながら、キングブレインキャッスルに乗り込む。
「スーパー怪人化した事で、新たに環境操作系の能力を得ているから気を付けて」

 【スノー・オブ・ホワイトクリスマス】。
 【クリスマス感のあるキラキラした雪】を降らせる事で、戦場全体が【ホワイトクリスマスっぽい夜】と同じ環境に変化する。[ホワイトクリスマスっぽい夜]に適応した者の行動成功率が上昇する。

 しかも無駄に速い動きで回避したり突然飛び立ったりする素の能力も強化されている上に、1人で100体くらいと戦わされそうな感じで大量に溢れかえっている。無策で飛び込めば、フルボッコされかねない。
「キングブレインキャッスルに乗り込んだら、キング・ブレインとの決戦だ。日直式四天王もいるけど」
 日直式四天王とは、キング・ブレインが人気すぎて日替わりで担当している四天王である。
 四天王ってなんだっけ?
「今回の日直式四天王の詳細は予知では見えなかったけど、ウィンター四天王とかキング・ブレインが言ってるのは見えたから、クリスマスっぽい雰囲気は続く思うよ」
 なお、詳細な能力こそ不明な四天王だが、4人とも当然スーパー怪人化してる上に、キング・ブレインの為なら迷わず命をかける程、心底心酔してる者達だ。油断してると苦戦を強いられる事だろう。
 そして、四天王を乗り越えキング・ブレインを倒した暁には――。

「城が爆発する」

 キングブレインキャッスルとは、そう言うものなのだ。
 キング・ブレインが倒れると自動的に作動する自爆装置付きなのだ。所謂デッドマンスイッチの類。止められない。
「止める事は出来ないけど、キングブレインキャッスルが崩壊するまでの間、キング・ブレインと話は出来るよ。最近のデビルキングワールドの事など教えてあげれば普通に喜ぶと思う」
 特に新たな情報が得られる可能性はない。
 そう言う機会ではない。
 けれども、キング・ブレインは、最期には猟兵の健闘を称え、大抵の話には乗ってくれるだろう。
「まあ、偶にはそう言う悪役がいても良いんじゃないかな。復活するのも、あと何回も残ってなさそうだし」


泰月
 泰月(たいげつ)です。

 猟書家には関われてなかったのですが、キング・ブレインは書きたくなった。
 猟書家、キング・ブレインとの決戦シナリオです。
 合計20本成功すると、完全に滅ぼす事が出来ます。

 1章はキングブレインキャッスルの周囲に大量にいる『怪人・モミの木モミ男』との集団戦です。
 スーパー怪人化した事で、クリスマス時期よりキラッキラッしてます。光るのはスーパー化あるある。
 なお1人100体くらいがノルマになりそうなくらい大量にいるので、数の対策がないと普通に負けかねないです。
 追加ユーベルコード(ベースは【シェイプ・オブ・ウォーター】です)も、常にどっかで誰かが発動してるでしょう。

 2章はキング・ブレインとの決戦です。
 謎の日直式キング・ブレイン四天王がくっついてきます。
 四天王の詳細は後程。
 それぞれの能力は、戦う前に自分達から明かしてくれるでしょう。怪人だから。(?)
 なお四天王はキング・ブレインの優しさに惚れ込んだスーパー怪人ですが、キング・ブレイン本人は恐怖で支配できてると思ってるようです。コミュニケーション取れてる?大丈夫?

 3章はキング・ブレインとのお話タイムです。
 キング・ブレインは猟兵の勝利を讃え、自爆するキングブレインキャッスルと共に潔く散ろうとしますが、城が崩壊するまでの間、色々お話できます。何でも好きな話してOK。ババ抜きやろうぜ、とか言っても多分乗ってくれます。ボドゲとかは時間かかるからなぁ。
 なお、情報収集を目的としても、何も得られません。そう言う意図でのプレイングは不採用になる可能性があります。
 フリートークとしてどうぞ。

 1章のプレイング受付ですが、職場の事情で本業の7月のシフトがまだ確定していない為、7/3(月)8:31からとさせて下さい。
 また再送をお願いする可能性あります。なおオバロは期間外でもOKです。

 ではでは、よろしければご参加下さい。
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第1章 集団戦 『怪人・モミの木モミ男』

POW   :    無限の彼方へ
【おもちゃの音声を響かせること 】によりレベル×100km/hで飛翔し、【スピード】×【ベツレヘムの星の尖り具合】に比例した激突ダメージを与える。
SPD   :    ブレるクリスマスツリー
【激しいダンスの振動でじわじわ動きながら 】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    わしがサンタじゃ!
【プレゼント爆弾 】【ツリーの飾り】【あとその辺の靴下など】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
鐘射寺・大殺
夏をすっ飛ばしてクリスマス、であるか。
困ったのう、我輩もうすぐ夏休みなのだが。
それにスーパー怪人とやらが色んな世界でヒャッハーしだしたら
風紀が乱れるではないか!

【メタリックデビル】を発動、悪魔ロボットに乗りこんで
キングブレインキャッスルへ《切り込み》をかける!
《武器に魔法を纏う》強化を施し、暗黒剣を《ぶん回し》て敵を迎撃。
敵に囲まれそうになったら、《空中機動》しながら放射状に破壊光線を放ち
まとめて薙ぎ払うぞ。

我輩は魔王、クリスマスを待ち望む貴様らへの《心配り》も完璧よ。
悪魔パティシエが作った特製ケーキを用意したぞ!
我輩が直々に《お茶を淹れる》から、存分に味わうがいいわ!
グワハハハハ!!


明石・鷲穂
栴(f00276)と

梅雨明けすっ飛ばしてクリスマス。夏に見る雪って風情あるなぁ。
そんで、今回は飯……は、無さそうだな。
うまく落城させればフライドチキンとか出てこないか?

メリークリスマス!
確かに鬱陶しい。薪割り一択だな!
UCを発動で翼を強化。羽根を飛ばして、飛び回る木に不意打ちを仕掛けよう。
向かってくる木には羽根で迎撃して減速させ、カウンターでぶち込み。
落下してきた木は適当に金剛杵で叩き割るぞ。

何か本当に薪割りしてるみてぇだよなぁ。少し飽きる……なんだ、爆発音!?
……燃やすの、アリだな!

そんじゃ、ある程度薪がたまったら
クリスマスらしく焚き火でしめようぜ。


生浦・栴
山羊の(f02320)と
納涼を期待して誘ったのだが
想像以上に鬱陶しいな?(生温い目
面倒だ、クリスマスの薪と行こう
魔力を練って山羊のの進行方向とは別方向へ
属性魔法の炎を範囲に、地を這う形に展開し爆裂させる
飾りを分別出来ておらぬが目を瞑って貰おう

山羊のの方はと目を転じると
UCの発動に合わせて連中のスピードが上がったな?
というか木が飛ぶな
オーブを一撫でして此方もUCを発動
飛べなければスピードも落ちよう
落ちる先が炎なのは不幸な事だな

そうそう、お主の云う通りクリスマスならチキンだな
prison cellに冷凍保存しているものが幾許かある
薪になっておる分は大人しく燃えて呉れそうだな
掃討中に炙っておこうか



●風情も情緒もない
「夏をすっ飛ばしてクリスマス、であるか」
「梅雨明けすっ飛ばしてクリスマスかぁ」
 ほとんど同じ事を同時に口走って、鐘射寺・大殺(砕魂の魔王・f36145)と明石・鷲穂(真朱の薄・f02320)が思わず顔を見合わせる。
 そして、どちらからともなく苦笑を浮かべた。
 2人にそう思わせる程に、この場はクリスマスな雰囲気に満ちていた。
 先ずは否が応でも目に入る、数百本のクリスマスツリー。そのどれもが色とりどりのオーナメントに飾られて、それ自体がキラキラと輝きを放っている。真下の輝きを受けて、ツリー天辺の星なんかギラッギラの黄金の輝きを放っていた。
「夏に見る雪って風情あるなぁ」
「……風情? あるか?」
 そんな目に喧しい光景から視線を空へ逸らした鷲穂に、同じ空を見上げる生浦・栴(calling・f00276)の溜息混じりの呟きが聞こえた。
 そろそろ夏の暑さを感じる日も増えて来た頃に、季節外れの雪景色。
 一足早い納涼になるかと栴は期待していたのだが――空は空で、キラキラとそれ自体が輝く雪が降り注いでいる。
「クリスマスの風情ありまくりじゃ!」
「無いとは言わせんぞい!」
「ほれこの通り、クリスマスツリーも飛んでるのじゃ!」
 その上、これである。
 クリスマスツリーが多すぎる上に、揺れながら動いたり何なら空を飛んだりしているのだ。
「全く。こんな連中が色んな世界でヒャッハーしだしたら、風紀が乱れるではないか!」
 憤慨した様子の大殺の言う通り、確かにこの光景に風紀の欠片もない。
「風紀以前ではないか? と言うか、想像以上に鬱陶しいな?」
「確かに鬱陶しい」
 気にする所はそこかと、空に生暖かい視線を向けたまま大殺にツッコむ栴に、鷲穂も頷く。
 クリスマスツリーがツリー型怪人で、数も多いと聞いてはいた。いたが、聞くと見るとは大違い。
「むむ? クリスマスはお嫌いかな?」
「クリスマスに適応出来ねば、わしらには勝てんのじゃ」
「その辺で拾って飾った靴下に詰めたプレゼントで殴り倒してやるぞい!」
 そんな3人に、動くクリスマスツリーこと、怪人・スーパーモミの木モミ男の群れがブンブンと激しく揺れながらにじり寄る。足が無いからそうするしか移動できないのだ。
「まずその移動手段がうるさいと気づけ」
 栴が正論を言い放っても、モミの木モミ男たちが止まる事はなかった。

●トンチキクリスマス論、ケーキ編
「クリスマスじゃ、クリスマスじゃ」
「夏でもクリスマスじゃ!」
「夏休みよりクリスマスじゃ!」
「困ったのう、我輩もうすぐ夏休みなのだが」
 声を大に夏休み終了のお知らせのプランを告げて来るモミの木モミ男の群れに、大殺は困った様に頬を掻く。
 大殺にだって、夏休みの予定はあるのだ。
 始まる前に終了になるのは、困る。
「だが我輩は魔王、クリスマスを待ち望む貴様らへの心配りも完璧よ」
 しかし大殺は困り顔を不敵な笑みへと変えて、モミの木モミ男の群れへと真っすぐに向かって行った。
「悪魔パティシエが作った特製ケーキを用意したぞ!」
 デビルキングワールドは砕魂さいたま王国。大殺が若き魔王と立つその地で開かれたケーキ大会で、砕魂さいたま一となったパティシエの新作――もとい今年の本当のクリスマスの為の試作品を、何とか言って数を作って貰ったのだとか。
「さらに、我輩が直々にお茶を淹れるから、存分に味わうがいいわ! グワハハハハ!!」
 これでホワイトクリスマスっぽさは完璧だろうと、大殺は魔王らしい威厳を込めてせせら笑う。
 笑いつつも紅茶を準備していた。この若き魔王、魔王の癖に一般人よりもお茶を淹れるのが上手いようだ。魔王ってなんだ。
 だが――。
「甘いですじゃ!」
「確かにクリスマスと言えばケーキ!」
「だがケーキだけあればクリスマスだとでも?」
「あまーい! クリスマスケーキよりも甘すぎじゃ!」
 しかしモミの木モミ男たちが口々に、それではダメだと告げて来る。
「それでは誕生日もクリスマスになってしまうのじゃ!」
「……だが待って欲しいのじゃ、左のモミの木モミ男。それはそれでありなのでは?」
「右のモミの木モミ男よ。あり寄りのありだが、大首領の為になしじゃ!」
 何か脱線しつつあるが、要するにクリスマスと言うには、ケーキだけでは足りないと言いたいようだ。
「良く見ろ! メリークリスマスと書かれたチョコレートが乗っているであろう! クリスマスだ!!!」
「うむ、確かにクリスマスケーキじゃ」
「しかしケーキしかないクリスマスって、ぼっちがケーキだけ用意したみたいな感が出て逆に悲しすぎるんじゃ!」
「せめてチキンも合わせるのじゃ!」
「くっ……我輩とした事が……」
 反論を試みた大殺だったが、モミの木モミ男たちの更なる反論に思わず詰まってしまう。
 ケーキ以外の用意が無いのは事実なのだ。
 その時、何処かすぐ近くから、肉の焼ける香ばしい匂いが漂って来た。

●トンチキクリスマス論、チキン編
「面倒だ、クリスマスの薪にしてやろう」
「薪割りか!」
 ちょっと投げやり気味になってきた栴の言葉に、鷲穂もそれは良いと破顔する。
「でかいツリーのままだと、薪にするには不便だな」
 鷲穂は背中の大鷲の翼を二、三度羽撃かせて浮上し、空中で翼を大きく広げながら両手で印を組む。
「雨降りて染めし」

 ――羽根時雨。

 鷲穂が翼を羽撃かせれば、強化・複製された羽根が放たれた。
 更に空中で増殖した鷲穂の羽根が、まさに文字通り、不意の時雨が如くモミの木モミ男たちに降り注ぐ。
「メリメリメリメリメリッ!?」
「クリスママママママッ!?」
 モミの木モミ男たちも頑張って揺れて回避を試みるが、それだけの動きで数撃った羽根の全てを避けきれる筈もない。羽根は枝を折り、飾りを撃ち落とし、幹を抉り、その天辺の星をも穿っていく。
「……削り切れねぇかぁ」
 しかし、モミの木モミ男の数があまりに多く、倒し切れたのは1、2体だ。
『メリークリスマスデース!』
 ぼやいた鷲穂目掛けて、飾ったおもちゃから声を響かせたモミの木モミ男が――飛んだ。
「メリークリスマス!」
 突っ込んで来るツリーに合わせて、鷲穂は自身の背丈ほどもある巨大な独鈷所を振り下ろす。
 長き時を経た末に、怪異を通り越して神器と化した金剛杵の一撃が、ツリーの上に輝くベツレヘムの星とぶつかり、火花を散らす。
 そこに――爆発音が響いた。

 宙で翼を広げた鷲穂に背を向け、栴は魔導書『Old spell spelling』を開いていた。
 記された古き言語の文言、一つひとつが力を持つとされるそれが放つ魔力を、地を這うように広げていく。
「燃えろ」
 短く告げた栴が指を鳴らせば、魔力に与えた炎の属性が励起し、爆炎となって膨れ上がった。
「ア、アツ、アツイ!」
「アツイなんてものではないのじゃ! 燃えるのじゃ!」
 見たままツリーであるモミの木モミ男に、炎は良く効いた。
「分別とか、廃棄物扱い!?」
「ひでえ!?」
「さて。山羊のはどうだ?」
 モミの木モミ男たちの抗議の声を軽くスルーして、栴は鷲穂の方へ視線を向ける。
「何の音じゃ?」
「何か本当に薪割りしてるみてぇだよなぁっと」
 突進してきたモミの木モミ男と力比べになっていた鷲穂が、音に気を取られたモミの木モミ男をいなして、金剛杵の返す一撃で幹を叩き割った所であった。
「……これをあと90何体? 途中で飽きそうだぞ……」
 だがその力強い一撃とは裏腹に、表情はげんなりとしている。
「うまく落城させればフライドチキンとか出てこないか? クリスマスなんだろ?」
「チキンか。あるぞ」
 何の気なしに鷲穂が言った一言に、栴がさらりと返す。
「クリスマスに適応するとか言う話だったからな。お主の云う通りクリスマスならチキンだ」
 だから幾許か持ってきたと、栴は魔鍵『prison cell』の空間から冷凍保存したチキンを取り出した。
「大人しく燃えていろ。山羊の、任せた」
「……燃やすの、アリだな!」
 栴からチキンを受け取った鷲穂は、それを金剛杵の先端に突き刺すと、燃えてるモミの木の上に翳してグルグル回しながら焼いていく。
 仏具禅床の法具の筈の独鈷杵を、斧とか焼き串代わりにして良いのだろうか。
「あっまーい! クリスマスケーキ並みに甘いのじゃ!」
「チキンを焼けばクリスマス?」
「それではただのBBQもクリスマスになるのじゃ!」
 モミの木モミ男たちから、力強いツッコミが飛んでくる。
「……だが待って欲しいのじゃ、右のモミの木モミ男。それはそれでありなのでは?」
「左のモミの木モミ男よ。あり寄りのありだが、大首領の為になしじゃ!」
「と言うわけで、わし等はチキンだけでクリスマス気分など認めぬ!」
「せめてケーキ持ってくるのじゃ!」
「……」
 モミの木モミ男の難癖に、栴は面倒くさそうに黙り込む。
「栴、あっちあっち」
 そんな栴の肩を鷲穂が叩いて、何処かを指差していた。

●偶然に揃ったチキンとケーキ
 ケーキだけではクリスマスには足りないと言われた大殺。
 チキンだけではクリスマスには足りないと言われた栴。
 それぞれのやり取りを見聞きしていなくとも、手にしたケーキとチキンと互いの表情で、事情を把握するには充分過ぎた。
「そのチキン、少し分けて貰えないか? 代わりにオレはケーキを提供しよう」
「よかろう」
 思わず素の口調になってる大殺に、栴が二つ返事で頷く。
「さて、これでチキンとケーキが揃ったわけだが?」
「これでばっちりクリスマスであろう! グワハハハハ!!!」
「ば、ばかなぁ!?」
「まさか揃ってしまうとは!?」
「コレはクリスマスと認めざるを……得ないのじゃ……!」
 栴と大殺の視線に、モミの木モミ男達が愕然とした様子で前後左右にブレブレに揺れ出す。
 動揺を隠しきれていない。
「だがしかし、まだ我らにはクリスマスの空と!」
「このベツレヘムの星があるのじゃ!」
 こうなったら力業でと、モミの木モミ男たちは一斉に空に飛び上がる。
「力押しなどなぎ払ってくれる! フハハハ!」
 どこからか飛来した魔王の玉座『スカイ・ダイサツ・ギョクーザ』に、大殺は右手にケーキを、左手に分けて貰ったチキンを持ったまま深々と座り込む。すると玉座は再び空へ浮かび上がり――その先で、巨大な悪魔が待っていた。

 ――メタリックデビル。

 玉座に座ったままの大殺がその胸部に吸い込まれれば、全長15mの悪魔ロボの両目がギュピンと輝く。
『ジングルベール! ジングルベール! クリスマスおめでとう!』
 そこにおもちゃの音声を響かせて、突っ込んでいくモミの木モミ男たち。
 大殺も悪魔ロボを一気に最高速で発進させる。
 互いにマッハを超えた速度での激突。スピードに大きな差が無ければ、ものを言うのは破壊力。
 大殺が魔法を纏わせて薙ぎ払った暗黒剣が、モミの木モミ男たちのベツヘレムの星を打ち砕いていた。

 ロボとクリスマスツリーが繰り広げる、超高速空中戦。
「……」
 その真下では、栴は魔導書から持ち替えたオーブ『Ancient deep sea』を構えていた。
「木が飛ぶな。沈め」
 ――ォ――ォォ――ォォォォォォォォ――。
 オーブの表面を一撫でし、短く告げれば、その表面が水面の様に揺らめき、水音とも怨嗟の声ともつかぬ音を響かせる。

 ――Fall into hell。

 紅い魔の呪で縛った闇い水。空を飛ぶ力を奪う呪詛が栴によって解放され、キマイラフューチャー中枢の空へ昇っていく。
「おわっ!?」
「な、なにが――」
 空中で飛行能力を奪われたモミの木モミ男たちは、当然、落ちて来る。むしろ勢い良く落ちて来る。
 ユーベルコードは超常の力だが、失われれば戻って来るのは普通に物理法則のある世界。
「お、落ちるのじゃぁぁぁ!?」
 その直前までマッハ超えで飛んでいた事による慣性は如何ほどか。
「任せた」
「任された。もっと薪を溜めて、クリスマスらしく焚き火で締めようぜ」
 そうして落ちて深々と突き刺さって動けぬモミの木モミ男を、鷲穂がせっせと割っていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御形・菘
はっはっは、正反対のシーズンだというのに元気一杯で素晴らしい!
修行の成果というやつだな、おめでとう!

では妾もクリスマスを存分に堪能しようではないか
左腕を、下半身をメカへと変え、空へと出発だ!
今の妾の見た目は、さながらソリとそれを引くトナカイのごとく! 演出の都合でサンタが居ないのは勘弁してくれよ?

雪のように花々と感動を振り撒きながら、向こうの攻撃は上空というアドバンテージと速度で回避していこう
ヤバそうな軌道のは尾で打ち返したりな
はーっはっはっは! お主らはワルい子だから、普段よりも硬~い拳をプレゼントだ!
標的を定めたら一気に接近、全力の左腕でブッ飛ばす! その輝きに相応しくド派手に散るがよい!


アルテミシア・アガメムノン
何度目かの復活おめでとうございます!
今回はクリスマス仕様ですか。
追加UC、これは――ホワイトクリスマスっぽい夜に適応した者に味方すると見ました。それでは……
(『欲望具現術』で身に纏う装いをサンタルックに)

ほほほ、魔王サタンとサンタ、似ていると思いません?
さあ、モミの木モミ男さん達、わたくしからのクリスマスプレゼントです!

その上で発動するのは『黄金の暴嵐』
戦場全体に吹き荒れる滅びの颶風と金色の神雷は怪人の回避能力も数も関係なく綺麗サッパリ吹き飛ばすでしょう!



●機械仕掛けで魔王なパーフェクトサンタ
 キラキラと降り注ぐ雪。
 その下で揺れる、大量のモミの木。
「今回はクリスマス仕様ですか」
 クリスマス感があると、アルテミシア・アガメムノン(黄金の女帝・f31382)が感心したように頷く。
「はっはっは、正反対のシーズンだというのに元気一杯で素晴らしい!」
 夏間近だと言う事を忘れそうなくらい光景に、御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)も感心していた。
「修行の成果というやつだな、おめでとう!」
「違うですじゃ!」
「大首領のお陰なのですじゃ!」
「我等は生えて来ただけですじゃ!」
「お、おう……」
 しかし菘の賛辞に、揺れるモミの木――モミ男達から、そうじゃないとツッコミが返って来る。
 キング・ブレインのお陰なのだと。
「こんなものを降らせる力を得たと言うのに、謙虚な樹木ですね」
 降って来た雪を掌で受け止めながら、アルテミシアが感心したように呟く。
「成程、確かにこれは――ホワイトクリスマスっぽい夜に適応した者に味方する力を持っているようですね」
「妾もクリスマスを存分に堪能しようではないか」
 聞いていた情報を自らの感覚で確かめたアルテミシアの言葉に頷いて、菘は左腕を掲げた。
 その左腕と菘の尾が光に包まれる。

 ――機械仕掛けの花の神デウス・エクス・ワラワ

 腕と尾、キマイラの特徴である動物的特徴の部位をメカ装甲形態へと変える業。
 その形状は菘の思うがままであり、今回の菘は特に尾を大きく変形させた。と言うかもう、大半が尾の形をしていない。一言で言えば、蓋のない大きな箱。その内部には座席の様なものがあり、底にはスキー板のようなモノがついている。そして箱の外側から伸びる棒状のパーツは菘の前で曲がって繋がっていた。まるで何かの持ち手の様に。
「どうであろう。今の妾の見た目は、さながらソリとそれを引くトナカイのごとくではないかな!」
 そう。菘が目指したものは、クリスマスの代名詞たる存在、サンタクロース――が乗るソリである。
 頭部の竜の様な角までもトナカイの様なそれに変化させた徹底ぶり。
 されど、菘のその変形には、どうしても足りないものがあった。菘だけでは、どうしても作り切れなかったもの。
「演出の都合でサンタが居ないのは勘弁してくれよ?」
 そう。サンタクロースそのものである。流石に、一人三役は無理だったか。
「それは出来ない相談じゃ!」
「サンタのいないトナカイとソリでは、クリスマス感足りぬ!」
「それではただの雪国の移動手段じゃ!」
 サンタが足りないと判っていたから敢えてカミングアウトした菘に、容赦のないツッコミが飛んでくる。
「あら……でしたら、サンタがいればよろしいのですわね?」
 その様子を窺っていたアルテミシアが、声を上げた。
 そしてパチンと指を鳴らせば、纏う衣装が一瞬でサンタを思わせる赤を基調として襟周りや袖口が白くもこもこした衣装に変わった。
 欲望具現術ウィッチクラフト
 その術は、世界の根源を操ると言う。術者の出で立ちの見た目を変えるくらい、造作もないか。
「ほほほ、魔王サタンとサンタ、似ていると思いません?」
「むぐぐ……確かにサンタじゃ……」
「サタンとサンタ。確かに文字一緒じゃ……」
 サンタに早変わりしたアルテミシアに、モミの木モミ男たちが感心の声を漏らす番だった。
「と言うか今気づいたのじゃが」
「どうしたのじゃ」
「もしかして今回、わしら得意の間違ったトンチキクリスマス知識があんまり使えないのでは?」
「……あ」
 一体のモミの木モミ男が零した一言に、モミの木モミ男たちの間に沈黙が広がった。
 そう。輝く雪を降らせホワイトクリスマスの夜っぽい環境を作り、それに適応したものを有利にする能力。それを活かす為には、あまりにトンチキなクリスマス知識を並べ立てると言うわけにはいかないのだ。
 何故なら、雪を降らせてホワイトクリスマスの夜っぽい環境にする、と言う時点で、実は正統派なクリスマスなのだから。

 そして――。
「乗せて頂けます?」
「構わんが、妾の運転に付いて来れるかの~? 振り落としたらごめんの?」
「望む所ですわ」
 モミの木モミ男たちが自分の能力に疑問を感じている間に、菘とアルテミシアの間で取引が成立していた。
 かたや蛇神にして邪神を名乗る配信者。かたやデビルキングワールドの7thKING。
 拠点とする世界もその立場も違えども、それぞれの意志で悪を標榜する2人であればこそ、目的の為に手を組むのを躊躇う筈もない。
 そして2人が合わされば、トナカイの引くソリに乗るサンタ、と言う組み合わせの出来上がりである。そこはかとなくダークと言うか邪悪感が拭えないので、どちらかと言うとループレヒトな気もするが。
「では行かん! 妾達が終わらせてやろう、溢れんばかりの感動をもってな!」
 そんな事は気にした風もなく、菘は空を駆け上がる。ソリとなった尾の底から、ひらひらと花弁を舞わせながら。輝く雪と混ざって降り注ぐそれは、触れたものに『感動』を与える力を持つ。
「し、しまった。サンタとソリじゃ!」
「ソリとトナカイならツッコめたが、これはパーフェクトじゃ!」
「わしがサンタ……と言いたいが、わしらよりサンタじゃ!」
「これはクリスマス感ありありと認めざるを得ない!」
「まさか夏にサンタを拝めるとは……!」
 その力によって感動したモミの木モミ男たちは、幹を揺らすのを忘れて2人の姿に見入っている。
「逆らう存在すべてに終焉を」
 そんなモミの木モミ男たちに向けて、アルテミシアは掌に集めた魔力を解き放った。

 黄金の暴嵐ルドラ

「さあ、モミの木モミ男さん達、わたくしからのクリスマスプレゼントです!」
 吹き荒れる雷と嵐。黄金の神雷と滅びの暴風が、他の猟兵を避けてモミの木モミ男だけを穿ち、薙ぎ倒していく。
「あばばばばっ」
「しび、しびびびっ」
 例え一撃で倒し切れずとも、神雷と暴風の力はそれを受けた者の身体に残り続け、その動きを封じて残る力を削り取っていく。後に残るのは、死屍累々と横たわるモミの木モミ男たち。
『ジングルベール! ジングルベール! クリスマスおめでとう!』
 我に返ったモミの木モミ男の数体が、神雷と暴風が届く前におもちゃの音声を響かせた。
 そして天辺の星を輝かせ、降り注ぐ雷を避けながらぐんぐん上昇していく。
「はーっはっはっは! 本当に元気がいいな!」
 数を減らしながらも近づいてくるモミの木モミ男を、菘は笑って待ち構える。
「お主らはワルい子だから、普段よりも硬~い拳をプレゼントだ!」
 機械化させ装甲を纏った左腕の拳を硬く握り締め、菘は全力で叩き込んだ。黄金の星が砕け散り、モミの木が吹っ飛ばされる。
 その先にあるのは――キングキャッスル。
「あ」
 思わず菘の口から零れた意味のない呟きの少し後に、ガシャン、とガラスの砕ける音が響く。
「コラコラコラコラー!?」
「何度目かの復活おめでとうございます!」
 思わず窓から顔を出したキング・ブレインに、アルテミシアは笑顔で祝辞を伝えるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユディト・イェシュア
季節外れのクリスマス…ですか
キマイラフューチャーが割れてたりと
いちいちツッコんでたら追いつかないので
ひとまず置いておきましょう

とにかく必要以上にキラキラしている
スーパー怪人を倒さなければですね
俺もクリスマスに適応するためにサンタの衣装を持ってきました
以前ブルーアルカディアでサンタ役を務めましたからね

少しでもこちらの行動成功率を上げ
ツリーに負けない輝きの光の奔流で敵の数を減らしましょう
体力勝負ですから仲間の援護も行います

プレゼントという名の爆弾は遠慮したいですね
ホーリーペグで直撃を避けます
全ては防げなくても攻撃を封じられる前に一体でも多く倒しましょう

夏休みはこれから
勝手に終わらせたりしませんよ



目に優しくないキラキラカラフルクリスマス
「季節外れのクリスマス、ですか……」
 ぶぉんぶぉんと、枝葉が風を切る音を響かせ揺れる、季節外れの大量のクリスマスツリー。
 もとい、ツリー型怪人――モミの木モミ男たち。
「必要以上に、キラキラしてますね……」
 その群れを前にして、ユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)は眩しそうに目を細めていた。
 人が纏うオーラが色彩を伴って視える。
 ユディトの持つその能力は、何とモミの木モミ男たちにも働いていたのだ。
 何故なら、ツリー型怪『人』だから。
 ツリー型だろうが、人、と付いているのなら人系である。
 そしてその色彩はと言うと――クリスマス的にカラフルだった。クリスマスらしく緑と赤と白がベースに、オーナメントの類からか青や黄色や金銀など様々な蛍光色が入り混じっている。
 更にスーパー怪人化した事で、モミの木モミ男たち自身が元々纏っているキラめきも強化されている。
 ユディトには、それらが全て合わさって視えているのだ。眩しいと言うか、目に喧しいと言うか。
(「キマイラフューチャーが割れてるのをツッコんでる場合じゃないですね」)
 そんな事をしていたら追いつかないと言うか、早くこの眩しさを何とかしたい。
 ユディトはせめてもの抵抗になればと、赤い帽子を目深にかぶり直し、銀のメイスを握る手に力を込める。
「むむっ! サンタじゃ。サンタが出たぞい」
 そんなユディトの決意を他所に、モミの木モミ男たちから声が上がった。
「ホワイトクリスマスの夜っぽさに適応するのにサンタとは、安直じゃな」
「しかし、サンタっぽさは……ほぼ満点じゃな」
「うむ。髭も付けてるのはポイント高いぞい」
 モミの木モミ男たちが気づいたように、ユディトの出で立ちは、いつもの聖衣ではない。
 1年半ほど前の冬、別の世界で赤い服の老飛空艇乗りサンタクロース役を務めた際の赤い衣装である。威厳を出そうと当時も合わせた付け髭も、忘れていない。
「まさかこの衣装を夏に引っ張り出す日が来るとは、思いませんでしたが――」
 取っておいてよかったと、ユディトは小さな笑みを浮かべる。
 少しでも敵の作るホワイトクリスマスの夜っぽさに乗っかって、その効果を利用できればそれで良かったが、これならそれなりの効果を期待できるだろう。
「俺からのプレゼントです」
 ユディトは微笑を浮かべて、銀のメイスを掲げる。
「この光は悪しきものを滅し、善なるものを救う光明……」

 ――神々の恩寵。

 ユディトが掲げた『払暁の戦棍』から、光の奔流が放たれる。
「な、何じゃ、この光は――」
「く、苦しい……」
 敵には破魔と浄化の効果を与える光に灼かれて、モミの木モミ男たちが苦悶の声を上げる。
「くっ……サンタ感強めて来よったな!」
「だが、わしらがサンタじゃ!」
 大抵の世界では、サンタは聖人とかそう言う類に言われる。
 破魔と言う聖なる属性に類する力を持つ光を放つユディトに更なるサンタ感を感じたモミの木モミ男たちは、そのモミの木ボディを激しく揺らし揺らし、プレゼント爆弾やツリーの飾り、何故か混ざってるその辺にあったっぽい靴下を、次々とぶん投げて来る。
「プレゼントという名の爆弾……いや、それ以上に靴下は遠慮したいですね」
 それを見たユディトは、足元に聖属性の白杭ホーリーペグを置いて、対となる聖なる白鎚で叩いて深く打ち込んで。
「夏休みはこれから。勝手に終わらせたりしませんよ」
 杭が作りし結界を特に靴下が直撃しない様に展開しながら、ユディトは光の奔流を放ち続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木元・祭莉
【かんさつにっき】のクリスマス(再)!

わー、なんかブレてるツリーが出た。
気を付けて、あいつソックスハンターかも?
生憎おいらは裸足だからね、脱がせないよーだ!

むむ、おいらにダンス勝負を挑む気?
おいらには、踊り狂う母ちゃん向日葵という強い味方が……
え、ほわいとは冬?
夏は似合わない?
そっかー。

それじゃ、うさみみターキーな気分で(マラカス棍棒、すちゃ)。
いでよ、めかたまこー!(コケッコ×136)
さあ、クリスマスソングを歌いながら、みんなで踊るよー♪(うるせえ)

ツリーのヘドバンに突っつきの周波数を合わせ。
蹴爪のリズムも軽快に……おぉ、あっちぇれらんどー?(加速ががががが)

……あー。
キツツキタイプだけじゃなく、ダチョウタイプもいたんだね……(勝ち誇るメカたまズ)


木元・杏
【かんさつにっき】のクリスマス~

だんしんぐ、クリツリ
だんしん、だんしん♪(真似て揺れる)
……小太刀(呼ぶ)
はい、とうさ耳渡してわたしはネコ耳
これで靴下奪われてもかわいい、大丈夫

いでよ、うさみん☆、メイドさんズにうさぎさん、メカたま・ザ・サードとサイバーたまこ
全員マラカス装備して
来い、ソックスハンター

灯る陽光はマラカス型の刀に
夏のクリスマスはサンバとコラボして盛り上がろう

くねくね踊りステップ踏みながら勢い(怪力)に任せてマラカス振ってパンチ、キック!
数が多いけれどこちらも負けてない
かわいいも負けてない
激しいブレブレは動きを見切って回避して
くるくるふりふりダンシング

最後は皆でマラカス掲げ
ん、ちゃ!


鈍・小太刀
【かんさつにっき】のクリスマス♪

まさかのクリスマス
そして何故うさ耳(汗

…でもそうね、クリスマスにうさ耳は欠かせないわね(←実家に伝わる謎風習
(杏のうさ耳を受け取って
真夏のクリスマスダンス勝負、受けて立ってやろうじゃないの!

頭にウサミミを装着して『ウサミミな海の仲間達』召喚
種類は様々だけど、皆うさ耳とサンタ帽子と負けず嫌いの心を完備
スノーボードでツリーをなぎ倒しながら
ノリノリでだんしんだんしん♪

(うさみん☆達の可愛さにきゅん♪
(あのリズム、なかなかやるわねメカタマコ
こっちも負けてられないわ

さあ行くわよ、波乗りウサミミ海の仲間サンタ達(長い)
乙女の靴下を狙う変態なんて、返り討ちにしてやるんだから!



●雪が降ってても夏は夏だと言い張ってみよう
 ぶぉんぶぉん。
 そんな音が辺りに響くくらいの勢いで揺れてる、大量のクリスマスツリー。しかもその反動で動いてもいる。
 更に別の戦場に視線を向ければ、飛んでるクリスマスツリーだっていた。
「わー、ほんとになんかブレてるツリーがいっぱいだ」
「んむ。だんしんぐ、クリツリ、たくさん」
 そんな『季節外れのクリスマス』の一言で片づけてしまうには些かアレな光景にも、木元・祭莉(まつりん♪@sanhurawaaaaaa・f16554)と木元・杏(ほんのり漏れ出る食欲系殺気・f16565)は動揺するどころか声を弾ませていた。
「クリスマス!」
「クリスマス~」
 季節外れだろうが何だろうが、クリスマスはクリスマスと言うことか。
 そんな風に素直に受け入れられるのは若さゆえかもしれない。
「まさかのクリスマスね……」
 そんな2人の一歩後ろで、鈍・小太刀(ある雨の日の猟兵・f12224)は神妙な面持ちをしていた。
(「このツリー、全てスーパー怪人なのよね」)
 油断は大敵だと胸中で呟く小太刀も、20歳。もう大人の仲間入りしているのである。
「だんしん、だんしん♪」
 だから小太刀まで、ツリーの動きを真似て揺れている杏の様に、クリスマスの空気に呑まれるわけには――。
「……小太刀」
「ん? どうしたの杏」
 揺れていた杏が動きを止めて、小太刀を呼んでいた。
「はい」
 なんだろうと近づいた小太刀に杏から手渡されたのは――小太刀には見慣れたアイテムうさ耳であった。
「何故うさ耳」
「わたしはネコ耳。これで靴下奪われてもかわいい、大丈夫」
 唐突なうさ耳の理由を問う小太刀に、ネコ耳付けた杏から過程がすっ飛んでるっぽい答えが返って来た。
「あいつらソックスハンターかもしれないからね。気を付けて!」
「え、乙女の靴下を狙うなんて変態じゃない。返り討ちにしなきゃ」
 杏がすっ飛ばした部分を捕捉する祭莉の言葉を真に受けて、小太刀がツリーたち向ける視線が冷たくなる。
「ちょっと待つのじゃ!」
「聞き捨てならんのじゃ!」
 流石にツリーたち――モミの木モミ男の群れから抗議の声が上がるのだが。
「だって靴下、ついてる」
「それは飾りじゃよー!?」
「クリスマスツリーの飾りだから仕方ないのじゃ!?」
 杏に靴下型のクリスマスオーナメントを指摘され、モミの木モミ男たちの間に動揺が広がる。
「生憎おいらは裸足だからね、脱がそうったって脱がせないよーだ!」
「あのじゃな。話、聞いてくれない?」
「別に常にその辺で拾ってるわけではないのじゃよ?」
 ふふんと得意気な祭莉は、モミの木モミ男の懇願を軽くスルー。
「はいはい、そう言う事にしといてあげるわ」
 そんなモミの木モミ男たちに哀れみの眼差しを向けながら、小太刀はすちゃっと頭にうさ耳を装着した。

「っこの若者達……手強いのじゃ」
「まさか定番のクリスマスオーナメントから変態扱いとか、予想できるわけないのじゃ」
「これだから、最近の若いもんは……」
 3人にすっかりペースを握られたと感じて、モミの木モミ男が愚痴り出す。
 その声がブレて聞こえているのは、幹の揺れが更に激しくなっているからだ。動揺してる?
「だんしん、だんしん♪」
「むむ、おいらにダンス勝負を挑む気?」
 それを見て、杏は再び真似て揺れ出し、祭莉は勝負かと表情を引き締める。
「おいらには、踊り狂う母ちゃん向日葵という強い味方が……」
 続く祭莉の言葉を聞いた瞬間、モミの木モミ男の数体がサングラスの中でキラーンと目を輝かせた。
「アウトじゃ!」
「向日葵とは、サンフラワーと呼ばれるくらい夏の花!」
「クリスマスっぽくない気がするのじゃ!」
「ホワイトクリスマスとは冬なのじゃ!」
「この輝く雪が目に入らんかー!」
 ここぞとばかりに、クリスマス論で畳みかけて来るモミの木モミ男たち。そう言えば雪降ってたね。
「ほわいとは冬? 夏は似合わない? そっかー」
 祭莉の肩と狼の尾が、しょんぼりと垂れ下がる。
 その瞬間、モミの木モミ男たちは「勝った……!」と思った事だろう。
 だが――。
「大丈夫、まつりん。夏のクリスマスはサンバとコラボして盛り上がろう」
 杏が祭莉の肩をポンと叩いた。
 反対の手に、変幻自在な白銀の光剣『灯る陽光』をマラカス型にしたものを構えて。
「そうなの? それじゃ、うさみみターキーな気分で」
 杏の言葉とその手のマラカスを見て、祭莉もマラカス型の棍棒をスチャッと構える。
「いやいや、じゃから季節外れのクリスマスであって夏のクリスマスでは――」
「え、でも今が夏なのは、判ってて言ってる筈よね?」
 輝く雪が目に入ってないかのような杏と祭莉に対するモミの木モミ男の反論の声を、小太刀が遮った。
「だから夏休み終了とか言ってるんでしょ?」
「「「……」」」
 小太刀が続けた言葉を聞いて、モミの木モミ男たちが沈黙した。
 痛い所を突かれた、と言う空気が滲み出ている。
 その通りなのだろう。
 季節外れのクリスマスで夏休みを終わらせる――それがキング・ブレインのプランにせよ、夏休みを終わらせる・・・・・・・・・と言うのなら、翻せば今が夏だと認識している・・・・・・・・・・・と言う事になる。そうでなければ出来ない、と言うべきか。今が夏でないのならば、そもそも夏休みなどないのだから。
「じゃ、じゃが! ならそのうさ耳はどうなのじゃ!」
「クリスマス関係な――」
「え? クリスマスにうさ耳は欠かせないわよね」
 モミの木モミ男の精一杯の反論を遮って、小太刀はしれっと返した。
「どう言う事じゃ……?」
「わしらの知らんクリスマス文化じゃ……」
「最近の若いもんは……」
「真夏のクリスマスダンス勝負、受けて立ってやろうじゃないの!」
 しおしおと、枝が力なく垂れ下がっていくモミの木モミ男たちに、小太刀がビシッと言い放った。

●ハハハ、数で上回って来たかァ
「毎日が修業! いでよ、めかたまこー!」
 両手のマラカス棍棒をシャカシャカと鳴らして、祭莉が声を張り上げる。

 ――コケッコッ! ケッコッ! ッコッ! コッ!

 応える鶏の声が幾つも重なって、空から降って来る。少し遅れて、声の主達も降って来た。
 それぞれの額に『1』と刻まれたニワトリ型ロボ守護神にしてテンテキ、めかたまこ136体が。
「さあ、クリスマスソングを歌いながら、みんなで踊るよー♪」
『コッケコケーコ、コッケコケーコ、コッコケーコケー♪』
 そして祭莉の合図で、136体のめかたまこが一斉にリズミカルに鳴き始める。
 詳しいものが聞けば、そのリズムは有名なクリスマスソングになっているのに気づいただろう。

「いでよ、うさみん☆」
 うさみみメイドさん人形が、杏の手を離れてふわり、浮かび上がって――135体ほどに増えた。
「メイドさんズにうさぎさん、メカたま・ザ・サードとサイバーたまこ」
 増やしたうさみみメイドさんズを操る【うさみみメイドさんΩ】の念動力の中に、杏は更に法力籠った折り紙のウサギやら、何故かウサ耳メイド服着てるメカ雄鶏やら、愛らしい鶏型メカまで混ぜだした。
「みんな、マラカス持ったね? それじゃ――来い、ソックスハンター」
 その全てにマラカスを持たせて踊らせながら、杏は自らもくねくねと踊り出す。

「はぁ……やっぱりかわいいわね」
 腰の桜色をふわふわと揺らし、ひらり舞い踊るうさみみメイドさんズ。
 敵前だと言うのに小太刀の目を釘付けにきゅんとさせるその可愛さを支えているのは、祭莉のめかたまこの大合唱だ。
(「あのリズム、なかなかやるわねメカタマコ」)
「こっちも負けてられないわね――さあ行くわよ、波乗りウサミミ海の仲間サンタ達!」
 祭莉のニワトリ型ロボに対抗心を隠そうともせずに、小太刀が声を響かせる。
 そしてシステムフラワーズの花弁を掻き分け、現れる海の仲間達。
 イカ、タコ、クラゲ。カニにウニ、クジラにウツボにサメにイッカク。種類は様々な海洋生物っぽい海の仲間たちが、129体。そのどれもが、いつも通りのうさ耳に加えてサンタ帽子も被っての登場である。

「なんじゃそれは!?」
「いやもうどっから突っ込んだらいいんじゃ」
「クリスマス……? クリスマス適応しとるのかこれ?」
 モミの木モミ男たちの間に、困惑が広がっていく。
 さもありなんと言った所だが、ここでもう一度、3人が喚び出したり増やしたりした数を見てみよう。
 祭莉のめかたまこが136体。
 杏のうさみみメイドさんズが135体と+α。
 小太刀の海の仲間が129体。
 1人ノルマ100体くらいな感じに溢れてる敵に、それ以上の戦力を用意すると言うのは最適解の1つと言えよう。敵側にあった筈の数の有利は、完全にひっくり返されたのだ。
「ううむ、これ普通に蹂躙されそうじゃのう」
「ホワイトクリスマスの夜っぽさに適応してなくても、普通に数で負けとるのじゃ」
 モミの木モミ男たちも、その戦力差に敗北を予感し始める。
「じゃが、大首領の為じゃ!」
「うむ、季節外れのクリスマスツリーの意地を見せてやる!」
 されどそこは、怪人。
 キング・ブレインへの忠誠心と怪人の意地で持ち直し、更に激しく揺れ始めた。
 ツリーが急に2本になったかと残像で錯覚しそうなくらい、激しく速い。
「お、リズム変わったね?」
 じわじわと揺れながら迫るモミの木モミ男たちの変化にいち早く気づいたのが、祭莉だ。
「トトトトン、って感じかなー? めかたまこー、突っつきの周波数あわせてこう!」
 マラカス振るう祭莉の指示で、めかたまこたちも頭を振る動きを速めていく。
「なんの!」
「クリスマスっぽくないニワトリの攻撃など!」
 それでも中々リズムが合わず、めかたまこの嘴は空振りを繰り返す。
 しかしめかたまこだ。ロボなのだ。どれだけ激しくヘドバンの様な動きを繰り返そうが、三半規管がやられたりしない。そしてモミの木モミ男たちの体力は、無限ではない。
「このニワトリ、しつこ――あ」
 故に一度、スコーンッと嘴が当たれば。
「あぁぁぁぁぁぁぁ」
 あとはコカカカカカッと連続突っつきが待っている。
「よーし、蹴爪のリズムも軽快にいってみよう」
 リズムが合い出しためかたまこに、祭莉はにぱっと笑って告げた。

「すごいね、激しいね」
 激しく揺れるモミの木モミ男たちに、杏が感心したように呟く。
「でもかわいいは負けてない」
 そんな対抗心を胸の奥に燃やし、杏は手近なモミの木モミ男に飛び掛かる。
「くるくるふりふりダンシング――からの、マラカスぱーんち」
 暖陽の光を花弁の如く散らしながら、杏は光のマラカスをぶれまくるモミの木に叩き込んで――止めた。
 ぴたっと止まった。
 揺れていたモミの木モミ男が。
(「――岩?」)
 杏の細腕に秘められた怪力を押し返せずに、モミの木モミ男がそんな幻覚を覚える。
「あ」
 そして動きが止まって隙だらけなモミの木モミ男を、うさみみメイドさんズが舞う様に斬りかかった。

「杏もやるわね」
 感心したように呟きながら、小太刀がスノーボードに乗って突っ込んでいく。
 タコとイカの脚に絡みつかれたモミの木モミ男にそれを避けられる筈もなく、容赦なく薙ぎ倒された。
「こいつが一番解せんのじゃ」
「ウサ耳でクリスマスってなんじゃ」
「海の仲間サンタってなんじゃ」
 ウサ耳とサンタ帽子付けた海洋生物引き連れる小太刀に、モミの木モミ男たちの猜疑心に満ちた視線が最も多く向けられていた。
 なまじサンタ帽子なんてクリスマスに寄せてるだけに、ツッコミ易いのかもしれない。
「だから、クリスマスにうさ耳はウチの実家ではそうなんだって」
 実家の謎風習を当然の様に返すのは、やめたげなさい。
「めっちゃローカルじゃ!」
「こんなサンタに負けてられん!」
「わしらがサンタじゃ!」
 そんな小太刀に対抗心メラメラ燃やして、モミの木モミ男たちが全身を揺らし、プレゼント爆弾やツリーの飾りをぶん投げて来る。

 ――ドドドドドッ!

「なんじゃ、この音は」
「うん? この音って――」
 そこに聞こえて来た幾つもの音が重なった音に、モミの木モミ男たちも小太刀も一瞬動きを止める。
「コダちゃん、めかたまこ注意報ー! 加速がががががが」
 近づいてくる祭莉の声に小太刀は海の仲間を下げて自分も後ろに跳び退る。
 その目の前を、祭莉を乗せたメカたまこの群れが猛然と通り過ぎていった。モミの木モミ男たちをもみくちゃに踏んづけて。
「おぉ、あっちぇれらんどー?」
 アッチェレランド。
 音楽用語で、意味は段々速く。
 どうやらめかたまこの脚で取るリズムを上げている内に走り出して、止まらなくなってしまったようだ。
 ドドドドドッ!
 その蹂躙は、モミの木モミ男たちの群れを駆け抜けるまで止まらなかった。
「……あー。キツツキタイプだけじゃなく、ダチョウタイプもいたんだね……」
 ひとしきり走り抜けて満足したのか、勝ち誇るめかたまこの上で、祭莉がぽつりと呟く。
「キツツキタイプとかダチョウタイプってなんじゃ……」
「ニワトリじゃないのか……」
「クリスマスでもないのじゃ……」
 蹂躙され倒れ伏すモミの木モミ男たちから、息も絶え絶えな声が上がる。
 そして――。
「こっちも負けてられないわね!」
 めかたまこのスピードに、小太刀が対抗心を燃やしていた。
「行くよみんな! だんしんで!」
 再び乗ったスノーボードをノリノリで踊るように上下させながら突っ込んで行けば、負けず嫌いの心に火が付いた海の仲間達もその後に続いて突っ込んで行く。
 再び蹂躙される、モミの木モミ男たち。
「……」
「……」
 まだ生きてるのもいるが、そろそろぐうの音も出なくなっている。
「マラカスきーっく」
 それを杏が見つけては、踊る勢いに任せて幹を粉砕していく。動くモミの木モミ男がいなくなるまで、時間はかからなかった。
「もういないかな? それじゃあ最後に――ん、ちゃ!」
 うさみみメイドさんズ+αを引き連れた杏が、これで最後と蹴倒したモミの木の上でマラカスを掲げて、勝利宣言。
「おいら、こんな絵をどっかで見た事ある気がするなぁ」
「あー、わたしも。なんだっけ?」
 その光景を見た祭莉と小太刀は、別の世界のとある絵画を連想し、思わず顔を見合わせていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『猟書家『キング・ブレイン』』

POW   :    侵略蔵書「スーパー怪人大全集(全687巻)」
【スーパー怪人大全集の好きな巻】を使用する事で、【そこに載ってる怪人誰かの特徴ひとつ】を生やした、自身の身長の3倍の【スーパーキング・ブレイン】に変身する。
SPD   :    本棚をバーン!
【突然、背中のでかい本棚を投げつけること】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【リアクションをよく見て身体特徴】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ   :    脳ビーム
詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【脳(かしこさを暴走させる)】属性の【ビーム】を、レベル×5mの直線上に放つ。
👑11
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 調子に乗って書いてたら結構な長さになってました。
 長いので、四天王の詳細については、此処の上下と同じ枠線を入れた最後の方に纏めておきました。
 そこだけ見て貰えれば大丈夫です。
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●登場、ウィンター四天王!
 焼いたり粉砕したり薙ぎ倒したり吹っ飛ばしたり蹂躙したり。
 並みいるモミの木モミ男たちの屍を越えて、キングブレインキャッスルに辿り着いた猟兵達は、無駄に大きな扉をバーンッと開いて中に駆け込んでいく。
 螺旋階段を駆け上がり、赤い絨毯が敷かれた長い廊下を駆け抜けて。
「ようこそお越し下さいました、猟兵共!」
 奥の大広間の中で、大首領キング・ブレインが猟兵達を待ち構えていた。
「ブレブレブレ。ドリンクのひとつも出ないが悪く思わないで貰いたい。吾輩は悪の大首領であるからな! 敵である下郎共を丁寧におもてなしなどする筈がないのだ! 心が痛んだりなどしない!」
 などと言いながら、バサァッとマントを無意味に翻すキング・ブレイン。
「勝負だ、猟兵共! と言うわけで本日の四天王のみなさーん! 出番でありますぞ!」
「「「「とうっ」」」」
 キング・ブレインの呼びかけに応えて、降って来る4人の怪人。ずっと天井か何処かで出番待ってたのかな……。
「くくく……モミの木モミ男の群れを倒したようだな」
「だが、奴らは日直式四天王になれなかった者!」
「つまり四天王になっていたら多分きっと最弱だった!」
「スーパー怪人の面汚しよ」
「いやそれ自分達で言うんかーい、ブレブレブレ」
 どこかで聞いた風な事を並べ立てる四天王たちと、合いの手入れて笑うキング・ブレイン。
 既にツッコミが足りない気配がするのは気のせいだろうか。

「私は第一の四天王! 冬の切り株怪人――ノエルマン!」
 そんな空気を吹っ飛ばして、四天王たちは勝手に自己紹介を始めた。
 まず名乗ったのは、頭が切り株になっているスーパー怪人。首から下は執事っぽい燕尾服だ。
「貴様らをもてなせない事を気にする心優しい大首領に代わって、私が貴様らに特性切り株ケーキを給仕してやろう。食べたくないなら食べなくても構わんが、私のケーキを楽しまぬ限り、満足に動けぬ事を覚悟するのだな!」
 手にしたお盆の上にあるのは、切り株型のケーキだ。
 ノエルマンの由来はきっと、ブッシュ・ド・ノエル。

「次はあたし! 第二の四天王、冬の歌怪人――ミス・マイク!」
 続いて名乗りを上げたのは、名前そのまま頭がマイクになっているスーパー怪人。
 首から下とその言葉遣いからして、どうやら四天王の紅一点のようだ。
「かつてのキマイラフューチャーで冬に流行ったって言う、超高音の冬の歌を聞かせてあげる! この歌が響いている限り、四天王も大首領も傷つけられないと知りなさい! まあ体力的に1回しか歌えないけど」
 どうやらその能力も、歌によるものらしい。
 しかも他者を癒す系のようだが――なんか放っといても自滅しそうな気配がするぞ。

「次はこの俺、第三の四天王。冬と言えば雪合戦怪人、雪丸!」
 三人目の四天王は、やっぱり名前そのまま、頭が雪玉になっているスーパー怪人だ。
 頭だけ見ると雪だるま感がとても強いのだが、胴体はこれ野球のユニフォームではなかろうか?
「雪合戦で鍛えた我が氷の魔球は、どこまでも敵を追い続ける。ノエルマンの切り株ケーキを味わう暇など与えてやるものか!」
 やっとまともそうな攻撃能力が出て来たぞ。
 魔球とか言いつつ雪玉しか持ってないのは、まあ雪合戦だからだろう。

「そして僕が最後の四天王。冬のスポーツと言えばスキー怪人――ゲレンデマン!」
 最後の四天王は、スキー怪人。そう名乗ったが、頭がスキー板だったりはしない。
 その頭部は何か筒状のもので、中に扇風機の羽根の様なものが見える。
「僕のいる場所は全てゲレンデとなる。モミの木モミ男に新たなユーベルコードを授けたのも、実は僕だったのさ。雪を溶かすような熱量のある行動など、僕の目の黒い内は出来ないと知れ!」
 なるほど。
 さてはその頭、人工降雪機だな?

「ブレブレブレ。以上がウィンター四天王である。中々の粒ぞろいであるぞ」
 四天王を左右に侍らせて、キング・ブレインがこちらを睥睨して来る。
 確かに、妨害系、回復系、攻撃系、環境系と、様々な能力が揃っている。ちゃんとバランスを考えて四天王になっているのだろう。
 油断できる相手ではなさそうだが――つけ入る隙はありそうだ。
「では戦おうか――猟兵!」
 そして、キング・ブレインと今日の四天王との10何回目かの決戦が始まる。

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 と言うわけで、2章です。キング・ブレインと今日の日直四天王との決戦です。

 調子に乗って書いてたら結構な長さになってました。
 と言うわけで、四天王の詳細です。

 四天王1号、ノエルマン。
 能力名:切り株ケーキの時間。
 【切り株ケーキ】を給仕している間、戦場にいる[切り株ケーキ]を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。

 四天王2号、ミス・マイク。
 能力名:いつかのキマフュで流行ったらしい冬の歌
 自身の歌う「【高音の冬ソング】」を聞いた味方全ての負傷・疲労・状態異常を癒すが、回復量の5分の1を自身が受ける。

 四天王3号、雪丸。
 能力名:雪合戦で鍛えた氷の魔球。
 【物理学の埒外の極低温】を宿した【雪玉】を射出する。[雪玉]は合計レベル回まで、加速・減速・軌道変更する。

 四天王4号、ゲレンデマン。
 能力名:どこでもゲレンデ
 レベルm半径内を【ゲレンデ】とする。敵味方全て、範囲内にいる間は【雪を溶かさない行動】が強化され、【雪が溶けるような熱量を持つ行動】が弱体化される。

 ベースにしたUCはそれぞれ、紅茶の時間、ユーベルコード、魔球「ソニックストーム」、どこでもキャンプ、になります。
 能力値などの参考に。
 なお、四天王1人1つのUCしかないの?と思われたかもしれません。
 4人分、それぞれPOW、SPD、WIZを設定しようかと思ったのですが、そうするとあまりにも情報量が多くなりすぎてしまう為、もっと単純に行こうと言う事で、それぞれ能力1つずつにして、ルール的には『ウィンター四天王』と言う4人分で1人分のユニット、として扱う感じにします。
 倒れた四天王の能力は当然使えなくなるので、その分は反撃が来なくなるぞー。

 プレイング受付は、明日7/12(水)8:31からでお願いします。
 なお今回は、恐らく再送をお願いする事になるかと思います。
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木元・杏
【かんにき】
引き続きマラカス装備で日直四天王とびしりと対峙

…美味しそう(切り株ガン見
………んっ(ふるふる首振り、邪念(食い意地)を祓う
日替わりと言えど四天王、強敵
真剣に倒すべく灯る陽光を巨大ケーキナイフに変えて
これで切り株も綺麗に切り分けら…、んっ(首振り邪念を以下略

いざ、切り株
給仕されるまでもなくすぱーんと切り分け、わたしは少し大きめなヤツを頂こう
めりめり、くりくり♪(歌う
切り株の回復を待って更に切り分ける至福タイムを、歌がが途切れるまで繰り返す

周囲の雪を器に盛ればかき氷
ミルクをかけて頂きます
飛んでくる雪玉少し邪魔
【みわくのうさみん☆】で骨抜きにしとこ

ぶれぶれさんの脳ビーム、刀も問題ない
だって木元家の一員わたし達の弟だもの


……んむ?もう雪がない
どこでもゲレンデ、頑張って、やれば出来る子(怪力でばんばん頭を叩く


生浦・栴
山羊の(f02320)と
茶が有れば有難く共に頂こう
もうケーキは入らぬおか?お代わりが来たぞ
日直四天王は濃さと熱意で雪が溶けぬのが不思議よな

なあ山羊の、スケートリンクでは動き辛いか?
ではと魔力を練って水を一面にぶち撒く
再氷結し滑りが良くなろう
雪玉はUCで棲家(雪丸)へ強制送還
彼方の陣営に降り注げば行幸
此方に来た分はオーラ防御を纏わせたフォークで払う
歌は他の対策者に任せよう

処でキンブレまで手が回らぬな
突っ込んだ山羊のが飛び易いよう様子を見ながら魔力で風の援護を送っておこう

猟兵は異世界各地に飛ぶのが日常故
季節外れの行事如き、適応出来るに決まっているではないか(ぽん
さて、城が爆発する前に撤退しよう


明石・鷲穂
栴(f00276)と

チキンで腹は満たされたし。ケーキも食えた。
…で、切り株ケーキお代わりかぁ。全部食うけど!
ところで、日直式って何だ?
おれでも挙手すればなれるやつか?

冗談はさておき。
四天王も何とかしなきゃいけないのは忙しないなぁ。
それぞれ距離を取りつつ、金剛杵を投擲して攻撃。
投げては距離を取り、隙を見てUCを使って仕留めていこう。
スケートリンク?氷上戦だな、問題ないぞ。
翼で空中浮遊しつつ、投擲の際には氷を割って気張れるように対処しよう。

キングブレインまで手が届いたら、捨て身の一撃で真っ向から金剛杵を叩き込むぞ。

これは、慈悲だ。
………うーん、慈悲か?
ブレブレがうつっちまったな!


鐘射寺・大殺
待たせたのう、キングブレイン!
この鐘射寺大殺が、直々にお主を成敗しに参ったぞ。
お主を倒し、真っ二つに裂かれたこの世界を再び統一してくれる。
そして我輩は、明日から夏休みを満喫するのだ!

魔剣オメガを抜き、キングブレインに一騎打ちを挑むぞ。
《武器に魔法を纏う》強化をかけ、巨大化キングブレインと斬り結ぶ。
投げつけられる雪玉を《薙ぎ払い》、あるいは《ジャストガード》しつつ、
【魔王の雷】を発動。落雷でダメージを与えながら、
四天王どもの援護を封じてくれるわ。

雷はより高い所へ落ちる。巨大化が仇になったのう!
キングブレインが怯んだ隙に跳躍し、大上段から《重量攻撃》を
叩き込んでくれるわ!大首領、討ち取ったり!!


鈍・小太刀
【かんにき】

何か足りないと思ったら、そうねケーキがなかったわ
お腹も空いたし、むむむむ
どうしてもって言うなら食べてあげなくもないんだから(食べたい

ケーキもぐもぐ
ちょっと雪丸、食事中は邪魔しないでよね
…そういえば、雪丸はケーキ食べないの?(魔球の行動速度5分の1では?
鬱陶しい魔球を避けながら
黒雨のUCで【雪玉属性】の矢を大量に放って迎撃
美味しいケーキの食レポで挑発しつつ、魔球対決と行こうじゃないの

杏のかき氷ももぐもぐ
かき氷と言えば、某白い乳酸菌飲料の原液かけても美味しいのよね(力説
キングブレインは何味が好き?(会話に巻き込み詠唱妨害

祭莉んが歌を!?(慌てて耳栓
刀はツッコミ役だと信じてたのにー!(涙


木元・祭莉
【かんにき】
わーい、ブレブレさんだー。
え、まずは四天王?
よかったカナタ呼んどいて♪

白のケーキマン……うん、餌食だね♪(よいえがお)
雪玉んは勝負って言った……やっぱ餌食だ♪(再)
じゃあ、母ちゃんぽい歌姫はおいらね!

高音は、甲高くならない方がお上品だって。
おいら同じ高音なら、戦隊モノの主題歌の方が好きだな♪
では、いざ尋常に勝負なり!

同じ歌を同じ音域で、父ちゃん(超絶音痴)の模写で歌ってぶつけるー♪(ゆべこ発動)
癒しの歌は美しくないと効果出ないよね、知ってる♪

もう終わり?
じゃケーキカットと雪合戦の手伝いに行こうっと!
ケーキ投げたり、雪玉料理したり、団体戦は楽しいなあ♪

あ、おいらたちが四天王継ごっか?


アルテミシア・アガメムノン
ほほほ、見事にテーマに沿った四天王さんを集めたものですわね。
流石はキング・ブレインさんです。

『三界の覇者』を発動。
まずは1号の切り株ケーキを優雅に美味しく頂きましょう。
欲望具現術で紅茶なども出したりします。
その途中、攻撃を受けた場合は2号と4号は特に気にせず、3号の魔球、ブレインのビームは吸収して戦闘力に。特にブレインさんのは威力が無限に上がるので戦闘力も無限上昇です!

ご馳走様でした。

と食事を終えたら反撃開始です。これまでの攻撃、そして時間経過により戦闘力は天元突破でしょう。

それでは仲良しの皆さんですから、一緒に吹き飛ばしてあげますわ!

と極大消滅魔法をプレゼントです!(全力魔法)


木元・刀
【かんにき】
呼び出されたのはいいですが、何事ですか?
え、人数を合わせたかった?
……わかりました、頑張ります。(素直)

ああ、ホワイトクリスマスなので、雪なんですね。
妙に雪質が良いのは、ゲレンデ仕様ですか。ふむ。
……雪は水ですから、無機物ですね?

では、兄さん姉さん小太刀さんの近くで、クライシスゾーンを展開しましょう。
対象は、降り積もる雪。

雪の制御権はこちらに移りましたね。
ゲレンデは、雪合戦に適した地形になるよう調整しましょう。
(一部を竜巻化して巻き上げ)(山谷に整地)

熱量は大量に貯えていても、するりと捕まえどころがないのが木元家です。
小太刀さん、ツンデレだけじゃなく突っ込みも頑張って下さいね?


ユディト・イェシュア
まずは日直四天王をどうにかしなければですね
ケーキはいただきますよ
行儀が悪いですが戦いながらでも食べます
歌怪人は…時間切れを待ちましょう(放置
俺の本命は雪合戦怪人です
こちらもメイスを強化して…バットのように構えます
その魔球打ち返してみせましょう!
雪は溶かしませんが、心は熱く燃やしましょう
繰り出される魔球を打ち返して逆に怪人たちを攻撃できれば

ふう、四天王だけで強敵でしたがまだキング・ブレインというボスが
敵とはいえその言動はどうしても憎めませんね
けれど猟兵として決着をつけなければいけません

強化したメイスで引き続き攻撃を
本棚は大きい分、投げる隙もありそうです
その隙を逃さず強烈な一撃を叩き込みましょう


御形・菘
いや~、出迎えご苦労! というか待機お疲れさまだ!
さあ、真冬っぽい空気などブッ飛ばすぐらいの熱いバトルを繰り広げようではないか!

右手を上げ、指を鳴らし、さあ鳴り響けファンファーレ!
はっはっは、雪も溶かさぬ熱量の行動など妾には不可能! ならば開き直る!
雪も四天王もキンブレも全て燃やし、ファンファーレを鳴らし続けて消火もさせず継続ダメージだ
ああ、もちろんケーキは楽しむがな?
それに妾自身も身を燃やし、雪玉もできるだけ溶かしてやるとも

…さて、ここまで対策を張ったのだ、これで持久戦に入るなど面白くあるまい
やはり妾は怪人どもをボコってバトらんとな!
さあキンブレよ、四天王よ、邪神の左腕を存分に堪能してくれ!



●巨大化はクライマックス? ならば最初からクライマックスだ
「待たせたのう、キングブレイン! この鐘射寺大殺が、直々にお主を成敗しに参ったぞ」
「ブレブレブレ、吾輩を成敗とは片腹痛い。脳が茶を沸かすである」
 鐘射寺・大殺(砕魂の魔王・f36145)の宣言を、キング・ブレインが笑い飛ばす。
 小国の魔王と、かつての魔王。
 2人の魔王の視線がぶつかり火花を散らす中、
「わーい、ブレブレさんだー」
 木元・祭莉(まつりん♪@sanhurawaaaaaa・f16554)は声を弾ませ、しれっとキング・ブレインに駆け寄ろうとする。
「だめだぞ、少年」
「キングの3m以内に入っていいのはあたしたちだけ」
「キングと戦いたいなら」
「僕達を倒してからにして貰おうか!
 だがそんな祭莉を阻むように、四天王が揃って前に出て来た。
「先ずは四天王?」
「「「「その通り!」」」」
 首を傾げる祭莉に、四天王が声を揃えて返す。
「だって、刀」
 あっさりと納得して下がった祭莉は、後ろでぽかんとしている木元・刀(端の多い障害・f24104)に声をかけた。
「……呼び出されたのはいいですが、何事ですか? パーティ?」
 刀は事情を全然呑み込めていなかった。
 まあ、怪人達はどれも頭が特徴的だ。そう言う被り物っぽく見えるかもしれない。
「四天王なんだって」
「えっと?」
 色々足りない祭莉の言葉に、首を傾げる刀。
「おいら、アンちゃん、コダちゃん、刀。ぴったり」
「え、人数を合わせたかった?」
 指折り数える祭莉の言動で、やっと事情を理解した刀。
 けれどまさかそんな理由で呼び出されたなんて――。
「……わかりました、頑張ります」
 刀はそれでも頷ける、素直ないい子であった。

「いや~、出迎えご苦労!」
 一方その頃、御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)が祭莉に変わって四天王達の前に出ていた。
「というか待機お疲れさまだ!」
 恐らくは天井で出番を伺っていた事を褒める余裕すら見せる。
「何かと思えば」
「あんなの苦労でもないわ!」
「俺達日直式四天王の出番は1回あるかないか!」
「その為なら身体を張るくらい、なんてことはない」
「はっはっは。面白いなお主ら」
(「いい。とてもいい。こういう連中は、上手く使えばきっと映えるぞ」)
 キング・ブレインと共に戦う為なら天井に貼り付く苦労も厭わないと、忠誠心が限界突破してる四天王に菘が笑みを浮かべる。
「ほほほ、見事にテーマに沿った四天王さんを集めたものですわね。流石はキング・ブレインさんです」
 そんな四天王の冬と言う統一性に対し、アルテミシア・アガメムノン(黄金の女帝・f31382)の賞賛はそれを集めたキング・ブレインへと向けられた。
「ブーレブレブレ! それほどでもある! さすが吾輩!」
 そしてあっさりと良い気になるキング・ブレイン。
「だからお見せしよう! ウィンター四天王に合わせた、吾輩のスーパー化を!」
 そしてそちらを見もせずに背後の本棚に手を伸ばし、687冊あるスーパー怪人大全集の中の1冊を迷わず取り出した。
 その全身が、黄金の輝きに包まれる。
「……ん?」
 後ろで様子を伺っていたユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)は、その黄金の輝きの中に違う色が見えて思わず目を疑った。
 ユディトに視える他人のオーラ。
 キング・ブレインのそれも視えること自体はおかしくない。
 ユディトが目を疑ったのは、それが、ついさっき見た覚えのあるオーラの色だったから。
(「あの色は確か……と言う事はまさか……」)
 その色でユディトには、キング・ブレインがどの怪人の頁を開いているのか予想がついてしまう。
 それを他の猟兵に告げようかとユディトが迷っている内に、輝くキング・ブレインの背がにょきにょき伸びていき、身長が3倍になった所で、全身を覆っていた黄金の輝きが頭の天辺へと集まっていく。
 ぐぐぐ……ぽんっ。
 そして生えた。
 キング・ブレインの頭に、星が。
「スーパー・キング・ブレイン、クリスマスVer! モミの木モミ男さん達に敬意を表して!」
 縁が白いもこもこ付きの赤地になったマントを翻すキング・ブレインの姿に、ユディトは「やっぱり」と苦笑を浮かべる。
「流石だわ、大首領!」
「なんと、モミの木モミ男の巻を使って下さるとは」
「これであいつらも浮かばれるってもんだ」
「だから僕たちはあなたに付いていくのです」
 四天王の忠誠心は更に限界突破していた。単純だなお前ら。
「ブレブレブレ! でもモミの木モミ男さん達の特徴生えてると、何か身体を左右に揺らしたくなるのが玉に瑕であるな」
「だんしん、だんしん♪」
 モミの木モミ男の特徴が与える衝動を抑えきれず腰から上を左右に揺らすキング・ブレインに、木元・杏(ほんのり漏れ出る食欲系殺気・f16565)も釣られて左右に揺れ始める。
「はい、杏。ストーップ」
 またうさ耳付ける羽目になっては叶わないと、鈍・小太刀(ある雨の日の猟兵・f12224)がストップかけた。

「いきなりスーパー化ですか。ではわたくしも遠慮は致しません。全てに打ち勝つ力をお見せしましょう」
 キング・ブレインのスーパー化にも、不敵に微笑むアルテミシア。
 その全身を、濃密な魔力で覆っていく。
「こ、これは……」
「凄まじい魔力ね」
「あいつは後回しだな」
「異議なし」
 その魔力量を見た四天王は、全会一致でアルテミシアに手出ししない事を決めた。
「先ずは地形を作る。どこでもゲレンデ――発動!」
 最初に動いたのは四天王4号、ゲレンデマン。
 人工降雪機を模したと思われるその頭部から雪を撒き散らし、大広間をゲレンデの如き雪景色へと変えていく。
「まずは私だ! 特性の切り株ケーキ! これを食べずして大首領に近づけると思うな!」
 次に動くは四天王1号、ノエルマン。
 雪景色の中、周囲に大量のケーキを出現させた。
「山羊の。もうケーキは入らぬか? お代わりが来そうだぞ」
 怪人の周囲に皿に乗ったケーキが浮かび出したと言うシュールな光景に、生浦・栴(calling・f00276)がちょっとうんざりした様子で声を上げる。何故なら栴は外での戦いで、チキン焼いて食べてたしケーキも食べていたから。そこにまたケーキである。
「切り株ケーキお代わりかぁ。チキンで腹は満たされたし。ケーキも食えたんだけどな」
 それは傍らで成り行きを見守っていた明石・鷲穂(真朱の薄・f02320)も同じ事。
「ま、全部食うけど!」
「ほう、大きく出たな」
 けれども鷲穂がさらりと豪語すれば、それが聞こえたノエルマンが顔を向けて来る。
「所詮日直式の四天王――私の事をそう思っているのなら、ケーキ攻めで後悔させてやる」
「そんな風には思っちゃいないが、日直式って何だ? おれでも挙手すればなれるやつか?」
 向けられた変な敵意を笑って受け流し、鷲穂は気になってる事を訊いてみる。
「アァン!?」
「俺達は大首領に心酔して日替わりで四天王務めてんだ!」
「希望すればなれるとか……埋めますよ? 雪に?」
「日直式四天王を舐めないでよね!」
 そうしたら、ノエルマンどころか他の四天王にも食ってかかられる事になった。
 好奇心は時に身を滅ぼす。
「お、おう……悪ぃ」
「こやつら、濃さと熱意で雪が溶けぬのが不思議よな」
 その剣幕に鷲穂は思わず後退りしそうになり、栴は溜息混じりに呟いた。

●みんなで食べれば怖くない
 鷲穂がケーキを全部食うと豪語した理由。
 それは、他の猟兵の存在だ。
 まだ食えそうなのが自分だけではないからだ。
「ケーキかぁ……餌食だね♪」
 例えば、いい笑顔を向けてる祭莉とか。
 とは言え、祭莉も実は自分で食べる気はあんまりなかった。ケーキが嫌いとかではなくて。
(「多分、おいらが食べる分は残らないだろうなぁ」)
 と言うだけの事である。
「……ケーキ……美味しそう」
 だって杏が、浮かぶケーキをガン見していたから。
「……んっ」
 だが杏は唐突に、何かを振り払うように頭を振った。
邪念食い意地バイバイ」
 相手は四天王。日替わりと言えど四天王。強敵の筈なのだと杏は自分に言い聞かせているようだ。
 しかしその手の『灯る陽光』はと言うと、さっきのマラカス型のままだった形状がいつの間にか巨大なケーキナイフになっている。
「これで切り株も綺麗に切り分けら……、んっ」
 また邪念食い意地に戻りそうになった思考に気づいて、杏が再び頭を振った。
 ――簡単に欲を祓えるなら、人間誰しも苦労はしない。

 そしてもう1人。
「何か足りないと思ったら、そうねケーキがなかったわ」
 小太刀も視線は浮かぶケーキに向かっていた。
「お腹も空いたし、むむむむ……」
 こっちはこっちで、杏とは違う意味で難しい顔をしている。
 多分、あれだ。カロリーとかその辺を気にしてるんではないだろうか。
「小太刀、小太刀。一緒にケーキ、食べよ?」
 そんな小太刀の袖を、邪念食い意地に負けた杏がくいくいと引っ張った。
「そうだ! 食え! 食うのだ!」
 何かノエルマンも便乗して、ケーキを食えと迫って来る。
「どうしてもって言うなら、食べてあげなくもないんだから」
 本当は最初から食べたかったのに、素直に食べたいと言えない。
 小太刀、20歳になってもツンデレ絶好調である。

 そして、ケーキの時間が始ま――。
「お待ちなさい。1号――ノエルマン、でしたか?」
「な、何かな?」
 急にアルテミシアに視線を向けられ、ノエルマンの肩がびくりと跳ねる。
「テーブルと椅子は何処ですの?」
「――は?」
 アルテミシアが続けた言葉に、ノエルマンから呆けた声が零れた。
「は? じゃありませんわ。あなた、ケーキを給仕するのにテーブルすら用意していないと言うのではないでしょうね? まさかこのわたくしに立ち食いしろと?」
「え、えっと……」
 アルテミシアに捲し立てられて、しどろもどろになるノエルマン。
 確かに、ケーキは皿に乗って出現しているが、その皿を置く場所が――無い!
 テーブルの事は考えてなかったなぁ。
「仕方ありませんわね……」
 パンパン、とアルテミシアが両手を叩けば忽然と現れるテーブルと椅子。欲望具現術ウィッチクラフト、便利だなぁ。
 そして今度こそ、ケーキの時間が始まった。

 ふよふよと漂う皿に乗って、ケーキが猟兵達に配られる。ケーキだけでは口が甘くなるからと、ストレートの紅茶も付いている。雪景色に合わせたのか、夏場なのにホットも選べる仕様だ。
 ケーキを食べない悪影響を避けるべく、猟兵達は思い思いに手を伸ばしていく。

「ん……美味……」
「本当に美味しいわね。ココア風味のスポンジはふわふわで甘さ控えめ。クリームもほど良い甘さでくどくないわ」
 ほわんと杏の周りに花が散り、その向かいで小太刀も食レポに勤しんでいる。
 ノエルマンの切り株ケーキは普通に美味かった。
「ほう! 美味いではないか!」
 食べる前にしっかりとケーキの写真と動画を撮ってからケーキを口に運んだ菘の口からも、素直な賞賛の声が上がった。
「うん、これは中々……」
 ユディトもその味には、思わず普通に舌鼓を打つ。
 これならば、無限にとは言わないが幾つか食べられそうだ。
 ここで不味いものとかではなく普通に美味しいケーキが出て来る辺り、キング・ブレインの四天王である。

「……茶が美味いな」
「ケーキもちょっと食えよ。割と美味いぞ」
 ズズ……と茶だけ啜ってる栴に、鷲穂がケーキの乗った小皿を取って差し出す。
 鷲穂の前には、既に空いた皿が2つ重なっていた。
「まあ食わねばならぬのなら、仕方ないか」
 仕方なしに食べてみれば、栴の目が瞬いた。
「……確かに悪くない」
「だろ?」
 いやいや食べてると思われるとアレなので、ゆっくりと味わっているように装わねばならぬかとか考えていた栴だが、これならそこまで演技しなくても良いかもしれない。
「とは言え量は食えん。頼むぞ、山羊の」
「おう!」
 山もりケーキの皿を前に、鷲穂は確りと頷いた。

「ほら、早く用意しなさいな」
「あ、は、はい」
 優雅に座ったアルテミシアに急かされて、慌てて切り株ケーキを出現させるノエルマン。
(「くっ――おかしい、こんな筈では」)
 もう何個目かになるかもわからないケーキを運びながら、ノエルマンは焦っていた。
(「どうなっているのだ。こいつらの食欲は底なしか!」)
 もうケーキも食べられない――そんな反応を期待していたノエルマンにとって、猟兵達の食欲は予想外。こんなに給仕が忙しくなるなんて思っていなかった。
「遅いですわ。けれど味は良いですわね」
「ど、どうも」
(「な、何なのだこの女ー!? 大首領より偉そうではないか! でも従ってしまう」)
 アルテミシアにケーキの味を褒められながらも、内心、複雑そうである。
 そんなノエルマンは何か嫌な予感を感じて、咄嗟にしゃがみ込んだ。
 その頭上を、光が通り過ぎていく。
「いざ、切り株」
 振り返ると、切り株頭の方をスパーンと切り分けそうな杏がそこにいた。
「オイちょっと待て。給仕するのはケーキであって、私の頭ではないぞ」
「めりめり、くりくり♪」
 杏、聞いちゃいねえ。
「待って、杏。あれを食べる気?」
「うん。あれが一番大きい」
 ストップかけた小太刀に、杏は迷わず頷き返す。
「切り株を切り分ける。マイクが治すの待って、更に切り分ける。この繰り返し、きっと至福タイム」
 だが邪念食い意地に負けてる杏の食欲は、留まるところを知らなくなっている。
「さすがアンちゃん」
「流石、姉さん」
 祭莉と刀は、そんな杏を止める気が全くない。
「でもあれ、頭よね? あっちのケーキの方が美味しいんじゃない?」
「その通りだ! 一番デカいのやるから!」
「仕方ない。それで我慢してあげる」
 何故か小太刀も怪人側のフォローに回って、最終的にビッグサイズの切り株ケーキで杏も手を打つ事になった。

●数少ないシリアス枠~大殺、菘
 ただ一人、敢えてケーキに手を付けていない猟兵がいた。
「行くである、キングブレイン!」
 先代である父から譲り受けたと言う『魔剣オメガ』を手にした大殺である。
「行かせるとでも?」
「キング・ブレインは俺達が――」
「フハハハ! 天をも支配する、我輩の権能をとくと目に焼き付けるがいい!」
 それを阻もうとした残りの四天王の言葉を遮って、大殺は魔剣を掲げる。
 その刃に、どこからか雷が落ちた。

 魔王の雷デビルライトニング

「邪魔だ、四天王ども!」
 雷雲を帯びた大殺が、周囲に魔界の黒い稲妻を放つ。
「こ、これは!」
「避けろ、雪丸、ミス・マイク!」
 慌てた様子でそれを避ける3人の四天王。
「厄介ね……」
「よい」
 それでも再び大殺を阻もうとした四天王たちを、他ならぬキング・ブレインが制した。
「ノエルマンのケーキを食べてない猟兵1人に負ける吾輩ではないである。あっちはあっちで忙しそうであるんで、みなさんはノエルマンを手伝ってやってください」
 若干フラグっぽい事言いながら、キング・ブレインは四天王を他の猟兵に向かわせ大殺に向き直った。
「お主を倒し、真っ二つに裂かれたこの世界を再び統一してくれる」
 そんなキング・ブレインに、大殺はズンズン近づいていく。
「あ、うん。我輩倒すのはともかく、この世界割れてるのは是非直していただきたいです。メンテナンスルートって何?」
「え? 知らん!」
 いつものように唐突に腰が低くなるキング・ブレインの問いかけを、大殺はぶった切る。
 まあ、前にシステムフラワーズ開いた時を大殺は直接知らないだろうから、無理もない。
「とにかく、我輩は、明日から夏休みを満喫するのだ!」
「夏休みは終了させるである!」
 判らないものは置いといて、2人の魔王は再び視線で火花を散らす。
 但し――その距離はゆっくりとしか縮まらなかった。
 ノエルマンのケーキをスルーした代償。大殺自身は全力で駆けているつもりでも、いつもの半分のスピードも出ていない。おかげで傍から見ると中々シュールな感じになっていた。

「鳴り響けファンファーレ!」
 パーパパパーパッパパー、パパパパー、パパパパー♪
 右腕を掲げた菘の声に少し遅れて、どこからかレースでも始まりそうなファンファーレが鳴り響く。
 その音の衝撃が、積もった白い雪を吹き散らしながら突き進んだ。
「おおっと、危ない!」
 迫る音の衝撃に気づいたゲレンデマンが、跳び上がる。その真下を音が進んで行き、壁にぶつかり――燃え上がった。
「燃え上がる音か! だがそんな攻撃、僕の作るゲレンデの世界では弱体化するよ!」
「はっはっは。だからどうした!」
 ゲレンデマンの言葉を、菘はあっさりと笑い飛ばす。
「雪も溶かさぬ熱量の行動など妾には不可能! ならば開き直る!」
「――は?」
 菘の言葉が意外だったのだろう。ゲレンデマンの目が点になった。
 だが、それもひとつの手だ。ユーベルコードは超常の力ではあるが、決して万能ではないのだから。手札を増やして出来る事を増やすのは可能だが、それでも出来ない事は出来ない。
 新たに手札を増やす――と言う手段を菘が考えなかったかは本人のみぞ知るところだが、例え不利になるとしても使い慣れた力で己の戦い方を貫き通す。それもまた立派な戦略と言えよう。
「さあ、真冬っぽい空気などブッ飛ばすぐらいの熱いバトルを繰り広げようではないか!」
 パッパパッパパパパッパー♪
「我が魔剣を喰らえ!」
「モミの木モミ男さんの星で受け止めるである!」
 菘のファンファーレの続きに重なる形で、大殺の魔剣とキング・ブレインの星がぶつかる音が響き渡る。
 その音が、そろそろ真面目な戦いの始まりだと告げていた。

●ルールなき雪合戦とハートキャッチ~小太刀、杏、アルテミシア
「俺の氷の魔球――くらえぇぇぇい!」
 魔球と言う名のぎゅっと握った雪玉が四天王3号、雪合戦怪人の雪丸の手を離れて飛んでいく。
 真面目な戦いとなると、これまで空気だった雪丸が急に存在感を増して来た。
 と言うか、他の四天王が攻撃能力持ってないから仕方がない。
「ちょっと雪丸、食事中は邪魔しないでよね」
「ふっ……ノエルマンのケーキ食べてれば攻撃されないとでも思ったか? そんな事は言っていない!」
 小太刀の真っ当な抗議を無視して、雪丸は複雑な軌道を描かせた雪玉をその頭上に落とす。
 ――パシン。
「何ィ!?」
 しかし物理学の埒外の極低温を宿したそれは、アルテミシアが横から伸ばした手にあっさりと受け止められた。
「わたくしにも狙いがありますので。けれど、手出しは不要なようですね」
 微笑みを浮かべて、アルテミシアはその場を離れていく。
「い、今のは何かの間違い……これが真の氷の魔球だ!」
 そこに、若干声を震わせながら雪丸が第二球を投げる。
「だから邪魔しないでって」
 それを見た小太刀は、ケーキを食べる手は止めずには黒漆塗の和弓『白雨』だけを片手で構えた。
 向かいの杏に至っては、まかせた、と言わんばかりに雪玉を見てすらいない。ケーキしか見ていない。
「戦場に黒き矢の雨を」

 ――そして白雨から放たれるは黒雨コクウ

 矢のない弓から、600を超える雪玉属性を持つ矢が飛んでいく。
「ウォォォォォォッ!?」
 雪丸は驚きながらも雪玉を加速し、軌道を何度も変えて矢を壊そうとした。
「だ、だめだ!!」
 けれども壊しきれず、その場を飛び退く。雪丸が数秒前まで立っていた場所に、矢が降り注いだ。
「な、何と言う数だ……」
「雪丸はケーキ食べないの?」
「ん?」
 肩で息していた雪丸は、唐突な小太刀の問いに首を傾げる。
「なんで俺が?」
「え? だってケーキ楽しんでないから、魔球の速度も5分の1になってるのでは?」
「……………!!!!!!!!!!!!!!」
 小太刀の指摘に、雪丸はしばらく沈黙した後――声も失うほどに驚いた。
 そう言う事になる。さっきゲレンデマンが菘の攻撃を避けられたのは、そっちも弱体化していたからに過ぎない。
「ちょ、ちょっと待ってろ! 食って来る! おい、ノエルマン!」
「わかっている!」
 唐突に、四天王のケーキタイムが始まった。
 なお、キング・ブレインは先にケーキ食べていたそうである。四天王がキング・ブレインの足を引っ張る筈もない。

「待たせたな!」
 口の端にクリームつけたまま、雪丸が戦線に復帰して来た。
「雪玉は邪魔」
「む?」
 だがそんな雪丸の前に、杏がうさみん☆を進ませる。そして――。
「うさみん・フラッシュ☆」
 バチコーンッ。
 うさみん☆が飛ばしたウィンク。そこに杏が込めていた魅了のパワー的なものみわくのうさみん☆が、雪丸の心を撃ち抜いたメロメロにした
「な、なんと可憐な……これが、恋……?」
 なんか、めっちゃ効いた。
「だめだ……お前達には投げられない」
「えー。魔球対決しても良いのに。雪玉属性の矢のはまだまだ撃てるわよ」
「いいや、だめだ! 俺には出来ない!」
 不満そうな小太刀に背を向け、雪丸は2人の前から離れていった。

●スケートリンクの作り方~鷲穂、栴
「破戒も破戒――殺生致す」
 テーブルに立てかけておいた金剛杵。
 その封印を、鷲穂は一段階だけ解いた。
「ケーキ食いながら四天王も何とかしなきゃいけないのは忙しないなぁ」
 おかげで茶が飲めないとぼやきながら、鷲穂は片手で金剛杵を掴んで掲げた。
「破戒も破戒――殺生致す」
 一段だけ封印を解き独鈷から三鈷へ変わったそれに霹靂を纏わせて――無造作にぶん投げる。

 神器解放・金剛杵アンダルヤ・ヴァジュラ

「うおぁぁっ!?」
 激しく明滅する稲光の尾を引いて飛来した金剛杵を、ノエルマンが驚き避けた。
「ケ、ケーキ食いながらなんてものを投げるんだ!」
「落ち着け、ノエルマン。雷は熱を持ち雪を溶かしかねん。性能は落ちてる筈だ」
 騒ぐノエルマンを落ち着かせるゲレンデマン。
(「その通りなんだよなぁ……」)
 そのやり取りを眺めながら、鷲穂は胸中で呟いていた。
 金剛杵の封印をまだ残しているとは言え、思ったほどの勢いが出ていないのはそのせいではないだろう。ましてや、片手で投げたからと言う事でもない。
 この場に降り積もった雪の影響は、思っていた以上に厄介だった。
「ふむ……なあ山羊の、スケートリンクでは動き辛いか?」
 そんな鷲穂の胸中を見透かしたように、栴がそんな事を訊いて来る。
「スケートリンク? 氷上戦だな、問題ないぞ」
 栴が何をするのか判らなかったが、鷲穂は深く訊ねずに二つ返事で頷いた。
 こういう時の小細工は栴の方が向いているのは、良く知っているから。
「ではこうしてやるか」
 栴は空になった茶器を置くと、オーブ『Ancient deep sea』を構え魔力を練り始めた。
「雪が溶かす熱がなければ良いのだろう?」
 オーブから水を放って、自分達と四天王の間にぶち撒けた。
 それは何か特別な水ではない。
 魔力で創ったと言うだけの、ただのぬるめの水である。

 ぬるめの水を雪の上に撒けばどうなるか。ちょっとだけ溶けて、普通に凍る。
 栴が訊ねたようにスケートリンクを滑らかに作る際に使われる方法でもあり、これならば雪を溶かす事無く、ゲレンデの様な雪景色と言う地形をただの氷の床に変えられる。

 ユーベルコードで創られた雪であれ、それが溶ける雪ならば、自然の雪と同じ現象が起きるのも当然。
 そこまで読んだ栴のファインプレーと言えよう。
「ま、まさかそんな手が――!」
「任せろ。あいつを倒せば多分溶けるだろう!」
 膝から崩れ落ちたゲレンデマンの肩を、雪丸の手が叩く。
 ほんのちょっと前に、こいつらとは戦えないと逃げ出して来たとは思えない面構えで、雪丸は硬く握った雪玉をぶん投げる。
 その手を離れた雪玉が、グネグネと蛇行したかと思えば急上昇したり、直角に曲がったりと、やりたい放題な軌道を描いて栴に向かって飛んでいく。
「堕ちるも降りるも等しく」
 しかし栴はその場を離れようともせずに、ただそう告げた。

 ――Fall into Mobius loopウラハオモテ・オモテハウラ

 ケーキ食べて茶を飲む片手間に、雪の下から周囲に染み込ませておいた呪詛。
 その中から、無数の手が伸びて来る。その1つが、パシッと軽い音を立てて雪玉を受け止めた。
「な、なんだと!?」
「これだけ手があればさすがに止められるか……そうら、帰れ」
 驚く雪丸を置いて、栴が淡々と告げれば、呪詛の手の中から雪玉が消えて――降って来た。雪丸の頭に。
 さっき別の猟兵にやろうとしたことを、返された形になる。
「ば、ばかな……俺の魔球が……」
 まだ立ち直れていないゲレンデマンの隣に、雪丸も膝から崩れ落ちた。

●炎上案件~菘
 パーパパパーパッパパー♪
 また菘のファンファーレが鳴り響く。
「くっ!」
 その衝撃の軌道から、ノエルマンが少し慌てて飛び退いた。
「どう言う事だ!? ゲレンデマンの能力を知っていながら、炎の力をこれ程に使えるとは。どんな絡繰だ……」
 訝しむノエルマンだが、絡繰などない。
 ただ単に開き直ったから、菘には迷いがない、と言うだけだ。
 いっそ自分自身すら炎に包んで熱量を上げる程に。
 そしてゲレンデマンの能力は【雪が溶けるような熱量を持つ行動】を『弱体化』させるものでしかない。無効化の類でないのだから、当たる可能性はあるのだ。
「はーっはっはっは!」
「し、しまっ――ぐはっ!?」
 高笑いを響かせながら菘が響かせ続けたファンファーレの衝撃が、ついにノエルマンを吹っ飛ばした。その身体が炎に包まれる。
「うおお、あ、熱い! 熱いのに……な、なんだこの気持ちは!?」
 そしてノエルマンを、熱さと共に感じた事のない感情が襲う。
「妾だけを刮目して見よ!」
 それこそが菘のファンファーレによって燃え上がる炎が与えるもの。菘から目を離したくないという情動。

 ――見よ、この人だエッケ・ホモ

「……さて、ここまで対策を張ったのだ。やはり妾は怪人どもをボコってバトらんとな!」
 そう言い放ち、菘は機械の左腕を硬く握り締める。
 外の戦いで、モミの木モミ男の1体を殴り飛ばして、この城の窓を割った左の拳を。
「四天王ノエルマンよ、邪神の左腕を存分に堪能してくれ!」
「ちょ、ちょっと待――っ!?」
 菘に殴り飛ばされたノエルマンが壁に叩きつけられ、雪の上に落ちた。

●消えゆく雪~杏、小太刀、刀、栴、鷲穂
「ノエルマン! おのれ……!」
 四天王の一角が崩れて、ゲレンデマンが歯噛みする。
「だがおかしい。一部が凍っただけで、僕のゲレンデ化の影響がこんなにも……?」
 ノエルマンが菘にやられたのは自分の能力のせいと考えたゲレンデマンが周囲を見回す。
 そして、見つけた。
「はい。ミルクたっぷりかき氷」
「ありがと。某白い乳酸菌飲料の原液かけても美味しいのよね」
 雪を勝手に取ってかき氷代わりにして、美味しく頂いてくれちゃってる杏と小太刀の姿を
「待て待て待て! 何してるんだ!」
「かき氷。ケーキなくなったから」
「あれだけノエルマンを働かせて食っておいて、まだ足りないってどう言う事だ!?」
 やめさせようとしたゲレンデマンだが、杏の食欲に逆に驚かされる。
「まあ姉さんですから。そして、姉さん達の邪魔はさせませんよ」
 そんなゲレンデマンの視線を遮るように刀が割って入る。
「ホワイトクリスマスなので、雪なんですね。妙に雪質が良いのは、ゲレンデ仕様ですか。ふむ」
 刀は足元の雪を手に取ると、その質を確かめてみる。
「では何とか消してみましょうか」
「何とか? この雪を溶かせるものか!」
 刀の言葉を、出来るものかと笑い飛ばしたゲレンデマンは――それは勘違いと言うものだ。
 刀は雪を『溶かす』とは言っていない。雪を『消してみる』と言っているのだから。
「……雪は、無機物ですね?」
「え?」
「雪は氷の結晶ですから。氷でも水でも、無機物ですね?」
「え?」
 刀の言葉に目を丸くするゲレンデマン。だが確かに刀の言う通り、水も氷も無機物である。
「ではクライシスゾーン展開」
 それならばと、刀は無機物を変換する領域能力を展開した。
「対象は、雪」
「え?」
 刀が短く告げた瞬間、雪が消えて竜巻が生じる。
「これでこの辺りの雪の制御権は、こちらのものです」
「ば、バカな……」
 次々と刀によって雪が超次元の竜巻に変えられる光景に、呆然とするゲレンデマン。
「傾斜要らないので、雪合戦に適した地形になるよう調整しましょう」
「刀、それよりかき氷にしやすい雪にして」
「ふわふわな奴がいいわね」
「わかりました、姉さん小太刀さん」
 杏と小太刀に言われるままに、刀が制御権を奪った雪を変えていく。
「や、やめろぉぼふぉぉっ!?」
 それを止めさせようとしたゲレンデマンの頭に、鷲穂が投げた金剛杵が突き刺さった。
 雪景色が少なくなり、霹靂を纏った金剛杵本来の勢いが出たのだろう。
「……ま、いっか」
「ああ、構わんだろう」
 まさか当たるとはと顔を見合わせた鷲穂と栴は、さらっと流す事にした。

●魔球の打ち方~ユディト
「ノエルマン……ゲレンデマン……これは俺が3倍働かねばいけないようだな!」
 気を取り直した雪丸が、ひとり気勢を吐いた。
 まあまだノエルマンもゲレンデマンも消えていないので、生きているようなのだが。
「では、俺が相手をしましょう」
 その前に、ユディトが立ちはだかった。
 食べていたケーキを近くのテーブルに置いて、愛用の戦棍をバットの様に両手で構える。
「その魔球打ち返してみせましょう!」
 まだゲレンデマンの雪も多少残っているが、心を熱く燃やすだけなら大丈夫だろうとユディトが声を張り上げる。
「面白い! 打てるものなら打ってみろ!」
 その気迫に、雪丸も応じて来る。
 こうして、まるで野球の様な勝負が始まろうとしていたが――この場でそう言う展開になる筈がない。ユディトとて、正攻法で雪玉を打つ気もなかった。相手の魔球がまずおかしいのだから。
「氷の魔球――くらえぇぇぇ」
「俺の相棒の真の力をお見せしましょう」
 雪丸の手から雪玉が投げ放たれたその瞬間、ユディトの構える戦棍が――伸びた・・・

 神気解放――払暁。

 『払暁の戦棍』の力――効果・威力・射程を3倍に高めるユーベルコード。
 その結果、ユディトの構える『払暁の戦棍』の長さは3mを優に超えるに至った。
 雪丸の氷の魔球は何度でもその軌道と速度を変える。その回数に限界はある筈だが、100回以下と言う事もないだろうから、実質無制限と言っても差し支えあるまい。
 そんな玉を打ち返すならどうすればいいか――ユディトの答えは、これだ。
 間合い自体を広げればいい。
「ふんっ!」
「ふべらっ!?」
 ユディトが全力で横薙ぎに振るったフルスイングした戦棍が、雪丸の手を離れた瞬間の雪玉を打って、その顔に叩きつけた。
「ふぅ……四天王ひとりだけでも強敵でしたね」
 凄くやり遂げた顔で、ユディトは額の汗を拭う。
 雪玉ごと雪丸を殴り飛ばしたような気もするが、打ち返せてはいるので、よし。

●歌勝負~祭莉
 ノエルマン、ゲレンデマン、雪丸。
 四天王の3人までが倒れた。(くどいようだが、まだ死んでない)
「ケーキカットと雪合戦が終わりそうだから、母ちゃんぽい歌姫はおいらね!」
 残る最後の四天王、ミス・マイクは自分が相手をするとその前に立ったのは祭莉だ。
「高音は、甲高くならない方がお上品だって」
「あら? あたしの歌が下品だって言いたいの?」
「癒しの歌は美しくないと効果出ないよね、知ってる♪」
 祭莉には珍しいストレートな挑発に、ミス・マイクが不機嫌そうになる。
「おいら同じ高音なら、戦隊モノの主題歌の方が好きだな♪」
「そんなに言うなら――歌勝負しかないわね!」
「うん、いざ尋常に勝負なり! 父ちゃんの歌で!」
 ミス・マイクが投げて来たマイクをパシッとキャッチして、祭莉は笑みを浮かべた。
「祭莉んが歌を!? あの人の!?」
 それに驚いたのは、小太刀だ。
 祭莉が歌うとどうなるか、よーく知っているので、慌てて耳栓を取り出し装着する。
「先に歌っていーよ♪」
「どこまでも舐めてくれるわね! それなら――あたしの歌を聴きなさい!」
 祭莉の言葉に苛立ちを露わにしながらも、ミス・マイクが歌い出した。
 出だしから高音の歌を、見事にすっと入り込む。
 そして――。
「こうかな? ~~~~♪ ~~~♪」
 少し遅れて、祭莉がそれを真似て声を響かせた。
 何とも気持ち良さそうな歌いっぷりである。仕草だけを見れば。実際に響いている音は――酷かった。

 乱歌咆哮ハウリング・ハウル

 それは獣の声とも鳥の声ともつかない、歌とは聞こえぬ怪音波。
「な、なによこの歌は!! って言うか歌なの!?」
 マイク頭の怪人であるミス・マイクをして、歌かどうか判別に迷うレベルの怪音波。
「こ、これじゃ歌えない……!」
 不協和音なんてもんじゃないその超絶暴音に、ミス・マイクの歌が止まる。
「刀がツッコミ役だと信じてたのにー!」
「するりと捕まえどころがないのが木元家です」
 耳栓越しにも聞こえるその音に涙目になる小太刀に、刀がしれっと返す。
 その二人の間では、杏が気にした風もなくかき氷を食べていた。
「刀も木元家の一員わたし達の弟だもの」
 木元家にはツッコミが足りない。

●さらばウィンター四天王
 ミス・マイクも封殺され、ついに四天王すべてが地に伏した。(やっぱりまだ死んでない)
「……んむ? もう雪がない。どこでもゲレンデ、頑張って、やれば出来る子」
 雷で焦げてるゲレンデマンなど、杏にもっと雪を出してと怪力バシバシで急かされている有様だが。
「ブレブレブレ! 中々やるではないか下郎」
「フハハハ! それは我輩の台詞だ、キング・ブレイン!」
 ピンピンしているのは、大殺と戦っているキング・ブレインだけである。
「しかしこの状況は良くないですね。良くないので――吾輩、がんばろうと思います! ハイ!」
 巨大化した身体で強引に大殺を押し退けて、キング・ブレインが四天王達を倒した猟兵達のいる方へ向き直る。
「ブレブレブレ、頭を垂れよ下郎共! 吾輩こそが秘密結社ブレインの大首領、キング・ブレイン! 全ての世界にコンコンコンを送り、全ての飢えと貧困を消し去りたいところをぐっと我慢してる悪の大首領であるぞ!」
 ただの自己紹介じゃねえかって長い詠唱を、めっちゃ早口に捲し立てた。
「キングブレインはかき氷、何味が好き?」
「コーラ味とかどうでしょう? 世界にスーパー怪人を送り込み、夏休み終了のお知らせとかそう言うスーパー悪い作戦を起こしたいすっごく悪い首領である!」
 間に小太刀が飛ばした関係ない質問にも律儀に答えながらも、その詠唱は途切れない。そして――。
「と言うわけで悪い大首領の脳ビーム!」
 黄金の脳とその上に生えた星が輝き、黄金のビームが放たれ――ギュルンッと消えた。
「………え?」
「ご馳走様でした」
 驚くキング・ブレインを尻目に、アルテミシアが優雅に立ち上がる。
「言ったでしょう? 全てに打ち勝つ力をお見せする、と」
 アルテミシアが纏った魔力は、あらゆる攻撃を無反動で吸収し、展開している時間とその間に受けた攻撃によって際限なく力が高まると言う、何をどうやったら破れるのかわからない魔力である。
「仲良しの皆さんですから、一緒に吹き飛ばしてあげますわ!」
 雪丸の【物理学の埒外の極低温】と、キング・ブレインのビーム。そしてここまで字数換算10000字以上の時間で高まった魔力を、アルテミシアが解き放った。

 三界の覇者トライローキャ・ヴィジャヤ

 放たれたのは、色のない光。ただただ、消滅を齎す力が広がっていく。
「ここは、あたしが……!」
 それを見たミス・マイクが、奮起した。歌い続ける祭莉の歌に負けじと、光の中で歌声を響かせる。
「~~♪ ~~♪」
 その歌声は、キング・ブレインと他の四天王を傷つく傍から癒していく。
 だが――。
「~~~♪ かふっ!」
 いよいよBメロのサビ、と言う所で突如、ミス・マイクが血を吐いて倒れた。
「ああっ! ミス・マイクさん……ウィンター四天王で一番体力がないのに、無茶しやがって……」
 膝をつき嘆くキング・ブレインの前で、ミス・マイクが、ノエルマンが、ゲレンデマンが、雪丸が――ウィンター四天王が散った。
「おお、四天王よ。死んでしまうとは!」
「あ、おいらたちが四天王継ごっか?」
 膝をついたまま拳を握り、声を震わせるキング・ブレインに、祭莉が笑って告げる。
「いや結構。気持ちだけ頂きますぞ」
 ケロッとした顔で祭莉に返して、キング・ブレインは再び拳を硬く握った。
「君達の犠牲は無駄にはせんぞ! 君達の屍を乗り越えて、吾輩は世界の夏休みを終了させる! ――配下を失った大首領の振る舞いとしてはこんなものでしょうか」
 お約束と言うか、様式美と言うか。
 そんな台詞を言い終えて、キング・ブレインはすくっと立ち上がる。
「では――始めようか。最後の戦いを!」
 クリスマス仕様のマントを翻し、キング・ブレインはそう宣言した。

 とは言え――アルテミシアの攻撃はかなり効いているようで、既に膝がガクガクしてたりする。
「キング・ブレインよ。ここから持久戦に入るなど面白くあるまい」
 尺が長すぎるのも考え物だと、菘が『神殺し』すら成し得た機械の拳を叩き込む。
「配信ですか? なら吾輩がスーパー怪人大全集(全687巻)を一冊ずつ丁寧に語っていくとかどうでしょう!」
 キング・ブレインの手が本棚に伸びる。
「ちょっと聞いてみたい気もしなくもないですが、遠慮しますよ!」
 本棚を投げる。その動きに生じる隙を、ユディトは狙っていた。
 全687巻もある全集を収めた本棚が小さい筈もないのだから。
「猟兵としては、決着をつけなければいけませんからね!」
 ユディトが伸ばしたままの戦棍を振るい、本棚を掴んだキング・ブレインの腕を払って叩き落す。
「ぐ、ぐぬぅ……っ」
「行ってこい、山羊の」
「ああ。やーっと手が届くぜ」
 苦悶の呻きを漏らすキング・ブレインを見やりながら、栴がオーブを掲げ強い風を吹かせる。
「これは慈悲だ」
 翼を広げて風に乗り、真っすぐ飛び込んだ鷲穂が、激しく瞬く霹靂纏いし金剛杵を叩き込んだ。
「終わりにしようぞ、キング・ブレイン」
 ほぼ同時に、魔剣の切っ先を向けて、大殺が言い放つ。
「雷はより高い所へ落ちる。巨大化が仇になったのう!」
「ブブブレレレレッッ!?」
 金剛の霹靂と黒い稲妻。二つの雷に撃たれ痺れるキング・ブレインへ向けて、大殺が床を蹴って跳ぶ。
「大首領、討ち取ったり!!」
 大上段に構えて振り下ろした魔剣の一撃が――キング・ブレインの脳天に生えた星を打ち砕いた。
「ブレ、ブレ……負けたでありますぞ」
 膝をつき、崩れ落ちたキング・ブレインの身体が通常の大きさへ戻っていく。
「………うーん、慈悲か?」
 それを見ながら降りて来た鷲穂が首を捻っていた。
 そもそも――破戒僧の在り方を領解しとっくに受け入れた自分が慈悲とは。
「ブレブレがうつっちまったな!」
「それは仕方ないのである。吾輩は凄いからな!」
 破顔する鷲穂に、キング・ブレインもブレブレと笑う。
「と言うか、吾輩も凄いが猟兵もである。なんでこの時期にクリスマス系怪人揃えたのに、普通に勝って来るの?」
「猟兵は異世界各地に飛ぶのが日常故。季節外れの行事如き、適応出来るに決まっているではないか」
 倒れたままキング・ブレインが零した疑問に答えて、栴がその肩をぽんと叩いた。

 ――ブレブレブレ。キング・ブレインよ、負けてしまうとは情けない。かくなる上は、これよりキングブレインキャッスルは自爆フェーズに入ります。戦闘員速やかに離脱してください。繰り返します。キングブレインキャッスルは自爆フェーズに入ります。

 そして、聞いていた通りの自爆を告げるキング・ブレイン自身の録音音声が辺りに響き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『キングブレインキャッスルの最期』

POW   :    相手の強さを讃えて行く

SPD   :    少しでも長く話せるよう工夫する

WIZ   :    デビルキングワールドの話を土産に聞かせる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

爆破時間タイムリミットは、その内来るよ
 ――ブレブレブレ。キング・ブレインよ、負けてしまうとは情けない。かくなる上は、これよりキングブレインキャッスルは自爆フェーズに入ります。戦闘員速やかに離脱してください。繰り返します。キングブレインキャッスルは自爆フェーズに入ります。

 キング・ブレイン自身が吹き込んだらしい録音音声が、辺りに鳴り響く。
 ビー、ビーッと不安を煽るかのようなブザー音も鳴り出し、不穏な感じの暗めの赤いランプもそこかしこで明滅し出した。
 如何にも、間もなく吹っ飛びそうな悪の本拠地と言った雰囲気だが――。
「ふー、よっこらしょ、と。いやー、負けた負けた。完敗である、ブレブレブレ!」
 猟兵達の他には、何だかすっきりした様子のキング・ブレインしかいないせいか、緊張感はあまりない。
 なんかこう、逃げ惑う戦闘員の足音とか怒声が聞こえたりとかが無いのだ。
「む? 何をしてるのですかな? 早くしないとぶっ飛んじまいますぞ。こうなったらもう、吾輩にも止められないのです」
 だが、キング・ブレインもこう言っているのだから、じきに爆発するのは間違いない。
「さあ、吾輩の屍を越えてゆくがいい!」
 爆発までの短い間、どうするか。
 すぐに脱出してもいいし、キング・ブレインと何か話してもいい。
アルテミシア・アガメムノン
ほほほ、完勝ですわね。ブレインさんもお疲れ様でした。
今回のブレインキャッスルはクリスマスモードでしたわね。
随分と趣向を凝らしたものです。お陰で楽しめましたわ。
(などとのんびりと会話を楽しみましょう)
さて、そうですですわね。冥土の土産に故郷デビルキングワールドのお話などをしてあげましょうか。
ガチデビルさんが復活して――(後略)
まあ、そんな感じで貴方が制定したデビルキング法のお陰もあって魔界はとても栄えています。仮に何かあってもわたくしがいますし、心配せずにお眠り下さいな。
あら、そろそろ時間ですわね。それでは名残惜しいですがごきげんよう!
(とマジでお話だけ楽しんで去っていく女帝)


鐘射寺・大殺
グワハハハ!我らの大勝利である!!
しかしながらキングブレイン、敵ながら天晴れだったのう。
ひどく寒い戦場だったが、我輩は久々に熱くなれたぞ。
流石はデビルキングワールド4thKINGよの。
ム?勿論知っておるわ。教科書にも載っておる偉人だからの!
さて、この城も間もなく落ちるか…だがこのまま突っ立って話すのも
手持ち無沙汰だのう。
(コンコンコンを叩き、野球のグローブ2つとボールを取り出す)
大首領、我輩とキャッチボールでもせぬか?
人間界では、国の首脳同士がこれで親睦を深めたそうな。

ボールを投げあいながら、7thKING WARのあらましを語ってやろう。
ふざけた言動だが、謎のカリスマ性はまさしく魔王よの!



●魔王たちの語らい
 ――戦うからには、勝つ為で戦う。

 猟兵にしろオブリビオンにしろ、それは変わらないだろう。
 例外的な局面もあり得るので、多くの場合は、とつけるべきだろうが、いずれにせよ戦いとはそう言うものだ。そして、お互いに勝とうとして戦うからこそ、実際に勝てるかどうかはまた別の話。
 勝者がいれば敗者がいるのだ。自分がいつ敗者の側になるかなど、誰にもわかりはしない。
「ほほほ、完勝ですわね」
「グワハハハ! 我らの大勝利である!!」
 アルテミシア・アガメムノン(黄金の女帝・f31382)や鐘射寺・大殺(砕魂の魔王・f36145)の様に、勝利の後に当然の様に笑ってみせると言うのは、誰にでも出来る事ではないだろう。
「ブレブレブレ! そこまで勝ち誇られると、嫌な気分はしないである!」
 そして、敗者の側がそれをさっぱりした顔で受け入れると言うのも。
「ブレインさんもお疲れ様でした」
「キング・ブレイン、敵ながら天晴れだったのう」
「そうですか? ――じゃない。そうであろう! 吾輩、大首領であるからな!」
 アルテミシアと大殺に褒められて、キング・ブレインのキャラが早くもブレ出している。
「今回のブレインキャッスルはクリスマスモードでしたわね。随分と趣向を凝らしたものです。お陰で楽しめましたわ」
 アルテミシアのその言葉は、世辞などではない。
「ブレブレ。悪の秘密結社を率いる処世術と言う奴である。配下に合わせるのも大首領の務めよ」
 それが伝わっているのか、キング・ブレインは何処か照れ臭そうに答える。
「うむ。ひどく寒い戦場だったが、我輩は久々に熱くなれたぞ。流石はデビルキングワールドの、4thKINGよの」
「いやいや、ひどく寒い、とか言いながら元気に吾輩まっしぐらだったじゃな――ん?」
 続く大殺の言葉にもノリ良く返しかけたツッコミを、しかしキング・ブレインは言い終わる前に首を傾げた。
「4thKING? 吾輩、それって言いましたっけ?」
「ム? 勿論知っておるわ。教科書にも載っておる偉人だからの!」
「なん……だと……」
 なんで知ってるんだと驚いたキング・ブレインは、大殺が返した言葉を聞いて更に驚いた。
「吾輩が、偉人……か」
 あ、なんか感じ入ってるぞ。

 ――キングブレインキャッスル、自爆カウントダウン、開始するであります。999、998、997――。

 そこに、そんなカウントダウンの録音音声が響き出した。
 意外とあるなと思うだろうか。だが1000秒からだと16分と少し――うん、やっぱり意外とあるな?
「むむ? 爆発までのカウントダウン、長すぎましたかね? 他の者を巻き込むのは本意ではないので、ついうっかり長めに設定してしまいましたが……」
「さて、冥土の土産にあなたの故郷デビルキングワールドのお話などをしてあげましょうか」
 自らそこに気づいたキング・ブレインに、アルテミシアはまだ時間があるだろうと話しを続ける。
「おお、それは是非とも聞きたいであるな」
「だがこのまま突っ立って話すのも、手持ち無沙汰だのう」
 まだもう少し時間があるならと、大殺はコンコンコンで出したものをキング・ブレインに向かって放り投げた。
「おや? これは……」
「大首領、我輩とキャッチボールでもせぬか?」
 首を傾げるキング・ブレインに、大殺は自分も同じもの――野球のグローブを着けて、ボールをぶん投げる。
「人間界では、国の首脳同士がこれで親睦を深めたそうだ」
「成程! 会話はキャッチボールと言う奴ですな!」
 飛んで来たボールを受け止め、キング・ブレインはすかさず大殺に投げ返す。
 一見、和やかなキャッチボールなのだが、そこは猟兵とオブリビオン。
 大殺もキング・ブレインも、実は余裕で150km超える球速で投げ合ってたりする。

「あれは、1年と少し前だったな。魔界裁判長『ジャッジメントガール』が数十年ぶりに目覚めたのは」
「ブレブレブレ。数十年ぶりとはジャッジメントさんってば、相変わらずですなー」
 最初の内は、キング・ブレインも笑いながら大殺にボールを投げ返す余裕があった。
「で、その直後です。ガチデビルさんが復活して――」
「え? ガチデビルさんって、あのガチデビルさん? 1stの?」
 だが、アルテミシアが続けた言葉に返されたボールを捕るのを忘れる程に驚くキング・ブレイン。
「まあ吾輩がこうして復活したのだから、ガチデビルさんが復活してもおかしくは……」
「しかも『悪魔契約書』まで持ち出されてまして」
「そ、それは……」
「しかし現代の悪魔達も負けてないぞ」
「魔界随一のニセ高飛車とニセ乱暴者が一計を案じて、予定通りに『悪魔王遊戯デビルアトラクション』の開始となりました」
「ブレブレブレ。なんですか、その面白そうな肩書。是非お会いしてみたかったですね」
 言葉を失ったり、笑ったりと、キング・ブレインの反応がイイもんだから、大殺もアルテミシアも話が進むと言うものだ。
「そして我輩達猟兵も『悪魔王遊戯デビルアトラクション』に参戦してのう」
「最終的に、7thKINGは一度空位になり、全部倒した猟兵の間で改めて競う事になりました」
 そこから先の事は、大殺にもアルテミシアにも記憶に新しい。
「それ以降、『ワルい暮らし』より『タノしい暮らし』を求める悪魔も増えとるのう。我が砕魂王国もそうなっておる」
「タノしい……ですか。ブレブレ、時代ですなぁ」
 大札の言葉に、キング・ブレインはしみじみと頷く。
「砕魂王国、であるか? 吾輩は知らなんだが、君の様な若き魔王がいるのなら、良いワルい国になるであろうな」
「ふん……任せるがいい」
 そうかと思えば真っすぐに告げて来るものだから、大札も少し面映ゆそうだった。
「まあ、そんな感じで貴方が制定したデビルキング法のお陰もあって魔界はとても栄えています」
 そんなキング・ブレインに語り掛けるアルテミシアにとって、あの戦いの後の事は他人事ではないだろう。

「仮に何かあってもわたくし7thKINGがいますし、心配せずにお眠り下さいな」

 その座を勝ち取ったのだから。
 4thKINGと7thKING。新旧のデビルキング。
「……」
 目の前にいた女帝が、己の後に続いた者だと知ったキング・ブレインの胸に何が去来していたのだろうか。
「ついつい長く語ってしまった。ふざけた言動だが、謎のカリスマ性はまさしく魔王よの!」
「そろそろ良い時間ですわね。それでは名残惜しいですがごきげんよう!」
 話すだけ話して、大札とアルテミシアは黙り込んだキング・ブレインの前で踵を返す。
 離れていく2人の背中を、キング・ブレインはその場から一歩も動かずに見送って――。

「――頼みましたよ。若き魔王達」

 見えなくなった所で、そう小さく呟いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御形・菘
ならば妾は撮影環境を一通り整えて、と
バトルも終わった今、ここからはキンブレとの和やかトークタイム!
超大物ってどいつもこいつも、とまではいかんが高い割合でまともな会話が成立してくれんからのう、貴重な機会だから嬉しいぞ

妾としては、お主に対してそう恨みがあるわけでもないからな
お主のような、確かな実績を出して名を残した巨悪を、妾は尊敬しておるよ
まあ最期に止められはしたがな

キャラ作りのコツとか人心掌握術とか、色々とノウハウを持っているのであろう?
その辺を知って妾も参考にしたい!
はっはっは、偉大なる先人にワルを学ぶ、とゆーやつだ!
妾のトーク力でうまいこと話題を引き出していくぞ!



●アフタートーク
「さて、キング・ブレインよ。ここからしばし和やかトークタイムといこうではないか!」
「いいですとも!」
 次に話かけたのは、御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)だ。
 マイクやらスタンドライトやらカメラやらと言った撮影機材に囲まれる形になるのを気にした風もなく、キング・ブレインはよっこらしょと玉座に座り込む。
 訊けば大抵の事は答えてくれそうだが、時間は限られている。
 だから菘はトークのテーマをちゃんと考えてきていた。
「トークのテーマじゃがの。お主のキャラ作りのコツとか人心掌握術について訊きたい」
「キャラ作り?」
「色々とノウハウを持っているのであろう?」
 首を傾げるキング・ブレインに、菘は問いを重ねる。
 その辺を知って参考にしたい、と言う下心もあるのだ。
「キャラ……まあ大首領として作ってる部分はありますが、その辺はその、場のノリ、でやってますので何とも……」
 しかしキング・ブレインの答えは、困った様なそんな言葉だった。
 日直式四天王なんて日替わり側近をつけるには、そのくらいの方が良いのかもしれない。
「むむ。では、人心掌握術はどうじゃ?」
「それならまあ……と言うか吾輩に聞いてどうする」
「はっはっは、偉大なる先人にワルを学ぶ、とゆーやつだ!」
 ちょっと我に返りかけたキング・ブレインを、菘はしれっと煽てて木に登らせた。
「偉大なワル……そこまで言われたなら、吾輩の人心掌握術をお見せしよう!」
 あっさりと木を登り切ったキング・ブレインがすくっと立ち上がる。
「まずは『頭を垂れよ下郎共!』と、ガツンと一発かましておきます。何事も最初が肝心。尊大すぎるだろうか、とか迷ったらいけません。悪の業界で舐められたら終わりですから。その後は、『これからどうぞよろしくお願いします!』と元気に挨拶言っときましょう。悪の業界でも挨拶大事」
 なんか就職面接のアドバイスみたいな、ふつーに真面目な答えが返ってきた。
 真似しちゃいけない部分もあるが。
「無事に君臨したら、あとは配下の適正を知る事ですな。例えば今回の四天王の1人、ミス・マイク。あの方、虚弱過ぎて戦闘員の中では埋もれていたのですが四天王候補に抜擢したら、ウィンター三人衆と性格と能力がマッチして――」
「そんな事までしてたのか、お主」
 そりゃ四天王達も心酔するだろうと、菘はしみじみと頷いた。

「しかし皆さん、吾輩とそんなに話す事あるんですかね?」
 菘以外にも自分と話そうとしている猟兵がいるのを空気で察したか、キング・ブレインは不思議そうに呟いた。
「まあ、貴重な機会だからのう」
 さもありなんと言った様子で、菘が苦笑を浮かべる。
 会話が成り立つ――と言うだけならば、そう言うオブリビオンはこれまでにもいた。だが、一度戦った後とは言え、ここまで無警戒の状態で話せた相手となると、むしろ他にいただろうか。
「お主の様な超大物ってどいつもこいつも、とまではいかんが高い割合でまともな会話が成立してくれんからのう」
「ンン?」
 菘が何気なく零した言葉に、しかしキング・ブレインが身を乗り出して来た。
「い、いま、吾輩の事を何の様なと言ったであるか!?」
「ん? 超大物、の事か」
「ちょう! おお! もの!」
 何やら興奮し出すキング・ブレイン。
「お主の程の確かな実績を出して名を残した巨悪を、超大物と言わずしてどうする」
「きょ・あ・く。つまりビッグワル! いい響きであるな……」
 菘からの高評価に、キング・ブレインはしみじみと天井を仰いだ。よほど嬉しかったんだろうか。
「吾輩、巨悪れてましたか?」
「ああ。妾としては、お主に対してそう恨みがあるわけでもないからな。巨悪として尊敬しておるよ」
「ブーレブレブレブレッ!」
 ついには菘の目の前で高笑いをし始め――。
「まあ最後に止められはしたがな」
「ブレブェゲッフゲッホゲホッ!? 持ち上げて落とすのやめて頂けますかな!?」
 菘のツッコミに、思いっきりせき込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユディト・イェシュア
キング・ブレイン
もうすぐお別れの時間ですね
俺はあなたの潔いところが好きです
あと部下想いなところも

全ての世界にコンコンコンを送り
全ての飢えと貧困を消し去りたい…
悪の大統領たる者がそんな願いを胸に秘めているところも

その願いは俺たち猟兵が引き継ぎます
飢えと貧困に喘ぐ人を減らすことはきっとできますから

あなたはデビルキングワールド出身でしたよね?
俺が昔訪れた時は
悪魔たちがデスゲームでハッスルしたり
悪魔らしく過ごしてましたよ

懐かしく昔のことを思い出しつつ
キング・ブレインが確かにあの世界出身なのだと納得する

それでは名残惜しいですが失礼します
俺たちはこれから夏休みを楽しんできますので
あなたもどうか…心安らかに



●クーリングオフなどない
「キング・ブレイン。あなたはデビルキングワールド出身でしたよね?」
「ええ? 吾輩の出身、そんなに広まってるんですか!?」
 どう見ても悪魔じゃなさそうなユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)に出身世界をズバリ告げられ、キング・ブレインは驚いたような声を上げた。
「ええ、悪魔達がガチデビルに立ち向かう闘争心を得る為にデビルキング法を制定したのがあなただというのも知ってます」
「ブレブレブレブレ! 小恥ずかしいであるぞ、ブーレブレブレッ!」
 本当に照れているのか、キング・ブレインはユディトの方を向かず天井に向けて高笑う。
「しかしまあ、吾輩のデビルキング法もいずれは不要になるのではないかな。そんな話を聞きましたぞ」
「さあ……どうでしょうね」
 キング・ブレインの言葉に、ユディトは曖昧に返した。
 確かに悪魔王遊戯デビルアトラクションの後、悪魔達の求めるものは少しずつ変わっている。けれども、今までに染みついたワルさを求める性質は、早々消えはしないのではないか。
 人でも悪魔でも、変わるというのは簡単な事ではないのだ。
「取り敢えず俺が昔訪れた時は、悪魔たちがデスゲームでハッスルしたり、悪魔らしく過ごしてましたよ」
「ブレブレブレ! 悪魔らしく、か。それは重畳ですな!」
 少し昔の事を思い出しながらユディトの告げた故郷の様子に、キング・ブレインはまた高らかに笑う。
 今度は照れ隠しなどではなく、本当に嬉しそうに。
(「ああ……本当に、あの世界出身なのですね」)
 その姿と視えるオーラに、ユディトは胸中で呟いていた。
 まさにかつて良い子過ぎたという、あの世界の悪魔ではないか。
「デスゲームと言うのも、さぞかしデンジャラスで悪いゲームなんでしょう、ブレブレブレッ」
 少しずれている所も、実にあの世界の者らしいと言うものだ。
「キング・ブレイン。俺はあなたのそういう、故郷や部下想いな所が好きです」
「ブレブレブレッ! 褒めてもコンコンコンくらいしか出ませんぞ!」
 急にユディトに褒められ、また照れ臭くなったのか、キング・ブレインは無駄にバサァッとマントを大きく翻し壁に手を伸ばすと、コンコンコンと叩いてみせる。
「これ、便利ですよね」
 出て来た食パンを拾い上げ、ユディトが微笑みかける。
「全ての世界にコンコンコンを送り、全ての飢えと貧困を消し去りたい……悪の大統領たる者が、そんな願いを胸に秘めているところも俺は好きですよ」
「ななな、何の事でしょうか!? 吾輩、悪の大首領であるからして、そんな事はしない! 全世界にウィンター怪人を送り込んで夏休み終了のお知らせを企んだ悪い大首領であるぞ!」
「その願いは俺たち猟兵が引き継ぎます。飢えと貧困に喘ぐ人を減らすことは、きっとできますから」
 動揺を隠しきれないキング・ブレインだが、ユディトはあくまで真っすぐに見つめ続ける。
「……何もかもお見通しですか……ならば吾輩の野望ねがいの一欠片を、勝手に貴様に押し付けてやる! 嫌だと言っても返品不可ですからね! あとは勝手にするがいい!」
 その視線に根負けしたキング・ブレインは、開き直って来た。
「ええ、勝手にします。そういう潔いところも好きですよ」
「ブレッ」
 もう一度視線を交わし、ユディトは踵を返す。
「それでは名残惜しいですが失礼します。俺たちはこれから夏休みを楽しんできますので。あなたもどうか……心安らかに」
「ならばここは悪の大首領らしく、日焼け止めを塗り忘れて顔がヒリヒリになる呪いをかけておきましょう! ブレブレブレッ!」
 地味に嫌な事とブレブレと言う笑い声を背中に聞きながら、ユディトもその場を後にした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木元・祭莉
【かんにき】ブレブレさんと優雅な夏休みをメリクリしよう!

自爆! ときどきやるよね、自爆!(?)
で、おいらたちは決死の脱出すればいいんだよね。カッコイイ!

決死になるまで時間潰さないと。
あ、そうだ。メリクリ!(しゅた)
ご馳走は……あ、肉だ。今度はターキーみたいだね。
ささ、どうぞどうぞ。皆様もどうぞ♪(そして宴会へ)
え、父ちゃん死んでたっけ?

そう、スーパー怪人さんってスゴいよね!(談笑中)
食べ物な人ってどのくらいいるの?
ご当地の数だけ?
……わんこな人は?
犬種の数だけいるの!?(ずいっと)

デビキン界に伝言とか、ある?
メリクリなプレゼントもありかな。靴下とか?
うん、代わりに届けてあげるよコダちゃんが!(ずずいっと)

そろそろ決死な時間っぽい?
じゃあ、ブレブレさんココ持って。
(縄ぐるぐる巻いて、端っこ渡し)
いちばん! 木元・祭莉、行っきまーす!
割れてるトコへ、バンジー!(きゃーい♪)

だって、割れ目見てみたかったんだもーん♪
じゃあまたどこかでね、ブレさまーっ♪(ゆべこ☆)


木元・杏
【かんにき】
おさらば、ぶれぶれさん

……
ん?(まだ?って顔
この展開ならば次はぶれぶれさんからの告白になるはず
実は、死んだはずのお父さんだったのだーとか、生き別れのお兄さんなのだーとか

(はっ)
もしや、生き別れのサンタクロースさん!
ならばやる事はひとつ、【お肉のチカラ】
ターキーを大量に降らせ、皆で美味しくいただこう
Forever めりくり
ツリーの分までわたしが揺れよう
小太刀もはい、うさ耳(渡す

ターキー美味しいは当然だけど
昨年行ったデビキンの鰻も美味だった 
ん、うなぎ、こーんなにデカかった。目玉はこれ位(手で表現
ふふ、次は小太刀も狩りに出掛けよう♪
…ぶれぶれさんも、今度一緒に食べよう
と、果たせない約束をするのも王道ね

ん、そろそろ(こくり
涙をこらえ後ろを振り返らずに駆け出して
決死のバンジーじゃーんぷ!


鈍・小太刀
【かんにき】

アナウンス自分で吹き込んだんだ
ブレないブレブレぶりは相変わらずね
嫌いじゃないわよ、そういうとこ(苦笑

まあ折角だし、最後の晩餐もいいんじゃない?
メリークリスマス!
(降ってくるターキー眺めつつ、キングにもうさ耳渡し

(ターキーもぐもぐ
デビキンにも鰻いるのね
お店があるの?へえ、杏達でメニュー作ったんだ
ちょっと食べに行きたいかも
新メニューにコーラ味のかき氷も提案してみたりさ

え?伝言役!?
まあ、観光ついでに行かなくもなくもなくもないけど
(故郷への思いを察しつつ、無駄にツンデレ風味
(伝言あれば必ず伝えに行くよ

じゃあね、キングブレイン
優しい悪の大総統

ちょっと待って、脱出方法これなの!?
うにゃー!!



●圧倒的にツッコミ不足!!!
 ――ブレブレブレ。キング・ブレインよ、負けてしまうとは情けない。かくなる上は、これよりキングブレインキャッスルは自爆フェーズに入ります。戦闘員は速やかに離脱してください。繰り返します。キングブレインキャッスルは自爆フェーズに入ります。

 ――キングブレインキャッスル、自爆カウントダウン、開始するであります。999、998、997――。

 ――自爆カウント、700を切りますよ! 各員、速やかに離脱しなさい! 697、696――。

 自爆するぞーと煽る機械音声が、間隔を置いて何度となく響いている。
 その声の主は、目の前にいた。
「アナウンス自分で吹き込んだんだ?」
「ここは吾輩の城ですからな!」
 鈍・小太刀(ある雨の日の猟兵・f12224)がそれを指摘すれば、キング・ブレインは自信満々の返答が返って来る。
「ブレないブレブレぶりは相変わらずね。嫌いじゃないわよ、そういうとこ」
「ブレブレブレッ!」
 小太刀の苦笑に、キング・ブレインの高笑いが重なり響く。
「ぶれぶれさん」
 そんなキング・ブレインのマントの裾を、木元・杏(ほんのり漏れ出る食欲系殺気・f16565)がぐいっと引っ張る。
「っとと、何でしょう?」
「おさらば」
 思わぬ力強さによろめいたキング・ブレインに、杏はマントから離した手をふるふると振る。
 もうすっかりお別れ気分になっているようだ。
「あ、はい。さようなら」
 キング・ブレインも思わずつられて手を振り返す。
 ――669、668、667――。
「……」
 ――666、665、664――。
「……」
 ――663――。
「ん?」
 しかし始まらない爆発に、杏が怪訝な顔になって首を傾げる。
「いや、そんな、まだ? みたいな顔をされましてもね」
「アンちゃん、これはブレブレさんからのフリなんだよ」
 困惑するキング・ブレインに、木元・祭莉(まつりん♪@sanhurawaaaaaa・f16554)から助け舟が出された。
「だってほら、自爆! ときどきやるよね、自爆!」
「うん、やるね」
 まるで花火みたいなノリで自爆をやるよね、と祭莉が言えば、杏もなぜか頷いていた。
「ええ……するんですか?」
 祭莉達の逞しさに、キング・ブレインの困惑はますます深まるばかり。
 助け舟だなんて、とんでもない。
「で、おいらたちは決死の脱出すればいいんだよ。カッコイイ!」
「なるほど」
 その間にも、祭莉と杏の間では、この自爆がアトラクション扱いにされそうになっていた。
「いや、決死になる前に脱出して欲し――」
「ブレブレ。あの2人に言っても無駄よ」
 諦めなさい、と小太刀がいい笑顔で告げていた。

 だが――キング・ブレインの困惑と気苦労は、まだ始まったばかりだったのである。

●最後の晩餐
 ――611、610、609――。
「決死になるまで時間潰さないと」
 まだまだ遠いカウントを聞きながら、祭莉がそんな事を言い出した。
「そういう事なら、次はぶれぶれさんからの告白になる筈」
「ん?」
 それを聞いた杏の言葉で、今度はキング・ブレインの方が怪訝な顔をする事になる。
「告白? 何を?」
「実は、死んだはずのお父さんだったのだーとか、生き別れのお兄さんなのだーとか」
 この発言には、言った杏以外の3人が揃って驚かされた。
「杏、待って待って」
「え、父ちゃん死んでたっけ?」
「生きてる」
 目を丸くした小太刀と祭莉に、杏はしれっと首を横に振る。
「……要するに、悪の組織のボスが実は血縁だった、と言う展開をご希望ですかな?」
 それを見たキング・ブレインが、2人の後ろで声を上げた。
 杏がこくりと頷く。
「だとしたら、吾輩には足りない要素があります!」
「ん? なにかある?」
「ズバリ、仮面です!!!」
 首を傾げる杏に、キング・ブレインが力強く告げる。
「そういう展開になる時は大体、仮面で素顔を隠していた者がなんやかんやあって仮面が割れて、素顔が明らかになったタイミングで判明するというのが王道でしょう!」
 そんなに力説すると言うことは、キング・ブレインのこれは地顔なのだろうか。
「そうなんだ……?」
 当の杏にはさらっと流されているけれど。
「あ、そうだ」
 そこに、祭莉が何かを思いついてポンと手を叩く。
「メリクリ!」
「あ、はい。メリークリスマス!」
 急にクリスマスに話題すっ飛ばした祭莉に、キング・ブレインも思わず返していた。
「……それ」
 それを見ていた杏が、はっと表情を変える。
「生き別れのサンタクロースさん!」
「ん?」
 杏にびしっと指差され、キング・ブレインが再び怪訝そうな顔になった。
 小太刀も「また杏は何か変な事を……」と言いたそうな顔をしている。
「ならばやる事はひとつ――お肉のターキーチカラパワー
 そんな2人の視線を意に介さず、杏は両手を掲げる。
「……あ、肉だ。今度はターキーみたいだね」
 すると、どこからか肉が降って来た。祭莉が瞬時に見破った通り、ターキーだ。
 それは杏の所有するお肉である。牛だったり鳥だったりするかもしれないお肉である。宇宙ジビエの方ではない筈だ。多分。
「こ、これは一体……諸君、何がしたいので?」
「ささ、どうぞどうぞ。皆様もどうぞ♪」
 困惑を隠しきれないキング・ブレインを、祭莉が有無を言わさず座らせる。
「まあ折角だし、最後の晩餐もいいんじゃない?」
 諦めなさい――と言外に込めて、小太刀は微笑んでいた。
「Forever めりくり」
 そして杏は、お肉を手に左右に揺れている。
「ツリーの分までわたしが揺れよう」
 クリスマスは揺れるもの、とか杏の中でインプットされていなければいいのだが。
「小太刀、はい」
「メリークリスマス!」
 そんな揺れてる杏から出て来た2つのウサ耳の片方を当然の様に装着し、小太刀はもうひとつをキング・ブレインに放り投げた。

 それからしばらくして――。
「ブレブレさん。スーパー怪人さんってスゴいよね!」
「おお! 怪人の良さがわかりますか!」
 キング・ブレインは笑顔の祭莉と談笑するくらい、普通に馴染んでいた。
「食べ物な人ってどのくらいいるの? ご当地の数だけ?」
「ご当地……と言うのが良くわかりませんが、食べ物系怪人は多いですよ! スーパー怪人大全集の中でもあっちこっちの巻に食べ物系怪人は載ってますから。大抵の料理の数だけ存在すると言っても過言ではないでしょう」
 矢継ぎ早に祭莉が浴びせて来る質問にも、キング・ブレインは律儀に答えている。
 祭莉に邪気が無いのは、これだけ近くで見ればわかると言うもの。
「……わんこな人は? 犬種の数だけいるの!?」
 ずいっと祭莉が身を乗り出してるのも、純粋な好奇心によるところが大きい。
「犬系怪人ですか。食べ物系怪人に比べれば少ないですね」
 だからキング・ブレインも、ついつい答えているのだろう。
「そっかー。あ、故郷の世界に伝言とか、ある?」
 そんな和やかな話の流れの中、急に祭莉がそんな事を言い出した。
「へ? 伝言? えっと……」
 不意打ちだったのか、慌てるキング・ブレイン。
「あなたの故郷の世界、去年行った。鰻、美味だったよ」
「へえ。あの世界にも鰻いるのね」
 ターキー食べるのに忙しそうだった杏と小太刀も、祭莉が振ったキング・ブレインの故郷の話に加わって来た。
「ふふ、次は小太刀も狩りに出掛けよう♪」
「ん? 狩り? 釣りとか漁じゃなく?」
 何故、うなぎで狩りなのか。
「ん。狩り」
 少し不穏なものを感じた小太刀に、杏はこくりと頷く。
「うなぎ、こーんなにデカかった。目玉はこれ位」
(「あ、それウナギじゃないやつですね……あれかな?」)
 杏が続けた身振り手振りで、キング・ブレインは大体察していた。元キングは伊達じゃない。
「お店、ちゃんと続いてるかなぁ……」
「きっと大丈夫。美味しいメニューに木元村の名物酒の樽も残して来たし」
「へえ……お店があって? 杏達でメニュー作ったんだ? ちょっと食べに行きたいかも」
 開店を手伝った『うなぎ屋』に想いを馳せる祭莉と杏に、何も知らない小太刀が笑みを浮かべる。
(「どうやら、本当に吾輩の知ってる故郷とは少し違う形になりつつあるようですな」)
 そんな3人の様子に、キング・ブレインは自分の知らない故郷の姿を脳裏に思い描く。
(「それを見れないのは――いや、未練であるな」)
 胸中の呟きを振り払うように、キング・ブレインは頭を振って――。
「決まった?」
「ブレ?」
 ふと視線を感じると、祭莉に覗き込まれていた。
「伝言」
「……」
「メリクリなプレゼントもありかな。靴下とか?」
「……」
 やはり祭莉が冗談ではなく言っているのだとわかるから、キング・ブレインは黙り込むしかなかった。
 ああ、何を言えと言うのかと。
「大丈夫。何でも代わりに届けてあげるよ」
 そんなキング・ブレインに、祭莉は何でもいいと胸を張って告げる。
「コダちゃんが!」
 そして小太刀にぶん投げた。
「2人がメニュー作ったなら、私もなにか新メニューを……コーラ味のかき氷とか……え? 伝言役!?」
 何やら思案していた小太刀は、急に祭莉から話を振られて目を丸くする。
「まあ、観光ついでに行かなくもなくもなくもないけど?」
 それでも大体聞いていたのか、唐突なツンデレ成分発揮しつつも小太刀も祭莉の提案を首肯した。
「ブーレブレブレブレッ! ああ、確かに諸君なら頼めば伝えてくれるんでしょうなぁ!」
 けれどもキング・ブレインは、殊更に声高に笑い声を響かせた。
「だが吾輩はキング・ブレイン! 悪の大首領にして嘗ての4thKINGであるぞ! 伝えたい事はこの口で! 直接伝えますとも!」
「……ん、やくそく。ぶれぶれさんも、今度一緒に食べよう、うなぎ」
 そんな機会がもう無いことをわかっていて見栄を張るキング・ブレインに、杏も果たせない約束を敢えて交わす。
「よかろう! 吾輩、約束を守る大首領だと巷で評判ですからな!」
 キング・ブレインがそれに頷き返すのも、きっと王道だ。

●食後にバンジーはきつくない?
 ――20、19、18――。

 終わりの時は近づいていた。
「そろそろ決死な時間っぽい?」
「ん、そろそろ」
 残り時間も少ないと、祭莉と杏が席を立つ。
「じゃあね、キングブレイン。優しい悪の大首領」
 小太刀もその後に続いて――。
「で、どうやって脱出するの?」
 首を傾げる小太刀の腰に、杏が縄をぐるぐるぎゅっと結びつける。
 杏と祭莉の腰にも、いつの間にか同じように縄がぐるぐる巻かれていた。
「じゃあ、ブレブレさんココ持って」
「はい?」
 そして3本の縄の反対側を、祭莉がキング・ブレインに持たせる。
「小太刀。涙をこらえ後ろを振り返らずに駆け出そうね」
「ちょっと待って、脱出方法これなの!?」
 杏の言葉で全てを察した小太刀が、声を張り上げた。
「うん、バンジー♪ だって、割れ目見てみたかったんだもーん♪」
 悪びれずに祭莉がにぱっと笑って返す。

 ――3、2、1、0……それでは諸君、アディオス!

 そしてもう、迷ってる時間もなかった。キングブレインキャッスルがこれまで以上に、大きく揺れて爆発音も響き出す。
 好都合にも何処かの爆発の影響で、3人のすぐわきの壁に亀裂が走って、メリメリっと割れていった。
「いちばん! 木元・祭莉、行っきまーす!」
「にばん、杏。じゃーんぷ!」
 まず祭莉が、続けて杏が、その割れ目から外に飛び出していく。
「うにゃー!!」
 2人に手を引かれてる小太刀も、やけくそ気味に飛び出すしかなかった。
 3人の体がふわりと宙に浮き、すぐに落下が始まる。
 割れたキングブレインキャッスルの断面が、3人の目の前を流れて――。

 ――ドォンッ!

「「あ」」
 下層で起きた爆発で、縄が吹っ飛んで焼き切れた。
「ちょっとー!?」
 バンジーが自由落下になって、さすがに小太刀から絶叫に近い声が上がる。こんな事なら、ウサ耳生やした方の飛べる海の仲間達を呼べるようににしておけばとか思っても、時すでに遅しだ。
「困った……?」
 全然困ってなさそうな杏だが、取り敢えず何も考えもなさそうだ。
「おいらにお任せだよ!」
 だがなんと祭莉が、こんな時の事をちゃんと考えていた。
 あの祭莉が。
「おいで!」
 祭莉の周囲に、黄金と白銀と薄い緑の輝きが生まれる。
 それぞれの中から、向日葵型と狼型と鶏型のロボが現れた。
「……?」
 その輝きに気づいたか、あるいは縄が軽くなったからか。割れ目から、キング・ブレインが顔を出す。
「じゃあまたどこかでね、ブレさまーっ♪」
 それに気づいた祭莉が空中で大きく手を振って――守護神来臨を発動。祭莉自身は向日葵にしがみ付き、鶏が杏を、狼が小太刀をそれぞれ回収すれば、3人の姿は何処かにいる味方姿が見えない刀の元へ転移していった。

「ええ――またどこかで」

 誰もいなくなった空に、叶わぬ約束をさらに重ねたキング・ブレインの声が流れていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

明石・鷲穂
栴(f00276)と

なんで爆発なんてする仕様にしたんだよ~。
戦闘後にひと息ってできないじゃんか。なぁ?

ま、爆発が決まってるなら仕方ない。
ケーキは食ったがそれは別腹。栴~まだチキン残ってるか?
此処に酒は……用意が万端すぎるな。
晩酌してから帰るか!

あんた、潔いな!
何回も復活してたんだろ?よく今回でケリ付けようと思ったなぁ。
ブレブレ言ってるが、部下からの信頼も厚かったもんな。すげぇ変なやつらだったけど。
よし、あんた飲みもん持ってるな?栴も持ったな?
あんたと四天王達に乾杯!(ほろ酔い)

爆破の時間が近い?
よっしゃ、帰るぞ!
面白そうだから上手いこと爆破から逃げながら帰ろうぜ。
なんとかなるだろ!


生浦・栴
山羊の(f02320)のセリフを聞きつつ
隠滅が必要な物があるのかと見回すが
其れらしきものは見つからぬか
ところでお主消化が早いな
確かに運動はしていたが

いつぞやのケキリキターキーを炙るか?
俺の誕生祝いだったBBQ擬きで未開封の酒もな(未成年は未飲酒
最後の晩餐の様相になって来たな

聞こえ来る山羊ののブレブレを称える言葉を少し遠い目で聞き流す
うん、まあ良いがな
何故あの変な能力でケリが付くと思ったのか謎だ

帰路なあ
雪丸に使った帰宅UCと
その辺から幸運を貰ってなんやするのと…
と思ったが飛行物体が無いと使えなんだか
ともあれ外に出て仕舞おう
オーラ防御でダメージを削ぎつつ爆風を追い風に使えば
可成りの速さで飛べよう?



●肉は類を呼ぶ
「肉が降っておるな、山羊の」
「ああ、肉だな」
 キング・ブレインの上に、肉が降る。すでに焼けてるターキーだ。
 そんなおかしな光景を、生浦・栴(calling・f00276)と明石・鷲穂(真朱の薄・f02320)は少し離れた所から眺めていた。
「季節外れの雪に始まり、ついに肉が降るとはな」
「おかしな日もあったもんだな」
 栴に何とも言えない半笑いを浮かべさせ、鷲穂におかしな日と言わしめたその光景を生み出したのは、キング・ブレインではない。その周りにいる若い猟兵達の誰かなのは間違いない。

 閑話休題。

 美味しそうな肉と言うものは、食欲をそそるものだ。
「栴~まだチキン残ってるか?」
「なんだ、山羊の。釣られたか?」
 やおら肉を求められ苦笑を返す栴だが、鷲穂もただ食欲をそそられただけで言ってるわけではなかった。
「釣られたは釣られた。ただ相伴に預かるのもってな?」
 鷲穂が視線で示したのは、降って来たターキーを囲むキング・ブレインと猟兵達の輪。その中の人狼の少年が、皆様もどうぞと誘ってくれていたが――。
「ああ。ならいつぞやのケキリキターキーを炙るか?」
 手ぶらは気が引けるならと、栴は『prison cell』を構える。
 【Saved area】から取り出したのは、いつかの冬、こことは違う世界で獲ったフライドチキン持ったターキーの肉だ。そう言えばこれを獲った時にも、若い猟兵達もいたような。
「さすが栴。あとは酒があったりは――」
「あるぞ」
 鷲穂が皆まで言う前に遮って、栴は再び【Saved area】の中に手を突っ込む。
「あのBBQ擬き馬鹿騒ぎの時に未開封だったものだ」
 それは栴の誕生祝いだった初夏のとある日の事。此処とは別の世界で鷲穂ともう1人が飲みきれなかった酒だ。
「用意が万端すぎるな」
「性分と言うやつだ。それに『すぎる』と言うのなら、お主の消化の早さもな? 確かに運動はしていたが」
「ケーキは食ったが、それは別腹だからな」
 感心と呆れが混ざった様な栴の視線を、鷲穂はカラカラと笑い飛ばす。
「よし。晩酌してから帰るか!」
「……まあ、お主はそういうやつだ」
 酒瓶片手にキング・ブレインの方へ向かう鷲穂の少し後から、栴も続いていた。

●酒を勧めて疑惑が晴れる
 ――278、277、276――。
 ――パチッ、パチッ。
 止まらないカウントダウンが響く中、炎で薪が弾ける音も小さく鳴り続いている。
「あんた、何回も復活してたんだろ?」
「そうですとも。怪人の大首領とあれば、復活くらいしてみせないと!」
 焚火の傍らでは、鷲穂とキング・ブレインはどちらも破顔して、炙ったターキーを片手に酒杯を傾けていた。
「なんで爆発なんてする仕様にしたんだよぉ」
 鷲穂の方が酒が進んでいるようで、キング・ブレインに軽く管を巻いている。
「戦闘後にひと息って、できないじゃんか。なぁ?」
「ブレブレブレ。戦闘後とは言え敵地でひと息入れるつもりとは、豪胆であるな」
 絡んでくる鷲穂を、キング・ブレインは笑って受け流す。なんだか妙に慣れている感じがするのは、酔客の様な怪人もいたのだろうか。大首領も大変だ。
「敗者は勝者に従うもの。出来れば応えたいところではありますが……」
 そう言いながらしかし、キング・ブレインは頭を振る。
「こればかりは吾輩にも止められないのです。止められたとしても止めませんけどね! だって今更止める方が、格好悪いでしょう? こんなに爆発するぞーって空気出しといて、やっぱやめーって」
「はは。あんた、潔いな!」
 キング・ブレインの答えに、鷲穂は破顔して酒杯をぐーっと煽った。
「……」
 その横では、少し遠い目になった栴がちびちびとノンアルの杯を傾けている。
(「うん、まあ良いがな」)
 空になった杯に手酌で酒を注ぐ鷲穂を眺め、胸中で呟く。あの程度で酔い潰れる事もないだろう。キング・ブレインを称える言葉が続いているような気もするが、その辺りは適当に聞き流しておけばいい。
(「あちらは、酔ってないようだしな」)
 そんな事を考えながら、栴はキング・ブレインを観察していた。
 酔ってるかどうかを探っているのではなく、不審な動きが無いか、という観点で。
 拠点ごと自爆するなら隠蔽が必要なものがあるのでは――そんな考えが拭えないでいたのだ。
(「其れらしきものは見つかりそうにないな」)
 けれど残り5分を切っても酒に付き合ってるキング・ブレインの姿に、栴も杞憂であったかと思い直していた。
「あの~、吾輩からも良いかな?」
 そんな折に、キング・ブレインがおずおずと片手を挙げる。
 そしてその手の指を一つ立てたまま、手首を曲げた。焚火を指すように。
「これ、もしかしてモミの木モ」
「気にするな」
「知らぬが仏って云うだろう?」
 燃えてる薪の出所を気にするキング・ブレインの言葉を、栴と鷲穂が同時に遮った。
「けどあんた、ブレブレ言ってるが、部下の事をちゃんと気にしてんだな」
「そんな事、当然である」
 続く鷲穂の問いに、キング・ブレインは打って変わって力強い声で返して来る。
「吾輩が何度敗れたって見限らずにいてくれて、復活する度に出迎えてくれた怪人達なのすから! 恐怖で支配した関係とて、蔑ろになど出来る筈が無いでしょう!」
「「……」」
 思った以上に真面目な答えが返って来て、栴と鷲穂は思わず顔を見合わせた。
「道理で。部下からの信頼も厚かったもんな。すげぇ変なやつらだったけど」
「あれを変、の一言で済ませて良いのかは謎だがな」
「ブレブレブレ! 変だと思われるのも怪人の個性の内! ウィンター四天王も報われる事であろう」
 鷲穂と栴の言葉を、キング・ブレインはまたいつもの調子に戻って笑い飛ばす。
「そうかぁ――じゃあ、乾杯しようぜ」
 ニィっと笑って、鷲穂はキング・ブレインの黄金の杯に酒を並々と注ぐ。
「飲みもん、栴もあるな?」
「ああ」
「ブレッ……」
 鷲穂と栴が炎の上に掲げた杯に、キング・ブレインも杯を合わせて来る。
 そして――。
「あんたと四天王達に乾杯!」
 鷲穂が乾杯の音頭を告げ、打ち合わされた3つの杯が小さな音を鳴らした。

●人生足別離
 ――3、2、1、0……それでは諸君、アディオス!

 そして、終わりを告げる声が響いた。
 キングブレインキャッスルがこれまで以上に、大きく揺れ出している。
 ドォン、ドォンッと派手な爆発音もそこかしこで響き出した。
「行けるな。山羊の」
「ああ。問題ない――よっしゃ、帰るぞ!」
 先に立ち上がって促す栴に応えて、鷲穂もスッと立ち上がる。
 さっきまでほろ酔い気分でいた事など、感じさせない動きだ。
(「問題はなさそうだな。しかしどうしたものか。雪丸に使った術で一気に……いや、それでは山羊のは帰せても、俺が帰れぬ」)
 それを横目に見ながら、栴は胸中で脱出方法を思案していた。
「周囲から幸運を――ブレブレの、お主飛べるか?」
「え?」
「使えなんだか」
 目を丸くしたキング・ブレインの様子に、栴は敵の飛行能力を奪い自身に幸運をもたらす術も選択肢から外す。
「面白そうだから上手いこと爆破から逃げながら帰ろうぜ。なんとかなるだろ!」
「そうだな。外に出て仕舞おうか」
 笑って背中を押して来る鷲穂に、時には思いきりも必要かと栴も頷く。
 残された時間は少ないのだし、栴とて翼を持つ種族だ。
「ではな」
「往生しろよ!」
 そして栴と鷲穂は壁の隙間から、空に身を躍らせる。
 2人は竜の翼と鷲の翼をそれぞれ広げ、爆発の風に乗って、花舞う空を滑るように飛び去って行った。

●返杯
「……」
 自分ひとりになったキングブレインキャッスルの玉座に、キング・ブレインが深く腰掛ける。
 手にした杯の中には、まだ少し酒が残っていた。
「四天王の皆さんにまで乾杯して貰ったんですから……少しくらい、良いですよね」
 もうここにいるのはキング・ブレインだけ。
 他の怪人は誰もいない。
 もしまだ復活回数が残っていて復活するとしても、この一時の事は誰の記憶にも残らない筈だ。
 だから、今ならば。悪の大首領としては言うべきでない事だって――言える。

「秘密結社ブレインと猟兵に、栄光あれっ!!! ブーレブレブレブレブレッ!!」

 独り杯を掲げ、声高に告げる。直後、座したその足元から溢れ出した光の中に、キング・ブレインの姿が呑み込まれ――キングブレインキャッスルごと、一切合切、全てが爆発四散した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年08月04日


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト