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お狐様と桜花祭

#サムライエンパイア

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 コンコン、今度は春を恋う、早咲き桜のお祭りだ。

 淡い心を募り重ねて。満開の彩は一日限り。

 暁待てぬ村人は闇夜と共に、花が綻ぶ様を見守る。

 ――。――。

 あさぼらけにはまだ早い。何故にこんなに明るいか。

 桜を囲うは、火の玉だ。

 コンコン、お狐涙する。鬼火に憑かれた失くした頭で。

 鬼神の命令、逆らえない。亡霊妖怪、命を喰らう。

 今年の桜は、いと赤し。

「桜の下には、幾つもの首無し死体が赤い花を咲かせていましたとさ……とね」
 予知内容を説明しながら、最後は自分の手のひらを獣の口に見立てて、からくり人形の顔をガブリと喰らう仕草を見せた。そんなわけでお仕事だよ、とメリー・アールイー(リメイクドール・f00481)は猟兵たちへ呼びかける。

「年の暮れに、サムライエンパイアで首無し妖狐を倒す依頼をお願いしたんだけれどね。そこで狐たちに襲われる未来を回避した村に、また新たな脅威が近づいてきとるんだよ」
 その村には、春の訪れよりも一足早く咲き、一昼夜で散り終わる不思議な桜があるらしい。その桜が咲けば春が近いとして、村人たちは今年も良き春になるように願いを込めて、祭りを開催するそうだ。
 その祭りの前日の夜に、オブリビオン『鬼門沌行』は現れる。それは存在するだけで他の妖怪を次々と出現させて、百鬼夜行を呼び寄せると噂されている。村を襲うはずの鬼火に包まれた狐の生首も、鬼門沌行に使役される亡霊妖怪の一種だろう。このオブリビオンを倒し、桜花祭を守ることが今回の依頼となる。

「それとね。村の近くの神社で、また首無し妖狐たちが出没しているみたいなんだ。狐の生首は村人を喰らって首無し死体にしていた……あの首無し妖狐たちとの関連性は、断定は出来ないが、否定も出来ないね」
 もしかしたら狐の生首が同族だった妖狐を襲った可能性も……とメリーは口を濁した。何にせよ、放っておけば彼らは行き場のない憎しみを抱えて村へ降りてきてしまう。猟兵たちには憐れな妖狐の討伐も共に行ってもらいたい。
「まずは神社へ行って、首無し妖狐の対処からお願いするよ。時間は――逢魔が時。そこが一番、鬼門沌行が現れる時間帯みたいなんだ。上手く行きゃ、夜更けまで待たずとも、奴が現れてくれるかもしれないからね」

 全ての討伐が終われば、猟兵たちも桜花祭に交ぜてもらうといい、と提案される。年越し祭の時もそうだったが、ここの村人はお祭り騒ぎが大好きなのだ。今回も喜んで招待してくれるだろう。
「それじゃあ、今回もきっちりとお祭りを守るんだよ。よろしゅうに!」


葉桜
 どうも、葉桜です。どうぞ宜しくお願い致します。
 こちらは以前の葉桜の依頼【お狐様と冬花火】の続編です。
 ご存じの方もそうでない方も、共に楽しんでいただければ幸いです。

 第一章。
 『憎しみに濡れた妖狐』との集団戦です。
 戦闘場所は神社の境内周辺となります。
 神社へ向かえば妖狐たちは出て来るので、捜索は不要です。

 第二章。
 『鬼門沌行』とのボス戦です。
 おそらく、妖狐との戦闘後に現れる敵とそのまま戦います。

 第三章。
 村で『桜花祭』が開催されます。
 村の広場を覆うように咲く一本の大きな桜。広場には出店や出し物が用意されます。
 散歩、出店巡り、自分が出し物を行う、お好きにお楽しみください。
 前日の深夜から桜の開花を待つことも可能です。
 前日の深夜、昼間、そしてまた夜。桜が散り終われば、祭りは終焉となります。
 お好きなお時間帯にご参加下さい。
 メリーは参加者様からのお声がかかった場合のみ、登場させていただきます。

 アドリブ、共闘がNGなお方は「×」の記載をお願い致します。
 シナリオの進行状況はツイッタ-で細かく告知させていただいております。
 宜しければご参考になさって下さい。
 それでは、ご参加お待ちしております。
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第1章 集団戦 『憎しみに濡れた妖狐』

POW   :    神通力
見えない【波動】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    鬼火
【尻尾から放たれる怨嗟の炎】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    心眼
【常に相手の思考を読んでいるかのように】対象の攻撃を予想し、回避する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

九尾・へとろ
猟兵とやらになっての初仕事が同族食いとはのう。
とはいえ、ヒト型でもない未熟なぬしらゆえ、死するは運命よ。
九尾一族の暗殺術、武舞にて命を晴らしてやろう。
逢魔が時、彼岸と此岸の間の門も開いておる。
よいよい。哀れで未熟な狐共、九尾へとろの舞が冥土の旅の門出を寿ごう。

両手を広げ、足でタンタンと節を刻み、舞を始める。
舞い遊ぶ両手、足、尾から虚空に描き出したるはへとろの異能。
悲しみの青、月の白、そして怒りの赤。
ゆらゆらと浮かぶそれを狐共に放ってやろう。
青は冷たく、赤は燃え、白は苦しむことなく生気を奪う。

ひょひょひょ、悲しいのう、寂しいのう。
死出の旅を寿ぐウチの武舞を見られんとは、ぬしらは本当可哀想じゃ。



 雲に映った夕焼けが紅く燃える。空は刻々と藍に暮れる、逢魔が時。最初に神社の鳥居をくぐったのは、振袖に似た華美な暗殺着を纏う妖狐、九尾・へとろ(武舞の光彩・f14870)だった。へとろの気配を察知して、境内の奥から三匹の首無し妖狐が姿を現す。金の瞳を細めて、彼女は少女とは思えない妖艶な笑みで彼らを迎えた。
「逢魔が時、彼岸と此岸の間の門も開いておる。よいよい。哀れで未熟な狐共、九尾へとろの舞が冥土の旅の門出を寿ごう」

 両の手を広げ、たんたんと、節刻む足の音が舞始めの合図だ。戦場を魅せたのは、武舞と呼ばれる九尾一族の暗殺術だった。舞い遊ぶ両手、足、尾から虚空に描き出したるは、へとろの異能。悲しみの青、心凪ぐ白、そして怒りの赤――死する運命のモノへの想いが色成して、そのモノたちへと放たれる。
 しかし、首も瞳も無くしたその妖狐は、心眼にて世を見渡す。一見動きの読めないへとろの舞も、心の眼までは惑わせられなかった。ひらりひらり、どの妖狐も身を躱し、足元の色付いた地面を踏まぬように距離を取る。
 まだ終われぬ……一族の誇りにかけて、へとろが二の舞を演ずることはない。色が味方をする次の舞台で再び舞えば、同じ色彩が飛ばされるが、今度はゆらゆらひゅるりと風の悪戯に導かれる様に、不規則に彼らを追っていく。それでも妖狐の尾を捕らえられたのは、一色だけだった。月白に生気を奪われた一匹の妖狐は、苦しむことなく眠るように地に伏せる。
「ひょひょひょ、悲しいのう、寂しいのう」
 死出の旅を寿ぐウチの武舞を見られんとは、と。踊るへとろの赤髪は、夕空の下でひどく美しく照らされていた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

メル・ルビス
遊星(f03677)くんと共闘なのっ
足手まといにならないように頑張るね

んんとんんと、
まず僕は敵を引き付けるのっ!
【おびき寄せ】と【楽器演奏】を使うよっ
動物さんも妖狐も引き寄せて、
動物さんには味方になって一緒に戦ってもらうの
遊星くんや動物さんたちがいればきっと大丈夫
【勇気】を分けてもらうんだ

その次は戦闘だよっ!
僕は小さな体を生かして敵の足元でちょろちょろ動いて邪魔するよ
遊星くんに援護してもらいながら、
【フェイント】【スナイパー】で
UC『秘儀・猫猫パンチ』を使うの!
これを使えばさらに遊星くんが攻撃しやすくなるもんね

アレンジ歓迎だよ


宮地・遊星
メル(f03622)と共闘
今回は戦闘経験の多いメルに前線を任せて援護に徹する。
後方から常にメルと敵の位置を把握し、メルが死角を取られたりしないよう声をかける。
「現れたか妖怪達……村の人達には手出しさせないぜ。煌着!」
戦闘時は「スナイパー」「援護射撃」技能を活かし、
ブルーブラスターソードを使用してUC『ヴァリアブル・ウェポン』で攻撃。敵が心眼を使用してきた場合は命中率を、それ以外の場合は攻撃力を重視。
接近された場合のみブルーブラスターソードを剣として機能させ応戦する。
敵が複数の場合は同じ対象を狙い続け一体ずつ確実に仕留めるようにする。

※煌着と叫ぶとJC姿に変身します
アドリブ歓迎



「現れたか妖怪……村の人たちには手出しさせないぜ。『煌着』!」
 続いて、宮地・遊星(サイボーグのスターライダー・f03677)が妖狐退治に挑む。説明しよう、大切な人たちを守るため自ら望んで改造手術を受けた遊星は、変身能力により蒼き流星『サフィルステラ』へと姿を変えるのだ。
 そして、遊星が変身をする最中に前へ飛び出したのは、共に戦場へ駆けつけたメル・ルビス(いつでもキミの傍に・f03622)だった。
「まず僕が敵を引き付けるのっ!」
 メルは獣奏器で神社の周囲にいる動物たちへ語りかける。あの妖狐を倒すために、どうか力を貸して欲しい。その願いが届いたのか、木陰に隠れていた野良猫たちが続々とメルの周りに集ってきた。それと同時に妖狐たちも無い首から唸り声を上げてメルへ敵意を向ける。一触即発、猫対狐の戦い……先に仕掛けたのは、メルと野良猫たちだ。
「みんな、無理しないでね! 僕たちが力を合わせれば、きっと大丈夫だよ!」
 共に戦う遊星と野良猫たちからもらった勇気を分け合うように、メルは仲間たちを鼓舞して戦場を駆ける。後方で構える遊星による射撃の援護を受けながら、小柄な体を生かして妖狐の周りをちょろちょろと動き回り翻弄していくのだ。後を追うように、野良猫たちが妖狐の身体に群がり噛みついた。しかし、野良猫たちは見えない何かによって次から次へと引き離されては投げられていく。幸い猫の反射神経により怪我はないようだが……あれは妖狐の能力のひとつである神通力だろう。
「メル! 横に避けてくれ! 『ヴァリアブル・ウェポン』!」
 遊星の声に獣耳をピクリと動かし、メルは瞬時に横へと飛び退く。常にメルと敵の位置を把握していた彼は、メルの背後から襲いかかろうとする妖狐を見逃さなかった。注意の声と共に、ブルーブラスターソードの刀身から攻撃力を増したエネルギー弾が撃ち放たれる。まるで流星のような蒼い弾丸は、メルが先程までいた場所を通過して真っ直ぐに妖狐を貫いた。
「よーし、僕も続くのっ!」
 メルは避けた体勢からそのまま攻撃に転じるように身を翻して、近くにいる別の妖狐に『秘儀・猫猫パンチ』を繰り出した。しかし、その猫パンチが敵に届く直前。メルの小さな身体は神通力の見えない波動により一気に吹き飛ばされる。
「メル!」
 その落下の衝撃から庇うように、遊星はメルを抱きかかえてキャッチした。ほっと息を吐くのも束の間、妖狐は首から燃え上がる怨嗟の炎で彼らを喰らおうと跳びかかる――。
「俺が……守るんだ!」
 遊星は愛用のガンソードを今度は剣として扱う。蒼い刀身に想いを乗せて、迫り来る妖狐の身体を迷いのない太刀筋で斬り伏せたのだった。
「すごいすごいよ、遊星くんっ! ……ありがとね」
 足手まといにならないように頑張りたかったんだけど、と頬をかくメルに、遊星は首を振る。
 メルが敵の気を引いてくれたおかげだと。そして仲間として、君が隣にいてくれたおかげだと。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

目面・真
この村のコトは知らないが、襲われると分かっていて見送るなど出来ないだろう。
オレも剣士の端くれ、助太刀致す。

社を壊してしまう可能性があるのでアームドフォートは使えないな。なので甲冑共々置いてきた。
一匹ずつ斬り捨てていくしかあるまい。面倒だが確実だ。
それにあの妖、さぞかし無念を抱えているだろうからね。一体ずつ祈るにはコレが一番だろう。
ヤツの神通力で至近へ近づくコトが難しいならば、フェイントと残像で行動を予測しづらくしてダッシュするしかナイだろうな。
星羅閃閃はいざという時のための切り札だ。使わずに済むなら、そうしたいね。

この狐達を操る輩は、とんでもなくろくでもないヤツなんだろう。



「この村のコトは知らないが、襲われると分かっていて見送るなど出来ないだろう」
 ゆらりと姿を見せる羽織袴の男が一人。スペースノイドである彼が宇宙戦争に身を投じる際に纏う武具、砲塔付き装甲と全身甲冑は今持ち合わせていない。神社での戦いならば、社を壊さないようにという目面・真(たてよみマジメちゃん・f02854)の配慮であった。その社の脇から件の妖狐がぞろぞろと無い首を並べる。
「オレも剣士の端くれ、助太刀致す」
 愛刀の大太刀『義光』を携えて、いざ参らん。

 真は一匹ずつ確実に仕留められるように接近戦を試みる。しかし、策も無くただ前へ出れば、妖狐の神通力の餌食となるだけだろう。
「……こうする他、ナイだろうな」
 それは、剣術を達人の域まで極めた彼だから為せる技だった。自分の存在感を限界まで消すことにより、目の前にいるはずの気配を揺らがせたまま、一気に敵方向へダッシュする。そこには残像により幾人もの真の姿があった。気配が読めずに狼狽える妖狐をまずは一匹切り捨てる。対する別の妖狐たちは、残像に向けて縦横無尽に神通力の波動をまき散らした。見えない刃により残像は散らされるが、それにより敵の太刀筋を見極めた真の本体が、更に敵の至近へと詰め寄るのだ。だが、残像が無くなれば、真の前後を挟むように妖狐も怨嗟の炎を揺らして身構える。奥の手を使うべきか……いや。
 真は敵を睨みながら、静かに呼吸を整えて丹田に気を巡らせる。――それは刹那の斬撃。視覚では捉えられない疾さで大太刀は二度、前と後に振るわれた。一瞬間を置いて、炎を鎮められた狐たちが、どさりと地に落ちる。切り札はいざという時までとっておくものだと。奥の手はまだ懐に潜めて、真は刃を収めた。

「さぞかし無念を抱えているだろう……」
 刃を向けたあやかしの想いを汲んで、祈るような呟きが風にさらわれた。この狐たちを操る輩は、とんでもなくろくでもないヤツに違いない。未だ姿を見せぬ黒幕を思い做しながら、真は大太刀の柄を握りしめるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ライラック・エアルオウルズ
桜と云う花、僕は未だ見た事が無くてね
願わくば…いや、必ず美しい形の侭に眺めたい所だ

【SPD】
(先制攻撃・騎乗・かばう・見切り・カウンター)

…憎しみの連鎖、と云う奴かな
少し可哀想だけど、此処で断ち切らせて頂くよ
『黄金色の心』で獅子を召喚して騎乗、
妨害する様にして先制的に攻撃を仕掛ける
牙で噛み付き・爪で切り裂く等で、
出来る限り敵の数を削りに行きつつ
見切りで庇う等の皆の援護もしたい所だ

炎等の攻撃は、見切りで避け切れない様なら
『鏡合わせの答合わせ』で鏡を放ち相殺を
それで敵に隙が出来たなら、獅子で反撃へ

貴方がどう云うものであるかは、想像する他ないけど
もう憎しみに縛られずに。…ゆっくり、おやすみ


ルパート・ブラックスミス
首が無くては泣くこともできず……か。
妖狐たちよ、この亡霊騎士が黄泉路の案内仕る。

UC【燃ゆる貴き血鉛】及び燃える鉛の青い翼展開。
UCの火力と【怪力】任せの力押しで攻める。
大剣による【なぎ払い】と翼からの熱風(【属性攻撃】)で敵を両断し吹き払っていく。

もし他の猟兵に鬼火が飛んでくるようなら【火炎耐性】のあるこの身で【かばう】としよう。

すまんな、貴殿らに許せるのはこの身を幾ばくか焼かせてやることだけだ……許せ



 戦場になると予知されていた神社の石段の両脇にも、まだ固い蕾の桜の木々が並んでいた。
「桜と云う花、僕は未だ見た事が無くてね。願わくば……いや、必ず美しい形の侭に眺めたい所だ」
 ライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)はそんなささやかな願いを脅かそうとするオブリビオンを倒すため、石段を駆け上がるのだ。

 境内ではすでに、ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)が妖狐たちと対峙していた。全身鎧に包まれるルパートと、首の無い妖狐たち……互いに表情が読み取れない両者であるが、彼には妖狐たちの無念がひしひしと感じられた。
「首が無くては泣くこともできず……か。妖狐たちよ、この亡霊騎士が黄泉路の案内仕る」
 ルパートは鎧の中で流動する青い炎を鎧の隙間から溢れさせる。それは青い翼となり彼を包んだ。合わせて、高熱の炎鉛で妖狐を燃やしにかかるが、それは突風にあった炎のように押し戻される。妖狐による絶え間ない波動の嵐の中、大剣を盾にして鎧の脚を踏ん張り、必死に踏みとどまっている。
「う、おおおお――っっ!!」
 持ち前の怪力で力押しするように、無理やり大剣を振り切った。それと同時に青い翼から熱風が放たれ、彼を襲っていた神通力を振り払ったのだった。たたん、と妖狐は後方に跳び退き、一旦距離を置く。そこへ――。
「やあ。久しぶりだね、ルパートさん」
「……!! ライラック殿!?」
 かつての依頼の同行者の来訪にルパートが目を見張る最中、ライラックは既に召喚していた勇敢なる獅子に跨り戦場を駆け抜ける。黄金色の心は真っ直ぐに一匹の妖狐へと向かい、逃げる隙も与えずに鋭い爪で切り裂いた。
「……憎しみの連鎖、と云う奴かな。少し可哀想だけど、此処で断ち切らせて頂くよ」
 次なる敵を見据えて構えるライラックと獅子……しかし、妖狐も大人しくやられたままではいられない。尾を揺らせば怨嗟の炎が集う。それはひとつふたつと嘆きの分だけ数を増やし、数多の鬼火の雨がライラックへと降り注がれる。――避けるか。他の技で凌ぐか。ライラックがその判断を下すよりも先に行動を起こした者がいた。ルパートはすぐさまライラックを覆うように彼の前で大きく手を広げて、炎の連撃をその背で全て受け止めたのだ。
「ルパートさん!?」
 今度はライラックが叫ぶが、心配には及ばないとルパートは首を振る。炎上と再生を常から繰り返し炎耐性があるこの身を焼き尽くすことなど、出来はしないのだから。
「すまんな、貴殿らに許せるのはこの身を幾ばくか焼かせてやることだけだ……許せ」
 ルパートの呟きを背に、ライラックと獅子は妖力を撃ち尽くした妖狐へと飛びかかる。全ての憎しみを飲み込むように、獅子はその空虚ごと首元に喰らいついた。
「貴方がどう云うものであるかは、想像する他ないけど。もう憎しみに縛られずに。……ゆっくり、おやすみ」
 こうして猟兵たちは、憎しみに濡れた哀しき命を、全て終わらせたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『鬼門沌行』

POW   :    妖気解放
【禍々しい波動】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    鬼神召喚
自身が戦闘で瀕死になると【封印されていた鬼神】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
WIZ   :    百鬼夜行招来々
戦闘用の、自身と同じ強さの【亡霊】と【妖怪】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は石上・麻琴です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 全ての妖狐たちを骸の海へと還した直後のことだった。
 神社の鳥居を含めた空間がぐにゃりと歪む。この世とあの世、現在と過去。このように境界を揺らがせるオブリビオンは妖怪『鬼門沌行』に他ならない。内包される不吉な『何か』は、禍々しい妖気の渦に飲まれて隠されている。その正体は、過去に封印された鬼神のオブリビオンだという噂だ。自身の危機が迫れば、その秘めた力も解放されるだろう。また、このオブリビオンは他の亡霊や妖怪を呼び寄せる特性があることも忘れてはならない。
 猟兵たちは各々の志を胸に、この脅威へと立ち向かうのだ。
九尾・へとろ
やれやれ、大言吹き散らかしてキツネ一匹とは。
恥を重ねる前に帰ろうかとも思うたが、親玉の登場とあれば話が違うのう。
ひょひょ、珍妙な奴じゃなぁ。
よいよい、ウチも本域でいかせてもらおうか

ウチは戦場の露払いと参ろうかの。
節を刻み、唄を口ずさみ、戦場に舞おう。
四肢と尾より色描きたるウチの異能、そして暗殺術たる武舞。
重ねれば亡霊やら妖怪やらにも対応出来るじゃろうて。
舞う手足とあなどれば、ことりと首も落ちようぞ?

して、本丸の対処も忘れん。
亡霊や妖怪の相手をしつつ舞うはウチにしか出来ぬへとろ舞。
【混色優美】、三色浴びれば…ひょひょ、化生といえどへとろの虜よ。
縛るは妖気解放じゃ。とどめは他の猟兵方、任せたぞ。


ルパート・ブラックスミス
何の為に首を刎ねる。
それが貴殿の神性だからか。この地や狐たちに因縁があったのか。それともただ手勢が欲しかったか。
答えぬならそれでも構わん。
(鎧に残る鬼火の残滓に手を添えて)……剣を振るうだけの理由も衝動も、既にこの身に刻まれている。

『真の姿:炎鉛が関節部から溢れ出る姿』展開、出力を上げた翼で飛翔。【空中戦】だ。
まずは熱風(【属性攻撃】)を仕掛け、敵の波動攻撃の射程を見極める。
大凡の射程を把握したら敵の波動が届かぬ高度までさらに急上昇。
UC【燃ゆる貴き血鉛】にて大剣に燃える鉛を纏わせ刀身を巨大化。
我が【怪力】を込め大剣を投擲、頭上から敵を【串刺し】にし青い炎に呑み込む。

【共闘・アドリブ歓迎】



「やれやれ、大言吹き散らかしてキツネ一匹とは。恥を重ねる前に帰ろうかとも思うたが、親玉の登場とあれば話が違うのう」
 もっともすんなり帰してもくれなさそうじゃ、と九尾・へとろ(武舞の姫・f14870)は鳥居の前に陣取る『鬼門沌行』と相見える。そこに在るだけで亡霊妖怪を生む災厄は、早々に妖狐の生首を呼び寄せた。鬼火を纏う三つの狐首は、主に付き添いゆらゆら揺蕩う。
「ひょひょ、珍妙な奴じゃなぁ。よいよい、ウチも本域でいかせてもらおうか」
 節を刻んで、唄を口ずさむ。戦場にへとろの艶やかな色が舞い始めた。

 その舞を視界の隅に捉えながら、ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)は鬼門沌行に問いかける。
「何の為に首を刎ねる。それが貴殿の神性だからか。この地や狐たちに因縁があったのか。それともただ手勢が欲しかったか……」
 その問いにも無反応なオブリビオンは、変わらず妖気を揺らすだけだった。答えないのならそれでも構わない、と。それ以上問い詰めことはなく、己の鎧に撃ち込まれた首無し妖狐の鬼火の残滓に手を添える。
「……剣を振るうだけの理由も衝動も、既にこの身に刻まれている」
 だから自分は貴殿を切るのだと、鬼門沌行に宣言する。漂う狐首から、一筋の血の涙が落ちた。

――くすぐるように撫でさする手より描く橙色。――誘うように触れこする足より描く紫色。――遊ぶように揺らす尾より描く桃色。
 へとろ舞を鬼門沌行へ浴びせようと、優しくも美しく混ざり合った色彩が宙を舞う。しかし、その間へ割り込んできた狐首たちにより庇われてしまった。代わりに、色彩を受けた狐首の動きが鈍くなる。まるでへとろに誘惑されているように、ふらふらと無防備に近寄ってくるではないか。
 真の姿を解放させていたルパートは、その好機を見逃さなかった。鎧から吹き出す青い炎の翼を更に大きく力強く燃やし、狐首たちの元へ軽々と飛べば、一匹一匹丁寧に送り還すように大剣で切り伏せた。
 召喚した手下を落とされても、微塵も動じない鬼門沌行は、すぐさま新たな手下……狐首を更に呼び寄せる。
「一体どれほどの狐たちを……へとろ殿、引き続き狐首の足止めをお頼みしたい」
「ひょひょ、心得た。まとめてへとろに首っ丈にしてやろうぞ」
 本当は本丸の妖気解放を縛るつもりだったのだが、致し方ない。戦場の露払いと参ろうか、とへとろは再び舞い出した。

 美しい舞が続く中、炎の出力を上げた翼でルパートは飛翔する。鬼門沌行の上空にて、小手調べに放った熱風は案の定波動によって難なく相殺された。勿論その熱風攻撃は無策に行っている訳ではない。幾度か繰り返せば、敵の射程をある程度予測出来るのだ。下準備を終えたルパートは、敵の波動が届かぬ高度まで急上昇するように羽ばたいた。
 愛用の大剣に纏わせるのは、彼の内に燃ゆる貴き血鉛。そして、首無し妖狐たちから受け取った無念の炎熱。巨大化させた大剣を怪力によって力強く投げ放つ――頭上から串刺しにしてくれよう。
「狐達の無念だ……しかと受け止めろ」
 狐首に庇わせようとしても、それらはすでにへとろの虜だ。
 ――鈍い音が響いた。大剣により砕かれた赤い鬼爪が地面に落ちる。そして、内包される不吉な『何か』を封じるように貼られていた札も、はらり、はらりと。まだ幾枚かを残して、剥がれた札は妖気に飲み込まれるように焼かれ消えて行った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

目面・真
思った通り、禍々しさは相当なモノだ。
今はアームドフォートもナイので攻撃手段も限られる。やれるか?
やらねばなるまい。妖狐達を斬ったこの大太刀でヤツを倒すコトこそが、妖狐達への鎮魂であるならば。

ヤツの波動は見切りで躱せるならばそれで、残像が有効ならばそれらを込みでダッシュしてヤツに近づく。
躱し切れないとなれば、大太刀で波動を斬りながら刀の間合いまで近づこう。

ヤツの攻撃の源は何だ。その爪か、無数に貼られた御札か。
どれでも構わない。妖狐達のコトを思えば、ヤツを苦しめて倒す以外には考えられないのでな。
機を見て星羅閃閃で両断してやる。

彼岸で妖狐達に詫びるがイイ。再会できるとは思えないが、な。



 予想していた通り、いや想像以上の禍々しさが渦巻く『鬼門沌行』と対峙して、目面・真(たてよみマジメちゃん・f02854)は剣の柄を握りしめながら、敵から目を離せずにいた。
(今はアームドフォートもナイので攻撃手段も限られる。やれるか?)
 自分自身に問いかける。だが、これはやれるかやれないかの問題ではない。やらねばならないのだ。妖狐たちを斬ったこの大太刀でヤツを倒すコトこそが、妖狐たちへの鎮魂であるならば。立ち向かう他の選択肢などあるはずがない。

 真は首無し狐との戦闘時と同様に、鍛え抜かれた俊敏な動きで翻弄しながら敵に近付こうとした。しかし、鬼門沌行に殺気を感知されたのか、すぐさま放出された妖気の波動が、向かい風の突風のように彼の進路を塞ぐ。
 それならばと、今度は複数の残像と共に、多方面から飛びかかろうとする。すると、それに対応するように全方位に放たれた波動によって、残像諸共真は押し潰されてしまった。

「……ヤツの攻撃の源は何だ。その爪か、無数に貼られた御札か」
 どれでも構わない。この剣の間合いまで近づくことさえ出来れば、星羅閃閃で両断させられるというのに――。
 ぎりりと奥歯を噛みしめて、真は立ち上がる。未だ消えることのない戦う意志を潰そうと、追い打ちをかけるように容赦のない波動が襲い掛かかる。
 一瞬、真の集中が極致に達する。眼前に迫る形のない波動を、大太刀・義光が鋭く斬り断った。
 しかし、この男を近づけてはならないと鬼門沌行の抱く警戒を表すように、再び足を踏み出せば休む間もなく波動を放ち、何度でも行く手を遮り続けるのであった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ライラック・エアルオウルズ
…成程、貴方が鬼門沌行か
静かに封じられていれば良いのに、
まるで足掻く様に他を呼ぶとは中々厄介な相手だね

【WIZ】(おびき寄せ/ダッシュ/だまし討ち)
百鬼夜行を招かれたら、厄介そうに眉を下げ
けれど、そんな事も言っていられないし
…貴方が呼ぶのなら、僕も呼ばせて頂くよ

カンテラを手に『奇妙な友人』を招けば、
ナイフと炎で召喚された物への攻撃を
友人に攻撃や注意を引き付けて貰ったら、
僕は隙を突く様に駆けて鬼門沌行の傍へ
…貴方は今、物凄く無防備な訳だよね
万年筆を取り出せば、線を引く様にして
『■■■』での攻撃を思い切り相手に放とう

召喚された物が消えるのを確認したら、友人に笑って
…本当に頼りになるね、貴方は



「……成程、貴方が鬼門沌行か。静かに封じられていれば良いのに、まるで足掻く様に他を呼ぶとは。中々厄介な相手だね」
 厄介、と言った傍から続々と狐首を召喚する鬼門沌行に、ライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)はやれやれと眉を下げた。

「……貴方が呼ぶのなら、僕も呼ばせて頂くよ」
 ライラックがカンテラを灯せば、奇妙な友人が招かれる。召喚された者同士、狐首は噛みつきと鬼火で、友人は宵闇のナイフと炎で互いを削り合う。数の有利は敵にあるが、奇妙な友人は敵の勢いに任せた攻撃をひらりと避けて同士討ちさせたり、ナイフを振るう最中の背後に喰らいつこうとする狐首を後ろ手で燃やしたりと、器用にそして確実に相手を仕留めていく。一方は大切な友人、一方は湯水のように使い捨てられる駒。発揮できるパフォーマンスの差は歴然だ。全ての狐首は奇妙な友人の対処に集中せざるを得ない。
 そうして盾になるモノがいなくなった無防備な鬼門沌行へ密やかに接近していたライラックは、作家の必需品である万年筆を取り出した。貴方のようなモノは却下だと、斜線を引く――。
 鬼門沌行はその『■■■』を拒絶するように、全身から禍々しい妖気の波動を放ち、黒インクを飲み込もうとする。しかし、その青の妖気ですら、ライラックの黒線の前に出ることは許されないのだ。

 斜線に沿って、妖気と共に切断されたはずの鬼門沌行は未だそこに佇んでいる。一見変わらぬ姿だが、内部に相当のダメージが蓄積されたようで、すでに「何か」を封じていたはずの札は全て剥がれ落ちていた。
 そこへ、ライラックの隣に奇妙な友人が戻って来た。狐首たちを残さず退場させた友人は、今度は彼に迫る危険から彼を護るように、静かに寄り添っている。
「……本当に頼りになるね、貴方は」
 そんな心強い友人がいてくれるものだから、このような戦場でも笑みが零れてしまうのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​



 全ての封印は解かれた。
 折られた爪の鬼手が開き、封じられていた鬼門から這いずり出て来たのは、鬼門の二倍以上の巨躯を持つ、赤き鬼神だった。
「――――」
 ソレはヒトには分からない言葉を発した。
 そして、おもむろに狐首たちを周りに呼び出し、乱暴に掴んでそれらを喰らう。
「――――、――――」
 凶暴そうな牙から唾液が滴る。鬼神の顔が嬉しそうに醜く歪んだ。
 おそらくソレはこう言いたかったのであろう。
 ――ハラがヘった。ああウマい、ニクしみにヌれたタマシイは――。

 こうして残酷で恐ろしい鬼神が姿を現した。
 しかし、猟兵たちの働きによりダメージを負っている今なら討伐も出来るはずだ。憐れな被害者をこれ以上出さないためにも、どうか――。
タビタビ・マタタビ
間に合った!かな?
話では得体の知れない姿をしているみたいだったけど……これが正体なんだね
ケットシーのボクにとっては、もう見上げるのも大変なくらいだよ
それにこの禍々しい気配……こんなものを放置しておいていいわけないよね

UC【駆猫鋭爪】を発動。
敵の攻撃を避けると同時に、反撃のタイミングでアタック!

もし百鬼夜行が来たら、マントを脱いでUCの加速力を全開にして突破。亡霊とか妖怪とかが沢山阻んできても、ちっこいボクならきっと切り抜けられるはず!
そのまま、鬼神本体を直接攻撃して、百鬼夜行を停止させるよ。
傷を負った今なら、ボクの爪も届くはず……!
美味しくいただかれるつもりはないからね!

アドリブ・連携歓迎です



「間に合った!かな?」
 長いマントを引きずって神社に到着したのは、タビタビ・マタタビ(若き猫黒騎士・f10770)だ。戦場には、小さなケットシーにとっては見上げるのも大変なほどの巨体が立ちはだかっている。そして、周囲の空気をより一層重くさせているのは、封印が解かれたことにより更に膨れ上がった禍々しい気配によるものだろう。強大な敵を前に、タビタビは思わずごくりと生唾を飲み込む。
「でも……こんなものを放置しておいていいわけないよね」
 どんなに恐ろしい敵と対峙しようと、騎士は絶対に敵に背は向けない。こいつを見逃せば襲われてしまう、守るべき人々がいるのだから。覚悟を胸に、きりっと猫目を光らせて、少年騎士は飛び出した。

 あまりに小さな者が向かってくる。自分が手を出すまでもないと判断したのか、鬼神は何度目かの狐首たちを呼び寄せた。指示されるがまま、狐首は大口を開けてタビタビに喰らいつこうとする。
「にゃああああああん!!」
 ――バサァッ。
 鬼神へ真っ直ぐ駆けながら、タビタビは愛用の赤マントを脱ぎ捨て、天高く放り投げた。それこそが、彼の必殺技『駆猫鋭爪』の加速条件なのだ。黒い弾丸の如き疾さで、敵へ向かってまっしぐらだ。
 牙を剥いて待ち構えている狐首が口を閉じる時には、もう通り過ぎている。鬼火で焼こうとしても、黒い尾にすら追いつけない。
 目前に迫った鬼神の足元から垂直に飛び上がる。鬼神は虫を払い退けるように手を伸ばすが、仲間が傷を負わせてくれた、折れた爪の手なんて怖くない。ブーツで手の甲を踏みつけて更に跳ぶ。
「にゃーー!!」
 鬼神を追い抜くところまでジャンプしたタビタビの鋭い爪が、それの右目を深々と切り裂いた。

「――!――!!」
 体格差を逆手に取った俊敏な攻撃を受け、鬼神は片目を押さえる。狐首に八つ当たりをするように指示を出して襲わせようとするが、時既に遅し。鬼神の顔面を蹴飛ばして、勢いを付けて跳び退いたタビタビは、もうそこにはいない。
「美味しくいただかれるつもりはないからね!」
 そう言って、宙に舞っていたマントが地に届くと同時に、華麗にキャッチしたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルパート・ブラックスミス
【九尾・へとろ殿と共闘】

助太刀感謝致す、妖艶なる舞踏姫よ。

まずは【錬成ヤドリガミ】にて鎧(身体)を複製。
内、一騎に大剣を回収させ、残った複製体と本体はへとろ殿を敵の攻撃から【かばう】。
舞踏の邪魔立てなどという無粋は控えてもらおう。
狐首は短剣の【投擲】で仕留めていく。

応。幕引き、引き受けた。

へとろ殿のUCが効いたのを確認次第【死を越え燃え立つ黎魂】起動。
ここまでで大破した鎧を包むように新たな鎧を形成し飛翔、大剣を構え突撃。

真の姿を開放し、更なる強化。そしてへとろ殿のUCによる弱体化。
まさに全身全霊を賭した【捨て身の一撃】だ。
憎悪滅却。憎しみ振りまく悪神は、我らが塵も残さず滅ぼしこの地より却す。


九尾・へとろ
【ルパート・ブラックスミス様と共闘】

どれ、そちらの剛なる青きほむらの騎士様、ルパート様よ。
ウチの武舞と手を組んで、化生にとどめをくれてやろうぞ。

先ずはルパート様の武器の回収を支援するのじゃ。
武舞とへとろの異能で以って『存在感』を放ち、狐共の目を奪うとしようか。

武器回収の後、ルパート様にとどめの一撃を確実に当ててもらうべく支援じゃ。
狐共はへとろの武舞で確実に仕留めて潰しておこう。
へとろ舞【混色優美】、先ほどは狐共に邪魔されたからのう。意趣返しよ。
ウチの武舞、見惚れたかえ?よいよい、芸を愛でるはみな愛い奴よ。

ルパート様、彼奴めへの引導をお頼み申すのじゃ。
今宵、月下の武舞は…これにて閉幕、じゃな。



「どれ、そちらの剛なる青きほむらの騎士様、ルパート様よ。ウチの武舞と手を組んで、化生にとどめをくれてやろうぞ」
「助太刀感謝致す、妖艶なる舞踏姫よ」
 九尾・へとろ(武舞の姫・f14870)とルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)は引き続き共闘戦線を張ることにしたようだ。先程、鬼門沌行の頭上から投擲した大剣は、鬼爪を破壊して地面に突き立てられたままの状態だ。しかも、その大剣の傍には狐首がうろついている。まずはルパートの武器を回収することが先決だ。
 パンパン、軽く手を叩く音が境内に響く。その音に反応してへとろへ視線を向けた狐首たちは、足で節を踏みながら華美な武舞装束で舞う、舞姫の存在に目を奪われてしまう。
「――、――」
 襲え襲え、猟兵たちなど焼き払え。鬼神から飛ばされる命令に従い、狐首はへとろを囲んで一斉に鬼火を放とうとする。――その刹那、へとろと鬼火の間に割って入ったのは、ルパートと錬成ヤドリガミで複製した鎧たちだ。
「舞踏の邪魔立てなどという無粋は控えてもらおう」
 そして短剣の投擲で狐首を仕留めていく中、敵の注意が疎かになっていた大剣を、一騎の鎧が回収して無事に本体へと届けたのだった。

「ルパート様、彼奴めへの引導をお頼み申すのじゃ」
「応。幕引き、引き受けた」
 二人は声をかけ合い、それぞれの役目を果たすために動く。だが、鬼神もただ大人しく待っているはずもない。
「――――っっ!!」
 狐首が役に立たないのであれば、と今度は自らの激しい咆哮で衝撃波を飛ばし二人を襲う。しかし、それもルパートと鎧たちがへとろの前へ出て、重なり連なり庇ってみせた。
 その後ろで、へとろは舞の手足を止めない。心配して駆け寄るなど野暮な真似はせず、騎士を信じてただ舞うだけだ。
 くすぐり誘い遊ぶように描かれる、橙、紫、桃の色。優美な色が混ざり合い宙を舞う。衝撃波を発した直後で、一瞬無防備になっていた鬼神の隙を突く。顔に目掛けて飛んでくるそれを、鬼神は思わず手で払い除けた。触れてしまった。へとろの異能に。
 突如、鬼の身に駆け抜ける未知なる感情、抗えぬ誘惑を受けたそれは地に膝をつく。
「ウチの武舞、見惚れたかえ?よいよい、芸を愛でるはみな愛い奴よ」

 へとろの技の成功を確認したルパートは、青く燃える鉛によりもう一つの鎧を再形成し、鬼火や衝撃波で大破した鎧を包むように、新たな鎧を纏い直した。青い翼の炎も再び溢れさせ、解放した真の姿で回収した大剣を構える。
 強化を重ねた自身に、仲間による敵の弱体化。
「憎悪滅却。憎しみ振りまく悪神は、我らが塵も残さず滅ぼしこの地より致す……!」
 またとない好機を逃さぬように、ルパートは大剣を手に急降下する。全身全霊を賭した捨て身の一撃が振るい落とされた。

 肩から腹にかけて深々と、鬼神はその巨体を切り裂かれていた。
「――、……」
 巨木が倒れるように地に落ち転げた鬼神は、最期に何かを呟いていたが、独り善がりの鬼の言葉は誰の耳にも届くことなく、どこかへ攫われた。鬼神の身体は青い炎に包まれて燃えて逝く。
 そこから幾つかの小さな火の玉が浮かび、ふわりふわりと天へと昇る。あれは捕らえられていた妖狐の魂だろうか。二人は全ての妖狐が憎しみから解放されたことを願いながら、月へ還る彼らを見守り続けた。そう、時はもう夜となる。
「今宵、月下の武舞は…これにて閉幕、じゃな。」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『桜色に染まる春の宴』

POW   :    桜咲く街を散策

SPD   :    飲食などの出店を巡る

WIZ   :    自ら余興や出し物を行う

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 待宵の月の下で、桜はまだ眠っている。
 平穏を守られた村では、着々と桜花祭の準備が進められていた。
 村の広場を覆うように堂々とそびえ立つ、一本の大きな桜。
 この桜は数百年も前から、一昼夜しか花を咲かせない。
 しかし、暁から満開に咲く様は、それはそれは神秘的な美しさを放つという。
 開花を心待ちにしている村人たちは、前日の晩から桜の下に集い、今か今かとその時を見守っているのだ。

 猟兵たちも訪れるかもしれない、と話は通してある。
 祭りは丸一日行われているので、君たちはどの時間帯に参加しても構わない。
 花を楽しみながら、広場に立ち並ぶ様々な出店を巡ってもいいし、自分の得意分野の出し物をして祭りを盛り上げてくれるのもいいだろう。
 その他にも、思い思いの時間を過ごしてもらいたい。
 前日の深夜、昼間、そしてまた夜と祭りは続く。桜が散り終わるまで。
タビタビ・マタタビ
SPD
時間帯は昼間
ヴェルタール(f05099)さんと行動

うわあ、賑やかだねえ!
でも、ちっこいボクだと、人が多くて大変ー!
……あ、ヴェルタールさん、乗せてくれるの? じゃあ一緒にお祭り楽しもー

美味しそうな桜餅!
え、すぐお腹いっぱいにならないか、って? 大丈夫、ボクはこう見えて大食いなんだ(えへん)

あっちには射的の屋台!
ボク、銃より剣の方が得意なんだよね……。そうだ、ヴェルタールさん、やってみてよ!

景品ゲットできたら「凄い! さすが歴戦の勇士だけあるね!」
もし調子が悪そうなら「ヴェルタールさんでも当てられないなんて、このお店、出来る……!」

お腹いっぱいになったらヴェルさんと一緒に桜を眺めよう


ヴェルタール・バトラー
SPD、出店巡りです。
タビタビ(f10770)さんとご一緒。

小柄なタビタビさんを私の頭の上に乗せ、共に祭りを楽しむといたしましょう。

おやタビタビさん、普通サイズの桜餅、大変ではありませんか? どれ、小さなお団子でも探して……なんと、ペロリと平らげてしまいましたね。

射的、ですか? 確かに得手のうちですが……。
どの景品を狙いますかね……タビタビさんにはあの勇ましい鎧武者のフィギュアがよろしいでしょうか。
戦士の目になって撃ちます。
見事当たれば「昔とった杵柄ですね」
外したら「射撃プログラムがさび付いているようですね?」

一通り廻ったら休憩できる場所に腰を落ち着け、タビタビさんと一緒に桜の花を楽しみます。


ルパート・ブラックスミス
【POW】
昼間は街を散策、夕方には桜の下に戻り、天に昇った狐たちのことを思い返しながら桜を眺めて過ごす。

あの狐たちも死して過去となったならば、骸の海へと逝ったのか。ならばオブリビオンとして現れうるのか。

無論そうなれば猟兵として討つが、どうかそうはならず安らかに。そう、冥福を祈る。

だが何に祈ればいいのか。狐の宗教などわからぬし、神なら先程斬り捨てた。

…ならば、永くこの地に根付き見守るこの桜に祈ろうか。
どうか、先に散った命を優しく受け止め。また来年、今夜のような大輪の花を。

【絡み・アドリブ歓迎】


ライラック・エアルオウルズ
【SPD】
夜桜は良いものだと話に聞いては居たけど
目前にしてみると、想像以上の美しさで
…作家にあるまじき事乍ら、言葉を失うね

賑やかな祭りを横目に歩けど、
夜桜をひと度眺めれば思わず足も止まって
桜を短歌等で表現出来る人々への尊敬を深め乍ら、
ひらと舞う花弁を追って改めて視線を屋台へ
折角だから桜や祭に因んだ物を手に取りたいと、
興味の侭に彼方此方を覗き込もう

その中でメリーさんを見掛けたなら
少し時間が欲しい、と小さく声を掛けて
こうして御世話になるのは二度目だから、
何か御礼をしたいと思ってたんだ
作家が言葉を尽くさないのは怠惰だろうけど
言葉を奪う桜に免じて 一つ、どうだい?
なんて、屋台を示して穏やかに首傾ぎ



 地平の彼方が白々と明らむ。
 まだ眠そうなあさぼらけ。人々が見守る中、件の桜も目を覚ます。
 やわらかく、いとおしく綻ぶ、さくら色。
 村中を幸色に染め上げる桜が、おはようと満開に咲き誇った。

 沸き起こる歓声、今年も咲いてくれてありがとうと感謝を捧げて。集合していた人々は張り切って持ち場へと向かう。さあ、時間が惜しい。一日限り桜花祭をはじめよう。
 冬祭りに負けてはいられぬ春祭り。食も遊戯も存分に楽しめる屋台がずらりと並び、華やかな春呼びの祭囃子も途切れることはない。広場を覆うように枝を伸ばしている桜も、惜しむことなく花びらを舞わせて祭りを盛り上げている。

「うわあ、賑やかだねえ! でも、ちっこいボクだと、人が多くて大変ー!」
 タビタビ・マタタビ(若き猫黒騎士・f10770)は、長すぎるマントが人々に踏まれないように裾を抱きかかえて、きょろきょろと辺りを見渡していた。
「こんにちは、タビタビさん。どうやらお困りのようですね。……こちらに特等席がございますが、いかがでしょう」
 偶然祭りに訪れていたヴェルタール・バトラー(ウォーマシンの鎧装騎兵・f05099)は、見知ったお猫様が右往左往しているのを見るに見かねて声をかけてみた。特等席、と自分の頭を指しておすすめしてみる。
「あ、ヴェルタールさん! 乗せてくれるの? ありがとー! それじゃあ一緒にお祭り楽しもー!」
 ぴょんぴょんとヴェルタールの身体をよじ登ったタビタビは、満足気に滑らかな装甲の頭の上に腰かけたのだった。

 まず美味しそうな桜餅の店を発見したタビタビは、ヴェルタールに移動をお願いする。そこの和菓子たちはどれも随分と立派で、溢れんばかりのモチモチの桜餅が桜の葉に巻かれている。
「おやタビタビさん、このサイズの桜餅、大変ではありませんか?どれ、小さなお団子でも探して……」
 心配ご無用。桜餅はすでにぺろりと平らげられていた。口の端にくっ付いた、たっぷりと詰まっていた餡子の欠片を猫の舌で回収してから、タビタビは自慢げに顔を洗う。
「大丈夫、ボクはこう見えて大食いなんだ」
 なんと……とびっくりするヴェルタールは、瞳をパチクリする代わりに赤い光源をチカチカさせていたそうだ。

 タビタビ操縦士の次のご指定は、射的の屋台だった。
「ボク、銃より剣の方が得意なんだよね……。そうだ、ヴェルタールさん、やってみてよ!」
「射的、ですか? 確かに得手のうちですが……」
 勇ましい鎧武者のフィギュアの景品が欲しいというタビタビのため、ヴェルタールは一肌脱ぐことにした。
 気が付けば、彼ら辺りには多くの観客が集まっていた。凸凹コンビの猟兵が射的に挑むらしい。固唾を飲む観客たち、頭の上で一体化しているタビタビは共に獲物を狙って集中を高める。
 ウォーマシンの腕が鳴る。ヴェルタールは戦士と目となり、渾身の一撃を放った。――弾はフィギュアの箱の角を捕らえた。バランスを崩して、ゆらゆら……ごとん。一撃必殺の射撃を間近で見られた観客たちはみんな大興奮だ。
「凄い! さすが歴戦の勇士なだけあるね!」
「昔とった杵柄ですね」
 景品の他、沢山の祝辞と拍手が惜しみなく、彼らに贈られたのだった。

 一通り屋台を巡ってタビタビのお腹も満たされたところで、二人は桜の木陰に移動して腰を据えた。
 美味しかったね楽しかったね桜とってもきれいだね。タビタビが弾ませるおしゃべりにヴェルタールが同意を示しながら、ゆっくりと時間が流れていく。
 そろそろ帰ろうかと立ち上がる時、ヴェルタールの頭にこんもりと積もった桜にタビタビが気付いた。桜の花冠だねと、また二人で笑い合うのだった。

 雲一つない祭り日和な青空の下。ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)は自分の手で護ったものを記憶に焼きつけるように、村をひと通り巡り歩いていた。昨晩失われていたかもしれない命が、そこで輝いていた。祭りを存分に満喫する人々は、自分たちが陰で猟兵により守られていたなど気付かない。彼が狐も鬼神も倒した英雄のひとりであることなど知る由もない。――それで、いいのだ。この平和な日常を護れたことを、自分は忘れやしないだろう。
 次第に黄昏に染まる道を辿って、ルパートは桜の下に戻って来た。昼の内に花びらを散らしていたにも関わらず、なおも儚げな美しさで人を魅了し続ける。桜を眺めながら、もう丸一日が経つ頃かと、天に昇った狐たちを思い返す。
「あの狐たちも死して過去となったならば、骸の海へと逝ったのか。ならばオブリビオンとして現れうるのか……」
 無論そうなれば猟兵として討つが、再び憎しみに濡れてしまう妖狐を思えば、胸に渦巻く青い炎がちりちりと痛むようだった。どうかそうはならず安らかに。そう、冥福を祈る他ない。
(だが何に祈ればいいのか。狐の宗教などわからぬし、神なら先程斬り捨てた……)
 その時。ルパートの頬の鎧を撫でるように、桜の花びらが触れた。彼の愁いを桜だけは聞いていた。
「……ならば、永くこの地に根付き見守るあなたに祈ろうか」
 どうか、先に散った命を優しく受け止め。また来年、今夜のような大輪の花を。

 見上げれば、宵闇に浮かぶ桜に、穏やかな満月が寄り添っていた。
「夜桜は良いものだと話に聞いては居たけど……目前にしてみると、想像以上の美しさだ」
 作家にあるまじき事乍ら、言葉を失うね、とライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)は感嘆の吐息を零した。賑やかな祭りも魅力的だが、夜桜をひと度目にすれば、思わず足も止まってしまう。桜を歌や文字で表現出来る人々への尊敬を深めながら、桜の花びらを目で追っていると、屋台の傍らに見知った顔が紛れているではないか。
 華やかな着物ドレスに身を包む幼女の瞳は春のように暖かで、桜の精がこっそりと祭りを見守っているようだった。
「やあ、メリーさんも来ていたんだね」
「おや、ライラックじゃないか。お仕事お疲れさん、楽しんでるかい?」
 お陰様でと返すライラックは、少し時間をいただけるだろうかと、今回の依頼主であるグリモア猟兵のメリー・アールイー(リメイクドール・f00481)に尋ねてみた。こうして御世話になるのは二度目だから、何か御礼をしたいと思っていたのだ、とのこと。
「作家が言葉を尽くさないのは怠惰だろうけど……言葉を奪う桜に免じて。一つ、どうだい?」
 と屋台を示して穏やかに首を傾ぐライラックに、いつも助けてもらっているのはあたしの方だよ、とメリーははにかんだ。彼の粋な提案を受けた幼女は、何かを思いついたかのように、こっちに来ておくれとその小さな手でライラックを導いていく。
 そこは、和風の小物が並ぶ屋台だった。その中で和紙と桜の花びらで作られた手作りの栞をメリーは指さした。一枚一枚表情の違うそれの中から、どれがいい?と彼に問う。そしてライラックが選んだ一枚と、自分が選んだ一枚を交換しようとお願いするのだ。
 栞、読みかけの物語に一時的に挟むもの。その意図は……作家相手に過度な説明文は不要だろ?とメリーは口の端を持ち上げた。桜や祭りに因んだ物を目当てに屋台を巡っていたライラックにとっても、調度良い思い出土産になったのではないだろうか。

 突然、サァ――――ッ、と強い風が吹く。
 この時期に必ずやってくるという一陣の春嵐に、人々は自分の着物を押さえて目を瞑った。これが桜花祭の終わりの合図なのだ。全ての桜の花びらは天へと還っていく。再び目を開けた時には、あの美しかった桜の花は、幻のように消えていた。
 村人は皆一様に桜の木に向けて頭を下げた。そしてすぐに祭りの片付けへと作業を移す。
 そうしてまた来年。人々の想いを糧として、今年よりも更に美しさを増す桜を心待ちにして一年を過ごすのだ。

【お狐様と桜花祭~END~】

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月13日
宿敵 『鬼門沌行』 を撃破!


挿絵イラスト