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闇の救済者戦争⑲〜黄金の紋章

作者：椿油

●｜五卿六眼《ごきょうろくがん》が一人「紋章つかい」
『力なき正義は無力。だが、意志無き力はただの悪だ。意志の力だけが、人を『英雄』にする。だから俺は紋章を創る。正しき意志を持つ者に、相応しき力を与える為に！』
　この男は紋章つかい。五卿六眼の一人、寄生虫「紋章」の生みの親である。

『……なんと、猟兵が近くまで来ているのか？　丁度良い！　正義を知る彼らは喜んで検体になってくれるだろう。頼みに行ってこよう』
　という軽いノリで検体達もとい猟兵達を目指して進んでくる紋章つかい。自身も大量の紋章を身に付けながら、己の正しさを疑わない上に、さらなる紋章開発に勤しむ彼の姿はどこか哀れな鬼畜であった。

●グリモアベース
「という厄介な男が紋章開発者なのも頷けますが、相手は『五卿六眼』の一柱です。無理をなさらぬようお願いします」
　グリモア猟兵のスリー・サクセス（猟兵サポート型AIプログラム・f34842）は、バーチャルヴィジョンに紋章つかいが嬉しそうな顔で猟兵達へ向かう姿を映しながら淡々と説明をし始めた。

「紋章を肉体に埋め込んでいますので、単純な強さでは他の『五卿六眼』より強いでしょう。ですが、失敗作の紋章が彼の周囲に放置されているようですので、奪い取って我々も装着、及び変身してしまいましょう。放置された紋章は以下の特徴を持ちます」

　一、後ろから「自分の精神のどこか」である霊魂を呼び出す事が出来る紋章。
　二、両手を使って百裂の攻撃が出来る紋章。
　三、両手から波動のビームを撃てる紋章。
　四、足から魔法の弾をシュート出来る紋章。
　五、左手が鬼のように強化される紋章。
　六、武器に闘気を込めて放てる紋章。

「……なお、全部付けて最強になる訳ではない程度の強さなので、上手く組み合わせて良い組み合わせを見つけて下さいね」

　サクセスはそう言って転移を開始したのだった。

第1章 ボス戦 『五卿六眼『紋章つかい』』

POW   :    紋章正拳 【「番犬の紋章」を拳に装着しての正拳突き】が命中した部位に【紋章つかいの正義】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する（抵抗は可能）。 SPD   :    紋章連脚 【「不死の紋章」を脚裏に装着しての飛び蹴り】【「辺境伯の紋章」を膝に装着しての膝蹴り】【「殺戮者の紋章」を爪先に装着しての連蹴り】で攻撃し、ひとつでもダメージを与えれば再攻撃できる（何度でも可／対象変更も可）。 WIZ   :    紋章断罪翼 自身が装備する【「月の眼の紋章」を両翼に装着した漆黒の翼】から【細胞破壊光線】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【肉体宝石化】の状態異常を与える。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　『静かなる者』として現れた、義透。
「検体になるわけがないでしょうに」
　神隠しで母が飛ばされている恐れがある『静かなる者』は、憤慨していた。
「そもそも、紋章の作り方からして、相容れませんよ。さすがのオブリビオンも憐れです」

『そうか』
　紋章つかいは義透を検体にするのは潔く諦めたようだ。
『ならば打ち砕いてやろう！』

　義透は霊魂を呼び出す紋章と、闘気を武器に込められる紋章を装着した。その頃ミズクラゲの陰海月は密かに魔弾をシュート出来る紋章を拾っていた。

　【四天霊障】を攻性結界にし、紋章つかいの正拳突きに対してヒビが入りながらも弾くと、紋章つかいは驚いた。
『まさかその霊魂の紋章が役に立つとはな！』
　氷塊と成った【四天霊障】を、霊魂が操作して紋章つかいにぶつける義透。長弓【白雪林】に闘気を込め、さらにUC《四悪霊・『怪』》による生命力を吸収する呪詛を放つ。
『ぐっ！　そう来るか』

　陰海月がぷきゅぷきゅ言いながらシュートを続けていたおかげで義透に怪我はなく、無事に紋章つかいに攻撃を与えたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「ほー？　コレが例のパワーアップアイテムっスか――献上を許す」
　物九郎は左手が鬼のように強化される紋章を拾い、装着した。

「コンボ開発に興味惹かれねえでもありませんけども、今日のトコはコレだけでイイですわ」
『ふむ？　左利きだとでも言うのか？』
　紋章つかいは漆黒の翼から細胞破壊光線を放ちまくる。勘を頼りに回避し、戦場を駆け回る物九郎。

『くっ、ちょこまかと』
　遮蔽の向こうに隠れた物九郎を追う為、一旦光線の照射を止めた紋章つかい。すると物九郎が陰から飛び出し、UC《ビーストドライブ》を発動し、左拳を振りかぶって――大きな猫の前脚に変化した腕は、鬼の強化が成されていた。

「俺めの『ザ・レフトハンド』になんともあつらえ向きじゃニャーですか！」
　思わぬ大きな奇襲に体勢が揺らぐ紋章つかい。
『がはっ!?』

　何度も、何度も左腕を振るって鬼の如きネコパンチを繰り返す物九郎。紋章つかいが攻撃をする暇を許さない。鬼の強化を受け入れた刻印が鼓動する。

「『失敗作』は俺めが有効活用してやりますわ」
　物九郎は満足げに紋章つかいに笑ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「英雄、そんなものを求めて一体どうするつもりだ。お前は英雄なるものを自分で作り出したと言う陶酔に浸りたいだけじゃないのか」
　フォルクが問う。紋章つかいは笑った。
『――何を言っているか分からないな』

　英雄が必要ない世界の方が、正しい。

　フォルクはUC《冥空へと至る影》を発動し、冥界と繋がる影を召喚して冥界から魔力を受け取り始めた。

　両手で百裂の攻撃が出来る紋章と両手から波動のビームを撃てる紋章を装着する。冥界からの魔力で強化された死霊の集合体【ファントムレギオン】を周囲に展開し、紋章つかいの細胞破壊光線の盾とした。

『その死霊は材料になるかもしれないな、検討してみよう！』
　と、ほざいている紋章つかいに対して盾達の隙間から百裂のビームを放った。組み合わせ次第では、ビームが百倍にもなり得る『失敗作』の紋章。

『うぐぉっ!?　そ、そうかその手もあったな……！』
「これだけの数を撃てば全て躱す事は出来ないだろう」
　その隙に死霊達に漆黒の翼を狙わせて、移動と攻撃を阻害する。

『は、ははは！　面白い！　失敗作への考えを改めてみるとし――』
　百裂のビーム全てが、再び紋章つかいへと直撃したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「さて、ムッシュー・紋章つかい。この三と四と六の紋章が――音楽に有用か、試させてもらうぜ？　聞いていきな、ユーベルコード！」

　UC《ユーベルコード》を発動しながら光魔法の歌を奏でるバロメリアン。声に闘気を纏わせ、震える波動は音波、追加の歌と成る。

　紋章つかいでは思いつきもしなかったであろう、ソロ歌唱による輪唱攻撃が響いた。
『な――ははは、素晴らしい!!　全く失敗作じゃあないじゃないか!!』
　思わず自身の失敗作が織り成すハーモニーが素晴らし過ぎて笑ってしまった紋章つかい。

『やはり、猟兵は検体に相応しい!!』
　蹴りで攻撃を入れる紋章つかいに対し、バロメリアンは蹄で相殺しようとする。蹄で受け止めれば音がなり、更に歌は追加される。タップをその場で起こす事で歌の追撃も出来る。

「さぁ、アンコールも聞いていきな！」
　光のアンコールが闇の戦場に響き渡り、紋章つかいは心震えた。
『良い紋章の使い方だ！　だが、俺の作った成功作はもっと素晴らしい!!』
　歌や波動を受けながらも、紋章つかいは笑っていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「……そうだ、これは……正義だ」
　バーンは、紋章つかいに正義を感じた。

「迷いなき正義……奴の心には一片の悪意なく……純然たる善意が在る。認めよう……貴様は正義であると」
『そうだろう!?　俺こそが正義だ、分かってくれたか！』

　しかしバーンは言葉を続けた。
「だが……我はその正義を否定する。あらゆる暴力を肯定し良心を消し去るのが正義である。人は……正義に酔って何よりも残酷になれる」
『ふむ？』
　紋章を装着し、左拳に闘気を纏って鬼の強化を施すバーン。
『どうやら俺とは正義の解釈が違うようだな？』

　紋章つかいは拳を構え、正拳突きを繰り出そうとする。それに合わせてバーンはUC《大いなる叛逆》を発動し、カウンターの如き叛逆を開始した。
「今より貴様に叛逆を示さん！」
『何ッ――!?』
　【魔剣「Durandal　MardyLord」】で紋章つかいの拳を受け止めたバーンは、全ての力を乗せた拳を叩き込んだ。

『カハッ!!』
　紋章つかいの装備という装備が――割れて、地に伏せたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2023年05月21日