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地下に狂い咲くもの

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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「まずは、集まってくれたことに感謝を」
 長身のエルフが、猟兵たちにむけ軽く頭を下げた。エルフのアーチャーであり、グリモア猟兵でもある、プレケス・ファートゥムだ。
「今回予知がでたのは、『アルダワ魔法学園』だ」
 蒸気機械と魔法で創造した究極の地下迷宮からの脱出を図る災魔たちと、それを防がんとする学生たちが日夜戦い続ける世界。それが――『アルダワ魔法学園』。
「強力なフロアボスが誕生し、新たな迷宮を作り出した。君たちには早急に、その迷宮をクリアし、フロアボスを撃破してもらいたい」
 普段はあまり表情変化のないプレケスが、やや焦りを含んだ顔で任務内容を告げる。
「……実はブリビオンの影響で変化した迷宮の奥に、素晴らしい宝があるという情報が出回ってしまった」
 それは完全なるデマ、というわけでもない。最深部に存在するフロアボスは、確かに『宝』といえるのだ。フロアボスは、温室と呼ばれる植物が生い茂ったフロアに潜むレアモンスターで、その全身は様々な魔法薬の原料となり、倒せば一攫千金が狙える。
 だが、その敵は生徒が太刀打ちできるような強さではない。いや、出会えば逃げ出すことも不可能。待っているのは無残な死のみ。
「学園側も、その噂が出回っていることに気づき、慌てて見張りを立てたのだが、時すでに遅く、現在生徒数名がその迷宮に入り込んでいる」
 はあ、と困ったようにプレケスがため息を漏らす。呆れではなく、心配の。
「君達の目的は生徒たちよりも早く、迷宮を抜け、フロアボスを倒すことだ。無論、途中で生徒たちを見つければ、戻るように説得してもいいが……そもそもが禁止された迷宮に入るぐらいだ。ただ戻れといっても、素直に聞いてくれるとは限らない」
 絶対に止めなければならないのは、学生たちが猟兵たちより先に迷宮の最深部に進入することだ。学生たちにとって、災魔との戦いは日常であり、当然失われていく命も多いだろう。だが、だからこそ被害を出さずにいられるのならばそのほうがいい。
「迷宮に入るとすぐに、迷路になっているエリアに到達する。学生たちはまだこの迷路でてこずっている状態だ」
 迷路の先は図書館だ。無数の書架が並んでいるが別段迷路状態というわけではないため、迷うことはない。ただ、オブビリオンが潜んでいる。
 これを撃破すれば、その先にエリアボスの住まう温室が見えてくる。
「まず目指すは迅速な迷路の突破だ。迷路の突破方法については、色々あるだろう。力技で攻略するもよし、速度を活かして迷宮をショートカットするもよし。競争相手の生徒達の行動を読んで出し抜き先行してもいい。ああ、それと、これを渡しておこう。迷路部分の地図だ」
 手渡されたのは、手書きの地図の、そのコピー。
 予知を頼りに、プレケスが大急ぎで書き上げたものだ。多少の誤差はあるだろうが、そこまで大まかなずれはない。罠についても、『落とし穴、危ない』『粘着、くっつく』などと細かく書き込んである。字は綺麗なので読みづらくはない。
「迷路部分は小さな部屋の寄せ集め、だな。扉はあったりなかったり。罠のスイッチになってる場合もあるので気をつけてほしい。部屋の壁はそこまで分厚くないので、隣の部屋の大きめの声ならば聞こえるだろう」
 地図を見る限り、存在する罠は致命傷となりそうなものはまずない。抜け駆けを狙おうと思う程度に腕に覚えのある生徒ならば、多少の怪我で済むだろう。ただ、一度はまれば抜け出すには時間がかかるのは確実だ。
「私が君たちに告げられる情報はここまでだ。敵は強力だが、君たちなら切り抜けられるだろう。……目的を果たした君たちの、無事の帰還を待っている」


白月 昴
 はじめまして、マスターの白月・昴と申します。
 よろしくお願いします。
 皆さんに楽しんでいただけるよう、精一杯努めさせていただきます。

 立ち入り禁止の迷宮に入り込んだ生徒より先に、その最深部にいるフロアボスを打ち倒してください。
 第一章は迷路の突破です。
 【POW】壁を破壊するなどして進むことができます。ただ、さすがに入り口から出口までは抜けません。
 【SPD】事前に渡された地図をじっくり見て、最短距離を探せます。
 【WIZ】比較的安全そうな罠に学生を誘導する、言葉巧みに戻ることを促すなどができます。
 学生たちは、頑固かもしれませんが、悪い子たちというわけでもありません。
 転校生が強いことは、理解しているつもりです。ただ、それでも常に最前線で戦い続けてきた彼らの矜持が、ただ任せっぱなしにするということを許せなかったのです。もちろん一攫千金という言葉に、惑わされたところもありますが。
 反省させるにしても、無事に学園に戻さなければなりません。そのためにも、猟兵の皆さんの力をお貸しください。
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第1章 冒険 『冒険競争』

POW   :    力技で迷宮を攻略する

SPD   :    速度を活かして迷宮をショートカットする

WIZ   :    競争相手の生徒達の行動を読んで出し抜き先行する

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

枦山・涼香
魔法学園に来ますとわたしも学生になったようでワクワクいたしますね。…転校生扱いですから、間違いではないのでしょうけれど。

と、呑気なことを言っている場合ではありませんか。
あらましは地図を頼りにしつつ、効率的なショートカットを探しましょう。
壁を壊すにしても、そんなに何枚も抜くのは大変です。必要な箇所を絞った上で、該当の箇所を剣刃一閃で切り裂いて、道を拓きましょう。
【鎧無視攻撃】を載せたこの大太刀にて、どんな壁も紙細工のようにしてやりましょうとも。

しかし壁抜きとかイケないことをしているようで、楽しくなってきてしまいますね。


朱・瑞洪
渡された地図から【情報収集】によって最短距離を導き出す。

導き出された結果、次々と迷宮の壁を火龍神機銃砲で【串刺し】にし【零距離射撃】を放って崩しながら前進する。

「ふっ…これが一番冴えたやり方って訳だ!」



迷宮に一歩入れば、そこはすぐ迷路エリア。最初のひと部屋目はトラップがないことは事前情報でわかっている。
 その部屋に真っ先に立ったのは、二人。
「魔法学園に来ますとわたしも学生になったようでワクワクいたしますね。…転校生扱いですから、間違いではないのでしょうけれど」
 妖狐の枦山・涼香がその言葉の通り、迷路を前に普段の穏やかな微笑みに、喜色を乗せた。だが、その表情もすぐにぴりっとしたものへと切り替わる。
「と、呑気なことを言っている場合ではありませんか」
「そうだな。学生どもが奥に入り込む前に、何とかしないとな」
 隣から聞こえてきた声のほうへ、涼香のぴんととがった狐耳が向く。
 隣に立つのは、頭部を紅い布で何重にも巻き付けて、目元以外の顔を隠すドラゴニアン、朱・瑞洪。
 瑞洪が懐から、渡されていた地図を取り出す。
「せっかく地図があるんだ、これを使わない手はないだろう」
「ええ、効果的な場所を見つけませんと」
 二人して、地図を覗き込む。
「こちらはどうでしょうか?」
「いや、こっちのほうが楽だろ」
「なるほど、確かにそうですね」
 二人の意見をあわせて、最も効果的なショートカットを見つけ出す。
「じゃあ、いくか」
 地図をしまい、最初の壁へと瑞洪が足を向けた。だが、それを止める声がした。
「まずは私に私にお任せ願えませんか?」
 穏やかな笑みのまま、涼香が腰に佩いた太刀に手をやる。
「ああ、かまわんが。破る壁はいくらでもあるからな」
「ありがとうございます」
 数歩下がり、瑞洪が場を譲る。礼を言うと涼香が壁の前に立った。
「参ります!」
 涼香の太刀が一閃した。
 ただそれだけの動作で、侵入者を阻む迷路の壁が、その強度などたやすく無視して、まさに紙細工のように切り裂かれていく。
 音を立て、瓦礫と化した壁を前に、涼香は穏やかな微笑を崩さない。
「次は俺が行く」
 瑞洪が持つのは、彼自身が開発した魔導蒸気機械。槍と銃砲が合体したような見た目と機能を有する武器だ。
 壁に槍を突き立てると、そのまま砲弾を放つ。零距離で放たれた弾の威力に耐えられず、壁がすさまじい音を立てて崩れていく。新たな道が二人の前にできた。
「ふっ…これが一番冴えたやり方って訳だ!」
 瑞洪の言葉に、涼香が笑顔を持って答えた。
「さて、さっさといくぞ」
 どんどん先に行く瑞洪の下へ、涼香が駆け寄り、その横に着く。
「しかし壁抜きとかイケないことをしているようで、楽しくなってきてしまいますね」
 楽しげな笑みのまま、涼香が変わらぬ見事な太刀捌きで続く壁を切れば、それに答えるように瑞洪が壁を串刺しにし破壊していく。
 二人の猛攻に、迷路の壁など在って無いに等しかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アリア・ティアラリード
魔法学園 騎士科の生徒として転入して日が長いので、
猟兵に対する彼らの反応は良く分かっていて、苦笑を浮かべるアリア

とはいえ放置も出来ないので必要に応じて《力任せに》壁をぶち抜き、追いつけば説得開始!
出来るだけ彼らのプライドを刺激しないよう《優しく》説得します。
時には上目遣いで《手を握って》少し《誘惑》なんかもしてしまいます。
今日もアリアはみんなの優しいお姉ちゃんなので!
……でも、もし暴れたり逃げ出したら容赦しません。【フォース・ブレード】で取り押さえ
分かってくれるまで丁寧にしつこく丹念に言い聞かせます

POW:【フォース・ブレード(サイコキネシス)】《怪力》《優しさ》《誘惑》《手をつなぐ》



道を切り開く彼らの後に続こうとして、しかし多重人格者のアリア・ティアラリードは足を止めた。
 声が聞こえたのだ。
 破壊音の響き渡る迷路で何故聞こえたかといえば、それはもう、みんなの優しいお姉ちゃんだからだとしかいえない。
 危ないところに入り込んだ彼らを、放置しておくわけには行かない。分かってくれるまで丁寧にしつこく丹念に説得し学園に戻さないと。暴れたら……容赦はしないけれど。
 学園にきて長いアリアには、生徒たちの一部が持つ猟兵に対する複雑な思いもよくわかっている。少し苦笑を浮かべて、進路変更。
「こっちですね」
 えいっと力任せに武器を振るい、声の主のもとへと続く道を作っていく。
 そして見つけた。
 落とし穴に落ちた一人と、それを助けあげている一人。
 壁を破壊し、現れたアリアをぽかんとした顔で見ていた。だが、すぐに猟兵と気づいたのだろう、あと一息というところまで上がってきていた生徒を、もう片方が力任せに引き上げる。
 二人して警戒姿勢をとり、アリアを睨みつける。
「ここは、俺たちの世界だ。俺たちが、守るべき世界なんだ」
「猟兵が強いのは知ってるが、だからってはいはいと任せられるもんか」
 アリアはたたたと二人に駆け寄ると、それぞれの手をぎゅっと握り、にこりと笑う。
「誰かに任せっぱなしにするんじゃなくて、自らの手で自らの世界を守ろうとする君たちはすっごく偉い。けどね、だからといって、周りの人に不必要な心配をかけるのはいけないことなんじゃないかな?」
 ぎゅっと手を握られ、優しい声で、しかもかわいい女の子に至近距離で語りかけられ、生徒二人が顔をうっすら赤くする。
「お、俺たちは守られるばかりじゃない!」
 どぎまぎしながらの反論に、うんうんとアリアが頷く。
「もちろん、君たちがいなければ世界は守れないわ。だからこそ、君たちが不必要に危険な場所に入って、それで戦えなくなるのは、いけないことじゃないかな?」
 もともと、禁止区域に入ることに多少の罪悪感を持っていた彼らは、その言葉にしぶしぶとだが頷いた。
「あ、あの、また四人、仲間がいるんだ……いるんです」
「先に罠を見てくるって……そいつらまだ、戻ってなくて……」
 心配そうな顔をする二人に、アリアはにっこり微笑みかける。
「大丈夫。お姉ちゃんたちにまかせておいて。じゃあ、ちゃんと学園に戻っててね」
 そういうと、フォースブレイクで新たな道を切り開き、アリアは先を急ぐ。
 そのさまをみて『猟兵、すげえ』などと思われているのは、お姉ちゃんのあずかり知らぬところであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーゼ・レイトフレーズ
【WIZ】で判定

力ある生徒の立場で一攫千金の噂を聞けば私も飛びついただろうな
というか、依頼の報酬金目当てで猟兵になってるんだから同じか
ま、私がボスに一番に駆けつけてもやれることは少ないし生徒を助けるか

悪い子ではなく戦闘経験もある、というのなら力を貸して欲しいと頼んでみて
お宝目当ての子には手伝ってくれたら報酬を払うと条件をつけてみるか
私は依頼の報酬だけでいいしお宝の分前は生徒に分けるのも構わないしな
後は優しさ1技能を使い生徒の気持ちを無碍にせず地図があるから共に行動するのを促そう

そして申し訳ないが迷宮を進みながら安全な罠に嵌ってもらおう
ま、もし帰って叱られるようなら私も口添えしてあげるからさ


シェーラ・ミレディ
【WIZ】
儲け話の匂いに釣られてやってきたが……中々、面倒なことになっているな。
依頼通り、先ずは生徒の安全確保を優先するとしよう。

最初に地図を確認しておき、危険度が低く、かつ時間を取られるような罠の位置とルートを覚えておく。この『粘着、くっつく』とかな。
位置を覚えたら、其方に生徒たちを誘導しよう。

何。転校生に反発を覚えていようが、僕はこの世界の出身だ。相手も巨大な魔法学園の全生徒を把握できてはいないだろう。
「手伝ってくれ。僕一人では持ち帰れないほどの宝を見付けた!」
とでも言って誘うぞ。技能で言えば言いくるめ、コミュ力辺りか?
生徒たちが罠にひっかかったら、助けを呼んでくるとでも言って先へ進む。


桜・吹雪
一人称:私(わたくし)
二人称:~様

「皆様を無事に生還させること」を一義に行動致します。
探索者として得た技術(SPD)を生かして、事前に地図を読み込み先回りできるコースを模索しますわ。
途中でトラップを見つけた際は、外見等の特徴をしっかりと記録しておきますわ。
地図を検証のうえ、「ここは高い確率で通る道(他に迂回路がない、他に二択三択しかないような通路)」に、「レプリカクラフト」で、覚えた仕掛け罠を設置致します。10㎡を10箇所(道幅が広ければ20㎡/箇所)、生徒様が怯むような見た目が派手で凶悪そうな罠、逆に隠密製の落とし穴等に致しましょう。
皆様、ご無事でいて下さると嬉しいのですが。



別の猟兵があけた穴を、早足に二人の猟兵が歩いていた。
「儲け話の匂いに釣られてやってきたが……中々、面倒なことになっているな」
 ミレナリィドールのシェーラ・ミレディが、仰々しくため息をついた。それに対して、人間のリーゼ・レイトフレーズが苦笑する。
「まあ、そういうな。たぶん、力ある生徒の立場で一攫千金の噂を聞けば私も飛びついただろうな」
 というか、依頼の報酬金目当てで猟兵になってるんだから同じかと考える。
 そんな二人の傍らに、気配がもうひとつ現れた。先行していたミレナリィドールの桜・吹雪だ。彼らの隣を同じように早足で歩き出す。
「シェーラ様、リーゼ様、お待たせいたしましたわ」
 吹雪はこれまで、探索者として得た技術を生かして、状況を探っていたのだ。
「現在この迷路に残っている生徒の方は四名ですわ。このまままっすぐ行けば、回り込めますの」
 吹雪からもたらされた情報に、シェーラはよくやったとばかりに尊大に頷き、リーゼはありがとうと礼を述べた。
「ま、私がボスに一番に駆けつけてもやれることは少ないし生徒を助けることにする」
「そうだな。先ずは生徒の安全確保を優先するとしよう。生徒より先に奥まで進めというのが依頼だからな。つまりは奥に進めなくすれば、あとはゆっくり進めるというものだ」
 その言葉に、二人も同意を返し、早速ターゲットに向けて駆けだした。

 四人の生徒が緊張した面持ちで、迷路を進んでいた。
「おーい、そこのお前たち」
 そこにシェーラの声が響いた。何事かと彼らが足を止める間に、わざと息を切らした様子でシェーラが彼らの元へ駆け寄ってくる。この世界出身であることもあって、猟兵だとは気づかれてはいない。
「手伝ってくれないか。僕一人では持ち帰れないほどの宝を見付けたのだよ!」
 シェーラの言葉に、当然疑いのまなざしが向く。何故、何も関係ない自分たちにそんなうまい話を持ってくるのかと。
「僕だって独り占めできるならしたいさ。だが持てないものはしょうがないだろう。先ほどすごい破壊音がしていたが、猟兵が来たようでね」
 猟兵、その言葉に四人がざわりとする。
「このまま置いていってやつらに横取りされたら業腹だろう。それに、やつら無茶苦茶な方法で先行しているようだからな。最深部にたどり着いたはいいが、フロアボスはすでに猟兵の手に、なんてことになったら、眼も当てられない」
「それは……」
 生徒たちに動揺が広がる。可能性としてあってもおかしくはないからだ。
「というわけで、僕はせっかく見つけたものを持って帰ることにする。君たちもどうだい」
 シェーラの誘いに、リーダー格の生徒が口を開きかけた。だが。
「お、俺もそうしようかな」
 ぽつりと生徒の一人が呟く。
「お、おい、何を言い出すんだ、お前」
「いやだってさ、猟兵に採られるよりいいじゃないか」
 疲労の滲んだ顔で主張する。ここまで罠だらけの迷路を常に警戒し続ける状態が続いているのだ。確かに致死性の罠はなかったが、それでも引っかかれば時間を食われるタイプの罠ばかりだった。
 そのなかで、猟兵がすでに先行しているといわれれば、あきらめも出てくるというものだ。
 結局二名の生徒が、シェーラとともに宝を持ち帰ることを選んだ。
 シェーラとともに去っていく二人に小さく悪態をつくと、リーダーともう一人は、先へと足を進めた。
罠を回避しつつ、何部屋か進んだ先で、今度は罠を解除しているリーゼに出会う。
「おや、君たちは学園の生徒だね。ここは立ち入りを禁止していたと思うが」
 かけられた言葉の内容に、目の前の人物が猟兵だとあたりをつける。一気に警戒度を増した生徒に、リーゼが苦笑を浮かべた。
「ああ、別にここから外に連れ戻そうなんてしないから待ちなさい。ふむ、目的は迷宮の宝かな」
「……そうだといったら?」
 何を考えているのか、何を言い出すつもりなのか、不信感をあらわにする彼らに、リーゼが優しく提案する。
「では一緒に行くかい?」
「は?」
「え?」
「みたところ戦闘経験も有りそうだし、手を貸してくれるなら助かる」
「……手を貸して、それで俺らに何の得があるっていうんだ」
「手伝ってくれたら報酬を払うよ。そうだな、フロアボスの部位などどうかな」
 金だけなら、シェーラについていってもおかしくないはずだ。そうでないなら、彼らは最深部につく必要があるのだろうとリーゼは考えたのだが、どうやら当たっていたようだ。生徒一人の目の色が変わったのが見て取れた。もう一押し、というところか。
「フロアボスの分前は生徒に分けるのも構わないしな。貴重とはいえ素材などもらっても使いようがないしね。私は依頼の報酬だけでいいし」
 どうだろう、と優しげな口調と笑みでそういわれると、片方の生徒がそれなら、と小さくつぶやく。それにリーダー格の生徒が食って掛かる。
「おい、こいつ、猟兵だぞ」
「わかってるよ。けど俺は、どうしても、今の研究を進めるためには、フロアボスのアイテムがいるんだよ!猟兵と行くほうが確実じゃないか!大体二人でこの迷宮を抜けられると思ってるか?無理だろ!それくらいわかるだろうが、この頭でっかち!」
「なんだと!この根性なし!」
 二人の生徒は睨み合い、お互いが同時に顔をそらす。
「勝手にしろ!俺は絶対、猟兵なんかに頼らないからな!」
 捨て台詞をはきながら、どすどすと荒く歩いて生徒は次の部屋の扉の前へ。
 隣部屋に入る前に一度振り返り、もう一人の生徒を睨むと、ばたんとすさまじい音をさせ扉を閉めた。
 イライラした様子で、続く部屋へと進む。何の罠もない部屋が続いたからか、苛立ちのせいか、生徒はその部屋へ確認せずに入ってしまう。
 扉を開ければ次の扉が見えた。部屋の中に生徒が入った途端、今しがた通った扉がばたんと勝手に閉まった。初めての事態に生徒は反射的に振り返ろうとしが、できなかった。
 原因は間違いなく、視界に入った赤。赤い液体が床に広がっていた。正面の壁はびっしりと棘を生やしている。そして棘に突き刺さり、赤い液体を流している、何か。扉が押し戸になっていたため、入る時点では生徒の視界からはさえぎられていたのだ。
「ひっ!」
 生徒は顔を青くして固まった。今までこの迷路にあった罠は、行動阻害がメインのようで、致死性の高いものは何一つなかった。だがそれは、これからもないという保証でないことにやっと思い当たったのだ。
 この場にい続けることは危険だと気づき、罠発動のトリガーを刺激しないようにじりじりとひとつの扉のほうへと後ずさる。
 扉のノブに手をかければ、カチャリと音をたてた。生徒の表情がほっと緩む。そのまま後ずさりながら、ゆっくりゆっくりと部屋に一歩入る。だが、途端足元がつるりとすべり、派手に背後に転倒した。
「おわ!ってなんだこりゃ!くそ、離れねえ!」
 ねちゃりとした感触に先ほどの恐怖がよみがえり、慌てて立とうとしたが、くっついて離れることができない。じたばた暴れれば、さらにいろんなところがくっついていく。
「その罠はわたくし特製のものですので、やすやすと外れることはありませんわ」
「うひゃっ!」
 そっと現れた吹雪が、生徒の動きを止めるために言葉をかける。罠から逃げることに意識を奪われていた生徒が、悲鳴を上げる。
「だ、誰だ!いや、いやわかるぞ。お前、猟兵だろ!おい、いますぐ俺を自由にしろ!」
「申し訳ありませんが、それはできませんわ。私の目的は皆様を無事に生還させること。ご不便をおかけしますが、どうかこのままお待ちくださいませ」
 やや申し訳なさそうに言う吹雪に、生徒が食って掛かる。
「な、なにが無事だ!生徒を串刺しにしてるじゃないか!」
「ご安心ください。あれも含めて罠ですわ。つまり、作り物ですの」
「へ?」
 生徒がぽかんと口を開く。
「いうなれば人形です。すみません、驚かせすぎてしまいましたか?」
 説明が足りないと思った吹雪の言葉は、生徒にへの追い討ちになった。人形にビビッて、別の罠に引っかかったのだと気づき、かあっと生徒が顔を赤くした。
「これで全員確保か」
「そのようだな」
「お、お前らはさっきの!」
 シェーラとリーゼの顔を見て、じたばたと生徒が暴れだそうとするが、しっかりとくっついた体はびくともしない。
「だましたな!!」
「これが仕事なんでね。安心しろ、危険度の低い罠を選んで嵌めてきただけだ。帰りにはちゃんと回収してやろう」
 シェーラが尊大な物言いで答える。その言い方にますます生徒がヒートアップ。
「なにが安心だ!くそくそくそ!」
「申し訳ないが、君たちが最奥にたどり着くのはどうしてもとめければならなくてね。ま、もし帰って叱られるようなら私も口添えしてあげるからさ」
 叱られるという言葉に、ルールを侵して進入しているのが自分のほうだということを思い出したのか、生徒はぐっと口を閉ざす。
「さて、じゃあ、僕たちも先行したやつらの作った近道を通らせてもらうとするか」
「ああ、そうしよう」
「では失礼させていただきますわ」
 吹雪が生徒に向かい優雅に礼をすると、三人は、この迷路のゴールへ向けて駆け出していった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『書物の魔物』

POW   :    魔書の記述
予め【状況に適したページを開き魔力を蓄える】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    ページカッター
レベル分の1秒で【刃に変えた自分のページ】を発射できる。
WIZ   :    ビブリオマジック
レベル×5本の【毒】属性の【インク魔法弾】を放つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


数々の罠にあふれた迷路を抜けた猟兵たち。その目に映るのは、荘厳といってもよい造りをした、巨大な図書館。
 玄関ホールに足を進めれば、隙間なく本が詰められた大量の書架が、びっしりと並び置かれているのが見て取れた。プレケスの情報によれば、ここにはオブビリオンが潜んでいるはずだ。迂回する方法はなく、フロアボスにたどり着くにはここを突破するしかない。
 フロアボスにたどり着く前の前哨戦が、始まろうとしている。
桜・吹雪
生徒様の無事も確保できましたし、まずは安心ですわね
後は、迷宮の中を掃除すれば完了ですわね
参りましょう

無量の書籍・・・人類の叡智でございますね
損ねたくはありませんが、私では力及ばないかもしれませんわね

・・・なんでございましょうか?(体の所々が真の姿の桜の花びらにかわり舞い始めるのを不思議そうに見下ろして

まずは敵を誘いだしましょう
SPDユーベルコードで【白蛇】を呼び出し、共に【殺気】を放ちながら高速で書架を駆けまわり囮になります
【見切り】【学習力】でパターンを覚え、【逃げ足】で接近しますわ
白蛇の体で締付け逃がさず妖刀で仕留めます
ツカマエテ、ハナシマセンワ
他の方の助力が必要であれば白蛇とわかれ応援を


シェーラ・ミレディ
ここまでは概ね順調だな。危険があるならここからだが……。
書物の魔物か。内容を書き写すことが出来れば高く売れそうだとはいえ、そこまでの余裕はないだろう。
何せ僕は4丁の精霊銃を扱うスタイルだ。腕が足りないぐらいなのに、この上にペンを持つなんてとてもとても。
……待てよ、記憶すればいけるか?

先ずは敵の動きを観察する。攻撃してきたら「彩色銃技・相思相愛」で、僕に当たるだろうものだけを撃ち抜いていくぞ。回避も併用できれば尚良し。
毒だというなら当たらねば良いのだ。周囲の状況を把握しつつ、味方に流れ弾が行かぬよう気を付けるぞ。
隙があれば敵を直接攻撃するが、何、他に人がいるなら使えば良いのだ。
反撃は任せた!



生徒たちの無事を確保できたことに、ミレナリィドールの桜・吹雪はほっとしていた。
「後は、迷宮の中を掃除すれば完了ですわね」
 吹雪の言葉に、同じミレナリィドールのシェーラ・ミレディがうむうむと鷹揚に頷く。
「ここまでは概ね順調だな。危険があるならここからだが……」 
 ホールから見る図書館は、ここが地下迷宮だとは信じられないほど、荘厳なつくりをしていた。磨き上げられた石の柱、滑らかな壁。高い天井には、淡い光を放つ石がはめ込まれ、やわらかい光を図書館に満たしていた。代わりに窓はない。本を保管する場所としては、遮光は当然、というところなのだろう。
「無量の書籍・・・人類の叡智でございますね」
 広がる光景に感嘆する吹雪。内容がなんであれ、できれば損ねたくない。だが自分の実力では厳しいだろうかと、吹雪は思わずため息を漏らした。
「書物の魔物か」
 一方、シェーラの注意は、ここに潜むオブビリオンのほうに向いていた。といっても倒し方ではなく、『内容を書き写すことが出来れば高く売れそうだ』という、商魂逞しい方向にである。
 とはいえ、さすがにそこまでの余裕はないだろうとも思う。何しろ自分は4丁の精霊銃を扱うスタイルだ。腕が足りないぐらいなのに、この上にペンを持つなんてとてもとても。
「……待てよ、記憶すればいけるか」
 チャレンジぐらいはしてみよう、と軽く考える。とはいえ、狙いすぎないようにしよう。自分の体に傷をつけるような事態になっても困る。
「さて、敵をどうやって炙り出すか、だな」
「それはわたくしにお任せくださいませ、シェーラ様」
 そういうと、吹雪はすっと息を吸い。
『七重に巻かれて一廻り。巻かれ絡み融け合い、一つになりましょう。』
凛とした声が言葉を紡げば、吹雪の身長の二倍はある巨大な白蛇が現れる。彼女の技のひとつ、【梵鐘喰らう五尋の白蛇(ツカマエテ・ハナサナイ)】だ。吹雪はさっとその白大蛇に騎乗する。
「書架の間を駆け抜け、潜む敵を誘い出しましょう」
「よかろう。では僕は、まず敵の動きを観察する。何しろ敵は複数いるんだ。どんな行動をとるかわからんからな」
「はい、ありがとうございます……さあ、参りますよ」
 吹雪が声をかけると、白大蛇が書架の間を走り出す。吹雪と白大蛇、双方が殺気を振りまけば、いくつかの本棚ががたがたと音を立てて揺れ始める。
「!」
 白大蛇が急旋回し別の通路に入り込めば、吹雪たちが先程までいた床に、本のページが突き刺さる。さらに次々突き刺さる本のページをかわしつつ、敵を確認する。
 三冊の本が浮いていた。それは見る間に肥大化し、軽く二メートルは超える巨大な本――魔本へとその姿を変えた。
 攻撃を回避しつつ周囲を探れば、ほかの猟兵たちも魔本との戦いを始めているのが見て取れた。早めに決着をつけ、他の猟兵の援護に回らなければならない。吹雪は妖刀を抜き構える。
 数度の攻撃で魔本の技を見切り、相手がページを飛ばした瞬間に距離をつめ、妖刀を突き立てる。
「まずは一体」
 続いて吹雪に飛んできたのは、ページではなく毒性を持つインク魔法弾。二冊から放たれる弾は、十数発。一発一発はそこまで威力がなくても、数が数だ。ましてや毒を持つとなれば、受けるわけにはいかない。
 申し訳なく思ったが、並び立つ書架を盾にするために逃げ込む。だが、すぐさま顔を青くした。
「シェーラ様!」
 吹雪が避けた弾の先には、シェーラがいた。
 先程までの魔本たちの攻撃が、自分をシェーラのいる方向に追い込むためのものだったと、やっと気づいた。
 吹雪が慌ててシェーラの元へいこうとするが、それは意味をなさなかった。
「追尾機能もなく、ただ直線に飛ぶ弾……そんなものが、僕に通用するとでも?」
 シェーラに向かった毒の弾は、その単調な動きゆえ、シェーラの放つ【彩色銃技・相思相愛(アトラクティブガンアーツ・シュートダウン)】によってほとんどが打ち落とされる。打ち落とせなかった弾は、軽やかな動きで避けきった。さらに続く攻撃で、一冊の魔本を蜂の巣にする。
「毒だというなら当たらねば良いのだ」
 ふんと、そんなことも知らないのかといわんばかりの態度をとるシェーラに、残る一冊が空中でばらばらとページを捲る。どうやら怒っているようだ。
「ページを捲るならもっとはっきり捲らんか」
 読めんではないか。
 シェーラの苦情に答えたわけではないだろうが、捲るページの一枚が切り離され、シェーラに向け放たれようとした。
 けれどそれはかなわない。
『ツカマエテ、ハナシマセンワ』
 可愛らしいというのに、どこか背筋を凍らせる声に、おびえたかのように魔本が一瞬動きを止めた。
 その隙を見逃さず、魔本に白大蛇が飛び掛かり巻きついていく。動けぬ魔本に対し、吹雪が容赦なく妖刀をつきたてた。
「うむ、よくやった。さて、ほかのやつらに手を貸すぞ」
「はい」 
 ふと、吹雪の体の所々が桜の花びらに変わり、舞い始めていることに気づいた。
「……なんでございましょうか?」
 それは吹雪の真の姿の片鱗。けれど、記憶を失った彼女にはそれがなんなのか知るすべはない。何よりも、今はそれについて悩んでいる余裕はない。まだ戦いは続いているのだから。疑問を押さえ込み、吹雪はシェーラの後を追った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

枦山・涼香
迷宮の奥にこんな図書館があるだなんて。全部、大事な本だったりするのでしょうか。それとも、迷宮の中にあるのだから、どうでもいい本?

…とはいえ、さすがに全部燃やしたらまずいですよね。
でも脅すだけなら良いでしょう。
狐炎疾走を加減して使い、周囲に狐火を燃え上がらせます。
炎に照らされて【存在感】を増しながら、
「出てきなさい。そうでなければ、あなた方ごと燃やし尽くしてしまいますよ!
と敵を【おびき寄せ】ます。【覚悟】を決めて敵を十分に引きつけたら、抜き放った大太刀を振るい、【鎧無視攻撃】で【なぎ払い】ます。

邪魔をするというのなら、すべて真っ二つに斬り捨ててみせましょう。
ここで止まってはいられないのですから。



「迷宮の奥にこんな図書館があるだなんて。全部、大事な本だったりするのでしょうか。それとも、迷宮の中にあるのだから、どうでもいい本?」
 妖狐の枦山・涼香が感心したように、図書館内を見渡す。ぴんと立った耳もピコピコと盛んに動いている。
「とはいえ、さすがに全部燃やしたらまずいですよね。となると……」
 ひとつ息を吐く。そして、覚悟を決めると厳かに口を開いた。
『――蒼炎よ、我が妖気を糧として燃え上がり、彼奴らを黄泉路へと導きなさい。何一つ残さず、彼奴らの存在を焼き尽くしなさい。』
 涼香の【狐炎疾走(フォックスファイア・オーバードライブ)】が発動する。本来ならば、青白い超高温の狐火が敵を焼き尽くすのだが、今は本を燃やさぬよう手加減され、書架の間を静かに炎が広がっていくだけだ。だが、それが敵にわかるはずもなく、おびえるようにがたがたがたと本棚が揺れる。
「出てきなさい。そうでなければ、あなた方ごと燃やし尽くしてしまいますよ!」
 さらに恐怖をあおれば、たまらず数冊の魔本が飛び出して来る。
 肥大化し、炎の支配者といわんばかりの存在感を示す涼香に警戒をあらわにし、魔本たちはぱらぱらとページを捲る。
「私たちはこの奥に用があるの。邪魔をするというのなら、すべて真っ二つに斬り捨ててみせましょう」
 大太刀に手を添えると、攻撃を食らう覚悟を決め、一気に魔本までの距離を詰める。
 慌てたように魔本たちがページを、涼香に向けて打ち込んできた。ほとんどを避けたが、一枚がわずかに涼香の頬を掠めた。だが、涼香の足は止まらない。
 勢いのまま大太刀を抜き振るえば、防御を容易く貫通し、先程の宣言そのままに魔本たちを真っ二つに切り裂いた。
 ふっと、一息。だが、頬に滲んだ血を手の甲でぬぐうと、即座に走り出す。
 涼香やほかの猟兵たちのおびき出しによって、数多くの敵があぶりだされ、戦いが始まっている。
「ここで止まってはいられないのですから」
 自分たちが目指すのは、この図書館のさらに奥なのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリア・ティアラリード
「……凄い図書館です、きっと素敵な小説もいっぱいあるんでしょうね(ぽややん)」

整然と収められた無数の本、本、本。
ロマンス小説大好きなアリアはつい目を奪われてしまいますが、お姉ちゃんやる時はやります!
うっとりとした表情で書架を眺めながらも、この場に潜む書物の魔物の気配を探ることは忘れずに。
ここを突破すれば後はボスだけ《勇気》を《鼓舞》!
ちっちゃくガッツポーズすれば、ブレザーに収まり切らない豊満なバストが弾んで。
周りに誰かいればつい視線を《誘惑》して集めてしまうかも知れません。

魔書と遭遇すれば【全力妹愛大根斬】!お姉ちゃん全力で頑張るからっ!

「さぁ、後はこの奥のボスやっつけて帰れば万事解決です♪」



「……凄い図書館です、きっと素敵な小説もいっぱいあるんでしょうね(ぽややん)」
 ロマンス小説大好きな多重人格者のアリアは、うっとりとした顔で書架を見ている。なおそんなものはこの書架にはない。すぐに書架から視線をはずし、すでに戦場と化したこの場所を見渡した。
 無論、書架を眺めながらも、魔本の気配を探ることは忘れていない。ほかの猟兵たちにより、潜んでいた魔本はほぼあぶりだされ、後はそれを撃破するのみ。
「ここを突破すれば後はボスだけだもんね」
 やるぞと、ちっちゃくガッツポーズすれば、ブレザーに収まり切らない豊満なバスト(Jカップ)が弾んだ。
 近くにいた男性猟兵が思わず目を引かれ、隣にいた女性猟兵に足を踏まれたりなどしていたが、お姉ちゃんには関係のないことである。
 アリアの前に、魔本が現れた。
「覚悟なさい。お姉ちゃんが倒しちゃうからね」
 どこかぽんやりした口調のアリアを侮ったのか、魔本はすぐに攻撃には向かわない。ページをぱらぱらと捲り、魔力を蓄え、戦闘力を強化しようとした。だが、仮にもフォースナイトを輩出してきた名家に生まれたアリアに、そんな隙を見せてただで済むわけがない。
「お姉ちゃん頑張るからっ!!」
 魔本に向け、小さくジャンプ。落下する勢いを乗せて、単純で重い大雑把極まりない全力の一撃を叩きつける。
 すさまじい音がして、魔本が床にめり込む。それでも勢いは消されず、床が大きく穿たれる。これぞお姉ちゃんの力によって繰り出される【全力妹愛大根斬(オネーチャンスラッシュ)】である。
「まだまだいくよー!」
 お姉ちゃんパワーはまだまだ十分。次の敵を求め、アリアは駆け出した。

成功 🔵​🔵​🔴​

桜・吹雪
皆様の奮戦で、後一押しで突破できそうですわね
体力に余裕がありますので、押し切ってしまいましょう
皆様が万全の体勢で進めるようにするのが、創られたドールである私の使命ですわ
さあ残った敵の【掃除】を始めましょう

引き続き、SPDユーベルコードの【白蛇】と共に【殺気】を放ち敵をおびき寄せますわ
(徐々に真の姿に近づき、白蛇と共に多量の桜の花びらに包まれながら)

他の皆様のところに流れ弾がいかぬよう、遮蔽物と既に仕留めた亡骸を利用して、【見切り】【学習】し、攻撃を回避しながら近接するよう心がけますわ
ページは万能掃除用具ではね除け、妖刀で攻撃を加えますわ

紙片の花吹雪も悪くはありませんが、お掃除が大変そうですわね



先程呼び出した白大蛇と、それに騎乗する吹雪を取り巻くのは、戦場には不似合いな、美しい桜の花嵐。白き大蛇と白い少女を、桜色が取り巻くさまは夢幻のごとく美しく、通った道にはらはらと桜の花びらが舞い降る。
 だが、撒かれるのは桜の花びらだけではない。吹雪は白大蛇と共に、殺気を撒き散らしながら、敵をあぶり出しては追い込んでいく。
「体力に余裕がありますので、押し切ってしまいましょう」
 本当の敵はこの先なのだ、そう思う一方で、吹雪はわずかにほっとして笑みをこぼした。
「皆様の奮戦で、後一押しで突破できそうですわね」
 その言葉通り、踏み込んだときは相当数がいた魔本も、今ではかなり数を減らしていた。
「!」
 吹雪の目に、数冊の魔本からの攻撃により転倒した、一人の猟兵の姿が映った。追撃をかけようとする魔本の様子に、させるものかと、吹雪は魔本と猟兵の間に滑り込こむ。
 獲物が増えたとばかりに、魔本たちが吹雪にページを打ち込んでくる。もしここで攻撃を回避すれば、まだ体勢を立て直していない猟兵に当たってしまう。 
 だが吹雪は焦らず、蒸気式万能掃除用具を変形させる。
「紙片の花吹雪も悪くはありませんが、お掃除が大変そうですわね」
 蒸気式モップへと姿を変えた武器を持ち、くるくると高速で回転させれば、打ち出されたページはすべて弾き飛ばされる。
 思いもよらない防御方法に、近場にいた猟兵のみならず、魔本たちさえ驚いて動きを止めた。その隙を見逃す吹雪ではない。一気に距離をつめ、妖刀『桜吹雪』を魔本に突き立てる。
 近場にいた猟兵もすぐに硬直から復帰し、残る魔本に攻撃を加える。さらに転倒していた猟兵も、お返しとばかりに魔本に武器を繰り出した。
 他の猟兵たちと共に魔本をすべて倒しきり、次へと向かおうとした吹雪に、助けた猟兵が感謝の言葉を告げる。
「礼など不要ですの。皆様が万全の体勢で進めるようにするのが、創られたドールである私の使命ですわ」
 にこりと微笑む。そう、それこそが吹雪の役目なのだから。
「さあ残った敵の掃除を始めましょう」
 そういうと、吹雪は残る敵に向け、白大蛇を駆けさせる。
 吹雪と、他の猟兵たちの活躍により、残り僅かになっていた魔本は、すべて討ち取られた。
 この場での戦いは終わり、図書館にふさわしい静寂が訪れる。
 だが猟兵全員の顔には、今まで以上の緊張が浮かんでいた。
 これからが本番だ。全員が決意を新たに、図書館の奥の、その先にある温室へと足を進めていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『迷宮温室の女王』

POW   :    百裂蔓撃
【髪のように見える無数の蔓】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    捕縛液噴射
【腹部の食人植物】から【刺激臭のする液体】を放ち、【空気に触れると凝固する性質】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    女王の花蜜
レベル×5体の、小型の戦闘用【昆虫型モンスター】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠神楽火・夢瑪です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


面倒な罠の張られた迷路を抜け、図書館に巣くう多くの魔本を打ち倒し、ようやくたどり着いた『温室』。
 蔦に覆われ、半ば隠されていた扉を開き、猟兵たちが中へと入り込む。
 猟兵の目にまず飛び込んだのは、色とりどりの花だ。温室の中を縦横無尽に広がる蔦、そこから咲く花々が、温室の中を満たしていたのだ。あふれる花の香りは、あまりにも濃すぎて、胸焼けさえ起こしそうなほどだ。
 花の楽園といわんばかりのこの場所の、花畑の中央に、それはいた。人と変わらぬ上半身と、異様なまでに膨らんだ下半身を持つ、迷宮温室の女王だ。
「まあ、まあまあまあ、まああ」
 猟兵の姿を認めた植物の女王は、驚いたように話し出す。
「うれしいわ、うれしいわ、なんてうれしいことでしょう」
 猟兵たちを前ににこやかに微笑む。
 一瞬毒気がそがれた猟兵は、だが続く言葉に、この目の前の存在が明らかな敵である、という認識を強固にした。
「よかったわ、よかったわ。はなが、はながげんきがないの。……ごはんが、たりないの」
 女王が猟兵を見る目、それは餌を見る目だ。
シェーラ・ミレディ
成程、これが金のなる木というヤツか。正確に言えば花だが、大して違いはないだろう。どうせ倒してしまうのだからな!
……いや、どこが換金部位なのかぐらいは気にしておいた方が良いかもしれんな。潰してしまっては目も当てられん。

さて、先ずは景気よく行くとしよう。「彩色銃技・華燭之典」で弾幕をはり、寄ってくるであろう虫どもを撃ち落としつつ、本体に攻撃を加えるぞ。
一カ所に留まらず動き回り、特に防御の厚い箇所を探っておこう。守っている所が重要な場所だ。つまり弱点だろう。

ついでに金になりそうな部位も見繕っておくが、まぁついでだな。
……本来の目的ぐらい覚えているぞ。僕を馬鹿だと思ってないか?



艶やかに咲く花の中、くすくすと笑う女王の姿に、ミレナリィドールのシェーラ・ミレディは息を呑み、そして息をこぼす。
「成程、これが金のなる木というヤツか」
 正確に言えば花だが、大して違いはないだろうと気にしない。どうせ倒してしまうのだから。
「……いや、どこが換金部位なのかぐらいは気にしておいた方が良いかもしれんな。潰してしまっては目も当てられん」
 うんうんと頷く。それは大事だ。
 楽しげな様子で敵を見るシェーラの姿に、傍らにいた猟兵が、微妙な表情を向ける。それに気づき、シェーラはむっとした顔で反論する。
「……本来の目的ぐらい覚えているぞ。僕を馬鹿だと思ってないか?」
 なぜか偉そうにふんぞり返る。
「いいか、こいつは貴重素材ばかりのレアモンスターなんだ。学園にだって必要としているやつがいるはずだ。ならば、確保して売り……いや、譲ってやれば、喜ばれる。そう、これは人助けなのだよ!」
「え、いや、まあ、そう、かな?」
 傍らの猟兵がおされ気味になる。
「無論、敵を倒すのが最優先。だが、敵を倒すついでに金になりそうな部位も見繕っておくが、まぁついでだな」
「そ、そうだよな」
 猟兵がシェーラに納得させられるのを待っていた、というわけではないだろうが、女王が動いた。
 ぱあっと、女王の髪にあった蕾が開いた。その花に誘われるように、女王の周囲に眷族と思われる蜂が現れた。
 拳大の蜂は、見ただけでそこまで強くないとわかる。だが。
「多すぎだ!そんなサービスはいらんぞ」
 シェーラがうんざりとした声を上げる。
 蜂の大群。その羽音が起こす音が、温室内に響き渡る。
 それが、戦いの幕開けを告げた。
 すべての猟兵が動き出す。
 蜂を迎撃に行くもの、女王を狙うもの、そのサポートをするもの。
 シェーラもまた走り出した。
 当然シェーラの元にも蜂が襲い掛かってくる。
「虫程度で、僕をどうにかできると思ったか。さあ、遠慮するな。馳走してやろう!」
 無数の、さまざまな精霊の力をまとった弾丸が、次々と蜂を撃ち落していく。シェーラのユーベルコード【彩色銃技・華燭之典(アトラクティブガンアーツ・フルバースト】だ。
 一箇所にとどまらず、女王の周囲を走り回りながら、撃ち込み続ける。そのほとんどは蜂を打ち落とすのみで女王に届かない。
 だが、それでいい。女王にダメージを与えることが目的ではない。
 探っているのだ。女王が守りを固めているところ、すなわち女王にとっての弱点ともいえる場所がないかと。
 そして、その目論見は当たった。
 腹部の食人植物、その周りだけ、防御についている蜂の数が明らかに多い。よくみれば無数の蔓もまた、その周囲に多くあり、防御を固めているように見えた。
「腹だ!腹の花を狙いたまえ!」
 シェーラの声が温室に響いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

枦山・涼香
あなたが主ですのね? 

今度こそ、遠慮する必要はないでしょう。
すべて、燃やし尽くして差し上げます。
そうすれば、もう飢える心配もありませんよ、寂しい女王様。

とはいえ、温室に咲いているだけの花に咎はありませんしね。焼いたところで女王にダメージもいかないでしょうし。
大太刀を抜いて、【覚悟】を決めて女王の間合いに入り込みます。【存在感】のある【残像】を見せて攻撃を【おびき寄せ】、その攻撃の内側に入り込んで躱すことで、いっそう距離を詰めます。
そして、ゼロ距離からの狐炎疾走。【鎧無視攻撃】で周囲に広がるであろう女王の身体全体を灼きます。

ええ、女王。きっと綺麗に花が咲きますよ。あなたの灰を養分にしてね。



温室の女王。
 自分たちを餌としか認識していない存在が、万が一学園に出てしまえば、待つのは大惨事だ。迷宮は変化し続けている。ここが生徒の入り込める場所に、つながらないとも限らない。
 看過などできるはずもない。
「今度こそ、遠慮する必要はないでしょう」
 妖狐の枦山・涼香は女王へ向け、駆け出す。
 図書館では、さすがに火力を絞らなければならなかった。けれど、今度こそ、遠慮する必要はない。最大火力で、焼き尽くしてしまえばよいのだ。とはいえ、温室に咲いているだけの花に咎はない。花たちを焼いたところで女王にダメージもいかないだろう。
 ならば、と覚悟を決める。
 さらに速度を上げ、女王のもとへ。途中襲ってきた蜂は、大太刀で一刀の元に切り捨てる。
「ごはん、きた、おはな、きれいになるね、ふふふふ」
 笑う女王に涼香は微笑み返す。
「ええ、女王。きっと綺麗に花が咲きますよ。あなたの灰を養分にしてね。すべて、燃やし尽くして差し上げます。そうすれば、もう飢える心配もありませんよ、寂しい女王様」
「ほのおいや」
 女王はいやいやと首を振ると、髪のように見える無数の蔓を、涼香にむけて打ち込んでくる。だが、それが涼香の身に触れることはなかった。残像を敵の目に焼き付けることによって、攻撃を残像のほうへとおびき寄せたのだ。
 それでも、回避はぎりぎりだ。大雑把な女王の攻撃は、それゆえに範囲が広かった。あと少し範囲が広ければ、体を抉り取られていたかもしれない。
 その恐怖に立ち竦んでいる暇はない。
『――蒼炎よ、我が妖気を糧として燃え上がり、彼奴らを黄泉路へと導きなさい。何一つ残さず、彼奴らの存在を焼き尽くしなさい。』
 涼香に呼び出された炎が、舐めるように女王の体に広がっていく。涼香のユーベルコード【狐炎疾走(フォックスファイア・オーバードライブ)】だ。
 だが、仮にもフロアボスとばれる存在だ。ダメージは与えても致命傷には届かない。やわらかそうに見えて、かなりの強度を誇る表皮を軽く焼いただけだ。
 女王も、少し嫌そうな顔をしているが、危機感を覚えているようには見えない。
「ならば!」
 女王の頭部を狙おうと大太刀を振るう。けれど響いた『腹を狙え』という声に、振りぬこうとしていた大太刀の軌道を、無理やり変更させる。
 その攻撃に、女王の顔に明らかな変化が見えた。苛立ち、怒り、そんな感情が、表情から見て取れた。
 蔦の半数が、腹の花を守るように集まり、残り半数が至近距離にいる涼香に猛攻を掛ける。さすがに凌ぎきれなくなり、涼香は他の猟兵にサポートされ、女王から距離をとった。
 だが、涼香の行動により、女王が腹の花を守っていることがわかった。これで急所である可能性が格段に高くなった、と言えるだろう。

成功 🔵​🔵​🔴​

桜・吹雪
図書館の奥が花畑…不思議な作りですわね
美しい花々、噎せ返るような香りですわ
ご歓待痛み入りますが、被害を増やすわけには参りません
ここで片付けさせて頂きましょう

相手に組み付き、皆様の盾となりますわ
SPD【妖刀開放】し、桜吹雪と共に高速で接近致します
私の体と花びら、混じりすぎてどちらかわからなくなりそうですわね
【殺気】を放ち、できるだけこちらに意識を引きつけますわ
【見切り】【学習力】し、高速で1秒でも速くたどり着き、1秒でも長く自分と相手の命を削り続けますわ
まき散らされた液体は、花吹雪を射出し相殺を狙いますわ

創られた私と貴女
共に散るまで舞い踊りましょう
どちらも、なくても誰も困らないものなのですから



図書館の奥が花畑とは、なんと不思議な作りだろうか。それが最初にミレナリィドールの桜・吹雪が抱いた感想だった。
 はらはらと、吹雪自身から舞い落ちる桜の花びらが、ひらりひらりと温室の花の上に積もる。
 花畑の中心に鎮座する女王。
 他の猟兵と同じく、最初の態度には吹雪も驚いた。だが、続いた言葉にやはりこれは敵だと、打ち滅ぼすべき存在なのだと理解する。
「女王のご歓待痛み入りますが、被害を増やすわけには参りません。ここで片付けさせて頂きましょう」
 他の猟兵と共に、女王へ向け駆け出す。
 襲い来る蜂たちの動きを見切り、妖刀で切り裂いていく。弱くてもこの数だ、放置すれば他の猟兵の行動を阻害するかもしれない。それを許してはならない、そう思いながら蜂を狩っていた吹雪だが、ぱっと広がった青白い炎に一瞬手を止めた。
 状況を確認しようと周囲を見渡した吹雪の目に、一人の猟兵が映る。もっとも女王に肉薄していた大太刀を振るう猟兵が、女王に攻撃を防がれ、さらに反撃にさらされているのが見て取れた。
「させませんわ!」
『二度咲き、夢咲き、狂い咲き。泡沫に乱れ咲き、共に散りましょう。』
 妖刀を構え、ささやけば、吹雪の身を大量の桜が取り巻いた。真の姿である桜吹雪と、妖刀の生み出す桜吹雪が入り混じり、溶け合っていく。
 吹雪のユーベルコード【桜吹雪-散華-(イノチミジカシクルイザケオトメ)】だ。
 高速移動し、一気に女王まで距離を詰める。吹雪の撒き散らす殺気に、女王の意識が目の前の猟兵から逸れる。
 繰り出された蔓の鞭を妖刀で受け止める。
「どうぞお下がりくださいませ!」
 吹雪のかけた声に、猟兵は小さくありがとうというと女王から距離をとった。
 そのことにほっと息を吐き、女王へと向き直る。
 顔を見ただけでわかる。女王は今機嫌が悪い、と。 
 桜吹雪をまとわりつかせ、女王の動きを制限する。それが気に食わなかったんだろうか、腹部の花が動き、激臭のする液体を吹雪に向けて放ってきた。
 これは、空気に触れると凝固する性質があるようで、一時的にとはいえ動きを封じされている猟兵もいる。女王に肉薄するこの位置で動きを封じられることは、致命的だ。
 けれど吹雪は優雅に微笑んだ。
 それに答えるように、花びらたちがその舞い方を変え、吐き出された液体の壁となり、相殺していく。
 桜が攻撃を防ぐたび、女王の動きを制限するたび、体の中で何かが削れていくのがわかる。それが寿命というものであるということも理解できる。だが、それは、吹雪にとって刃を引く理由にはならない。
「創られた私と貴女。共に散るまで舞い踊りましょう。どちらも、なくても誰も困らないものなのですから」
 桜の少女と、温室の女王。
 命がけの舞はまだ始まったばかり。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリア・ティアラリード
「嬉しいですか、それは本当に良かったです♪」

たおやかで可憐な外見、柔らかで愛想の良い対応に思わず小さく会釈
つい反射的に【礼儀正しく】挨拶を返してしまいます
ニコニコ受け答えをしてしまうお嬢様ですが、女王の二の句を聞いて反応も変わって
栄養が足りていないのは可哀想。可哀想ですが、やはり物事には限度が

「でも…――ワガママ言う子にはお姉ちゃん厳しいです!」

依然和かな、しかしどこか【恐怖を与える】でしょう
次の瞬間勢いよく【ダッシュ】で飛び出し無数の残像から【二回攻撃】で
凄まじい勢いで撃ち出される『飛櫻剣』の音速斬撃!
雲霞の如く襲いかかる『百裂蔓撃』を【武器受け】で叩き落としながら味方が攻撃するのを助けます



たおやかで可憐な外見、柔らかで愛想の良い女王の対応に、多重人格者のアリア・ティアラリードは思わずにこにこしながら、会釈を返してしまったけれど。
 誰かが、嬉しいと、喜ぶのはとてもよいことだ。だが、続く女王の言葉は、お姉ちゃんの限度を超えてしまう。
「栄養がないのはかわいそう。でも…――ワガママ言う子にはお姉ちゃん厳しいです!」
 アリアがお仕置きモードに入ったようだ。にこやかなのに、どこか恐怖を感じさせる笑みを浮かべ、女王に向け走り出す。傍らにいた猟兵が思わず道を空けた。
 女王への距離を詰めながら、気づく。一人の猟兵が、女王の動きを封じ込めていることに。
 猟兵を取り巻く桜吹雪のせいで、その姿が少々見づらいのだが、それでもわかる。その猟兵が自分より小さな女の子だと。
 それを認識した次の瞬間、アリアの速度が上がった。お姉ちゃんとして、見過ごせるものではない。
 力強い踏み込みからのダッシュは、残像すら生み出した。アリアの剣幕に気づいたのか、微妙に女王が体を動かす。それはアリアには逃げようとしているように見えた。
「逃がしません!これで!」
 無数の残像から不可視のフォースの刃が二本、衝撃波を伴いながら、女王に向けて放たれる。アリアのユーベルコード【飛櫻剣(フォース・ブレード)】だ。狙うところは、もちろん腹部の花だ。お姉ちゃんはちゃんと周りの話を聞いているのだ。
「やー!それやー!」
 女王がまるで駄々をこねる子供のような声を上げる。猟兵を狙っていた蔓の一部が、攻撃を放棄して花を守りに向かう。
 アリアの気合の一閃がその蔦を切り裂いた。しかし残念ながら、腹の花にはとどかない。だが、それでいいのだ。
 この場で戦っているのは自分ひとりではない。自分の攻撃が女王の防御を削れば、それだけ味方の攻撃が女王に届く。
 アリアは襲い来る蔓を、武器で受け、叩き落しながら、一人でがんばっていた猟兵に声をかける。
「大丈夫?お姉ちゃんが来たから、もう大丈夫だからね!」
 猟兵は少し驚いた顔をした後、小さく「ありがとうございます」と言った。
 襲い来る触手を斬り飛ばしながら、アリアはにこりと微笑んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーゼ・レイトフレーズ
さて、お目当てのお宝に辿り着けたか
あの学生達の為にも貴重な部位は残して仕留めないとな

スナイパー、援護射撃、先制攻撃技能を使い
敵の攻撃が届くより先にこちらが狙撃して味方を援護する
一応狙撃手だし、これくらいはしとかないとね?

敵に隙が出来る、私に標的を変えたら
契約精霊の火の力をSTARRY SKYに込めて
援護射撃を除く攻撃技能をフル発動した必殺のユーベルコードを使う
狙うは他の猟兵の行動で暴かれた弱点部位

もし接近されたら最悪対物ライフルのフルスイングを頭にでもお見舞いして
その隙に前衛組とバトンタッチしよう
精霊弾で私の魔力は空、後は援護しか出来ないからね

飴を咥えて余裕のある態度
どんな時も冷静さを失わない


リウ・カレナリエル
蒸気だしながら動いてるあれとかこれとかなんなのよぉ…
あ、本だらけのところ抜けたら森に近い感じのところ…って、もう始まってる!
で、出遅れたわっごめんなさーい!(駆け込んでいきます

森にでるアルラウネっぽいけど、もっと凶暴そうね
みんなの掩護射撃、頑張るわ!
ハチの魔物が厄介ね、ユーベルコードで飛び回りながら、制空権を確保して弓で打ち落とすわ
配下とかボスが邪魔をするなら-風を起こすわ!
みんなの邪魔させないったら!

ハチの出現がおちついたら、ボスのまわりをとびまわって、掩護射撃を加えるわ
蔓、粘液には注意ね、味方か自分が狙われたら見切りでかわすか、迎撃して直撃はさけたいわね
みんな、やっちゃえー!



さて、お目当てのお宝に辿り着けたか。あの学生達の為にも、貴重な部位は残して仕留めないとな。
 人間のリーゼ・レイトフレーズは、そんなことを思いながら、女王から少し離れたところから、猟兵たちの行動の妨げになっている蜂たちを撃ち落とす。
 そんなリーゼの耳に、慌しい足音が届いた。今いる猟兵の足音ではない。聞こえるのは、この温室の入り口からだ。
 敵への警戒はそのままに、手を止め、音の元へと視線を向ける。戦場は常に状況が変わるもの。変化を見逃すわけにはいかない。
「で、出遅れたわっごめんなさーい!」
 慌てふためいてエルフのリウ・カレナリエルが、駆け寄ってきた。
 実は、機械などが苦手で、図書館の出入り口付近にあった蒸気機関に慌てている間に、戦端が開かれてしまったのだ。
「大丈夫だ。まだ敵は健在だからな」
 リーゼは落ち着かせるために穏やかにリウに語りかける。
「よ、よかったあ。あ、よくないね」
 リーゼの言葉にリウはほっとしたが、すぐ顔を引き締める。そして、遅れた分を取り戻そうとばかりに、周囲に目を配る。
「あれがフロアボスなのね。森にでるアルラウネっぽいけど、もっと凶暴そうね」
「実際凶暴だね」
「……ハチの魔物が厄介ね。飛び回りながら、制空権を確保して、弓で打ち落とすわ」
「飛ぶ?」
 リウの言葉に、リーゼは首を傾げた。エルフに飛行能力はなかったはずなのだが。
「掩護射撃、頑張るわ」
 ふふっと笑うとリウはその力を周囲に広げる。
『風を起こすわ!豊穣の風を!』
 ふわりと、リウの体を風が取り巻く。そのまま飛び上がり、空中を蹴り、さらに飛ぶ。リウのユーベルコード【豊穣もたらす西風ゼフィール(ヴィーゾフ・ファウォーニウス)】の効果だ。
「私に射抜けないものなんてないわ!」
 飛びながら、リウは矢を放ち、確実に蜂たちを撃ち落していく。無論、蜂たちもリウに向け、攻撃を仕掛ける。だが、あちらにいたかと思えばこちらへと、まさしく変幻自在に飛び回るリウを、捕捉することができない。群れで襲い掛かろうとすれば、軽い体が仇となり、リウの起こす風に吹き飛ばされる。
 疎ましいと思ったのか、女王が蔓をリウに向けて伸ばす。
「おおっと!」
 リウがとっさに飛んで、すぐさま矢をつがえ放てば、触手は打ち抜かれ、縫いとめられる。
「お見事だね」
 あちこち飛び回っているリウには聞こえないだろうが、リーゼが賞賛の言葉を呟く。
「さて、と」
 リーゼはライフルを構える。
 リウの活躍によって、蜂はかなり減った。それにより女王までの妨害がなくなった。そして他の猟兵たちの行動により、女王の腹の花を守る触手は激減している。
 ならば自分が狙うのは、暴かれた弱点部位、ただその一点。
『堕ちることのない輝きとなれ―――Cassiopeia』
 特注品のライフル『STARRY SKY』がまさしく火を噴いた。リーゼのユーベルコード【Cassiopeia(カシオペア)】が発動したのだ。契約精霊の火の力をこめた精霊弾が女王へと真っ直ぐに、空気を切り裂きながら飛ぶ。
 弾は正確に、腹の食虫植物の、その口の中へ入り込み、炎を撒き散らす。
「いたあああああああああ!」
 女王が悲痛な悲鳴を上げる。女王の硬い外皮は炎を容易く防いだが、柔らかな内側からの炎は、確実に女王に脅威を与えた。
 だが、リーゼの心を動かすことはない。どんな時も冷静さを失わない。それがリーゼが心がけていることだ。戦場での動揺は、自分だけではなく、仲間の命さえ危機にさらすのだから。
 かなり手痛いダメージは与えたようだが、さすがに一撃では倒せなかったようだ。だが、リーゼの魔力は、先程の攻撃で空だ。威嚇射撃ぐらいならばともかく、止めをさすには火力がたらない。他の猟兵にまかせ、もうすこし下がろうとしたリーゼの耳が、めりめりとすさまじい音を捉えた。
 リーゼや他の猟兵たちが何事かと、身構える。
 それが何の音なのか、上にいたリウが真っ先に気づいた。
「みんな離れて!女王が動く!」
 リウからの警告に、猟兵たちが大急ぎで飛びのいた。
 女王の付近の土が盛り上がり、はじける。女王が根と思われるものを土から引き上げたのだ。それを足のようにして女王はリーゼに迫る。それに気づいた猟兵が、女王の足を切り落とさんと刃を振るう。だが、触手よりはるかに強固な根は、刃を跳ね返す。
「ちっ」
 リーゼは舌打ちした。リーゼの得意とするのは遠距離攻撃だ。さらに魔力もない。この状態で接近されればなすすべがない。
 それでも、ただやられてなどやらないと、対物ライフルを女王の頭めがけフルスイング。
「きゃあああ!」
 そんな攻撃が来るとは思わなかったのか、女王の頭にライフルが直撃した。さしたるダメージは与えられなかったが、怯ませることぐらいはできたようだ。女王の足が止まる。
 止められた代わりにとばかりに、女王がリーゼに向け触手を打ち込んだ。
「くっ!」
 ライフルを振り回したことにより、姿勢が崩れていたリーゼが、転がりながら避ける。
「させません!」
 さらに追撃しようとした触手を、上空からリウが撃ち抜く。
 その隙に、リーゼは触手が届かないところまで距離をとった。
「大丈夫?」
 ふわりと降り立ったリウが、心配げにリーゼに声をかける。
「ああ、ありがとう。助かった」
 ほっと息を吐く。
 そして、顔をあげ女王を見る。腹の花は焼け焦げ花弁を半ば散らし、つややかだった緑の蔦の多くは千切れ、姿勢を支えられないのかふらふらと体を揺らす。
 リーゼやリウだけではなく、その場にいた猟兵全てが理解した。
 女王撃破まで、あと少しだと。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

桜・吹雪
アリア様を初め、ご助力頂いた皆様に感謝申し上げます
これだけの猟兵に囲まれて女王もタフでございますね

ハチや蔓の数も皆様の尽力で数を減らして参りました
シェーラ様が突き止めた弱点である腹部、そぎ落としましょう
継続でSPD【妖刀開放】
固い守りを崩してしまいましょう
【殺気】を放ち、引き続き囮になり蔓をひきつけるよう心がけます
女王の背面にまわる隙を【見切り】うかがい、蔓やハチを誘導して鋼糸で【敵を盾にする】よう、しばりあげることを試みますわ
防御が手薄になるように誘導し、抑えにまわしていた桜吹雪を攻撃に切替、全力で接近して【暗殺】を試みますわ

咲いて散るのが華の運命でございますよ
過去の残滓は消し去りましょう


枦山・涼香
もう少しですね。
お腹のお花がそれほど大事ですか?
大丈夫、全てまとめて彼岸にお送りいたします。

先ほど見せた孤炎疾走を伏線に、再度同じ仕掛けをしてきたと思わせましょう。
伸びてきた蔓を【残像】を残して交わし、あるいは【なぎ払い】、再び間合いを詰めます。
狐火を生み出しつつ、ゼロ距離付近まで詰めたところで今度は周囲に放つのではなく、大太刀に集め攻撃力重視で狐炎歪曲斬。

勢いを殺さぬままに刺突を繰り出して腹の花を突き刺します。そのまま突き刺した刃で切り上げて、身体を真っ二つに割きましょう。

もし遅れて学生たちが来たら、戦いの激しさが残る跡を見せて脅しておきましょうか。
たったひとつの命ですもの、惜しいですよね?



狂った花の楽園は、もうすぐ終焉を迎えるだろう。
 温室の地面は荒れ、花々はちぎれ飛び、中央に座していた女王は無残な姿をさらしている。
 だがそれでも、まだ後一歩が足りない。
 その一歩を求め、妖孤の枦山・涼香は、すっかり荒れてしまった花園を駆ける。
「涼香様」
 ミレナリィドールの桜・吹雪が、桜を舞わせたまま涼香に並走する。
「もう少しですね」
 吹雪に気づいた涼香が声をかける。
「はい。ですが、これだけの猟兵に囲まれて女王もタフでございますね」
「そうですね」
 数の少なくなった触手と生き残りの蜂たちが、猟兵の足を止め、女王に決定打を打ち込むことができない。
「ハチや蔓の数も皆様の尽力で数を減らして参りました。シェーラ様が突き止めた弱点である腹部、そぎ落としましょう」
「ええ」
「わたくしは囮になりつつ、背後からの隙を狙います」
「私は、正面にまわります」
 お互い頷き、二手に分かれる。
 まず動いたのは、吹雪だ。
 殺気を纏わせ、女王に接近すれば、すぐさま蜂が吹雪に襲い掛かってくる。だが、蜂は、まるで蜘蛛の糸にかかったかのように、羽をばたつかせながら空中で止まる。
 吹雪の着物の内側に織り込まれた、不可視の剛糸【紫綬羽衣】の生み出した罠にかかったのだ。
 女王が吹雪の行動に、忌々しげな顔を向ける。吹雪に向け蔓を打ち出すが、からめとられた蜂が盾となり、吹雪に届かない。
 女王が吹雪に向かい、更なる攻撃を与えようとしたとき、涼香の声が響く。
『――何一つ残さず、彼奴らの存在を焼き尽くしなさい。』
 涼香から放たれたのは、【狐炎疾走(フォックスファイア・オーバードライブ)】だ。青白い炎が、女王の周囲に広がる。
 女王は嗤った。ききもしない炎を放ってきたと、涼香をあざ笑った。
 だが、それでも自分を焼いた炎というのが癪にさわったのか、涼香に向け、触手を伸ばす。防御だけで、攻撃を仕掛けてこない吹雪は脅威ではない、そんな風に侮ったのかもしれない。
 伸びてきた蔓を残像を残してかわす。かわしきれないものは、大太刀を振るい、なぎ払い、女王との間合いをつめていく。
 涼香の大太刀の動きに目を奪われ、女王は脅威と捉えられない炎への警戒を怠った。だから、炎の目的が、攻撃ではなく、囮なのだと気づかない。そして炎に、舞い散る桜の花びらが混じったことにも。
 蔓を捌ききれず、涼香が一瞬足をすべらせた。それを好機ととった女王が、涼香に向け一歩足を踏み出した瞬間。
「え、あ、な、なに、あああ、ああ」
 女王の、腹の花、その中央から刃が生えた。背後から突き立てられた刃を中心に、淡い桜の花びらが吹雪が女王を包み込んでいく。
「咲いて散るのが華の運命でございますよ。……過去の残滓は消し去りましょう」
 いっそ優しげに、吹雪が女王に語りかける。
「いやああ、きえない、もっともとっとさいてさいてさくのおおおお!」
 背後の吹雪に、残った蔦も蜂もすべてを向ける。
 顔を精一杯後ろのほうへ向け、吹雪の姿を捉えようとする。
 吹雪に気をとられすぎていた。
 目の前の存在の脅威を失念していた。
 そして、その存在は、見過ごしたりはしない。女王が無防備になっている、今の状況を。
『狐火よ、刃に集いなさい。我が妖気を糧として、いっそう燃え上がりなさい。――是、理外の炎を以て、理を歪め断つ刃なり』
 涼香の声に答え、周囲に広がっていた炎は大太刀に集い、刃と化す。
 涼香のユーベルコード【狐炎歪曲斬(フォックスファイア・ディストーション)】だ。
 炎をすべて攻撃力へと変えた炎刃は、やすやすと女王の腹の花へと突き立った。
 あわせるように、女王を射抜いていた吹雪の刃が引き抜かれる。
「ひうあ、ああ、あ……」
 女王が腹をかばうように震える手を伸ばす。
「お腹のお花がそれほど大事ですか?大丈夫、全てまとめて彼岸にお送りいたします」
 優雅に微笑んで、涼香は刃を切り上げた。
「!――……」
 女王の上半身が、その花ごと真っぷたつに割けた。分かたれた上半身が左右に開き、そしてゆっくりゆっくりと、女王の下半身が背後に倒れていった。
 しばしの沈黙の後、猟兵たちが一斉に歓声を上げる。
 仲間と肩をたたく者、早速女王の希少部位を剥ぎ取ろうとする者、様々だ。共通するのは、任務完了の達成感。 
 全員が無事で任務の達成を出来たことに、吹雪もほっと息を吐いた。
 アリア様を初め、ご助力頂いた皆様に感謝申し上げませんと、そんなことを考えていた吹雪は、温室の入り口付近の人影に気づき、警戒態勢をとる。
「――あら?あの方は」
 だが、見覚えのある姿に、警戒を解き、驚きの声を上げた。あれは、安全のために自分が罠に嵌めておいた学生だ。
「知っているんですか?」
 まだ警戒したままの涼香の問いに、吹雪が学生たちについて説明する。
 吹雪の答えに、涼香も警戒を解いた。
 学生と自分たちの位置、それを考えて学生には女王の亡骸は見えていまい。ただ、それでもそこかしこに残る戦闘痕は、見て取れるはずだ。
 学生の姿はなかなかひどかった。服はぼろぼろ、髪はくしゃくしゃ。なんだか、ところどころ色々なゴミが引っ付いている。かなり苦労して罠を抜け出したのだろう。その気概はすばらしい。強い者にただ任せるのではなく、自分たちで努力しようという考えも大したものだ。だが、それでも許可なく危険エリアに許可なく入るという暴挙はいただけない。
「またしないように、少し脅しておきましょうか」
 学生には聞こえないように小さく告げると、わざと学生に戦闘の跡がよく見えるように、涼香は体を移動させる。
 びくりと学生が体を震わせた。
 焼け跡、陥没し、荒れ果てた花園と、その中央に転がる女王の亡骸。この学生は実戦経験は乏しいのだろう。見る間に顔が青ざめていく。
「たったひとつの命ですもの、惜しいですよね? もう、無理して危険な場所に入り込む、なんてことはしないでくださいね」
 涼香が穏やかに微笑みかければ、青い顔の学生は、悔しそうな表情で、けれどしっかりと頷く。
 もう禁止エリアに、勝手に立ち入るような無謀な行動はとらないだろう。
 だが、戦場の恐ろしさに触れ、それでも弱いことを悔しいと思うこの生徒は、近い将来強くなる。誰かを守るために、恐怖を踏み越えることが出来るだろう。
 その未来を守るため、涼香や吹雪、そして猟兵達みなは、過去の残滓と戦い続けるのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月07日


挿絵イラスト