昂然響煌焔星は最終決戦悪機滅殺を告げる
『このままでは我々が敗北するのか?!』
『ふざけるなあのバケモノ……!』
『全く、育ててやった恩を仇で返すようとは』
おのれ、エミリヤ・ユイク――!
そう怨嗟の声響くこの地下こそ、
機関研究員やエミリヤの教育者達が最後の希望を持って集った禁忌の研究区域。
本来一部の者にしか知らされていないここには逃れようとした者達がどこか導かれるようにして集まっていた。
それこそまるで、
神にでも呼ばれたかのように。
コツコツと甲高いヒール鳴らし歩くエミリヤがひたりと鋼の扉に触れ、呟く。
分厚い扉の向こうから聞こえる囁き合いに混じる自身への侮蔑は恐らく面倒な奴らの悪足掻き。
「……此処ね」
『っ、ぁ゛……は゛な゛せぇ゛……!』
呻き弱々しい力で声を上げるそれは、この研究所の研究員の一人。息があり逃げようとしていたそれを捕まえここまでの道程を問い質しIDカードや指紋認証突破に使用したのだ。
死にかけのそいつを引き摺って案内させた此処が正解の場所だったことに、エミリヤ自身は無表情にも気を引き締めた。
ここできっと、一つの悪の根を絶てるはず。
エミリヤの歩いてきた軌跡には、突破ののちズタズタに引き裂かれたセキュリティの残骸がこときれ転がっていたのは、因縁ゆえか。
「あぁ、もう用は無いわ。死んで」
『――』
ヒュ、と最後に呻いた職員の声を聞く者は誰も居ない。
「ついにここまで来た……私は悪の敵。悪は燃やし尽くす」
そうして分厚い鐵扉を、黒狼の爪牙が切り開く。
『
荳也阜繧亥売縺』
『はは、はははそうだやってしまえ!見ろエミリヤ・ユイク!貴様は我らが神に跪け!!』
『――標的“実験No.f39307 エミリヤ・ユイク”ヲ確認。砲撃ヲ開始スル』
「……思いの外、生き残りが多いのね。でも、」
“私はこの身が朽ちても構わないのだけれど”
言葉は少なく淡々と。瞳瞬かせたエミリヤは、豪雨の如く襲い来る銃弾など既に
蒼煌眼で予測済。
展開させたGCを足場にして翔けるように空を跳ねながら数えたガトリング機兵が三機、火炎魔術砲兵が二機、氷雪魔術砲兵が二機、レーザー砲兵が三機の計十基ほど。頭部のカメラでエミリヤを追い銃口を向けてくる。
「なら、私は斬り捨てるだけ」
軽やかにGC蹴り出し、黒髪靡かせ空泳ぐようにエミリヤは舞う。恐らく
奴らの指示を聞いているようで聞いていない
神崩れは、じいっとエミリヤを見つめ嗤い続けている姿に少々怖気が走った。
「(気持ち悪い)」
指先から撃ち放って来る光球が、エミリヤが避けるごとに徐々に形が変化してきている。
「(学習、している
……?)」
『ククク……!おいエミリヤ!お前如きが我々を越えられると思うなよ!!!』
「よくもまぁこんなものを造っていたな?」
負け犬の遠吠えなどどうでもいい。問題は
奴だ。
徐々に光球から光矢、嚆矢めいた形に変化させた攻撃。ニタニタ嗤いの“何か”は護衛機よりも小柄なため、まず護衛機を斬らねばなるまい。
軽やかに音も無く着地すれば、全ての銃口がエミリヤを捉え睨みつける。
「――遅い」
輝く眸は世界を遅延させる――否、エミリヤに次元を超えさせる!
何もかもが遅い世界でエミリヤが見つめるのは最良最速。何ら問題はない、それをただ辿れば良いだけ。
靡く
黒いマント美しく、雨霰の如く降る銃弾と魔術の群れを越え、エミリヤは駆ける。
黒狼爪牙の鯉口を切った値を聞いた者はいないだろう。眦吊り上げ揮う一閃が迷いなく砲兵機共の首を落とし容赦なく砲身を斬り飛ばす。
唯一つ。
あの“神もどき”と視線ぶつかったことにだけ、微妙な違和感を覚えたけれど。
『
蝨ー迯?r豁、蜃ヲ縺ォ』
「っ!」
咄嗟の嫌な予感に飛び退けばエミリヤの立っていた場所が突如腐り、音を立てながら崩れてゆく。
『――はは……ははは!ほら、やってしま――ぇ?ぁ、ギャアアア!』
『
豕」縺榊将縺ケ逕溷多繧』
意味不明な音を発す“神”が背に立っていた職員共を腐らせる。いくら悲鳴を上げ逃げ惑おうと、その神はゲタゲタ嗤いながら一人残らず職員共を喰らっていった。
「あんなもの、人間が手を出して良いものじゃない。貴様ら自身が命運を縮め――……いや、尽きただけ」
『
螽倥?∝ィ倥?∵ア昜ココ縺ェ繧翫d?』
奴は本当の神ではない。人工なうえ枠から逸脱しかけた“邪神”へ堕ちたものであると、エミリヤが猟兵であり邪神住まう異国の一つへの赴き戦った経験あればこそ、分かる。
「……今の私は
冥狼を越え
焔狼――さえ、越える」
『
迯」?∫坤繧医?∵?縺瑚?蜈?∈』
しかし全ては些末なこと。数に入れる必要もない。
例え邪神の指先がエミリヤを追おうと、そんなもの
響煌焔星を止める術にはなり得ない!
「もう私を縛る鎖も燃え落ちた。私は
悪の運命を討ち完遂する」
越えろ、時を。
「ハァァアアアッ!!」
『
迯」繧医?∵擂繧九′縺?>』
冥狼振牙の一蹴で伸ばされた邪神の一本の腕を斬り飛ばす!
勢い殺さず邪神の間合いに入った瞬間、牙剥く腐食がエミリヤを襲うもTPMCは傷付かない。
「――焔奏せよ、我が魂」
謡うような言葉はユーベルコードのトリガー。胸に燈した限界を超え迦具土を燃やし、蒼き焔纏う。
「天に掲げよ、勇猛なる焔の恒星」
地を蹴る姿はまさに地翔ける星。
「止まらぬ燃える意志に限界はない!悪を討ち滅ぼせ!ブレイズ・スフィア・ブレイバー!」
UC―煌焔恒星―!!
それこそは最凶の星。
真っ直ぐすぎるほど眩いエミリヤの意思!
「正義を語るつもりはない。けれど
悪を造っている限り何度でも私は殺すこれは終わりであり始まりに過ぎない」
焔の軌跡に残る者はおらず焼き斬られた世界はただ、始まりの狼煙を上げる。
成功
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