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雪融けリエーヴル

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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●飛んで、跳ねて
 しんしんと綿雪が降り積もる。
 やわらかに、あまやかに、遠く深くまで。
 季節は既に、花蕾もふくらむ春待ちの頃。
 けれど、疾うに過ぎたはずの雪景色に染まったその迷宮だけは、いま再びの冬が訪れていた。
「もっと、もっと上へ行きましょう」
 こんなところで立ち止まってなんていられない。もっと広く、もっと高く。もっと自由なところへ。
 静けさの中で、その昂りを抑えるように息を吐く。
 白い吐息が篭るのは、湖も凍てつく寒さゆえだろう。
 いつの間にやらすべてを冷たく染めた銀世界に立っていたのは、凍った湖畔を映した青い瞳の少女だった。
「あなたたちも一緒に行くのよ」
 少女が振り返らずに掛けた声に答える声はない。
 ただ、声はなくても、少女に応えるように何処からともなく黄色が跳ねた。ぴょん、と雪の下から飛び出したのは、お月さまに似た黄色の長い耳を揺らしたうさぎーーのような、何か。
「冬は終わらないわ。ーー終わらせないわ」
 ぴょんぴょん。それから、ぷるぷる。
 変わらず、声はない。けれどその動きは確かに少女の声に応えていた。
 それが分かっているのか、少女も優しげに目を細めて微笑む。
 終わらせるものかと、決意を秘めて。
 すべて、すべて真白く染めてしまえと吹雪が踊る。
 いまや春は遠く。冬がまた、訪れる。
 そこにあった暖かさなど、なかったかのように塗り潰して。
 そんな季節さえねじ曲げるような冷たさを引き連れて、少女たちは上層へと駆けていく。

●凍てつく季節
「さて、雪うさぎは知っているかな」
 やあ、親愛なる君。そんな言葉と共にグリモアベースに集ってくれた猟兵へ声を掛けたクリス・ホワイト(妖精の運び手・f01880)は、ふわりと尻尾を揺らしながら問いかける。
 雪うさぎ。それはそのまま、雪で作られたうさぎのことだ。雪像の一種とされ、半球体に固めた雪に南天の実と常緑樹の葉を飾りうさぎに見立てたそれは冬の風物詩と言ってもいい。
「雪うさぎによく似ていたんだ。けれど、あれはただの雪うさぎじゃない」
 雪うさぎにも似たその正体は、実のところウミウシである。
 その名もユキウサギウミウシ。
 迷宮の下層に住み着いていたユキウサギウミウシたちが、上層を目指して攻め上がってきている。それが今回の予見だ。
 クリスはくるりとステッキを回して床を小突くと、考えるような所作で髭を撫でる。
「彼らを引き連れているのはひとりの少女だ。見た目に反して、なかなか好戦的な子のようだね」
 戦場となるのは、咲きかけた春から冬へと逆戻りしてしまった雪景色の迷宮。
 降り積もった雪は少しばかり歩きづらそうなものの、それも慣れてしまえば問題はないだろう。戦うにあたっては広さも充分にある。
 この迷宮で堰き止められなければ、雪うさぎの軍団は更なる上を目指して学園施設に辿り着いてしまうということは予想するに容易い。それを防ぐためにも、猟兵にはこの迷宮で確実に撃破しなくてはならない。
 クリスは真剣な表情でよくよくと話していたが、けれど次の瞬間には表情を緩め、にこやかに猟兵へ微笑みかける。
「せっかくの雪だ。すべてが終わったなら、冬の終わりを楽しむのもいいだろうね」
 降り積もった雪は、雪うさぎたちを倒した後はやがて溶けてしまうだろう。けれど、その束の間を楽しむ余裕くらいはある。
 それこそ雪うさぎを作ってもいいし、かまくらだって作れるくらいの雪がある。起こした焚き火でマシュマロを焼くというのも良さそうなものだ。
 手中に線を描くようにして現れたグリモアが一際強く輝くさまを見届けて、クリスは猟兵を次なる世界へと送り出す。その健闘を祈るように、そっと願いを込めて。


atten
▼ご案内
舞台はアルダワ魔法学園になります。
全て撃破していただいた後は、雪の降り積もった迷宮で遊ぶことができます。PSWに囚われず、お好きに遊んでください。
また、第三章にのみクリス・ホワイト(妖精の運び手・f01880)も同行致します。こちらはプレイングでお声掛け頂いた場合のみ交流させていただきます。

皆さまのプレイングをお待ちしております。
よろしくお願いします。
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第1章 集団戦 『ユキウサギウミウシ』

POW   :    あそんで
【ミニぷにぷに】【ミニもちもち】【ミニつるつる】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
SPD   :    ともだち
自身の身長の2倍の【めっちゃ移動が早いシロイルカ】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ   :    ぶんしん
レベル×1体の、【背中】に1と刻印された戦闘用【自分の分身】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

スノウ・パタタ
冬はね、好きです。雪も好きなのよ。けどね、でも、それだけじゃいけないのよ。ずーっとそのままは、いられないの。

【エレメンタル・ファンタジア】属性攻撃・世界知識
分裂して逃げたゆきうさが合体しない様に、敵側へ向けエレメンタル・ファンタジアで強風を巻き起こし足止めを。
同時に呼び出した水の精霊魔法とかけ合わせ、広範囲に散布。

つめたーい風びゅうびゅうで、雨が降ると雪の日は氷になっちゃうのよ!ゆきうささんすばしっこいから、ちょっと動かないでいてね?
春が来なかったら寂しいの、雪の溶けたあとたくさんお花、見たいのよ。



●真白き侵攻
 アルダワ魔法学園、その下層にある迷宮にて。
 春を迎えようとしていたその名もなき迷宮は、再びもたらされた冬の気配に白く染められていた。
 しんしんと降り積もる綿雪はどこまでも続いているようで、先が見えない。
 静けさの中で篭る白い吐息がその寒さを表すようで、スノウ・パタタ(Marine Snow・f07096)は空の青さを映したつぶらな瞳をゆるやかに細めた。
「……冬はね、好きです」
 ぽつり、誰に言うでもなくスノウは呟く。
 寒い冬も、冷たい雪も。同じくらい大好きなのだと、その瞳は語っていた。
 ひとの営みの中で冬が欠かせないと知っているからこそ、この状況に憂いを覚えるのだろう。
 冬を越え、雪が溶けて水となることで花が咲き開き、春を歌うように。
 好きであれば、好きであるほど。それだけではいけないと、分かってしまう。
「それだけじゃいけないのよ。ずーっとそのままは、いられないの」
 自身の声が雪に溶け込んでいくのを見ながら、スノウが手のひらの宝石をそっと握り締める。
 やがて宝石が淡い光を放ち目を瞬いたときには、そこには魔法の杖があった。
 『DROPS』と名付けられた、使い慣れたエレメンタル・ロッドである。
 そして間も置かず、スノウはその杖先を前へと向ける。そこにあるのは――黄色く揺れる、長い耳。
 ユキウサギウミウシだ。それも、1体ではない。
 雪景色に紛れて、いつの間にやら大群で押し寄せたユキウサギウミウシの気配に気付いていたスノウは怯むことなく、彼らを見据える。
 訪れた冬へお別れを言うために。
 塗り潰された春をもう一度、迎えるために。

「ゆきうささん、すばしっこいから。ちょっと動かないでいてね?」
 もちもち、ぷるぷる。
 分裂して数を増やしていくユキウサギウミウシが合体してしまわないように、スノウは杖を振る。
 すると、たちまち巻き起こったのはエレメンタル・ファンタジアによって引き起こされた強風だった。舞い散る雪を巻き込むように白く吹き荒んだ風は、ユキウサギウミウシたちの体を引き裂くように進んでいく。
 けれど、それだけではない。
 もちもちころころと軽快に雪の上を転がっていくユキウサギウミウシへ追い打ちをかけるように、スノウはすかさず喚び出した水の精霊魔法を掛け合わせて魔法を振りまいていく。
「つめたーい風びゅうびゅうで、雨が降ると雪の日は氷になっちゃうのよ!」
 広範囲に広がっていく風と水が合わされば、あとは凍るだけ。
 そう、彼女が狙っていたのは初めから2つの属性による合わせ技だったのだ。
 かちこちと音が聞こえてきそうな程に見事に凍りついたユキウサギウミウシたちを前に、スノウはその氷をそっと撫でて囁く。
「……春が来なかったら、寂しいの。雪の溶けたあとたくさんお花、見たいのよ」
 ずっと同じ季節では、いられない。
 待ち遠しい春を思うようにスノウは杖を握りなおして、雪道を歩いていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月暈・芥朶
真白い雪は眩しくて、目がくらんでしまいそうだね
けれど瞳は逸らさずに真っ直ぐ
雪うさぎ…じゃなくてユキウサギウミウシ、か
かわいいけれど油断は禁物。気をつけていこうか

IT'S SHOWTIME!
これから僕が、見事にこのウミウシたちを消してみせましょう

フェイントをかけながら近づいて、枢による攻撃で一掃しよう
糸を操り、彼ら自身を盾にしながら。可愛くても容赦なく
白い雪と共に、バラバラに散って消えておしまい

敵の数が減ってきて距離が出来たら、素早くダーツの様にイーカロスを撃ち、ウミウシ達を狙っていくよ
同じ白だけれどこっちは鋭い。痛くてごめんね?さよならだよ

さぁて、次のステージは、どんな悲劇が待っているかな?



「真白い雪は眩しくて、目がくらんでしまいそうだね」
 銀世界に溶け込むような白さに、何にも染まらない黒を添えて。
 舞い散る雪に触れない距離を鋭い爪先でなぞり、そう言って静かに微笑んだのは月暈・芥朶(塵屑色・f00072)だ。
 視線の先でぴょんぴょこと跳ねたユキウサギウミウシに微笑む芥朶だったが、しかしその表情とは裏腹にその瞳は油断なく敵を見据えている。
 どれだけ可愛らしい見た目をもってしても、油断してはいけないことを彼はよく知っているのだ。
 オブリビオンを前にした彼はそして、まるでスポットライトを浴びたキャストのように大胆な仕草で手を広げ、その白皙に大輪の笑みを乗せる。
「――IT'S SHOWTIME!」
 これから僕が、見事にこのウミウシたちを消してみせましょう!
 芥朶がそう宣言したなら。
 ここはもはや戦場ではなく、彼のステージそのもの。
 『枢』と名付けた糸を慣れた様子で操る芥朶が手を拱けば、まるで誘われるようにユキウサギウミウシたちは飛んで、跳ねて、近づいていく。
 そうしてユキウサギウミウシたちが集ってきたときには、そこはもう芥朶の領域だ。
 手繰り寄せる糸に絡め取られて、白い雪と共にユキウサギウミウシたちは儚くもバラバラと消えていく。
 しかし、その中で。
 成す術なく消えていくものもいれば、反撃へと打って出るものもいる。
 芥朶の操る糸の先から逃げ遂せたのは、中でも一際すばやいユキウサギウミウシだった。
 自身よりも2倍は大きなシロイルカを召喚して、シロイルカと共に芥朶へと襲い掛かって来るが――しかし。
 ひらり。
「――おっと、」
 ステージにもトラブルは付き物である。
 何があっても、どんなときでも、ステージの上ではたおやかに。
 慌てることなく鮮やかに避けて見せた芥朶は、笑みを深めながら翼を広げていく。
「同じ白だけれど、こっちは鋭い。痛くてごめんね?」
 それは、さながらダーツのように。
 蝋で出来た羽根の刃が鋭く発射されれば、それは間違いなくシロイルカへと突き刺さった。
 さよならだよ、芥朶の唇が音もなく口ずさめば刃の的となったシロイルカは無論、ユキウサギウミウシも真白い雪の中へ消えていく。
 芥朶はその様を最後まで目を逸らすことなく見つめ、静けさを取り戻した銀世界でそっと目を伏せる。
 けれど、彼の舞台はまだ終わってはいない。
「さぁて。次のステージは、どんな悲劇が待っているかな?」
 そう言って次に目を開けたとき。芥朶は依然と変わらぬ笑みを湛えていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

シャルロット・クリスティア
……寒いですね。この雪景色ですから当然と言えば当然ですけども。
人の身には寒くとも、これが適温の災魔もいるのでしょうが……あいにく、我々は人ですので。
少々、人が住むには寒すぎます。お引き取り頂きますよ!

と言いつつも、使用するのは氷結弾です。
この気温……室温?ですから、自然に溶けることはまずないでしょう。
積もった雪ごと、敵陣をまとめて凍らせて動きを止めます!
見た目からして柔らかそうですが、凍れば弾性も封じられますから、他の皆さんが攻撃をする際に、衝撃も伝わりやすくなるかと。
単純に動きを止めれば、行動阻害にもなりますしね。後方支援はお任せください。

(スナイパー、援護射撃、属性攻撃、時間稼ぎ、鎧砕き)


雨糸・咲
いつものワンピースの上に
厚手のマントを羽織り
ふかふかの冬用ブーツを履いて雪対策

こんなところで雪景色が見られるなんて
壮観ですねぇ…
雪霞の白い姿もすっかり溶け込んでしまいそう

ウサギさん…
いえ、ウミウシさんでしたか
可愛らしいですし、
遊んであげたい気持ちはあるのですけど
えぇ、とっても

でもね
この上へ行ってはだめなの
ごめんなさいね

聞き耳と第六感を駆使し攻撃を回避
フェイントで翻弄しつつ高速詠唱で隙を突きます

杖へ変じた雪霞をひと振り
玉響の雪原へ降らせる、煌めく虹の雨滴

春は花が笑み、ひとの心を躍らせる季節
けれど
私は冬の美しさも大好きなのですよ

※アドリブ、他の方との絡み歓迎です


都槻・綾
※絡みアドリブ歓迎

外套を纏い迷宮へ
雪兎達と遭遇し
円らな瞳とぶつかれば

……かわっ…いえ、
(小さく咳払い)

少女には常冬を望む理由があるという
雪娘か
スネグーラチカか

然れど先ずは、

頗る・大変・大層・途轍もなく可愛い雪兎達に
双眸を和らげかけて、再びの咳払い

いっそ頬が緩むのを抑えきれないのなら
兎達と戯れる心地で挑もうか
彼らもただ屠られ融かされたのでは
きっと寂しいだろうから

ねぇ、遊びましょう?

誘い差し出す掌
死角に備えた第六感で見切り回避
自他オーラ防御

符を挟んだ指で空に描く、雪の結晶の如き六芒星
放つ護符がふわりとほどけて
兎達へと降り注ぐ真白き雪待草の花弁
花筐の贈り物

新雪に埋もれるように
雪原に還ってお休みなさい



 ほう、と細く息を吐けば空気が白く篭る。
 それは冬の寒さからだったかもしれないけれど、しかしそれにしても寒すぎるほどで。
 身に染みるほどの寒さに眉を潜めたシャルロット・クリスティア(マージガンナー・f00330)は、その可憐な容姿とは裏腹に無骨な造りのライフルを抱え直す。
「……寒いですね」
「こんなところで雪景色が見られるなんて、壮観ですねぇ」
 シャルロットの言葉に頷くように、雨糸・咲(希旻・f01982)もまた感嘆の吐息を白く染める。
 この場限りに冬を閉じ込めたようなこの景色は、上層から下りてきた彼女たちにとって驚くほど気温差の激しい迷宮だった。
 だからこそ、これが自然によるものではないということも薄らと理解できる。
 とてもではないが、ひとが住むに適しているとは言えない。
 この気温は徐々に体温を奪い、やがてはその身を蝕んでしまうのだろう。
「常冬を望むという少女……さて、雪娘か。それともスネグーラチカか」
 けれど、この寒さこそが適温である災魔もいる。
 ユキウサギウミウシはもちろんのこと、彼らを引き連れた少女もそうなのだろう。
 予見に聞く常冬を望んだ少女に考えを巡らせていたのは、都槻・綾(夜宵の森・f01786)だ。
「いずれにしても、ここで止めねばなりません」
 更なる上層を目指しているというならば、先へ進むことを許すわけにはいかない。
 そう言ったシャルロットがひとであるように、この地に住まう生徒たちもまた同じく。
 すべてを真白く凍らすような寒さの中では、ひとは生きてはいけない。
 それゆえに。
「――お引き取り頂きますよ!」
 これ以上先には進ませない、と青空のような瞳に決意を秘めて。
 シャルロットは慣れた動作でライフルを構えて、跳ねるように距離を詰めるユキウサギウミウシへ氷結弾を放つ。
 それは氷の魔力を封入した、特別な弾丸。
 雪よりも冷たく、氷柱のように凍てついた氷結弾は目にも留まらぬ速さで1体のユキウサギウミウシへと着弾した。
 かちこちと凍ってしまったユキウサギウミウシは、そのままころころと軽快に雪原を転がっていく。慌てて止めたのは、仲間のユキウサギウミウシだろうか。
 ぴょんぴょんわらわらと集まりだしたその様を前に、綾は思わずと頬を緩めてしまった。
「かわっ……いえ、私たちも続きましょう」
「ええ、そうね! 遊んであげたい気持ちはあるのですけど、」
 こほん、と小さく咳払い。後方支援を買って出たシャルロットに続くべく、綾と咲もユキウサギウミウシたちを見据える。
 可愛らしい姿を思えば、そのいとけなさに惹かれてしまう気持ちもあるけれど。
 そうもいかないのであれば、あえて彼らと戯れる心地で挑むのもよいだろう。
 緩む頬を無理に抑えるよりも早く前へ出た綾は、そっと掌を差し出す。
「――ねぇ、遊びましょう?」
 彼らとて、ただ屠られ融かされたのではきっと寂しかろうと思うゆえに。
 優しく誘うように差し出された掌に、ユキウサギウミウシたちも飛んで跳ねて、集まり出す。
 その動きは思うよりも素早いものだけれど、おそらくユキウサギウミウシ自体はとても単純な生き物なのだろう。
 あそんで、あそんで、と声が聞こえてくるような軽やかな動きに微笑みながら、綾は符を挟んだ指で空に描く。
 描かれたのは、雪の結晶の如き六芒星だった。
 節榑立つ長い指先から符が放れたなら、ふわりとほどけるように端から花弁へ姿を変えていく。雪のように真白きその花は、雪待草だろうか。
 その幻想的な光景に目を輝かせた咲もまた、続くように杖へ変じた雪霞をひと振り。
 玉響の雪原へ降らせる、煌く虹の雨滴がユキウサギウミウシたちへ降り注げば、ぴょんぴょんと跳ねていた彼らはやがて眠るようにゆっくりと融けていった。

「春は花が笑み、ひとの心を躍らせる季節……けれど、私は冬の美しさも大好きなのですよ」
 春の暖かさと、冬の優しさの中で。
 やがて消えていくユキウサギウミウシたちを見送り、過ぎ去る冬を偲ぶように咲は呟く。
 また、会えるでしょうか。
 その声に返したのは、周囲の鎮圧を確認したシャルロットだった。
「きっとまた、来年に会えますよ!」
 だって、季節は巡るから。
 冬が去り、春を迎え、夏を越えて秋が過ぎたなら。また、冬が来る。
 シャルロットが咲を元気付けるように笑えば、綾も優しく微笑む。
「ええ、きっと会えますよ。だから、いまだけは――、」
 新雪に埋もれるように、雪原に還ってお休みなさい。
 花弁に包まれ、虹の雨滴に撫でられ眠るように融けていったユキウサギウミウシに、そっと祈りを込めて。
 掌に融けた雪の冷たさを感じながら、そうして3人は雪道をまた進みはじめるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘンリエッタ・モリアーティ
【WIZ】
雪うさぎ……うさぎは食べると美味しいというけれど、食べたことはないわね……。
ああ、いけないいけない!ユキウサギウミウシだったわよね……。
――オブリビオンである限りは、食い止めねばならない、けど……!
う、うう、待って待って、かわいいわ……!!
落ち着いて、ヘンリエッタ。だめよ、ちゃんと自分を保たないと!
でも、ど、どうしよう、私じゃ――そうだわ、【魔犬の襲撃】!
……バスカヴィル、お腹が空いているわよね、そうよね?
たくさん食べていい可愛い、おいしそうな、ぷにぷにの……オブリビオンがいるわ。

――喰らっておしまい!

……うん、うん、ああ、心が痛むわ……ええ、……。



「うさぎは食べると美味しいというけれど、食べたことはないわね……」
 ぴょんぴょん、もちもち。それから、ぷるぷる。
 飛んで跳ねてと軽快な仕草で雪原を駆け回るユキウサギウミウシを前に、ヘンリエッタ・モリアーティ(獣の夢・f07026)はそわりと逸る心を撫で抑える。
 雪うさぎと銘打っても、その正体はユキウサギウミウシ。オブリビオンであることに変わりはないのだ。
 頭を振って、気を引き締めるように目の前のユキウサギウミウシを一瞥したヘンリエッタは、しかしそのもちもちとした愛らしいフォルムに小さく呻いた。
「う、うう、待って待って、かわいいわ……!」
 ぷにぷにと柔らかそうな、まあるい体も。
 ぴょこぴょこと元気に動く、黄色く長い耳も。
 あそんで、と潤むつぶらな瞳さえも。
 かわいいを詰め込んだようなプリティーなボディには、思わず魅了されてしまっても仕方ないのかもしれない。けれどオブリビオンである限りは、ここで食い止めなければならないのもまた事実。
 ぶんぶんと先ほどよりも強めに頭を振ったヘンリエッタは、自分へ言い聞かせるように唸る。
「落ち着いて、ヘンリエッタ。だめよ、ちゃんと自分を保たないと!」
 どんなにかわいくたって、オブリビオンは倒さなくては。
 こんなときだからこそ、自分を律して強く在らねば。
 そんな思いとは裏腹に、ヘンリエッタの動揺は広がるばかり。どうしよう、どうしよう。私では。私のままでは。そんな独白の中で、やがてヘンリエッタはある手段を思い出す。
「そうだわ、魔犬の襲撃!」
 ハウンド・オブ・バスカヴィル。
 ヘンリエッタがその名を呼べば、冷たいばかりの空気がざわりと揺れた。
 その変化はユキウサギウミウシたちにも伝わったのか、ぴょんぴょんと跳ねて一箇所に集まりだす。分かたれた分身同士で、合体しようとしているのだろう。
 けれどそれよりも――ヘンリエッタの銀の眼差しが彼らを射抜くほうが、早かった。
「……お腹が空いているわよね、そうよね?」
 きっとそうよ。だから、これは仕方のないこと。
 音もなく、ヘンリエッタの口元が釣りあがる。
 喚び出されたのは、その名に相応しい禍々しさを纏った魔犬だった。
 そうして現れるが早く、向けられた視線の先へ駆け出した魔犬がその口を開いたなら。
「――喰らっておしまい!」
 かわいそうに。野うさぎはひとまとめに、猟犬に食べられてしまう。
 なんて心が痛む光景だろう。なんて凄惨な光景だろう。
 それでも、ヘンリエッタがその目を逸らすことはなかった。

 赤色も、黒色も、すべて真白に。
 すべてを包んだ雪景色の中で、ヘンリエッタは胸を押さえて立ち尽くす。
「……うん、うん。ああ、心が痛むわ……ええ、……」
 それなのに、何故だろうか。
 ヘンリエッタは声もないまま、独りでに笑ってしまった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真幌・縫
雪うさぎさんみたいなオブリビオン?きっと可愛いんだろうなぁ。もうすぐ春なのに雪を降らせているんだね。ぬいは春は大好きだよ。暖かくてほわほわでお花がたくさん咲いて。ぬいは雪も大好きだよ冷たくてふわふわでとっても静かで。でもね季節は変わらないといけないんだずっと雪が降っていたらお花が咲けない。土の中のカエルさんや冬眠中のリスさんは起きることができないの。
だからねぬいは戦うよ。
【ライオンライド】でライオンさんに乗って攻撃!大っきな手でばしーんってするよ!逃げちゃった時は【おびき寄せ】でもう一回集めてばしーん!



 目の前でまあるいうさぎが、ぴょんぴょんと跳ねている。
 それは本当に雪うさぎのようで、とても可愛らしい。
 きっと可愛いんだろうなあ、と思いを馳せていた真幌・縫(ぬいぐるみシンドローム・f10334)は、想像していた通りの愛らしさに銀色の瞳を輝かせた。
「もうすぐ春なのに雪を降らせているんだね」
 本来であれば、この迷宮も春を迎えて花を咲かせていたはずである。
 けれど、目の前にあるのはどこまでも続くような雪ばかり。
 しんしんと静かに降り積もるこの雪が、自然によるものでないことは縫にもすぐに分かった。
 春を遠ざけた雪がてのひらに落ちるのを長めながら、縫は歌うように言葉を紡ぐ。
「ぬいは春は大好きだよ。温かくてほわほわでお花がたくさん咲いて」
 咲きかけた花蕾は、雪の重さに隠れてしまったけれど。きっとこの迷宮にだって、春はあった。
 雪化粧に染まった木々に咲きかけた花の面影を見るも、縫はすぐにユキウサギウミウシたちへと視線を戻す。
 もちもち、ぴょんぴょん。
 変わらず跳ね回るユキウサギウミウシたちは、春なんて知らんぷり。
 ずっと雪があってもいいじゃないか。ずっと冬のままでも、いいじゃないか。
 そんな声が聞こえてくるようで、縫は腕の中の『サジ太』を強く抱きしめ直してくすりと微笑んだ。
「ぬいは雪も大好きだよ冷たくてふわふわでとっても静かで。でもね、」
 春も、冬も。花も、雪も好き。それでも。
 僅かな間、口を噤んだ縫はふわりと巻き上がる風を感じながら、そっと目を伏せる。
 季節は変わらないといけない。春のままでも、冬のままでもいけないように。
 ずっと雪が降っていたら、花は咲くことができない。
 土の中の蛙も、冬眠中のリスだって起きられない。
 巡り行き、過ぎ去るものだから。季節は、停まってはいけないのだ。
 それを知っているからこそ。縫はしっかりと目を開いて、確かな思いを胸にユキウサギウミウシたちへ告げる。
「――ぬいは戦うよ」
 巻き上がる風が止んだとき、縫の背後には彼女の身長をゆうに越すほど大きな黄金のライオンがいた。
 ライオンの背へ勇ましくも乗り込んだ縫は、ライオンと共に颯爽と雪原を駆けていく。
 そうして振り上げられたライオンの大きな手は、ばしーんと一発。おまけに、もう一発。
 ユキウサギウミウシたちを端からひとまとめに吹き飛ばしていくその背には、百獣の王に相応しい雄々しさが伺えるようだ。
 はたして。春の陽だまりのように眠たげな彼女と雄々しきライオンによる猛攻は、ユキウサギウミウシたちが雪と消えるまで止まることはなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リウ・ノコ
みち(f13444)となつめ(f13477)とおでかけ

遠くから小さな足音とともにウミウシさんとイルカさんの声がする
聞かせて、キミたちは何を思っているの?
見せて、キミたちはどこを泳いでいるの?

ボクはリウ、いっしょに歌おう


UC[サウンド・オブ・パワー]で攻撃力の下がった味方を強化


さあ、あそぼう
おともだちのイルカさんもおいで

聞かせて、キミたちのオトを
見せて、キミたちから映るものを

ボクはリウ、キミたちのおともだちだよ


アイテム[聖痕(スティグマ)]で自身を回復しながら足止めを行う


帰ろう
キラキラのシロい海に
とけてひとつになれる場所

ボクが連れて行ってあげるからね

※アドリブ絡み可


桃乃・なつめ
みちくん(f13444)とリウくん(f13559)といっしょに

ふぁわ……
春が近いのよ…だからちょっぴり 眠たいの
でも どうしてかしら?
ゆきうさぎがたぁくさんいるのね
ひんやり?つるつる…?かわいい

UC【ゆめいろ】使用

冬はすきよ
でも春はもっとすき
終わらない冬だなんて 少し寂しい物語みたい
ゆめいろの煙に抱かれて みんなおやすみ
悪い夢は食べてしまいましょ
寒い冬も 私が暖めてあげるから
…触りたいから抱っこしてるわけじゃないのよ
ほんとよ?

終わらない冬を夢見るのは どうしてかしら?
物語を ききたいわ

アドリブ絡み可


檀・景路
ももさん(f13477)とリウさん(f13559)とご一緒です。

雪は…綺麗だと思います、でも、物悲しい気持ちにも、なります。
なぜ、春を遠ざけるのでしょうか。春は……おきらい、ですか……?

■WIZ
ももさん、リウさんが、怪我をされないよう、サポートしますね。
ユキウサギウミウシさん、ですか。ぷにぷに、もちもち、で、ついつい一緒に遊びたく、なってしまいますね。
《ウィザード・ミサイル》で炎の矢を使って分身達、それぞれ一体ずつを囲み、ます。
炎は苦手、かもしれません。でも、その、合体されてしまうと、困ってしまいますので…!
大人しくしていてくださいね。一緒に、海が見れるかもしれません、よ。

アドリブ絡み可です



 ふわぁ、と微かな欠伸が漏れる。
 眠たげに目元に触れた桃乃・なつめ(MOMO・f13477)は、確かにある春の気配を塗りつぶすような、真白に染められてしまった雪原を見て小首を傾げた。
「春が近いのに、どうしてかしら? ゆきうさぎがたぁくさん、いるのね」
 ぷるぷる、そしてつるつる。それとも、ひんやりもちもち?
 やわらかに、軽やかに。雪の上を跳ね回るユキウサギウミウシたちは、本当に雪うさぎのよう。
 その正体がオブリビオンでしかないとしても、その愛らしさは本物だった。
 まだ知らないその触り心地に思いを馳せて、なつめは小さく微笑む。
 そんな彼女の横で。
「なぜ、春を遠ざけるのでしょうか……」
 雪の美しさに物悲しさを覚えながら、檀・景路(翼など似合わない・f13444)は息を吐く。
 言葉を持たないユキウサギウミウシと対話することは、おそらく叶わない。それでも、少しでも彼らに寄り添うことができたなら、この物悲しさは消えるのだろうか。
 そんな思いを抱えて、吐き出した吐息が白く篭るのを眺めた景路のすぐ傍を、ふらりとリウ・ノコ(生まれたばかりのバーチャルキャラクター・f13559)が過ぎる。
 どこか遠くを眺めるかのようなリウの瞳は、きらきらと瞬いていた。
「――声が、聞こえるよ」
 言葉は分からない。それでも、声が聞こえる。
 雪原を跳ねた足音とともに、ユキウサギウミウシたちの声がする。
 声に誘われるように恐れることなく前へ出たリウは、やがて両手いっぱいに腕を広げて彼らへ囁きかけた。
「ボクはリウ、いっしょに歌おう」
 キミがいま、何を思っているのか。キミがいま、どこを泳いでいるのか。
 聞かせてほしい。見せてほしい。だから。さあ、あそぼう。
 リウがあまやかに歌いだしたなら、なつめもデバイスを手に握り締めて歩き出す。
 あそんで、と跳ねたユキウサギウミウシに歩み寄るように、ゆっくりと。
「冬はすきよ。でも、春はもっとすき」
 終わらない冬は少し寂しい物語みたいで、どこか物悲しい。
 だから、ゆめいろの煙に抱かれて、彼らがやさしいゆめの中で眠れるように。
 そうして、まっすぐに前を向いたなつめの手中にあるデバイスから、くゆる煙のように夢をたゆたうバクが現れたなら。
「大人しく、していてくださいね……!」
 なつめとバクの行く手を支えるように、景路が炎の矢を放つ。
 それは傷付けるための矢ではなく、あくまでユキウサギウミウシたちを大人しくさせるためだけのもの。
 そして、身動きを封じられたユキウサギウミウシたちに、なつめのバクがきらきらと煌く夢を振りまいたなら。すよすよと穏やかな眠りに包まれた彼らは、やさしいゆめを見るのだろう。

「寒い冬も、私が暖めてあげるわ」
 抱きしめたユキウサギウミウシをそっと撫でて、なつめはその触り心地に感嘆の息を漏らす。
 ぷるぷると柔らかくて、つるつるとすべらかで。
 とても可愛らしい、冬の名残り雪。
 それでも、冬とも、ユキウサギウミウシとも、ずっと一緒にはいられない。
「キラキラのシロい海に、とけてひとつになれる場所。ボクが連れてってあげる」
 ――だから、さよならをしよう。
 寒いばかりの冬とも、冷たいばかりの雪とも。ここでお別れ。
 ユキウサギウミウシをそっと雪原へ下ろして、なつめとリウはやさしい歌を送る。
 春の陽だまりに雪が融けても、彼らが素敵なゆめのなかで、眠れるように。
 そして。景路が見守る中、なつめとリウはすべてのユキウサギウミウシたちが眠るまで、口ずさむ歌を手向けとして寄り添うのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『雪うさぎリーダー』

POW   :    雪兎凍結地獄(コキュートス・セット)
【地形や装備をつるっつるに凍らせる事で】、自身や対象の摩擦抵抗を極限まで減らす。
SPD   :    雪兎軍団(マイアーミー・セット)
レベル×5体の、小型の戦闘用【雪うさぎ(消滅時に強い冷気を放出)】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
WIZ   :    召喚!雪兎王!(カモン・ユキウサキング)
【自分に似た姿の戦士】の霊を召喚する。これは【冷気】や【氷で作り上げた武器】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠中村・裕美です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Interval
 冬の嵐が吹き荒ぶ。
 すべてを白く染めてしまうほどの吹雪は冷たく、痛々しく。
 それは怒りからか、悲しみからか。
 ユキウサギウミウシが真白い海原へ融けて消えても、雪が降り止むことはなかった。
 それもそのはず。
 雪を降らしているのはやさしい眠りに沈んだ彼らではなく、今もなお更なる上層へ登ることを諦めていない少女なのだから。
「いいえ、いいえ。暖かさなんて少しも欲しくないわ」
 差し込んだ春の陽だまりさえ否定して、少女は凍えた息を吐く。
 少女が目覚めたのは、きっと単なる偶然の巡り合わせだった。
 突然変異にも等しい偶然が、迎えようとした春の手前で冬を呼び起こしてしまったように。
 目覚めなければ、求めることはしなかったかもしれない。
 目覚めなければ、骸の海で漂うままに眠っていたのかもしれない。
 それでも、少女は目覚めてしまったのだから。
 それはもう偶然ではなくて――少女にとっては、必然だった。
「春なんていらないのよ。ずっと、ずっと冬でいいのよ!」
 凍えるほどの冷たさだけが、少女に優しく触れる。
 凍てつく氷雪だけが、少女を迎え入れてくれる。
 だから。だから。
「――邪魔は、させないわ!」
 少女の意思に呼応するように、冬の嵐が吹き荒ぶ。
 それは猟兵の行く手を阻むように、視界を白く染め上げていた。
スノウ・パタタ
…凍ったままの世界はさびしーの。きっとさびしーの。好きな季節一つだけ、ずーっと。きっとそれはすごく幸せ、ね?
私はね、いろんな季節も知っているから冬がいいなって、思えるのよ。

【拠点防御】香水瓶の魔法
雪の日の寒さたいさくは、しっかりです!

皆が冷えないように冷気を遮断する為の壁を、範囲攻撃を応用し地の精霊魔法で展開。
地中に根を張り、相手の足元ににょきにょき生やし邪魔をして、注意を分散させる目的も含みつつ。

春の花、雪の色に滲んだみたいな柔らかいやさしい色をしてるのよ。寒さをがまんがまんして、わー春だー!ってかんじの、すごく強い色の花もあるけど、両方好きなの。
みんながあるから、それが好きって思えるのよ。



●真白き停滞
 穏やかな雪は眠り、びゅうびゅうと音を立てて冬の嵐が吹き荒ぶ。
 視界を白く染めた吹雪は、永遠の冬を願った少女を守るかのように唸りを上げていた。
 やっと視界が開けたときには、少女の隣にはもうひとつの影ができていた。
 少女によく似た姿の雪像。雪兎の霊である。
 氷雪で作り上げられた鈍器を手にした少女は、そうして雪原を蹴り駆け出していく。
 その凶器が向けられた先にいたのは、幼い青い瞳のブラックタール。スノウ・パタタ(Marine Snow・f07096)だった。
「……凍ったままの世界はさびしーの。きっとさびしーの」
 凶器が眼前に迫ろうと、スノウの瞳が揺らぐことはない。
 手によく馴染んだストームグラスペン、『StormGrassPen』に持ち替えていたスノウは、香水瓶の魔法を振りまいてインクの飛沫から地の精霊魔法を喚び起こす。地中に根を張ってにょきにょきと瞬く間に大樹が生えれば、それは冷気ごと遮断する壁となり、雪像の少女が振り回した鈍器は幹に傷を付けることはできてもスノウまでは届かない。
 敵の先手を見事に防いでみせたスノウは、『StormGrassPen』を強く握り締めて少女を見据える。
「私はね、いろんな季節も知っているから冬がいいなって、思えるのよ」
 好きな季節ひとつだけがずっと続いたなら、確かにすごく幸せかもしれない。
 けれど、スノウはほかの季節の良いところだってちゃんと知っている。
 知ってるからこそ、その中でも冬が好きなのだ。
 でも、きっと雪兎の彼女は冬以外を知ることはなかったのだろう。
 冬だけでは寂しい。それを知らないのは、冬以外を知ることがなかったから。
 雪は、春には融けてしまうから。
 その陽だまりを知らないまま。一度も出会えないまま。
「……春の花、雪の色に滲んだみたいな柔らかいやさしい色をしてるのよ」
 ふわり、スノウがペン先を操れば滲み出たインクがまた大樹を描く。
 後に続く猟兵たちの壁をしっかりと築き上げたスノウは、そしてやさしい声で彼女へ向かって微笑んだ。
「寒さをがまんがまんして、わー春だー! って感じの、すごく強い色の花もあるけど、両方好きなの。みんながあるから、それが好きって思えるのよ」
 もう一度、スノウはペン先を小さく振る。
 こんな色、と描いたのは小さなかわいらしいお花だった。
 ぽん、と短い音を鳴らして大樹に咲いた魔法のお花は、吹雪にふわりと揺れている。そんな春を思わせる色のお花を見上げて、スノウはただただ願うのだ。
 雪は融けてしまうけれど。冬は過ぎ去ってしまうけれど。
 雪兎の彼女がいつか、あのお花のような春の色を見られますように。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルロット・クリスティア
生憎ですが……冬は、もう終わりです。
滲み出てくる場所も季節も選べないというのは、オブリビオンも難儀なもののようですが……だからと言って、都合を合わせることはできませんので!

基本的には、目立たないように身をひそめて、機を伺います。
他の猟兵に気を取られて隙を見せたなら、そこを見逃さず即座に邪毒弾で狙撃。
数がいようが、頭を叩けば軍は瓦解するというもの。
隙間を縫って、正確に本体を狙いますよ。
麻痺毒と腐食毒と呪縛……三種総てを一度に付与するこの弾丸、総て防ぎきれるとは思わないことですね。

(スナイパー、目立たない、毒使い、マヒ攻撃、視力、早業)



「生憎ですが……冬は、もう終わりです」
 滲み出てくる場所はおろか、季節さえも選べないというのはオブリビオンも存外に難儀なものだ。
 その存在に僅かばかりの憐憫を覚えるも、シャルロット・クリスティア(マージガンナー・f00330)の意思とその銃口が逸れることはない。
 彼女たちには彼女たちの領分があるように、自分たちにも領分がある。
 それは決して合わさることなく、合わせることもできないのだから。
「――狙うのは、本体のみ!」
 雪像の少女を迂回した大樹の壁から滑り出たシャルロットが狙ったのは、再来する冬の原因である雪兎の少女そのもの。
 身を潜めて機会を伺っていたシャルロットは、彼女の気が逸れた瞬間を逃さなかったのだ。
 たとえ彼女がその素早さから慌てて雪兎軍団を召喚したとしても、時はすでに遅く。
 シャルロットの銃口は、間違いなく雪兎の少女だけを狙い済ましていた。
 そうして隙間を縫って正確にその身を貫いた弾丸は――術式刻印弾・邪毒。
 神経毒、腐食毒、さらには呪縛の術式によって精製されたホローポイント弾は一度敵を貫けば最後、三重苦がその身を苛むことだろう。
「ぐ、ぅッ……いいえ、いいえ! この、程度の痛みでッ、私は御せないわ!」
 ぶわり、と。雪兎の少女の怒りに呼応するように、一撃を防ぐに間に合わなかったが召喚には至っていた雪兎軍団は動き始める。
 冷気を宿した雪兎たちの数は多く、シャルロットを囲むほどの数ではあったが、しかし個体としてそう強い生き物ではないのだろう。
 迷わず初めの1体を撃ち抜いたシャルロットは、僅かな間で弾丸をリロードしながら強気に笑ってみせた。
「構いません、まとまって掛かって来てください!」
 すべて残らず、撃ち抜いてみせます!
 その言葉には少しの焦りもなく、シャルロットはどこまでも気丈だった。
 なぜなら。シャルロットは疑いもなく信じているのだ。
 自分の成す一撃が、必ず後の仲間たちの勝利に続いているということを――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月暈・芥朶
冬は終わりに進んでるんだ
そんなこと、一番に君がよくわかってるだろう
大人しく幕引きだよ。呼ばれぬスターは大人しく引き下がっておくれ

IT'S SHOWTIME
ショータイムはまだまだ終わりません!
ここからが盛り上がり!
雪の色宿した少女を倒して見せましょう!

イーカロスを足元に打ち込んで、少女の動きを止めたなら
枢で抱き締めるように屠ってあげましょう
優しく、けれど残酷に
雪融けはもうすぐそこに。君の出番はもう終わりなのだから!

少女の攻撃にも枢で対応。敵を盾にしたり、フェイントによるパフォーマンスを魅せるよ

さあこれでショータイムはおしまい
君との劇はどんな物語を紡いだかな……きっと悲劇、いやこれから訪れるのは…



 吹き荒れる冬の嵐の中で、寒さに堪えることなく月暈・芥朶(塵屑色・f00072)は立っていた。
 羽根のように柔らかな髪を吹雪に揺らした芥朶は、一歩前に出ると臆することなく告げる。
「冬は終わりに進んでいるんだ。そんなこと、一番に君がよく分かっているだろう」
 ――大人しく、幕引きだよ。
 分からず屋の振りをしたって、過ぎ去る時は待ってはくれない。
 冬のままでなんて、いられるはずもない。
 雪のように冷たげに、氷のように艶やかに。凄絶の笑みを浮かべた芥朶が両手を広げれば、美しい翼も合わせるように広がりはためく。
 そして。
「IT'S SHOWTIME! ショータイムはまだまだ終わりません! ――ここからが盛り上がり、雪の色宿した少女を倒して見せましょう!」
 黒く彩られた唇が釣りあがれば、間もなく応えるように蝋で出来た羽根の刃が発射される。
 塗り固められた蝋の羽根は鋭く尖り、風を裂く勢いで宙を駆けていった。
 しかし、鋭い刃を受けたのは雪兎の少女ではなく、作られた雪像の少女だった。
 蝕むような毒に呻いた雪兎の少女を庇うように前に出た雪像の少女は、羽根を受けても止まらずに芥朶へ向かって鈍器を振り上げる。
 決して討たせはしない、そんな強い思いがそこにはあったのかもしれない。
 ただの作られた雪像でしかないというのに。春を待ち融けるしかない、雪の塊でしかないというのに。
 けれど。
 少女の思いも空しく、雪像の少女の腰を取りまるで踊るように芥朶は攻撃の軌道を逸らす。
 怒りは、募りは、曇りのない凶器さえ歪ませてしまう。
 道筋を違えた雪像の少女の攻撃は読むにたやすく、芥朶を傷付けることはできなかったのだ。
 手は離さずに、そのままワルツを踊るように軽快に踏み鳴らした芥朶はそして、そっと目を伏せてその耳元に囁く。
「……雪融けは、もうすぐそこに」
 君の出番は、もう終わりなのだから。
 それはまるで柩で抱きしめるように優しく、けれど残酷に。
 腕の中で緩やかに融けていく雪像の少女を見つめてうっそりと微笑んだ芥朶は、雪が水と消えれば何も残らない腕の中に小さく呟いた。
「君との劇はどんな物語を紡いだかな……。きっと悲劇、いやこれから訪れるのは……」
 舞台は、まだ終わらない。
 芥朶のショータイムが終えても、幕引きとなるのはまだ先のことだ。
 これから訪れる物語に思いを馳せて、芥朶は静かに目を伏せるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヘンリエッタ・モリアーティ
【WIZ】
……春が来なければいい、なんて、私とは真逆だわ
寒いのが、苦手で、しょうがない。凍てついた世界を知っているから
――もっと、もっと、汚濁と恥辱にまみれた凍える世界を、知っているの!

【悪徳教授の名誉助手】で召喚する霊を拘束するわ
私が狙うのはただ一点、たった一人よ
氷で作り上げた武器には、ロックブレイクで【なぎ払い】
【怪力】を活かしてそのまま打ち返してあげる
ワトソンをワイヤー状にして【ロープワーク】で
お嬢さんの一部を縛れたなら――
そのまま引き寄せて、ロックブレイクで【串刺し】にしようかしら。

春を、返してもらうわよ。お嬢さん
溢れる血潮のじゅうたんは、どう?暖かい?――それとも、冷たかった?



 雪は融けてしまう。それは自然の摂理に他ならない。
 けれど、雪が水と消えてしまっても、雪兎の少女の瞳は青く凍りついたまま。
 だって、まだ冬は終わっていない。まだ、少女は戦える。
 壊れたなら、融けたなら。また作り出せばいい。
 そうして雪像の少女は再び、雪兎の盾となり矛となり現れる。
「……春が来なければいい、なんて、私とは逆だわ」
 盛り上がる雪の塊から現れた雪像の少女を見ながら、ヘンリエッタ・モリアーティ(獣の夢・f07026)は眉を顰めて呟く。
 吹き荒ぶ冬の嵐に、僅かな苛立ちを覚えたのは誰だっただろうか。
 寒いのが苦手でしょうがない。ずっと、ずっと苦手だった。遠い過去か、遥か未来かも分からぬ、いつからか。
 身体を刺すような寒さに触れて、ヘンリエッタは『ロックブレイク』を強く握り締める。
 寒いのが苦手なのは、凍てついた世界を知っているから。
 その痛みを、知っているから。
「――もっと、もっと、汚濁と恥辱にまみれた凍える世界を、知っているの!」
 雪像が鈍器を振り上げるよりも早く、ヘンリエッタは空へ向かって高く吼え猛る。
 それは、悪徳教授の名誉助手。サイドキック・ファウストと呼ばれた――
「忠実なる、私の助手よ!!」
 ごぽりと、雪原が口を開く。
 ヘンリエッタの声に応えるように現れたのは、触手のようにうねる何かだ。
 そう、それこそが彼女の名誉助手。触手型UDC、その名も『ワトソン』。
 喚び起こされた触手が現れたのは、雪像の少女の足元だった。
 雪底からまろびでるように雪像の少女の足を絡めとった触手がそのまま拘束してしまえば、あとはヘンリエッタの思うままに。
「春を、返してもらうわよ。お嬢さん」
 まずは手にした『ロックブレイク』でなぎ払い、少女の鈍器を遠くへと吹き飛す。
 そしてそのままワイヤー状へと変化した触手が、ずるずると雪原を引きずるように雪像の少女をヘンリエッタの前へと連れて蠢けば。
 褒めろと言わんばかりに視界で揺れた触手の先を撫ぜたヘンリエッタはそうして、ロックブレイクを手に少女を深く串刺して破壊するのだった。

 雪が水と消え、融けゆく様を見下ろしてヘンリエッタは目を細める。
 本体を守るように立った雪像の霊に意思があり、生きていたとするなら。融け流れた水は血だろうか。
「溢れる血潮のじゅうたんは、どう? 暖かい? ――それとも、冷たかった?」
 囁くほどの小さな問いかけが、雪原に零れ落ちる。
 答えはない。けれど、それでいいのだろう。
 暖かくても、冷たくても。ヘンリエッタにとってそれらは既に、過ぎ去った季節の爪痕でしかないのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

雨糸・咲
吹き荒れる雪は冷たいけれど
それを喚ぶ少女の心は激しくて
いっそ熱を感じるほど

第六感と聞き耳で攻撃を回避
地形の利用やフェイントを交えて隙を突いて行きます
敵が何か武器を手にしていれば、武器落としを

雪霞を白菊の花弁に変え、沢山降らせれば
つるつるの氷も少しましになるかしら…

本当はね、
春の訪れを拒むあなたに
少しばかりの親近感も覚えているのです
明るくて楽しげな季節
でも、そのうきうきした空気に
ちょっぴり居場所の無さも感じてしまうから

でも
季節は巡ります
冬はまた、やって来るのですよ

だから、ほら
あなたももうお休みなさい
優しい雪は、また降りますから

※アドリブ、他の方との絡み歓迎です



 吹き荒れる雪は変わらず冷たい。けれど。
 それを喚ぶ少女の心は激しく、熱さえ感じてしまいそうなほど。
 視界を染める白さに目を細めた雨糸・咲(希旻・f01982)は、寒さに篭る吐息の向こうに雪兎の少女を見た。
「ほんとうは、あなたも分かっているのでしょう?」
 何度作っても融けてしまう雪像のように。
 冬は融け、春は陽だまりを連れて来る。
 それを止めることは、オブリビオンにだって出来やしない。――猟兵という存在が、在る限り。
「どれだけ望んでも、あなたの願いは叶わない」
「いいえ、いいえ! 叶えてみせるわ……!」
 咲の言葉に強い否定を吐き捨てた雪兎の少女が、また雪像を作り上げていく。
 何度壊されたって、諦めたくないと叫ぶ少女の心の内に寄り添うように、雪像の少女は現れるだろう。
 冷たく、痛ましく、自分によく似た雪像の霊。
 凍てついた雪兎に触れてくれたのは、傍にいてくれたのは。その雪像だけだった。
 だから。雪が融けてしまう春なんて、ずっと来なくていいと雪兎は願うのだ。
「邪魔をしないで――!」
 雪兎の少女の悲痛な声を聞いた雪像は、鈍器を振りかぶり咲に狙いを付けていた。
 けれどその攻撃を音を頼りに避けた咲は、すぐさま手にした『雪霞』で雪像へ斬り掛かる。
 雪像は太刀筋を予感し飛び引くが、もとより咲の狙いは斬ることではない。
 瞬く間に雪霞は杖先から崩れ白菊の花びらが舞い散れば、それは雪像ごと押し流すように吹雪さえ押し越えて雪原を覆い尽くしていった。
「本当はね、少しばかり親近感も覚えているのです」
 雪にも程近い、その白い花びらを見上げながら、咲は誰にも聞こえないくらいに小さな声で苦く微笑んだ。
 春の訪れを拒むあなたは、いつかを思い出す。
 明るく楽しげな季節の、そのうきうきした空気に少しばかり居場所のなさを感じてしまうから。
 雪兎の気持ちは、分からないこともない。
 でも。口を噤んだ咲は雪霞を痛いほどに握り締めて、白菊の花びらが舞う中、力強いまなざしで雪兎の少女を見据える。
「でも、季節は巡ります。冬はまた、やって来るのですよ」
 春も夏も秋も。そして、冬も。
 過ぎ去りゆく季節はまたいずれ、訪れる。
 だから、ほら。
「――あなたももう、おやすみなさい」
 咲は胡桃色の静かな瞳にやさしさを湛えて、洗い流された雪像の跡を指先で辿る。
 融けても、また作られるように。やさしい雪は、きっとまた降る。
 その日を願って、咲は雪白華を降らすのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

真幌・縫
ゆきやこんこん
ごめんね、今年の冬はもう終わりにしよう。
また、来年。だよ。

さくらひらひら
さぁ、春を呼ぶために戦おう。

UC【ぬいぐるみさん行進曲】だよ。
せーの!攻撃開始ー!
とにかく数で攻めるよー。
攻撃力はないしすぐ消えちゃうけど足元にまとわりついたりしてじゃまをしちゃうよ。
隙を作って他の猟兵さんが戦いやすいようにしよう!

ぬいへの攻撃は【野生の勘】で回避!
できたらいいなぁ。



●真白に斑消ゆ
 長い冬にも、終わりは近づいている。
 猟兵たちの戦いは確実に雪兎の少女を消耗させ、その力を削いできていた。
 雪像は何度も作れる。それはこれまでの戦いを見ても事実なのだろう。
 雪が降っている限り、雪原が融けない限り、それは現れる。
 けれど。ほかでもない雪兎の少女においては、必ず限界がある。
 吹き荒ぶ冬の嵐も、いつの間にやらその力を弱めはじめているようだ。
「ゆきやこんこん、さくらひらひら」
 勢いを弱めた冬の空を舞った真白い雪と花びらを見上げて、真幌・縫(ぬいぐるみシンドローム・f10334)は歌うように口ずさむ。
 その楽しげな様子には、あどけなささえ見えるようだった。
 けれど、その銀の瞳には確かな決意がある。
 いまだ降り止まぬ綿雪の向こうに雪兎の少女を見て、春を呼ぶために戦おうと決意を秘めた縫は『サジ太』をやさしく抱いて、そうして語りかけた。
「ごめんね、今年の冬はもう終わりにしよう」
 また、来年。巡る季節の中で、また出会おう。
 だから、今年の冬はおしまい。
 雪像の少女が何度生み出されてようとも怯まずに、縫は元気な声で号令を掛ける。
「せーの! 攻撃開始ー!」
 喚び出されたのは、かわいらしく小さなぬいぐるみたち。
 色とりどりのぬいぐるみたちは、ぴしっと手を揃えて縫へと敬礼してみせる。
 そして縫の号令を合図として、足並みを揃えて雪原を歩き出したなら。ぬいぐるみたちの姿はかわいらしくも壮観だ。
 そう、それこそが縫の持つ力。
 ぬいぐるみさんの行進曲――バトルダンスマーチ。
 ひとりひとりは小さな力であっても、力を合わせれば怖くはない。
 列を成して勇敢に歩き出したぬいぐるみが雪像の少女が薙いだ鈍器に吹き飛ばされたって、ぬいぐるみたちの数はあまりにも多く少女ひとりではすべてを消しきれないだろう。
「さぁ、ぬいぐるみさん達! 他の猟兵さんたちが戦いやすいように、じゃましちゃおう!」
 ぬいもお手伝いするよ、と雪原の少女の注意を引いておびき寄せるように『サジ太』と雪原を駆け回ったなら。
 それはきっと。いや、必ず他の猟兵たちの助けとなる。
 縫はその勝利を信じて、雪原の少女を振り回して笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

桃乃・なつめ
みちくん(f13444)とリウくん(f13559)といっしょに

柔らかな雪の下で 緑は春の芽吹きを待っているの
怖くないのよ
雪は溶けて 消えてしまうだけじゃない
冬は寒くて 凍てつくだけじゃない
春が冬の雪を溶かして そっと命を育むの
だから おねがいよ
その冷たい指先を どうか暖めて?

【バトルキャタクターズ】
18体のもこもこしたお友だちを召喚して、彼女に抱きついて動きを止めるの
おしくらまんじゅう…?
きっと 氷のような心までは届かないだろうけれど
わたし 暖めてあげたいのよ


ねえ みちくん。ほんとうに 凍らせちゃうの…?
うぅん……しかた、ないのね

アドリブ絡み可


檀・景路
ももさん(f13477)とリウさん(f13559)とご一緒です。

暖かさは、あなたの救いには、ならないのでしょうか。冷たさだけが、あなたを、救うのでしょうか…


雪うさぎさんたちの冷たい冷気が皆さんに届かないよう、《ウィザード・ミサイル》の炎で暖めたり、【オーラ防御】でみなさんを庇ったりしますね。
本当は暖めて、共に春を喜びたいけれど…冷たさだけが貴方を慰めるというのならば。《0-K》の氷の炎で彼女の氷を溶かし、さらに凍らせます。
ずっと、冬でいられるように。溶けない冬に包まれるように。願わくば安らかに。絶対零度の氷で囲いましょう。

…こういうことしか、出来なくて、すみません。
私も春になれたらいいのに。


リウ・ノコ
みち(f13444)となつめ(f13477)とおでかけ

はじめまして、ボクはリウ。
あのクロくて冷たい海の底で眠っていたんだね。
キミと出会えてうれしいな。

いたくて冷たい音
なにがキミをそうさせるの?
キミもみんなもいたいのはイヤだ。
だから、ボクはキミをここで止める。

*生まれながらの光(傷ついた味方を回復)*

ねえ、ボクを見て、音を聞いて、信じて。
この海は広くて、セカイは楽しいことがたくさんあるんだよ!
何もこわくない。

みち、なつめ。これはしかたないこと?
あの子はここにいなくちゃいけないの?
いっしょにパステルの海は泳げない?

どうか、シロいカーテンから顔を見せて。
キミの音をきかせて。

※アドリブ絡み可



「暖かさは、あなたの救いには、ならないのでしょうか」
 冷たさだけが、彼女を救えるのか。
 雪原に在り続ける雪兎の儘ならない末を偲ぶのは、檀・景路(翼など似合わない・f13444)だ。
 彼の傍らに立ったリウ・ノコ(生まれたばかりのバーチャルキャラクター・f13559)もまた、そばたてた耳に聞こえる音に目を伏せて、小さく呟く。
「いたくて、冷たい音。なにがキミをそうさせるの?」
 あのクロくて冷たい海の底で眠っていたからだろうか。
 出会えてうれしいのに、聞こえる音はこんなにも冷たくて、悲しくて。
 リウが再び目を開いたとき、金の瞳は水辺に映る月のように揺れていた。
「……雪は溶けて、消えてしまうだけじゃない。冬は寒くて、凍てつくだけじゃない」
 桃乃・なつめ(MOMO・f13477)はゆるく、頭を振る。
 やわらかな雪の下で、緑は春の芽吹きを待っている。溶けることは、怖いことじゃない。
 春が冬の雪を溶かすことで、そっと命を育むのだから。
 怖がらないで、どうか手を伸ばして。
 思いの丈を震える指先に託して、もこもこと描くように宙をなぞって、なつめはお友達を召喚する。
 18体のもこもことしたお友達が目指す先は、雪兎の少女だ。
「おねがいよ。その冷たい指先を、どうか暖めて?」
 その氷のような心までは、届かなくても。少しでも暖められれば。
 そう思っていた。けれど。
「――いいえ、いいえ。暖かさなんて、私にはいらないのよ……!」
 雪兎の少女の声と共に暖かさを阻むように現れたのは、なつめのお友達たちよりも多くの雪兎軍団だった。
 消耗が激しい中でも、少女は諦めずに力を振り絞る。
 すべては、終わらない冬のために。融けることのない、雪のために。
「ももさん、下がって……ッ!」
 危険を察知して声をあげたのは、景路だ。
 ぶつかりあった雪兎軍団と、なつめのお友達を中心として、冷気が急激に広がるのにいち早く気づいた景路はウィザード・ミサイルを放ち炎の壁を作ることで吹き上がる冷気を避ける。
 本当は暖めて、共に春を喜びたかった。彼女の心を包む氷を、溶かしてあげたかった。
 けれど、冷たさだけが彼女を慰めるというのならば。
 目元にかかるアッシュグリーンの奥で目を伏せた景路は、ウィザードロッドを握り締めて息を吐く。
「なつめのお友達は、ボクが治すよ」
 ふわり。やわらかな光が包み込み、なつめのお友達たちの傷を癒していく。
 その間にも。リウは揺らぐ金の瞳で雪兎の少女を見ていた。
「この海は広くて、セカイは楽しいことがたくさんあるんだよ。何も、こわくないんだよ」
 どうか、シロいカーテンから顔を見せて。キミの音をきかせて。
 そう願ったのは、きっとおかしいことじゃない。
 だけど。頭を振った景路が、ウィザードロッドを掲げる様にリウは僅かに目を見開く。
「――こういうことしか、出来なくて、すみません」
 私も、春になれたらいいのに。
 その声に滲んだ感情は、なんだっただろう。
 魔力の篭った水が燃やされ、氷の炎となった0-K(ケルビン)が雪兎軍団を包んでいく。
 ずっと、冬でいられるように。溶けない冬に包まれるように。
「ねえ、みちくん。ほんとうに、凍らせちゃうの……?」
 なつめの問いかけに答える声は、ない。答えるよりも早く、なつめもまたその現実を見てしまったから。
 それでも。リウは、考えてしまうのだ。
 これはほんとうに、仕方のないことなのだろうか。
 いっしょにパステルの海は泳げないのだろうか。
 だって、海はあんなにも広くて、セカイはこんなにも楽しいのに。
「……願わくば、安らかに」
 春の暖かさより、祈りを込めて。
 氷の炎に溶かされ、そして凍らされていく雪兎たちを眺めて、3人はそれぞれの思いを胸に祈るように目を伏せるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

閂・綮
◾️アドリブ歓迎

(雪原の中にあろうとも。
臙脂色の襟巻きに白の暖かな外套を纏う男は、平然とその場に佇んでいた。傍らには唸りを上げる獅子が在る。)

勝負をしよう、兎の娘。
我らを悉く凍て付くしたならば、其方の勝ち。
お前を諦めさせれば、我らの勝ちだ。

お前の我儘に付き合ってやろう。
だから、此度は気を鎮めてはくれんか。
…また、冬が巡ったならば。
その折に、逢いにこよう。

(手袋を外した、固い指先で彼女を撫でる。)

◾️戦闘
「白寿」に跨り【ダッシュ】【ジャンプ】で攻撃を回避。逃げ回りつつ「花翼」で雪を集め、柔らかく握った雪玉を相手に投げる。(雪合戦)
「白寿」「花翼」による攻撃は行わず、敵の攻撃の相殺のみに使用。



 雪像の少女も、雪兎の軍団も。もういない。
 雪兎の少女の傍には、もう誰もいない。
 いつの間にか静かになった雪原の中で、閂・綮(マヨヒガ・f04541)は臙脂の襟巻きと白い外套をはためかせ、平然のその場に佇んでいた。
 少しの寒さも感じさせない綮の隣に在るのは、雪原の中で一際煌いた鮮やかな色彩の鳥と、立派な鹿角を反らせた白獅子。綮が手にするからくり人形のひとつである、『花翼』と『白寿』だ。
 唸りを上げる獅子の背をやさしく撫ぜた綮は、あたたかな橙色の瞳で雪兎の少女を見つめて、声を掛ける。
「――勝負をしよう、兎の娘」
 我らを悉く凍て尽くしたならば、其方の勝ち。
 けれど、雪兎の少女が諦めたなら、此方の勝ち。
 それは、なんとも簡単な勝負だ。
 激しい消耗の中で肩で息をした少女は目を吊り上げて、鼻を鳴らす。
「情けを掛けているつもりかしら! いいえ、いいえ、私は最後まで戦う、わッ……!?」
 激昂する、そんな間際のこと。
 自尊心に爪が立てられたかのように肩を怒らせた少女の顔面にぼすりと、間の抜けた音を立ててぶつかったのは雪玉だった。
 綮が投げた雪玉である。
 長いようで短い沈黙が下りるも、やがて少女は震える声で唸りを上げた。
「やって、やろうじゃない……! 全部凍らせてやるわ!」
 凍てつく吹雪が、冷気を纏って雪玉を作り出す。
 そうして作り上げられた雪玉を操るように宙を飛ばした少女は、怒りに我を忘れたかのように雪合戦へと応じてしまうのだった。

 そうして、幾ばくか。
 ひらりひらりと風に揺れる柳のように雪玉を交わす綮、もとい白寿の素早い身のこなしについに雪兎の少女は力尽きたのか、背から大胆にも雪原へ倒れこむ。
「なんっで……、当たらないのよッ……!」
「そういう勝負、故な。――此処は、気を鎮めてはくれんか」
 倒れた少女を見下ろして、綮は静かに言葉を落とす。
 冬のままではいられない。冬はいずれ終わるもので、雪もまた融けるもので。
 その摂理を歪めることは、してはならないことだと本当は少女も分かっているのだろうと。
 言葉にはせずともまっすぐな瞳で少女を見た綮は、囁くように約束を立てる。
「また、冬が巡ったならば。その折に、逢いにこよう」
「……うそよ。みーんな私のことなんて、きらいだもの」
 まっすぐな瞳から耐えかねたように、先に視線を逸らしたのは少女だった。
 凍てついた雪兎に触れてくれたのも、傍にいてくれたのも。
 作り上げた雪像と、自分に連なる雪兎たちばかり。他にともだちなんて居やしない。
 誰も彼もが寒さを嫌い、雪を嫌い冬を嫌い――少女を、嫌うのだ。
「我は嘘を好かぬよ、兎の娘」
 手袋を外した綮の、硬い指先が少女をゆるやかに撫でる。
 その指先の暖かさに僅かに目を見開いた少女は、そこでようやっと諦めたように目を伏せて、ずっと気を張っていた身体を緩めて力を抜いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
死角、急襲に備えて声を掛け合い
第六感で見切り回避
自他オーラ防御

形を――命を与えられては陽光に融けて消えていく
雪兎達の落胆と悲しみが荒魂となって蘇ったものか

巡るからこそ
どの季も恵みに満ちている
雪兎を飾る南天も陽光に育ちし物
実を添えるひとの眼差しも
暖かなお日様みたいに違いなく

ねぇ
其れは吹雪の中では見られぬ眩さで
嵐の世界は冷たく居心地良くても
寂しいままかもしれません

ぽつり零れる呟きの雫は自身の胸にも落ちる
己もまた「孤独」が寂しいのかもしれない

淡く笑んで掲げる符
然れど
迷いも躊躇いも無く高速詠唱
手向けに送る春告げの花筐は梅の香
吹雪を相殺し、春にふぅわり包み込む

後に残った眩い雪野原へ細める双眸

綺麗ですねぇ



 いま思えば。
 ユキウサギウミウシにしても、雪兎の少女にしても。
 命を与えられては陽光に融けて消えていく彼、彼女らの落胆と悲しみが滲み出した存在だったのかもしれない。
 倒れ伏した雪兎の少女の傍らに沿うように、都槻・綾(夜宵の森・f01786)もまた早春に萌える若葉のような緑の瞳をやさしげに細める。
「……嵐の世界は冷たく居心地良くても、寂しいままかもしれません」
 巡るからこそ、どの季も恵みに満ちている。
 雪兎を飾る南天も日の光を浴びて育ったものであれば、実を添えたひとの眼差しもまた、暖かなお日様のように違いない。
 それは吹雪の中では見られない、眩いほどの暖かさだ。
「貴女は、寂しかったのですね」
 ぽつりと零れた呟きの雫は、綾の胸にも落ちて滲むようで。
 けれど、淡く湛えた微笑みが濁ることはなく。
 掲げられた符を見上げて、目を伏せた雪兎の少女は小さく頷く。
「あなたも寂しいのね。――いいわ。もう、疲れたから」
 もう、眠ってあげるわ。
 そう話した言葉こそ素っ気のないものだ。けれど、どこか満足げにも綾には見えた。
 そうして間もなく手向けに送られたのは、春告げの花筐。やわらかな梅の香。
 春のような暖かさと、やさしい香りに包まれるように眠りについた雪兎の少女は、やがてその暖かさに融けてしまうだろう。
 だけど。もう良い、と少女は思うのだ。
 触れた暖かさはほのあまく、包む香りはやわらかで。
 その春の中で、眠れるなら。もう、それでいい。
 それはきっと少女だけに与えられた、やさしい春なのだから――、

 しんしんと綿雪が降り積もる。
 やわらかに、あやまやかに、遠く深くまで。梅の香りを乗せて。
 冬は遠く、やがて春が訪れる。
「綺麗ですねぇ……」
 吹雪が止み、差し込んだ陽だまりに煌いた眩い雪野原を見渡して、綾はそうっと目を細めて微笑んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『迷宮に降る雪』

POW   :    雪だるまを作ったり、固めてかまくらを作ったり

SPD   :    雪合戦をしたり、彫刻を作ったり

WIZ   :    雪で一句詠んだり、ライトアップしたり

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Interval
 過ぎ去った冬の嵐は遠く、穏やかな雪野原が広がっている。
 枝葉を彩った名残り雪の隙間から聞こえる歌声は、春告鳥だろうか。
 雪の残る迷宮はいまだ肌寒いけれど、その日差しの暖かさは確かに近づく春を知らせていた。
 幹を登りゆく栗鼠も、その暖かさに目を覚ましたのかもしれない。

 麗らかな日差しの下で、いまここに残る雪も、寒さも、やがて融けて消えていくだろう。
 けれど、いまだけは。
 少女が残した雪と、過ぎ去りし冬を楽しみながら見送ろう。
 雪だるまを作ってもいい。かまくらを作ってもいい。
 雪合戦で遊んでもいいし、栗鼠と遊ぶのもいいかもしれない。
 冬の楽しみ方は、ひとそれぞれ。
 いずれにしても、この束の間の季節を楽しむことこそ、融けていくものたちへの手向けとなるだろうから。
 陽だまりの中で猟兵たちはそして、各々に煌く雪野原を駆けてゆくのだった。
スノウ・パタタ
ふわー!ゆきなのー!そろそろ溶けてきちゃってるから、たくさん雪はうれしいです!なの!
ゆきうさーをたくさん作りたいのよー!

丸めて丸めて、目はインクでつけて、葉っぱ…葉っぱは……せーれーさんに分けてもらうのよ!あちこちにぽこぽこゆきうさぎを作って満足すると、柔らかそうな所に埋もれて名残惜しい冬を全身で堪能。(油性のブラックタール設定なので凍らないです)
暫く埋もれて、雪の中からはしゃいで飛び出してあちこちぴょんぴょん。
雪が大好きなので元気割り増しです。

あ!もしゆきがっせんしてたら、まぜてもらいたいです!

(アドリブ歓迎)


雨糸・咲
真白い狐姿の精霊と共に雪を掻き分け駆け回る

足がもつれ転んでしまっても
一面の白が柔らかく受け止めてくれるから

ふかふか!
…ふふ、気持ち良いですね

何もかも静寂に覆ってくれる雪は優しくて
けれど
熱に触れては溶けていく
その儚さが愛おしい

雪兎の少女の悲痛な叫びを思い出す
彼女は、自分が消えることよりも
大切な友人が連れ去られるのが怖かったのではないかしら…?
消えないで
一人にしないで
そんな風に願ったのでは、と

その気持ちは
取り残される寂しさは
痛いほど解るのです

もしもまた
彼女が誰かの手で生み出されるのなら
その時は覚えていて欲しい
触れるその手はきっと、喜び弾む心で動いているのだということ

※アドリブ、他の方との絡み歓迎


真幌・縫
はるがきたはるがきた
アルダワ学園に春がきたー!

の前に残ってる雪で雪遊びしちゃおー。
うん、ぬいは雪うさぎさんをいっぱい作るよー。作ったうさぎさんがとけるのは少し寂しいけど。それがきっと春が来るってことだから。

わー雪うさぎさんいっぱい作ったらおててが冷たい!焚き火で温めよう。
そういえば以来の時にマシュマロを焼くと良いって聞いたけどマシュマロを焼くとどうなるんだろう…。
(さっそくやってみる)
…!中がトロッとして美味しい!
焼いたマシュマロってこんなに美味しいんだね!

アドリブ絡み歓迎です。



●たのしいゆきあそび
「ふわー! ゆきなのー!」
 いのいちばんに陽だまりに煌いた雪野原を駆け出し、スノウ・パタタ(Marine Snow・f07096)は楽しげに声を上げる。
 この時期にもなると外では既に雪は溶けてしまっているところも多く、こうして降り積もった雪が見れるのは彼女にとってやはり嬉しいことのようだった。
「アルダワ学園に春がきたー! の、前に! 雪遊びしちゃおー!」
 駆ける足跡を追うように、『サジ太』を抱きしめた真幌・縫(ぬいぐるみシンドローム・f10334)もまた、戦闘の後さえ白く覆った雪野原へ飛び出していく。
 たくさんの雪うさぎを作ろうと顔を見合わせたふたりは、そうして冷たい雪と手を伸ばしてきゃらきゃらと笑いあう。
 その間にも。真白い狐姿の精霊と駆け回っていた雨糸・咲(希旻・f01982)も、ばふりと大胆に音を立てて飛び込んで来た。積もりたての綿雪なら、どれだけ飛び込んでも羽毛布団のようにやわらかい。
「ふかふか! ……ふふ、私もいっしょに雪うさぎ、作ってもいいですか?」
 咲を迎えた答えはもちろん、春の花が咲いたような暖かな笑顔。
 肩どころか頭にまで雪を被ったまま、咲が笑えばスノウと縫もまた温かい笑みを返す。
 遊ぶなら、みんなで遊んだほうが楽しい。
 作るなら、たくさん作ったほうが雪うさぎも寂しくない。
 くるくると手の中で丸めた楕円形の雪を膝において、咲は少しだけ目を細める。
 きっとこの雪は、すぐに融けてしまう。
 何もかも静寂に覆ってくれる雪は優しいけれど、熱に触れては融けてしまう。
 その儚さが、愛おしい。
「見て見て、おっきい雪うさぎ!」
 どーん、と手のひらに乗せて。
 縫の両手に乗るほどの大きめサイズの雪うさぎが、此方を覗いている。
 雪うさぎが融けてしまうのは少し寂しいけれど、それがきっと、春が来るということだから。
 せめて彼ら、彼女らが寂しくないようにたくさん並べてあげようと。
 縫がせっせこと作り上げた雪うさぎは、気付けばずらりと雪野原に大家族を作っていた。
 大きいのはお父さんで、中くらいのはお母さん。小さいのは子供たちだろうか。
 大小さまざまな雪うさぎが並ぶその様は、なかなかに壮観だ。
「たくさん、作れたのよ!」
 おめめはインク、葉っぱは精霊さんに分けてもらった綺麗な葉っぱで、表情豊かな雪うさぎさん。
 雪うさぎをたくさん作っていたのは、どうやら縫だけではなかったようだ。
 スノウも同じようにぽこぽこと好きなだけ雪うさぎを作って満足すると、咲に倣ってばふりと背中から勢いよく埋もれてみる。
 冷たくて、やわらかくて。少し寂しいけど、とってもやさしい綿雪に包まれて。
「手が、冷たくなっちゃったね!」
「ふふ、少し作りすぎちゃいましたね。焚き火もして、温まりましょうか」
「焚き火……! 私、焼きマシュマロやってみたい!」
 みんなでぴょんぴょんと雪野原を駆け回ったら、そのあとは寒くなった体を温めてゆっくりしよう。
 少し離れた場所にぽこぽこと並んだ仲良し大家族を見ながら、3人は小さな焚き火を作って囲みはじめる。
 そして柔らかなマシュマロを串に刺して、ちょっぴり焼いたなら――
「……! 中が、トロッとしてておいしい!」
「ふあふあ! もこもこ!」
 ふんわり、あつあつ。口に頬張ればトロッと溶けて、雪のように消えてしまう。
 そんな焼きマシュマロを手に、朗らかに笑いあって。
 それは、やがて迎える春のように温かな光景だった。
 きっとこんな風に、彼女も遊びたかったのかしらと、昇る煙を見つめて咲は考える。
 いま思えば。
 彼女は自分が消えることよりも、大切な友達が春に連れ去られるのが怖かったのかもしれない。そう思うと、なんだか悲しくなってきてしまいそう。
 頭を振った咲は目を伏せて、昇りゆく煙に願いを託す。
 もしもまた、彼女が誰かの手で生み出されるのなら。
 触れるその手はきっと、喜び弾む心で動いているのだということを覚えていてほしい、と。
「――ふふ、焼きマシュマロって、こんなにおいしかったんですね」
 取り残される寂しさを思い出に融かして、咲は焼きマシュマロに舌鼓を打ちながらスノウと縫と共に冬の名残りを味わうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘンリエッタ・モリアーティ
【POW】
冬も、……雪ももう終わるのね
――白い世界に、今の私じゃちょっと目立つかな。
……「ありのままでいてもいい」のかもしれないわ
寒いのは、苦手だし……体を動かすことにしましょうか
クリスさん(f01880)を呼べるかしら?
もしよろしければ、「わたし」の面倒をちょっとだけ、お願いしたくて
(真の姿)
この、姿だと、しゃべるのが、むずかしい、けど
クリスさん、なら、つたわりそうな、きがする
ねこ(人型でない)だから……かも!
かまくら、あったかいってきいたから、つくろ、つくりましょう!
――ねぇ、クリスさん
わたし、ね、ちゃんと、できたかな
……残酷だったかな、残酷だけど、ちゃんと、猟兵だった?



 真白く切り取られた白銀の世界で、ヘンリエッタ・モリアーティ(獣の夢・f07026)は聳え立つ樹を見上げていた。
 雪化粧に染まった枝葉こそ冬の姿だったけれど、目を凝らせば膨らむ花蕾が覗いているのが分かる。
 小さな春はもう、すぐそこに芽生えていたのだ。
「冬も、……雪ももう終わるのね」
 雪が溶ける頃には、満開に花開くその様を瞼の裏に描いて。
 ヘンリエッタはゆるやかにその姿を融かしていく。
 漆黒の髪は、雪のように白く。地に立つ人の成り立ちも、しなやかな四肢へと移り変わり――目を瞬いた頃、そこに在るのはきっとありのままの姿だった。
「……おや、」
 傍らで瞬く間に変異した姿を見て僅かに目を丸くしたクリス・ホワイト(妖精の運び手・f01880)は、けれどすぐに小さな笑みを浮かべて、彼女と視線を合わせるために膝を着く。そこにいたのは一匹の猫だ。
 どんな姿になっていても、祈りを託した猟兵には変わりない。無事に終えた仕事の疲れを労わるように、クリスは取り払ったシルクハットを胸に声を掛ける。
「やぁ、お疲れさま」
 ぴくりと耳をそば立てて、振り返る姿はまさに猫のよう。
 ヘンリエッタが口を開けば、その声を聞くようにクリスは耳を傾ける。
『かまくら、あったかいってきいたから、つくろ、つくりましょう!』
 寒いのは苦手だから、体を動かしたい。
 いつもより喋りづらそうな様子でも、ヘンリエッタが言わんとしていることはすぐに分かったようだ。
 クリスはひとつ頷くと、さっそくとかまくら作りに挑むように手袋をきゅっと嵌めなおす。
 猫が一匹、いや二匹。静かなかまくら作りは、大きな木の下で始まっていた。

 ひとであればともかく、猫が入る程度のかまくらは思うよりも大きくはない。
 作り始めれば早く、中々の出来栄えでかまくらを作り上げたヘンリエッタとクリスは、出来立てのかまくらの中で焚き火に当たっていた。
 冷たい雪で出来ているのにも関わらず、かまくらというのは不思議と中は温かい。
 焚き火の炎がくゆる穏やかな時間の流れの中で、ヘンリエッタはぽつりと呟いた。
『――ねぇ、クリスさん。わたし、ね、ちゃんと、できたかな』
 小さな、小さな猫の声。けれどかまくらの中では、その声もよく響く。
 ヘンリエッタは姿勢を変えることなく、前だけを見つめて問いかけた。
『……残酷だったかな、残酷だけど、ちゃんと、猟兵だった?』
 その問いかけは、ゆらゆらと揺れる篝火のように。
 焚き火の前で丸まっているヘンリエッタとクリスの視線が交わることはない。
 前だけを見つめる彼女の背を見下ろして、クリスは少しの間を置いて小さく囁きを落とす。
「君がそうして振り返って自身を見つめられる限り、君はちゃんと猟兵であろうとしているし、猟兵であると僕は思っているよ」
 なんて、言うのは少し陳腐すぎるだろうか。
 9つの眠りを超えて、ひとの言葉を覚えても。思いを言葉とするのは、尚もむずかしい。
 ただ、猟兵であるために悩んだ彼女に、少しだけ花を添えられればそれで良いのだけれど。
 手袋を外した柔らかな手でぽん、とひとつ、クリスはヘンリエッタをそっと労わるようにその背を小さく叩く。
 まだまだ先は長いから。君の旅路に春のように穏やかな幸があることを願って。
 そんな風に猫が二匹。並んだまま焚き火に当たって過ごした、かまくらの中の内緒話。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リウ・ノコ
みち(f13444)となつめ(f13477)といっしょ

あの子がやわらかく眠るのをみた
これはチシキなのかジョウホウなのかエラーがおきそうになる

でも今はただ、迷宮にのこるあの子たちの雪が消えるまで
いっしょにいたい

ふふ、お花のにおいでゆきがパステルの海のよう
とけた先の海でいっしょに泳ごう

*雪遊び*
もうはるになったんだよみち!ぎゅう!

おさかなさん
ピアノじょうずだね♪

さあさあ、リスさん、なつめのあたまへどうぞ。
なつめのうたのとくとうせきだよ!

ねぇ、ゆきって食べれるのかな?
わ、つめたい!

ふゆもはるも楽しいな
つぎのふゆもまた会おうね!

※アドリブ絡み可


桃乃・なつめ
みちくん(f13444)とリウくん(f13559)といっしょに

あったかくて、つめたい…不思議できれいな季節
あの子も今は この一瞬のように、穏やかに冷たくて暖かかしら…?
凍てつく氷じゃなくて。柔らかな雪解けのように
ひとつ 物語はおしまい
おやすみなさい


寒くないのよ だってもう 春なのだから
みちくんは寒がりね
もこもこのお友だち かしてあげる

おさかなさん ピアノ弾けるの?すごいのね
おうた 歌いながら ころころ雪玉転がすの
あら?野うさぎさん 目を覚ましたの?
一緒に春を歌いましょ
リウくんもみちくんも みんな一緒に

アドリブ絡み可


檀・景路
ももさん(f13477)とリウさん(f13559)と一緒、です。

冬が 終わろうとしている…そうですね。
冬は溶けて、日が長くなって、風が少しずつ暖かくなって。
雪が溶けたら。花が咲く。夏が来て、秋が来て、そしたら___

■雪遊び
雪遊び、ですね。暖かくなってきたといっても まだまだ 寒いですから。ふたりとも暖かい格好をしてくださいね。
マフラーに、手袋に、帽子…ふたりは 寒くないのですか?
…くしゅんっ
皆で お魚とピアノの雪だるまを作りましょう。雪玉を転がして、大きくして。簡単に形ができたら《0-K》で細部を作り込んでいきます。
ピアノを弾いてるお魚さん。ちゃんとそう見えるでしょうか……?

アドリブ絡みOK



 あの子がやわらかく眠るのをみた。
 これはチシキなのか、ジョウホウなのか。
 エラーがおきそうになる、その光景が目に焼きついていた。
 リウ・ノコ(生まれたばかりのバーチャルキャラクター・f13559)はしばしの間、そんな胸の内に目を伏せていたけれど。やがて気を取り直すように、次に目を開いたときには麗らかな笑みを浮かべた。
 いまはただ、迷宮に残ったあの子たちの雪が消えるまで、いっしょにいられるように。
「もうはるになったんだよみち! さあ、あそぼう!」
 そして檀・景路(翼など似合わない・f13444)に笑いかけて、リウは先頭を歩いていく。
 花も開き、栗鼠も目を覚ます。そんな春が、来たのだ。
 だから雪が溶けてしまう前にたくさん遊ばなくては、と逸る気持ちに合わせて段々とその足取りも軽くなっていくようで。
 いつの間にやら駆けていく、その背を追いながら。雪野原に煌く陽だまりに、景路は少しだけ目を細めた。
「冬が終わろうとしている……。いや、春に、なったんですね」
 冬は溶けて、日は長くなって、風も少しずつ暖かくなっていく。
 雪が溶けたら、花が咲いて。夏が来て、秋が来て、そしたら――。
「……ふたりは、寒くないのですか?」
 くしゅん、と小さく鼻を鳴らしたのは他でもない、景路だった。
 暖かくなってきたとはいっても、雪が残る野原はまだまだ肌寒い。
 雪遊びをしようと駆けていくリウと、隣を歩く桃乃・なつめ(MOMO・f13477)は寒さに堪えた様子もなく平気そうだったこともあってか、景路は思わずと首を傾げる。
 腕を擦るように撫でる彼の横で、なつめはくすりと笑みを漏らした。
「みちくんは寒がりね。もこもこのお友だち、かしてあげる」
 あったかくて、つめたい。そんな不思議できれいな季節。
 あの子もいまは、この一瞬のように穏やかに冷たくて、温かかだったのかもしれない。
 お友だちを貸し出しながら、真新しい雪に覆われた野原を振り返って、なつめは思いを馳せる。
 ――けれど。そこにはもう、何もないから。
 ひとつの物語はもう、あそこで終わったのだと。終わった物語を見送って、なつめはそっと前を見た。
 そこには楽しげなリウと、もこもこを抱えた景路がいる。ひとつの物語を見送っても、なつめの物語はこれからも続いていく。
「なつめ、こっちこっち!」
「……ええ! いま、行くわ!」
 あそぼう、と促すリウに力強く頷いて。
 そうして、3人は穏やかな雪野原で雪だるまを作りはじめたのだった。

 ころころ。それから、ごろごろと。
 雪だるまを転がして、転がして、大きくなって形が出来てきたなら。
 そこからは、景路の腕の見せどころである。
 0-K(ケルビン)を慣れた仕草で使いこなし、細部まで成形されていく雪だるまが象るのは――お魚と、ピアノの雪像だ。
 出来上がるにつれてきらきらと黄金の瞳を輝かせたリウはその出来栄えに、ほうと感嘆の息を吐く。
 真白い雪で出来ていることを除けば、まるで本物のピアノとお魚がそこに在るようだ。
「おさかなさん、ピアノじょうずだね♪」
「おさかなさん、ピアノが弾けるの? すごいのね!」
 ピアノを弾いているお魚さんにちゃんと見えるだろうか、と胸に過ぎる景路の不安も他所に、2人はその素敵な雪像に手を合わせて喜んでいた。
 うまく、出来たのだろう。2人の様子にようやっと安心を得られた景路もまた、そっと胸を撫で下ろす。
 けれど、雪遊びはまだまだ終わらないらしい。
 休む間もなく次は何を作ろう、と雪を手に取るリウに、なつめもまた雪を手に取って微笑んだ。
「もっと作りましょう? 今度は、おうたを歌いながら」
 ぴょこりと顔を出した栗鼠も、野うさぎも。花開く春をいっしょに歌おうと。
 そうしてやさしい歌を重ねながら、3人はそのひとときを楽しんでいく。
 冬も春も。どっちだって楽しいから。また、次の冬も出会えるように願いを込めて。
 春のように伸びやかなその歌は、雪野原を越えて、空に届くほど遠くまで響き渡っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
※絡みアドリブ歓迎
クリスさんと
のんびりお話し出来たら嬉しく

寒さは平気ですか?
良ければどうぞ

懐から掌大の巾着を取り出して手渡す
焼いた石を包んだもので
じんわりと暖かい

遊びに興じる皆の朗らかな姿をふくふく眺め乍ら
雪原を散策

未踏の場所へ足跡をつけていくのも
鳥や小動物の足形を見つけて
何処へ向かうものだろうかと
傍らを歩いてみるのも、面白い

振り向けば
靴跡の道程に陽光が煌いている

清冽に澄んだ空気も
早朝の未だ暗い時間の秘密めいた楽しさも
冬の醍醐味で
私の最も愛するひと時です

やがて地を潤し
海に水を湛え
命を育んでくれる雪
廻る季節に感謝して
融けいく白雪へと
花咲き零れるような笑みを贈る

冬よ
雪よ
――数多の恵みを、ありがとう



 しんしんと降り積もる綿雪に覆われて、零れた吐息さえ消えてしまうような。
 そんな静けさを含んだ雪野原にも、いまは楽しげな声がそこかしこに響いていた。
 ぽこぽこと並べられた雪うさぎは、誰かが作ったものだろうか。
 ゆったりとした足取りで雪野原を歩く都槻・綾(夜宵の森・f01786)は白く篭った吐息のなかで、くすりと小さく微笑んだ。
「寒さは平気ですか?」
 良ければどうぞ、と懐から取り出されたのは拳大の巾着だ。
 どうやら、なかに焼いた石が包まれているらしい。
 手渡された巾着を受け取ったクリス・ホワイト(妖精の運び手・f01880)は、その温かさに思わずと猫目を丸くする。
「……驚いた。これはいいね、とても暖かい」
 暖炉のぬくもりを思い出すようで、どこか懐かしげに頬を緩ませて。
 ありがたく受け取った巾着を手にしたクリスは、隣を歩く綾を見上げて問いかける。
「君は良いのかい? 雪遊びも楽しそうだよ」
「ええ、いまは歩きたい気分ですから」
 雪に親しむ朗らかな笑い声を遠くに、綾は早春に芽吹いた若葉のような双眸を細めて周囲を見渡す。
 未踏の場所へ足跡をつけていくのも、鳥や小動物の足跡と共に傍らを歩いてみるのも、面白い。
 見つけた小さな足跡を辿るように足を進めたところで、綾は肩越しに振り返った。
 きらきら、と雪に瞬くのは春の陽光だろう。
 靴跡の道程に煌いた光に冬の名残りと春の芽吹きを感じるようで、それさえも愛おしい。
「清冽に澄んだ空気も、早朝の未だ暗い時間の秘密めいた楽しさも。冬の醍醐味で――私の最も愛するひと時です」
 やがて地を潤し、海に水を湛え、命を育んでくれる雪。
 廻る季節に感謝するように、綾は融けいく白雪へと花のような笑みを贈る。
 それが、彼らしい季節の楽しみ方なのだろう。
 笑みを贈る綾の傍らで、クリスもまたふふりと笑みを湛えて。
 そうして2人は、終わる冬と融けいく雪に感謝を添えて、過ぎ去る季節を見送るようにまたゆっくりと歩き出す。
 この散策が終わる頃には、迷宮は本来の姿を取り戻すだろうけれど。
 過ぎ去る季節に怯えるものは、もういない。
 穏やかな春のなかで眠る彼ら、彼女らが水と消えても。水となって野原に流れて、芽吹いた花を咲かすように。
 取り戻したのは春だけでなく、平穏であり、眠ったものたちの安息でもあったのだ。
「……また来年、ですね」
 いまは、さようならかもしれない。
 けれどきっとまたいつか、出会えるから。
 振り返る道程。雪を踏みしめた靴跡に覗いた小さな芽を見つけて、そうして綾たちはようやくの春を迎えるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月13日


挿絵イラスト