鮮血の大地と月光の魔女
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「ついに、ここまで来たわ……」
6つの赤い月が照らす、血管に覆われた大地。一切の生命の息吹を感じない、ダークセイヴァーの第二層。
オブリビオンだけが生存を許された魔の領域に、ひとりの少女が姿を現した。
「私が求めるものが、ここにある……あと少しで……」
月光の如き輝きを灯す杖を携え、意味深な呟きを漏らす、その少女の名はモンティアナ・ドランケルハイト。
本来ならば第五層にある『月光城』に居るはずの主のひとり。その胸元には眼球と満月を組み合わせた歪な形の紋章――城主の証たる「月の眼の紋章」が融合していた。
「他の城主達はもう来ているかしら……私も急がないと」
紫色の髪をなびかせて、モンティアナは何かを追い求めるように血管の大地を進む。
その眼差しの先に何があるのか、知っているのはいまだ彼女自身のみであった――。
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「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「ダークセイヴァー第二層に、第五層にいたはずの『月光城の主』が現れました」
闇の救済者戦争の勝利を経て、猟兵の活動領域はついに三層を越え、二層にまで到達した。そこは大地全てが血管で構築され、「これまでこの世界で流された、全ての血液」が流れる、おぞましき狂気の大地。そこに『月光城の主』が突如姿を現したのだ。
「月光城の主は第五層において、支配者たる『第五の貴族』の干渉すら阻んできた謎のオブリビオン達です。彼らは今、何らかの目的をもって動きだし、第二層に集結しつつあります」
長らく月光城に籠もり続けてきた主達が別の階層に現れる、それだけでも大きく事態が動いているのは間違いない。連中の目的は定かではないが、グリモアがその所在を予知した以上、猟兵として動かない訳にもいかないだろう。
「予知にかかった月光城の主の名は『モンティアナ・ドランケルハイト』。闇に覆われたダークセイヴァーの地において、月の魔力を蒐集するオブリビオンです」
彼女は集めた魔力を利用した強力なユーベルコードを行使するが、第五層において他に干渉されなかった理由はそれだけではない。月光城の主達が保有する特別な紋章――『月の眼の紋章』が、彼女の力を大幅に高めているのだ。
「『月の眼の紋章』は融合したオブリビオンの戦闘力を66倍に強化します。その力の源になっているのは多数の人間……月光城の主はこれを『
人間画廊』と呼びます」
城の外に出たモンティアナは、
人間画廊の人間を「空中を浮遊するクリスタル」に閉じ込めて連れ歩いている。クリスタルとモンティアナは輝く鎖で繋がっており、これが紋章に常時エネルギーを供給しているようだ。
「この状態のモンティアナに勝つことは、まず不可能とみて良いでしょう。撃破するためには『月の眼の紋章』の効果を無力化しなくてはなりません」
数十個に及ぶクリスタルの中から人間を解放するごとに、紋章の力は弱体化していき、救出率が50%に達すると完全に効果を失う。そうなれば月光城の主とて他のオブリビオンとそう変わりはない。倒せる可能性は十分にある。
「
人間画廊のエネルギー供給が絶たれた状態でも、『月の眼の紋章』は棘鞭を出して本体と共に追加攻撃を仕掛けてきますが……知ってさえいえれば対処は可能でしょう」
ただ、ここまでの作戦が全てうまくいき、首尾よくモンティアナを追い詰められたとしても、油断はできない。
リミティアのグリモアは窮地に陥った月光城の主が「何か」を行い、それによって事態が急変すると予知していた。
「詳細までは予知できませんでしたが、それまでのモンティアナと同等か、あるいはそれ以上の脅威が発生する可能性があります。最後まで気は抜かないようにしてください」
第二層のことも、月光城の主のことも、猟兵はまだ知らないことばかりだ。どんな事態が起こっても冷静に対処する必要がある。諦めなければこの世界に猟兵が乗り越えられない困難などありはしない――ダークセイヴァーの真の支配者たる「五卿六眼」さえ、先の戦争では撃退できたのだから。
「第二層に、そして月光城の主に何が起こっているのか。皆様の力で確かめてきてください」
説明を終えたリミティアは手のひらの上にグリモアを浮かべ、ダークセイヴァー第二層へと猟兵達を送り出す。
未知の階層にて始まる新たな冒険。今だ闇深きこの世界にて、人類に安息の日は遠く、なればこそ前進は続く。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」
戌
こんにちは、戌です。
今回のシナリオはダークセイヴァーにて、第二層に出現した『月光城の主』を撃破する依頼です。
1章は月光城の主『モンティアナ・ドランケルハイト』とのボス戦です。
彼女は『月の眼の紋章』によって戦闘力を66倍に強化されており、紋章のエネルギー源となる人間を、浮遊するクリスタルの『
人間画廊』に入れて連れ歩いています。
人間画廊から人間を解放すれば紋章は弱体化し、救出率50%で完全に効果を失います。その場合でもモンティアナは通常の攻撃に加えて「月の眼の紋章から飛び出す棘鞭」で攻撃してくるので、こちらにも対処する必要があります。
2章で何が起こるかについては、現時点では不明です。
詳細は実際に章が移行してから説明いたします。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『モンティアナ・ドランケルハイト』
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POW : 月光花原~レインワルティア~
【月の魔力砲】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に月光花が咲き月の魔力を放ち続け】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD : 月蝕竜~モンティアナ~
【魔力を吸収する月蝕竜】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【魔力を吸い上げる月の引力】を放ち続ける。
WIZ : 月光杖~モーント・シュトック~
【月光杖から月の魔力】を放ち、戦場内の【魔力】が動力の物品全てを精密に操作する。武器の命中・威力はレベル%上昇する。
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アウロラニア・ミーマメイズ
【深想熾せし清天の威陽】で[光宵]が発する神威を纏い、[天骸]で速度、器官共に強化、[Darkstar]による[推力移動]、[空中機動]で迅速に駆け付けます
すれ違い様に[Blue Moon]、[Answerer]による神域の剣閃に存分に[神罰]を乗せ、幾つもの結晶のみを[焼却]し、まずは一声
「助けに来ましたよ。 解放されたら焦らず、私達猟兵の後方へ逃げて下さい」
彼女の行いへの神罰が誘発し続ける66倍もの力の暴走による自己崩壊を抑えるのに手一杯だろうモンティアナをあしらいつつ、後続の負担軽減の為、結晶破壊に専念します
高い倍率、桁外れに頑強な構造、成る程凄まじい、しかし些か力を頼みにし過ぎましたね
「力は世界に、想い出は過去に、魂は未来に。 あるがままの姿へ還しましょう」
この世界でこれ以上オブリビオンの好き勝手を許しはしないと、アウロラニア・ミーマメイズ(星天統べる女神・f39790)は第二層を翔ける。【深想熾せし清天の威陽】を発動し、「
光宵」の神威を身に纏ったその姿は、神々しくも勇ましい。
(急がなければ)
身に着けるのは自身の一部から作られた「
天骸」のコート。これにより強化された速度と器官をもって、女神の権能が形成した戦闘器官「Odd-SR7x[
Darkstar]を駆動。正と負の質量の生成・衝突が推進力を生み、小型ジェット機にも等しい空中機動を可能にしていた。
「……誰ッ?!」
超高速による迅速な現場への到着、並びに強襲。それがアウロラニアの第一の作戦だった。『モンティアナ・ドランケルハイト』が神威の気配に振り返った時には、すでに彼女は間合いまで踏み込んで来ており――速度を緩めぬまま、すれ違い様の剣閃を浴びせる。
(まずは、その結晶を)
手にしていたプラズマ大剣「Sds-d20[
Blue Moon]」と、背部のエネルギー翼「Ftd-4[
Answerer]」から生じた神威の波動が、周囲に浮かんでいた結晶を灼き祓う。これが彼女の第二の作戦。初手でまず
人間画廊を狙って、閉じ込められていた人間達の解放を目論んだのだ。
「助けに来ましたよ。 解放されたら焦らず、私達猟兵の後方へ逃げて下さい」
「え……あ、は、はいっ!」
初撃を成功させたアウロラニアはまず一言。何が起きたのかも分からぬうちに自由を得た人間達は、困惑しながらも彼女の言う事に従う。放り出された先が血管に覆われた不気味な大地の上では、頼れるものは猟兵以外にないだろう。
「猟兵……邪魔をしないで。今はあなた達に用はない」
モンティアナは煩わしげに表情をしかめながら、月の魔力を溜めた【月光杖~モーント・シュトック~】を掲げる。
エネルギー源となる人間を何人か奪われても「月の眼の紋章」の機能はまだ保たれている。66倍にまで強化された絶大な戦闘力は、いくら猟兵でも正面からは太刀打ちできない――そのはずだった。
「高い倍率、桁外れに頑強な構造、成る程凄まじい、しかし些か力を頼みにし過ぎましたね」
「なに……?」
しかしアウロラニアが余裕の表情を見せる意味を、モンティアナもすぐに気付いた。普段なら己の手足の如く精密に操れるはずの魔力が、思った通りにならない。【深想熾せし清天の威陽】には敵対者の装備や能力の制御を喪失させ、暴走を誘発する効果があるのだ。
「くっ……力が、抑えられない……!」
本来の数十倍まで強化された力がコントロールを失えば、抑え込むのは容易ではないだろう。自己崩壊を防ぐために彼女は意識を集中せざるを得ない。敵の排除に割ける労力は僅かとなり、そこにモンティアナが付け入る隙が生じる。
「私の
宇宙が、あなたの全てを灼き祓う」
流浪いの神としてオブリビオンを討伐する日々を送ってきたアウロラニアは、自身よりも強大な敵を討ち取る方法も心得ている。紋章から飛び出す棘鞭を軽くあしらいながら、彼女は後続の負担を軽減する為、結晶の破壊に専念した。
「や、やめなさい……!」
瞳を桃色に輝かせ、神威の翼で飛翔する女神を止められる者はいない。モンティアナが力の制御を取り戻す事には、少なからぬ数の
人間画廊が破壊され、無視できない量のエネルギー源が「月の眼の紋章」から失われていたのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
相手が紋章持つ魔族であれば、私もバニーの紋章を装着してお相手しましょう!
紋章さん、いきますよ♪(バニーの紋章には女性の魂が宿っています。)
まずは囚われた方々を救出です。
《煌月舞照》で1400本の煌月複製を創造。
内、400本はモンティアナを牽制し、残りの1000本は鎧無視攻撃で
次々とクリスタルを破壊して、人々を助け出します。
※詩乃の神力で生み出されて動くので、月光杖のUCでは操作不能。
ダッシュとジャンプと軽業を組み合わせての、残像を生み出す
変幻な動きで相手を翻弄。
攻撃は第六感・心眼で予測して、見切り・軽業で回避。
接近したら神罰・雷の属性攻撃を籠めた発勁(功夫・衝撃波・貫通攻撃)
を撃ち込みます!
「相手が紋章持つ魔族であれば、私もバニーの紋章を装着してお相手しましょう!」
月光城の主が持つ「月の眼の紋章」に対抗すべく、大町・詩乃(
阿斯訶備媛・f17458)が取り出したのは、可愛らしいウサギのような形をした「バニーの紋章」。闇の救済者戦争の後、一部の猟兵らはオブリビオンのみが利用してきた紋章の力について研究を進め、自分達でも使用可能な紋章を手に入れていた。
「紋章さん、いきますよ♪」
紋章に宿った女性の魂に語りかけ、装着すると彼女の服装は巫女服からバニーガールに変化する。一見露出が高いように見えるが、布がない部分も透明な装甲でカバーされており、防御力は抜群。これが「紋章つかい」を倒した猟兵達が手に入れた、新たなる力だ。
「それは紋章……なぜ貴女がそれを?」
「ふふ、秘密です」
種類は異なれども猟兵が紋章を扱っている事実に、『モンティアナ・ドランケルハイト』は驚きを隠せない。詩乃はその疑問に答えはせず、まずは囚われた人々の救出に取り掛かった。自らが神力を籠めた薙刀の神器「煌月」を掲げ、その複製を大量に創造する。
「煌く月よ、空を舞って世界を照らし、清浄なる光と刃で悪しき存在を無に帰しなさい」
発動したのは【煌月舞照】。複製された1400本の薙刀が踊るように宙を舞い、複雑な幾何学模様を描いて飛翔する。
その内の400本はモンティアナに向かわせて牽制しつつ、残りの1000本を
人間画廊のクリスタルに差し向け、破壊を狙うつもりだ。
「くっ……私の力でも操れないなんて」
モンティアナは【月光杖~モーント・シュトック~】の力で煌月の複製を操ろうとしたが、これらの神器は全て魔力ではなく詩乃の神力によって動かされている。動力が異なるために制御権を奪うことはできず、力尽くでひとつひとつ破壊していくしかない。
「その人達の命を、もう貴女の好きにはさせません!」
「っ、このッ!」
それでも「月の眼の紋章」と融合した月光城の主は強かった。紋章から飛び出す棘鞭を縦横無尽に振るい、複製とはいえ頑丈な神器を次々にへし折っていく。だが、それでも全ての攻撃を撃ち落とすことはできず、迎撃から漏れた薙刀がクリスタルに突き刺さり、中に閉じ込められていた人々を助け出した。
「よくもやってくれたわね……!」
大事な
人間画廊を滅茶苦茶にされた怒りの矛先を、モンティアナは神器の操り手に向ける。時には槍のように、時には矢のように、棘鞭の鋭い先端が獲物を串刺しにせんと迫る。囚えた人間の数は減ったものの、紋章は未だ機能停止には至っていないようだ。
「当りませんよ♪」
しかしバニーガールの詩乃は本物のウサギさながらの変幻な動きで、ぴょんぴょんと戦場を跳ね回って攻撃を躱す。
バニーの紋章の力で強化された跳躍力と敏捷性は、本気で動けば残像を生み出すほど。これに着用者の第六感と心眼が加われば、月光城の主の攻撃とて見切るのは不可能ではなかった。
「ど、どれが本体なの……?」
第二層に浮かぶ赤い月に照らされて、何人にも分身したように見えるバニーガールの姿。それに翻弄されてモンティアナが本体を見失った刹那、詩乃は彼女の懐に駆け込んでいた。軽快かつ艶やかな身のこなしで拳法の構えを取ると、神力を稲妻に変えて拳に纏う。
「神罰です!」
「あぐッ
!!?!」
鍛え上げた功夫と雷を籠めた発勁が撃ち込まれ、モンティアナの身体がくの字に曲がる。打撃の衝撃波が体内に浸透し、内蔵を直に握り潰されるような苦痛をもたらしたのだ。これには彼女も平然としてはいられなかったと見られ――悲鳴とともに歪んだ顔には、一筋の冷や汗が伝っていた。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
月光城の主がこんなところに何の用かしら。ともあれ、この場で討滅させてもらうわね。
あたしが城主の気を引いている間に、愛奴召喚で呼び出したアヤメに人間画廊のクリスタルを壊してもらう。
そう言うのは簡単でも、全力の領主の相手はきついわね。
竜に変身したって、人間画廊のことを考えたら飛べないと思うんだけど?
魔力を吸収されても、メガリス『六合無窮』から力を引き出せば問題なし。
棘鞭は薙刀で絡め取って、そのまま城主に「斬撃波」を伴う「なぎ払い」を仕掛ける。
アヤメ、そっちは順調? おっと、余所見は駄目よ。
どこかに逆鱗でもないかしらね。見つけたら「串刺し」にしてやるのに。
アヤメ、お疲れ様。こいつを倒すのも手伝って。
「月光城の主がこんなところに何の用かしら。ともあれ、この場で討滅させてもらうわね」
第五層からはるばる第二層まで、月光城に籠もり続けてきた城主がどうやって、なぜここに来たのか。疑問は尽きないものの、問い質しても返事はないだろうとは村崎・ゆかり("
紫蘭"/黒鴉遣い・f01658)も分かっていた。目論見が何であれ、成就される前に撃破あるのみだ。
「しつこいわね、猟兵……貴女達こそこんなところまで来て」
対する『モンティアナ・ドランケルハイト』は厭気を隠そうともせず、冷たい眼差しでゆかりを睨みつける。目的を達成するまであと一歩だが、すでに
人間画廊にも無視できない損害が出ており、猟兵を無視できない邪魔者だと彼女も認識しているだろう。まずはその排除に全力を尽くすという意思が、殺気から感じられた。
(頼んだわよ、アヤメ)
城主の敵意が自分に向いているのを感じながら、ゆかりは心の中で恋人の名を呼ぶ。彼女は【愛奴召喚】で呼び出したエルフのクノイチの式神・アヤメに、
人間画廊のクリスタルの破壊を命じていたのだ。式神が任務を果たすまでの時間は、自分が稼ぐ作戦である。
(そう言うのは簡単でも、全力の領主の相手はきついわね)
敵は「月の眼の紋章」の力に加えて、これまでに蒐集した膨大な月の魔力でパワーアップしている。ゆかりが見ている目の前で、モンティアナの姿はみるみるうちに少女から巨大なドラゴンに変化していった。忌まわしくも引きつけられるような神々しさを放つ、かの姿の名を【月蝕竜~モンティアナ~】と呼ぶ。
「喰らい尽くしてあげるわ……!」
月蝕竜モンティアナから放たれる月の引力は、戦場にいる全ての者から魔力を吸い上げる。大地を覆っている血管が干からび、自分も力を吸収されているのがゆかりにも分かった。しかし彼女は笑顔を崩さず、平然とした素振りでその場に立っている。
「竜に変身したって、人間画廊のことを考えたら飛べないと思うんだけど?」
彼女にとって幸いだったのは、引き連れた人間達が敵の力源であり足枷にもなっている事だ。もし、魔力を吸い取りながら竜の翼で戦場を飛び回られたら、こちらに対抗する手段はなかったかもしれない。だが相手はクリスタルと鎖で繋がれたまま、地上から離れることはなかった。
(魔力を吸収されても、メガリス『六合無窮』から力を引き出せば問題なし)
ゆかりが所有する宝石型のメガリスは、所有者に無窮の力を供給する神秘の秘宝だ。とはいえ「月の眼の紋章」の効果で数十倍に強化された月の引力は、引き出した分の魔力まで根こそぎ奪い取らんとする程の勢い。長期戦になれば厳しいが、彼女がそうした不安を表に出すことはない。
「まさか吸収しか能がないってことは無いでしょう? 次の手を見せなさいよ」
「減らず口を……!」
モンティアナが憤怒と共に棘鞭を放てば、ゆかりは薙刀『紫揚羽』でそれを絡め取り、そのまま斬撃波を伴うなぎ払いを仕掛ける。敵が万全の状態ならば弾かれたかもしれないが――紫の軌跡を描いた斬撃は、竜の巨体に傷を付けた。
「アヤメ、そっちは順調?」
「はい!」
ゆかりが城主の気を引いている間に、式神アヤメは忠実に任務を果たしていた。クノイチならではの隠密能力を活かして
人間画廊に忍び寄り、クリスタルを破壊して中にいた人間を助け出す。これによってモンティアナの「月の眼の紋章」の効果は低下し始めていた。
「ッ、またギャラリアを……!」
「おっと、余所見は駄目よ」
異変に気付いたモンティアナは攻撃の矛先を変えようとするが、そうはさせじとゆかりが牽制する。踊るように薙刀を振り回してダメージを刻みつつ(どこかに逆鱗でもないかしらね)と視線を向ける。流石にそんな露骨な弱点は無いかもしれないが、もし見つけたら串刺しにしてやるつもりだ。
「アヤメ、お疲れ様。こいつを倒すのも手伝って」
そろそろクリスタルの破壊も十分だろうと、頃合いを見計らってゆかりはアヤメを呼び戻し。式神と主人だからこそできる連携プレーによって、果敢に月蝕竜を攻め立てていく。鱗の剥がれた柔らかい箇所に、毒を塗ったクナイと薙刀が同時に突き刺されば、敵もたまらず悲鳴を上げた。
「ぎゃぁッ! よ、くも……!」
モンティアナも巨体を揺するように反撃を仕掛けてくるが、その勢いは最初に見た時と比べて弱い。
人間画廊を破壊された事による弱体化は明らかであり、この調子なら紋章の効果が完全に失われるのも時間の問題だろう。そう判断したゆかりは愉快そうに笑いながら、攻撃の手を緩めなかった。
大成功
🔵🔵🔵
カタリナ・エスペランサ
月光城の主……いずれにせよオブリビオン、それも人々を捕えてる悪党だ
駆逐する敵なのは変わらないね
ダガーを騎士剣に《武器改造》し【閃風の庇護者】
《武器に魔法を纏う+破魔+属性攻撃》、
破魔の性質を強化した
金色の雷を宿す斬撃で引力を断ち斬るよ
いつもの《戦闘知識+第六感+見切り》に加え
《存在感+陽動+残像》と《ものを隠す+目立たない+迷彩》の攪乱で敵の攻撃を回避
《時間稼ぎ》は数秒で十分、破魔の斬撃で鎖やクリスタルを破壊して囚われてる人たちを解放しよう
《運搬+救助活動》、装備[一期一会]内の異空間に一時的に匿うのがいいかな
救出できれば敵の攻撃に《早業+怪力+カウンター》を合わせ叩き落とそう
「月光城の主……いずれにせよオブリビオン、それも人々を捕えてる悪党だ」
地下世界の底も底でずっと引き籠もっていた連中が、なぜ今になって第二層に現れたのか。疑問は尽きないものの、カタリナ・エスペランサ(閃風の舞手・f21100)の方針は至極明快だった。元よりここで見逃しあう間柄でもない。
「駆逐する敵なのは変わらないね」
愛用のダガーを騎士剣に改造し、【閃風の庇護者】の構えを取る。まずは
人間画廊に閉じ込められた人間達を救出し、その後で月光城の主を仕留める。「月の眼の紋章」の力は厄介だが、さらに厄介な連中と上層で戦ってきたのだ、尻尾を巻くほどの事でもない。
「邪魔をしないで……!」
怒れる月光城の主こと『モンティアナ・ドランケルハイト』は【月蝕竜~モンティアナ~】を発動、可憐な少女から凶暴なドラゴンに変身して周囲の魔力を吸い上げ始める。紋章の効果で数十倍に強化された月の引力が、戦場にいる全ての者の身にずしりと伸し掛かった。
「邪魔しない訳にもいかないね」
カタリナは騎士剣に金色の雷を宿し、流麗な所作で一閃する。ユーベルコードによって破魔の性質を強化した斬撃は見えざる引力を断ち切り、魔力の吸収を防いだ。継続的な効果を無効にできるのは一時的だが、その時は何度でも斬ればいいだけの事だ。
「そんな小細工で私に勝てるとでも……!」
「おっと、それはどうかな」
モンティアナが棘鞭の追撃を仕掛けてくると、カタリナはいつものように経験と第六感と見切りのセンスを活かして回避行動を取り、さらに残像と迷彩による撹乱を行う。残像の存在感を際立たせて陽動にしつつ、自分は目立たないよう身を隠す作戦だ。
「っ、どこに行ったの……?」
敵がこちらの姿を見失えば作戦成功。時間稼ぎは数秒で十分だ。疾風の如き速さで彼女が向かったのは
人間画廊。
クリスタル本体やモンティアナに繋がる鎖を破魔の斬撃で破壊し、囚われている人達を解放する。一瞬の閃光の後、結晶や金属の砕ける音が戦場に響いた。
「さあ、こっちに」
「は、はいっ!」
救出した人々は「一期一会」のペンダント内部に内包された異空間で一時的に匿う。戦場で、それも生命がまともに生きられる環境ではない第二層に放置するより、こちらのほうが安全だろう。人々はまだ状況を理解できないものの、言われた指示には素直に従った。
「よくも……ッ!」
またしてもエネルギー源を失った「月の眼の紋章」は弱まり、焦ったモンティアナは牙を剥いて襲い掛かってくる。
しかし戦闘中の焦りは隙を生むものだ。カタリナはすっと騎士剣を構え直すと、敵の攻撃にカウンターを合わせる。
「残念だったね!」
「ぎゃうッ!!」
閃風と稲妻の斬撃に叩き落されたモンティアナは、悲鳴を上げて元の姿に戻る。地べたに這いつくばった少女の衣服は鮮血に塗れ、月光城の主たる威厳はどこにも感じられない。いよいよ窮地に陥った彼女に逆転の芽はあるのか――。
大成功
🔵🔵🔵
ブラミエ・トゥカーズ
飲み放題と言いたい所であるがそうも言っておれぬか。
人を硝子に閉じ込め鑑賞するとは良い趣味をしておるな。
される側は屈辱ではあるが。
※顕微鏡と試験管とプレパラート的な意味で
今の余では貴公は殺しきれぬらしいし、精々嫌がらせをしてやろう。
霧となり物理攻撃を無効化しつつ地面の血管も含めて戦場全体から吸血、感染
上空から水晶からの解放を狙う
必要に応じて実体化
ただのウイルスなので魔力砲で普通に消し飛ぶ
但し数は多く分裂、変異速度も早い
地面の血管にも感染し、地面を狙った魔力砲も表面にいることで必ず命中するので外れない
貴公の強化はどこまでであるかな?
代謝も強化されていれば病の進行もそれに比例する
「飲み放題と言いたい所であるがそうも言っておれぬか」
血管に覆われた第二層の大地は、ブラミエ・トゥカーズ(《妖怪》ヴァンパイア・f27968)から見れば幾ら吸っても尽きない食料庫のような光景だ。聞けばこの階層には、この世界でこれまでに流された全ての血液が集まるそうだが――今はその件は重要ではない。
「人を硝子に閉じ込め鑑賞するとは良い趣味をしておるな。される側は屈辱ではあるが」
伝承から生まれた吸血鬼、またの名を転移性血球腫瘍ウイルスともいうブラミエとしては、月光城の主が引き連れる
人間画廊に(顕微鏡と試験管とプレパラート的な意味で)既視感を抱いた。向こうからすれば趣味と実益を兼ねたコレクションなのだろうが、壊す側としてはそんなものに興味はない。
「今の余では貴公は殺しきれぬらしいし、精々嫌がらせをしてやろう」
「これ以上、何をするつもり……!」
ここまで散々猟兵の妨害を受けてきた『モンティアナ・ドランケルハイト』は、問答無用とばかりに紋章から棘鞭を放つ。だが、それが命中する寸前でブラミエは【災厄伝承・赤き死の夜宴】を発動。肉体を霧に変え、拡散することで攻撃から逃れた。
「渇き飢え果て踊り狂え。知を棄て、地に這い、血を捧げよ。夜の主たる余のために」
この霧にはかつて一晩で町村を滅ぼし尽くしたという、恐ろしい赤死病のウイルスが含まれている。血液を媒介に伝染するこの病は、第二層の地面に張り巡らされた血管にも感染し、戦場全体から吸血を行う。無論、その対象は月光城の主も含まれていた。
「吸血鬼……? こんなものっ!」
ブラミエの正体を知ったモンティアナは、霧を振り払うように【月光花原~レインワルティア~】を連射し始めた。
物理攻撃ならほぼ無効にできるとはいえ、本質はただのウイルスに過ぎないため、月の魔力砲を受ければ普通に消し飛ぶ。ただし数は膨大で分裂や変異速度も早く、根絶するとなれば大変な労力を要するのだが。
「さて、貴公一人でどうにかできるものか」
故郷の地球でさえ彼女を"倒す"には衛生観念の発達と医療の進歩、数多の人間の不断の研究と歳月が必要だった。
血管の中で増殖する病としてのブラミエを、この第二層で根治するのは至難の業だ。「月の眼の紋章」が与える圧倒的な暴力があっても、その事実は動かない。
「貴公の強化はどこまでであるかな?」
「ぐ、うっ……体が、重い……!」
代謝も紋章で強化されていれば、感染した病の進行もそれに比例する。ブラミエの"嫌がらせ"はじりじりとモンティアナの肉体を蝕みつつあった。このままでは病の霧に戦場を支配されてしまうと感じた彼女は、地面に向かって魔力砲を撃ち込み、月光花を咲かせて自らの領域を確保しようとするが――。
「させんよ」
ブラミエはあえて地表面にウイルスを集めて砲撃を受けることで、月光花の開花を阻止する。飢餓、狂乱、そして死に至る伝染病は、とうに戦場に根を張っている。形振り構わずに逃げ出したほうが、まだ生存確率は高かっただろう。
「残るは、その水晶であるな」
月光城の主が苦悶するさまを観賞しながら、ブラミエは上空に霧の一部を集めて実体化し、クリスタルを破壊する。
人間画廊より解放された人間の数は、これで全体の五割を越えた。「月の眼の紋章」は完全に効果を失い、モンティアナの戦闘力は本来のレベルに戻る。こうなれば、もはや彼女の勝算はゼロだった。
「よくも……ごほっ、げほっ! よく、も……がはっ!」
止まらない咳と発熱、全身の痛みや倦怠感などの諸症状に蝕まれながら、力なく血管の大地に伏せるモンティアナ。
度重なる戦闘のダメージを強化で誤魔化せなくなった体は、誰の目から見ても明らかなほど衰弱しきっており、後はただ死に至るのを待つのみであった――。
大成功
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第2章 ボス戦
『月食狼マーナガルム』
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POW : 月の狼
【あらゆる干渉】を遮断する【月女神喰いの狼】に変身する。変身後の強さは自身の持つ【月光の魔力】に比例し、[月光の魔力]が損なわれると急速に弱体化する。
SPD : 月を喰らう
レベルm半径内を【血塗られた空】と【精気を啜る淀んだ空気】で覆い、範囲内のあらゆる物質を【満月の魔力】で加速、もしくは【月食の魔力】で減速できる。
WIZ : 月は欠ける
着弾点からレベルm半径内を爆破する【三日月の魔力】と大地を抉る【新月の魔力】を放つ。着弾後、範囲内に【喰らった魂から生み出した人狼の眷属たち】が現れ継続ダメージを与える。
👑11
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「あと一歩だったのに……こんな所で……」
第二層に現れた月光城の主、モンティアナ・ドランケルハイトは猟兵達に討たれ、今まさに命尽きようとしていた。
力の証であった「月の眼の紋章」も、
人間画廊の人間を解放されたことで力を失い。全ての勝機を失った彼女の表情は無念に満ちていた。
「だけど……それでも私は、五卿六眼の欠落を求める……!」
モンティアナが最期の力を振り絞って声を上げると、それに応えるかのように異変が起きた。
第二層に浮かぶ六つの赤い月。そのひとつから赤い光が放たれ、彼女の体を照らしたのだ。
「あ……あぁぁ、ああ……!」
月光に包まれた少女の体はみるみるうちに白銀の体毛に覆われ、口は裂け、眼は上空の月と同じように爛々と輝く。
あの致命傷から再生した――いや、これは「生まれ変わった」と言ったほうが近い。何が起こったのかは不明だが、彼女の肉体は今、急激に変化しつつある。
「あ、ぁ、ぅ……ウオオォォォォォンッ!!!」
それは、もはや『モンティアナ・ドランケルハイト』ではなかった。
かの者の名は『月食狼マーナガルム』。天と空を血で染め上げ、光を奪う、恐るべき魔狼。
いわゆる上層の「闇の種族」と同等の力を持つ存在へと、月光城の主は変生したのだ。
上層での戦いを経験したことのある猟兵なら、その強大さは知っているだろう。
だが急激な強化の代償だろうか、今のマーナガルムは力の制御がうまくいかない様子だった。
月の如く爛々と輝く身体部位をあちこちに生やしながらも、それらを持て余しているように見える。
今ならまだ、ここでもう一度奴を倒すことで、完全に滅ぼすことができるだろう。
逆に完全な状態になってしまったら、闇の種族を撃破するのは極めて困難になる。
連戦による疲労はあっても、今ここでやらなければならないのだ。
月光を操る魔女から月光を喰らう狼へと変生を遂げた月光城の主。
果たしてこれが彼女の望みだったのか――答えを知る術は失われ、ただ倒すべき獣だけが目の前に立ちはだかる。
ホロウ・リュヌ
※アドリブ大歓迎、自己紹介や秘密設定も見てくれると嬉しいです。
ほう、お互い月に関係するか。
で、あるならば加減はいらないか。
ワンちゃんの能力は要するに「範囲内のあらゆる物質のスピード操作」だろう?厄介ではあるが、私にとっては問題ないな。
超越月夜を発動。因果律崩壊能力で代償の毒を無かったことにする。
そして望むがまま超常現象を引き出し改竄する能力で、血塗られた空と精気を啜る淀んだ空気を無害なそよ風に変えつつ、ワンちゃんの体には【いつの間にか、弱点になる全ての箇所に無数の刀が突き刺さってた】のです。
速度も過程もないのですよ。
あぁ、それと私に攻撃しても因果律崩壊能力で無かったことにしますので無駄ですよ。
「ほう、お互い月に関係するか。で、あるならば加減はいらないか」
赤い月に照らされて変貌を遂げた、月の如き光を放つ獣――『月食獣マーナガルム』の威容を目の当たりにして、笑みを浮かべたのはホロウ・リュヌ(純粋一途で空虚な月・f40766)。漆黒を纏い月夜を翔ける自分と、月光を喰らう獣。力比べの相手としては不足あるまい。
「ウォォォォォンッ!」
マーナガルムは【月を喰らう】によって自身の周辺を血塗られた空と淀んだ空気で覆い、血管の大地から精気を啜り取る。少しでも完全体になるのを早めようとしているようだ。阻止しようと迂闊に近付けば月食の魔力で速度を抑えられながら、満月の魔力で加速した敵と戦う羽目になる。
「ワンちゃんの能力は要するに『範囲内のあらゆる物質のスピード操作』だろう? 厄介ではあるが、私にとっては問題ないな」
しかしホロウは臆する事なく【超越月夜】を発動。限界を越え、因果を破壊し、超越の域に至りし異能を身に宿し、月狼の領域に足を踏み入れる。その瞬間、周囲に立ち込める淀んだ空気は無害なそよ風に、血塗られた空は元の月夜に戻った。
「ガルルッ……?」
実に奇妙なその現象に、マーナガルムも目を丸くする。このユーベルコードを発動中のホロウは望むがまま超常現象を引き出し、現実を改竄する能力を持つ。これに過程は存在せず、気が付けばそうなっていたとしか言いようがない。
「速度も過程もないのですよ」
さらにホロウがマーナガルムに視線を向けると、かの魔狼の全身には「いつの間にか」、弱点になる全ての箇所に無数の剣が突き刺さって「いた」。思考を行った直後には全てが完了しているこの能力は、攻撃に用いれば回避も防御も不可能な必中の一撃と化す。
「グ、オオオオンッ?!」
限りなく万能に近い無法の力を受け、絶叫するマーナガルム。まだ彼女に人語を喋る口があれば、理不尽だと喚いていたかもしれない。苦痛と怒りのままにそれはユーベルコードを再発動し、自身を再加速しながら襲い掛かってくる。
「あぁ、それと私に攻撃しても因果律崩壊能力で無かったことにしますので……」
無駄ですよ、と言おうとした所で、ホロウはすでに自身の喉笛に迫った魔狼の牙を見て、咄嗟に回避行動を取った。
今の攻撃は避けなければ恐らく即死だった。自発的に"望むがまま"因果と現象を操る能力は、言い換えれば発動速度が思考速度に依存する。考える暇もない速さで殺されて、思考が止まっても能力が発動するかは彼女も知らない。
「思ったよりはやりますね」
「ガルルルルルルゥッ!!」
確かに弱点を突いたはずなのに、魔狼の動きは鈍る様子がない。これが不完全とはいえ五卿六眼の「欠落」を求めた者の力か。慢心を戒めてホロウは改めて【超越月夜】を用い、彼奴の月光が大気を蝕んでいくのを防ぐのだった――。
大成功
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オルフェウス・シフウミヤ
※アドリブ大歓迎
あらゆる物質の速度操作ですか、普通にいけば私の動きが当たらなく、自分は加速して、と。確かに厄介ではありますが、まぁいいでしょう。それが「法則」なら逆に利用させてもらいます。
超越雷天使を発動、全ての因果律、事象、法則を改竄し操る能力であらゆる物質の速度操作という法則を改竄し、逆に私の攻撃や移動速度は加速し、貴方の速度は零に近くなるまで停滞させるまでですよ。
レベル×50本の黒雷刀を召喚し操る能力で因果律操作で黒雷刀で当たったところが無かったことにしてバラバラになるまで斬り刻みます。刀の数も多いですし加速してるので避けようもないでしょう。
ではいきますよ?覚悟はいいですね?
死になさい。
「ウォォォォォォンッ!」
赤い月が照らす血管の大地に、轟く『月食狼マーナガルム』の咆哮。【月を喰らう】かの獣の魔力は血塗られた空と淀んだ空気で周囲を染め上げ、その中にいるあらゆる物質の速度を支配する。この異様な光景を冷静に観察するのは、オルフェウス・シフウミヤ(
冥府の吟遊詩人の系譜・f40711)であった。
「あらゆる物質の速度操作ですか、普通にいけば私の動きが当たらなく、自分は加速して、と」
不完全ながら闇の種族と同等の存在と化し、「月の眼の紋章」が健在だった先刻と比べて基礎能力は大幅に引き上げられている。その上で加減速の差を付けられては、いかにスピード自慢の彼女でも確実に追いつける自信はなかった。
「確かに厄介ではありますが、まぁいいでしょう。それが『法則』なら逆に利用させてもらいます」
そこでオルフェウスは【超越雷天使】を発動。全ての因果律、事象、法則を改竄し操るユーベルコードの力で、相手のユーベルコードの法則に干渉する。減速をもたらす月食の魔力は、逆にこちらの攻撃・移動速度を加速するように。そして加速をもたらす満月の魔力は、相手の速度を零付近まで停滞させるように。
「ウ……オォ……ォ……?」
異変に気が付いた時にはもう、マーナガルムの身体は思うように動かなくなっていた。弱まる月光にかわって戦場を照らすのは、自然の摂理に反した黒い稲妻――オルフェウスの周囲にはいつの間にか、数千本を数える黒雷刀が召喚されていた。
「あぁ……、何故私は貴女に追いつけない。私は貴女なのに、悲しみと覚悟と決意を胸に貴女の超越の領域に、冥奏を奏でながら足を踏み入れよう」
クローンである自身のオリジナルへの憧憬と執着を唄ったこの【超越雷天使】は、刀に触れた全てを根本から断つ。
本数も多い上に加速しているため避けようもないだろう。自発的に敵がユーベルコードを解除すればまだマシかもしれないが、その隙は与えない。
「ではいきますよ? 覚悟はいいですね?」
「グ……グル……ル……ッ!」
合図と共にオルフェウスは全ての黒雷刀を一斉に解き放ち、全方位から敵に襲い掛からせる。稲妻を超えるスピードに達した包囲攻撃を、それでもマーナガルムは全力で回避するが――数千本の斬撃を全て躱し切ることなど、到底無理な話だった。
「死になさい」
「ギャオ……ォ……ォォ
……!!」
月光の如く輝く異形の身体部位に黒雷刀が当たった瞬間、その部位は最初から無かったようにバラバラに刻まれる。
容赦はなく、慈悲もなく、敵の生命が尽きるまで斬り刻むつもりでオルフェウスは攻撃の手を緩めず。縛めと化した月光に囚われたマーナガルムの絶叫は、ひどく間延びしたものであった。
大成功
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エクティア・クロンユナイールゥ
※アドリブ大歓迎、UCの詠唱も書いてくれると嬉しいです。
あらあら、ずいぶん大きなワンちゃんね。そして、能力は…物質の速度操作?ではこれね。
覚悟することね、何せこれは超越者達の聖戦をイメージして創ったから加減がきかないの。
では、いくわね?
代償の呪縛は汎ゆる状態異常を常に無効化する無効化能力で踏み倒し。
そして極太の輝く蒼雷光線を放つ列車砲と12600個のレーザービットを召喚。光線とレーザーは物質じゃ無いから遅くならないわよ?そして貴方が速くなろうと全弾発射レーザーの数の暴力でその脚を攻撃し機動力を奪ってから列車砲の蒼雷光線で撃ち抜かせてもらうわね。
これ以上犠牲者は出させない、これが今の私の想いよ。
「あらあら、ずいぶん大きなワンちゃんね」
赤い月の光を浴びて再誕した元・月光城の主――『月食狼マーナガルム』の巨体を見上げて、エクティア・クロンユナイールゥ(
不死身の蒼煌雷霆・f39247)は感嘆したように呟く。彼奴が第二層に来てまで求めた力がこの姿だと言うのなら、虚仮威しではないだろう。
「そして、能力は……物質の速度操作? ではこれね」
敵の周囲がじりじりと血塗られた空と淀んだ空気に覆われていくのを見ると、エクティアは【超越聖戦争】を発動。
汎ゆる状態異常の無効化能力を得て、月食の魔力による減速とユーベルコード自体の代償を打ち消し。さらに巨大な列車砲と大量のレーザービットを召喚する。
「装填、チャージ、ロックオン、リミッターカット、オーバードライブ。愛するものを護るため、救うため、超越の力で悪を討て、全て撃ち貫け」
エクrヒアの詠唱と共に全てのビットと大砲が蒼い光を放ち、マーナガルムに照準を合わせる。その数はゆうに万を超え、赤く染まった空を再び塗り替えんばかりの光景だ。純粋な物量という面では、間違いなく彼女のユーベルコードの中でもトップクラスの切り札。
「覚悟することね、何せこれは超越者達の聖戦をイメージして創ったから加減がきかないの」
「ガルルルッ……!」
これにはマーナガルムも警戒せざるを得なかったか、満月の魔力で自身を加速させて回避運動を取る。そのスピードと機動力は巨体にも関わらず驚異的。しかし一度ロックオン完了すれば、ビット達はそう簡単に目標を逃しはしない。
「では、いくわね? 光線とレーザーは物質じゃ無いから遅くならないわよ?」
エクティアが号令を発すると、12600個のビットから高出力レーザーが一斉発射され、月食の魔力でも減速しない圧倒的な数の暴力が、マーナガルムの四肢に集中攻撃を浴びせる。本命となる列車砲を当てるために、まずは敵の機動力を奪うつもりか。
「ガルルッ……グガァッ!!」
マーナガルムは全速力でレーザーの雨の中を駆け抜けるが、やはり全弾回避とまではいかない。脚部へのダメージが積み重なれば、いくら頑強なオブリビオンでも減速せざるを得ないだろう。鮮血の足跡が点々と大地に滴り、血管に吸い込まれていく。
「これ以上犠牲者は出させない、これが今の私の想いよ」
もし、この月光城の主が闇の種族として完全体になれば、再び
人間画廊のような被害者を生み出すだろう。完全撃破のチャンスは今この時をおいて他にないと分かっているからこそ、エクティアは全力を振り絞る。ビットの全弾発射が終わり、蓄積されたダメージが敵の足を止める、その瞬間を狙って――。
「撃ち抜かせてもらうわね」
「グ……ガアアアッ!!!」
発射の瞬間、視界が真っ青に染まるほどの閃光が戦場を照らす。列車砲より放たれた極太の蒼雷光線は、狙い過たずマーナガルムを捉えた。真白き胴体に穿たれた風穴から血飛沫が吹き出し、地を震わすほどの絶叫が轟く。復活から間を置かずして、月光城の主は再び劣勢に立たされつつあった。
大成功
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村崎・ゆかり
詩乃(f17458)と
やっぱり生まれ変わるか。あの月は一体何なのよ!
文句を言っても始まらないわね。目の前の敵と相対し討滅する。それだけ。
前衛は頼むわね、詩乃。
「全力魔法」「結界術」酸の「属性攻撃」「範囲攻撃」「仙術」で紅水陣!
現れる人狼の眷属ごと溶かし尽くす。
月食狼の魔力攻撃は「オーラ防御」と封魔装甲で対抗しつつ、致命的な攻撃を避けるために足を止めず動き回る。
絶陣は、一度展開したら「継戦能力」で維持し続ける必要がある。広範囲を覆うから、臨機応変に動かすのは無理。
その分、中にいる相手には容赦が無い。あたしの一番の手札よ。
詩乃、そっちは大丈夫? あたしの絶陣に踏み込まないようにね。
大町・詩乃
ゆかりさん(f01658)と
引き続きバニーの紋章を使って変身中です。
前衛はお任せ下さい、ゆかりさん。
《慈眼乃光》で雨や霧は詩乃を避けるようにして、結界術・高速詠唱による自身周囲への防御結界を張り、オーラ防御も纏って準備万端。
では行きますよ!
《慈眼乃光》はマーナガルムや眷属にも有効なので有利な筈です。
空中浮遊を併用したダッシュ・ジャンプ・軽業・空中戦・残像による軽快かつ多彩な動きで相手側を翻弄し、攻撃を見切って回避します。
眷属達は神罰・風の属性攻撃・高速詠唱・全力魔法・範囲攻撃による旋風で斬ります。
マーナガルムには先程同様に神罰・雷の属性攻撃を籠めた発勁(功夫・衝撃波・貫通攻撃)を撃ち込みます!
「やっぱり生まれ変わるか。あの月は一体何なのよ!」
以前にも第二層で月光城の主に関する依頼を受けたことのあるゆかりは、天に浮かぶ六つの赤い月に向かって悪態を吐く。城主どもが続々とこの階層に集まっているのも、不可解な蘇生を遂げるのも、あの月と無関係でないのは間違いあるまい。
「文句を言っても始まらないわね。目の前の敵と相対し討滅する。それだけ」
「はい。決着を付けましょう」
彼女と共に『月食狼マーナガルム』と対峙するのは詩乃。引き続きバニーの紋章を装着して変身したまま、臨戦態勢を維持している。土壇場で復活したとはいえ敵の状態は不完全、完全体になる前に今度こそ引導を渡してやるまでだ。
「ウォォォォォォーーーーンッ!」
赤い月に向かってマーナガルムが遠吠えすると、膨大な規模の魔力が収束されていく。「モンティアナ」だった頃と同じように、この魔狼も月の力を操るらしい。大いなる破壊をもたらす【月は欠ける】一撃が、二人の猟兵に向かって放たれた。
「
前衛は頼むわね、詩乃」
「お任せ下さい、ゆかりさん」
詩乃は既に自身周辺に防御結界を張り、神気のオーラも纏って準備万端。彼女に前衛を任せてゆかりは後退しつつ、封魔装甲『アルマドゥラ』と霊力のオーラで敵の攻撃に備える。直後、血管の大地に着弾した月の魔力は大規模な爆発を引き起こし、地面を大きく抉った。
「やるじゃないの……!」
「直撃したらおしまいですね」
これでまだ不完全体とは思えないほどの破壊力を目にして、ゆかりと詩乃の表情に緊張が走る。さらにクレーター状に穿たれた大地からは淡い月光に包まれた人狼の群れがわらわらと現れ、二人に殺気を向ける。これらはマーナガルムがかつて喰らった魂から生み出した眷属たちだ。
「オマケが湧いてきたわね。こっちも反撃するわよ」
「では行きますよ!」
「「ガルルルルッ!」」
襲い掛かる人狼の眷属に詩乃は臆さず立ち向かい、空中浮遊を併用した軽快かつ多彩な動きで翻弄する。紋章の力で強化されたダッシュ力とジャンプ力は残像を生じさせ、軽業めいた身のこなしは敵の攻撃を寄せ付けない。そうやって注意を引きつけて、後衛のゆかりのために時間を稼ぐのが前衛の仕事だ。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。魂魄までも溶かし尽くす赤き世界よ、我が呼びかけに応え、世界を真紅に塗り替えよ。疾っ!」
詩乃の奮闘に応えるように、ゆかりは【紅水陣】を発動。それまで晴れていた夜空がにわかに曇りだし、血のように真っ赤な雨が戦場に降り注ぐ。金鰲島十天君が一人、王天君の絶陣を再現したこの雨は、効果範囲内にいる全てを溶かし尽くす恐るべき術式だ。
「「グ、ギャオオオオオッ?!」」
雨に打たれた人狼どもの体が、ジュッと音を立てて溶けていく。触れただけで骨まで溶かすほどの強酸性の水滴だ。
さらに雨は戦場を赤い靄で覆い、その中にいるあらゆるものを腐蝕させる。マーナガルム本体はまだしも、眷属程度であればあっという間に溶かし尽くされてしまうだろう。
「絶陣は、一度展開したら維持し続ける必要がある。広範囲を覆うから、臨機応変に動かすのは無理。その分、中にいる相手には容赦が無い。あたしの一番の手札よ」
「ガルルッ……グオォォォ!!」
月の威光は陰り、赤い雨と靄が戦場を支配する。絶陣の主たるゆかりは得意げな顔で、苦悶するマーナガルムと眷属どもを見ていた。この環境下ではいくら闇の種族と言えども本来の力は発揮できまい。脱出するにも範囲が広すぎる。
「詩乃、そっちは大丈夫? あたしの絶陣に踏み込まないようにね」
「心配はいりません、ちゃんと対処してますから」
同じ戦場にいる以上、味方である詩乃も紅水陣の影響は受ける。しかし彼女は【慈眼乃光】により周囲の自然現象を自分の味方につけていた。強酸の雨や靄は彼女を避けるようにして逸れ、肌に当たるのは数滴ほど。事前に防御の備えを万全にしていたのは、これを防ぐためでもあったのだ。
「【慈眼乃光】はマーナガルムや眷属にも有効なので有利な筈です」
暖かく慈しむような視線で詩乃に見つめられると、敵の動きが鈍る。生物だろうと無機物だろうと、彼女のユーベルコードに魅了された者は無意識に友好的な行動を取ってしまうのだ。抵抗は可能だが、それでも攻撃に若干の躊躇いが生まれるのは確実だ。
「どいて下さい!」
「ギャウンッ?!」
ここぞとばかりに詩乃は神罰の力を振るい、旋風の刃で眷属どもを斬り裂く。闇も雨靄もまとめて吹き飛ばすような一陣の風が、マーナガルムの元へと続く道を作り上げた。赤い雨に打たれ続けたその巨躯が、融けて傷ついている様がはっきりと見える。
「ウ、ウオオォォォォッ!」
危機を感じたマーナガルムは闇雲に【月は欠ける】を乱射する。この煩わしい雨を降らせている術者さえ殺せれば、まだ逆転の機会はあると考えたのだろう。だが、ゆかりは敵がそう来ることを察していたからこそ、陣を維持しながらも足を止めずに動き回り、致命的な攻撃だけは受けないよう立ち回っていた。
「いつまでも避け続けるのは無理ね。あとは頼むわ、詩乃」
「はい!」
吹き荒れる月光の爆発をかい潜りながら、敵の懐に飛び込むのはバニーガール姿の女神。先程モンティアナに打ち込んだものと同じ稲妻の輝きがその拳には宿っている。【紅水陣】と【慈眼乃光】、2つのユーベルコードで弱体化を施された今ならば、どう足掻いても避けられまい。
「祓い清め致します!」
「グギャオオォォッ
!!?!」
素肌が剥き出しとなった胴体に撃ち込まれた発勁が、マーナガルムの骨の髄まで神罰の稲妻と衝撃波を浸透させる。
たまらず絶叫しながら魔狼はどうと地面に倒れ、ぴくぴくと四肢を痙攣させる。まだ息の根はあるようだが、相当のダメージを負ったのは確かだ。一度は復活した月光上の主に、再び死の足音が聞こえ始める――。
大成功
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カタリナ・エスペランサ
オブリビオンに利するならあの月もいずれ墜とさないとって事かな
今はあの月自体がオブリビオンって感じはしないし、
何かの能力や施設の類ならコントロールしてる輩が居るんだろうけど……
まぁいい、今は目の前の敵から仕留めるとしよう
【失楽の呪姫】発動し魔神の魂の《封印を解く》事で《ドーピング》
振り撒く劫火は《属性攻撃+神罰+焼却+ハッキング+蹂躙+地形破壊》
戦場ごと敵UCの影響を焼き尽くし塗り潰すと同時、
アタシの姿を《ものを隠す+目立たない+迷彩》の要領で紛れさせる為の《陽動》でもある
全方位から迫る劫火で敵を誘導して作った隙を《見切り》
死角から《属性攻撃+神罰+全力魔法+暗殺+砲撃》の黒雷に呑み込むとしよう
「オブリビオンに利するならあの月もいずれ墜とさないとって事かな」
そう呟きながらカタリナが見上げる先には、六つの赤い月がある。真っ暗な夜空から煌々と地上を照らすそれらは、まるで睥睨する巨大な眼球のよう。地下世界にあんなものが見える時点で異常だが、それがオブリビオンに力を与えたとなれば無視はできまい。
「今はあの月自体がオブリビオンって感じはしないし、何かの能力や施設の類ならコントロールしてる輩が居るんだろうけど……まぁいい、今は目の前の敵から仕留めるとしよう」
赤い月の光を浴びて復活したモンティアナ、改め『月食狼マーナガルム』は、闇の種族と同等と力を手にしている。
不完全な今のうちに叩かなければ、将来この世界を脅かす大きな敵になるだろう。考察を進めるのはその後でいい。
「ガルルルルルッ……!」
唸り声を上げて【月を喰らう】の力を発動したマーナガルムは、周辺を血塗られた空と淀んだ空気で塗り替え、戦闘で失った精気を啜り取らんとする。満月と月光の魔力で満たされたこの領域には物質の加減速を操る効果もあり、いくらスピードに自信のあるカタリナでも無策で挑むのは危険すぎた。
「仕方ないなぁ――アタシの本気、ちょっとだけ見せてあげる」
そこで彼女は【失楽の呪姫】を発動。自身とひとつになった魔神の魂の封印を解き、その魔力でドーピングを行う。
全身から黒い雷が迸り、翼を羽ばたかせれば劫火の欠片が舞い散る。このユーベルコードを解放した瞬間から、彼女はヒトではなく神の化身となったのだ。
「さぁ、始めようか」
カタリナの翼から振り撒かれた劫火は、戦場ごと敵のユーベルコードの影響を焼き尽くし、塗り潰す。かつて魔神が神界より盗み出したこの炎は、ラグナロクなどの伝承でも著名な「世界を滅ぼす火」と同種のもの。その熱気は終焉を招き、世の理さえ改竄するのだ。
「グ、グルルッ
……?!」
炎上する大地にマーナガルムが動揺した直後、カタリナは飛び立つ。劫火そのものと熱が生み出す陽炎は、彼女の姿を隠すための迷彩であり、敵の視界から紛れるための陽動でもあった。不完全とはいえ絶大な力を得た月光城の主と、馬鹿正直に正面切って戦う義理もないのだから。
「ガルルッ!!」
消えた獲物の姿を探す前に、マーナガルムは全方位から迫る劫火に対処しなければならなかった。この炎に触れれば自分でもただでは済まないと本能的に分かるのか、巨体に見合わぬ俊敏な動きで火の粉すら躱す。だが、火の手の動きが彼を誘導している事にまでは気付いていない。
「そこだ」
劫火で作った隙を突いて、カタリナは死角から黒雷を放つ。こちらは魔神が神界を追放される際の戦いで主神達から奪い取った権能であり、あらゆる守護を貫く最強の矛だ。戦場全体に広げた劫火とは対照的に、槍の如く限界まで収束させて撃ち出す――。
「グガアアアアァッ!?」
闇よりも暗い漆黒の稲妻に呑み込まれたマーナガルムが、天を仰ぎ絶叫する。月光の如く輝いていた白銀の毛並みは焼け爛れ、血と肉の焦げる異臭が漂う。その傷つきようは彼奴が強大なれども不死不滅ではないことの証でもあった。
カタリナはにやりと口元に笑みを浮かべながら、かの魔狼が完全に動きを止めるまで、手を緩めず攻撃を行う――。
大成功
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アウロラニア・ミーマメイズ
アドリブ歓迎
五卿六眼の欠落
求めたのは力か簒奪か、或いは現状維持か、使い潰しも口封じも自在では堪らないのでしょうが
月食む大狼よ
これよりあなたを討ちます
彼岸へ赴くその前に、我が手の月光で魂を灼かれ、無垢なる輝きを取り戻していきなさい
[天骸]を纏い、[Aegis]で環境に適応し、【天炯の施せし瞭全たる裁き】を行使
敵を見透かす[心眼]と、[光宵]を宿す神域の戦技をもって戦います
まずは巧みに[存在感]を操り、構えのみで動きの起こりを錯覚させ、静止状態で減速を空撃ちさせ
「いたずらに恐怖を長引かせはしません。 これで終わりです」
その隙に[Darkstar]の[推力移動]で接近、大顎の下に推力を移動させ、巨体をひっくり返し[体勢をくずす]
続けて[Zenith]の重力制圧による[重量攻撃]を推力に重ねて叩き付け、地面に磔に
晒された胸部を二振りの[Blue Moon]の[貫通攻撃]で貫き、罪業灼き祓う[神罰]の威力で魂を体内から[焼却]し、彼女を冥府へ送ります
奪うことなく、欠けることなく、安らかに眠りなさい
「五卿六眼の欠落。求めたのは力か簒奪か、或いは現状維持か、使い潰しも口封じも自在では堪らないのでしょうが」
復活を遂げたモンティアナ改め『月食狼マーナガルム』を見上げて、アウロラニアはぽつりと呟く。ヒトの言葉さえ失ったこの有様では、もはや事の真相を語らせるすべは失われた。今自分達にできることは、彼奴が完全体となる前に引導を渡すことだけだ。
「月食む大狼よ、これよりあなたを討ちます。彼岸へ赴くその前に、我が手の月光で魂を灼かれ、無垢なる輝きを取り戻していきなさい」
「ガルルルルルッ!!」
女神の宣告に魔狼は唸り声で応え、牙を剥き出しにして爪で地面を掻く。その周囲は【月を喰らう】淀んだ空気に侵され、空は血塗られた赤に染まっていく。たとえ神であろうと物質的に顕現した存在ならば、自在に加減速を操ることのできるユーベルコードの領域だ。
「ひれ伏しなさい。 神が裁きを与えようと言うのですから」
これに対抗してアウロラニアは【天炯の施せし瞭全たる裁き】を発動。身に纏った
天骸のコートと[
Aegis]の権能で環境に適応し、減速の影響を和らげたうえで身構える。至高の域に達した彼女の戦技は「
光宵」と呼ばれる神性の煌めきを宿し、その瞳は心眼とともに敵の動向を見透かす。
「グルルッ!!」
マーナガルムは彼女の構えに合わせて月食の魔力を放ち、仕掛けのタイミングを遅らせようとしたが――これは彼女の巧みなフェイントだった。存在感を操ることで、構えのみで動きの起こりを錯覚させる達人の技。実際には静止したままなのに、魔狼は減速を空撃ちしてしまった。
「いたずらに恐怖を長引かせはしません。 これで終わりです」
その隙にアウロラニアは瞳を桃色に輝かせて[
Darkstar]を起動、モンティアナとの戦いでも披露した爆発的推進力によってマーナガルムに急接近する。そのまま相手の大顎の下に推力を移動させ、片手を添えてすくい上げるように力を込めれば――。
「グオッ?!」
ゆうに数倍はある巨体がひっくり返り、どうと音を立てて体勢が崩れる。驚くマーナガルムが立ち上がる前に、続けて[
Zenith]の権能を発動。かつんと靴音を鳴らして周囲の重力を制圧すると、増大した重量を推力に重ねて叩きつける。それは鉄槌の如く強烈なひと蹴りとなって、敵を大地に磔にした。
「ガオオオオオッ!?」
強制的に寝転がらされたマーナガルムの体躯。無防備に晒された胸部目掛けて、突き立てられるのは二振りの大剣。
煌々と発光する[
Blue Moon]の刃が、白銀の巨体を深々と貫いた。絶叫し悶え苦しむ魔狼を、アウロラニアは静かな眼差しで見下ろす。
「罪業灼き祓う神罰をここに」
シベイ・クリスタルを通じて膨大なエネルギーをプラズマに変換した[Blue Moon]は、星天統べる女神の叡智と神威の具現である。その熱量は魂を体内から焼却し、あらゆる罪と穢れを祓い、冥府へと送る。これは断罪であり慈悲だ。
「奪うことなく、欠けることなく、安らかに眠りなさい」
二度目の復活はないとばかりに、容赦のない攻撃を加えるアウロラニア。だがそこに怒りや私怨の感情はなかった。
現世を彷徨えるオブリビオンを討伐する、これも神の務めなれば。不完全なる闇の種族から月光の輝きは薄れ、体躯から生気は失われつつあった――。
大成功
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ブラミエ・トゥカーズ
辿り着いた先が、その様とはな。
その様にどれだけ力があろうともな。
知を棄て、地に這うならそれは只の獣であるな。
貴公が人の形をしていたのなら、余も吸血鬼をやってやっても良かったがな?
言葉の通じぬ獣相手に今の余は相応しく無かろう?
だから、余も同じように堕ちてやろうではないか。
UC使用&オーバーロード
真の姿
手枷足枷をした中世村娘の形に目視できるまで凝縮した転移性血球腫瘍ウイルスの集合体
てめぇが月の恵みを喰らうなら、わしはこの大地全ての恵みを喰らって相手をしてやるよ。
こっちは食い放題だがな?
1章時点で感染したことによる細胞単位での同化
自身への干渉は可能と想定
今のてめぇには確かに外からは何もできねぇ。
だがな?わしらはもうてめぇの中にいるんだよ。
わしらは誰かに寄り添わねぇと生きていけないか弱い生き物なんでな?
耐久戦
月光の魔力と、自身の増殖を支える戦場内の血液量での削り合い
病での消耗と回復阻害にて魔力消費を増加させる
飢餓感を操作、血液の大地を食わせさらに内部で増殖
毒入りの餌は美味かったか?
「辿り着いた先が、その様とはな」
何やら大層なものを求めて地の底からやって来て、猟兵に討たれても見苦しく足掻いた末の姿がこれかと、ブラミエは『月食狼マーナガルム』を見やる。まだ月光城の主としてヒトの姿と知恵を保っていた時に比べれば、これはもはや力に呑まれた異形の獣としか言いようがない。
「その様にどれだけ力があろうともな。知を棄て、地に這うならそれは只の獣であるな」
「グルルルルッ
……!!」
侮辱とも捉えられかねぬ彼女の言葉に、相手が唸り声でしか応えられぬのが何よりの証左。城主の威厳は既になく、ただ闇雲に暴威を振るうばかり。果たしてこれが彼奴の望んだ力だったのか、こうなっては憐れむ気すら起こらない。
「貴公が人の形をしていたのなら、余も吸血鬼をやってやっても良かったがな? 言葉の通じぬ獣相手に今の余は相応しく無かろう?」
だから、余も同じように堕ちてやろうではないか――そう言って、ブラミエは静かにユーベルコードを発動させた。
【信仰廃却・疒】。
超克に至り、真の姿を晒す。男装の麗人めいた普段の姿と違って、それは手枷足枷を嵌めた中世の村娘の格好をしていた。
「
これは信仰である。
余は、
物語を廃却し、
名も無き災厄に回帰しよう」
吸血鬼の型を維持するための縛りであった「封剣・夜舞垂」は失われた。伝承の楔から解き放たれた彼女は、ただ人の形に目視できるまで凝縮されたウイルスの集合体に過ぎない。血を侵し、蝕み、伝染する、病という原初の恐怖が、ここに顕現する。
「てめぇが月の恵みを喰らうなら、わしはこの大地全ての恵みを喰らって相手をしてやるよ。こっちは食い放題だがな?」
「ガルルッ……!」
言動まで普段よりも乱暴に変化し、濃密な血と死の気配を滲ませるブラミエに、マーナガルムも警戒心を抱いたか。
彼は残された月の魔力を振り絞って【月の狼】を発動し、あらゆる外的干渉を遮断する月女神喰いの狼に変身する。まさに神話に語られる魔狼の如きその姿こそ、五卿六眼の「欠落」から得た力だというのか。
「ウォォォォォンッ!!!」
月喰らう狼はその牙を以て眼前の獲物をも屠り尽くさんと、咆哮と共に襲い掛かる。煌々たる光を帯びた異形の爪牙が、村娘の五体をバラバラに引き裂かんとする――だが、それよりもずっと先にブラミエの「攻撃」は始まっていた。
「今のてめぇには確かに外からは何もできねぇ。だがな? わしらはもうてめぇの中にいるんだよ」
「グ……ガッ?!」
マーナガルムの牙がブラミエに届く寸前、その口から血反吐が溢れ出す。同時に激しい飢餓感、貧血、呼吸器の異常など、いずれも赤死病に罹患した患者の諸症状及び合併症が身体に現れ始める。ブラミエが真の姿となる以前から、既に彼は感染していたのだ。
「わしらは誰かに寄り添わねぇと生きていけないか弱い生き物なんでな?」
原因は月食狼がまだ月光城の主だった時の戦闘。モンティアナに感染させた転移性血球腫瘍ウイルスは細胞単位で同化し、彼女がマーナガルムに変身した後も体内に残っていた。外的な干渉は無効化されても既に取り込まれたウイルスによる"自身への"干渉は可能とブラミエは想定したが、どうやら当たっていたようだ。
「ここからは耐久戦だよ」
戦場内の血液量に支えられて増殖を続けるブラミエのウイルスと、月光の魔力で保たれるマーナガルムの免疫力との削り合い。表面的には分からないが、目に見えない細胞レベルでの激しい生存闘争が繰り広げられている。そして戦いの趨勢は敵の体調という形で露わになる。
「グッ、ガアァァ、ウゥゥ……!」
病での消耗と回復阻害により魔力消費を増加させられ、赤死病の症状のひとつである飢餓感に襲われたマーナガルムは、少しでも乾きを癒そうと血管の大地に齧り付き、溢れる血潮を啜る。この病が吸血鬼の伝説を生んだのも、彼奴の有様を見れば分かるだろう。
「グルル……グオエッ!?!」
だがブラミエのウイルスは地表の血液内にもとっくに感染している。マーナガルムの行為は増殖したウイルスを自ら取り込む行為であり、病状はさらに悪化する。地球で開発されたワクチンもこの地にあるはずがなく、治る見込みのない病は魔狼の精神さえ蝕みつつあった。
「毒入りの餌は美味かったか?」
「ウゴォォォ……グガァ! ガルルッ!!」
幻覚と狂気に侵されてのたうち回るマーナガルムを、ブラミエはぶっきらぼうな態度で睨み付けている。ウイルスの集合体である彼女は、感染者の生命があとどれだけ残っているかも概ね分かっていた。蝋燭の火が尽きるように――。
「グ……ァァ……ゥ……」
度重なる猟兵との戦闘による消耗に加え、赤き死の病に蝕まれ続けたマーナガルムの身体は、ついに限界を迎える。
その身に蓄えた月光の魔力が尽き、輝きを失った巨体はどうと崩れ落ち、大地の血管へと溶けるように消えていく。それが、かつて月光城の主であったもの、月喰らう魔狼の最期であった。
――かくして、猟兵達は第二層に現れた月光城の主を滅ぼし、その企みを未然に防ぐことに成功した。
謎多きこの階層で、一体オブリビオン達は何をしようとしているのか。ダークセイヴァーを覆う闇は今だに深いが、猟兵達もまた少しずつ真実に近付いているのは確かだった。
大成功
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