金で買えない感動がある
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「……という訳ですので次の試合、貴女達には負けてほしいんですの」
アスリートアース某所にある、超人プロレス団体『バーニング・インフェルノ』の事務所にて。
きらびやかなドレスに身を包んだ縦ロールの少女が、黒髪の女レスラーにそう語った。
「つまり、アタシ達に八百長をやれってことか?」
「悪い条件ではないでしょう? たった1試合負けるだけで、この額の報酬が手に入るのですから」
彼女達の間にあるテーブルには、札束がぎっしりと詰まった銀色のジュラルミンケースが積んである。
超人アスリートが受け取れる報酬は試合での活躍に左右されるが、これは通常のファイトマネーをはるかに超える額だ。一般人の金銭感覚ならば数年は試合に出なくても遊んで暮らせるだろう。
(この方は邪悪なダークリーガー、きっと乗ってくるはずですわ。それにプロレスなんて最初から八百長が当たり前なんでしょう? 断る理由なんてないですわよね)
この提案を持ちかけた令嬢の表情には、相手とプロレスに対する舐めた態度がありありと浮かんでいた。
彼女は別にダークリーガーもプロレスも嫌いなわけではない。ただ、優れたアスリートでさえもカネをちらつかせれば思う様に操れる、その快感に酔いしれたいだけなのだ。人々がもてはやす超人スポーツも、しょせん自分の手のひらの上なのだと。
「……良いだろう。だがカネを受け取るのは試合が終わった後だ」
「律儀ですのね。よろしくてよ」
果たしてダークレスラー『フェンリル・マキ』は、この令嬢ミリオネアの申し出を受け入れた。
スポーツを、そして自分達アスリートを手玉に取ろうという邪な考えを、全て見抜いたうえで――。
●
「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「アスリートアースのとある大富豪のご令嬢が、ダークリーガーに八百長試合を持ちかけています」
ユーベルコードを操るアスリート達が、日夜超人スポーツで人々を感動させているアスリートアース。この世界にもいわゆる「鼻持ちならない金持ち」という奴はいて、金の力でなんでも自分の思い通りにできると思い上がっている。そんな輩がある時ふと、超人スポーツを自らの手で操ろうと考えるのは自然なことだった。
「そのご令嬢……ミリオネア・リッチモンドという方はオブリビオンではありませんが、若くして親から受け継いだ財産を好き放題に使ってワガママの限りを尽くしています」
その背景には親から十分な愛情を受けられなかったとか事情もあるかもしれないが、その放蕩とワガママぶりはいささか度を越している。そんな彼女は超人アスリートを大金で買収し、自分の思うがままの試合をやらせようと考えたようだが――。
「超人スポーツの選手達は、誰も彼女の誘いに頷きませんでした」
八百長に応じないというのはこの世界のアスリートにとっては常識なのだが、世間知らずのご令嬢はご存知なかったようだ。金さえあればなんでも思い通りにできると信じていたミリオネアは、この返答に非常に驚きうろたえた。
「それでも諦められなかったミリオネアさんは、あろうことかダークリーガーが所属する超人プロレス団体『バーニング・インフェルノ』に『今度の試合で負けてくれたら、巨額の報酬をあげる』と持ちかけました」
悪に染まったダークリーガーなら八百長試合にも応じてくれると考えたのかもしれないが――むしろ逆だ。
ダークリーガーこそがアスリートの中でも最も勝利にこだわる者達。そんな相手にわざと負けてくれとお願いするなんて、下手すればその場で殺されてもおかしくない暴挙である。
「ですが意外なことに、この団体のリーダーである超人ダークレスラー『フェンリル・マキ』は、この申し出を快諾しました」
それは単に彼女が金にがめつい変わり者のダークリーダーだった、というだけの話ではなさそうだ。この情報を予知したリミティアはアスリートアースに向かい、この人物や団体について詳しく調べようとしたのだが――。
「なんと調査中のリムの元に、フェンリル・マキから連絡がありました」
どうやって連絡先を突き止めたのかは不明だが、それは重要な話ではない。グリモア猟兵であるリミティアに接触したダークリーガーの使いは、大富豪のミリオネアからの八百長の件について、洗いざらいの事を語った。
「そして、彼女はこう提案してきました……『スポーツを愚弄する者を殺すのは簡単だ。だが、そんな腐った輩に、勝敗を超えたスポーツの素晴らしさを見せつける事の方が、もっともっと価値のある事だ。最高の試合をして、奴を改心させないか?』と」
リミティアの口調はあくまで淡々としたものだったが、困惑の色がありありとうかがえる。ようは猟兵とダークリーガー、リングの上で正々堂々と戦って「本当のスポーツ」の感動を相手に教えてやりたい、というのがあちらの意向らしい。実に真っ当な提案だが、オブリビオンの言う事ではない。
「一周回って怪しいと思いましたが、どうやら裏はないようです。こちらとしても断る理由はないため、試合を快諾しました」
ダークリーガーの影響でダーク化したアスリート達を元に戻すのが、アスリートアースにおける猟兵の使命である。そしてフェンリル・マキ率いる団体にもダーク化アスリートは在籍している。彼女達を元に戻すためには、どのみち正々堂々とスポーツの試合で勝つ必要があるのだ。
「超人プロレスのルールについて改めて説明しておきますと、時間無制限、リング上では1対1、選手交代・飛び入りは自由。ユーベルコードの使用は自由ですが、武器使用やリング内への乱入は反則となります」
相手チームの選手を倒し続け、10カウント以内に新たな選手を出せなくなったチームが敗北となる。ようは次から次に現れるダークレスラーとリング上で戦い、フェンリル・マキを含めた全てのレスラーを倒せば勝ちだ。
「試合が始まれば特に留意することはありません。レスラーとして観客を沸かせながら、猟兵としてダークリーガーを倒す、ただそれだけです」
その試合がフェンリル・マキの言ったように感動をもたらす「最高の試合」であれば、ミリオネア嬢を改心させることもできるだろう。カネの力に溺れた人間を正しい道に戻し、ダークリーガーも倒せる一石二鳥の作戦だ。
ちょっと変わった
対戦相手だが、この世界ではわりといつものこと。説明を終えたリミティアは手のひらの上にグリモアを浮かべ、アスリートアースに猟兵達を送り出した。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」
戌
こんにちは、戌です。
今回のシナリオはアスリートアースにて、カネの力に溺れた悪い令嬢を改心させるために、ダークレスラーと正々堂々戦うシナリオです。
試合内容は超人プロレス、対戦チームはダークリーガーによるプロレス団体『バーニング・インフェルノ』です。
1章では同団体に所属する『燃焼系アスリート』との戦闘になります。フェンリル・マキの影響でダーク化したためか、団体名に恥じない非常にアツいレスラーたちです。
相手は1人ずつリングに上がってくるので、こちらも1人ずつ出て相手をする形になります。プロレスのルールを守れば(なんなら反則しても5カウント以内なら不問)戦い方は自由です。
ここで観客の目を引き、息を呑ませる華麗なプレイを見せた猟兵にはプレイングボーナスが入ります。
2章は団体のボスである超人ダークレスラー『フェンリル・マキ』との戦闘です。
ルールは引き続きプロレスです。悪い令嬢からの八百長に応じず、殺してしまおうともせず、本当のスポーツの素晴らしさを見せつけてやろうというアツいプロレス魂の持ち主です。
この章でお互いに死力を尽くして戦い、泥臭く全力を出し切った猟兵にはプレイングボーナスが入ります。
ここまでの展開で「最高の試合」を繰り広げることができれば、八百長を持ちかけていた「ミリオネア・リッチモンド」嬢も改心することでしょう。フェンリル・マキ以外のダーク化していた選手も元に戻ります。
その後の3章がどういった内容になるかは、実際に章が移行してから説明いたします。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『燃焼系アスリート』
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POW : できますできます、あなたならできますッ!
【熱い視線】が命中した敵に、「【ユーベルコードを封印して競技に熱中したい】」という激しい衝動を付与する。
SPD : もっと熱くなりましょうよッ!
【見せれば見せるほど熱く激るアスリート魂】を見せた対象全員に「【もっと熱くなりましょうよッ!】」と命令する。見せている間、命令を破った対象は【耐久力】が半減する。
WIZ : どうしてそこで諦めるんですかそこでッ?!
対象への質問と共に、【拳や口、または競技に使用している道具】から【レベル×1体の火の玉マスコット】を召喚する。満足な答えを得るまで、レベル×1体の火の玉マスコットは対象を【殴打、および熱疲労の状態異常の付与】で攻撃する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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シプラ・ムトナント
武器使用は反則ですので、
散弾銃はお留守番ですね。
学んできたのは軍隊式の格闘術、レスリングとは違いますが……ヒツジの血が齎す【闘争心】は、決して劣りません。
……それに、わたしも令嬢の端くれ。お仲間の横暴は見過ごせません。お手合わせ、願えますか。
『戦線救護術』を使用し、軍用包帯を手首に巻いて……効果3倍、保護はバッチリですね。
……では、参ります。
熱くなれ、というのならいくらでも。
フランス
獣人の意地、ご覧に入れましょう……!
受けて返すのが魅せる戦い、狙うはカウンターです。
向かってくる相手の脇下に腕を差し込み、持ち上げて背中から叩きつける……拙い返しですが、どうぞお受け取りを!
「武器使用は反則ですので、
散弾銃はお留守番ですね」
試合が始まる少し前、シプラ・ムトナント(鋼の衛生猟兵・f39963)は控え室のロッカーに愛用の銃を置いた。
故郷の戦争とは違って、ここの戦いには様々なルールがある。軍人ではなく
格闘技選手としてリングに上がるのは彼女にとって珍しい体験だろう。無論、負けるつもりは毛頭ないが。
「学んできたのは軍隊式の格闘術、レスリングとは違いますが……ヒツジの血が齎す闘争心は、決して劣りません」
【戦線救護術】の技能を活かして、軍用包帯をバンテージのように手首に巻けば保護はバッチリ、気合も十分だ。
すでに会場には大勢の観客が詰めかけ、歓声がこちらまで聞こえてくる。この盛り上がりにも、例の大富豪の令嬢とやらが一枚噛んでいるのだろうか。
「……それに、わたしも令嬢の端くれ。お仲間の横暴は見過ごせません。お手合わせ、願えますか」
「さっそくアツい子が出てきましたね! 相手にとって不足なしです!」
ダークリーガー化した選手を助けるため、カネの力に溺れた令嬢の心を正すため。いざリングという名の戦場に上がったシプラを待っていたのは、炎のようなコスチュームに身を包んだ――否、炎そのものをコスチュームにした女レスラー。『バーニング・インフェルノ』に所属する燃焼系アスリートの1人である。
『さぁ始まるぞ、世紀の一戦が! 勝つのはダークレスラーか、それとも挑戦者達か!』
「……ふっ。勝敗はもう決まっているのですわ」
観客の期待と興奮が高まる中、ミリオネア令嬢は静かにほくそ笑む。自分こそがこの試合を支配しているのだと。
だが彼女の思うようにはいかない。ここから始まるのは猟兵とダークレスラーによる正真正銘の真剣勝負である。
「……では、参ります」
「来なさい!」
先手を打ったのはシプラ、まずは小手調べとばかりに軽いジャブを打つ。相手は避けようともせずに正面からそれを食らった上で、にやりと笑ってみせた。生粋のプロレスラーたるもの、攻撃は全て受け切るのがポリシーらしい。
「なかなか良いパンチです。ですが、まだまだッ!」
【もっと熱くなりましょうよッ!】と、熱く激るアスリート魂を叫んで、反撃を繰り出してくる燃焼系レスラー。
たとえ殺す気はなくても気を抜いたら火傷では済まないだろう。これは互いの魂とプライドを賭けた戦いなのだ。
「熱くなれ、というのならいくらでも。フランス
獣人の意地、ご覧に入れましょう……!」
温厚な性格の裏に秘められた血の気の多さを露わにして、シプラは対戦相手の挑戦に応じる。一方が打てばもう一方も即座に打ち返す、双方譲らぬ戦いに観客は大盛り上がりだが、この程度で満足させるつもりなんて欠片もない。
(受けて返すのが魅せる戦い、狙うはカウンターです)
チャンスは一瞬。燃焼系レスラーが炎を纏ってタックルを仕掛けてきた時、彼女はその脇下に腕を差し込んだ。
密着すればダイレクトに熱を感じることになるが、気にはならない。腰を低くし両腕に力を籠めて、そのまま相手を高々と宙に持ち上げる――!
「……拙い返しですが、どうぞお受け取りを!」
「う、うおおおおッ
!!?!」
受けの体勢を整える間もなく、背中から勢いよくマットに叩きつけられる燃焼系レスラー。シプラ渾身のカウンターは見事に決まり、レフェリーのカウントが始まる――ここで10カウントを取ることができれば、猟兵の勝利だ。
「見事……貴女のアツい魂、私の魂に響きましたよ……」
「ふっ、初っ端から魅せてくれるじゃないですか。さあ次の相手は私です!」
満足げな笑みでシプラに称賛の言葉を送ると、女レスラーは意識を失い、入れ替わりに次のレスラーが登場する。
まずは1人目。しかし『バーニング・インフェルノ』に所属する全てのレスラーを倒すまで、このアツい戦いに終わりはないのだ。
大成功
🔵🔵🔵
カビパン・カピパン
試合開始の鐘と共に攻撃を―
「もっと熱くなりましょうよッ!」
「クライフターン」
「できますできます、あなたならできますッ!!」
「無理」
試合開始から15分。カビパンは攻撃をクライフターンで回避しながらゴキブリのように逃げ回っていた。
「戦う気あるの!?」
「ない」
「逃げてばかりじゃ、終わらないじゃない!」
「クライフターン」
「よけるな!」
「クライフ」
「どうしてそこで諦めるんですかそこでッ?!」
「諦めて逃げる」
「逃げるなっ!」
「逃げてはダメだと言われてない」
コイツを熱くするには、自分が犠牲となるしかない。そう覚悟した燃焼系アスリートは自ら敗北を認め降参した。
色んな意味で息を呑ませる展開の試合であったという。
「なかなか盛り上がる展開じゃない。さて、次の選手は誰かしら」
観客席の中でも特に見晴らしのいいVIP席から、ミリオネア・リッチモンドは試合を眺めていた。ダークレスラーに大金を掴ませ、八百長を約束させたこの勝負。果たしてどんな負けっぷりを魅せてくれるか期待しているようだ。
「さあ行きますよッ!」
そんな令嬢の思惑などさておいて、リングの上では燃焼系レスラーが白熱していた。その対戦相手となる猟兵は、瀟洒な軍服に身を包んだカビパン・カピパン(🥫🍝🍅 戦争の悲惨さに嗚咽するトマト・f24111)。熱血系な向こうとは対照的に、表情からはいまいちやる気を感じられない。
「もっと熱くなりましょうよッ!」
「クライフターン」
燃えるアスリート魂を込めた燃焼系レスラーの攻撃を、カビパンは華麗なフェイントとステップで避ける。それはプロレスではなくサッカーの技術だった気もするが、アスリートアースでは異種競技の激突も珍しくはない。猛牛をあしらう闘牛士のような立ち回りに、観客も見事だと拍手を送った。
「できますできます、あなたならできますッ!!」
「無理」
が。その展開が何分も続くとだんだん白けてくる。カビパンは相手の攻撃を避けても反撃しようとせず、ゴキブリのようにリング内を逃げ回るばかりだ。燃焼系レスラーがどれだけ熱心に訴えかけても、まるで戦う気を見せない。
「戦う気あるんですか!?」
「ない」
試合開始から15分。終わりの見えない塩展開に燃焼系レスラーが喚いても、カビパンの返事は素っ気なかった。
超人レスリングに時間切れはないため、どちらかが倒れるまで試合は続く。だが、このままでは客に「金返せ!」とヤジを飛ばされるほうが時間の問題だ。
「逃げてばかりじゃ、終わらないじゃない!」
「クライフターン」
「よけるな!」
「クライフ」
「どうしてそこで諦めるんですかそこでッ?!」
業を煮やした燃焼系レスラーはユーベルコードで火の玉マスコットを召喚し、何としても相手にやる気を出させようとするが。恥も見栄えも捨てたカビパンの回避はやたら上手く、熱による疲労はあっても動きのキレが衰えない。
「諦めて逃げる」
「逃げるなっ!」
「逃げてはダメだと言われてない」
この調子ではどちらかの体力が尽きるまで同じ展開が続くだろう。粘れば勝てるかもしれないが、そんな試合はまったくアツくない。燃えるような感動的ファイトを心情とする『バーニング・インフェルノ』として、このまま観客を冷めさせるわけにはいかない。
「……私の負けです! 決着は、次の選手に託します!」
コイツを熱くするには、自分が犠牲となるしかない。そう覚悟した燃焼系レスラーは、自ら敗北を認め降参した。
このままグダグダと続けるくらいなら潔くリングを降りる。そうする事で彼女は試合そのものを守ったのである。
色んな意味で息を呑ませる展開、そしてどっちがヒールでヒーローか分からなくなる内容だったが、気を取り直して試合はまだまだ続く――。
大成功
🔵🔵🔵
レティシア・ハルモニアス
夢幻戦線
無理矢理天牙達に連れて来られた正直興味がない
わらわが何故このような事に付き合わねばならぬ?天牙よ…貴様は相変わらず野蛮な考えじゃな〜親の顔が見てみたいのお〜
軽く天牙をからかってみたが意味不明な返答をされて返答する気も失せた
貴様っ…また適当な事をもう良い帰らせてもら…きゃあ?!
突然現れた雀達にリングに投げ飛ばされて悲鳴を上げる
ええい…掛かってこい相手になってやろう!
敵は暑苦しいアスリート魂やらを見せて来たので雰囲気に飲まれそうになった
敵の攻撃をオーラ防御で防ぐが力を奪われているので弾くのが精一杯だった
このままでは攻撃を受けてしまうのでUCを発動して回避し敵のUCをコピーするが…劣勢だった
黎明・天牙
夢幻戦線
ぷろれすって奴か〜ヴォルガ、リズ
『俺達のいた世界では無い文化だ』『私は少し苦手ね…』
二人の反応を聞いた事なので早速試合開始だ
ティニが何か言ってるのでこう返す
グ☆ル☆メ☆ス☆パ☆イ☆サーと
行けティニ、てめぇに決めた!
(サ○シの格好)
『ららぽーとォォ!』『イヤッホォォォ!』『アグレッシブぅぅぅ!』『エクセレントォォォォ!』『ハルトォォォォ!』
試合開始と同時に(2500円で買収済み)連雀レンジャーズを呼び出してティニを戦場に投げ飛ばす
ティニは苦戦を強いられていた
おいおいやばくね、ピンチじゃん
『『お前のせいだろうが!』』
ヴォルガとリズに同時に飛び蹴りを食らわされた
素早く後ろに飛んでいたのでノーダメージ
OK、ティニ交代だ〜戻って来い〜
軽く手招きして交代を促した
「貴様…」
ティニが睨んできたので
悪い悪い、よく頑張ったな
労いの言葉をかけてリングに入った
たと同時に振動の技術を使用して吹き飛ばして敵を宙に浮かせた後にブレインバスターで一撃KOした
『『お前が最初からやれよ!』』
外野からツッコミが入った
「ぷろれすって奴か~ヴォルガ、リズ」
『俺達のいた世界では無い文化だ』『私は少し苦手ね……』
白いリングの上で繰り広げられる戦いを、物珍しそうに眺めるのは黎明・天牙(夢幻戦線のリーダー『パラダイス・ブレイカー』・f40257)。オオカミ獣人のヴォルガが腕組みをして、ライオン獣人のリズが眉をひそめつつ彼に応える。戦争が続いている彼らの故郷では、あまりこうしたスポーツも盛んではないのだろう。
「わらわが何故このような事に付き合わねばならぬ?」
そしてもう1人、天牙に誘われて連れて来られた者がいる。彼女――レティシア・ハルモニアス(奪われた全てを取り返す為に〜吸血鬼戦線〜・f40255)は試合にもさして興味がない様子で、不満そうな態度を露骨に隠そうともしない。故郷では貴種だったためか相当に気位の高い娘のようだ。
「天牙よ……貴様は相変わらず野蛮な考えじゃな〜親の顔が見てみたいのお〜」
おそらくはからかい半分なのだろうが、レティシアは無理やりこんな所に連れてこられた嫌味を言う。もともと生まれた世界も環境も異なる者では趣味が合わないのは当然だろうが――しかし天牙はそれで気を悪くした風もなく、にやりと笑ってこう返す。
「グ☆ル☆メ☆ス☆パ☆イ☆サー」
「は? 貴様っ……また適当な事をもう良い帰らせてもら……きゃあ?!」
どうせ何かのネタなのだろうが、にしても意味不明な返答をされて、レティシアはそれ以上返答する気も失せた。
これ以上は付き合ってられんわと踵を返そうとしたところ、突然現れたスズメの群れに囲まれて、胴上げのごとく担ぎ上げられてしまう。
「行けティニ、てめぇに決めた!」
『ららぽーとォォ!』『イヤッホォォォ!』『アグレッシブぅぅぅ!』『エクセレントォォォォ!』『ハルトォォォォ!』
まるでトレーナーのような天牙の号令と共に、2500円で買収された【連雀レンジャーズ】がレティシアをリングに投げ飛ばす。「きゃあ!」と悲鳴を上げて尻餅をついた女吸血鬼の前には、超人レスラーの燃焼系アスリートが待ち構えている。
「貴女が私の対戦相手ですね! よろしくお願いします!」
「ええい……掛かってこい相手になってやろう!」
どんな形であれ一度リングに上がってしまった以上は逃げられず、また敵前逃亡を良しとするのはレティシア自身のプライドが咎める。ゴングの音はすでに鳴り、観客からの声援が降り注ぐ中で、彼女はヤケクソ気味に身構えた。
「もっと熱くなりましょうよッ!」
「ええい、暑苦しいわ!」
燃えるアスリート魂を見せつけながら戦う燃焼系レスラーと、そもそもプロレスのルールに不慣れなレティシア。
普通の戦いであれば遅れは取らないだろうが、ここでは後者のほうが分が悪いか。本人も自覚がないままに相手の雰囲気に呑まれそうになっている。
「せいッ!」
「くっ……!」
炎を纏ったチョップをオーラの防壁でなんとか弾く。かつては女王として君臨しながら、仲間の裏切りにより全てを奪われた現在の彼女の力では、これが精一杯だった。あっという間にロープ際まで追い込まれ、防戦一方になる。
「わらわはここまで衰えておったのか……」
このままでは攻撃を受けてしまうと悟ったレティシアは【ソード・ミラージュ】を発動。自分の精巧な残像分身を作り出し、それを囮にしてロープ際から脱出する。相手側からすれば突然彼女が2人に増えたように見えるだろう。
「2対1……ではないようですね。面白い!」
超人プロレスルールではリング内への他選手の乱入は反則だが、ユーベルコードの使用は自由である。増えたほうのレティシアは相手のユーベルコードもコピーできるようで「もっと熱くならんかッ!」と叫びながら熱血スタイルで反撃してくるが――逆にそれが本体との見分けを容易にしていた。
「おいおいやばくね、ピンチじゃん」
『『お前のせいだろうが!』』
分身を出してもいまだ劣勢を覆せずにいるレティシアを見て、リングの外から天牙が呟く。元はと言えば彼が無理やり出場させたと言うのに、まるで他人事のような言い草には、ヴォルガとリズからも同時にツッコミ(飛び蹴り)が入った。
「OK、ティニ交代だ~戻って来い~」
それを後ろに飛んでノーダメージに抑えつつ、彼はレティシアに軽く手招きして交代を促す。控えがいる限り選手交代は何度でも可能なのも超人プロレスの特徴だ。もしかすると彼は最初からそのつもりでいたのかもしれない。
「貴様……」
「悪い悪い、よく頑張ったな」
恨めしげに睨んでくるレティシアに労いの言葉をかけて、リングに入る天牙。交代中は相手レスラーも追撃を仕掛けてこようとはしない。アツく白熱したバトルを重んじる彼女らは正々堂々の勝負を好むのだ。ダークリーガーとしてはそれで良いのかという気がしなくもない。
「次の相手は貴方ですね! さあ、どこからでもかかって……」
が。彼女が口上を言い切る前に、天牙は振動の技術を応用した一撃を放つ。衝撃が相手の体を宙に浮かせた直後、首と腰を掴んで逆さまに抱え上げ、脳天からマットに叩き落とす――ブレインバスターと呼ばれるプロレス技だ。
「ぎゃんッ!?!」
『お、おおぉぉぉぉーーーッ!!』
交代直後に放たれた大技によって燃焼系レスラーは一撃KO。この急展開に観客からもどよめきと歓声が上がる。
直前までのレティシアの苦戦があったぶん、その圧勝ぶりはより鮮烈に映ったようだ。これを果たして天牙が最初から計算していたかと問われれば、そんな事はおそらく無いが。
『『お前が最初からやれよ!』』
外野2名からも当然と言えば当然のツッコミ。とはいえ試合は盛り上がっているので結果オーライかもしれない。
令嬢による八百長依頼から始まったこの試合は、もはや誰にも予想のつかない展開に突入しようとしていた――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
今を生きる人間が八百長試合を唆し、ダークリーガーが正々堂々とした戦いを望む……
過剰な富が人を狂わせ、驕りや堕落を招くのでしょうか
赤いブルマの体操服でリングイン
超人プロレスには幾度か参加しているので、私を知っている観客もいる筈
手を振るなどの【パフォーマンス】をすれば客席を沸せられるでしょう
【覇気】を漲らせ、持ち前の【怪力】を発揮して激しい打撃戦を繰り広げる(功夫)
絞め技で捻じ伏せられるピンチにも、マットに向けて【風迅拳】を叩き込み、自分ごと敵を天高く【吹き飛ばす】
そして空中で組み付き(空中戦・グラップル)、共に落下してマットへ叩き付ける!
「今を生きる人間が八百長試合を唆し、ダークリーガーが正々堂々とした戦いを望む……過剰な富が人を狂わせ、驕りや堕落を招くのでしょうか」
歪んだ人の業が発端となった今回の事件に、オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は複雑な感情を抱く。今日を生き抜くにも必死な世界ではこうした腐敗が起こる余地さえ少ないが、恵まれた環境が必ずしも人を良い方向に導くとは限らないらしい。
「何にせよ、放ってはおけません」
運動会の選手を思わせる、赤いブルマの体操服でリングイン。超人プロレスには幾度か参加経験があるため、立ち振る舞いは堂々としたものだ。観客の中には以前の活躍ぶりを知っている者もいるらしく、彼女が姿を現すと会場のボルテージが1段階上がった。
「おおっ、あの人は!」「まさかここで彼女の試合が見られるなんて!」
期待のこもった視線が集まる中で、オリヴィアは客席に手を振って自信に満ちた笑顔を見せる。会場を沸かせるためにはこうしたパフォーマンスも大事だ。ここがアスリートアースだからこそ重視される「魅せる」戦い方の技術。
「良いですね。貴女とならアツい試合ができそうです」
「それは何よりです。では、始めましょう」
対戦相手の燃焼系レスラーも気合十分。試合再開のゴングが鳴ると、2人の女戦士はどちらからとなく激突する。
片や覇気を、片や闘魂を漲らせた正面切ってのガチンコ勝負。拳の音がリングの外まで響くような、激しい打撃戦が始まった。
「できますできます、あなたならできますッ!」
燃焼系レスラーはまっすぐな熱い視線と声を送りながら、物理的に熱い拳を繰り出す。対するオリヴィアも持ち前の怪力を発揮して乱打を浴びせる。双方一歩もゆずらぬ互角の戦いだが、リング上の駆け引きではダークリーガー側のほうが経験豊富か。
「もらったッ!」
「うっ……!」
一瞬の隙をみて打撃から絞め技に移行し、相手の首に腕を絡ませる燃焼系レスラー。オリヴィアは全力で抵抗するものの、一度極まってしまったチョークは腕力だけでは抜け出せない。このまま決着か、と観客席がにわかにざわつくが――。
「荒ぶる風よ、吹き飛ばせ――!」
ねじ伏せられる寸前でオリヴィアは力を振り絞り、マットに向けて【風迅拳】を叩き込む。凄まじい風圧がリングの上に吹き荒れ、反動が彼女ごと敵を天高く吹き飛ばす。これには燃焼系レスラーも想定外だったようで、腕の力が僅かに緩んだ。
「なっ……自分ごと?!」
驚嘆するレスラーの腕を引き剥がし、今度はオリヴィアが逆に組み付きを返す。そのまま2人は重力に導かれて共に落ちていくが、落下の姿勢は彼女が上で、敵が下。このままでは一方が激突時の衝撃をモロに食らう――これが、ピンチを逆転の一手に変える彼女の作戦。
「これで、どうですか!」
「ぐはぁッ!!!」
自重とオリヴィアの体重、そして落下速度の全てを乗せてマットへ叩き付けられた燃焼系レスラーは、悲鳴を上げたきり起き上がらない。華麗にして鮮やかな逆転劇を目の当たりにした観客から「うおおおッ!」と歓声が上がる。
勝利を掴んだ拳をオリヴィアが掲げれば、その歓声はさらに大きくなり、熱気が会場の隅々まで満ちていく――。
大成功
🔵🔵🔵
苔縄・知朱
その手の勘違いは付き物だから仕方ないとして、それよりダークリーガー側の動向の怪しさの方が私も気になりますね。
ホントに裏がないなら、改心して真っ当なスポンサーになってくれれば万々歳……とか?
下手な考えはさておき、そのご令嬢がどこにいるか確認しておきます。
次の試合運びの参考にするかもしれません。
相手はまた随分と暑苦しいわね……。
ここまでくると組み合いはちょっと遠慮したいわ。
まずは打撃技主体で、互いの技の応酬に。
火の玉が召喚されたら、ジャンプで攻撃を躱す同時にトップロープに跳び乗り空中戦に移行、狙うはあくまで本人のみ。
最後はコーナーポストの上からムーンサルト・プレス、決まったらそのままフォールよ!
「その手の勘違いは付き物だから仕方ないとして、それよりダークリーガー側の動向の怪しさの方が私も気になりますね」
レスラーとして何度もダークリーガーと勝負してきた苔縄・知朱(ウィドウスパイダー・f39494)としては、向こうの意見をそのまま鵜呑みにすることはできなかった。方向性に違いはあっても連中は総じて勝利に貪欲であり、なおかつオブリビオンを素直に信用していいものではない。
「ホントに裏がないなら、改心して真っ当なスポンサーになってくれれば万々歳……とか?」
この試合を持ちかけてきた『フェンリル・マキ』の真意を考えてみるものの、現状では答えを出す材料に乏しい。
それはさておき八百長を仕組んできたという令嬢のほうも気になる。次の試合運びの参考にするかもしれませんし――と、どこにいるかは確認しておく。
(……探すまでもなかったですね)
件のミリオネア・リッチモンド嬢は会場内でも一等高いVIP席、リングだけでなく客席まで一望できる場所から試合の全てを見下ろしている。自分がこの戦いを影で操っているのだという優越感に浸るためだろうか、なかなかイイ性格をした御仁のようだ。
「で、相手はまた随分と暑苦しいわね……」
「ふふふ、私達の熱さはまだまだこんなモノじゃありませんよ!」
リングの方に意識を戻せば、敵チームの燃焼系レスラーが挑発的な笑みを浮かべている。物理的に燃え上がる程のアツいアスリート魂を宿した彼女にとっては、八百長などよりも試合内容が全て。ゴングの音が鳴り響くなり、正面から戦いを挑んできた。
(ここまでくると組み合いはちょっと遠慮したいわ)
知朱こと"ウィドウスパイダー・チカ"は特殊リング型デスマッチを得意とするヒール系レスラー。しかし今回は持ち前の残虐ファイトは温存する様子で、まずは打撃技主体の立ち回りを魅せる。燃える拳と蜘蛛の蹴り、日々のトレーニングで磨き上げられた互いの技の応酬が火花を散らす。
「やりますね! でも、まだまだ熱くなれますよねッ?!」
一歩も譲らぬ戦いが敵の心にますます火を着けたのか、燃焼系レスラーは問いかけと共にユーベルコードを発動。
拳や口から離れた炎が小さな火の玉マスコットとなり、本体と合わせて連携攻撃を仕掛けてくる。本来なら他者の乱入はルール違反だが、これはユーベルコードの効果なので反則は取られないようだ。
「数が増えれば何とかなるって? 甘いわよ!」
チカはジャンプで火の玉の攻撃を躱すと同時にトップロープに跳び移り、空中戦へと移行する。しなやかな脚線美と柔軟な体のバネが生み出す跳躍力は、まるで無重力空間にいるかのよう。その眼差しが狙うはあくまで敵本人のみだ。
「ぐっ、これはなかなか……!」
「「おおおおおッ!!」」
高所の優位を活かしたウィドウスパイダーの【アトラック・ルチャ】を受け、追い込まれていく燃焼系レスラー。
華麗にして無慈悲な空中殺法を見せつけられ、観客達も大盛り上がりだ。プロレス自体に冷めた態度を取っていたミリオネア嬢でさえ、思わず拳を握るほどである。
「トドメよ!」
「ぐ、わぁッ!!」
最後はコーナーポストの上に立ち、バック転しながら倒れた相手にボディプレスを仕掛けるチカ。美しき円弧を描くムーンサルト・プレスを決められた燃焼系レスラーは、そのままフォールの体勢に持ち込まれ、カウントが始まる。
「くっ……お見事! 私の負けです!」
「これが噂に聞くウィドウスパイダー・チカのアトラック・ルチャ……やりますねッ!」
10カウントを取られる前に敵は敗北を認め、すぐさま次の選手がリングに入ってくる。交代要員が尽きない限り超人プロレスの試合は続くが、現状優勢なのは猟兵達だろう。それは八百長で決められた筋書きなどではなく、知朱を含めた全ての選手による実力勝負の結果であった。
大成功
🔵🔵🔵
笹乃葉・きなこ
●POW/色々とお任せ
ケモ状態でリングに登場だべ
てっ、あー
また、このタイプのレスラーだべか
ユーベルコード使えなくなるから
面倒なんだよなぁ
今回もパフォーマンスもかねえ
きれいに洗ったゴミ箱に水を入れてそれ被ってから、やり合うか
え?ユーベルコード使わないから舐めプかって?
全然、立っている対戦相手の横や斜め後ろに立つじゃん
その場でジャンプして、相手の後頭部めがけて自らの片足を伸ばしながら回してキックをしたり
ローリングソバットとか
相手の攻撃を野生の勘と怪力でむりやりときは捌いて投げ技も良いなぁ
水被っちまったから、オラも引くに引けないんだべぇなぉ
思う存分ボコボコにしてやるな♥
安心して技を掛けてやるべぇ♥
「てっ、あー。また、このタイプのレスラーだべか」
獣化状態でリングに上がってきた笹乃葉・きなこ(キマイラの戦巫女・f03265)は、対戦相手が以前にも戦ったことのある『燃焼系アスリート』の同類だと気付くと、露骨に嫌そうな声を出した。勝てない敵という訳ではないのだが、フサフサの毛並みと燃えてる奴は接近戦だと相性が悪い。
「ユーベルコードも使えなくなるから面倒なんだよなぁ」
今回もパフォーマンスもかねえ、とぼやきながら彼女はきれいに洗ったゴミ箱を持ってきて、中にたっぷり入った水を頭から被る。燃焼対策だろうが、バシャァ! と豪快に濡れ鼠ならぬ濡れキマイラになる姿には、観客席からも「おおっ」とどよめきが上がった。
「なかなか気合入ってますね! 貴女とならいい試合ができそうですッ!」
自ら水を被るさまにやる気を感じた燃焼系レスラーは、熱い視線をきなこに送りながら戦いを挑んでくる。その眼で見つめられるときなこも何故か「ユーベルコードを封印して競技に熱中したい」という衝動が湧き上がってきた。前回戦った時と同じような感覚だ。
(え? ユーベルコード使わないから舐めプかって? 全然)
彼女は突っ込んできた相手の初撃を避けて斜め後ろに立ち、その場でジャンプして横回転を加えたキックを放つ。
水飛沫を散らしながらのローリング・ソバットが燃焼系レスラーの後頭部に炸裂し、ロープ際まで吹っ飛ばした。
「ぐうッ! やりますねッ!」
痛烈な一撃を食らった燃焼系レスラーだが、燃える闘魂は痛みさえ凌駕するのか、気迫が萎えた様子は全くない。
より一層熱い眼差しを向けながら、今度は姿勢を低くしてタックルを仕掛けてきた。打撃勝負では分が悪いと見て強引にグラウンド勝負に持ち込むつもりか。
「たあッ!」
「甘いべぇ」
きなこは野生の勘でその動きを読んでいたが、敢えて正面からタックルを受け止める。相手よりも頭ひとつ分以上は小柄な体格でありながら、その筋力は人並み外れており、まるでマットに根を張ったようにビクともしなかった。
「こ、この手応え……まるで富士山と相撲を取っているようですッ!」
「水被っちまったから、オラも引くに引けないんだべぇなぉ」
大げさな表現で驚愕する燃焼系レスラーの胴体を、両腕でがしりと掴んで持ち上げるきなこ。人ひとりぶんの重さなどまるで苦にもしていない様子で、炎の熱もあらかじめ対策しておいたおかげで気にならないレベルだ。燃える体と濡れた毛皮が触れ合って、リングにもうもうと湯気が立ち上る。
「思う存分ボコボコにしてやるな♥ 安心して技を掛けてやるべぇ♥」
「ちょっ、ちょっと待……うぎゃうッ!!」
テンションが上がってきたのか興奮した様子で、きなこは遠慮容赦なく相手を思いっきり投げ飛ばす。プロレス技としては乱暴かつ豪快な投げっぷりに、燃焼系レスラーは悲鳴を上げ観客は歓声を上げる。これはこれで見栄えもするし盛り上がるファイトのようだ。
「まだまだこんなもんじゃないべぇ♥」
「つ、強い……ぐはぁッ!!」
それからもきなこは野生児の本能のままに、獣の如き猛攻で対戦相手を圧倒する。たとえユーベルコードを縛っていたとしても、強者とはありのままで強者なのだ。彼女の戦いはそれをまざまざと見せつけるワンシーンとなった。
大成功
🔵🔵🔵
アリス・フォーサイス
へえ。ダークリーガーなのに面白い美学をもってるね。美味しいお話も生まれそうだし、乗ったよ。
ぼくは、小柄の見た目を活かして、逆転劇を作るよ。
最初はあえて攻撃を受けて、様子をみるよ。
うん。わかった。それじゃあ、反撃だよ。肉体強化。攻撃を受けてわかった相手の隙をついて接近して豪快に投げるよ。
さあ、これからだよ。
まだまだ試したいなげ技もいっぱいあるんだ。熱くなろうよ!これはそういうお話だ。
「へえ。ダークリーガーなのに面白い美学をもってるね。美味しいお話も生まれそうだし、乗ったよ」
八百長に乗らずに正々堂々のファイトによる更正を望む、オブリビオンとしては変わった気概に興味を持ったのはアリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)。彼女がリングに上がる頃には、試合は予想以上の盛り上がりを見せており、筋書きのないドラマが生まれつつあった。
「おや、ここは子供が来るところでは……なんて言いませんッ! 熱い魂があれば誰でもレスラーですッ!」
対戦相手の燃焼系アスリートは、まだ十代前半に見える小さな挑戦者を前にしても、闘魂を燃え上がらせていた。
その熱い視線に見つめられると、アリスの心にも熱いものが湧き上がってくる。ただ競技に熱中したいという激しい衝動だ。
「じゃあ、やろうか」
「いきますッ!」
先手を取ったのは燃焼系レスラー。燃えるボディによる豪快な飛び膝蹴りと、そこから繋がる打撃技のコンボだ。
アリスはそれを避けずにあえて受け、ガードを固めて様子を見る。ただ普通に勝ってしまうだけでは面白くない――小柄な見た目を活かして、ピンチからの逆転劇を作るのが彼女の狙いだ。
『おぉっとぉー! アリス選手、防戦一方かー!』
実況もいい感じにピンチを煽りたて、一方的に打たれ続ける少女に観客の視線が集まる。よりドラマチックなお話を好む【物語中毒】としては、この展開はとても"美味しい"だろう。熱さも痛みも感じないわけではないが、口元には楽しそうな笑みが浮かんでいた。
「うん。わかった。それじゃあ、反撃だよ」
「なぬッ?!」
スッとおもむろにアリスがサイドステップを踏むと、燃焼系レスラーの攻撃が空を切る。ここまで耐えてきたのは単なる演出のためだけではなく、観察に徹して相手の行動パターンを読んでいたのだ。敵の分析は情報妖精にとって基本中の基本である。
「ここだね」
「わっ?! ど、どこからこんなパワーが……!」
隙を突いて懐に飛び込んだアリスは、ユーベルコードで強化した身体能力をフルに活かして相手の体を持ち上げ、豪快に投げ飛ばす。「きゃぁっ?!」という悲鳴と共に宙を舞うレスラー、マットに叩きつけられる衝撃音と観客の歓声。固唾を呑んでいた時間のぶんだけ、会場のボルテージが一気に急上昇した。
「さあ、これからだよ」
「「うおおおおおおッ、すげぇ!!」」
喝采の声を一身に浴びながら、アリスは対戦相手に立ち上がるように促す。このままカウントを取ることもできたかもしれないが、それでは面白くない。せっかく盛り上がってきたところなのだ、終わらせるのは勿体ないだろう。
「まだまだ試したい投げ技もいっぱいあるんだ。熱くなろうよ! これはそういうお話だ」
「フッ……いいでしょう。私もまだ全てを見せたつもりはありません!」
開幕とは一転、闘志を煽られる側となった燃焼系レスラーはニヤリと笑って立ち上がり、再び妖精に勝負を挑む。
双方ともに全てを燃やし尽くすような戦いぶりは大いに会場を沸かせる。その熱気はきっと八百長を仕組んだミリオネア嬢の心にも届いただろう――。
大成功
🔵🔵🔵
アニカ・エドフェルト
世界が違えば、あえて台本を、前に出してるところも、あるって、聞きますが…
この世界では、ただの悪手にしか、見えません、ね。
さて、相手が【火】で、来るなら、こっちは、【風】で、行くとしましょう。
ふわりと、浮き上がるように、ロープを、蹴ったりしながら、《舞踏天使》で、攻撃して、行きます。
その時に、起こる風で、相手の炎も、より燃え盛ると、いいです、ね。
相手の、攻撃は、受けるか、カウンターで投げたり、極めたりで、「避け」るのと「ガードする」のは、なるべく、やめておきます。
最後は、超スピードでの、蹴り技から、フォールを、狙い、ます。
相性、悪いかも、ですが、物量で、すべて、吹き飛ばして、あげますっ
「世界が違えば、あえて台本を、前に出してるところも、あるって、聞きますが……この世界では、ただの悪手にしか、見えません、ね」
心技体を鍛えた超人アスリート達による筋書きのないドラマがいくらでも生まれるアスリートアースでは、下手な台本や八百長なんて組む必要もないのだろうと、アニカ・エドフェルト(小さな小さな拳闘士見習い・f04762)は感じる。本気の試合からしか生まれない興奮と感動を、ここにいる人々は望んでいるのが分かった。
「もっと、もっとですッ! もっと熱くなりましょうよッ!」
対戦相手の『燃焼系アスリート』は、ここまで盛り上がっていてもまだ足りないとばかりに威勢よく叫んでいる。
見せれば魅せるほど熱く激るアスリート魂こそ、彼女の戦いの原動力。物理的にも燃え上がった体からの熱気が、肌に伝わってきた。
「さて、相手が【火】で、来るなら、こっちは、【風】で、行くとしましょう」
アニカはそう言って、ふわりと浮き上がるようにロープを蹴ると、疾風を纏った華麗な蹴り技を相手に浴びせる。
オラトリオの飛行能力を活かした空中殺法【舞踏天使】。ダークセイヴァーの地下にある「闘技場」集落出身である彼女は、まだ幼くともひとかどの格闘家であった。
「この動き……あなたに、見切れ、ますか?」
「くッ! なんというスピードッ! まるで鳥のようですッ!」
空中からの素早い蹴りを受け、驚嘆する燃焼系レスラー。一撃一撃は軽いものの、それを補って余りある手数だ。
だが彼女もやられてばかりではいられない。蹴りの際に起こる風は炎もより燃え盛らせ、リングをヒートアップさせていた。
「今度はこちらの番ですッ!」
天使の足技を正面から受けきった上で、燃焼系レスラーは炎の打撃を仕掛ける。普通に考えればここは「避ける」か「ガードする」ところだが、それはあまりプロレス的ではない。アニカは相手がそうやったように、自らのあえて攻撃を受けた。
「いいです、ね」
「おわッ?!」
風で強まった熱気を直に感じながらも、彼女はそのままカウンターに移行。攻撃の力を利用することで、自分よりも体格に恵まれた相手を軽々と投げ飛ばす。これには観客からも「おおっ!」「すげぇ!」とどよめきが起こった。
「相性、悪いかも、ですが、物量で、すべて、吹き飛ばして、あげますっ」
投げ落とされた相手に体勢を立て直す暇は与えず、アニカは【舞踏天使】のラッシュを再開。相手が1発打つ間にこちらは2発、3発、4発と手数を重ね圧倒する。どんなにパワーやタフネスに優れた相手でも耐えきれはすまい。
「並のスピード自慢なら、こちらも遅れを取りはしないのですが……ッ!」
驚嘆に値する素早さに加え、蹴り技の他にも投げ技やサブミッションも駆使する技術的なレベルも高い。さながら牛若丸と弁慶のように、燃焼系レスラーはじわじわとロープ際まで追い込まれていき、額には焦りの汗がつたう。
「これで、終わり、ですっ」
「ぐ、わぁッ!!?」
最後に放つのはもはや目で追う事すら困難となった、超スピードのひと蹴り。マットに倒れ込んだ相手をそのままフォールすれば、カウントが始まる。その一撃がクリーンヒットとなり、もはや相手は立ち上がる力を失っていた。
次の選手がすぐさまリングに上がってくるが、敵チームの交代要員も残り少ない。熱気の中にクライマックスへの期待が混ざりつつあるのを、アニカは肌で感じ取った――。
大成功
🔵🔵🔵
アヤネ・タチバナ
あたしは飛び入り参加
リングに上がって、リングアナのマイクを奪ったら
「あー、言わせてもらいますけどー。これが超人プロレスー? なーんだ、その程度なんだ」
ノリのいい観客達の
ブーイングに髪をかきあげる仕草で応じたら
今度は相手選手達の方に向けて挑発パフォ
「これから、あたしが、歴史を塗り替えてあげるよ!」
試合はパンチとキック、更にロープやコーナーを生かした空中戦
投げ抜けと返しにグラップルを生かすけど
避けてばかりで試合に勝っても、勝負には負けたよーなもの
宇宙セーラー服のオーラ防御で受けて、耐えて
ロープに振られれば逆に反動つけて蹴り技でカウンター
女子高校生だからって、これが単なるエキシビジョンだと思ったら大間違いだよ
ちなみに解説席には試合前に情報を伝えてあるよ
―――
戦闘スタイル:
ストリートファイト。冬服にかっちりローファー、清楚さ重視のナチュラルメイク
フィニッシュホールド:
ハロハロビーム☆
意気込み:春を意識した新入生コーデで超人プロレス界に新風を巻き起こす
―――
『さあ、いよいよ残りの選手も少なくなってきたぞ? 次の相手は……あっ、ちょっと!?』
猟兵とダークレスラーの白熱するバトルを盛り上げようと、実況を行うリングアナウンサー。そこに突然、リングに上がってきたセーラー服の女子高校生がひょいとマイクを奪い取る。彼女の名はアヤネ・タチバナ(セーラー服を脱がさないで・f39709)、予定にはなかった飛び入り参加の選手だ。
「あー、言わせてもらいますけどー。これが超人プロレスー? なーんだ、その程度なんだ」
リングの中央に立った彼女はふてぶてしい態度で観客席に向かって言い放つ。プロレスとは縁がなさそうな娘の、いかにもな舐め腐った発言。その場にいた誰もが瞬時に理解しただろう――これは全部パフォーマンスの一環だと。
「なんだテメー!」「舐めんじゃねえぞー!」
ヒールムーブには罵声や悪態こそが声援となる。ノリのいい観客達の
ブーイングに髪をかきあげる仕草で応じたアヤネは、今度は対戦相手の方に向けてビシッと指を突きつける。よりアツい戦いを志向するのが『バーニング・インフェルノ』のポリシーらしいが、彼女から見ればまだまだヌルい。
「これから、あたしが、歴史を塗り替えてあげるよ!」
「ほう、言いますねッ! これは"ガチ"でやる必要がありそうですッ!」
ここまで挑発パフォーマンスをされて、受けて立たない者はプロレスラーではない。燃焼系レスラーは全身の炎をさらに燃え上がらせてリングに上がってくる。一触即発の空気、今にも爆発しそうな熱気。観客も2人の選手に全力のエールを送る。
「その発言に見合った実力があるのか、確かめさせてもらいましょうッ!」
「すぐに分からせてあげるよ、すぐにね!」
熱い視線を送りながら近付いてくる燃焼系レスラーと、アヤネは正面きってのファイトを演じる。相手の技は派手さを重視した豪快でパワフルだが大振りなものが多く、その気になれば避けるのはさほど難しくはなかったが――。
(避けてばかりで試合に勝っても、勝負には負けたよーなもの)
挨拶代わりのテレフォンパンチを、オーラを帯びた「宇宙セーラー服」で受ける。この服はただの衣服ではなく、セーラー星人のアヤネと共生する宇宙生命体の一種だ。謎の大宇宙パワーによる宿主への守護は、こんなパンチではビクともしない。
「この手応え……! 地球上のものではない、圧倒的スケールを感じますッ!」
『いったいあの少女は何者なのか……おっと、ここで情報が入ってきました!』
派手なリアクションで燃焼系レスラーが驚愕すると、タイミングよく解説席のアナウンサーが説明を始める。まるでたった今判明したことのように言うが、実は試合前にアヤネ本人から諸々のプロフィールを受け取っていたのだ。
『彼女の名前はアヤネ・タチバナ。戦闘スタイルはストリートファイト、本日は冬服にかっちりローファー、清楚さ重視のナチュラルメイクでご登場となっております。春を意識した新入生コーデで、超人プロレス界に新風を巻き起こすつもりの模様。フィニッシュホールドは"ハロハロビーム☆"!』
飛び入りのはずなのに妙に詳細な情報が揃っている点について、ツッコミを入れる者は誰もいない。観客も自然にそれを受け入れて「クッ、どうりで可愛すぎると思ったぜ!」「このままじゃプロレスが春爛漫にされちまう!」とか驚いたり慌てたり絶望(?)したりしている。
「女子高校生だからって、これが単なるエキシビジョンだと思ったら大間違いだよ」
「どうやら、そのようですねッ!」
不敵な笑みを浮かべるアヤネに対し、打撃技では効果が薄いと悟った燃焼系レスラーは投げ技に切り替えてくる。
アヤネは柔軟な身のこなしでそれを抜けると返しのグラップルを仕掛け、相手の腕をギリギリと極める。可憐な装いについ見惚れそうになるが、彼女はこうした渋い技もこなせる選手である。
「うおおおおおッ!」
燃焼系レスラーは極められた腕を支点にして強引にアヤネを振り回し、技を解除させてロープ際まで吹き飛ばす。
ウェイトで劣るアヤネの体はロープに勢いよく振られるが、彼女は逆にそれを反動をつけるのに利用し、蹴り技のカウンターを仕掛けた。
「とうっ!」
「ぐはッ!」
ローファーのつま先を鳩尾にめりこまされた燃焼系レスラーは、たまらず体をくの字に曲げる。アヤネの攻撃はそこで止まらず、ロープやコーナーを活かした空中戦に移った。まるで重力を感じさせぬままリングの上を飛び回り、映えるフォームでパンチとキックを浴びせる。カメラアングルまで意識した、華麗かつ過激な戦いぶりだ。
『止まらない、止まらないッ、春の新風が止まらないッ! これが新時代の超人プロレスだと言うのかぁーッ!』
壮麗なファイトをアナウンサーも全力で盛り上げ、観客も割れんばかりの喝采で応じる。この臨場感、このライブ感、この一体感。ただの八百長では決して作り出せない熱気によって、会場は今こそ熱狂の坩堝と化していた――。
大成功
🔵🔵🔵
草剪・ひかり
武士は食わねど高楊枝、だね
利口なやり方ではないけど、利口ならそもそもプロレスラーなんてやってられないよ
そんなわけで、今回はダークリーガーの思惑に乗ってあげようじゃない
堂々とした女帝の風格を漂わせつつリングに上がり
燃焼系の子と真っ向から組み合う
UCを封印?
心配無用、元より私は猟兵である前にプロレスラー
「女帝」の名乗りは伊達じゃない
UCなしでも【グラップル】主体なら後れを取らないよ
それに、彼女がこの「力」を使う以上、彼女も私をUCでは攻められない筈
猛攻を凌ぎつつ、ヘッドロックやボディスラム等の基本技できっちり反撃
その上で相手の必殺技を呼び込み、ピンチに陥って魅せる
私が強いのは当然だから、どこまで引き出せるかが超一流のプロレスラーの仕事
カウント2.9で返したら、強烈なバックドロップで叩きつけダウンさせ、とどめのコブラツイスト!
豊かすぎる肢体で容赦なく締め上げていく
ギブアップを奪ったら立ち上がり一言
「私をここまで追い込んだのは大したものだけど、私を超えるには
もう少し足りないね!」
「武士は食わねど高楊枝、だね。利口なやり方ではないけど、利口ならそもそもプロレスラーなんてやってられないよ」
猟兵である前に1人のプロレスラーとして、草剪・ひかり(次元を超えた絶対女帝・f00837)は八百長試合を拒んだダークレスラー『フェンリル・マキ』の気持ちが理解できた。カネのためではない、ただの勝利のためでもない、他ならぬ「プロレス」でしか得られないもののために自分達はリングに上がるのだ。
「今回はダークリーガーの思惑に乗ってあげようじゃない」
プロレス界の"絶対女帝"の異名をとる彼女は、その名に恥じぬ堂々とした風格を漂わせつつリングに上がる。すでにアスリートアースでも何度となく名勝負を繰り広げてきた彼女には個人的なファンも多く、登場するだけで観客席のボルテージが上がるのが分かった。
「絶対女帝何するものぞ。今日がその冠を脱ぐ時ですッ!」
相手が強ければ強いほど燃えるたちなのか、『燃焼系レスラー』は熱い視線を送りつつ真っ向勝負を挑んでくる。
ユーベルコードを封印して競技に熱中したいという、彼女の眼に宿る想いをひかりは受け取った。女帝たるもの、まさかここで挑戦から逃げるわけにもいくまい。
(ユーベルコードを封印? 心配無用、元より私は猟兵である前にプロレスラー)
相手レスラーと真っ向から組み合うと、にやりと強気な笑みを浮かべて見せる。全盛期と比べれば身体的な衰えは否めないものの、それを補って余りあるほどの技術と経験が彼女にはある。ユーベルコードなしでもグラップル主体の戦いで遅れは取らなかった。
「こんなものかい?」
「まだまだッ! たぁッ!」
組み合った位置から一歩も後ろに退かない女帝に、果敢な攻撃を仕掛ける燃焼系レスラー。相手にユーベルコード不使用を強要している以上、彼女自身もユーベルコードで攻めることはできない。純粋な鍛錬によって得られた技と力のみが勝敗を決する戦いとなる。
「いいね、熱くなってきたよ!」
『すげぇ勝負だ
……!』『いけーッ! そこだーッ!』
相手の猛攻を凌ぎつつ、ヘッドロックやボディスラム等の基本技できっちり反撃も加えるひかり。熾烈な技の応酬に観客も大いに湧き立ち声援を送る。八百長試合を持ちかけてきた例のお嬢様にも、この声は届いているだろうか。
「そこぉッ!」
ゴングが鳴ってから数分を経て、ついに試合が大きく動いた。燃焼系レスラーの放った必殺技が、ひかりをマットに押し倒したのだ。女帝が地に伏せる光景に観客席から津波のようなどよめきと悲鳴が上がる中、レフェリーによるカウントが始まる。
「ワン! ツー! スリ……」
「まだまだっ!」
3度目の手が叩かれる寸前、カウント2.9で技を返す。その瞬間の観客の歓声は、先程の悲鳴よりも大きかった。
相手の必殺技を呼び込み、ピンチに陥って魅せるという完璧な展開。事前の打ち合わせなしにこれができるのは、彼女の力量が相手を大きく上回っていることを意味する。
(私が強いのは当然だから、どこまで引き出せるかが超一流のプロレスラーの仕事)
本当に強いプロレスラーとは、自分だけでなく相手にも魅せ場を作るもの。そしてピンチの後は逆転のターンだ。
燃焼系レスラーの背後に回り込むと、両腕でがしりと腰を抱え、大きく後方に反り返る――完璧なバックドロップが炸裂した。
『うおぉッ! すげぇ!』『今の教科書載るだろ!』
鳴り止まぬ観客の声を浴びながら、ひかりはダウンさせた相手にとどめのコブラツイストを仕掛ける。はち切れんばかりに豊かすぎる肢体で容赦なく締め上げられ、燃焼系レスラーの体からミシミシと悲鳴が聞こえてくるようだ。
「くっ……これが"女帝
"……!」
自分の全力を引き出された上で、完膚なきまでに実力の差を突きつけられた燃焼系レスラーは、自らギブアップを宣言する。ばったりと倒れ伏した彼女から技を解いたひかりは、"絶対女帝"の威厳をもって悠然と立ち上がり一言。
「私をここまで追い込んだのは大したものだけど、私を超えるには
もう少し足りないね!」
ここまでの流れ全てが筋書きであったかのような、ドラマチックな決着。これぞまさに超人プロレスの醍醐味だ。
観客の熱気も最高潮に達する中、猟兵VS『バーニング・インフェルノ』の試合はいよいよ大詰めを迎えようとしていた――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『超人ダークレスラー『フェンリル・マキ』』
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POW : ボルケイノ・クラッシュダウン
【溶岩を吹き出す腕で繰り出すラリアット】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : フレイムアーマー・ラッシュ
【岩石の鎧】を纏い空中高く舞い上がった後、敵めがけて急降下し、[岩石の鎧]が尽きるまで【灼熱に燃える鎖を巻き付けた腕部】で攻撃し続ける。
WIZ : 地獄の直行便
【相手を引き寄せる鎖】が命中した対象に対し、高威力高命中の【掴んで喉輪からのチョークスラム】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
👑11
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「どうなっているのですか、これは……?」
猟兵とダークレスラーの試合をVIP席にて観戦しながら、ミリオネア・リッチモンドは戸惑いの声を上げる。
これは敗者の決められた八百長試合のはず。なのに試合展開はまったく予想と違うものになっている。今までカネの力で解決できない事、操れない者など存在しなかった大富豪の令嬢にとって、これは初めての戸惑いであった。
「まさか、あのマキという女が私を騙した? でも、そんな……」
思い通りにならない不快感が喉の奥からこみ上げてくる。だのに、試合から目を離すこともできなかった。
言いしれない熱いものが胸に燻るのをミリオネアが感じ始めた頃、ついにダークリーガー側の最終選手がリングに姿を現した。
「やるじゃないか、猟兵! このアタシがリングに引っ張り出されるなんて久しぶりだぜ!」
ワイルドな美貌と引き締まった肉体、そして野生の獣のような闘志を放つ女格闘家。
彼女が『バーニング・インフェルノ』の代表である超人ダークレスラー『フェンリル・マキ』。
ミリオネア嬢からの八百長提案を逆手に取り、今回の試合を猟兵に持ちかけてきた張本人だ。
「だが、まだ勝ち名乗りを上げるには早いぜ! むしろここからが本番……このフェンリル・マキ様が、テメェらにラグナロクを見せてやるよ!」
挑発的かつパワフルな態度、そして何より全身に漲る気迫からは、八百長で負けてやる様子など微塵もない。
彼女は本気だ。本気でこの試合に挑み、そしてこの状況からでも逆転するつもりでいる。"勝利"に対する貪欲さは流石のダークレスラーだが、同時にそれは「最高の試合」を作りだしたいという執念でもある。
「さあ、アタシにノされたい奴からかかって来な! "本物のプロレス"を見せてやろうぜ!」
挑発的な発言に込められたマキの真意が、猟兵達には分かるだろう。
死力を尽くして全力を出し切ることでしか、生まれない感動がある。
それを観客に伝えるため、あるいは猟兵の務めを果たすため、一同は試合の後半戦に挑む。
シプラ・ムトナント
斃す為の戦いが嫌だった訳ではありません。
祖国の為に戦うことは、軍人の誇りですから。
ですが、互いに高め合う戦いが、こんなにも心躍るものだとは知りませんでした……ならば次は、わたしが伝える番です。
狙うは『近接格闘』、今一度のカウンター。
……貴女の最大の技を見せてください、フェンリル・マキ。
わたしも全身全霊で応じます。モニターの向こうに見せて差し上げましょう、"本物のプロレス"を!
そのラリアット、受けきって見せます。
【激痛耐性】で身を焼く溶岩と衝撃に耐え抜き、何としても腕を掴む!
続いて足をかけて体勢を崩し……後ろに向けて、全力で投げ飛ばす。
足りない体格は技術と【闘争心】で何とかします、いけぇぇっ!!
「斃す為の戦いが嫌だった訳ではありません。祖国の為に戦うことは、軍人の誇りですから」
軍人一家であるムトナント家に生を受けたシプラは、自分が戦う理由に疑問を抱いた事など無かった。悪しき侵略者から祖国の大地を、力なき民の生命と未来を守る。それが軍人の責務であり、今後も揺らぐ事はない信念である。
「ですが、互いに高め合う戦いが、こんなにも心躍るものだとは知りませんでした……ならば次は、わたしが伝える番です」
異世界アスリートアースで初めて体験したプロレスの面白さ。胸に湧き上がるアツい感情を、この試合を見ている観客達にも届けたい。気付けばそう考えるようになった彼女は、すっかり1人の「プロレスラー」の顔をしていた。
「……貴女の最大の技を見せてください、フェンリル・マキ」
リングに上がってきた最後の対戦者、超人ダークレスラー『フェンリル・マキ』に、シプラは挑発とも取れる発言を投げかける。手加減や様子見など不要、最初から全力で来ればいいと、細められた眼差しから熱い想いを感じる。
「わたしも全身全霊で応じます。モニターの向こうに見せて差し上げましょう、"本物のプロレス"を!」
「フッ……いいだろう! 後悔するなよ、これがアタシの本気だッ!」
ここまで言われて挑戦を受けなければプロレスラーの名が廃る。獣のような笑みを浮かべたマキの左腕が、溶岩を吹き出して真っ赤に染まる。その熱量は先程戦った燃焼系レスラーの炎よりアツい。『バーニング・インフェルノ』のチームリーダーに相応しい火力だ。
「喰らいなァ……ボルケイノ・クラッシュダウン!!」
溶岩滾る左腕から繰り出される超高速かつ大威力のラリアット。それがフェンリル・マキの必殺ユーベルコードの一つだった。至近距離まで接近しなければ使えないため、事前に来るとわかっていれば対処は容易な部類に入る。だがここは敢えて受けるのが"プロレス"だろう。
「そのラリアット、受けきって見せます」
狙うは【近接格闘】、今一度のカウンター。熱量と衝撃に備えて重心を低くし、吹き飛ばされないよう身構える。
真正面から対峙するそれは、さながら赤熱する断頭台のギロチンを思わせた。158cmの細身な体躯を真っ二つにするような、強烈な一撃が迫る――!
「う、お、らああああッ!!」
「っ……!」
裂帛の咆哮と共に叩きつけられる灼熱と質量。全身バラバラにされそうな衝撃と、身を焼く溶岩の激痛にシプラは歯を食いしばって耐え抜く。どれほど過酷な攻撃にあっても、鍛え上げられた鋼の精神は絶対に屈しない。その手はしかと相手の腕を掴んでいた。
「徒手の軍人を侮らぬことです……!」
「な、うおッ?!」
軍隊仕込みの近接格闘術の所作にならい、足をかけて体勢を崩す。本気のラリアットを受け切られた相手の表情は驚愕に変わり、ボディが宙を泳ぐ。あとは後ろに向けて思いっきり投げ飛ばすだけ――足りない体格は技術と闘争心でカバーだ。
「いけぇぇっ!!」
狙い通りの会心のカウンター。完璧に決まった投げ技は相手に受身さえ取らせず、勢いよくマットに叩きつける。
落下の瞬間、一瞬だけ両者の目と目があう。その時のマキの表情は(最高だぜ!)と、台本なきドラマを繰り広げたシプラへの称賛とリスペクトに満ちており。
「ぐ、っはぁッ! やりやがったなァ……!」
直後、マットに墜落したマキは大袈裟なくらいのリアクションを取りつつ、カウントを取られる前に立ち上がる。
ダメージが無いわけではない。だが、それを表に見せない意思の強さは向こうも同じ。"最高のプロレス"の時間はまだまだ始まったばかりだ。
大成功
🔵🔵🔵
笹乃葉・きなこ
よーしっ!
これでユーベルコードは使えるようになったべなぁ
ありゃ、こりゃぁパワふりゃーな奴だべぇ
攻撃を受けるとしても一回が限度そう…?実際食らってみねぇと分からねぇか
基本は第六感でラリアットをギリギリで交わすべ
もしくはラリアットしてきた腕を怪力で肩の付け根、肘関節を抑えて阻止を狙うのも悪くねぇなぁ
阻止できたら底から組み付いてユーベルコード開始だべ
思う存分に投げて投げて投げまくってやるべぇ
ちゃんと受け身をとってくれよなぁ!
へへっ、暑苦しのはいらいじゃないんだけどなぁ
体毛が燃えてるけど気にしねぇべ、どうせユーベルコードを使えば、体が触れて燃えるだろうし
思う存分燃やしてもらおうじゃねぇかっ!
「よーしっ! これでユーベルコードは使えるようになったべなぁ」
視線で能力を封じてくる「燃焼系レスラー」はいなくなり、ここから先はもっと自由に戦えそうだと、晴れやかな表情を見せるのはきなこ。ただし、それで戦闘が楽になったかと言われれば、相対的にはそうでもなさそうである。
「どんな技でも使って来やがれ! このマキ様に通じると思うならな!」
「ありゃ、こりゃぁパワふりゃーな奴だべぇ」
敵チーム最後の選手はいかにもなパワー系の風格を漂わせた超人ダークレスラー『フェンリル・マキ』。その左腕は溶岩を噴出して真っ赤に燃えており、同じリングにいるだけで火傷しそうな熱を感じる。間違いなく今日一番の強敵だろう。
(攻撃を受けるとしても一回が限度そう……? 実際食らってみねぇと分からねぇか)
自分から仕掛けるよりも、きなこはまず様子見に回った。獣の感覚と第六感を研ぎ澄ませ、相手の一挙手一投足に目を配る。その意図を察したのか、マキはにやりと笑いながら【ボルケイノ・クラッシュダウン】を仕掛けてきた。
「吹っ飛びなぁッ!」
溶岩の熱量と腕力にものを言わせた渾身のラリアット。シンプルな技だがスピードとパワーは比類ないレベルだ。
もろに喰らえば一撃ノックアウトもあり得る――そう判断したきなこは技が炸裂する寸前、あえて自分から少しだけ距離を詰める。
「見切ったべ」
「なにいッ?!」
きなこが伸ばした手はマキの左肩の付け根、それと肘関節をガッチリ抑えていた。破壊力を生み出す関節の連動を封じることで、ラリアットの発動を阻止したのだ。ちょっとでもタイミングがズレていれば逆に攻撃をモロに食らうことになっていた、まさにギリギリの攻防である。
「お前さんを投げ技地獄へ招待してやるな?」
すかさずきなこは相手に組み付いて【笹乃葉式我流投げ技地獄】の構えに移行。野生育ちのキマイラの怪力とヒトの技、ふたつを兼ね備えた超絶の武術によってマキの体躯が宙を舞う。ここから先は彼女のオンステージ、思う存分に投げて投げて投げまくってやる気だ。
「ちゃんと受け身をとってくれよなぁ!」
「う、うおおおおッ?!」
腕や腰、足などを掴まれては投げ倒され、起き上がる前にまた掴まれる。一度パターンに嵌まってしまえばきなこの投げ技地獄から抜け出すのは容易ではない。今のマキと接触することは必然的に溶岩の熱を直に受けることになるのだが、彼女は平然と笑っていた。
「へへっ、暑苦しのはいらいじゃないんだけどなぁ」
あまりの熱さで体毛が燃えだしても気にしない。どうせこうなるのは分かっていたのだから、後はどちらがダウンするのが早いか根比べである。紅蓮の炎をまといながら相手を投げ続ける獣人の姿は、観客も思わず息を呑むほどの迫力があった。
「思う存分燃やしてもらおうじゃねぇかっ!」
「ははッ、嫌いじゃねぇぜ、その気合……ぐおッ!」
投げを継続する気炎万丈のきなこと、投げられながらも痛快に笑うマキ。一方的なように見えて勝敗はまだ付いていない。天井知らずに高まっていく熱はリング外まで溢れ出し、会場全体をさらなる熱狂の坩堝に包みつつあった。
大成功
🔵🔵🔵
アリス・フォーサイス
ダークリーガーである前にプロレスラーなんだね。とことんつきあうよ。
あえてチョークスラムを受ける。
いたた
......さすが。でも、捕まえたよ。
攻撃を受ける時にこちらからも鎖を繋いで離さないよ。
さあ、チェーンデスマッチだ。
鎖を使った投げ技をこちらからもしかけるよ。ちょっとアレンジをくわえて、こうだ!
いいね。こっちもまだまだだよ。さあ、もっとだ!
「ダークリーガーである前にプロレスラーなんだね。とことんつきあうよ」
どこまでも清々しく、そして暑苦しい『フェンリル・マキ』の姿勢は、アリスとしても好感が持てるものだった。
"最高のプロレス"という物語を完成させるのは、彼女としても望む所。ここでクライマックスを味わわずにリングを降りるなんて勿体ないこと、するはずが無かった。
「フッ、いい度胸だ……だが覚悟しろよ!」
フェンリル・マキはそう言って、体に巻いた鎖を投げ縄のように放ってきた。これも一応武器の使用にあたるが、反則負けになる5カウント以内ならセーフという理論だ。アリスもそれは知っているのでいちいち文句は言わない。
「ここからは地獄の直行便だぜ!」
マキは鎖で絡めて引き寄せた相手をがしりと掴み、喉輪からのチョークスラムを仕掛ける。体格差と人間離れした腕力もあって、並のプロレスラーとは比較にならない威力だ。しかしアリスもここは場を盛り上げるため、あえて回避はせずに攻撃を受ける。
「いたた……さすが。でも、捕まえたよ」
マットに叩きつけられた瞬間は意識が飛びそうな衝撃があったが、まだノックアウトされてはいない。同時に【能力解析】でマキのユーベルコードを理解した彼女は、逆に自分からも鎖を繋いで、互いに離れられないようにした。
「さあ、チェーンデスマッチだ」
「ほう、いいねえ!」
両者とも鎖をぐっと握りしめ、至近距離で対峙する状態。もはや反則がどうこう言うシチュエーションではない。
まずはお返しとばかりに、アリスは鎖を使った投げ技をマキに仕掛ける。体格差もあってそのまま真似はできないため、自己流にちょっとアレンジを加えて――。
「こうだ!」
「がはッ!!」
純粋なウェイトや筋力では勝っているはずのマキが、力の流れをコントロールされてマットを這う。見事な意趣返しを食らわせたアリスは得意げで、観客席からもわぁっと歓声が上がる。やられたらやりかえすのはプロレスでも定番の"燃える"展開だ。
「やるじゃねえか! だがまだだぜ、オラァッ!」
「うわっ!」
負けじとマキも鎖を引いてアリスを投げ返す。お互いが相手の手綱を握っているこの状況では攻撃を防ぐのは困難で、そもそも両者ともに防御するつもりがまるでない。先に音を上げたほうが負けとなる正真正銘のデスマッチだ。
「いいね。こっちもまだまだだよ」
マットに倒されてもすぐに立ち上がり、殴って、掴んで、投げて、蹴る。キャットファイトと呼ぶには泥臭すぎるノーガード勝負がキツくないはずはないのだが、アリスもマキも笑みを浮かべていた。湧き出るアドレナリンの興奮が完全に痛みを凌駕している状態だ。
「さあ、もっとだ!」
「ああ、気が済むまでやろうぜ!」
とことん付き合うというアリスのセリフに嘘はなく、マキもその覚悟に全力で応じる。想像を超える激戦となったチェーンデスマッチは、観客の心にも強い印象を残し――試合終了後、あのシーンが今日のベストバウトだと答える者も、決して少なくなかったという。
大成功
🔵🔵🔵
黎明・天牙
夢幻戦線
じゃあ今回は俺から行くわ
『おう、頑張れよ』『…ヤバくなったら交代するからね!』
ヴォルガとリズは俺を送り出した
ティニの奴は何か言ってたから
プ☆ロ☆テ☆イ☆ンと返した
俺、マサラタウンの…ノリ悪いな〜
マキに挨拶するが俺の本名を突っ込まれた
(実はUC戦場の悪夢・パラダイス・ブレイカーを発動していた…これはフェンリル・マキに対する天牙の最大の礼儀である)
よぉ…こんにちは☆
敵はUCで先制攻撃を仕掛けてきたので敵の動きをしっかり見て舞い上がった頂点で蹴りをプレゼントしてUC無効化して敵のUCを発動を阻止した
じゃ、吹き飛べ
振動(属性攻撃の応用)で粒子を爆破して敵を吹き飛ばした
よし、ティニに交代するか…
レティシア・ハルモニアス
夢幻戦線
ふん、アホの天牙…せいぜい頑張れ
天牙に意味不明な解答をされたので
コケろ!と言った(悪意無し)
ん?何じゃ?
『ミィィィィン!』
天牙の蝉が妾の目の前に現れた
世界が止まった
?!な…何じゃ!
『さっきの試合は全力ではないのだろう?力を貸してやろう』
蝉の姿から変わり黒い存在が魔力らしき何かを持って迫って来る
…馬鹿にするな!訳が分からない存在に頼る程落ちぶれてないわ!
両手を払い除けた
『…面白い、想像の斜め上を行くな』
黒い存在は楽しそうだった
天牙が交代を促して来たので
わ…分かった
妾は敵と対峙する
…よし戦い方を変えてみるか
敵の攻撃は結界術で弾き返し凍結攻撃を纏わせた念動力でカウンターを喰らわせた
敵がUCを発動してきたので敵の動きを確認しながらブレス攻撃を壁に打ちその推進力で回避した
行くぞ!
UCを発動
敵に向かって蝙蝠を放つ
?!少しだけ力が戻っておるだと!
力が何故か戻っていた(謎の存在の仕業)
…ちっまあいいわ!
エネルギー弾を放ち怯んだ敵を蹴り飛ばした
「じゃあ今回は俺から行くわ」
『おう、頑張れよ』『……ヤバくなったら交代するからね!』
試合も後半戦へと突入し、再び出番が回ってきた天牙は、特に気負いもないしれっとした態度でリングに上がる。
ヴォルガとリズは声援とともに彼を送り出すが、さっきの試合でさんざん振り回されたレティシアはまだ根に持っているようで、腕組みしながらぶっきらぼうに言う。
「ふん、アホの天牙……せいぜい頑張れ」
それでも一応応援はするあたり、根っこの人の良さが感じられる。それに対する天牙の返事は「プ☆ロ☆テ☆イ☆ン」だったが。相変わらずの意味不明っぷりに「コケろ!」と悪意のない文句が漏れるのも仕方のないことだろう。
「俺、マサラタウンの……」
「黎明・天牙だろ。知ってるぜ」
対戦相手の『フェンリル・マキ』はすでに準備万端の様子で天牙を待ち構えていた。飛び入り以外の参加者のプロフィールは最低限把握しているようで、プロレスラーとしての意外な真面目さが窺える。結果的にそれが天牙のネタ潰しにもなっているが。
「ノリ悪いな~」
「独りよがりのネタは寒いんだよ。プロレスなら一緒にアツくならねえとな!」
そう言って彼女は全身に岩石の鎧を纏い、空中高く舞い上がる。その質量でなんという跳躍力――このまま相手に急降下を仕掛け、息もつかせぬ猛ラッシュに持ち込むのが、フェンリル・マキの必殺ユーベルコードの1つだった。
「喰らえ、フレイムアーマー・ラッシュ……なにッ?!」
だが、マキが空中からリングを見下ろした時、そこに天牙の姿はない。彼はリングに上がる前から【戦場の悪夢・パラダイス・ブレイカー】を発動し、超人レスラーにも負けない身体能力を得ていたのだ。それは敵に対する彼からの最大の礼儀でもある。
「よぉ……こんにちは☆」
「うおッ?! テメェいつの間に……ぐはッ!」
その身体能力を活かし、相手の跳躍が頂点に達するタイミングに合わせて跳んだ天牙は、機先を制するひと蹴りをプレゼント。出鼻を挫かれたマキのユーベルコードは不発に終わり、そのまま岩石の鎧ごとマットに墜落していく。
「じゃ、吹き飛べ」
「ぐっはぁッ!!?」
後を追うように天牙も落下しながら、振動で周囲の粒子を爆破する。まるで虚空から生じたように見える衝撃波がマキを襲い、リングの端まで吹き飛ばす。ユーベルコードで強化された能力にものを言わせた、凄まじい攻撃力だ。
「相変わらず派手な……ん、何じゃ?」
そんな試合の様子をセコンドの位置から眺めていたレティシアは、ふいに『ミィィィィン!』と喧しい虫の鳴き声を聞く。天牙の【顕現夢幻蝉・8月の破滅】で召喚された一匹のセミが、いつの間にか彼女の目の前を飛んでいた。
「?! な……何じゃ!」
その瞬間、突如として世界が停止する。動いているのはレティシアと謎のセミ――オーガスト・ベインだけだ。
見た目は昆虫に近くても、正体は邪神の一種に近い。それはセミの姿から黒い異形としか呼びようのないカタチに変貌を遂げ、不気味な声でレティシアに囁きかける。
『さっきの試合は全力ではないのだろう? 力を貸してやろう』
魔力らしき何かを持って迫る黒い存在。まるで得体が知れないが、紛れもない強大なパワーを感じる。一時は奴隷にまで落ちぶれ、女王であった頃の力をほとんど失ったレティシアでも、この魔力があればかつての地位に返り咲くこともできるかもしれない――そんな思考が一瞬脳裏をよぎる。
「……馬鹿にするな! 訳が分からない存在に頼る程落ちぶれてないわ!」
だが、それはほんの一瞬のこと。全てを失っても誇りは手放さなかったレティシアは、誘いの両手を払い除ける。
それを受けた黒い存在がかすかに揺らめく。表情などは判別がつかないが、ソレが"楽しんでいる"のは分かった。
『……面白い、想像の斜め上を行くな』
そう言って黒い存在はふっと消え、世界が再び動きだす。あれから彼女達以外の時間は1秒も動いていなかった。
まるで狐につままれたような出来事だったが、今のは決して白昼夢などではないと、魔力の残滓が教えてくれる。
「おーい、交代だ」
「わ……分かった」
そこで天牙から交代を促されたレティシアは、はっと我に返ってリングに上がる。それなりにダメージは受けたようだがタフさが売りのプロレスラーらしく、フェンリル・マキは未だ健在である。先程戦った燃焼系レスラーよりもさらに手強い敵なのは間違いない。
「……よし戦い方を変えてみるか」
「へえ、テメェは何を見せてくれるんだ? オラッ!」
なにやら考えがあるらしいレティシアに対し、マキはもう一度【フレイムアーマー・ラッシュ】を敢行。必殺技を不発のまま終わらせるのは不満があるらしく、今度こそ当てるという決意をひしひしと滲ませながら、岩石鎧による急降下攻撃を仕掛けてきた。
「今の妾ではそれは喰らってやれん!」
レティシアは敵の動きを確認しながらブレスを床に撃ち、その推進力で落下ポイントから離脱する。その直後に、彼女がいた場所にドスンとマキが拳を叩きつける。あと少し避けるのが遅かったらペシャンコになっていただろう。
「チッ! 避けるなよ!」
「無茶をいうでないわ!」
マキは不満げに悪態を吐きつつ追撃をかけてくるが、レティシアは結界術でそれを弾き返し、冷気を纏わせた念動力でカウンターを喰らわせる。倒すほどの威力はなくても、鎧を凍らせれば敵の動きは鈍る。それが彼女の狙っていた逆転のチャンスだった。
「行くぞ!」
【ヴァンパイアストーム"起源喰らい"】を発動し、吸血コウモリの群れを放つレティシア。現在の彼女の魔力では呼び出せる眷属の数も少なく、不意をついてどうにか相手の力を奪えれば、というのが目算だったのだろうが――。
「うおおおおおッ、なんだこいつらッ?!」
「?! 少しだけ力が戻っておるだと!」
当の本人も仰天するほどの数のコウモリが、マキの体に群がり牙を突き立てる。このタイミングで力を取り戻せた原因など、あの謎の存在以外には考えられない。いらないとはっきり断ったはずなのに、どうやら余計な真似をされていたようだ。
「……ちっまあいいわ!」
経緯はどうあれ折角戻った力を使わない訳にもいくまい。レティシアは魔力を凝縮したエネルギー弾を放ち、吸血コウモリに群がられたマキに追い討ちをかける。それで「ぐぅッ!?」と敵が怯めば、距離を詰めてさらに追撃だ。
「どうじゃ!」
「ッ……やるじゃねえか!」
コーナーポストまで蹴り飛ばされたマキは、コウモリを引き剥がしながらにやりと笑う。じりじりと追い詰められているが、それさえも"本物のプロレス"の一環だと言わんばかり。その熱気にあてられてか、あるいは力を取り戻した高揚感か、レティシアの口元にも自然と笑みがこぼれた――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
カビパン・カピパン
「取引をしないか」
ミリオネアが呟いた声に答えるように声が聞こえた。
「!?」
そこに居たのはカビパンだった。
「私の名は猟書家カビパンだ。率直に言おう。このままだと貴様の八百長試合は失敗だ。猟兵がマキに協力している。無様だな…」
カビパンは金持ちの令嬢でも簡単に首を縦に振れない程のマネーを要求した。そうすれば猟兵達も全てミリオネアに従う、と。
ミリオネアの心がざわりと波をたてる。取引ではない。脅しだ。理性がやばいと警告を発している。だがカビパンの声は心地のいい、精神を安定する香のよう。そんな人を惑わせる悪のカリスマがこの女にはあった。
こうして上には上がいることを思い知ったミリオネアは大金を騙し取られた。
「一体なにがどうなっていますの……?」
自分が考えた筋書きとはまったく違う展開になっていく試合を、ミリオネアは困惑しながらも目が離せなかった。
息もつかせぬ攻防、華麗な技とユーベルコードの応酬。これまでカネで全てを解決してきたご令嬢には、八百長では作れないドラマがあるなど知りもしなかっただろう。
「取引をしないか」
「!?」
その時、ミリオネアの呟きに答えるように声が聞こえた。はっとした彼女が振り返ると、そこには瀟洒な軍服姿の女性がいる。さっきまで選手としてリングで戦っていたはずのカビパンである。一体いつの間に試合を抜け出してきたのか、それは誰にも分からない。
「あ、貴女は確か、今回の対戦相手の……」
「私の名は猟書家カビパンだ。率直に言おう。このままだと貴様の八百長試合は失敗だ」
自己紹介もそこそこにカビパンは本題を切り出す。それはミリオネアの計画がすでに破綻しているという、本人にとっては衝撃的な真実だった。八百長を持ちかけた『フェンリル・マキ』は最初から従うつもりなどなく、この試合にも台本なしの真剣勝負で挑んでいる。もちろん対戦相手も同様だ。
「猟兵がマキに協力している。無様だな……」
「そ、そんな……!」
何もかもをカネの力で操ってきたミリオネアにとって、それは人生初の挫折と言ってもいい。「嘘よ!」と否定したくても、目の前で起きている試合の展開がなによりの証拠だ。この戦いはとっくの前から彼女の手を離れている。
「そこで取引だ。この額を私に支払えば、猟兵達も全て貴様に従う」
動揺冷めやらぬミリオネアに向かって、カビパンはすっと一枚のメモを見せる。そこに書かれていたのは金持ちの令嬢でも簡単には首を縦に触れないほどのマネーだった。まさしく法外とも言える金額をもって、ダークリーガーではなく猟兵から八百長を持ちかけようというのだ。
「な、なんですって
……?!」
ミリオネアの心がざわりと波を立てる。これは取引ではない、脅しだ。もしここで自分が応じなければ、このカビパンとかいう女はこの試合の裏であった秘密を何もかも暴露することだってできる。いや、そうでなくてもこの女に対しては、さっきから理性がやばいと警告を発していた。
「どうだ? たったこれだけで全てを思い通りにできるなら、安いものではないか?」
だがカビパンの声は心地の良い、精神を安定する香のよう。そんな人を惑わせる悪のカリスマが彼女にはあった。
実質的にこのカリスマと運の良さだけで、彼女はとある教団の女教皇の座にまで上り詰めたのだ。世間知らずのお嬢様が相手をするには、あまりに"毒"の強すぎる人物である。
「わ、わかりましたわ……」
こうして上には上がいることを思い知ったミリオネアはまんまと【洗脳】にかかり、新たな取引に応じてしまう。
言うまでもなくカビパンに他の猟兵の試合を差配する権限も力もない。この戦いの行方は誰にもわからないまま、ただ大金を騙し取られたご令嬢だけが損をするだけの話だった――。
大成功
🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
純粋な心技体のぶつかり合いは、八百長試合では決して見ることのできない衝撃、感動を作り出す
彼女もそれが分かり始めたようですね……あの握り締めた拳を見れば分かります
この試合、ある意味では既にあなたの「勝利」と言えるでしょう
驕った金持ちを超人プロレスの虜にしたのですから
では、最後まで最高の試合を!
【怪力】による手刀や肘の応酬
【功夫】を応用した【受け流し】で【体勢を崩させ】、渾身の【頭突き】
岩石を纏って舞い上がれば、ロープの反動を利用した大跳躍(ジャンプ)で追いかける
空中で組み付き(グラップル)、締め上げる!
悪名高き狼、フェンリル!
その名を冠するならば、この技には抗えまい!
【獣絞縛鎖】!
「純粋な心技体のぶつかり合いは、八百長試合では決して見ることのできない衝撃、感動を作り出す。彼女もそれが分かり始めたようですね……あの握り締めた拳を見れば分かります」
先程からずっと握られたままのご令嬢の手を見逃さず、オリヴィアはそう呟いた。猟兵とダークレスラーの激突がもたらした"本物のプロレス"の熱気は、確かに伝わっている。まさに『フェンリル・マキ』の思惑通りという事だ。
「この試合、ある意味では既にあなたの『勝利』と言えるでしょう。驕った金持ちを超人プロレスの虜にしたのですから」
「フッ、そいつはどうも。だがアタシ"だけ"の勝利じゃねえよ」
プロレスは1人ではできない。猟兵という最高の対戦相手がいればこそ、この結果が生まれたのだとマキは言う。
彼女の視線には、このリングに立った全ての者への感謝とリスペクトが込められている。相変わらずオブリビオンらしくない、熱い目をする女だ。
「では、最後まで最高の試合を!」
「おう! 行くぜッ!」
試合再開のゴングが鳴るのと同時に、二人の女闘士がリングの中央で激突する。どちらも人並み外れた怪力を持つ者同士、ファイトスタイルは激しい手刀や肘の応酬となった。個性が出るのはお互いの攻撃をどういなすかだろう。
「はっ!」
「ぐおっ……へぇ、カンフーみてぇだな!」
オリヴィアが功夫を応用した受け流しで相手の攻撃を捌きつつ体勢を崩させ、生じた隙に渾身の頭突きを食らわせれば、マキは筋肉と岩石の鎧で正面から受け止めてみせた。長年リングで数々のレスラーの必殺技を受けてきた彼女のタフネスはまさに超人級。ダメージでよろめいても簡単には膝を屈しない。
「今度はアタシの番だぜッ!」
オリヴィアの渾身を受けきったマキは、ダンッとリングを蹴って空に舞い上がる。岩石の鎧も含めた大質量の急降下攻撃から灼熱の連打につなぐ、彼女の必殺ユーベルコード【フレイムアーマー・ラッシュ】の体勢だ。まともに喰らえば、試合が終わりかねない威力。
「ならば!」
ロープの反動を利用した大ジャンプで、オリヴィアもマキの後を追いかける。翼を生やしたかのようなスピードで高度を上げると、空中で組み付きグラップルの体勢に。彼女が身に付けた技は決して派手な打撃技ばかりではない。
「悪名高き狼、フェンリル! その名を冠するならば、この技には抗えまい!」
対象の首に腕を絡め、渾身の力を込めて締め上げる。一度完全に極まってしまえば、どれほどの怪力を以てしても振り解くことはできない。それは神話にて魔狼フェンリルを拘束するために、神々が作りだした伝説の鎖のように。
「【
獣絞縛鎖】!」
「ぐ、おおおおお……ッ
!?!!」
必死にもがくマキと技をかけ続けるオリヴィアは、もつれ合うように空から落下していく。この姿勢ではどちらも動けないため、諸共に墜落のダメージを受けることになるだろう。だが、それを踏まえた上で縛鎖は一切緩まない。
「「……!!」」
ズドン、と隕石が墜ちてきたような衝撃でリングと会場が揺れる。立ち上る煙の中から立ち上がった影はふたつ。
だが、よりダメージの大きいのは技をかけられていた方だ。『やりますね』『アンタもな』と目線で互いの健闘を称え合いながらも、二人はこの戦いの終わりが近いことを察していた――。
大成功
🔵🔵🔵
苔縄・知朱
VIP席じゃあご令嬢を巻き込むのは難しいですね。
まあ、特別扱いしたら別の方向に勘違いされそうですし、フツーにいきましょう。
目指すは、負けさせるはずの選手を応援したくなるような試合!
“八百長”ナシだからこそ、それとなくラフファイトを予告。
「アンタはさっきのザコとは違うみたいだし、本気でいくわよ!」
まずは相手の攻撃を受け止めつつ、空中技中心で応戦。
頃合いを見て「レッドバック・スティンガー」で相手に……と見せかけて、レフェリーに毒霧の目潰し!
これでしばらくはルール無用よ。
相手がロープ際にいるタイミングで、肩に跳び乗りながら自身の体を前後反転、肩車状態からウィドウスパイダー・ネックロック!
ロープを挟んで相手の首に逆さにぶら下がり、足を取って両脇に抱えたら完成形。
失神寸前まで絞め上げたら、敢えて技を解く。
「この程度で沈んでくれるんじゃないわよ、まだ遊び足りないんだから!」
相手の状態はお構いなしに、しかし加減しつつ凶器のチェーンで許す限り追撃!
これだけやれば充分かな?
あとは勝つも負けるも相手次第ね。
(VIP席じゃあご令嬢を巻き込むのは難しいですね。まあ、特別扱いしたら別の方向に勘違いされそうですし、フツーにいきましょう)
文字通り「高みの見物」しているミリオネアの姿を確認しつつ、知朱はこの試合をどのように収めるかを考える。
彼女はもともとヒール系。悪役としてのプレーで試合を盛り上げ、相手にも見せ場を作るのが得意なスタイルだ。
(目指すは、負けさせるはずの選手を応援したくなるような試合!)
頭の中から八百長という言葉が吹っ飛ぶくらい、目の離せない試合展開にしてみせよう。口元に微笑みを浮かべながら、ウィドウスパイダー・チカは再びリングに上がる。対戦相手は超人ダークレスラー『フェンリル・マキ』、相手にとって不足はなしだ。
「アンタはさっきのザコとは違うみたいだし、本気でいくわよ!」
「面白え、だったらアタシも全力でブッ飛ばす!」
"八百長"ナシだからこそ、それとなくラフファイトを予告しておくと、マキは望む所だとばかりに殴りかかってくる。チカはその攻撃を身体で受け止めつつ、燃焼系レスラーとの戦いでも見せた空中技中心のスタイルで応戦する。
『ウィドウスパイダー・チカが華麗に宙を舞う! だがフェンリル・マキも負けてはいないぞッ!』
「まあ……すごい!」
リング上で激しくぶつかり合う蜘蛛と狼。ロープを駆使した三次元の機動や、炎や岩石を纏ったパワフルな一撃など、見ごたえのある技の応酬に観客のテンションも上がる。それはVIP席のご令嬢も例外ではないようで、目を丸くして拳を握っていた。
「ふっ!」
試合が温まってきた頃合いを見て、チカはいよいよヒール系の本領を発揮する。狙いは対戦相手――と見せかけてレフェリーに、口に含んでいた特製カプサイシンソース「レッドバック・スティンガー」による毒霧を吹きかけた。
「え……ぐわぁっ!!」
『おぉーっとチカ選手、レフェリーに目潰しだぁッ!』
刺激臭のする赤い毒霧をかけられ、顔面を覆ってうずくまるレフェリー。反則を取る者がいなくなり、これでしばらくはルール無用だ。実況と観客がどよめく中、彼女は凶器の「スパイダーチェーン」を堂々と取り出し、鞭のように振り回して対戦相手に襲い掛かる。
「ここからが本番よ!」
「うおッ?! こいつ……!」
唸るチェーンにしばかれながら、じりじりとロープ際に後退させられていくマキ。そのタイミングでチカは一気に間合いを詰め、肩に跳び乗りながら自分の体を前後反転、いわゆる肩車状態になる。親子がすれば微笑ましかろうが、これは彼女の必殺のポジションだ。
「逃がさないわよ……どう? 上手に絞められると気持ちいいでしょ?」
「ぐ、うぅッ
……!!!」
首4の字固めを仕掛けながらロープを挟んで相手の首に逆さにぶら下がり、足を取って両脇に抱えれば完成形。
これぞ【ウィドウスパイダー・ネックロック】。宙吊り磔状態にされたマキの顔からみるみる内に血の気が引いていき、首や関節がミシミシと軋む音が聞こえてきそうだ。
「この程度で沈んでくれるんじゃないわよ、まだ遊び足りないんだから!」
失神寸前まで締め上げてから、チカはあえて技を解く。そして相手の状態はお構いなしに、しかし加減しつつ凶器のチェーンで追撃の乱打。リングに倒れたまま立ち上がれないマキに、ビシビシと音を立てて鎖が叩きつけられる。
『これは苦しい、苦しいぞマキ選手! 恐ろしい毒蜘蛛の牙に、このまま為す術なくやれれてしまうのかぁッ!?』
ダークレスラーのお株を奪うほど様になったチカのヒールっぷりと、絶体絶命のマキのピンチに、観客はハラハラしながら声援やブーイングを送る。台本なしの"ガチ"ゆえに生まれる臨場感、先の読めない興奮が会場を揺さぶる。
(これだけやれば充分かな? あとは勝つも負けるも相手次第ね)
チカとしてはこのまま勝って観客の罵声(エール)を浴びるのでも良かった。が、どうせならもうひと盛り上がりあっても良いという期待もあった。果たして相手が立ち上がるのが先か、復帰したレフェリーのストップが入るのが先か。"悪役"として情け容赦のない振る舞いを続けるうちに、観客の声援はマキのほうに集まっていく。
「が、がんばって……!」
「――う、おおぉぉッ!!」
洪水のような騒音の中、ミリオネアが小さな声でエールを送った瞬間。それに応えるようにマキが立ち上がる。
左腕から噴き出した溶岩の熱が、スパイダーチェーンを振り払う。爆発的な復活劇に、会場がわっと湧き上がる。
「まだだ、まだ終わりじゃねえぞ! もっとアツくなれるだろ、なァ!」
「ふふっ、そう来なくちゃね!」
加減したとはいえまだ立てるとは大したタフネスと闘魂の強さ。それでこそヒールもやり甲斐があるというもの。
エンタメとしてのプロレスの魅力を余す所なく見せつけ、試合は最高のテンションのままクライマックスに突入していく――。
大成功
🔵🔵🔵
草剪・ひかり
POW判定
即興行動、お色気、ピンチ描写等歓迎
そもそも八百長なんて必要ないよ
「本気のプロレス」で私が勝つ
それだけだからね!
見た目通りかそれ以上のパワーと獰猛さを魅せつけるマキ
人間の女性としては体格のある私でも、さすがに真っ向から受け止めるのはかなり厳しい!
でも、避ける躱すは最後の手段
どこまでこういうキツイ攻めを「受け」て魅せるかがプロレスラーの「王道」
ド派手で豪快なマキのファイトに、百戦錬磨の上質な技術で対抗
ここはマキのホームだし、最初は派手なマキに声援が偏っても、彼女を私の「挑発」じみたプロレスでヒートアップさせていけば、「なんだかわからないけどすげえ!」っていう空気にできる筈
勿論私も冷静でなんていられない
ガンガンどつき合い、限界超えて衝突し合う
その先にある“何か”を一緒に見よう
リスクは承知だけど、今回も「これ」で勝負を賭ける
私の
戦乙女の断罪の斧が打ち負けるか、私がマキをなぎ倒すか……?
金では買えない、そして幾ら払っても観たいと思えるファイトが、今日は観られるよ!
「そもそも八百長なんて必要ないよ。『本気のプロレス』で私が勝つ。それだけだからね!」
歴戦のプロレスラーとしての自負と自信を全身に漲らせ、ひかりが再びリングに上がる。アツい展開の連続を見せつけられ、絶賛沸騰中の会場の熱は彼女にも伝わってきている。ここで萎える試合や冷める展開を見せるわけにはいかない――女帝はいつだって真剣だ。
「フッ……このアタシがここまで追い詰められるとはな。面白えじゃねェか!」
次々に登場する猟兵の挑戦を受け続け、『フェンリル・マキ』は満身創痍。だが燃える闘魂はまだ消えはしない。
長かった試合もいよいよ終わりが近いと、この場にいる誰もが察していた。だからこそ、残された最後のファイトに選手たちは全身全霊を賭ける。
「うおおおおおおッ!!!」
まさに狼の如き咆哮をリングに轟かせ、見た目通りかそれ以上のパワーと獰猛さを魅せつけるマキ。人間の女性としては体格のあるひかりでも、さすがに真っ向から受け止めるのはかなり厳しい。当たり所が悪ければ一発ノックアウトもあり得る。
(でも、避ける躱すは最後の手段。どこまでこういうキツイ攻めを「受け」て魅せるかがプロレスラーの「王道」)
ひかりはモロに食らったように見せて、打点をわずかにズラしてダメージを軽減する。見るものが見なければすぐには分からないレベルで、彼女の防御スキルは洗練されていた。ド派手で豪快なファイトを仕掛けるダークレスラーに、百戦錬磨の上質な技術で対抗する猟兵という構図が出来上がる。
「うおおおッ、行けーっ!」「そこだーッ!」
ここは『バーニング・インフェルノ』のホームということもあって、派手なファイトを見せるマキに観客の声援は偏っている。玄人好みの高度なテクニックはなかなか理解され辛いものだ。しかし、ひかりはこうしたアウェーでの戦い方も心得ている。
「そんなものじゃ、私のハートに火は点けられないわよ!」
「言いやがったな! ギア上げてくぜ、後悔すんなよッ!」
当てているのに"効いて"いない。発言も含めて「挑発」じみたひかりのプロレスで、マキはさらにヒートアップしていく。攻撃がどんどん激しさを増していくのに、それでも全く倒れないひかりを見れば、観客も次第に彼女の凄さに気付くだろう。
「まさか全部受けきれるのか?」「なんだかわからないけどすげえ!」
細かい理屈はさておき目の前の試合に観客が熱中する一方、リングにいる選手達も勿論冷静でなんていられない。
脳ミソよりも体に染み付いた感覚に任せ、殴られれば殴り返し、投げ、極め、あらゆる技の応酬を繰り返す。持てる力の限りを尽くしてガンガンどつき合い、限界超えて衝突しあう。
「この先にある"何か"を一緒に見よう」
「いいぜ、トコトン付き合ってやらぁ」
至近距離での真っ向勝負、両者一歩も譲る気はなし。ダメージも消耗も激しいはずだが、まだ倒れない。どちらも魂が肉体を凌駕している状態だ。ふたりの口元には自然と笑みが浮かび、痛みも不思議と感じない。だがそれでも、終わりの時は近付いていた。
「ははっ……やるな……」
「ええ、あなたもね……」
気がつけば双方ともに満身創痍、全力で仕掛けられるのはお互いあと1発が精々だろう。回避や防御に割く余力は残っていない。決着をつけるのはまさに"ここ"しかないと、ひかりとマキにプロレスラーの本能が訴えかけていた。
(リスクは承知だけど、今回も「これ」で勝負を賭ける)
右腕を大きく振りかぶるひかり。同時にマキは左腕から溶岩を吹き出した。奇しくも二人が最後の決め技に選んだのは、もっとも信頼と自信を置くラリアット同士。これまでと違う張り詰めた緊張感に、観客も思わず固唾を呑む。
『どうやら両選手とも覚悟は決まったようだ! 打ち勝つのは絶対女帝草剪ひかりの【
戦乙女の断罪の斧】か!? 魔狼フェンリル・マキの【ボルケイノ・クラッシュダウン】か!?』
会場に響き渡る実況アナウンス。全ての人間の緊張と興奮が頂点に達した瞬間、二人はこの激闘に終止符を打つ。
交錯する右と左、激突する女神の戦斧の魔狼の業火。ビッグバン級の衝撃がリングの中心で弾け、爆風が吹き抜ける。あまりの迫力に誰も声を上げられない、一瞬の静寂が会場を満たし――。
「………最高だぜ。こんなにアツくなれる戦いが、あったなんてよ」
そして、観客達は見た。晴れやかな笑顔を浮かべたフェンリル・マキが、ゆっくりとリングに崩れ落ちるさまを。
最後に立っていた戦士の名は、草剪・ひかり。満身創痍の絶対女帝はただ静かに、己の右拳を天へと突き上げた。
『決着ゥーーーッ!! フェンリル・マキ、ついに倒れる! イェーガーチームの勝利だぁッ!!!』
直後、爆発的な拍手と喝采が起こる、それは勝者も敗者もなく、最高の試合を魅せてくれた全選手に送るものだ。
割れんばかりに手を叩く観客の中には、あのミリオネア・リッチモンド嬢もいる。金では買えない、そして幾ら払っても観たいと思えるファイトが、ここには確かにあったのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『豪華アスリートフェスティバル』
|
POW : 豪華で身体にいいご馳走の食べ放題を楽しむ
SPD : アスリートとしてパフォーマンスを見せ、盛り上げる
WIZ : チームメイトや対戦相手と和やかに歓談する
|
「感動……ッ、感動いたしましたわ
……!!」
猟兵とダークレスラーの試合は激熱のままに決着を迎え、猟兵チームの感動的な勝利で幕を閉じた。
まだ興奮も冷めやらぬ中、一同の元にやって来たのはミリオネア・リッチモンド嬢。互いが互いをリスペクトしながら繰り広げる全力の激闘は、カネが全てだと思っていた彼女の価値観さえもブチ壊したようだ。
「わたくしはなんと愚かな真似を考えていたのでしょうか……本ッ当に申し訳ございません! 素晴らしいプロレスを魅せていただき、ありがとうございます!」
感動でむせび泣きながら全レスラーに感謝と謝罪を伝えるミリオネア。どうやらすっかり改心したようだ。
元はといえば彼女が八百長を企んだことから始まった今回の事件も、これにて一件落着と言えるだろう。
「今のわたくしの気持ちをお伝えするには、言葉だけでは足りませんわ。どうか、皆様のための祝賀会を挙げさせてくださいませ!」
さらにミリオネアは自分の目を覚まさせてくれたレスラー達のために、豪勢なフェスティバルを開催してくれた。
持てる財力を使ってあっという間に会場を手配から準備までを済ませ、ド派手な飾り付けに美味しそうな料理まで用意した、猟兵と『バーニング・インフェルノ』の健闘を讃えるための祝いの席だ。
「いいね! 試合の後はやっぱりこうでなきゃな!」
あれだけ派手にノックアウトされたのに、しれっと復活してきたフェンリル・マキも、この祭りに参加する気だ。
なお、猟兵が勝利したので彼女以外の選手はみんな元に戻っている。ダーク化している間の記憶も残っているようで、やはり祭りを楽しむつもりな模様。
せっかくの厚意ではあるし、猟兵達もこのフェスティバルに参加して戦いの疲れを癒やすのも良いだろう。
両チーム入り乱れて歓談したり、ご馳走の食べ放題を味わったり。思いっきり浮かれ騒ぎ、全力で楽しめばいい。
金で買えない
感動の後には一切遺恨を残さない、これこそアスリートアースのいつも通りの光景であった。
シプラ・ムトナント
令嬢の方……ミリオネアさんと仰るのでしたね、考えを改めて頂けたようで良かったです。
貴女には感謝しなければなりません、お陰様でプロレスというものの魅力を知ることが出来ました。
それに、フェンリル・マキさんに燃焼系レスラーの皆さんにもお礼を。
純粋で、こんなにも楽しい戦いの形があるのだと、教えて下さったのは貴女方ですから。
リングの上では荒々しく戦っていても、戦いが終われば手を取って宴ができる……それは、とても素敵なことなのだと思います。
わたしは故郷の為に戦う一介の兵士。そこは変わらないし、変わりたくない所です。
けれど、今この瞬間は……もう少しだけ、
新しい自分でいても良いと思うのです。
「令嬢の方……ミリオネアさんと仰るのでしたね、考えを改めて頂けたようで良かったです」
祝賀会のフェスティバルに招待されたシプラは、その主催者であるミリオネアに会い、言葉を交わす機会を得た。
悔い改めたとは言え八百長でアスリートの試合を侮辱するような真似をした令嬢に対し、彼女が伝えるのは説教や文句などではなかった。
「貴女には感謝しなければなりません、お陰様でプロレスというものの魅力を知ることが出来ました」
「えっ……? そんな、わたくしなんて何も」
まさかお礼を言われるとは思わなかったのか、目を丸くして戸惑うミリオネア。だがそれはシプラの本心だった。
八百長の誘いが今回の事件に発展しなければ、異界のプロレスに参戦する機会なんて一生なかったかもしれない。試合を通して手に入れた経験は、すでに彼女の中でかけがえの無い思い出になっていた。
「それに、フェンリル・マキさんに燃焼系レスラーの皆さんにもお礼を」
「お? アタシ達にもかい?」
すでにパーティに参加していたマキを初めとする『バーニング・インフェルノ』のメンバーにも、シプラは感謝を伝える。彼女らはオブリビオン(及び影響を受けていた者達)だが、敗北に俯く事もなければ勝者に恨みつらみを述べる事もなく、清々しい態度でここにいる。
「純粋で、こんなにも楽しい戦いの形があるのだと、教えて下さったのは貴女方ですから」
シプラにとって「戦い」と聞いて真っ先に思い浮かべるのは故郷の戦場。そこで繰り広げられるのは領土や人命を賭けた命の奪い合い。塹壕で泥濘に塗れ、硝煙と血の匂いを染み付かせる、過酷な戦争だ。しかし今回リングの上で体験した「戦い」は、互いに全力を出しあう真剣勝負でありながら、どこか清々しい気持ちになれた。
「リングの上では荒々しく戦っていても、戦いが終われば手を取って宴ができる……それは、とても素敵なことなのだと思います」
「ああ、そりゃ良かった。アタシもあんたと戦えて楽しかったぜ!」
素直な今の気持ちを伝えるシプラに、マキはニッとワイルドな笑みで応え、握手を求める。その手を握り返さない理由は彼女にはなかった。勝敗がどうであれ試合の後には遺恨を残さない。これこそがプロレスの最も素晴らしい所かもしれない。
「また機会があったら
闘ろうや。次はリベンジさせてもらうぜ」
「はい。私も負けません」
闘志を込めてぐっと手を握られると、シプラもしっかりと握り返す。宴が終わった後は故郷に戻らねばならない以上、この約束がいつ果たされるかは分からないが――少なくとも、また機会さえあればリングに上がっても良いと考えている自分がいることを、彼女は否定しなかった。
(わたしは故郷の為に戦う一介の兵士。そこは変わらないし、変わりたくない所です)
先祖より受け継いだ軍人としての信念は、今のシプラを形作る根底にあるもの。どんなに過酷で悲惨な戦場でも、それが兵士の務めであれば迷いはない。祖国を守り、平和の為に戦えることを、彼女は今だって誇りに思っている。
(けれど、今この瞬間は……もう少しだけ、
新しい自分でいても良いと思うのです)
華やかな祝賀会の席で、
好敵手と先程の試合について語り合う、この心地よい時間を味わっていても怒られはすまい。今まで知らなかった世界の扉を開き、経験を得てちょっぴり成長した彼女の表情は、年齢相応の少女の笑顔になっていた。
大成功
🔵🔵🔵
黎明・天牙
夢幻戦線
『少しでいいんだ!』『あのアホに空気を読むって事を教えてやってほしいのよ!』
ヴォルガとリズがフェンリル・マキに縋り付いていた
お〜俺からも頼むわ、飯でも食いながらよ
フェンリル・マキと共に空気の読み方や試合を称えあった
お前の動き、凄かったぞ〜
『へえ〜凄いわね』『確かに今回の試合はよかったな…』
『ミィィィィン!』
突然、時間が止まる
『天牙、何故最初の試合にあの吸血鬼の娘を無理矢理出した?』
おいおい邪神君、気づいて言っているだろう?
ハージェスって野郎の刺客らしき奴ら
がこの会場にいたから連雀レンジャーズの半数行かせてた
ティニがあのまま帰っていたら刺客と鉢合わせて誘拐される所だったからな…
『ふん…』
レティシア・ハルモニアス
夢幻戦線
ふははっ!何やっとるんじゃ!
ヴォルガとリズがフェンリル・マキに縋り付いているのを見て笑う妾
…笑ったの久しぶりじゃ
奴隷にされてからは全く笑わなかった事を思い出した
(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=49025)
回想
部屋で寝かされていた
ここは?
『お〜!起きたよ!お姉ちゃん!』
ライオンの獣人が部屋の扉を小さく開けて誰かを呼ぼうとした
うわあぁぁぁぁ!
妾はパニックを起こし獣人を突き飛ばし部屋の外へ逃げ出した
『あっちょっと〜』
部屋の外は洋風な扉や和風な襖や畳や床や壁などが物理の法則を無視した奇妙な空間だった(天牙が振動の応用で作ったらしい)
な…何じゃ?!ここは!
『君!まだ歩ける状態じゃないんだよ、取りあえず戻ろう』
リズが妾に手を差し伸ばすが振り払って逃げる
はあ…はあ…何じゃここは?!
必死に逃げ惑う妾が出口を探して奇妙な空間を彷徨う妾
エクスペリアァァァァ!と叫んで丸太を破壊する天牙と出会う
皆のおかげでまた笑える様になったのう…
妾はご馳走を頬張った
「少しでいいんだ!」「あのアホに空気を読むって事を教えてやってほしいのよ!」
激戦を終えたプロレスラー達を讃えるフェスティバルの会場で、ヴォルガとリズはフェンリル・マキに縋り付いていた。彼らが言う「あのアホ」とは当然天牙のことである。一応は自分達のリーダーであるはずなのだがこの扱い、よっぽど普段から振り回されていると見える。
「ンなこと言ってもなあ、プロレスは道徳の授業じゃねぇんだが」
「頼むって!」「お願いよ!」
急にそんな事を言われてもとマキは困惑するが、ヴォルガ達は本気である。対戦相手が求めている事を読み取り、観客が望んでいるものを把握する事はプロレスを成立させるための必須事項。ベテランのダークレスラーである彼女ならば、そうした空気を読む術もわかると思ったようだ。
「ふははっ! 何やっとるんじゃ!」
そんな必死なヴォルガとリズの様子を見て、思わず吹き出したのはレティシア。こんな他愛のないもので笑ってしまったことに、一拍遅れて自分でも驚く。同時に、ずっと肩のあたりで張り詰めていたものが、少しだけ軽くなったような気がした。
「……笑ったの久しぶりじゃ」
仲間の裏切りによって女王の座から墜ち、敵の奴隷にされてからは笑う余裕など無かった。全てを奪われ、絶望に染まった自分を救ったのがこの「夢幻戦線」だ。彼らと出会ったばかりの頃の出来事を、彼女はふと思い出す――。
●
「……ここは?」
奴隷を囚える強制労働場からの逃亡中、意識を失ったレティシアは、気が付くと知らない部屋に寝かされていた。
辺りを確認しようと身体を起こそうとすると、傍にいたライオンの獣人がそれに気付き、部屋の扉を小さく開けて誰かを呼ぼうとする。
「お~! 起きたよ! お姉ちゃん!」
「う、うわあぁぁぁぁ!」
それを看守を呼ぶ声だとでも思ったのだろうか、パニックを起こしたレティシアは獣人を突き飛ばして部屋の外へ逃げ出す。「あっちょっと~」と呼び止める声も届かない。プライドを轢き潰すような奴隷としての日々は、彼女の心から完全に余裕を奪い去っていた。
「な……何じゃ?! ここは!」
レティシアが寝ていた部屋の外は、洋風な扉や和風な襖や畳や床や壁などが物理の法則を無視して並ぶ、奇妙な空間になっていた。天牙が「振動」の技術を応用して作ったらしいが、この時の彼女にそんな事が分かるはずもない。
「君! まだ歩ける状態じゃないんだよ、取りあえず戻ろう」
ライオンの獣人――リズが心配そうに駆け寄って手を差し伸べるが、レティシアは「ひっ」と怯えたようにそれを振り払って逃げてしまう。見たこともない空間に知らない人種、未知の連続によって彼女の頭は混乱しきっていた。
「はあ……はあ……何じゃここは?!」
レティシアは必死に逃げ惑い、出口を探して奇妙な空間を彷徨う。どれだけ走ったか分からないが、先に進めた気はまったくしない。元より過酷な労働と逃亡により疲労が溜まりきっていた体は、もう限界を迎えようとしていた。
「エクスペリアァァァァ!」
「?!」
そこに飛んできたのが、謎の呪文を叫びながら丸太を破壊する天牙。これが二人のファーストコンタクトだった。
それから紆余曲折を経てレティシアは夢幻戦線のメンバーとして行動を共にする事になるのだが――それはまた別の話である。
●
「皆のおかげでまた笑える様になったのう……」
思えばあれから色々な事があったものだと、レティシアは微笑みながらご馳走を頬張る。失った力はまだ少ししか戻ってきていないが、それでも彼女は今の生活が嫌ではない。少なくとも彼らと出会わなければ、自分は今でも絶望の底に居ただろうから。
「ちょっとだけでいいから!」「ね! 教えてやって!」
「お~俺からも頼むわ、飯でも食いながらよ」
一方こちらは相変わらずマキに縋り付くヴォルガとリズ、そこに話題の人物である天牙本人まで加わってきた。
ここまで頼み込まれるとマキも折れたようで「しゃあねえなあ……」と頭を掻きながら話に応じる。彼女も彼女で先程の試合の事など話したいことはあったようだ。
「お前の動き、凄かったぞ~」
「アンタもな。あの妙な振動の技は厄介だったぜ」
会場に用意された食事をいただきながら、天牙とマキは試合でのお互いの戦いぶりを称え合う。マキからはそれに加えてプロレスラーとしての立ち回りや空気の読み方など、他の戦いや日常でも役立ちそうな心得を教えてくれる。
「まあ、基本は相手のやりたい事を予想するこったな。自分の周りにアンテナを張り巡らせる感じだ」
「へえ~凄いわね」
「確かに今回の試合はよかったな……」
豪放磊落なファイトスタイルの裏には意外なほど緻密な考えがあることを知り、ヴォルガとリズは感心しながらメモを取っている。これで少しでも天牙の素行が改善すればと思っているようだが――正直そこは望み薄な気もする。
『ミィィィィン!』
その時、リングでも聞こえたセミの鳴き声のような音が響き、会場の時間が止まる。周りの人物達がピタリと動かなくなる中、ただ一人変わらずもぐもぐとメシを食っている天牙の目の前に、邪神オーガスト・ベインが姿を現す。
『天牙、何故最初の試合にあの吸血鬼の娘を無理矢理出した?』
「おいおい邪神君、気づいて言っているだろう?」
邪神が問うのは試合中の天牙の振る舞いについて。彼の行動にはおそらくは素でやっている部分もあるが、それでもおかしい点があった。その指摘に彼は飄々とした態度を崩さずに、種明かしでもするような軽いノリで回答する。
「ハージェスって野郎の刺客らしき奴らがこの会場にいたから連雀レンジャーズの半数行かせてた。ティニがあのまま帰っていたら刺客と鉢合わせて誘拐される所だったからな……」
『ふん……』
レティシアを奴隷にしていた連中は、今でも彼女の事を見逃したわけではない。本人も知らないうちに忍び寄る敵の魔の手に、天牙だけは気付いて対処していた。もちろん、その事をレティシアに言って感謝されるつもりはない。
彼の答えに満足したのかどうかは分からないが、邪神はすぐに姿を消し、時間は再び動き出す。白熱するプロレスの裏にあったもうひとつの陰謀は誰にも知られること無く、彼らの胸のみに秘められる事となった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
これはなんとも豪勢な……
ありがたくいただきますね
激しい運動の後はお腹が空くもの
いかにも美味しそうなステーキを頬張る
噛むたびに溢れる肉汁、がっつりとニンニクが効いて……あ、半分吸血鬼(ダンピール)ですが、ニンニクは全然平気です
両チームの選手と歓談し、あの技は効いた、このパフォーマンスは良かった、など称え合う
フェスティバルを聞きつけた観客たちがいれば笑顔で応じる
……ニンニクの匂いを漂わせているのは女性としてどうかと思うので、【薔薇の妖婦】で誤魔化しておきましょう
応援ありがとうございました、これからも頑張りますね
「これはなんとも豪勢な……ありがたくいただきますね」
試合後に急遽用意されたものとは思えない立派な会場とご馳走の数々を見て、オリヴィアは顔を綻ばせながら感謝を伝える。激しい運動の後はお腹が空くもの、いかにも美味しそうなステーキを頬張って、自分へのご褒美にする。
「噛むたびに溢れる肉汁、がっつりとニンニクが効いて……あ、
半分吸血鬼ですが、ニンニクは全然平気です」
「それは良かったです。もし食べられない物などございいましたら、遠慮なく言ってくださいませ」
気持ちのいい食べっぷりと感想に、この宴を主催したミリオネアも嬉しそうにニコニコと微笑む。会場には彼女の他にも先程リングでの戦いを共にした両チームの選手が参加して来ており、敵味方の垣根を超え交流を深めている。
「あ、貴女も来てたんですね! 試合ではお世話になりました!」
「あなたは……ええ、こちらこそ」
オリヴィアの元にも、先程の対戦相手となった燃焼系レスラーが話しかけてくる。ダーク化は既に解けているので正確には「元」燃焼系レスラーだが、試合中の出来事はちゃんと覚えているようだ。その上で敗北を引きずらないのがプロレスラーの心得なのだろう。
「いい勝負ができました! 素晴らしい逆転劇でしたね!」
「あなたの絞め技も見事でしたよ。もう少しで危うい所でした」
互いの試合を振り返り、あの技は効いた、このパフォーマンスは良かった、など語り合う。本気で戦った相手だからこそ、その強さを認めて称え合うことができる。試合中とは打って変わって、和やかな空気の中で会話は弾んだ。
「あっ、あの人はもしかして……!」
オリヴィアが選手との話や食事を楽しんでいると、今度はレスラーとは違う風貌の人々が自分に注目しているのに気付く。このフェスティバルにいたのは選手だけでなく、あの試合を見ていた観客も情報を聞きつけて来たようだ。
「あ、あのっ! さっきの試合見てました!」「もう目が離せなくて、私、ファンになっちゃって!」
「まあ。嬉しいです」
興奮冷めやらぬ様子でキラキラと目を輝かせ、熱っぽい顔で語る観客達に、オリヴィアは笑顔で応じる――流石にファンとの交流でニンニクの匂いを漂わせているのは女性としてどうかと思うので【薔薇の妖婦】で誤魔化しつつ。
「応援ありがとうございました、これからも頑張りますね」
「は……はいっ!」「次の試合も絶対見に行きます!」
甘やかな薔薇の香りを漂わせたオリヴィアにそう言って微笑まれると、相手の好感度はうなぎ登りだったようで。
彼女の本業はレスラーではないとはいえ、この日の試合は当分はプロレスファンの間で語られる事になるだろう。カネに溺れて悪事を考える者もいれば、こうした純粋なファンもいると、改めて実感するオリヴィアであった――。
大成功
🔵🔵🔵
草剪・ひかり
WIZ判定
即興連携、キャラ崩し、お色気描写等歓迎
立派な打ち上げを用意してくれたので、私も略式のドレスで出席
一応は団体の代表で、年も年だしそれなりの礼節を保たないとね
ミリオネアさん、今回の件でプロレスの楽しさ、凄さに触れてもらえたみたいで、私も嬉しいわ
今後は、アナタが感動したプロレスを世の中に広めるため、その力の少しを振り向けてもらえれば、業界の一人としてこんな頼もしいことはないわね
それにしても、何度ダークレスラーと闘っても、「猟兵側が勝つまで何人でも」ぽいのは慣れないわ(苦笑
ルールとは言えダーク側は孤立無援、納得いってるのかしら
だからマキ、今度はシングルでやりましょ
もちろんまた私が勝つけどね?
(一応は団体の代表で、年も年だしそれなりの礼節を保たないとね)
リングコスチュームから略式のドレスに着替え、試合後のフェスティバルに出席するのはひかり。これだけ立派な打ち上げを用意してくれたのなら、参加しないのも失礼にあたるだろう。大人の落ち着きと気品を漂わせた振る舞いで、彼女はまずここの主催者に挨拶をする。
「ミリオネアさん、今回の件でプロレスの楽しさ、凄さに触れてもらえたみたいで、私も嬉しいわ」
「こちらこそ、本当に素晴らしい試合を見せていただいて……まさに目が醒める思いでしたわ」
試合が始まる前はプロレスの事を見下していたミリオネアも、すっかり心を入れ替えた様子。八百長の件は本当に反省しているらしく、「申し訳ありませんでした」と何度も頭を下げられた。だが、ひかりとしては彼女を攻めるよりも、新しいファンを心から歓迎したい気持ちだ。
「今後は、アナタが感動したプロレスを世の中に広めるため、その力の少しを振り向けてもらえれば、業界の一人としてこんな頼もしいことはないわね」
有り余る財力をこれまで自分の為だけに使ってきたミリオネアが、プロレス業界を後援してくれるようになれば、プラスの影響は小さくないだろう。ことアスリートアースにおける超人プロレスは比較的最近になって「その他」枠から公式化された競技であり、発展と普及の余地はまだまだあるはずだ。
「はい、勿論です! プロレスの素晴らしさをより多くの方々に知っていただくため、わたくし全力出しますわ!」
ミリオネアもそれを今後の目標にするつもりらしく、縦ロールを揺らして目をキラキラ輝かせる。プロレスを盛り上げるのはレスラーだけでなく、こうした観客やスポンサーの理解も必要である事を、業界歴の長いひかりはよく知っている。なので「期待してるわね」と、彼女のやる気に優しい微笑みで応じるのだった。
「それにしても、何度ダークレスラーと闘っても、『猟兵側が勝つまで何人でも』ぽいのは慣れないわ」
その後ミリオネアと別れたひかりは今回の試合について振り返り、すこしだけ肩をすくめて苦笑する。選手交代・飛び入り自由の超人プロレスルールだと、基本的にメンバーを多く集められた側が有利。異世界からも仲間を呼べる猟兵に有利すぎないかという印象は少々あった。
「ルールとは言えダーク側は孤立無援、納得いってるのかしら」
「あぁん? いいじゃねえか、有象無象は片っ端から蹴散らしてこそのダークレスラーだろ? 今日はアンタ達の方が強かった、それだけさ」
それを聞いたフェンリル・マキの回答としては「勝てば問題なし、負けたら弱かっただけ」という感じのようだ。
八百長のような卑怯な行為は好まないとはいえ、必ずしも
公平であることに拘らないのはダークリーガーらしい。実際他の燃焼系レスラー達を見ても、ルールに不平不満をこぼすような者は一人もいなかった。
「アナタ達がそう言うのならいいけど」
とはいえひかりとしては、どちらかが有利でなく対等な条件で勝負がしたい気持ちはあった。相手をオブリビオンである前に立派なプロレスラーの1人と認めていれば尚の事である。今回の試合の結果だけを切り取って「勝った」と言っても、魂はまだ満足できていない。
「だからマキ、今度はシングルでやりましょ」
「へぇ、面白え」
次は猟兵とダークリーガーではなく、お互いただのプロレスラーとして。女帝からの挑戦状にマキは餓狼の笑みを浮かべる。リベンジの機会は彼女としても望む所だ。今回は遅れを取ったものの、同じ相手に二度敗北するつもりはない――そうした気迫が伝わってくる。
「もちろんまた私が勝つけどね?」
「バカ言え、後悔させてやるよ」
宴席でビシビシと闘志をぶつけ合う二人のレスラー。どうやら次の試合に向けた準備はもう始まっているようだ。
絶対女帝草剪ひかりとフェンリル・マキ。後日に行われたこのニ名のシングルマッチは、ミリオネアを始めとするプロレスファン達をさらなる熱狂と感動の渦に導いたというが――それはまた、別の物語である。
こうして八百長騒動から始まった『バーニング・インフェルノ』との試合は、完全に幕引きとなる。
金で買えない
感動をもたらした猟兵とダークリーガーによって、この世界にまた1人新たなプロレスファンが生まれ――超人スポーツ界の未来は希望に満ち溢れていた。
大成功
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