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暗黒の世界で子供たちは偽りの幸せを過ごす

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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●紳士な猫の牧畜業
 ダークセイヴァーの一角にある村。
 夜と闇に支配されたこの世界にあって、この村では楽しげな子供の声が響いていた。
「あはは、こっちにおいでよー」
「待ってよー、お兄ちゃん」
 一組の兄妹が村の広場をドタドタと走っていた。
 血色の良い顔、大きなお腹。普段からずいぶんとしっかり食事ができているのだろう。
「こらこら、シーザーもサーシャも、あまり走り回るニャよ。ケガをしたらまずいニャ」
 声をかけたのは通りすがりの猫。
 2足歩行をするその猫は、シルクハットにスーツ姿で、ステッキを手にしている。
「はーい、ごめんなさーい、にゃんこさん」
 明らかに人ではないその猫に対して、子供たちは素直に礼を言う。
 猫は広場から歩いて出ていく子供たちを、優しい目つきで見送った。
「2人ともだいぶ育ってきたニャ。そろそろ食べ頃ニャね。大事に育てた甲斐があったニャ」
 だが、その優しさは、けっして子供に対するものではなかった。
「高貴な方の血肉となれる子供たちは幸せ者ニャね。それに良い糧を得て、あのお方もきっともっと育ってくれるはずニャ」
 猫たちの背後にいるなにかのために、子供たちは育てられているのだ。
 その優しさは、あくまでも、家畜に対して見せているものでしかなかった。

●グリモア猟兵の依頼
「ダークセイヴァーの村を解放していただきたいのです」
 猟兵たちに向けて、白金・伶奈(プラチナの先導者・f05249)は頭を下げた。
「その村の住民は、子供たちしかいません。みんな、どこかの村からさらわれて来たり、売られてきた子供たちです」
 紳士的に振る舞う猫人間に育てられ、食べ物もたくさん与えられ、子供たちはみんな幸せに暮らしている。
 ただし、その幸せな生活は永遠のものではない。
「十分に育ったと判断されたところで、子供は村のどこかにあるオブリビオンの館に連れていかれます」
 そして、2度と帰ってこない。
 猫人間たちは、誰かに捧げるために子供たちを集めて育てているのだ。
 まずは村に入り込み、説得するなり施設を破壊するなりして、子供たちを解放してほしいと伶奈は言った。
 そうしているうちにオブリビオンが拠点にしている館がどれかもわかるだろう。
「なにも知らないまま幸せに生きて、短い一生を終えるのも、ある意味で幸せなことかもしれませんが……」
 だがそれでも、オブリビオンの支配を放置しておくことはできない。
 そして、村を解放できるのは猟兵たちだけなのだ。


青葉桂都
 おはようございます、青葉桂都(あおば・けいと)です。
 今回はダークセイヴァーにて、人間牧場で子供たちを育てるオブリビオンを倒していただきます。

●舞台について
 表向きは子供と猫人間のオブリビオンだけが住んでいる村です。
 また、猫人間の主であるオブリビオンもどこかの建物に潜んでいます。

●戦闘について
 第1章の段階でも、多少猫型オブリビオンとの戦闘が発生する可能性がありますが、メインはあくまで村人である子供たちの解放とお考えください。
 戦闘がメインになるのは第2章以降になりますのでよろしくお願いいたします。

●オブリビオンについて
 猫人間のオブリビオンはステッキを用いた戦闘を行います。この猫人間は第2章で行う集団戦の敵になります。
 第3章のボス戦で戦う敵については詳細不明です。

 それでは、ご参加いただければ幸いです。
 どうぞよろしくお願いいたします。
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第1章 冒険 『美食倶楽部』

POW   :    片っ端から施設の破壊

SPD   :    先行侵入して街の絡繰を調査

WIZ   :    街の人を説得して逃す

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

名張・辿
動物の言葉も分る俺にゃあ、牧畜みたいなそれも否定できないけどさ
人の子に夢中になってると鼠を見逃すぜ

忍び込んで色々探し回るとするよ
仲間の侵入、子供の脱出のための経路や、
子供が多く集められている場所、避難先の候補として子供の仕入れ先についての資料とかも探してみるかね

「忍び足」で「目立たない」ように隠れて行動をするかね
怪しい建物は【巨人追いの斥候】で鼠を穴や窓から忍び込ませてを探るよ

情報が得られたら調査に並行して仲間内に伝えて回りたいかな

見つかったら騒ぎを起こしながら「逃げ足」活かして子供達とは別方向に逃げるさ
「フェイント」で踏み込むと思わせて逃げ、逃げると思わせて踏み込んで、できるだけ引き付けるよ


北条・優希斗
……猫達による人間牧場か
俺達も牧畜を営みそうして生まれた牛や豚等の肉を口にする
そういう意味では、この猫達と俺達はそんなに変わらないな
まあ、だからと言って見過しはしないんだが
少し気になることもあるしね
仲間との連携・声掛けOK
SPDによる先行侵入、街の絡繰の調査を行う
周囲の地形を利用、第六感で辺りをつけ気付かれない様に潜入
俺が調査したいのは、誘拐されたりしてきた子供達が、どうして皆一様に幸せな表情で居られるかだな
衣食住を与えられ優しく振る舞われればそうなるかも知れない
でも……本当にそれだけなのか?
他に何かありそうだ
猫達に見つかったらUCで敵のUCを封じ速やかに排除、死体を見つからない様隠匿するよ



●猫は鼠に気づかない
 平和そうだけれど、決して本当の意味で平和ではない村に猟兵たちは忍び込む。
「……猫達による人間牧場か。俺達も牧畜を営みそうして生まれた牛や豚等の肉を口にする。そういう意味では、この猫達と俺達はそんなに変わらないな」
 北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)は物陰を移動しながら呟く。
(「まあ、だからと言って見過しはしないんだが」)
 子供たちを安心させるためなのだろうが、警戒はそれほど厳しくはないし、隠れ場所となる建物も多くある。
 それに、青年の耳で揺れる双翼のピアスが鳥のような素早さを与えてくれる。
 猫人間たちに見つからぬよう、優希斗はうまく建物を利用しながら調査を行っていた。
 やがて彼は、暗い表情をしている少年を見つけた。
 少年から話を聞くことができれば、もしかすると優希斗が知りたいと思っていたことがわかるかもしれない。
 けれどもオブリビオンの1体がすぐに近づいてきた。
「どうかしたかニャ? 元気がないニャ」
「……ごめんなさい、にゃんこさん。お父さんとお母さんに会いたくて……」
 うつむく少年に、紳士的な態度で猫人間が頷く。
「気持ちはよくわかるニャ。でもニャ、スミス。君のお父さんたちは君がここにいる間……ここから帰ってからも不自由なく暮らせるように、大変な仕事をしているんニャ」
 肩に手を置いて猫人間は優しく語りかける。
「仕事が終わればちゃんとお父さんたちに会えるニャ。元通り家族と一緒に暮らしてる子たちと何度もお別れしてきたはずニャよ? スミスの順番もすぐに来るニャ」
 両親といずれ会える……その言葉を信じて少年が笑顔を取り戻す。
 猫人間に連れられて戻っていく少年の姿を優希斗は無言で見送った。
「――なるほどな」
 頷くと、見つからないよう彼らと反対方向へ優希斗は走り出す。
 しばらく走って、別の物陰に彼は隠れた。
「よう、ご同輩」
 突然声をかけられて、優希斗はとっさに武器へと手をかけた。
 だが、相手が人間……縦縞模様の施されたダークセイヴァー産とは思えない装束を身につけた男だと確認し、彼は息を吐く。
「驚かせちまったなら悪いな。こいつがお前さんを見つけたんで、情報交換と思ってよ」
 名張・辿(鼠遣われ・f04894)が手を伸ばすと、子鼠が彼の腕を駆け上がる。
 それが自分と並走していたことに優希斗は初めて気づいた。
 ユーベルコードによって召喚した子鼠を走らせて調査を行っていたことを辿は告げた。
 名を名乗りあってから2人は情報を交換した。
「子供たちが皆幸せな表情をしているというのが気にかかったんですよ。どんな絡繰があるのか探ってたんです」
 相手を年上と見て、丁寧な口調で優希斗が言った。
 どうやらオブリビオンはいずれ両親に会えると嘘をついているらしい。仕事でしばらく一緒にいられないから、預けられていると騙しているのだ。
 そして十分に育ったところで両親に会わせると言って連れて行く。
「衣食住を与えられ、優しくされてるだけじゃ幸せそうにはならないと思ったんです。あいつらは、ここでの暮らしがあくまで一時的なものだと思わせてました」
 嘘だと気づいたときは死ぬ時なので問題ないというわけだ。
「うまいこと考えてるもんだな」
 皮肉げな表情を浮かべて辿が言う。
「こっちも子鼠に走らせていろいろわかったぜ。仕入れ先についての資料を見つけられたのがなかなかでかいな」
 解放した後の避難先として利用できるはずだと辿は言った。
 子供たちは多くの建物に分散されて生活しているようだった。一ヶ所に固めないほうが制御しやすいからだろう。侵入、脱出の経路も確認している。
「情報は伝えて回るつもりだったから、そっちの情報も他の連中に伝えておくよ」
「よろしくお願いします。俺ももうしばらく探ってみます」
 言葉を交わして、優希斗と辿は別々の方向にまた移動し始める。
「さて、こっちはまず子鼠の目で見た資料を確保してこなくちゃな」
 なるべく目立たぬように忍び足で、辿の草履がダークセイヴァーの土を踏む。
「動物の言葉も分る俺にゃあ、牧畜みたいなそれも否定できないけどさ。人の子に夢中になってると鼠を見逃すぜ」
 鼠使いの男は、鼠のように静かに建物へ近づいていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

闇之雲・夜太狼
WIZ行動
アドリブ・絡み歓迎

子供たちを飼うだなんて、さすが人の心を持たないオブリビオンらしいやり口だよね!
幸せなんて長く続かないことを教えてやらなくちゃ!
……もちろん、猫人間ちゃんたちにね♪

俺ってさ、UDCアース基準で12歳児程度の身長だし
変装はこの世界の服を着れば十分かな

村で子供たちを見つけたら【コミュ力】で躊躇わず話しかけちゃうよ
笛吹き男の話は知ってるけど俺が今回使う『笛』は……
常備してるお菓子の中でも、この世界に存在しない物さ!
いくら暮らしが豊かでも別世界の物はそうは手に入らないでしょ
少し分けてあげて【誘惑】して、他にもたくさんあるよと【言いくるめ】て村の外の安全な場所まで誘導するよ~♪


佐那・千之助
WIZ
子供らを説得
訳が解らぬままでは不憫ゆえ事情を知らせておきたい

こんにちはと近寄って子供の元に膝をつく
現状を考えると上手く笑いかけたりなどはできそうに無いが、真摯な態度で

…唐突に済まぬが聞いてほしい、と切り出し
子供らにこの村の狙いを隠さず話す
直ぐには信じがたかろう…
だが、此処から居なくなった子供らは何処へ行ったか聞いておるか?
おそらく優しくしてくれた兄さん姉さんもおったろう
無事なら共に育ったそなたらに手紙ひとつ寄越さぬのは不自然…そう思わぬか?
今なら間に合う。此処から逃げるのだ。

子供らの答えをせかさず、強要せず、意見を尊重する
敵の目に付いたら通りすがりの旅人だと誤魔化す
駄目なら選択UCで応戦



●真実と嘘と
 入り込んだ猟兵たちが子供たちに接触するのは、それほど難しいことではなかった。
 猫たちは、表向きは子供たちを自由に行動させていたからだ。
 だから、佐那・千之助(火輪・f00454)が遊んでいる子供たちに近づいても、それを止めるものはいなかった。
 1人を除いて一瞬子供たちの顔に浮かんだ期待の表情が、千之助の陽光に似た長い髪を見てすぐに消えた。
「こんにちは」
 真剣な眼差しで語りかけた千之助に対して、子供たちは警戒する者と笑顔で挨拶を返してくる藻のとに分かれていた。
「……唐突に済まぬが聞いてほしい」
 反応も様々だったけれど、比較的大人びた雰囲気を持つ黒髪の少年が、皆に聞いてみようと声をかけてくれた。
 そして、千之助は事実を語り始めた。この村が、人間牧場なのだということを。
 子供たちは最初のうち、千之助の言葉をさえぎらずに聞いていた。
「嘘だ!」
 けれど、話が核心に触れたところで、少年のうち1人が叫んで千之助の言葉を止めた。
「にゃんこさんたちは悪い人じゃないよ! だって……約束、してくれたんだから……」
「直ぐには信じがたかろう……。だが、此処から居なくなった子供らは何処へ行ったか聞いておるか?」
 まっすぐに目を見て、千之助はさらに言葉を続ける。
「おそらく優しくしてくれた兄さん姉さんもおったろう。無事なら共に育ったそなたらに手紙ひとつ寄越さぬのは不自然……そう思わぬか?」
 けれど、子供たちはすぐに千之助の言葉を信じようとはしなかった。千之助も、それを強要する気はない。
「今なら……」
「そこでなにをしてるニャ?」
 スーツを着た猫の言葉が千之助の言葉をさえぎった。あくまで紳士的な物腰だが、武器であるステッキには手をかけている。
「……なんでもない。ちょっと道を尋ねていただけだ」
「そうかニャ。なら、さっさと行くといいニャ」
 去っていく千之助を、猫は追ってこなかった。
 ただ、猫人間は千之助の姿が完全に見えなくなるまでじっとそちらを見つめていた。
 知らない人と話してはいけないと告げて、彼は子供たちの前から去る。
 子供たちは顔を見合わせた。
「あの男の言ったことも、一理ある気がするよね。この村、なんか変だよ」
 1人の少年が、まず最初に口を開いた。
 もっとも、彼は村の住人ではない。闇之雲・夜太狼(クライウルフ・f07230)は小柄な体格を生かし、ダークセイヴァー風の服を着て子供たちに紛れ込んだのだ。
 猟兵である彼の耳は、千之助が去っていった方から炎が燃える音を聞いた。続いて聞こえた悲鳴はにゃんこのものだろう。
 彼もまた子供たちを逃がすために村に入り込んだ1人だったが、千之助のように直球のやり方は選ばなかった。
(「あの人の説得で気持ちがかたむいてる子もいるね。『笛』を使うにはいい頃合いかな」)
 他の子供たちの様子を見ながら彼は語りかける。
(「笛吹き男の話は知ってるけど俺が今回使う『笛』は……常備してるお菓子の中でも、この世界に存在しない物さ!」)
 用意してきた異世界のおかしをポケットの中でつかむ。
「食べ物ならここの外にもあるよ。ほら、こういうお菓子とか……食べたことある?」
 見覚えのない形に、あるいはお菓子という言葉に、子供たちは……全員ではないが、身を乗り出してきた。
 配ってあげると、目を輝かせて彼らは受け取った。
「もっとたくさんある場所を知ってるんだ。ついてきなよ。ここにいるより、きっと安全だよ」
 誠実な千之助のやり方は立派なのだろうが、嘘つきの夜太狼は悠長に待ったりはしない。
 子供たちをうまく言いくるめて、彼は安全な場所まで連れていく。
(「子供たちを飼うだなんて、さすが人の心を持たないオブリビオンらしいやり口だよね! 幸せなんて長く続かないことを教えてやらなくちゃ!」)
 この子供たちを見張っていた猫は千之助に倒されたばかり。先導する夜太狼を阻むものはいない。
(「……もちろん、猫人間ちゃんたちにね♪」)
 心の中で呟いて、少年は子供たちを目的の場所まで連れていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

エリス・シルフィード
……ニャンコは好きだけど、これはちょっと頂けないわね
子供達をどうやったら説得できるかしら
私にできるのは歌う位だけど
仲間との連携・声かけOK
Wizで接触するわ
皆が見つけてくれた侵入経路を使って潜入、猫さん達に見つかっていない、スミス君みたいな事を思う子が集まっていそうな所を探すわね
見つけたら音楽を歌い、弾くわ
それは別たれた家族達の孤独の歌
子供達が少しでも共感し、心を開いてくれる様に
開いてくれたら猫さん達の目的を説明した上でこう言うわ
「信じて欲しい。私達なら貴方達をパパやママ達に会わせられると。だから……猫さん達が何処から来るか教えて欲しいの」
もし猫さん達と戦いになったら鈴蘭の舞で牽制して逃げるわ


アーチス・カーライル
※・アドリブ・絡みOK

なにそれひっどーい!偽物の幸せを与えてから絶望に突き落とすなんて残酷な真似、絶対許せないわ。

えーっと、あたしはこっそり忍び込んで子供たちを説得してみようかしら…
うーん、うーん…でも実はこういう小難しいのは苦手なのよね。
ちょっとした精霊術でも披露して、興味を引いてみようかな。

「ねぇ、キミたち。食べるものがあって、生活する場所があって、それで幸せ?
外の世界にどんな面白いことがあっても?あたしなら、キミたちに新しい世界を見せてあげる!」

じぶんの力で、両親にも、会えるかもしれないよ。キミたちはもう、自分の力で動けるはずよ、ね?



●歌声は子供たちを導く
 猟兵たちが先行偵察したルートから、潜入していた者は他にもいた。
 アーチス・カーライル(真理の探究者・f14237)はにゃんこたちのやり口を聞いて、憤慨しながら子供たちがいる村へと入り込む。
「なにそれひっどーい! 偽物の幸せを与えてから絶望に突き落とすなんて残酷な真似、絶対許せないわ」
 元気で朗らか、明朗快活。
 そんなエルフの少女にとって、オブリビオンのしていることはとても許せないものだ。
 村を歩いていると、すぐに子供たちを見つけることができた。
 けれども、話しかけようとしてアーチスはちょっと思案顔をする。
(「でも、あたし実はこういう小難しいのは苦手なのよね……」)
 人懐こいたちなので仲良くなることはできそうな気がするのだけれど、説得するとなるとちょっと迷うところだ。
 まずは得意の精霊術で気を引こうと考えて、アーチスは雷の混ざった風を呼び出した。
 制御の難しい術だが、派手な光を見て子供たちがなにごとかと寄ってくる。
「ねぇ、キミたち。食べるものがあって、生活する場所があって、それで幸せ?」
 問いかけたアーチスの言葉に、彼らは顔を見合わせる。
「幸せだよ、もちろん。……お父さんやお母さんに会えないのは寂しいけど」
 なにを言っているのかわからないといった様子で、少年のうち1人が答えた。
 オブリビオンに敗北し、支配されているこの世界において、生きていくのに不自由しないのはやはり幸せなのだろう。
 けれど、その幸せの先に不幸が待っていることをアーチスは知っている。
「外の世界にどんな面白いことがあっても? あたしなら、キミたちに新しい世界を見せてあげる!」
「面白いことは知りたいけど……でも、ここにいなきゃ、お父さんたちが迎えに来てくれないし……」
 熱を入れて語るアーチスに、子供たちは首を横に振った。
「自分の力で、両親にも、会えるかもしれないよ。キミたちはもう、自分の力で動けるはずよ、ね?」
 必死に言葉をかけるが、彼らも簡単には動いてはくれなかった。
「お父さんたちには早く会いたいよね」
「でも……勝手なことしたらにゃんこさんに迷惑がかかるし……」
 寂しい気持ちは間違いなくあるようだが……。
 子供たちが迷っているところに、歌声が聞こえてきた。
 薄暗い世界のよどんだ空気を押しのけて、蒸気機関で拡大された声が子供たちを包む。
 それは、別れ別れになってしまった家族たちをテーマにした、孤独の歌だ。
 アーチスの説得で両親のことを思い出していた子供たちの心に、歌は強く響いた。
 歌声に惹かれて子供たちがし戦を向けた先には、金髪の天使がいる。
「……聞いてくれてよかったわ。私にできるのは歌うことくらいだから……」
 エリス・シルフィード(金色の巫女・f10648)ははかなげに微笑んだ。
「あなたたちに聞いて欲しいの。猫さんたちの本当の目的を……」
 子供たちはエリスの説明を簡単に信じようとはしなかった。
「信じたくない気持ちはわかるよ。けど、このままじゃお父さんたちに会えないの。自分たちの力で会いに行こうとしなきゃ!」
 アーチスも言葉を重ねて、エリスの説得を後押しする。
「信じて欲しい。私達なら貴方達をパパやママ達に会わせられると。だから……猫さん達が何処から来るか教えて欲しいの」
 子供たちがうつむいた。
 彼らが顔を上げるまでエリスとアーチスはじっと待つ。
 けれど、子供たちがなにかを告げようとしたところでそれを妨害するものがいた。
「そこでなにをしているニャ?」
 猫人間たちのうち1体が近づいてくる。
 物腰はあくまで紳士的……だが、相手がいつでも殴りかかれるような持ち方でステッキを握っていると、猟兵たちは見逃さなかった。
 エリスの手にしていたシンフォニックデバイスが、鈴蘭の嵐へと変化する。
 吹き付ける鈴蘭をまともに受けて、にゃんこがよろめいた。
(「本当に……ニャンコは好きだけど、これはちょっと頂けないわね」)
 心の中で、エリスはため息をつく。
「お願い、ついてきて!」
「みんな行こう! 自分たちで道を切り開かなきゃ!」
 呼びかけるエリスとアーチスに、全員ではないまでも子供たちが駆けだす。
 話を聞くためにも、まずは安全な場所まで撤退しなければならない。
 他の子供たちも説得して回るためにも、ここで手こずるわけにはいかなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ナット・パルデ
ガキなんざどうでもいいが
同じ見た目の外道は反吐がでる

猫側を装い暴れて破壊と陽動
見た目が同じなら「やさしいにゃんこさん」とやらの信用も落ちるだろう
作った化けの皮を剥いでやる

全部ぶっ壊してやりたい所だが家は貴重な資源
【トルメンテ】で窓や出入り口を派手に壊す程度にする

猫共は
「この村は破棄し撤収する、とあの方から聞いてないのか?……にゃー。」
とか口調を合わせて適当言っておくか。棒読みは気にするな

猫側を装うので子供を助ける猟兵と若干争ってもいいかもしれん
猟兵が来たことを伝えて猫を誘導も出来るだろう。

バレたり他の猟兵と合流した段階で猫側はやめる
即座にレイピアをお見舞いしてやる



●乱暴なにゃんこ
 何人かの猟兵たちが子供たちを説得し、避難させている間に、派手な動きを見せ陽としている者もいた。
「ガキなんざどうでもいいが、同じ見た目の外道は反吐がでる」
 ケットシーであるナット・パルデ(ケットシーのマジックナイト・f05999)は、オブリビオンが猫人間であることに憤っていた。
 だが、似たような外見をしているのはある意味で好都合でもある。
「これが吹雪ってやつだ」
 村の一角に立ったナットは、冬さえも遠ざかるほどの大吹雪を呼び出した。
 氷雪を操る技は、魔法剣士である彼がもっとも得意とする技だ。
 もっともこのダークセイヴァーにおいて家屋は貴重な資源でもある。全部ぶっ壊してやりたいところだったが、ナットは自重して扉だけを壊すにとどめた。
「にゃんこさん? どうしてこんなことするの?」
 大音を聞いて駆けつけてきた子供の問いかけにはあえて答えず、ただナットは邪悪な笑みを浮かべて見せた。
 怯えた表情で子供たちが逃げていく。これで猫人間たちの信用も落ちるだろう。
 説得している他の猟兵たちが動きやすくなるはずだ。
 戸口を破壊しながら移動していくと、次に駆けつけてきたのは猫人間たちだった。
「なにをしてるニャ?」
 問いかける口調はけっして荒々しいものではなかったが、しかしステッキを構えてすでに臨戦態勢に入っている。
「この村は破棄し撤収する、とあの方から聞いてないのか? ……にゃー」
「聞いてないニャ。あの方がそんなことをいうはずないニャー」
 仲間の振りをして答えたつもりだったが、猫人間は迷うことなくそう言ってきた。
「へえ、さすがにお前らは騙せないみたいだな」
「当たり前ニャ。だって、お前はジェントルじゃないニャ。仲間のはずがないニャ」
 よくわからないが、彼らにとって紳士的であることがとても重要らしい。
 バレたのならば仕方がない。
 ナットは即座に猫人間たちに攻撃をしかけて、さらに破壊活動を継続する。
 彼が暴れまわったことで、説得を聞き入れなかった子供たちも逃亡し、他の猟兵たちによって安全な場所に連れていかれたようだ。
 ただ、オブリビオンとの戦いは、これからが本番だった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『ジェントルにゃんこ』

POW   :    ステッキ護身術
【華麗なるステッキ捌き】による素早い一撃を放つ。また、【帽子を取る】等で身軽になれば、更に加速する。
SPD   :    買収小切手
【小切手】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    ノブレス・オブリージュ
自身の【紳士的な立ち居振る舞い】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●紳士的な戦い
 猟兵たちの活躍により、村の子供たちは大方が逃げ出していた。
「どうやらここも終わりみたいニャ」
「残念ニャ。また別の場所であの方を育てるしかなさそうニャね」
 ステッキを手にした猫人間……ジェントルにゃんこたちは比較的大きなの1つに集っていた。
 危機に陥ってはいたが、紳士的であろうとする彼らは泰然と構えている。
「お金はいっぱいあるニャ。また別の手を考えるニャよ」
 ユーベルコードで作り出した小切手を持ち、にゃんこの1体が言う。
「そうニャ。それより、あの方を早く悪い奴らの手の届かない場所に移すニャ」
 言葉をかわすにゃんこたちは、油断なく周囲に目を配っている。
 子供たちから拠点を聞き出した猟兵たちが近づいてきていることに、気づいているのだろう。
 あの方というのはもちろん彼らが子供たちを捧げていたオブリビオンだろう。この建物内に、猫たちの首魁が潜んでいるのだ。
 しばし後、建物にたどり着いた猟兵たちは建物の入り口に並んで陣取るにゃんこたちの姿を見た。
 にゃんこたちはいずれもステッキを持っている。その構えを見るだけで、彼らがステッキを用いた戦闘術を得意としていることがわかる。
 ポケットから覗く小切手帳も、おそらくはなんらかの力を秘めているように思えた。
「ここは通さないニャ。どうしても行くなら、我々を倒してから行くニャ」
「そうニャ。いざ尋常に勝負ニャよ」
 にゃんこたちが言った。
 おそらくは建物の中にもまだまだ仲間がいるのだろう。
 ただ、紳士的であろうとする彼らは、伏兵などを潜ませてはいないようだった。その振る舞いは弱点ではあるが、同時にその意志が彼らに力を与えてもいるようだ。
 しかし仮にどんな力を秘めていようが、彼らとその背後にいるオブリビオンを倒さなければ、いずれどこかでまた同じことが行われるはずだ。
 館を守ろうとするジェントルにゃんこたちに、猟兵たちはそれぞれのやり方で戦いを挑んでいく。
北条・優希斗
……ジェントル、だと(顔には出ないが、自らの裡に果てしない怒りが渦巻いていく)?
偽りの楽園による、偽りの幸せを信じ込ませようとするお前達が紳士的な筈が無いだろう(怒りと共に、漆黒の瞳の中で、片目が蒼穹になる)?
……目障りだ、退け
仲間との連携・声掛けOK
真の姿であるUC『剣王の瞳』を使用し強襲
お前達の小切手で俺の行く手を阻めると思うな
仮に、俺を阻めたとしても
『剣王』は止められないよ
神技・剣王乱舞を使用
敵と味方の区別はする武器達を囮に敵に肉薄し、俺が一番得意なUCを使用する
それは【範囲攻撃】、【薙ぎ払い】を軸とした対集団戦に特化した乱舞だ
防御に関しては、【剣王の瞳】を利用した【見切り】を軸にするよ


アーチス・カーライル
アドリブ・絡みOK

まだ誰かから自由を奪う気なのね…!そんなの絶対許さないんだから!
元凶のあの方とやらの前に、キミたちを一匹残らずきっちりお仕置きしてあげるっ!

敵のステッキの範囲外から【全力魔法】の【アコール:ラファル】の魔弾で一匹も漏らさず撃ち抜いてあげる…!さぁ、駆け抜けて――!
敵が多いというなら、何度でもっ!あたしの魔法はしつこいよ!

距離を詰められたら【逃げ足】と【見切り】でひたすら距離を取りながら、何度でもUCで攻撃、あるのみ!


名張・辿
アドリブ、連携歓迎

旧鼠って言う子猫を育てた果てに食ったり結局守ったりする妖怪の話が故郷にあるんだけどさ
これも因果かねぇ……喰わせてるんだ、喰われもするだろうよ、な?

【鼠鬼強襲】で呼び出した鼠に「騎乗」した状態で戦いをしかけ、
武器に毒を塗り付け、容器の投擲などの「毒攻撃」を見せつけて、体への攻撃を警戒させたうえで、
「フェイント」交えて本命としてステッキや小切手を狙った「武器落とし」「盗み攻撃」を試みてみるよ
奪った道具は「念動力」で遠くに投げたり、いけそうなら鼠に食わせたりして処分しちまおうかね

無理はせず、騎乗してる機動力を活かして立ち回り、相手の体力と備えを削り取る
鼠らしく、こそこそやっていくよ



●上辺だけの紳士
 ジェントルにゃんこたちは隙のない構えで猟兵たちを待ち受けている。
 優希斗は彼らを静かに見据えた。
「……ジェントル、だと?」
 向けている瞳はまだ漆黒。
 けれど胸の奥から静かに沸き上がる怒りと共に、その一方の色が変化していく。
「偽りの楽園による、偽りの幸せを信じ込ませようとするお前達が紳士的な筈が無いだろう?」
 染まった色は、蒼穹を思わす澄んだ青色。
 その目にはステッキを構えて挑みかかってくるにゃんこの姿が映っていた。いや、映っていたように感じた。
 実際にそれが優希斗の瞳に映ったのは数秒後のこと。
 剣王の瞳がにゃんこの攻撃を正確に予測して、ステッキをかいくぐる。
「……目障りだ、退け」
 怒りを込めて告げた時には、すでに彼は手にした名刀でにゃんこの1体を断っていた。
 他のにゃんこたちもステッキを手に猟兵たちへ攻撃をしかけようとする。
 だが、怒っているのは優希斗だけではない。
「まだ誰かから自由を奪う気なのね……! そんなの絶対許さないんだから! 元凶のあの方とやらの前に、キミたちを一匹残らずきっちりお仕置きしてあげるっ!」
 アーチスが精霊術の粋を集めた星と叡智の杖をにゃんこたちに向ける。
「みんな! 全力でやるから巻き込まれないでねっ! 一匹も漏らさず撃ち抜いてあげる……! さぁ、駆け抜けて――!」
 詠唱に応えて現れたのは、無数の魔法の弾だ。
 雷、氷、炎、風……いずれかの属性を持つ魔法弾がにゃんこたちへと降り注ぐ。
 巻き込まれたにゃんこたちのうち何体かが直撃を受けて倒れた。
 とはいえ、敵もザコとはいえオブリビオン。何体かはステッキで身を守り、軽傷でしのいだようだった。
「女性には先に攻撃させてあげるのが紳士ニャ。レディファーストニャからなニャ。しかし反撃はさせてもらうニャ!」
 ステッキを構えたにゃんこたちうち1体がアーチスへと接近する。
 その進路を、鼠と思しき生物がふさいだ。
 もっともその場でその生物を鼠だと正しき認識できたものが何人いたか。あまり大きくないはずの鼠の四肢が異常なまどに肥大化していたからだ。
 しかもサイズが3m半はある。にゃんこたちはもちろん猟兵たちよりさらに大きい。
 ステッキで果敢に戦いを挑む敵が、頭から喰われた。
「旧鼠って言う子猫を育てた果てに食ったり結局守ったりする妖怪の話が故郷にあるんだけどさ。これも因果かねぇ……喰わせてるんだ、喰われもするだろうよ、な?」
 鼠の上には縦縞模様の頭巾付き外套を羽織った男がいた。
 辿は入り口でポケットに手を入れているにゃんこたちへと声をかけた。
 彼らを牽制するために、これ見よがしに鼠剣へ毒を塗ってみせる。
「奴ら強いニャ。力を封じてやるニャ! いくらお金がかかってもいいニャ!」
 ジェントルにゃんこたちが小切手帳を一斉に取り出した。
 素早く金額を書き込み、小切手を猟兵たちに向けて投げつけてくる。
「わかってますよね? あれを喰らったら力が封じられます。気をつけて下さい」
 紫色の鋼糸を飛ばして、優希斗が自分に向かってきた小切手を貫いた。
「ああ。しかし、金に明かせてってのは紳士的なのかねぇ」
 鼠に張り付いた小切手が効果を発揮する前に、辿は素早く短剣についた鉤でそれを引きはがした。
「紳士なわけがないじゃない。彼が最初に言った通り、上辺だけなのよ」
 シルクハットが落ちないように抑えながら、アーチスが逃げ足を披露する。
 とはいえ、実際ユーベルコードを封じられてしまえば猟兵たちも危ない。小切手を喰らわないように防がないわけにはいかない。
 その間に、増援のにゃんこたちが建物の入り口に近づいてきているようだった。
 足音を聞きつけて、優希斗が剣王の瞳を頼りににゃんこたちへと突っ込んだ。
 召喚した刀剣を囮に小切手は防いだが、ステッキが防ぎきれずに彼の体を打つ。
「お前達の小切手で俺の行く手を阻めると思うな。仮に、俺を阻めたとしても――『剣王』は止められないよ」
 痛みをこらえて、優希斗はにゃんこたちの中心へと肉薄した。
 無心で放つ高速の乱舞が敵を薙ぎ払う。
 帽子を脱いだ増援のにゃんこたちが優希斗を避けて飛び出してきた。
「敵が多いというなら、何度でもっ! あたしの魔法はしつこいよ!」
 再びアーチスが無数の魔法弾を放ってにゃんこたちをなぎ倒す。
「若者は派手だねぇ。俺は鼠らしく、こそこそやっていくよ」
 ひるんだ敵に鼠を近づかせて、辿が獣の毛から作ったワイヤーでにゃんこたちからステッキや小切手帳を叩き落していく。
 増援はまた近づいてきているようだが、建物入り口の戦いは猟兵たちが優勢だった。
 戦いは、彼らの首魁が潜んでいるはずの建物内部に移ろうとしていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ナット・パルデ
「言わない」に「移す」
あの方は生まれたての子供のような存在か?
この戦いは時間稼ぎかもしれん


猫共が巨大鼠や他の猟兵に集中していることを祈りつつ
マタタビ咥え野生の直感力を上げて『あの方』がいる場所の情報を探る


不自然な動きをしている奴にあたりをつけダッシュで追跡
多少の妨害はあるだろうな
……屋敷内で暴れたり走るのは紳士的な行動か?


2回攻撃する機会を犠牲にしてでも追跡や回避に回す
尻尾で横薙ぎに衝撃波を放ち風圧で小切手や猫を吹き飛ばす
小切手の撃ち漏らしやステッキの一撃があれば剣でいなす
多少の痛みは覚悟でどうとでもなるさ


最悪、せめて『あの方』の存在だけは確認せんとな


連携、アドリブ歓迎
台詞弄りもご自由に



●忍び込む猫
 建物入り口の戦いで、猟兵たちの側に戦況は傾いていっていた。
 内部に戦場が移るのは時間の問題だろう。
 ただ、その中で、仲間たちの動きを囮に先行して建物内に忍び込む者もいた。
「『言わない』に『移す』……あの方は生まれたての子供のような存在か? この戦いは時間稼ぎかもしれん」
 ナットはケットシーの小柄な体を、建物の中へと滑り込ませた。
 携帯ポーチから『大人の猫ちゃん用』と刻まれたマタタビの枝を取り出して、くわえる。
 同時に体の中を走る心地よい感覚に、ナットは大きく息を吐き出した。
 マタタビの味と、動きを阻害しないドワーフ製の防具が野生の勘を高め、情報収集能力をあげてくれるはずだ。
 ただ、にゃんこたちは建物内にも相当な数がいた。
「中に入り込んでる奴がいるニャ! やっつけるニャ! 宣戦布告ニャ!」
 ステッキを手にしたにゃんこがナットを追ってくる。
「おっと……ま、多少の妨害は想定の上だがな」
 尻尾を横薙ぎに振る。勢いよく動かした衝撃で鈴の音が鳴った。
 脳のリミッターを外して高速で叩いた空気が、衝撃波となって近づいてきたにゃんこを打った。
 マタタビによるドーピングだ。もっとも、敵も自己強化して襲いかかってくるので一撃で全滅とは行かない。
「……屋敷内で暴れたり走るのは紳士的な行動か?」
 疑問に感じたが、なにをもって紳士的と呼ぶかは結局彼らにしかわからないのだろう。
 ともかく、戦うよりも情報を集める方がナットにとっては重要だった。
 振り下ろされるステッキを冷気纏う細身剣で受け止める。そうしながらも周囲を観察していた彼は、1体だけ他と違う動きをしているにゃんこに気づいた。
(「どっか行こうとしてやがるな……あのお方のところか?」)
 戦場を離れようとしているにゃんこに向かって、覚悟を決めてダッシュする。
 ステッキがナットの体を何度かしたたかに打ったが、覚悟していれば耐えられないほどではない。
(「最悪、せめて『あの方』の存在だけは確認せんとな」)
 心の中で呟いて、彼は逃げていくにゃんこをダッシュで追いかけた。
 敵はなおも妨害してきたが、それでも彼はおそらく真っ先に、ボスのところにたどり着いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

アト・タウィル
さて、紳士的な猫たちとの戦いですか
ふふ……それでは私は、紳士とは程遠い戦い方を見せてあげましょう

皆さんが戦っているところから、少し離れた位置に立ちながら戦い始めましょうか
手に持った捻れたフルートで明るく楽しげな曲を吹き、【狂気の操り人形】を使いましょう
これにより、すでに倒れていた猫たちを操る触手を呼びだし、曲に合わせて猫たちへ襲い掛からせます

ふふ……紳士的な戦いを、好きなだけ行ってください
その命が尽きるまで……


北条・優希斗
……そろそろ決着を付けさせて貰うよ
真の姿:片目が蒼穹のまま
他者との連携・声掛けOK
『剣王の瞳』で数秒先の未来を読み、次の敵の攻撃を予測しながら、残像を生み出し、にゃんこ達の攻撃を見切って躱す。
先程の戦いで得た戦闘知識を動員し、被害を最小限に。
どうしても避けられなければ、鏡花水月で攻撃を受け流した後夕顔や月桂樹でカウンター
隙あらば敵の攻撃を絡め取って敵を盾にすることで同士討ちを誘う
攻撃はダッシュ、先制攻撃で敢えて敵に突っ込み薙ぎ払い、範囲攻撃を軸に二回攻撃による刀で斬る
もし、こいつらを倒すために効果的な情報があったならば仲間達と共有して、確実に殲滅する
言っただろう
「……目障りだ、退け」
……ってね




 戦場は建物内部に移っていたが、まだ外に残っている猟兵もいた。
 1人のミレナリィドールが、倒れたにゃんこたちに笑顔を見せている。
「紳士的な猫たちとの戦いですか」
 アト・タウィル(廃墟に響く音・f00114)の笑顔は、どこか歪みを秘めていた。
 おそらくは眼のせいだろう。
 かすかに細められた黒瞳はまるで、わずかな光も届かぬ深い深い海の底の水に似た色をしていた。
「ふふ……それでは私は、紳士とは程遠い戦い方を見せてあげましょう」
 手にしているのは奇妙にねじくれたフルート。まるでそこにあるのが当然のように、彼女の手に収まっている。
 静かに息を吹き込むと、戦場に流れるには似合わない明るく楽しい曲が飛び出した。
 そして、曲と共にどこからともなく触手が伸びていく。
 それらは猟兵たちとの戦いで意識を失った、あるいは事切れたにゃんこたちへと、絡めとるように絡みついていく。
 その様をながめて、アトはフルートを奏でながらさらのもう少し目を細めた。
 触手に捕らわれた猫たちが、まるで人形のような姿へと変化を遂げながら起き上がる。
 そして、彼らは猟兵たちの後を追って建物の中へと入っていった。
 建物の中ではにゃんこたちが猟兵たちを食い止めようと必死に抵抗していた。
 振り下ろされるステッキが優希斗の体をとらえた……かと思うと、彼の姿はかき消えていた。
 蒼穹の瞳――『剣王の瞳』でにゃんこたちの攻撃を予知して読み切り、残像を残して素早く移動していたのだ。
 避けた先を狙って飛ばされた小切手を澄んだ純銀の刃で受け流して、優希斗は漆黒の短剣で反撃した。
「まだまだ数が減らないね。そろそろ決着をつけたいところだけど」
「今、加勢が行きますよ」
 呟いた優希斗の後方から、アトの声が響く。
 そして、人形と化したにゃんこたちが、ジェントルにゃんこたちへと襲いかかった。
「ニャッ! ニャんだニャ!」
 触手に操られて、ステッキを手に殴りかかってくるにゃんこたちを見て、敵は動揺を見せる。
「ふふ……紳士的な戦いを、好きなだけ行ってください。その命が尽きるまで……」
 フルートを吹き鳴らして、アトはにゃんこ同士の戦いをながめる。
「……敵を操って戦わせてるのか」
 優希斗はアトの笑みへと視線を送った。一瞬だけ彼女の姿を見つめて、それから彼は名もなき鍛冶師が鍛えた名刀を構え直す。
「……そろそろ決着を付けさせて貰うよ」
 床を蹴って素早くにゃんこに突っ込み、人形と戦う敵を連続で斬り倒す。
『剣王の瞳』で敵の動きを見切りながら、優希斗は無心に敵を斬り続けた。
 他の猟兵たちも同じだ。混乱しているにゃんこたちを撃破していく。
 敵が動揺と混乱から立ち直ったときには、もう手遅れだった。
 にゃんこたちが守りを固めている場所を猟兵たちは切り開いて、彼らが守ろうとする『なにか』のところに皆は近づいていく。
 視界内にいる最後の1体が優希斗に向けてステッキを繰り出してくる。
 だが、彼は直前に倒したにゃんこの体を盾にして攻撃をしのぐ。
 そして、優希斗の持つ名刀、鏡花水月がその1体をステッキごと切り裂いた。
「言っただろう。『……目障りだ、退け』……ってね」
 館の中心部にある広い一室が、優希斗やアトを含む猟兵たちの前で口を開けていた。
 強い気配を感じながら、猟兵たちはその部屋へと踏み込んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『天魔の幼獣』

POW   :    白の嵐
自身の装備武器を無数の【羽毛を思わせる光属性】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    白の裁き
【視線】を向けた対象に、【天からの雷光】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    天候操作
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は宇冠・由です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●傍若無人な魔獣
 人間牧場が作られていた村は今や崩壊し、ジェントルにゃんこたちの大半は猟兵たちによって倒されていた。
 にゃんこたちにとって一番重要な拠点であった建物も、もはや陥落寸前だ。
「ご主人様……お逃げくださいニャ。奴らがやってきま……ニャっ!」
 雷が落ちた。
 ふわふわとした毛を持つ魔獣は、逃亡をうながしに来たにゃんこをにらみつけただけだったが、それだけで雷を起こす力をオブリビオンは持っているのだ。
 猟兵の1人が部屋に入ろうとしたところで、雷に打たれたにゃんこが倒れる。
 にゃんこたちの主は、天魔と呼ばれる魔物だった。
 おそらく彼らは、まだ幼生体のままオブリビオンとして出現した天魔を育てようとしていたのだろう。そのために人間牧場を作っていたのだ。
 もっとも、天魔は幼生体の今でさえ、猟兵たちと戦うのに十分な戦闘能力を持っているようだ。成長すればどれだけ強くなるのかは予想もつかない。
 魔獣が苛立たしげに足を踏み鳴らすと、炎が竜巻となって壁を、天井を吹き飛ばす。
 まだ幼いながらも強大な力を持った敵……しかし、その精神は幼いままであるらしい。エサを求めて泣きわめく子供のような動きだった。
 ふわふわの羽を広げると、それが光の花びらとなって周囲を焼き払った。
 部屋から飛び出す天魔の幼獣……だがそこに、にゃんこたちを殲滅した猟兵たちが駆けつけてきた。
 目の前の敵が、自分と戦えるだけの力を持っていると理解しているのかどうか……少なくとも、魔獣が猟兵たちの存在にひるむことはなかった。
「グワァァァッ!」
 恐ろしいというより可愛らしい、甲高い咆哮を上げて魔獣は猟兵たちへ襲いかかった。
ナット・パルデ
ち、幼体とはいえ厄介な奴が出てきたな


まだ着いたのは俺だけだろう
斥候として次に繋げるための行動を心がける

入る前に猫が生きているかを確認して猫を蹴る
生きてるなら獣の攻撃範囲外に手加減蹴りで引き離す
※後で獣の入手先や育てようと思った経緯を吐かせる
死んでいたら獣に蹴って陽動に

尻尾を振り鈴を地面に打ち付け
、衝撃波で魔力を相殺すると同時に自身の体を浮かせて回避しよう
視線回避のために崩れた内装を利用しつつ隠れ、死角周辺から突進、ジャンプ
剣で少しずつダメージを与えていく


無理はしないが注意を逸らせるタイミングがあるなら攻撃手段を1つ潰したい
手頃な石を目にぶつけるだけでも暫く目は使えないだろう

決定打は他の奴に



●動き出す天魔
「ち、幼体とはいえ厄介な奴が出てきたな」
 ナットは天魔の幼体から視線を外さないようにしながら吐き捨てた。
 視界の端で、主の不興を買った形となった猫の様子を確かめる。どうやらすでに死んでいるようだ。
 おそらくはナットも食べ物をくれないようだと判断したからだろうが、天魔は無造作に彼の横を飛び抜けようとした。
 その天魔に向かって、ナットはにゃんこの死体を蹴り飛ばす。
 通りすぎた死体に気をとられた瞬間、ナットの小柄な体は背後から天魔へと襲いかかっていた。
 細剣を突き刺す。
 放つ冷気が一瞬だけ敵を『止』めた隙に、視線をかわすためナットは素早く壊された部屋の破片を盾にした。
 炎の竜巻が巻き起こり、周囲を薙ぎ払おうとする。
 ナットが尻尾を思い切り叩きつけると、鈴が鳴った。衝撃波が竜巻を相殺しようとするが、それはいくらか炎の勢いを弱めただけだった。
「……あんななりでも、猫どもよりはるかに上ってわけか」
 身体中の毛に焼け焦げを作りながら、ナットはさらに死角からの突進を繰り返す。
 マタタビでドーピングした動きで、ナットは幾度も天魔を貫くが、まだオブリビオンが倒れる様子はない。
(「できれば攻撃手段の1つくらいは奪っておきたいところだが……」)
 細剣を幾度も突き刺しながら、ナットは隙をうかがう。
 天魔の起こす激しい嵐は、自らの視界すらふさぐことがある。
 その瞬間を狙って、ナットは部屋の中に落ちている石を目に向かって飛ばした。
「ぎゃぅっ!」
 悲鳴をあげる天魔の様子を確かめようと……した瞬間、ナットの頭上に雷が落ちた。
「しくじったか……?」
 だが、雷は一撃だけで、追撃は行われなかった。代わりにまた天魔が鳴き声をあげる。
 目を潰すにはいたらないまでも、流れた血が目に入って、一時的に視界がふさがったようだ。
 痛みに悲鳴を上げながら、天魔はもといた部屋から離れるほうへと跳躍していった。

成功 🔵​🔵​🔴​

名張・辿
どれだけ強く、可能性を宿していようが、
どう育とうが必ず世界を滅ぼそうとするモノ、オブリビオン、難儀だねぇ
ちと酷い真似もするけどさ、恨みたいように恨んでくれよ

【人恋しい共存不可存在】を使って、動き回りながら風の刃を飛ばしながら戦うよ
建物や障害物で視線を切りながら、隙を見て攻撃していくかね

攻撃する際は「毒使い」として手持ちの毒物を風に乗せたりしたうえで、敵の目を狙う
他にも砂礫を巻き上げるなども手段も合わせて敵の目、視力にダメージを与えることを目的にするよ
視線がトリガーになる攻撃があるんなら、そこから削るさ

読まれて防御されても、相手の動きを制限できるならそれでよし、
目を閉じたくなるように攻め続けるよ


北条・優希斗
……悲しいな(微かに目を細めながら)
あのにゃんこ達に飼われていたのは人間だけじゃ無い、お前さんもだった、と言う訳か。
……ならば、幾らでも食わせてやるよ
――腹の内側からお前を喰らい尽くす『刃』達をな
真の姿:片方が蒼穹のまま
UC剣王の瞳で数秒先の未来を視て、天候操作を行おうとするタイミングを伺う。
それ以外の攻撃に関しては、剣王の瞳で読みながら残像・見切りで攻撃を避け、オーラ防御で被害を最小限に食い止めるよ
天候操作の瞬間を狙ってダッシュで懐に潜り込み、刀による『二回攻撃』、『騙し討ち』で攻撃した後、腹部に向けてUCを発動させるよ
……御免な
俺に出来ることは、この大量の刃をお前に食わせてやることだけだ


アト・タウィル
ふむふむ、あの猫たちは、この子を育てていたと
ふふ、餌が人間ということさえ目をつぶれば、可愛らしいものですね
ですが、ここで終わりです

私は前に立って戦うのは得意ではありません
皆さんのために、この曲を吹きましょう
【狂気の行進曲】を使い、皆さんの動きやすいようにしていきます

雷撃などが飛び交うでしょうが、多少の傷は気にしません
私を止めるなら、私を壊す気で来てください
ふふ、とはいえ、子供の加減のない攻撃ですからね……場合によっては吹き飛ばされることもあるかもしれませんね


アーチス・カーライル
アドリブ・絡みOK

あなたが元凶の天魔ってやつね…人を食らって成長するもの、か…なかなか興味深いわ。
だけどっ!二度と同じようなことをさせないためにも今ここで倒してやるんだからっ!

真の姿を開放【髪と瞳が炎を纏う】
【全力魔法】の【エレメンタル・ファンタジア】で薙ぎ払う…!
全力で突っ込むよっ!みんな、巻き込まれないように注意してね。
炎の雨よ、降り注いで――
建物ごと、全部燃やし尽くすっ!




 にゃんこたちを倒した猟兵たちは、飛び出して来た天魔の幼獣と行き当たった。
「ふむふむ、あの猫たちは、この子を育てていたと。ふふ、餌が人間ということさえ目をつぶれば、可愛らしいものですね」
 淀んだ目で敵をながめて、アトが口の端を歪めた。
 天魔の幼獣を目にして、猟兵たちは皆すぐに、それはにゃんこたちが人間牧場を作って育てていた存在なのだと理解していた。
「どれだけ強く、可能性を宿していようが、どう育とうが必ず世界を滅ぼそうとするモノ、オブリビオン、難儀だねぇ」
 頭巾を持ち上げて敵をながめながら、辿が呟く。
「……悲しいな」
 蒼穹の色をした瞳をわずかに細めた優希斗も同様だ。
「あのにゃんこ達に飼われていたのは人間だけじゃ無い、お前さんもだった、と言う訳か」
 武器を握る手に力がこもっているのは、戦意の高まりだけによるものではない。
 もっとも辿の言う通り、どうあれオブリビオンは倒さなければならない。
「あなたが元凶の天魔ってやつね……人を食らって成長するもの、か……なかなか興味深いわ」
 アーチスが言った。
「だけどっ! 二度と同じようなことをさせないためにも今ここで倒してやるんだからっ!」
 そして、エルフの少女は力強く宣言する。
 目の前の敵は、食べ物を求める邪気のない幼子であり、同時に人食いの化け物なのだ。
「ちと酷い真似もするけどさ、恨みたいように恨んでくれよ」
「……ああ、幾らでも食わせてやるよ。――腹の内側からお前を喰らい尽くす『刃』達をな」
 辿や優希斗もそれぞれの武器を構えた。
「そうですね。この子は、ここで終わりです」
 ねじくれた笛を吹きならして、アトは不気味な音色を響かせる。
 そして猟兵たちは、不気味な調べが流れる中、天魔へと戦いを挑んだ。
 近づく敵の気配を察したか、天魔が光の羽を周囲に散らせた。降り注ぐように飛ぶ輝きが猟兵たちに襲いかかる。
 だが、隙間なく襲い来る羽を、猟兵たちはそれぞれ武器で払いのけ、あるいは防具で受け止めてその威力を軽減していた。
「さぁ進みましょう。進めばすべてがうまくいきます」
 アトが吹きならす音色は狂気をはらんではいたものの、それは聞く者へ確かに力を与えていたのだ。
 禍々しい、呪われた力かもしれないが、幼くも強力なオブリビオンに対抗しうる力なのは間違いない。
 辿が意思持つ疫病をまとって風刃を放ち、優希斗はオーラで身を守りながら接近する気をうかがっている。
「全力で突っ込むよっ! みんな、巻き込まれないように注意してね」
 叫んだアーチスの髪と瞳が炎を帯びていた。それが彼女の真の姿なのだ。
「炎の雨よ、降り注いで――建物ごと、全部燃やし尽くすっ!」
 壊れかけた館を、アーチスが呼び出した炎が焼きつくす。渦巻く熱気が周囲を包み込み、中心にいる天魔をあぶっている。
「ピギャー!」
 幼獣が悲鳴をあげた。
 なおも輝く羽が舞うけれど、それは猟兵たちへの致命打にはならない。
 とはいえ猟兵たちの攻撃も、まだ決定的なダメージは与えていなかった。
 血まみれで、最初閉じられていたつぶらな瞳が開く。
 視線の先にいたのは笛を吹きならすアトだ。いや、その笛の音こそが視線を引き付けたのかもしれない。
 ミレナリィドールの女性が、降ってきた雷に吹き飛ばされる。
「おい、無事かい?」
 瓦礫を、視線をふさぐ防壁に使いながら辿が問う。
「なんともありませんよ。多少の傷は気にしません」
 アトは微笑を浮かべたままで応えた。
「ふふ……私を止めるなら、私を壊す気で来てください」
「壊す気はまんまんに見えるがねぇ。無茶はせんようにな」
 また笛を吹き始めるアトを横目に、辿は瓦礫の陰から天魔の様子をうかがう。
「さて、せっかく目が開いたところ悪いが、また閉じてもらうとしようかねえ」
 辿は疫病を混ぜこんだ水の入れ物を軽く振った。
 ありがたいことに、天魔はもう目の辺りに傷を負っているようだ。毒はよく効くことだろう。
(「いつまでも寿命を削りっぱなしってわけにもいかないからなぁ」)
 アーチスが館を壊してくれたお陰で、目潰しに使えそうな砂もそこらに散らばっている。
 毒素と呪詛が風の刃を作り上げる。疫病を封じた毒水と砂を投げあげ、風刃と共に辿は天魔へと放った。
「ギニャァァォ!」
 目の辺りの傷に、風がさらなる傷を刻んだ。染み込んだ毒で激痛を覚えたか、天魔がまた甲高い悲鳴をあげる。
「これで、目を開けていたくない気分になってくれりゃいいんだがねえ」
 目を強くつぶっている天魔をながめながら、辿はさらに目へと攻撃を加える。
「喰らいなさい! あたしの全力の魔法で薙ぎ払ってやるわ!」
 アーチスがまた炎の雨を降らせて、さらなる火傷を負わせる。
 周囲にいる猟兵すら暑さを感じるほどの熱気が村を覆っていた。
 天魔はその熱気を打ち消そうとしていた。
「気をつけて! 氷の雨……雹が降ってきます!」
 優希斗は剣王の瞳でそれを予見していた。
 次の瞬間、天魔を中心に雹……と呼ぶにはあまりにも大きな氷の塊が館の残骸へと降り注ぐ。
 石ころほどの大きさを持つ無数の氷に、アーチスが熱した空気は一気に冷やされていく。
 警告のお陰で仲間たちは雹から身を守ることができていた。
 そして、優希斗自身は攻撃の直前、一気に天魔との距離を詰めていた。
 天魔そのものの体を盾に使い、懐に踏み込んで雹を防ぐ。
 純銀の刃が連続で敵を切り裂いた。
「……御免な」
 掌を傷口に押し当てて、優希斗は告げた。
 それは、死にゆく生物への哀悼の言葉だった。
「俺に出来ることは、この大量の刃をお前に食わせてやることだけだ」
 多元世界から呼び出した無数の刃が傷口から飛び込んでいく。
 アトが吹き続ける行進曲に合わせて、100を超す剣が幼獣の体内を進撃する。
 天魔が天を仰いで動きを止めた。
 辿の風刃やアーチスの炎など、他の猟兵たちの攻撃も、まだ降っている氷雨を打ち破ってオブリビオンの体を削っていく。
 やがて、無数の剣は幼獣の体を貫いて天へとほとばしり、天魔は断末魔の悲鳴をあげた。
 制御を失った氷の雨が、かつて村だった場所を凍結させていく。
 誰かが『逃げろ』と告げた。
 村の外へと逃れた猟兵たちが振り向くと、村はもはや完全に氷に閉ざされている。
 育つことが許されなかった幼獣のために、幾人かがわずかの間、目を閉じた。

 避難させていた子供たちのもとへ、猟兵たちは戻っていった。
 十分に離れた位置だったお陰で、巻き込まれた者はいない様子だ。
「子供たちを帰してやんねえとなぁ」
 調査の段階で、にゃんこたちが子供集めなの状況をまとめていた資料を回収していた者がいたため、行き先についてはいちおう当てはあると言える。
 もっとも、その先までは猟兵たちがどうにかできる領域ではない。
 作り物であっても平和な暮らしを過ごせた期間が、彼らの今後に良い影響を与えるといい。
 少なくとも猟兵たちのうち何人かは、そう願っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月12日


挿絵イラスト