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逆襲の武辺者

#アルダワ魔法学園 #宿敵撃破

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#アルダワ魔法学園
#宿敵撃破


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           ●

「――嗚呼、快也」
 笑う。腹の底から愉快そうな声でだ。血が混じった笑い声が学園の屋上に響く。
「――嗚呼、快也」
 見る。地の底から望んでいたものを。夜の空と死体が視界の中に広がっている。
「――嗚呼、快也」
 進む。何も顧みずに屋上の縁へとだ。鳴る。死体と鎧の残骸による不協の音が。
「――嗚呼」
 歌う。喉の底から天上の月に向けて。見る。手だ。そこには獣毛と鋭爪がある。
「――――”怪”也」

           ●

 猟兵たちの拠点、グリモアベースに一つの声が聞こえる。
「皆さん、事件ですわっ」
 ベースに響くのは、グリモア猟兵であるフォルティナ・シエロによるものだ。
「現場である世界はアルダワ魔法学園。そこで、フロアボスが迷宮を”逆侵攻”し、各階層を突破。遂には学園までたどり着きますの」
 苦々しく言葉を吐き出した自分に気付いたのか、はっとし、表情を硬くする。
「猟兵の皆さんには、この惨劇を防いでもらいたいんですわ」
 身振り手振りを交えながら、彼女は集まった猟兵たちに言葉を送る。
「現場の現状を説明しますわ。非戦闘員もいる学園への侵入は絶対に阻止しなければなりませんの」
「そのため、ボスたちを迎え撃つ場所は迷宮の中、入口からある程度進んだ先に、戦闘に支障の無い広さのフロアがありますので、そこですわ」
 しかし、と言葉は続く。
「フロアボスである”獣の侵略者『デュラン』”は自身を封印し、その姿を獣に変えた学園や学生たちにとても強い憎悪を持っていますわ。並大抵の相手ではありませんの」
 フォルティナは眉を立て猟兵を見回す。
「また、デュランは配下として、”首無しの熟練騎士”を多数引き連れてますわ」
「そこで、皆さんには尖兵として押し寄せてくる無数の”騎士”たちを撃退してもらいたいんですの」
 猟兵たちの顔を見回しながら、”騎士”達の攻撃手段はこうですの、とフォルティナは指を立てる。
「一つ目は、魔法刀の剣筋が命中した対象を、問答無用で斬撃しますの。接近戦重視の方は要注意ですわ」
「二つ目は、自己強化系の魔法で、炎と氷の無効化、脚力の強化、物理防御力の強化。この三つの内どれか一つを都度選択しますの。魔法や物理も、そのままだと有効打を与えられないかもしれませんの」
「三つ目は、天高く掲げた掌から広範囲へ高威力の雷を放ちますの。離れていても油断はできませんわね……」
 指を立てた手は降ろさず、全て開き、光を生み出す。
 オレンジ色の光はグリモアだ。
「事件の現場近くまではグリモア猟兵である私の能力で、テレポートし、皆さんを召喚しますわ」
 猟兵たち一人ひとりの顔を確認しながら、フォルティナは言葉を続ける。
「そこから先は危険が予想される場所ですの。何があってもおかしくありませんわ。用心してくださいまし」
 全員の顔を見渡すと、フォルティナは眉を立て、口角を上げた。
「まあ、皆さんならできますの! 私はそう信じていますわ!」
 あっ、と言い忘れていたように声を漏らすと、
「フロアボスの撃退後は、学園側の主催で、猟兵達の戦闘訓練が行われますの。騎士や武芸者に通じた戦い方を、鍛練や猟兵同士の模擬戦といった様子で、学園の生徒たちに向けて見せてあげて下さいまし」
 新入生の入学時期ですものねー、と付け加えながら、フォルティナは転移の準備を進める。


シミレ
 シミレと申します。TW6から初めてマスターをします。
 今OPで8作目です。アルダワ魔法学園は初めてです。
 不慣れなところもあると思いますがよろしくお願いいたします。

 ●目的
 今回はアルダワでフロアボスが配下を引き連れ”逆侵攻”で攻めてきます。それらを迷宮内のフロアで待ち構えて撃退してください。

 ●説明
 一章は集団戦で、”首無しの熟練騎士”が魔法と剣技、そして多数で襲ってきます。
 二章はボス戦で、”獣の侵略者『デュラン』”が変身斬撃銃撃格闘相棒の鷹魔術となんでもありで戦闘です。
 三章は日常で、猟兵の鍛錬や猟兵同士の模擬戦などを、新入生をはじめとした学生たちに見学してもらおうかと。

 ●他
 皆さんの活発な相談やプレイングを待ってます!!(←毎回これ言ってますが、私からは相談見れないです。ですので、なおのこと好き勝手に相談してください)
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第1章 集団戦 『首無しの熟練騎士』

POW   :    雷鳴刀
【迸る魔法刀の剣筋】が命中した対象を切断する。
SPD   :    疾風迅雷
【「炎」と「氷」を無効化する強化魔法】【脚力を上昇させる強化魔法】【物理的防御力を上昇させる強化魔法】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    怒髪天
【掌を天高く掲げて】から【全方位に向けて高威力・広範囲の雷】を放ち、【電気や雷に対策のないものは感電】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 
           ●
 
 地下迷宮”アルダワ”、その内部は喧騒の念で満たされていた。
「――部長! 索敵魔術によって敵影を捕えました! 災魔”デュラン”が”首無しの熟練騎士”を多数引き連れて、迷宮内を尚も踏破中です!」
「彼我の戦力差では、ここも数分で突破されます!」
 迷宮入口からある程度進んだ先にある、広いフロア。災魔による”逆侵攻”によって、学園側の最終防衛陣地となったその場所で声を上げたのは、通信担当の学生だ。
 それを聞いた部長は陣地の中で、一つ頷く。
「ふむ……」
 そう言って、また沈黙を再開する部長に、背後で手持無沙汰な様子で立っていた学生が困惑の表情を浮かべる。
「ふ、ふむ、って……。それだけですか!? ぼ、僕達このままじゃ――」
 死んでしまうと、その言葉は続かなかった。
「君」
 部長が言葉を被せたからだ。
「君は、新入生かね」
 問われた学生は目を丸くし、ややあってから返事をする。
「は、はい……。だ、だけど! それが一体どうしました!? 新入生の僕達でも、今がヤバいってことくらい分かりますよ!」
「ということは、迷宮をはじめ、何もかもが未知で未経験なわけだ」
 それはどういうことか。
「――ならば、この後どうなるかも知らないわけだね」
「――え?」
 瞬間、風が陣地を過ぎ去った。
「――」
 新入生は見た。突風の正体をだ。
 それは学園側の通路からやって来た。多数だ。
 迷宮の床を蹴って進む者や、蒸気渦巻く上空を飛行する者もいれば、魔法による瞬間移動や、機械による超加速で進む者もいる。
 移動方法を含め、何もかもが多様な集団が自分達がいる陣地を乗り越え、飛び越し、前進していく。
「あ、あれは――」
「よく見ておきたまえよ新入生君」
 他の学生に撤退準備を指示しながら、部長は言う。
「十二月から、この世界は激変した。――こんな大規模な”逆侵攻”など、もはや珍しいものではなくなるほどにね」
 新入生の背を押しながら、部長は学園への通路を戻っていく。
「まぁ僕を含め、学園の学生たちも結構”イケ”るけど、流石にあんな数には敵わない。――さて問題です。それじゃあどうすれば学園を守れるでしょうか。配点(世界平和)ってね。ヒントは前を歩く、通信担当の娘がさっき言ったことだ」
 新入生が驚愕という表情でこちらを振り返る。
「じゃ、じゃあ今のが……!?」
「ピンポーン。――ってまだ正解言ってないね。まぁいいか……。そう、あれが”転校生”達だよ。彼我の戦力差をひっくり返す存在だね」
 またの名を? と片目を瞑りながら促せば、新入生が興奮した様子で口を開く。
「――”猟兵”……!!」
 
鶴来・桐葉
【心情】なるほど、そうとう恨んでるっぽいなあ。だからって無関係の人間を襲われちゃたまらねぇ。ここは阻止するぜ!

【作戦】仲間と連携。「おーおー、ぞろぞろいんなあ首無し共。さあ、斬り合おうぜ!」敵の攻撃は刀は【盾受け】【武器受け】【怪力】、怒髪天は【残像】で対処。「なかなかな攻撃だが、まだまだだな!」「残念だったなそいつは残像だぜ!」【二回攻撃】を駆使した大崩斬で一網打尽だ!「そーら、でっかい刃を食らいな!!」


セルマ・エンフィールド
なにやら期待が重いですが……まぁ、やれることはやりましょう。

私の武器は銃。強化魔法によって物理的防御力を上げるのは厄介ですが、その使用中は氷の無効化は使えません。逆もまた然り。

ならば、物理的な攻撃と凍結を同時におこなえばいい。私の【氷の狙撃手】ならばそれが可能、問題ありません。

どの強化状態の敵にもそれなりに効きますし、他の猟兵の援護をするように立ち回り、当てられる敵に確実に当てていきましょう。

凍り付くか、砕かれるか。どうぞ好きな方を選んでください。



 
           ●
 
 セルマは学生達が残した防衛陣地の中、遮蔽物の影にいた。
「凄い数ですね……」
 前方の敵だ。このフロアに繋がる通路の全てから、波濤という勢いで押し寄せてくる。
 甲冑に身を包み、しかしその頭には空白を置いた存在は”首無しの熟練騎士”だ。
 狙撃銃、”フィンブルヴェト”を構え、一体をスコープでその姿を捉える。
 ……厄介です。
 敵の鎧が、僅かな光を伴っているのだ。
「事前の情報通り、防御系の強化魔法ですね」
 こちらへの攻撃を警戒して防御重視の状態と、そういうことか。
 恐らくこのまま射撃をしても有効打は与えられないだろう。ならば自分の得手である氷を用いた攻撃はどうかというと、それも駄目だ。
「炎と合わせて無効化ですね……」
 ならばどうするか。
「……なにやら期待が重いですが……」
 背後、もはや安全圏へ避難した先ほどの学生たちを思い浮かべながら、”フィンブルヴェト”の引き金に指をかける。
「――」
 引いた。フロアの中を炸裂音が響き渡り、反響していく。
 
           ●
 
「……!」
 銃声に気がついた”騎士”たちは反射の速度で、全身にエンチャントした強化魔法の出力を高くする。
 こちらへ飛来してくる飛来物、銃弾に対し絶対の防護を備えたのだ。
 しかし、
「……!?」
 防護は果たされなかった。先頭に立っていた一体が衝撃に身体をよろめかせたのだ。
 見る。胴体中央、その位置を。
 そこにあるのは、正しく銃弾だ。だが、その着弾点の様相が通常とは違う。
 その正体は何か。詳細に確認しようと意識を向けたが、
「――」
 それより前に先頭の”騎士”が地面に倒れ伏した。
「おーおー、ぞろぞろいんなあ首無し共」
 声は、倒れた”騎士”の前、そこからだ。
 声の主は袖裾の広い衣服を身に纏った男がいる。
「分かるぜ。お前らも、お前らのずっと後ろにいる大将も、相当恨んでるっぽいなあ」
 だけどよ、と男は続ける。
「無関係な人間を襲われちゃたまらねぇ。だから、ここは阻止するぜ!」
 男が、こちらに眉を立てた表情を向けた。
「――さあ、斬り合おうぜ!」
 
           ●
 
 戦闘は、力と力の衝突で始まった。
「おお……! なかなかな攻撃だが、まだまだだな!」
 両サイドからの”騎士”による二撃を、桐葉が手にする刀と盾で受け止めたのだ。
「――!」
 しかし、敵は多数だ。攻撃を防ぎ、耐えているこちらの周囲から、雪崩れ込むように敵が押し寄せてくる。
「だが、そう簡単にいくかよ!」
 声を張り上げ、両腕で受けていた攻撃を押しのけた。その勢いと力は猛烈だ。
「……!?」
 押しのけられた”騎士”が、周囲から押し寄せていた他の”騎士”たちを巻き込みながら吹き飛んでいく。
「……!」
 慌てた動きで距離を取った”騎士”たちが次に行う動作は、掌を天高く掲げるものだ。
「――」
 目を覆うような光が、掌から迸った。周囲を駆け巡り、発散される力は雷電だ。
 こちらがいる場所のみならず、全方位へ敵が雷電を一斉に放つ。隣立つ味方への被害を考慮しない一撃は、大気を、床を、何もかもを衝撃していく。
 閃光。それに爆音が場を支配し、それが終わった後、そこには、
「――!?」
 何も無い。
「残念だったな。そいつは残像だぜ!」
 背後からの声に驚き、振り向こうとした”騎士”たちだが、しかしそれを果たせなかった。
 遠く、陣地から飛来した銃弾によって、それを阻害されたのだ。
 
           ●
 
「確かに強化魔法は厄介です」
 セルマはスコープを覗きながら、言う。
「物理防御を上げられては銃弾が通らず、だからといって凍結の一撃を通そうすれば、その時は氷属性の無効化で打ち止めです」
 一見、自分にとって相性が最悪な相手だが、しかし勝機はある。
 それは何か。簡単なことだ。
「弾丸と凍結、それを同時に行えばいいのです」
 だからそうした。そうして、結果は照準の先だ。
「それなりに効けば良い、とそう思っていましたが、想像以上ですね……」
 二つの強化魔法のどちらをも干渉突破された”騎士”たちは、こちらの射撃、”氷の狙撃手”を鎧の関節部分に叩き込まれ、もはや身動きが取れない。
 効果を確認すれば、後はそれを連続していく。照準、射撃、装填。これらを高速で行っていくのだ。
 スコープの中、凍結の数も、範囲も、全てが次第に増加していく。
「――凍り付くか、砕かれるか。どうぞ好きな方を選んでください」
 
           ●
 
「へっ……。どうやら動けねえようだな」
 桐葉は後方、セルマの射撃によって凍結していく”騎士”たちを見ながら言葉を放つ。
 正確の一語で表せられる狙撃は、視界の中で、幾体もの敵を凍結させていく。
「……!」
 僅かに身じろぎをする敵に対し、剣を向ける。
「固まってくれてありがたいぜ。これで一網打尽だ」
 剣は先ほどまでの刀ではなく、大剣だ。
 振りかぶる。
「そーら、でっかい刃を食らいな!!」
 踏み込んだ大振りのスイングは、自分の周囲にいた氷結した敵を粉々に砕き、散らせていく。
「もう一丁!」
 叫びと共に、逆足で二段目の踏み込みを送り、返す刀でさらに散る波を厚くしていく。
 氷片が、蒸気の渦の中を舞っていった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カイ・オー
WIZで判定。連係歓迎。

「そう持ち上げられると面映ゆいな。」
目立つのは嫌いじゃないので満更でもないけど。
……とはいえ、炎が効かないのか。ちと面倒だな。
敵の剣が届かない程度に間合いを詰めて、UC【電流操作能力】発動。
【電撃耐性】【オーラ防御】で敵達の放電を停止させ、自分や仲間への攻撃を食い止める。
更に【属性攻撃】【カウンター】【ハッキング】技能で電撃を逆流させ、敵達自身を攻撃させてみよう。本来、放電ってのは全身金属で固めてる奴に向かうもんだ。自然な流れに矯正するだけで良い。
敵の動きが鈍ってくれるならその隙を付いて、能力を維持したまま【ダッシュ】で間合いを詰め【怪力】【なぎ払い】で刀で攻撃するぜ。


ルエリラ・ルエラ
【アドリブ改変・連携歓迎】
じゃーん。およびとあらば即参上。私だよ。なんてね。
狭いとこはやりにくいけどここは広くてよかった。
さ、ここから先は行かせないよ。

敵はいっぱいだし、今回は【アインス】で一体一体確実に仕留めさせてもらうね。
魔法耐性や防御力を強化しても、私の矢は全てを貫くから意味なんてないよ。
一緒に連携できそうな仲間がいたら、足をメインで狙って『援護射撃』中心にしていこうかな。
機動力は奪うから、美味しいとこ、しっかり持って行ってもらおう。
接近戦に持ち込まれないよう、「私のブーツ」や「ワイヤーフック」なんかで距離をとるつもりだけど、万が一持ち込まれたら「純金のゴボウ」で切り抜けるつもりだよ。



 
           ●
 
「そう持ち上げられると面映ゆいな」
 カイはすれ違い、学園へ退避していく学生達の様子に苦笑しながら前へ、歩みを進めていく。
 まぁ、目立つのは嫌いじゃないけどな……。
 満更でもないと、そんな風な雰囲気で前方へ視線を向ける。
「……とはいえ、炎が効かないのか。ちと面倒だな」
 革手袋を撫でながら見る先は“首無しの騎士”たちだ。接近するこちらに呼応するように、向こうも駆けて来る。
「――!」
 “騎士”たちの動きはこちらを包囲し、逃さない動きだ。そうしてこちらを遠巻きに包囲し、騎士剣を持たない左手を天に掲げれば、そこに閃光が集まり、
「……!?」
 しかしその輝きは失われ、雷光は不発となった。
「何が起きたか、分かってなさそうな感じだな」
 ポケットに手を突っ込みながら、言う。
「簡単なことだよ。ちょっと“操作”させてもらった。そっちの雷をな」
 見えるか? と自分の周囲を顎で指す。そこにあるのは可視化されたオーラだ。自分を中心に波のように生まれたそれは、周囲の“騎士”たちを浸すように広がっていく。
「……!」
 異変の源を断とうと、一体の“騎士”がこちらに剣を振りかぶって来る。
 だが、それは果たされなかった。
「――遅いな」
 瞬間、爆音がフロアに鳴り響いた。
 強烈な閃光と音の圧は、やはり“騎士”の雷電によるものだ。
 だが、本来、敵であるこちらに放たれるはずのそれは、こちらへ駆けてきた騎士に集中していた。
「――」
 高電圧の集中を受けた“騎士”はその鎧を溶解させ、倒れ伏している。
「――操作できるって言ったろ?」
 そう言って、ポケットから手を抜き、空中で指を鳴らす。
 それだけだ。
 周囲の“騎士”たちの鎧内部から、雷が四方八方に一斉に放出された。
「本来、放電ってのは全身金属で固めてるような奴らに向かうもんだ。自然な流れに強制するだけでいい」
 オーラはそのままに、言葉の後、腰の刀を抜く。
「――」
 一息。それだけで間合いを詰め、感電によって硬直した“騎士”達に肉薄する。
「おおっ……!」
 叫びと共に、刀を横薙ぎに振り払う。剣筋は左から右へ、一直線の薙ぎ払いだ。
 無数の鎧が断たれ、受けた力に耐え切れずに吹き飛んでいく。
「そらそら、まだまだ行くぜ!」
 刀を翻し、集団の中に飛び込む。そうして、幾体もの“騎士”たちを掃っていると、それが見えた。
「成程。俺との相対を避ける、か」
 遠く、被害を免れた集団がこちらを迂回するルートを選択したのだ。
 波が割れる。そんな視界の中、溜息交じりに肩をすくめる。
「――雷を操作したのは、何も、俺を守るためだけじゃねえんだぜ」
 瞬間、学園側から光が来た。
 
           ●
 
 光は細く、鋭利だった。フロアの中を突っ切り、カイを迂回するルートを辿る“騎士”たち目がけて飛んでいく。
 光矢。光の正体はそれだ。
「……!」
 射線上にいた一体の“騎士”が、物理防御を増加させる加護をフル稼働させ光矢を待ち構える。
 “騎士”は思う。あの光矢は防げる、と。
 様相から考えるに、光矢は魔力で形成されたものであるが、伴う運動エネルギーは物理依存だろう。
 ならばこちらとしては物理の防護を固めればいい。光矢自体は防護を突破し鎧に到達するが、エネルギーは加護によって阻まれるからだ。
 そうすれば、光矢は鎧との衝突に耐え切れず砕け、散る。
「……!」
 来た。光矢だ。それは、こちらの想像どおりに正しく防護を貫き、
「――!?」
 しかしそこで止まらなかった。正面からこちらの鎧を貫き、背中側へ抜けて行ったのだ。
 
           ●
 
 管楽器のような音色を聞きながらルエリラは言う。
「じゃーん。およびとあらば即参上。私だよ。なんてね」
 自分が今いる場所は学生達が残した防衛陣地、その中だ。愛弓を構え、前方に狙いを定めている。
 その位置で聞こえてくる音色は前方、“騎士”からによるものだ。
 高速の飛翔物で鎧に穴が空けば、空気が流入し、すると内部でそれが衝突しあって背中側から抜けていく。
「――」
 低く、速い音は嘆きのような響きでフロアを揺らす。
 嘆きは絶えず、連続している。
「防げると思った? でも残念。そっちがいくら魔法耐性や防御力を強化しても、私の矢は全てを貫くからね意味なんてないよ」
 弓を引き絞る。
「狭いとこはやりにくいけど、ここは広くてよかった」
 一体一体を確実に穿ちながら、矢に乗せるように言葉を送る。
「さ、ここから先は行かせないよ。」
 狙う位置は足だ。機動力を奪うその意味は、一つ。
「お願い、カイさん」
「おうよ!」
 迂回を選択した“騎士”たちが次々と地面に倒れ伏し、そこへカイが追撃を仕掛けていく。
「む……」
 気づく。射線から逃れた数体が脚力を上昇させ、こちらに突っかけてくる。
「流石に近づかれるのはまずいかな……」
 そう呟き、その直後にはもはや身体はその位置にいない。
「……!?」
 視界の中央から横端に、その姿を一気に変位させたこちらへ驚いた“騎士”たちが慌てた動きで進路を修正する。
「遅いよ」
 射出されたワイヤーによる高速移動と、ブーツによる飛翔にその身を任せ、矢を放っていく。
 倒れる“騎士”たちを確認しながら、異変に気付く。
 一体足りない……。
 こちらに突っかけてきた時より、その頭数を減らしているのだ。
「――!」
 そのとき、背後から殺気を感じた。“首無しの熟練騎士”だ。
 他の仲間達を陽動に、こちらの背後を取った一体は剣を振りかぶり、こちらに振り下ろしてくる。
「――」
 だが、それはある者によって阻まれた。
 ゴボウだ。黄金色に輝くそれは、ルエリラの片手に握られ、バックハンドで背後の“騎士”へ突き刺さっていた。
「ゴボウを持っていなかったら即死だった……」
 そう言って背後の“騎士”を蹴り飛ばし、また敵との距離を取っていった。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

一郷・亞衿
そう、嵐を呼ぶ転校生とはあたしたちのことだぁーっ!
……どっちかって言うとあいつらの方が嵐呼んでるけどさ。物理的(?)な意味で。

生徒の皆には身を守るのに専念してて貰おうと思ったものの、相手が広範囲攻撃してくるっぽいのがちょっとウザいかな。
『カルト・セブン』で“金”属性のマジックボルト、具体的には槍状の物理実体を持つ金属の矢を生成。
それらを敵周辺の天井とか壁とかに打ち込んで簡易的な受雷針(避雷針)みたくすれば、雷がそっちの方に誘導されて被害を減らせる……と、思う。ごめん正直そんなに自信無いや。半分くらいは土属性矢にして普通に敵を攻撃しとこう。
ま、初歩的な魔術だからこそ応用が利くよね、ってことで。


才堂・紅葉
「困りましたね。ここから先は学び舎なのですが」

手持ちのカードで召喚した三節棍を振り回し告げる。
それなりに気に入っている学園生活。そして友人達への危険となれば手は抜けない。
上の連中に利用されてるようで癪だが今は対処だ。

三節棍のリーチと打撃力、及び状況に合わせてギミックで棍にしての棒術で翻弄。
他の方がいれば連携し、物理打撃で応戦。
物理耐性がついて膠着する頃、機を見て【暗号作成】で合図。
三節棍を搦める様に投げつけるなりしてUC発動。

六体のオブリビオンの核を狙い、リボルバーの早撃ちで氷結属性の詠唱弾を叩き込ます。
一撃で屠れれば重畳。
倒せずともチャンスメイクにはなる。

【連携・改変歓迎】



 
           ●
 
 亞衿は笑った。小さくだ。
 今、すれ違った新入生の言葉がおかしく感じたのだ。
 なので、振り向き、もはや遠くなった学生達に向かって言う。
「そう……、嵐を呼ぶ転校生とはあたしたちのことだぁーっ!」
 ダブルのピースサインをついでに決め、再度、前方への疾走を再開する。
 ……でもまぁ、どっちかって言うとあいつらの方が嵐呼んでるけどさ。物理的? な意味で。
 視線の先、雷鳴と剣戟の音が鳴り響いている。
 戦闘が始まっているのだ。
 急ぎ、合流していく。
 
           ●
 
 紅葉は思う。まるで嵐のようだ、と。
 フロアの各所では衝突が絶え間なく発生し、それらの余波が迷宮全体を揺らしているのだ。
「困りましたね……。ここから先は学び舎なのですが」
 言って、取り出すのは一枚のカードだ。召喚符であるそれは姿を変え、三つの節を持った長物、三節棍が召喚される。
 手応えを確かめるように一度振り回し、構える。
 そのとき、背後から声が聞こえてきた。
「お? 紅葉さん、それで闘う感じ?」
 少しくぐもった声の主はマスク姿の亞衿だ。
「ええ。とりあえずは、といった感じで」
 亞衿が横に並び、視線は前方のままでこちらに問いかける。
「どうします?」
「突っ込みます」
「おお、やる気ですねぇ?」
「“それなりに気に入ってる”と“癪”、が同居してる現場なので」
「つまり青春?」
「まあ、そんな感じです」
 それだけ言えば、行動を開始する。
 疾走だ。一歩目から全力で行く。
 
           ●
 
「……!」
 突っ込んでくるこちらに気付いた“騎士”たちが即応の判断を見せた。剣を構え、こちらを迎え撃つのだ。
「行きます……!」
 そう言って、自分はさらなる加速を身体に叩き込む。
 至近の一体までに必要な歩数を目測で測り、幅広のストライドで駆けていく。
「そこ!」
 目標地点で踏み切り、跳躍した。そうして空中で身をスピンさせれば、出来あがるのは遠心力を蓄える姿勢だ。
 横に回る視界の中、三節棍がその連結を緩め、自分の身体にまとわりつくように追随しているのが見える。
「――!」
 バックハンド気味の一発が“騎士”の横腹を打撃した。
 剣の間合いの外からの一撃に“騎士”はなすすべも無く吹き飛んで行く。
「……!」
 しかし、事前に物理防御を強化する加護をかけていた“騎士”はすぐに体勢を立て直し、復帰する。
「ふむ……」
 目を細めて敵の様子を眺めながら、しかし動きは止めない。節の連結を固定し、一本の棍となったそれを背後から接近していた一体へ突き込む。
 打撃と突き込み。そんな風に相手を翻弄すれば、次第に相手が物理防御の加護を堅固にし、その動作が次第に固まって来る
 今……!
 それを確認した直後、連結を緩めた三節棍を相手に投げつけた。
「……!?」
 絡みついた三節棍が“騎士”同士を連結し、その身動きを封じる。
「――」
 瞬間、右手でリボルバーを掴み、抜き取りながら左手でコックを起こす。
 神速のファニングによる銃声は最早、一発だ。
 氷結の詠唱弾によって核を撃ち抜かれた六体の“騎士”は、倒れることもできず、その姿を凍結させていた。
「――!!」
 残った“騎士”たちが、慌てた動きでこちらを緩く取り囲み、その左手に光を蓄える。雷電による攻撃を狙いに来たのだ。
 そのとき、轟く雷鳴を掻き分け声が聞こえてきた。
「――“倍増しになれ、労苦と災禍。/炎よ燃えろ、窯よ煮滾れ──”」
 詠唱だ。位置は自分の背後から。
「行きます……!」
 再度の言葉は詠唱のタイミングに合わせ、突っ込むのと同時だ。
 次の瞬間には、“騎士”による稲妻がフロアを揺らした。
 
           ●
 
 亞衿は見る。眼前の結果をだ。
「上手くいくかちょっと不安だったけど、やっぱり所詮は雷だね……!」
 視線の先、そこには紅葉を避けるようなルートで雷の流路が広がっていた。
「……!?」
 戸惑う“騎士”たちは、異変の正体を知る。壁や天井といった位置に打ち込まれている鋼矢、否、鋼槍とも言えるほどの大きさのそれをだ。
 その数、七五。
「広範囲攻撃してくるっぽいのがちょっとウザいかな、って思ってさ。金属製ならぬ金属“性”の避雷針だよ。これで、いくら雷を撃ってもそれが受け止める」
「助かりました亞衿さん、これで気にせず行けます!」
 天井と壁に設置され避雷針によって、雷が第二の天井のようになった下で紅葉が拾い直した三節棍で打撃を再開する。
「――!!」
 すると、“騎士”たちが集団を分けた。紅葉への相対と、妨害の発端であるこちらへの対処だ。
 疾走に脚力強化の加護を乗せ、剣を背後に流した構えはすれ違いざまの両断狙いだ。
「おぉー、速いねー……」
 もはや彼我の距離は、数歩で剣の間合いに入る。
 しかし構わず、視線は避雷針に向ける
「――でもまぁ、実はあれ、全部の内の半分なんだよね」
 直後、低く、重量のある音がフロアに連続した。
「――!?」
 音の正体は床に倒れ伏した“騎士”たちだ。その鎧の各部に、幾本もの矢が突き刺さっている。
 その数、七五。
 残り半分である土属性のマジックボルトが“騎士”たちの鎧を正面から貫いていたのだ。
「ま、初歩的な魔術だからこそ応用が利くよね、ってことで」
 再度、マジックボルトを召喚し、自分の周囲に展開させていく。
「んじゃ、学園らしく復習いってみよー」
 一五〇本の力が一斉に降り注いでいった。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ナイツ・ディン
「……まだ彷徨ってるんだな。なら今度は俺が導いてやらねーと、な。」
『ふん、因果なものだな。』
紅色の竜『ディロ』が目を瞑りながらぼやき、そのまま槍の姿になる。

とりあえず首なし騎士を処理するか。ディロ、蹴散らすぞ!

初手【目立たない】【ダッシュ】で突っ込んで【なぎ払い】で纏めて潰す。武器攻撃は【武器受け】や【盾受け】でしのぎつつ、小柄な体を生かして飛翔しつつ撹乱。魔法攻撃は【見切り】で対処。

ユーベルコード使用時の隙は【激痛耐性】で。
炎も氷も通らないか、物理も強い。だがこれならどーだろな?
槍を竜の状態に戻し、力を与えるぞ。
「無属性、敵は空洞、よく響きそうだな!」
『純粋な力、これが竜種の在り方だ!』



 
           ●
 
 ナイツはディロと共にフロア上空、その位置にいた。
 フロアは、無数の“首無しの熟練騎士”たちによって埋め尽くされていた。
 それらを視界に入れながら、しかし意識を向ける先は“騎士”たちではなく、その奥、闇の向こう側だ。
 迷宮の奥地へと続く通路、闇と蒸気によって窺い知れないそこだ。
 直後、来た。
『――――』
 鳴き声だ。
 迷宮の奥深く、そこからの咆哮はフロアや通路に満ちた霧を震わせ、憤怒と戦闘の意を知らせる吠声だ。
「……まだ彷徨ってるんだな」
 わざわざ声を上げたということは、向こうもこちらの存在に気付いているのだろう。
「――――」
 自分はここだと、吠声が続く。
「なら、今度は俺が導いてやらねーと、な」
『ふん、因果なものだな』
 ディロが目を瞑りながらぼやき、そのまま姿を槍へと変えていく。
「なんにせよ、まずは首無し騎士たちを処理しなきゃな。――ディロ、蹴散らすぞ!」
 槍となった相棒を構え、突撃していく。
 
           ●
 
「――――!!」
 管楽器を床にぶちまけたような轟音が、フロア全体を震わせた。
 音は、打撃によって吹き飛んだ“騎士”たちが、その鎧で地面を打ち鳴らしたことによって生じたものだ。
「……!?」
 猟兵からの奇襲を受けたことを知った“騎士”たちは、すぐに警戒の態勢を敷く。
 奇襲を行った敵の正体を確定するため、周囲を索敵する中、“騎士”たちは最初、“それ”に気付かなかった。“それ”があまりに小さく、また、自分達の頭上という、もはや失って久しい部位の上にいたからだ。
「――」
 “それ”を確認できた“騎士”は集団の中で一体だけだった。
 その“騎士”が得た情報は、“それ”が小柄で、赤の色を持っているということだけだった。
「――」
 次の瞬間には死角からの衝撃によって、知覚の全てが失われた。
 
           ●
 
『――左だ!』
 敵陣を縦横無尽に飛び回る中、ナイツはディロの声を聞いた。
「――!」
 ディロの声に、左手を掲げるという動作でもって応え、そうしてその結果を自分の身に走る衝撃で知る。
「気付かれ始めたか……!」
 衝撃に逆らわず、その身を左から右へ空中に流していく最中、鉄製のカードで出来た盾を持った左手を一度振る。そうして、自身にダメージが無いことを確認すれば、背中の翅で大気を叩き、再度の加速を得ていく。
 敵の間を翔け、こちらを捕えようとする“騎士”たちを翻弄していく中、それが来た。
「魔法か……!」
『空間ごと埋め尽くす気だぞ!』
 ディロの言葉通りのことが起こった。“騎士”が掲げた手から雷が放射状に広がり、周囲を走っていくのだ。
「おぉ……!!」
 しかし、こちらも敵の攻撃方法は事前に分かっている。上から斜め打ち下ろしの軌道でやって来る閃光の悉くを見切り、抜けていく。
 抜けていく先は敵陣の奥深く、中央だ。
「炎も氷も通らないか、物理も強い……。だが、これならどーだろな? ――ディロ!」
 叫び、槍を振り上げれば、その姿が緋竜に戻っている。
「おおっ……!!」
 もはや回避を停止し、竜となったディロへ力を送っていく。
 敵は、そんなこちらを逃さず追撃をしかけてくる。
「ぐぅ……!」
 フェアリーの自分にとって“騎士”の一撃は苛烈に響き、身体に激痛が走っていくが、構わない。
『おおっ……!』
 そうして耐え、ディロに十分に力を蓄えると、彼がこちらを引き連れるように上昇を開始する。
 上空、“騎士”たちを睥睨できる位置に一気に上がり、言う。
「無属性、敵は空洞、よく響きそうだな……!」
『――我を恐れよ、讃えよ! 純粋な力、これが竜種の在り方だ!』
 ディロがその口を開き、
「――――――!!」
 吼えた。
 竜の“気”が乗った咆哮が、周囲の空気を震わせ、空間全てを打撃していく。
「……!」
 咆哮の爆圧に耐えられず、“騎士”たちの甲冑はその四肢から分かちながら、全方位へ吹き飛んでいった。
「はぁ……はぁ……。あぁー……いってぇな……」
 痛む体に眉をしかめながら、
『――来るぞ』
 しかし、視線を向ける先は最初と変わらない。
「ああ……」
 前だ。
 もはや、周囲に“騎士”たちの姿は、無い。
「――行くぞ」
 

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『獣の侵略者『デュラン』』

POW   :    内に潜む獣
【理性と記憶】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【一時的に自身を巨大な狼】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    達人の連撃
【腕を狙った飛ぶ斬撃】【足を狙った素早い銃撃】【胴を狙った重い蹴撃】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    鷹嵐
【相棒の鷹の鉤爪】が命中した対象に対し、高威力高命中の【暴風の魔術】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ナイツ・ディンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 
           ●
 
 猟兵達がいるフロアの中は、いくつもの通路が繋がっている。
 その中に、一際大きな通路がある。迷宮の深部へと繋がるルートだ。
「――」
 濃い霧で先が窺い知れないその通路から、緩やかな間隔で足音が聞こえてきた。
「――嗚呼」
 声が聞こえる頃には、その影が霧の中に浮かんでくる。
「この身を変化せしめられ、幾星霜……」
 影は長身の人型で、袖裾の広いシルエットだ。
「――否」
 影の頭部が、動く。空を仰ぐように。
「もはや、それも“過去”と、そういうものか……」
 だが、と言葉は続く。
「この怨讐は忘れず! この憤懣は絶えず! 糧と食んだのはこの怨毒であった……!」
 叫びが霧を揺らした。
「――嗚呼」
 霧を抜けた影が目を細める。その姿は、紅と黒の長衣に包んだ獣人だ。
 災魔“獣の侵略者『デュラン』”だ。
「――嗚呼……!」
 デュランの視線の先は猟兵たちの背後、学園へと続く通路だ。
「――」
 立ち止まる。
 フロアの両端。その位置で猟兵たちと向かい合う。
「――征くぞ」
 肩に乗った金鷹が、鳴いた。
 それが、戦いの合図だった。
カイ・オー
「過去に何があったは知らないけどな。この先は若い連中の未来を育てる場所だ。お前さんみたいなのを通す訳にはいかないな。」

刀を抜いて敵の眼前に立ちはだかり、行く手を塞ぐ。
UC【加速能力】発動。防御力重視。思考速度と反応速度を高め、【見切り】で攻撃をかわしつつ【カウンター】で反撃。
刀の刀身に「ファイアスタータ」で発生、制御した炎を纏わせ、斬撃と火炎の【2回攻撃】【属性攻撃】で切りつける。
獣の姿になって理性と記憶を失えば、復讐心も封印されるか?……いや、油断は出来ないか。
学園に続く通路へ突破されそうになったら、加速させた移動力で前へ回り込み封鎖するぜ。



 
           ●
 
 デュランは駆けた。目指す先は前方、学園へ繋がる通路だ。
「おお……!」
 だが、その道中に敵を視認した。猟兵だ。
「過去に何があったは知らないけどな」
 赤毛の猟兵は言う。刀を抜き、こちらの前に立ち塞がりながら。
「この先は、若い連中の未来を育てる場所だ」
「笑止!」
 こちらも応じるように刀を抜き、猟兵を一刀のもとに斬り伏せた。
 そう、思っていた。
「何……!?」
 敵が姿を消している。それを確認した瞬間だ。
「――お前さんみたいなのを通す訳にはいかないな」
 自分の側方から、声が来た。
 
           ●
 
 カイはデュランの右手側、そこに身を低くしていた。
 ユーベルコード、“加速能力”によって思考速度と反応速度、そして全身の筋肉の伸縮速度を通常よりも強化して、敵の一刀を回避したのだ
 その速度は通常の二五倍だ。
「――!」
 気付いた敵が、再度刀を翻そうとするが、こちらの方が速い。
 刀を構え、一気に能力を放出した。
 放つ力は光と熱、赤の色を持っている。火炎だ。
「うおぉ……!」
 火炎が刀を覆い、空気を焼き、それらを背後へと流しながら刃と共に敵へと突き進む。
「ぐぅっ……!?」
 刃がデュランの獣毛を切り裂き、火炎がそれらを焦がし、焼き飛ばした。
 たまらず後ずさった相手に対し、さらなる連撃を加えようと踏み込む。
 そのときだ。
「――――!!」
 咆哮と共に、敵がその姿を変化した。
 爆発的に膨れ上がった身体は、四肢が太く、強靭な顎を有している。
 巨狼。その形容が相応しい姿となったデュランを見ながら、思う。
 事前の情報通りの姿だと。そして、その姿の代償として失うものについても思考を巡らせる。
 獣の姿になって理性と記憶を失えば、復讐心も封印されるか……?
 否、と首を振りながら、刀を構えた。
「油断は出来ないか……!」
 敵がこちらを無視し、学園へ向けその身体を疾駆させたのだ。
「逃がすかよ!」
 超加の速度を身体に叩き込み、巨狼の前に身体を運ぶ。
「らぁぁああっ!」
 敵の突進と正面からぶち当たるように、燃え盛る刀身を突き込んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

才堂・紅葉


「ううむ、これは強敵ですね。バランス良く強い」

アサルトライフルで前衛の【援護射撃】を行う。
三点バーストを繰り返しながら、反撃は【地形の利用】【見切り】【野生の勘】で回避して粘ります。
耐久力の差で削り合いでは不利ですが、達人の連撃を誘って被害を最小限に抑えつつの撃ち合い狙い。
本命は【胴を狙った重い蹴り】を【激痛耐性】と【気合】で受け止め、足を取ってのドラゴンスクリュー。
グラウンドに持ち込み、寝技にてUCを阻害しつつ相手の攻撃力と体力を削りに行きたい。
フェイスロックはチョーク式で頚動脈を締めて落しに行きます。

味方が大技狙いならギリギリまで押さえ込み、【暗号作成】の符丁で知らせ自分だけ離脱します。


ルエリラ・ルエラ
【アドリブ改変・連携歓迎】
気を引き締めなきゃダメなのが来たかな。
油断せず真面目に仕留めに行くよ。

敵の速い攻撃に当たらないよう【私の勘】で避けて距離をとりながら【ドライ】で攻撃をしていくよ。
何本も放てば普通に面倒だろうし無視できないはずだよね。味方がいれば叩けるチャンスぐらいは作れるんじゃないかな。
距離を詰められた場合はさっきと同様。とにかく詰められないよう気を付けなきゃね。
こういうしっかりした敵と戦うのは久しぶりな気がする。好きだな。倒すけど。


一郷・亞衿
遠近両方の攻撃に長けてるタイプ、しかもおまけ付きと来たかー……殴り合いも吝かでは無いけど、あたしは補佐に回ろうかな。肉弾戦やる仲間も割といそうな感じだしね。

『学校怪談:合わせ鏡』で手元に鏡を生成、突撃してくる鷹の動きを<見切り>つつ鏡を翳して防御。
鷹の攻撃を起点にして魔術をぶっ放してくるなら、鷹を鏡の中に封じ込めちゃえばそれ以上は撃てなくなるはず!
……まあ、最低でも防御した分の一回は暴風魔術撃たれちゃうんだろうけど。UCを併用する隙があれば『ナイトクローラー』を使って、カメラのフラッシュを暴風に浴びせて消滅させる方針で。無理そうなら<ダッシュ>して頑張って避けよう。

(※アドリブ等諸々OKです)


鶴来・桐葉
【心情】おうおう、てめえが黒幕か?へえ、色男…いや、色犬だねえ。(挑発の意味で言う)…ん?怒ったか?んじゃ、さっさと斬り合おうぜ犬っころ!怒ってんのはわかるが、向こうの奴らは無関係だろうが…てめえに無実の人達や未来ある若者達を襲わせる訳にゃいかねえんだよ!

【作戦】仲間と連携。サイコソードで刀を攻撃力重視で強化し、【力溜め】【二回攻撃】を利用した斬撃で攻撃するぜ。敵の攻撃は【残像】【盾受け】【武器受け】【怪力】で防ぐぜ。「わりぃな、そいつは残像だ!!」「当たらねえぜ!」



 
           ●
 
 力が戦場に出現した。
 力は飛翔しており、進む方向は学園側から迷宮側だ。複数で鋭利なそれらは、等間隔で直線的なものと、多量が面となって迫るもの、あるいは光を伴って軌道を曲げるものの三種類だということが分かる。
「ううむ……、これは強敵ですね」
 直線的な力の主は紅葉だ。敵から離れた位置、そこでアサルトライフルを構え、銃弾を送っていく。
 送り方はトリガーを引き絞るフルオートではなく、途中で止める。指切りの射撃だ。
 間隔は三発、身体に染み込んだ技術は正確にその動作を実行していく。
「そうだねー、遠近両方の攻撃に長けてるタイプ」
 しかもおまけ付きと来たかー……、と隣から声が聞こえる。
 亞衿だ。彼女が放つマジックボルトは一五〇発という多量の属性矢が空間を面として飛来していく。
「ええ、バランスが良い……」
「気を引き締めなきゃダメなのが来た、って感じだね」
 亞衿とは逆側の隣、光を伴う力の主はルエリラだ。魔力で形成した矢を連射し、それらは直線のものあるが、多くはフレキシブルな軌道だ。
 矢の向かう先、デュランの動きを追尾しているからだ。
「ぬぅ……!」
 ライフルの三発から逃れようとデュランがステップを踏めば、その動きに追随するように矢が迫る。
 そうして、身動きが固まった場所に面として亞衿のボルトが襲来していく。
 弾丸とボルトと矢。
 直線と面と弧。
 連射と掃射と速射。
 それらのコンビネーションがフロアを駆け巡り、途切れない。
「ぐぅ……! 小賢しい真似を……!」
 自身を削る射撃に、敵が痺れを切らし、こちらに突撃しようとするが、しかしそれは叶わない。
「おうおう、お前の相手は俺だぜ……!」
 桐葉だ。デュランの懐に潜り込み、鍔迫り合いの姿勢に持ち込んでいる。
 刀と刀がぶつかり合う硬質な音が連続していく。
 
           ●
 
 桐葉は行った。能力によって強化した刀を突き込みながらだ。
 敵の持つ刀は反りが深く、幅広だ。柳葉刀を思わせるそれは一撃が重く、敵の技能も合わさって強烈だ。
 突き込み、払い、切る。時にステップやフェイントを混ぜ合わせながらだ。
 そうしながら、言葉を投げかける。
「てめえが黒幕か?」
 敵は答えない。問答は不要と、そういうことか。
 先ほどから、デュランの意識が援護射撃を送って来る二人に向いている。
 マズいな……。
 自分の役割としては敵をここに釘付けにし、後方へ向かわせないことだ。攻撃によって敵の相対を続けているが、こちらを離れる機会を窺っていることが分かる。
 こちらの言葉を聞いているが、聞いておらず、答えない。
 ならば自分がやるべきことは、敵の気を引くことだ。
「へえ、存外、色男……」
 否、と首を振る。
「――色“犬”、か」
 相手の顔から表情が消えたのは一瞬だ。
 直後、敵が牙を剥いて吠え、その体躯を膨れ上がらせる。
 巨狼、その姿となったのだ。
「……ん? 怒ったか?」
 こちらへ突進してくる敵を躱しながら、言う。
「んじゃ、さっさと斬り合おうぜ犬っころ!」
 敵の爪撃を刀で受け止め、こちらを噛み砕こうとする牙を蹴り飛ばす。
「怒ってんのはわかるが、向こうの奴らは無関係だろうが……」
 能力によって切れ味が増した刀は敵の爪を切り落とし、その厚い皮膚を切り裂いていく。
「てめえに無実の人達や、未来ある若者達を襲わせる訳にゃいかねえんだよ!」
 刀を振り上げ、力を溜め、吼える。咆哮は相互で、フロアを揺らした。
 駆け出すのも同時だ。しかしリーチが違う。
 デュランの前足がこちらに振り落とされる。爪は断たれたといえど、その重量は十二分に脅威だ。
「当たらねえぜ……!」
 片手の盾で受け止め、耐えた。
 耐え、そして踏みとどまる。
「うぉぉぉぉおおおお!!」
 腹の底からの叫びと共に、頭上にのしかかっていた力を押しのける。
 空いた……!
 敵の懐、そこだ。現状、敵は片方の前足を外に押し出され、身体の前に大きなスペースが出来ている。もう片方の前足は自分を支えるための軸足だ。地面から離すことは出来ない。
「もらった……!」
 言葉と共に、身体を前へ運ぼうとしたその時だ。
 影が濃くなった。自分だけではない。自分の周囲全てがだ。
 ……!?
 上。そこにある巨狼の上体がこちらを押し潰そうと迫ってきてるのだ。
「――!」
 重量が床を打つ音が響いた。
 だが、それだけだった。
「――わりぃな、そいつは残像だ!!」
 デュランの横、這い蹲るように伏せたその側面に目がけ、渾身の一撃を放った。
 
           ●
 
 ルエリラは他の二人と共にそれを見た。
 巨大な物体が打撃によって浮き上がるのをだ。
 わーお……。
 弓を引く手を緩め、思わず見る。
 桐葉の一撃で、巨狼となったデュランが吹き飛んだのだ。
 横腹、桐葉に断たれたそこは赤く裂けているのが見える。
「散開――!」
 紅葉の声に従い、皆その場を退避していく。巨狼の着地地点からは随分と距離は離れているが、それでもだ。
「来るよ」
 言った瞬間、来た。
 空中、そこで巨狼が身を翻しその姿を元の獣人形態に戻したのだ。
 腰の柳葉刀、それを抜刀しながら。
「――――」
 瞬間、斬撃が飛来した。数は二。本来透明のそれは、いまやデュランのわき腹から滴る鮮血を纏い、向かう先は自分と紅葉だ。
 狙う場所は、
 腕……!
 勘だ。斬撃の初動は大雑把にしか見ていない。向こうが感じるこちらの射撃の煩わしさなどを考えると多分、そうなんだろうな。と、そんな風な意識だ。
 この辺り、紅葉などの場合は斬撃をちゃんと見切って、地面に転がっている“騎士”たちの鎧を盾に回避している。
 それを視界の隅に収めながら、自分も跳躍し、流れる視界の中、分かれたもう一人の仲間を探す。
 亞衿……!
 いた。自分と紅葉の間、学園側の方だ。彼女の方には、斬撃が飛んでいないことは確認したが、何か様子がおかしい。
 視界の上方。そこに、なにかがいる。
「あれは……」
 
           ●
 
 亞衿は一つの事象を視認していた。今この瞬間もこちら目がけて飛来してくる、それはなにか。
「金鷹……!」
 デュランの肩に乗っていたそれは、紅葉達に飛来した二つの斬撃の間、中央を突っ切ってこちらにやって来ていた。
「――――!」
 怪鳥は一度、大きく鳴くと、斜め上空からの強襲を実行した。頭を地面に向けたパワーダイブは、その途中で翻り、足の鉤爪を向けた一撃に切り替わる。
 鉤爪が身体に触れる直前、胸前にかざした手から影が生じる。
「――こんな噂を聞いたことはある?」
 影が晴れるとそこにあったのは、鏡だ。
 衝突。
 鉤爪が鏡面に接触し、
「……!?」
 しかし鏡は砕けない。
「深夜零時ちょうどに、合わせ鏡を覗き込むと――」
 金鷹が驚愕の表情を露わにしながら、鏡面へ呑み込まれていった。
「ふぅ……」
 と、一息ついた時だ。
「――――」
 周囲が、震えた。
「……!」
 急ぎその場を退避し、振り向きざまにその現象を確認する。
 渦だ。先ほどまで自分がいた位置の大気が荒れ狂い、渦となっている。
 渦は最初、小規模のものだったが、周囲の大気と衝突し、振り回すように引きずり、それら全てを自分の一部としていく。
 暴風。その一語となった存在だ。
「やっば……!」
 このままでは、際限無く周囲の大気を呑み込んで成長していき、フロア中を掻き乱す台風となるだろう。
「そうなる前に……!」
 懐から取り出したカメラを暴風に向け、フラッシュを焚く。
 瞬間、暴風が消えた。散ったわけでも、その勢いを落ち着かせたわけでもなく、まるで最初から何も無かったかのようにだ。
 カメラを手の中で回しながら、言う。
「これで、元通り。……本当は存在しない方が良いんだよ、こんなもの」
 
           ●
 
 紅葉は嵐が消え去った瞬間、銃声が鳴り響いたのを知覚した。
 上空、否、もはや天井のパイプを掴み、その座標をフロアの上方に固定しているデュランが拳銃から放った高速と高精度の二連射撃だ。
 腕狙いの斬撃を回避したルエリラの足を目がけて一発を放つと、発射の反動を利用するようにパイプを掴んだ手を軸に身を旋回。連動する動きで、同じくこちらの足狙いの二発目を放ったのだ。
 曲芸師みたいですね……!
 “騎士”たちの鎧を踏み台に、胸を膝に寄せたコンパクトな前宙で射撃を回避する。
 回る視界の中、首を捻って天井、デュランがいた位置を見る。
 いない……!?
 代わりに残っていたのは宙に漂う鮮血だ。その軌跡を目で辿った刹那、叫んだ。
「――ルエリラさん!」
 言葉を送った先、ルエリラの元へ敵が迫っていた。
「うおぉぉ……!」
 獣が吠声と共に、少女の胴を蹴り飛ばした。
 しかし、少女は吹き飛ばない。
「――甘いよ」
「ぬぅ……!?」
 デュランの蹴脚の向こう側から聞こえるのは声で、見えるのは輝きだ。
「ゴボウ……!」
 純金だ。
 ルエリラは蹴りを受け止めたゴボウを振り抜き、逆にデュランを吹き飛ばしていく。
「紅葉! お願い!」
 来た。最早、体勢を立て直しこちらに飛び蹴りのデュランだ。
「がっ……!」
 胴。そこに直撃の一発を貰う。
 重い……!
 勢いが乗っているのもあるだろうが、そもそもの練達が桁違いだ。
 武人の一撃、その言葉道理のものを胴で受け止める。
「うぉぉ!」
 デュランが連撃を叩き込もうと、脚を引き抜こうとするが、
「むっ……!?」
 出来ない。こちらに蹴り込んだ脚を脇と両腕でホールドしているからだ。
「貰った!」
「あなや……!?」
 ホールドを緩めずそのままデュランの脚の内側の床へ、背中から落ちるように一回転すれば、敵も釣られて回る。
 回った。
「……!」
 しかし、流石は武人といったところか。急な流れだったが敵も対応し、受け身を取ってダメージを押さえている。
 起き上がろうとしたところを上から押さえつけ、相手の背中に乗り、片足を曲げさせ両足で挟み込む。
 そうして身体の方を固めたら、空いた両手で、相手の頭を押さえつける。押さえつける先は、
 頸動脈……!
 噛みつこうとするデュランの顎を避け、チョーク式で締めていく。
「か、っ……!」
 気道と血流を阻害された敵が声を漏らし、暴れる。獣爪を蓄えた手が振り回され、こちらの肌を傷つけた。
 くっ……!
 蹴りを受けたこちらも体力的にキツい。なんとか押さえつけてる現状だ。目配せを周囲に送ったそのとき、声が聞こえた。
「行くぜ……!」
 離れた位置からの男の声は、桐葉だ。
「ら、ぁああああああ!!」
 雄叫びと共に、刀が振われる。今まで力を溜めていた一撃は、否、もう一発が来た。合計二発の斬撃は超能力による斬撃可能なサイコキネシス波だ。
「……!」
 押さえるこちらをデュランが驚愕の顔で見るが、
「道連れになる気はありませんよ……!」
 言って、デュランの拘束を解き、急ぎの退避を実行した。
「――――」
 極圧の斬撃が二度、通り過ぎていった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ナイツ・ディン
真の姿:イラスト参照

「久しいな、数年ぶりか?」
呪われた獣のマント。呪いの一端、狼の毛皮。迷宮に潜り、財宝を探し、そして出会った災魔。立ち向かうには力が足らず、一つを盗んで脱出したが広い迷宮でまた出会えるとは。まだ彷徨っているとは。
「コレを返した所でお前は救われないしな。いや、救える手段すらもう無いか。」

盾受け、カウンターで堅実に。狙いが正確なら受けるのも安定。小さい俺なら尚更。時折シールドバッシュ。
UCは隙を見て。高速の不意打ちは切り札。


「柄でもないが、仕方ない。「旅の導き手」の種族として送ってやろう。」
鷹の亡骸を傍に、槍を地に刺し祷る。死すれば肉体の呪いからは解き放てると信じて。

アドリブ歓迎


セルマ・エンフィールド
ふむ、どうやら因縁のある人がいるようで。
ならば私は援護に徹しましょう。

マスケットからの【氷の狙撃手】で後方よりデュランを狙います。あの銃の射程がどれほどかは分かりませんが、少なくとも斬撃は私の方へも飛ばせるでしょう。
斬撃も銃撃も武器を振るう動作なしにはできません。不要な心配をかけるのもよくありませんし、挙動を見切って避けましょう。私の方に攻撃の手を割かせるだけでも援護の意味はありますし、無理をする必要はありませんからね。

仮に敵が狼に変化したら両手、両足を狙い凍結させましょう。散々人の手足を狙ってくれたお返しです。



 
           ●
 
 セルマはマスケットによる射撃を敢行した。
 照準器の先、敵はもはや満身創痍だ。
 脇腹を切られ、獣爪を断たれ、弾丸や矢による貫通や擦過の痕は全身にある。
「しかし、まだ動きますか……!」
 手に持ったマスケットから弾丸を絶えず送っているが、相手の動きに衰えは無い。
 血を撒き散らし、その散った血すらまた別の弾丸に散らされる現状だ。
「ぉ……! おお……!」
 撃つ。更なる貫通痕がその身に生じても、敵は止まらない。
「……!」
 貫通した箇所から血が吹き飛び、デュランの身体がそちら側へ傾いていく。
 来る……!
 その最中、柳葉刀を持った腕に力を込めるのを自分は見逃さなかった。
 傾きの勢いを持って、デュランが刀を振り回していく。
「見えてます……!」
 こちらの腕狙いの斬撃が、大気を弾け飛ばしながらやって来るが、その初期動作を見切っているこちらにとって回避は容易だ。
 サイドステップ一つで回避し、カウンターで狙撃を叩き込む。
「私なら心配ありません……!」
 敵から追撃の銃弾がこちらの足目がけてやって来るが、それも見切り、身を跳躍させることで事無きを得る。
 銃口を敵からそらさず、言う。
「――行って下さい!」
「おう……!」
 刹那、戦場をナイツが行った。
 
           ●
 
 ナイツは行く。敵の元へだ。
 その姿は先ほどまでとは変わり、竜の意匠を備えた鎧姿だ。四枚翅もその色を紅くし、燃え盛る火炎が背中から噴出している。
 フロアの宙を学園側から迷宮側へ紅蓮が彩った。
「久しいな」
 羽ばたくというより噴出する火炎の勢いで進みながら、言う。
「数年ぶりか?」
「……! 嗚呼。おのれ、とそう言うべきか! 槍持つ小盗賊。我が恩讐の一端よ!」
 セルマからの銃弾を避けながらデュランが吼える。
「ああ、デュランよ」
 自分の背後、火炎の只中にありながら、しかしその影響を受けないマントに一度視線をやる。
「小盗賊か、確かにな。財宝目当てに迷宮に潜り、しかして力足りず、得ることが出来たのは狼の毛皮只一つ」
 しかし。
「この広い迷宮。また出会えるとは。まだ彷徨っているとは」
「笑止! その口から偸盗の弁明が出るかと思えば、我に哀れみの言か!」
「弁明も否定も忌みもしないさ。お前の呪いの一端であるコレを盗んだ俺は、お前の恨みの一端を担うだろう」
 槍を構えながら、炎の輝きをさらに増加させ、加速を得ていく。
「コレを返した所でお前は救われないしな。
 否、と自分は首を振る。
「救える手段すらもう無いか」
「ほざけ……!」
 デュランが叫びと共にこちらへ斬撃を送って来る。
「我に呪をかけた者達がこの先にいる! 術者である彼奴らの命、それを滅せば、我の呪縛も解放されん!」
 飛来して来る斬撃を自分は手に持った盾符で防ぎ、流し、やはり加速する。
「だから、“逆侵攻”か。学園に乗り込み、老いも若きも、何もかもを悉くを殺すか」
「嗚呼、しかり! しかり! 彼奴らを滅ぼし、彼奴らに属する者も滅ぼし、我は再びこの武で世を渡ろうぞ!」
 連打。叫びの苛烈さに応じるように幾度も斬撃が来る。
「そうかい、それは無理だぜ」
 だってよ、と言いながら、もはや面となってやってくる斬撃の間をすり抜け、突破する。
「お前は“過去”だ。現在を生きる存在じゃない」
 銃弾が連射で来た。盾符が快音と火花を散らす。
 盾で制限された視界の中、背後からセルマが援護射撃を送ってくれるのが音で分かる。
「その術者も現在、いるかどうか。そうなればお前のやろうとしていることは、憂さ晴らしの大量殺人で、皆を“過去”へ落とすことだ。
 知ってるか? 四月だぜ、今。つまり、この学校も新入生がいっぱいいるんだ。
 ――そんなのは、容認できねえ」
「ならば、止めてみせろ!」
 瞬間、デュランが吼えた。今までの方向とは違う、重厚な吠声だ。
 巨狼となったデュランが、眼下にいる。
 
           ●
 
 デュランは思う。勝てる、と。
 現状、敵は二体。一体は至近、頭上の位置だ。飛んでいる。全長幾ばくかの大きさのそれは鎧に身を包み、槍を携え、炎を吹き荒らしているが、所詮はフェアリーだ。
 跳躍し、顎を開き、その鎧や槍ごと噛み砕き、それで終いだ。
 敵が槍による攻撃や何らかの攻撃を送っても、牙で捕えてしまえば、最悪刺し違えてでも相手の命は獲れる。
 視界の奥、離れた位置から長銃による狙撃を送ってきているもう一体の敵が、こちらに銃口を向けている。先ほど、こちらの一挙手を見抜いて回避した相手だ。
 迷宮の床を踏み込み、跳躍のための力を蓄えているこちらの四肢の様子にも気付いているだろう。それ故、牽制の射撃を送ろうと銃口をこちらへ向けているが、構わない。
 相手の銃弾は。先ほどから援護射撃として送ってきていて幾度か浴びたが、巨狼となった重量差ではさしたる障害にならない。
「――――!!」
 迫る敵に応ずるようにこちらも吼え、跳躍した。
 そのはずだった。
「……!?」
 跳躍が出来なかったのだ。全身に蓄えた力を床に叩きつけ、しかし、身体が動かない。
 何故か。
 その原因は視覚と触覚で分かった。
「――」
 四肢が凍りついていたのだ。
「――止めてみせろ、と。そう仰いましたね」
 遠く、長銃を持った少女から声が聞こえた。
「ですから止めました。凍結によって。――散々、こちらの手足を狙ってくれたお返しです」「おぉぉぉおおお……!」
 直後、上空から、雄叫びが聞こえた。
「……!」
 急ぎ反応し、牙による反撃を実行しようと顔を上げたが、その時にはもう、衝撃波を伴った高速の槍がこちらの額を刺し貫いていた。
 
           ●
 
 ナイツは獣人の姿に戻り、息絶えたデュランの近くにいた。
「……」
 少し離れた位置に倒れていた金鷹の元へ向かうと、倒れた金鷹を両腕ですくい上げるようにして担ぎ、飛ぶ。
『弔うのか』
 ディロが尋ねた。
「いいや、“送る”んだよ」
 柄でもないがな、とつけ加え返すと、ディロもそれ以上何も言わない。
「「旅の導き手」の種族として、送ってやろう」
 槍を地に刺し、祷る。
 すると、デュランの身体が光となり、徐々にその姿を周囲に散らしていく。
 光が完全に散るまで祷り、顔を上げた。
 最早、災魔“獣の侵略者『デュラン』”は、何処にもいない。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『猟兵達の戦闘訓練』

POW   :    肉体を鍛える訓練をする。

SPD   :    速さや技量を鍛える訓練をする。

WIZ   :    魔力や知識を高める訓練をする。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 
           ●
 
 学園へと戻った猟兵たちを迎えたのは、歓声と拍手、途切れない称賛の声だ。
 口々に感謝と労いの声が途切れない場の中、一人の学生が前に出る。
「災魔による“逆侵攻”を阻止してくれてありがとう。“転校生”……否、“猟兵”の諸君!」
 部長だ。言葉に皆がまた沸き立つが、部長の手で制される。
「“逆侵攻”は幾度もあり、その度に君たち“猟兵”の手によって阻止されてきたが、――今回は違う!」
 部長が、皆を制した手を振り上げ、言う。
「災魔“デュラン”の完全撃破!! それを成し遂げたんだ!」
 空気が割れるような拍手が再度生じた。
「ついては、既に聞き及んでいると思うが、君達の戦闘訓練の様子を我々に見せて頂きたい」
 背後の一角を親指で示す。
「君たちの戦いは、こちらも通信魔術で追っていた。訓練は当初から予定されていたが、君たちの雄姿を見た新入生たちが興奮冷めやらぬ感じでね」
 見れば、集団の中でも年若い者達が目を輝かせてこちらを見ていた。
「災魔達に通ずる君たちの訓練や、君たち同士の模擬戦などを見せてもらえると、新入生のみならず我々にとって良い刺激となる」
 無論、と部長が続ける。
「この後も他の戦場や、別の世界の救援に行く者もいるだろう。そちらを優先してくれても一向に構わないよ。
 ――準備は済んだかい? それでは向かおうか」
 
           ●
 
 猟兵たちが案内されたのは、ダンジョン内部にある広大な訓練用エリアだ。
 中央と外周。そのような区分けで二分できそうな場を前にして、部長が口を開く。
「ここは、学園による最新魔術テクノロジーが備えられていてね」
 あそこ、とエリアの中央部分を指差し、
「あの辺りが訓練区画だ。あらゆる戦場やトレーニング器具が具現化できる。そこでの訓練を外周部分で、他の学生や教官たちが確認するわけだね。
 外周部分への防護なども完璧だから君たちは何も気兼ね無く、自由に訓練していってほしい」
 説明は以上だ。と言い残し、部長は外周部分へと繋がる通路へ戻って行った。
 
セルマ・エンフィールド
【SPD】

あまり人に見せるものではないのですが……用意してくれた場所ですし、せっかくですから使わせてもらいましょう。
心情:秘匿したい、というよりは訓練を見られるのはなんとなく恥ずかしい

エリア中央部の外周部分との淵に立ち、対角の中央部と外周部分との淵に置いた「首無しの熟練騎士」を模した鎧をマスケットで狙います。

右手、右足、左手、左足、胴体と撃ち抜いたところで

……失敗しました。首無し騎士が的では、最後に狙うべき場所がありません。

そう言って胴体にとどめの一発を。完全に凍り付いた鎧を砕きましょう。



 
           ●
 
 セルマは円形の地形の上に立っていた。
 アルダワ魔法学園、その地下にある訓練フロアだ。
 中央で行われる訓練の様子を視察するため、周囲に設置された椅子や計測器具は今や満員だ。
 猟兵達の訓練の様子を一目見ようと学生達が大挙したのだ。
 全天が学生で満たされた中、呟く。
「あまり、人に見せるものではないのですが……。用意してくれた場所ですし、せっかくですから使わせてもらいましょう」
 見せるものではない、とは言ったが、それは秘匿の感情ではない。訓練は自分だってよくするが、このように衆人環視の中で行う経験が無いためだ。
 お、落ち着きませんね……。
 なんとなくという感覚だが、気恥かしい。
 不手際は見せられませんねと、外周最前列の位置から届く新入生の視線を受け止めながら、進む先は、やはりそちら側だ。
 少しの驚きの表情を見せた新入生の前、中央部と外周部の淵に立ち、新入生へ背を向ける。「――」
 手を一度挙げ、訓練の管制役の学生に合図をする。そうして生じるのは、複数の影だ。
「あれは……!」
 新入生が声を上げる先、対角線の位置に立つ影が自分達もよく知っている存在だったからだ。
「“首無しの熟練騎士”……!」
「正確にはそれを模した存在ですが、教導には十分でしょう」
 言葉の先、“騎士”たちは動かない。
 先ほどの戦闘でも“騎士”たちを幾体も屠ったマスケット銃を取り出しながら、周囲の学生達に言葉を送る。
「新入生の皆さんが相対する敵としてはフロアボスといった災魔ではなく、“騎士”達のような数で圧倒する集団的な災魔でしょう」
 スコープを覗き込む自分の姿勢は直立だ。
「今回我々が撃破した“騎士”たちで言えば、彼らは遠距離攻撃の手段が比較的脆弱です」
 ならばどうするか。
「なので、近距離攻撃の手段すら摘みます」
 撃った。弾丸は一発。“氷の狙撃手”によるものだ。それは空間を突っ走り、“騎士”の右手を穿った。
 弾着した右手から凍結が広がり、右腕全体が凍りついていく。
「脚をまず撃って機動力を阻害するのも良いですが、皆さんの場合他の誰かとグループを組んで当たることが多いでしょう。
 ですので、後衛を担当する学生は敵の攻撃力を破壊し、前衛の学生の援護を」
 そう言ってもう一発。左手だ。
「片腕を破壊されれば、敵はもう片方へスイッチするために挙動に隙が生みます。そこを狙います」
 銃口を僅かに下へ移す。
「勿論、相手は脚力強化の加護を持っているので、脚部の破壊も忘れてはなりません」
 二連射。両足を氷結させ、再度銃口を上げる。
「――――」
 そこで気付く。
 動作を停止したこちらに周囲の学生達が怪訝な表情を向ける。
「……失敗しました」
 一拍、それだけの間をおいて、言う。
「“首無し騎士”が的では、最後に狙うべき場所がありません」
 そう言って銃口をほんの僅かに下げ、胴体にとどめの一発。
 四肢の全てを完全に凍り付かせた鎧は粉々に砕け散った。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

才堂・紅葉
「まずはランニングです。冒険では走れない冒険者から死んでいきます」
持論は封印した。
学園の皆にランニングとスクワットだけをさせる訳にもいかない。

「皆さんはガジェットの活用を工夫すると良いと思います」
無難にガジェット講座を行う。
白兵での三節棍ガジェット演武から始まり、ガジェットブーツによる跳躍や壁歩き等を実演。
学生達の作ったガジェットを用い、梯子や掘削機、あるいは本来は日用用途のガジェットの実戦での使い方を、訓練区画を使って実演でレクチャーしたい。

「ガジェットはとても便利ですが使いこなすのは皆さんです。柔軟な発想を忘れないでくださいね」

【アドリブ・連携歓迎】



 
           ●
 
 紅葉は思う。自分の立ち位置をだ。物理的な意味ではない。いわゆる人間社会においてのそれだ。
 私、病弱お嬢キャラで通ってるのよね……。
 学園の学生でもある自分は、そういう立ち位置だ。
 向こう、観客席の方で自分のことを知っている学生たちが少し落ち着いていない。喧騒というほどでもないそれを聞きながら、思う。
 訓練の様子……、ですか。
 災魔と相対する学生たちに向け、相応のものを見せてほしい。学園側からの願いはそれだ。
 しかし、ここで自分の持論をぶち上げたらどうなるだろうか。
 ちょっとシミュレーション。
 
           ●
 
「はい皆さん、訓練を開始します。まずはランニングです。ええ。冒険では走れない冒険者から死んでいきますからね。そこの貴女。そう貴女です、こっちへ来て。――はい、最終的にフルマラソンが楽にこなせるくらいまで鍛えますよ。さあ行きましょう」
 
           ●
 
 立ち位置というものがある。紅葉は首を振った。シミュレーションは中止だ。
 しかし、ならばどうするか。
 まぁ、無難なところでいきますか……。
 外周にいる学生たちに顔を向ける。
「皆さんは、ガジェットの活用を工夫すると良いと思います」
「ガジェット……?」
 声を挟んだのは女学生だ。表情からこちらを既知な者だと分かる。
「あの、才堂さんって……」
「ええ、病弱です」
 嘘だ。
「しかしだからこそ、そんな私でもガジェットを有効活用すれば、戦えます」
 そういって懐から符を取り出し、召喚するのは“騎士”戦でも用いた三節棍だ。
「――――」
 握り、手の中で回す。振って、スナップ。回して、連結を緩め、身体の各所を支点に折り曲げて、回していき、最後に上へ放り投げて、キャッチ。
 そうすれば一拍という間をおいて、周囲から大きな拍手が来た。
 お嬢らしく控えめなお辞儀で周囲の称賛に応えていると、先ほどの女生徒から声が飛んでくる。
「い、今のもガジェット?」
「召喚自体はガジェット由来ですが、棒術はお稽古で少々……」
 口元を手で隠し、少し顔を背ける。
 お嬢ポイントの上がる音が聞こえる気がした。
「ともあれ、ガジェットの力を頼れば非力な私でも戦えるのです」
「で、でも! さっき凄い走ったり跳んだりしてなかったっけ……?」
 履いていたブーツの機能を解放し、その場で跳躍。オブジェクトとして召喚した手近な壁を蹴って、やはり手近な壁へ移る。そのまま何歩か壁を歩き、元の位置へ戻る。
 一礼、そして拍手。
「ガジェットスゲー……」
「分かってくれましたか」
「はっ……!? で、でも、デュランの蹴りをお腹で受け止めたりしてなかった……?」
 あれは気合いだ。あとケブラー。
 しかし、
「……」
 何も言わず、意味深に微笑む。
「ガジェットスゲエエエエエエ……!」
「災魔の攻撃は強烈なので、一番は喰らわないことですよ?」
 信じ込んでも危険なので釘は刺しておいた。
 
           ●
 
 そうして今は、学生たちから主に日用品の自作ガジェットを募り、戦闘時における使い方をレクチャーしている時間だ。
「梯子ですか。戦闘で用いる際にはそのリーチが有用でしょうね」
 そう言って、二対に分離させ、槍上に振り回す。
「先端部に仕込みの槍刃や鉄球などでしょうか。重心の調整がキモです。次、……掘削機……。迷宮の壁や床を掘り進める程の出力ですが、その分重く、取り回しが悪いですね」
 フロアの中に簡易的な迷宮を作成する。その一か所に掘削機を設置した。
「閉所に設置。過剰の出力を与えて、落盤覚悟の設置型トラップ……といったところでしょうか」
 それ以外にも、細々とした日用用途のガジェットについても実践でレクチャーを行っていった。
「ガジェットはとても便利ですが使いこなすのは皆さんです。柔軟な発想を忘れないでくださいね」
 最後にそう締めの言葉を送り、一礼。
 拍手。

成功 🔵​🔵​🔴​

ナイツ・ディン
(アドリブ、絡み歓迎。対人でも対NPCでも)
模擬戦か……まあ、槍術なら参考程度にはなる、か?
自分の得意な間合いに潜り込むためにダッシュで接近。見切りや第六感、盾受け武器受けなどで距離を詰めていく。こっちの攻撃は回避されても問題なし。
突き(串刺し)、払い(なぎ払い)、斬り、跳ね(カウンター)、引き(武器受け)、数合打ち合って押し切れなさそうなら搦め手に変更。槍の切っ先で敵の装備や装飾を落としにかかる(盗み攻撃)。それで隙が出来たらドラゴバーストで押し返しにかかろう。下がるなら槍投げからの追撃ルート。


対人だと多分負ける。
……まだまだ、精進が足りないな。デュランが納得するぐらい強くならないとな。


鶴来・桐葉
【心情】訓練ったってよう…俺は特に何もしてねえんだが…なんせ実戦派なんでなあ…まあいい、せっかくだし刀でも振ってみるか。あと、できればどいつかと模擬戦もやってみてえな

【行動】刀で斬る為の木や薪なんかを具現化してみっか。(ダメなら他の器具で)そいつらに向けて剣刃一閃を放つ。「うーん…こいつぁすげえ。最近のガッコってのはすげえな。」そして、良ければ仲間の誰かと模擬戦やってみっかぁ。もちろん、本当に殺したらやべえから竹刀でやるぜ。「おーい、誰か俺と模擬戦やってみねえか?」
(アドリブ・絡みOK)



 
           ●
 
 静寂が包む訓練所の中、音が鳴り響いた。音は高く、何かに衝突し、突破した。そんな響きを持っていた。
 快音だった。
「…………」
 快音の源、そこにいたのは桐葉だ。両手で刀を構えている。
 周囲には訓練所の設備によって具現化した薪が、断たれた姿で横たわっていた。
 すると、次の瞬間にはまた新たな薪が虚空より出現した。複数だ。
「――――」
 そして、動きが連続していった。動きは淀みの無い一連の流れだ。
 構えられた刀がその切っ先を揺らさず、空中を突っ走っていく。乱れの無い一閃が向かう先にあるのは薪だ。刃と薪が触れる。
 瞬間、周囲に厚い音が響いた。極圧の音の裏、連弾のように響くのは繊維を断つ音だ。
 その終端、もはや皮一枚となった部分に刃は濁らず到達すると、
「――――」
 突破した。
 快音。残響が辺りに響き、広がり、消えた。
「ふぅ……」
 残心を解けば、一拍の間を置いて周囲の学生たちから一斉に拍手が巻き起こった。
「しっかし、訓練ったってよう……。こういうのでいいのか……?」
 近くにいた学生に向き直りながら、
「訓練とか、俺、何もしてねえんだがなあ……。なんせ実戦派だからな」
「いえ! 先ほどの一刀、素晴らしい物でした! ありがとうございます!」
「うーん……、そういうもんか?」
 でも、と。具現化が解かれ、消えていく薪を指差しながら、
「こいつぁすげえ。最近のガッコってのはこんなのもあるのか」
「ええ、この世界の魔法と蒸気技術が集められていますからね」
 そんなもんか、と思いながら、燻ぶる気持ちは心中に残る。
 薪相手も悪くはねえが、張り合いがなあ……。
 やはり自分は実戦派と、そういうことか。
 なので周囲に向け、声を張り上げた。
「おーい、誰か、俺と模擬戦やってみねえか?」
「――模擬戦か」
 すると、声が返ってきた。声は、少し離れた位置にある訓練フロア入口からだ。
 赤と翅の姿は学生ではない。
「ナイツ・ディンだ。俺で良ければ、承ろう」
 
           ●
 
 まあ、槍術なら参考程度にはなる、か……?
 ナイツは周囲の学生たちからの期待の目に眉を下げながら、模擬戦の開始位置に向かう。
 すると、管制役の学生が声を送って来た。
「こちらでも回復魔法の準備等は万全です。――良き試合を」
「うーん……至れり尽くせり、だな」
 フロア中央を挟んだ向かい、桐葉が竹刀を手にしながら言葉を送って来る。
 こちらも、向こうと同様に使用する武器や衣服、ディロに対して非殺傷や衝撃緩和の加護を学生からかけてもらい、
「――ディロ」
『うむ』
 相棒を呼ぶ。彼に騎乗し、桐葉に応じる。
「――こっちの準備はいいぞ」
「おう。こっちもだ」
 双方の言葉を受けた管制役が、掌に魔法陣を準備する。
「それでは……」
 武器を構える。
「――始め!」
『おお……!』
 行った。推進力を得るためのディロの羽ばたきは、初手から全力だ。
 速度を上げれば大気は抵抗の力を厚く返してくる。
 結合の甘い莫大な質量、それらを押しのけるため速度ははさらに増していく。
「来るぞ……!」
 視界の先、前方で力が生じるのが分かる。
「相棒と一緒に来るか!」
 来る。
「なら、二人纏めてぶっ飛ばしてやるよ……!」
 居合からの抜き打ち。先ほど薪相手に見せた一閃は、いまやその切っ先から“波”を生み出している。デュランとの戦いでも見せた技だ。
 正面から飛来する横薙ぎの“波”は、相対速度から衝突は間近だ。また、大きさが桐葉の持つ竹刀と同等。フェアリーであるこちらにとっては周囲ごと呑みこむ大きさだ。
「“乗る”ぞ、ディロ!」
『言われなくても分かっている……!』
 “波”の上方。そこに目がけて、二人で飛びこんでいく。
 行った。
「……!」
 直後、下方に位置する大気を裂く大波から、こちらを上に跳ねあげる力が来た。
「おお……!」
 跳ね上げの力に逆らわず、弾き飛ばされるように上昇していく。自分もディロも、姿は翼を畳んだ鋭利なフォルムだ。
 弾丸のように螺旋を描き、突っ切って行く。
 そうして最頂点に達したところで、
『振り落とされるなよ……!』
 下方へ羽ばたき、桐葉に向けパワーダイブを仕掛ける。
 そのとき、声が聞こえてきた。
「もう一丁行くぜぇ……!」
 桐葉が下段からの振り上げで再度の“波”を送って来たのだ。
 
           ●
 
 さあ、どうする……!?
 桐葉は刀を振り上げた体勢で、ナイツとディロの二人を見上げていた。
 こちらは今、初手の居合切りから勢いに逆らわず、身体を一回転させ、下段からの跳ね上げの一発を放ったところだ。
 生じた“波”は一手目と違い、二人にとって縦向きで迫っていっている。上空からこちらへ突撃する目論見だったようだが、先ほどのように左右どちらかに避けて“波”に乗れば、やはり先ほどのように吹き飛ぶ。だからといって、上下は波の幅から言って間に合わない。
 結果、こちらの正中から外れてしまい、間合いの仕切り直しだ。
 あのサイズだと、近づかれたら対応が難しいからな……。
 恐らく相手の狙いはこちらへの近接戦だ。
 こちらの懐に入り、撹乱。
 そうなった場合、“大崩斬”をはじめとして大物狙いの技が多いこちらとしては打つ手は少ない。
 まぁ、近づかれてもそれはそれで面白いがな……!
 命の遣り取りではなく模擬戦なのだ。ならば、剣も手品も遠近全て、互いの全力を出すことも是だ。
 見る。最早、相手と“波”の衝突は間近だ。
「…………」
 左右のどちらに向かっても対応できるように、竹刀を正中に構える。
「――!」
 直後、相手が来た。
 しかし相手の位置は左でも、右でもない。
「中央……!?」
 
           ●
 
「うおおおお……!」
 ナイツとディロは行った。進路は中央。否、正面そのままのルートでは打撃を受けることは必須だ。
 ならばどうするか。
 “波”の至近……!
 周囲の大気と“波”の境目、そこだ。打撃の力によって荒れ狂う空域はこちらを外へ吹き飛ばそうとするが、
「突っ込め、ディロ……!」
『――――!』
 呼びかけに竜が咆哮で応えた。
 行った。
 大気を、紅竜が鼻先で突き破り、翼をもって裂いて進めば、尻尾が吸い込まれるように続く。
「――――」
 乱気流の空域を抜けた。
 直後、到達するのは真空の場だ。何もかもを押しのけて進む“波”の後方は、それ故なにもかもが無く、次の瞬間、
「――!」
 その真空に吸い込まれていく。
『逆らうな……! そのまま行くぞ!』
「おお!」
 自身を運ぶ風の流れに乗り、軌道を修正。
 前方。そこに、竹刀を構えた桐葉が近づいてきている。
「おおおお……!」
 雄叫びはどちらのものであったか。
 こちらは相棒と共に、桐葉の懐へ向かい一直線だ。なにせ武器のリーチが違う。最短距離で突っ込んでいけば、相手と間近。その位置まで至るが、
 そう上手くはいかないか……!
 相手がそれを阻止するのだ。竹刀の切っ先をこちらへ絶えず向け、突き込もうとすれば払い、払おうとすれば突き込んでくる。
「くっ……!」
 こちらの攻撃が避けられることは承知の上だ。突き込みをすり足によって回避され、ディロの翼任せではなく、自分の翅も全開でエアブレーキ。
 方向を転換し、再度突撃をする
「いいね……! 回避も攻撃も全力か!」
 桐葉が吼えるように叫ぶ。
 叫びに対して、こちらが返すのは動作だ。突きと払いが駄目なら、前進して斬り込み、誘い込んで跳ね上げる。
 それら、武器と武器との激突を数合繰り返し、押し切れないことを悟ると、
 ならば搦め手だ……!
 手首を回し、槍の切っ先を相手のある部分へ引っかける。
 そこは、
「貰った……!」
「むっ……!?」
 竹刀の峰側となる、弦だ。
 ディロから飛び降り、別れる。ディロは竹刀を蹴り、上へ。自分は下だ。全体重を乗せて竹刀の切っ先を押し下げていく。
 そうして出来あがるのは桐葉の懐へと通じる、空白の空間だ。
 羽ばたきと体重、渾身の力で相棒への妨害を阻止し、叫ぶ
「行け、ディロ……!」
『おぉおお……!!』
 ディロが、行った。
 
           ●
 
 桐葉はそれを眼前に視認していた。紅竜だ。こちらへ一直線に突っ込んでくる。
「くっ……!」
 手に持った竹刀で弾き飛ばそうと力を入れるが、遅い。
「させるかよ……!」
 ナイツだ。全長三十センチほどの存在であるが、槍や鎧、盾、マントといったものを装備した彼が竹刀の切っ先に取りつけば、それは剣の挙動に対して大きな抵抗だ。
 彼の相棒、ディロは腕を伸ばせば掴めそうなほどの距離だ。その顎の隙間、牙と牙の間から漏れ出た火炎の色が覗くことが出来る。
 間に合わない。
「――普通だったらな!」
 瞬間、竹刀が加速した。
 
           ●
 
 ナイツは自分の身体に急激な負荷がかかったことを知覚した。
 Gだ。高速に流れていく景色の中、気付く。至近だ。
 竹刀が……!?
 その様相を変えている。不可視であるが、その切っ先に取りついた自分は触覚で分かる。
「サイコキネシスで加速を叩き込んだか……!」
「手品だよ、手品……!」
 直後、視界に紅の色が突入してきた。
「ディロ、逃げ――」
 言葉は続かなかった。高速域でディロと衝突したからだ。
「らぁぁあああああ……!」
 桐葉が雄叫びと共に、切っ先にディロも加えて振り回し、
「……!」
 地面に叩きつける、その直前で停止した。
 サイコキネシスによる急制動だ。
「っ……!」
 制動に耐えられずフロアの床に激突し、慌てて体勢を立て直そうと立ち上がろうとするが、
「――――」
 竹刀の切っ先がこちらの身体の中央、そこに押し当てられていた。
 床に手を着いた姿勢のこちら、隣にディロがいるが、背後は床だ。
 ディロが動き出すより先に、切っ先を突けば致命であることは間違いなかった。
「――勝負あり、だな」
「ああ……。参った。俺の負けだ」
 体勢を立て直すと同時、反射的に相手に向けていた槍を降ろし、降参を宣言する。
 その言葉を聞いた桐葉は切っ先を降ろし、口角を上げて笑うと、手をこちらに差し出してきた。
「……!」
 こちらも笑みで、手の指を掴んで起き上がる。
「――勝負あり! 勝者、鶴来・桐葉……!」
 管制役の学生の宣言の後、周囲から割れんばかりの拍手が鳴り響いた。
「……まだまだ、精進が足りないな。デュランが納得するぐらい強くならないとな」
「急な申し出したこっちとしても、付き合ってくれてありがたかったぜ。俺も、お前も、もっと強くなる。そうだろ?」
 歯を向いた笑みの桐葉に、こちらも笑みで返した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルエリラ・ルエラ
【アドリブ改変・連携歓迎】
無事終わって一安心だね。
相手がいれば模擬戦の一つでもしてみようかな。

新入生で模擬戦の相手になってくれる人を募るよ。
内容は、私は攻撃せずに時間内に私に一撃入れられたら勝ちみたいな感じでどうかな?
あまり教えるのは巧くないからこういうところで自分で色々感じ取って欲しいな。
私に一撃入れられたらなんと美味しい芋煮をあげるよ。誰も一撃入れることができなくても芋煮を振るまうよ。
結局美味しくて栄養あるものを食べるのが一番大事だよね。ぶい。



 
           ●
 
「んっ……」
 ルエリラは訓練エリアの中央で伸びをした。
 無事終わって一安心だね……。
 自分がいるのは先ほどと同じく、自分の実力の果たす現場であるが、先ほどまでの激闘からすれば空気は一転と、そう言える。
 周囲の学生たちもただ緊張した面持ちで見ているだけではなく、猟兵達の訓練を計測したり、自分だったらどうするか、など活発に議論を交わしている。
 過度な緊張は無く、だからと言って弛緩しているわけでもない。
 これならいけそうかな……。
 ストレッチという程ではないが、身体を解し、周囲の学生に視線を回す。
「――ねえ。誰か、私の模擬戦の相手になってくれないかな」
「ルールは?」
 一瞬の間を置いての返答は、しかし否定や疑念のそれではない。
 お互いに実力差があることは分かっているが、それを踏まえて投げかけたのだと、その部分も分かっているのだ。
 意識が高いというか、話が早いというか……。
 ともかくこちらとしては良いことだ。そう思いながら、言葉を返す。
「ルールは簡単。私は君たちに攻撃しない。君たちは、時間内に私に一撃入れられたら勝ち」
 ただ、と言葉を続ける。
「条件が一つ」
「……?」
「せっかくだから、相手は新入生の中からでお願い。――あっ、人数は何人でもいいよ」
 そう言うと、早速の動きが来た。
 訓練エリアであるこちらとの境界を超える動きは複数、否、相応しい形容は他にある。
「んーと……、二十……三十? 人くらい? うん、いいよ」
 集団だ。それほどの数が目の前にいる。
「よ、よろしくお願いします」
「うん。よろしくね」
 少し緊張した面持ちで皆が配置についた。
「――双方、準備が出来たものと判断します」
 怪我に至らないよう、双方に加護を施し終わった管制役の学生が準備完了の旨を告げる。
「それでは、良い試合を。――始め!」
 開始の合図は甲高い音だ。
「――!」
 それと同時、弾け飛ぶように皆がこちらへ突っ込んでくる。手に持っているのは訓練用の剣や槍、短刀や斧もいれば、拳にテーピングを巻いただけの者もいる。
 皆、身を低くした姿勢での疾走だ。
 あれは……。
 前進してくる皆がその姿で影にしているが、幾人かが呪文の詠唱や、狙撃の準備を開始しているのが分かる。
「皆がこっちを釘づけにして、後ろの人たちが本命?」
 こちらの問いに皆が返してくるのは言葉ではない。
「――!」
 攻撃だ。
 真っ先の一撃は全体の最先端、そこにいる拳の男によるものだ。
「しっ……!」
 踏み込みに合わせ、鋭い吐息で右ストレートが飛んで来る。狙いはこちらの身体中央、みぞおちの部分だ。
「……!」
 横へ跳躍し、その一撃を回避する。拳が服を掠めた。
 直後、拳以上に鋭い攻撃が線として来た。
「貰った……!」
 木剣による下段の横薙ぎだ。構え、振うまで最短距離の到達先が狙うのは、
 着地の瞬間、固まる脚だね……。
 正しくその通りの一閃が走った。
 しかし、着地するはずの床に脚は付いていない。
「――!?」
 ブーツの魔力によって身を滞空させることで、着地をキャンセルしたこちらに驚愕するのは剣士の学生だけではない。
「こっちも読まれていたか……!」
 剣士の背後、そこに身を潜めていた学生が突然というタイミングで送って来た槍による刺突は、こちらの脇腹横の虚空を貫いていく。その槍の柄に身を寄せ、背後へ抜けていく流れへ身を任せてスピン一発。
 その勢いのまま、射出したワイヤーの先へその身を引っ張られていった。
「上だ……! 後衛、撃ち落とせ!」
 フロアの上空が照らされた。
 後衛の学生による矢と火球による波状攻撃だ。
 周囲のオブジェクトへワイヤーを次から次へと差し込み、巻き取っていくことでその身を高速で運び、面として飛来する矢の範囲から逃れる。
 しかし、火球が追いすがって来る。
 追尾弾……!
 柔軟な軌道でこちらの背後を追跡する火球の数は複数だ。それら一つ一つを時にオブジェクトに激突させ、時に学生たちの間をくぐり抜けることで自爆を恐れた相手に消滅させ、やり過ごしていく。
 そうしている間にもやって来る攻撃の悉くを回避していく。
 後はそれを続けていくだけだ。
 そうすれば、
「――もう限界って、感じだね」
 最後まで残っていた新入生が地面に膝をついた。
「はぁ……。はぁ……」
 荒い呼吸は彼だけではない。フロアの各地で体力切れによって倒れ伏した学生たち全てから聞こえてくる。
「私、あまり教えるのは巧くないから、こういう方法で、自分で色々感じ取って欲しいな、って思って。……大丈夫? 皆聞こえてるかな」
 各地から親指を上げた手が返って来たのでよし、と思いながら管制役に視線を向ける。
「勝負あったと、そう判断します。勝者はルエリラ・ルエラ。――これで模擬戦を終了します!」
 周囲の拍手に一礼をして返答とすれば、さて、とそんな雰囲気で手を打つ。
「……?」
 怪訝な顔を向ける皆に向け、頷く。
「――頑張った皆にはご褒美があります」
 そう言って、背後から自身よりも遥かに巨大な鍋を取り出した。
「じゃじゃーん。芋煮だよ」
「…………」
 周囲の学生が怪訝な顔を深くした。
「……? どうしたの皆?」
「あ……、あの……。その……、今、どこから、それ……を……?」
 頷く。
「――世界の芋煮は私のものだからね」
 何で、皆もっと怪訝な顔をするんだろう。
 まあいいや、とコンロを準備しながら、
「結局、美味しくて栄養あるものを食べるのが一番大事だよね」
 ぶい。と指を送りながら、芋煮会の準備を進めていった。
 

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年05月02日
宿敵 『獣の侵略者『デュラン』』 を撃破!


挿絵イラスト