闇の救済者戦争⑰〜葬去の哄笑
あは。
あは。
あはははは!
よくわからないけど、“欠落”はだめなんでしょう?秘密なんでしょう?おかしいよね、つまんないないしょなんて。でもみんな、それを必死に探しているんだって!楽しそうだよね!ね!
ねぇ見てよアメガムノンくん――……アメガムノンくん?あめがむのん、くん……って、誰だっけ?
なんだっけ。
………………――まぁ、いっか!
●そのうたの名を
「禁獣 デスギガス」
御簾森・藍夜(雨の濫觴・f35359)の口からその名を聞いたことのある者は幾人かいるだろう。そして共にいつか見つかる弱点を、と拳交わした者も。
「見つかったぞ、奴の欠落。そして対処法が!」
――と、藍夜が口にしたからと歓喜に沸くこと等無い。
広げられたのは地図……ではなく、デスギガスの全容だ。巨体ゆえそれこそ地図の如き様相なのはもう知れた事。
「欠落が破壊されたのは知っているな?そのお陰でこの作戦は展開されている。問題はこいつを斃したとしても“歓喜の門”の“残滓”は残るという点だ。しぶといもんだ」
まったく、と頭を掻く藍夜だがその瞳が好奇心に満ちているように見えるのは何故だろうか。
「まぁ、子の事象については後々解明するとしよう。で、デスギガスだが……経験した者もいるだろうが、奴は非常に弾力性が強い。そして問題は、」
デスギガスの腹を指先でトトンとリズミカルに叩きながら、溜息を一つ。
「
腹が奴の弱点だ。だが更なる問題は奴が
俺達側の計画に気付いている、という点だ。当然、奴も黙ってやられる程の間抜けではない」
たぶん恐らく(デスギガスの腹に描かれているので)門らしきものが開く(と思われる)絵――に、黒く塗り潰された“
何か”が溢れる様が描き足される。
知っている者は少ないが、お世辞にも絵が上手いとは言えな……滅法苦手で非常に下手。
物凄く真剣だった空気が途端に緩みそうになっているが、画伯は真剣だ。
「奴は無現災群の放出を一旦止め、代わりに“近付く者を自身の胎内へ引きずり込む影の大波”を体表全体に起こしている。……触れれば否応なく引きずり込まれる」
万物境無く、そう無表情に言い放つ藍夜。の、下手な絵で緊迫感が薄れそうになったがとても真剣な顔と声と言葉のお陰でヒリついた空気が戻ってきた。
「何としてもこれを越え、歓喜の門をぶっ飛ばせ。加減はいらん、全力で良い」
求められるのはデスギガスを逃がさない速度。
「何せ、奴は同種……同族?まぁいい、もう一つの禁獣 ケルベロス・フェノメノンが撃破されれば逃げるというからな」
幾度も辛酸をなめさせられた相手だ、今度こそを願い成せるのは“今”。
「無茶はして構わん。無駄な無理はするな。必ず帰ってこい、まだ終わらんからな!」
抜かるなよ、そう言い猟兵を送り出す藍夜の満月のグリモアが青く輝いた。
皆川皐月
お世話になっております、皆川皐月(みながわ・さつき)です。
記憶在りしことが幸福なのか、忘却の特権こそが歓喜すべきことなのか。
●注意:こちら一章のみの『闇の救済者戦争』の戦争シナリオです。
●プレイングボーナス!:影の大波をかわし、歓喜の門を攻撃する
●第一章:『禁獣『歓喜のデスギガス』』
あは。
あはははははははは!ね、アメバムノン……くん?
誰だっけ。誰だっけ。きみはいったい、ぼくのなんだっけ。
たいせつってなんだっけ。ともだちってだれだっけ。
いや…………どもだちって、なに?
わからない。わからない。でも、
でも、皆いっぱい走ってて楽しそう。けどお腹がどきどきむずむずするから、おしゃれをしちゃおうかなぁ。
●戦争シナリオだけれど数は気にしません。
オーバーロードだとエフェクトやアクロバティックな動きがより鮮明になります。
閉じよ閉じよ門よ閉じよ。
●その他
複数ご参加の場合はお相手の【呼称+ID】または【グループ名】がオススメです。
【★今回のみ、団体は2名組まで★】の受付です!
IDご記載+同日ご参加で確認がしやすいので、フルネーム記載より【呼称+ID】の方が分かりやすく助かります。
マスターページに文字数を省略できるマークについての記載がございますので、良ければご活用ください。
ご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。
最後までご閲覧下さりありがとうございます。
どうか、ご武運を。
第1章 ボス戦
『禁獣『歓喜のデスギガス』』
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POW : デスギガス・ラッシュ
【大きく裂けた口】から【歓喜の笑い声】を噴出しながら、レベル×5km/hで直進突撃する。2回まで方向転換可能。
SPD : ダークセイヴァー・レクイエム
【人類砦の残骸】を降らせる事で、戦場全体が【絶望の世界】と同じ環境に変化する。[絶望の世界]に適応した者の行動成功率が上昇する。
WIZ : ザ・ダイヤ
空中あるいは地形に【ダイヤ】の紋章を描く。紋章の前にいる任意の対象に【漆黒の影】を放ち【記憶喪失】効果を与える。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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エミリヤ・ユイク
※アドリブ大歓迎、詠唱も入れてくれると嬉しいです。
・心情、台詞
…なにこの不可思議なデカブツ。まぁいいでしょう。
悪には変わりません。よって殺します。
というよりも見るに耐えないです。まぁ、デカいので何処まで通じるかわかりませんが…。
・戦法
初めに蒼煌眼を発動して、全ての事象が遅い中で瞬間思考力と合わせて最適解を選択します。
影の大波をリミッター解除した残像で回避しつつ距離を取り、歓喜の門を限界突破して貫通攻撃を付与した核焔射手で撃ち貫きます。当然アレも黙って撃たれるとは微塵も思ってないので、ガンガン撃ちます。エネルギー源は迦具土の核エネルギーなので、ほぼ無尽蔵なので何発でも撃てます。
●箕星の射手
「……なにこの不可思議なデカブツ」
無表情にエミリヤ・ユイク(
響煌焔星・f39307)が零した最初の言葉。
一見して正体不明とも言えるその巨体。
言葉だけ聞くと茫然としているように見えるが、すでにエミリヤは考え続けていた。
世界がどこであろうと、
悪は
悪。
それがエミリヤの答えに他ならないからだ。
蒼煌眼の並列思考は同時にエミリヤが刺す斬る殴る様々な戦い方でデスギガスとテストバトルを思い描く。どの戦闘も、やはり一筋縄ではいかなくて、全て想定通りリミッターを外す必要性を証明する。
「(……やっぱり)」
『君は誰だい?』
驚きかけたが、よく考えれば相手はグリモア猟兵の予知に気付く機微を持つ巨体に反した繊細さを持つバケモノ。
「デカいのにどこまで通用するかしら」
地赤くひび割れた地を蹴り、踏み込む。流れる影の濁流のうねりを煌々と両眼燈したエミリヤは残像を贄に走り続ける。
歓喜の門――概ねの位置はグリモア猟兵から聞いている。腹、と一口に行っても人間の眼から見れば広大すぎるそこにあったのは、門というには余りに無粋な大穴。
「(これ――!)」
『あれぇ?きみをいっぱい捕まえたはずなのにー……逃げないでよぉ』
甘ったるい喋り言葉の忌々しさに頭を振って振り払い、迦具土も激しく燃やし指先が生み出すのはC―核焔射手―!
弦を引く、まさにその時。
『あは。 ははははは
!!!!!』
「っ、な!?」
わらう。禁獣がけたたましくわらい走り出せば、咄嗟にエミリヤが空中機動で避けようとも、デスギガスはあまりに巨大すぎた。
弾力ある腹に押し付けられ、高速で壁へ――!
『あはははははは!楽しくなって来ちゃった!』
「もう遅いっ!創造矢化、装填。灰燼棄却――ニュークリアフュージョン・サジタリウス!!!」
穿つ一矢は全力で。
全てを力に傾けた光が空気ごとバケモノの腹を打ち抜いた。
大成功
🔵🔵🔵
館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎
まぁいっか、じゃないだろ…
…どこまでも無邪気な子供だな
指定UC発動し「地形の利用、ダッシュ」+UC効果の高速移動で接近
影の大波は勢いが弱い箇所を観察し見切って「破魔、属性攻撃(聖)」の魔力を籠めた「衝撃波」を連射し「吹き飛ばし」
波の勢いが弱まったら、高速移動で一気に駆け込み、歓喜の門に接敵だ!
周囲が絶望の世界に変わったとしても、俺の戦意は揺るがない
家族と故郷を失い絶望の底に落とされたが
1度経験したからこそ耐えれるのさ
今必要なのは、この世界に希望を引き寄せる「覚悟」
その覚悟を意志の力で「属性攻撃(聖)」に変えて黒剣に籠め
「2回攻撃、怪力」で一気に歓喜の門を叩き斬る!!
●fight once more
『あははははは!』
「まぁいっか、じゃないだろ……」
デスギガスの記録を漁りデスギガスと“アメガムノン”の関係を紙面の字だけは知っている館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)は髪を掻き頭を振った。
「……どこまでも無邪気な子供、か」
“意図した”邪気は無い。
だが意図しない邪気はあり、悪意染みたものもある。それはデスギガスという存在とまざるからこそより強大な悪へと変じるのだ。
その気付かなさも、敬輔からすれば悪以外の何物でもないし――……。
「(……よし、)」
トッ、と軽い音立て跳ねた勢いで
デスギガスの足を駆ける。
その表面も“体表”ゆえ荒れ狂う影の波が敬輔呑まんと襲い来ようと、そんなものは知れたこと。
「想定の範囲内だな」
影の波さえ今の敬輔には“地形”。UC―魂魄開放―で纏った魂のガードで駆け上がる!
僅かに魂魄がデスギガスを恐れ慄こうとしたが、それを揺るがぬ戦意で捻じ伏せれば気付いたデスギガスの視線が敬輔を捉えわらう。
『あれぇ?きみはだれだっけ?』
わかんないや!と言いながらデスギガスの振らせる人類砦からは幸い悲鳴は聞こえない。代わりに落ちてきた骨の亡骸が
全てを語っていたけれど。
……深く、息を吸う。
丹田に力を込め、握る刃に聖なる光を燈す。
「(やっとなんだ……――引いて堪るか!)」
騎士の一閃が波を断つ!
デスギガスに、オブリビオンに数多幾度と生命は負けただろう。絶望し、悔いたまま死んだ者も多いだろう。
次々来る波を斬りながら門へ駆ける敬輔は思う。この戦いが犠牲者の全て慰めるに至るかは分からない――それでも“
一つの生命”として希望願った亡き者達へ報いたい。
「僕は家族と故郷を失った時、もう絶望は経験した」
『あれぇ?家族が欲しいのかい?』
わらうな。
わらうな!!!
「貴様に願うものなど死だけだ!」
断ち斬る意思一つ。
眩く長大な聖光が一度で腹を断ち二度目で深々貫いた。
大成功
🔵🔵🔵
ミヤビクロン・シフウミヤ
※アドリブ大歓迎、UCの関係上ソロ希望、自己紹介も見てくれると嬉しいです。またUCの詠唱も入れてくれると嬉しいです。
なんだこの醜いのは、見るに堪えん。
影の大波をかわし、歓喜の門を攻撃する、ねぇ。まぁ、いいだろう。人類砦の残骸を降らせて絶望の世界に変化させる。…絶望ならとうの昔からしてるよ、私にはなんの意味もなさない。
そしてどちらが絶望を与えれるか教えてやるよ。金煌眼で最適解を選び斬殺終焉の恒星に至りし者を発動。最大速度で影の大波を躱しつつ、降ってくる人類砦の残骸の残骸ごと概念、時空間、次元を斬り裂く無数の斬撃波でそのバカでかい歓喜の門を攻撃。悪滅一切無に消えろ。
悪は全て敵だ。
●滅されるべき
悪しき歓喜へ告ぐ
「……なんだこの醜いのは」
禁獣 デスギガスを見上げミヤビクロン・シフウミヤ(
星煌冥奏・f04458)が呟くのも無理はない。
絵図面で訝しんだものの現実に溜息を一つ。グリモア猟兵がどこか苦い顔で
自分達を送り出していたのも今なら頷ける。
だが一見驚いただけであって、ミヤビクロンからすれば“あれは斬って良いもの”であればいいというだけであった。
「――影の大波をかわし」
『あはははは!みんなどうしたんだい?』
「歓喜の門を攻撃する、ねぇ」
依頼を言葉にしてしまえば至極端的な話。“歓喜の門を全力で攻撃せよ”ただそれだけだ。
「……まぁ、いいだろう」
巨獣との戦闘経験は少ないが、不可能ではないし現に
金煌眼がいくつも演算する戦闘で得る膨大な解は見えているのだから。
『あー!ねぇねぇ、きらきらしてるねー君!!』
瞳輝かせるミヤビクロンに目ざとく気が付いたデスギガスがミヤビクロンを本能的に猟兵と理解し歓喜の門より繰り出したのは、人類砦の残骸。
頭上から降る異様な笑い声も残骸から零れた肉さえ弔った亡骸も何もかも、ミヤビクロンが片付けるのには溜息一つで十分だった。
「……絶望など、とうの昔からしているよ」
すらりと抜いた“
雷霆煌剣”を手に、残骸に身を翻しながら地を蹴る。
「……滅奏せよ、我が闇魂」
うたうように。
「悪の世界を斬滅すべく。森羅万象三千世界を斬り尽くし悪滅怨敵一切無に還せ」
『わ、どうしたんだい?あそびたいの?』
笑うデスギガスを無視し飛翔するミヤビクロンが、構えた。
「――ダークネス・スフィア・ジェノサイダー!」
UC―斬殺終焉の恒星に至りし者―
その一刀は
悪を斬る者が胸に燈した鋼の意思の片鱗。
うたう“
意思の恒星”は嵐ようなの斬撃叩き込みながら輝き続ける。
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
歓喜のデスギガス……歓喜というより狂喜と言う方が正しいような気もするが
奴がこうなのは元からか、それとも欠落とやらの影響か。考えた所でどうしようもなし
とにかく、どうにかして奴を倒しにいくとしよう
神刀の封印を解除。神気によって身体能力を強化
基本的には奴の身体を駆け上っていくことになるが、そうなれば影の大波に巻き込まれる訳だ
ある程度近付いたところで、廻・弐の秘剣【金翼閃】金色の斬撃波で影の波を切り裂いて
神脚による空中跳躍と、先の一撃で空中に残した斬撃痕を足場にして、波の切れ間を跳び上がっていく
例え世界が絶望に染まろうと、刃の輝きが失われなければ構わない
一気に門の元まで駆け上がり、渾身の力で断ち切ろう
●金閃の輝
「(歓喜のデスギガス……)」
『あはは、あはははははははは!』
だくだくと流れる影の波纏う禁獣を仰ぎ見て、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は思う。
「……歓喜というより、狂喜と言った方が正しいような気もするが」
デスギガスの忘却の理由は不明瞭だが、おそらくそれは“デスギガス自身”を救うものなのかもしれない。現状では答えが出ないからこそ憶測の域も出ないそれを今は横に置いて。
“今”必要なのはただ歓喜の門を打ち破ることのみ――!
「(とは言っても、あの巨体をどうするべきか……)」
いつみてもデタラメな巨体だろうと、斬れば同じ。そう思いながら鯉口を切るのは
利剣ではなく、抜くのは
神刀。
柄を握り深呼吸し、イメージするのは切っ先まで鏡介の気を行き渡らせる様な状態。
深く、吸う。
長く、吐く。
ぼぅっと熱持ったような感覚心地よくなれば封印が解かれた証。透き通るように研ぎ抜かれた刃が昏きダークセイヴァーで鈍く光っていた。
「――神刀解放」
『あれぇ?君は……』
「煌めき舞え、金色の翼――廻・弐の秘剣【金翼閃】!」
地を蹴り抜き身の神刀に籠めるはUC―廻・弐の秘剣【金翼閃】―!
言葉は引鉄。鏡介の握る柄から迸った金色の光を刃に纏わせ迫る波切るように揮えば、紙の如く切り裂かれた波が影の海へ馴染むのを見切らず鏡介は金色の足場を駆ける。
『わぁ、すごいねぇ、君!きらきらできれいだなぁ!でも、切らないでよぉ』
ずるいずるいと何を言い出すかと思えば、どうと降り注ぎ始める人類砦“だったもの”。
『えーい!』
「その絶望では、俺の刃は濁らないよ」
傾き振る人類砦から降る亡骸ごと、斬れば手叩き笑うデスギガス。剣の軌跡伝いに降り注ぐ人類砦すら駆け上がり、鏡介は跳ぶ。
『わぁ、わぁ、すごいねえ!!!』
「これは」
柄を握る。
呼気整え見据えるは“門”。
「お前を断つための刃だ!」
金色の軌跡鮮やかに、ピシリと門に罅が増える。
大成功
🔵🔵🔵
マリー・アシュレイ
【花緑青】
…なにあれキモい
目が完全にいっちゃってるじゃない
まぁいいわ
会話する気なんて更々ないから
まずは歓喜の門を引き摺り出さなきゃ話にならない
なら一気に接近すればいい
それだけの事よね?
足場習熟しながら悪路走破で肉薄
残骸にはUC
遠距離なら爆撃、近距離なら剣の斬撃波で木っ端微塵に
絶望の世界?絶望って何よ
要は気の持ちようでしょ
私は、私自身がウェズリーの希望の光になるんだから
邪魔しないで
影波が吸い寄せるなら好都合
ウェズリー、行きましょ!
抗わず引き寄せられ、歓喜の門が見えたら
【Price to Pay Someday】も併用して即UC
この世界と同色の弾幕に塗れてる間に
手榴弾をお腹いっぱい食べさせてあげる
ウェズリー・ギムレット
【花緑青】
どんな敵にも動じないのは
それだけ彼女が酷な世界にいたということ
彼女の安否まで気を配れなかった当時の己が恨めしい
とは言えその堂に入った物言いは心強い
ああ、そうだねマリー
今は唯、敵を討つことに専念しよう
オーラ防御を自分と彼女に掛け
彼女と併走し敵との距離を詰める
敵の攻撃はUCで制圧射撃
鎧砕きが如く残骸を砕こう
知っているかね?
絶望とは他者から与えられるものではない
つまり、自ら選ばなければ―人は決して、絶望しないものなのだよ
そして無論、私もそれを選ぶ気はない
マリーがいてくれるのなら、尚更ね
大切なものを忘れた君に、負ける気はない
彼女と共に門に肉薄
矢弾の雨がもたらす毒の味は如何かね?
●The defendant's head.
ぴるりと震えたマリー・アシュレイ(血塗れのマリア・f40314)の兎耳が下がる。
「……なにあれ」
猟兵だから――というより、数多の気聞こえた経験に裏打ちされたようなマリーの声音にウェズリー・ギムレット(亡国の老騎士・f35015)は眉を下げて。
「(動じない、か)」
まだ十代であるにもかかわらず、どんな敵にも動じない……世間一般と比べて幼さの失せた様子に零しそうになった嘆息を呑み込み、“マリー”と声を掛けようとした時、自身の縫いぐるみとデスギガス見比べたマリーが一言。
「キモい」
叩き切る言葉の刃にウェズリーはと言えばきょとんと目を見開き、瞬き。
「見てよウェズリー、あの目は完全にイっちゃってるじゃない……まぁ、いいわ。アレと話す気なんて更々ないから」
「――マリー」
「ウェズリー、あの
歓喜の門を引き摺りだす?何とかしなきゃ?話にならないのでしょう。一気に行くわよ」
「マリー」
「もう、なにウェズリー。ほら支度して」
行くわよ、と冷静苛烈な兎の少女にやっぱり初老のアリスナイトは溜息を一つ。だがその溜息に呆れは無くて、どこかワクワクして仕方がない自分がいることを、ウェズリーは内心恥じた。
ただ、自身を必ず呼び共に往く前提にあっても後ろを顧みない――……というより、“ウェズリーがいると信じて疑わない”
マリーの強さへの安心に比例して、
彼女の父と駆け抜けた数十年で一人の時計兎が愛した世界で一人の人との結実を――扉を前にした時、自身は扉を選んでしまった。後悔はどうあっても拭えない。傷ではない。染みでもない。ただ誰にも譲れない“確かなもの”なまま。
「――そうだね、マリー。それでは
敵を討つとしようか」
どこか懐かしくて擽ったいこの感情の名を、ウェエズリーは口にしない。
『あははは、はは!わぁ、君達はお友達かい?いいなーいいなぁー!!!』
ウェズリーのオーラ防御で固めた足元で確かに二人は駆ける。悪路を走破するマリーの方が一足早くも、被る影。
「マリー、上だ!」
「……知ってる」
人類砦の残骸というには余りに巨大な砦の片鱗へ目掛け、握りしめたチェーンソーを吼えさせる。
UC―Unbirthday Party―!
それは眩くも空色に煌めくエンジン。
身の丈に合わず重いはずのそれを、猟兵ゆえか軽々振り回し斬り捨てたマリーは瞳を爛々と。
「絶望の世界?……絶望って、何よ」
破損した人類砦から中空へ散る
白骨を嘆けとでもいうのだろうか。降り来る残骸を撃ち弾くウェズリーと共に、絶望に抗えば抗うほど体が重かろうと泣き真似するほどの手弱女だと思われる方が屈辱だとマリーは声高に叫ぶ。
「要は――気の持ちようでしょ」
その小さくも逞しい背を“そんな風にさせてしまってすまない”と言えば、きっとマリーはウェズリーにも容赦なく噛みつくだろう。
「ねぇ、ウェズリー!」
そうでしょう?と尋ねる君いればこそ。
「そうだね、マリー。知っているかね、禁獣よ……絶望とは他者から与えられるものではない。自ら選ばねば――“人”は決して絶望しない」
応える意味が此処にあると共に、ウェズリーは重ねた歳だけ持つ知識を言葉にする。
そう――人は感情を選択できる生き物だ。拒絶も受け入れも何もかも全て“決断”だ。
目の前の亡き命達は願うだろう、この自分達さえ利用するバケモノの打倒を。彼等は“バケモノ達に勝ちたかった”戦士の軌跡なのだから。
「だから我々は希望を選ぼう」
マリー同様ウェズリーの体にかかる負荷に身が軋もうとも。
「私には“
マリー”がいてくれるなら、尚更ね」
「いきましょ、ウェズリー!」
行きましょう、と笑う光と共に、手を取って乗った引きずり込む波に乗れば門は目の前!
『わぁ、わぁ!君、どうしてお耳が長いんだい?君達はおトモダチなの?』
「あなたには関係ない――さ、始めましょ。素敵な素敵な何でもない日!」
「そう……今日は聴け、狂気の歌を」
マリーのユーベルコードに重なるのはウェズリーのUC―Nemain―!
何でもない日にはパーティしなきゃ!
爆弾弾けて焼け爛れ、鋭利な嘴と羽音で肉切り穴開け囀る黒鳥で空を覆うほど!
数多の猟兵に斬られ撃ち抜かれた歓喜の門にまた、罅が増えてゆく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シキ・ジルモント
◎
以前は逃げ延びるのが精一杯だったが今は違う
ようやく、奴に手が届く
宇宙バイクに乗って戦場へ
影の大波はバイクの速度で振り切り、もしくはジャンプで飛び越えて範囲から逃れたい
バイクを使う理由は速度の他、あの厄介な笑い声で足が止まり影の大波に呑まれる危険を減らす為
乗り手が精神ダメージを負っても、機械であるバイクなら止まらず進んでくれる筈だ
敵の突進は巨体の足元へ滑り込み、すれ違うようにバイクを急旋回させ回避を試みる
敵の二度目の方向転換に合わせて急停止、即座に切り返し急加速
波を避けつつ敵のビルのような脚部をバイクで駆け上がり門へ接近
エンチャント・アタッチメント【Type:F】を拳銃に装着
歓喜の門を狙いユーベルコードを使用
弾丸の破壊力に炎の魔力を上乗せして威力を高める
更に、これを連射する
威力を高めた代償に反動がきつい弾丸だ、連射すれば体の負担は大きい
だがデスギガスを追い詰める為なら無茶でも押し通す
奴に“作り変えられた”魂人の死より辛い苦痛に比べれば軽いものだ
どこへ逃げても、何度でも追いかけて必ず止める
●叛逆の焔
“次は勝つ―――!!”
叫んだあの日を忘れてはいない。
「(……前とは違う)」
そう、以前はグリモア猟兵も“生きて帰ってこい”というほど、まず戦うことさえ儘ならなかった。寧ろデスギガスという存在に対し“戦えて”いたのかさえ怪しい。
対デスギガス戦の経験あるシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)には、既に歓喜の門へユーベルコードを揮う猟兵の“当たり”自体、デスギガスが欠落を失う前との違いが遠目にも手に取るように分かる。かの戦いの折り共に駆けた者もいるのが見て取れたが、“デスギガスにちゃんと刃が当たっている”。恐らく本人も分かっているのだろう、ただ一瞬でも退けるためだけの戦いとは全く違っているのだから。
ハンドルを回しエンジンを起動させる。
「(今回は全部使い切る)」
シロガネに付けたアタッチメントは氷の属性で。
バイクと自身をベルトで括り、フックワイヤーは定位置に。
デスギガスの笑い声を防ぐ術は無くとも、
足が止まることはないだろう。
走り出す。
『わぁー!君は誰だい?なんだか他の
猟兵よりはやい――……わぁ!すごいや!』
「(欠落を壊しても壊さなくても記憶は無い、か)」
バイクで駆けるシキに興味を持ったデスギガスの視線を、一旦デスギガスの足元を抜ける形で逃れる。
不規則に乱立するビル群の高低差の隙を抜けるように走行すれば、いとも簡単に叶ったがデスギガスの興味を引くには十分すぎた。
『わぁ!わぁ!すごいねぇ、見せてよぉ!』
「断る――!」
突進し手伸ばすデスギガスの手を、急旋回からの踏み込んだアクセルで避け駆け上がるのは影の波さざめく
ビルの群れ。
より踏み込みアクセルを全開で駆け上がれば爆ぜる影の波が押し寄せようと、その“悪路”を越える!
『あは!あははははははははははは!!くすぐったいよぉ!』
「っ、っっ!ぐぁっ!」
意図的に――まるで生き物の如く見上げるほどの大津波がシキを呑み込まんと迫る中、デスギガスの笑い声に脳をめちゃくちゃにされるような痛み奔りシキがハンドルから両手離した――のは、一瞬。
「もう聞き飽きたんだよその声は!俺はもう……お前には負けねぇんだよ!」
シロガネの銃口に集まる清廉な水の気配を包むのは人狼が生まれながらにして持つ氷の才!
大津波へ向け、撃つ!!
真白く凍ったその坂を
カスタムバイク・レラで駆け上がった勢いのまま、駆け抜ける!
着地の衝撃で波打った影の海を越え、眼前には
大穴。
『あはははは!すごい!きみはきらきら、きれいなんだねぇ!』
……あの笑い声はおそろしい。
この寒気はきっと、一つの命として間違ってはいない。生命としてデスギガスというバケモノに恐れを抱くのをやめろというのは、きっと無理だ。
だが猟兵の誰もがその潜在的な恐怖を押し殺し、意識の外へやり、立ち向かうことを選んでいる。
そしてそれをグリモア猟兵達は知っている。知っていて送り出し、誰もが無事を祈っていいて、誰もが“後悔をしない選択”を選んでいる。
更に言えば今回の戦争、この世界に生きる生命が命懸けと、下手をすれば存亡を賭けで挑んでいるような節さえある。
生きる為になされる沢山の選択。
それを嘲笑うことなど、奪われることなど、許してはいけない。
オブリビオンに抗う力を持ったからこそ抗戦を選んだこの世界の生命に轡を並べることを選んだ。
アタッチメントを
【Type:F】へ素早く付け替えれば、シロガネの銃口に赤々と燃えるような文様が空気焼きながら描かれて――準備は整った。
呼吸を整える。
思うのは恐らく取りこぼしているであろう、
デスギガスに作り変えられた魂人達。
「(――こんな程度、)」
UC―デストロイ・トリガー―が
【Type:F】の魔法陣駆け抜けることで炎纏い、眩き一羽の不死鳥となり歓喜の門を撃つ!
『』
「っ、ぁ゛……!まだ!!」
撃った反動というには余りに重いそれを再び構え撃つ!
『……わ、ぁ!!』
歓喜の門に刻まれる罅が増えてゆく。
燃え盛る不死鳥が大翼で
昏き世界を煌々と照らそうと――……歓喜の門の向こうの底知れぬ昏さには、生命として怖気が奔る。
だが越えよう、この恐怖を。
大成功
🔵🔵🔵
ラップトップ・アイヴァー
◎
《真の姿は、黒のお姫様…美希のまま。
お絵描きがしたいんだね、禁獣さん。
分かった、みきたちも付き合うの》
私は、どうでも、いいと――
《……まだそんなことを言うんだね。
よし分かったの、駆けっこにしよ。
それならお姉ちゃんも楽しくなれるでしょ!》
…もう、仕方ないわね。
今日だけですわよ、こんな戦争のど真ん中で。
《やったぁ!
よーい、どん――》
あっ ぐううっ!?
《……え》
……いま、なに、ほのお、!?
《……。
……そっか。
痛みを分け合う、分かち合う。こういうことでもあったんだね。
次のレベルに行っちゃった、優しい正義の
焔。
全力魔法を伴ったUCで焔を纏って、駆け抜けるの。
直進突撃はバーサークも入れつつどうにか耐えて。
優しさを以て躍るように走るの。
問題の影の大波が迫ったら、限界突破で振り切って、全力で歓喜の門に辿り着くの。
そして、右手にUCの焔を集中させて、門を殴って完全に壊すの!
お姉ちゃん、流石に怒るかな。
でもこれは、無駄な無理なんかじゃない。
叫び声をあげてもいいよ…
みきが責任持って聞いてあげる》
●焔を紡ぐ
昏き世界へ降り立ったのは、黒のお姫様。
長い髪のてっぺんにはキラキラなティアラを飾って、向き合うデスギガスの視線が突き刺されば、
ラップトップ・アイヴァー(動く姫君・f37972)にっこりと微笑み丁寧なカーテシーを。
「禁獣さん、お絵かきは好き?」
『わぁ!
猟兵?うん?おえかきかい?ねぇ、おえかきってたのしい?』
好奇心に瞳を輝かせるデスギガスは一見してただの子供のようにも見えた。だが実際は身動ぎひとつで気軽に一集落規模の命を殺すなど容易い禁獣 デスギガスだ。
「いいよ、そのお絵描きみき“たち”が教えてあげる」
『ほんとうかい?うれしいなあ!』
「(……私はそんなもの、どうでもいいと――)」
とっとと思い切りぶっ飛ばしてしまえばいいと思うのだけれど、なんて内側で腕を組みむくれるシエルに美希はにっこりと微笑みを深くするばかり。
あれほどなんでも拳で解決できれば苦労しないんだよと“生前”から散々、それこそ“今”だって散々口酸っぱくして言ってきたというのに、このバカ姉と来たら――!
なんて笑顔の裏で美希は思っていたなんて同じ“こころ”の内にいる二人なのに知りもしない。
勿論、シエルは美希が理由なく意味も無く
敵に対して慈悲を掛けているとは思ってはいない。が、何かあって助けても結局“お姉ちゃんはすぐ叩くから、みきお姉ちゃんのそういうとこ嫌い!”なんて昔から噛みついて来てはいたが、最近は頓に酷い。
「……やっぱりまだそういうこと言うんだね」
『わあわあ、おえかきしよー!ぼくも遊びたいよ
猟兵!』
「――ほら、遊んであげなくっちゃ」
“ねぇ?お姉ちゃん”
そう瞳を弓形に細めた美希が微笑む姿に、シエルが無意識に唾を飲む。
「よーし!その前にかけっこしよう、禁獣さん!」
『かけっこかい?』
「(ちょっと!美希!)」
この巨大な、それこそ転んだだけで街を一個潰滅させそうな巨体と追いかけっこ?!やったって即捕まるだけでしょう?!一体何を言っているの、美希!と叫べば、また美希はにっこり笑っていた。いっそ眩暈のしそうなほどにっこりと。
「お姉ちゃんも楽しくなろう?かけっこ!ね?」
『ぼくかけっことくいたよ!よく――よく……ええっと、だれだっけ?うん?』
「よーっし、お姉ちゃんもいっくよー!」
「……もう、仕方ないですわね。今日だけでしてよ?こんな戦場のど真中で……」
飽きれ半分。でもどこか救われている自分がいるからシエルが頷けば、飛び跳ね喜んだ美希が子供のように微笑み、“よーい、どん!”とわらうから。
現実ではたった一人の体だけれど、心はいつでも隣に――……。
「(――っ、ァッヅ、っぁああ?!)」
「……へ?」
『わぁい!わぁーー……あれえ?どうしたの、
猟兵……いたい?あつい?つめたくなりたいのかい?』
もえている。
あねが、もえている。
きらきらきらきら、さいなむ焔に焼かれて……。
「( )」
「おねえちゃ、」
「( !!)」
『おねえちゃん?どこだい?……あは、あははははははははは!へんなの!
猟兵、きみはへんだよ!』
うるさいうるさいうるさい。
わらわないで。わらうな――!
ほんの一瞬強い慟哭のような感情に晒された美希はハッとしてシエルを
見た。
美希が幾ら焔に触れようと、その焔が美希を焼くことは終ぞなくシエルだけを苛んだ。
しかしシエルを抱き止めた折、焔に触れた美希は気付く――これは“悪焼く正義の焔”だと。だから、これは“美希の正義の焔”だからシエルを焼く。
止めるために。
守るために。
戦うために。
「……そっか」
“
焔”はうたう。正義とは無償ではない、対価を差し出せと。
確かにレベル上げた焔は常より眩くそして明確に悪を焼く。息乱し悲鳴上げるシエルの髪を撫で、美希は立ち上がり振り返る。
「――ごめんね、禁獣さん。かけっこもおえかきも、今日はちょっとダメかも。でもね、素的なダンスは好き?」
『ええー……しないのかい?でも、だんす?あついんだろう?きみ、ずうっといってるよ?』
心読む禁獣の言葉に微笑みたやさぬまま、シエルは首を振る。
「大丈夫、美希はもう埒外のもっと先に一歩行けたみたいだから。お姉ちゃんと一緒なら、きっと上手に踊れるわ」
焔色の赤い靴を履きましょう、お姉ちゃんとお揃いで。
UC―Blazer: Rev.0―
「お姉ちゃん、怒るかなぁ」
影の波を滑るように駆け上がり舞えば、拍手をし壊れたおもちゃのように嗤う声が
ラップトップをいくら苛もうと、裡で響く悲鳴が全てを掻き消すから。
宙舞いスカート翻し、鋭い一蹴は悍ましき焼けた靴のように轍を残す!
ピシリ、まだ歓喜の門に罅が走る。
大成功
🔵🔵🔵
クック・ルウ
◎
繰り返し呼んでいた名前は
あなたにとって、大事なものだったのだろうな
風属性の魔法で空中浮遊し宙を泳ぐ
高速泳法で人類砦の残骸を躱し
敵の動きを情報収集して影の大波から距離を取ろう
降ってくる残骸は、破壊された故郷、スペースコロニーを思い出させる
脱出手段のない者は宇宙空間に投げ出され尽く死んだ
忘れられない残酷な光景だ
思い出す度、何度も泣いて、怒りに震えたとも
けれど私はもう無力だったあの頃とは違う
絶望の景色の向こうに見えるデスギガスを見据え
きっといつか誰かの明日を守れるようにと
師より教わった魔法が私に戦う力を与えてくれる
抗うために、力を溜め弛まぬ修業を続けてきた
この魔法がある限り、私は忘れない
あの日の絶望を、明日へ進むことの覚悟を
●朝へ告ぐ
門の罅が放射状にデスギガスを蝕む。
しかし無敵“であった”という過去が痛みを“知らせず忘却させたまま”あるせいでデスギガスはくすぐったいようと笑うばかり。
時折口にしていた“アメガムノンくん”という言葉も今は言わず、
猟兵!と自身へ襲い掛かる猟兵達を遊びへと誘うもどれもこれもを断られ膨れ面――……さえも瞬く間に“まぁいっか!”と忘れるや再び
猟兵!と猟兵達へ話しかける始末。
その忘却は安寧の為か。
その忘却は悲哀喪失の為か。
――理由は、誰も知り得ない。
「……繰り返し呼んでいた名前は、あなたにとって大事なもの“だった”のだろうな」
巨大な禁獣見上げそっと呟いたクック・ルウ(水音・f04137)は、タールの黒髪をふわりと払った指先で風の魔術文様を描きタールの爪先へ。
文様を足場に地を蹴りだし空を泳いだクックが尾鰭をはためかせた瞬間、目ざとく気付いたデスギガスが声を上げる。
『あーーーー!!君も
猟兵!?わぁ、わぁ、すごーい!僕とおんなじ色なのかい?おともだちになれそう、遊ぼうよ!』
どうしてか“お友達”、“遊ぼう”という単語だけは忘れないデスギガスは幼子のようではあるが、やること成すこと加減を知らず、まず知ろうともしない無邪気という仮面被る邪気に溢れた幼子。
そんなものただの暴力の塊だ。
「デスギガス、私はあなたと遊べない」
『ええーーーーー!どうして!どうして?
猟兵はみんなそういうんだ、ひどいよ!』
どうしてと駄々をこねるデスギガスが降らせる人類砦“だった”もの達をクックはおとぎ話の人魚のように空泳ぎしなやかに、それでいて迷いなく高速で泳ぎ抜ければ避ければ地へと叩き付けられたそれが粉々に砕けるのが横目に見えた。
「(……あぁ、)」
それはまるで、宇宙であの日に散った破壊された
クックの故郷のよう。
人類砦の残骸から零れる白骨化した亡骸の群れは宇宙空間へ成す術無く放り出された共に過ごした仲間だった人々のよう。
まぼろしだ。
昏きダークセイヴァーの地にはあまりに映え過ぎる白骨に、無意識に唇噛みしめたクックの拳が、握り過ぎて形を保てなくなったところで初めてクックはハッとする。
「(
ちがう。
ちがう――!)」
『ねーーーーーえーーーーーー!!遊ぼうよお!!』
伸ばされるデスギガスの手の影にハッとして、緩急つけ高速で泳ぎ抜ければ降った人類砦の残骸が粉々に砕かれ、クックは無意識に歯を噛んでいた。
違うと分かっているのに。
壊された人類砦から零れた白骨が、どうしても救えなかった仲間とダブる。悉く死んだ、仲間と。
「(忘れられるはずも無いっ……)」
影の波の名残纏って降る人類砦を避け、いくつもいくつもクックの目の前に救えなかった虚しきの命が降り積もる。
幾度も泣いた。
苦しくて、何故生きた締まったのかと幾度も幾度も悔やんで、苦しんで、泣いて泣いて泣いて!
辛かった。
情けなくも怖かった。
苦しかったし、無力な自分に怒りもした。
「(――けれど今は違う)」
クックには立ち向かう力があるのだから。
掠めた人類砦の破片がタールの頬切ろうと、瞬時に元通り。
一つ残骸越えるごとにクックは学習し成長し、とうとう
歓喜の門は眼前!
……――クックは美味しくない絶望を知っている。
苦くて泣いてしまいそうな、己の無力さを思い起こさせる“絶望”を。
「無力だったあの頃の私とは違う」
降り来る残骸片の雨が切りつけ全身を苛まれようと、立ち向かう勇気を胸に。希望の味知るこころは胸に。
『あはは、あははははははははははははは!!!!ねぇ!きみ、どうして
それがついてるんだい?もっとつけなくていい?ぼくがしてあげようか?』
嗤う悪意なんて大きなお世話。
空を自在に泳ぐクックの鰭は一つで十分!
「これはきっといつか、誰かの明日を守れるように、救えるようにするため。それに、
この魔法も」
異形の笑い声にずきずきと痛むような頭があったのはさっきまで。
砦の残骸を眺め、その片鱗を見に受けた今……クックの心はどこか凪いでいたし、クック自身どこか透き通るような、落ち付いた心地でデスギガスを眺めていた。
「――あなたは痛みを知らない。忘れてしまったうちの一つを返してあげる」
黒きタールの指先に瞳と似たオパール色の光が燈る。描く魔法はUC―暁光の魔法―!
昏きを照らせ。
宙にも此処にも等しくある昏きへ朝を。幾つも紡ぎあげてきた朝を此処に!!
『っ! わ、ぁ――いたい、いたい……いたいって、なん――』
「この魔法がある限り、私は忘れない。あの日の絶望を、明日へ進むことの覚悟を――!」
炸裂する朝の如き輝き放つ魔法断が間断無くデスギガスを襲い、数多の猟兵が刻んだ日々を深くする!
軋む軋む軋む。
無敵の門が崩れ去る!恐ろしき六番目の猟兵達の爪牙が今突き立てられる!
悲鳴絶叫怒号と絶望を以て宴をせよ。
おお偉大なる歓喜の門よ、わらえわらえ忘却を以て。異様?不自然?それがどうしたあぁなんと面白おかしきことか!
『……あ、』
ビキ、と迸った罅が放射状に全てデスギガスを喰うか、と思われたその時――!
『あれ?――――――くん?』
誰もが何かに振り返ったデスギガスを見た。
中空眺め、茫洋と“おともだち”の名を呟いたデスギガスは歓喜の門が砕け散る直前、何かに招かれるように吸いこまれ消えたのだ。
取り逃がした現実が猟兵達に拳を握らせるも、誰もが“デスギガスは無傷ではない”と確信していた。
今この瞬間、再戦の時が伸びただけ。
欠落を破壊された無敵
だったデスギガスはもう思り、同時に今再び爪牙研ぐ時間を得たのだと誰かが呟いた。
光をここに。
昏きへ朝を。
大成功
🔵🔵🔵