祈りこめたる桜色の
●猟兵さん、事件ですよ
「帝都桜學府の技術部門、『
帝都鍛冶司』から、新たな依頼がありました……」
帝都鍛冶司、それは激化する影朧やテロル組織との戦いに向けて日々新たな武装の開発研究を行う技術部門。所属する人員は皆帝都でもトップクラスの腕前を持つ鍛冶師達。刀から光線銃、動力甲冑のような個人装備はおろか、ラバウルの鉄道のような大型設備さえも彼らの手がけた作品だという。
寧宮・澪(
澪標・f04690)が並べるのは、今回の新兵器。並んだ小さな小物達は兵器と言うには、少々可愛らしいものかもしれない。
器をひねれば、覗くのは淡やかな桜色のコスメ。肌理を整える白粉に、うっすら桜色乗せる頬紅やリップ、アイシャドウ。ネイルカラーも淡い桜色。桜の香りの香水もあったりする。
「この新兵器の、試用に協力してほしい、というのがその内容……影朧を相手に実際に使ってみて、使用感や欠点に対する改善案を聞かせてほしい、ということです」
澪はそれらの桜コスメのようなものを示し、依頼の中身を話し出す。
新兵器の細かな内容は現地で聞かせてくれる。この新兵器の特性や、欠点もあるそうだ。実際に影朧との戦いで使用して、感想を聞かせてほしいというのが今回の話。
「よければ、お手伝いお願いします……感想は、縁結びのお祭りに参加しながら、という変わったお誘いでした。屋台とか、奢ってくれるそうですよ……」
そう言って、澪はサクラミラージュへと道を繋ぐ。
●祈桜コスメ
帝都鍛冶司の部屋では、小柄な年配の女性と、細身の若い男性が猟兵達を出迎えた。
「ようこそおいでくださいました。あたしは、この『祈桜コスメ』の開発責任者、
花野と言います。『幽玄ラムプ』の開発もやってます」
「私は補佐の
咲岡と申します」
おっとり話す二人は猟兵を歓迎した後、早速『祈桜コスメ』について話し始めた。
元になっているのは幻朧桜の花や樹液から作られた、様々な化粧品、桜コスメ。古くから化粧は呪いに通じていることから、いっそ呪いを組み込んでより身を守るようなコスメにできないか、というのがコンセプト。
特性は使用者の守護と、自我や精神を支える効果。欠点は物理面、攻撃方面の強化はできていないこと。
「自衛には使えると思いますが……やっぱり実際の戦いで役立つか、専門家の意見が聞きたいんですよ」
花野が祈桜コスメを手にして言う。開発中の品であるため、実際の影朧に使用したことはもちろんなく、どれだけ有効かも確かめてほしい。
「おそらく心揺さぶる影朧には有効だと思います。攻撃面の強化無しでどれだけ使えるか、試してもらいたいのです」
咲岡は好きなコスメを使ってください、と猟兵達の前に、様々なコスメを積んでいく。
「うまく効果があれば、きっと帝都を守る一助になるはずです。男性にはオードトワレやフェイスパウダーなどもあります。ちょっと心理的ハードルはあるかもしれませんが、よろしければご協力お願いします」
「衣類や武器以外でも、力になれたら、と構想したものなんだ。できたら試してみてほしいね」
帝都鍛冶司の祈りの篭った様々なコスメ達。如何様な力を秘めているだろうか。
霧野
霧野です、よろしくお願いします。
●シナリオについて
帝都鍛冶司から新兵器の試用の依頼です。
『祈桜コスメ』を用いて影朧と戦い、使用感や改善点を確かめ、縁結びのお祭りで報告しつつ交流してみてください。祈桜コスメをうまく利用して戦うと、プレイングボーナスがあります。
・祈桜コスメ:影朧からの精神攻撃から身を守る効果に特化している。欠点は物理、攻撃面の強化は特にないこと。
あと開発中なのでちょっと違和感があったり色味がまだ桜色だけであったり。
第1章 集団戦
『誘花の影朧』
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POW : 気まぐれな落花
【舞い散る花】に触れた対象の【戦う意思】を奪ったり、逆に与えたりできる。
SPD : 花あそび
【花の香り】が命中した生命体・無機物・自然現象は、レベル秒間、無意識に友好的な行動を行う(抵抗は可能)。
WIZ : 花檻のたわむれ
レベルm半径内を【所構わずに咲く花】で覆い、[所構わずに咲く花]に触れた敵から【攻撃力】を吸収する。
👑11
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●
種々様々なコスメから、自身の好みを受け取って、戦化粧か呪いかのごとく身に纏い。
影朧出現の報を受け取った猟兵が見たのは、帝都の一角に突如現れた美しい花畑だった。心惹かれる香りをまとい、その香りと美しい姿で人を和ませてくれる、そんな花だ。
植物の姿の影朧、という珍しい存在は、ただそこにあるだけ。茂る花々をかき分けて進めば、おそらく『誘花の影朧』が惹かれた影朧がいるのだろう。その影朧を祓えば、誘花達も消えると分かる。
桜學府が周囲一体を管理しているため、誘花の影朧は放置しても一般人の被害が出ることはない。この影朧が、この場で人を害することはない。
コスメの効果を確かめつつ、花を愛でて足早に進むか、敢えて花を散らしていくか。
それは猟兵の自由意志に委ねられた。
ヘルガ・リープフラウ
頬紅にリップ、シャドウにネイル
春に舞う桜を纏うように祈桜コスメのメイクを施して
呪術的な意味以上に
女の子にとって自分を美しく彩るのは心が踊ります
わたくしの力は歌による祈りと浄化
心が折れてしまっては武器を奪われるのと同じこと
精神面の強化は最大の助けとなりましょう
誘花たちの力は、敵の攻撃性を奪うことに特化している
こちらから仕掛けなければ反撃を受けることはなさそうだけど
強敵との戦いでこのような妨害を受けてはたまらない
将来に備えた訓練として、心を強く保つことに集中しましょう
不安に怯える心を勇気づけるように
ふと芽生えた違和感を払拭するように
冬から春へ、芽吹く命の花のように
平和への願いを抱いてわたくしは進む
●
白皙に咲いたるは桜色。春に舞う桜のように、この世界に咲き誇る花のように、頬紅にリップ、アイシャドウ、爪の先まで桜を纏えば、乙女の心浮き立つというもの。
(呪的な意味以上に、女の子にとって自分を美しく彩るのは心が踊ります)
ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)は肌に桜色のメイクを施した。UDCアースのコスメほど使い心地がいいとは言えないが、それでも使い心地の良いように、と考えて作られていることがわかる。同時にどうか守られますように、と祈りが込められていることも。
そして影朧のいる場所へと向かえば、心揺るがす美しい花の姿。そこは街中ではあるけれど、ふわりと花の香りが広がり、心和むようなそんな場所になっていた。少し見ているだけでもところ構わず咲き誇り、こちらへ手を伸ばすかのよう。
(誘花たちの力は、敵の攻撃性を奪うことに特化しているよう。こちらから仕掛けなければ、反撃されることはなさそうだけど)
ヘルガは覚悟を持って揺れる花の中を進む。花がふわりと触れれば、心から攻撃をする意志が、力が奪われていく。けれどそれは余りにも緩やかで、守る力が奪う力の大部分を弾いていた。
(わたくしの力は歌による祈りと浄化。心が折れてしまっては武器を奪われるのと同じこと)
ヘルガは身を守る祈りのコスメを感じながら、すっと背を伸ばす。
(このような精神面の強化は最大の助けとなりましょう)
例えば、強敵との戦いで何も身を守るすべもなく、誘花の手に晒されたら。猟兵であっても危機に陥るかもしれず、それが一般人と言うならば。
(このような妨害を受けてはたまらない)
不安に怯える心を勇気づけるように、芽生えた違和感をぬぐい去るように。ヘルガは歌い、気持ちを奮い立たせ先へと進む。
冬から春へ、芽吹く命の花のごとく、抱いた平和の願いを側に。桜の守りと共に行く。
大成功
🔵🔵🔵
フィーナ・シェフィールド
桜色のコスメは普段から使ってますし、市販されたら購入しようかしら?
ふふ、宣伝にもご協力しますよ?
せっかくなので、頬紅やリップなど全部使わせてもらいます。
ステージに上がる時と同じようにメイクして、出現した花畑に向かいますね。
肌につけた感じはもう少し改良が必要かな?自然な感じの発色は好みです。
今回の依頼はコスメの効果確認ですし、攻撃をどこまで防げるか試してみましょう。
花畑の手前でスピーカー・ドローンを展開しておきます。
花からの攻撃を感じたら、破魔の力を込めた歌唱を開始。
精神攻撃から守る効果は、心の力で影朧に対するわたし達には適しているようですね。
『包み込む破魔の歌声』で誘花を浄化していきます!
●
フィーナ・シェフィールド(天上の演奏家・f22932)は並べられたコスメ達を手に取っていく。
(桜色のコスメは普段から使ってますし、市販されたら購入しようかしら?)
軽く使ってみた感覚としては、なるほど肌に完全に馴染むとは言い難いつけ心地。市販品の手頃な価格の品でも、もう少し使い勝手もいいものだろう。けれども花の色を映したような自然な発色はフィーナにも好ましく思えた。
「肌につけた感じはもう少し改良が必要かな? でも、これで身を守るというのは魅力的です」
そんな化粧品としての感想を花野や咲岡に伝えながら、販売されたときには宣伝にもご協力しますよ、と笑ってみせて。
フィーナはステージに上がるときのようにメイクする。頬に、まぶたに、唇に。フィーナを咲き誇る花に見せるよう、完璧に化粧をあしらって、爪の先まで桜を咲かせ。
身を守る力を感じながら、咲き誇る誘花へとまさに
ステージにも向かう心地で歩を進めた。
ふわりふわりと帝都の一角に花畑、過去よりにじみ出た花々は、ふわりと揺れては広がり増える。
(今回の依頼はコスメの効果確認ですし、攻撃をどこまで防げるか試してみましょう)
ついと指のひとふりで、フィーナは花畑の手前にツウィリングス・モーントを展開する。双子の月はその名の通り、フィーナの周りで月のように付き従う。
ふわり、広がる花がフィーナに触れる。触れた場所から抗う意思が、怒りや恐れが、排斥を願う気持ちが弱くなるような心地が広がりかける。
けれども身にまとう桜の祈りが、その心地を跳ね除けるのも同時に感じるのだ。
(ええ、確かに精神攻撃から守る効果は、心の力で影朧に対するわたし達には適しているようですね)
綺麗な花でも影朧で、消えると分かっていても排除すべきもの。
フィーナは歌う。破魔を祈り、双子の月へ、更に呼び出したスピーカーポッドへと伸びやかに声を届け。
辺り一帯に清らなる歌声を響かせて、ふわりふわりと揺れては増えた、誘い花を浄めていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
朱赫七・カムイ
⛩神櫻
化粧品が兵器とは興味深い
私は何時も私自身の厄災が外に漏れぬようにと厄封じの朱引しかしていないがサヨもいつも時間をかけている
存分に桜の力を宿した化粧品達はきみによく合う
噫、私の巫女がますます美しくなってしまう
え?!私は美女にはならないよ?
男でも効果を発揮するものなのか試してみよう
桜色の口紅なら違和感は…そんなにない、あ、いい香り
私の巫女が桜の春色化粧で可愛すぎる!
之がこすめの効果
確かに精神攻撃を跳ね除けられる
巫女が可愛くて誘花すら目に入らぬ
結界を張りサヨを守り、花刈るように斬撃を放つ
黄泉ノ絶華
何かを奪われている気がするが
それよりも
きみの後ろに花を散らしたらもっと美しい!
散らして進もう花道を
誘名・櫻宵
🌸神櫻
祈桜コスメ!かぁいいわぁ!
戦化粧ともいうでしょう?
化粧はね戦装束なの
カムイだってお化粧してるじゃない
早速試してみましょ!
お化粧は得意なの
私のかぁいい神様を美女にしてあげる
口紅なら抵抗ないでしょ?トワレもつけとこ
桜のアイシャドウに頬紅、紅の爪に桜彩を重ねて
柔い口紅を塗り
なかなか使いやすくて私は好き
自信が湧いてくる
不安はない
こんなに完璧に武装したのだから
…カムイも元影朧からの転生…すごい元気
之は効いてるのかしら
花の香りに眦細め、神罰と仙術かさね咲かすは喰華
美しい花ならばもっと美しく咲かせてあげましょ
神様が散らした花の中、祝うように呪うように跳ねて、舞い
咲かせる
誘花、私を彩る桜なおなりなさい
●
並ぶ様々な桜色を見比べて、はしゃぐ心は抑えずとも良いもので。
「化粧品が兵器とは興味深い」
兵器といえば武器や防具、戦に役立つものがやはり思い浮かぶけれど、と朱赫七・カムイ(禍福ノ禍津・f30062)は並べられた桜祈コスメを見比べる。
「祈桜コスメ! かぁいいわぁ!」
淡やかな白から僅かに色を変え、辿り着くのも薄紅の色味を見比べて、誘名・櫻宵(咲樂咲麗・f02768)は華やぐ声を上げて。うきうきと何を使うか迷いながら、興味深げなカムイに微笑む。
「カムイだって何時もお化粧してるじゃない」
「これは厄封じの
呪いの朱引だよ。私の厄災が外に漏れないように。サヨはいつも時間をかけて、美しく装っているね」
「ええ。ほら、戦化粧ともいうでしょう? 化粧はね、戦装束なの」
己を奮い立たせ、望む印象を与え、時には場の雰囲気すら支配する。そういうものだと櫻宵は言う。
「百聞は一見に如かず、早速試してみましょ!」
「存分に桜の力を宿した化粧品達はきみによく合う」
早速とばかりに櫻宵が取り上げたのは淡い桜色乗せる紅。櫻宵自身に塗るのかとカムイがうっとりと穏やかに見ていれば、手招く指先が揺れていた。首を傾げてみれば、櫻宵はにっこり楽しげに笑ってみせる。
「ふふ、私のかぁいい神様を美女にしてあげる」
「え?! 私は美女にはならないよ?」
首を振って見せても櫻宵の手は止まらない。たおやかな動きでカムイの僅かな抵抗を押さえ、そっと紅を乗せていく。
「お化粧は得意なの、ほら口紅なら抵抗ないでしょ?」
「このくらいの色なら、違和感は……そんなにない、あ、いい香り」
淡く唇そのものの色を際立てるような色に、カムイも頷く。そこに櫻宵がふわりとトワレを吹き掛ければ、爽やかな中に極々ほのかに桜が香り、戸惑う眉もゆるり解けた。
櫻宵自身も自分に化粧を施していく。まぶたにふわり、頬に柔らかに。紅い爪紅の上にひらりと一枚、桜の花弁。解けぬように透明に近い桜の彩りを加え、カムイと揃いの口紅を柔く乗せていく。
「なかなか使いやすくて私は好きね、桜祈コスメ」
「噫、私の巫女がますます美しくなってしまう」
感嘆の声も誇らしく受け止め、櫻宵は優美に微笑んだ。完璧に装えば自信も湧いて不安はなく、大切な神が手放しに褒めてくれる。それを支えるように、確かに守る力を感じもするのだ。
「私の巫女が桜の春色化粧で可愛すぎる! 之がこすめの効果、素敵だね」
性別関係なく効果が発揮されているのは確かだが、それ以上に装った櫻宵に魅了されたカムイがそこにいた。どんな精神攻撃も櫻宵の可愛らしさには敵うわけもないと言わんばかりである。
「……すごい元気」
カムイも元影朧から転生した存在だが、害は及ぼされてはいないようだ。むしろ晴れやかな程に元気いっぱいで、これも効果のうちかしら、と首を傾げた櫻宵ににこにこしているばかり。
そんな二人が知らされた場所へと赴けば、そこには揺れては誘う花の群れ。
確かに綺麗なのだろうけれど、カムイの目には入らない。側に立つ櫻宵を守る結界を張り、神殺の斬撃で花を散らす。
ふわりと舞う花びらがカムイに触れれば何かを奪われている気もしたが、それよりもっと心を奪うものがある。
「噫、きみの後ろに花を散らしたらもっと美しい!」
散りゆく花の香りに桜色乗せた眦細め、神罰と仙術重ね織り上げ櫻宵も笑う。
「美しい花ならばもっと美しく咲かせてあげましょ」
神が散らした花の中、祝い呪い、跳ねて舞えば櫻宵の桜が一層美しさを増していく。
「美しくて可愛らしい私の巫女。君の桜をもっと咲かせよう」
「ええ、私の愛しくてかぁいい神様。貴方の目を釘付ける程に咲きましょう」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ケイラ・ローク
桜色のコスメ?
あたしはリップとネイル!控え目なピンクが可愛いわねっ💕ちょっと地味(キマフュー目線)だけどシンプルなのがかえって新鮮かも~
桜學府の人に敵だって教えられたのは綺麗な花
攻撃はしてこないらしいのよね、…正しくは物理攻撃はナシ
ん~でも、花の甘い香り💕
桜コスメで花達にはローラク(籠絡)されないよん
花はステキだしあたしは桜コスメが可愛いので…よし記念に写真撮っちゃう💕ポーズ✨パフォーマンスは忘れない✨
UCで巨大白猫になったらもう1枚💕
お花さん、じゃれたくなっちゃった🐾
巨大猫が友好的に花畑で遊ぶと結果的にはそこを転げ回り踏み潰し花を蹴散らす
あっゴメン
荒らすつもりは無かったのよぅ
●
「桜色のコスメ?」
「そう、この国に咲いてる幻朧桜のエッセンスを使った桜コスメ、そこにお呪い祈りを篭めた桜祈コスメさ」
花野が並べるコスメをケイラ・ローク(トパーズとアメジスト・f18523)は一つ手に取る。開発中の品らしく、装飾のないパッケージを開けば淡い桜の色が咲いた。
「わ、控え目なピンクが可愛いわねっ💕」
うきうきとケイラがリップを唇に乗せればほのかに桜の色が重なって、ネイルを塗ってみれば、ふわりと爪に桜咲く。
「シンプルなのがかえって新鮮かも~」
キマイラフューチャーのポップでビビッドな色彩に比べれば地味ではあるが、普段と違う色使いはわくわくしてくるものだ。
柔らかな花の祈りに包まれながら、ケイラは影朧が出たという場所へと赴いた。
「確か、攻撃はしてこないらしいのよね、……正しくは物理攻撃はナシ」
そこにあったのは美しい花が咲く風景。心揺さぶる誘花の影朧だ。帝都の一角に突如として現れた誘い花は、ふわりと甘い香りをケイラに届けてくる。
「あ、いい匂い……花の甘い香り💕」
ふわりふわりと香る甘さにケイラの心は少し揺れたけれど、すぐにいつも通りに戻っていく。桜色の祈りが彼女を守っているのだろう。
「ふふん、桜コスメも完璧。
ローラクされないよん」
余裕たっぷりに2つの尻尾を揺らめかせ、ケイラはにんまり笑う。
ステキで綺麗な花に、可愛い桜色のコスメときたら、やるべきことは決まっていた。
「よし記念に写真撮っちゃう💕」
きらりとポーズも決めて、より映える1枚目指してパフォーマンスも忘れずに。
カシャリカシャリとベストを探し、浮き立つ気分のままに姿も変わる。
するりとオッドアイの巨大な猫又に姿を変えたケイラはもう1枚写真を撮ったあと、ふと花を見る。
揺らめくその花は、ケイラを誘っていた。
「じゃれちゃう、じゃれちゃおう🐾」
友好的とはいえ巨大な猫又がぶんぶん尻尾を振って、ぴょんぴょん跳ねて掛け回り転がり回れば、花畑はどうなるか
「あっゴメン。荒らすつもりは無かったのよぅ」
しょんぼり反省する猫又の前に、花も茎も葉っぱも散らすばかりであった。
大成功
🔵🔵🔵
夜鳥・藍
化粧品で心の守りをと言うのはとても分かりますね。
古来より呪術的なもので化粧は生まれましたし、その意味が薄れたとしても手入れされ煌めく爪先を見るだけで気持ちがときめきますもの。
というわけで爪紅を使わせていただきましょう。
クリスタライズで姿を消して足早に通り抜けてしまいましょう。
疲労もそして自分でも見えなくなってしまう爪紅の色もしょうがないですね。
でも何もつけないいつもより気持ち重さを感じる指先はそこが確かに桜色である事を感じさせてくれる。軽く触れればつるりとしてそして吸い付くような感触もまた常とは違うもの。
意識が周りの花々へ向かいにくくなるのは確かに守られてる感じはしますね。
●
柔らかな桜の色味の爪紅達が、いくつか並ぶ様は色が移り変わる桜並木のよう。桜色の範囲外の色はないけれど、その桜色というのも案外様々にあるものだ。
「化粧品で心の守りをと言うのはとても分かりますね」
「そうかい? 皆にもそう思ってもらえるとうれしいねぇ」
呟きを拾った花野の言葉を聞きながら、夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)はそのうちの一つを手にとって、爪の先へと刷毛で塗る。薄く伸ばしてまた別の爪へ、と塗っていけば、柔らかな桜の色が咲いていく。
(古来より呪術的なもので化粧は生まれましたし、その意味が薄れたとしても手入れされ煌めく爪先を見るだけで気持ちがときめきますもの)
丁寧に、柔らかに。整えた爪を彩る桜を広げて、藍は乾くのを待つ。固まり艶が出れば、桜色に染まった爪の出来上がり。
施した爪と共に帝都の一角に向かえば、そこにあったのは花畑だった。帝都の街並みの光景を変えてしまった誘花の影朧は、ふわりふわりと揺れては広がっていく。
藍はその中を姿を消して足早に通り抜けていく。
(こうすれば見えなくなって気も引かないはず。けれど疲れますし……爪紅も見えないのは残念です)
それでも、確かに守りがあるのを感じている。常よりも気持ち僅かに重い爪、指で触ればつるりと滑らかで、吸い付くような感触がそこにはある。そこには桜が咲いていると感じさせてくれるのだ。そこから爪紅に込められた祈りの力というものも、わずかだけれど確かにある。爪を染めただけでは、少し弱いかもしれないとも思えるけれど。
(でも、意識が周りの花々へ向かいにくくなるのは確かに守られてる感じはしますね)
装えば心は少しでも変わるもの。それが揺らぐ意識を支えてくれると、心を守ってくれるというならば、弱くてもいいのだろう。化粧品ならば組み合わせて使えばより効果を高める工夫もできそうだ。
揺れては誘い、広がる花に足を取られず、疲れを耐えて藍は先へと進んでいく。爪に宿った桜色を感じながら、心を揺るがせずに。
大成功
🔵🔵🔵
黄・焔誠
【想焔】
アドリブ歓迎
_
化粧品を実戦に使用するのか、面白いな
いいな、気に入った
昔々、俺がまだ王だった頃に化粧を教わったことがある
使用する道具の形は多少なりとも違っていようとも
感覚は覚えている
「ミラ」
折角の機会だ、彼女に口紅を贈りたい
戦場にて歌を紡ぎ、華を齎すその唇へ
淡く美しい花の色を
俺たちは恋人でもない
故にこうして近距離で顔を見ることなど無く
今更女性に対して照れも恥じらいもないが
彼女は繊細で可愛らしい顔立ちだと素直に思う
「触れるぞ」
顎を軽く掬って、元の色を抑えてからリップの色を差し
咲いていく桜をイメージしてグラデーションにしようか
仕上がりを見て、フと瞳細め
「──綺麗だ、お姫さん」
花の色は、彼女によく似合っている
礼の言葉には微笑って「こちらこそ」と返し
彼女の申し出にも喜んで手を差し出そう
彩られていく指先が、込められた願いが、くすぐったい
「お人好しだな」
くすくすと微笑って
害をなさないなら態々散らすこともあるまい
花は愛でるのみに留めておく
ミラ・オルトリア
【想焔】
アドリブ◎
戦に花と光を贈る歌姫に化粧も大事なアイテム!
化粧に力が宿るなんてロマン感じちゃうなぁ
そーだ!
焔誠くんに何かしてあげたいなぁ
…ネイルがいいかな?
手許に彩があると不思議と心が安らぐもの
「はぁい」
彼に呼ばれて近くへと
ついでとネイルを2色持っていく
これを彼にしてあげよう!と考えて
わくわくとしているのも刹那
一声と共に上がる視線
普段寄せる事のない距離感
僅か驚く瞬きの間に彩られるのは唇
彼の美しいかんばせで綺麗と云われると
素直に照れてしまう
頬は仄かに紅に染めて
「…焔誠くんは、時々王子様みたいね」
――ありがとう
礼は蕾みたいにはにかむように
「わ…私も!焔誠くんにネイルしてあげる」
彼の爪に彩るは桜の淡紅白とほんの遊び心
左小指だけ彩変えて薄紅を咲す
「左の小指はちょっぴり特別!
この指に色を乗せるとね?お願い事が叶うって母に教わったの」
小指に綺麗な薄紅仕上げれば満足げに
「明日もその先も
焔誠くんが元気でありますようにっ」
花が害なき存在なら
彼と愛でるひと時を楽しむ
何もないなら誘花も愛らしい花の命だもの
●
机の上に並べられたのは、小さな物達だ。装飾はまだされず、単純で質素にも見える容器達。
それでもくるりと蓋を開ければ、淡い桜色が広がった。この世界にいつでも咲く花の色を映したコスメ達。まだ色味は少ないと聞いていたが、桜の濃淡くらいは違いがあるようだった。
「化粧に力が宿るなんてロマン感じちゃうなぁ」
爪にあしらうネイルに頬紅、白粉などを見比べて、戦場にて希望を歌うミラ・オルトリア(デュナミス・f39953)は乙女らしくふわりと笑う。戦場にて命には花を、世界には光を贈る歌姫には化粧も大事なアイテムの一つだ。彼女の歌が届いたものが、彼女を見ていっそう希望を感じられる一助にもなるのだから。
「化粧品を実戦に使用するのか、面白いな。……いいな、気に入った」
色を移り変わらせる口紅の器を並べ、黄・焔誠(フレイムブリンガー・f40079)も僅かに笑う。時に人の心を浮き立たせ、時には見た者の、ひいては自身の居住まいを正す力に、時には己を思い描く姿へと近づける、そんな品に込められた力に思いを馳せながら。
さて、試してみてほしいと言われれば使う品を選ぶ必要があるわけで。
(そーだ! 焔誠くんに何かしてあげたいなぁ)
甘やかな頬紅や仄かなアイシャドウも案外似合うかもしれないが、それよりは、とミラが見比べるのは桜色を様々に表す爪紅、ネイル達。
顔に施した化粧は鏡でもなければ見えないが、爪の先は容易く見えるもので、ふと彩りが見えたなら不思議と心が安らぐから。それにこの浮き立つ心も分けてあげたいから。
一方の焔誠もコスメをざっと確認し、必要な品を見出していく。
コスメを使うならば、と今回の桜祈コスメ以外にも通常の桜コスメや、化粧品も用意されていた。肌を整える基礎化粧品や、細々とした化粧下地ももちろんある。
必要な品を手元に寄せながら、焔誠は記憶をそっとすくい上げる。昔々、彼がまだ王だった頃の記憶。かつて教えを受けたその中に、王としての身なりを整える一貫として化粧の仕方を教わったものだった。
昔使った道具とは形や質は違えども、その本質は同じ。感覚はしっかりと覚えている。
記憶から定まった手順を思い浮かべ、王は爪紅を選ぶ歌姫を呼んだ。
「ミラ」
「はぁい」
ミラは爪紅の小さな瓶を2つ持って、跳ねるような足取りで焔誠の方へと近づいた。何かと首を傾げる彼女に、焔誠は柔らかに目を細め一言告げる。
「触れるぞ」
焔誠の手に比べれば小さなミラの顎を軽くすくい上げる。上がる視線に、一気に縮まった距離に、ミラは目を丸くして焔誠を見上げていた。
恋人でもない間柄としては、相当に近いものだろう。こんな風に間近で距離を見ることなどこれまでついぞなかったが、焔誠にはミラの顔立ちも好ましい。
小さな顔に、凛と弧を描く睫、光抱いた黒の瞳。すっと柔らかな曲線描く鼻の下には、愛らしい蕾のような唇。照れも恥じらいもないが、素直にこう思える。
(繊細で、可愛らしい)
一方のミラも驚きとともに見上げた焔誠に見惚れていた。
銀の瞳の目は切れ長に、僅かに八重歯覗く口元に凛々しい眉も相まって精悍なその美貌。ミラの胸がことんとちいさく跳ねるというものだ。
(きれい)
そう思ったのもわずかの間、焔誠の手が動く。指で軽くミラの唇に触れて下地を乗せてから、筆ですくった口紅を中心から乗せていく。濃い色から外に向かって薄く色づくように、咲きゆく桜をイメージして。
(戦場にて歌を紡ぎ、華を齎すその唇へ。淡く美しい花の色を)
麗しい歌姫の歌をより彩るその色は、淡く仕上げた色合いは焔誠が望んだ通りの花の色。ミラに花の色はやはりよく似合う、と焔誠の銀は柔らかに細まった。
「──綺麗だ、お姫さん」
「……焔誠くんは、時々王子様みたいね」
かつての王にそう言うミラの頬にも少し花の色。照れてふわりと揺れた心のままにはにかんで、ほころぶ蕾のように唇緩めて。
「――ありがとう」
「こちらこそ」
穏やかな微笑みを見たミラは、ぱちりと瞬き一つして。頬に集まる熱や少しの照れを振り払って、声を上げる。
「わ……私も!焔誠くんにネイルしてあげる」
淡紅と薄紅の瓶を示し、ミラは焔誠に手を差し出した。軽く重なった長い指の先を少し整えて、親指から薄紅色を塗っていく。優しげな薄紅色に染めながら、最後に残った左小指のときだけ瓶を取り替えた。
「左の小指はちょっぴり特別! この指に色を乗せるとね?お願い事が叶うって母に教わったの」
他の指とは違う、少し濃い紅の色。綺麗に塗り上げたなら、乾く前の爪紅に触れないよう気をつけつつ、ミラは焔誠の手を軽く握って願う。
「明日もその先も、焔誠くんがずっと元気でありますようにっ」
「お人好しだな」
満足気に願われたそれもくすぐったい。柔らかに握られた手に、くすくすと焔誠の口から微笑みが溢れていた。
祈りの桜を施して、桜學府の示した一角に赴けば、そこには心誘う花が広がっていた。
舞散る花びらが焔誠やミラに触れれば、花へと心が動くのがわかる。けれども精神の平定が大きく動かないのは、祈桜コスメの守りもあるようだ。僅かな量では少し効果は薄いかもしれない。
けれど、猟兵の二人には大した問題でもない。特に攻撃してくることもなく、花はただそこにある。
彼らを惹き付けた力の強い影朧を祓えば、この花の姿の影朧も消えていくだろう。
焔誠とミラは、歩を合わせ、ゆっくりと花畑を歩く。
「綺麗だね」
「そうだな」
何も害が無いならば、誘花もただの愛らしい花の命なのだから。
穏やかに、焔誠とミラは花の中を歩む。少し弾むような心持ちで、この時間を楽しみながら。
大成功
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第2章 ボス戦
『影朧『李・皓夜』』
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POW : そこは、親の腕の中のようだった
戦場内に、見えない【温かで心穏やかに安心する場所】の流れを作り出す。下流にいる者は【戦闘意欲が削がれ、その場所】に囚われ、回避率が激減する。
SPD : それは、どこまでもお人好しな笑みだった
【穏やかな影朧の笑み】が命中した生命体・無機物・自然現象は、レベル秒間、無意識に友好的な行動を行う(抵抗は可能)。
WIZ : 「おれの名を呼んでくれないか?」
【影朧から差し伸べられた手】に触れた対象の【人生の軌跡が断たれた影朧自身の淡い記憶】を奪ったり、逆に与えたりできる。
👑11
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●希薄な影朧
その影朧は、希薄だった。
彼の縁は切れていて、どこにも結ぶ縁はない。世界に滲むように現れて、きっかけさえあればまた消えていく。
彼も誘い花達のように害意はない。むしろ、彼に似ているからこそ、誘花は誘われて現れたのかもしれない。
縁が途切れて希薄な彼に、すぐの転生は望めないかもしれない。けれども彼にそれを促すことはできるだろう。
フィーナ・シェフィールド
◎〇
縁が切れていても、この世界の記憶である以上は、幻朧桜に還って転生することはできるはずです。
桜のコスメで守護の力は上がってますし、思い切って影朧の手を取りましょう。モーントシャインの破魔の力で心と身体を守りながら、手を取り合ったまま影朧を見つめて歌います。
「李 皓夜さん。ここで出逢ったのも何かの縁です。貴方が新しい生命として、生まれかわれるように、心からの祈りを込めて。わたしの歌、聴いてください!」
【この広い世界で、出逢えた理由を】。共にこの場に集った仲間が、少しでも長く想いを届けられるように、歌を通して希薄な影朧の感情に呼びかけます。
「貴方の心が、幻朧桜の元で輪廻の流れに乗れますように―」
●
その名のとおり朧げな影朧を見つめ、フィーナは彼に向き合った。
(縁が切れていても、この世界の記憶である以上は、幻朧桜に還って転生することはできるはずです)
ゆっくりと影朧の手が差し伸べられる。
フィーナもその手に自分の手を差し出した。月光を思い起こさせるモーントシャインを纏い、桜の祈りと合わせて心を、身体を守りながら、フィーナは影朧の手を取った。
流れてくるのは彼の名前、彼自身も忘れてしまっているその記憶。それしか見えないけれど十分だ。
「李 皓夜さん。ここで出逢ったのも何かの縁です」
穏やかな笑顔を浮かべる顔を見つめ、フィーナは影朧をじっと見つめる。
彼がどうして影朧になったのかわからない。どうして何もかもと縁が繋がらなくなったのかも。
けれど、今はフィーナとの縁が触れている。すぐに離れてしまうとしても、何かの
縁なのだから。
「貴方が新しい生命として、生まれかわれるように、心からの祈りを込めて。わたしの歌、聴いてください!」
彼がそれを望むかは、わからない。けれど願いを伝えることはできるかもしれない。
「貴方の心が、幻朧桜の元で輪廻の流れに乗れますように―─」
少しでも影朧の感情が揺れて動いてくれたら、と願いフィーナは歌う。
この広い世界で、出逢えた理由を。たとえ偶然でもいい、触れただけでも縁の一つ。
この場に来たる仲間達が、影朧が消える前に、少しでも長く想いを届けられるよう。希薄な影朧の心を惹きつけるよう、月の光のような優しい歌を。
大成功
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夜鳥・藍
◎○
転生を促すにもとっかかりが無いのは困りますね。
でも縁が切れているとは全くないとは思えません。
だってこの方は今いるのですから。それはこの世界、サクラミラージュと縁があるという事ではないでしょうか?
淡くともできればその記憶は大事にしていただきたいので触れるような事は致しません。
もしお話しして下さる事があれば静に聞きましょう。
無ければ私の話を少し。私も影朧だったらしいですから。
影朧だったころ、さらにその昔の記憶は私にはございません。
ですが時折微かにですがこみあげる感情や、初めて見るのに懐かしい記憶は確かに過去世があったと知らせてくれます。
それを大切にしていただきたいと私は思うのです。
●
あまりに存在の薄い影朧に、どうしたものかと藍はしばし悩む。
(転生を促すにもとっかかりが無いのは困りますね)
彼から溢れる恨み辛みの一つでもあればそれを慰撫し諭すこともできただろう。何かへの未練があるならば、軽くすることもできただろう。望みがあったなら、叶える手伝いだってできたのに。
けれども、そういったことを語るでなくただそこに在る、きっかけがあれば消えてしまう影朧への対処は悩ましいものだ。
ただ、確かにその存在は薄いのだろうけれど、縁がまったくないとは藍には思えない。
(「だってこの方は今、ここにいるのですから。それはこの世界、サクラミラージュと縁があるという事ではないでしょうか?」)
影朧がそれを明確に語ることはない。ただそこに在って、僅かながら縁を得た藍に微笑んでいるだけだ。
影朧が差し伸べた手には触れず、藍は自身の唇を開く。
「少し、お私のことを話しましょうか。今のように生まれる前は、私も影朧だったようです」
その頃の記憶も、そうなる前の記憶も藍にはない。その頃の縁も勿論わからない。
けれども時折ふっとこみ上げる感情が、初めて見るのに懐かしいと思うその記憶は、きっとその過去の証。確かに過去世があったと知らせてくれるのだ。
「あなたにも、そうした過去世があったのでしょう。今はわからないかもしれませんが、確かに存在するそれをどうか大切にしていただきたいと、そう思うのです」
淡い記憶を、存在を損なわぬよう影朧には触れず、藍はそっと願う。
この影朧の縁が、いずこかの未来に続いてくれますように、と切に願うのだ。
大成功
🔵🔵🔵
ケイラ・ローク
お兄さん?ボク?なんだか寂しそうね?
世界と縁が途切れたら、きっと心許ないわよね
あたしはキマフューで生まれ育ったから周囲はいつでも賑やかだったわ
あたしが孤児でもね
そりゃー少しは苦労したし荒んだりもしましたけど!
親の腕ってどんな感じかしら?
(桜コスメのリップとネイルが精神攻撃をガードしてくれる)
あっ💦なんだか今危なかったわよねっ?
キミは直接悪さはしないけど雰囲気?思念?つい飲み込まれちゃうのよね~💦
コミュ力発揮、影朧相手に無謀にも手を繋ぐ
あ(希薄すぎて)だめ、透けちゃいそう
ねえ
少し派手な世界を少し見せてあげる
UCフローリア
レトロなお花は彼を囲んで歌う
いつか誰かと繋がるわ
さあ、送ってあげるよ
●
「お兄さん? なんだか寂しそうね?」
その存在は頼りなく、希薄で、ふとしたきっかけで消えてしまいそうだった。影朧の姿にケイラはしんみりと考えてしまう。
(自分がここにいる、という世界と縁が途切れたら、きっと心許ないわよね)
ケイラの縁はキマイラフューチャーから始まった。周囲はいつでも賑やかで、騒がしいくらいに鮮やかで。
(孤児でも賑やかな世界に包まれてた。そりゃー少しは苦労したし荒んだりもしましたけど!)
けれども知り得ないものもあった。親の温もりは、腕はよく覚えていなかった。抱かれたこともあったのか、なかったのか。
(親の腕ってどんな感じかしら?)
希薄な影朧の腕が柔らかに動く。何かを抱きしめるような曲線を描いた途端、この場にふわりと温かな流れができたようだった。
影朧から流れ出すそれは、下流に位置するケイラも包み込む。ふわりと優しく、しっかりと暖かで、優しい場所。安心して身を委ねてもいいと思える場だった。
「あっ💦 なんだか今危なかったわよねっ? キミは直接悪さはしないけど雰囲気?思念?つい飲み込まれちゃうのよね~💦」
気合をいれたケイラは影朧へと手を伸ばす。
(あ、だめ、透けちゃいそう)
希薄で存在も朧げな影朧の手を取って、ケイラは囁いた。
「ねえ。キミに少し派手な世界を少し見せてあげる」
ケイラの手から鮮やかな立体映像が放たれる。ポップでレトロな花達は、賑やかな歌で影朧を包み込んだ。
「今はひとりでいても、いつか誰かと繋がるわ。さあ、送ってあげるよ」
花の嵐と一緒にケイラはばいばい、と手を振って見送る。いつか彼にも大切な縁が取り戻せますように、願いながら。
大成功
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ヘルガ・リープフラウ
◎○
儚げな横顔に、影朧自身の孤独な心を見る
それまでの彼の人生に何があったのかは分からないけれど
縁の途切れた胸に去来する空虚な想いはどれほど哀しいものだろう
名を呼んでくれと乞われ、思わず手を伸ばす
彼自身を苛む呪縛をわたくしもまた受けると分かっていても
それでもまっすぐに、迷いなく受けとめる
貴方が次の転生へと向かう標(しるべ)となるように
わたくしは貴方と、新たな縁と絆を結びましょう
縁が断ち切られた時の、朧げだけど哀しい記憶が流れ込む
自らの縁を断ち切られるような、忘却の呪詛に苛まれる
でも決して恐れはしない
祈桜コスメの護りの力が、わたくしに勇気を与えてくれる
祈り込め優しく歌う【星導の歌】
天空より降り来たるは、過去の悲しみを乗り越える希望の星
大丈夫
あなたは一人じゃない
新たな生を受けた先で、きっと素晴らしい出会いがある
人生という旅路を迷いなく歩んで行けるように
この星の輝きがあなたを見守り導いてくれる
おやすみなさい
目覚めたらきっと、あなたの胸に柔く暖かな灯が宿ることでしょう
●
その存在は希薄で儚げであった。その横顔に影朧が感じたかもしれない孤独を垣間見たように、ヘルガは思う。
(これまでの彼の人生に何があったのかは分からないけれど、縁の途切れた胸に去来する空虚な想いは
いったいどれほど哀しいものでしょう)
名を呼んでほしいと影朧が差し出した手に、その儚さに心揺れたヘルガは思わず手を伸ばす。影朧の身にもたらされた呪縛を共に受けるとわかっていながらも。
与えられたのは断ち切られた彼の人生。僅かに残っていた彼の名の記憶を、虚ろな生の欠片を迷いなく、まっすぐにヘルガは受けとめた。
縁を断ち切られた際の朧な記憶、とても哀しい記憶。過去も今も、影朧を形作り支える縁がプツリと切れて、ひどく儚い存在に変わったその時のこと。
その記憶も曖昧で形を為さないながらも、彼の確かにあった人生は断ち切られ、触れた者に痛みを伝えてくるようだ。
けれどヘルガは目を逸らさず、切られた縁に付随する忘却の呪詛に苛まれても決して恐れはない。
(桜のコスメに篭められた護りが、わたくしに勇気を与えてくれる)
心安らにあるように、恐れを抱いても倒れぬように。そっと支える祈りとともに、ヘルガ自身の祈りを乗せて優しく歌うのは星の導き願う歌。
「天空より降り来たるは、過去の悲しみを乗り越える希望の星──」
きらりと溢れる星のかけらが届くよう、ヘルガ祈りを歌い上げる。
(貴方が次の転生へと向かう
標となるように、わたくしは貴方と、新たな縁と絆を結びましょう)
大丈夫だと、もう一人ではないのだと。朧な影朧が巡った先、新たな生を受けた先で、きっと素晴らしい出会いがあるはずだ。
「人生という旅路を迷いなく歩んで行けるように、この星の輝きがあなたを見守り導いてくれる」
優しい祈りを込め、白雪の歌姫は子守歌のように柔らかに、導きの歌を歌い上げる。
(おやすみなさい。目覚めたらきっと、あなたの胸に柔く暖かな灯が宿ることでしょう)
大成功
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黄・焔誠
【想焔】
アドリブ歓迎
_
気配を感じ、考えるより先にミラを背で庇うが
…此度は、不要かもしれんな
だがいつでも護れるように傍に在る
影朧の生い立ちを思い出しながら
剣は抜かずに相対する
「お前は、どうしたい」
静かに凪いだ声で影朧に問う
「逝くも転生を望むも、要らぬものがあるなら置いていけ。俺が預かっておいてやる」
──影朧とは、傷つき虐げられた者たちの『過去』から生まれたという。
辛い記憶も苦しい思いも、彼らの安息や未来には不要だ
そしてそれは隣の姫さんにも
彼も、ミラも
ただ前を向いて笑っていればいい
手を取る
真っ直ぐに見つめ
「貴方の軌跡に、貴方の戦いに、敬意を。──皓夜殿」
やがて周囲に咲くは劫焔の華
熱くはない
祓うのはその『影朧たらしめる縁』のみ
既に希薄らしい彼にはお節介に過ぎないかもしれないが
送別の花代わりだ
──おやすみ
良い旅路を、皓夜殿
ミラ・オルトリア
【想焔】
アドリブ◎
焔誠くんの傍に添い
影朧を見つめる
ただ夜のように揺蕩う人…
縁の繋がりがないとい事は
ただそこに在るだけ
人がそこに姿を現すのは
きっと理由が有る
滲むような儚い存在でも
過去は彼の手を引いて
現世から解いてくれないから
「焔誠くんだけじゃないよ!
わたしにもあなたの想いを預からせて
どうか…あなたとこの世界で縁を結ばせてほしい」
…まるで親のように温かな彼は
その温みを捧げたい人がいたはず
なら
わたしはこの熱を憶えていたい
いつか彼が転生を叶え帰ってきた時
彼の優しい熱を届けたい人に届けられるように
「わたし達があなたを憶えてる」
そっと皓夜さんに寄り添い
彼の存在を肯定したい
わたしの"ユーベルコード"を歌う
わたし達は痛みも悲しみも
互いに違うものを持っている
傷を魂に刻む者同士
…優しい焔のようにわたしも皓夜さんも包み込んでしまえる焔誠くんにも深い傷も過去もある
だからこそ、真に彼は強く人を守れる魂を持ってる
なら、わたしは
皓夜さんと彼の為に歌うの
過去よ、痛みよ
遠くの未来に昇華して
温かな魂にとびきりの祝福を齎して
●
ふわりと希薄な、けれど確かにそこに在る気配に、焔誠は無意識にミラの前に立った。ミラは焔誠の邪魔をしないよう、そっと寄り添っている。
けれど警戒はすぐに少し緩む。感じ取った気配に敵意はなかったからだ。
(……此度は、警戒も護りも不要かもしれんな)
焔誠はそう思い、銀閃の柄にかけた手を下ろす。けれどいつでも護れるよう、ミラの傍に在ることを意識しながら。
護る背中に添いながら、ミラはそっと影朧を見つめていた。
そこにいるのは人の姿の影朧だ。皆、息を潜めてうつらうつらと眠りについた夜のように、静かに揺蕩う存在。
(縁の繋がりがないという事は、ただそこに在るだけ)
二人が柔らかに差し出された手を取れば、細かに断ち切られた縁と断片の記憶、そこから拾い上げた影朧の名が伝わってくる。
(人がそこに姿を現すのは、きっと理由が有る)
ひとりは寂しいから、誰かを助けたいから、何かに触れたい、何かを得たい。きっと様々に理由がある。
腕に抱きとめ温みを捧げたい、笑みを見せてあげたい、名を呼んでほしい。それこそ彼の望みなのかもしれない、ともミラは思うのだ。
ただその望みを誰に伝えたいのか、わからない。伝わる記憶はあまりに淡く、ともすればこれすら留められず消えゆく影朧かもしれない。
伝わってきた断たれた記憶を思い、焔誠は柄から手を離し、問う。
「お前は、どうしたい」
静かに、その存在を揺らさぬように。
「逝くも転生を望むも、要らぬものがあるなら置いていけ。俺が預かっておいてやる」
それは儚い影朧へ、隣に立つ姫君へ向けた柔らかな心。
(──影朧とは、傷つき虐げられた者たちの『過去』から生まれたという。辛い記憶も苦しい思いも、彼らの安息や未来には不要だ)
味合わなくて済むならば知らないままでいい。それが癒えぬ傷になるくらいならば、負わずにいたほうがいい。
(本当は、後ろに引きずられ、重荷に呻くことなどなく、ただ前を向いて笑っていればいい)
王としての苦難を味わった焔誠は、柔らかな和毛で包むような、その重荷を渡していいという許しを投げかけた。
「焔誠くんだけじゃないよ!」
ミラもその想いの欠片を預かりたいと声を上げる。
「わたしにもあなたの想いを預からせて。どうか……あなたとこの世界で縁を結ばせてほしい」
たとえ夜の中に溶けてしまいそうな、世界に滲むような淡く儚い存在でも、過去は彼の手を引いたまま。苦しさや哀しさに縛り付けて、現し世から解いてはくれないから。
(……まるで親のように温かな彼は、その温みを捧げたい人がいたはず。わたしはこの、優しい熱を憶えていたい。いつか彼が転生を叶え帰ってきた時、彼の優しい熱を届けたい人に届けられるように)
この熱が消えなくてはいけないならば、ミラが憶えて戻ってきた彼へと伝えると、誰かに寄り添い続ける歌姫は言うのだ。
朧な顔を真っ直ぐに見つめ、儚いその手を再び焔誠が取る。
「貴方の軌跡に、貴方の戦いに、敬意を。──皓夜殿」
そっともう一歩の手を取って、ミラは揺らめくようなその身に寄り添う。
「わたし達が、皓夜さん、あなたを憶えてる」
周囲に劫焔の華と寄り添う歌が広がった。
焔誠劫焔の華は焼き焦がす熱はない。祓うのは影朧たる縁、ただそれのみ。
(お節介に過ぎないかもしれないが、道行きが明るくあるように)
ミラのユーベルコードはこの影朧の過去を、存在を肯定する。その心に追った傷も、悲しみも肯定して、そして癒えるように願う歌。
(わたし達は痛みも悲しみも、互いに違うものを持っている)
形は違えど傷を魂に刻む者同士。すぐに傷は治らず、ふとした拍子に痛みを訴えるけれど、それをひとりきりで耐えなくてもいい。
(……優しい焔のように、わたしも皓夜さんも包み込んでしまえる焔誠くんにも深い傷も過去もある)
だからこそ、焔誠は強くある。人を守る強さがある。彼が守ってくれるに値する、ミラの為すべきことは決まっている。
「過去よ、痛みよ。遠くの未来に昇華して、温かな魂にとびきりの祝福を齎して──」
皓夜と焔誠のために、歌を歌う。祝福を、癒やしを。
これは送別の花、見送りの歌。いつか巡っておいで、と送り出す花と歌。
「──おやすみ。良い旅路を、皓夜殿」
「目覚めは優しく、温かなものでありますように」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『きみに飾るわたしの彩』
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POW : 友愛の彩を結ぶ
SPD : 愛情の彩を結ぶ
WIZ : 感謝の彩を結ぶ
|
●
影朧の、今この場と繋がる縁は解け、すぅっと彼の姿はかき消えた。
同時に誘花も消えて帝都に平穏が戻る。
それぞれに祈桜コスメへの感想や改善点、影朧への思い、疲れや達成感を抱いて帝都桜學府の鍛冶司、花野と咲岡の元へ戻れば、祭りの場へと誘われる。
桜の花の咲く中に、ひらりひらりと紐や細い
飾布が揺れる。
彩も豊かに、種類も様々に。貴方との、誰かとの、縁を願って紐や飾布を結う祭りがそこに在る。
誰かと揃いのものを結ぶのもいいだろう。今は傍にいない誰かとの縁を願って、縁結びの台に結ぶのもいいだろう。
「良い御縁がありますようにと、縁を結び、繋ぐ祭りさね」
花野は友愛を示し、結び目を作る。
「御利益はあるかもしれませんし、ないかもしれません。けれど想いは確かにあるのでしょう」
咲岡は親愛を示してきゅっと結ぶ。
結ぶも自由、結ばずも自由。辺りに広がる屋台を楽しんでもいいだろう。祭りにつきものの食べ物や土産物が並んで賑わいを見せている。お代は花野達が礼として出すから気にしなくていい、とチケットを配られた。
猟兵達はここからは自由だ。
何かへの縁を願って紐や飾布を結ぶもよし、屋台を楽しむもよし。
花野や咲岡に祈桜コスメの感想を伝えてもいいし、他愛ない話でも声を掛ければ喜んでくれる。
さあ、祭りの中へ踏み出そう。
夜鳥・藍
◎○
こういう時、少し悩みます。縁を結びたい相手も願いも今のところ私にはないのです。
でも。ですが今世こそ確かな縁(よすが)を結べたら。
ホリーグリーン色のリボンに願いを込めてしっかりと結びましょうか。
桜色の中には悪目立ちする色あいかもしれませんが、何となくですがこれが縁の色だと感じます。
コスメの感想ですが、爪紅は今は桜色のみとのことですが、桜も山桜など種類ごとに濃淡がありますからそれらを再現出来たら、もっと自分好みの桜色が見つかるかもしれません。
実は私、桜とつく名のなかでは灰桜色の淡いピンクと落ち着いた色味が好みでして。
あの影朧は今は微かなものであっても、いつか誰かと確かな縁を結べたらと思います。
●
華やぐ花の中、賑わう祭りの中。藍は少し悩ましげに目を軽く伏せ、辺りを見回した。
縁を願う祭りというが、それそのことが悩ましい。
(縁を結びたい相手も願いも今のところ私にはないのです)
過去世にはあったのかもしれないし、なかったかもしれない。それも朧なものである。
けれど、逆に考えることもできるのだ。
(でも。ですが今世こそ確かな
縁を結べたら)
冬も鮮やかなホリーグリーン、柊の色のリボンを手に藍は願いを込める。解けぬように、繋がるように願いを込めて。
(何となくですがこれが縁の色だと感じます)
穏やかな桜色に鮮やかな緑の色がよく映える。ぼんやりと眺めていれば、花野と咲岡が辺りを巡ってきたようだ。
「お疲れ様です。祭りは楽しんでいるかい?」
「ええ。ああ、コスメのことなのですが、少しよろしいですか?」
「はい、ご意見いただけるととても嬉しいです」
花野も咲岡も、どんな意見をもらえるかと期待した目をしている。欠点も改善点も嬉しいし、良い点だって嬉しいのだ。
「爪紅は今は桜色のみとのことですが、桜も山桜など種類ごとに濃淡がありますからそれらを再現出来たら、もっと自分好みの桜色が見つかるかもしれません」
つるりと整った爪先を示しながら藍は語る。白から薄紅、ほのかに濃い紅。それぐらいしかなかった色味だが、桜も色々あるだろうから。
「実は私、桜とつく名のなかでは灰桜色の淡いピンクと落ち着いた色味が好みでして。そういうものも再現できたら、と」
「色味はこれから増やしていきたいねぇ」
「はい。やはり濃い紅や藍色、墨色か、桜のピンクが多いですが、色々選べたら良いのかと思っています」
研究のいい目標だと笑う二人に藍も微笑んだ。
ひらりひらりと桜が舞う。鍛冶司の二人と別れて、藍はくるくる廻る花びらを見ていた。
(あの影朧、縁の切れていた影朧。彼に残る縁が今は微かなものであっても、いつか誰かと確かな縁を結べたらと思います)
縁を願う祭りの中で、藍はそう願っていた。
大成功
🔵🔵🔵
フィーナ・シェフィールド
◎〇
飾布は多い方が祭りも盛り上がりますよね。
わたしの大切な人との縁がいつまでも続くよう願って、薄紅色の飾布を結びます。
飾布を結んだら、花野さん達とコスメについてお話ししたいです。
個人的に精神を支える力と言うのが気に入りましたし、帝都を守るために戦う桜學府の女性たちに御洒落してもらいたいですしね。
まずはやっぱり、つけ心地の改善だと思います。違和感があると、集中力にも影響しますから。人によって合う色もありますし、もっと色数も揃えたいですね。
あまり強い力は悪用された時に困りますし、強さはこれくらいでも良いかも…?
あ、前にも言いましたけど、宣伝が必要なら喜んでお手伝いしますよ。
宣伝歌も歌っちゃいます♪
●
ひらりひらりと花の舞う中、ざわめき賑わう祭りの中で。
フィーナは薄紅色の飾布を持って、ひらめくそれと同じくらい軽やかな足取りで行く。
(飾布は多い方が祭りも盛り上がりますよね)
賑わう祭りの花の一つ、増えればそれもまた楽しい。きゅっと柔らかな布地を結び、フィーナは願う。
(大切な人との縁がいつまでも続きますように)
ふわりと花と一緒に揺れる飾布を見つめて微笑んで、フィーナは顔を上げて歩く。
ひらりひらりと花の中、歩いていけば花野と咲岡の姿。二人並んで軽く頭を下げるそこへとフィーナは歩み寄る。
「こんにちは、祭りは楽しんでいるかい」
「ええ。コスメのお話、させていただいてもいいですか?」
「はい、ぜひに」
悪い点も良い点も聞かせてもらえるのが嬉しいと、花野と咲岡はきらきらした目でフィーナを見ている。
(帝都を守るために戦う桜學府の女性たちに御洒落してもらいたいですしね)
フィーナも桜祈コスメの目的、精神を支える力というのが個人的に気に入っていた。
「まずはやっぱり、つけ心地の改善だと思います。違和感があると、集中力にも影響しますから」
「やっぱりそこだよねぇ。色々成分を混ぜる為か、少し使い心地がねぇ」
「今後の改良点ですね」
思い浮かべる改善点を花と飾布、紐の舞う祭りの中で話し合う三人。
「人によって合う色もありますし、もっと色数も揃えたいですね」
「今は開発中っていうこともあるしね、まずは出しやすい色から始めたが、他にもあったほうが嬉しいよねぇ」
桜色ばかりでなくて濃い赤に橙、青や緑だってあってもいい。色とりどりの飾布を見ながらフィーナはにこやかに笑う。
「あまり強い力は悪用された時に困りますし、篭める力の強さはこれくらいでも良いかも……?」
「転用される危険性も考慮してこのくらい、ですね」
咲岡の言葉に頷いて、フィーナは花のように笑みを浮かべた。
「あ、前にも言いましたけど、宣伝が必要なら喜んでお手伝いしますよ。宣伝歌も歌っちゃいます♪」
「それはありがたい」
「売り出せたらお願いしますね」
鍛冶司の笑みも明るく、祭りの賑わいも明るく。フィーナも負けずに明るい笑顔を見せた。
大成功
🔵🔵🔵
ヘルガ・リープフラウ
❄花狼
◎○
一仕事終えた後、旦那様と待ち合わせ
施した祈桜メイクはそのままに
二人連れだって縁結びのお祭りを楽しみましょう
春色を纏うかんばせに桜の香りのパルファム
術の効果もさることながら、自身を美しく彩るのは心が躍ります
今のわたくしを見て、彼はどんな顔をするかしら
……本当に?
もし本当にわたくしが強くなったとしたなら
それは花芽吹く春のような命の力を、このコスメが引き出してくれたから
勝利のためよりも、心に寄り添う優しさを
風に舞う飾布を眺め
『彼』もまた来世へのよすがを見つけられたのかしらと想いを馳せる
ねえヴォルフ、わたくしたちも願掛けをいたしましょう
二人でひとつの飾布を結んで
この絆が永久に続きますように
ヴォルフガング・エアレーザー
❄花狼
◎○
ヘルガに誘われて、二人連れだって縁結びのお祭りへ
季節は夏へと向かう頃だが、
祈桜コスメで彩られた彼女はまるで春の花の精のようだ
……ヘルガ、強くなったな
今日まで色々と辛いこともあっただろう
敵の精神攻撃や卑劣な罠に心折られることも少なくなかっただろう
だけど今のお前は、いたずらにそれを恐れることなく
自らの意志を貫くことが出来る
その優しさで、温かな心で、凍てついた心に救いの手を差し伸べる
祈りの桜が引き出してくれたのは、きっとお前のそのたおやかな心だ
誰もが持つ想いと勇気を支え、背中を押してくれるのは
単純な戦闘力ではなくそのコスメのような花萌ゆる温かさなのだろう
ああ、勿論だとも
俺達の絆は永遠に
●
桜色の影朧も送り、一仕事終えたヘルガは、祭りの中へと歩きゆく。ひらりひらりと花が舞い、ふわりふわりと紐や飾布が揺れる中、待ち合わせたのはヘルガの最愛の旦那様ことヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)。
ふわりと桜の花びらの向こう側に、愛しい藍色を見つけたヘルガは駆け寄っていく。
「ヴォルフ、お待たせしましたか」
「いいや」
祈桜コスメはそのままに春色纏うかんばせに、ふわりと優しい桜の香りのパルファム。心支える術の効果もあるけれど、自身を美しく彩るのは心が踊るもの。
(今のわたくしを見て、彼はどんな顔をするかしら)
駆け寄ってくる、桜色を施したヘルガはまるで春の花の精のようだ、とヴォルフガングは青い瞳を細めて見入った。冬から春に移り花を咲かせ、命を咲かせる花の強さを感じられた。
「……ヘルガ、強くなったな」
「……本当に?」
「ああ。今日まで色々と辛いこともあっただろう。敵の精神攻撃や卑劣な罠に心折られることも少なくなかっただろう」
オブリビオンは力で押し付けるだけでなく、心も折るものだっている。そういった敵とはこれまでもたくさん戦ってきた。折れて、嘆き、苦しみ、涙をこぼしたことだってあった。
「だけど今のお前は、いたずらにそれを恐れることなく
自らの意志を貫くことが出来る」
ヴォルフガングは春の陽だまりを見るかのような、暖かく眩しい心地でヘルガを見た。
「その優しさで、温かな心で、凍てついた心に救いの手を差し伸べる。そんな強さがある」
ヘルガは嬉しく、暖かな言葉に心揺らして夫を見上げた。
「もし本当にわたくしが強くなったとしたなら、それは花芽吹く春のような命の力を、このコスメが引き出してくれたから」
春色染めた頬に指を添え、ヘルガははにかんでみせた。
「勝利のためよりも、心に寄り添う優しさを」
「そうだな。祈りの桜が引き出してくれたのは、きっとお前のそのたおやかな心だ」
ヴォルフガングもその頬に指を伸ばし、優しく撫でた。
「誰もが持つ想いと勇気を支え、背中を押してくれるのは、単純な戦闘力ではなくそのコスメのような花萌ゆる温かさなのだろう」
「ええ」
青い瞳で見つめ合い、ヴォルフガングとヘルガは幸せに目を細め笑い合う。愛しい者の柔らかな強さを認め、褒め称え。愛しい者に見出された強さを認められ、褒められる。
春色の花がふわりと舞い、ひらりと縁結びの布が揺れる。
白と藍、夫婦二人連れたって祭りの中を行く。夏へと移りゆくこの季節、それでも幻朧桜は咲き誇り花を舞わせる。
ひらりと風に舞う、様々な縁を願う飾り布を眺め、ヘルガは送った影朧に少しだけ思いを馳せた。
(『彼』もまた来世へのよすがを見つけられたのかしら)
あまりにも朧気な影朧だったけれど、彼にも次へと繋がるよすががあればいい。彼女が見つけたような、愛しい縁でもいい。友愛、親愛、感謝、そんな縁があってくれたらいい。
一度だけヘルガは目を瞑り、彼の良縁を祈る。すぐに開けたその眼差しが向かうのは、桜と祭りの中でもひときわ鮮やかである愛しいヴォルフガングの姿。
彼の手を取り、ヘルガは甘やかに囁いた。
「ねえヴォルフ、わたくしたちも願掛けをいたしましょう」
「願掛け?」
「ええ。この縁結びのお祭りにあやかって、二人でひとつの飾布を結んで。この絆が永久に続きますように」
二人繋いだ手が離れることのないように、愛しい絆が解けることのないように。
ヘルガの言葉にヴォルフガングは愛しげな目で頷いた。
「ああ、勿論だとも。俺達の絆は永遠に」
ひらりと飾布が風に舞う。白と藍を組み合わせた一つの飾布を、ヘルガとヴォルフガングは二人で結ぶ。
きゅっと永遠に解けないように、願いを込めながら。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ケイラ・ローク
【トーゴf14519】を呼んで一緒に🐾
んふふ、お祭りなのね!コスメは縁無いっぽいけどお祭りなら一緒に遊べるし
…さっきの影朧は友達も家族も無くなってしまったのかしら
そうだわキミ、ちょっと付き合ってよ(手招き)
桜色のたいやきを見つける
可愛い♥これにする♪
影朧桜のところへ…これはお供えかな?
さっきの男の子賑やかなところへ案内してあげてね!
そしてあたしとキミの分も買ってあるのです✨
桜餅入ってる~♥
桜學府さんに
コスメは清楚でステキだけど~
パッケージもっと凝って欲しいかな~とか!自分達も使ってりしてるの?とか!
獣毛OKな毛染めないかしら?とか
トーゴにお化粧いる?って聞いてみる
香水とかも有るんだって♪
鹿村・トーゴ
◎
ケイラ【f18523】と
…なんの祭だろ?
(色とりどりのリボンが結ばれる風景に)ふーん。縁結びとかそんなん?
(手招きされるとハイハイ、と従って
幻朧桜にたいやきをお供えするケイラを見てる)
そだねェ、ここの桜は慈悲深いからさ
きっと悪いようにはしないよ
おや、オレにもくれんの?あんがと。
へー桜餅のたいやきは初めてだ
相棒のユキエに皮のとこお裾分け
どーお?『…甘くなかった』
そんで鍛冶司の人と会う
てか案外忙しないな!
化粧なァ
郷の子に紅をひとつ見たいな
かなり薄色だねェ(小指で少し手に取り)
まァあの子色白だし
…なにケイラその意外そーな顔
あ、これ戦化粧のお試しなのか
香水?んーオレ香りは居場所バレるから遠慮するかな
●
「んふふ、お祭りなのね!」
「……なんの祭だろ?」
ひらりひらりと風に舞う
飾布を眺め、賑わいに耳を揺らされながら、ケイラと、彼女に呼ばれた鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は歩く。
「色んな縁を願うお祭りだって」
「ふーん。縁結びとかそんなん?」
良縁を願い結ぶというらしい。コスメには縁遠いトーゴでも、祭りならば一緒に遊べるだろうとケイラは彼を誘い、尻尾をくゆらせ祭りを行く。
縁願い結ばれた布や紐が風に揺れるのを見ながら、ふっとケイラは先程の影朧のことを思い浮かべた。
(……さっきの影朧は友達も家族も無くなってしまったのかしら)
薄く朧なその姿、縁が切れて儚くて。人も場所も、全て繋がりが切れたと言うならば──それは、きっと頼りなくて、寂しいのだと、ケイラは感じた。
「そうだわキミ、ちょっと付き合ってよ」
「ハイハイ」
手招けば素直についてくるトーゴとともに向かったのは立ち並ぶ出店の通り。くるり見渡し覗いた屋台に、桜色したたい焼きが並んでいた。
「可愛い♥ これにする♪」
買ったたい焼きを受け取って、次に向かうは幻朧桜。縁を願って結ばれた飾布がひらめくさまを見守る桜のその下の、供え物を並べる場所にケイラはたい焼きを一つお供えする。
「さっきの影朧、賑やかなところへ案内してあげてね!」
祈るケイラの姿に胸元のユキエを撫でながら、そっとトーゴは口を開く。
「ここの桜は慈悲深いからさ、きっと悪いようにはしないよ」
「うん。きっと素敵な場所に行けるよね」
ケイラは少し祈ってからトーゴを振り向き、紙袋を差し出した。
「ありがと、実はあたしとキミの分も買ってあるのです✨」
「おや、オレにもくれんの? あんがと」
二人で道の端により、ほのかな色味のたい焼きを齧ると、中からふわりと桜風味が広がった。
「桜餅入ってる~♥」
「へー桜餅のたいやきは初めてだ」
もちもちした餅と餡、花と塩漬けの葉の風味が入り混じり、甘じょっぱい桜味。桜色の皮は表面はパリッと、中はしっとり、中の桜餅の甘さを引き立てる。
トーゴは柔らかな皮をちぎって、ユキエのくちばしへと運ぶ。もむもむと食べるユキエに感想を聞いてみた。
「どーお?」
『……甘くなかった』
「そっか」
若干不服そうなユキエには後で果物でもやるとしよう、とトーゴが思っていると、ケイラが急に声を上げた。
「あ、桜學府の鍛冶司さん!」
「へェ、って」
ぱっと走り出すケイラに案外忙しないなと思いながらトーゴその後を追いかける。祭りで遊ぶとは一体何だったのか。
「鍛冶司さん、こんにちは!」
「はい、こんにちは」
「楽しんでおられますか?」
小柄な年配の女性・花野と、細身の若い男性・咲岡にケイラは祈桜コスメの感想を語る。
「色とか控えめで、清楚でステキだけど~パッケージもっと凝って欲しいかな~」
「外側は中身ができてからかねぇ。桜をあしらいたいと思っているよ」
「あ、可愛いかも。あれって自分達も使ってりしてるの?」
「はい。研究を行っている皆で使って、使い心地や効果を確認しています」
「獣毛もOKな毛染めないかしら?」
「今は手元にないけれど、いくつか開発して試したのがあったねぇ。色数は少ないけど」
「今度見てみたいわ✨」
話にトーゴが首を傾げれば、化粧の話だとケイラが説明する。
「へェ、化粧なァ。郷の子に紅をひとつ見たいな」
「試供品ですが、見てみますか?」
サンプルを一つトーゴは受け取って中を開く。淡い桜色の紅がそこには収まっていた。
「かなり薄色だねェ」
小指ですくい、確認する。ほんのりと色づく程度の柔らかな色味は、派手さはない。けれど年頃の娘の口元を柔らかに染めてくれるだろう色だった。
「まァあの子色白だし……なにケイラその意外そーな顔」
きょとんとするケイラの顔にトーゴが問い掛ければ、すぐに答えは返ってくる。
「これ、対影朧用の兵器の一つよ?」
「あ、これ戦化粧のお試しなのか」
「そうさね、いつかは一般販売もしたいさねぇ」
からからと花野は笑い、夢を語る。鍛冶司は兵器を開発する部門だけど、こういう戦う人にも戦わない人にも役に立つ兵器を作りたい、というのが花野のグループだとも語っていた。
「トーゴもお化粧いる? 香水とかも有るんだって♪」
「香水? んーオレ香りは居場所バレるから遠慮するかな。白粉や紅くらい?」
何て話す二人の上を、花びらがひらりと舞い、賑やかな祭りの中へと飛んでいった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
黄・焔誠
【想焔】
◎
_
「……お前は、結びたい縁はあるのか?」
隣の姫さんに何気なく問う
俺自身がこの世に在るのは王としての責務と償いのため
自分に良縁を、とは望まない
ただ風に揺れる飾布たちを眺めるだけ
彼女も年頃の娘
戦場などではなく、もっと平和で穏やかな場所に居てくれれば安心するのだが…なんて
思う傍ら、それは彼女の志への侮辱にもなってしまう
故に何も言わない
唯彼女の決意に敬意と尊敬を
そして同じ戦場に立った時
俺は彼女を護るだけだ
そして彼女の唇から紡がれた縁への言葉に
フと淡く瞳細め
「…お前らしいな」
そんな彼女に
ならばと俺も一つ手に取ろう
願うのは俺への縁、ではなく
"ミラの幸せ"に繋がる縁を
「お前のそれは我儘ではない。俺がお前を肯定する」
確りと彼女の瞳を見つめ返して
「何か…食うか。それとも土産でも見るか?」
先ほども戦闘があったばかりだ
ミラが休める所がいい
彼女の声にはいはいと応えながら
彩った唇に願掛けをする
どうか彼女がこの先も、散らぬように、咲き誇るように
──祈りこめたる、桜色の。
ミラ・オルトリア
【想焔】
◎
結びたい縁、か
年頃の少女ならきっと浮かべる1文字あるのだろうけど
蜜彩の瞳を隣に向ける
私はそういう縁ではなくて
今あるこの温かさを大切な時間が
もっともっと続けばいいって願いが過る
「…縁が続けばいいなって結びでもいいのかなぁ
新しい縁もいっぱいあればいいなって思いながら
焔誠くんや出会った大切なお友達と
時々今日みたいに想い出を結べたらいいって
願わずにはいられなくて」
いつか誰もが死んじゃって
孤独になる世界を私達は知ってる
私は悲しみを誰もがしないように
ユーベルコードで晧夜さんや出逢う人々や友を肯定する
その傍ら
皆が戦場じゃない処で笑う世界もあると分かったら…
「そんなわがままを結んだら…怒られちゃう?」
黄色の飾布を掌に握る
でも、彼は一言で肯定する
ほら…こんなにも温かい
嬉しくてどうしようもなくてくしゃり笑う
「なら!思い切って結んじゃう♪」
――明日もその先も
君達と会いたい私のわがまま
「あ。それなら!
雲みたいなお菓子を見つけたの!」
わたあめの屋台を指さし
煌く瞳を向けた
半分こ、しよ!とあどけなく笑み咲す
●
ふわりふわりと桜の花弁が舞い、ひらりひらりと飾布が舞う。縁あれと、願う人の心を乗せて風に遊ぶ。
にぎやかな祭りの中、結ばれた飾布を見ながらに。
「…………お前は、結びたい縁はあるのか?」
様々な縁を結び結ばれ、いくつか失い、新たに得た王は、隣に並ぶ、戦場にてやはり結び結んで、時には自ずから、もしくは無理矢理に解かれた縁を得てきた歌姫へと何気なく問いかけた。
焔誠は心浮き沈むような良縁を望みはしない。彼の身は王としての責務と償いのために在ると定めたのだから。かくあるべしと決めた彼は、ただ風に揺れる飾布を眺めるだけだ。
(彼女も年頃の娘だ、戦場などではなく、もっと平和で穏やかな場所に居てくれれば安心するのだが……)
傷つくこともなく、傷つけることもなく、穏やかに笑い合えるような。傍らにいるのが誰であってもいい、平穏で、幸せでいてくれるならば。
けれどそれは、彼女の志への侮辱でもある。故に焔誠は先の言葉以上には何も語らない。
(彼女の決意に敬意と尊敬を)
そして共に戦場に立ったならば、彼女を護るのだ、と。
「結びたい縁、か」
ミラは、とろりと柔らかな色を含む瞳で焔誠を見上げる。
縁結び、と聞いて年頃の乙女ならばきっと思い浮かぶ1文字があるのだろう。心を揺らすその文字に、甘やかな思いや少し沈む心地を感じるのかもしれない。
けれどミラはそれを望まない。
望むのは、柔らかで温かな大切な時間との縁。蜜彩の瞳で見上げる先の、優しく頼もしい姿とも共に過ごすその縁。もっともっと、永遠に届けと言えなくとも、長く続けばいいという願いがよぎるのだ。
「……縁が続けばいいなって結びでもいいのかなぁ」
その願いを形作る為にミラは言葉を紡ぐ。
「新しい縁もいっぱいあればいいなって思いながら、焔誠くんや出会った大切なお友達と、時々今日みたいに想い出を結べたらいいって願わずにはいられなくて」
「……お前らしいな」
ミラは、焔誠は、仲間達は、知っている。
(いつか誰もが死んじゃって、孤独になる世界。昨日笑った人が今日はもういない、今ここにいる人が次の瞬間、手が届かない場所に行ってしまう、世界)
残酷で悲しくて、それでも縁を結ぶことはやめられない。結んだ縁が解けても、どんなに辛くても、ミラは戦場に向かうのだ。皆が悲しまないように、戦場で歌うのだ。
彼女の歌う"ユーベルコード"は、出逢った人々や友を肯定する。先程の晧夜にしたように。焔誠にもするように。
それが
想結の歌姫という存在であるのかもしれない。
けれど、ミラはもう知っていた。その傍ら、皆が戦場じゃない処で笑う世界もあるのだと。今目の前に広がる桜の世界のように、戦いはあってもそれが遠い人々がいる世界があることを。
だから、穏やかな縁が続くことを願えた。今までのミラならばわがままで、願えもしなかった、そんな縁を。
「そんなわがままを結んだら……怒られちゃう?」
黄色、温かな陽の色と、蜜彩の色の糸で作られた、柔らかな飾布を手に、その縁を結ぶのは窘められることかと、ミラは問いかける。
焔誠も一つ、銀と黒を編み上げた飾布を手に取った。その瞳に咎めの色はない。淡く銀を細めて、蜜彩の瞳見つめて肯定するだけだ。
「お前のそれは我儘ではない。俺がお前を肯定する」
ほんの一言、それで焔誠はミラを肯定する。それがどうしようもなく暖かくて、うれしくて、ミラの顔がくしゃりと花開く。
「なら! 思い切って結んじゃう♪」
今結ばれた縁達が長く続くよう、解けないように願い、ミラは飾布を結ぶ。
(――明日もその先も、君達と会いたい私のわがまま)
焔誠はその隣に、"ミラの幸せ"に繋がる縁を願い結ぶ。口にはせず、ただしっかりと。それが解けることのないように。
ひらりひらりと風に舞う、黄色と黒銀の飾布。ふわりと触れては手を結ぶように絡まったそれをしばし見て。
焔誠はふと気づいたように口を開く。
「何か……食うか。それとも土産でも見るか?」
先程影朧を送ったばかりだ、ミラが休めるようにと焔誠は言う。その言葉にミラは瞳を煌めかせ、屋台の並びを指差した。
「あ。それなら! 雲みたいなお菓子を見つけたの!」
その先にあるのは、雲のようにふわふわな存在を売る屋台。わたあめと書かれたそれは、甘いのだろう。どんな風味がするのか今からミラは楽しみでしょうがない。
「半分こ、しよ!」
「はいはい」
あどけない笑みを咲かせるミラに応えながら、ただの焔誠はミラの花開く色彩の唇に願掛けをする。自ら彩ったその色が褪せることのないように。
(どうか彼女がこの先も、散らぬように、咲き誇るように)
──祈りこめたる、桜色の。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2023年07月20日
宿敵
『影朧『李・皓夜』』
を撃破!
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