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闇の救済者戦争㉑〜腐敗を祓いし灼熱なりて

#ダークセイヴァー #ダークセイヴァー上層 #闇の救済者戦争 #五卿六眼『腐敗の王』


 熱き炎の中。大きな影が一つ腐り落ちていた。皮膚がずるりと崩れ溶け、絡み付く肉を支える鎧のように、剥き出しの骨はいびつな姿を晒し、その体躯の半身は赤く赤く燃えていた。
 それは生と死を操る絶対者。生と死の循環を留め、腐らせる王の名を顕す形相。

 絶対者──腐敗の王は異形の腕を大きく振るう。歪に突き出た骨は鎌となり刃となり、風圧が大地を撫ぜれば戦場に赤き炎が吹き上げる。
 燃え盛る戦場に満ちるのは、王の手繰りし生の循環。炎は数多の魂を薪に燃やし、腐敗の王の魂すらを燃やし、その勢いを増していく。

「俺は、生と死の循環を操るもの、腐敗の王……!」
 王が吼える。半身を猛々しく燃え上がらせ、戦場の炎もまた呼応するかのようにその苛烈さを増してゆく。
 生の箍が、循環が外れたこの舞台。己が魂を奮い立たせ、死を厭わぬ者だけが、この燃え盛る戦場に立てる。炎を燃やし王を挫く刃となれる。

「来るがいい、猟兵達よ……!」
 絶対者に届きし刃は、生を超克した熱き魂のみ。己が魂を奮い立たせ、劫火にあらがう魂のみ。炎を越える炎となりし超越者の魂を、腐敗の王はただ求める。

「俺に見せてくれ。今度の猟兵達が、果たしてどこまで戦えるのかを……!」

 ●

「ヤアヤア、猟兵の皆々サマ、ご機嫌よう!いよいよ戦争もフィナーレが近づいてきたね!けれど終幕のその前に、ビッグなスペシャルゲストのご登場だ!」
 いつになく軽快に言葉を紡ぎながら、足早に猟兵たちの前に姿を見せるのはバロン・ドロッセル。

「五卿六眼の一柱、その名は“腐敗の王”!このダークセイヴァーで生命の腐敗を蔓延させている張本人だよ!」
 踵を軽快に鳴らして見せると、バロンは仰々しく両手を広げる。

「腐敗の王、すなわち生命と死の循環を操る絶対者。生の循環を加速させて、無尽蔵な強さでどこまでもパワーアップしてくるんだって!なァんてチートだ!」
 バロンは大げさに手ぶりを加えると両手で顔を覆って見せる。しくしくと悲嘆にくれる嘆きは嘘くさいどころか、見事に抑揚のない棒読みだ。猟兵たちがあきれ返るその前に、バロンはぱかっと両手の指を開いて顔を見せると、瞳を細めて笑顔を作る。

「しかしチートに打つ手がないとそう嘆く、猟兵の皆々サマへご朗報!なんと熱血漢の腐敗の王は、勇ましく正々堂々と戦うことをお望みだ」
 戦場には加速した生の循環が満ちている。パワーアップできるのは腐敗の王のみならず、猟兵もまた戦場に満ちる力を利用し、己が力を高めることができる。なかなかフェアな戦いに思えてきたんじゃない?とバロンは茶化す。

「とはいえ敵は強大だし、どこまでも力を高められるアドバンテージはどちらにも無尽蔵だからねえ…心が折れてしまった者が負けてしまう、なんて。ハハ、暑苦しいことこの上ない究極の根性論だよねえ!」
 バロンは乾いた笑いと共に肩をすくめるが、バロンの予知も、そしてもちろん腐敗の王も至って大真面目だ。生の循環が加速した戦場では、強大な敵に心挫けぬ者、生死を厭わぬ者──つまり、自らの魂を最も熱く奮い立たせ、最も燃え上がらせた者だけが、腐敗の王を超越し最強となれる。

「腐敗の王の欠落は未だ健在。どうやら今回じゃ滅ぼせないようだけど、それでも腐敗の王を倒せば、このダークセイヴァーに満ちる腐った転生を取り除けるかもよ?」
 この世界に差し込む一筋の希望を口にするバロン。その視界に映るのは確かな闘志に燃える猟兵の姿。暑苦しい事この上ない戦場は、熱き魂を持つ猟兵達にこそ相応しいのだろう。
 パチンとひとつ指を鳴らせば、バロンの手にはグリモアが現れる。続けて背後に現れる大きな扉を差し出すと、晴れやかな笑顔を見せた。

「サア、サア!腐った王サマをぶっ飛ばして、この世界に正しい循環を導こうじゃないか!」


後ノ塵
 後ノ塵です。はじめまして、あるいはこんにちは。
 戦争シナリオになります。一章完結となるため、できるだけサクサク進めていきます。オープニング公開時からプレイングを受け付け、順次執筆させていただきます。
 己の魂を熱く燃やし、「生の循環」で超パワーアップして頂くと、プレイングボーナスとなります。
 皆様のプレイングお待ちしております。奮ってご参加のほど、どうぞよろしくお願いします。
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第1章 ボス戦 『五卿六眼『腐敗の王』』

POW   :    フレイムビースト
自身の【全身】を【熱き魂の炎】化して攻撃し、ダメージと【装備焼却】の状態異常を与える。
SPD   :    オブリビオンソード
【腐敗による「消滅と忘却の宿命」】を込めた武器で対象を貫く。対象が何らかの強化を得ていた場合、追加で【ユーベルコード知識忘却】の状態異常を与える。
WIZ   :    死の循環
【この世界を司る「世界法則」そのもの】から、戦場全体に「敵味方を識別する【死の循環】」を放ち、ダメージと【肉体腐敗】の状態異常を与える。

イラスト:佐渡芽せつこ

👑11
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メフィス・フェイスレス
【アドリブ歓迎】

腐っても未練がましく動き回る…お揃いね
いいわよ、同類のよしみで付き合ってあげる

躰が焔に包まれて、真の姿を曝け出す
紅い髪に修道服、なにも知らなかった忌々しい過去の己の姿に

『宵闇』の骨翼で飛び立ち、躰から溢れた『飢渇』を投げつけ『微塵』に砕きながら突貫
腕の『骨身』の刃で躰が焼けるのも厭わず斬り結ぶ

厳密には生前の姿ではない。ガワだけ再現した刹那の輝き
すぐに元の姿に戻ってしまう、そして何も変わらない
今の自分が悍ましい屍である事はなにも変わらない、だけど
今だその魂は燃えている――
この世界の陽光をこの眼に焼き付けるまで
いつか安らかな死の眠りに身を委ねる為には

とりあえずアンタは邪魔なのよ!



 赤く染まり脈動する血管のその大地は、鮮血より赤く燃えている。この燃え盛る戦場で絶対者がひとり、抗う猟兵を待っていた。

 真っ先に戦場へ飛び込んだメフィス・フェイスレスは颯爽と「宵闇」の翼を広げる。躰の肉を破り裂き、生えた骨身の翼はひとつ大きく羽ばたくと高く飛び立つ。

「腐っても未練がましく動き回る…お揃いね」
 見上げる腐敗の王を見下ろして、メフィスは嗤う。相手が王とてメフィスは謁見など求めない。なにせメフィスは冷淡な屍なのだから。ただ、その王が己と同族であることに敬意を抱いて、その望み通り全力で相手をするのみだった。

 上空に居ても尚、立ち上る炎に焼かれたメフィスの飢餓衝動は、生の循環に加速されてより強く荒れ狂っていた。メフィスは手始めに躰から溢れる「飢餓」を投げつける。無尽蔵に溢れる飢餓衝動は「微塵」に砕き、腐敗の王に直撃すると周囲には大きな爆発が響く。爆風は王の炎を切り裂き、骨身の破片は王の骨を砕き、血潮は王の腐れを侵す。…されど腐敗の王へ確かに届いた筈のメフィスの飢餓は、かの王の視界を歪めるにも足りえてはいなかった。

 変わらず見上げる腐敗の王に、メフィスはいっそ楽し気な笑みを浮かべる。腕から突き出た骨身の槍を前に構え、骨身の翼を折り墜落する。己の身すら槍に変えたメフィスのその一撃は、骨の剣に受け止められる。メフィスの骨と王の骨。火花が散るほどの衝突に、腐敗の王はようやく感嘆の声をあげた。

「良い目だ。俺の前に立つに、相応しき猟兵よ……!」
「あら、ありがとう。別に嬉しくはないわね」
 猛る王にメフィスが返す言葉は余りにつれなく、一瞬呆気に取られた腐敗の王は高らかに笑い声をあげ槍を打ち払う。続く追撃をメフィスは宙返りで交わし、一時距離を取るも跳ね返るように大地を強く蹴り、メフィスは腐敗の王の懐へと舞い戻る。
 地上に降りたメフィスの躰を、戦場の炎は弛まず焼き焦がす。けれどメフィスは構わない。躰が焼けるのも厭わず次々に王の骨の刃と斬り結ぶ。
 幾度となく骨を交え、拮抗する力はされど王に届かない。メフィスが微かに焦れたその時、腐敗の王が大きく刃を打ち払う。

「死の循環の中でどこまで戦えるのか。見せてもらおう……!」
 絶対者、腐敗の王。この世界の理を司る者が、猛々しく咆哮を上げる。燃え盛り勢いを増す炎はそのままに、血の血管で埋め尽くされた大地が強い腐臭を放つ。──否。腐敗しているのはメフィスの躰だ。

「いいわよ、同類のよしみで付き合ってあげる」
 腐り溶け始めた躰に構わず、メフィスはぞっとするような笑顔で微笑むと、にわかにその躰が焔に包まれる。
 メフィスが曝け出すのは真の姿。焔のように紅い髪。闇のように黑い修道服。それは──なにも知らなかった、忌々しい過去の姿。
 メフィスの真の姿は生前の姿であれど、厳密には生前の姿とは言い難いものだった。…何故なら、逆さの盆に水は還らない。過ぎ去った過去は取り戻せない。

 それは、ガワだけを再現した刹那の輝き。
 だからこそすぐに元の姿に戻ってしまう。血色のよいメフィスの肌の色は、死に腐り、炎に焼かれ、崩れ落ちるとひび割れ崩れた中に屍の色を晒す。──何も変わらない。今の自分が悍ましい屍である事はなにも変わらない。だが、未だメフィスのその魂は燃えている。正者と死者の狭間にこそメフィスはいた。

 ──この世界の陽光をこの眼に焼き付けるまで。そしていつか、安らかな死の眠りに身を委ねる為に。

「とりあえずアンタは邪魔なのよ!」
 剥き出しの感情にメフィスの魂が強く燃え上がり、骨身の作りし磔台が腐敗の王に襲い掛かる。
 いびつな骨はその鋭利な切っ先を腐敗の肉へ突き貫き、幾つも重なり拘束するも、すぐに砕け散る。だが、腐敗の王の眼前には既にユーベルコードの巨大な十字架が迫っていた。

「墜ちろ!」
 それは十字架であり、槍である。そして燃え盛る焔であり、未だ燃え尽きぬメフィスの魂であり──腐敗の王を裁く、不可避の磔刑。

「グ、オオオ……!」
 腐敗の王はメフィスの焔の槍を両手で受け止める。腐れた異形の腕は鎧骨を軋ませ炎を熱く滾らせるもその勢いは殺せず、腐敗の王の足が血管の大地を抉り埋まりゆく。
 大地の鮮血が吹き上がるも、滾る炎に瞬く間に炎に焼かれ蒸発し、周囲には赤い霧が立ち込める。赤く曇る視界の中で、炎の槍が深く沈み、赤い飛沫が燃え上がるのをメフィスはみた。だが──

「見事だ、猟兵……!」
 炎に焼かれ晴れ行く視界の中で、腐敗の王はその胸を槍に貫かれながらも変わらず立っていた。

「化け物ね」
 メフィスは乾いた笑いを吐き捨てる。十字架は確かに王を貫いた。されど生の加速したこの戦場では、魂の炎が尽きぬ限り生命は尽きない。腐敗の王の傷は腐肉が蠢くように修復する。ただ、炎に焼かれ焦げた十字架だけが大地に崩れ落ちた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
俺もこれまで色々な奴と戦ってきた自負があるが、世界は広いと言うべきか
生と死の循環を操り、無尽蔵に強くなる……か。流石にそんな奴には今まで出会った事もないし、紛れもない強敵だ
だが、僅かでも勝ち目があるならそれでいい

神刀の封印を解除。魂を燃え上がらせるにはそれだけの覚悟を見せなければならないだろう
故に、黎の型【纏耀】を発動。強い神気を纏って真の姿に変身
文字通りに生命を燃やす事で戦闘力を爆発的に強化して、真正面から斬り込んでいく

腐敗の王もどうやら真っ向勝負をお望みのようだし、俺もその方がやりやすくて良い
今回防御は最小限で、できるだけ攻撃に特化
自分の魂を燃え上がらせて、敵の炎を凌駕しよう



 生と死の循環を操る絶対者、腐敗の王。
 まるで猟兵の歩みへ立ち塞がるかのように、或いは謁見者を待つかのように。腐敗の王は燃え盛る戦場を真っ直ぐ見据えていた。

 夜刀神・鏡介は戦場に張り詰めた緊張で強張る手を解く。燃え盛る戦場に感じる温度はもはや暑さを通り越し、汗など滲む前に蒸発していた。幾度となく戦いに身を沈めた自負が鏡介にはある。されど目の前に在るのは、改めて世界の広さを思い知らされる程の確かな強敵だ。
 だが僅かでも勝ち目があるのであれば、それでいい。渇いた手を強く握り込むと、鏡介は炎へ踏み込んだ。

 戦場に燃え盛る炎の正体は、加速した生の循環。皮膚を焼き焦がし、肉と骨を高温に溶かし、さらに内側の魂さえ焼き尽くそうとする生命の炎。抗う手段は己の魂を奮い立たせ、生を超越する事のみ。
 灼熱を厭わず進み寄り、立ち塞がる絶対者の前で足を止める鏡介に、腐敗の王は片目を細める。

「名を聞こう、猟兵……!」
「夜刀神・鏡介」
 寸分の迷いもなく応えれば、腐敗の王は高らかに笑い声を上げた。

「この俺に何を見せるか、鏡介……!」
 それはどこか楽し気すら聞こえる王の問い。鏡介は真っ直ぐ神刀を構え、熱気に喉が焼けるのも構わず大きく息を吸い込む。

「覚悟を見せよう。この世界を救う、覚悟を!」
 揺るぎのない言霊で魂を奮い立たせ、鏡介は神刀の封印を解除する。魂を燃やし、生命を燃やす。神刀から溢れる神気を纏い、辿り着くのは神器一体の境地。幽冥を越えて暁へと至り──真の姿に変貌する。黎明の輝きを宿した鏡介の瞳が腐敗の王を見据え、腐敗の王もまた金に燃える炎の瞳で鏡介を見据える。

 にわかに、二人が武器を斬り結ぶ。鉄と骨は激しい火花を散らし、常軌を逸した剣戟に炎が渦を巻く。
 黎の型【纏耀】は文字通り生命を燃やす事で戦闘力を爆発的に増大させる技。加速した生の循環の中では更にその爆発力が加速する。
 生の循環により力を増し行く腐敗の王に追い縋るように、鏡介もまた加速する。一撃の重さは腐敗の王に僅かに劣るも、手数は鏡介が勝っている。僅かな勝ち目は徐々に確かな勝機の形を取り始めていた。ならば、それを掴み取る。強い意志を薪にして、鏡介は更に魂を強く燃やす。

 だが唐突に、腐敗の王の炎がほんの僅かに緩む。それが追撃の好機ではないと、幾度となく戦いを潜り抜けてきた鏡介は知っていた。反射的に距離を取れば、腐敗の王は不敵な笑みを浮かべて鏡介を見据え、炎の腕で顔を覆うとくぐもった笑い声をあげた。

「見事だ、鏡介。ならば俺もまた、この熱き魂を燃やそう……!」
 王が下賜するかのように、賞賛を口にするが否や、腐敗の王の炎が膨らみ爆発する。爆風の中、そこに在るのは燃え盛る灼熱の獣となった腐敗の王。姿勢を低く構えると、腐敗の王は鏡介に襲い掛かる。
 もはや全身が炎の塊となった腐敗の王の、怒涛の攻撃が目前に迫る、その刹那。鏡介の中で張り詰めた思考が冷えていく。回避か、或いは防御か。──否。

 鏡介は大地を踏みしめ、真正面から灼熱の魂を迎え撃つ。炎の獣となった腐敗の王の炎圧は凄まじく、ともすれば吹き飛ばされそうな勢いをもっていた。だが鏡介は瞬きひとつせず正面を見据え、ただ神刀を握る腕に力を込める。覚悟を抱き魂を燃やす。鏡介が先に見据えるのは、この世界に差し込む希望の黎明ただひとつ。

 二つの生命の炎は加速し、魂がより強く燃え上がる。拮抗する炎はいよいよひとつの塊となり、大きな火柱を吹き上げ──そして、唐突に別たれた。
 肩から胴体までを斬り別たれながら、されど、腐敗の王の身体は未だ沈んではいなかった。

「まだ、足りぬ……!」
 腐敗の王が天を見据え、大きく吼える。灼熱の炎が燃え盛り渦を巻けば、瞬く間に腐敗の王の肉体を修復する。

「…なるほど、一筋縄ではいかないらしいな」
 魂の炎が尽きぬ限り、生命の尽きぬこの戦場。生の循環の加速を強く実感しながら、鏡介は再び神刀を真正面に構えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティコ・ラクール
弟のエグゼ(f10628)と

わたしには勇気が足りない
腐敗の王がダークセイヴァーにしていることを知って止めたいと思ったけれど怖くて足が動かない
そんなわたしに手を差し伸べてくれたのはエグゼでした
ずっと探していた、わたしの弟

オラトリオになっている彼の身に何があったのか案じてしまうのですが
「今は奴を止めるのが先だ、二人でなら怖いもんはねー!」と
言ってくれた言葉を信じてわたしも戦場に立ちます

わたし達は二人で生きてきた
彼を一人にしてしまった罪はこれから償いますが
そのためにもわたしは戦います
魔力でタロットを操って王に攻撃を
時には無茶をするエグゼを癒しながら

大切な弟のためにわたしは戦う!
もう恐怖は感じません


エグゼ・シナバーローズ
姉さん(ティコ:f22279)と

グリモアベースに来たら、おろおろしている見覚えのある姿を見つけた
俺が子供のころ神隠しで姿を消した姉さんだ
見覚えのない尻尾とか生えてるけど俺が姉さんを見間違えるわけがない

話を聞いてみると腐敗の王に挑みたいけど怖いという
なんだよ、俺と一緒なら大丈夫だって!
そう笑いかけて手を取った

王には全力でエレメンタル・ファンタジアをぶち込む
なんとなく炎を思わせる存在なので、氷の嵐を作りだす
負傷は気にしない
姉さんに攻撃が向かいそうなら庇いたい(技能ねーけど)
戦場全体が対象?そんなの知るか、気合だ気合!
体が朽ちようとも俺は止まらねーぜ
お前をぶっ飛ばしたいのは姉さんだけじゃねーからな!



 ──勇気が欲しい。奮起する猟兵たちを遠巻きにしながら、ティコ・ラクールは胸の上で拳を握った。

 腐敗の王の存在を告知したグリモアベースで、ティコは次々に戦場へ向かう猟兵たちの背を見送っていた。
 ダークセイヴァーに蔓延する腐敗の転生。世界を歪める腐敗の王の所業を知って尚…否、知ったからこそ、ティコの足は冷え固まっていた。故郷を害する敵は、生死をその手で操り統べる腐敗の王。燃え盛る第二層を戦場に、魂を燃やし死を厭わず戦う戦士を求め待ち構えているという。
 過酷な戦場に強大な敵。ティコの足はただ、恐怖に震えて凍り付く。故郷を想う心も正義に猛る心も、ティコの胸にも確かにあるというのに、目の前に迫った巨大な恐怖に塗り潰されていた。こんなにも勇気が足りないのだと、ティコは俯き唇を噛み締める。

「姉さん!?」
 ティコの足がそろりと退くその寸前。聞きなれない声と耳慣れた言葉にティコは振り向く。腕を掴む青年の姿を見上げ、ティコはあっと驚く。

「エグゼ…!」
 それは、ティコがずっと探していた姿。見慣れぬオラトリオの姿に変わり果て、別たれた年月が青年へと姿を変えていた、ティコの弟。

「どうしてオラトリオに…!?」
 変わり果てた姿は年月以上の理由が在ろう。まじまじと見つめ思わず口にすれば、弟…エグゼ・シナバーローズは渋面を作った。まるでこっちのセリフだとでも言うように、胡乱な眼差しでドラゴニアンの青い尻尾と耳を見つめる。神隠しで姿を消したのはティコの方だったと思い出して、ティコは慌てて耳と尾を押さえた。

「どうしてグリモアベースに…」
「それこそ俺のセリフだって!姉さんはなんでここに居るんだ?」
「わ、わたしは…」
 エグゼに問い返されて、ティコは思わず言い淀む。ティコもエグゼも、このグリモアベースにいる以上猟兵であり、目的だって聞かれなくても決まっていた。ティコは思い切って息を吸い込む。

「腐敗の王に、挑みたくて…でも、怖くて…」
「なんだよ、大丈夫だって!」
 小さく尻すぼみになるティコの言葉に、エグゼは快活な声で答える。太陽のような笑顔と晴れやかな声に、ティコの心がふいにひとつ軽くなった。その笑顔は子供の頃にみた、記憶の中のエグゼの笑顔と確かに重なる表情。

「俺と一緒だったら、怖いもんはねー!」
 足を竦ませているティコに向かってエグゼは笑いかけると、ティコの手を取る。それは二人で生きてきた子供の頃の記憶と重なるぬくもり。気が付けば、ティコの足に震えはなく。
 走り出すエグゼの背中に引かれ、後ろに続く足は羽のように軽かった。

 やっと再会できた姉だ、エグゼはティコに聞きたいことはたくさんあるし、ティコだってエグゼに聞きたいことがたくさんあるだろう。埋めたい時間も、分かち合わなければならない想いも山程ある。
 だがそれは、全てが終わった後だった。エグゼはティコと顔を見合わせ頷くと、炎の戦場へと足を踏み入れる。

「よく来た、猟兵達よ……!」
 腐敗の王は迎え入れる言葉を響かせ、二人の前に立ち塞がる。
 灼熱の熱気は血管の大地を焼き、視界を焦がす。生の循環が加速した炎の熱に飲まれそうになりながらも、エグゼは大地を踏みしめユーベルコードを発動する。エレメンタル・ファンタジアに掛け合わせる属性は氷と嵐。

「全力でぶち込むぜー!」
 戦場の炎を薙ぎ払うほどの気合で、エグゼは氷の嵐を戦場に呼び込む。燃え盛るこの戦場では、魂を強く燃やせば腐敗の王のみならず猟兵の力も増大する。荒れ狂う嵐はもはやエグゼの制御を失い掛けていたが、ようやく再会できたティコの目の前で、かっこ悪い姿は見せられない。

「うおおおーッ!」
 魂を燃やす──つまり、気合だ!エグゼはただシンプルに気合を振り絞る。不安定な氷の嵐は巨大な竜巻となって、なんとか腐敗の王へ向かっていく。
 エグゼの勇姿を前に、ティコも負けてはいられない。花のタロットカードで腐敗の王へ攻撃する。可憐な花が舞い散るように、タロットが広げる力も氷の属性。腐敗の王の動きを留めるように放ち、エグゼの竜巻をサポートする。

 轟音を立てて、竜巻が腐敗の王へ衝突する。王の纏う炎を巻き込み、その肉体を氷の飛礫が引き裂き砕く。
 されど腐敗の王が異形の腕を振るうと、腐肉の腕は風を打ち破り骨の刃は氷を砕き、竜巻の勢いを押し返す。再び轟音が響き熱波の暴風が戦場に吹き荒ぶ。それは炎が氷の竜巻を破った、爆風の衝動。

「お前達の魂は見たり。だが、まだ浅い……!」
 氷が砕け炎の輝きを反射し舞い落ちる中で、腐敗の王が猛き咆哮をあげる。この世界を司る世界法則そのものから放たれるのは、死の循環。
 エグゼは咄嗟にティコを突き飛ばす。呼び込んだ氷の嵐で、ティコを包み隠す壁を作ったのは無意識のことだった。

「エグゼ!」
 ティコの目の前でエグゼの肉体が腐敗に崩れ朽ちはじめる。エグゼの足が傾き…けれどエグゼは頼りのない肉体を意思で支え、強く大地を踏みしめた。

「“俺たち”は絶対に負けねー!」
 腐敗に朽ちる身体に絶望を覚えるのはまだ早い。気合を叫び、エグゼが握り締めるのは諦めない心。嵐は再び渦を巻く。腐敗の王を挫く、そのために負ける気などさらさらない。
 ティコは込み上がる言葉を飲み込んで、ふらつくエグゼの肩を支える。そして花のタロットカードを操り、癒しのタロットでエグゼの腐敗を押し留める。エグゼの背中を、その勇気を前に、ティコが恐怖を感じることはもうない。

「大切な弟のためにわたしは戦う!」
「おう!」
 揺るぎない意志を瞳に宿し、腐敗の王を見据えるティコに、エグゼはボロボロの身体で少しだけ気恥ずかしそうに笑った。

「お前をぶっ飛ばしたいのは姉さんだけじゃねーからな!」
 改めて腐敗の王へ向き直ると、エグゼは拳を突き上げる。魂を燃やし、ドラゴニアンとオラトリオの姉弟は腐敗の王に向かっていく。二人の力が重なり合った氷の嵐は、再び巨大な竜巻となり、腐敗の王に勢いよく迫っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年05月26日


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト